半導体集積回路装置の製造方法
【課題】デバッグ等のために、完成した半導体集積回路装置の配線をFIB加工を用いて事後的に修正する場合がある。修正配線は配線として最適に材料を使用すべきである。しかし、たとえば、比抵抗の低い金属は、比較的その後の検査・試験環境に弱い等の問題がある。
【解決手段】本願発明は、ほぼ完成した半導体集積回路装置の配線を変更するために、FIB加工を用いて半導体集積回路チップの配線を修正するに当たり、半導体集積回路チップの主面上の絶縁膜に金属修正配線をFIBCVDにより形成後、その上を覆うように、金属修正配線よりも耐酸化性または耐腐食性の高い金属被覆膜を、FIBCVDにより形成するものである。
【解決手段】本願発明は、ほぼ完成した半導体集積回路装置の配線を変更するために、FIB加工を用いて半導体集積回路チップの配線を修正するに当たり、半導体集積回路チップの主面上の絶縁膜に金属修正配線をFIBCVDにより形成後、その上を覆うように、金属修正配線よりも耐酸化性または耐腐食性の高い金属被覆膜を、FIBCVDにより形成するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路装置(または半導体装置)の製造方法における選択的な導電膜形成技術に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
日本特開2000−54116号公報(特許文献1)には、有機銅化合物の蒸気とFIB(Focused Ion Beam)を用いたCVD(Focused Ion Beam Chemical Vapor Deposition)すなわちFIBCVD(Chemical Vapor Deposition)または集束イオン・ビームCVDによって、半導体デバイス上に、金属パターン膜を形成する技術が開示されている。
【0003】
日本特開2007−129096号公報(特許文献2)には、液体ソース等をペルチエ素子を用いて室温より高温・低温の両方に処理状況に合わせて調温するFIBCVDシステムが開示されている。また、ここには、同システムを用いて、ビアをタングステン等でFIBCVDにより埋め込んだ後、デバイス表面に繰り返し電気伝導性の良好な金又は銅等の金属膜をFIBCVDにより形成する技術が開示されている。
【0004】
日本特開2006−113221号公報(特許文献3)には、集束イオン・ビームCVD等を用いたマスクの修正技術が開示されている。
【0005】
日本特開平5−82489号公報(特許文献4)には、液体ソースを用いたCVDに関して、液体ソース吹き出し部に超音波素子を用いる技術が開示されている。また、ここには、粉体ソースを用いたCVDに関して、粉体ソース容器に超音波素子を設置する技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−54116号公報
【特許文献2】特開2007−129096号公報
【特許文献3】特開2006−113221号公報
【特許文献4】特開平5−82489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
FIB加工装置の特徴として、(1) 数10〜数100nmの微細なビーム照射スポット径が得られ、(Ga)イオンのスパッタリング作用により、ほとんどの材質を表面及び裏面から加工可能。(2)エッチングガス、CVDガス雰囲気中でのビーム照射により、選択的なエッチング及び導電膜、絶縁膜の成膜が可能等が上げられる。その特徴を利用して、現在、半導体装置の配線修正(配線切断、配線接続)、半導体装置の不良解析(回路変更、測定用パッド形成)に用いられている。
【0008】
近年、半導体装置の高速化により、配線接続抵抗の低減が必要である。しかしながら、現状の導電膜材料ガス(CH3C5H4)(CH3)3Pt=メチル・シクロペンタ・ジエニル・トリメチルプラチナ、Mo(CO)6=モリブデン・カルボニル、あるいはW(CO)6=タングステン・カルボニル等を用いた場合、それらに含まれる炭素や酸素が混入して金属との化合物が生成されるため、抵抗低減化は困難である(第14図に示すように、バルク値と比較して2〜3桁高い)。そのためバルク比抵抗の低い金属を配線材料に用いた検討が進められている。
【0009】
FIBCVDでチップ上に配線を形成後、半導体装置を基板に実装する場合、不活性ガス雰囲気中で行われれば問題は生じないが、設備状況によっては大気雰囲気中で行われる可能性がある。この時、上記に示すCu配線では酸化により抵抗が増加し、配線としての役割を果たせない場合がある。現状の対応として、TEOS(=テトラ・エトキシ・オルソ・シリケート:Si(OC2H5)4)等を用いて配線接続上にSiO2系絶縁膜を被覆する方法があるが、(1)縁膜形成開始時、FIBのエネルギによって活性化された絶縁膜材料ガスの酵素が、導電膜金属と 結合・酸化して高抵抗化する。(2)プロセスガスのクロスコンタミを防止するために絶縁膜ガス使用前後で一定時間、処理室内を高真空排気するガス切換作業が必要であり、その分、加工時間が増大する等の問題点がある。
【0010】
また、不良解析において、パッケージされた半導体装置を部分的に開封後、パッド形成や、半導体装置内の配線切断・接続を行った後、電子ビームテスタやIR-OBIRCH装置等を用いて解析する。さらに詳細な解析を行う場合、パッケージを全開封して半導体装置を取り出す。このパッケージの部分開封や全開封には一般的に薬品(発煙硝酸)を用いている。上記部分開封後に設けたパッドや配線はこの発煙硝酸に耐える必要があるが、前述のMo、W、Cuは酸化・腐食され、電気的な導通が得られなくなることがわかった。
【0011】
更に、電子ビーム(EB)テスタ用のパッドのように、金属針を使用しないのであれば、膜の機械的強度は特に問題にならない。しかしながら、不良解析方法によっては、パッドに金属針を押圧するため機械的強度を確保する必要がある。例えばCu膜では強度が低いため、金属針を軽く押し当てただけで削れてしまい、電気的導通が取れなくなる場合がある。
【0012】
また、FIBで配線修正した半導体装置を樹脂で封止して搭載製品の動作確認を行う場合がある。この樹脂封止の際、FIBで接続した配線がCuのように軟いと、レジン中のフィラーによって削られて断線を生ずる場合がある。
【0013】
本発明の目的は、高信頼度のFIB加工方法または、それに好適なFIB加工装置を提供することである。
【0014】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0016】
すなわち、本願発明は、ほぼ完成した半導体集積回路装置の配線を変更するために、FIB加工を用いて半導体集積回路チップの配線を修正するに当たり、半導体集積回路チップの主面上の絶縁膜に金属修正配線をFIBCVDにより形成後、その上を覆うように、金属修正配線よりも耐酸化性または耐腐食性の高い金属被覆膜を、FIBCVDにより形成するものである。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0018】
すなわち、修正配線は配線として最適に材料を使用して、その上をその後の仕様環境に耐える別の金属部材で被覆するので、電気的特性を確保しながら、その後の試験又は仕様環境に耐えるものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
〔実施の形態の概要〕
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。
【0020】
1.以下の工程を含む半導体集積回路装置の製造方法:
(a)実質的に完成した半導体集積回路チップの配線をFIB加工により変更する工程、
ここで、前記工程(a)は以下の下位工程を含む:
(a1)前記半導体集積回路チップの主面上の絶縁膜に、FIB切削により、第1の配線ノードに到達する第1のスルーホールを形成する工程;
(a2)前記半導体集積回路チップの主面上の絶縁膜に、FIB切削により、第2の配線ノードに到達する第2のスルーホールを形成する工程;
(a3)前記第1のスルーホール及び前記第2のスルーホールを埋め込み、前記主面上で前記第1の配線ノード及び前記第2の配線ノードを電気的に接続する金属修正配線を、FIBCVDにより形成する工程;
(a4)前記主面上で前記金属修正配線を被覆する前記金属配線よりも耐酸化性または耐腐食性の高い金属被覆膜を、FIBCVDにより形成する工程。
【0021】
2.前記1項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記金属配線は前記金属被覆膜よりもバルク比抵抗が低い。
【0022】
3.前記1または2項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記金属被覆膜は前記金属配線よりもモース硬度が高い。
【0023】
4.前記1から3項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記金属配線はモリブデン、タングステン、アルミニウム、金または銅を主要な成分として含む。
【0024】
5.前記1から4項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記金属被覆膜はモリブデン、タングステン、クロム、白金または金を主要な成分として含む。
【0025】
次に、本願において開示される発明のその他の実施の形態について概要を説明する。
【0026】
6.以下の工程を含む半導体集積回路装置の不良解析方法:
(a)実質的に完成した半導体集積回路チップに、FIB加工により、解析用パッドを形成する工程、
ここで、前記工程(a)は以下の下位工程を含む:
(a1)前記半導体集積回路チップの主面上の絶縁膜に、FIB切削により、第1の配線ノードに到達する第1のスルーホールを形成する工程;
(a2)前記第1のスルーホールを埋め込み、前記第1の配線ノードに電気的に接続して前記主面上へ引き出す引き出し配線および、前記主面上において、前記引き出し配線を覆い、それと連結した前記解析用パッドを構成する金属膜を、FIBCVDにより形成する工程;
(a3)前記主面上で前記解析用パッドを被覆する前記金属膜よりも耐酸化性または耐腐食性の高い金属被覆層を、FIBCVDにより形成する工程。
【0027】
7.前記6項の半導体集積回路装置の不良解析方法において、前記金属膜は前記金属被覆層よりもバルク比抵抗が低い。
【0028】
8.前記6または7項の半導体集積回路装置の不良解析方法において、前記金属被覆層は前記金属膜よりもモース硬度が高い。
【0029】
9.前記6から8項のいずれか一つの半導体集積回路装置の不良解析方法において、前記金属膜はモリブデン、タングステン、アルミニウム、金または銅を主要な成分として含む。
【0030】
10.前記6から9項のいずれか一つの半導体集積回路装置の不良解析方法において、前記金属被覆層はモリブデン、タングステン、クロム、白金または金を主要な成分として含む。
【0031】
11.前記6から10項のいずれか一つの半導体集積回路装置の不良解析方法において、前記解析用パッドには、プローブ針すべりを防止機構が設けられている。
【0032】
12.前記11項の半導体集積回路装置の不良解析方法において、前記プローブ針すべりを防止機構は、前記金属膜と同一の部材により形成されている。
【0033】
13.前記11項の半導体集積回路装置の不良解析方法において、前記プローブ針すべりを防止機構は、前記金属被覆層と同一の部材により形成されている。
【0034】
14.前記11項の半導体集積回路装置の不良解析方法において、前記プローブ針すべりを防止機構は、前記金属膜の前記解析用パッドの一部に設けられた凹部により構成されている。
【0035】
15.前記6から10項のいずれか一つの半導体集積回路装置の不良解析方法において、更に以下の下位工程を含む:
