説明

基板の処理装置及び処理方法

【課題】この発明は半導体ウエハの上面全体をエッチング液によって均一にエッチング処理することができるようにした処理装置を提供することにある。
【解決手段】基板を回転させながら処理液によって処理する処理装置であって、
半導体ウエハを保持して回転駆動される回転テーブル16と、先端部に処理液を半導体ウエハに向けて噴射する上部ノズル体51を有し、回転テーブルの上方で上部ノズル体が半導体ウエハを横切る方向に駆動されるアーム体52と、ノズル体が半導体ウエハの周辺部から中心部に向かうときにアーム体の移動速度を次第に増加させ、中心部から周辺部に向かうときには揺動速度を次第に低下させるようアーム体の移動速度を制御する制御装置7を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は基板を回転テーブルに保持して回転させながら処理液によって処理する基板の処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、半導体装置の製造工程においては、円盤状の半導体ウエハ等の基板に回路パターンを形成するための成膜プロセスやフォトプロセスがある。これらのプロセスでは基板を回転テーブルに保持して回転させる、いわゆるスピン処理装置を用いて基板を処理するということが行なわれている。
【0003】
たとえば、基板を薬液であるエッチング液などの処理液で処理した後、同じく処理液としての純水などの洗浄液で洗浄処理し、ついで回転テーブルを高速回転させることで、上記基板に付着残留した洗浄液を除去する乾燥処理が行なわれる。
【0004】
上記スピン処理装置は、周知のように処理槽を有し、この処理槽内にはカップ体が設けられている。このカップ体内には駆動源によって回転駆動される上記回転テーブルが設けられている。この回転テーブルには上記基板の外周部を保持する複数の保持部材が周方向に沿って所定間隔で設けられ、これらの保持部材によって上記基板が回転テーブルに対して着脱可能に保持される。
【0005】
したがって、回転テーブルに基板を保持し、この回転テーブルを回転させて基板に処理液を供給すれば、この基板を処理することができ、また処理後に回転テーブルを高速回転させれば、上記基板を乾燥処理することができる。
【0006】
ところで、基板を処理する処理液を基板に供給する場合、回転テーブルの上方に固定的に配置されたノズル体から処理液を噴射供給するということが行われていた。しかしながら、固定的に配置されたノズル体から基板に処理液を供給するようにしたのでは、基板の全面にわたって処理液を均一に供給することができないということがある。
【0007】
そこで、基板の全面に対して処理液を均一に供給することができるようにするために、上記ノズル体を基板の上方で揺動駆動されるアーム体の先端部に設け、このアーム体を揺動させて上記基板を横切る方向に上記ノズル体を移動させながら、上記ノズル体から処理液を基板に供給するということが行われている。このような先行技術はたとえば特許文献1に示されている。
【特許文献1】特開2004−55916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ノズル体をアーム体の先端部に設け、このアーム体を揺動させながら上記ノズル体から処理液を基板に供給すれば、上記ノズル体を固定的に配置した場合に比べ、基板の全面に対して処理液を均一に供給することが可能となる。
【0009】
しかしながら、回転テーブルに保持されて回転駆動される基板は、回転の中心部と周辺部とで基板に供給された処理液に対して作用する遠心力に差が生じる。つまり、基板の中心部よりも周辺部の方が処理液に対して作用する遠心力が大きくなる。
【0010】
そのため、遠心力が大きく作用する基板の周辺部に供給された処理液は遠心力の作用が小さい中心部に供給された処理液に比べて基板上での滞留時間が短くなるから、滞留時間の差に応じて基板に対する処理が均一に行われなくなるということがある。
【0011】
とくに、処理液がエッチング液の場合、基板上における処理液の滞留時間はエッチング量に大きく影響するということがある。しかも、エッチング液によるエッチング量は、処理液の滞留時間、つまりエッチング時間だけでなく、エッチング温度にも大きな影響を受けることになる。
