説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】駆動能力を低下させることなく、半導体装置内部の高電界が与える影響によって生じるGIDLを低減する。
【解決手段】ゲート電極108は、ゲート電極108のチャネル長方向の中央部に位置し且つ高誘電率膜107つまりゲート絶縁膜と接する第1の導電部108Aと、ゲート電極108のチャネル長方向の両端部に位置し且つ高誘電率膜107つまりゲート絶縁膜と接する第2の導電部108Bとを含む。第1の導電部108Aの第1の仕事関数と第2の導電部108Bの第2の仕事関数とが異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)のゲート電極の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図22は従来の半導体装置、具体的にはMISFETの構造を示す断面図である。図22に示すように、基板11のウェル領域12の表面部にチャネル領域13が形成されており、チャネル領域13の両側にエクステンション領域14が形成されており、チャネル領域13及び各エクステンション領域14を挟むようにソース・ドレイン領域15が形成されている。チャネル領域13上にはゲート絶縁膜16が形成されており、ゲート絶縁膜16の上にゲート電極17が形成されている。また、エクステンション領域14上にはゲート電極17を挟むように絶縁性サイドウォールスペーサ18が形成されている。ゲート絶縁膜16は、SiO2 等の低い比誘電率を有する単一種類の材料により形成されている。ゲート電極17は、多結晶シリコン等の単一の仕事関数を有する材料により形成されている。絶縁性サイドウォールスペーサ18はSiO2 又はSiNにより形成されている。尚、各エクステンション領域14の一部分は領域A(以下、オーバーラップ領域Aという)においてゲート電極17とオーバーラップするように形成されている。
【0003】
以下、MISFETの微細化に伴う半導体装置内部の電界強度の増大について述べる。
【0004】
半導体装置の高速化及び高性能化が進み、半導体装置が微細化されるに伴い、エクステンション領域はより浅く形成される。これにより、エクステンション領域のシート抵抗が増大する。このため、MISFETの電流駆動能力を維持するために電圧を下げにくくなり、電圧のスケーリングが困難になってくる。その結果、半導体装置の内部の電界強度が増大してしまう。
【0005】
半導体装置内部の高電界の影響として、ゲート電圧により生じる電界に起因するドレイン電流リーク(GIDL:Gate Induced Drain Leakage)がある。
【0006】
図22に示す半導体装置において、前述のGIDLが生じるメカニズムについて説明する。
【0007】
ソース・ドレイン領域15のうちのドレイン領域にドレイン電圧が印加されると、ゲート絶縁膜16との界面近傍に位置するエクステンション領域14のオーバーラップ領域Aにおいて、ドレイン電圧によりチャネル長方向に生じる電界と、ゲート電極17に印加されるゲート電圧により垂直方向(基板11の主面に対して垂直な方向)に生じる電界とが重畳され、オーバーラップ領域Aにおいて高電界が生じてしまう。これにより、バンド間トンネルによりキャリアが発生し、それがリーク電流つまりGIDLの原因となる。尚、GIDLは、ゲート絶縁膜16が薄くなったり、或いは、ゲート絶縁膜16の比誘電率が高くなると増大する。
【0008】
このGIDLを抑制する方法として、特許文献1に、ゲート絶縁膜の側面がゲート電極の側面よりもゲート電極内部側に入り込んだ構造を有する半導体装置が提案されている。
【0009】
以下、図23を参照しながら、特許文献1に開示された従来の半導体装置について説明する。図23に示すように、シリコン基板等の半導体基板21のウェル領域22の表面部にチャネル領域23が形成されており、チャネル領域23の両側にソース・ドレイン領域24が形成されている。チャネル領域23上には、高い比誘電率(k=40)を有するゲート絶縁膜25が形成されており、ゲート絶縁膜25の上にゲート電極26が形成されている。ゲート電極26の両側面には絶縁性サイドウォールスペーサ27が形成されている。尚、各ソース・ドレイン領域24の一部分は領域A(以下、オーバーラップ領域Aという)においてゲート電極26とオーバーラップするように形成されている。すなわち、チャネル領域23とソース・ドレイン領域24との境界がゲート電極26の側面よりもゲート電極26の内部側に位置している。また、ゲート絶縁膜25の側面も、ゲート電極26の側面よりもゲート電極26の内部側に位置している。詳細には、ゲート絶縁膜25の側面は、ゲート電極26の側面からオフセット量Bだけゲート電極26の内部側に入り込んでおり、オーバーラップ領域A上に位置している。
【0010】
特許文献1に開示された、図23に示す構造を用いることによって、チャネル領域23の一部分がゲート絶縁膜25により覆われないことになり、当該部分においてゲート電圧による電界が十分に作用しなくなるため、オーバーラップ領域Aでの電界を弱めることができ、それによってGIDLを低減することができる。
【特許文献1】特開2004−186295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、図23に示す従来の半導体装置においては、以下のような問題が存在する。すなわち、ゲート絶縁膜25の側面がゲート電極26の側面よりもオフセット量Bだけゲート電極26の内部側に入り込んだ構造を用いているため、オーバーラップ領域Aの実質的な範囲がオフセット量Bだけ減少する。すなわち、オーバーラップ領域Aのうちゲート絶縁膜25が形成されていない部分のソース・ドレイン領域24において、ゲート電圧による電界が十分に作用しないことにより寄生抵抗が増加するため、駆動能力が低下するという問題が生じる。
【0012】
前記に鑑み、本発明は、駆動能力を低下させることなく、半導体装置内部の高電界が与える影響によって生じるGIDLを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するため、本発明に係る半導体装置は、半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、前記半導体基板の表面部における前記ゲート電極の両側に形成された不純物領域とを備え、前記ゲート電極は、前記ゲート電極のチャネル長方向の中央部に位置し且つ前記ゲート絶縁膜と接する第1の導電部と、前記ゲート電極の前記チャネル長方向の両端部に位置し且つ前記ゲート絶縁膜と接する第2の導電部とを含み、前記第1の導電部の第1の仕事関数と前記第2の導電部の第2の仕事関数とが異なっている。
【0014】
本発明の半導体装置によると、ゲート電極中央部(第1の導電部)の第1の仕事関数とゲート電極両端部(第2の導電部)の第2の仕事関数とが異なっているため、第2の仕事関数のみをゲート電極両側の不純物領域(例えばエクステンション領域)の第3の仕事関数に近づけてやることができる。このため、不純物領域の一部分とゲート電極両端部との実質的なオーバーラップ領域を確保しつつ、ゲート電圧に起因して基板主面に対して垂直な方向に生じる電界の強度を、ゲート電極両端部の第2の導電部の下側においてのみ低減することができる。従って、駆動能力を低下させることなく、半導体装置内部の高電界が与える影響によって生じるGIDLを低減することができる。また、ゲート電極両端部の下側の電界強度つまり半導体装置内部の最大電界強度を低下させることができるため、ホットキャリアの発生を抑制することができる。
【0015】
すなわち、本発明の半導体装置において、前記不純物領域の第3の仕事関数と前記第1の導電部の前記第1の仕事関数との差と比べて、前記不純物領域の前記第3の仕事関数と前記第2の導電部の前記第2の仕事関数との差が小さい。
【0016】
具体的には、本発明の半導体装置において、前記不純物領域及び前記第2の導電部はそれぞれn型シリコンから構成されており、前記第1の導電部は金属又は金属化合物から構成されていてもよい。この場合、前記金属はMo、Ta又はWであってもよく、前記金属化合物はTiN、MoSiN又はLaOであってもよい。ここで、金属化合物は合金であっても良い。
【0017】
或いは、本発明の半導体装置において、前記不純物領域及び前記第2の導電部はそれぞれp型シリコンから構成されており、前記第1の導電部は金属又は金属化合物から構成されていてもよい。この場合、前記金属はTa、W又はPtであってもよく、前記金属化合物はTiN、MoSiN、RuO2 、TaN、TaC又はPtWであってもよい。
【0018】
尚、本発明の半導体装置において、前記不純物領域はエクステンション領域であってもよい。この場合、前記エクステンション領域の一部分が前記ゲート電極の前記チャネル長方向の両端部とオーバーラップしており、前記ゲート絶縁膜の両側面が前記エクステンション領域上に位置していてもよい。また、前記ゲート電極から見て前記エクステンション領域の外側の前記半導体基板の表面部に形成されたソース・ドレイン領域を備えていてもよいし、前記ゲート電極の両側面に形成された絶縁性サイドウォールスペーサを備えていてもよい。ここで、エクステンション領域はLDD(lightly doped drain )領域であっても良い。
【0019】
また、本発明の半導体装置において、前記ゲート絶縁膜が高誘電率膜を含むと、ゲート絶縁膜の酸化膜換算膜厚を小さくしつつ物理膜厚を大きくすることができるので、リーク電流を抑制しながら、トランジスタを高性能化することができる。ここで、高誘電率膜とは、シリコン酸化膜(比誘電率3.9)よりも高い比誘電率、望ましくは8以上の比誘電率を有する絶縁性酸化物膜である。また、この場合、前記ゲート絶縁膜が、前記半導体基板と前記高誘電率膜との間に形成された絶縁性界面層を含むと、界面特性を向上させることができる。