(a4)前記解析用パッドまたは金属被覆層の周辺不要部分を、コア部分をFIBでスキャンすることなく、FIB加工により除去する工程。
【0036】
16.以下を含むFIB加工装置:
(a)被処理物を収容して、FIB加工する真空処理室;
(b)前記真空処理室内に反応ガスを噴出すように設けられたノズル;
(c)前記ノズルと配管系を介して連結された液体ソース収納容器;
(d)前記液体ソース収納容器に設けられた超音波振動装置。
【0037】
17.前記16項のFIB加工装置において、更に以下を含む:
(e)前記ノズルと前記液体ソース収納容器の間の前記配管系に設けられた気化器。
【0038】
〔本願における記載形式・基本的用語・用法の説明〕
1.本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクションに分けて記載する場合もあるが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しを省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
【0039】
2.同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、A以外の要素を主要な構成要素のひとつとするものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。たとえば、「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。同様に、「酸化シリコン膜」と言っても、比較的純粋な非ドープ酸化シリコン(Undoped Silicon Dioxide)だけでなく、FSG(Fluorosilicate Glass)、TEOSベース酸化シリコン(TEOS-based silicon oxide)、SiOC(Silicon Oxicarbide)またはカーボンドープ酸化シリコン(Carbon-doped Silicon oxide)またはOSG(Organosilicate glass)、PSG(Phosphorus Silicate Glass)、BPSG(Borophosphosilicate Glass)等の熱酸化膜、CVD酸化膜、SOG(Spin ON Glass)、ナノ・クラスタリング・シリカ(Nano-Clustering Silica:NSC)等の塗布系酸化シリコン、これらと同様な部材に空孔を導入したシリカ系Low-k絶縁膜(ポーラス系絶縁膜)、およびこれらを主要な構成要素とする他のシリコン系絶縁膜との複合膜等を含むことは言うまでもない。
【0040】
3.同様に、図形、位置、属性等に関して、好適な例示をするが、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、厳密にそれに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0041】
4.さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
【0042】
5.「ウエハ」というときは、通常は半導体集積回路装置(半導体装置、電子装置も同じ)をその上に形成する単結晶シリコンウエハを指すが、エピタキシャルウエハ、絶縁基板と半導体層等の複合ウエハ等も含むことは言うまでもない。
【0043】
6.「FIB加工」技術は、「FIB」すなわち集束イオン・ビームを構成するガリウム・イオン等のスパッタ作用を利用した「FIBスパッタリング」およびそれと反応性のガスを用いた「FIBアシスト・エッチング」等を含む「FIB切削」、ならびに、堆積性の反応ガスを併用した「FIBCVD」等からなる。「FIBCVD」はメタルCVDと絶縁膜CVDに大別される。「FIBスパッタリング」は加工精度は非常に高いが、加工速度は比較的遅い。一方、「FIBアシスト・エッチング」は加工速度が比較的速いというメリットがある。従って、穴あけ、不要膜除去等のプロセスでは、一般に、これらの方法を併用する。
【0044】
〔実施の形態の詳細〕
実施の形態について更に詳述する。各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
【0045】
1.本実施の形態のアウトラインおよびFIB加工装置の説明(主に図13および図15)
図13は、本発明の実施の形態のFIB加工法(または半導体集積回路装置の製造方法)に用いるFIB加工装置の全体構成を示す装置模式断面図である。図15は本発明の実施の形態のFIB加工に関する各種金属材料の性質・ソース物質をまとめた図表である。これらに基づいて、本発明の実施の形態のFIB加工法ならびに加工装置のアウトラインを説明する。
【0046】
一実施形態のFIB加工法(または半導体集積回路装置の製造方法)では、半導体装置すなわち半導体チップの主面上に形成するパッドや配線を2層構造とした。即ち、パッド及び配線本来に求められる抵抗値を第1の層で確保し、その上に耐薬品性あるいは機械的強度に優れた金属膜を第2層として形成する。
【0047】
一般に、修正配線、または不良解析用パッドを作製する際、現状1種類の導電膜材料で行っていることが多い。しかしながら、汎用的に使える導電膜材料は無いため、1種類の導電膜材料では配線抵抗の低減、パッドの強度向上は困難である。そこで、図15に示すように、針当てパッド表面形成には、Pt,Mo,W,Cr等の材料硬度の高い導電膜材料を、高速動作が要求されるLSIの配線形成には、バルクの比抵抗が低いAu,Cu,Alなどの導電膜材料を使用し、その加工目的にあった配線材料を選択することで、配線抵抗の低減及び金属針に強いパッド形成が可能となる。
【0048】
高速化が進むLSIにおいて、接続抵抗の低減は必須である。そこで、修正配線材料として上記に示した通りCu等の低抵抗導電膜材料を使用することは有効な手段であるのだが、材質的に酸化性が強く、たとえば、LCDドライバーチップの液晶表示パネルへの実装時のリフロー等のように、大気雰囲気中に露出された状態では抵抗が増加してしまう。対策として、SiO2膜を配線上に形成する方法もあるが、加工室の材料ガス入れ替え作業による加工時間の増大、材料ガスに含まれるO2による表面層酸化により高抵抗化する等の問題点がある。そこで、低抵抗導電膜配線(金、銅、アルミニウム、モリブデン、タングステン)上に耐酸化性、耐腐食性に強い導電膜(Cr、Pt)を被膜することで、酸化・腐食を防ぐと共に、同種類の材料ガスを使用することからガスの切換作業がいらないため、加工TAT効率を向上させることが可能である。後の処理で発煙硝酸等の強酸化性の雰囲気を使用するものでは、表面を白金や金で被覆することが有効である。大気中の酸化防止では、モリブデン、タングステン、クロム等も有効であるが、発煙硝酸等の強酸化性の雰囲気ではこれらの金属も腐食する。
【0049】
FIB加工法による配線修正等を良好な状態で実施するためには、材料ガス供給機構の見直しが必要である。配線修正等を低抵抗化するための導電膜材料ガスは熱的に不安定であるため、現在のような、温度制御が難しいガスシリンダ加熱装置(ヒータ)では、長期間使用することが出来ない。また、供給されるガス量を増やし、加工部の更なる低抵抗化を行うため、以下に示すようなガス供給機構に変更する必要がある。
【0050】
そのため、ガスシリンダに液体ガス材料を液滴化し易くするために加振機構を設ける。また、ガスシリンダの温度調整機構には通電の極性を変えることで、加熱・冷却変更可能なペルチェ素子を用いる。耐酸化性、耐腐食性の弱い導電膜に、耐酸化性、耐腐食性の強い導電膜を被服することにより、高信頼性配線の形成を可能とする。また、同種類の金属材料ガスを使用することにより、加工室内の材料ガスの交換作業が必要でなくなるため、絶縁膜をコーティングするよりも、短TATでFIB加工が可能となる。
【0051】
以下に、本実施形態のFIB加工に使用するFIB加工装置の装置例を説明する。図13に示すように、装置の主要部は、架台80上に除震機構79を介して設けられている。FIB光学系75は、イオンビームを発生・集束・走査する部分であり、加速電圧/照射電流/走査条件等はその制御系により設定変更可能である。二次粒子検出器76は、FIB照射により試料から発生した二次電子/二次イオンを検出し、制御系にてFIB走査と同期させた二次電子像/二次イオン像をモニタ上に表示する。ガス供給機構としては、FIBアシストエッチング時のエッチングガス、FIBアシストデポジション時のCVDガスといったプロセスガスをFIB加工部に供給する手段があり、ガス発生機構64とノズル駆動機構63とノズル52から成る。処理室88は、FIB加工を行うためのもので、上部にFIB光学系75、二次粒子検出器76、ガス供給機構を設け、内部には試料85を固定した試料台86を搭載し、XYZ方向に移動可能なステージ87を設けている。側面にゲートバルブ77を介して試料交換室78を設けており、試料台86ごと試料の交換を行う。排気手段84は、処理室88及び試料交換室78の排気を行うもので、バルブ82,83による配管系81の切換により個別排気可能である。
【0052】
基本的な加工手順は以下のとおりである。すなわち、
(1)試料導入:リークガス供給機構により試料交換室を大気圧までリークを行い、試料を試料交換室の搬送機構に固定する。その後交換室を排気し、所定の真空度に達したら、ゲートバルブを開け、試料を処理室に搬送する。試料搬送後、ゲートバルブを閉じる。(2)FIB立ち上げ:所定の加速電圧及び照射電流が得られるよう、設定・調整を行う。
(3)位置あわせ:モニタ上の二次電子像/二次イオン像を観察しながら、加工位置を探し出す。
(4)FIB加工:加工目的に応じたプロセスガスを供給するノズルを加工位置近傍に接近させ、加工寸法、走査速度等の加工条件を設定し、プロセスガス雰囲気中でFIB加工を行う。
【0053】
2.本実施の形態のFIB加工手順の全体説明(主に図1から3)
図1は本発明の実施の形態のFIB加工法(または半導体集積回路装置の製造方法)の全体構成を示すブロックフロー図である。図13に示すFIB加工装置に本フローの実行機能を組み込むことで、目的に応じた成膜が半自動的に実行されることから、作業者の負担を軽減したインテリジェンスなFIB加工装置となる。図2は本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の不良解析方法における解析用パッド形成に関するFIB加工法フローを示すデバイス見取り図である。図3は本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における修正配線形成に関するFIB加工法フローを示すデバイス見取り図である。本発明は、半導体装置あるいはフォトマスク等に高信頼度な配線、パッドの形成及び遮光のための金属パターン膜を追加形成するための方法に関するものである。デバイスの配線変更、不良解析あるいはフォトマスクの欠陥リペア及びパターン変更等に利用されるものである。これらの図に基づいて、本実施の形態のFIB加工手順の全体の流れを説明する。
【0054】
図1または図2に示すように、図13に示すFIB加工装置のモニタ画面上(図1のステップ101)に表示された加工条件設定ウィンドウで、まず、パッド形成か修正配線形成か選択する(図1のステップ102)。以下、図1において、パッド形成を選択した場合を説明する。
(1)加工位置をモニタ画面上に表示後、パッド接続位置を指定し、接続穴寸法を設定後、被加工部に絶縁膜用エッチングガス(例:XeF2)53aをノズル52から吹きつけ、イオンビーム51による接続穴3aの加工を開始する(図1のステップ103)。2次粒子像を観察し、半導体装置1の内部配線2aが充分露出した時点でFIB加工を止める。(第2図(a))