【0012】
しかしながら、基板を回転させながらエッチング液を供給すると、回転する基板の中心部と周辺部との周速度の差によって中心部よりも周辺部の温度が低くなる傾向にあるから、そのような温度差によっても基板のエッチングを均一に行なうことができないということが生じる。
【0013】
この発明は、ノズル体を回転する基板を横切る方向に駆動しながら処理液を基板に供給して処理する場合、基板の中心部と周辺部とで処理液をほぼ同じ時間で滞留させることができるようにした基板の処理装置及び処理方法を提供することにある。
【0014】
この発明は、ノズル体を回転する基板を横切る方向に駆動しながら処理液を基板に供給して処理する場合、基板の中心部と周辺部とで処理液の温度をほぼ同じに維持できるようにした基板の処理装置及び処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、基板を回転させながら処理液によって処理する処理装置であって、
上記基板を保持して回転駆動される回転テーブルと、
先端部に上記処理液を上記基板に向けて噴射するノズル体を有し、上記回転テーブルの上方で上記ノズル体が上記基板を横切る方向に駆動されるアーム体と、
上記ノズル体が上記基板の周辺部から中心部に向かうときに上記アーム体の移動速度を次第に増加させ、中心部から周辺部に向かうときには移動速度を次第に低下させるよう上記アーム体の移動速度を制御する制御手段と
を具備したことを特徴とする基板の処理装置にある。
【0016】
上記基板の下面に温度制御された流体を供給する下面流体供給手段を備えていることが好ましい。
【0017】
この発明は、基板を回転させながら処理液によって処理する処理装置であって、
上記基板を保持して回転駆動される回転テーブルと、
先端部に上記処理液を上記基板に向けて噴射するノズル体を有し、上記回転テーブルの上方で上記ノズル体が上記基板を横切る方向に揺動駆動されるアーム体と、
上記基板の下面に温度制御された流体を供給する下面流体供給手段と
を具備したことを特徴とする基板の処理装置にある。
【0018】
上記下面流体供給手段は、上記流体を上記基板の中心部と周辺部との間の複数箇所で別々に供給する複数の供給部を有し、各供給部から上記基板に供給される流体は、上記基板の中心部から周辺部にゆくにつれて温度が高くなるよう制御されることが好ましい。
【0019】
この発明は、基板を回転させながら処理液によって処理する処理方法であって、
上記基板を回転テーブルに供給して回転駆動させる工程と、
上記基板の上面に上記処理液を供給するノズル体を上記基板を横切る方向に駆動する工程と、
上記ノズル体が上記基板の周辺部から中心部に向かうときに上記ノズル体の移動速度を次第に増加させ、中心部から周辺部に向かうときには移動速度を次第に低下させる工程と
を具備したことを特徴とする基板の処理方法にある。
【0020】
上記基板の下面に温度制御された流体を供給するとともに、上記流体の温度を上記基板の中心部から周辺部にゆくにつれて高くなるよう制御する工程を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、ノズル体の移動速度を、上記基板の周辺部から中心部に向かうときには次第に増加させ、中心部から周辺部に向かうときには次第に低下させるよう制御するため、基板の周辺部に中心部よりも処理液を多く供給することができる。そのため、基板の中心部と周辺部とで処理液をほぼ同じ時間で滞留させることができるから、処理液による基板の処理を均一化することが可能となる。
【0022】
この発明によれば、基板の下面に流体を供給し、その流体の温度を制御するようにした。そのため、基板の上面に生じる中心部と周辺部との周速度の差による温度変化を基板の下面に供給する流体によって補正することができるから、温度差によって処理液による処理が不均一になるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1はスピン処理装置を示し、このスピン処理装置は処理槽1を備えている。この処理槽1内にはカップ体2が配置されている。このカップ体2は、上記処理槽1の底板上に設けられた下カップ3と、この下カップ3に対して図示しない上下駆動機構により上下動可能に設けられた上カップ4とからなる。
