プラズマ処理装置
【課題】基板に対する悪影響を抑制でき、かつ、十分にプラズマを閉じ込めることができるプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】高周波電圧が印加される一対の電極54、56間にプラズマ化されるガスが供給されると共に、一方の電極54の表面に沿って基板2が配置される。電極54、56間から排出されるガスの流路にプラズマ閉込部65を備え、プラズマ閉込部65は、表面にS極58S及びN極58Nがガスの流れAと交差する方向に一列に交互に配置された磁石部60を一対有し、一対の磁石部60はS極58SとN極58Nとが互いに対向し、かつ、一対の磁石部60間にガスが流れるように対向配置されている。プラズマ閉込部65は、さらに、一方の磁石部60のS極58S及びN極58Nの境界部と、他方の磁石部60のS極58S及びN極58Nの境界部との間に、ガスの流通を妨げるブロック59を有する。
【解決手段】高周波電圧が印加される一対の電極54、56間にプラズマ化されるガスが供給されると共に、一方の電極54の表面に沿って基板2が配置される。電極54、56間から排出されるガスの流路にプラズマ閉込部65を備え、プラズマ閉込部65は、表面にS極58S及びN極58Nがガスの流れAと交差する方向に一列に交互に配置された磁石部60を一対有し、一対の磁石部60はS極58SとN極58Nとが互いに対向し、かつ、一対の磁石部60間にガスが流れるように対向配置されている。プラズマ閉込部65は、さらに、一方の磁石部60のS極58S及びN極58Nの境界部と、他方の磁石部60のS極58S及びN極58Nの境界部との間に、ガスの流通を妨げるブロック59を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高周波電圧が印加される一対の電極間にプラズマ化されるべきガスが供給され、このプラズマによって一方の電極の表面に沿って配置された基板を処理するプラズマ処理装置が知られている。このようなプラズマ処理装置においては、ガスとしてCVD原料ガスを用いることによって基板上に反応生成物を析出させたり、ガスとしてエッチャント原料ガスを用いることにより基板上の材料をエッチングしたりすることができる。
【0003】
そして、このようなプラズマ処理装置では、電極間から処理後のガスを外部に排出する必要があるが、この際にプラズマを排出させずに電極間に閉じ込める必要がある。これを実現するプラズマ閉込部として、特許文献1、2のように、ガスの排出流路に静電スリットを配置することや、特許文献3のようにパンチングメタルや金属メッシュを用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−184662号公報
【特許文献2】特開2002−064064号公報
【特許文献3】特開2001−335948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のプラズマ閉込部では、スリット間隔や穴の間隔をかなり小さくしなければならないことが多く、プラズマ処理に伴って生成する粉体によりプラズマ閉込部が目詰まりしてこの粉体がうまく排出されず、この粉体がプラズマ処理された基板の特性を悪化させる場合がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、基板に対する悪影響を抑制でき、かつ、十分にプラズマを閉じ込めることができるプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるプラズマ処理装置は、高周波電圧が印加される一対の電極間にプラズマ化されるガスが供給されると共に、一方の前記電極の表面に沿って基板が配置されるプラズマ処理装置であって、電極間から排出されるガスの流路にプラズマ閉込部を備える。そして、プラズマ閉込部は、表面にS極及びN極がガスの流れと交差する方向に一列に交互に配置された磁石部を一対有する。ここで、一対の磁石部はS極とN極とが互いに対向し、かつ、一対の磁石部間にガスが流れるように対向配置されている。また、プラズマ閉込部は、さらに、一方の磁石部のS極及びN極の境界部と、他方の磁石部のS極及びN極の境界部との間に、ガスの流通を妨げるブロックを有している。
【0008】
本発明によれば、排出されるガスが、互いに対向する一対の磁石部のS極及びN極間を通ることにより、このガスに対してガスの流れに交差する方向の磁界が印加され、排出されるガス中のプラズマが閉じ込められる。また、各磁石部においてS極とN極とが交互に配置されているので、外部へ漏洩する磁束を小さくすることができ、意図しない場所での異常放電(マイクロ放電)が抑制される。さらに、一方の磁石部のS極及びN極の境界部と、他方の磁石部のS極及びN極の境界部との間においては、両方の磁極からの磁束によってガス流れに対して交差する方向の磁界が弱くなりプラズマの閉じ込めが難しいが、この部分にブロックを有することによりプラズマの閉込をより効率よく行なえる。さらに、従来のようにスリットや網をプラズマ閉込部とした場合に比して、プラズマ閉込部における開口幅を大きくできるので、プラズマ閉込部の流路内におけるパーティクルの堆積が抑制される。したがって、外部へのパーティクルの排出が長時間安定して可能となり、膜に対するパーティクルの混入を長時間にわたって安定して抑制することが可能となる。
【0009】
ここで、基板は長尺な可撓性基板であって、一方の電極の表面に沿って前記可撓性基板の長手方向に供給され、可撓性基板と磁石部との間に磁気シールドをさらに備えることが好ましい。
【0010】
これにより、基板に印加される磁界を低減でき、異常放電により基板等に形成されるピンホールをより低減できる。
【0011】
また、ガスはCVDの原料ガスであり、基板上に反応生成物が析出されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基板に対する悪影響を抑制でき、かつ、十分にプラズマを閉じ込めることができるプラズマ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明にかかる成膜システムの全体構成を示す模式図である。
【図2】図2は、図1のN室、I室、P室の概略断面図(実施例1に対応)である。
【図3】図3は、図2のIII−III矢視図である。
【図4】図4は、図3の変形例(実施例2に対応)である。
【図5】図5は、太陽電池の一実施例を示す概略断面図である。
【図6】図6は、実施例1のプラズマ閉込部について、図2のIII−III線における磁束密度の分布である。
【図7】図7は、実施例1のプラズマ閉込部について、図2のVから見た基板2の直上における磁束密度の分布である。
【図8】図8は、比較例1のプラズマ閉込部について、図2のIII−III矢視図である。
【図9】図9は、比較例1のプラズマ閉込部について、図2のIII−III線における磁束密度の分布である。
【図10】図10は、比較例のプラズマ閉込部について、図2のVから見た基板2の直上における磁束密度の分布である。
【図11】図11は、比較例2のN室、I室、P室の概略断面図である。
【図12】図12は、比較例3のN室、I室、P室の概略断面図である。
【図13】図13は、実施例1及び比較例1〜3について、各成膜距離でサンプリングした太陽電池の開放電圧を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、プラズマCVD装置(プラズマ処理装置)としてのN室50a、I室50b、P室50cを含む成膜システム100の概略構成図である。本実施形態における成膜システム100は、いわゆるアモルファスシリコン型薄膜太陽電池の製造において、可撓性基板2上にアモルファスシリコン膜をいわゆるロールツーロール方式により形成するために用いられるものである。
【0016】
この成膜システム100は、繰出室10、前処理室12、N室50a、I室50b、P室50c、後処理室13、及び、巻取室20を主として備えている。
【0017】
