説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】 DPFの過昇温のおそれがある時に、燃費やドライバビリティの悪化を伴わずに排気流量の増加を実施でき、実施可能な運転領域が制限されないようにする。
【解決手段】 ECU8は、排気通路3に設置したDPF42の状態と排気の状態を監視し、運転条件等の変化で排気流量が減少しDPF42の温度が過度に上昇するおそれがあると判断すると、電動ターボチャージャ5による過給圧を増加すると同時にEGR弁62を全開側に制御する。すると過給された空気が吸気通路2からEGR通路61を介して排気通路3へ導入し排気流量が増加するので、DPF42の温度が低下して過昇温を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排出ガスに含まれるパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタを備える排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディーゼルエンジンから排出されるパティキュレート(粒子状物質、PM)の環境への影響が大きな問題となっている。この対策として、従来より、セラミック多孔質体からなるディーゼルパティキュレートフィルタ(以下DPFと称する)が知られ、これを排気管の途中に設置して、DPFの多孔質の隔壁にパティキュレートを捕集することが行なわれている。DPFは、捕集したパティキュレートを定期的に燃焼除去することで再生される。
【0003】
DPFの再生は、一般に、DPFの前後差圧を基に算出されるパティキュレート堆積量(以下PM堆積量と称する)が予め決められた所定量以上となった時に行われる。例えば、昇温手段としてポスト噴射を実施し、排気温度を上昇させることで、DPFをパティキュレートの燃焼温度以上に昇温させることができる。また、エンジンの運転条件によっては、排気温度が高温となってパティキュレートが自然に燃焼を開始する場合がある。このような場合には、エンジンの運転条件が急に変化して排気流量が低下するとDPF温度が過度に上昇することがあり、DPFの損傷を防止しながら安全に再生を実施することが重要となる。
【0004】
従来技術として、特許文献1には、DPFの再生状態において、エンジンが高回転・高負荷運転条件から急にアイドル運転に切り換えられて、排気ガスによる熱の持ち去り量が急減した場合に、DPFが過熱して溶損に至るのを防止する技術が開示されている。特許文献1の技術は、アイドル運転時にDPF温度が所定温度以上であると、アイドル目標回転数を高回転側に設定して排気流量を増加させるもので、PM堆積量が多いほどアイドル目標回転数が高回転側となるようにして、熱の持ち去り量を確保している。
【特許文献1】特開2003−254133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の溶損防止制御では、エンジンのアイドル回転数を高回転側に設定することによって燃費が悪化したり、燃焼騒音・振動が発生するなどドライバビリティが悪化する懸念があった。さらに、アイドル運転領域で設定できるエンジンの回転数には限界があるため、確保できる排気流量にも限界があり、DPFの温度低下に時間がかかる。また、アイドル回転数制御では、制御できる運転領域が制限されることから、排気流量を増加させたくてもできない運転領域が存在するといった問題があった。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、DPFの過昇温のおそれがある時に、燃費の悪化やドライバビリティの悪化を伴わずに、実施可能な運転領域が制限されることなく、排気流量の増加を行うことができ、それによりDPFの損傷等の不具合を防止して、排気浄化装置の安全性・耐久性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の内燃機関の排気浄化装置は、
排気通路に設置されて排気中のパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタを備え、
上記パティキュレートフィルタに堆積したパティキュレート量を検出するPM堆積量検出手段と、
上記排気通路を流通する排気の状態を検出する排気状態検出手段と、
上記パティキュレートフィルタの状態を検出するためのフィルタ状態検出手段と、
内燃機関の吸入空気を過給するための電動ターボチャージャと、
内燃機関の排気通路と吸気通路を接続するEGR通路に設置したEGR弁と、
