説明

半導体記憶装置

【課題】消去回数の増加を抑制し、書き込み速度の向上及びメモリセルの劣化を防止することが可能な半導体記憶装置を提供すること。
【解決手段】読み出しレベルに応じてデータを保持可能なセルMCが形成されたセルアレイ1と、前記セルMCに書き込まれた回数N(N:0以上の整数)をカウントし、その回数に応じて書込電圧Vpgm及び読出電圧Vcgrを前記セルに転送する制御部9と、前記書込電圧を用いてデータを書み込み、前記読出電圧を発生し、データを読み出す電圧発生回路とを具備し、書込要求があると、前記読出電圧を発生させ、前記データを読み出し、読み出された閾値電圧より高い閾値電圧に遷移させる前記書き込み電圧を前記電圧発生回路に発生させ、前記セルへの前記回数N回目(≧2)の書き込み要求が規定値に達していると、前記制御部は前記セルが保持する前記データを消去させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体記憶装置、例えばNAND型フラッシュメモリに関する。
【背景技術】
【0002】
NAND型フラッシュメモリは浮遊ゲート(FG)を有するメモリセルが用いられている。データの書き込みではこのメモリセルの浮遊ゲートに電荷を蓄積することで、閾値電圧を変化させてデータを保持させる。またデータの読み出し時には、閾値電圧、すなわち浮遊ゲートに蓄積された電荷量に応じた情報が読み出される。
【0003】
メモリセルは1ビット(“0”または“1”)の他、多値(例えば2ビット(“11”、“10”、“01”、“00”))のデータを保持することが出来る。2ビットの場合、メモリセルには4つの閾値電圧のうちの1つが設定される。閾値電圧の設定には1ビットを記憶する場合より高い精度が要求されるが、書き込み時の閾値変化量は1ビットを書き込む場合と大きくは変わらない。そのためメモリセル間の容量結合などにより、あるメモリセルの書き込み時に隣のメモリセルの閾値をシフトさせて保持データが変化してしまう、すなわちプログラムディスターブの可能性が高くなる。
【0004】
また、例えば4値のデータを保持可能なメモリセルの特性が劣化し、各々の閾値分布が広がってしまった場合などは、データの読み出しに精細を欠く。このような場合は、4値モードから2値モードに変更せざるを得ない。
【0005】
また、メモリセルは一度閾値電圧が上昇しデータを保持した後に更なる新たなデータを書き込む場合、消去動作を行うことで閾値電圧を下げること必要がある。この消去回数には、例えば1万回程度の制限がある。また、消去回数の増加は書き込み速度を低下させ、メモリセルの劣化を促進させる。
【0006】
(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】2008−20937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
消去回数の増加を抑制し、書き込み速度の向上及びメモリセルの劣化を防止することが可能な半導体記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態の半導体記憶装置によれば、読み出しレベルに応じて“0”または“1”いずれかのデータを保持可能なメモリセルが行及び列方向に沿って形成されたメモリセルアレイと、前記メモリセルに連続して前記データが書き込まれた回数N(N:0以上の整数)をカウントし、その回数に応じて可変な書き込み電圧及び読み出し電圧を前記メモリセルに転送する制御部と、前記書き込み電圧を発生し、前記書き込み電圧を用いて前記メモリセルに少なくとも“1”ビットデータを書み込み、前記読み出し電圧を発生し、前記メモリセルから少なくとも“1”ビットデータを読み出す電圧発生回路とを具備し、前記メモリセルに前記回数N回目(≧2)の書き込み要求があると、前記制御部は、前記電圧発生回路に(N−1)回目に応じた前記読み出し電圧を発生させ、この読み出し電圧によって前記メモリセルから前記“1”ビットデータを読み出し、前記書き込み要求に応じた前記データに基づき、前記(N−1)回目の読み出しで読み出された閾値電圧より高い閾値電圧に遷移させる前記書き込み電圧を前記電圧発生回路に発生させ、前記メモリセルへの前記回数N回目(≧2)の書き込み要求が規定値に達していると、前記制御部は前記メモリセルが保持する前記データを消去させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係るNANDフラッシュメモリの構成例。
【図2】第1の実施形態に係るメモリセルの閾値分布の概念図。
【図3】第1の実施形態に係るメモリセルの保持データの概念図。
【図4】第1の実施形態に係る電圧発生回路のブロック図。
【図5】第1の実施形態に係る制御部の動作を示すフローチャート。
【図6】第1の実施形態に係るNANDフラッシュメモリの書き込み動作を示すタイムチャート。
【図7】第1の実施形態に係る読み出し電圧に応じたメモリセルの保持データを示した概念図。
【図8】第1の実施形態に係る制御部の動作を示すフローチャート。
【図9】第1の実施形態に係る制御部の動作を示すフローチャート。
【図10】第1の実施形態の変形例に係るメモリセルの閾値分布の概念図。
【図11】第1の実施形態の変形例に係る読み出し電圧に応じたメモリセルの保持データを示した概念図。
【図12】第2の実施形態に係るメモリシステムの構成例。
【図13】第2の実施形態に係るワークメモリの構成例。
【図14】第3の実施形態に係るメモリセルアレイの構成例。
【図15】第3の実施形態に係るメモリセルアレイの詳細な構成例。
【図16】第3の実施形態に係るメモリセルアレイの斜視図。
【図17】第3の実施形態に係るメモリセルアレイの回路図。
【図18】第3の実施形態に係るメモリセルが遷移可能な抵抗分布図。
【図19】第3の実施形態に係るメモリセルの保持データの概念図。
【図20】第3の実施形態に係る書き込み電圧の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施形態につき図面を参照して説明する。この説明に際し、全図にわたり、共通する部分には共通する参照符号を付す。
【0012】
[第1の実施形態]
本実施形態は、メモリセルに新たなデータを書き込む際、保持データを消去せず連続して新たなデータを書き込む。つまり、書き込み毎にメモリセルの閾値電圧を上昇させる。読み出し時には、書き込み回数に応じた読み出しレベルを用いて、メモリセルの閾値電圧がその読み出しレベルよりも低いか高いかを判断することで1ビット(“0”または“1”)データを読み出す。その後、書き込み回数が規定値に達すると、データを消去するものである。すなわち、メモリセルの書き込み回数が規定値に達するまでデータ消去を行わず、同一メモリセルに複数回データが書き込まれることになる。また、メモリセルの書き込み回数は、後述するブロック単位で管理される。これは、消去がブロック単位で行われるため、同一ブロックに設けられたメモリセルへの書き込み回数はすべて同一とする必要があるからである。
【0013】
<全体構成例>
図1を用いて本実施形態に係る半導体記憶装置の構成例について説明する。図1は、本実施形態に係るNAND型フラッシュメモリを一例に示したブロック図である。図1に示すように、NAND型フラッシュメモリは、メモリセルアレイ1、ロウデコーダ2、ドライバ回路3、センスアンプ4、ECC回路5、データ入出力回路6、ソース線SLドライバ7、電圧発生回路8、及び制御部9を備える。
【0014】
メモリセルアレイ1は複数の不揮発性のメモリセルトランジスタMTメモリセルMCを含んだブロックBLK0乃至BLKsを備える(sは自然数)。ブロックBLK0乃至BLKsの各々は、不揮発性のメモリセルMCが直列接続された複数のNANDストリング15を備えている。NANDストリング15の各々は、例えば64個のメモリセルMCと、選択トランジスタST1、ST2とを含んでいる。
【0015】
メモリセルMCは、2値以上のデータを保持可能とする。本実施形態では、レベルの異なる2値のデータを保持する場合について説明するが、4値であってもよいし、8値であってもよく、その値は限定されるものではない。
【0016】
このメモリセルMCの構造は、p型半導体基板上にゲート絶縁膜を介在して形成された浮遊ゲート(導電層)と、浮遊ゲート上にゲート間絶縁膜を介在して形成された制御ゲートとを含んだFG型である。なお、メモリセルMCはMONOS型であってもよい。MONOS型とは、半導体基板上にゲート絶縁膜を介在して形成された電荷蓄積層(例えば絶縁膜)と、電荷蓄積層上に形成され、電荷蓄積層より誘電率の高い絶縁膜(以下、ブロック層と呼ぶ)と、更にブロック層上に形成された制御ゲートとを有する構造である。
【0017】
メモリセルMCの制御ゲートはワード線として機能し、ドレインはビット線に電気的に接続され、ソースはソース線に電気的に接続されている。またメモリセルMCは、nチャネルMOSトランジスタである。なお、メモリセルMCの個数は64個に限られず、128個、256個等であってもよく、その数は限定されるものではない。
【0018】
またメモリセルMCは、隣接するもの同士でソース、ドレインを共有している。そして、選択トランジスタST1、ST2間に、その電流経路が直列接続されるようにして配置されている。直列接続されたメモリセルMCの一端側のドレイン領域は選択トランジスタST1のソース領域に接続され、他端側のソース領域は選択トランジスタST2のドレイン領域に接続されている。