【0024】
上記下カップ3の底壁には周方向に所定間隔で複数の排出管5が接続されている。これら排出管5は排気ポンプ6に連通している。この排気ポンプ6は制御装置7によって発停及び回転数が制御されるようになっている。
【0025】
上記カップ体2の下面側にはベース板8が配置されている。このベース板8には、上記下カップ3と対応する位置に取付け孔9が形成されている。この取付け孔9には駆動手段を構成する制御モータ11の固定子12の上端部が嵌入固定されている。制御モータ11は上記制御装置7によって発停及び回転数が制御されるようになっている。
【0026】
上記固定子12は筒状をなしていて、その内部には同じく筒状の回転子13が回転自在に嵌挿されている。この回転子13の上端面には筒状の連結体14が下端面を接触させて一体的に固定されている。この連結体14の下端には上記固定子12の内径寸法よりも大径な鍔部15が形成されている。この鍔部15は上記固定子12の上端面に摺動自在に接触しており、それによって回転子13の回転を阻止することなくこの回転子13が固定子12から抜け落ちるのを防止している。
【0027】
上記下カップ3には上記回転子13と対応する部分に通孔3aが形成され、上記連結体14は上記通孔3aからカップ体2内に突出している。この連結体14の上端には回転テーブル16が取付けられている。この回転テーブル16の周辺部には周方向に所定間隔、この実施の形態では60度間隔で6本(2本のみ図示)の円柱状の保持部材17が図示しない駆動機構によって回転可能に設けられている。
【0028】
上記保持部材17の上端面には、この保持部材17の回転中心から偏心した位置にテーパ面を有する支持ピン18が設けられている。回転テーブル16には、基板としての半導体ウエハWが周縁部の下面を上記支持ピン18のテーパ面に当接するよう供給される。その状態で上記保持部材17を回転させれば、支持ピン18が偏心回転するから、回転テーブル16に供給された半導体ウエハWは、上記支持ピン18によって保持される。
【0029】
上記回転テーブル16は乱流防止カバー21によって覆われている。この乱流防止カバー21は上記回転テーブル16の外周面を覆う外周壁22と、上面を覆う上面壁23とを有し、上記外周壁22は上側が小径部22a、下側が大径部22bに形成されている。この乱流防止カバー21は回転テーブル16を回転させたときに、回転テーブル16の上面で乱流が発生するのを防止するようになっている。上記上カップ4の上面は開口していて、その内周面にはリング状部材25が設けられている。
【0030】
上記回転テーブル16に未処理の半導体ウエハWを供給したり、乾燥処理された半導体ウエハWを取り出すときには、上記上カップ4が後述するごとく下降させられる。
【0031】
上記処理槽1の上部壁には開口部31が形成されている。この開口部31にはULPAやHEPAなどのファン・フィルタユニット32が設けられている。このファン・フィルタユニット32はクリーンルーム内の空気をさらに清浄化して処理槽1内に導入するもので、その清浄空気の導入量は上記ファン・フィルタユニット32の駆動部33を上記制御装置7によって制御して行うようになっている。つまり、上記駆動部33により、ファン・フィルタユニット32のファン(図示せず)の回転数を制御することで、処理槽1内への清浄空気の供給量を制御できるようになっている。
【0032】
上記処理槽1の一側には出し入れ口34が開口形成されている。この出し入れ口34は、処理槽1の一側に上下方向にスライド可能に設けられたシャッタ35によって開閉される。このシャッタ35は圧縮空気で作動するシリンダ36によって駆動される。つまり、上記シリンダ36には圧縮空気の流れを制御する制御弁37が設けられ、この制御弁37を上記制御装置7によって切換え制御することで、上記シャッタ35を上下動させることができるようになっている。
【0033】
上記制御モータ11の回転子13内には筒状の固定軸41が挿通されている。この固定軸41の上端には、上記回転テーブル16に形成された通孔42から上記回転テーブル16の上面側に突出したノズルヘッド43が設けられている。
