説明

半導体膜、半導体素子、半導体装置およびそれらの作製方法

【課題】特性が安定した半導体膜を提供することを目的の一とする。または、特性が安定した半導体素子を提供することを目的の一とする。または、特性が安定した半導体装置を提供することを目的の一とする。
【解決手段】具体的には、絶縁性の表面に一方の面を接する第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層(シード層)と、当該種結晶層(シード層)の他方の面に異方性の結晶が成長した酸化物半導体膜を有する構成とすれば良く、このようなヘテロ構造とすることにより、当該半導体膜の電気特性を安定化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロ構造を有する半導体膜、ヘテロ構造を有する半導体膜を用いる半導体素子、およびヘテロ構造を有する半導体膜を用いる半導体装置に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体膜とは膜状の半導体であり、半導体素子とは半導体特性を利用することで機能する素子全般を指し、半導体装置とは半導体素子を用いた装置全般を指す。従って、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
近年、絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜(厚さ数nm以上数百nm以下程度)を用いて薄膜トランジスタ(TFT)を構成する技術が注目されている。薄膜トランジスタはICや電気光学装置のような電子デバイスに広く応用され、特に画像表示装置のスイッチング素子として開発が急がれている。また、金属酸化物は多様に存在しさまざまな用途に用いられている。例えば、酸化インジウムはよく知られた材料であり、液晶ディスプレイなどで必要とされる透光性を有する電極材料に用いられている。
【0004】
金属酸化物の中には半導体特性を示すものがある。半導体特性を示す金属酸化物としては、例えば、酸化タングステン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛などがある。このような半導体特性を示す金属酸化物は、透明導電膜の他、センサまたはトランジスタ等の様々な半導体素子に用いることができる。金属酸化物を膜状に形成し、チャネル形成領域とする薄膜トランジスタが既に知られている(特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−123861号公報
【特許文献2】特開2007−96055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、半導体膜は特性が安定でありバラツキが少ないことが望まれる。特に、半導体素子はバラツキの少ない特性が求められ、半導体膜は欠陥が少なく、且つ均質であることが好ましい。
【0007】
具体的には、酸化物半導体膜を用いてトランジスタを構成する場合、絶縁膜に接する酸化物半導体膜が該トランジスタの電気特性に影響する。特に、酸化物半導体膜が結晶性の低い領域でゲート電極側の絶縁膜と接すると、当該トランジスタの電気特性が低下する恐れがある。
【0008】
本発明は、このような技術的背景のもとでなされたものである。したがって、その目的は、特性が安定した半導体膜を提供することを目的の一とする。
【0009】
または、特性が安定した半導体素子を提供することを目的の一とする。
【0010】
または、特性が安定した半導体装置を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は絶縁性の表面に接する半導体膜の表面に注目し、特にその結晶構造に着眼した。そして、絶縁性の表面に接する側の半導体膜の表面に、結晶性の高い領域を有する構成に想到し、上記課題の解決に至った。なぜなら、半導体膜が結晶性の高い領域で絶縁性の表面と接する構成とすることにより、絶縁性の表面と半導体膜の界面には未結合手に起因する界面準位が少なくなり、良好な界面状態を実現できるからである。
【0012】
具体的には、絶縁性の表面に一方の面を接するc軸配向した第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層(シード層)と、当該種結晶層(シード層)の他方の面にc軸配向した第2の結晶構造を有する結晶が接合した酸化物半導体膜を有する構成とすれば良く、このようなヘテロ構造とすることにより、当該半導体膜の電気特性を安定化することができる。なお、第1の結晶構造はウルツ鉱型であり、第2の結晶構造はウルツ鉱以外の六方晶の結晶構造、またはYbFe型構造、YbFe型構造及びその変形型構造とすればよい。なお、c軸配向した第1の結晶構造を有する結晶には、第1の結晶構造のc軸が一定の方向(例えば、種結晶層を支持する基板面や種結晶層の表面などに垂直な方向)に揃っている結晶が含まれる。
【0013】
すなわち、本発明の一態様は、絶縁表面に一方の面を接し、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層と、種結晶層の他方の面に接し、第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜と、を有し、第1の結晶構造がウルツ鉱型の結晶構造であり、第2の結晶構造がウルツ鉱以外の六方晶であるヘテロ構造を有する半導体膜である。
【0014】
また、本発明の一態様は、絶縁表面に一方の面を接し、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層と、種結晶層の他方の面に接し、第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜と、を有し、第1の結晶構造がウルツ鉱型の結晶構造であり、第2の結晶構造がYbFe型構造、YbFe型構造及びその変形型構造のいずれか一であるヘテロ構造を有する半導体膜である。
【0015】
上記本発明の一態様によれば、絶縁表面とc軸配向した第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層が接して形成されているため、絶縁表面に接して電気特性が不安定な非晶質が形成され難い。さらに、c軸配向した第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層と接合して第2の結晶構造を有する結晶が成長した酸化物半導体膜を備えている。これにより、半導体膜が結晶性の高い種結晶層を絶縁性の表面に接する構成とすることができ、未結合手に起因する界面準位が少なくなり、良好な界面状態を備えたヘテロ構造を有する半導体膜を提供できる。
【0016】
また、本発明の一態様は、種結晶層の厚さが0.1nm以上10nm以下である、上記のヘテロ構造を有する半導体膜である。
【0017】
また、本発明の一態様は、種結晶層が窒化インジウム、または窒化ガリウムを含む、上記のヘテロ構造を有する半導体膜である。
【0018】
また、本発明の一態様は、種結晶層が亜鉛、インジウム、ガリウム、酸素、及び窒素を含む、上記のヘテロ構造を有する半導体膜である。
【0019】
また、本発明の一態様は、種結晶層が、窒素を0.1原子%以上5原子%未満含む上記のヘテロ構造を有する半導体膜である。
【0020】
また、本発明の一態様は、酸化物半導体膜が、窒素を1×1017/cm以上5×1019/cm未満含む上記のヘテロ構造を有する半導体膜である。
【0021】
また、本発明の一態様は、ゲート電極と、ゲート電極と接する第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜に接して、ゲート電極と重畳するヘテロ構造を有する半導体膜と、ヘテロ構造を有する半導体膜と接する第2の絶縁膜と、を有し、ヘテロ構造を有する半導体膜は、第1の絶縁膜と接して第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層と、第2の絶縁膜と接してc軸配向した第2の結晶構造を有する異方性結晶を含む酸化物半導体膜と、を備える。さらに、第1の結晶構造がウルツ鉱型の結晶構造であり、第2の結晶構造がウルツ鉱以外の六方晶であるヘテロ構造を有する半導体素子である。
【0022】
また、本発明の一態様は、ゲート電極と、ゲート電極と接する第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜に接して、ゲート電極と重畳するヘテロ構造を有する半導体膜と、ヘテロ構造を有する半導体膜と接する第2の絶縁膜と、を有し、ヘテロ構造を有する半導体膜は、第1の絶縁膜と接して第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層と、第2の絶縁膜と接してc軸配向した第2の結晶構造を有する異方性結晶を含む酸化物半導体膜と、を備える。さらに、第1の結晶構造がウルツ鉱型の結晶構造であり、第2の結晶構造がYbFe型構造、YbFe型構造及びその変形型構造のいずれか一であるヘテロ構造を有する半導体素子である。
【0023】
上記本発明の一態様によれば、ゲート電極と接する第1の絶縁膜に接してc軸配向した第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層が形成されている。さらに、異方性をもって成長した結晶を含む酸化物半導体膜を備えている。これにより、ヘテロ構造を有する半導体膜は良好な界面状態で第1の絶縁膜に接して、且つゲート電極に重畳する構成となり、電気特性が安定した半導体素子を提供できる。
【0024】
また、本発明の一態様は、上記半導体素子を用いた半導体装置である。
【0025】
上記本発明の一態様によれば、良好な界面状態で絶縁膜に接するヘテロ構造を有する半導体膜が適用された半導体素子を用いることにより、信頼性に優れた半導体装置を提供できる。
【0026】
なお、本明細書においては、c軸配向した結晶構造を有する層とは、その結晶構造のc軸が半導体積層の表面に対しておよそ垂直方向に配向する層であり、非単結晶の層である。
【0027】
なお、本明細書においては、六方晶の結晶構造は六晶系(Crystal family)におけるものを指し、七晶系(Crystal system)の三方晶と六方晶を含む。
また、発光装置とは画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、発光装置にコネクター、例えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子が形成された基板にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、特性が安定した半導体膜を提供できる。
【0029】
または、特性が安定した半導体素子を提供できる。
【0030】
または、特性が安定した半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施の形態に係わるヘテロ構造を有する半導体膜を説明する図。
【図2】実施の形態に係わる第1の結晶構造を説明する模式図。
【図3】実施の形態に係わるヘテロ構造を有する半導体膜を説明する図。
【図4】実施の形態に係わる結晶構造を説明するHAADF−STEMの実観察像。
【図5】実施の形態に係わる結晶構造を説明するHAADF−STEMの実観察像。
【図6】実施の形態に係わる結晶構造を説明するX線回折測定の回折図形。
【図7】実施の形態に係わるトランジスタの構成を説明する図。
【図8】実施の形態に係わるトランジスタの作製方法を説明する図。
【図9】実施の形態に係わるトランジスタの構成を説明する図。
【図10】実施の形態に係わるトランジスタの作製方法を説明する図。
【図11】実施の形態に係わるトランジスタの構成を説明する図。
【図12】実施の形態に係わるトランジスタの作製方法を説明する図。
【図13】実施の形態に係わるブロック図及び等価回路図を説明する図。
【図14】実施の形態に係わる画素部の構造を説明する断面図。
【図15】実施の形態に係わる電子機器を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0033】
(実施の形態1)
本実施の形態では、絶縁表面に一方の面を接する種結晶層と、該種結晶層の他方の面に接する酸化物半導体膜と、を備えるヘテロ構造を有し、種結晶層はc軸配向した第1の結晶構造を有する結晶を含み、酸化物半導体膜はc軸配向した第2の結晶構造を有する異方性結晶を含む、半導体膜について、図1、乃至図6を参照して説明する。
【0034】
<ヘテロ構造を有する半導体膜>
本実施の形態で例示するヘテロ構造を有する半導体膜の模式図を図1に示す。
【0035】
ヘテロ構造を有する半導体膜130は、種結晶層131と酸化物半導体膜132を有する。種結晶層131が基板100上の絶縁表面102に接して設けられた、ヘテロ構造を有する半導体膜130の態様を図1(A)に図示す。また、種結晶層131が基板100上の酸化物半導体膜132に接して設けられた、ヘテロ構造を有する半導体膜130の態様を図1(B)に図示する。いずれの態様も、種結晶層131はc軸配向した第1の結晶構造を有する結晶を含み、酸化物半導体膜132はc軸配向した第2の結晶構造を有する異方性結晶を含み、種結晶層131は酸化物半導体膜132よりも結晶性が高い。
【0036】
<六方晶系の結晶構造>
はじめに、六方晶系の結晶構造について説明する。
【0037】
第1の結晶構造を、図2を用いて説明する。第1の結晶構造はウルツ鉱型である。第1の結晶構造のa−b面における構造を図2(A)に、c軸方向を縦方向とする構造を図2(B)に示す。
【0038】
第1の結晶構造を備える結晶としては、例えば酸化亜鉛、窒化インジウム、窒化ガリウム等の結晶をその例に挙げることができる。また、窒素を含む酸化物半導体もc軸配向した第1の結晶構造を有する結晶を含む膜となる場合がある。
【0039】
具体的には、窒素を5×1019cm−3以上、好ましくは1×1020cm−3以上7原子%未満含むIn−Ga−Zn−O膜は、c軸配向し、且つ第1の結晶構造を有する結晶を含む膜となり、金属サイトにはInとGaとZnがランダムに入っている。