【0020】
また、本発明の半導体装置において、前記第1の導電部と前記第2の導電部とは電気的に接続されていてもよいし、前記第1の導電部は前記第2の導電部上に乗りかかるように形成されていてもよいし、前記第2の導電部は前記第1の導電部を跨ぐように形成されていてもよい。
【0021】
また、本発明の半導体装置において、前記ゲート絶縁膜の側面と前記ゲート電極の側面とが面一であると、ゲート絶縁膜の側面がゲート電極の側面よりもゲート電極内部側に入り込んだ構造のように不純物領域の一部分とゲート電極両端部との実質的なオーバーラップ領域が低減してしまう事態を回避することができる。
【0022】
尚、本発明の半導体装置を製造する際には、ダミーゲートを用いて形成した凹部の壁面に前記第2の導電部を形成した後、当該凹部が埋まるように前記第1の導電部を形成することにより、前記ゲート電極を形成してもよい。或いは、前記第1の導電部を形成した後、前記第1の導電部を覆うように導電膜を形成し、その後、当該導電膜に対してエッチバック又はパターニングを行って前記第1の導電部の側壁に前記第2の導電部を形成することにより、前記ゲート電極を形成してもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、ゲート電極両端部の下側において生じる半導体装置内部の最大電界強度を選択的に低減させることができるため、駆動能力を低下させることなく、半導体装置内部の高電界が与える影響によって生じるGIDLを低減することができる。
【0024】
また、本発明によると、半導体装置内部の最大電界強度を低減させることができるため、ホットキャリアの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置について、n型のMISFETを例として、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、第1の実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面図である。図1に示すように、例えばシリコン基板等の半導体基板101にp型のウェル領域102が形成されており、ウェル領域102の表面部にp型のチャネル領域103が形成されている。ウェル領域102の表面部におけるチャネル領域103の両側には例えばn型のエクステンション領域104が形成されていると共に、チャネル領域103及びエクステンション領域104を挟むように例えばn+ 型のソース・ドレイン領域105が形成されている。チャネル領域103上には、例えば比誘電率k=3.9を有する絶縁性界面層106及び絶縁性界面層106よりも高い比誘電率(例えばk=40)を有する高誘電率膜107が順次形成され、ゲート絶縁膜を構成している。高誘電率膜107上にはゲート電極108が形成されており、ゲート電極108を挟むようにエクステンション領域104上に例えばSiO2 からなる絶縁性サイドウォールスペーサ109が形成されている。ここで、絶縁性界面層106は、例えばSiO2 膜、SiN膜、HfSiOx 膜、ZrSiOx 膜又はAlSiOx 膜等である。また、エクステンション領域104の一部分は領域A(以下、オーバーラップ領域Aという)においてゲート電極108のチャネル長方向の両端部とオーバーラップするように形成されている。すなわち、チャネル領域103とエクステンション領域104との境界はゲート電極108の側面よりもゲート電極108の内部側に入り込んでいる。尚、絶縁性界面層106及び高誘電率膜107からなるゲート絶縁膜の側面とゲート電極108の側面とは面一であり、当該ゲート絶縁膜の両側面はエクステンション領域104上に位置する。
【0027】
本実施形態の特徴は、ゲート電極108が、ゲート電極108のチャネル長方向の中央部に位置し且つ高誘電率膜107つまりゲート絶縁膜と接する第1の導電部108Aと、ゲート電極108のチャネル長方向の両端部に位置し且つ高誘電率膜107つまりゲート絶縁膜と接する第2の導電部108Bとを含み、第1の導電部108Aの第1の仕事関数と第2の導電部108Bの第2の仕事関数とが異なっていることである。尚、第1の導電部108Aと第2の導電部108Bとは電気的に接続されている。
【0028】
具体的には、第1の導電部108Aは、例えば4.4eVの仕事関数(第1の仕事関数)を有しており、例えば金属から構成されている。また、第2の導電部108Bは、第1の導電部108Aと比べてエクステンション領域104つまりn型シリコンの仕事関数(第3の仕事関数)により近い例えば4.2eVの仕事関数(第2の仕事関数)を有しており、第1の導電部108Aを挟むように形成されている。ここで、第1の導電部108Aの両側に設けられた第2の導電部108Bのそれぞれは幅(チャネル長方向の幅)Cを有する。すなわち、第1の導電部108Aと第2の導電部108Bとの境界は、高誘電率膜107つまりゲート絶縁膜の側面からゲート電極108の内部側に幅Cだけ入り込んでいる。
【0029】
尚、第2の導電部108Bの幅Cは0nmよりも大きければ、後述する効果を得ることができる。また、第2の導電部108Bの幅Cはオーバーラップ領域Aの長さよりも大きくてもよいが、トランジスタ特性を劣化させないためには、オーバーラップ領域Aの長さに対する第2の導電部108Bの幅Cの超過分が5nmを超えないことが好ましい。
【0030】
以下、図1に示す本実施形態の半導体装置つまりn型のMISFETに正のドレイン電圧及び負のゲート電圧を印加した場合にオーバーラップ領域Aに生じる垂直方向(半導体基板101の主面に対して垂直な方向を言う。以下同じ)の電界について説明する。本実施形態においては、オーバーラップ領域A上に位置する部分のゲート電極108つまり第2の導電部108Bの第2の仕事関数は第1の導電部108Aの第1の仕事関数よりもn型のエクステンション領域104つまりn型シリコンの第3の仕事関数に近い。このため、n型のエクステンション領域104の第3の仕事関数と第2の導電部108Bの第2の仕事関数との差は、n型のエクステンション領域104の第3の仕事関数と第1の導電部108Aの第1の仕事関数との差よりも小さくなる。その結果、オーバーラップ領域Aの長さを一定に保ったまま、言い換えると、エクステンション領域104の一部分とゲート電極108の両端部との実質的なオーバーラップ領域を確保しつつ、ゲート電圧に起因して垂直方向に生じる電界の強度を、オーバーラップ領域Aにおいて選択的に低減することができる。従って、駆動能力を低下させることなく、半導体装置内部の高電界が与える影響によって生じるGIDLを低減することができる。また、ゲート電極108の両端部の下側の電界強度つまり半導体装置内部の最大電界強度を低下させることができるため、ホットキャリアの発生を抑制することができる。
【0031】
以下、ゲート電極108における第2の導電部108Bの第2の仕事関数をn型のエクステンション領域104つまりn型シリコンの第3の仕事関数に近づけてやることにより、オーバーラップ領域Aにおける垂直方向の電界の強度を低減できる理由について詳述する。
【0032】
図2(a)は一般的なn型MISFETの断面図である。図2(a)に示すn型MISFETは、ゲート電極とゲート絶縁膜とp- 型のウェル領域とn+ 型のソース領域とn+ 型のドレイン領域とからなる。尚、説明を簡略化するために、ゲート電極は単一の仕事関数を持つ材料によって構成されているものとする。図2(b)及び図2(c)はそれぞれ図2(a)中のA−A’線に沿ったバンド構造の模式図であり、図2(b)はゲート電極が4.1eVの仕事関数(n+ 型のポリシリコンの仕事関数に相当)を持つ場合のバンド構造の模式図であり、図2(c)はゲート電極が4.6eVの仕事関数(大きい仕事関数)を持つ場合のバンド構造の模式図である。尚、図2(b)及び図2(c)において、n+ 型のドレイン領域の仕事関数は4.1eVであるとしている。また、図2(b)及び図2(c)に示すバンド構造はいずれも、ゲート電圧Vg及びドレイン電圧Vdがともに0Vである場合のものである。また、図2(b)及び図2(c)において、縦軸は電位の大きさ(下向きを正)を表し、横軸は位置を表し、バンドを示す線の傾きが電界強度を示す。図2(b)に示すように、ゲート電極が4.1eVの仕事関数を持つ場合、ドレイン領域の仕事関数とゲート電極の仕事関数との間に差がないため、n+ 型のドレイン領域とゲート絶縁膜との間においてバンドの曲がりは生じない。一方、図2(c)に示すように、ゲート電極が大きい仕事関数(4.6eV)を持つ場合、ゲート電極の仕事関数がドレイン領域の仕事関数よりも大きくなるため、ゲート電圧Vg及びドレイン電圧Vdがともに0Vであったとしても、その差に相当する正の電圧(およそ4.6−4.1=0.5V)が見かけ上既に印加された状態にある。その結果、図2(c)に示すように、n+ 型のドレイン領域とゲート絶縁膜との間においてバンドに曲がりが生じている。
【0033】