(2)形成した接続穴に対して穴埋め寸法設定後、ノズル52から低抵抗材料ガス(例えば、(O2C5HF6)Cu(CH3)3SiCH、(CH3)2Au(O2C5H4F3)等といったFIB照射51によりCuやAuを析出するガス53bを吹きつけ、穴埋めを開始する(図1のステップ104)。プラグ4aの上端が埋め込みが穴の開口部にほぼ達した時点で穴埋めを停止する。(第2図(b))
(3)パッド形成寸法を設定すると共に、予めパッド形成寸法及びFIB照射条件から求めておいた、パッド形成としての成膜時間を確認後、再びノズル52から低抵抗金属用材料ガス53bを吹きつけ、パッド形成を開始する(図1のステップ105)。設定した成膜時間に達したらFIB照射及び材料ガス供給を停止し、パッド5aの形成を終了する。(第2図(c))複数のパッドを形成する場合は、上記図2(a)〜(c)の手順を複数回繰り返す。全てのパッド形成を終えたら、この半導体装置が後の工程で発煙硝酸の薬品を用いた開封処理を行うか否かを加工条件ウィンドウで選択する(図1のステップ106)。
【0055】
更に図1において、開封処理有りを選択した場合は、耐薬品性および機械的強度の高い金属(例えば、Pt)を保護膜として、上記工程で形成したパッドに被覆する(図1のステップ107)。一方、開封処理無しを選択した場合、金属針の押圧に耐える機械的強度の高い金属(例えば、Cr、Mo、W)を被覆する(図1のステップ108)。
【0056】
前記保護膜形成手順は、パッド5aを包含する領域を保護膜形成領域として設定し、予め保護膜形成寸法およびFIB照射条件から求めておいた保護膜形成としての成膜時間を確認後、保護膜材料に対応した材料ガス(例えば、保護膜がPtの場合(CH3C5H4)(CH3)3Pt))53cを吹き付け、保護膜形成を開始する。設定した成膜時間に達したらFIB照射および材料ガス供給を停止し、保護膜5bの形成を終了する。(第2図(d))以上の工程により、半導体装置表面には、低抵抗で高信頼度なパッドが形成されたこととなる。
【0057】
次に図1において、配線接続を選択した場合について、説明する。パッド形成の場合と同様に、対象となる配線2b(第1の配線ノード)の配線接続位置を指定し、接続穴寸法を設定後、被加工部に絶縁膜用エッチングガス53aを吹き付け、接続穴3b(第1のスルーホール)の加工(FIB切削)を開始する(図1のステップ109)。2次粒子像から半導体装置内配線が十分に露出した時点でFIB加工を停止する。配線接続対象のもう一方の配線2a(第2の配線ノード)上の絶縁膜にも接続穴3a(第2のスルーホール)の加工(FIB切削)を行う(第3図(a))。
【0058】
次に、図1において、加工条件設定ウィンドウ上で配線接続が低抵抗を必要とするか否かを選択する(図1のステップ110)。まず、図1において低抵抗接続を必要とする場合を説明する(図1のステップ111)。パッド形成の場合と同じように、図3に示すように、接続穴に対して穴埋め寸法を設定後、ノズル52から低抵抗金属用材料ガス53bを吹き付け穴埋めを開始する(図1のステップ112)。接続穴3bの開口部に埋め込みがほぼ達した時点で穴埋めを停止する。もう一方の半導体装置配線上接続穴部3aにも同じ手順で穴埋めを行う。(第3図(b))次に、2つの接続穴を含むように配線形成寸法を設定すると共に、予め、配線形成寸法およびFIB照射条件から求めておいた、配線抵抗に対する成膜時間を確認後、再びノズル52から低抵抗金属用材料ガス53bを吹き付け、配線形成を開始する。設定した成膜時間に達したらFIB照射および材料ガス供給を停止し、配線形成を終了する。(第3図(c))以上の工程により、2つの接続穴内および接続穴間には、AuあるいはCu等の低比抵抗金属が充填・成膜されるため、低抵抗接続6a(金属修正配線)が得られる。配線接続終了後、当該半導体装置の以後の処理が下記の何れかに該当する場合は、処理に対応した保護膜(金属被覆膜)を被覆する(第3図(d))。非該当の場合は、以後の保護膜形成は無しで終了となる(図1のステップ121)。
【0059】
次に、図1において、大気雰囲気中でのリフロー処理(図1のステップ114)あるいは開封処理(図1のステップ115)を行う場合について説明する。配線形成後の半導体装置に大気雰囲気中でのリフロー処理を行う場合には配線6aの酸化防止処理を行う必要があり、開封処理を行う場合には薬品による腐食を防止する必要があることから、耐薬品性の高い金属(例えば、Pt)を保護膜6bとして上記工程で形成した配線に被覆する(図1のステップ117)。保護膜形成手順は、パッドへの保護膜形成と同様に、上記工程で形成した配線を包含する領域を保護膜形成領域として設定し、予め保護膜形成寸法およびFIB照射条件から求めておいた、保護膜形成としての成膜時間を確認後、保護膜材料に対応した材料ガス(例えば、保護膜がPtの場合、(CH3C5H4)(CH3)3Pt))53cを吹き付け、保護膜6bの形成を開始する。設定した成膜時間に達したらFIB照射および材料ガス供給を停止し、保護膜形成を終了する。
【0060】
更に、図1において、レジンによる封止処理を行う場合について説明する。その表面に配線を形成した半導体装置をレジンで封止する場合(図1のステップ116)、レジン中のフィラーで配線が削られないよう、機械的強度の高い保護膜で被覆する(図1のステップ118)。この場合の保護膜形成手順も上記の保護膜形成と同様に、上記工程で形成した配線を包含する領域を保護膜形成領域として設定し、予め保護膜形成寸法およびFIB照射条件から求めておいた、保護膜形成としての成膜時間を確認後、保護膜材料に対応した材料ガス(Cr(CO)6、W(CO)6、Mo(CO)6、(CH3C5H4)(CH3)3Pt、等)を吹き付け、保護膜形成を開始する。設定した成膜時間に達したらFIB照射および材料ガス供給を停止し、保護膜形成を終了する。
【0061】
図1において、低抵抗接続を必要としない場合について説明する。加工条件設定ウィンドウ上で、配線接続(図1のステップ119および120)を終了した後に当該半導体装置が下記の何れかで処理されるか否かを選択する。処理を行う場合は、下記の通り、処理に対応した材料で配線を形成する。非該当の場合は、任意の材料で穴埋めおよび配線形成を行う(図1のステップ121)。更に図1において、大気雰囲気中でのリフロー処理あるいは開封処理を行う場合(低抵抗接続は必要でなく)について説明する。大気雰囲気中でリフロー処理を行う場合の配線には酸化されにくい材料を選ぶ必要があり、開封処理を行う場合には薬品で腐食されにくい材料を選ぶ必要があることから、PtあるいはCrで穴埋めおよび配線形成を行うこととし、材料ガスに(CH3C5H4)(CH3)3Pt、(C2H5C5H4)(CH3)3Pt、Cr(CO)6等)を用いる。穴埋めおよび配線形成手順に関しては、上記と同じである。同様に、図1において、レジンによる封止処理を行う場合について説明する。半導体装置をレジンで封止する場合、レジン中のフィラーで表面に形成した配線が削られないよう、機械的強度の高い材料を選ぶ必要があることから、PtあるいはCr,Mo,Wで穴埋めおよび配線形成を行うこととし、材料ガスに(CH3C5H4)(CH3)3Pt、(C2H5C5H4)(CH3)3Pt、Cr(CO)6 、Mo(CO)6、 W(CO)6等を用いる。穴埋めおよび配線形成手順に関しては、上記と同じである。
【0062】
以上の工程により、半導体装置表面には、所望の抵抗を有する高信頼度な配線が形成されたこととなる。
以上のように、本発明を使用すれば、低抵抗で、耐酸化性、耐腐食性に強い、高信頼度な配線形成が可能である。また絶縁膜をコーティングするのに比べ、加工室の排気を必要としないので解析TATの向上が図れる。
【0063】
3.本実施の形態のFIB加工によるプローブ針すべり止め機構の説明(主に図4から8)
図4は本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の不良解析方法における解析用パッド形成に関するFIB加工法フローの他の例(プローブ針すべり防止機構)を示すデバイス見取り図である。図5は図4を説明するための同図(c)および(d)断面図である。図6は本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の不良解析方法における解析用パッド形成に関するFIB加工法フローの更に他の例(プローブ針すべり防止機構)を示すデバイス見取り図である。図7は本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の不良解析方法における解析用パッド形成に関するFIB加工法フローの更に他の例(凹部によるプローブ針すべり防止機構)を示すデバイス上面図および断面図である。図8は本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の不良解析方法における解析用パッド形成に関するFIB加工法フローの更に他の例(囲みまたはガイドバーによるプローブ針すべり防止機構)を示すデバイス見取り図である。これらに基づいて、FIB加工によるプローブ針すべり止め機構の説明を行う。
【0064】
図5(a)に示すように、針当て測定を行う場合、金属針54を上記で作製したパッド5bに押圧して測定を行う。しかしながら、パッド表面には凹凸が少ないため、パッドが大きければ問題ないが、パッドが小さい場合、金属針54の押し付けが強すぎると針すべりを起こし、金属針54がパッド5bから外れてしまい、絶縁膜8の表面に移動するため、コンタクトが取れない場合がある。その対策として、第4図に示すように、パッド形成方法と同様に穴あけ(第4図(a))、パッド形成(第4図(b))、金属保護膜形成(第4図(c))を行った後、金属保護膜5b上に、高さ0.05〜1um程度の十字の針止め7を作製する(第4図(d))。この針止め用の十字7を作製することで、第5図に示すように、金属針54を強く押し付けても、針止め7によりパッド5bから金属針54が外れることはないため、針当てが容易になり、測定効率が向上する。
また、別の方法として第6図に示すように、金属保護膜形成後に行っていた針止め形成を、パッド形成後、そのまま低抵抗導電膜材料ガス53bで形成する(第6図(c))。この方法を行うことにより、抵抗の高い導電膜5bを薄くすることが可能であり、さらなる低抵抗化が期待できる。また、第7図に示すように、穴埋めを行った後(第7図(a))、パッド形成時のパッド形成領域内にFIB走査除去領域を設定し、低抵抗パッド5aの形成を行う(第7図(b))、その後、金属保護膜5bを被覆することで、金属保護膜中心部に針止め用の窪み12を形成する方法、金属保護膜の4辺に針止め用の金属膜7を形成する金属膜縁取り方法(第8図(a))及び平行した2本の金属膜配線7を形成する方法(第8図(b))等が考えられる。
【0065】
4.本実施の形態のFIB加工による不要パッド・メタル除去の説明(主に図9)
図9は本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の不良解析方法における解析用パッド不要部分除去プロセスに関するFIB加工法の原理を示すデバイス上面図である。図9に基づいて、FIB加工による不要パッド・メタル除去を説明する。
【0066】
図9に示すように、パッド形成を行う場合にFIB装置で設定したパッド走査領域57よりも大きいパッドが形成(余剰部分58)されてしまう。そのため平面研磨等により、パッド形成周辺にビア露出部分4fが存在する場合、ビア同士がショートしてしまう可能性がある。その対策として、第9図に示す方法を用いてパッド形成後の余剰形成部分58の除去を行う。パッド形成後、余剰デポ除去のためのFIB走査領域を設定する。(第9図(a))。次に、2重連結領域の余剰デポ除去領域59(=正規のパッドに対応する部分の削れを無視した場合の単連結の余剰デポ除去FIB走査領域―単連結のパッド形成時FIB走査領域)を装置モニタ上で設定する(第9図(b))。FIB加工にて余剰デポ除去を実施する。その際、余剰デポ除去領域以外には、FIBでのビーム照射は行われない(第9図(c))。余剰デポ部分の除去が終了し、パッド付与対象ビアまたはプラグ4aのみ周辺より独立させる(第9図(d))。
