説明

制御装置及び車両

【課題】停車時のブレーキショックを運転者の技量によらず抑制することができる制御装置及び車両を提供すること。
【解決手段】油圧式の制動装置における制動力は、停車直前の低速領域におけるブレーキペダルの操作に対して、オンかオフかという極端な効き方となるため、ブレーキペダルの操作量を微妙にコントロールして、制動力を細かに制御することが困難であった。これに対し、本発明では、車輪のトウ角を機械的に増減させて制動力を制御する方式であるので、停車直前の低速領域においてもリニアな制動力を得ることができる。更に、停車直前の低速領域では、車両の速度の減少に伴って、前輪のトウ角の絶対値を減少させると共に後輪のトウ角を増加させるので、停車直後の車両の揺り返し挙動を抑制して、停車時のブレーキショックを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転舵可能に構成される車輪のトウ角を制御する制御装置及び車両に関し、特に、停車時のブレーキショックを運転者の技量によらず抑制することができる制御装置及び車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の制動装置(ブレーキ装置)は、一般に、車輪とともに回転するディスクやドラムに対して摩擦材(パッドやライニング)を押し付け、その摩擦力で車両の走行速度を下げるように構成されている。また、ブレーキペダルの操作力を伝達する伝達方式には、通常、作動遅れがなく伝達剛性が高い油圧(液圧)式が採用されている。
【0003】
ところで、走行中の車両を減速させて停車する場合、ブレーキペダルの踏み込み量を一定に保持したのでは、減速加速度で車両前方向側への荷重移動が発生し、車両の前方側が沈み込む一方、車両の後方側が浮き上がるピッチング挙動が発生する。そのため、車両が停車すると、ピッチング挙動とは逆に車両後方側へ荷重が移動し、これに伴って、サスペンションが停車直前とは逆方向へ伸縮する。その結果、車両の揺り返し挙動が発生することによって、停車時のブレーキショックが大きくなる。
【0004】
そのため、運転技量の優れた運転者は、制動初期では大きな減速加速度を発生させる一方、停車直前の低速領域ではブレーキペダルの踏み込み量を微妙に操作して減速加速度を徐々に減少させることで、車両の揺り返し挙動の発生を防止して、停車時のブレーキショックを小さくする。
【0005】
或いは、車両を減速させて停車させる場合に、停車直前において、制動装置により前輪及び後輪へ発生させる制動力の内の後輪への配分比率を高めることで、荷重を車両の後方へ移動させて、停車時のブレーキショックを小さくする技術も提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−18777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、油圧式の制動装置は、摩擦材をディスク等に押し付ける・離すという動作により制動力の大きさを制御する構成であるため、その制動力の大きさを細かに制御することが困難であるという問題点があった。
【0007】
即ち、油圧式の制動装置では、図14に示すように、ブレーキペダルの踏み込み量(即ち、油圧)の増減に対して、領域A(摩擦材がディスク等に押し付けられた領域)と領域B(摩擦材がディスク等から離された領域)との間で制動力の大きさが急激に変化し、オンかオフかという極端な効き方となり、ブレーキ操作(油圧変化)に対する制動力の過渡特性が悪い。
【0008】
そのため、運転技量の劣る初心者では、ブレーキペダルの踏み込み量を微妙に操作して制動力の大きさを制御することができず、停車時のブレーキショックを小さくすることが困難であるという問題点があった。
【0009】
また、減速時には後輪の接地荷重が減少しているため、特許文献1の技術のように、後輪への制動力の配分比率を高める技術では、後輪のロック(車両は走行しているが車輪の回転は停止している状態)を考慮しなければならない。そのため、スリップ率に応じて油圧を制御するなど、複雑な制御や装置が必要となり、その分、コストの増加を招くという問題点があった。
【0010】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、停車時のブレーキショックを運転者の技量によらず抑制することができる制御装置及び車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、請求項1記載の制御装置は、転舵可能に構成される前輪及び後輪と、それら前輪及び後輪を操舵駆動するアクチュエータ装置とを有する車両に対し、前記アクチュエータ装置を作動させ、前記前輪及び後輪のトウ角を制御するものであって、前記車両の速度を検出する車両速度検出手段と、運転者により操作されるブレーキ操作部材の操作量を検出する操作量検出手段と、基準速度値を記憶する記憶手段と、前記車両速度検出手段により検出された前記車両の速度の値が前記記憶手段に記憶される基準速度値よりも高速である場合には、前記操作量検出手段により検出された前記ブレーキ操作部材の操作量の増減に伴って少なくとも前記前輪のトウ角の絶対値が増減されるように、前記アクチュエータ装置を作動させると共に、前記車両速度検出手段により検出された前記車両の速度の値が前記記憶手段に記憶される基準速度値よりも低速である場合には、前記車両速度検出手段により検出された前記車両の速度の減少に伴って、前記前輪のトウ角の絶対値が減少され、かつ、前記後輪のトウ角の絶対値が少なくとも一定値を保つか又は増加するように、前記アクチュエータ装置を作動させるアクチュエータ作動手段と、を備えている。
【0012】
請求項2記載の制御装置は、請求項1記載の制御装置において、前記記憶手段に記憶される基準速度値は、前記前輪に対する基準速度値である前輪用基準速度値と、前記後輪に対する基準速度値である後輪用基準速度値とを備え、前記アクチュエータ作動手段は、前記前輪のトウ角を制御する場合には、前記前輪用基準速度値に基づいて、前記アクチュエータ装置を作動させる一方、前記後輪のトウ角を制御する場合には、前記後輪用基準速度値に基づいて、前記アクチュエータ装置を作動させる。
【0013】
請求項3記載の制御装置は、請求項1又は2に記載の制御装置において、前記記憶手段は、基準操作量を記憶し、前記アクチュエータ作動手段は、前記操作量検出手段により検出された前記ブレーキ操作部材の操作量が前記記憶手段に記憶される基準操作量よりも大きな値である場合、前記車両速度検出手段により検出された前記車両の速度の値に関わらず、少なくとも前記前輪のトウ角の絶対値が前記操作量検出手段により検出された前記ブレーキ操作部材の操作量に応じた値となるように、前記アクチュエータ装置を作動させる。
【0014】
請求項4記載の制御装置は、請求項1から3のいずれかに記載の制御装置において、前記アクチュエータ作動手段は、前記前輪及び後輪に所定のトウ角が付与された状態で前記車両が停車するように、前記アクチュエータ装置を作動させる。
【0015】
請求項5記載の制御装置は、請求項1から3のいずれかに記載の制御装置において、前記アクチュエータ作動手段は、前記後輪に所定のトウ角が付与され、かつ、前記前輪又のトウ角の値が0となる状態で前記車両が停車するように、前記アクチュエータ装置を作動させる。
【0016】
請求項6記載の制御装置は、請求項1から5のいずれかに記載の制御装置において、前記前輪及び後輪は、前記車両の左右に配設される左車輪と右車輪とを備え、前記アクチュエータ作動手段は、前記左車輪と右車輪との関係がトーイン又はトーアウトとなるように、前記アクチュエータ装置を作動させる。
【0017】
請求項7記載の制御装置は、請求項6記載の制御装置において、前記アクチュエータ作動手段は、前記左車輪のトウ角の絶対値と前記右車輪のトウ角の絶対値とが同値となるように、前記アクチュエータ装置を作動させる。
【0018】
請求項8記載の制御装置は、転舵可能に構成される前輪及び後輪を有する車両に対し、前記前輪及び後輪のトウ角を制御するものであり、前記車両の速度を検出する車両速度検出手段と、運転者により操作されるブレーキ操作部材の操作状態を検出する操作状態検出手段と、基準速度値を記憶する記憶手段と、を備え、前記操作状態検出手段によりブレーキ操作部材が操作されていることが検出された場合に少なくとも前記前輪のトウ角を制動力が大きくなるように変化させると共に、前記車両速度検出手段により検出された前記車両の速度の値が前記記憶手段に記憶される基準速度値よりも低速である場合には、少なくとも、前記前輪のトウ角を制動力が小さくなるように変化させる。
【0019】
なお、車両の速度の値が基準速度値よりも高速である場合には、操作状態検出手段によりブレーキ操作部材が操作されていることが検出された場合に少なくとも前記前輪のトウ角を制動力が大きくなるように変化させると共に、その後は、ブレーキ操作部材の操作状態(例えば、踏み込み量の増減)に応じて、前輪のトウ角を変化(例えば、踏み込み量に応じて増減)させる。
【0020】
請求項9記載の車両は、請求項1から8のいずれかに記載の制御装置を備えている。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の制御装置によれば、車両の走行中にブレーキ操作部材が運転者により操作されると、そのブレーキ操作部材の操作量が操作量検出手段により検出されると共に、車両の速度が車両速度検出手段により検出され、これら各検出手段により検出されたブレーキ操作部材の操作量及び車両の速度に基づいて、アクチュエータ装置がアクチュエータ作動手段により作動されることで、前輪又は(及び)後輪にトウ角が付与される。これにより、トウ角が付与された車輪に横力が発生し、その横力が制動力となることで、車両の走行速度が減速される。
【0022】
この場合、アクチュエータ作動手段は、車両の速度の値が基準速度値よりも高速である場合に、ブレーキ操作部材の操作量の増減に伴って少なくとも前輪のトウ角の絶対値が増減されるように、アクチュエータ装置を作動させるので、応答性と大きな制動力とが必要となる制動初期(基準速度値よりも高速領域)において、ブレーキ操作部材の操作量に対してリニアな制動力を得ることができるという効果がある。
【0023】
一方、アクチュエータ作動手段は、車両の速度の値が基準速度値よりも低速である場合に、車両速度検出手段により検出された車両の速度の減少に伴って、前輪のトウ角の絶対値が減少され、かつ、後輪のトウ角の絶対値が少なくとも一定値を保つか又は増加するように、アクチュエータ装置を作動させるので、減速時の車両のピッチング挙動を抑制することで、停車直後のサスペンションの伸縮による車両の揺り返し挙動を抑制して、停車時のブレーキショックを抑制することができる。