図3(a)及び図3(b)はそれぞれGIDLが顕著になる電圧条件でのバンド構造(図2(a)中のA−A’線に沿ったバンド構造)の模式図であり、図3(a)はゲート電極が4.1eVの仕事関数(n+ 型のポリシリコンの仕事関数に相当)を持つ場合のバンド構造の模式図であり、図3(b)はゲート電極が4.6eVの仕事関数(大きい仕事関数)を持つ場合のバンド構造の模式図である。尚、図3(a)及び図3(b)において、n+ 型のドレイン領域の仕事関数は4.1eVであるとしている。また、図3(a)及び図3(b)に示すバンド構造はいずれも、GIDLが顕著になる電圧条件を使用した場合、具体的にはゲート電圧Vgが0V、ドレイン電圧Vdが1.2Vである場合のものである。また、図3(a)及び図3(b)において、縦軸は電位の大きさ(下向きを正)を表し、横軸は位置を表し、バンドを示す線の傾きが電界強度を示す。図3(a)に示すように、ゲート電極が4.1eVの仕事関数を持つ場合、1.2Vのドレイン電圧Vdが印加されることにより、n+ 型のドレイン領域とゲート絶縁膜との間において1.2Vのドレイン電圧Vdの分だけバンドが曲がっている。一方、図3(b)に示すように、ゲート電極が大きい仕事関数(4.6eV)を持つ場合、前述のように、ゲート電極の仕事関数とドレイン領域の仕事関数との差に相当する正の電圧(約0.5V)が既に見かけ上印加された状態において1.2Vのドレイン電圧Vdが重畳的に印加されるため、ゲート電極とドレイン領域との間には、図3(a)に示す場合よりも大きな電圧が印加されていることになる。このため、n+ 型のドレイン領域とゲート絶縁膜との間におけるバンドの曲がりも、図3(a)に示す場合よりも大きくなり、その結果、バンドを示す線の傾きに相当する電界強度も、図3(a)に示す場合と比べて大きくなる。
【0034】
以上に説明したように、n型MISFETの場合、ゲート電極の仕事関数が大きくなるに従って垂直方向の電界の強度が大きくなる。従って、本実施形態のように、ゲート電極108の両端部に設けられた第2の導電部108Bの第2の仕事関数を小さくしてn型のエクステンション領域104つまりn型シリコンの第3の仕事関数に近づけてやることにより、オーバーラップ領域Aにおける垂直方向の電界の強度を低減することができる。
【0035】
尚、第1の実施形態において、ゲート電極108の第1の導電部108Aの仕事関数(第1の仕事関数)をp型シリコンの仕事関数により近づけることによって、DIBL(Drain Induced Barrier Lowering)を抑制することができる。
【0036】
また、第1の実施形態において、絶縁性界面層106の比誘電率を3.9に設定したが、これに限らず、高誘電率膜107の比誘電率(40)よりも小さい任意の値に設定することができる。また、絶縁性界面層106の厚さは少なくとも0よりも大きければ、界面特性を向上させることができる。また、高誘電率膜107の比誘電率を40に設定したが、これに限らず、絶縁性界面層(シリコン酸化膜)106の比誘電率(3.9)よりも大きい任意の値に設定することができる。尚、高誘電率膜107としては、8以上の比誘電率を有する絶縁性酸化物膜を用いることが望ましく、例えば、Al2 3 膜、ZrO2 膜、HfO2 膜、HfSiOx 膜、ZrSiOx 膜、Y2 3 膜、La2 3 膜、PrOx 膜などを用いることができる。
【0037】
また、第1の実施形態において、ゲート電極108の第1の導電部108Aの仕事関数を4.4eVに設定したが、これに限らず、第2の導電部108Bの仕事関数よりもp型シリコンの仕事関数に近い任意の値に設定することができる。このとき、第1の導電部108Aの構成材料は半導体であっても金属であってもよい。また、ゲート電極108の第2の導電部108Bの仕事関数を4.2eVに設定したが、これに限らず、第1の導電部108Aの仕事関数よりもn型シリコンの仕事関数に近い任意の値に設定することができる。このとき、第2の導電部108Bの構成材料は半導体であっても金属であってもよい。例えば、第1の導電部108Aの構成材料として、TiN、Mo、MoSiN、Ta、W又はLaOなど用いることができ、第2の導電部108Bの構成材料としては、n型ポリシリコンを用いることができる。
【0038】
また、第1の実施形態において、n型のMISFETのゲート構造を対象として説明したが、本発明はp型のMISFETのゲート構造にも適用可能である。この場合、ゲート電極108の第1の導電部108Aの構成材料には、第2の導電部108Bよりもn型シリコンの仕事関数に近い仕事関数を有する半導体又は金属等を用い、ゲート電極108の第2の導電部108Bの構成材料には、第1の導電部108Aよりもp型シリコンの仕事関数に近い仕事関数を有する半導体又は金属等を用いる。例えば、第1の導電部108Aの構成材料として、TiN、MoSiN、RuO2 、Ta、TaN、TaC、W、PtW又はPtなど用いることができ、第2の導電部108Bの構成材料としては、p型ポリシリコンを用いることができる。p型のMISFETのゲート構造を対象とする場合、チャネル領域103はn型シリコンから構成され、エクステンション領域104はp型シリコンから構成され、ソース・ドレイン領域105はp+ 型シリコンから構成される。
【0039】
以下、図1に示す本実施形態の半導体装置がp型のMISFETであるとして、負のドレイン電圧及び負のゲート電圧を印加した場合にオーバーラップ領域Aに生じる垂直方向の電界について、特に、ゲート電極108における第2の導電部108Bの第2の仕事関数をエクステンション領域104つまりp型シリコンの第3の仕事関数に近づけてやることにより、オーバーラップ領域Aにおける垂直方向の電界の強度を低減できる理由について説明する。
【0040】
図4(a)は一般的なp型MISFETの断面図である。図4(a)に示すp型MISFETは、ゲート電極とゲート絶縁膜とn- 型のウェル領域とp+ 型のソース領域とp+ 型のドレイン領域とからなる。尚、説明を簡略化するために、ゲート電極は単一の仕事関数を持つ材料によって構成されているものとする。図4(b)及び図4(c)はそれぞれ図4(a)中のA−A’線に沿ったバンド構造の模式図であり、図4(b)はゲート電極が5.2eVの仕事関数(p+ 型のポリシリコンの仕事関数に相当)を持つ場合のバンド構造の模式図であり、図4(c)はゲート電極が4.6eVの仕事関数(小さい仕事関数)を持つ場合のバンド構造の模式図である。尚、図4(b)及び図4(c)において、p+ 型のドレイン領域の仕事関数は5.2eVであるとしている。また、図4(b)及び図4(c)に示すバンド構造はいずれも、ゲート電圧Vg及びドレイン電圧Vdがともに0Vである場合のものである。また、図4(b)及び図4(c)において、縦軸は電位の大きさ(下向きを正)を表し、横軸は位置を表し、バンドを示す線の傾きが電界強度を示す。図4(b)に示すように、ゲート電極が5.2eVの仕事関数を持つ場合、ドレイン領域の仕事関数とゲート電極の仕事関数との間に差がないため、p+ 型のドレイン領域とゲート絶縁膜との間においてバンドの曲がりは生じない。一方、図4(c)に示すように、ゲート電極が小さい仕事関数(4.6eV)を持つ場合、ゲート電極の仕事関数がドレイン領域の仕事関数よりも小さくなるため、ゲート電圧Vg及びドレイン電圧Vdがともに0Vであったとしても、その差に相当する負の電圧(およそ4.6−5.2=−0.6V)が既に見かけ上印加された状態にある。その結果、図4(c)に示すように、p+ 型のドレイン領域とゲート絶縁膜との間においてバンドに曲がりが生じている。
【0041】
図5(a)及び図5(b)はそれぞれGIDLが顕著になる電圧条件でのバンド構造(図4(a)中のA−A’線に沿ったバンド構造)の模式図であり、図5(a)はゲート電極が5.2eVの仕事関数(p+ 型のポリシリコンの仕事関数に相当)を持つ場合のバンド構造の模式図であり、図5(b)はゲート電極が4.6eVの仕事関数(小さい仕事関数)を持つ場合のバンド構造の模式図である。尚、図5(a)及び図5(b)において、p+ 型のドレイン領域の仕事関数は5.2eVであるとしている。また、図5(a)及び図5(b)に示すバンド構造はいずれも、GIDLが顕著になる電圧条件を使用した場合、具体的にはゲート電圧Vgが0V、ドレイン電圧Vdが−1.2Vである場合のものである。また、図5(a)及び図5(b)において、縦軸は電位の大きさ(下向きを正)を表し、横軸は位置を表し、バンドを示す線の傾きが電界強度を示す。図5(a)に示すように、ゲート電極が5.2eVの仕事関数を持つ場合、−1.2Vのドレイン電圧Vdが印加されることにより、p+ 型のドレイン領域とゲート絶縁膜との間において−1.2Vのドレイン電圧Vdの分だけバンドが曲がっている。一方、図5(b)に示すように、ゲート電極が小さい仕事関数(4.6eV)を持つ場合、前述のように、ゲート電極の仕事関数とドレイン領域の仕事関数との差に相当する負の電圧(約−0.6V)が既に見かけ上印加された状態において−1.2Vのドレイン電圧Vdが重畳的に印加されるため、ゲート電極とドレイン領域との間には、図5(a)に示す場合よりも大きな電圧が印加されていることになる。このため、p+ 型のドレイン領域とゲート絶縁膜との間におけるバンドの曲がりも、図5(a)に示す場合よりも大きくなり、その結果、バンドを示す線の傾きに相当する電界強度も、図5(a)に示す場合と比べて大きくなる。
【0042】
以上に説明したように、p型MISFETの場合、ゲート電極の仕事関数が小さくなるに従って垂直方向の電界の強度が大きくなる。従って、ゲート電極108の両端部に設けられた第2の導電部108Bの第2の仕事関数を大きくしてp型のエクステンション領域104つまりp型シリコンの第3の仕事関数に近づけてやることにより、オーバーラップ領域Aにおける垂直方向の電界の強度を低減することができる。
【0043】