【0034】
このノズルヘッド43は図2と図3に示すように平面形状が円形で、上面が中心部から周辺部に向かって低く傾斜した傾斜面で、下面が開口した中空状に形成されていて、上記基板Wの下面の中心部に対応する位置と、径方向の中途部に対応する位置及び周辺部に対応する位置にそれぞれ供給部としての第1乃至第3の下部ノズル体44a〜44cが設けられている。
【0035】
すなわち、第1の下部ノズル体44aは中心部に1つ設けられ、第2、第3の下部ノズル体44b,44cは周方向に所定間隔、この実施の形態では45度間隔で設けられている。上記第1乃至第3の下部ノズル体44a〜44cはこの実施の形態の下面流体供給手段を構成している。なお、第1の下部ノズル体44aをノズルヘッド43の中心部に複数設けるようにしてもよい。
【0036】
図3と図4に示すように、各第1乃至第3の下部ノズル体44a〜44cにはそれぞれ第1乃至第3の供給管45a〜45cの一端が接続されている。各供給管45a〜45cの中途部にはそれぞれ第1乃至第3の温度制御部46a〜46c及び第1乃至第3の流量制御弁47a〜47cが設けられ、他端は流体、この実施の形態では窒素ガスの供給源48に接続されている。なお、流体としてはエッチング液や純水などであってもよい。
【0037】
上記第1乃至第3の温度制御部46a〜46cは上記制御装置7によって設定温度が制御され、第1乃至第3の流量制御弁47a〜47cは上記制御装置7によって窒素ガスの供給量が制御される。
【0038】
それによって、上記第1乃至第3の下部ノズル体44a〜44cには温度制御された窒素ガスが供給されるようになっている。たとえば、第1の下部ノズル体44aには第1の温度制御部46aによって20℃に温度制御された窒素ガスが供給され、第2の下部ノズル体44bには第2の温度制御部46bによって25℃に温度制御された窒素ガスが供給される。さらに、第3の下部ノズル体44cには第3の温度制御部46cによって30℃に温度制御された窒素ガスが供給されるようになっている。
【0039】
なお、図1に示すように、上記乱流防止カバー21の上面壁23には上記第1乃至第3の下部ノズル体44a〜44cに対向する位置には開口部49が形成されている。この開口部49によって各下部ノズル体44a〜44cから噴射された窒素ガスが半導体ウエハWの下面に到達可能となっている。
【0040】
回転テーブル16に保持された半導体ウエハWの上方には、洗浄処理時に半導体ウエハWの上面に処理液を供給する第1の処理液供給手段としての上部ノズル体51が配置されている。この上部ノズル体51は水平に配置されたアーム体52の先端に設けられた取付け部材53に取付けられている。
【0041】
上記アーム体52の基端は軸線を垂直にして配置された回転軸55の上端部に連結されている。この回転軸55の下端は回転駆動源56の出力軸57に連結されている。回転駆動源56は上記制御装置7によって上記回転軸55の回転角度及び回転速度を後述するように制御するようになっている。
【0042】
すなわち、揺動する上記アーム体52の先端に設けられた上部ノズル体51は図7に矢印Rで示す揺動軌跡のように上記回転テーブル16に保持され半導体ウエハWの径方向一端側の外方から中心Oを通過して径方向他端の外方にわたる間で揺動駆動される。上部ノズル体51の揺動軌跡Rが半導体ウエハWの外周縁の径方向一端に交差する点を01、半導体ウエハWの中心に交差する点をC、半導体ウエハWの外周縁の径方向他端に交差する点を02とすると、そのときの揺動速度は図6に示すように半導体ウエハWの周辺部から中心部に向かうとき、つまり01からCに向かうときは次第に増加し、中心部から周辺部に向かうとき、つまりCから02に向かうときは次第に減速するよう制御される。
【0043】
図5に示すように、上記上部ノズル体51には一端に処理液としてのエッチング液を供給する第1の給液源61が接続された第1の給液管63aと、一端に処理液としての純水Wを供給する第2の給液源62が接続された第2の給液管63bの他端が接続されている。第1の給液管63aの中途部には第4の流量制御弁64aと上記上部ノズル体51に供給されるエッチング液の温度を制御する第4の温度制御部65が設けられ、第2の給液管63bの中途部には第5の流量制御弁64bが設けられている。