上記排気状態検出手段および上記フィルタ状態手段の検出結果に基づいて、上記パティキュレートフィルタの過昇温防止制御を実施するか否かを判定する過昇温防止制御実施判定手段と、
上記過昇温防止制御実施判定手段が肯定判定された時に、上記電動ターボチャージャにより過給圧を増加するとともに上記EGR弁を開いて、上記吸気通路の吸入空気を上記EGR通路を介して上記排気通路へ導入し、上記排気通路の排気流量を増加させる過昇温防止制御手段とを備える。
【0008】
本発明では、運転条件を変更することなく排気流量を増加するための手段として、電動ターボチャージャとEGR弁に着目した。すなわち、パティキュレートフィルタや排気の状態を随時検出し、運転条件変化等によりパティキュレートフィルタの過昇温のおそれが生じた時に、電動ターボチャージャにより過給圧を上げて、EGRバルブを全開側に制御すると、過給された空気が吸気通路からEGR通路を介して排気通路へ導入される。これにより排気流量が増大し、パティキュレートフィルタへ多量の新気を含む排気が供給されるので、パティキュレートフィルタの温度が速やかに低下する。このように、電動ターボチャージャとEGR弁を用いることで、従来のようにアイドル回転数の変更による燃費の悪化やドライバビリティの悪化を伴わずに、また、運転領域が制限されることなく、過昇温を防止することができる。よって、パティキュレートフィルタの損傷等を防止し、排気浄化装置の安全性・耐久性を向上できる。
【0009】
請求項2の排気浄化装置において、上記過昇温防止制御実施判定手段は、上記排気状態検出手段にて検出される排気流量が所定値以下および上記フィルタ状態検出手段で検出される上記パティキュレートフィルタの温度が所定値以上の条件が成立した時に上記パティキュレートフィルタの過昇温防止制御を実施すると判定する。
【0010】
パティキュレートフィルタの過昇温のおそれがあるか否かを判断するための指標として、例えば、排気流量とパティキュレートフィルタの温度を用いることができる。具体的には、排気流量が所定値以下に減少した時に、パティキュレートフィルタの温度が一定値より高い場合、このままの状態が継続するとパティキュレートフィルタが過昇温となるおそれが高くなるので、これを基に過昇温防止制御の要否を判断し、過昇温防止制御を実施することで上記効果が得られる。
【0011】
請求項3の排気浄化装置において、上記過昇温防止制御手段は、上記パティキュレートフィルタへのパティキュレート堆積量が多いほど、上記電動ターボチャージャによる過給圧を増加させる制御を行う。
【0012】
パティキュレート堆積量が多いほどパティキュレートの燃焼による温度上昇が大きくなるので、過給圧を増加側として排気流量が増加させる。これによりパティキュレートフィルタの冷却効果が大きくなり、過昇温を防止することができる。
【0013】
請求項4の排気浄化装置において、上記過昇温防止制御手段は、上記パティキュレートフィルタの温度が高いほど、上記電動ターボチャージャによる過給圧を増加させる制御を行う。
【0014】
また、パティキュレートの温度が高いほど過昇温のおそれが高くなるので、過給圧を増加側として排気流量が増加させることによりパティキュレートフィルタの冷却効果が大きくなり、過昇温を防止することができる。
【0015】
請求項5の排気浄化装置は、上記過昇温防止制御手段は、内燃機関への吸入空気の温度が高いほど、上記電動ターボチャージャによる過給圧を増加させる制御を行う。
【0016】
また、吸気温度が高いほどパティキュレートフィルタの温度が上昇しやすいので、過給圧を増加側として排気流量が増加させることによりパティキュレートフィルタの冷却効果を大きくし、過昇温を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の排気浄化装置を付設した内燃機関の全体構成を示すもので、例えば4気筒ディーゼルエンジン1への適用例として説明する。エンジン1の各気筒にはそれぞれインジェクタ11が設けられ(ここでは1つの気筒のみを示す)、図示しないコモンレールから供給される燃料を各気筒の燃焼室内に噴射する。コモンレールは各気筒に共通の蓄圧器で、高圧ポンプで加圧された燃料が噴射圧に相当する所定の圧力で蓄えられる。
【0018】
エンジン1の吸気通路2は、吸気ポートに続く吸気マニホールド22とこれに連結される吸気管21からなる。連結部には吸気絞り弁23が設けられ、吸気マニホールド22からエンジン1に供給される吸気流量を調整するようになっている。吸気管21に導入される吸入空気量はエアフローメータ71により検出される。エアフローメータ71は一般的なもので、通常、吸入空気量を質量流量として検出する。
