説明

半導体装置の製造方法

【課題】新規な半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】SiN層にPおよびOを注入する工程と、前記SiN層に注入されたPおよびOをH2Oと反応させ、前記SiN層をエッチングする工程とを有する方法により、半導体装置を製造する。特に、半導体装置を形成するにあたり、狭スペースで高アスペクト比の溝サイドウォールを形成する工程や、埋め込み型ビット線を形成する工程に、上記のようにSiN層をエッチングすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係る実施形態は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造プロセスにおいて、プラズマガスを用いた異方性エッチングが広く用いられている。このような異方性エッチングにおいて、側壁の絶縁膜を残しながら、側壁の絶縁膜と同一の底部の絶縁膜のみをエッチングする場合がある。例えば、トランジスタのビット線を形成する際のSACプロセスがある。
【0003】
特許文献1には、コンタクトホールの底部に露出するSiN層を選択的にエッチングする工程が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−307001号公報
【特許文献2】特開2009−010366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明に係る実施形態は、新規な半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法は、
SiN層にPおよびOを注入する工程と、
前記SiN層に注入されたPおよびOをH2Oと反応させ、前記SiN層をエッチングする工程と
を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の他の一実施形態に係る半導体装置の製造方法は、
半導体基板にゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極にSiNサイドウォールを形成する工程と、
前記SiNサイドウォールが埋没するように前記半導体基板にSiOを堆積する工程と、
前記SiOをプラズマガスによりエッチングする工程と、
前記SiOのエッチングにより露出した前記SiNサイドウォールにPおよびOを選択的に注入する工程と、
前記SiNサイドウォールに注入されたPおよびOとH2Oとを反応させ、前記SiNサイドウォールをエッチングする工程と
を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の他の一実施形態に係る半導体装置の製造方法は、
半導体基板にホールを形成する工程と、
前記ホールの側面と底面にSiN層を堆積する工程と、
前記ホールの底面に堆積したSiN層にPおよびOを選択的に注入する工程と、
前記SiN層に注入されたPおよびOとH2Oとを反応させ、前記SiN層をエッチングする工程と
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る実施形態によれば、新規な半導体装置の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】第一の実施形態において、エッチング対象となる構造体を示す模式的断面図である。
【図1B】第一の実施形態において、SiO層をエッチングした状態を示す模式的断面図である。
【図1C】第一の実施形態において、SiN層にPおよびOを注入した状態を示す模式的断面図である。
【図1D】第一の実施形態において、SiN層をエッチングした状態を示す模式的断面図である。
【図1E】第一の実施形態において、コンタクトプラグを堆積させた状態を示す模式的断面図である。
【図2A】第一の実施形態において、溝底部のSiN層の表面にPおよびOを注入している状態を示す模式的断面図である。
【図2B】第一の実施形態において、溝底部のSiN層の表面にPO含有SiN層が形成された状態を示す模式的断面図である。
【図2C】第一の実施形態において、溝底部のPO含有SiN層をH2O処理している状態を示す模式的断面図である。
【図2D】第一の実施形態において、サイドウォール肩部のSiN層の表面にPおよびOを注入している状態を示す模式的断面図である。
【図2E】第一の実施形態において、サイドウォール肩部のSiN層の表面にPO含有SiN層が形成された状態を示す模式的断面図である。