繰出室10では、ボビン1にロール状にあらかじめ巻き取られていた可撓性基板2を繰出す。繰出室10から繰出された可撓性基板2は、前処理室12、N室50a、I室50b、P室50c、後処理室13内を通過した後に巻取室20に供給され、巻取室20内のボビン1にロール状に巻き取られる。
【0018】
前処理室12には、電極14、及び高周波電源18に接続された電極16が配置されており、可撓性基板の放電洗浄処理を行う。
【0019】
N室50a、I室50b、P室50cは、それぞれ、n型アモルファスシリコン薄膜、i型アモルファスシリコン薄膜、p型アモルファスシリコン薄膜を可撓性基板2上に成膜するプラズマCVD装置(プラズマ処理装置)であり、それぞれ、接地された電極54、及び、高周波電源19が接続された電極56が配置されている。可撓性基板2は、それぞれ、電極54と電極56との間を可撓性基板2の長手方向に通り抜けるようにされており、特に、可撓性基板2が、一方の電極54の表面に沿って移動するようにされている。
【0020】
前処理室12とN室50aとの間、N室50aとI室50bとの間、I室50bとP室50cとの間、P室50cと後処理室13との間には、バッファ室30がそれぞれ配置されている。バッファ室30は、各室間でのガスの混合を抑制するための部屋であり、不活性ガス源INから不活性ガスが微量供給され、各部屋からのガスが流入しないようにされている。なお、バッファ室30に不活性ガスを供給せず、バッファ室30内のガスを高真空排気することによって各室間でのガスの混合を抑制することも可能である。また、繰出室10から巻取室20までの空間は、ポンプ15により減圧状態に維持されている。
【0021】
N室50aにはCVD反応用の原料ガスとして、例えば、SiH4及びドーパントとなる例えばホスフィン(PH3)を含むガスが、I室50bにはSiH4を含むガスが、P室50cにはSiH4及びドーパントとなるジボラン(B2H6)を含むガスが、各ガス源GIから供給される。また、N室50a、I室50b、P室50cにおける反応後のガスは、ガス回収装置GOにより各室から系外に排出される。
【0022】
後処理室13には、電極14、及び高周波電源18に接続された電極16が配置されており、成膜面の放電処理を行う。
【0023】
続いて、プラズマCVD装置であるN室50a、I室50b、P室50cの詳細について、図2及び図3を参照して詳細に説明する。ここでは、N室50aを例に挙げて説明するが、I室50b、P室50cもN室50a同様である。
【0024】
N室50aは、減圧容器51内に、アノード側として機能する接地された電極54と、カソード側として機能し高周波電源19と接続された電極56、原料ガスを供給する供給管52、及び、反応後のガスを排出する排出管53を主として備える。
【0025】
電極54及び電極56は、それぞれ平板状をなし、互いに対向するように水平に配置されている。前述のように、可撓性基板2は一方の電極である電極54に沿って、その長手方向に搬送される。すなわち、可撓性基板2は、電極54及び電極56間において、電極54に近い位置を通過することとなる。
【0026】
電極54と可撓性基板2との距離は特に限定されないが、例えば、1mm〜5mm程度とすることができる。
【0027】
供給管52は、可撓性基板2の搬送方向(図2の左から右方向)の上流側に配置され、ガス源GIからのガスを、電極54及び電極56間に、かつ、可撓性基板2の搬送方向に流す。
【0028】
供給管52のガス排出口には、ガス分散板57が設けられている。ガス分散板57は、原料ガスを供給管52から電極間のプラズマ形成領域Pまで水平方向に分散させるスリット57bを複数有する。スリット57bの幅は特に限定されないが、プラズマ形成領域Pからプラズマが供給管52内に漏れ出さないようにすべく、スリット57bのガス出口57d近傍に存在するプラズマのデバイ長さλD以下とすることが好ましい。また、ガス分散板57は、多数の孔を形成したものでもよい。
【0029】
また、排出管53は、図2に示すように、可撓性基板2の搬送方向に配置され、電極54及び電極56間のガスを外部、すなわち減圧容器51の外へ排出する。排出管53の下流側には、パーティクルを回収するパーティクル回収装置GOが接続されている。
【0030】
この排出管53は、後述するプラズマ閉込部65を通過したガスを捕集してしばらく水平方向にガスを導いた後、下方に向かってガスを導くように形成されている。
【0031】
プラズマ閉込部65は、図2及び図3に示すように、一対の磁石部60、ブロック59、及び、磁気シールド62を主として備えている。
【0032】
図3に示すように、磁石部60は、それぞれ複数の磁石58を有している。各磁石部60において、複数の磁石58は、磁石部60の表面に各磁石58のS極58S及びN極58Nがガスの流れ方向(Z方向)と交差する方向(ここでは、さらに基板2と水平な方向)に一列に交互に並ぶように配置されている。そして、この一対の磁石部60は、S極58SとN極58Nとが互いに対向し、かつ、一対の磁石部60間にガスが流れる流路FPが形成されるように対向配置されている。
【0033】
磁石58は特に限定されないが、例えば、フェライト磁石、サマリウム・コバルト(SmCo)系磁石、ネオジム(Nd)系磁石等を使用できる。ここで、磁石部60間に形成される磁束密度は、完全磁化プラズマ条件、すなわち、電子が磁力線の周りを一周する間に中性ガスと衝突しない条件となるほどの強さBzである必要はない。磁束密度は、完全磁化プラズマ条件となる磁束密度Bzの1/10以上であることが好ましい。例えば、圧力が133Paでは、完全磁化プラズマ条件となる磁束密度Bzは約10kGである。
【0034】
また、各磁石58の形態は特に限定されないが、図3に示すように、厚み方向(Y方向)に磁化された板状の磁石を用いることが好ましい。
【0035】
磁石58のサイズは特に限定されない。図2における磁石58のガス流れ方向(Z方向)の長さは、プラズマを十分に閉じ込めることができる長さに調節すればよく、例えば、圧力100−200Paでは40mmとすればよい。磁石58のX方向(フィルム巾方向)の長さは、及び、磁石部60間の間隔(Y方向)は、プラズマ形成によって生成するパーティクルの堆積による流路FPの閉塞を長時間防ぐことを意図して設定すればよく、この長さを、例えば、8mm以上、好ましくは20mmとすることができる。
【0036】
図3に戻って、ブロック59は、一方の磁石部60のS極58S及びN極58Nの境界部と、他方の磁石部60のS極58S及びN極58Nの境界部との間に設けられており、この境界部間におけるガスの流通を妨げる。ブロック59の材質は非磁性材料であれば特に限定されず、十分な剛性を有していればよい。具体的には、非磁性のステンレス鋼が挙げられる。
【0037】
ブロック59のサイズは特に限定されないが、完全磁化プラズマ条件となる磁束密度Bzの1/10未満となる部分を覆うこと、例えば、圧力が133Paであれば磁束密度が750G未満となる部分を覆うようにすることが好ましい。例えば、圧力100−200Paでは、ブロック59のX方向(フィルム巾方向)の長さは、例えば、13mmとすることができる。また、ブロック59のY方向の高さは磁石部60間の間隔と同じとすることが好ましい。また、図2におけるブロック59のガス流れ方向(Z方向)の長さは、磁石58の長さ以上とすることが好ましい。
【0038】
磁気シールド62は、磁石部60及びブロック59を、Z軸方向の周りに取り囲むように設けられており、磁石部60から外への磁束の漏れ、特に、磁石部から基板2の方向への磁束の漏れを抑制するものである。磁気シールドの材質は、軟磁性材料であればよく、例えば、純鉄が挙げられる。磁気シールド62の厚みは特に限定されないが、基板上での漏洩磁束が40G以下、より好ましくは30G以下となる厚みとすることが好ましい。
【0039】