【0040】
次に、第2の結晶構造について説明する。第2の結晶構造はウルツ鉱以外の六方晶の結晶構造(非ウルツ鉱構造)、またはYbFe型構造、YbFe型構造及びその変形型構造とすればよい。
【0041】
例えば、窒素を1×1017/cm以上5×1019/cm未満含むIn−Ga−Zn−O膜はc軸配向した第2の結晶構造を有する結晶を含む膜となる。c軸配向した第2の結晶構造を有する結晶を含むIn−Ga−Zn−O膜は、a−b面にIn−Oの結晶面(インジウムと酸素を含む結晶面)を備え、In−Oの結晶面とIn−Oの結晶面との間に、GaおよびZnを有する二つの層を備える。なお、GaおよびZnを有する二つの層において、GaおよびZnは一方の層または双方の層に有すればよく、その位置は限定されない。
【0042】
第1の結晶構造および第2の結晶構造は、いずれも六方晶系であり、a−b面において原子が六角形に位置する。そして、第2の結晶構造を有する結晶が第1の結晶構造を有する結晶に接し、第2の結晶構造を有する結晶が第1の結晶構造を有する結晶に整合する。
【0043】
第1の結晶構造を有する結晶上に、格子定数を同じくする第2の結晶構造を有する結晶が整合する様子を図3に示す。第2の結晶構造を図3(A)に示し、第1の結晶構造を図3(B)に示す。また、第2の結晶構造を有する結晶が第1の結晶構造を有する結晶に接して、第2の結晶構造を有する結晶が第1の結晶構造を有する結晶に整合する模式図を図3(C)に模式的に示す。
【0044】
従って、結晶性が高く、結晶化が容易なc軸配向した第1の結晶構造を有する結晶を含む層を種結晶層として形成し、次いで当該種結晶層に接して酸化物半導体膜を形成する構成とすることにより、種結晶層に含まれる第1の結晶構造を有する結晶が該酸化物半導体膜の結晶化を容易にするという効果を奏する。
【0045】
<種結晶層>
次に、種結晶層について説明する。種結晶層はc軸配向した第1の結晶構造を有する結晶を含む。特に、種結晶層は酸化物半導体膜に比べて結晶性が高く、結晶化し易い材料を用いる。結晶性が高く、結晶化し易い材料を適用することにより、絶縁表面に接する表面近傍の結晶性を高めることができ、電気特性が不安定な非晶質が残存する現象を防ぐことができる。
【0046】
種結晶層に用いることができるc軸配向した第1の結晶構造を有する結晶について説明する。
【0047】
c軸配向した第1の結晶構造を備え、種結晶層に用いることができる化合物としては、例えば窒化インジウム、窒化ガリウム等をその例に挙げることができる。また、窒素を5×1019cm−3以上、好ましくは1×1020cm−3以上7原子%未満含む酸化物半導体もc軸配向した第1の結晶構造を有する結晶を含む膜となる場合がある。
【0048】
窒素を含む酸化物半導体を種結晶層に用いる場合、窒素濃度が5×1019cm−3以上、好ましくは1×1020cm−3以上7原子%未満となるように意図的に含ませる。窒素をこの範囲で意図的に含ませた酸化物半導体層は、窒素を意図的に含ませていない酸化物半導体層に比べてエネルギーギャップが小さく、キャリアを流しやすい。
【0049】
なお、c軸配向した第1の結晶構造のHAADF(high−angle annular dark field)−STEMの実観察像には、輝点が互いちがいに現れる回折像が観察される場合がある。
【0050】
c軸配向した第1の結晶構造に基づいて計算により得たHAADF−STEMの実観察像を図4(A)に示す。
【0051】
また、窒素のみを含む成膜ガスを用いて成膜したIn−Ga−Zn−O膜のHAADF−STEMの実観察像を図4(B)に示す。
【0052】
図4(A)または図4(B)に示すHAADF−STEMの実観察像は、いずれも2周期性の層構造を有するc軸配向した第1の結晶構造を有することが確認できる。
【0053】
なお、窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜は、スパッタリング法を用いて石英ガラス基板上に300nmの厚さで成膜した。ターゲットとしてIn:Ga:Zn=1:1:1[atom比]を用い、基板−ターゲット間の距離を60mmとし、DC電源を用いて0.5kwの電力で、圧力0.4Paにて成膜した。また、成膜中の基板温度を400℃とし、スパッタリングガスは窒素のみとし、成膜室に40sccmの流量で流した。
【0054】
<酸化物半導体膜>
次に、酸化物半導体膜について説明する。酸化物半導体膜は、非単結晶であり、酸化物半導体膜全体が非晶質状態(アモルファス状態)ではなく、少なくともc軸配向した第2の結晶構造を有する結晶を含み、種結晶層と接合した結晶を含む。酸化物半導体膜全体が非晶質状態(アモルファス状態)ではないため、電気特性が不安定な非晶質の形成が抑制される。
【0055】
酸化物半導体膜に用いることができるc軸配向した第2の結晶構造を有する異方性結晶について説明する。
【0056】
第2の結晶構造としては、YbFe型構造、YbFe型構造及びその変形型構造をその例に挙げることができる。例えば、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−Oは、第2の結晶構造を有し、酸化物半導体膜に用いることができる。なお、酸化物半導体膜に用いることができるIn−Ga−Zn−O膜は、窒素を1×1017/cm以上5×1019/cm未満含んでいても良い。
【0057】
三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−Oには、YbFe型構造であるInGaZnO4や、YbFe型構造であるInGaZnO等があり、その変形型構造をとりうることが知られている(M. Nakamura, N. Kimizuka, and T. Mohri、「The Phase Relations in the In−GaZnO−ZnO System at 1350℃」、J. Solid State Chem.、1991、Vol.93, p.298−315)。なお、YbFe型構造は、Ybを含む層をA層としFeを含む層をB層とすると、ABB|ABB|ABB|の繰り返し構造を有し、その変形構造としては、例えば、ABBB|ABBB|の繰り返し構造を挙げることができる。また、YbFe型構造は、ABB|AB|ABB|AB|の繰り返し構造を有し、その変形構造としては、例えば、ABBB|ABB|ABBB|ABB|ABBB|ABB|の繰り返し構造を挙げることができる。
【0058】
また、酸化物半導体膜には四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O膜や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O膜、In−Sn−Zn−O膜、In−Al−Zn−O膜、Sn−Ga−Zn−O膜、Al−Ga−Zn−O膜、Sn−Al−Zn−O膜や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O膜、Sn−Zn−O膜、Al−Zn−O膜、In−Ga−O膜などを用いることができる。また、上記酸化物半導体膜は珪素を含んでもよい。ここで、例えば、In−Ga−Zn−O膜とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を含む酸化物膜である。
【0059】
酸化物半導体膜は、種結晶層に接合して結晶が成長している。これにより、ヘテロ構造を有する半導体膜が結晶性の高い領域で絶縁性の表面と接する構成とすることができ、未結合手に起因する界面準位が少なくなり、良好な界面状態を備えたヘテロ構造を有する半導体膜を提供できる。
【0060】
なお、c軸配向した第2の結晶構造のHAADF(high−angle annular dark field)−STEMの実観察像には、3つに一つの明暗を伴う回折像が観察される場合がある。
【0061】
c軸配向した第2の結晶構造に基づいて計算により得たHAADF−STEMの実観察像を図5(A)に示す。
【0062】
また、In−Ga−Zn−O膜のHAADF−STEMの実観察像を図5(B)に示す。
【0063】
図5(A)または図5(B)に示すHAADF−STEMの実観察像は、いずれも3つに一つの明暗を伴っており、9周期性の層構造を有するc軸配向した第2の結晶構造を有することが確認できる。
【0064】
なお、In−Ga−Zn−O膜は、スパッタリング法を用いて石英ガラス基板上に300nmの厚さで成膜した。ターゲットとしてIn:Ga:Zn=1:1:1[atom比]を用い、基板−ターゲット間の距離を60mmとし、DC電源を用いて0.5kwの電力で、圧力0.4Paにて成膜した。また、成膜中の基板温度を400℃とし、スパッタリングガスは酸素のみとし、成膜室に40sccmの流量で流した。
【0065】
<c軸配向した第2の結晶構造を有する結晶を含むIn−Ga−Zn−O膜およびc軸配向した第1の結晶構造を有する結晶を含むIn−Ga−Zn−O−N膜>
窒素のみを含む成膜ガスを用いて成膜したIn−Ga−Zn−O−N膜は、c軸配向した第1の結晶構造を有する結晶を含み、結晶性が高く、種結晶層に好適である。また、酸素のみを含む成膜ガスを用いて成膜したIn−Ga−Zn−O膜は、c軸配向した第2の結晶構造を有する結晶を含み、且つ異方性をもって成長し易く、酸化物半導体膜に好適である。
【0066】
窒素のみを含む成膜ガスを用いて成膜したIn−Ga−Zn−O−N膜と酸素のみを含む成膜ガスを用いて成膜したIn−Ga−Zn−O膜の格子定数が整合する程度を、X線回折法を用いて確認した結果を示す。
【0067】
窒素のみを含む成膜ガスを用いて成膜したIn−Ga−Zn−O−N膜と酸素のみを含む成膜ガスを用いて成膜したIn−Ga−Zn−O膜のそれぞれについて、2θ法を用いて測定した回折図形を図6に示す。
【0068】
図6(A)に示すOut−of−plane法による回折図形から、窒素のみを含む成膜ガスを用いて成膜したIn−Ga−Zn−O−N膜は回折ピークが鋭く結晶性に優れていることが判る。また、窒素のみを含む成膜ガスを用いて成膜したIn−Ga−Zn−O−N膜と酸素のみを含む成膜ガスを用いて成膜したIn−Ga−Zn−O膜は回折ピークが良く一致することが判る。すなわち、窒素のみを含む成膜ガスを用いて成膜したIn−Ga−Zn−O−N膜は、酸素のみを含む成膜ガスを用いて成膜したIn−Ga−Zn−O膜と同様に六方晶系であり、且つ格子定数が近く、種結晶層として好適であることが確認できる。
【0069】
なお、窒素のみを含む成膜ガスを用いて成膜したIn−Ga−Zn−O−N膜と酸素のみを含む成膜ガスを用いて成膜したIn−Ga−Zn−O膜のそれぞれについて、In−plane法により測定した回折図形を図6(B)に示す。
【0070】
図6(B)に示すIn−plane法による回折図形から、窒素のみを含む成膜ガスを用いて成膜したIn−Ga−Zn−O−N膜は絶縁表面を有する基板表面に対し、およそ垂直にc軸が配向していることが確認できる。このことからも、窒素のみを含む成膜ガスを用いて成膜したIn−Ga−Zn−O−N膜は酸素のみを含む成膜ガスを用いて成膜したIn−Ga−Zn−O膜の種結晶層として好適であることが確認できる。
【0071】
なお、窒素のみを含む成膜ガスを用いて成膜したIn−Ga−Zn−O−N膜と酸素のみを含む成膜ガスを用いて成膜したIn−Ga−Zn−O膜は、いずれも上述の方法で作製した。
【0072】
本実施の形態で例示したヘテロ構造を有する半導体膜は、c軸配向した第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層が、絶縁表面に接して形成されているため、電気特性が不安定な非晶質が絶縁表面に接して形成され難い。さらに、c軸配向した第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層から、c軸配向した第2の結晶構造を有する結晶が異方性をもって成長した酸化物半導体膜を、備えている。これにより、ヘテロ構造を有する半導体膜が結晶性の高い領域で絶縁性の表面と接する構成となり、未結合手に起因する界面準位が少なくなり、良好な界面状態を備えたヘテロ構造を有する半導体膜を提供できる。
【0073】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0074】
(実施の形態2)
本実施の形態では、ヘテロ構造を有する半導体膜をチャネルに用いたトップゲート型のトランジスタの構成及びその作製方法について、図7及び図8を用いて説明する。図7(B)は、半導体素子の構成の一形態であるトランジスタの構造を説明する断面図であり、上面図である図7(A)の一点破線A−Bの断面図に相当する。なお、図7(A)において、基板201、酸化物絶縁膜202、ゲート絶縁膜207、及び絶縁膜209は省略している。図8は、図7(B)に示すトランジスタの作製工程を説明する断面図である。
【0075】
図7(B)に示すトランジスタは、基板201上に形成された酸化物絶縁膜202と、酸化物絶縁膜202上に形成されたヘテロ構造を有する半導体膜205と、ヘテロ構造を有する半導体膜205上に形成されたソース電極及びドレイン電極として機能する一対の電極206と、酸化物絶縁膜202、ヘテロ構造を有する半導体膜205及び一対の電極206上に形成されたゲート絶縁膜207と、ゲート絶縁膜207を介してヘテロ構造を有する半導体膜205と重畳するゲート電極208とを有する。また、ゲート絶縁膜207及びゲート電極208を覆う絶縁膜209を有してもよい。
【0076】
ヘテロ構造を有する半導体膜205は、酸化物絶縁膜202に接して第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜205aと、第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜205aに接する第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層205bと、が積層されていることを特徴とする。
【0077】
また、種結晶層205bに含まれる第1の結晶構造を有する結晶を種結晶として、酸化物半導体膜205aに第2の結晶構造を有する結晶が結晶成長していることを特徴とする。