【0019】
同一行にあるメモリセルMCの制御ゲートはワード線WL0〜WL63のいずれかに共通接続され、同一行にあるメモリセルMCの選択トランジスタST1、ST2のゲート電極は、それぞれセレクトゲート線SGD1、SGS1に共通接続されている。なお説明の簡単化のため、以下ではワード線WL0〜WL63を区別しない場合には、単にワード線WLと呼ぶことがある。また、メモリセルアレイ1において同一列にある選択トランジスタST1のドレインは、いずれかのビット線BL0〜BLnに共通接続される。以下、ビット線BL0〜BLnについても、これらを区別しない場合には一括してビット線BLと呼ぶ(n:自然数)。選択トランジスタST2のソースはソース線SLに共通接続される。
【0020】
また、同一のワード線WLに接続された複数のメモリセルMCには一括してデータが書き込まれ、この単位をページと呼ぶ。更に、複数のメモリセルMCはブロックBLK単位で一括してデータが消去される。
【0021】
ロウデコーダ2について説明する。ロウデコーダ2は、データの書き込み動作時、読み出し動作時、及び消去時において、制御部9から与えられたブロックアドレスをデコードし、その結果に基づいてブロックBLKを選択する。これにより、ロウデコーダ2は、選択されたブロックBLKに対応するメモリセルアレイ1のロウ方向を選択する。つまり、制御部9から与えられる制御信号に基づいて、ロウデコーダ2はセレクトゲート線SGD1、SGS1、及びワード線WL0〜WL63に対し、ドライバ回路3から与えられた電圧をそれぞれ印加する。
【0022】
ドライバ回路3は、セレクトゲート線SGD1、SGS1毎に設けられたセレクトゲート線ドライバ31、32、及びワード線WL毎に設けられたワード線ドライバ33を備える。本実施形態では、ブロックBLK0に対応したワード線ドライバ33、セレクトゲート線ドライバ31、32のみを図示する。しかし実際では、これらワード線ドライバ33、セレクトゲート線ドライバ31、及び32は、ブロックBLK0乃至ブロックBLKsに設けられた、例えば64本のワード線WL及びセレクトゲート線SGD1、SGS1に共通接続されている。
【0023】
制御部9から与えられるページアドレスのデコード結果に応じて、ブロックBLKが選択される。ワード線ドライバ33は選択されたワード線WLを介して電圧発生回路8から与えられた必要とされる電圧を、この選択ブロックBLK内に設けられたメモリセルMCの制御ゲートへと転送する。またセレクトゲート線ドライバ31は、選択ブロックBLKに対応するセレクトゲート線SGD1を介し、必要とする電圧を選択トランジスタST1のゲートへと転送する。この時、セレクトゲート線ドライバ31は選択トランジスタST1のゲートに信号sgdを転送する。具体的には、セレクトゲート線ドライバ31は、データの書き込み時、読み出し時、消去時、更にはデータのベリファイ時に、セレクトゲート線SGD1を介して、例えば信号sgdを選択トランジスタST1のゲートに転送する。なお、信号sgdは、その信号が‘L’レベルであった場合、0[V]とされ、‘H’レベルであった場合電圧VDD(例えば、1.8[V])する。
【0024】
また、セレクトゲート線ドライバ32は、選択ブロックBLKに対応するセレクトゲート線SGS1を介し、データの書き込み時、読み出し時、データのベリファイ時にセレクトゲート線SGS1を介してそれぞれ必要とする電圧を選択トランジスタST2のゲートに転送する。この時、セレクトゲート線ドライバ32は選択トランジスタST2のゲートに信号sgsを転送する。信号sgsは、その信号が‘L’レベルであった場合0[V]とされ、‘H’レベルであった場合電圧VDDとする。
【0025】
次に、センスアンプ4について説明する。センスアンプ5は、データの読み出し時において読み出し対象のメモリセルMCに接続されたビット線BL(読み出し対象のビット線BL)から読み出されたデータをセンスして増幅する。
【0026】
具体的には、センスアンプ4は、読み出し対象とするビット線BLを所定の電圧(例えば、電圧VDD)にプリチャージした後、ロウデコーダ2により選択されたNANDストリング15によってビット線BLを放電させ、そのビット線BLの放電状態をセンスする。つまり、センスアンプ4でビット線BLの電圧を増幅してメモリセルMCの有するデータをセンスする。そして、読み出したデータをデータ線Dlineを介してデータ入出力回路6に転送する。なお、この際、読み出し対象とならないビット線BLは電圧VDDに固定する。
【0027】
そしてデータの書き込み時には、センスアンプ4は書き込み対象のビット線BLに書き込みデータを転送する。具体的には、“0”データ書き込みの場合には、ビット線BLに所定の電圧(例えば、電圧VDD)を転送し、“1”データ書き込みの場合には、ビット線BLに、例えば0Vを転送する。なお、この際、読み出し対象とならないビット線BLは電圧VDDに固定する。
【0028】
ECC回路5は、データのエラー訂正を行うためのもので、読み出したページが保持するデータにつき、誤読み出しの発生率の計算も行う。発生率とは、例えばページ方向におけるメモリセルの全ビット数に対する訂正ビット数の割合である。
【0029】
データ入出力回路6は、図示せぬI/O端子を介してホスト(host)から供給されたアドレス及びコマンドを制御部9へ出力する。またデータ入出力回路6は、書き込みデータを、データ線Dline及び図示せぬデータバッファBF介してセンスアンプ4へと出力する。また、データをホストへ出力する際は、制御部9制御に基づき、センスアンプ4が増幅したデータを、データ線Dlineを介して受け取った後、I/O端子を介してホストへ出力する。
【0030】
ソース線SLドライバ7は、MOSトランジスタ71、72を備える。MOSトランジスタ71の電流経路の一端はソース線SLに接続され、他端は接地され、ゲートには信号Clamp_S1が与えられる。またMOSトランジスタ72の電流経路の一端はMOSトランジスタ71の電流経路の一端に共通接続され、他端は電圧VDDが供給され、ゲートには信号Clamp_S2が与えられる。
【0031】
MOSトランジスタ71がオン状態とされると、ソース線SLの電位は0[V]とされ、MOSトランジスタ72がオン状態とされると、ソース線SLの電位は電圧VDDとされる。なお、MOSトランジスタ71、72のゲートに与えられる信号Clamp_S1、S2は制御部9により制御される。なお、MOSトランジスタ72がオン状態とされるのは、消去ベリファイを行う場合である。つまり、消去ベリファイの際MOSトランジスタ72をオン状態とすることで、ソース線SL側からビット線BLへと電圧VDDが転送される。
【0032】
図2を用いて上記メモリセルMCが保持する閾値電圧について説明する。図2は、横軸に閾値分布をとり、縦軸にメモリセルMCの数を示したグラフである。
【0033】
図示するように、各々のメモリセルMCは、浮遊ゲートに蓄積される電荷量に応じて、例えば5つの状態分布を保持する。すなわち、メモリセルMCは、閾値電圧Vthの低い順に“消去”状態、“A”状態、“B”状態、“C”状態、及び“D”状態の5種の状態分布を保持できる。
【0034】
メモリセルMCにおける“消去”状態の閾値電圧Vth0は、Vth0<V01である。“A”状態の閾値電圧Vth1は、V01<Vth1<V12である。また、この“A”状態の閾値分布において下側電圧をVth1_Lとし、上側電圧をVth1_Hとする。
【0035】
“B”状態の閾値電圧Vth2は、V12<Vth2<V23である。また、この“B”状態の閾値分布において下側電圧をVth2_Lとし、上側電圧をVth2_Hとする。
【0036】
“C”状態の閾値電圧Vth3は、V23<Vth3<V34である。また、この“C”状態の閾値分布において下側電圧をVth3_Lとし、上側電圧をVth3_Hとする。
【0037】
更に、“D”状態の閾値電圧Vth4は、V34<Vth4である。また、この“D”状態の閾値分布において下側電圧をVth4_Lとし、上側電圧をVth4_Hとする。このようにメモリセルMCは、閾値に応じて5種の状態分布を保持可能とする。なお、電圧V01、電圧V12、電圧V23、及び電圧V34は読み出しレベルであり、電圧Vth1_L、電圧Vth1_L、電圧Vth1_L、及び電圧Vth1_Lは書き込み回数に応じたベリファイ電圧である。
【0038】
メモリセルMCは、“消去”状態において、例えば負電圧に設定され、データを書き込み、浮遊ゲートに電荷を注入することによって正の閾値電圧に設定される。
【0039】
上述したように、メモリセルMCへの書き込み回数が規定値に達するまでデータが上書きされる。つまり、図2に示すように、例えば1回目の書き込みによって浮遊ゲートに注入された電荷により、メモリセルMCは“消去”状態から“A”状態または“B”状態いずれかの分布に遷移する。すなわち、1ビット情報を保持する。また、2回目の書き込みによって浮遊ゲートに注入された電荷により、メモリセルMCは“B”状態または“C”状態いずれかの分布とされる。3回目の書き込みによって浮遊ゲートに注入された電荷により、メモリセルMCは“C”状態または“D”状態いずれかの分布とされる。後述するデータの読み出し時には、書き込み回数に応じて読み出し電圧の値が可変とされる。これによって1ビットデータ、すなわち“0”または“1”データのいずれかを読み出す。なお、メモリセルMCの閾値電圧が読み出し電圧よりも低い場合、メモリセルMCは“0”データを保持し、逆にメモリセルMCの閾値電圧が読み出し電圧よりも高い場合、メモリセルMCは“1”データを保持するものとする。