【0024】
即ち、車両の走行速度を減速させると、減速加速度により車両の前方向へ荷重が移動して、車両の前方向側が沈み込む一方、車両の後方向側が浮き上がるピッチング挙動が発生する。そして、車両が停車すると、ピッチング挙動時とは逆に車両の後方向へ荷重が移動することで、サスペンションが車両の停車直前とは逆方向に伸縮し、これに伴う車両の揺り返し挙動により、停車時のブレーキショックが発生する。
【0025】
この場合、本発明によれば、車両の速度の減少に伴って、前輪のトウ角の絶対値を減少させるので、前輪の制動力配分を徐々に低くして、減速加速度により縮んでいた前輪側のサスペンションを停車までの間に徐々に伸ばしておくことができる。同時に、車両の速度の減少に伴って、後輪のトウ角の絶対値を一定値に保つか増加させるので、後輪の制動力配分を徐々に高めて、車両の後方向へ荷重を移動させることができる。
【0026】
その結果、停車までの間に、車両の前方向側を浮き上がらせて、車両の前下がり状態を緩和しておくことができるので、車両の停車に伴って、減速時のピッチング挙動時とは逆に車両後方側へ荷重が移動した場合でも、車両の揺り返し挙動が発生することが抑制され、停車時のブレーキショックを小さくすることができる。
【0027】
ここで、油圧式の制動装置における制動力は、上述したように、ブレーキ操作部材の操作(油圧変化)に対して、オンかオフかという極端な効き方となるため、ブレーキ操作部材の操作量を微妙にコントロールして、制動力を細かに制御することが困難であった。
【0028】
そのため、前輪と後輪との制動力配分を徐々に変化させることが困難であるため、油圧式の制動装置では、停車直前の低速領域において、前輪の制動力の急激な減少と、後輪の制動力の急激な上昇とを招き、制動力配分が後輪へ急激に移動するため、車体の後方向へ荷重が移動して、車両の大きな揺り返し挙動が発生する。
【0029】
そして、油圧式の制動装置では、後輪のロックを回避するべく、後輪の制動力配分を十分に高めることができないため、車両の停車までに、車両の前下がり状態を十分に緩和させることができない。或いは、後輪のロックを防止するための複雑な制御や機構が必要となる。
【0030】
これに対し、本発明によれば、車輪のトウ角を機械的に増減させて制動力を制御する方式であるので、停車直前の低速領域においてもリニアな制動力を得ることができる。即ち、車両の速度の値が基準速度値よりも低速となった場合には、ブレーキ操作部材の操作量に関わらず、車両の速度の減少に伴って、前輪と後輪との制動力配分を徐々に変化させることができる。
【0031】
その結果、運転者の技量によらず、停車直前の低速領域において、前輪の制動力は徐々に減少させる一方、後輪の制動力は徐々に上昇させ、制動力配分を後輪へ徐々に移動させることができる。これにより、制動力配分の後輪への急激な移動に伴う車体後方向への荷重移動を回避して、車両の大きな揺り返し挙動の発生を抑制することができるので、運転者の技量によらず、停車時のブレーキショックを抑制することができる。
【0032】
なお、このような後輪の制動力配分を高めることによるブレーキショックの抑制は、本発明のように、車輪のトウ角の変化により制動力を制御するという技術により初めて達成可能となったものである。
【0033】
また、本発明によれば、車両の速度の減少に伴って前輪のトウ角の絶対値を減少させるので、停車後の再発進時には、前輪の操舵動作(トウ角の絶対値をゼロに戻す動作)を最小限に抑制する(速度の減少に伴ってトウ角の絶対値をゼロまで減少させる場合には再発進時における操舵動作を不要とする)ことができ、その結果、車輪の摩耗を抑制してその高寿命化を図ることができると共に停車後の再発進をスムーズに行うことができるという効果がある。
【0034】
請求項2記載の制御装置によれば、請求項1記載の制御装置の奏する効果に加え、記憶手段に記憶される基準速度値は、前輪に対する基準速度値である前輪用基準速度値と、後輪に対する基準速度値である後輪用基準速度値とを備え、アクチュエータ作動手段は、前輪のトウ角を制御する場合には、前輪用基準速度値に基づいて、アクチュエータ装置を作動させる一方、後輪のトウ角を制御する場合には、後輪用基準速度値に基づいて、アクチュエータ装置を作動させるので、例えば、前輪のトウ角の減少と後輪のトウ角の増加とを異なるタイミングで開始させることができる。
【0035】
これにより、例えば、後輪用基準速度値を前輪用基準速度値よりも低速側の値とした場合(後輪のトウ角の増加開始が前輪のトウ角の減少開始よりも後である場合)には、前輪のトウ角の減少(制動力の減少)によって前輪側のサスペンションを伸ばし、このサスペンションの伸長に伴う荷重の車両後方側への移動により、後輪の接地荷重を増加させた後に、後輪のトウ角を増加(制動力を増加)させるので、後輪のロックをより確実に抑制することができるという効果がある。特に、前輪の重量配分が多くなるFF型車両の場合や、車輪が走行する路面の摩擦係数が小さい場合などに効果を奏する。
【0036】
一方、例えば、後輪用基準速度値を前輪用基準速度値よりも高速側の値とした場合(後輪のトウ角の増加が前輪のトウ角の減少よりも先に開始される場合)には、後輪のトウ角の増加を早期に行うことで、前輪のトウ角を減少させる場合でも、トータルでの制動力の向上を図ることができるという効果がある。また、後輪のトウ角の増加を先に行う場合には、後輪のトウ角を所定の値まで増加させる際の増加率をより緩やかな値に設定することができるので、制動力の変化を緩やかとして、後輪のロックを確実に回避することができる。特に、後輪の重量配分が多くなるFR型車両、MR型車両或いはRR型車両の場合や、車輪が走行する路面の摩擦係数が大きい場合などに効果を奏する。
【0037】
請求項3記載の制御装置によれば、請求項1又は2に記載の制御装置の奏する効果に加え、アクチュエータ作動手段は、ブレーキ操作部材の操作量が基準操作量よりも大きな値である場合、車両の速度の値に関わらず、少なくとも前輪のトウ角の絶対値がブレーキ操作部材の操作量に応じた値となるように、アクチュエータ装置を作動させるので、基準操作量よりも大きな操作量でブレーキ操作部材が操作された場合には、低速領域においても、前輪のトウ角を減少させることなく、ブレーキ操作部材の操作量に応じたトウ角の絶対値を付与することができるので、制動力の向上を図り、緊急制動を確実に行うことができるという効果がある。
【0038】
請求項4記載の制御装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の制御装置の奏する効果に加え、アクチュエータ作動手段は、前輪及び後輪に所定のトウ角が付与された状態で車両が停車するように、アクチュエータ装置を作動させるので、停車した車両が動き出さないようにするための制動力を得ることができるという効果がある。
【0039】
その結果、例えば、坂道で車両を停車させた場合でも、その車両を停車状態に維持することができるので、油圧式のブレーキ装置を併存させることが不要になるという効果がある。同様に、駐車ブレーキを設けることも不要になるので、その分、部品コストの削減を図ることができる。
【0040】
請求項5記載の制御装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の制御装置の奏する効果に加え、アクチュエータ作動手段は、後輪に所定のトウ角が付与された状態で車両が停車するように、アクチュエータ装置を作動させるので、停車した車両が動き出さないようにするための制動力を得ることができるという効果がある。
【0041】
その結果、例えば、坂道で車両を停車させた場合でも、その車両を停車状態に維持することができるので、油圧式のブレーキ装置を併存させることが不要になるという効果がある。同様に、駐車ブレーキを設けることも不要になるので、その分、部品コストの削減を図ることができる。
【0042】
更に、アクチュエータ作動手段は、前輪のトウ角の値が0となる状態で車両を停車するように、アクチュエータ装置を作動させるので、停車後の再発進時には、前輪の操舵動作を不要とすることができ、その結果、前輪の摩耗を抑制してその高寿命化を図ることができると共に停車後の再発進をスムーズに行うことができるという効果がある。
【0043】
請求項6記載の制御装置によれば、請求項1から5のいずれかに記載の制御装置の奏する効果に加え、アクチュエータ作動手段は、左車輪と右車輪との関係がトーインとなるように、アクチュエータ装置を作動させるので、車両の操縦安定性を確保しつつ、制動力を発揮させることができるという効果がある。
【0044】
請求項7記載の制御装置によれば、請求項6記載の制御装置の奏する効果に加え、アクチュエータ作動手段は、左車輪のトウ角の絶対値と右車輪のトウ角の絶対値とが同量となるように、アクチュエータ装置を作動させるので、車両の操縦安定性をより一層確保しつつ、制動力を発揮させることができるという効果があり、特に、直進走行状態からの制動制御時において顕著な効果を奏する。
【0045】
請求項8記載の制御装置によれば、車両の走行中にブレーキ操作部材が運転者により操作されると、そのブレーキ操作部材の操作状態が操作状態検出手段により検出され、少なくとも前輪のトウ角が変化される。これにより、トウ角が付与された車輪に横力が発生し、その横力が制動力となることで、車両の走行速度が減速される。
【0046】
この場合、車両の速度の値が基準速度値よりも低速である場合に、少なくとも、前輪のトウ角が制動力を小さくする方向に変化されるので、減速時の車両のピッチング挙動を抑制することで、停車直後のサスペンションの伸縮による車両の揺り返し挙動を抑制して、停車時のブレーキショックを抑制することができる。
【0047】
即ち、車両の走行速度を減速させると、減速加速度により車両の前方向へ荷重が移動して、車両の前方向側が沈み込む一方、車両の後方向側が浮き上がるピッチング挙動が発生する。そして、車両が停車すると、ピッチング挙動時とは逆に車両の後方向へ荷重が移動することで、サスペンションが車両の停車直前とは逆方向に伸縮し、これに伴う車両の揺り返し挙動により、停車時のブレーキショックが発生する。
【0048】
この場合、本発明によれば、前輪のトウ角を制動力が小さくなるように変化させるので、前輪の制動力配分を徐々に低くして、減速加速度により縮んでいた前輪側のサスペンションを停車までの間に徐々に伸ばしておくことができるので、後輪の制動力配分を徐々に高めて、車両の後方向へ荷重を移動させることができる。
【0049】
その結果、停車までの間に、車両の前方向側を浮き上がらせて、車両の前下がり状態を緩和しておくことができるので、車両の停車に伴って、減速時のピッチング挙動時とは逆に車両後方側へ荷重が移動した場合でも、車両の揺り返し挙動が発生することが抑制され、停車時のブレーキショックを小さくすることができる。