【0067】
この方法で余剰デポ部分の除去を行うことにより、パッド全体を、ビーム走査して行う方法と比較して、パッド部分の走査によるダメージ(パッド表面の削れ)を無くすことが可能であり、パッドの高抵抗化、強度不足を防ぐと共に加工時間の短縮も可能である。
【0068】
なお、パッドの不要部分除去では、パッドサイズが15マイクロメートル角等、比較的大きい場合は、金属保護膜(上側の膜)形成後に、周辺の金属保護膜のみを除去することが効率的である。一方、5マイクロメートル角等、比較的小さい場合には、パッド金属のうち、下地を形成したとき、および金属保護膜を形成したときの両方で、除去作業が必要となる。サイズが中間的な場合は、周辺の事情を考慮して、必要に応じていずれかの方法を適宜選択する。
【0069】
また、これらの除去作業では、反応性ガスとしてハロゲン系のエッチングガスを用いることが好適である。他の系統のガスを用いることができることは言うまでもない。また、必要なときは、FIBスパッタリングとFIBアシスト・エッチングを併用することもできる。この点は、穴あけについても同様である。
【0070】
5.本実施の形態のFIB加工装置の要部詳細説明
図10は本発明の実施の形態のFIB加工法(または半導体集積回路装置の製造方法)に用いるFIB加工装置の要部を示す装置模式断面図および加工シーケンス図である。図11は本発明の実施の形態のFIB加工法(または半導体集積回路装置の製造方法)に用いるFIB加工装置の要部である液体ソースからの反応ガス供給系統を示す装置模式断面図である。図12は本発明の実施の形態のFIB加工法(または半導体集積回路装置の製造方法)に用いるFIB加工装置の要部である液体ソースからの反応ガス供給系統の他の例を示す装置模式断面図である。これらに基づいて、FIB加工装置の要部詳細を説明する。
【0071】
まず、ガス供給機構の具体例を説明する。図10(a)にガス供給機構の具体例1を示す。図10に示すように、第1ガスのガス供給機構64aは、液体状のガス材料69を封入したシリンダ68a、シリンダ下部に加振機構73、ガス供給のためのバルブ66a及びヒータ65aを備えた配管67a、シリンダ68aを加熱・冷却する温度調整機構71で構成される。加振機構73は、ガス材料69に振動を与えて霧状の細かい液滴(ミスト)を作り出すためのものであり、超音波振動子を用いる。温度調整機構71には通電極性を変えることで加熱・冷却が可能なペルチェ素子を用いる。加熱・冷却の切換は、図10(b)に示すように、FIB立上げ時に冷却状態(10℃以下)から加熱状態(室温:20℃)に移行し、加工を終了し、試料を取り出した後に加熱状態から冷却状態に移行する。このような方式を用いることでW(CO)6に比べて低抵抗膜が得られるが熱的に不安定な材料ガス(例えば(O2C5HF6)Cu(CH3)3SiCH、(CH3)2Au(O2C5H4F3)等)を不要に加熱することが無いため、長期間使用可能となる。室温時の蒸気圧は、両者共に約10Paである。一方、加振機構73は図10(b)に示すように、FIB加工位置合わせ及び第1の加工条件設定後から加工終了まで加振機構73は動作状態とする。加振によってシリンダ68a内に発生したミストは、バルブ67aを開けることにより、シリンダ温度に応じて生じたガス材料69の蒸気と共に加熱状態の配管内にのぼりガス化する。この状態で、バルブ61aを開けると処理室62内との圧力差でノズル52aからガスが被加工部に供給される。第2のガスのガス供給機構64bは、従来からW(CO)6、(CH3C5H4)(CH3)3Pt等の粉末材料70に用いられている構成であり、シリンダ68b、シリンダ加熱機構72、ガス供給にためのバルブ66b及びヒータ65bを備えた配管67bから成る。シリンダ68bの加熱は、図10(b)のように、装置立ち上げに加熱を開始し、加工を終了して試料取り出し後に加熱を終了する。ノズル駆動機構63a,63bはプロセスガスをFIB加工領域に適正に供給するためにノズル52a,52bをXYZ方向に移動させるものである。
【0072】
一般に処理室62内は10−3から10−4Paの高真空に保たれているため、液体ソースをミスト化させるためのバブリング・ガス等の不要なガスの導入を嫌う傾向にある。従って、加振方式においては、このような不要なガスの導入がないので、処理室62内を常に最適の真空度に保持することができる。
【0073】
次に図11にガス供給機構の具体例2を示す。ガス供給機構の具体例2は、具体例1に第1ガス発生手順において、シリンダ68aとバルブ66aの間に気化器74を設けたものである。気化器74は、容器内部及び外部に伝熱性の良いフィンを備えており、加振によって発生したミストが気化器74に達し、フィンに触れることでガス化する。容器外側のフィンをヒータに変更可能(室温より高く加熱できるため、効率良くガス化可能)であるが、前述の熱的に不安定なガス材料に対しては温度に注意する必要がある。例えば (CH3)2Au(O2C5H4F3)の場合、50℃程度から分解が始まるため、配管加熱ヒータ65aも含めて、それ以下とする必要がある。このように気化器を用いることで、ミストが直接、処理室62内に導入されないので、不所望な液体ソースの結露等を防止することができる。これは、一般にこの種の高真空系では一度結露が発生すると、その排気に相当の時間を要するからである。
【0074】
更にガス供給機構の具体例3は、低抵抗膜形成にための第1のガス発生機構64aとパッド及び保護膜形成のための第2のガス発生機構64bが2系統共に液体材料を用いる場合の一例を図12に示す。ここでは2系統(それぞれバルブ66a,66bおよび気化器74a,74bを有する)を1本の配管67及びノズル52を用いて供給するという構成としているが、FIB照射部に空間的に余裕があるならば、具体例1のように並列配線にすることも可能である。バルブ66cは、導電膜材料ガス切換時に配管内に残ったガスを排気の手段を用いて排気する際に開き、これにより、第1ガスと第2ガスの混合を防止できる。保護膜形成用の第2ガスとして、液体材料では(C2H5C5H4)Pt(CH3)3がある。
【0075】
5.サマリ
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0076】
例えば、前記実施形態においては、半導体装置又は半導体集積回路装置に直接適用する場合を例にとり具体的に説明したが、本願発明はそれに限定されることなく、半導体装置又は半導体集積回路装置等の製造に用いる光学マスク、電子線描画用マスク、またはエックス線露光用マスク等の露光用マスクの修正等にも適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態のFIB加工法(または半導体集積回路装置の製造方法)の全体構成を示すブロックフロー図である。
【図2】本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の不良解析方法における解析用パッド形成に関するFIB加工法フローを示すデバイス見取り図である。
【図3】本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における修正配線形成に関するFIB加工法フローを示すデバイス見取り図である。
【図4】本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の不良解析方法における解析用パッド形成に関するFIB加工法フローの他の例(プローブ針すべり防止機構)を示すデバイス見取り図である。
【図5】図4を説明するための同図(c)および(d)断面図である。
【図6】本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の不良解析方法における解析用パッド形成に関するFIB加工法フローの更に他の例(プローブ針すべり防止機構)を示すデバイス見取り図である。
【図7】本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の不良解析方法における解析用パッド形成に関するFIB加工法フローの更に他の例(凹部によるプローブ針すべり防止機構)を示すデバイス上面図および断面図である。
【図8】本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の不良解析方法における解析用パッド形成に関するFIB加工法フローの更に他の例(囲みまたはガイドバーによるプローブ針すべり防止機構)を示すデバイス見取り図である。
【図9】本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の不良解析方法における解析用パッド不要部分除去プロセスに関するFIB加工法の原理を示すデバイス上面図である。
【図10】本発明の実施の形態のFIB加工法(または半導体集積回路装置の製造方法)に用いるFIB加工装置の要部を示す装置模式断面図および加工シーケンス図である。
【図11】本発明の実施の形態のFIB加工法(または半導体集積回路装置の製造方法)に用いるFIB加工装置の要部である液体ソースからの反応ガス供給系統を示す装置模式断面図である。
【図12】本発明の実施の形態のFIB加工法(または半導体集積回路装置の製造方法)に用いるFIB加工装置の要部である液体ソースからの反応ガス供給系統の他の例を示す装置模式断面図である。
【図13】本発明の実施の形態のFIB加工法(または半導体集積回路装置の製造方法)に用いるFIB加工装置の全体構成を示す装置模式断面図である。
【図14】バルク比抵抗とFIBCVDによる形成膜の比抵抗の相違を示すプロット図である。
【図15】本発明の実施の形態のFIB加工に関する各種金属材料の性質・ソース物質をまとめた図表である。
【符号の説明】
【0078】
1 半導体集積回路チップ
2a 第1の配線ノード
2b 第2の配線ノード
3a 第1のスルーホール(第1のビア・ホール)
3b 第2のスルーホール(第2のビア・ホール)
6a 金属修正配線
6b 金属被覆膜
8 絶縁膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路装置(または半導体装置)の製造方法における選択的な導電膜形成技術に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
日本特開2000−54116号公報(特許文献1)には、有機銅化合物の蒸気とFIB(Focused Ion Beam)を用いたCVD(Focused Ion Beam Chemical Vapor Deposition)すなわちFIBCVD(Chemical Vapor Deposition)または集束イオン・ビームCVDによって、半導体デバイス上に、金属パターン膜を形成する技術が開示されている。
【0003】
日本特開2007−129096号公報(特許文献2)には、液体ソース等をペルチエ素子を用いて室温より高温・低温の両方に処理状況に合わせて調温するFIBCVDシステムが開示されている。また、ここには、同システムを用いて、ビアをタングステン等でFIBCVDにより埋め込んだ後、デバイス表面に繰り返し電気伝導性の良好な金又は銅等の金属膜をFIBCVDにより形成する技術が開示されている。
【0004】
日本特開2006−113221号公報(特許文献3)には、集束イオン・ビームCVD等を用いたマスクの修正技術が開示されている。
【0005】