【0040】
この様子について図3を用いて説明する。図3は、書き込み回数毎にメモリセルMCが取りうる状態分布、及びその書き込み回数に応じた読み出し電圧を用いることでメモリセルMCの保持データを判別する概念図である。
【0041】
図3に示すように、横軸に書き込み回数、縦軸にメモリセルMCが保持可能な閾値分布をとる。上述したようにメモリセルMCは1回目のデータ書き込みでは後述する書き込み電圧Vpgm1または電圧Vpgm2を用いて“消去”状態から“A”または“B”いずれかの状態分布に遷移する。ここで、読み出しレベルV12(図2参照)とすると、“A”状態はデータ“0”とされ、“B”状態はデータ“1”とされる。また、メモリセルMCは2回目のデータ書き込みでは、後述する書き込み電圧Vpgm3を用いて“B”または“C”いずれかの状態分布に遷移する。ここで、読み出しレベルを電圧V23(図2参照)とすると、“B”状態はデータ“0”とされ、“C”状態はデータ“1”とされる。つまり、同一の状態分布であっても、書き込み回数に応じてメモリセルMCは異なったデータを保持する。
【0042】
更にメモリセルMCは3回目のデータ書き込みでは、後述する書き込み電圧Vpgm4を用いて“C”または“D”いずれかの状態分布に遷移する。ここで、読み出しレベルを電圧V34(図2参照)とすると、“C”状態はデータ“0”とされ、“D”状態はデータ“1”とされる。このように本実施形態に係るメモリセルMCが保持するデータは書き込み回数とその状態分布に応じて“1”または“0”とされる。
【0043】
電圧発生回路8は、第1電圧発生回路81、第2電圧発生回路82、第3電圧発生回路83、及び第4電圧発生回路84、及び第5電圧発生回路85を備える。
図4を用いて第1電圧発生回路81乃至第5電圧発生回路85について説明する。
【0044】
図4に示すように、第1電圧発生回路81乃至第5電圧発生回路85はリミッタ回路8−0及びチャージポンプ回路8−1を備える。チャージポンプ8−1は、制御部9により例えばデータの書き込み動作、消去動作、及び読み出し動作に必要な電圧を発生する。上記各々の電圧は、ノードN1から出力され、ドライバ回路3を介してNAND型フラッシュメモリ内の例えば、ロウデコーダ2に供給される。リミッタ回路5−0はノードN1の電位を監視しつつ、このノードN1の電位に応じてチャージポンプ回路8−1を制御する。すなわち、リミット回路8−0はノードN1の電位が所定の値よりも高ければ、チャージポンプ回路8−1のポンピングを停止し、該ノードN1の電位を降圧させる。
【0045】
一方、ノードN1の電位が所定の値よりも低ければ、チャージポンプ回路8−1にポンピングさせ、このノードN1の電位を昇圧させる。
【0046】
次に上記第1電圧発生回路81乃至第5電圧発生回路85が発生する電圧について説明する。第1電圧発生回路81はデータの書き込み時に電圧Vpgm1〜4を発生させる(以下、書き込み電圧Vpgm1〜4と呼ぶことがある)。発生させられた電圧Vpgm1〜4は選択ワード線WLに転送され、上記メモリセルMCの制御ゲートに印加される。電圧Vpgm1〜4とは、メモリセルMCの直下に形成されたチャネルの電荷が浮遊ゲートに注入され、このメモリセルMCの閾値が別レベルに遷移する程度の大きさの電圧である。
【0047】
ここでVpgm1〜4は、電圧Vpgm1<Vpgm2<Vpgm3<Vpgm4の関係を満たす。電圧Vpgm1は、図3において“消去”状態から“A”状態、すなわち閾値電圧Vth1に遷移させる電圧であり、電圧Vpgm2は、“消去”状態から“B”状態、すなわち閾値電圧Vth2に遷移させる電圧及び“A”状態から“B”状態に遷移させる電圧であり、電圧Vpgm3は、“B”状態から“C”状態、すなわち閾値電圧Vth3に遷移させる電圧であり、電圧Vpgm4は“C”状態から“D”状態へと遷移させる電圧である。
【0048】
第2電圧発生回路82は、電圧Vpassを発生させ、非選択ワード線WLに該電圧Vpassを転送する。電圧VpassとはメモリセルMCがオン状態とされる電圧である。
【0049】
第3電圧発生回路83は、例えば20[V]電圧Veraを発生させ、メモリセルMCが形成されるウェル領域に転送する。電圧Veraとは、浮遊ゲートに注入された電荷を、その浮遊ゲートから引き抜くための電圧である。
【0050】
第4電圧発生回路84は、電圧Vcgr1〜3を発生させ、選択ワード線WLにこの電圧Vvgr1〜3を転送する。電圧Vcgr1〜3は、メモリセルMCから読み出すデータに応じた読み出し電圧である。電圧Vcgr1は、例えば電圧Vth1_H<電圧Vcgr1=V12<Vth2_Lとされる値である。電圧Vcgr2は、電圧Vth2_H=V23<電圧Vcgr2<Vth3_Lとされる値である。電圧Vcgr3は、電圧Vth3_H<電圧Vcgr3=V34<Vth4_Lとされる値である。
【0051】
また、第5電圧発生回路85は、電圧Vreadを発生させ、データの読み出し時において非選択ワード線WLにこの電圧Vreadを転送する。電圧Vreadは、メモリセルMCが保持するデータに依存せず、このメモリセルMCをオン状態とする電圧である。
【0052】
制御部9は回数データ91を保持する。この回数データ91は、ブロックBLK毎内のメモリセルMCにデータが連続して書き込まれた回数を保持する。制御部9はこの連続書き込み回数の管理をブロックBLK毎に行う。つまり、回数データ91は、例えばブロックBLK1内に設けられたメモリセルMCに書き込まれた回数は“1”回、ブロックBLK2内に設けられたメモリセルMCに書き込まれた回数は“2”回・・・という情報を保持する。
【0053】
また、制御部9は、回数データ91が保持するデータが、例えば“3”であると、メモリセルMCに連続してデータが書き込まれる回数が“4”回になる手前で値を“0”回にリセットする。つまり、既に3回データが書き込まれ、新たに書き込み要求がホストからあると、制御部9はメモリセルMCに対し消去動作を実行する。これによって、閾値電圧が、例えば“消去”状態(図2参照)にまで遷移し、新たな書き込みデータの書き込み準備がなされる。
【0054】
制御部9は、この書き込み回数をメモリセルMCの特性に応じて設定することが出来る。すなわち、制御部9はメモリセルMCへのデータ上書き可能回数を特性に応じて設定することが出来る。上記ではその回数を“3”と設定したが、特性が良好であればこの値に限定されるものではなく、例えば“7”であっても“15”であってもよい。またその回数は、例えば“5”であっても“6”であってもよい。すなわち“2”のべき乗の値でなくてもよい。この値をLで表し、データを連続して書き込めるその上限値を最大上書き可能回数LMAXと呼ぶ。
【0055】
メモリセルMCの特性が良好で分解能が高い、すなわち隣接する閾値分布が明確に隔離されている場合などは、この上限値LMAXを上昇させ、高い値に設定する。すなわち、例えば図2における“消去”状態〜“D”状態の5つの状態分布を増やし、この“D”状態よりも電圧の高い“E”状態や“F”状態を設定する。逆に、分解能が低下し、隣り合う状態分布の両端(例えば、図2におけるVth2_LとVth1_Hとの電位差)が近づいた場合は、このLMAXを例えば1つ低い値に設定する。具体的には、上記図2に示すようにメモリセルMCが保持可能な“A”状態〜“D”状態までの閾値分布を、特性の低下に応じて例えば“A”、状態“B”状態、及び“C”状態とする。
【0056】
また、制御部9は必要に応じてモードの切り替えを行うことが出来る。すなわち、4値(“11”、“10”、“01”、“00”)、8値(“111”、“110”、“101”、“100”、“011”、“010”、“001”、“000”)などの多値モード(以下、モード1と呼ぶ)にするか、本実施形態のように閾値電圧は例えば “消去”状態(4値表現における“11”に相当)から例えば“D”状態(4値表現の“00”に相当する)へと上昇させるが、データの読み出しは“0”または“1”のいずれか1ビットを判断するモード(以下、モード2と呼ぶ)に設定するかのモード切替を行う。
【0057】
例えばモード1において、制御部9は、例えばメモリセルMCの特性が劣化して4bit表現ができない場合には、ビット数を下げて3bitで保持データを表現する。
【0058】
これに対し、例えばモード2であると、制御部9はメモリセルMCの劣化具合に応じて上記最大上書き可能回数LMAX=3から上記最大上書き可能回数LMAX=2とすることで、それまでの状態“A”状態〜“D”状態でまでの閾値分布を、例えば状態“A”、状態“B”、及び状態“C”と状態分布を1つ減算する。
【0059】
モード1は、従来のデータ保持のモードであり、モード2は本実施形態に係るモードである。
【0060】
更に制御部9は、上記書き込み回数に応じた読み出し電圧を生成するよう、第4電圧発生回路84を制御する。つまり、書き込み回数が“1”であれば、上記電圧Vcgr1を、書き込み回数が“2”であれば電圧Vcgr2を、そして書き込み回数が“3”であれば電圧Vcgr3を生成するよう第4電圧発生回路84を制御する。