【0078】
酸化物半導体膜205aに含まれる第2の結晶構造を有する結晶は、六方晶である。即ち、第1の結晶構造とは異なる六方晶の結晶構造を有する。第2の結晶構造は、ホモロガス系列であってもよい。
【0079】
また、種結晶層205bに含まれる第1の結晶構造を有する結晶は、六方晶である。
【0080】
即ち、第1の結晶構造及び第2の結晶構造は、ともに六方晶であるので、c軸方向からは六角形の格子像を確認できる。
【0081】
なお、第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜205a、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層205bはそれぞれ、非単結晶であり、且つ酸化物半導体膜全体が非晶質状態(アモルファス状態)ではなく、c軸配向の結晶領域を有する。
【0082】
次に、図7(B)に示すトランジスタの作製方法について、図8を用いて説明する。
【0083】
図8(A)に示すように、基板201上に酸化物絶縁膜202を形成した後、酸化物絶縁膜202上に第1の酸化物半導体膜203aを形成し、第1の酸化物半導体膜203a上に後に種結晶層になる第2の酸化物半導体膜203bを形成する。
【0084】
基板201は、少なくとも、後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。基板201としてガラス基板を用いる場合、歪み点が730度以上のものを用いることが好ましい。ガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料が用いられる。なお、BよりBaOを多く含むガラス基板を用いることが好ましい。大量生産する上では、基板201は第8世代(2160mm×2460mm)、第9世代(2400mm×2800mm、または2450mm×3050mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等のマザーガラスを用いることが好ましい。マザーガラスは、処理温度が高く、処理時間が長いと大幅に収縮するため、マザーガラスを使用して大量生産を行う場合、作製工程の加熱処理は、600度以下、好ましくは450度以下とすることが望ましい。
【0085】
なお、上記のガラス基板に代えて、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などの絶縁体でなる基板を用いることができる。他にも、結晶化ガラスなどを用いることができる。さらには、シリコンウェハ等の半導体基板の表面や金属材料よりなる導電性の基板の表面に絶縁膜を形成したものを用いることもできる。
【0086】
なお、アルカリ金属などの不純物を含むガラス基板を基板201として用いる場合、アルカリ金属の侵入防止のため、基板201及び酸化物絶縁膜202の間に窒化物絶縁膜として窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜などを形成してもよい。窒化物絶縁膜は、CVD法、スパッタリング法等で形成することができる。リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属は、後に形成される酸化物半導体膜の不純物であるため含有量を少なくすることが好ましい。
【0087】
酸化物絶縁膜202は、加熱により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜を用いて形成する。加熱により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜としては、化学量論比を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を用いることが好ましい。加熱により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜は、加熱により第1の酸化物半導体膜203a及び第2の酸化物半導体膜203bに酸素を拡散させることができる。酸化物絶縁膜202は、代表的には、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム等で形成することができる。
【0088】
化学量論比を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜は、加熱により酸素の一部が放出する。このときの酸素の放出量は、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy:昇温脱離ガス分光法)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の放出量が1.0×1018atoms/cm以上、好ましくは1.0×1020atoms/cm以上、より好ましくは3.0×1020atoms/cm以上である。
【0089】
ここで、TDS分析による、酸素原子に換算したときの酸素の放出量の測定方法について、以下に説明する。
【0090】
TDS分析したときの気体の放出量は、スペクトルの積分値に比例する。このため、酸化物絶縁膜のスペクトルの積分値と、標準試料の基準値に対する比とにより、気体の放出量を計算することができる。標準試料の基準値とは、所定の原子を含む試料の、スペクトルの積分値に対する原子の密度の割合である。
【0091】
例えば、標準試料である所定の密度の水素を含むシリコンウェハのTDS分析結果、および酸化物絶縁膜のTDS分析結果から、酸化物絶縁膜の酸素分子の放出量(N(O2))は、数式1で求めることができる。ここで、TDS分析で得られる質量数32で検出されるスペクトルの全てが酸素分子由来と仮定する。質量数32のものとしてCHOHがあるが、存在する可能性が低いものとしてここでは考慮しない。また、酸素原子の同位体である質量数17の酸素原子および質量数18の酸素原子を含む酸素分子についても、自然界における存在比率が極微量であるため考慮しない。
【0092】
N(O2)=N(H2)/S(H2)×S(O2)×α (数1)
【0093】
N(H2)は、標準試料から脱離した水素分子を密度で換算した値である。S(H2)は、標準試料をTDS分析したときのスペクトルの積分値である。ここで、標準試料の基準値を、N(H2)/S(H2)とする。S(O2)は、酸化物絶縁膜をTDS分析したときのスペクトルの積分値である。αは、TDS分析におけるスペクトル強度に影響する係数である。数式1の詳細に関しては、特開平6−275697号公報を参照する。なお、上記酸化物絶縁膜の酸素の放出量は、電子科学株式会社製の昇温脱離分析装置EMD−WA1000S/Wを用い、標準試料として1×1016atoms/cmの水素原子を含むシリコンウェハを用いて測定する。
【0094】
また、TDS分析において、酸素の一部は酸素原子として検出される。酸素分子と酸素原子の比率は、酸素分子のイオン化率から算出することができる。なお、上述のαは酸素分子のイオン化率を含むため、酸素分子の放出量を評価することで、酸素原子の放出量についても見積もることができる。
【0095】
なお、N(O2)は酸素分子の放出量である。酸化物絶縁膜においては、酸素原子に換算したときの酸素の放出量は、酸素分子の放出量の2倍となる。
【0096】
酸化物絶縁膜202は、50nm以上、好ましくは200nm以上500nm以下とする。酸化物絶縁膜202を厚くすることで、酸化物絶縁膜202からの酸素放出量を増加させることができると共に、酸化物絶縁膜202及び後に形成される酸化物半導体膜との界面における欠陥を低減することが可能である。
【0097】
酸化物絶縁膜202は、スパッタリング法、CVD法等により形成する。なお、加熱により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜は、スパッタリング法を用いることで形成しやすいため好ましい。
【0098】
加熱により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜をスパッタリング法により形成する場合は、成膜ガス中の酸素量が高いことが好ましく、酸素、または酸素及び希ガスの混合ガス等を用いることができる。代表的には、成膜ガス中の酸素濃度を6%以上100%以下にすることが好ましい。
【0099】
第1の酸化物半導体膜203aは、加熱により、六方晶であり且つ第2の結晶構造となりうる酸化物半導体膜を用いて形成する。
【0100】
第1の酸化物半導体膜203aとしては、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O膜や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O膜、In−Sn−Zn−O膜、In−Al−Zn−O膜、Sn−Ga−Zn−O膜、Al−Ga−Zn−O膜、Sn−Al−Zn−O膜や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O膜、Sn−Zn−O膜、Al−Zn−O膜、In−Ga−O膜などを用いることができる。また、上記酸化物半導体にSiOを含んでもよい。ここで、例えば、In−Ga−Zn−O膜とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物膜である。
【0101】
なお、第1の酸化物半導体膜203aとして形成することが可能な金属酸化物は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である。このように、エネルギーギャップの広い酸化物半導体を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0102】
第2の酸化物半導体膜203bは、加熱により、第1の結晶構造となりうる酸化物半導体膜を用いて形成する。第1の結晶構造となりうる酸化物半導体膜は、第2の結晶構造となりうる酸化物半導体膜と比較して、加熱処理により結晶化しやすく、また結晶性が高い。
【0103】
第2の酸化物半導体膜203bとしては、酸化亜鉛、酸窒化物半導体等を用いることができる。酸窒化物半導体は、第1の酸化物半導体膜203aに列挙した金属酸化物に、5×1019cm−3以上、好ましくは1×1020cm−3以上7原子%未満の窒素を添加して形成することができる。
【0104】
第2の酸化物半導体膜203bは、第1の酸化物半導体膜203aを結晶成長させるための種として用いるため、結晶成長する厚さとすればよく、代表的には一原子層以上10nm以下、好ましくは2nm以上5nm以下でよい。第2の酸化物半導体膜203bの厚さを薄くすることで成膜処理及び加熱処理におけるスループットを高めることができる。
【0105】
第1の酸化物半導体膜203a及び第2の酸化物半導体膜203bはそれぞれ、スパッタリング法、塗布法、印刷法、パルスレーザー蒸着法等により形成することができる。スパッタリング法により第1の酸化物半導体膜203a及び第2の酸化物半導体膜203bを成膜する場合は、ACスパッタ装置、DCスパッタ装置、またはRFスパッタ装置のいずれか一のスパッタ装置を用いる。
【0106】
なお、スパッタリングにより第2の酸化物半導体膜203bを酸窒化物半導体で形成する場合、第1の酸化物半導体膜203aを形成した後、スパッタリング装置に導入するガスの種類を切り替えることで、即ち窒素を導入することで、酸窒化物半導体を形成できる。即ち、連続的に第1の酸化物半導体膜203a及び第2の酸化物半導体膜203bを形成することが可能であり、量産性に優れている。
【0107】
次に、第1の加熱処理を行う。第1の加熱処理温度は、150度以上650度以下、好ましくは200℃以上500℃以下である。また、第1の加熱処理の加熱時間は1分以上24時間以下とする。なお、第1の加熱の温度を徐々に上昇させた後、一定温度としてもよい。500度以上からの温度上昇速度を0.5度/h以上3度/h以下とすることで、徐々に第2の酸化物半導体膜203bが結晶成長するため、より結晶性を高めることができる。
【0108】
第1の加熱処理においては、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気、酸素雰囲気、窒素雰囲気、乾燥空気雰囲気、または、希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素の混合雰囲気、若しくは希ガス及び窒素の混合雰囲気とすることが好適である。具体的には、水素などの不純物が、数ppm程度、または数ppb程度にまで除去された高純度ガス雰囲気とすることが好適である。
【0109】
第1の加熱処理に用いる加熱処理装置は特に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば、電気炉や、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。
【0110】
第1の加熱処理により、第2の酸化物半導体膜203bの表面から第1の酸化物半導体膜203aに向けて結晶成長が始まる。第2の酸化物半導体膜203bは結晶化されやすいため、第2の酸化物半導体膜203bが結晶化し、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層204bとなる。また、第2の酸化物半導体膜203bの表面から第1の酸化物半導体膜203aに向けて結晶成長するため、c軸配向した結晶領域となる。即ち、種結晶層204bに含まれる第1の結晶構造を有する結晶は、a−b面において六角形をなす結合を有している。また、六角形の結合を有する結晶構造が膜厚方向(c軸方向)に積層して結合されており、c軸配向している。
【0111】