ガス分散板57の材料は特に限定されない。例えば、アルミナ等のセラミック材料、石英、ガラス材料、フッ素樹脂等の樹脂材料が挙げられる。フッ素樹脂としては、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、ポリ三フッ化クロルエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、フッ化エチレンプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等が挙げられる。
【0040】
続いて、このようなプラズマCVD装置を含む成膜システム100における作用について説明する。
【0041】
まず、図1に示すように、ボビン1から、PEN等の樹脂基材上にアルミニウム等の下部反射電極が予め形成された可撓性基板2を、繰出室10ボビン1から巻取室20のボビン1まで長手方向に搬送する。この際に、N室50a、I室50b、P室50cにおいて、それぞれ、可撓性基板2上に、n型アモルファスシリコン薄膜、i型アモルファスシリコン薄膜、p型アモルファスシリコン薄膜をそれぞれプラズマCVD法によって成膜する。
【0042】
具体的には、図2において、電極54と電極56との間に供給管52からCVD原料ガスを供給すると共に、電極54と電極56との間に所定の高周波、例えば、13.56MHzの高周波電圧を印加する。そうすると、電極54と電極56との間のプラズマ形成領域PにCVD原料ガスのプラズマが発生し、可撓性基板2上にアモルファスシリコン薄膜が形成する。この成膜工程は、通常可撓性基板2を所定速度で搬送しながら連続的に行われる。
【0043】
そして、反応後のガスは、可撓性基板2の搬送方向に流れ、排出管53を介して外部に排出される。
【0044】
ところで、プラズマ形成領域Pにおいては、原料ガスのプラズマが形成されることに伴い、不可避的にパーティクルが発生する。このようなパーティクルはその粒径が例えば0.01〜数μm程度と小さく、通常、ガスの流れに乗って排出管53を通ってプラズマ形成領域Pから排出される。
【0045】
ここで、本実施形態においては、排出管53の入口にプラズマ閉込部65が設けられており、一対の磁石部60によりガスの流れ方向と交差する方向(Y方向)に、排出されるガスに対して磁場が印加される。したがって、プラズマ中の荷電粒子がこの磁力線に巻きつくためプラズマが閉じ込められ、プラズマ形成領域Pに形成するプラズマが排出管53に漏れることが抑制される。したがって、排出管53において余計なパーティクルの発生や排出管53内での成膜等が抑制され、原料ガスの無駄や長時間運転時の注入電力変動の原因や電力の無駄が低減する。
【0046】
また、各磁石部60の裏面(シールド62側)においてS極58SとN極58Nとが交互に配置されているので、外部へ漏洩する磁束を極めて小さくすることができ、意図しない場所、特に、基板2の近傍における異常放電(マイクロ放電)が抑制される。これにより、析出する膜へのピンホールの発生が抑制され、析出膜の特性が向上する。
【0047】
さらに、一方の磁石部60の表面(流路FP側)のS極58S及びN極58Nの境界部と、他方の磁石部の表面(流路FP側)のS極58S及びN極58Nの境界部との間においては、両側の磁極からの磁束によってガス流れに対して交差する方向(Y方向)の磁界が弱くなりプラズマの閉じ込めが難しいが、この部分にブロック59を有することによりプラズマの閉込をより効率よく行なえる。
【0048】
また、従来のようにスリットや網をプラズマ閉込部とした場合に比して、プラズマ閉込部65における開口幅を大きくできるので、プラズマ閉込部65の流路FP内におけるパーティクルの堆積が抑制される。したがって、プラズマ形成領域Pから外部へのパーティクルの排出が長時間安定して可能となる。したがって、可撓性基板2に形成される膜に対するパーティクルの混入を長時間にわたって安定して抑制することが可能となる。
【0049】
そして、これらの相乗効果によって、プラズマCVDによる欠陥の少ない成膜を極めて長時間にわたって連続して低コストに行うことができる。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態に限られずさまざまな変形態様が可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態では、電極54、56が鉛直方向に対向配置されているが、例えば、電極54、56が水平方向に対向配置されているものとしても実施は可能である。
【0052】
また、上記実施形態では、プラズマ閉込部65が排出管53の上流側に配置されているが、排出管53の内部に設けられていても良い。排出管53の内部でも入口側(電極側)に配置されることが、プラズマの漏れを抑制する観点から好ましい。また、排出管53の形態も特に限定されない。
【0053】
また、上記実施形態では、磁石部60からの磁束の漏れを抑制すべく磁気シールド62を設けているが、磁気シールド62の形状も特に限定されず、磁気シールド62がなくても実施は可能である。
【0054】
また、上記実施形態では、厚み方向(Y方向)に磁化された板状の磁石58を用いているが、例えば、X方向に磁化された磁石をX方向に並べても実施は可能である。
【0055】
また、上記実施形態では、可撓性基板2が電極54に沿って搬送されているが、電極56に沿って搬送されても良い。また、可撓性基板2でなく、硬い基板でもよく、また、長尺な基板で連続成膜せず、短尺な基板でバッチ式に成膜を行なっても本発明の実施は可能である。
【0056】
また、上記実施形態では、ガスを流す方向が基板の搬送方向と同一方向であるが、基板の搬送方向と逆方向であっても良い。
【0057】
また、上記実施形態では、NIP型の光電変換膜を製造しているが、例えば、PIN型、タンデム型等の他の形態の光電変換膜を上述のようにプラズマCVDにより製造してもよいことは言うまでも無い。
【0058】
また、上述のプラズマCVD装置は、太陽電池用のアモルファスシリコン薄膜の製造のみならず、TFT(薄膜トランジスタ)等の他のプラズマCVD用途にも転用可能である。
【0059】
さらに、本発明は、プラズマCVD装置に限られず、供給されたガスのプラズマを形成して基板を処理する装置であればよく、例えば、原料ガスをエッチャント原料ガス(例えば、NF3等)とすることにより、プラズマエッチングを行う装置であっても実施可能である。
【0060】
さらに、図4に示すように、プラズマ閉込部65は、流路FPにおいて磁界が比較的弱い部分の磁界強度を強化する補助磁石158を備えていてもよい。補助磁石158は、磁石58の流路FP側の表面のX方向の両端部にそれぞれ配置された、板状磁石であり、Y方向に磁化されており、流路FPを挟んで互いに対向している。補助磁石158の流路FP側の表面の極性は、それぞれ、その補助磁石158が設けられた磁石58の流路FP側の面の極性と同じとなるようにされ、磁界強度を増加させる。補助磁石158を設けることにより、磁石58の両端部付近における磁界強度の弱い部分を少なくすることができ、ブロック59のX方向の幅をより狭くすることができ、これにより、通気抵抗をより小さくすることができ、パーティクルがよりスムーズに排出される。補助磁石158の材質としては、磁石58よりも磁束密度が高くなるものが好ましい。なお、補助磁石158は、磁石58の両端部に埋め込まれていてもよい。
【0061】
続いて、上述の装置によりにより製造される太陽電池の一例について簡単に説明する。図5に示すように、可撓性基板2は、基材2f上に下部反射電極2gが成膜されたものである。基材2fの材料としては、例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)等の樹脂フィルムが挙げられる。
【0062】
下部反射電極2gの材料としては、アルミニウム、チタン、銀等の金属が挙げられる。
【0063】
下部反射電極2g上に、n型アモルファスシリコン薄膜3n、i型アモルファスシリコン薄膜3i、p型アモルファスシリコン薄膜3pがこの順に成膜されており、これら3つが光電変換層3を構成している。この光電変換層3を上述の成膜システムで成膜することができる。