【0061】
上記した制御部9は、NAND型フラッシュメモリ全体の動作を制御する。すなわち、データ入出力回路6を介して、図示せぬホストから与えられた上記アドレス、及びコマンドに基づいて、データの書き込み動作、読み出し動作、及び“消去”動作における動作シーケンスを実行する。制御部9はアドレス、及び動作シーケンスに基づき、ブロック選択信号/カラム選択信号を生成する。
【0062】
制御部9は、上記したようにブロックBLK毎に書き込み回数を管理する。またデータを上書きする際、直前のデータ書き込みによりメモリセルMCが保持したデータを読み出す。この結果、保持データが“0”データであれば、新たなデータを書き込む前に、“1”データを保持させる。すなわち、1つ上の閾値分布へ遷移させる。
【0063】
具体的には、読み出し電圧はVcgr1=V12により、1回目の書き込みによってメモリセルMCが保持するデータは“A”状態、すなわち“0”データであったものとする。この場合、2回目のデータ書き込み前に、閾値分布を“A”状態から“B”状態に遷移させる。つまり制御部9は第1電圧発生回路81にメモリセルMCに電圧Vpgm2を印加させる。
【0064】
制御部9は、前述したブロック選択信号をロウデコーダ3に出力する。また、制御部9はカラム選択信号をセンスアンプ4に出力する。カラム選択信号とは、センスアンプ4のカラム方向を選択する信号である。
【0065】
また、制御部9には、図示せぬメモリコントローラから供給された制御信号が与えられる。制御部9は供給された制御信号により、図示せぬI/O端子を介してホスト(host)からデータ入出力回路6へと供給された信号がアドレスであるのか、データであるのかを区別する。
【0066】
なお、新たなデータを上書きする際、直前のデータ書き込みによりメモリセルMCが保持したデータを読み出し、この結果、保持データが“0”データであれば、新たなデータを書き込む前に、“1”データを保持させ、1つ上の閾値分布へ遷移させていたが、これに限らない。つまり、新たなデータを書き込む前に、状態分布を上昇させて“1”データを保持させず、直前の保持データに応じた閾値電圧から、新たに書き込むデータに応じた閾値電圧にまで状態分布を遷移させてもよい。具体的には、次が例えば2回目のデータ書き込みとすると、例えば1回目の書き込みで遷移した“A”状態から2回目の書き込みによって“B”状態または“C”状態のいずれかに遷移させる場合と、1回目の書き込みで遷移した“B”状態から2回目の書き込みによってそのままこの“B”状態を維持させるか“C”状態へ遷移させる場合である。
【0067】
<書き込み動作>
次に、図5を用いて本実施形態に係る半導体記憶装置の書き込み動作について説明する。図5は書き込み動作を示すフローチャートであり、図6は、図5におけるステップS5(後述する)の書き込み動作を示したタイムチャートである。ここで、連続してデータが書き込まれた回数をN(N:自然数)で表し、以下説明では、N≧2とする。
【0068】
図示せぬホスト(host)からデータ入出力回路6を介して制御部9に書き込みコマンド、書き込みデータ、及び書き込み対象とされるメモリセルMCのアドレスが転送されると、制御部9は、回数データ91を参照し、書き込み対象とされるメモリセルMCが設けられたブロックBLKの書き込み回数を確認する(ステップS0)。
【0069】
この結果、次の書き込みがN回目であると判断すると、制御部9は、第4電圧発生回路84に電圧Vcgr(N−1)を生成させる。この電圧Vcgr(N−1)を用いて書き込み対象とされるブロックBLK内に設けられた全メモリセルMCから順次データが読み出され、ブロックBLK内の全てのメモリセルMCが“1”データであるか否かが判断される(S1、S2)。
【0070】
この結果、書き込み対象とされるメモリセルMCが設けられたブロックBLK内に1つでも保持データが“0”メモリセルMCが存在する場合(S2、NO)、保持データが“0”のメモリセルに書き込み電圧VpgmNが供給される(S3)。この動作は、ブロックBLK内の全メモリセルMCの保持データが“1”となるまで繰り返される(S3、S1、S2)。
【0071】
ステップS2において、書き込み対象とされるメモリセルMCが設けられたブロックBLK内全てのメモリセルMCの保持データが“1”であると判断された場合(S2、YES)、制御部9は、データ入出力回路6からデータ線Dline介して図示せぬデータバッファBFにN回目の書き込みデータを格納させる(S4)。
【0072】
次いで、制御部9は書き込み電圧Vpgm(N+1)を選択ワード線WLに転送し、データバッファBFが格納したデータに応じた値(“0”または“1”データ)をメモリセルMCに書き込む(S5)。ステップS5の動作について図6を用いて説明する。
【0073】
上記したように図6はNANDフラッシュメモリにおける“0”データの書き込み動作を示したタイムチャートである。図示するように、横軸に時間、縦軸に信号sgd、チャネルの電位、選択ビット線BLの電位、選択ワード線WLの電位、及び非選択ワード線WLの電位を取る。なお、非選択ビット線BLの動作は選択ビット線BLにおける“0”データ書き込みと同一であるため、以下では説明を省略する。
【0074】
本実施形態では、書き込み対象となるメモリセルMCの選択ワード線WLを、例えばワード線WL32とする。よって、非選択ワード線WL0〜31、WL33〜63には電圧VPASSが転送され、電圧Vpgm(N+1)は選択ワード線WL32に転送される。
【0075】
まず、時刻t1においてセンスアンプ4により転送されたプリチャージ電圧によって、時刻t1から選択ビット線BLの電位が上昇する。
【0076】
また、同時刻t1において、選択トランジスタST1のゲートに“H”レベルの信号sgdが供給される。つまり、この信号sgdが、例えば電圧VDDに上昇することから、選択トランジスタST1がオン状態とされる。従って、メモリセルMCのチャネルの電位が時刻t1から上昇する。
【0077】
その後時刻t2において、選択ビット線BL、並びに選択ビット線BLのチャネルの電位も電圧VDDに達する(飽和する)。つまり、時刻t2においてビット線BLに流れる電流はほぼゼロとされる。
【0078】
時刻t3になると、信号sgdがゼロ電位に降下する。これにより、選択トランジスタST1はカットオフとされる。更に時刻t4になると、非選択ワード線WL0〜31及びWL33〜63に電圧Vpassが転送される。このため、ビット線BLの電位が電圧VDDから上昇する(これをセルフブーストと呼ぶ)。そして時刻t5において、選択ワード線WL32に電圧Vpgm(N+1)が転送されるが、チャネルの電位は上述したセルフブーストにより上昇していることから、浮遊ゲートには閾値変動が生じる程度の負の電荷が注入は行われない。つまり、図2に示す閾値電圧は、例えばN=2であれば、“B”状態(電圧Vth2)を維持したままとされる。
【0079】
なお、時刻t1においてセンスアンプ4によって選択ビット線BLの電位がゼロ電位とされた場合、チャネルの電位はゼロ電位とされる。従って時刻t5において選択ワード線WLに書き込み電圧Vpgm(N+1)が転送されると、浮遊ゲートには閾値変動が生じる程度の負の電荷が注入され、図2に示す閾値電圧は、上の閾値分布(“C”状態)へと遷移する。また例えばN=3であれば、“C”状態から“D”状態へと遷移する。
【0080】
なお、上記では、一例として次の書き込み動作に入る前に、メモリセルMCに“1”データの書き込みを行ったが、これに限らない。つまり、次の書き込みに入る前にブロックBLK内に設けられたメモリセルMCに“1”データ書き込みを行わなくてもよい。この場合、例えば1回目の書き込みで“A”状態とされ、次の書き込みで“C”状態(“1”データ)を書き込んでもよい。
【0081】
またなお、N=1の場合では、書き込み回数が1回目とされることから、データの書き込み前、メモリセルMCの閾値分布は“消去”状態とされる(図3参照)。この場合、上記ステップS1、S2の動作を省略し、ステップS3において、1回目のデータ書き込みを行う際、まず“消去”状態から“A”状態にメモリセルMCの状態分布を遷移させる。その後、ステップS4以降の動作を実行する。
【0082】
なお、上記では一例として“1”及び“0”データ書き込みについて説明したが、時刻t1からt2までの動作は、データの読み出し動作及びベリファイ動作と同一である。データの読み出し動作及びベリファイ動作については、時刻t4、t5においてワード線WLに転送する電圧を、電圧Vcgr及び電圧Vreadとすればよい。すなわちステップS1及びS6では図6において、時刻t4、t5のワード線WLの電位が電圧Vcgr及び電圧Vreadとされる。
【0083】
その後、(N+1)回目の新たな書き込みコマンドが図示せぬホストから転送されると、ステップS5において書き込みを行ったメモリセルMCに対してデータの読み出しを行い(S6)、書き込み対象とされるメモリセルMCが設けられたブロックBLK内の全メモリセルMCの保持データが“1”とされるまで、書き込み動作を行う(S5、S6、S7)。つまり、ブロックBLK内に1つでも保持データが“0”とされるメモリセルMCがあると(S7、NO)、保持データが“1”とされるまで、ステップS5〜S7までの動作が行われる。
【0084】
<読み出し動作>