引続き第1の加熱処理を行うことで、種結晶層204bに含まれる第1の結晶構造を有する結晶を種として、第1の酸化物半導体膜203aの結晶成長が、種結晶層204bとの界面から酸化物絶縁膜202に向かって進む。種結晶層204bに含まれる第1の結晶構造を有する結晶は、c軸配向しているため、当該種結晶層204bに含まれる第1の結晶構造を有する結晶を種とすることで、第1の結晶構造を有する結晶の結晶軸と概略同一となるように、第1の酸化物半導体膜203aに結晶を結晶成長させることができる。即ち、第1の酸化物半導体膜203aをc軸配向させながら結晶成長させることが可能である。即ち、第1の酸化物半導体膜203aを結晶成長させてできた酸化物半導体膜204aに含まれる第2の結晶構造を有する結晶は、a−b面において六角形をなす結合をしている。また、六角形の結合を有する結晶構造が膜厚方向(c軸方向)に積層して結合されており、c軸配向している。以上の工程により、c軸配向した第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜204aを形成することができる(図8(B)参照。)。
【0112】
なお、第1の加熱処理により、第2の酸化物半導体膜203bの表面から垂直方向に結晶成長すると、第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜204a及び第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層204bのc軸は表面の概略垂直方向となる。
【0113】
また、当該第1の加熱処理により、第1の酸化物半導体膜203a及び第2の酸化物半導体膜203bに含まれる水素が放出すると共に、酸化物絶縁膜202に含まれる酸素の一部が、第1の酸化物半導体膜203a及び第2の酸化物半導体膜203bと、酸化物絶縁膜202における第1の酸化物半導体膜203aの界面近傍とに拡散する。当該工程により、第1の酸化物半導体膜203a及び第2の酸化物半導体膜203b中に含まれる酸素欠陥を低減することができると共に、酸化物絶縁膜202における第1の酸化物半導体膜203aの界面近傍に酸素を拡散させることで、酸化物絶縁膜202及び第1の酸化物半導体膜203aの界面における欠陥を低減することができる。この結果、水素濃度及び酸素欠陥が低減された第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜204a及び第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層204bを形成することができる。
【0114】
なお、スパッタリング法により第1の酸化物半導体膜203a及び第2の酸化物半導体膜203bを成膜する時に、スパッタリング装置の処理室のリークレートを1×10−10Pa・m/秒以下とすることで、スパッタリング法による成膜途中における第1の酸化物半導体膜203a及び第2の酸化物半導体膜203b中への、アルカリ金属、水素等の不純物の混入を低減することができる。また、排気系として吸着型の真空ポンプ(例えばクライオポンプなど)を用いることで、排気系からアルカリ金属、水素等の不純物の逆流を低減することができる。
【0115】
また、第1の酸化物半導体膜203a及び第2の酸化物半導体膜203bを成膜する時に、スパッタリング装置の処理室に導入するガス、例えば窒素ガスや、酸素ガスや、アルゴンガスなどを加熱した状態で導入して、成膜を行ってもよい。この結果、第1の酸化物半導体膜203a及び第2の酸化物半導体膜203bに含まれる水素含有量を低減することができる。
【0116】
また、スパッタリング法により第1の酸化物半導体膜203a及び第2の酸化物半導体膜203bを成膜する前に、スパッタリング装置、ターゲットの表面または内部に含まれる水分または水素を除去するために、プレヒート処理を行ってもよい。この結果、第1の酸化物半導体膜203a及び第2の酸化物半導体膜203bに含まれる水素含有量を低減することができる。
【0117】
以上の工程より、第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜204a及び第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層204bを形成することができる。言い換えると、ヘテロ構造を有する半導体膜を形成することができる。また、第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜204a、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層204bに含まれる水素濃度及び酸素欠陥を低減することができる。酸化物半導体及び水素の結合により、水素の一部がドナーとなり、キャリアである電子が生じてしまう。また、酸化物半導体中の酸素欠陥も同様に、ドナーとなり、キャリアである電子が生じてしまう。これらのため、第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜204a、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層204b中の水素濃度及び酸素欠陥量を低減することで、後に作製されるトランジスタのしきい値電圧のマイナスシフトを低減することができる。
【0118】
次に、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層204b上にマスクを形成した後、当該マスクを用いて第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜204a、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層204bを選択的にエッチングして、第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜205a、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層205bを形成する。なお、第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜205a、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層205bをまとめて、ヘテロ構造を有する半導体膜205と示す。この後、マスクを除去する。
【0119】
第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜204a、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層204bをエッチングするためのマスクは、フォトリソグラフィ工程、インクジェット法、印刷法等を適宜用いることができる。また、第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜204a、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層204bのエッチングは、ウエットエッチングまたはドライエッチングを適宜用いることができる。
【0120】
次に、ヘテロ構造を有する半導体膜205に接する一対の電極206を形成する。次に、酸化物絶縁膜202、ヘテロ構造を有する半導体膜205、及び一対の電極206上にゲート絶縁膜207を形成する。次に、ゲート絶縁膜207上にゲート電極208を形成する。また、ゲート絶縁膜207及びゲート電極208上に絶縁膜209を形成してもよい(図8(C)参照。)。
【0121】
一対の電極206は、ソース電極及びドレイン電極として機能する。
【0122】
一対の電極206は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金などを用いて形成することができる。また、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウムのいずれか一または複数から選択された金属元素を用いてもよい。また、一対の電極206は、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜上にタングステン膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造などがある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素を単数、または複数組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。なお、一対の電極206の材料の一つとして銅を用いる場合には、ヘテロ構造を有する半導体膜205と接して銅マグネシウムアルミニウム合金層を設け、その銅マグネシウムアルミニウム合金層に接して銅層を設けた積層を用いればよい。
【0123】
また、一対の電極206は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
【0124】
一対の電極206は、印刷法またはインクジェット法により形成する。若しくは、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等で導電膜を形成した後、該導電膜上にマスクを形成して導電膜をエッチングして形成する。導電膜上に形成するマスクは印刷法、インクジェット法、フォトリソグラフィ法を適宜用いることができる。
【0125】
なお、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層204b上に導電膜を形成した後、多階調フォトマスクによって、凹凸状のマスクを形成し、当該マスクを用いて、第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜204a、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層204b、並びに導電膜をエッチングした後、アッシングにより凹凸状のマスクを分離し、当該分離されたマスクにより導電膜を選択的にエッチングすることで、ヘテロ構造を有する半導体膜205及び一対の電極206を形成することができる。当該工程により、フォトマスク数及びフォトリソグラフィ工程数を削減することができる。
【0126】
ゲート絶縁膜207は、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、または酸化ガリウム膜を単層でまたは積層して形成することができる。なお、ゲート絶縁膜207は、ヘテロ構造を有する半導体膜205と接する部分が酸素を含むことが好ましく、特に好ましくは酸化物絶縁膜202と同様に加熱により酸素を放出する酸化物絶縁膜により形成する。酸化シリコン膜を用いることで、ヘテロ構造を有する半導体膜205に酸素を拡散させることができ、特性を良好にすることができる。
【0127】
また、ゲート絶縁膜207として、ハフニウムシリケート(HfSiO)膜、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSi)膜、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAl)膜、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜などのhigh−k材料膜を用いることでゲートリークを低減できる。さらには、high−k材料膜と、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、及び酸化ガリウム膜のいずれか一以上との積層構造とすることができる。ゲート絶縁膜207の厚さは、1nm以上300nm以下、より好ましくは5nm以上50nm以下とするとよい。
【0128】
ゲート絶縁膜207は、スパッタリング法、CVD法等により形成する。
【0129】
なお、ゲート絶縁膜207を形成する前に、ヘテロ構造を有する半導体膜205の表面を、酸素、オゾン、一酸化二窒素等の酸化性ガスのプラズマに曝し、ヘテロ構造を有する半導体膜205の表面を酸化して酸素欠陥を低減してもよい。
【0130】
ゲート電極208は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた金属元素、上述した金属元素を成分とする合金、上述した金属元素を組み合わせた合金などを用いて形成することができる。また、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウムのいずれか一または複数から選択された金属元素を用いてもよい。また、ゲート電極208は、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜上にタングステン膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造などがある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素を単数、または複数組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0131】
また、ゲート電極208は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
【0132】
また、ゲート電極208とゲート絶縁膜との間に、ゲート絶縁膜に接する材料層として、窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜や、窒素を含むIn−Sn−O膜や、窒素を含むIn−Ga−O膜や、窒素を含むIn−Zn−O膜や、窒素を含むSn−O膜や、窒素を含むIn−O膜や、金属窒化膜(InN、ZnNなど)を設けることが好ましい。これらの膜は5eV、好ましくは5.5eV以上の仕事関数を有し、トランジスタの電気特性のしきい値電圧をプラスにすることができ、所謂ノーマリーオフのスイッチング素子を実現できる。例えば、窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜を用いる場合、少なくとも酸化物半導体膜203bより高い窒素濃度、具体的には7原子%以上のIn−Ga−Zn−O膜を用いる。
【0133】