【0050】
ここで、油圧式の制動装置における制動力は、上述したように、ブレーキ操作部材の操作(油圧変化)に対して、オンかオフかという極端な効き方となるため、ブレーキ操作部材の操作状態を微妙にコントロールして、制動力を細かに制御することが困難であった。
【0051】
そのため、前輪の制動力を徐々に変化させることが困難であるため、油圧式の制動装置では、停車直前の低速領域において、前輪の制動力の急激な減少を招くことで、車体の後方向へ荷重が移動して、車両の大きな揺り返し挙動が発生する。
【0052】
これに対し、本発明によれば、少なくとも前輪のトウ角を機械的に増減させて制動力を制御する方式であるので、停車直前の低速領域においてもリニアな制動力を得ることができる。即ち、車両の速度の値が基準速度値よりも低速となった場合には、ブレーキ操作部材の操作状態に関わらず、車両の速度の減少に伴って、前輪の制動力を徐々に変化させることができる。
【0053】
その結果、運転者の技量によらず、停車直前の低速領域において、前輪の制動力を徐々に減少させることができる。これにより、前輪の制動力が急激に減少することに伴う車体後方向への荷重移動を回避して、車両の大きな揺り返し挙動の発生を抑制することができるので、運転者の技量によらず、停車時のブレーキショックを抑制することができる。
【0054】
また、本発明によれば、基準速度値よりも低速である場合には、車両の速度の減少に伴って、少なくとも前輪のトウ角を制動力が小さくなるように変化させるので、停車後の再発進時には、前輪の操舵動作(トウ角の絶対値をゼロに戻す動作)を最小限に抑制する(速度の減少に伴ってトウ角の絶対値をゼロまで減少させる場合には再発進時における操舵動作を不要とする)ことができ、その結果、車輪の摩耗を抑制してその高寿命化を図ることができると共に停車後の再発進をスムーズに行うことができるという効果がある。
【0055】
請求項9記載の車両によれば、請求項1から8のいずれかに記載の制御装置の奏する効果と同様の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における制御装置100が搭載される車両1を模式的に示した模式図である。なお、図1の矢印FWDは、車両1の前進方向を示す。また、図1では、全車輪2に所定のトウ角が付与された状態が図示されている。
【0057】
まず、車両1の概略構成について説明する。車両1は、図1に示すように、車体フレームBFと、その車体フレームBFに支持される複数(本実施の形態では4輪)の車輪2と、それら各車輪2を独立に回転駆動する車輪駆動装置3と、各車輪2を独立に操舵駆動するアクチュエータ装置4とを主に備えている。
【0058】
第1実施例における車両1は、車輪2にトウ角を付与することで、横力を発生させ、この横力を制動力として利用するように構成されている。なお、後述するように、車両1の速度の値が基準速度値よりも減速されると、その車両1の減速に応じて車輪2のトウ角の絶対値が減少される。これにより、停車時のブレーキショックを抑制するように構成されている。
【0059】
次いで、各部の詳細構成について説明する。車輪2は、図1に示すように、車両1の進行方向前方側に位置する左右の前輪2FL,2FRと、進行方向後方側に位置する左右の後輪2RL,2RRとの4輪を備え、これら前後輪2FL〜2RRは、ステアリング装置20,30により操舵可能に構成されている。
【0060】
ステアリング装置20,30は、各車輪2を操舵するための操舵装置であり、図1に示すように、各車輪2を揺動可能に支持するキングピン21と、各車輪2のナックルアーム(図示せず)に連結されるタイロッド22と、そのタイロッド22にアクチュエータ装置4の駆動力を伝達する伝達機構部23とを主に備えて構成されている。
【0061】
アクチュエータ装置4は、上述したように、各車輪2を独立に操舵駆動するための操舵駆動装置であり、図1に示すように、4個のアクチュエータ(FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RR)を備えて構成されている。運転者がハンドル51を操作して旋回を指示した場合には、アクチュエータ装置4の一部又は全部が駆動され、ハンドル51の操作量に応じたトウ角が車輪2の一部(例えば、前輪2FR,2FLのみ)又は全部に付与される。
【0062】
また、運転者によるハンドル操作が行われていない場合であっても、ブレーキペダル52が踏み込まれた(操作された)場合には、アクチュエータ装置4(FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RR)の一部又は全部が駆動され、車輪2の一部又は全部(本実施の形態では全車輪2)にトウ角が付与される。これにより、車輪2に横力を発生させ、この横力を制動力として利用することで、車両1の速度を減速させる。
【0063】
このように、アクチュエータ装置4による車輪2の操舵駆動は、ハンドル51の操作に起因し、旋回を目的として行われる場合と、ハンドル51の操作の有無に関わらず、制動を目的として行われる場合との2種類があり、前者を旋回制御と称し、後者をトウ角制御と称す。なお、トウ角制御の詳細については、後述する(図3参照)。
【0064】
ここで、本実施の形態では、FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RRが電動モータで構成されると共に、伝達機構部23がねじ機構で構成される。電動モータが回転されると、その回転運動が伝達機構部23により直線運動に変換され、タイロッド22に伝達される。その結果、各車輪2がキングピン21を揺動中心として揺動駆動され、各車輪2に所定の舵角が付与される。
【0065】
車輪駆動装置3は、各車輪2を独立に回転駆動するための回転駆動装置であり、図1に示すように、4個の電動モータ(FL〜RRモータ3FL〜3RR)を各車輪2ごとに(即ち、インホイールモータとして)配設して構成されている。運転者がアクセルペダル53を操作した場合には、各車輪駆動装置3から回転駆動力が各車輪2に付与され、各車輪2がアクセルペダル53の操作量に応じた回転速度で回転される。
【0066】
制御装置100は、上述のように構成された車両1の各部を制御するための制御装置であり、例えば、アクセルペダル53が操作された場合などには、車輪駆動装置3の駆動制御を行う一方、ハンドル51や各ペダル52,53が操作された場合などには、アクチュエータ装置4の駆動制御(旋回制御、トウ角制御)や車輪駆動装置3の駆動制御を行う。
【0067】
次いで、図2を参照して、制御装置100の詳細構成について説明する。図2は、制御装置100の電気的構成を示したブロック図である。制御装置100は、図2に示すように、CPU71、ROM72及びRAM73を備え、これらはバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、車輪駆動装置3等の複数の装置が接続されている。
【0068】
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置である。ROM72は、CPU71により実行される制御プログラム(例えば、図3に図示されるトウ角制御処理のフローチャート)や固定値データ等を格納した書き換え不能な不揮発性のメモリであり、RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリである。
【0069】
ここで、ROM72には、図2に示すように、トウ角マップ72aが設けられている。トウ角マップ72aは、車両1の速度と車輪2のトウ角との関係をブレーキペダル52の踏み込み量(操作量、操作状態)に対応付けて記憶したマップであり(図4参照)、CPU71は、このトウ角マップ72aの内容に基づいて、車輪2に付与するトウ角を決定し、アクチュエータ装置4の駆動制御を行う。
【0070】
車輪駆動装置3は、上述したように、各車輪2(図1参照)を回転駆動するための装置であり、各車輪2に回転駆動力を付与する4個のFL〜RRモータ3FL〜3RRと、それら各モータ3FL〜3RRをCPU71からの命令に基づいて駆動制御する駆動回路(図示せず)とを備えている。
【0071】
アクチュエータ装置4は、上述したように、各車輪2を操舵駆動するための装置であり、各車輪2に操舵駆動力を付与する4個のFL〜RRアクチュエータ4FL〜4RRと、それら各アクチュエータ4FL〜4RRをCPU71からの命令に基づいて駆動制御する駆動回路(図示せず)とを備えている。
【0072】
舵角センサ装置31は、各車輪2の舵角(トウ角)を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2の舵角をそれぞれ検出する4個のFL〜RR舵角センサ31FL〜31RRと、それら各舵角センサ31FL〜31RRの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
【0073】
なお、本実施の形態では、各舵角センサ31FL〜31RRが各伝達機構部23にそれぞれ設けられ、その伝達機構部23において回転運動が直線運動に変換される際の回転数を検出する非接触式の回転角度センサとして構成されている。この回転数は、タイロッド22の変位量に比例するので、CPU71は、舵角センサ装置31から入力された検出結果(回転数)に基づいて、各車輪2の舵角を得ることができる。
【0074】
ここで、舵角センサ装置31により検出される舵角とは、各車輪2の中心線と車両1(車体フレームBF)の基準線(各線ともに図示せず)とがなす角度であり、車両1の進行方向とは無関係に定まる角度である。
【0075】
車両速度センサ装置32は、路面に対する車両1の速度(絶対値及び進行方向)を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、前後及び左右方向加速度センサ32a,32bと、それら各加速度センサ32a,32bの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
【0076】
前後方向加速度センサ32aは、車両1(車体フレームBF)の前後方向(図1上下方向)の加速度を検出するセンサであり、左右方向加速度センサ32bは、車両1(車体フレームBF)の左右方向(図1左右方向)の加速度を検出するセンサである。なお、本実施の形態では、これら各加速度センサ32a,32bが圧電素子を利用した圧電型センサとして構成されている。
【0077】