【0064】
光電変換層3の上には、例えばITO等の透明な上部電極膜4が形成されている。また、光電変換層3及び下部反射電極2gは、エポキシ樹脂等の絶縁材料層6によって、積層方向と直交する方向に複数の領域に分割されている。また、これに対応して、上部電極膜4も開口7によって複数の領域に分割され、各領域は、2つの光電変換層3を跨ぐように形成されている。さらに、上部電極膜4と、下部反射電極2gとを導通する銀ペースト等から形成された導通部8が各領域に設けられ、各光電変換層3が直列に接続されている。
【0065】
例えば、絶縁材料層6はレーザによる穴あけ後に樹脂を印刷等により塗布することにより形成でき、開口7もレーザにより形成でき、導通部8は導電材料を印刷法等により塗布した後にレーザを照射することにより、ロールツーロールやバッチ式等により形成できる。これらの工程は、集積化工程とも呼ばれる。
【実施例】
【0066】
(実施例1)
長尺な可撓性基板として、PENフィルム上にDCスパッタリング法により下地電極としてのアルミニウムを300nm成膜したものを用いた。この可撓性基板の下地電極上に、上述のプラズマCVD装置を用いて、アモルファスシリコンによるNIP接合膜からなる光電変換層を約700nm成膜した。
【0067】
成膜条件は、SiH4:H2=100sccm:1000sccm、圧力133Pa、投入電力140Wとした。各層の厚みは、N/I/P=20nm/700nm/15nmとした。このとき、プラズマ閉込部65の磁石部58として、Y方向の高さ5mm、ガス流れと直交する方向(図2のX方向)の幅56mm、ガス流れ方向(図1、2のZ方向)の幅40mmの直方体形状を有し、Y方向に磁化された磁石(フェライト磁石)をX方向にS極、N極を交互に6つ並べたものを用い、この磁石部60を18mmのギャップで対向配置した。また、S極とN極との境界部間に、X方向の幅が11mm、Y方向の高さが18mm、Z方向の長さが40mmのSUS304製ブロック59をそれぞれ配置した。また、磁気シールド62として、厚さ5mmの純鉄板を用いた。
【0068】
このプラズマ閉込部65を図2のV方向から見た場合の入口部の磁場の強度分布を図6に示す。また、このプラズマ閉込部65の直上の基板2における磁場の強度分布を図2のVI方向から見た分布を図7に示す。これらの結果は、シミュレーション結果である。
【0069】
このようなプラズマCVD装置により光電変換層を連続的に成膜したのち、光電変換層上に透明上部電極としてのITO層を60nm成膜し、その後、レーザ加工による穴あけ及び導電性樹脂の印刷塗布等により、太陽電池セルを電気的に直列に接続し、最後に、絶縁性樹脂により封止をおこなった。
【0070】
連続成膜のスタート地点から一定距離ごとに太陽電池をサンプリングし、開放電圧Vocを測定した。
【0071】
(実施例2)
図4に示すように、磁石58の両端部にそれぞれ補助磁石(サマリウム・コバルト系磁石(REC32(TDK社製)、X方向の長さが12mm、厚さが2mm)158を設けたプラズマ閉込部を用いた。また、補助磁石の採用により、750G未満の磁束密度BzとなるX方向の幅が11mmから6mmとなったので、ブロック59のX方向の幅を6mmとした。これら以外は、実施例1と同様にした。
【0072】
(比較例1)
プラズマ閉込部65を図8のようにする、すなわち、一方の磁石部58及び他方の磁石部58をそれぞれ単一の磁石とした以外は、実施例と同様にした。
【0073】
このプラズマ閉込部65を図2のV方向から見た場合の入口部の磁場の強度分布を図9に示す。また、このプラズマ閉込部65の直上の基板2における磁場の強度分布を図2のVI方向から見た分布を図10に示す。これらの結果は、シミュレーション結果である。
【0074】
(比較例2)
図11に示すように、磁石ではなく、スリット58bによりプラズマを閉じ込めるプラズマ閉込部材58を用いる以外は実施例1と同様にした。ここでは、複数の水平方向に延びる板58aを、互いに上下方向(Y方向)に離間して設けることによって横方向(X方向)に延びる複数のスリット58bを形成した。板58aとして、PTFE製のものを用い、スリット幅D58を5mmとし、板58aのガスの流れ方向上流側の端部58cを結んだ直線58dの傾斜角度θを20°とし、スリットの流路の長さL58は30mmとした。
【0075】
(比較例3)
図12に示すように、垂直方向(Y方向)に配置した板58aを互いに水平方向(X方向)に離間して並べ、垂直方向(Y方向)に延びる複数のスリットを複数形成する以外は比較例2と同様にした。スリット幅(X方向となる)は比較例2と同様とした。また、各板58aのガス流れ上流側は、2枚の斜面58cにより形成されていて上流側に向かって尖っており、X−Z面断面における2枚の斜面の58cのなす角は40°である。また、水平方向(X方向)から見て板58aの先端部58dにより形成される斜面の、ガスの流れ方向とのなす傾斜角度θは20°である。
【0076】
(評価)
連続成膜のスタート地点からの距離(以下、成膜距離とする)を所定距離で無次元化して横軸とし、開放電圧Vocを所定電圧で無次元した値を縦軸としたグラフを、実施例1、比較例1,2,3について図13に示す。縦軸の開放電圧Vocは、0.95以上であることが必要とされる。なお、比較例2、比較例3については、開放電圧が低下する前のデータについては省略している。
【0077】
比較例1は、成膜距離が少し進んだ時点(成膜長〜0.1)で、実施例1に比べてすぐに開放電圧が低下した。これは、比較例1では、単一磁石同士を対向させているので、漏洩磁界が大きくなり、漏洩磁束が基板と磁気シールドとの間に存在する自由電子をローレンツ力により捕捉するために放電確率が増加し、局所的なマイクロ放電すなわち異常放電が発生する。その結果、負に帯電した基板表面のa−Si膜にピンホールがあくために、Vocが直ぐに低下するものと考えられる。
【0078】
また、比較例2では2.1程度、比較例3では2.2程度の成膜距離で開放電圧が90%程度にまで劣化したのに対して、実施例1では、3.3程度の成膜距離に到達するまで開放電圧が初期値の90%以上を維持した。開放電圧が経時的に劣化するのは、主として、アモルファスシリコン膜へのパーティクルの取り込みに起因すると考えられる。すなわち、プラズマCVDにより、電極間にはシリコンのパーティクルが発生し、大部分はガス回収装置GO側に排出されるが、一部が、プラズマ閉込部材の流路等に堆積し、堆積量が大きくなると目詰まりが起こってパーティクルが膜中に取り込まれやすくなると考えられる。そして、磁石によりプラズマを閉じ込める実施例1では、スリットによりプラズマを閉じ込める比較例2,3に比べて開口を広く取れるので、プラズマ閉込部材が目詰まりし難くなり、実施例1は比較例2,3に比べて目詰まりし難いと考えられる。
【0079】
なお、実施例2についても、成膜距離3.5を超えるまで、開放電圧が0.95以上であることを確認した。
【符号の説明】
【0080】
2…可撓性基板(基板)、50a…N室(プラズマ処理装置)、50b…I室(プラズマ処理装置)、50c…P室(プラズマ処理装置)、53…排出管、54…電極、56…電極、58…磁石、58S…S極、58N…N極、59…ブロック、60…磁石部、62…磁気シールド、65…プラズマ閉込部。
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高周波電圧が印加される一対の電極間にプラズマ化されるべきガスが供給され、このプラズマによって一方の電極の表面に沿って配置された基板を処理するプラズマ処理装置が知られている。このようなプラズマ処理装置においては、ガスとしてCVD原料ガスを用いることによって基板上に反応生成物を析出させたり、ガスとしてエッチャント原料ガスを用いることにより基板上の材料をエッチングしたりすることができる。
【0003】