ゲート電極208は、印刷法またはインクジェット法により形成する。若しくは、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等で導電膜を形成した後、該導電膜上にマスクを形成して導電膜をエッチングして形成する。導電膜上に形成するマスクは印刷法、インクジェット法、フォトリソグラフィ法を適宜用いることができる。
【0134】
絶縁膜209は、ゲート絶縁膜207に列挙した絶縁膜を適宜用いて形成することができる。また、絶縁膜209としてスパッタリング法で得られる窒化シリコン膜を形成すると、外部からの水分やアルカリ金属の浸入を防止することが可能であり、ヘテロ構造を有する半導体膜205の不純物の含有量を低減することができる。
【0135】
なお、ゲート絶縁膜207または絶縁膜209の形成の後、水素及び水分をほとんど含まない雰囲気下(窒素雰囲気、酸素雰囲気、乾燥空気雰囲気(例えば、水分については露点−40℃以下、好ましくは露点−60℃以下)など)で加熱処理(温度範囲150℃以上650℃以下、好ましくは200℃以上500℃以下)を行ってもよい。
【0136】
以上の工程により、a−b面において六角形の結合を有し、c軸配向しているヘテロ構造を有する半導体膜をチャネルに有するトランジスタを作製することができる。
【0137】
本実施の形態に示すヘテロ構造を有する半導体膜はゲート絶縁膜との界面近傍の領域において、結晶性が高く、均一性も高いため、電気的特性が安定であり、信頼性の高いトランジスタを得ることができる。また、a−b面において六角形の結合を有し、c軸配向しているヘテロ構造を有する半導体膜をトランジスタのチャネル領域に用いることで、トランジスタへの光照射前後、またはバイアス−熱ストレス(BT)試験前後においても、トランジスタのしきい値電圧の変化量が少なく、安定した電気的特性を有するトランジスタを作製することができる。
【0138】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態2と異なるトップゲート型トランジスタの構造及び作製方法について、図9及び図10を用いて説明する。本実施の形態では、酸化物絶縁膜及びヘテロ構造を有する半導体膜の間に一対の電極が設けられる点が、実施の形態2と異なる。なお、上面図である図9(A)の一点破線C−Dの断面図は図9(B)に相当する。図9(A)において、基板201、酸化物絶縁膜202、ゲート絶縁膜217、及び絶縁膜219は省略している。図10は、図9(B)に示すトランジスタの作製工程を説明する断面図である。
【0139】
図9(B)に示すトランジスタは、基板201上に形成された酸化物絶縁膜202と、酸化物絶縁膜202上に形成されたソース電極及びドレイン電極として機能する一対の電極216と、酸化物絶縁膜202と、ソース電極及びドレイン電極として機能する一対の電極216とを覆うヘテロ構造を有する半導体膜215と、酸化物絶縁膜202、一対の電極216、及びヘテロ構造を有する半導体膜215上に形成されたゲート絶縁膜217と、ゲート絶縁膜217を介してヘテロ構造を有する半導体膜215と重畳するゲート電極218とを有する。また、ゲート絶縁膜217及びゲート電極218を覆う絶縁膜219を有してもよい。更には、絶縁膜219の開口部において、一対の電極216と接する一対の配線220を有してもよい。
【0140】
ヘテロ構造を有する半導体膜215は、酸化物絶縁膜202及び一対の電極216に接する第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜215aと、第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜215aに接する第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層215bと、が積層されていることを特徴とする。
【0141】
また、種結晶層215bに含まれる第1の結晶構造を有する結晶を種結晶として、酸化物半導体膜215aに第2の結晶構造を有する結晶が結晶成長していることを特徴とする。
【0142】
酸化物半導体膜215aに含まれる第2の結晶構造を有する結晶は六方晶である。即ち、第1の結晶構造とは異なる六方晶の結晶構造を有する。第2の結晶構造は、ホモロガス系列であってもよい。
【0143】
実施の形態2と同様に、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層及び第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜は、ともに六方晶であるので、c軸方向からは六角形の格子像を確認できる。
【0144】
なお、第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜215a、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層215bはそれぞれ、非単結晶であり、且つ酸化物半導体膜全体が非晶質状態(アモルファス状態)ではなく、c軸配向の結晶領域を有する。
【0145】
次に、図9(B)に示すトランジスタの作製方法について、図10を用いて説明する。
【0146】
図10(A)に示すように、実施の形態2と同様に、基板201上に酸化物絶縁膜202を形成する。次に、酸化物絶縁膜202上に一対の電極216を形成する。次に、一対の電極216及び酸化物絶縁膜202上に、第1の酸化物半導体膜213a及び後に種結晶層になる第2の酸化物半導体膜213bを形成する。
【0147】
一対の電極216は、実施の形態2に示す一対の電極206と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0148】
第1の酸化物半導体膜213a及び第2の酸化物半導体膜213bは、実施の形態2に示す第1の酸化物半導体膜203a及び第2の酸化物半導体膜203bと同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0149】
次に、実施の形態2と同様に、第1の加熱処理を行う。第1の加熱処理により、第2の酸化物半導体膜213bの表面から第1の酸化物半導体膜213aに向けて結晶成長が始まり、第2の酸化物半導体膜213bは第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層214bとなる。また、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層214bは、c軸配向した結晶を有する。
【0150】
引続き第1の加熱処理を行うことで、種結晶層214bに含まれる第1の結晶構造を有する結晶を種として、第1の酸化物半導体膜213aの結晶成長が、種結晶層214bとの界面から酸化物絶縁膜202に向かって進み、酸化物半導体膜214aに第2の結晶構造を有する結晶が形成される。また、第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜214aはc軸配向した結晶を有する。(図10(B)参照。)。
【0151】
以上の工程より、第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜214a、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層214bを形成することができる。
【0152】
次に、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層214b上にマスクを形成した後、当該マスクを用いて第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜214a、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層214bを選択的にエッチングして、第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜215a、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層215bを形成する。なお、第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜215a、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層215bをまとめて、ヘテロ構造を有する半導体膜215と示す。この後、マスクを除去する。
【0153】
次に、酸化物絶縁膜202、一対の電極216、及びヘテロ構造を有する半導体膜215上にゲート絶縁膜217を形成する。次に、ゲート絶縁膜217上にゲート電極218を形成する。
【0154】
この後、ゲート絶縁膜217及びゲート電極218上に絶縁膜219を形成する。次に、絶縁膜219上にマスクを形成した後、ゲート絶縁膜217及び絶縁膜219の一部をエッチングして、開口部を形成する。次に、開口部を介して、一対の電極216に接続する配線220を形成してもよい(図10(C)参照。)。
【0155】
ゲート絶縁膜217は、実施の形態2に示すゲート絶縁膜207と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0156】
ゲート電極218は、実施の形態2に示すゲート電極208と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0157】
絶縁膜219は、実施の形態2に示す絶縁膜209と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0158】
配線220は、一対の電極216と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0159】
以上の工程により、a−b面において六角形の結合を有し、c軸配向している六方晶構造の結晶領域を有するヘテロ構造を有する半導体膜をチャネル領域に有するトランジスタを作製することができる。
【0160】
本実施の形態に示すヘテロ構造を有する半導体膜はゲート絶縁膜との界面近傍の領域において、結晶性が高く、均一性も高いため、電気的特性が安定であり、信頼性の高いトランジスタを得ることができる。また、a−b面において六角形の結合を有し、c軸に配向している六方晶構造の結晶を有するヘテロ構造を有する半導体膜をトランジスタのチャネル領域に用いることで、トランジスタへの光照射前後、またはバイアス−熱ストレス(BT)試験前後においても、トランジスタのしきい値電圧の変化量が少なく、安定した電気的特性を有するトランジスタを作製することができる。
【0161】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0162】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態2及び実施の形態3と異なるトランジスタの構造及び作製方法について、図11及び図12を用いて説明する。本実施の形態では、酸化物絶縁膜及びゲート絶縁膜の間にゲート電極が設けられる点が、実施の形態2及び実施の形態3と異なる。即ち、実施の形態2及び実施の形態3では、トップゲート型のトランジスタを用いて説明したが、本実施の形態はボトムゲート型のトランジスタについて、説明する。なお、上面図である図11(A)の一点破線E−Fの断面図が図11(B)に相当する。図11(A)において、基板201、酸化物絶縁膜202、ゲート絶縁膜227、及び絶縁膜229は省略している。図12は、図11(B)に示すトランジスタの作製工程を説明する断面図である。
【0163】
図11(B)に示すトランジスタは、基板201上に形成された酸化物絶縁膜202と、酸化物絶縁膜202上に形成されたゲート電極228と、酸化物絶縁膜202及びゲート電極228を覆うゲート絶縁膜227と、ゲート絶縁膜227を介してゲート電極228と重畳するヘテロ構造を有する半導体膜225と、ヘテロ構造を有する半導体膜225に接するソース電極及びドレイン電極として機能する一対の電極226とを有する。また、ゲート絶縁膜227、ヘテロ構造を有する半導体膜225及び一対の電極226を覆う絶縁膜229を有してもよい。
【0164】
ヘテロ構造を有する半導体膜225は、ゲート絶縁膜227に接する第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層225bと、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層225bに接する第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜225cとが積層されていることを特徴とする。
【0165】
また、種結晶層225bに含まれる第1の結晶構造を有する結晶を種結晶として、酸化物半導体膜225cに第2の結晶構造を有する結晶が結晶成長していることを特徴とする。
【0166】
酸化物半導体膜225cに含まれる第2の結晶構造を有する結晶は、六方晶である。即ち、第1の結晶構造とは異なる六方晶の結晶構造を有する。また、種結晶層225bに含まれる第1の結晶構造を有する結晶は、六方晶である。
【0167】
実施の形態2と同様に、第1の結晶構造及び第2の結晶構造はともに六方晶であるので、c軸方向からは六角形の格子像を確認できる。
【0168】
第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層225b、第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜225cはそれぞれ、非単結晶であり、且つ酸化物半導体膜全体が非晶質状態(アモルファス状態)ではなく、c軸配向の結晶領域を有する。
【0169】
次に、図11(B)に示すトランジスタの作製方法について、図12を用いて説明する。
【0170】
図12(A)に示すように、実施の形態2と同様に、基板201上に酸化物絶縁膜202を形成する。次に、酸化物絶縁膜202上にゲート電極228を形成する。次に酸化物絶縁膜202及びゲート電極228上に、ゲート絶縁膜227を形成する。次に、ゲート絶縁膜227上に第1の酸化物半導体膜223bを形成する。