CPU71は、車両速度センサ装置32から入力された各加速度センサ32a,32bの検出結果(加速度値)を時間積分して、2方向(前後及び左右方向)の速度をそれぞれ算出すると共に、それら2方向成分を合成することで、車両1の速度(絶対値及び進行方向)を得ることができる。
【0078】
車輪回転速度センサ装置33は、各車輪2の回転速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2の回転速度をそれぞれ検出する4個のFL〜RR回転速度センサ33FL〜33RRと、それら各回転速度センサ33FL〜33RRの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
【0079】
なお、本実施の形態では、各回転センサ33FL〜33RRが各車輪2に設けられ、各車輪2の角速度を回転速度として検出する。即ち、各回転センサ33FL〜33RRは、各車輪2に連動して回転する回転体と、その回転体の周方向に多数形成された歯の有無を電磁的に検出するピックアップとを備えた電磁ピックアップ式のセンサとして構成されている。
【0080】
CPU71は、車輪回転速度センサ装置33から入力された各車輪2の回転速度と、予めROM72に記憶されている各車輪2の外径とから、各車輪2の実際の周速度をそれぞれ得ることができる。
【0081】
接地荷重センサ装置34は、各車輪2の接地面が路面から受ける荷重を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2が受ける荷重をそれぞれ検出するFL〜RR荷重センサ34FL〜34RRと、それら各荷重センサ34FL〜34RRの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
【0082】
なお、本実施の形態では、各荷重センサ34FL〜34RRがピエゾ抵抗型の3軸荷重センサとして構成されている。これら各荷重センサ34FL〜34RRは、各車輪2のサスペンション軸(図示せず)上に配設され、上述した車輪2が路面から受ける荷重を車両1の前後方向、左右方向および垂直方向の3方向で検出する。
【0083】
CPU71は、接地荷重センサ装置34から入力された各荷重センサ34FL〜34RRの検出結果(接地荷重)より、各車輪2の接地面における路面の摩擦係数μを次のように推定する。
【0084】
例えば、前輪2FLに着目すると、FL荷重センサ34FLにより検出される車両1の前後方向、左右方向および垂直方向の荷重がそれぞれFx、Fy及びFzであれば、前輪2FLの接地面に対応する部分の路面における車両1前後方向の摩擦係数μは、前輪2FLが路面に対してスリップしているスリップ状態ではFx/Fzとなり(μx=Fx/Fz)、前輪2FLが路面に対してスリップしていない非スリップ状態ではFx/Fzよりも大きい値であると推定される(μx>Fx/Fz)。
【0085】
なお、車両1の左右方向の摩擦係数μyについても同様であり、スリップ状態ではμy=Fy/Fzとなり、非スリップ状態ではFy/Fzよりも大きな値と推定される。また、摩擦係数μを他の手法により検出することは当然可能である。他の手法としては、例えば、特開2001−315633号公報や特開2003−118554号に開示される公知の技術が例示される。
【0086】
図2に示す他の入出力装置35としては、例えば、ハンドル51、ブレーキペダル52及びアクセルペダル53(いずれも図1参照)の操作状態(回転角や踏み込み量、操作速度など)を検出するための操作状態検出センサ装置(図示せず)等が例示される。
【0087】
次いで、図3及び図4を参照して、本発明のトウ角制御について説明する。なお、トウ角制御とは、上述した通り、車両1の走行速度を下げるための制動力を得ることを目的として、車輪2にトウ角を付与するための制御であり、車両1の旋回を目的とする上述した旋回制御と区別される。
【0088】
図3は、トウ角制御処理を示すフローチャートである。この処理は、制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.5秒間隔で)実行される処理である。
【0089】
CPU71は、トウ角制御処理に関し、まず、ブレーキペダル52の操作量(踏み込み量、踏み込み状態)を検出すると共に(S1)、車両1の速度を検出した後(S2)、S3の処理へ移行する。なお、上述したように、車両1の速度は車両速度センサ装置32により検出され、その車両速度センサ装置32からCPU71に入力される。
【0090】
S3の処理では、S1の処理で検出したブレーキペダル52の操作量(踏み込み量、踏み込み状態)及びS2の処理で検出した車両1の速度に対応する車輪2のトウ角の値を、ROM72に設けられているトウ角マップ72a(図2参照)より読み取る(S3)。ここで、図4を参照して、トウ角マップ72aの内容について説明する。
【0091】
図4は、トウ角マップ72aの内容を模式的に図示した模式図である。図4に示すように、トウ角マップ72aには、車両1の速度と車輪2のトウ角との関係がブレーキペダル52の踏み込み量(操作量、操作状態)に対応付けられて記憶されている。
【0092】
なお、図4では、図面を簡素化して理解を容易とするために、ブレーキペダル52の踏み込み量(操作量、操作状態)として、20%から100%までの範囲を20%毎に5分割した5種類の実線のみが図示されている。但し、ROM72には、ブレーキペダル52の踏み込み量がより細かな値(例えば、0.1%毎)で記憶されている。
【0093】
このトウ角マップ72aによれば、図4に示すように、車両1の速度がV1、かつ、ブレーキペダル52の踏み込み量が0%の場合には(図4の位置P1)、車輪2のトウ角は0°と規定され、車両1の速度がV2、かつ、ブレーキペダル52の踏み込み量が60%の場合には(図4の位置P2)、車輪2のトウ角はα3と規定される。
【0094】
同様に、車両1の速度がV3、かつ、ブレーキペダル52の踏み込み量が60%の場合には(図4の位置P3)、車輪2のトウ角はα3と規定され、車両1の速度が0、かつ、ブレーキペダル52の踏み込み量が0%の場合には(図4の位置P4)、車輪2のトウ角は0°と規定される。
【0095】
ここで、本実施の形態では、ブレーキペダル52の各踏み込み量(20%、40%、・・・、100%)毎に基準速度値が設定されており、例えば、踏み込み量60%であれば、図4に示すように、基準速度値はV3とされている。
【0096】
この基準速度値は、車輪2のトウ角を決定する際の分岐点となる速度であり、この基準速度値よりも車両1の速度が高速である場合には、車輪2のトウ角は、ブレーキペダル52の踏み込み量によって決定される一方、車両1の速度が基準速度値よりも低速である場合には、車輪2のトウ角は、ブレーキペダル52の踏み込み量に加えて、車両1の速度によって決定される。
【0097】
例えば、ブレーキペダル52の踏み込み量が60%に固定されている状態を仮定すると、車両1の速度がV2からV3まで減速されるまでの領域では(図4の位置P2から位置P3までの区間)、車輪2のトウ角は、図4に示すように、ブレーキペダル52の踏み込み量に基づいて、α3と決定される。
【0098】
一方、ブレーキペダル52の踏み込み量が60%に固定されている状態であっても、車両1の速度がV3よりも低速となる領域では(図4の位置P3から位置P4までの区間)、車輪2のトウ角は、図4に示すように、車両1の速度に基づいて、α3、α2、α1、0°と決定される。
【0099】
図3に戻って説明する。S3の処理において、ブレーキペダル52の操作量(踏み込み量、踏み込み状態)及び車両1の速度に対応する車輪2のトウ角の値をトウ角マップ72aより読み取った後は、その読み取ったトウ角を目標値としてアクチュエータ装置4を駆動制御して(S4)、このトウ角制御処理を終了する。
【0100】
具体的には、例えば、車両1が速度V1で走行している状態(図4の位置P1)において、運転者によりブレーキペダル52が踏み込まれると、CPU71は、ブレーキペダル52の踏み込み量と車両1の速度と検出し、それら踏み込み量と速度に基づいて、車輪2のトウ角をトウ角マップ72aより読み出すと共に(S3)、その読み出したトウ角を目標値としてアクチュエータ装置4を駆動制御する(S4)。
【0101】
これにより、車輪2に所定のトウ角が付与され、横力が発生することで、車両1の速度がV1から減速される。そして、例えば、図4に示すように、ブレーキペダル52の踏み込み量が20%、40%、60%と更に増加されると、これに伴って、車輪2のトウ角がα1、α2、α3と増加されることで、車両1の速度がV2まで減速される(図4の位置P2)。
【0102】
この状態(図4の位置P2)において、例えば、ブレーキペダル52の踏み込み量が60%に固定されると、図4に示すように、車両1の速度がV2からV3に減速されるまでの領域(図4の位置P2から位置P3までの区間)では、車輪2のトウ角がα3に固定される。
【0103】
そして、ブレーキペダル52の踏み込み量が60%に固定されたまま、車両1の速度がV3(即ち、基準速度値)よりも低速に減速されると、図4に示すように、ブレーキペダル52の踏み込み量に関わらず、車輪2のトウ角は、車両1の速度の減少に伴って、α2、α1と減少されると共に、車両1の停車により、0°となる。
【0104】
このように、第1実施の形態における制御装置100によれば、車両1の速度が基準速度値よりも高速である場合には、ブレーキペダル52の操作量の増減(操作状態の変化)に伴って車輪2のトウ角の絶対値が増減されるように、アクチュエータ装置4を作動させるので、応答性と大きな制動力とが必要となる制動初期(基準速度値よりも高速領域)において、ブレーキペダル52の操作量に対してリニアな制動力を得ることができる。
【0105】
一方、車両1の速度が基準速度値よりも低速である場合には、ブレーキペダル52の操作量に関わらず、車両1の速度の減少に伴って車輪2のトウ角の絶対値が減少されるように、アクチュエータ装置4を作動させるので、停車直前の低速領域において、減速加速度を徐々に減少させることができる。これにより、制動初期の減速加速度によりたわんでいたサスペンションを停車までの間に徐々に伸ばすことができるので、サスペンションによる揺り返しを防止して、停車時のブレーキショックを抑制することができる。
【0106】
即ち、油圧式の制動装置における制動力は、停車直前の低速領域におけるブレーキペダルの操作に対して、オンかオフかという極端な効き方となるため、ブレーキ操作部材の操作量を微妙にコントロールして、制動力を細かに制御することが困難であった。
【0107】
これに対し、第1実施の形態における制御装置100によれば、車輪2のトウ角を機械的に増減させて制動力を制御する方式であるので、停車直前の低速領域においてもリニアな制動力を得ることができる(図17参照)。