また、第1の実施形態において、ゲート電極108における第1の導電部108Aの仕事関数(4.4eV)と第2の導電部108Bの仕事関数(4.2eV)との差(以下、単に仕事関数差と称する)を0.2eVに設定したが、これに限らず、当該差を10meV程度から500meV程度までの範囲の任意の値に適宜設定することができる。以下、n型MISFETを例として、仕事関数差が10meV程度以上あれば、本発明のGIDL低減効果を得ることができることについて説明する。本願発明者は、図1に示す本実施形態の半導体装置の構造を対象として閾値電圧とGIDLの指標となる基板リーク電流(GIDLが大きいほど基板リーク電流が増加する)との関係についてデバイスシミュレーションを行った。デバイスシミュレーションにおいては、ドレイン電圧Vdを1.2V、ゲート電圧Vgを0V、基板電圧(ソース電圧)を0V、オーバーラップ領域Aの長さを2nm、第2の導電部108Bの幅Cを5nm、仕事関数差を200meV、150meV、100meV、50meV、30meV、20meV、10meV、0meVに設定した。図6は、デバイスシミュレーションの結果を示している。図6に示すように、同一の閾値電圧で比較した場合、第1の導電部108Aの仕事関数(第1の仕事関数)と比較して第2の導電部108Bの仕事関数(第2の仕事関数)が小さくなるに従って、つまり、仕事関数差が大きくなるに従って、基板リーク電流が小さくなっている。ここで、仕事関数差が10meVの場合でも、仕事関数差がない場合と比較して基板リーク電流が小さくなっていることから、n型MISFETにおいては、仕事関数差が10meV以上あれば、本発明の目的とするGIDL低減効果を得ることができることが分かる。
【0044】
図7は、ゲート電極用の各種材料と仕事関数との関係を示す。図7に示すように、n型MISFETのゲート構造に本発明を適用する場合、ゲート電極108の第1の導電部108Aの構成材料として、TiN、Mo、MoSiN、Ta、W、LaOなど用いることができ、第2の導電部108Bの構成材料としては、n型ポリシリコンを用いることができる。また、図7に示すように、p型MISFETのゲート構造に本発明を適用する場合、ゲート電極108の第2の導電部108Bの構成材料として、TiN、MoSiN、RuO2 、Ta、TaN、TaC、W、PtW、Ptなど用いることができ、第2の導電部108Bの構成材料としては、p型ポリシリコンを用いることができる。
【0045】
以下、図1に示す本実施形態の半導体装置を製造するための方法の一例について説明する。図8(a)〜(c)、図9(a)〜(c)及び図10(a)〜(c)は本実施形態の半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【0046】
まず、図8(a)に示すように、例えばシリコン基板などの半導体基板101にイオン注入法を用いてウェル領域102を形成した後、半導体基板101の表面部にイオン注入を用いてチャネル領域103を形成する。n型MISFETのウェル領域102及びチャネル領域103を形成する場合には、例えばボロンなどのp型不純物のイオン注入を行う。また、p型MISFETのウェル領域102及びチャネル領域103を形成する場合には、例えばリンなどのn型不純物のイオン注入を行う。
【0047】
次に、図8(b)に示すように、半導体基板101上に、例えば熱酸化法により厚さ0.1〜5.0nmの酸化シリコン膜からなる絶縁性界面層106を形成した後、絶縁性界面層106上に、例えばHfO2 膜からなる高誘電率膜107を形成する。HfO2 膜の形成は、例えばHfCl2 とNH3 とを用いたCVD(chemical vapor deposition )法、又は有機系のHfガスを用いたCVD法により行う。或いは、ハフニウム窒化物のターゲットを用いたスパッタリング法により、窒化ハフニウム膜を形成した後、当該窒化ハフニウム膜を酸化することにより、HfO2 膜を形成してもよい。その後、高誘電率膜107上に、例えばCVD法によりポリシリコン又はアモルファスシリコンからなる厚さ200nm程度までの導電膜140を形成する。
【0048】
次に、図8(c)に示すように、導電膜140をゲート電極形状にパターニングすることによって、ダミーゲート電極150を形成する。このとき、ダミーゲート電極150の外側の高誘電率膜107及び絶縁性界面層106を除去しても良い。
【0049】
次に、図9(a)に示すように、ダミーゲート電極150をマスクとしてイオン注入を行うことにより、ダミーゲート電極150の両側の半導体基板101の表面部にエクステンション領域104を形成する。n型MISFETのエクステンション領域104を形成する場合には、例えば砒素又はリンなどのn型不純物のイオン注入を行う。また、p型MISFETのエクステンション領域104を形成する場合には、例えばボロンなどのp型不純物のイオン注入を行う。尚、エクステンション領域104の一部分は領域A(以下、オーバーラップ領域Aという)においてダミーゲート電極150のチャネル長方向の両端部とオーバーラップするように形成されている。
【0050】
次に、図9(b)に示すように、ダミーゲート電極150の両側面に絶縁性サイドウォールスペーサ109を形成する。具体的には、まず、例えばCVD法によりダミーゲート電極150を被覆するように基板全面に酸化シリコン膜を堆積した後、当該酸化シリコン膜をエッチバックすることにより、ダミーゲート電極150の両側面に絶縁性サイドウォールスペーサ109を形成する。次に、絶縁性サイドウォールスペーサ109及びダミーゲート電極150をマスクとしてイオン注入を行うことにより、ダミーゲート電極150から見て絶縁性サイドウォールスペーサ109の外側に位置する半導体基板101の表面部に、エクステンション領域104よりも深い接合を有するソース・ドレイン領域105を形成した後、注入された不純物イオンを活性化するためのアニール処理を施す。n型MISFETのソース・ドレイン領域105を形成する場合には、例えば砒素又はリンなどのn型不純物のイオン注入を行う。また、p型MISFETのソース・ドレイン領域105を形成する場合には、例えばボロンなどのp型不純物のイオン注入を行う。
【0051】
次に、図9(c)に示すように、ダミーゲート電極150を覆うように半導体基板101上に、例えばCVD法により酸化シリコンからなる層間絶縁膜110を形成する。続いて、例えばCMP(chemical mechanical polishing )法によりダミーゲート電極150の上面が露出するまで層間絶縁膜110を除去する。次に、図10(a)に示すように、層間絶縁膜110から露出したダミーゲート電極150をエッチングにより除去して、高誘電率膜107つまりゲート絶縁膜を露出させる。
【0052】
次に、図10(b)に示すように、ダミーゲート電極150の除去により形成された凹部(以下、ゲート電極形成用凹部という)を含む基板全面に、例えばCVD法により厚さ2〜20nmのポリシリコン膜151を堆積する。ここで、n型MISFETを形成する場合には、ポリシリコン膜151にn型不純物をドープし、p型MISFETを形成する場合には、ポリシリコン膜151にp型不純物をドープする。
【0053】
次に、図10(c)に示すように、ポリシリコン膜151に対してエッチバックを行うことにより、ゲート電極形成用凹部の壁面に形成されている部分を除いてポリシリコン膜151を除去する。これにより、ゲート電極形成用凹部の壁面に、図1に示すゲート電極108の第2の導電部108Bが形成される。
【0054】
次に、図1に示すゲート電極108の第1の導電部108Aとなる導電膜によってゲート電極形成用凹部を埋め込んだ後、当該凹部からはみ出た当該導電膜を例えばCMP法によって除去することにより、図1に示すゲート電極構造が完成する。ここで、第1の導電部108Aとなる導電膜の材料としては、純金属、合金又は金属化合物等を用いることができる。具体的は、例えばスパッタリング法により、第1の導電部108Aとなる導電膜として、n型MISFETを形成する場合には、TiN膜、Mo膜、MoSiN膜、Ta膜、W膜又はLaO膜などを形成し、p型MISFETを形成する場合には、TiN膜、MoSiN膜、RuO2 膜、Ta膜、TaN膜、TaC膜、W膜、PtW膜又はPt膜などを形成する。
【0055】
以上に説明した、本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、ゲート電極108の第2の導電部108Bの形成後に第1の導電部108Aを形成することを特徴とするものであり、以下のような効果を奏する。すなわち、ダミーゲート電極150をエッチングにより除去してゲート電極形成用凹部を形成し、当該凹部内にゲート絶縁膜(高誘電率膜107)を露出させた後、第2の導電部108Bとなるポリシリコン膜151をゲート電極形成用凹部内に堆積して当該ポリシリコン膜151をエッチバックすることにより第2の導電部108Bを形成している。そして、第1の導電部108Aとなる導電膜によってゲート電極形成用凹部を埋め込み、その不要部分をCMP法によって除去することにより、第1の導電部108Aを形成している。このように形成されたゲート電極108は、ゲート電極108のチャネル長方向の中央部に位置し且つ第1の仕事関数を有する第1の導電部108Aと、ゲート電極108のチャネル長方向の両端部に位置し且つ第1の仕事関数とは異なる第2の仕事関数を有する第2の導電部108Bとから構成される。従って、図1に示す本実施形態の半導体装置による効果、つまり、ゲート電圧に起因して垂直方向に生じる電界の強度を、オーバーラップ領域Aにおいて選択的に低減することによってGIDLを低減できるという効果が得られる。
【0056】