【図2F】第一の実施形態において、サイドウォール肩部のPO含有SiN層をH2O処理している状態を示す模式的断面図である。
【図2G】第一の実施形態において、ポリシリコン層の表面にPおよびOを注入している状態を示す模式的断面図である。
【図2H】第一の実施形態において、ポリシリコン層の表面にPO含有ポリシリコン層が形成された状態を示す模式的断面図である。
【図2I】第一の実施形態において、PO含有ポリシリコン層をH2O処理している状態を示す模式的断面図である。
【図3A】第一の関連技術において、エッチング対象となる構造体を示す模式的断面図である。
【図3B】第一の関連技術において、SiO層をエッチングした状態を示す模式的断面図である。
【図3C】第一の関連技術において、SiN層をエッチングした状態を示す模式的断面図である。
【図3D】第一の関連技術において、コンタクトプラグを堆積させた状態を示す模式的断面図である。
【図4A】第二の実施形態において、半導体基板にホールを形成した状態を示す模式的断面図である。
【図4B】第二の実施形態において、半導体基板の表面にSiN層を堆積させた状態を示す模式的断面図である。
【図4C】第二の実施形態において、SiN層にPおよびOを注入した状態を示す模式的断面図である。
【図4D】第二の実施形態において、SiN層をエッチングした状態を示す模式的断面図である。
【図5】第二の関連技術において、SiN層をエッチングした状態を示す模式的断面図である。
【図6A】第三の実施形態において、半導体基板にホールを形成した状態を示す模式的断面図である。
【図6B】第三の実施形態において、半導体基板の表面にSiO層およびSiN層を堆積させた状態を示す模式的断面図である。
【図6C】第三の実施形態において、SiN層にPおよびOを注入した状態を示す模式的断面図である。
【図6D】第三の実施形態において、SiN層をエッチングした状態を示す模式的断面図である。
【図6E】第三の実施形態において、SiO層をエッチングした状態を示す模式的断面図である。
【図7】第三の関連技術において、SiN層をエッチングした状態を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一の実施形態>
本実施形態は、狭スペースで高アスペクト比の溝サイドウォールを形成した例である。以下、本実施形態について、図1A〜1Eを用いて説明する。
【0012】
まず、図1Aに示すような構造体を形成する。図1Aにおいては、半導体基板1上に、ゲート電極となるポリシリコン層11、WSi12およびW層13が形成されており、さらにその上にSiN層14が形成されている。これらの層は所定の形状にパターニングされており、その表面にはSiO層21およびSiN層22が形成されている。その上には、層間絶縁膜であるSiO層31が形成され、さらにSiO層31のエッチングのためのマスクとなるポリシリコン層32が形成されている。
【0013】
次いで、ポリシリコン層32をマスクとして、SiO層31をプラズマガスによりエッチングする(図1B)。本実施形態の一例では、市販の2周波型平行平板RIE装置を用いて、C58/Ar/O2ガスを総流量700sccm、圧力50mTorrで導入し、RFを2000W印加する。エッチングの終了は、波長440nmの発光をモニタして検出することができる。このとき、サイドウォールのSiN層22およびSiO層21の一部もエッチングされる。
【0014】
そして、SiN層22にPおよびOを注入する(図1C)。ここで、PおよびOは水平方向に選択的に注入されるので、溝底部のSiN層22の表面にPO含有SiN層33aが形成されるとともに、サイドウォール肩部のSiN層22の上部にもPO含有SiN層33bが形成される。また、ポリシリコン層32の表面にもPO含有ポリオシリコン層34が形成される。
【0015】
本実施形態の一例では、まず、市販の高電流型イオン注入装置にて、リン(P)を10KeVで2.5×1016(atoms/cm2)注入し、引き続き酸素(O)を1.5KeVで6×1016(atoms/cm2)注入する。ここで、SiN層に注入されたPおよびOの深さが等しくなるように、PおよびOのイオンエネルギーを調整することが好ましい。
【0016】
また、PおよびOのイオンエネルギーを複数組み合わせて、SiN層に注入されたPおよびOの量が均一になるように調整することが好ましい。例えば、まず、リン(P)を10KeVで3×1015(atoms/cm2)注入し、連続して5KeVで2×1015(atoms/cm2)注入する。続けて、酸素(O)を1.5KeVで7.5×1015(atoms/cm2)注入し、連続して75KeVで5×1015(atoms/cm2)で注入する。
