説明

位置計測装置およびそれを用いた露光装置

【課題】 エンコーダシステムを用いた位置計測装置において、計測誤差による影響を低減させることを目的とする。
【解決手段】 対象物を搭載して移動可能な移動体と、前記移動体の位置を計測可能なエンコーダ型の第1の計測手段と、前記第1の計測手段による計測と同時に、前記移動体の位置を計測可能、あるいは前記対象物または前記移動体に形成されたマークの位置を検出可能な第2の計測手段と、前記第1および第2の計測手段の計測結果にもとづいて、前記第1の計測手段の計測誤差を算出し、該計測誤差にもとづいて前記第1の計測手段を補正する補正手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位置計測装置およびそれを用いた露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
露光装置において、ウエハまたはレチクルを搭載して移動するステージの位置を計測するために干渉計システムが一般に使用されている。また近年では、干渉計システムの代わりにエンコーダシステムを用いてステージの位置を計測する技術も注目されている。
【0003】
特許文献1には、ステージ上にセンサを配置し、ステージとは別のフレーム上に回折格子を含むターゲットプレートを配置したエンコーダシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−004737
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなエンコーダシステムにおいて、例えば、回折格子の欠陥や回折ピッチ誤差、ターゲットプレートの変形によって計測誤差が生じてしまう。これらの欠陥等は、製造過程で生じる場合もあれば、装置の使用過程で生じる場合もある。
【0006】
本願発明は、エンコーダシステムを用いた位置計測装置において、計測誤差による影響を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本願発明の位置計測装置は、対象物を搭載して移動可能な移動体と、前記移動体の位置を計測可能なエンコーダ型の第1の計測手段と、前記第1の計測手段による計測と同時に、前記移動体の位置を計測可能、あるいは前記対象物または前記移動体に形成されたマークの位置を検出可能な第2の計測手段と、前記第1および第2の計測手段の計測結果にもとづいて、前記第1の計測手段の計測誤差を算出し、該計測誤差にもとづいて前記第1の計測手段を補正する補正手段と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本実施例によれば、エンコーダシステムを用いた位置計測装置において、計測誤差による影響を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1のエンコーダシステムが適用される露光装置を部分的に示す図
【図2】エンコーダシステムの格子プレートを示す図
【図3】実施例1のエンコーダシステムの計測誤差の補正を示すフロー図
【図4】実施例2のエンコーダシステムが適用される露光装置を部分的に示す図
【図5】実施例2のエンコーダシステムの計測誤差の補正を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施例1)
図1は、本発明のエンコーダシステムが適用される露光装置を部分的に示す図である。光軸に平行な方向をZ方向とし、Z方向に直交し、互いに直交する2方向をX方向およびY方向とする。不図示のレチクル(原版)のパターン像は、投影光学系1を介して、ウエハ2(基板)上に結像される。ウエハ2を搭載して移動可能なウエハステージ(移動体)3の位置は、エンコーダシステム10(第1の計測手段)により計測可能である。エンコーダシステム10の計測結果にもとづいて、ウエハステージ3の位置を制御することによって、ウエハ上の所望の位置にパターンを形成することができる。ウエハステージ3を駆動する駆動装置として、例えば、リニアモータが用いられる。
【0011】
エンコーダシステム10は、ウエハステージ3に設けられたセンサ11と、ウエハステージ3とは別の部材6に支持された格子を含むプレート12とを備える。本実施例において、部材6は投影光学系1を支持する支持体である。プレート12は好適には低熱膨張材料からなり、その表面には2次元に回折格子が形成されている。センサからの光を回折格子が形成されたプレートに照射して、その回折光を利用して移動体の位置を計測する技術は、エンコーダ型の計測手段として知られている。本実施例では、この技術を用いて、ウエハステージのX方向、Y方向およびZ方向の位置を計測可能である。エンコーダシステム10の構成は、図1の形態に限るものではなく、例えば、プレート12をウエハステージ3に搭載して、センサ11を別の部材に支持してもよい。センサを複数設けることによってXYZの各方向に平行な軸回りの回転方向の位置も計測可能である。
【0012】