【0171】
ゲート電極228及びゲート絶縁膜227はそれぞれ、実施の形態2に示すゲート電極208及びゲート絶縁膜207と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0172】
後に種結晶層になる第1の酸化物半導体膜223bは、実施の形態2に示す第2の酸化物半導体膜203bと同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0173】
次に、実施の形態2と同様に、第1の加熱処理を行う。第1の加熱処理により、第1の酸化物半導体膜223bの表面からゲート絶縁膜227に向けて結晶成長が始まり、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層224bとなる。また、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層224bは、c軸配向した結晶領域を有する。
【0174】
次に、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層224b上に第2の酸化物半導体膜223cを形成する(図12(B)参照。)第2の酸化物半導体膜223cは、実施の形態2に示す第1の酸化物半導体膜203aと同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0175】
次に、第2の加熱処理を行う。当該加熱処理により、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層224bとの界面から第2の酸化物半導体膜223cへ向けて結晶成長が始まり、第2の酸化物半導体膜223cは、第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜224cとなる。また、第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜224cは、c軸配向した結晶領域を有する(図12(C)参照。)。
【0176】
以上の工程より、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層224b、及び第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜224cを形成することができる。
【0177】
次に、第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜224c上にマスクを形成した後、当該マスクを用いて第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層224b、及び第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜224cを選択的にエッチングして、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層225b、及び第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜225cを形成する。なお、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層225b、及び第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜225cをまとめて、ヘテロ構造を有する半導体膜225と示す。この後、マスクを除去する。
【0178】
次に、実施の形態2と同様に、一対の電極226を形成する。
【0179】
次に、ゲート絶縁膜227、一対の電極226、及びヘテロ構造を有する半導体膜225上に絶縁膜229を形成してもよい(図12(D)参照。)。
【0180】
絶縁膜229は、実施の形態2に示す絶縁膜209と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0181】
以上の工程により、a−b面において六角形の結合を有し、c軸配向している六方晶構造の結晶領域を有するヘテロ構造を有する半導体膜をチャネル領域に有するトランジスタを作製することができる。
【0182】
なお、本実施の形態では、チャネルエッチング型のトランジスタを用いて説明したが、チャネル保護型のトランジスタに適用することができる。
【0183】
ヘテロ構造を有する半導体膜はゲート絶縁膜との界面近傍の領域において、結晶性が高く、均一性も高いため、電気的特性が安定であり、信頼性の高いトランジスタを得ることができる。また、a−b面において六角形の結合を有し、c軸配向している六方晶構造の結晶を有するヘテロ構造を有する半導体膜をトランジスタのチャネル領域に用いることで、トランジスタへの光照射前後、またはバイアス−熱ストレス(BT)試験前後においても、トランジスタのしきい値電圧の変化量が少なく、安定した電気的特性を有するトランジスタを作製することができる。
【0184】
なお、酸窒化物半導体は、酸化物半導体と比べてエネルギーギャップが小さく、キャリアを流しやすい。従って、ゲート絶縁膜227に接する第1の酸化物半導体膜223bを酸窒化物半導体膜で形成することで、良好な電気特性を有するトランジスタを作製することができる。
【0185】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0186】
(実施の形態5)
本実施の形態では、同一基板上に少なくとも駆動回路の一部と、画素部に配置するトランジスタを有する表示装置を作製する例について以下に説明する。
【0187】
画素部に配置するトランジスタは、実施の形態2または実施の形態3に従って形成する。また、実施の形態2または実施の形態3に示すトランジスタはnチャネル型トランジスタであるため、駆動回路のうち、nチャネル型トランジスタで構成することができる駆動回路の一部を画素部のトランジスタと同一基板上に形成する。
【0188】
アクティブマトリクス型表示装置のブロック図の一例を図13(A)に示す。表示装置の基板5300上には、画素部5301、第1の走査線駆動回路5302、第2の走査線駆動回路5303、信号線駆動回路5304を有する。画素部5301には、複数の信号線が信号線駆動回路5304から延伸して配置され、複数の走査線が第1の走査線駆動回路5302、及び第2の走査線駆動回路5303から延伸して配置されている。なお走査線と信号線との交差領域には、各々、表示素子を有する画素がマトリクス状に配置されている。また、表示装置の基板5300はFPC(Flexible Printed Circuit)等の接続部を介して、タイミング制御回路(コントローラ、制御ICともいう)に接続されている。
【0189】
図13(A)では、第1の走査線駆動回路5302、第2の走査線駆動回路5303、信号線駆動回路5304は、画素部5301と同じ基板5300上に形成される。そのため、外部に設ける駆動回路等の部品の数が減るので、コストの低減を図ることができる。また、基板5300外部に駆動回路を設けた場合、配線を延伸させる必要が生じ、配線間の接続が増える。同じ基板5300上に駆動回路を設けた場合、その配線間の接続数を減らすことができ、信頼性の向上、又は歩留まりの向上を図ることができる。
【0190】
また、画素部の回路構成の一例を図13(B)に示す。ここでは、VA方式の液晶表示パネルの画素構造を示す。
【0191】
この画素構造は、一つの画素に複数の画素電極層が有り、それぞれの画素電極層にトランジスタが接続されている。各トランジスタは、異なるゲート信号で駆動されるように構成されている。すなわち、マルチドメイン設計された画素において、個々の画素電極層に印加する信号を、独立して制御する構成を有している。
【0192】
トランジスタ628のゲート配線602と、トランジスタ629のゲート配線603には、異なるゲート信号を与えることができるように分離されている。一方、データ線として機能するソース電極層又はドレイン電極層616は、トランジスタ628とトランジスタ629で共通に用いられている。トランジスタ628とトランジスタ629は実施の形態2または実施の形態3のトランジスタを適宜用いることができる。
【0193】
第1の画素電極層と第2の画素電極層の形状は異なっており、スリットによって分離されている。V字型に広がる第1の画素電極層の外側を囲むように第2の画素電極層が形成されている。第1の画素電極層と第2の画素電極層に印加する電圧のタイミングを、トランジスタ628及びトランジスタ629により異ならせることで、液晶の配向を制御している。トランジスタ628はゲート配線602と接続し、トランジスタ629はゲート配線603と接続している。ゲート配線602とゲート配線603は異なるゲート信号を与えることで、トランジスタ628とトランジスタ629の動作タイミングを異ならせることができる。
【0194】
また、容量配線690が設けられ、ゲート絶縁層を誘電体とし、第1の画素電極層または第2の画素電極層と電気的に接続する容量電極と保持容量を形成する。
【0195】
第1の画素電極層と液晶層と対向電極層が重なり合うことで、第1の液晶素子651が形成されている。また、第2の画素電極層と液晶層と対向電極層が重なり合うことで、第2の液晶素子652が形成されている。また、一画素に第1の液晶素子651と第2の液晶素子652が設けられたマルチドメイン構造である。
【0196】
なお、図13(B)に示す画素構成は、これに限定されない。例えば、図13(B)に示す画素に新たにスイッチ、抵抗素子、容量素子、トランジスタ、センサ、又は論理回路などを追加してもよい。
【0197】
また、本実施の形態では、VA方式の液晶表示パネルの例を示したが特に限定されず、様々な方式の液晶表示装置に応用することができる。例えば、視野角特性を改善する方法として、基板主表面に対して水平方向の電界を液晶層に印加する横電界方式(IPS方式とも呼ぶ)に応用することができる。
【0198】
例えば、IPS方式の液晶表示パネルとして、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いることが好ましい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するために5重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて液晶素子の液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が1msec以下と短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。
【0199】
また、液晶表示装置の動画特性を改善するため、バックライトとして複数のLED(発光ダイオード)光源または複数のEL光源などを用いて面光源を構成し、面光源を構成している各光源を独立して1フレーム期間内で間欠点灯駆動する駆動技術(例えばフィールドシーケンシャル方式など)もある。面光源として、3種類以上のLEDを用いてもよいし、白色発光のLEDを用いてもよい。面光源として、異なる色を呈する3種類以上の光源(例えば、R(赤)、G(緑)、B(青))を用いる場合は、カラーフィルタを用いなくともカラー表示が行える。また、面光源として、白色発光のLEDを用いる場合は、カラーフィルタを設けてカラー表示を行う。独立して複数のLEDを制御できるため、液晶層の光学変調の切り替えタイミングに合わせてLEDの発光タイミングを同期させることもできる。LEDを部分的に消灯することができるため、特に一画面を占める黒い表示領域の割合が多い映像表示の場合には、消費電力の低減効果が図れる。
【0200】
また、画素部の回路構成の一例を図13(C)に示す。ここでは、有機EL素子を用いた表示パネルの画素構造を示す。
【0201】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0202】
図13(C)は、半導体装置の例としてデジタル時間階調駆動を適用可能な画素構成の一例を示す図である。
【0203】
デジタル時間階調駆動を適用可能な画素の構成及び画素の動作について説明する。ここでは酸化物半導体層をチャネル形成領域に用いるnチャネル型のトランジスタを1つの画素に2つ用いる例を示す。
【0204】
画素6400は、スイッチング用トランジスタ6401、駆動用トランジスタ6402、発光素子6404及び容量素子6403を有している。スイッチング用トランジスタ6401は、ゲート電極層が走査線6406に接続され、第1電極(ソース電極層及びドレイン電極層の一方)が信号線6405に接続され、第2電極(ソース電極層及びドレイン電極層の他方)が駆動用トランジスタ6402のゲート電極層に接続されている。駆動用トランジスタ6402は、ゲート電極層が容量素子6403を介して電源線6407に接続され、第1電極が電源線6407に接続され、第2電極が発光素子6404の第1電極(画素電極)に接続されている。発光素子6404の第2電極は共通電極6408に相当する。共通電極6408は、同一基板上に形成される共通電位線と電気的に接続される。
【0205】
なお、発光素子6404の第2電極(共通電極6408)には低電源電位が設定されている。なお、低電源電位とは、電源線6407に設定される高電源電位を基準にして低電源電位<高電源電位を満たす電位であり、低電源電位としては例えばGND、0Vなどが設定されていても良い。この高電源電位と低電源電位との電位差を発光素子6404に印加して、発光素子6404に電流を流して発光素子6404を発光させるため、高電源電位と低電源電位との電位差が発光素子6404の順方向しきい値電圧以上となるようにそれぞれの電位を設定する。
【0206】
なお、容量素子6403は駆動用トランジスタ6402のゲート容量を代用して省略することも可能である。駆動用トランジスタ6402のゲート容量については、チャネル形成領域とゲート電極層との間で容量が形成されていてもよい。
【0207】