【0019】
エンジン1の排気ポートからの排気は排気通路3を経て排出される。排気通路3は、排気ポートに続く排気マニホールド32および排気管31からなり、排気管31の途中には上流側から酸化触媒41とパティキュレートフィルタ(以下、DPFという)42が設置されて連続再生式DPF4を構成している。DPF42は公知の構成で、例えば、コーディエライト等の耐熱性セラミックスをハニカム構造に成形し、多孔性の隔壁で区画された多数のセルの入口または出口を互い違いに目封じしてなる。排気は、入口が開口しているセルからDPF42内に入り、多孔性の隔壁を通過する際にパティキュレート(以下、適宜、PMという)が捕集される。
【0020】
酸化触媒41はハニカム構造体のセル壁表面にPt等の酸化触媒を担持してなる。酸化触媒41は、排気中に含まれる窒素成分を酸化してNO2 を生成し、酸化剤としてDPF42に供給して捕集したパティキュレートを酸化処理する。これによりDPF42の連続的な再生が可能となる。また、後述するDPF42の再生処理時に、例えばポスト噴射により排気通路3に供給されるHCを酸化して、その燃焼熱をDPF42の昇温に利用する。
【0021】
排気管31には、圧力センサ72a、72bが設けられている。圧力センサ72aは、DPF42の上流側の排気管31に、圧力センサ72bは、DPF42の下流側の排気管31にそれぞれ圧力導入管を介して接続されて排気圧力に応じた信号を出力するようになっている。その排気圧力差からDPF42の前後差圧を検出し、DPF42にて捕集されたパティキュレートの量(以下、PM堆積量という)を推定することができる。また、DPF42の入口側および出口側には、それぞれ排気の温度を検出する温度センサ73a、73bが設けてあり、DPF42の入口側および出口側を流通する排気温度およびDPF42を代表する温度(DPF温度)を検出するようになっている。
【0022】
排気管31には、DPF42の上流側に電動ターボチャージャ5のタービン51が設けられ、吸気管21に設けられるコンプレッサ52とタービン軸を介して連結されている。電動ターボチャージャ5は、図示しない電動モータが付設されたターボチャージャで、通常の運転領域では、従来と同様に排気のエネルギーを利用してタービン51を駆動するとともにタービン軸を介してコンプレッサ52を駆動し、エンジン1に供給される吸入空気を圧縮する。また、排気流量の少ないエンジン低回転域では、タービン51の駆動を電動モータで補助することにより、吸気圧力の低下を防止するようになっている。これにより、低回転域における吸気圧力不足が解消され、エンジン運転条件によらず所望の過給圧を維持することができる。また、電動とすることによりターボラグも解消できる。吸気管21には、インタクーラ24が設けられて、コンプレッサ52で圧縮されて高温となった吸気を冷却できるようになっている。
【0023】
排気マニホールド32は、EGR装置6のEGR通路61によって、吸気マニホールド22と連結されており、排気の一部がEGR通路61を経て吸気に還流されるようになっている。EGR通路61の途中には、EGR弁62が設けられ、その開度を調整することにより、吸気に還流される排気の量を調整できるようになっている。EGR弁62より吸気マニホールド22側のEGR通路61には、還流されるEGRガスを冷却するためのEGRクーラ63が設けられる。吸気マニホールド22には、吸気の圧力を検出する圧力センサ74と吸気の温度を検出する温度センサ75が設置されている。
【0024】
ECU8には、吸気通路2に設置されるエアフローメータ71、圧力センサ74、温度センサ75からの出力信号と、排気通路3に設置される圧力センサ72a、72b、温度センサ73a、73bからの出力信号が随時入力している。その他、ECU8には、連続再生式DPF4上流の排気通路3に設置される空燃比センサ76やエンジン回転数センサ77、さらにEGR弁62の開度、冷却水温、アクセル開度、クランク位置、燃料圧等を検出する図示しない各種センサからの出力信号が入力している。ECU8は、これらの各種センサの出力信号から知られるエンジン1の運転条件に基づいて、最適な燃料噴射量、噴射時期、吸入空気量、空燃比、過給圧、EGR量等を算出して、インジェクタ11、吸気絞り弁23、電動ターボチャージャ5、EGR弁62等を制御して、エンジン1への燃料噴射をフィードバック制御する。
【0025】