【0108】
特に、車両1の速度の値が基準速度値よりも低速となった場合には、ブレーキペダル52の踏み込み量に関わらず、車両1の速度の減少に伴って、車輪2のトウ角を減少させるので、運転者の技量によらず、減速加速度を徐々に減少させ、停車時のブレーキショックを抑制することができる。
【0109】
また、第1実施の形態における制御装置100によれば、車両1の停車時には車輪2のトウ角を0°まで減少させるので、停車後の再発進時には、車輪の操舵動作(トウ角の絶対値を0°に戻す動作)を不要とすることができ、その結果、車輪2の摩耗を抑制してその高寿命化を図ることができると共に、停車後の再発進をスムーズに行うことができる。
【0110】
次いで、図5を参照して、第2実施の形態について説明する。図5は、第2実施の形態におけるトウ角マップの内容を模式的に図示した模式図である。
【0111】
第1実施の形態における制御装置100では、車両1の停車時において車輪2のトウ角が0°となる場合を説明したが、第2実施の形態における制御装置は、車輪2に所定のトウ角が付与された状態で車両1が停車するように構成されている。なお、上記した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0112】
第2実施の形態における制御装置によれば、図5に示すように、例えば、車両1が速度V11で走行している状態(図5の位置P11)において、運転者によりブレーキペダル52が踏み込まれると、CPU71は、ブレーキペダル52の踏み込み量と車両1の速度とを検出し、それら踏み込み量と速度とに基づいて、車輪2のトウ角をトウ角マップより読み出すと共に、その読み出したトウ角を目標値としてアクチュエータ装置4を駆動制御する(図3のS3及びS4参照)。
【0113】
これにより、車輪2に所定のトウ角が付与され、横力が発生することで、車両1の速度がV11から減速される。そして、例えば、図5に示すように、ブレーキペダル52の踏み込み量が20%、40%、60%と更に増加されると、これに伴って、車輪2のトウ角がα1、α2、α3と増加されることで、車両1の速度がV12まで減速される(図5の位置P12)。
【0114】
この状態(図5の位置P12)において、例えば、ブレーキペダル52の踏み込み量が60%に固定されると、図5に示すように、車両1の速度がV12からV13に減速されるまでの領域(図5の位置P12から位置P13までの区間)では、車輪2のトウ角がα3に固定される。
【0115】
そして、ブレーキペダル52の踏み込み量が60%に固定されたまま、車両1の速度がV13(即ち、基準速度値)よりも低速に減速されると、図5に示すように、ブレーキペダル52の踏み込み量に関わらず、車輪2のトウ角は、車両1の速度の減少に伴って、α2、α1と減少されると共に、車両1の停車により、α0となる(0<α0)。
【0116】
このように、第2実施の形態における制御装置によれば、車輪2に所定のトウ角α0が付与された状態で車両1が停車するように、アクチュエータ装置4を作動させるので、停車した車両1が動き出さないようにするための制動力を得ることができる。
【0117】
その結果、例えば、坂道で車両1を停車させた場合でも、その車両1を停車状態に維持することができるので、油圧式のブレーキ装置を併存させることが不要になる。同様に、駐車ブレーキを設けることも不要になるので、その分、部品コストの削減を図ることができる。
【0118】
ここで、第2実施の形態における制御装置では、図5に示すように、例えば、車両1が速度V11で走行している状態(図5の位置P11)において、ブレーキペダル52が大きく踏み込まれ、その踏み込み量が100%(即ち、基準操作量)に達すると(図5の位置22)、これに伴って、車輪2のトウ角がα4まで増加される。
【0119】
そして、このブレーキペダル52の踏み込み量が100%に達した状態が維持された場合には、図5に示すように、車両1の速度の値に関わらず、車両1が停車するまでの領域(図5の位置P15から位置P16までの区間)において、車輪2のトウ角がα4に固定される。
【0120】
このように、ブレーキペダル52が基準操作量(第2実施の形態では100%の踏み込み量)よりも大きな操作量で操作された場合には、低速領域においても、車輪2にブレーキペダル52の踏み込み量に応じたトウ角(即ち、最大トウ角)を付与するので、十分な制動力を発揮させ、緊急制動を確実に行うことができる。
【0121】
次いで、図6を参照して、第3実施の形態について説明する。図6は、第3実施の形態におけるトウ角マップの内容を模式的に図示した模式図である。
【0122】
第1実施の形態における制御装置100では、基準速度値がブレーキペダル52の踏み込み量に応じて変化する場合、即ち、踏み込み量が大きいほど基準速度値が高速となる場合を説明したが、第3実施の形態における制御装置は、ブレーキペダルの踏み込み量によらず基準速度値が一定値となるように構成されている。なお、上記した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0123】
第3実施の形態における制御装置では、図6に示すように、ブレーキペダル52の踏み込み量に関わらず、基準速度値の値がV21で一定とされている。即ち、ブレーキペダル52の踏み込み量が20%、40%、60%或いは80%のいずれであっても、車両1の速度がV21(即ち、基準速度値)よりも高速(図6の位置P21〜P24よりも右側の区間)である場合には、車輪2のトウ角がブレーキペダル52の踏み込み量によって決定される一方、車両1の速度がV21(基準速度値)よりも低速(図6の位置P25から位置P21〜P24までの区間)である場合には、車輪2のトウ角が、ブレーキペダル52の踏み込み量に関わらず、車両1の速度によって決定される。
【0124】
このように構成した場合でも、基準速度値よりも高速側の領域では、ブレーキペダル52の操作量の増減(操作状態の変化)に伴って車輪2のトウ角の絶対値が増減させることができるので、応答性と大きな制動力とが必要となる制動初期において、ブレーキペダル52の操作量に対してリニアな制動力を得ることができる。
【0125】
一方、基準速度値よりも低速側の領域では、車両1の速度の減少に伴って車輪2のトウ角の絶対値を減少させ、停車直前の低速領域において、減速加速度を徐々に減少させることができるので、上述したように、サスペンションによる揺り返しを防止して、停車時のブレーキショックを抑制することができる。
【0126】
次いで、図7から図9を参照して、第4実施の形態について説明する。第1実施の形態における制御装置100では、トウ角制御において、車両1の全車輪2を同じ値のトウ角で制御する場合を説明したが、第4実施の形態における制御装置400は、トウ角制御において、前輪2FL,2FRと後輪2RR,2RLとを異なるトウ角で制御するように構成されている。なお、上記した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0127】
図7は、第4実施の形態における制御装置400の電気的構成を示したブロック図である。制御装置400のROM472には、図7に示すように、前輪トウ角マップ472aと後輪トウ角マップ472bとが設けられている。
【0128】
前輪トウ角マップ472aは車両1の速度と前輪2FL,2FRのトウ角との関係を、後輪トウ角マップ472bは車両1の速度と後輪2RL,2RRのトウ角との関係を、それぞれブレーキペダル52の踏み込み量(操作量、操作状態)に対応付けて記憶したマップである(図9参照)。
【0129】
CPU71は、この前輪トウ角マップ472a及び後輪トウ角マップ472bの内容に基づいて、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRに付与するトウ角をそれぞれ決定し、アクチュエータ装置4の駆動制御を行う。
【0130】
図8は、トウ角制御処理を示すフローチャートである。この処理は、制御装置400の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.5秒間隔で)実行される処理である。
【0131】
CPU71は、上述した第1実施例の場合と同様に、ブレーキペダル52の操作量(操作状態)を検出すると共に(S1)、車両1の速度を検出した後(S2)、S43の処理へ移行する。
【0132】
S43の処理では、S1の処理で検出したブレーキペダル52の操作量(踏み込み量、踏み込み状態)及びS2の処理で検出した車両1の速度に対応する車輪2のトウ角の値を、ROM472に設けられている前輪トウ角マップ472a及び後輪トウ角マップ472b(図7参照)から読み取る(S43)。ここで、図9を参照して、前輪トウ角マップ472a及び後輪トウ角マップ472bの内容について説明する。
【0133】
図9(a)は、前輪トウ角マップ472aの内容を模式的に図示した模式図であり、図9(b)は、後輪トウ角マップ472bの内容を模式的に図示した模式図である。
【0134】
上述したように、前輪トウ角マップ472aは、車両1の速度と前輪2FL,2FRのトウ角との関係をブレーキペダル52の踏み込み量(操作量、操作状態)に対応付けて規定するものであり、後輪トウ角マップ472bは、車両1の速度と後輪2RL,2RRのトウ角との関係をブレーキペダル52の踏み込み量(操作量、操作状態)に対応付けて規定するものである。
【0135】
これら前輪トウ角マップ472a及び後輪トウ角マップ472bによれば、図9に示すように、車両1の速度がV41、かつ、ブレーキペダル52の踏み込み量が0%の場合には(図9の位置Pf41,Pr41)、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRのトウ角はそれぞれ0°と規定され、車両1の速度がV42、かつ、ブレーキペダル52の踏み込み量が60%の場合には(図9の位置Pf42,Pr42)、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRのトウ角はそれぞれαf3及びαr3と規定される。
【0136】
同様に、車両1の速度がV43、かつ、ブレーキペダル52の踏み込み量が60%の場合には(図9の位置Pf43,Pr43)、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRのトウ角はそれぞれαf3及びαr3と規定される。
【0137】