また、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によると、ダミーゲート電極150の除去により形成したゲート電極形成用凹部に第2の導電部108B及び第1の導電部108Aを順次埋め込むため、本発明のゲート電極構造をパターニングによって形成する場合のように合わせズレが生じることを防止することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、図8(b)に示す工程でゲート絶縁膜となる絶縁性界面層106及び高誘電率膜107を形成したが、これに代えて、例えば熱酸化法により厚さ0.1〜5.0nmの酸化シリコン膜からなるダミーゲート絶縁膜を形成し、図10(a)に示す工程で当該ダミーゲート絶縁膜をダミーゲート電極150と共に除去した後、ゲート電極形成用凹部の底部に、例えば絶縁性界面層及び高誘電率膜からなるゲート絶縁膜を形成しても良い。
【0058】
(第1の実施形態の変形例)
以下、本発明の第1の実施形態の変形例に係る半導体装置について、n型のMISFETを例として、図面を参照しながら説明する。
【0059】
図11は、第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の構造を示す断面図である。尚、図11において、図1に示す第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
【0060】
図11に示すように、本変形例に係る半導体装置が図1に示す第1の実施形態と異なっている点は、次の通りである。すなわち、第1の実施形態では、ゲート電極108のチャネル長方向の両端部に位置する第2の導電部108Bが、ゲート電極108のチャネル長方向の中央部に位置する第1の導電部108Aを挟むように形成されていた。言い換えると、第2の導電部108Bはゲート電極108の側壁部全体に(ゲート電極108の上面から下面まで)形成されていた。それに対して、本変形例では、ゲート電極108のチャネル長方向の両端部に位置する第2の導電部108Bが高誘電率膜107つまりゲート絶縁膜と接するように形成されている点は、第1の実施形態と同じであるが、第2の導電部108Bがゲート電極108の上部には形成されておらず、第1の導電部108Aが第2の導電部108B上に乗りかかるように形成されている点が、第1の実施形態と異なっている。
【0061】
すなわち、第1の実施形態で述べた本発明による効果は、ゲート電極中央の第1の導電部108Aとゲート電極端部の第2の導電部108Bとがそれぞれゲート絶縁膜と接していれば、得られるのであって、ゲート電極上部において各導電部がどのように形成されているかは関係ないのである。
【0062】
図11に示す本変形例に係る半導体装置を製造する場合、第1の実施形態の図10(c)に示す工程で、ゲート電極形成用凹部の壁面上部に形成されているポリシリコン膜151も除去してしまえばよい。これにより、図12に示すように、ゲート電極形成用凹部の壁面のうち上部を除いて、ゲート電極108の第2の導電部108Bが形成される。
【0063】
本変形例に係る半導体装置の製造方法によると、ダミーゲート電極150をエッチングにより除去してゲート電極形成用凹部を形成し、当該凹部内にゲート絶縁膜(高誘電率膜107)を露出させた後、第2の導電部108Bとなるポリシリコン膜151をゲート電極形成用凹部内に堆積して当該ポリシリコン膜151をエッチバックすることにより第2の導電部108Bを形成した後において、ゲート電極形成用凹部の幅をその開口面近傍で広くすることができる。従って、当該凹部を第1の導電部108Aとなる導電膜によって埋め込む際に、当該導電膜の埋め込み性を改善することができる。この結果、スパッタリング法などのカバレッジの悪い成膜方法を用いて第1の導電部108Aとなる導電膜を形成する場合にも、ボイドを発生させることなく、ゲート電極形成用凹部に第1の導電部108Aとなる導電膜を埋め込むことができる。
【0064】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置について、n型のMISFETを例として、図面を参照しながら説明する。
【0065】
図13は、第2の実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面図である。尚、図13において、図1に示す第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
【0066】
図13に示すように、本実施形態に係る半導体装置が図1に示す第1の実施形態と異なっている点は、次の通りである。すなわち、第1の実施形態では、ゲート電極108のチャネル長方向の両端部に位置する第2の導電部108Bは矩形状断面を有していた。それに対して、本実施形態では、第2の導電部108Bがゲート電極108のチャネル長方向の両端部に位置している点は、第1の実施形態と同じであるが、第2の導電部108Bがゲート電極108の上部コーナーにおいて丸められている点が、第1の実施形態と異なっている。尚、第2の導電部108Bの形状の違いに起因して、絶縁性サイドウォールスペーサ109の形状も第1の実施形態と若干異なっている。
【0067】
図13に示す本実施形態の半導体装置によっても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0068】
以下、図13に示す本実施形態の半導体装置を製造するための方法の一例について説明する。図14(a)〜(c)及び図15(a)〜(c)は本実施形態の半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【0069】
まず、図14(a)に示すように、例えばシリコン基板などの半導体基板101にイオン注入法を用いてウェル領域102を形成した後、半導体基板101の表面部にイオン注入を用いてチャネル領域103を形成する。n型MISFETのウェル領域102及びチャネル領域103を形成する場合には、例えばボロンなどのp型不純物のイオン注入を行う。また、p型MISFETのウェル領域102及びチャネル領域103を形成する場合には、例えばリンなどのn型不純物のイオン注入を行う。
【0070】
次に、図14(b)に示すように、半導体基板101上に、例えば熱酸化法により厚さ0.1〜5.0nmの酸化シリコン膜からなる絶縁性界面層106を形成した後、絶縁性界面層106上に、例えばHfO2 膜からなる高誘電率膜107を形成する。HfO2 膜の形成は、例えばHfCl2 とNH3 とを用いたCVD法、又は有機系のHfガスを用いたCVD法により行う。或いは、ハフニウム窒化物のターゲットを用いたスパッタリング法により、窒化ハフニウム膜を形成した後、当該窒化ハフニウム膜を酸化することにより、HfO2 膜を形成してもよい。その後、高誘電率膜107上に、図13に示すゲート電極108の第1の導電部108Aとなる厚さ200nm程度までの導電膜160を形成する。ここで、導電膜160の材料としては、純金属、合金又は金属化合物等を用いることができる。具体的は、例えばスパッタリング法により、導電膜160として、n型MISFETを形成する場合には、TiN膜、Mo膜、MoSiN膜、Ta膜、W膜又はLaO膜などを形成し、p型MISFETを形成する場合には、TiN膜、MoSiN膜、RuO2 膜、Ta膜、TaN膜、TaC膜、W膜、PtW膜又はPt膜などを形成する。
【0071】
次に、図14(c)に示すように、導電膜160をパターニングして第1の導電部108Aを形成した後、図15(a)に示すように、第1の導電部108Aを覆うように基板全面に、例えばCVD法により厚さ2〜20nmのポリシリコン膜161を堆積する。ここで、n型MISFETを形成する場合には、ポリシリコン膜161にn型不純物をドープし、p型MISFETを形成する場合には、ポリシリコン膜161にp型不純物をドープする。
【0072】
次に、図15(b)に示すように、ポリシリコン膜161に対してエッチバックを行って第1の導電部108Aの両側面に、ポリシリコン膜161からなる第2の導電部108Bを形成する。これにより、第1の導電部108Aと第2の導電部108Bとからなるゲート電極108が形成される。このとき、ゲート電極108の外側の高誘電率膜107及び絶縁性界面層106を除去しても良い。
【0073】
次に、図15(c)に示すように、ゲート電極108をマスクとしてイオン注入を行うことにより、ゲート電極108の両側の半導体基板101の表面部にエクステンション領域104を形成する。n型MISFETのエクステンション領域104を形成する場合には、例えば砒素又はリンなどのn型不純物のイオン注入を行う。また、p型MISFETのエクステンション領域104を形成する場合には、例えばボロンなどのp型不純物のイオン注入を行う。尚、エクステンション領域104の一部分は領域A(以下、オーバーラップ領域Aという)においてゲート電極108のチャネル長方向の両端部とオーバーラップするように形成されている。
【0074】
最後に、図13に示す構造を得るために、ゲート電極108の両側面に絶縁性サイドウォールスペーサ109を形成する。具体的には、まず、例えばCVD法によりゲート電極108を被覆するように基板全面に酸化シリコン膜を堆積した後、当該酸化シリコン膜をエッチバックすることにより、ゲート電極108の両側面に絶縁性サイドウォールスペーサ109を形成する。次に、絶縁性サイドウォールスペーサ109及びゲート電極108をマスクとしてイオン注入を行うことにより、ゲート電極108から見て絶縁性サイドウォールスペーサ109の外側に位置する半導体基板101の表面部に、エクステンション領域104よりも深い接合を有するソース・ドレイン領域105を形成した後、注入された不純物イオンを活性化するためのアニール処理を施す。n型MISFETのソース・ドレイン領域105を形成する場合には、例えば砒素又はリンなどのn型不純物のイオン注入を行う。また、p型MISFETのソース・ドレイン領域105を形成する場合には、例えばボロンなどのp型不純物のイオン注入を行う。