この様子について図7を用いて説明する。データの読み出し時、メモリセルMCが保持する電荷量及び書き込み回数に応じて、このメモリセルMCの保持データが“0”または“1”と判断される概念図である。
【0085】
図示するように、上記ステップS1においてデータを読み出す場合について説明する。ここで、N=2とする。すなわち、メモリセルMCには状態は“A”状態または“B”状態となっている。まずセンスアンプ4は、ビット線BLを固定電圧に充電する。その後、ワード線WLに電圧Vcgr(N―1)を印加する。メモリセルMCの閾値電圧がこの電圧Vcgr(N―1)より低い場合、すなわちこの際、メモリセルMCの閾値電圧がV01(“A”状態)であると、メモリセルMCがオン状態となる。すなわちビット線BLとソース線SLとが導通状態となることによってビット線BLが放電される。センスアンプ4は、この電圧をセンスしメモリセルMCは“0”データを保持すると判断する。
【0086】
これに対し、メモリセルMCの閾値電圧が、読出しレベルよりも高い場合、すなわちメモリセルMCの閾値電圧がVth2(“B”状態)であると、メモリセルMCがオフ状態となる。すなわちビット線BLとソース線SLとが非導通状態となる。センスアンプ4は、そのビット線BLの電位をセンスし、メモリセルMCは“1”データを保持すると判断する。
【0087】
同様に、S7においてデータを読み出す際、電圧Vcgr2をメモリセルMCに転送する。この際、メモリセルMCの閾値電圧がV12(“B”状態)であると、センスアンプ4は“0”データを保持と判断する。これに対し、メモリセルMCの閾値電圧がV23(“C”状態)であると、センスアンプ4は“1”データを保持と判断する。
【0088】
<消去動作>
次に、図8を用いて、制御部9による消去動作について説明する。図8は、制御部9の動作を示したフローチャートである。
【0089】
図8に示すように、制御部9は新たな書き込み要求が発行されると(S10、YES)、回数データ91を参照し、そのデータを書き込む対象とされるメモリセルMCが設けられたブロックBLKの回数データを確認する(S11、S12)。
【0090】
この結果、回数データが最大上書き可能回数LMAXに達している場合(S12、YES)、制御部9は消去動作を実行し、メモリセルMCの閾値電圧を消去電圧または“A”状態にまで遷移させる(S13)。その後、新たなデータの書き込みが行われる。
【0091】
また、回数データが最大上書き可能回数LMAXに達していない場合(S12、YES)、制御部9は消去動作を実行せず、図5で示した書き込み動作を実行する。
【0092】
<最大上書き可能回数LMAXの設定方法について>
次に、図9を用いて制御部9の動作について説明する。図9は、メモリセルMCの誤り率が規定値を超えた場合、制御部9が保持するLMAXの値を小さくする動作を示すフローチャートである。
【0093】
図9に示すように、図示せぬホストからデータの読み出しコマンドが転送されると、制御部9は上述したように書き込み回数に応じた読み出し動作を実行する(ステップS20)。ECC回路5は読み出されたデータに対してECC訂正処理を行う(S21)。ECC回路5による訂正データは制御部9によって図示せぬホストに転送される。
【0094】
エラー訂正の結果が、エラービット≧規定値Mである場合(S22、YES)、制御部9は誤り率の高いブロックBLKのデータを新たなブロックBLKにコピーする(S23)。その後、制御部9は、その該当するブロックBLKの最大上書き可能回数LMAXの値を例えば1つ減算する(S24)。
【0095】
また、ステップS22において、エラービット<規定値Mであれば(S22、NO)、そのメモリセルMCから読み出したデータは誤り訂正が可能な範囲であることから、最大上書き可能回数LMAXの値の減算は行わず、次の読み出しを実行する。
【0096】
<本実施形態に係る効果>
本実施形態に係る半導体記憶装置によると、以下(1)〜(3)の効果を得ることが出来る。
(1)書き込み速度を向上させることができる。
すなわち、本実施形態に係る半導体記憶装置によると、メモリセルMCの閾値変動は、例えば“消去”状態から“A”状態へ、“A”状態から“B”状態へ、“B”状態から“C”状態へ、更には“C”状態から“D”状態へと1レベルずつ遷移される。ここで、1つ上の閾値分布へ遷移することを1レベル上昇と呼ぶ。
【0097】
また、例えば“消去”状態から“B”状態へ、“A”状態から“C”状態へ、更には“B”状態から“D”状態へと2レベルずつ遷移される。この場合、上昇させる閾値分布は最大2レベルとされる。
【0098】
これに対し仮に、“消去”状態から“D”状態へ、または“A”状態から“D”状態、すなわち3レベルも閾値分布を遷移させた場合、この遷移に必要とされるメモリセルMCへの印加する書き込み電圧の時間は長時間に及ぶ。
【0099】
これに対し、本実施形態では上記したように閾値分布の遷移は、最大2レベルである。すなわち、閾値分布の変化量が減少する。このため、この遷移に必要なメモリセルMCへの書き込み電圧の印加時間は、当然3レベルの遷移よりも短くなる。すなわち書き込み速度の向上が見込める。
【0100】
多値データを保持するメモリセルMCへのデータ書き込みでは、例えば“消去”状態から例えば3レベル上の閾値分布まで遷移させることがある。この場合、閾値分布を変動させるための書き込み電圧の印加時間が長くなる。これに対して、本実施形態に係る半導体記憶装置であると、その印加時間は、1ビット書き込みを行うメモリセルMCと同程度である。このように、書き込み速度の向上が見込める。
【0101】
(2)書き込み速度を向上させることが出来る。
すなわち、本実施形態に係る半導体記憶装置によると、上述したようにデータの書き込み回数はブロックBLK単位で統一される。つまり、ブロックBLK毎であると、隣接するブロックBLKとはデータの書き込み回数が異なっているものの、あるブロックBLKに着目した時、隣接するメモリセルMC間のデータ書き込み回数は同一である。すなわち、例えば書き込み回数が1回目であると、“A”状態または“B”状態のいずれかとされるが、多値メモリのように隣接するメモリセルMC間で生じる閾値レベルの大きなズレが生じない。つまり、メモリセルMCにデータを書き込むことにより、このメモリセルMCの閾値レベルをある所望の閾値レベルに遷移させた結果、隣接するメモリセルMCの閾値分布が変動してしまうといったプログラムディスターブを防止することが出来る。
【0102】
これを防止するべく色々な対策が採用されている。例えばメモリセルMCに一度データを書き込み、次いで隣接するメモリセルMCにデータの書き込みを実施した後、閾値分布を補正すべく、再度先ほどのメモリセルMCに書き込み電圧を印加する方法などがある。
【0103】
しかし、本実施形態であると、そもそもプログラムディスターブを防止することができることから、上記方法のように変動した閾値分布を補正するための書き込み電圧をメモリセルMCに再度印加する必要もない。すなわち、書き込みを終えるまでの処理を早めることが出来る。
【0104】
(3)書き込み精度の向上が出来る。
【0105】
本実施形態に係る半導体記憶装置によれば、上記説明したようにブロックBLK単位でメモリセルMCへの書き込み回数が統一されていることからプログラムディスターブが生じにくい。つまり、メモリセルMCが保持する閾値分布のズレが生じにくく、データの書き込み制度が向上する。
【0106】
(4)メモリセルMCの劣化防止
本実施形態に係る半導体記憶装置であると、同一メモリセルMCに、例えば3回のデータ書き込みを実行した後、更にデータを書き込む必要がある場合、このメモリセルMCのデータを消去する。すなわち、メモリセルMCに印加される、たとえば20V程度の消去電圧の印加回数が減少する。これにより、メモリセルMCの劣化が生じにくくなり長期に渡ってメモリセルMCを使用することが出来る。つまり、メモリセルMCが有する特性の信頼性を高い状態で保持することが出来る。
【0107】
<変型例>
次に、図10、図11を用いて上記第1の実施形態の半導体記憶装置に係る変型例について説明する。図10は、変型例に係るメモリセルMCに書き込みを実施した際、このメモリセルMCが有する閾値分布の概念図である。また、図11は、図10に示したメモリセルMCが有する閾値分布が、読み出しレベルに応じて読み出されるデータ(“0”または“1”)について示した概念図である。
【0108】
図10において、縦軸にメモリセルMCの数を取り、横軸に電圧を取る。図10に示すように、変形例に係るメモリセルMCが取りうる閾値分布は、小さい方から順に、“消去”状態、“A”状態、“B”状態、“C”状態、及び“D”状態とされる。この場合においても“消去”状態は、負電圧とされ、メモリセルMCの浮遊ゲートに電荷を注入することで、正電圧(“A”状態、“B”状態、“C”状態、及び“D”状態)とされる。なお、上記第1の実施形態と同様に“A”状態が“消去”状態と同一電位であってもよい。この場合、“A”状態が負電圧とされる。
【0109】
図10に示すように、変型例に係るメモリセルMCは、上記第1の実施形態と同様に1回目のデータ書き込みにおいて“A”状態または“B”状態いずれかの状態分布をとるが、2回目のデータ書き込みにおいて、“A”状態及び“B”状態に加え“C”状態のうちいずれか1つの状態分布をとる。同様に3回目のデータ書込みでは、メモリセルMCは“A”状態、“B”状態、及び“C”状態に加え“D”状態のうちいずれか1つの状態分布をとる。