日本特開平5−82489号公報(特許文献4)には、液体ソースを用いたCVDに関して、液体ソース吹き出し部に超音波素子を用いる技術が開示されている。また、ここには、粉体ソースを用いたCVDに関して、粉体ソース容器に超音波素子を設置する技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−54116号公報
【特許文献2】特開2007−129096号公報
【特許文献3】特開2006−113221号公報
【特許文献4】特開平5−82489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
FIB加工装置の特徴として、(1) 数10〜数100nmの微細なビーム照射スポット径が得られ、(Ga)イオンのスパッタリング作用により、ほとんどの材質を表面及び裏面から加工可能。(2)エッチングガス、CVDガス雰囲気中でのビーム照射により、選択的なエッチング及び導電膜、絶縁膜の成膜が可能等が上げられる。その特徴を利用して、現在、半導体装置の配線修正(配線切断、配線接続)、半導体装置の不良解析(回路変更、測定用パッド形成)に用いられている。
【0008】
近年、半導体装置の高速化により、配線接続抵抗の低減が必要である。しかしながら、現状の導電膜材料ガス(CH3C5H4)(CH3)3Pt=メチル・シクロペンタ・ジエニル・トリメチルプラチナ、Mo(CO)6=モリブデン・カルボニル、あるいはW(CO)6=タングステン・カルボニル等を用いた場合、それらに含まれる炭素や酸素が混入して金属との化合物が生成されるため、抵抗低減化は困難である(第14図に示すように、バルク値と比較して2〜3桁高い)。そのためバルク比抵抗の低い金属を配線材料に用いた検討が進められている。
【0009】
FIBCVDでチップ上に配線を形成後、半導体装置を基板に実装する場合、不活性ガス雰囲気中で行われれば問題は生じないが、設備状況によっては大気雰囲気中で行われる可能性がある。この時、上記に示すCu配線では酸化により抵抗が増加し、配線としての役割を果たせない場合がある。現状の対応として、TEOS(=テトラ・エトキシ・オルソ・シリケート:Si(OC2H5)4)等を用いて配線接続上にSiO2系絶縁膜を被覆する方法があるが、(1)縁膜形成開始時、FIBのエネルギによって活性化された絶縁膜材料ガスの酵素が、導電膜金属と 結合・酸化して高抵抗化する。(2)プロセスガスのクロスコンタミを防止するために絶縁膜ガス使用前後で一定時間、処理室内を高真空排気するガス切換作業が必要であり、その分、加工時間が増大する等の問題点がある。
【0010】
また、不良解析において、パッケージされた半導体装置を部分的に開封後、パッド形成や、半導体装置内の配線切断・接続を行った後、電子ビームテスタやIR-OBIRCH装置等を用いて解析する。さらに詳細な解析を行う場合、パッケージを全開封して半導体装置を取り出す。このパッケージの部分開封や全開封には一般的に薬品(発煙硝酸)を用いている。上記部分開封後に設けたパッドや配線はこの発煙硝酸に耐える必要があるが、前述のMo、W、Cuは酸化・腐食され、電気的な導通が得られなくなることがわかった。
【0011】
更に、電子ビーム(EB)テスタ用のパッドのように、金属針を使用しないのであれば、膜の機械的強度は特に問題にならない。しかしながら、不良解析方法によっては、パッドに金属針を押圧するため機械的強度を確保する必要がある。例えばCu膜では強度が低いため、金属針を軽く押し当てただけで削れてしまい、電気的導通が取れなくなる場合がある。
【0012】
また、FIBで配線修正した半導体装置を樹脂で封止して搭載製品の動作確認を行う場合がある。この樹脂封止の際、FIBで接続した配線がCuのように軟いと、レジン中のフィラーによって削られて断線を生ずる場合がある。
【0013】
本発明の目的は、高信頼度のFIB加工方法または、それに好適なFIB加工装置を提供することである。
【0014】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0016】
すなわち、本願発明は、ほぼ完成した半導体集積回路装置の配線を変更するために、FIB加工を用いて半導体集積回路チップの配線を修正するに当たり、半導体集積回路チップの主面上の絶縁膜に金属修正配線をFIBCVDにより形成後、その上を覆うように、金属修正配線よりも耐酸化性または耐腐食性の高い金属被覆膜を、FIBCVDにより形成するものである。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0018】
すなわち、修正配線は配線として最適に材料を使用して、その上をその後の仕様環境に耐える別の金属部材で被覆するので、電気的特性を確保しながら、その後の試験又は仕様環境に耐えるものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
〔実施の形態の概要〕
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。
【0020】
1.以下の工程を含む半導体集積回路装置の製造方法:
(a)実質的に完成した半導体集積回路チップの配線をFIB加工により変更する工程、
ここで、前記工程(a)は以下の下位工程を含む:
(a1)前記半導体集積回路チップの主面上の絶縁膜に、FIB切削により、第1の配線ノードに到達する第1のスルーホールを形成する工程;
(a2)前記半導体集積回路チップの主面上の絶縁膜に、FIB切削により、第2の配線ノードに到達する第2のスルーホールを形成する工程;
(a3)前記第1のスルーホール及び前記第2のスルーホールを埋め込み、前記主面上で前記第1の配線ノード及び前記第2の配線ノードを電気的に接続する金属修正配線を、FIBCVDにより形成する工程;
(a4)前記主面上で前記金属修正配線を被覆する前記金属配線よりも耐酸化性または耐腐食性の高い金属被覆膜を、FIBCVDにより形成する工程。
【0021】
2.前記1項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記金属配線は前記金属被覆膜よりもバルク比抵抗が低い。
【0022】
3.前記1または2項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記金属被覆膜は前記金属配線よりもモース硬度が高い。
【0023】
4.前記1から3項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記金属配線はモリブデン、タングステン、アルミニウム、金または銅を主要な成分として含む。
【0024】
5.前記1から4項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記金属被覆膜はモリブデン、タングステン、クロム、白金または金を主要な成分として含む。
【0025】
次に、本願において開示される発明のその他の実施の形態について概要を説明する。
【0026】
6.以下の工程を含む半導体集積回路装置の不良解析方法:
(a)実質的に完成した半導体集積回路チップに、FIB加工により、解析用パッドを形成する工程、
ここで、前記工程(a)は以下の下位工程を含む:
(a1)前記半導体集積回路チップの主面上の絶縁膜に、FIB切削により、第1の配線ノードに到達する第1のスルーホールを形成する工程;
(a2)前記第1のスルーホールを埋め込み、前記第1の配線ノードに電気的に接続して前記主面上へ引き出す引き出し配線および、前記主面上において、前記引き出し配線を覆い、それと連結した前記解析用パッドを構成する金属膜を、FIBCVDにより形成する工程;
(a3)前記主面上で前記解析用パッドを被覆する前記金属膜よりも耐酸化性または耐腐食性の高い金属被覆層を、FIBCVDにより形成する工程。
【0027】
7.前記6項の半導体集積回路装置の不良解析方法において、前記金属膜は前記金属被覆層よりもバルク比抵抗が低い。
【0028】
8.前記6または7項の半導体集積回路装置の不良解析方法において、前記金属被覆層は前記金属膜よりもモース硬度が高い。
【0029】
9.前記6から8項のいずれか一つの半導体集積回路装置の不良解析方法において、前記金属膜はモリブデン、タングステン、アルミニウム、金または銅を主要な成分として含む。
【0030】
10.前記6から9項のいずれか一つの半導体集積回路装置の不良解析方法において、前記金属被覆層はモリブデン、タングステン、クロム、白金または金を主要な成分として含む。
【0031】
11.前記6から10項のいずれか一つの半導体集積回路装置の不良解析方法において、前記解析用パッドには、プローブ針すべりを防止機構が設けられている。
【0032】
12.前記11項の半導体集積回路装置の不良解析方法において、前記プローブ針すべりを防止機構は、前記金属膜と同一の部材により形成されている。
【0033】
13.前記11項の半導体集積回路装置の不良解析方法において、前記プローブ針すべりを防止機構は、前記金属被覆層と同一の部材により形成されている。
【0034】
14.前記11項の半導体集積回路装置の不良解析方法において、前記プローブ針すべりを防止機構は、前記金属膜の前記解析用パッドの一部に設けられた凹部により構成されている。
【0035】
15.前記6から10項のいずれか一つの半導体集積回路装置の不良解析方法において、更に以下の下位工程を含む:
(a4)前記解析用パッドまたは金属被覆層の周辺不要部分を、コア部分をFIBでスキャンすることなく、FIB加工により除去する工程。
【0036】
16.以下を含むFIB加工装置:
(a)被処理物を収容して、FIB加工する真空処理室;
(b)前記真空処理室内に反応ガスを噴出すように設けられたノズル;
(c)前記ノズルと配管系を介して連結された液体ソース収納容器;
(d)前記液体ソース収納容器に設けられた超音波振動装置。
【0037】
17.前記16項のFIB加工装置において、更に以下を含む:
(e)前記ノズルと前記液体ソース収納容器の間の前記配管系に設けられた気化器。
【0038】
〔本願における記載形式・基本的用語・用法の説明〕
1.本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクションに分けて記載する場合もあるが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しを省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
【0039】
2.同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、A以外の要素を主要な構成要素のひとつとするものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。たとえば、「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。同様に、「酸化シリコン膜」と言っても、比較的純粋な非ドープ酸化シリコン(Undoped Silicon Dioxide)だけでなく、FSG(Fluorosilicate Glass)、TEOSベース酸化シリコン(TEOS-based silicon oxide)、SiOC(Silicon Oxicarbide)またはカーボンドープ酸化シリコン(Carbon-doped Silicon oxide)またはOSG(Organosilicate glass)、PSG(Phosphorus Silicate Glass)、BPSG(Borophosphosilicate Glass)等の熱酸化膜、CVD酸化膜、SOG(Spin ON Glass)、ナノ・クラスタリング・シリカ(Nano-Clustering Silica:NSC)等の塗布系酸化シリコン、これらと同様な部材に空孔を導入したシリカ系Low-k絶縁膜(ポーラス系絶縁膜)、およびこれらを主要な構成要素とする他のシリコン系絶縁膜との複合膜等を含むことは言うまでもない。