そして、このようなプラズマ処理装置では、電極間から処理後のガスを外部に排出する必要があるが、この際にプラズマを排出させずに電極間に閉じ込める必要がある。これを実現するプラズマ閉込部として、特許文献1、2のように、ガスの排出流路に静電スリットを配置することや、特許文献3のようにパンチングメタルや金属メッシュを用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−184662号公報
【特許文献2】特開2002−064064号公報
【特許文献3】特開2001−335948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のプラズマ閉込部では、スリット間隔や穴の間隔をかなり小さくしなければならないことが多く、プラズマ処理に伴って生成する粉体によりプラズマ閉込部が目詰まりしてこの粉体がうまく排出されず、この粉体がプラズマ処理された基板の特性を悪化させる場合がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、基板に対する悪影響を抑制でき、かつ、十分にプラズマを閉じ込めることができるプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるプラズマ処理装置は、高周波電圧が印加される一対の電極間にプラズマ化されるガスが供給されると共に、一方の前記電極の表面に沿って基板が配置されるプラズマ処理装置であって、電極間から排出されるガスの流路にプラズマ閉込部を備える。そして、プラズマ閉込部は、表面にS極及びN極がガスの流れと交差する方向に一列に交互に配置された磁石部を一対有する。ここで、一対の磁石部はS極とN極とが互いに対向し、かつ、一対の磁石部間にガスが流れるように対向配置されている。また、プラズマ閉込部は、さらに、一方の磁石部のS極及びN極の境界部と、他方の磁石部のS極及びN極の境界部との間に、ガスの流通を妨げるブロックを有している。
【0008】
本発明によれば、排出されるガスが、互いに対向する一対の磁石部のS極及びN極間を通ることにより、このガスに対してガスの流れに交差する方向の磁界が印加され、排出されるガス中のプラズマが閉じ込められる。また、各磁石部においてS極とN極とが交互に配置されているので、外部へ漏洩する磁束を小さくすることができ、意図しない場所での異常放電(マイクロ放電)が抑制される。さらに、一方の磁石部のS極及びN極の境界部と、他方の磁石部のS極及びN極の境界部との間においては、両方の磁極からの磁束によってガス流れに対して交差する方向の磁界が弱くなりプラズマの閉じ込めが難しいが、この部分にブロックを有することによりプラズマの閉込をより効率よく行なえる。さらに、従来のようにスリットや網をプラズマ閉込部とした場合に比して、プラズマ閉込部における開口幅を大きくできるので、プラズマ閉込部の流路内におけるパーティクルの堆積が抑制される。したがって、外部へのパーティクルの排出が長時間安定して可能となり、膜に対するパーティクルの混入を長時間にわたって安定して抑制することが可能となる。
【0009】
ここで、基板は長尺な可撓性基板であって、一方の電極の表面に沿って前記可撓性基板の長手方向に供給され、可撓性基板と磁石部との間に磁気シールドをさらに備えることが好ましい。
【0010】
これにより、基板に印加される磁界を低減でき、異常放電により基板等に形成されるピンホールをより低減できる。
【0011】
また、ガスはCVDの原料ガスであり、基板上に反応生成物が析出されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基板に対する悪影響を抑制でき、かつ、十分にプラズマを閉じ込めることができるプラズマ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明にかかる成膜システムの全体構成を示す模式図である。
【図2】図2は、図1のN室、I室、P室の概略断面図(実施例1に対応)である。
【図3】図3は、図2のIII−III矢視図である。
【図4】図4は、図3の変形例(実施例2に対応)である。
【図5】図5は、太陽電池の一実施例を示す概略断面図である。
【図6】図6は、実施例1のプラズマ閉込部について、図2のIII−III線における磁束密度の分布である。
【図7】図7は、実施例1のプラズマ閉込部について、図2のVから見た基板2の直上における磁束密度の分布である。
【図8】図8は、比較例1のプラズマ閉込部について、図2のIII−III矢視図である。
【図9】図9は、比較例1のプラズマ閉込部について、図2のIII−III線における磁束密度の分布である。
【図10】図10は、比較例のプラズマ閉込部について、図2のVから見た基板2の直上における磁束密度の分布である。
【図11】図11は、比較例2のN室、I室、P室の概略断面図である。
【図12】図12は、比較例3のN室、I室、P室の概略断面図である。
【図13】図13は、実施例1及び比較例1〜3について、各成膜距離でサンプリングした太陽電池の開放電圧を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、プラズマCVD装置(プラズマ処理装置)としてのN室50a、I室50b、P室50cを含む成膜システム100の概略構成図である。本実施形態における成膜システム100は、いわゆるアモルファスシリコン型薄膜太陽電池の製造において、可撓性基板2上にアモルファスシリコン膜をいわゆるロールツーロール方式により形成するために用いられるものである。
【0016】
この成膜システム100は、繰出室10、前処理室12、N室50a、I室50b、P室50c、後処理室13、及び、巻取室20を主として備えている。
【0017】
繰出室10では、ボビン1にロール状にあらかじめ巻き取られていた可撓性基板2を繰出す。繰出室10から繰出された可撓性基板2は、前処理室12、N室50a、I室50b、P室50c、後処理室13内を通過した後に巻取室20に供給され、巻取室20内のボビン1にロール状に巻き取られる。
【0018】
前処理室12には、電極14、及び高周波電源18に接続された電極16が配置されており、可撓性基板の放電洗浄処理を行う。
【0019】
N室50a、I室50b、P室50cは、それぞれ、n型アモルファスシリコン薄膜、i型アモルファスシリコン薄膜、p型アモルファスシリコン薄膜を可撓性基板2上に成膜するプラズマCVD装置(プラズマ処理装置)であり、それぞれ、接地された電極54、及び、高周波電源19が接続された電極56が配置されている。可撓性基板2は、それぞれ、電極54と電極56との間を可撓性基板2の長手方向に通り抜けるようにされており、特に、可撓性基板2が、一方の電極54の表面に沿って移動するようにされている。
【0020】
前処理室12とN室50aとの間、N室50aとI室50bとの間、I室50bとP室50cとの間、P室50cと後処理室13との間には、バッファ室30がそれぞれ配置されている。バッファ室30は、各室間でのガスの混合を抑制するための部屋であり、不活性ガス源INから不活性ガスが微量供給され、各部屋からのガスが流入しないようにされている。なお、バッファ室30に不活性ガスを供給せず、バッファ室30内のガスを高真空排気することによって各室間でのガスの混合を抑制することも可能である。また、繰出室10から巻取室20までの空間は、ポンプ15により減圧状態に維持されている。
【0021】
N室50aにはCVD反応用の原料ガスとして、例えば、SiH4及びドーパントとなる例えばホスフィン(PH3)を含むガスが、I室50bにはSiH4を含むガスが、P室50cにはSiH4及びドーパントとなるジボラン(B2H6)を含むガスが、各ガス源GIから供給される。また、N室50a、I室50b、P室50cにおける反応後のガスは、ガス回収装置GOにより各室から系外に排出される。
【0022】
後処理室13には、電極14、及び高周波電源18に接続された電極16が配置されており、成膜面の放電処理を行う。
【0023】
続いて、プラズマCVD装置であるN室50a、I室50b、P室50cの詳細について、図2及び図3を参照して詳細に説明する。ここでは、N室50aを例に挙げて説明するが、I室50b、P室50cもN室50a同様である。