【0110】
つまり、メモリセルMCに例えば“1”データ(“0”データを保持するメモリセルMCよりも閾値レベルが大きい)を保持する必要ない場合には、閾値レベルを敢えて遷移させず、“0”データを保持させる。
【0111】
次に図11を用いて、上記メモリセルMCの閾値分布に応じて、読み出される保持データの値について説明する。図11において縦軸にメモリセルMCの閾値レベルを取り、横軸に書き込み回数を取る。なお、図7と重複する内容については説明を省略する。
【0112】
図11に示すように、2回目のデータ書き込みによって“A”状態または“B”状態から、“A”状態、“B”状態、及び“C”状態のいずれか状態に遷移したメモリセルMCを例えば電圧Vcgr2で読み出す。メモリセルMCの状態分布が“C”状態(電圧V23)であると、センスアンプ4は“1”データと判断する。
【0113】
これに対し、メモリセルMCの状態分布が状態“A”状態、“B”状態(電圧V01、V12)であると、センスアンプ4は“0”データと判断する。
【0114】
同様に、3回目のデータ書き込みによって“A”状態、“B”状態、及び“C”状態のいずれかから、“A”状態、“B”状態、“C”状態、及び“D”状態のいずれか状態に遷移したメモリセルMCを例えば電圧Vcgr3で読み出す。メモリセルMCの状態分布が状態“D”(電圧V34)であると、センスアンプ4は“1”データと判断する。
【0115】
これに対し、メモリセルMCの状態分布が状態“A”状態、“B”状態、及び“C”状態(電圧V01、V12、V23)であると、センスアンプ4は“0”データと判断する。
【0116】
<変形例に係る効果>
本実施形態の変型例に係る半導体記憶装置であると、上記(3)、(4)の効果に加え、下記の効果を得ることが出来る。
(5)消費電力を低減することが出来る。
本実施形態の変型例に係る半導体記憶装置によれば、上記説明したように、各回数の書き込み時において“1”データ書き込みを行わない場合には、閾値電圧を変動させない。つまり、上記第1の実施形態に示したように、次の書き込みを行う前に閾値レベルを1つ上に遷移させず、“1”データを書き込み場合にのみ閾値レベルを遷移させる。すなわち、必要がなければ、上記第1の実施形態で説明したように例えば“B”状態や“C”状態などまで閾値レベルを遷移させるための大きな書き込み電圧をメモリセルMCに印加する必要がない。このためメモリセルMCの閾値レベルの変化量が小さく、消費電力を低減することが出来る。
(6)メモリセルMCの特性劣化を防止させることが出来る。
本実施形態の変型例に係る半導体記憶装置によれば、上記図10、図11で説明したように、“1”データ書き込みが必要でない場合には、メモリセルMCの閾値分布をそのまま維持させる。つまり、必要がない場合以外にはメモリセルMCに大きな書き込み電圧Vpgmを印加しない。このため、メモリセルMCへの書き込み回数が減少することから、メモリセルMCの特性が劣化することを防止することが出来る。
【0117】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係るメモリシステムについて説明する。本実施形態のメモリシステムは、上記第1の実施形態及びその変型例で一例として挙げたNAND型フラッシュメモリを、例えばSSD(Solid State Drive)を備えたパーソナルコンピュータ(PC)に適用したものである。
【0118】
<全体構成例>
図12を用いて、本実施形態に係るメモリシステムについて説明する。図12は、本実施形態に係るメモリシステムの内部構成を示した概念図である。図12に示すように、メモリシステム60は、ATAインタフェース(ATA I/F)などのメモリ接続インタフェースを介してパーソナルコンピュータ或いはCPU(Central Processing Unit)コアなどのホスト装置61と接続され、ホスト装置61の外部メモリとして機能する。また、メモリシステム60は、RS232Cインタフェース(RS232C I/F)などの通信インタフェースを介して、デバッグ/製造検査用機器62との間でデータを送受信することができる。
【0119】
メモリシステム60は、上述した不揮発性半導体メモリとしてのNAND型フラッシュメモリNAND型フラッシュメモリ1と、上記第1の実施形態における制御部9に相当し、ホストコントローラとしてのドライブ制御回路63と、揮発性半導体メモリとしてのワークメモリ(DRAM)64と、フューズ65と、電源回路66と、状態表示用LED67と、ドライブ内部の温度を検出する温度センサ68とを備えている。
【0120】
電源回路66は、ホスト装置61側の電源回路から供給される外部直流電源から複数の異なる内部直流電源を生成し、これら内部直流電源をメモリシステム60内の各回路に供給する。また、電源回路66は、外部電源の立ち上がりを検知し、パワーオンリセット信号を生成して、ドライブ制御回路63に供給する。
【0121】
フューズ65は、ホスト装置61側の電源回路とメモリシステム60内部の電源回路66との間に設けられている。外部電源回路から過電流が供給された場合、フューズ65が切断され、内部回路の誤動作を防止する。
【0122】
メモリシステム60は、複数のNAND型フラッシュメモリ1(本実施形態では、一例として4個のNAND型フラッシュメモリ1を示している)を備えており、4個のNAND型フラッシュメモリ1は、4つのチャネル(ch0〜ch3)によってドライブ制御回路63に接続されている。4個のNAND型フラッシュメモリ1は、4つのチャネル(ch0〜ch3)によって並列動作やインターリーブ動作が可能である。
【0123】
ワークメモリ64は、ホスト装置60とNAND型フラッシュメモリ1との間で、データ転送用キャッシュ及び作業領域用メモリなどとして機能する。ワークメモリ64の作業領域用メモリに記憶される内容は、例えばNAND型フラッシュメモリ1に記憶されている各種管理テーブルが、起動時などに展開されたマスターテーブル(スナップショット)、或いは管理テーブルの変更差分であるログ情報などがある。
【0124】
なお、ワークメモリ64の代わりに、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)、PCRAM(Phase-Change Random Access Memory)などの不揮発性ランダムアクセスメモリを使用することも可能である。不揮発性ランダムアクセスメモリを使用する場合、電源切断時に各種管理テーブルなどをNAND型フラッシュメモリ1に退避させる動作の一部又は全部を省略することができる。
【0125】
ドライブ制御回路(ホストコントローラ)63は、ホスト装置60とNAND型フラッシュメモリ1との間でワークメモリ64を介してデータ転送制御を行うとともに、メモリシステム60内の各モジュールを制御する。また、ドライブ制御回路63は、状態表示用LED67にステータス表示用信号を供給するとともに、電源回路66からのパワーオンリセット信号を受けて、リセット信号及びクロック信号をドライブ制御回路63内及びメモリシステム60内の各部に供給する機能も有している。ドライブ制御回路63は、NAND型フラッシュメモリ1に対してホストコントローラの役割を果たす。すなわち上述したように第1の実施形態における制御部9の機能を有する。具体的な機能は、上記第1の実施形態において説明したためここでは省略する。
【0126】
<ワークメモリ64の詳細>
次に図13を用いて上述したワークメモリ64の内部構成例について説明する。図13に示すように、ワークメモリ64は、データバッファ64−1、ページ変換テーブル64−2、ブロック変換テーブル64−3、フリーブロックデータ64−4、及び書き込み情報テーブルを備える。
データバッファ64−1は、データを一時的に保持する機能を有する。
ページ変換テーブル64−2は、図13左中央に示すようにページ毎の論理アドレス及びそれに対応した物理アドレスを保持する。
ブロック変換テーブル64−3は、図13左下に示すようにブロック毎の論理アドレス及びそれに対応した物理アドレスを保持する。
フリーブロックデータ64−4は、必要なデータを自由に格納できる領域である。
書き込み情報テーブル64−5は、上記第1の実施形態において制御部9が有していた情報を保持する。具体的には、ブロックBLKに対する書き込みモード(モード1かモード2かのモード情報)、その時点におけるブロックBLKへの書き込み回数、及び最大上書き可能回数(LMAX)を保持する。この書き込み情報テーブル64−5は、NAND型フラッシュメモリ1に形成されたブロックBLKの数と同数だけ存在する。つまり、本実施形態では、NAND型フラッシュメモリは4つ設けられていることから、書き込み情報テーブル64−5内のエントリー数は4×BLKsだけ存在する。
【0127】
<本実施形態に係る効果>
本実施形態に係るメモリシステムであっても、上記第1の実施形態及びその変形例で得られた効果を奏することが出来る。つまり、上述したように、(1)〜(5)の効果を得ることが出来る。特に本実施形態において一例として挙げたSSDを搭載したPCであるとその効果が顕著に表れる。つまり、PCなどの多くのデータを扱う電子機器であると、一度記憶させたデータへの新しいデータの上書き(更新)がSDTM、MMCなどの記憶媒体よりも頻繁に生じる。つまり、メモリセルMCへのデータ書き込みが頻繁に行われる。また取り扱うデータ量も増加しているのが現状である。現在では、この対策として1つのメモリセルMCに大量のデータが記憶できるよう多値メモリが開発・使用されているが、上記したように使用限度にも限界がある。