【0017】
これらの調整は、シミュレーションにより各イオンの注入エネルギーを計算して決定することで、行うことができる。
【0018】
次いで、SiN層22に注入されたPおよびOをH2Oと反応させることにより、リン酸を生成させて、そのリン酸によりSiN層22をエッチングする(図1D)。PおよびOをH2Oと反応させると、以下のような反応によりリン酸(H3PO4)が生成する。
【0019】
4P+10O+6H2O→4H3PO4
2Oがある一定温度以上であれば、SiN層の表面から徐々にエッチングされる。H2Oの温度が高い程反応性が良いが、H2Oは100℃で気化してしまうので、60℃以上100℃未満の温水が好ましく、80℃以上100℃未満の温水がより好ましい。ただし、高圧下であれば、例えば100℃以上200℃以下の高温水を用いることもできる。さらに、H2Oを気化させた水蒸気を用いることもできる。これにより、SiN層の表面のリン酸を高濃度に維持することができる。十分に反応させた後には、表面に残ったエッチング生成物を洗い流す処理をすればよい。
【0020】
エッチングされる量は、PおよびOの注入量でコントロールされる。エッチング反応はPおよびOが注入された部分を中心に起こるので、注入分布起因で若干横に広がることがあるものの、ほぼ異方性エッチングが可能である。また、レジストマスクを設けることで、任意の場所をエッチングすることも可能である。
【0021】
ここで、リン酸によって、SiO層やポリシリコン層などの他の層はほとんどエッチングされない。したがって、SiN層エッチングの高選択性のメリットを享受することができる。すなわち、図1Dにおいて、サイドウォールを形成しているSiO層21がエッチングされてゲート電極が露出する問題は生じない。
【0022】
次いで、ソース・ドレインとの電気的コンタクトを取るコンタクトプラグ41が堆積される(図1E)。ゲート電極が露出する問題は生じていないので、ゲート電極とコンタクトプラグ41がショートしてしまう問題も生じない。
【0023】
本実施形態によれば、選択性が極めて高く、表面でも溝底部でもエッチングレートが同じであり、異方性の高いSiN層のエッチングが可能になる。これを狭スペースで高アスペクト比の溝に形成されているサイドウォールエッチバックに適用すれば、肩落ちやサイドエッチングを起こすことなく、高選択的にSiN層をエッチングすることができる。
【0024】
また、本実施形態は、エッチング特性が優れているだけではなく、地球環境にも優しい。なぜなら、廃水がほとんど水だからである。すなわち、上記エッチングに用いたH2Oを単に廃棄すればよい。また、必要な部分が必要な量だけエッチングされるオートストップ機能を有するので、過剰なエッチングをして必要な構造物が壊れたり、液槽を汚染するリスクも小さい。
【0025】
以下、本実施形態における表面反応について、図2A〜2Iを用いて、さらに詳しく説明する。図2A〜2Cは溝底部のSiN層22の表面の状態、図2D〜2Fはサイドウォール肩部のSiN層22の表面の状態、図2G〜2Iはマスクとなるポリシリコン層32の表面の状態を示している。
【0026】
溝底部のSiN層22においては、その表面にPおよびOが注入される(図2A)ことで、SiN層22の表面にP410が生成して、PO含有SiN層33aが形成される(図2B)。この基板を温水に浸漬すると、P410が水と反応してH3PO4が生成し、それと同時にSiNの溶解も始まる(図2C)。
【0027】
Si34+4H3PO4+12H2O→3Si(OH)4+4NH4・H2PO4
引き続いて、脱水縮合反応により、ポリシロキサンが生成する。
【0028】
Si(OH)4→((−Si−O−)n)(OH)n-2
この反応は、P410がなくなるまで続く。このようにして、垂直方向にエッチングは進行する。一方、下地のSiO層に対して高い選択性を持つので、SiO層は保持される。
【0029】
サイドウォール肩部のSiN層22においても、溝底部のSiN層22と同様の反応が進行し(図2D〜2F)、垂直方向にエッチングは進行する。ただし、PO含有SiN層33bにおけるP410の濃度は低くなるので、溝底部のSiN層22に比べてエッチング量は少なくなる。このことは、なるべくエッチングしたくない場所であるので、好都合である。一方、下地のSiO層に対して高い選択性を持つので、SiO層は保持される。
【0030】