【0044】
上記第4、第5の流量制御弁64a,64bによる上記半導体ウエハWの上面に供給するエッチング液と純水の流量及び第4の温度制御部64aによるエッチング液の温度の制御は上記制御装置7からの制御信号によって行われるようになっている。
【0045】
つぎに、上記構成の処理装置によって半導体ウエハWの上面をエッチング処理するときの動作について説明する。
回転テーブル16に半導体ウエハWを供給して保持したならば、この回転テーブル16を回転させる。半導体ウエハWを回転させたならば、上部ノズル体51からエッチング液を供給すると同時に、この上部ノズル体51が設けられたアーム体52を揺動させる。このときのアーム体52の揺動速度は、図6に示すように半導体ウエハWの周辺部から中心部に向かうときには次第に増加させ、中心部に到達してから周辺部に向かうときには次第に減速させる。
【0046】
すなわち、半導体ウエハWの周辺部は中心部に比べ、半導体ウエハWの上面に供給されたエッチング液に作用する遠心力が大きい。そのため、半導体ウエハWの周辺部に供給されたエッチング液は中心部に供給されたエッチング液よりも速い速度で半導体ウエハWの上面から排出されることになる。
【0047】
そこで、半導体ウエハWの上面にエッチング液を供給する上部ノズル体51が設けられたアーム体52の揺動速度を、上述したように半導体ウエハWの周辺部から中心部に向かうときには次第に増加させ、中心部に到達してから周辺部に向かうときには次第に減速させることで、半導体ウエハWの中心部よりも周辺部に供給されるエッチング液の供給量を増大させることができる。
【0048】
それによって、半導体ウエハWの周辺部に供給されたエッチング液に作用する遠心力が中心部に供給されるエッチング液に作用する遠心力よりも大きいために除去され易くても、周辺部におけるアーム体52の揺動速度を中心部よりも周辺部で遅くしてエッチング液を供給することで、エッチング液から受けるエッチング作用の時間を中心部とほぼ同じにすることができる。その結果、半導体ウエハWの周辺部と中心部をほぼ同じエッチング量でエッチングすることができる。
【0049】
半導体ウエハWの上面にエッチング液を供給してエッチングを行う際、下面には温度制御された窒素ガスを供給する。すなわち、ノズルヘッド43に設けられた第1乃至第3の下部ノズル体44a〜44cからそれぞれ温度制御された窒素ガスを半導体ウエハWの下面に供給する。
【0050】
第1の下部ノズル体44aから半導体ウエハWの下面の中心部に供給される窒素ガスの温度は約20℃で、第2のノズル体44bから径方向中途部に供給される窒素ガスの温度は約25℃であり、第3のノズル体44cから径方向周辺部に供給される窒素ガスの温度は約30℃である。すなわち、半導体ウエハWの中心部から周辺部にゆくにつれて下面に供給される窒素ガスの温度を次第に高くしている。
【0051】
通常、半導体ウエハWを回転駆動すると、その中心部と周辺部との周速度の差によって周速度の速い周辺部の温度が中心部の温度よりも低くなるが、半導体ウエハWの下面に供給する窒素ガスの温度を、中心部から周辺部にゆくにつれて次第に上昇させるようにしたことで、回転する半導体ウエハWの中心部と周辺部との周速度の違いによる温度差がなくなるよう、温度補正することができる。
【0052】
半導体ウエハWをエッチング処理する場合、そのエッチング速度はエッチング液の温度に左右されることになるが、半導体ウエハWの下面に供給する窒素ガスによって温度差が生じないようにしたことで、エッチング速度に差が生じるのを防止することができる。
【0053】
すなわち、半導体ウエハWの上面にエッチング液を供給する上部ノズル体51の揺動速度の制御と、半導体ウエハWの下面に供給される窒素ガスの温度制御を行うことで、半導体ウエハWの上面のエッチングを全面にわたって均一に行なうことが可能となる。
【0054】
このようにして、半導体ウエハWの上面にエッチング液を供給してエッチング処理を行なったならば、上部ノズル体51に純水を供給し、半導体ウエハWの上面をリンス処理する。
【0055】