【0075】
以上に説明した、本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、ゲート電極108の第1の導電部108Aの形成後に第2の導電部108Bを形成することを特徴とするものであるが、エッチバックを用いることにより、第1の導電部108Aに対して自己整合的に第2の導電部108Bを形成するため、第2の導電部108Bをパターニングによって形成する場合のように合わせズレが生じることを防止することができる。
【0076】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置について、n型のMISFETを例として、図面を参照しながら説明する。
【0077】
図16は、第3の実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面図である。尚、図16において、図1に示す第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
【0078】
図16に示すように、本実施形態に係る半導体装置が図1に示す第1の実施形態と異なっている点は、次の通りである。すなわち、第1の実施形態では、ゲート電極108のチャネル長方向の中央部に位置する第1の導電部108Aが、ゲート電極108のチャネル長方向の両端部に位置する第2の導電部108Bによって挟まれるように形成されていた。言い換えると、第1の導電部108Aはゲート電極108の中央部全体に(ゲート電極108の上面から下面まで)形成されていた。それに対して、本実施形態では、ゲート電極108のチャネル長方向の中央部に位置する第1の導電部108Aが高誘電率膜107つまりゲート絶縁膜と接するように形成されている点は、第1の実施形態と同じであるが、第1の導電部108Aがゲート電極108の下部以外には形成されておらず、第2の導電部108Bが第1の導電部108Aを跨ぐように形成されている点が、第1の実施形態と異なっている。
【0079】
すなわち、第1の実施形態で述べた本発明による効果は、ゲート電極中央の第1の導電部108Aとゲート電極端部の第2の導電部108Bとがそれぞれゲート絶縁膜と接していれば、得られるのであって、ゲート電極上部において各導電部がどのように形成されているかは関係ないのである。
【0080】
以下、図16に示す本実施形態の半導体装置を製造するための方法の一例について説明する。図17(a)〜(c)及び図18(a)〜(c)は本実施形態の半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【0081】
まず、図17(a)に示すように、例えばシリコン基板などの半導体基板101にイオン注入法を用いてウェル領域102を形成した後、半導体基板101の表面部にイオン注入を用いてチャネル領域103を形成する。n型MISFETのウェル領域102及びチャネル領域103を形成する場合には、例えばボロンなどのp型不純物のイオン注入を行う。また、p型MISFETのウェル領域102及びチャネル領域103を形成する場合には、例えばリンなどのn型不純物のイオン注入を行う。
【0082】
次に、図17(b)に示すように、半導体基板101上に、例えば熱酸化法により厚さ0.1〜5.0nmの酸化シリコン膜からなる絶縁性界面層106を形成した後、絶縁性界面層106上に、例えばHfO2 膜からなる高誘電率膜107を形成する。HfO2 膜の形成は、例えばHfCl2 とNH3 とを用いたCVD法、又は有機系のHfガスを用いたCVD法により行う。或いは、ハフニウム窒化物のターゲットを用いたスパッタリング法により、窒化ハフニウム膜を形成した後、当該窒化ハフニウム膜を酸化することにより、HfO2 膜を形成してもよい。その後、高誘電率膜107上に、図16に示すゲート電極108の第1の導電部108Aとなる例えば厚さ10〜50nm程度の導電膜170を形成する。ここで、導電膜170の材料としては、純金属、合金又は金属化合物等を用いることができる。具体的は、例えばスパッタリング法により、導電膜170として、n型MISFETを形成する場合には、TiN膜、Mo膜、MoSiN膜、Ta膜、W膜又はLaO膜などを形成し、p型MISFETを形成する場合には、TiN膜、MoSiN膜、RuO2 膜、Ta膜、TaN膜、TaC膜、W膜、PtW膜又はPt膜などを形成する。
【0083】
次に、図17(c)に示すように、導電膜170をパターニングして第1の導電部108Aを形成した後、図18(a)に示すように、第1の導電部108Aを覆うように基板全面に、例えばCVD法により厚さ200nm程度までのポリシリコン膜171を堆積する。ここで、n型MISFETを形成する場合には、ポリシリコン膜171にn型不純物をドープし、p型MISFETを形成する場合には、ポリシリコン膜171にp型不純物をドープする。
【0084】
次に、図18(b)に示すように、ゲート電極形成領域を覆うレジストパターン(図示省略)をマスクとして、ポリシリコン膜171に対してドライエッチングを行うことにより、第1の導電部108Aを覆うようにポリシリコン膜171からなる第2の導電部108Bを形成する。これにより、第1の導電部108Aと第2の導電部108Bとからなるゲート電極108が形成される。このとき、ゲート電極108の外側の高誘電率膜107及び絶縁性界面層106を除去しても良い。
【0085】
次に、図18(c)に示すように、ゲート電極108をマスクとしてイオン注入を行うことにより、ゲート電極108の両側の半導体基板101の表面部にエクステンション領域104を形成する。n型MISFETのエクステンション領域104を形成する場合には、例えば砒素又はリンなどのn型不純物のイオン注入を行う。また、p型MISFETのエクステンション領域104を形成する場合には、例えばボロンなどのp型不純物のイオン注入を行う。尚、エクステンション領域104の一部分は領域A(以下、オーバーラップ領域Aという)においてゲート電極108のチャネル長方向の両端部とオーバーラップするように形成されている。
【0086】
最後に、図16に示す構造を得るために、ゲート電極108の両側面に絶縁性サイドウォールスペーサ109を形成する。具体的には、まず、例えばCVD法によりゲート電極108を被覆するように基板全面に酸化シリコン膜を堆積した後、当該酸化シリコン膜をエッチバックすることにより、ゲート電極108の両側面に絶縁性サイドウォールスペーサ109を形成する。次に、絶縁性サイドウォールスペーサ109及びゲート電極108をマスクとしてイオン注入を行うことにより、ゲート電極108から見て絶縁性サイドウォールスペーサ109の外側に位置する半導体基板101の表面部に、エクステンション領域104よりも深い接合を有するソース・ドレイン領域105を形成した後、注入された不純物イオンを活性化するためのアニール処理を施す。n型MISFETのソース・ドレイン領域105を形成する場合には、例えば砒素又はリンなどのn型不純物のイオン注入を行う。また、p型MISFETのソース・ドレイン領域105を形成する場合には、例えばボロンなどのp型不純物のイオン注入を行う。
【0087】
以上に説明した、本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、ゲート電極108の第1の導電部108Aの形成後に第2の導電部108Bを形成することを特徴とするものであり、以下のような効果を奏する。すなわち、ゲート絶縁膜(高誘電率膜107)上にゲート電極108の第1の導電部108Aとなる導電膜170を形成し、導電膜170をパターニングして第1の導電部108Aを形成した後、第1の導電部108Aの仕事関数とは異なる仕事関数を有するポリシリコン膜171を第1の導電部108Aを覆うように形成し、ポリシリコン膜171をエッチングすることにより第2の導電部108Bを形成している。このように形成されたゲート電極108は、ゲート電極108のチャネル長方向の中央部に位置し且つ第1の仕事関数を有する第1の導電部108Aと、ゲート電極108のチャネル長方向の両端部に位置し且つ第1の仕事関数とは異なる第2の仕事関数を有する第2の導電部108Bとから構成される。従って、図1に示す第1の実施形態の半導体装置と同様の効果、つまり、ゲート電圧に起因して垂直方向に生じる電界の強度を、オーバーラップ領域Aにおいて選択的に低減することによってGIDLを低減できるという効果が得られる。
【0088】
(第3の実施形態の変形例)
以下、本発明の第3の実施形態の変形例に係る半導体装置について、n型のMISFETを例として、図面を参照しながら説明する。
【0089】
図19は、第3の実施形態の変形例に係る半導体装置の構造を示す断面図である。尚、図19において、図1に示す第1の実施形態又は図16に示す第3の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
【0090】
図19に示すように、本変形例に係る半導体装置が図1に示す第1の実施形態と異なっている点は、次の通りである。すなわち、第1の実施形態では、ゲート電極108のチャネル長方向の中央部に位置する第1の導電部108Aが、ゲート電極108のチャネル長方向の両端部に位置する第2の導電部108Bによって挟まれるように形成されていた。言い換えると、第1の導電部108Aはゲート電極108の中央部全体に(ゲート電極108の上面から下面まで)形成されていた。それに対して、本実施形態では、ゲート電極108のチャネル長方向の中央部に位置する第1の導電部108Aが高誘電率膜107つまりゲート絶縁膜と接するように形成されている点は、第1の実施形態と同じであるが、第1の導電部108Aがゲート電極108の上部には形成されておらず、第2の導電部108Bが第1の導電部108Aを跨ぐように形成されている点が、第1の実施形態と異なっている。