ここで、電圧入力電圧駆動方式の場合には、駆動用トランジスタ6402のゲート電極層には、駆動用トランジスタ6402が十分にオンするか、オフするかの二つの状態となるようなビデオ信号を入力する。つまり、駆動用トランジスタ6402は線形領域で動作させる。駆動用トランジスタ6402は線形領域で動作させるため、電源線6407の電圧よりも高い電圧を駆動用トランジスタ6402のゲート電極層にかける。なお、信号線6405には、(電源線電圧+駆動用トランジスタ6402のVth)以上の電圧をかける。
【0208】
また、デジタル時間階調駆動に代えて、アナログ階調駆動を行う場合、信号の入力を異ならせることで、図13(C)と同じ画素構成を用いることができる。
【0209】
アナログ階調駆動を行う場合、駆動用トランジスタ6402のゲート電極層に発光素子6404の順方向電圧+駆動用トランジスタ6402のVth以上の電圧をかける。発光素子6404の順方向電圧とは、所望の輝度とする場合の電圧を指しており、少なくとも順方向しきい値電圧を含む。なお、駆動用トランジスタ6402が飽和領域で動作するようなビデオ信号を入力することで、発光素子6404に電流を流すことができる。駆動用トランジスタ6402を飽和領域で動作させるため、電源線6407の電位は、駆動用トランジスタ6402のゲート電位よりも高くする。ビデオ信号をアナログとすることで、発光素子6404にビデオ信号に応じた電流を流し、アナログ階調駆動を行うことができる。
【0210】
なお、図13(C)に示す画素構成は、これに限定されない。例えば、図13(C)に示す画素に新たにスイッチ、抵抗素子、容量素子、センサ、トランジスタ又は論理回路などを追加してもよい。
【0211】
次に、発光素子の構成について、図14に示す画素の断面構造を用いて説明する。ここでは、発光素子駆動用トランジスタがnチャネル型の場合を例に挙げて、画素の断面構造について説明する。図14(A)、図14(B)、及び図14(C)の半導体装置に用いられる発光素子駆動用トランジスタ7011、7021、及び7001は、実施の形態4に示すトランジスタと同様に作製でき、窒素を含む酸化物半導体層をチャネル領域に用いるトランジスタである。
【0212】
発光素子の第1の電極または第2の電極の少なくとの一方は可視光を透過する導電膜を用いて形成し、発光素子から発光を取り出す。発光を取り出す方向に着目した構造としては、発光素子とトランジスタが形成された基板を介することなく、基板の当該発光素子が形成された側から発光を取り出す上面射出構造、発光素子が形成された基板を介し、当該発光素子が形成されていない側に発光する下面射出構造、並びに基板の発光素子が形成された側及び基板を介して基板の他方の側に発光を取り出す両面射出構造がある。そして、図13(C)に示す画素構成はどの射出構造の発光素子にも適用することができる。
【0213】
下面射出構造の発光素子について、図14(A)を用いて説明する。下面射出構造の発光素子は、図14(A)に矢印で示す方向に光を発する。
【0214】
図14(A)において、発光素子駆動用トランジスタ7011は実施の形態4に示すnチャネル型のトランジスタを用いる例を示しているが、特に限定されない。
【0215】
図14(A)では、発光素子駆動用トランジスタ7011のソース電極層またはドレイン電極層と電気的に接続された透光性を有する第1の電極7017上に、EL層7014、第2の電極7015が順に積層されている。
【0216】
第1の電極7017は可視光を透過する導電膜を用いる。可視光を透過する導電膜としては、例えば酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOとする。)、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などを挙げることができる。また、光を透過する程度(好ましくは、5nm〜30nm程度)の金属薄膜を用いることもできる。例えば20nmの膜厚を有するアルミニウム膜を他の透光性を有する導電膜に積層して用いることができる。
【0217】
第2の電極7015はEL層7014が発する光を効率よく反射する材料が好ましい。なぜなら光の取り出し効率を向上できるためである。なお、第2の電極7015を積層構造としてもよい。例えば、EL層7014に接する側に可視光を透過する導電膜を用い、他方に光を遮光する膜を積層して用いることもできる。光を遮光する膜としては、EL層が発する光を効率よく反射する金属膜等が好ましいが、例えば黒の顔料を添加した樹脂等を用いることもできる。
【0218】
なお、第1の電極7017、又は第2の電極7015のいずれか一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。陽極として機能する電極には、仕事関数の大きな物質が好ましく、陰極として機能する電極には仕事関数の小さな物質が好ましい。
【0219】
仕事関数が大きい材料としては、例えば、ZrN、Ti、W、Ni、Pt、Cr等や、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、インジウム−亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide)などを用いることができる。仕事関数が小さい材料としては、LiやCs等のアルカリ金属、およびMg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(Mg:Ag、Al:Liなど)の他、YbやEr等の希土類金属等を用いることができる。
【0220】
なお、消費電力を比較する場合、第1の電極7017を陰極として機能させ、第2の電極7015を陽極とするほうが、駆動回路部の電圧上昇を抑制でき、消費電力を少なくできるため好ましい。
【0221】
EL層7014は、少なくとも発光層を含めば良く、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されていてもよい。複数の層で構成されている構成としては、陽極側から正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、並びに電子注入層が積層された構成を例に挙げることができる。なお、発光層を除くこれらの層はEL層7014中に必ずしも全て設ける必要はない。また、これらの層は重複して設けることもできる。具体的にはEL層7014中に複数の発光層を重ねて設けてもよく、電子注入層に重ねて正孔注入層を設けてもよい。また、中間層として電荷発生層の他、電子リレー層など他の構成を適宜加えることができる。
【0222】
また、発光素子7012は第1の電極7017の端部を覆う隔壁7019を備える。隔壁7019は、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、エポキシ等の有機樹脂膜の他、無機絶縁膜または有機ポリシロキサン膜を適用できる。特に、隔壁7019の側面が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように、感光性の樹脂材料を用いて形成することが好ましい。隔壁7019に感光性の樹脂材料を用いる場合、レジストマスクを形成する工程を省略することができる。また、隔壁を無機絶縁膜で形成することもできる。無機絶縁膜を隔壁に用いることで、隔壁に含まれる水分量を低減できる。
【0223】
なお、カラーフィルタ層7033が発光素子7012と基板7010の間に設けられている(図14(A)参照)。発光素子7012に白色に発光する構成を適用することにより、発光素子7012が発する光はカラーフィルタ層7033を通過し、第2のゲート絶縁層7031、第1のゲート絶縁層7030、及び基板7010を通過して、射出される。
【0224】
複数の種類のカラーフィルタ層7033を形成してもよく、例えば画素毎に赤色のカラーフィルタ層、青色のカラーフィルタ層、緑色のカラーフィルタ層などを設けることができる。なお、カラーフィルタ層7033はインクジェット法などの液滴吐出法や、印刷法、またはフォトリソグラフィ技術を用いたエッチング法などでそれぞれ形成する。
【0225】
また、カラーフィルタ層7033はオーバーコート層7034で覆われ、さらに保護絶縁層7035によって覆う。なお、図14(A)ではオーバーコート層7034は薄い膜厚で図示したが、オーバーコート層7034は、アクリル樹脂などの樹脂材料を用い、カラーフィルタ層7033に起因する凹凸を平坦化する機能を有している。
【0226】
また、第2のゲート絶縁層7031、絶縁層7032、カラーフィルタ層7033、オーバーコート層7034、及び保護絶縁層7035に形成され、且つ、ドレイン電極層に達するコンタクトホールは、隔壁7019と重なる位置に配置する。
【0227】
次に、両面射出構造の発光素子について、図14(B)を用いて説明する。両面射出構造の発光素子は、図14(B)に矢印で示す方向に光を発する。
【0228】
図14(B)において、発光素子駆動用トランジスタ7021は実施の形態4に示すnチャネル型のトランジスタを用いる例を示しているが、特に限定されない。
【0229】
図14(B)では、発光素子駆動用トランジスタ7021のソース電極層またはドレイン電極層と電気的に接続された透光性を有する第1の電極7027上に、EL層7024、第2の電極7025が順に積層されている。
【0230】
第1の電極7027、及び第2の電極7025は可視光を透過する導電膜を用いる。可視光を透過する導電膜としては、図14(A)の第1の電極7017に用いることができる材料を適用することができる。よって、詳細な説明は第1の電極7017の説明を援用する。
【0231】
なお、第1の電極7027、又は第2の電極7025のいずれか一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。陽極として機能する電極には、仕事関数の大きな物質が好ましく、陰極として機能する電極には仕事関数の小さな物質が好ましい。
【0232】
EL層7024は単数の層で構成されていても、複数の層が積層されていても良い。EL層7024としては、図14(A)のEL層7014に用いることができる構成、及び材料を適用することができる。よって、詳細な説明はEL層7014の説明を援用する。
【0233】
また、発光素子7022は第1の電極7027の端部を覆う隔壁7029を備える。隔壁7029は、図14(A)の隔壁7019に用いることができる構成、及び材料を適用することができる。よって、詳細な説明は隔壁7019の説明を援用する。
【0234】
また、図14(B)に示した素子構造の場合、発光素子7022から発せられる光は、矢印で示すように第2の電極7025側と第1の電極7027側の両方に射出し、第1の電極7027側に発せられる一方の光は、第2のゲート絶縁層7041、絶縁層7042、第1のゲート絶縁層7040、及び基板7020を通過して射出させる。
【0235】
また、図14(B)の構造においては、フルカラー表示を行う場合、例えば発光素子7022として緑色発光素子とし、隣り合う一方の発光素子を赤色発光素子とし、もう一方の発光素子を青色発光素子とする。また、3種類の発光素子だけでなく白色素子を加えた4種類の発光素子でフルカラー表示ができる発光表示装置を作製してもよい。
【0236】
次に、上面射出構造の発光素子について、図14(C)を用いて説明する。上面射出構造の発光素子は、図14(C)に矢印で示す方向に光を発する。
【0237】
図14(C)において、発光素子駆動用トランジスタ7001は実施の形態4に示すnチャネル型のトランジスタを用いる例を示しているが、特に限定されない。
【0238】
図14(C)では、発光素子駆動用トランジスタ7001のソース電極層またはドレイン電極層と電気的に接続された第1の電極7003上に、EL層7004、第2の電極7005が順に積層されている。
【0239】
第1の電極7003はEL層7004が発する光を効率よく反射する材料が好ましい。なぜなら光の取り出し効率を向上できるためである。なお、第1の電極7003を積層構造としてもよい。例えば、EL層7004に接する側に可視光を透過する導電膜を用い、他方に光を遮光する膜を積層して用いることもできる。光を遮光する膜としては、EL層が発する光を効率よく反射する金属膜等が好ましいが、例えば黒の顔料を添加した樹脂等を用いることもできる。
【0240】
第2の電極7005は可視光を透過する導電膜を用いる。可視光を透過する導電膜としては、図14(A)の第1の電極7017に用いることができる材料を適用することができる。よって、詳細な説明は第1の電極7017の説明を援用する。
【0241】
なお、第1の電極7003、又は第2の電極7005のいずれか一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。陽極として機能する電極には、仕事関数の大きな物質が好ましく、陰極として機能する電極には仕事関数の小さな物質が好ましい。
【0242】
EL層7004は単数の層で構成されていても、複数の層が積層されていても良い。EL層7004としては、図14(A)のEL層7014に用いることができる構成、及び材料を適用することができる。よって、詳細な説明はEL層7014の説明を援用する。
【0243】
また、発光素子7002は第1の電極7003の端部を覆う隔壁7009を備える。隔壁7009は、図14(A)の隔壁7019に用いることができる構成、及び材料を適用することができる。よって、詳細な説明は隔壁7019の説明を援用する。
【0244】
また、図14(C)において、発光素子駆動用トランジスタ7001のソース電極層またはドレイン電極層は、保護絶縁層7052及び絶縁層7055に設けられたコンタクトホールを介して第1の電極7003と電気的に接続する。平坦化絶縁層7053は、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン、ポリアミド、エポキシ等の樹脂材料を用いることができる。また上記樹脂材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、平坦化絶縁層7053を形成してもよい。平坦化絶縁層7053の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタ法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷等)等を用いることができる。