ここで、第4実施の形態では、図9に示すように、ブレーキペダル52の踏み込み量に関わらず、基準速度値の値が前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RR共にV43で一定とされている。即ち、ブレーキペダル52の踏み込み量が20%、40%、60%或いは80%のいずれであっても、車両1の速度がV43(即ち、基準速度値)よりも高速(図9の位置Pf43,Pr43よりも右側の区間)である場合には、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRのトウ角がブレーキペダル52の踏み込み量によって決定される一方、車両1の速度がV43(基準速度値)よりも低速(図9の位置Pf43,Pr43から速度0までの区間)である場合には、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRのトウ角が、ブレーキペダル52の踏み込み量に加えて、車両1の速度によって決定される。
【0138】
例えば、ブレーキペダル52の踏み込み量が60%に固定されている状態を仮定すると、車両1の速度がV41からV43まで減速されるまでの領域では、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRのトウ角は、図9に示すように、ブレーキペダル52の踏み込み量に基づいて、αf3及びαr3とそれぞれ決定される。
【0139】
一方、この状態から車両1の速度がV43(基準速度値)よりも減速されると、ブレーキペダル52の踏み込み量の値に関わらず、図9に示すように、車両1の速度の減速に伴って、前輪2FL,2FRのトウ角は、αf3からαf2まで減少し、かつ、後輪2RL,2RRのトウ角は、αr3からαr4まで上昇するように、それぞれ決定される。
【0140】
図8に戻って説明する。S43の処理において、ブレーキペダル52の操作量(踏み込み量、踏み込み状態)及び車両1の速度に対応する前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRのトウ角の値を前輪トウ角マップ472a及び後輪トウ角マップ472bよりそれぞれ読み取った後は、それら読み取った各トウ角を目標値としてアクチュエータ装置4を駆動制御して(S4)、このトウ角制御処理を終了する。
【0141】
具体的には、例えば、車両1が速度V41で走行している状態(図9の位置Pf41,Pr41)において、運転者によりブレーキペダル52が踏み込まれると、CPU71は、ブレーキペダル52の踏み込み量と車両1の速度と検出し、それら踏み込み量と速度に基づいて、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRのトウ角を前輪トウ角マップ472a及び後輪トウ角マップ472bよりそれぞれ読み出し(S43)、それら読み出した各トウ角を目標値としてアクチュエータ装置4を駆動制御する(S4)。
【0142】
これにより、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRに所定のトウ角が付与され、横力が発生することで、車両1の速度がV41から減速される。そして、例えば、図9に示すように、ブレーキペダル52の踏み込み量が20%、40%、60%と更に増加されると、これに伴って、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRのトウ角がαf1,αr1〜αf3,αr3と順次増加されることで、車両1の速度がV42まで減速される(図9の位置Pf42,Pr42)。
【0143】
この状態(図9の位置Pf42,Pr42)において、例えば、ブレーキペダル52の踏み込み量が60%に固定されると、図9に示すように、車両1の速度がV42からV43に減速されるまでの領域では、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRのトウ角がそれぞれαf3及びαr3に固定される。
【0144】
そして、ブレーキペダル52の踏み込み量が60%に固定されたまま、車両1の速度がV43(即ち、基準速度値)よりも低速に減速されると、図9に示すように、ブレーキペダル52の踏み込み量に関わらず、車輪2のトウ角は、車両1の速度の減速に伴って、前輪2FL,2FRのトウ角がαf3からαf2までの範囲で減少する一方、後輪2RL,2RRのトウ角がαr3からαr4までの範囲で上昇する。
【0145】
このように、本実施の形態における制御装置400によれば、車両1の速度の減少に伴って、前輪2FL,2FRのトウ角の値を減少させるので、前輪2FL,2FRの制動力配分を徐々に低くして、減速加速度により縮んでいた前輪2FL,2FR側のサスペンションを車両1の停車までの間に徐々に伸ばしておくことができる。
【0146】
更に、本実施の形態では、車両1の速度の減少に伴って、後輪2FL,2FRのトウ角の値を増加させるので、後輪2RL,2RRの制動力配分を徐々に高めて、車両1の後方向へ荷重を移動させることができる。
【0147】
その結果、停車までの間に、車両1の前方向側を浮き上がらせて、車両1の前下がり状態を緩和しておくことができるので、車両1の停車に伴って、減速時のピッチング挙動時とは逆に車両1後方側へ荷重が移動した場合でも、車両1の揺り返し挙動が発生することを抑制して、停車時のブレーキショックを小さくすることができる。
【0148】
ここで、油圧式の制動装置では、上述したように、前輪と後輪との制動力配分を徐々に変化させることが困難であり、オンかオフかという極端な効き方で作動するため、前輪2FL,2FRの制動力の急激な減少と、後輪2RL,2RRの制動力の急激な上昇とを招き、制動力配分が後輪2RL,2RRへ急激に移動するため、車両1の後方向へ荷重が移動して、車両1の大きな揺り返し挙動を招く。
【0149】
また、油圧式の制動装置では、後輪2RL,2RRのロックを回避するべく、後輪2RL,2RRの制動力配分を十分に高めることができないため、車両1の停車までに、車両1の前下がり状態を十分に緩和させることができない、或いは、後輪2RL,2RRのロックを防止するための複雑な制御や機構が必要になるという不具合がある。
【0150】
これに対し、本実施の形態における制御装置400によれば、車輪2のトウ角を機械的に増減させて制動力を制御する方式であるので、停車直前の低速領域においてもリニアな制動力を得ることができる。即ち、車両1の速度の値が基準速度値よりも低速となった場合には、ブレーキペダル52の操作量に関わらず、車両1の速度の減少に伴って、前輪2FL,2FRと後輪2RL,2RRとの制動力配分を徐々に変化させることができる。
【0151】
これにより、運転者の技量によらず、停車直前の低速領域において、制動力配分を後輪2RL,2RRへ徐々に移動させることができるので、制動力配分の後輪2RL,2RRへの急激な移動に伴う車両後方向への荷重移動を回避して、車両1の大きな揺り返し挙動の発生を抑制することができ、その結果、運転者の技量によらず、停車時のブレーキショックを抑制することができる。
【0152】
次いで、図10を参照して、第5実施の形態について説明する。図10は、第5実施の形態におけるトウ角マップの内容を模式的に図示した模式図である。
【0153】
第4実施の形態では、前輪2FL,2FRの基準速度値と後輪2RL,2RRの基準速度値とが同一の値(速度V43)に設定される場合を説明したが、第5実施の形態における制御装置は、前輪2FL,2FRの基準速度値と後輪2RL,2RRの基準速度値とを異なる値(V53,V54)に設定して構成されている。なお、上記した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0154】
第5実施の形態における制御装置によれば、図10に示すように、前輪2FL,2FRに対する基準速度値(前輪用基準速度値)にはV53が、後輪2RL,2RRに対する基準速度値(後輪用基準速度値)にはV54が、それぞれ異なる値として設定されている。
【0155】
制御装置は、前輪2FL,2FRのトウ角を制御する場合、前輪用基準速度値(V53)に基づいて、アクチュエータ装置4を作動させる一方、後輪2RL,2RRのトウ角を制御する場合には、後輪用基準速度値(V54)に基づいて、アクチュエータ装置4を作動させるので、前輪2FL,2FRのトウ角の減少と後輪2RL,2RRのトウ角の増加とを異なるタイミングで開始させることができる。
【0156】
これにより、例えば、後輪用基準速度値(V54)を前輪用基準速度値(V53)よりも低速側の値に設定した場合には(V54<V53)、車両1の速度が例えば踏み込み量60%の状態のままで速度V52(位置Pf52,Pr52)から減速されると、図10に示すように、まず先に、車両1の速度が前輪用基準速度値(V53)に達し、前輪2FL,2FRのトウ角をαf3からαf2へ向けて減少させる動作が開始される。そして、その後に、車両1の速度が後輪用基準速度値(V54)に達し、後輪2RL,2RRのトウ角をαr3からαr4へ向けて増加させる動作が開始される。
【0157】
これにより、前輪2FL,2FRのトウ角の減少(制動力の減少)によって前輪2FL,2FR側のサスペンションを伸ばし、この前輪側のサスペンションの伸長に伴う荷重の車両後方側への移動により、後輪2RL,2RRの接地荷重を増加させた後に、後輪2RL,2RRのトウ角を増加(制動力を増加)させることができ、その結果、後輪2RL,2RRがロックすることをより確実に抑制することができる。この構成は、前輪2FL,2FRの重量配分が多くなるFF型車両の場合や、走行する路面の摩擦係数が小さい場合などに特に効果を奏する。
【0158】
一方、例えば、後輪用基準速度値(V54)を前輪用基準速度値(V53)よりも高速側の値に設定した場合には(V53<V54)、車両1の速度が例えば踏み込み量60%の状態のままで速度V52(位置Pf52,Pr52)から減速されると、図10に示すように、まず先に、車両1の速度が後輪用基準速度値(V54)に達し、後輪2RL,2RRのトウ角をαr3からαr4へ増加させる動作が開始される。そして、その後に、車両1の速度が前輪用基準速度値(V53)に達し、前輪2FL,2FRのトウ角をαf3からαf2へ減少させる動作が開始される。
【0159】
これにより、後輪2RL,2RRのトウ角の増加がより早期に行われるので、前輪2FL,2FRのトウ角を減少させる場合でも、車輪2全体としての制動力の向上を図ることができる。また、後輪2RL,2RRのトウ角の増加を先に行う場合には、後輪2RL,2RRのトウ角を所定の値まで増加(例えば、αr3からαr4まで増加)させる際の増加率をより緩やかな値に設定することができるので、制動力の変化を緩やかとして、後輪2RL,2RRがロックすることをより確実に回避することができる。この構成は、後輪2RL,2RRの重量配分が多くなるFR型車両、MR型車両或いはRR型車両の場合や、走行する路面の摩擦係数が大きい場合などに特に効果を奏する。