【0024】
N室50aは、減圧容器51内に、アノード側として機能する接地された電極54と、カソード側として機能し高周波電源19と接続された電極56、原料ガスを供給する供給管52、及び、反応後のガスを排出する排出管53を主として備える。
【0025】
電極54及び電極56は、それぞれ平板状をなし、互いに対向するように水平に配置されている。前述のように、可撓性基板2は一方の電極である電極54に沿って、その長手方向に搬送される。すなわち、可撓性基板2は、電極54及び電極56間において、電極54に近い位置を通過することとなる。
【0026】
電極54と可撓性基板2との距離は特に限定されないが、例えば、1mm〜5mm程度とすることができる。
【0027】
供給管52は、可撓性基板2の搬送方向(図2の左から右方向)の上流側に配置され、ガス源GIからのガスを、電極54及び電極56間に、かつ、可撓性基板2の搬送方向に流す。
【0028】
供給管52のガス排出口には、ガス分散板57が設けられている。ガス分散板57は、原料ガスを供給管52から電極間のプラズマ形成領域Pまで水平方向に分散させるスリット57bを複数有する。スリット57bの幅は特に限定されないが、プラズマ形成領域Pからプラズマが供給管52内に漏れ出さないようにすべく、スリット57bのガス出口57d近傍に存在するプラズマのデバイ長さλD以下とすることが好ましい。また、ガス分散板57は、多数の孔を形成したものでもよい。
【0029】
また、排出管53は、図2に示すように、可撓性基板2の搬送方向に配置され、電極54及び電極56間のガスを外部、すなわち減圧容器51の外へ排出する。排出管53の下流側には、パーティクルを回収するパーティクル回収装置GOが接続されている。
【0030】
この排出管53は、後述するプラズマ閉込部65を通過したガスを捕集してしばらく水平方向にガスを導いた後、下方に向かってガスを導くように形成されている。
【0031】
プラズマ閉込部65は、図2及び図3に示すように、一対の磁石部60、ブロック59、及び、磁気シールド62を主として備えている。
【0032】
図3に示すように、磁石部60は、それぞれ複数の磁石58を有している。各磁石部60において、複数の磁石58は、磁石部60の表面に各磁石58のS極58S及びN極58Nがガスの流れ方向(Z方向)と交差する方向(ここでは、さらに基板2と水平な方向)に一列に交互に並ぶように配置されている。そして、この一対の磁石部60は、S極58SとN極58Nとが互いに対向し、かつ、一対の磁石部60間にガスが流れる流路FPが形成されるように対向配置されている。
【0033】
磁石58は特に限定されないが、例えば、フェライト磁石、サマリウム・コバルト(SmCo)系磁石、ネオジム(Nd)系磁石等を使用できる。ここで、磁石部60間に形成される磁束密度は、完全磁化プラズマ条件、すなわち、電子が磁力線の周りを一周する間に中性ガスと衝突しない条件となるほどの強さBzである必要はない。磁束密度は、完全磁化プラズマ条件となる磁束密度Bzの1/10以上であることが好ましい。例えば、圧力が133Paでは、完全磁化プラズマ条件となる磁束密度Bzは約10kGである。
【0034】
また、各磁石58の形態は特に限定されないが、図3に示すように、厚み方向(Y方向)に磁化された板状の磁石を用いることが好ましい。
【0035】
磁石58のサイズは特に限定されない。図2における磁石58のガス流れ方向(Z方向)の長さは、プラズマを十分に閉じ込めることができる長さに調節すればよく、例えば、圧力100−200Paでは40mmとすればよい。磁石58のX方向(フィルム巾方向)の長さは、及び、磁石部60間の間隔(Y方向)は、プラズマ形成によって生成するパーティクルの堆積による流路FPの閉塞を長時間防ぐことを意図して設定すればよく、この長さを、例えば、8mm以上、好ましくは20mmとすることができる。
【0036】
図3に戻って、ブロック59は、一方の磁石部60のS極58S及びN極58Nの境界部と、他方の磁石部60のS極58S及びN極58Nの境界部との間に設けられており、この境界部間におけるガスの流通を妨げる。ブロック59の材質は非磁性材料であれば特に限定されず、十分な剛性を有していればよい。具体的には、非磁性のステンレス鋼が挙げられる。
【0037】
ブロック59のサイズは特に限定されないが、完全磁化プラズマ条件となる磁束密度Bzの1/10未満となる部分を覆うこと、例えば、圧力が133Paであれば磁束密度が750G未満となる部分を覆うようにすることが好ましい。例えば、圧力100−200Paでは、ブロック59のX方向(フィルム巾方向)の長さは、例えば、13mmとすることができる。また、ブロック59のY方向の高さは磁石部60間の間隔と同じとすることが好ましい。また、図2におけるブロック59のガス流れ方向(Z方向)の長さは、磁石58の長さ以上とすることが好ましい。
【0038】
磁気シールド62は、磁石部60及びブロック59を、Z軸方向の周りに取り囲むように設けられており、磁石部60から外への磁束の漏れ、特に、磁石部から基板2の方向への磁束の漏れを抑制するものである。磁気シールドの材質は、軟磁性材料であればよく、例えば、純鉄が挙げられる。磁気シールド62の厚みは特に限定されないが、基板上での漏洩磁束が40G以下、より好ましくは30G以下となる厚みとすることが好ましい。
【0039】
ガス分散板57の材料は特に限定されない。例えば、アルミナ等のセラミック材料、石英、ガラス材料、フッ素樹脂等の樹脂材料が挙げられる。フッ素樹脂としては、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、ポリ三フッ化クロルエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、フッ化エチレンプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等が挙げられる。
【0040】
続いて、このようなプラズマCVD装置を含む成膜システム100における作用について説明する。
【0041】
まず、図1に示すように、ボビン1から、PEN等の樹脂基材上にアルミニウム等の下部反射電極が予め形成された可撓性基板2を、繰出室10ボビン1から巻取室20のボビン1まで長手方向に搬送する。この際に、N室50a、I室50b、P室50cにおいて、それぞれ、可撓性基板2上に、n型アモルファスシリコン薄膜、i型アモルファスシリコン薄膜、p型アモルファスシリコン薄膜をそれぞれプラズマCVD法によって成膜する。
【0042】
具体的には、図2において、電極54と電極56との間に供給管52からCVD原料ガスを供給すると共に、電極54と電極56との間に所定の高周波、例えば、13.56MHzの高周波電圧を印加する。そうすると、電極54と電極56との間のプラズマ形成領域PにCVD原料ガスのプラズマが発生し、可撓性基板2上にアモルファスシリコン薄膜が形成する。この成膜工程は、通常可撓性基板2を所定速度で搬送しながら連続的に行われる。
【0043】
そして、反応後のガスは、可撓性基板2の搬送方向に流れ、排出管53を介して外部に排出される。
【0044】
ところで、プラズマ形成領域Pにおいては、原料ガスのプラズマが形成されることに伴い、不可避的にパーティクルが発生する。このようなパーティクルはその粒径が例えば0.01〜数μm程度と小さく、通常、ガスの流れに乗って排出管53を通ってプラズマ形成領域Pから排出される。
【0045】
ここで、本実施形態においては、排出管53の入口にプラズマ閉込部65が設けられており、一対の磁石部60によりガスの流れ方向と交差する方向(Y方向)に、排出されるガスに対して磁場が印加される。したがって、プラズマ中の荷電粒子がこの磁力線に巻きつくためプラズマが閉じ込められ、プラズマ形成領域Pに形成するプラズマが排出管53に漏れることが抑制される。したがって、排出管53において余計なパーティクルの発生や排出管53内での成膜等が抑制され、原料ガスの無駄や長時間運転時の注入電力変動の原因や電力の無駄が低減する。