【0245】
また、図14(C)の構造においては、フルカラー表示を行う場合、例えば発光素子7002として緑色発光素子とし、隣り合う一方の発光素子を赤色発光素子とし、もう一方の発光素子を青色発光素子とする。また、3種類の発光素子だけでなく白色素子を加えた4種類の発光素子でフルカラー表示ができる発光表示装置を作製してもよい。
【0246】
また、図14(C)の構造においては、配置する複数の発光素子を全て白色発光素子とし、且つ発光素子7002上方にカラーフィルタなどを有する封止基板を配置する構成とし、フルカラー表示ができる発光表示装置を作製してもよい。白色などの単色の発光を示す材料を形成し、カラーフィルタや色変換層を組み合わせることによりフルカラー表示を行うことができる。
【0247】
もちろん単色発光の表示を行ってもよい。例えば、白色発光を用いて照明装置を形成してもよいし、単色発光を用いてエリアカラータイプの発光装置を形成してもよい。
【0248】
また、必要があれば、円偏光板などの偏光フィルムなどの光学フィルムを設けてもよい。
【0249】
なお、発光素子の駆動を制御するトランジスタ(発光素子駆動用トランジスタ)と発光素子が電気的に接続されている例を示したが、発光素子駆動用トランジスタと発光素子との間に電流制御用トランジスタが接続されている構成であってもよい。
【0250】
なお本実施の形態で示す半導体装置は、図14に示した構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0251】
(実施の形態6)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。上記実施の形態で説明した表示装置を具備する電子機器の例について説明する。
【0252】
図15(A)は、携帯型の情報端末であり、本体3001、筐体3002、表示部3003a、3003bなどによって構成されている。表示部3003bはタッチ入力機能を有するパネルとなっており、表示部3003bに表示されるキーボードボタン3004を触れることで画面操作や、文字入力を行うことができる。勿論、表示部3003aをタッチ入力機能を有するパネルとして構成してもよい。実施の形態2乃至実施の形態4で示したトランジスタをスイッチング素子として用い、実施の形態5に示す液晶パネルや有機発光パネルを作製して表示部3003a、3003bに適用することにより、携帯型の情報端末とすることができる。
【0253】
図15(A)は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報を操作又は編集する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。
【0254】
また、図15(A)に示す携帯型の情報端末は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0255】
また、図15(A)に示す携帯型の情報端末は、2つの表示部3003a、3003bのうち、一方を取り外すことができ、取り外した場合の図を図15(B)に示している。表示部3003aもタッチ入力機能を有するパネルとし、持ち運びの際、さらなる軽量化を図ることができ、片手で筐体3002をもってもう片方の手で操作することができ、便利である。
【0256】
さらに、図15(B)に示す筐体3002にアンテナやマイク機能や無線機能を持たせ、携帯電話として用いてもよい。
【0257】
図15(C)は、携帯電話機の一例を示している。図15(C)に示す携帯電話機5005は、筐体に組み込まれた表示部5001の他、ヒンジ5002に取り付けられた表示パネル5003、操作ボタン5004、スピーカ、マイクなどを備えている。
【0258】
図15(C)に示す携帯電話機5005は、表示パネル5003がスライドして、表示部5001と重なるようになっており、透光性を有するカバーとしても機能する。表示パネル5003は、実施の形態5の図14(B)に示した、基板側及び基板とは反対側の面から発光を取り出す両面射出構造の発光素子を用いた表示パネルである。
【0259】
また、両面射出構造の発光素子を用いた表示パネル5003であるため、表示部5001と重ねた状態でも表示を行うことができ、使用者はどちらも表示し、どちらの表示も視認することもできる。表示パネル5003は透光性を有し、表示パネルの向こう側が透けて見えるパネルである。例えば、地図の表示を表示部5001で行い、使用者の所在地を表示パネル5003に表示することによって、現在地を認識しやすい状態を提供することができる。
【0260】
また、携帯電話機5005に撮像素子を設け、テレビ電話として使用する場合、複数の相手の顔を表示しながら、複数の相手と会話ができるため、テレビ会議なども行うことができる。例えば、表示パネル5003に一人または複数の相手の顔を表示し、さらに表示部5001にもう一人の顔を表示させることで、使用者は2人以上の顔を見ながら会話を行うことができる。
【0261】
また、表示パネル5003に表示されたタッチ入力ボタン5006を指などで触れることで、情報を入力することができる。また、電話を掛ける、或いはメールを打つなどの操作は、表示パネル5003をスライドさせて、操作ボタン5004を指などで触れることにより行うことができる。
【0262】
図15(D)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置9600は、筐体9601に表示部9603が組み込まれている。表示部9603により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、CPUを内蔵したスタンド9605により筐体9601を支持した構成を示している。実施の形態2乃至実施の形態4で示したトランジスタを表示部9603に適用することにより、テレビジョン装置9600とすることができる。
【0263】
テレビジョン装置9600の操作は、筐体9601が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機により行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0264】
なお、テレビジョン装置9600は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0265】
また、テレビジョン装置9600は、外部接続端子9604や、記憶媒体再生録画部9602、外部メモリスロットを備えている。外部接続端子9604は、USBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、パーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。記憶媒体再生録画部9602では、ディスク状の記録媒体を挿入し、記録媒体に記憶されているデータの読み出し、記録媒体への書き込みが可能である。また、外部メモリスロットに差し込まれた外部メモリ9606にデータ保存されている画像や映像などを表示部9603に映し出すことも可能である。
【0266】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0267】
100 基板
102 絶縁表面
130 半導体膜
131 種結晶層
132 酸化物半導体膜
201 基板
202 酸化物絶縁膜
203a 酸化物半導体膜
203b 酸化物半導体膜
204a 酸化物半導体膜
204b 種結晶層
205 半導体膜
205a 酸化物半導体膜
205b 種結晶層
206 電極
207 ゲート絶縁膜
208 ゲート電極
209 絶縁膜
213a 酸化物半導体膜
213b 酸化物半導体膜
214a 酸化物半導体膜
214b 種結晶層
215 半導体膜
215a 酸化物半導体膜
215b 種結晶層
216 電極
217 ゲート絶縁膜
218 ゲート電極
219 絶縁膜
220 配線
223b 酸化物半導体膜
223c 酸化物半導体膜
224b 種結晶層
224c 酸化物半導体膜
225 半導体膜
225b 種結晶層
225c 酸化物半導体膜
226 電極
227 ゲート絶縁膜
228 ゲート電極
229 絶縁膜
602 ゲート配線
603 ゲート配線
616 ドレイン電極層
628 トランジスタ
629 トランジスタ
651 液晶素子
652 液晶素子
690 容量配線
3001 本体
3002 筐体
3003a 表示部
3003b 表示部
3004 キーボードボタン
5001 表示部
5002 ヒンジ
5003 表示パネル
5004 操作ボタン
5005 携帯電話機
5006 タッチ入力ボタン
5300 基板
5301 画素部
5302 走査線駆動回路
5303 走査線駆動回路
5304 信号線駆動回路
6400 画素
6401 スイッチング用トランジスタ
6402 駆動用トランジスタ
6403 容量素子
6404 発光素子
6405 信号線
6406 走査線
6407 電源線
6408 共通電極
7001 発光素子駆動用トランジスタ
7002 発光素子
7003 電極
7004 EL層
7005 電極
7009 隔壁
7010 基板
7011 発光素子駆動用トランジスタ
7012 発光素子
7014 EL層
7015 電極
7017 電極
7019 隔壁
7020 基板
7021 発光素子駆動用トランジスタ
7022 発光素子
7024 EL層
7025 電極
7027 電極
7029 隔壁
7030 ゲート絶縁層
7031 ゲート絶縁層
7032 絶縁層
7033 カラーフィルタ層
7034 オーバーコート層
7035 保護絶縁層
7040 ゲート絶縁層
7041 ゲート絶縁層
7042 絶縁層
7052 保護絶縁層
7053 平坦化絶縁層
7055 絶縁層
9600 テレビジョン装置
9601 筐体
9602 記憶媒体再生録画部
9603 表示部
9604 外部接続端子
9605 スタンド
9606 外部メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁表面に一方の面を接し、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層と、
前記種結晶層の他方の面に接し、第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜と、を有し、
前記第1の結晶構造がウルツ鉱型の結晶構造であり、
前記第2の結晶構造がウルツ鉱以外の六方晶であるヘテロ構造を有する半導体膜。
【請求項2】
絶縁表面に一方の面を接し、第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層と、
前記種結晶層の他方の面に接し、第2の結晶構造を有する結晶を含む酸化物半導体膜と、を有し、
前記第1の結晶構造がウルツ鉱型の結晶構造であり、
前記第2の結晶構造がYbFe型構造、YbFe型構造及びその変形型構造のいずれか一であるヘテロ構造を有する半導体膜。
【請求項3】
前記種結晶層の厚さが0.1nm以上10nm以下である、請求項1または請求項2記載のヘテロ構造を有する半導体膜。
【請求項4】
前記種結晶層が窒化インジウム、または窒化ガリウムを含む、請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載のヘテロ構造を有する半導体膜。
【請求項5】
前記種結晶層が亜鉛、インジウム、ガリウム、酸素、及び窒素を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載のヘテロ構造を有する半導体膜。
【請求項6】
前記種結晶層が、窒素を0.1原子%以上5原子%未満含む請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載のヘテロ構造を有する半導体膜。
【請求項7】
前記酸化物半導体膜が、窒素を1×1017/cm以上5×1019/cm未満含む請求項1乃至請求項6のいずれか一に記載のヘテロ構造を有する半導体膜。
【請求項8】
ゲート電極と、
前記ゲート電極と接する第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜に接して、前記ゲート電極と重畳するヘテロ構造を有する半導体膜と、
前記ヘテロ構造を有する半導体膜と接する第2の絶縁膜と、を有し、
前記ヘテロ構造を有する半導体膜は、
前記第1の絶縁膜と接して第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層と、
前記第2の絶縁膜と接してc軸配向した第2の結晶構造を有する異方性結晶を含む酸化物半導体膜と、を備え、
前記第1の結晶構造がウルツ鉱型の結晶構造であり、
前記第2の結晶構造がウルツ鉱以外の六方晶であるヘテロ構造を有する半導体素子。
【請求項9】
ゲート電極と、
前記ゲート電極と接する第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜に接して、前記ゲート電極と重畳するヘテロ構造を有する半導体膜と、
前記ヘテロ構造を有する半導体膜と接する第2の絶縁膜と、を有し、
前記ヘテロ構造を有する半導体膜は、
前記第1の絶縁膜と接して第1の結晶構造を有する結晶を含む種結晶層と、
前記第2の絶縁膜と接してc軸配向した第2の結晶構造を有する異方性結晶を含む酸化物半導体膜と、を備え、
前記第1の結晶構造がウルツ鉱型の結晶構造であり、
前記第2の結晶構造がYbFe型構造、YbFe型構造及びその変形型構造のいずれか一であるヘテロ構造を有する半導体素子。
【請求項10】
請求項8または請求項9記載の半導体素子を用いた半導体装置。

【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−134468(P2012−134468A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255776(P2011−255776)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】