図2は、プレート12を下側(センサ側)から見た図である。図中、2本の2点鎖線が交差する位置が格子の理想位置であり、実際の各格子(黒い四角で示す)の位置はこの理想位置からずれている。このようなずれ(格子ピッチ誤差)は、例えば、製造誤差によって生じ、エンコーダシステム10の計測誤差を引き起こす。また、プレート12は重力により変形しやすく、この変形もエンコーダシステム10の計測誤差を引き起こす。そこで本発明では、エンコーダシステム10による計測と同時に、ウエハステージ3の位置を計測可能、あるいはウエハ2またはウエハステージ3に形成されたマークの位置を検出可能な計測手段を備える。さらに、エンコーダシステム10および該計測手段の計測結果にもとづいて、エンコーダシステム10の計測誤差を算出し、算出された計測誤差にもとづいてエンコーダシステム10を補正する補正手段を備える。本実施例において、制御部30が補正手段を含む。
【0013】
本実施例では、計測手段として、エンコーダ型とは異なる型の計測手段と、ウエハ2またはウエハステージ3上に形成されたマークの位置を検出可能な計測手段の両方を用いた構成を説明する。好適には、前者の計測手段(第2の計測手段)は、干渉計システム20であり、後者の計測手段(第3の計測手段)はアライメント検出系4である。
【0014】
干渉計システム20は、干渉計21と、ウエハステージ3に設けられた反射部材22とを備える。干渉計システム20は、ウエハステージ3の位置を計測可能である。不図示の光源からの光が計測光と参照光に分けられ、反射部材22により反射された計測光と所定距離を導光させた参照光との干渉光にもとづいて、ウエハステージ3の変位を計測する。図1においてX方向の計測のみ示しているが、不図示の干渉計および反射部材によりY方向およびZ方向も同様に計測できる。
【0015】
アライメント検出系4は、ウエハステージ3上に形成された基準マーク6と、ウエハ4上に形成された複数のマークの位置を検出可能であり、アライメントシーケンスにおいて、各マーク間の相対位置関係を計測するために用いられる。アライメント検出系4は、X方向、Y方向およびZ方向におけるマークの位置を検出可能である。
【0016】
以下、エンコーダシステム10を補正する方法について、図3のフロー図を用いて説明する。
【0017】
エンコーダシステム10の補正の開始はユーザによって設定されたタイミングで行うことができる。例えば、露光装置の起動時に補正を開始してもよく、装置稼働中に定期的に補正を開始してもよい。
【0018】
まず、ウエハステージ3のチャック(保持部)上に基準ウエハを搭載する(S10)。基準ウエハは、露光装置によって露光されるウエハとは異なるウエハであり、複数のマークが予め形成されている。また複数のマークの相対位置関係、基準ウエハの面形状は予め記憶部に記憶されている。
【0019】
つぎに、複数のマークをアライメント検出系4で検出するととも各システムでウエハステージ3の位置を計測する(S20)。干渉計システム20による計測とエンコーダシステム10により計測を同時に行ってもよく、異なるタイミングで行ってもよい。
【0020】
ここで、干渉計システム20の計測結果には、反射部材の平面度や、各部材の取付誤差などに起因する計測誤差が含まれる。そこで、この計測誤差を補正するために以下の処理(S30、S40、S50)を行う。
【0021】
S20の計測後に、基準ウエハを180度回転させる(S30)。基準ウエハは、例えば、不図示のハンドを用いて回転させることができる。そして、複数のマークをアライメント検出系4で検出するととも干渉計システム20でウエハステージ3の位置を計測する(S40)。つづいて、既知の複数のマークの相対位置関係と、S20とS30における干渉計システム20の計測結果から、計測誤差を算出し、S20における干渉計システム20を補正する(S50)。ここで、本実施例では基準ウエハを180度回転させて合計2回の計測を行ったが、基準ウエハを90度および270度回転させて合計4回の計測を行ってもよい。なお、干渉計システム20の計測誤差が予め取得されている場合には、S30〜S50を省略してもよい。
【0022】
つぎに、S20においてエンコーダシステム10とアライメント検出系4とにで計測されるマークの位置と、干渉計システム20とアライメント検出系4とで計測されるマークの位置との差分からエンコーダシステム10の計測誤差(補正値)を算出する(S60)。算出されるマークの位置は、干渉計システム20の計測誤差が補正された位置である。そして、この計測誤差にもとづいて、エンコーダシステム10を補正する(S70)。補正後のエンコーダシステム10にもとづいて、ウエハステージ3のX方向、Y方向およびZ方向の位置を制御することによって、高精度な位置決めが可能となる。なお、計測される複数のマークの位置は離散的であるため、エンコーダシステムを補正する際には、2次近似や3次近似により補間のための演算処理がされる。なお、エンコーダシステム10のXY方向における補正値については、ウエハステージ3のZ方向の位置に応じた補正値を算出することが精度の面で好ましい。
【0023】
なお、本実施例においてウエハステージの位置計測の例を示したが、レチクルステージの位置計測においても適用可能である。
【0024】
(実施例2)
実施例2について説明する。実施例1と同様の構成については説明を省略する。本実施例において、エンコーダシステム10は、センサ11を複数備えている点で実施例1と異なる。3つのセンサの各々は、X方向、Y方向およびZ方向の位置を計測可能であり、各センサの計測値の差を用いて、各方向に平行な軸回りの回転方向の位置を計測可能である。さらに、本実施例では、Z方向の計測誤差の補正において、アライメント検出系4を使用しない点で実施例1と異なる。
【0025】