【0046】
また、各磁石部60の裏面(シールド62側)においてS極58SとN極58Nとが交互に配置されているので、外部へ漏洩する磁束を極めて小さくすることができ、意図しない場所、特に、基板2の近傍における異常放電(マイクロ放電)が抑制される。これにより、析出する膜へのピンホールの発生が抑制され、析出膜の特性が向上する。
【0047】
さらに、一方の磁石部60の表面(流路FP側)のS極58S及びN極58Nの境界部と、他方の磁石部の表面(流路FP側)のS極58S及びN極58Nの境界部との間においては、両側の磁極からの磁束によってガス流れに対して交差する方向(Y方向)の磁界が弱くなりプラズマの閉じ込めが難しいが、この部分にブロック59を有することによりプラズマの閉込をより効率よく行なえる。
【0048】
また、従来のようにスリットや網をプラズマ閉込部とした場合に比して、プラズマ閉込部65における開口幅を大きくできるので、プラズマ閉込部65の流路FP内におけるパーティクルの堆積が抑制される。したがって、プラズマ形成領域Pから外部へのパーティクルの排出が長時間安定して可能となる。したがって、可撓性基板2に形成される膜に対するパーティクルの混入を長時間にわたって安定して抑制することが可能となる。
【0049】
そして、これらの相乗効果によって、プラズマCVDによる欠陥の少ない成膜を極めて長時間にわたって連続して低コストに行うことができる。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態に限られずさまざまな変形態様が可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態では、電極54、56が鉛直方向に対向配置されているが、例えば、電極54、56が水平方向に対向配置されているものとしても実施は可能である。
【0052】
また、上記実施形態では、プラズマ閉込部65が排出管53の上流側に配置されているが、排出管53の内部に設けられていても良い。排出管53の内部でも入口側(電極側)に配置されることが、プラズマの漏れを抑制する観点から好ましい。また、排出管53の形態も特に限定されない。
【0053】
また、上記実施形態では、磁石部60からの磁束の漏れを抑制すべく磁気シールド62を設けているが、磁気シールド62の形状も特に限定されず、磁気シールド62がなくても実施は可能である。
【0054】
また、上記実施形態では、厚み方向(Y方向)に磁化された板状の磁石58を用いているが、例えば、X方向に磁化された磁石をX方向に並べても実施は可能である。
【0055】
また、上記実施形態では、可撓性基板2が電極54に沿って搬送されているが、電極56に沿って搬送されても良い。また、可撓性基板2でなく、硬い基板でもよく、また、長尺な基板で連続成膜せず、短尺な基板でバッチ式に成膜を行なっても本発明の実施は可能である。
【0056】
また、上記実施形態では、ガスを流す方向が基板の搬送方向と同一方向であるが、基板の搬送方向と逆方向であっても良い。
【0057】
また、上記実施形態では、NIP型の光電変換膜を製造しているが、例えば、PIN型、タンデム型等の他の形態の光電変換膜を上述のようにプラズマCVDにより製造してもよいことは言うまでも無い。
【0058】
また、上述のプラズマCVD装置は、太陽電池用のアモルファスシリコン薄膜の製造のみならず、TFT(薄膜トランジスタ)等の他のプラズマCVD用途にも転用可能である。
【0059】
さらに、本発明は、プラズマCVD装置に限られず、供給されたガスのプラズマを形成して基板を処理する装置であればよく、例えば、原料ガスをエッチャント原料ガス(例えば、NF3等)とすることにより、プラズマエッチングを行う装置であっても実施可能である。
【0060】
さらに、図4に示すように、プラズマ閉込部65は、流路FPにおいて磁界が比較的弱い部分の磁界強度を強化する補助磁石158を備えていてもよい。補助磁石158は、磁石58の流路FP側の表面のX方向の両端部にそれぞれ配置された、板状磁石であり、Y方向に磁化されており、流路FPを挟んで互いに対向している。補助磁石158の流路FP側の表面の極性は、それぞれ、その補助磁石158が設けられた磁石58の流路FP側の面の極性と同じとなるようにされ、磁界強度を増加させる。補助磁石158を設けることにより、磁石58の両端部付近における磁界強度の弱い部分を少なくすることができ、ブロック59のX方向の幅をより狭くすることができ、これにより、通気抵抗をより小さくすることができ、パーティクルがよりスムーズに排出される。補助磁石158の材質としては、磁石58よりも磁束密度が高くなるものが好ましい。なお、補助磁石158は、磁石58の両端部に埋め込まれていてもよい。
【0061】
続いて、上述の装置によりにより製造される太陽電池の一例について簡単に説明する。図5に示すように、可撓性基板2は、基材2f上に下部反射電極2gが成膜されたものである。基材2fの材料としては、例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)等の樹脂フィルムが挙げられる。
【0062】
下部反射電極2gの材料としては、アルミニウム、チタン、銀等の金属が挙げられる。
【0063】
下部反射電極2g上に、n型アモルファスシリコン薄膜3n、i型アモルファスシリコン薄膜3i、p型アモルファスシリコン薄膜3pがこの順に成膜されており、これら3つが光電変換層3を構成している。この光電変換層3を上述の成膜システムで成膜することができる。
【0064】
光電変換層3の上には、例えばITO等の透明な上部電極膜4が形成されている。また、光電変換層3及び下部反射電極2gは、エポキシ樹脂等の絶縁材料層6によって、積層方向と直交する方向に複数の領域に分割されている。また、これに対応して、上部電極膜4も開口7によって複数の領域に分割され、各領域は、2つの光電変換層3を跨ぐように形成されている。さらに、上部電極膜4と、下部反射電極2gとを導通する銀ペースト等から形成された導通部8が各領域に設けられ、各光電変換層3が直列に接続されている。
【0065】
例えば、絶縁材料層6はレーザによる穴あけ後に樹脂を印刷等により塗布することにより形成でき、開口7もレーザにより形成でき、導通部8は導電材料を印刷法等により塗布した後にレーザを照射することにより、ロールツーロールやバッチ式等により形成できる。これらの工程は、集積化工程とも呼ばれる。
【実施例】
【0066】
(実施例1)
長尺な可撓性基板として、PENフィルム上にDCスパッタリング法により下地電極としてのアルミニウムを300nm成膜したものを用いた。この可撓性基板の下地電極上に、上述のプラズマCVD装置を用いて、アモルファスシリコンによるNIP接合膜からなる光電変換層を約700nm成膜した。
【0067】
成膜条件は、SiH4:H2=100sccm:1000sccm、圧力133Pa、投入電力140Wとした。各層の厚みは、N/I/P=20nm/700nm/15nmとした。このとき、プラズマ閉込部65の磁石部58として、Y方向の高さ5mm、ガス流れと直交する方向(図2のX方向)の幅56mm、ガス流れ方向(図1、2のZ方向)の幅40mmの直方体形状を有し、Y方向に磁化された磁石(フェライト磁石)をX方向にS極、N極を交互に6つ並べたものを用い、この磁石部60を18mmのギャップで対向配置した。また、S極とN極との境界部間に、X方向の幅が11mm、Y方向の高さが18mm、Z方向の長さが40mmのSUS304製ブロック59をそれぞれ配置した。また、磁気シールド62として、厚さ5mmの純鉄板を用いた。
【0068】
このプラズマ閉込部65を図2のV方向から見た場合の入口部の磁場の強度分布を図6に示す。また、このプラズマ閉込部65の直上の基板2における磁場の強度分布を図2のVI方向から見た分布を図7に示す。これらの結果は、シミュレーション結果である。
【0069】