【0160】
次いで、図11を参照して、第6実施の形態について説明する。図11は、第6実施の形態におけるトウ角マップの内容を模式的に図示した模式図である。
【0161】
第4実施の形態では、後輪2RL,2RRのトウ角を、後輪用基準速度値よりも低速領域において、増加させる場合を説明したが、第6実施の形態における制御装置は、後輪2RL,2RRのトウ角を、後輪用基準速度値よりも低速領域において、一定値に保持するように構成されている。なお、上記した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0162】
第6実施の形態における制御装置によれば、図10に示すように、例えば、車両1の速度がV62(位置Pf62,Pr62)から減速され、V63(即ち、基準速度値、位置Pf63,Pr63)よりも低速に減速されると、ブレーキペダル52の踏み込み量に関わらず、車輪2のトウ角は、車両1の速度の減速に伴って、前輪2FL,2FRのトウ角がαf0へ向けて減少する一方、後輪2RL,2RRのトウ角は速度V63時点での値が維持される。
【0163】
このように、本実施の形態における制御装置によれば、車両1の速度の減少に伴って、前輪2FL,2FRのトウ角の値を減少させるので、前輪2FL,2FRの制動力配分を徐々に低くして、減速加速度により縮んでいた前輪2FL,2FR側のサスペンションを車両1の停車までの間に徐々に伸ばしておくことができる。
【0164】
そして、後輪2FL,2FRについては、そのトウ角の値を速度V63(即ち、基準速度値)時点での値に維持するので、後輪2RL,2RRの制動力配分を徐々に高めて、車両1の後方向へ荷重を移動させることができる。なお、この場合には、後輪2RL,2RRのトウ角の制動力配分の変化が例えば第4実施の形態の場合と比較してより緩やかとなるので、ロックすることをより確実に防止することができる。
【0165】
その結果、停車までの間に、車両1の前方向側を浮き上がらせて、車両1の前下がり状態を緩和しておくことができるので、車両1の停車に伴って、減速時のピッチング挙動時とは逆に車両1後方側へ荷重が移動した場合でも、車両1の揺り返し挙動が発生することを抑制して、停車時のブレーキショックを小さくすることができる。
【0166】
ここで、本実施の形態では、前輪2FL,2FRにおけるトウ角αf0の値が0に設定されている(αf0=0)。これにより、前輪2FL,2FRのトウ角の値が0となる状態で車両1を停車させることができるので、停車後の再発進時には、前輪2FL,2FRの操舵動作を不要とすることができる。その結果、前輪の摩耗を抑制してその高寿命化を図ることができると共に停車後の再発進をスムーズに行うことができる。
【0167】
次いで、図12を参照して、第7実施の形態について説明する。図12は、第7実施の形態におけるトウ角マップの内容を模式的に図示した模式図である。なお、上記した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0168】
第7実施の形態における制御装置は、上述した第6実施の形態に対し、前輪2FL,2FRのトウ角の制御方法が異なる。即ち、第6実施の形態では、車両1の速度が基準速度値V63よりも低速となった場合、前輪2FL,2FRのトウ角をαf0へ向けて減少させたが(図11参照)、第7実施の形態における制御装置では、図12に示すように、基準速度値V63の時点でのブレーキペダル52の踏み込み量に応じて、前輪2FL,2FRのトウ角が減少される。
【0169】
例えば、車両1の速度がV73(基準速度値)まで減速された時点で、ブレーキペダル52の踏み込み量が例えば60%であれば、前輪2FL,2FRのトウ角は、αf3からαf2へ向けて減少される一方、ブレーキペダル52の踏み込み量が例えば40%であれば、前輪2FL,2FRのトウ角は、車両1の速度の減速に伴って、αf2からαf1へ向けて減少される。
【0170】
この場合にも、上述した第6実施の形態の場合と同様に、停車までの間に、車両1の前方向側を浮き上がらせて、車両1の前下がり状態を緩和しておくことで、車両1の停車に伴って、減速時のピッチング挙動時とは逆に車両1後方側へ荷重が移動した場合でも、車両1の揺り返し挙動が発生することを抑制して、停車時のブレーキショックを小さくすることができる。
【0171】
次いで、図13を参照して、第8実施の形態について説明する。図13は、第8実施の形態におけるトウ角マップの内容を模式的に図示した模式図である。なお、上記した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0172】
第8実施の形態における制御装置は、上述した第6実施の形態に対し、後輪2RL,2RRのトウ角の制御方法が異なる。即ち、第6実施の形態では、車両1の速度が基準速度値V63よりも低速となった場合、後輪2RL,2RRのトウ角を速度V63時点での値のままで維持したが(図11参照)、第8実施の形態における制御装置では、図13に示すように、車両1の速度が基準速度値V83よりも低速になると、車両1の速度の低下に伴って、後輪2RL,2RRのトウ角が増加される。
【0173】
この場合にも、上述した第6実施の形態の場合と同様に、停車までの間に、車両1の前方向側を浮き上がらせて、車両1の前下がり状態を緩和しておくことで、車両1の停車に伴って、減速時のピッチング挙動時とは逆に車両1後方側へ荷重が移動した場合でも、車両1の揺り返し挙動が発生することを抑制して、停車時のブレーキショックを小さくすることができる。
【0174】
また、第8実施の形態における制御装置は、上述した第6実施の形態に対し、基準速度値の設定方法が異なる。即ち、第6実施の形態では、前輪2FL,2FRの基準速度値と後輪2RL,2RRの基準速度値とがそれぞれ同じ値(V63)に設定されたが(図11参照)、第8実施の形態における制御装置は、図13に示すように、前輪2FL,2FRに対する基準速度値(前輪用基準速度値)にはV83が、後輪2RL,2RRに対する基準速度値(後輪用基準速度値)にはV84が、それぞれ異なる値として設定されている。
【0175】
これにより、上述した第6実施の形態の場合と同様に、後輪用基準速度値(V84)と前輪用基準速度値(V83)との値を適宜設定することで(V84<V83、又は、V83<V84)、後輪2RL,2RRがロックすることの抑制と、車輪2全体としての制動力の向上とを図ることができる。
【0176】
なお、図3に示すフローチャート(トウ角制御処理)において、請求項1記載の車両速度検出手段としてはS2の処理が、操作量検出手段としてはS1の処理が、アクチュエータ作動手段としてはS4の処理が、請求項8記載の車両速度検出手段としてはS2の処理が、操作状態検出手段としてはS1の処理が、それぞれ該当する。また、図8に示すフローチャート(トウ角制御処理)において、請求項1記載の車両速度検出手段としてはS2の処理が、操作量検出手段としてはS1の処理が、アクチュエータ作動手段としてはS4の処理が、請求項8記載の車両速度検出手段としてはS2の処理が、操作状態検出手段としてはS1の処理が、それぞれ該当する。
【0177】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0178】
例えば、上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0179】
上記各実施の形態では説明を省略したが、左右の車輪2が互いに同じ絶対値のトウ角(操舵方向が同じ又は異なる)を有するようにトウ角制御を行っても良く、左右の車輪2が互いに異なる絶対値のトウ角(操舵方向が同じ又は異なる)を有するようにトウ角制御を行っても良い。また、全ての車輪2が同じ絶対値のトウ角を有するようにトウ角制御を行っても良い。複数の車輪2を同じトウ角とすることで、制御装置100の制御負担の軽減を図ることができる。
【0180】
この場合には、左右の車輪2がトーイン又はトーアウトとなるように、左右の車輪2の操舵方向を互いに逆方向として、かつ、同じタイミングで操舵制御を行うことが好ましい。このように、左右の車輪2をトーイン又はトーアウトとなるようにトウ角制御を行うことで、車両1に発生する旋回力を全体として相殺して、トウ角制御時の車両1の挙動をより安定させることができる。
【0181】
また、上記各実施の形態では、車両1が旋回中であるか否かに関わらずトウ角制御を行う場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、車両1が直進走行している場合或いは所定の旋回半径以下の旋回中にのみトウ角制御を行うように構成しても良い。これにより、車両1の挙動が不安定化することを抑制することができる。
【0182】
また、上記各実施の形態では、ブレーキ装置(摩擦力を利用したドラムブレーキやディスクブレーキ)を省略して車両1を構成したが、かかるブレーキ装置を車両1に別途設けることは当然可能である。また、車輪駆動装置3を回生ブレーキとして構成し、これをブレーキ装置として利用しても良い。
【0183】
上記各実施の形態において説明したトウ角マップ72aの内容は一例であって、他の内容により構成することは当然可能である。例えば、上記各実施の形態では、基準速度値を接続した仮想線が直線状に形成される場合を説明したが、かかる仮想線を曲線(例えば、速度が減少するほど、速度に対するトウ角の変化率が小さくなる曲線)により構成しても良い。
【0184】
上記第2から第8実施の形態では、ブレーキペダル52の基準操作量(トウ角制御を中止して緊急制動を行うしきい値)が踏み込み量100%に設定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、基準操作量には例えば踏み込み量80%など任意の値を適用することができる。なお、踏み込み量が基準操作量よりも大きな値となった場合には、踏み込み量の増減に応じて車輪2のトウ角も増減させても良く、或いは、踏み込み量が増減した場合でも車輪2のトウ角を所定値(例えば、最大トウ角)に固定しても良い。
【0185】
また、上記第2から第8実施の形態では、ブレーキペダル52に基準操作量を設定し、踏み込み量が基準操作量に達した場合にはトウ角制御を中止して緊急制動制御を行う場合を説明したが、基準操作量を設定することは必ずしも必要ではなく、緊急制動制御を省略することは当然可能である。
【0186】