【0128】
この状況において、本実施形態に係るメモリシステムであると、消去動作を実行するまでに、同一メモリセルMCに複数回のデータを書き込むことが出来る。このため、新しいデータを書き込む度に消去動作と書き込み動作が同数回行われるメモリセルよりも劣化が生じにくく長持ちするといった効果がある。
【0129】
また更に、本実施形態に係るメモリシステムであると、上記第1の実施形態で説明したように書き込みモードをモード1とモード2とをメモリセルMCの特性に応じて変更させることが出来る。つまり、上記第1の実施形態で説明したように、2ビット(4値)、3ビット(8値)、4ビット(16値)といった多値モードで書き込みを行っていた場合、メモリセルMCの特性、すなわち閾値分布の広がり具合(高電圧側と低電圧側との電圧差)に応じて記憶できる情報量を、例えば3ビットから2ビットへと減らすのではなく、書き込みモードを変更させて、今までの3ビット表現と同数の、“A”状態、“B”状態、“C”状態、“D”状態、“E”状態、“F”状態、“G”状態、及び“H”状態における、最後の“H”状態を減らし、“A”状態〜“G”状態を読み出し電圧Vcgr及び回数データ91の書き込み回数を用いて“0”または“1”データのいずれかを判断するモードに切り替える。これにより、例えメモリセルMCの特性が劣化し、そのメモリセルMCが保持する閾値分布を読み出す分解能が下がってきた場合には、このようにモードを切り替えることで、メモリセルMCのデータ保持量を急激に減らすことがなくなる。
【0130】
<第3の実施形態>
次に第3の実施形態に係る半導体記憶装置について説明する。本実施形態の半導体記憶装置は、上記第1の実施形態及びその変型例で一例として挙げたNAND型フラッシュメモリを、例えば抵抗変化型メモリ(Resistance Random Access Memory:ReRAM)を用いた場合について説明する。つまり、上記第1の実施形態で説明したNAND型フラッシュメモリを構成する周辺回路、例えば、ロウデコーダ2、ドライバ回路3、電圧発生回路8、センスアンプ4、ECC回路5、データ入出力回路6、及び制御部9は本実施形態においても同一構成であるため説明を省略する。
【0131】
<全体構成例>
図14は、本実施形態に係るメモリセルMCとしてReRAMのブロック図である。図14に示すように、メモリセルアレイ1は、第1方向に沿って設けられた複数のビット線BLと、第1方向に直交する第2方向に沿って設けられた複数のワード線WLと、ビット線BLとワード線WLとの交点に設けられた複数のメモリセルMCを備えている。複数のメモリセルMCの集合体によって、マット(MAT)16と呼ばれる単位が構成される。
【0132】
メモリセルMCの各々は、整流素子(ダイオード)DDと可変抵抗素子VRとを含んでいる。ダイオードDDのカソードはワード線WLに接続され、ダイオードDDのアノードは可変抵抗素子VRを介してビット線BLに接続されている。可変抵抗素子VRは例えば、ダイオードDD上に記録層、ヒータ層、及び保護層が順次積層された構造を備えている。
【0133】
メモリセルアレイ1において同一行に配置された複数のメモリセルMCは同一のワード線WLに接続され、同一列にある複数のメモリセルMCは同一のビット線BLに接続されている。またワード線WL、ビット線BL、及びメモリセルMCは、第1、第2方向の両方に直交する第3方向(半導体基板表面に対する垂線方向)に沿って複数設けられる。つまりメモリセルアレイ10は、メモリセルMCが3次元的に積層された構造を有している。この3次元構造におけるメモリセルの各層を、以下ではメモリセルレイヤーと呼ぶことがある。
【0134】
次に、図15を用いて上記説明したメモリセルアレイ1の詳細な構成例について説明する。図15はメモリセルアレイ1のブロック図であり、1つのメモリセルレイヤーのみを示している。
【0135】
図示するように、本実施形態に係るメモリセルアレイ1はマトリクス状に配置された(m+1)×(n+1)個のマット16を備える。m、nはそれぞれ1以上の自然数である。前述したようにマット16の各々には複数のメモリセルMCが含まれ、これらはマトリクス状に配置されている。例えば1つのマット16には、例えば16本のワード線WLと16本のビット線BLが含まれる。すなわち、1つのマット16内には、(16×16)個のメモリセルMCが含まれる。また、メモリセルアレイ10内には、16×(m+1)本のビット線BLが含まれ、16×(n+1)個のワード線WLが含まれる。同一行にある複数のマット16(すなわちワード線WLを共通にするマット16)が、ブロックBLKを構成する。このため、メモリセルアレイ10は、ブロックBLK0〜BLKnにより構成されている。以下、ブロックBLK0〜BLKnを区別しない場合には、単にブロックBLKと呼ぶ。
【0136】
また本実施形態は、1つのメモリセルレイヤーが複数のマット16を備えている場合について説明するが、マット16の数は1つでも良い。また、1つのマット16内に含まれるメモリセルMCの数は、(16×16)個に限定されるものでもない。更に、ロウデコーダ11及びセンスアンプ12はマット16毎に設けられても良いし、複数のマット16間で共通に用いられても良い。以下では後者の場合を例に説明する。
【0137】
図16は、メモリセルアレイ1の一部領域の斜視図であり、上記構成のメモリセルアレイ1が三次元的に構成された様子を示している。図示するように、本例に係るメモリセルアレイ1は、半導体基板の基板面垂直方向(第3方向)に、複数積層(第1のメモリセルレイヤー、第2のメモリセルレイヤー、…)されている。図16の例では、ワード線WL/メモリセルMC/ビット線BL/メモリセルMC/ワード線WL/…の順に形成されているが、ワード線WL/メモリセルMC/ビット線BLの組が、層間絶縁膜を介在して積層されても良い。
【0138】
図17は、上記メモリセルアレイ1の回路図であり、特に1つのメモリセルレイヤーにおける、図2の領域A1に相当する領域を示している。
図示するようにメモリセルアレイ1中には、複数のマット16間を通過するようにして、複数のビット線BLとワード線WLとが形成されている。
【0139】
マット16は、前述の通り16本のビット線BLと16本のワード線BLとを含む。また、上記したように、マット16は(m+1)×(n+1)個だけある。つまり、あるブロックBLKiにはワード線WL(16i)〜WL(16i+15)が形成される。またあるブロックBLKに含まれる複数のマット16の各々には、ビット線BL(16j)〜BL(16j+15)が形成される。但しi=0〜n、j=0〜mである。
【0140】
そして、ビット線BLとワード線WLとの交点には、それぞれメモリセルMCが形成されている。
【0141】
また上記ワード線WLは図示せぬロウデコーダ2に接続される。他方、ビット線BL0〜BLnは、図示せぬセンスアンプ4に接続される。
【0142】
次に、図18を用いて上記メモリセルMCの特性について説明する。図18に示すようにメモリセルMCは、可変抵抗素子VRの抵抗値に応じたデータを保持する。可変抵抗素子VRは、抵抗値が1k〜10kΩである低抵抗状態と、抵抗値が100k〜1MΩである高抵抗状態とを取りうる。
【0143】
高抵抗状態が上記第1の実施形態における、例えば“A”状態、“B”状態、“C”状態、及び“D”状態のいずれかを保持した状態であり、データが書き込まれた状態(プログラムレベル)である。すなわち、例えば100k〜1MΩまでの抵抗値間に、上記“A”状態、“B”状態、“C”状態、及び“D”状態が設定される。この抵抗値に応じた電流がメモリセルMCに流れることになる。
【0144】
低抵抗状態は、上記第1の実施形態における“消去”状態(消去レベル)であり、データが消去された状態である。なお、上記第1の実施形態と同様に、“A”状態と“消去”状態とが同一レベルにあってもよい。
【0145】
次に、図19を用いて上記メモリセルMCが保持するデータについて説明する。図19は、メモリセルMCの抵抗値、その抵抗値によって可変抵抗素子VRに流れる電流、及びその電流及びメモリセルMCへの書き込み回数に応じてメモリセルMCが保持するデータ値の概念図を示したグラフである。
【0146】
上記したようにメモリセルMCは書き込み回数に応じて“A”状態、“B”状態、“C”状態、及び“D”状態のいずれか状態を保持する。図19に示すように、“A”状態を示すR1の抵抗値である場合、この可変抵抗素子VRには電流I1が流れる。“B”状態を示すR2の抵抗値である場合、この可変抵抗素子VRには電流I2が流れる。“C”状態を示すR3の抵抗値である場合、この可変抵抗素子VRには電流I3が流れる。“D”状態を示すR4の抵抗値である場合、この可変抵抗素子VRには電流I4が流れる。これら電流I1〜電流I4は、電流I1>電流I2>電流I3>電流I4を満たす。
【0147】
つまり、例えば書き込みを1回行った場合、メモリセルMCは“A”状態または“B”状態のいずれか抵抗値とされる。このメモリセルMCの可変抵抗素子VRに電流I1が流れる場合、メモリセルMCは“0”データを保持し、電流I2が流れる場合、“1”データを保持するとセンスアンプ4によって判断される。