また、ECU8は、圧力センサ72a、72bの出力信号から検出されるDPF42の前後差圧に基づいてPM堆積量を演算し、DPF42の再生制御を行う。一般に、ある排気流量に対して、PM堆積量が増加するのに伴って差圧が増加することから、この関係を利用してPM堆積量を算出することができる。そして、算出されたPM堆積量が予め設定した所定値を超えた時に、DPF42を昇温させて、パティキュレートを燃焼、除去する再生処理を行う。あるいは、上記各種センサから知られるエンジン1の運転条件に基づいて、PM堆積量を推定することもできる。
【0026】
再生処理時のDPF42の昇温手段としては、例えば、インジェクタ11によるメイン燃焼噴射の後にポスト噴射を行う。ポスト噴射により排気中に供給されるHCは酸化触媒41によって燃焼し、その燃焼熱でDPF42を昇温させることができる。あるいは、燃料噴射時期の遅角を行って廃熱を増大させる、吸気絞り弁23を通常より閉じ側とする等の手段を採用することもでき、これら昇温手段のいずれか1つまたは2つ以上を組み合わせて実施することにより、排気温度を上昇させてDPF42を所望の温度(例えば500〜700℃)に昇温し、パティキュレートを燃焼させる。
【0027】
ここで、本発明の特徴部分であるDPF42の過昇温防止制御について説明する。例えば、DPF42の再生処理中または自然再生中に運転条件が変化して排気流量が急減した場合、排気への放熱量が急減してDPF42の過昇温が生じるおそれがある。これを防止するために、ECU8は、上記各種センサ情報に基づいて排気管31を流通する排気流量や排気温度といった排気の状態を検出するとともに(排気状態検出手段)、DPF温度やPM堆積量といったDPF42の状態を検出する(フィルタ状態検出手段)。そして、これら排気状態検出手段とフィルタ状態検出手段の検出結果に基づいて、DPF42の過昇温が生じるおそれがあるか否かを判断する(過昇温防止制御実施判定手段)。
【0028】
過昇温防止制御実施判定手段は、例えば、DPF42へ流入する排気流量が一定値以下に低減し、かつDPF42の温度が一定値以上と高い時に、DPF42の過昇温防止制御を実施する必要があると判定する。排気流量は、例えば、エアフローメータ71で検出される吸入空気量を基に算出される。また、DPF温度は、例えば、温度センサ73a、73bの検出結果を基に、これらの検出温度の平均化処理や、一次遅れフィルタなどの各種のフィルタ処理を行って算出することができる。過昇温防止制御実施の判定条件は、上記したものに限らず、排気の状態およびDPF42の状態を示す種々の指標を用いることができ、例えば、DPF42へ流入する排気温度やPM堆積量、それらの変化率等を用いてもよい。いずれの指標を用いる場合も、その状態が継続することによって、DPF42の温度が予め想定した上限温度を超えると判断される条件を設定し、過昇温防止制御の要否を判断すればよい。
【0029】
そして、過昇温防止制御の実施要と判定された時に、電動ターボチャージャ5により過給圧を増加するとともにEGR弁62を開いて、排気流量を増加させる制御を行う(過昇温防止制御手段)。EGR装置6は、通常のEGR制御時には、吸気側より高くなる排気側圧力を利用して、EGR通路61に排気通路3側から吸気通路2側へ排気を還流させるが、過昇温防止制御時には、過給圧を増加させることにより、吸気通路2の新気をEGR通路61を介して排気通路3へ導入することが可能となる。
【0030】
この時、電動ターボチャージャ5による過給制御量は、図2に示すように、DPF42へのPM堆積量、DPF42の温度、吸気温度等に応じて設定する。例えば、検出されるPM堆積量が多いほどPM燃焼熱による温度上昇が予測されるので、過給圧をより増加側として排気流量が増加するように電動ターボチャージャ5を制御する(図2(a))。同様に、DPF42の温度が高いほど過給圧増加側となるように(図2(b))、また吸気温度が高いほど過給圧増加側となるように(図2(c))、電動ターボチャージャ5を制御する。DPF42の温度は、DPF42において発生するPM燃焼熱と排気による熱の持ち去り量によって決まるので、DPF42の状態に応じて供給される排気流量を増加させることで、DPF42からの熱の持ち去り量を適切に制御してDPF42の温度を制御し、過度な温度上昇を抑制すると同時に過冷却を防止することができる。
【0031】
図3に、このECU8による過昇温防止制御のフローチャートを示す。図3のステップ101では、まず、各種センサ出力を読み込む。具体的には、エアフローメータ71の出力信号から吸入空気量を、圧力センサ74の出力信号から吸気圧力を、圧力センサ72a、72bの出力信号から排気圧力を、温度センサ75の出力信号から吸気温度を、温度センサ73a、73bの出力信号から排気温度を、それぞれ入力する。