以下、エンコーダシステム10を補正する方法について、図5のフロー図を用いて説明する。S11〜S61までは実施例1のS10〜S60と同様であるため、説明を省略する。ただし、S10〜S60はX方向、Y方向およびZ方向の計測誤差の補正であるのに対して、S21〜S61はX方向およびY方向の計測誤差の補正である。
【0026】
S71において、計測誤差が補正された干渉計システム20を用いてZ方向の位置を所定の位置に保ちながらX方向にウエハステージを移動させ、Z方向に計測可能な2つのセンサ11によりウエハステージ3のZ方向の位置を計測する(S81)。そして、この2つのセンサ11の計測値の差にもとづいて、計測誤差(補正値)を算出する(S91)。そして、S61およびS71で算出された計測誤差にもとづいて、エンコーダシステム10を補正する(S101)。
【0027】
本実施例によれば、回折格子の欠陥や回折ピッチ誤差、ターゲットプレートの変形によって生じる計測誤差の影響を低減し、ウエハステージを高精度に位置合わせすることが可能となる。
【0028】
以上のように、エンコーダシステム10を補正するために必ずしもアライメント検出系4および干渉計システム20の両方を用いる必要はなく、実施形態によっては一方のみを用いて補正することも可能である。
【0029】
(デバイス製造方法の例)
つぎに、本発明の一実施形態のデバイス(半導体デバイス、液晶表示デバイス等)の製造方法について説明する。半導体デバイスは、ウエハに集積回路を作る前工程と、前工程で作られたウエハ上の集積回路チップを製品として完成させる後工程を経ることにより製造される。前工程は、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布されたウエハを露光する工程と、ウエハを現像する工程を含む。後工程は、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)と、パッケージング工程(封入)を含む。液晶表示デバイスは、透明電極を形成する工程を経ることにより製造される。透明電極を形成する工程は、透明導電膜が蒸着されたガラス基板に感光剤を塗布する工程と、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布されたガラス基板を露光する工程と、ガラス基板を現像する工程を含む。本実施形態のデバイス製造方法によれば、従来よりも高品位のデバイスを製造することができる。
【0030】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。例えば、対象物を搭載して移動する移動体の位置をエンコーダシステムを用いて計測する位置計測装置であれば、露光装置以外の技術においても適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 投影光学系
2 ウエハ
3 ウエハステージ
4 アライメント検出系
5 基準マーク
6 部材
10 エンコーダシステム
11 センサ
12 プレート
20 干渉計システム
21 干渉計
22 反射部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を搭載して移動可能な移動体と
前記移動体の位置を計測可能なエンコーダ型の第1の計測手段と、
前記第1の計測手段による計測と同時に、前記移動体の位置を計測可能、あるいは前記対象物または前記移動体に形成されたマークの位置を検出可能な第2の計測手段と、
前記第1および第2の計測手段の計測結果にもとづいて、前記第1の計測手段の計測誤差を算出し、該計測誤差にもとづいて前記第1の計測手段を補正する補正手段と、を備えることを特徴とする位置計測装置。
【請求項2】
前記第2の計測手段は、前記移動体の位置を計測可能な、エンコーダ型とは異なる型の計測手段であることを特徴とする請求項1に記載の位置計測装置。
【請求項3】
前記補正手段は、計測誤差が補正された第2の計測手段の計測結果にもとづいて、前記第1の計測手段の計測誤差を算出することを特徴とする請求項2に記載の位置計測装置。
【請求項4】
前記対象物または前記移動体に設けられたマークの位置を検出可能な第3の計測手段を備え、
前記補正手段は、前記第1の計測手段と前記第3の計測手段によって計測される前記マークの位置と、前記第2の計測手段と前記第3の計測手段によって計測される前記マークの位置との差分から前記第1の計測手段の計測誤差を算出することを特徴とする請求項2に記載の位置計測装置。
【請求項5】
前記第1の計測手段は前記移動体に設けられたセンサと、前記移動体とは別の部材に支持された格子を含むプレートを備え、
前記計測誤差は、前記プレートの格子ピッチ誤差を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の位置計測装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の位置計測装置を用いて、基板または原版を搭載して移動するステージの位置を計測することを特徴とする露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−129654(P2011−129654A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285773(P2009−285773)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】