【0040】
3.同様に、図形、位置、属性等に関して、好適な例示をするが、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、厳密にそれに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0041】
4.さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
【0042】
5.「ウエハ」というときは、通常は半導体集積回路装置(半導体装置、電子装置も同じ)をその上に形成する単結晶シリコンウエハを指すが、エピタキシャルウエハ、絶縁基板と半導体層等の複合ウエハ等も含むことは言うまでもない。
【0043】
6.「FIB加工」技術は、「FIB」すなわち集束イオン・ビームを構成するガリウム・イオン等のスパッタ作用を利用した「FIBスパッタリング」およびそれと反応性のガスを用いた「FIBアシスト・エッチング」等を含む「FIB切削」、ならびに、堆積性の反応ガスを併用した「FIBCVD」等からなる。「FIBCVD」はメタルCVDと絶縁膜CVDに大別される。「FIBスパッタリング」は加工精度は非常に高いが、加工速度は比較的遅い。一方、「FIBアシスト・エッチング」は加工速度が比較的速いというメリットがある。従って、穴あけ、不要膜除去等のプロセスでは、一般に、これらの方法を併用する。
【0044】
〔実施の形態の詳細〕
実施の形態について更に詳述する。各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
【0045】
1.本実施の形態のアウトラインおよびFIB加工装置の説明(主に図13および図15)
図13は、本発明の実施の形態のFIB加工法(または半導体集積回路装置の製造方法)に用いるFIB加工装置の全体構成を示す装置模式断面図である。図15は本発明の実施の形態のFIB加工に関する各種金属材料の性質・ソース物質をまとめた図表である。これらに基づいて、本発明の実施の形態のFIB加工法ならびに加工装置のアウトラインを説明する。
【0046】
一実施形態のFIB加工法(または半導体集積回路装置の製造方法)では、半導体装置すなわち半導体チップの主面上に形成するパッドや配線を2層構造とした。即ち、パッド及び配線本来に求められる抵抗値を第1の層で確保し、その上に耐薬品性あるいは機械的強度に優れた金属膜を第2層として形成する。
【0047】
一般に、修正配線、または不良解析用パッドを作製する際、現状1種類の導電膜材料で行っていることが多い。しかしながら、汎用的に使える導電膜材料は無いため、1種類の導電膜材料では配線抵抗の低減、パッドの強度向上は困難である。そこで、図15に示すように、針当てパッド表面形成には、Pt,Mo,W,Cr等の材料硬度の高い導電膜材料を、高速動作が要求されるLSIの配線形成には、バルクの比抵抗が低いAu,Cu,Alなどの導電膜材料を使用し、その加工目的にあった配線材料を選択することで、配線抵抗の低減及び金属針に強いパッド形成が可能となる。
【0048】
高速化が進むLSIにおいて、接続抵抗の低減は必須である。そこで、修正配線材料として上記に示した通りCu等の低抵抗導電膜材料を使用することは有効な手段であるのだが、材質的に酸化性が強く、たとえば、LCDドライバーチップの液晶表示パネルへの実装時のリフロー等のように、大気雰囲気中に露出された状態では抵抗が増加してしまう。対策として、SiO2膜を配線上に形成する方法もあるが、加工室の材料ガス入れ替え作業による加工時間の増大、材料ガスに含まれるO2による表面層酸化により高抵抗化する等の問題点がある。そこで、低抵抗導電膜配線(金、銅、アルミニウム、モリブデン、タングステン)上に耐酸化性、耐腐食性に強い導電膜(Cr、Pt)を被膜することで、酸化・腐食を防ぐと共に、同種類の材料ガスを使用することからガスの切換作業がいらないため、加工TAT効率を向上させることが可能である。後の処理で発煙硝酸等の強酸化性の雰囲気を使用するものでは、表面を白金や金で被覆することが有効である。大気中の酸化防止では、モリブデン、タングステン、クロム等も有効であるが、発煙硝酸等の強酸化性の雰囲気ではこれらの金属も腐食する。
【0049】
FIB加工法による配線修正等を良好な状態で実施するためには、材料ガス供給機構の見直しが必要である。配線修正等を低抵抗化するための導電膜材料ガスは熱的に不安定であるため、現在のような、温度制御が難しいガスシリンダ加熱装置(ヒータ)では、長期間使用することが出来ない。また、供給されるガス量を増やし、加工部の更なる低抵抗化を行うため、以下に示すようなガス供給機構に変更する必要がある。
【0050】
そのため、ガスシリンダに液体ガス材料を液滴化し易くするために加振機構を設ける。また、ガスシリンダの温度調整機構には通電の極性を変えることで、加熱・冷却変更可能なペルチェ素子を用いる。耐酸化性、耐腐食性の弱い導電膜に、耐酸化性、耐腐食性の強い導電膜を被服することにより、高信頼性配線の形成を可能とする。また、同種類の金属材料ガスを使用することにより、加工室内の材料ガスの交換作業が必要でなくなるため、絶縁膜をコーティングするよりも、短TATでFIB加工が可能となる。
【0051】
以下に、本実施形態のFIB加工に使用するFIB加工装置の装置例を説明する。図13に示すように、装置の主要部は、架台80上に除震機構79を介して設けられている。FIB光学系75は、イオンビームを発生・集束・走査する部分であり、加速電圧/照射電流/走査条件等はその制御系により設定変更可能である。二次粒子検出器76は、FIB照射により試料から発生した二次電子/二次イオンを検出し、制御系にてFIB走査と同期させた二次電子像/二次イオン像をモニタ上に表示する。ガス供給機構としては、FIBアシストエッチング時のエッチングガス、FIBアシストデポジション時のCVDガスといったプロセスガスをFIB加工部に供給する手段があり、ガス発生機構64とノズル駆動機構63とノズル52から成る。処理室88は、FIB加工を行うためのもので、上部にFIB光学系75、二次粒子検出器76、ガス供給機構を設け、内部には試料85を固定した試料台86を搭載し、XYZ方向に移動可能なステージ87を設けている。側面にゲートバルブ77を介して試料交換室78を設けており、試料台86ごと試料の交換を行う。排気手段84は、処理室88及び試料交換室78の排気を行うもので、バルブ82,83による配管系81の切換により個別排気可能である。
【0052】
基本的な加工手順は以下のとおりである。すなわち、
(1)試料導入:リークガス供給機構により試料交換室を大気圧までリークを行い、試料を試料交換室の搬送機構に固定する。その後交換室を排気し、所定の真空度に達したら、ゲートバルブを開け、試料を処理室に搬送する。試料搬送後、ゲートバルブを閉じる。(2)FIB立ち上げ:所定の加速電圧及び照射電流が得られるよう、設定・調整を行う。
(3)位置あわせ:モニタ上の二次電子像/二次イオン像を観察しながら、加工位置を探し出す。
(4)FIB加工:加工目的に応じたプロセスガスを供給するノズルを加工位置近傍に接近させ、加工寸法、走査速度等の加工条件を設定し、プロセスガス雰囲気中でFIB加工を行う。
【0053】
2.本実施の形態のFIB加工手順の全体説明(主に図1から3)
図1は本発明の実施の形態のFIB加工法(または半導体集積回路装置の製造方法)の全体構成を示すブロックフロー図である。図13に示すFIB加工装置に本フローの実行機能を組み込むことで、目的に応じた成膜が半自動的に実行されることから、作業者の負担を軽減したインテリジェンスなFIB加工装置となる。図2は本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の不良解析方法における解析用パッド形成に関するFIB加工法フローを示すデバイス見取り図である。図3は本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における修正配線形成に関するFIB加工法フローを示すデバイス見取り図である。本発明は、半導体装置あるいはフォトマスク等に高信頼度な配線、パッドの形成及び遮光のための金属パターン膜を追加形成するための方法に関するものである。デバイスの配線変更、不良解析あるいはフォトマスクの欠陥リペア及びパターン変更等に利用されるものである。これらの図に基づいて、本実施の形態のFIB加工手順の全体の流れを説明する。
【0054】
図1または図2に示すように、図13に示すFIB加工装置のモニタ画面上(図1のステップ101)に表示された加工条件設定ウィンドウで、まず、パッド形成か修正配線形成か選択する(図1のステップ102)。以下、図1において、パッド形成を選択した場合を説明する。
(1)加工位置をモニタ画面上に表示後、パッド接続位置を指定し、接続穴寸法を設定後、被加工部に絶縁膜用エッチングガス(例:XeF2)53aをノズル52から吹きつけ、イオンビーム51による接続穴3aの加工を開始する(図1のステップ103)。2次粒子像を観察し、半導体装置1の内部配線2aが充分露出した時点でFIB加工を止める。(第2図(a))
(2)形成した接続穴に対して穴埋め寸法設定後、ノズル52から低抵抗材料ガス(例えば、(O2C5HF6)Cu(CH3)3SiCH、(CH3)2Au(O2C5H4F3)等といったFIB照射51によりCuやAuを析出するガス53bを吹きつけ、穴埋めを開始する(図1のステップ104)。プラグ4aの上端が埋め込みが穴の開口部にほぼ達した時点で穴埋めを停止する。(第2図(b))
(3)パッド形成寸法を設定すると共に、予めパッド形成寸法及びFIB照射条件から求めておいた、パッド形成としての成膜時間を確認後、再びノズル52から低抵抗金属用材料ガス53bを吹きつけ、パッド形成を開始する(図1のステップ105)。設定した成膜時間に達したらFIB照射及び材料ガス供給を停止し、パッド5aの形成を終了する。(第2図(c))複数のパッドを形成する場合は、上記図2(a)〜(c)の手順を複数回繰り返す。全てのパッド形成を終えたら、この半導体装置が後の工程で発煙硝酸の薬品を用いた開封処理を行うか否かを加工条件ウィンドウで選択する(図1のステップ106)。
【0055】
更に図1において、開封処理有りを選択した場合は、耐薬品性および機械的強度の高い金属(例えば、Pt)を保護膜として、上記工程で形成したパッドに被覆する(図1のステップ107)。一方、開封処理無しを選択した場合、金属針の押圧に耐える機械的強度の高い金属(例えば、Cr、Mo、W)を被覆する(図1のステップ108)。
【0056】
前記保護膜形成手順は、パッド5aを包含する領域を保護膜形成領域として設定し、予め保護膜形成寸法およびFIB照射条件から求めておいた保護膜形成としての成膜時間を確認後、保護膜材料に対応した材料ガス(例えば、保護膜がPtの場合(CH3C5H4)(CH3)3Pt))53cを吹き付け、保護膜形成を開始する。設定した成膜時間に達したらFIB照射および材料ガス供給を停止し、保護膜5bの形成を終了する。(第2図(d))以上の工程により、半導体装置表面には、低抵抗で高信頼度なパッドが形成されたこととなる。
【0057】
次に図1において、配線接続を選択した場合について、説明する。パッド形成の場合と同様に、対象となる配線2b(第1の配線ノード)の配線接続位置を指定し、接続穴寸法を設定後、被加工部に絶縁膜用エッチングガス53aを吹き付け、接続穴3b(第1のスルーホール)の加工(FIB切削)を開始する(図1のステップ109)。2次粒子像から半導体装置内配線が十分に露出した時点でFIB加工を停止する。配線接続対象のもう一方の配線2a(第2の配線ノード)上の絶縁膜にも接続穴3a(第2のスルーホール)の加工(FIB切削)を行う(第3図(a))。
【0058】