ポリシリコン層32においても、その表面にPおよびOが注入される(図2A)ことで、SiN層22の表面にP410が生成して、PO含有SiN層33aが形成されることは同じである(図2B)。この基板を温水に浸漬すると、P410が水と反応してH3PO4が生成するが、ポリシリコンはH3PO4に溶解しないので、そのままH3PO4が温水中に溶解した時点で反応は終了する(図2C)。したがって、ポリシリコン層32はエッチングされない。
【0031】
以下、溝底部のSiN層22の厚さが10nmであるときのPやOの注入量を算出する例を示す。
(1)除去するSiN膜の容積[半導体基板の半径が15cmの場合]
15×15×3.14×10×10-7=7.06×10-4(cm3
(2)SiN膜の密度[成膜方法によらず概ね一定]
3(g/cm3
(3)除去するSiN膜の重量
(1)×(2)=2.12×10-3(g)
(4)Si34の1mol当たり重量
28.03×3+14.01×4=140.3(g)
(5)除去するSiN膜中のSi34のモル数
(3)÷(4)=1.51×10-5(mol)
(6)必要なPの原子数[1molのSi34に対して4molのPが必要]
(5)×6.02×1023×4=3.64×1019(atoms)
(7)必要なOの原子数[1molのSi34に対して10molのOが必要]
(5)×6.02×1023×10=9.09×1019(atoms)
(8)必要なPの注入量
(6)÷(15×15×3.14)=5.15×1016(atoms/cm2
(9)必要なOの注入量
(7)÷(15×15×3.14)=1.29×1017(atoms/cm2
<第一の関連技術>
本技術は、第一の実施形態において、異方性ドライエッチングにより溝底部のSiN層5をエッチングした例である。以下、本技術について、図3A〜3Dを用いて説明する。
【0032】
まず、第一の実施形態と同様にして、図3Aに示すような構造体を形成する。次いで、第一の実施形態と同様にして、ポリシリコン層32をマスクとして、層間絶縁膜であるSiO層31をプラズマガスによりエッチングする(図3B)。このとき、サイドウォールを形成しているSiN層22およびSiO層21の一部もエッチングされる。
【0033】
そして、サイドウォールを形成しているSiO層21をマスクとして、溝底部のSiN層5をプラズマガスによりエッチングする(図3C)。本技術の一例では、市販の2周波型平行平板RIE装置を用いて、CHF3/Ar/O2ガスを総流量400sccm、圧力30mTorrで導入し、RF1500Wを印加する。エッチングの終了は、波長387nmの発光をモニタして検出することができる。
【0034】
このとき、マスクとして用いられるSiO層21もエッチングされてしまい、ゲート電極が露出してしまう。肩部のように丸みを帯びている形状の場合、平坦である場合よりも物理的スパッタリング効果によりエッチングレートが速くなるからである。
【0035】
また、狭スペースで高アスペクト比の溝底部のSiN層をドライエッチングにより除去するためには、極力デポジション性ガスを加えずに高いイオンエネルギーでエッチャントを溝底部に送り込む必要がある。そうすると、選択比が取れないために、SiN層22だけをエッチングしようとしても、SiO層21もエッチングされてしまうという問題が生じる。また、溝底部よりも表面側の方がエッチングレートが大きいため、サイドウォールの肩落ちの問題が生じる。さらに、プラズマエッチングの場合には、バイアスパワーでイオンを引き込んではいるもののイオンを直進成分だけに揃えることは難しく、斜め入射するイオンが多数存在する。斜め入射したイオンは、局所的なサイドエッチングを生じさせる原因になる。
【0036】
次いで、ソース・ドレインとの電気的コンタクトを取るコンタクトプラグ41が堆積される(図5D)。しかし、ゲート電極が露出しているので、ゲート電極とコンタクトプラグ41がショートしてしまう問題が生じる。
【0037】
以上のように、本技術では、サイドウォールの絶縁膜もエッチングされてしまい、所望の構造を形成することが困難である。この問題は、半導体装置のプロセスルールが微細化すると起こりやすい。
【0038】
<第二の実施形態>
本実施形態は、半導体基板に設けられたホールの側面に絶縁膜を形成した例である。このような工程は、例えば、特許文献2に開示されているような埋め込み型ビット線の形成に用いることができる。以下、本実施形態について、図4A〜4Dを用いて説明する。
【0039】