即ち、第4実施の形態では、ブレーキペダル52の踏み込み量が基準操作量(100%)に達すると、基準速度値(V43)よりも低速領域においても、トウ角制御を中止して、前後輪2FL〜2RRのトウ角を所定値(αf5,αr5)に固定する緊急制動制御を行ったが、これに代えて、図14に示すように、ブレーキペダル52の踏み込み量が基準操作量に達した場合であっても、少なくとも基準速度値(V43)よりも低速領域においては、緊急制動制御を中止して、トウ角制御を実施するように構成することは当然可能である。
【0187】
また、このような制御は、第4実施の形態への適用に限定されるものではなく、第2から第8実施の形態のいずれに適用しても良い。更に、第4から第8実施の形態においては、前輪2FL,2FRでは緊急制動制御を実施(トウ角制御を中止)し且つ後輪2RL,2RRではトウ角制御を実施(緊急制動制御を中止)するようにしても良く、或いは、その逆に、後輪2RL,2RRでは緊急制動制御を実施(トウ角制御を中止)し且つ前輪2FL,2FRではトウ角制御を実施(緊急制動制御を中止)するようにしても良い。
【0188】
上記各実施の形態では、基準速度値がブレーキペダル52の踏み込み量の増加と共に高速側の値二片かする場合(第1及び第2実施の形態、図4及び図5参照)、基準速度値がブレーキペダル52の踏み込み量によらず一定値となる場合(第3から第8実施の形態、図6、図9から図14参照)とをそれぞれ説明したが、これらは一例であり、他の形態を採用することは当然可能である。
【0189】
例えば、図15に示すように、基準速度値がブレーキペダル52の踏み込み量の増加に伴って低速側に変化するように構成しても良い。また、この基準速度値の変化は、ブレーキペダル52の踏み込み量の増加に対して、高速側又は低速側に変化するか否かに関わらず、正比例(即ち、直線状に変化)させる必要はなく、曲線状に変化させても良い。
【0190】
また、上記各実施の形態では、車両1が速度を有する場合には少なくとも車輪2にトウ角が付与される場合(即ち、車両1の走行中には車輪2のトウ角が0とならない)を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、図15(a)に示すように、車両1が速度を有する状態(即ち、車両1の停車前)において、車輪2(前輪2FL,2RRに限らず、後輪2RL,2RRであっても良い)のトウ角を0としても良い。
【0191】
上記各実施の形態ではその説明を省略したが、例えば、停車時に各車輪2に付与されるトウ角はトウ角マップ72a等に従っても良く、或いは、ブレーキペダル52の踏み込み量に比例するトウ角を付与するように構成しても良い。
【0192】
例えば、前者の場合には、ブレーキペダル52の踏み込み量に関わらず、停車直前に付与されていたトウ角が維持され、発進時に速度の増加に伴ってトウ角の絶対値を0又はハンドル51の操作量(操作状態)に応じた値に回復させる方法が例示される。この場合には、トウ角が付与されている車輪2についてはその駆動力が向上するので、発進性能の向上を図ることができる。
【0193】
また、後者の場合には、車両1の停車に伴って各車輪2のトウ角をブレーキペダル52の操作量(踏み込み量、踏み込み状態)に応じた値に回復させる方法が例示される。即ち、車両1が停車した後は、停車時に付与されているトウ角(即ち、マップに規定されているトウ角)に関わらず、トウ角がブレーキペダル52の踏み込み量に応じた値となるように制御する。
【0194】
なお、停車時に付与するトウ角の制御は、前輪2FL,2FRと後輪2RL,2RRとをそれぞれ異なる方法で制御しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【図1】本発明の第1実施の形態における制御装置が搭載される車両を模式的に示した模式図である。
【図2】制御装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図3】トウ角制御処理を示すフローチャートである。
【図4】トウ角マップの内容を模式的に図示する模式図である。
【図5】第2実施の形態におけるトウ角マップの内容を模式的に図示する模式図である。
【図6】第3実施の形態におけるトウ角マップの内容を模式的に図示する模式図である。
【図7】第4実施の形態における制御装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図8】トウ角制御処理を示すフローチャートである。
【図9】トウ角マップの内容を模式的に図示する模式図である。
【図10】第5実施の形態におけるトウ角マップの内容を模式的に図示する模式図である。
【図11】第6実施の形態におけるトウ角マップの内容を模式的に図示する模式図である。
【図12】第7実施の形態におけるトウ角マップの内容を模式的に図示する模式図である。
【図13】第8実施の形態におけるトウ角マップの内容を模式的に図示する模式図である。
【図14】変形例におけるトウ角マップの内容を模式的に図示する模式図である。
【図15】変形例におけるトウ角マップの内容を模式的に図示する模式図である。
【図16】従来の油圧式のブレーキ装置による制動力を本発明における制動力と対比させて図示する模式図である。
【符号の説明】
【0196】
100 制御装置
1 車両
2 車輪
2FL 前輪(車輪、左車輪)
2FR 前輪(車輪、右車輪)
2RL 後輪(車輪、左車輪)
2RR 後輪(車輪、右車輪)
4 アクチュエータ装置
4FL〜4RR FL〜RRアクチュエータ(アクチュエータ装置)
52 ブレーキペダル(ブレーキ操作部材)
72 ROM(記憶手段)
V3,V13,V21 基準速度値の一例
V43,V63,V73 基準速度値の一例
V53,V83 前輪用基準速度値の一例
V54,V84 後輪用基準速度値の一例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転舵可能に構成される前輪及び後輪と、それら前輪及び後輪を操舵駆動するアクチュエータ装置とを有する車両に対し、前記アクチュエータ装置を作動させ、前記前輪及び後輪のトウ角を制御する制御装置であって、
前記車両の速度を検出する車両速度検出手段と、
運転者により操作されるブレーキ操作部材の操作量を検出する操作量検出手段と、
基準速度値を記憶する記憶手段と、
前記車両速度検出手段により検出された前記車両の速度の値が前記記憶手段に記憶される基準速度値よりも高速である場合には、前記操作量検出手段により検出された前記ブレーキ操作部材の操作量の増減に伴って少なくとも前記前輪のトウ角の絶対値が増減されるように、前記アクチュエータ装置を作動させると共に、
前記車両速度検出手段により検出された前記車両の速度の値が前記記憶手段に記憶される基準速度値よりも低速である場合には、前記車両速度検出手段により検出された前記車両の速度の減少に伴って、前記前輪のトウ角の絶対値が減少され、かつ、前記後輪のトウ角の絶対値が少なくとも一定値を保つか又は増加するように、前記アクチュエータ装置を作動させるアクチュエータ作動手段と、
を備えていることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記記憶手段に記憶される基準速度値は、前記前輪に対する基準速度値である前輪用基準速度値と、前記後輪に対する基準速度値である後輪用基準速度値とを備え、
前記アクチュエータ作動手段は、前記前輪のトウ角を制御する場合には、前記前輪用基準速度値に基づいて、前記アクチュエータ装置を作動させる一方、前記後輪のトウ角を制御する場合には、前記後輪用基準速度値に基づいて、前記アクチュエータ装置を作動させることを特徴とする請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、基準操作量を記憶し、
前記アクチュエータ作動手段は、前記操作量検出手段により検出された前記ブレーキ操作部材の操作量が前記記憶手段に記憶される基準操作量よりも大きな値である場合、前記車両速度検出手段により検出された前記車両の速度の値に関わらず、少なくとも前記前輪のトウ角の絶対値が前記操作量検出手段により検出された前記ブレーキ操作部材の操作量に応じた値となるように、前記アクチュエータ装置を作動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記アクチュエータ作動手段は、前記前輪及び後輪に所定のトウ角が付与された状態で前記車両が停車するように、前記アクチュエータ装置を作動させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の制御装置。
【請求項5】
前記アクチュエータ作動手段は、前記後輪に所定のトウ角が付与され、かつ、前記前輪又のトウ角の値が0となる状態で前記車両が停車するように、前記アクチュエータ装置を作動させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の制御装置。
【請求項6】
前記前輪及び後輪は、前記車両の左右に配設される左車輪と右車輪とを備え、
前記アクチュエータ作動手段は、前記左車輪と右車輪との関係がトーイン又はトーアウトとなるように、前記アクチュエータ装置を作動させることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の制御装置。
【請求項7】
前記アクチュエータ作動手段は、前記左車輪のトウ角の絶対値と前記右車輪のトウ角の絶対値とが同値となるように、前記アクチュエータ装置を作動させることを特徴とする請求項6記載の制御装置。
【請求項8】
転舵可能に構成される前輪及び後輪を有する車両に対し、前記前輪及び後輪のトウ角を制御する制御装置であって、
前記車両の速度を検出する車両速度検出手段と、
運転者により操作されるブレーキ操作部材の操作状態を検出する操作状態検出手段と、
基準速度値を記憶する記憶手段と、を備え、
前記操作状態検出手段によりブレーキ操作部材が操作されていることが検出された場合に少なくとも前記前輪のトウ角を制動力が大きくなるように変化させると共に、
前記車両速度検出手段により検出された前記車両の速度の値が前記記憶手段に記憶される基準速度値よりも低速である場合には、少なくとも、前記前輪のトウ角を制動力が小さくなるように変化させることを特徴する制御装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の制御装置を備えていることを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−296939(P2007−296939A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125810(P2006−125810)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】