このようなプラズマCVD装置により光電変換層を連続的に成膜したのち、光電変換層上に透明上部電極としてのITO層を60nm成膜し、その後、レーザ加工による穴あけ及び導電性樹脂の印刷塗布等により、太陽電池セルを電気的に直列に接続し、最後に、絶縁性樹脂により封止をおこなった。
【0070】
連続成膜のスタート地点から一定距離ごとに太陽電池をサンプリングし、開放電圧Vocを測定した。
【0071】
(実施例2)
図4に示すように、磁石58の両端部にそれぞれ補助磁石(サマリウム・コバルト系磁石(REC32(TDK社製)、X方向の長さが12mm、厚さが2mm)158を設けたプラズマ閉込部を用いた。また、補助磁石の採用により、750G未満の磁束密度BzとなるX方向の幅が11mmから6mmとなったので、ブロック59のX方向の幅を6mmとした。これら以外は、実施例1と同様にした。
【0072】
(比較例1)
プラズマ閉込部65を図8のようにする、すなわち、一方の磁石部58及び他方の磁石部58をそれぞれ単一の磁石とした以外は、実施例と同様にした。
【0073】
このプラズマ閉込部65を図2のV方向から見た場合の入口部の磁場の強度分布を図9に示す。また、このプラズマ閉込部65の直上の基板2における磁場の強度分布を図2のVI方向から見た分布を図10に示す。これらの結果は、シミュレーション結果である。
【0074】
(比較例2)
図11に示すように、磁石ではなく、スリット58bによりプラズマを閉じ込めるプラズマ閉込部材58を用いる以外は実施例1と同様にした。ここでは、複数の水平方向に延びる板58aを、互いに上下方向(Y方向)に離間して設けることによって横方向(X方向)に延びる複数のスリット58bを形成した。板58aとして、PTFE製のものを用い、スリット幅D58を5mmとし、板58aのガスの流れ方向上流側の端部58cを結んだ直線58dの傾斜角度θを20°とし、スリットの流路の長さL58は30mmとした。
【0075】
(比較例3)
図12に示すように、垂直方向(Y方向)に配置した板58aを互いに水平方向(X方向)に離間して並べ、垂直方向(Y方向)に延びる複数のスリットを複数形成する以外は比較例2と同様にした。スリット幅(X方向となる)は比較例2と同様とした。また、各板58aのガス流れ上流側は、2枚の斜面58cにより形成されていて上流側に向かって尖っており、X−Z面断面における2枚の斜面の58cのなす角は40°である。また、水平方向(X方向)から見て板58aの先端部58dにより形成される斜面の、ガスの流れ方向とのなす傾斜角度θは20°である。
【0076】
(評価)
連続成膜のスタート地点からの距離(以下、成膜距離とする)を所定距離で無次元化して横軸とし、開放電圧Vocを所定電圧で無次元した値を縦軸としたグラフを、実施例1、比較例1,2,3について図13に示す。縦軸の開放電圧Vocは、0.95以上であることが必要とされる。なお、比較例2、比較例3については、開放電圧が低下する前のデータについては省略している。
【0077】
比較例1は、成膜距離が少し進んだ時点(成膜長〜0.1)で、実施例1に比べてすぐに開放電圧が低下した。これは、比較例1では、単一磁石同士を対向させているので、漏洩磁界が大きくなり、漏洩磁束が基板と磁気シールドとの間に存在する自由電子をローレンツ力により捕捉するために放電確率が増加し、局所的なマイクロ放電すなわち異常放電が発生する。その結果、負に帯電した基板表面のa−Si膜にピンホールがあくために、Vocが直ぐに低下するものと考えられる。
【0078】
また、比較例2では2.1程度、比較例3では2.2程度の成膜距離で開放電圧が90%程度にまで劣化したのに対して、実施例1では、3.3程度の成膜距離に到達するまで開放電圧が初期値の90%以上を維持した。開放電圧が経時的に劣化するのは、主として、アモルファスシリコン膜へのパーティクルの取り込みに起因すると考えられる。すなわち、プラズマCVDにより、電極間にはシリコンのパーティクルが発生し、大部分はガス回収装置GO側に排出されるが、一部が、プラズマ閉込部材の流路等に堆積し、堆積量が大きくなると目詰まりが起こってパーティクルが膜中に取り込まれやすくなると考えられる。そして、磁石によりプラズマを閉じ込める実施例1では、スリットによりプラズマを閉じ込める比較例2,3に比べて開口を広く取れるので、プラズマ閉込部材が目詰まりし難くなり、実施例1は比較例2,3に比べて目詰まりし難いと考えられる。
【0079】
なお、実施例2についても、成膜距離3.5を超えるまで、開放電圧が0.95以上であることを確認した。
【符号の説明】
【0080】
2…可撓性基板(基板)、50a…N室(プラズマ処理装置)、50b…I室(プラズマ処理装置)、50c…P室(プラズマ処理装置)、53…排出管、54…電極、56…電極、58…磁石、58S…S極、58N…N極、59…ブロック、60…磁石部、62…磁気シールド、65…プラズマ閉込部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電圧が印加される一対の電極間にプラズマ化されるガスが供給されると共に、一方の前記電極の表面に沿って基板が配置されるプラズマ処理装置であって、
前記電極間から排出されるガスの流路にプラズマ閉込部を備え、
前記プラズマ閉込部は、表面にS極及びN極が前記ガスの流れと交差する方向に一列に交互に配置された磁石部を一対有し、前記一対の磁石部は前記S極と前記N極とが互いに対向し、かつ、前記一対の磁石部間に前記ガスが流れるように対向配置され、
前記プラズマ閉込部は、さらに、一方の前記磁石部の前記S極及び前記N極の境界部と、他方の前記磁石部の前記S極及び前記N極の境界部との間に、ガスの流通を妨げるブロックを有する、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記基板は長尺な可撓性基板であって、一方の前記電極の表面に沿って前記可撓性基板の長手方向に供給され、前記可撓性基板と前記磁石部との間に磁気シールドをさらに備えた請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記ガスはCVDの原料ガスであり、前記基板上に反応生成物が析出される請求項1又は2記載のプラズマ処理装置。
【請求項1】
高周波電圧が印加される一対の電極間にプラズマ化されるガスが供給されると共に、一方の前記電極の表面に沿って基板が配置されるプラズマ処理装置であって、
前記電極間から排出されるガスの流路にプラズマ閉込部を備え、
前記プラズマ閉込部は、表面にS極及びN極が前記ガスの流れと交差する方向に一列に交互に配置された磁石部を一対有し、前記一対の磁石部は前記S極と前記N極とが互いに対向し、かつ、前記一対の磁石部間に前記ガスが流れるように対向配置され、
前記プラズマ閉込部は、さらに、一方の前記磁石部の前記S極及び前記N極の境界部と、他方の前記磁石部の前記S極及び前記N極の境界部との間に、ガスの流通を妨げるブロックを有する、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記基板は長尺な可撓性基板であって、一方の前記電極の表面に沿って前記可撓性基板の長手方向に供給され、前記可撓性基板と前記磁石部との間に磁気シールドをさらに備えた請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記ガスはCVDの原料ガスであり、前記基板上に反応生成物が析出される請求項1又は2記載のプラズマ処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−199309(P2010−199309A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42727(P2009−42727)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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