次に、図1において、加工条件設定ウィンドウ上で配線接続が低抵抗を必要とするか否かを選択する(図1のステップ110)。まず、図1において低抵抗接続を必要とする場合を説明する(図1のステップ111)。パッド形成の場合と同じように、図3に示すように、接続穴に対して穴埋め寸法を設定後、ノズル52から低抵抗金属用材料ガス53bを吹き付け穴埋めを開始する(図1のステップ112)。接続穴3bの開口部に埋め込みがほぼ達した時点で穴埋めを停止する。もう一方の半導体装置配線上接続穴部3aにも同じ手順で穴埋めを行う。(第3図(b))次に、2つの接続穴を含むように配線形成寸法を設定すると共に、予め、配線形成寸法およびFIB照射条件から求めておいた、配線抵抗に対する成膜時間を確認後、再びノズル52から低抵抗金属用材料ガス53bを吹き付け、配線形成を開始する。設定した成膜時間に達したらFIB照射および材料ガス供給を停止し、配線形成を終了する。(第3図(c))以上の工程により、2つの接続穴内および接続穴間には、AuあるいはCu等の低比抵抗金属が充填・成膜されるため、低抵抗接続6a(金属修正配線)が得られる。配線接続終了後、当該半導体装置の以後の処理が下記の何れかに該当する場合は、処理に対応した保護膜(金属被覆膜)を被覆する(第3図(d))。非該当の場合は、以後の保護膜形成は無しで終了となる(図1のステップ121)。
【0059】
次に、図1において、大気雰囲気中でのリフロー処理(図1のステップ114)あるいは開封処理(図1のステップ115)を行う場合について説明する。配線形成後の半導体装置に大気雰囲気中でのリフロー処理を行う場合には配線6aの酸化防止処理を行う必要があり、開封処理を行う場合には薬品による腐食を防止する必要があることから、耐薬品性の高い金属(例えば、Pt)を保護膜6bとして上記工程で形成した配線に被覆する(図1のステップ117)。保護膜形成手順は、パッドへの保護膜形成と同様に、上記工程で形成した配線を包含する領域を保護膜形成領域として設定し、予め保護膜形成寸法およびFIB照射条件から求めておいた、保護膜形成としての成膜時間を確認後、保護膜材料に対応した材料ガス(例えば、保護膜がPtの場合、(CH3C5H4)(CH3)3Pt))53cを吹き付け、保護膜6bの形成を開始する。設定した成膜時間に達したらFIB照射および材料ガス供給を停止し、保護膜形成を終了する。
【0060】
更に、図1において、レジンによる封止処理を行う場合について説明する。その表面に配線を形成した半導体装置をレジンで封止する場合(図1のステップ116)、レジン中のフィラーで配線が削られないよう、機械的強度の高い保護膜で被覆する(図1のステップ118)。この場合の保護膜形成手順も上記の保護膜形成と同様に、上記工程で形成した配線を包含する領域を保護膜形成領域として設定し、予め保護膜形成寸法およびFIB照射条件から求めておいた、保護膜形成としての成膜時間を確認後、保護膜材料に対応した材料ガス(Cr(CO)6、W(CO)6、Mo(CO)6、(CH3C5H4)(CH3)3Pt、等)を吹き付け、保護膜形成を開始する。設定した成膜時間に達したらFIB照射および材料ガス供給を停止し、保護膜形成を終了する。
【0061】
図1において、低抵抗接続を必要としない場合について説明する。加工条件設定ウィンドウ上で、配線接続(図1のステップ119および120)を終了した後に当該半導体装置が下記の何れかで処理されるか否かを選択する。処理を行う場合は、下記の通り、処理に対応した材料で配線を形成する。非該当の場合は、任意の材料で穴埋めおよび配線形成を行う(図1のステップ121)。更に図1において、大気雰囲気中でのリフロー処理あるいは開封処理を行う場合(低抵抗接続は必要でなく)について説明する。大気雰囲気中でリフロー処理を行う場合の配線には酸化されにくい材料を選ぶ必要があり、開封処理を行う場合には薬品で腐食されにくい材料を選ぶ必要があることから、PtあるいはCrで穴埋めおよび配線形成を行うこととし、材料ガスに(CH3C5H4)(CH3)3Pt、(C2H5C5H4)(CH3)3Pt、Cr(CO)6等)を用いる。穴埋めおよび配線形成手順に関しては、上記と同じである。同様に、図1において、レジンによる封止処理を行う場合について説明する。半導体装置をレジンで封止する場合、レジン中のフィラーで表面に形成した配線が削られないよう、機械的強度の高い材料を選ぶ必要があることから、PtあるいはCr,Mo,Wで穴埋めおよび配線形成を行うこととし、材料ガスに(CH3C5H4)(CH3)3Pt、(C2H5C5H4)(CH3)3Pt、Cr(CO)6 、Mo(CO)6、 W(CO)6等を用いる。穴埋めおよび配線形成手順に関しては、上記と同じである。
【0062】
以上の工程により、半導体装置表面には、所望の抵抗を有する高信頼度な配線が形成されたこととなる。
以上のように、本発明を使用すれば、低抵抗で、耐酸化性、耐腐食性に強い、高信頼度な配線形成が可能である。また絶縁膜をコーティングするのに比べ、加工室の排気を必要としないので解析TATの向上が図れる。
【0063】
3.本実施の形態のFIB加工によるプローブ針すべり止め機構の説明(主に図4から8)
図4は本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の不良解析方法における解析用パッド形成に関するFIB加工法フローの他の例(プローブ針すべり防止機構)を示すデバイス見取り図である。図5は図4を説明するための同図(c)および(d)断面図である。図6は本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の不良解析方法における解析用パッド形成に関するFIB加工法フローの更に他の例(プローブ針すべり防止機構)を示すデバイス見取り図である。図7は本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の不良解析方法における解析用パッド形成に関するFIB加工法フローの更に他の例(凹部によるプローブ針すべり防止機構)を示すデバイス上面図および断面図である。図8は本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の不良解析方法における解析用パッド形成に関するFIB加工法フローの更に他の例(囲みまたはガイドバーによるプローブ針すべり防止機構)を示すデバイス見取り図である。これらに基づいて、FIB加工によるプローブ針すべり止め機構の説明を行う。
【0064】
図5(a)に示すように、針当て測定を行う場合、金属針54を上記で作製したパッド5bに押圧して測定を行う。しかしながら、パッド表面には凹凸が少ないため、パッドが大きければ問題ないが、パッドが小さい場合、金属針54の押し付けが強すぎると針すべりを起こし、金属針54がパッド5bから外れてしまい、絶縁膜8の表面に移動するため、コンタクトが取れない場合がある。その対策として、第4図に示すように、パッド形成方法と同様に穴あけ(第4図(a))、パッド形成(第4図(b))、金属保護膜形成(第4図(c))を行った後、金属保護膜5b上に、高さ0.05〜1um程度の十字の針止め7を作製する(第4図(d))。この針止め用の十字7を作製することで、第5図に示すように、金属針54を強く押し付けても、針止め7によりパッド5bから金属針54が外れることはないため、針当てが容易になり、測定効率が向上する。
また、別の方法として第6図に示すように、金属保護膜形成後に行っていた針止め形成を、パッド形成後、そのまま低抵抗導電膜材料ガス53bで形成する(第6図(c))。この方法を行うことにより、抵抗の高い導電膜5bを薄くすることが可能であり、さらなる低抵抗化が期待できる。また、第7図に示すように、穴埋めを行った後(第7図(a))、パッド形成時のパッド形成領域内にFIB走査除去領域を設定し、低抵抗パッド5aの形成を行う(第7図(b))、その後、金属保護膜5bを被覆することで、金属保護膜中心部に針止め用の窪み12を形成する方法、金属保護膜の4辺に針止め用の金属膜7を形成する金属膜縁取り方法(第8図(a))及び平行した2本の金属膜配線7を形成する方法(第8図(b))等が考えられる。
【0065】
4.本実施の形態のFIB加工による不要パッド・メタル除去の説明(主に図9)
図9は本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の不良解析方法における解析用パッド不要部分除去プロセスに関するFIB加工法の原理を示すデバイス上面図である。図9に基づいて、FIB加工による不要パッド・メタル除去を説明する。
【0066】
図9に示すように、パッド形成を行う場合にFIB装置で設定したパッド走査領域57よりも大きいパッドが形成(余剰部分58)されてしまう。そのため平面研磨等により、パッド形成周辺にビア露出部分4fが存在する場合、ビア同士がショートしてしまう可能性がある。その対策として、第9図に示す方法を用いてパッド形成後の余剰形成部分58の除去を行う。パッド形成後、余剰デポ除去のためのFIB走査領域を設定する。(第9図(a))。次に、2重連結領域の余剰デポ除去領域59(=正規のパッドに対応する部分の削れを無視した場合の単連結の余剰デポ除去FIB走査領域―単連結のパッド形成時FIB走査領域)を装置モニタ上で設定する(第9図(b))。FIB加工にて余剰デポ除去を実施する。その際、余剰デポ除去領域以外には、FIBでのビーム照射は行われない(第9図(c))。余剰デポ部分の除去が終了し、パッド付与対象ビアまたはプラグ4aのみ周辺より独立させる(第9図(d))。
【0067】
この方法で余剰デポ部分の除去を行うことにより、パッド全体を、ビーム走査して行う方法と比較して、パッド部分の走査によるダメージ(パッド表面の削れ)を無くすことが可能であり、パッドの高抵抗化、強度不足を防ぐと共に加工時間の短縮も可能である。
【0068】
なお、パッドの不要部分除去では、パッドサイズが15マイクロメートル角等、比較的大きい場合は、金属保護膜(上側の膜)形成後に、周辺の金属保護膜のみを除去することが効率的である。一方、5マイクロメートル角等、比較的小さい場合には、パッド金属のうち、下地を形成したとき、および金属保護膜を形成したときの両方で、除去作業が必要となる。サイズが中間的な場合は、周辺の事情を考慮して、必要に応じていずれかの方法を適宜選択する。
【0069】
また、これらの除去作業では、反応性ガスとしてハロゲン系のエッチングガスを用いることが好適である。他の系統のガスを用いることができることは言うまでもない。また、必要なときは、FIBスパッタリングとFIBアシスト・エッチングを併用することもできる。この点は、穴あけについても同様である。
【0070】
5.本実施の形態のFIB加工装置の要部詳細説明
図10は本発明の実施の形態のFIB加工法(または半導体集積回路装置の製造方法)に用いるFIB加工装置の要部を示す装置模式断面図および加工シーケンス図である。図11は本発明の実施の形態のFIB加工法(または半導体集積回路装置の製造方法)に用いるFIB加工装置の要部である液体ソースからの反応ガス供給系統を示す装置模式断面図である。図12は本発明の実施の形態のFIB加工法(または半導体集積回路装置の製造方法)に用いるFIB加工装置の要部である液体ソースからの反応ガス供給系統の他の例を示す装置模式断面図である。これらに基づいて、FIB加工装置の要部詳細を説明する。
【0071】