【0148】
また、例えメモリセルMCの可変抵抗素子VRに電流I2が流れたとしても、メモリセルMCへの書き込みが2回目であった場合、そのデータは“0”データと判断される。他の書き込み回数とその回数に応じて流れる電流値からメモリセルMCが保持するデータの判断方法は同様であることから説明を省略する。
【0149】
次に図21を用いて上記メモリセルMCに印加する書き込み電圧について説明する。上述したようにメモリセルの抵抗値は、書き込み電圧の大きさ、その印加時間(パルス幅)によって変化する。なお、以下では電圧に着目して説明をするが、可変抵抗素子VRに流す電流値を変化させ、その抵抗値を変化させてもよい。
【0150】
図21に示すように、書き込み電圧は電圧Vpgm1〜電圧Vpgm4とされる。例えば電圧Vpgm1をパルス幅w1だけメモリセルMCに印加することで、“A”状態とされ、電圧Vpgm2をパルス幅w1だけメモリセルMCに印加することで、“B”状態とされ、電圧Vpgm3をパルス幅w1だけメモリセルMCに印加することで、“C”状態とされ、電圧Vpgm4をパルス幅w1だけメモリセルMCに印加することで、“D”状態とされる。なお、この電圧Vpgm1〜電圧Vpgm4の値は上記第1の実施形態における書き込み電圧Vpgm1〜電圧Vpgm4と同値でも良いし、異なる値でもよい。
【0151】
またなお、例えば電圧Vpgm1をメモリセルMCに印加するパルス幅をw1よりも長くすることで、メモリセルMCの抵抗値を“B”状態〜“D”状態のいずれかにしてもよい。
【0152】
<本実施形態に係る効果>
本実施形態に係る半導体記憶装置であっても、上記第1の実施形態及びその変型例で得られた効果を奏することが出来る。すなわち、本実施形態であっても上記(1)〜(6)までの効果を得られる。つまり、本実施形態ではメモリセルMCが有する可変抵抗素子VRの抵抗値によって複数の閾値分布を取る。この可変とされる抵抗素子にある電圧を印加し、この結果メモリセルMCに流れる電流をセンスアンプ4が検知することで、メモリセルMCの保持データを認識する。本実施形態であると遷移する閾値分布のレベルが上記第1の実施形態及びその変型例と同様、1レベルまたは2レベルしか遷移しないことから、可変抵抗素子VRに印加する書き込み電圧が小さくて済み、消費電力の低減、その書き込み時間の高速化が期待できる。
【0153】
なお、上記第1の実施形態及びその変型例において“消去”状態と“A”状態とが同一の閾値電圧であってもよい。この場合、“A”状態が負電圧とされる。
【0154】
この場合、上記第1の実施形態の図5においてステップS3の動作を省略することが出来る。なぜなら、“消去”状態と“A”状態とが同一閾値であるため、書き込み電圧Vprm1をメモリセルMCに転送して“消去”状態から“A”状態に遷移させる必要がないからである。
【0155】
なお、本願発明は上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出されうる。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出されうる。
【符号の説明】
【0156】
1…メモリセルアレイ、2…ロウデコーダ、3…ドライバ回路、8…電圧発生回路、4…センスアンプ、5…ECC回路、6…データ入出力回路、9…制御部、7…ソースSLドライバ、15…NANDストリング、8−0…リミッタ回路、8−1…チャージポンプ、16…MAT、60…メモリシステム、61…ホスト装置、62…デバック/製造検査用機器、63…ドライブ制御回路、64…ワークメモリ、64−1…データバッファ、64−2…ページ変換テーブル、64−3…ブロック変換テーブル、64−4…フリーブロックデータ、64−5…書き込み情報テーブル、65…ヒューズ、66…電源回路、67…LED、68…温度センサ、81…回数データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読み出しレベルに応じて“0”または“1”いずれかのデータを保持可能なメモリセルが行及び列方向に沿って形成されたメモリセルアレイと、
前記メモリセルに連続して前記データが書き込まれた回数N(N:0以上の整数)をカウントし、その回数に応じて可変な書き込み電圧及び読み出し電圧を前記メモリセルに転送する制御部と、
前記書き込み電圧を発生し、前記書き込み電圧を用いて前記メモリセルに少なくとも“1”ビットデータを書み込み、前記読み出し電圧を発生し、前記メモリセルから少なくとも“1”ビットデータを読み出す電圧発生回路と
を具備し、
前記メモリセルに前記回数N回目(≧2)の書き込み要求があると、
前記制御部は、前記電圧発生回路に(N−1)回目に応じた前記読み出し電圧を発生させ、この読み出し電圧によって前記メモリセルから前記“1”ビットデータを読み出し、
前記書き込み要求に応じた前記データに基づき、前記(N−1)回目の読み出しで読み出された閾値電圧より高い閾値電圧に遷移させる前記書き込み電圧を前記電圧発生回路に発生させ、
前記メモリセルへの前記回数N回目(≧2)の書き込み要求が規定値に達していると、前記制御部は前記メモリセルが保持する前記データを消去させる
ことを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項2】
読み出しレベルに応じて“0”または“1”いずれかのデータを保持可能なメモリセルが行及び列方向に沿って形成されたメモリセルアレイと、
前記メモリセルに連続して前記データが書き込まれた回数N(N:0以上の整数)をカウントし、その回数に応じて可変な書き込み電圧及び読み出し電圧を前記メモリセルに転送する制御部と、
前記書き込み電圧を発生し、前記書き込み電圧を用いて前記メモリセルに少なくとも“1”ビットデータを書み込み、前記読み出し電圧を発生し、前記メモリセルから少なくとも“1”ビットデータを読み出す電圧発生回路と
を具備する半導体記憶装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記回数Nが規定値に達した場合、前記メモリセルが保持する前記データを消去させる
ことを特徴とする請求項2記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記メモリセルにm回目(m:2以上の自然数)の書き込み要求があると、
前記制御部は、前記電圧発生回路に(m−1)回目に応じた前記読み出し電圧を発生させ、この読み出し電圧によって前記メモリセルから前記“1”ビットデータを読み出し、
前記(m−1)回目の読み出し電圧よりも前記メモリセルの閾値電圧が小さい場合、前記メモリセルの前記閾値電圧を前記(m−1)回目の読み出し電圧よりも高い閾値電圧に遷移させた後、前記メモリセルに前記m回目の書き込みを実行する
ことを特徴とする請求項3記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記メモリセルは、閾値電圧の低い方から第1状態、第2状態、及び第3状態の順で互いに離隔されたいずれか1つの状態分布に遷移可能とされ、
前記制御部は、前記メモリセルに連続して前記データを書き込むことの出来る最大上書き回数を更に保持し、
前記制御部は、前記前記第1状態の上側閾値電圧と前記第2状態の下側閾値電圧との電位差、または前記第2状態の上側閾値電圧と前記第3状態の下側閾値電圧との電位差に応じて前記最大上書き回数を1つ減算する
ことを特徴とする請求項2記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記電圧発生回路は、前記書き込み電圧として第1電圧、この第1電圧よりも大きな第2電圧、及び第2電圧よりも大きな第3電圧を発生し、且つ前記読み出し電圧として前記第1状態の上側閾値電圧よりも大きく前記第2状態の下側閾値電圧よりも小さな第4電圧、及び前記第2状態の上側閾値電圧大きく前記第3状態の下側閾値電圧よりも小さな第5電圧をそれぞれ発生させ、
前記制御部は、新たなデータ書き込みがあると前記カウントの値に基づき前記第4電圧または前記第5電圧のいずれか電圧を前記メモリセルに転送することで前記メモリセルが保持する“0”または“1”いずれかの前記“1”ビットデータを読み出す
ことを特徴とする請求項2記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
前記メモリセルにm回目(m:2以上の自然数)の書き込み要求があると、
前記制御部は、前記電圧発生回路に(m−1)回目に応じた前記読み出し電圧を発生させ、この読み出し電圧によって前記メモリセルから前記“1”ビットデータを読み出し、
前記書き込み要求に応じた前記データに基づき、前記(m−1)回目の読み出しで読み出された閾値電圧より高い閾値電圧に遷移させる前記書き込み電圧を前記電圧発生回路に発生させる
ことを特徴とする請求項3記載の半導体記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−69199(P2012−69199A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212719(P2010−212719)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】