まず、半導体基板1上に形成されたマスク3を用いて異方性エッチングして、半導体基板1にホールを形成する(図4A)。次いで、半導体基板1の表面にSiN層5を堆積させる(図4B)。
【0040】
そして、SiN層5にPおよびOを注入する(図4C)。PおよびOの注入は、第一の実施形態に準じて行うことができる。ここで、PおよびOは水平方向に選択的に注入されるので、ホール底部のSiN層5の表面にPO含有SiN層6aが形成されるとともに、半導体基板1上部のSiN層5の表面にもPO含有SiN層6bが形成される。
【0041】
次いで、SiN層5に注入されたPおよびOをH2Oと反応させることにより、リン酸を生成させて、そのリン酸によりSiN層5をエッチングする(図4D)。H2Oとの反応は、第一の実施形態に準じて行うことができる。前述のように、PO含有SiN層6aおよび6bは、ホール底部および半導体基板1上部のSiN層5の表面に形成されているので、それらのSiN層を選択的にエッチングすることが可能となる。なお、ホール側壁のSiN層5の表面にもPO含有SiN層が形成される場合もあるが、PおよびOの注入の選択性およびSiN層の厚みを考慮することにより、ホール側壁のSiN層のみを残存させることが可能である。
【0042】
本実施形態では、ホール側壁にのみ絶縁膜を形成する例を示したが、半導体基板1上部の絶縁膜をあらかじめ厚めにしておけば、半導体基板1上部にも絶縁膜を形成させることもできる。
【0043】
<第二の関連技術>
本技術は、第二の実施形態において、第一の関連技術に準じてSiN層5をエッチングした例である。本技術によりSiN層5をエッチングした状態を図5に示す。
【0044】
狭スペースで高アスペクト比のホール底部のSiN層をドライエッチングにより除去すると、ホール底部よりも表面側の方がエッチングレートが大きいため、サイドウォールの肩落ちの問題が生じる。さらに、プラズマエッチングの場合には、バイアスパワーでイオンを引き込んではいるもののイオンを直進成分だけに揃えることは難しく、斜め入射するイオンが多数存在する。斜め入射したイオンは、局所的なサイドエッチングを生じさせる原因になる。エッチャントガスが高エネルギーのまま底部に届かないことによる抜け不良の問題も生じる。
【0045】
<第三の実施形態>
第三の実施形態は、第二の実施形態における絶縁膜をSiO/SiN層にした例である。以下、本実施形態について、図6A〜6Eを用いて説明する。
【0046】
まず、SiN層2が堆積している半導体基板1上に形成されたマスク3を用いて異方性エッチングして、SiN層2および半導体基板1にホールを形成する(図6A)。次いで、SiN層2および半導体基板1の表面にSiO層4を堆積させ、引き続きSiN層5を堆積させる(図6B)。
【0047】
そして、SiN層5にPおよびOを注入する(図6C)。PおよびOの注入は、第一の実施形態に準じて行うことができる。ここで、PおよびOは水平方向に選択的に注入されるので、ホール底部のSiN層5の表面にPO含有SiN層6aが形成されるとともに、半導体基板1上部のSiN層5の表面にもPO含有SiN層6bが形成される。
【0048】
次いで、SiN層5に注入されたPおよびOをH2Oと反応させることにより、リン酸を生成させて、そのリン酸によりSiN層5をエッチングする(図6D)。H2Oとの反応は、第一の実施形態に準じて行うことができる。前述のように、PO含有SiN層6aおよび6bは、ホール底部および半導体基板1上部のSiN層5の表面に形成されているので、それらのSiN層を選択的にエッチングすることが可能となる。なお、ホール側壁のSiN層5の表面にもPO含有SiN層が形成される場合もあるが、PおよびOの注入の選択性およびSiN層の厚みを考慮することにより、ホール側壁のSiN層のみを残存させることが可能である。
【0049】
次いで、ホール側壁のSiN層5をマスクとして、ホール底部のSiO層4をエッチングする(図6E)。SiO層4のエッチングは、異方性エッチングでもよいし、異方性エッチングが困難であればHFによるエッチングでもよい。
【0050】
本実施形態では、ホール側壁にのみ絶縁膜を形成する例を示したが、半導体基板1上部の絶縁膜をあらかじめ厚めにしておけば、半導体基板1上部にも絶縁膜を形成させることもできる。
【0051】
<第三の関連技術>
本技術は、第三の実施形態において、第一の関連技術に準じてSiN層5をエッチングした例である。本技術によりSiN層5をエッチングした状態を図7に示す。
【0052】