まず、ガス供給機構の具体例を説明する。図10(a)にガス供給機構の具体例1を示す。図10に示すように、第1ガスのガス供給機構64aは、液体状のガス材料69を封入したシリンダ68a、シリンダ下部に加振機構73、ガス供給のためのバルブ66a及びヒータ65aを備えた配管67a、シリンダ68aを加熱・冷却する温度調整機構71で構成される。加振機構73は、ガス材料69に振動を与えて霧状の細かい液滴(ミスト)を作り出すためのものであり、超音波振動子を用いる。温度調整機構71には通電極性を変えることで加熱・冷却が可能なペルチェ素子を用いる。加熱・冷却の切換は、図10(b)に示すように、FIB立上げ時に冷却状態(10℃以下)から加熱状態(室温:20℃)に移行し、加工を終了し、試料を取り出した後に加熱状態から冷却状態に移行する。このような方式を用いることでW(CO)6に比べて低抵抗膜が得られるが熱的に不安定な材料ガス(例えば(O2C5HF6)Cu(CH3)3SiCH、(CH3)2Au(O2C5H4F3)等)を不要に加熱することが無いため、長期間使用可能となる。室温時の蒸気圧は、両者共に約10Paである。一方、加振機構73は図10(b)に示すように、FIB加工位置合わせ及び第1の加工条件設定後から加工終了まで加振機構73は動作状態とする。加振によってシリンダ68a内に発生したミストは、バルブ67aを開けることにより、シリンダ温度に応じて生じたガス材料69の蒸気と共に加熱状態の配管内にのぼりガス化する。この状態で、バルブ61aを開けると処理室62内との圧力差でノズル52aからガスが被加工部に供給される。第2のガスのガス供給機構64bは、従来からW(CO)6、(CH3C5H4)(CH3)3Pt等の粉末材料70に用いられている構成であり、シリンダ68b、シリンダ加熱機構72、ガス供給にためのバルブ66b及びヒータ65bを備えた配管67bから成る。シリンダ68bの加熱は、図10(b)のように、装置立ち上げに加熱を開始し、加工を終了して試料取り出し後に加熱を終了する。ノズル駆動機構63a,63bはプロセスガスをFIB加工領域に適正に供給するためにノズル52a,52bをXYZ方向に移動させるものである。
【0072】
一般に処理室62内は10−3から10−4Paの高真空に保たれているため、液体ソースをミスト化させるためのバブリング・ガス等の不要なガスの導入を嫌う傾向にある。従って、加振方式においては、このような不要なガスの導入がないので、処理室62内を常に最適の真空度に保持することができる。
【0073】
次に図11にガス供給機構の具体例2を示す。ガス供給機構の具体例2は、具体例1に第1ガス発生手順において、シリンダ68aとバルブ66aの間に気化器74を設けたものである。気化器74は、容器内部及び外部に伝熱性の良いフィンを備えており、加振によって発生したミストが気化器74に達し、フィンに触れることでガス化する。容器外側のフィンをヒータに変更可能(室温より高く加熱できるため、効率良くガス化可能)であるが、前述の熱的に不安定なガス材料に対しては温度に注意する必要がある。例えば (CH3)2Au(O2C5H4F3)の場合、50℃程度から分解が始まるため、配管加熱ヒータ65aも含めて、それ以下とする必要がある。このように気化器を用いることで、ミストが直接、処理室62内に導入されないので、不所望な液体ソースの結露等を防止することができる。これは、一般にこの種の高真空系では一度結露が発生すると、その排気に相当の時間を要するからである。
【0074】
更にガス供給機構の具体例3は、低抵抗膜形成にための第1のガス発生機構64aとパッド及び保護膜形成のための第2のガス発生機構64bが2系統共に液体材料を用いる場合の一例を図12に示す。ここでは2系統(それぞれバルブ66a,66bおよび気化器74a,74bを有する)を1本の配管67及びノズル52を用いて供給するという構成としているが、FIB照射部に空間的に余裕があるならば、具体例1のように並列配線にすることも可能である。バルブ66cは、導電膜材料ガス切換時に配管内に残ったガスを排気の手段を用いて排気する際に開き、これにより、第1ガスと第2ガスの混合を防止できる。保護膜形成用の第2ガスとして、液体材料では(C2H5C5H4)Pt(CH3)3がある。
【0075】
5.サマリ
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0076】
例えば、前記実施形態においては、半導体装置又は半導体集積回路装置に直接適用する場合を例にとり具体的に説明したが、本願発明はそれに限定されることなく、半導体装置又は半導体集積回路装置等の製造に用いる光学マスク、電子線描画用マスク、またはエックス線露光用マスク等の露光用マスクの修正等にも適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態のFIB加工法(または半導体集積回路装置の製造方法)の全体構成を示すブロックフロー図である。
【図2】本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の不良解析方法における解析用パッド形成に関するFIB加工法フローを示すデバイス見取り図である。
【図3】本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における修正配線形成に関するFIB加工法フローを示すデバイス見取り図である。
【図4】本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の不良解析方法における解析用パッド形成に関するFIB加工法フローの他の例(プローブ針すべり防止機構)を示すデバイス見取り図である。
【図5】図4を説明するための同図(c)および(d)断面図である。
【図6】本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の不良解析方法における解析用パッド形成に関するFIB加工法フローの更に他の例(プローブ針すべり防止機構)を示すデバイス見取り図である。
【図7】本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の不良解析方法における解析用パッド形成に関するFIB加工法フローの更に他の例(凹部によるプローブ針すべり防止機構)を示すデバイス上面図および断面図である。
【図8】本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の不良解析方法における解析用パッド形成に関するFIB加工法フローの更に他の例(囲みまたはガイドバーによるプローブ針すべり防止機構)を示すデバイス見取り図である。
【図9】本発明の実施の形態の半導体集積回路装置の不良解析方法における解析用パッド不要部分除去プロセスに関するFIB加工法の原理を示すデバイス上面図である。
【図10】本発明の実施の形態のFIB加工法(または半導体集積回路装置の製造方法)に用いるFIB加工装置の要部を示す装置模式断面図および加工シーケンス図である。
【図11】本発明の実施の形態のFIB加工法(または半導体集積回路装置の製造方法)に用いるFIB加工装置の要部である液体ソースからの反応ガス供給系統を示す装置模式断面図である。
【図12】本発明の実施の形態のFIB加工法(または半導体集積回路装置の製造方法)に用いるFIB加工装置の要部である液体ソースからの反応ガス供給系統の他の例を示す装置模式断面図である。
【図13】本発明の実施の形態のFIB加工法(または半導体集積回路装置の製造方法)に用いるFIB加工装置の全体構成を示す装置模式断面図である。
【図14】バルク比抵抗とFIBCVDによる形成膜の比抵抗の相違を示すプロット図である。
【図15】本発明の実施の形態のFIB加工に関する各種金属材料の性質・ソース物質をまとめた図表である。
【符号の説明】
【0078】
1 半導体集積回路チップ
2a 第1の配線ノード
2b 第2の配線ノード
3a 第1のスルーホール(第1のビア・ホール)
3b 第2のスルーホール(第2のビア・ホール)
6a 金属修正配線
6b 金属被覆膜
8 絶縁膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む半導体集積回路装置の製造方法:
(a)実質的に完成した半導体集積回路チップの配線をFIB加工により変更する工程、
ここで、前記工程(a)は以下の下位工程を含む:
(a1)前記半導体集積回路チップの主面上の絶縁膜に、FIB切削により、第1の配線ノードに到達する第1のスルーホールを形成する工程;
(a2)前記半導体集積回路チップの主面上の絶縁膜に、FIB切削により、第2の配線ノードに到達する第2のスルーホールを形成する工程;
(a3)前記第1のスルーホール及び前記第2のスルーホールを埋め込み、前記主面上で前記第1の配線ノード及び前記第2の配線ノードを電気的に接続する金属修正配線を、FIBCVDにより形成する工程;
(a4)前記主面上で前記金属修正配線を被覆する前記金属配線よりも耐酸化性または耐腐食性の高い金属被覆膜を、FIBCVDにより形成する工程。
【請求項2】
前記1項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記金属配線は前記金属被覆膜よりもバルク比抵抗が低い。
【請求項3】
前記1項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記金属被覆膜は前記金属配線よりもモース硬度が高い。
【請求項4】
前記1項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記金属配線はモリブデン、タングステン、アルミニウム、金または銅を主要な成分として含む。
【請求項5】
前記1項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記金属被覆膜はモリブデン、タングステン、クロム、白金または金を主要な成分として含む。
【請求項1】
以下の工程を含む半導体集積回路装置の製造方法:
(a)実質的に完成した半導体集積回路チップの配線をFIB加工により変更する工程、
ここで、前記工程(a)は以下の下位工程を含む:
(a1)前記半導体集積回路チップの主面上の絶縁膜に、FIB切削により、第1の配線ノードに到達する第1のスルーホールを形成する工程;
(a2)前記半導体集積回路チップの主面上の絶縁膜に、FIB切削により、第2の配線ノードに到達する第2のスルーホールを形成する工程;
(a3)前記第1のスルーホール及び前記第2のスルーホールを埋め込み、前記主面上で前記第1の配線ノード及び前記第2の配線ノードを電気的に接続する金属修正配線を、FIBCVDにより形成する工程;
(a4)前記主面上で前記金属修正配線を被覆する前記金属配線よりも耐酸化性または耐腐食性の高い金属被覆膜を、FIBCVDにより形成する工程。
【請求項2】
前記1項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記金属配線は前記金属被覆膜よりもバルク比抵抗が低い。
【請求項3】
前記1項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記金属被覆膜は前記金属配線よりもモース硬度が高い。
【請求項4】
前記1項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記金属配線はモリブデン、タングステン、アルミニウム、金または銅を主要な成分として含む。
【請求項5】
前記1項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記金属被覆膜はモリブデン、タングステン、クロム、白金または金を主要な成分として含む。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−123979(P2009−123979A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297438(P2007−297438)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】
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