【0091】
すなわち、第1の実施形態で述べた本発明による効果は、ゲート電極中央の第1の導電部108Aとゲート電極端部の第2の導電部108Bとがそれぞれゲート絶縁膜と接していれば、得られるのであって、ゲート電極上部において各導電部がどのように形成されているかは関係ないのである。
【0092】
また、本変形例に係る半導体装置が図16に示す第3の実施形態と異なっている点は、次の通りである。すなわち、第3の実施形態では、第1の導電部108Aが単一の仕事関数を有する単一の材料(例えば金属)から構成されていたのに対して、本変形例では、第1の導電部108Aは、下層の(高誘電率膜107つまりゲート絶縁膜と接する)金属含有層111と上層のシリコン層112との積層構造を有している。
【0093】
その他、本変形例に係る半導体装置においては、図19に示すように、第1又は第3の実施形態と異なり、ゲート電極108及びソース・ドレイン領域105のそれぞれの表面部にシリサイド層113が形成されている。
【0094】
以下、図19に示す本変形例の半導体装置を製造するための方法の一例について説明する。図20(a)〜(c)及び図21(a)〜(c)は本変形例の半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【0095】
まず、図20(a)に示すように、例えばシリコン基板などの半導体基板101にイオン注入法を用いてウェル領域102を形成した後、半導体基板101の表面部にイオン注入を用いてチャネル領域103を形成する。n型MISFETのウェル領域102及びチャネル領域103を形成する場合には、例えばボロンなどのp型不純物のイオン注入を行う。また、p型MISFETのウェル領域102及びチャネル領域103を形成する場合には、例えばリンなどのn型不純物のイオン注入を行う。
【0096】
次に、図20(b)に示すように、半導体基板101上に、例えば熱酸化法により厚さ0.1〜5.0nmの酸化シリコン膜からなる絶縁性界面層106を形成した後、絶縁性界面層106上に、例えばHfO2 膜からなる高誘電率膜107を形成する。HfO2 膜の形成は、例えばHfCl2 とNH3 とを用いたCVD法、又は有機系のHfガスを用いたCVD法により行う。或いは、ハフニウム窒化物のターゲットを用いたスパッタリング法により、窒化ハフニウム膜を形成した後、当該窒化ハフニウム膜を酸化することにより、HfO2 膜を形成してもよい。その後、高誘電率膜107上に、図19に示すゲート電極108の第1の導電部108Aの一部となる例えば厚さ10〜50nm程度の金属含有層111を形成する。ここで、金属含有層111の材料としては、純金属、合金又は金属化合物等を用いることができる。具体的は、例えばスパッタリング法により、金属含有層111として、n型MISFETを形成する場合には、TiN膜、Mo膜、MoSiN膜、Ta膜、W膜又はLaO膜などを形成し、p型MISFETを形成する場合には、TiN膜、MoSiN膜、RuO2 膜、Ta膜、TaN膜、TaC膜、W膜、PtW膜又はPt膜などを形成する。続いて、金属含有層111上に、図19に示すゲート電極108の第1の導電部108Aの一部となる厚さ200nm程度までのシリコン層112を例えばCVD法を用いて堆積する。ここで、シリコン層112の材料としては、ポリシリコン又はアモルファスシリコンのいずれを用いても良い。
【0097】
次に、図20(c)に示すように、リソグラフィ技術により第1の導電部108Aの形成領域を覆うように形成したレジストパターン(図示省略)をマスクとして、シリコン層112及び金属含有層111に対してドライエッチングを行って、金属含有層111及びシリコン層112からなる第1の導電部108Aを形成する。このとき、レジストパターンに代えて、SiO2 膜又は窒化シリコン膜等をマスクとして用いてもよい。続いて、図21(a)に示すように、第1の導電部108Aを被覆するように基板全面に、図19に示すゲート電極108の第2の導電部108Bとなる厚さ50〜200nm程度のポリシリコン膜181を例えばCVD法により堆積する。ここで、n型MISFETを形成する場合には、ポリシリコン膜181にn型不純物をドープし、p型MISFETを形成する場合には、ポリシリコン膜181にp型不純物をドープする。また、このとき、シリコン層112からなる第1の導電部108Aにも、ポリシリコン膜181にドープした不純物と同じ不純物をドープする。また、ポリシリコン膜181に代えて、アモルファスシリコン膜を形成しても良い。
【0098】
次に、図21(b)に示すように、リソグラフィ技術によりゲート電極形成領域を覆うように形成したレジストパターン(図示省略)をマスクとして、ポリシリコン膜181に対してドライエッチングを行うことにより、第1の導電部108Aを覆うようにポリシリコン膜181からなる第2の導電部108Bを形成する。これにより、第1の導電部108Aと第2の導電部108Bとからなるゲート電極108が形成される。このとき、ゲート電極108の外側の高誘電率膜107及び絶縁性界面層106を除去しても良い。また、レジストパターンに代えて、SiO2 膜又は窒化シリコン膜等をマスクとして用いてもよい。
【0099】
次に、図21(c)に示すように、ゲート電極108をマスクとしてイオン注入を行うことにより、ゲート電極108の両側の半導体基板101の表面部にエクステンション領域104を形成する。n型MISFETのエクステンション領域104を形成する場合には、例えば砒素又はリンなどのn型不純物のイオン注入を行う。また、p型MISFETのエクステンション領域104を形成する場合には、例えばボロンなどのp型不純物のイオン注入を行う。尚、エクステンション領域104の一部分は領域A(以下、オーバーラップ領域Aという)においてゲート電極108のチャネル長方向の両端部とオーバーラップするように形成されている。
【0100】
次に、図19に示す構造を得るために、ゲート電極108の両側面に絶縁性サイドウォールスペーサ109を形成する。具体的には、まず、例えばCVD法によりゲート電極108を被覆するように基板全面に酸化シリコン膜を堆積した後、当該酸化シリコン膜をエッチバックすることにより、ゲート電極108の両側面に絶縁性サイドウォールスペーサ109を形成する。次に、絶縁性サイドウォールスペーサ109及びゲート電極108をマスクとしてイオン注入を行うことにより、ゲート電極108から見て絶縁性サイドウォールスペーサ109の外側に位置する半導体基板101の表面部に、エクステンション領域104よりも深い接合を有するソース・ドレイン領域105を形成した後、注入された不純物イオンを活性化するためのアニール処理を施す。n型MISFETのソース・ドレイン領域105を形成する場合には、例えば砒素又はリンなどのn型不純物のイオン注入を行う。また、p型MISFETのソース・ドレイン領域105を形成する場合には、例えばボロンなどのp型不純物のイオン注入を行う。
【0101】
最後に、ゲート電極108及びソース・ドレイン領域105のそれぞれの表面部(絶縁性サイドウォールスペーサ109に覆われていない部分)にシリサイド層113を形成する。シリサイド層113の形成においては、まず、ゲート電極108及びソース・ドレイン領域105を覆うように基板全面に、例えばニッケル、コバルト又は白金からなる金属膜を形成する。続いて、熱処理を行って、ゲート電極108及びソース・ドレイン領域105のそれぞれの表面部を構成するシリコンと金属膜とを反応させることによって、シリサイド層113を形成する。その後、未反応の金属膜を除去する。
【0102】
以上に説明した、本変形例に係る半導体装置の製造方法は、ゲート電極108の第1の導電部108Aの形成後に第2の導電部108Bを形成することを特徴とするものであり、以下のような効果を奏する。すなわち、ゲート絶縁膜(高誘電率膜107)上にゲート電極108の第1の導電部108Aとなる金属含有層111及びシリコン層112を形成し、金属含有層111及びシリコン層112をパターニングして第1の導電部108Aを形成した後、第1の導電部108A(正確には金属含有層111)の仕事関数とは異なる仕事関数を有するポリシリコン膜181を第1の導電部108Aを覆うように形成し、ポリシリコン膜181をエッチングすることにより第2の導電部108Bを形成している。このように形成されたゲート電極108は、ゲート電極108のチャネル長方向の中央部に位置し且つ第1の仕事関数を有する第1の導電部108Aと、ゲート電極108のチャネル長方向の両端部に位置し且つ第1の仕事関数とは異なる第2の仕事関数を有する第2の導電部108Bとから構成される。従って、図1に示す第1の実施形態の半導体装置と同様の効果、つまり、ゲート電圧に起因して垂直方向に生じる電界の強度を、オーバーラップ領域Aにおいて選択的に低減することによってGIDLを低減できるという効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、MISFETのゲート電極の構造に本発明を適用した場合には、リーク電流を抑制できるという効果が得られ、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面図である。