狭スペースで高アスペクト比のホール底部のSiN層をドライエッチングにより除去すると、ホール底部よりも表面側の方がエッチングレートが大きいため、サイドウォールの肩落ちの問題が生じる。さらに、プラズマエッチングの場合には、バイアスパワーでイオンを引き込んではいるもののイオンを直進成分だけに揃えることは難しく、斜め入射するイオンが多数存在する。斜め入射したイオンは、局所的なサイドエッチングを生じさせる原因になる。エッチャントガスが高エネルギーのまま底部に届かないことによる抜け不良の問題も生じる。
【0053】
さらに、狭スペースで高アスペクト比のホール底部のSiN層をドライエッチングにより除去するためには、極力デポジション性ガスを加えずに高いイオンエネルギーでエッチャントをホール底部に送り込む必要がある。そうすると、選択比が取れないために、SiN層だけをエッチングしようとしても、SiO層もエッチングされてしまうという問題も生じる。
【符号の説明】
【0054】
1 基板
2 SiN層
3 マスク
4 SiO層
5 SiN層
6a PO含有SiN層
6b PO含有SiN層
7 マスク
11 ポリシリコン層
12 WSi層
13 W層
14 SiN層
21 SiO層
22 SiN層
31 SiO層
32 ポリシリコン層
33a PO含有SiN層
33b PO含有SiN層
34 PO含有ポリシリコン層
41 コンタクトプラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiN層にPおよびOを注入する工程と、
前記SiN層に注入されたPおよびOをH2Oと反応させ、前記SiN層をエッチングする工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記SiN層に注入されたPおよびOとH2Oとの反応によりリン酸が生成し、前記リン酸により前記SiN層をエッチングすることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記SiN層に注入されたPおよびOの深さが等しくなるように、PおよびOのイオンエネルギーを調整する工程をさらに有する請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
PおよびOのイオンエネルギーを複数組み合わせて、前記SiN層に注入されたPおよびOの量が均一になるように調整する工程をさらに有する請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記H2Oとして、60℃以上100℃未満の温水を用いる請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記H2Oとして、水蒸気を用いる請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
エッチングに用いたH2Oを廃棄する工程をさらに有する請求項1〜6のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
半導体基板にゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極にSiNサイドウォールを形成する工程と、
前記SiNサイドウォールが埋没するように前記半導体基板にSiOを堆積する工程と、
前記SiOをプラズマガスによりエッチングする工程と、
前記SiOのエッチングにより露出した前記SiNサイドウォールにPおよびOを選択的に注入する工程と、
前記SiNサイドウォールに注入されたPおよびOとH2Oとを反応させ、前記SiNサイドウォールをエッチングする工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
半導体基板にホールを形成する工程と、
前記ホールの側面と底面にSiN層を堆積する工程と、
前記ホールの底面に堆積したSiN層にPおよびOを選択的に注入する工程と、
前記SiN層に注入されたPおよびOとH2Oとを反応させ、前記SiN層をエッチングする工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図2I】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−3838(P2011−3838A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147721(P2009−147721)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】