【0032】
ステップS102では、ステップS101で読み込んだ各センサの入力情報から、排気流量を算出する。ここで、排気流量は下式により表される。
排気流量=吸入空気量×f(排気圧力)×f(排気温度)
これは、エアフローメータ71にて検出される吸入空気量(質量流量)を、圧力センサ72a、72bにより検出されるDPF42の前後差圧と、温度センサ73a、73bにより検出されるDPF42の温度に基づいて、体積流量に換算するものである。
【0033】
ステップS103では、ステップS102で算出した排気流量とDPF42の温度を基に、過昇温防止制御を実施するか否かを判断する。そして、排気流量が予め設定した所定値K1を下回り、かつDPF42の温度が予め設定した所定値K2より大きければ、DPF42の過昇温のおそれがあると判断し、過昇温防止制御の実施要と判定する。上述したように、DPF42の温度はDPF42を代表する温度であればよく、例えば、DPF入口温度に一次遅れフィルタ演算を作用させた出力とDPF出口温度との平均値で表される。DPF入口温度に一次遅れフィルタ演算を作用させるのは、DPF入口温度はエンジン本体からの排気ガスの排出状況で大きく変動し、その影響を排除するためである。
【0034】
ステップS103の判定において、例えば、DPF42のPM堆積量や単位時間当たりのDPF42の温度変化量が所定値を超えているか否かといった条件を追加することもできる。排気流量が所定値K1以上でなくとも、PM堆積量が少なければ発生する燃焼熱は小さくDPF42の温度上昇は小さくなるので、DPF42の過熱のおそれが小さくなる。よってこれら複数の条件を適宜組み合わせることで、過昇温防止制御の要否をより適切に判断することができる。S103が否定判定された場合は、過昇温のおそれがなく過昇温防止制御は必要ないと判断して本処理を一旦終了する。
【0035】
ステップS103が肯定判定された場合はステップS104へ進んで、目標吸気圧を算出する。目標吸気圧は、上述した図2(a)〜(c)に基づき、PM堆積量とDPF42の温度と吸気温度から下式のように表される。
目標吸気圧=f(PM堆積量)×f(DPF温度)×f(吸気温度)
ここで、PM堆積量は、例えば、圧力センサ72a、72bの検出結果を基に算出されるDPF42の前後差圧と、ステップS102で算出した排気流量に基づいて推定することができる。DPF42の温度は、ステップS102で算出した温度を、吸気温度は温度センサ75の検出結果を使用することができる。
【0036】
次いで、ステップS105へ進み、電動ターボチャージャ5を、ステップS103で算出した目標吸気圧が得られるようにフィードバック制御する。同時に、EGR装置6のEGR弁62を全開とする。これにより、電動ターボチャージャ5で過給された空気が、吸気管21からEGR弁62、EGR通路61を通過して排気管31に流入し、DPF42に供給される排気流量を増加させる。よって、DPF42で発生するPM燃焼熱を排気に放熱し、DPF42の過昇温を抑制することができる。また、排気流量の増加により再生中にDPF42の温度が低下しすぎることも好ましくないが、PM堆積量やDPF42の温度、吸気温度等から過給圧を適切に設定して排気流量の増量を適当量とすることで、DPF42の過冷却を防止することができる。よって、DPF42の温度制御を適切に行って、安全かつ効率的にPM燃焼を実施することができる。
【0037】
以上のように、本発明によれば、エンジン運転条件を変更せずに、排気流量を増加させることができるので、燃費やドライバビリティの悪化を抑制できる。また、低回転数域でも排気流量の増加が実施可能であり、運転領域が限定されないので、確実にDPFの過昇温を防止でき、安全性、信頼性が向上する。
【0038】
なお、上記実施形態では、EGR装置6のEGR弁62を全開としたが、必ずしも全開とする必要はない。図4は、EGR弁62の開度とEGR通路61を流通するEGR流量の関係を示したものである。図示するように、EGR弁62の開度が大きくなるに従いEGR流量は急増するので、EGR弁62を全開側に制御して必要な流量が得られるように制御すればよい。
【0039】
上記実施形態では、酸化触媒41をDPF42と別体としているが、酸化触媒41とDPF42を一体化した構成とすることも可能である。酸化触媒41を一体化した構成では、DPF42を触媒の耐熱温度以下に制御する必要があり、従来のアイドル目標回転数を高くする排気流量制御では、運転領域によってはDPF42の過昇温による触媒の劣化の懸念があるが、本発明では全ての運転領域において過昇温防止制御を行って、DPF42が触媒の耐熱温度を超えないように制御することができるので、触媒の劣化を確実に防止できる。