【図2】図2(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置によって得られる効果を説明するための図である。
【図3】図3(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置によって得られる効果を説明するための図である。
【図4】図4(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置によって得られる効果を説明するための図である。
【図5】図5(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置によって得られる効果を説明するための図である。
【図6】図6は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置によって得られる効果を説明するための図である。
【図7】図7は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置において使用可能なゲート電極用の各種材料と仕事関数との関係を示す図である。
【図8】図8(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図9】図9(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図10】図10(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図11】図11は本発明の第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の構造を示す断面図である。
【図12】図12は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図13】図13は本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面図である。
【図14】図14(a)〜(c)は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図15】図15(a)〜(c)は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図16】図16は本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面図である。
【図17】図17(a)〜(c)は、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図18】図18(a)〜(c)は、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図19】図19は本発明の第3の実施形態の変形例に係る半導体装置の構造を示す断面図である。
【図20】図20(a)〜(c)は、本発明の第3の実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図21】図21(a)〜(c)は、本発明の第3の実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図22】図22は従来の半導体装置を示す断面図である。
【図23】図23は従来の半導体装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0105】
101 半導体基板
102 ウェル領域
103 チャネル領域
104 エクステンション領域
105 ソース・ドレイン領域
106 絶縁性界面層
107 高誘電率膜
108 ゲート電極
108A 第1の導電部
108B 第2の導電部
109 絶縁性サイドウォールスペーサ
110 層間絶縁膜
111 金属含有層
112 シリコン層
113 シリサイド層
140 導電膜
150 ダミーゲート電極
151 ポリシリコン膜
160 導電膜
161 ポリシリコン膜
170 導電膜
171 ポリシリコン膜
181 ポリシリコン膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記半導体基板の表面部における前記ゲート電極の両側に形成された不純物領域とを備え、
前記ゲート電極は、前記ゲート電極のチャネル長方向の中央部に位置し且つ前記ゲート絶縁膜と接する第1の導電部と、前記ゲート電極の前記チャネル長方向の両端部に位置し且つ前記ゲート絶縁膜と接する第2の導電部とを含み、
前記第1の導電部の第1の仕事関数と前記第2の導電部の第2の仕事関数とが異なっていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記不純物領域の第3の仕事関数と前記第1の導電部の前記第1の仕事関数との差と比べて、前記不純物領域の前記第3の仕事関数と前記第2の導電部の前記第2の仕事関数との差が小さいことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体装置において、
前記不純物領域及び前記第2の導電部はそれぞれn型シリコンからなり、
前記第1の導電部は金属又は金属化合物からなることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記金属はMo、Ta又はWであることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記金属化合物はTiN、MoSiN又はLaOであることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の半導体装置において、
前記不純物領域及び前記第2の導電部はそれぞれp型シリコンからなり、
前記第1の導電部は金属又は金属化合物からなることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置において、
前記金属はTa、W又はPtであることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項6に記載の半導体装置において、
前記金属化合物はTiN、MoSiN、RuO2 、TaN、TaC又はPtWであることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項1〜8に記載の半導体装置において、
前記不純物領域はエクステンション領域であることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置において、
前記エクステンション領域の一部分が前記ゲート電極の前記チャネル長方向の両端部とオーバーラップしており、前記ゲート絶縁膜の両側面が前記エクステンション領域上に位置することを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の半導体装置において、
前記ゲート電極から見て前記エクステンション領域の外側の前記半導体基板の表面部に形成されたソース・ドレイン領域を備えていることを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記ゲート電極の両側面に形成された絶縁性サイドウォールスペーサを備えていることを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記ゲート絶縁膜は高誘電率膜を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
請求項13に記載の半導体装置において、
前記ゲート絶縁膜は、前記半導体基板と前記高誘電率膜との間に形成された絶縁性界面層を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1の導電部と前記第2の導電部とは電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1の導電部は前記第2の導電部上に乗りかかるように形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第2の導電部は前記第1の導電部を跨ぐように形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記ゲート絶縁膜の側面と前記ゲート電極の側面とは面一であることを特徴とする半導体装置。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の半導体装置を製造するための方法であって、
ダミーゲートを用いて形成した凹部の壁面に前記第2の導電部を形成した後、当該凹部が埋まるように前記第1の導電部を形成することにより、前記ゲート電極を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の半導体装置を製造するための方法であって、
前記第1の導電部を形成した後、前記第1の導電部を覆うように導電膜を形成し、その後、当該導電膜に対してエッチバック又はパターニングを行って前記第1の導電部の側壁に前記第2の導電部を形成することにより、前記ゲート電極を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−123944(P2009−123944A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296739(P2007−296739)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】