【0040】
また、PM堆積量を算出するための複数の圧力センサ73a、73bの代わりに、差圧センサを設置することもできる。その他、排気浄化装置の各部の構成は、必ずしも図示したものに限らず、適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施形態における排気浄化装置を付設した内燃機関の全体概略構成図である。
【図2】ECUにおける電動ターボチャージャの過給圧制御を説明するための図で、(a)は過給圧とPM堆積量の関係を示す図、(b)は過給圧とDPF温度の関係を示す図、(c)は過給圧と吸気温度の関係を示す図である。
【図3】ECUによる過昇温防止制御処理のフローチャート図である。
【図4】EGR開度とEGR流量の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 エンジン(内燃機関)
11 インジェクタ
2 吸気通路
21 吸気管
3 排気通路
31 排気管
4 DPF(パティキュレートフィルタ)
5 電動ターボチャージャ
51 タービン
52 コンプレッサ
6 EGR装置
61 EGR通路
62 EGR弁
71 エアフローメータ
72a、72b 圧力センサ
73a、73b 温度センサ
74 温度センサ(温度検出手段)
75 吸気圧センサ
8 ECU(排気状態検出手段、フィルタ状態検出手段、過昇温防止制御実施判定手段、過昇温防止制御手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設置されて排気中のパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタを備える排気浄化装置において、
上記排気通路へ排出される排気の状態を検出する排気状態検出手段と、
上記パティキュレートフィルタの状態を検出するフィルタ状態検出手段と、
内燃機関の吸入空気を過給するための電動ターボチャージャと、
内燃機関の排気通路と吸気通路を接続するEGR通路に設置したEGR弁と、
上記排気状態検出手段および上記フィルタ状態検出手段の検出結果に基づいて、上記パティキュレートフィルタの過昇温防止制御を実施するか否かを判定する過昇温防止制御実施判定手段と、
上記過昇温防止制御実施判定手段が肯定判定された時に、上記電動ターボチャージャにより過給圧を増加するとともに上記EGR弁を開いて、上記吸気通路の吸入空気を上記EGR通路を介して上記排気通路へ導入し、上記排気通路の排気流量を増加させる過昇温防止制御手段とを備えることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
上記過昇温防止制御実施判定手段は、上記排気状態検出手段にて検出される排気流量が所定値以下で、上記フィルタ状態検出手段で検出される上記パティキュレートフィルタの温度が所定値以上である時に上記パティキュレートフィルタの過昇温防止制御を実施すると判定する請求項1記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
上記過昇温防止制御手段は、上記パティキュレートフィルタへのパティキュレート堆積量が多いほど、上記電動ターボチャージャによる過給圧を増加させる制御を行う請求項1または2記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
上記過昇温防止制御手段は、上記パティキュレートフィルタの温度が高いほど、上記電動ターボチャージャによる過給圧を増加させる制御を行う請求項1ないし3のいずれか記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
上記過昇温防止制御手段は、上記内燃機関への吸入空気の温度が高いほど、上記電動ターボチャージャによる過給圧を増加させる制御を行う請求項1ないし4のいずれか記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−242098(P2006−242098A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58805(P2005−58805)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】