リンス処理が終了したならば、回転テーブル16をそれまでよりも高速度で回転させ、遠心力によって半導体ウエハWの上面に残留する純水を除去する乾燥処理を行なうことで、半導体ウエハWの一連の処理が終了することになる。
【0056】
上記一実施の形態ではアーム体を揺動させるようにしたが、アーム体を直線運動させるようにしてもよい。その場合、アーム体の先端に設けられた上部ノズル体が基板上の中心部を通るよう駆動したり、中心部を通らないように駆動してもよい。
【0057】
上記一実施の形態では半導体ウエハの下面に窒素ガスを温度制御して供給するようにしたが、半導体ウエハの裏面の汚れの除去を行うような場合、半導体ウエハの裏面にエッチング液や洗浄液などの液体を供給するようにしてもよい。
【0058】
その場合、半導体ウエハの上面をエッチング処理するのであれば、裏面に供給する液体も、上記一実施の形態のように温度制御することで、上面だけでなく下面のエッチング処理も全面にわたって均一に行なうことができる。
【0059】
また、基板としては半導体ウエハに限られず、液晶ディスプレイパネルに用いられる矩形状のガラス基板であってもよく、さらに基板に行なう処理としてはエッチング処理に限られず、他の薬液を用いた処理であってもよく、要は基板の中心部と周辺部において処理液が作用する時間を同じにしたい場合や温度を同じにしたい場合などにこの発明を適用することができる。
【0060】
なお、処理液による処理の均一化を図るためには、基板の上面に処理液を供給する上部ノズル体の揺動速度の制御と、下面に温度制御された流体を供給する温度制御のどちらか一方だけを行うようにしても、効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】この発明の一実施の形態を示す処理装置の概略的構成図。
【図2】上部ノズル体が設けられたノズルヘッドの平面図。
【図3】図2に示すノズルヘッドの縦段面図。
【図4】第1乃至第3の下部ノズル体の配管系統図。
【図5】上部ノズル体の配管系統図。
【図6】半導体ウエハ上を横切る方向に揺動駆動される上部ノズル体の揺動速度の変化を示すグラフ。
【図7】半導体ウエハ上を横切る方向上部ノズル体の揺動軌跡の説明図。
【符号の説明】
【0062】
1…処理槽、7…制御装置、16…回転テーブル、17…保持部材、43…ノズルヘッド、44a〜44c…第1乃至第3の下部ノズル体(供給部)、46a〜46c…第1乃至第3の温度制御部、48…供給源、51…上部ノズル体、52…アーム体、61…第1の給液源、62…第2の給液源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を回転させながら処理液によって処理する処理装置であって、
上記基板を保持して回転駆動される回転テーブルと、
先端部に上記処理液を上記基板に向けて噴射するノズル体を有し、上記回転テーブルの上方で上記ノズル体が上記基板を横切る方向に駆動されるアーム体と、
上記ノズル体が上記基板の周辺部から中心部に向かうときに上記アーム体の移動速度を次第に増加させ、中心部から周辺部に向かうときには速度を次第に低下させるよう上記アーム体の移動速度を制御する制御手段と
を具備したことを特徴とする基板の処理装置。
【請求項2】
上記基板の下面に温度制御された流体を供給する下面流体供給手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項3】
基板を回転させながら処理液によって処理する処理装置であって、
上記基板を保持して回転駆動される回転テーブルと、
先端部に上記処理液を上記基板に向けて噴射するノズル体を有し、上記回転テーブルの上方で上記ノズル体が上記基板を横切る方向に揺動駆動されるアーム体と、
上記基板の下面に温度制御された流体を供給する下面流体供給手段と
を具備したことを特徴とする基板の処理装置。
【請求項4】
上記下面流体供給手段は、上記流体を上記基板の中心部と周辺部との間の複数箇所で別々に供給する複数の供給部を有し、各供給部から上記基板に供給される流体は、上記基板の中心部から周辺部にゆくにつれて温度が高くなるよう制御されることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の基板の処理装置。
【請求項5】
基板を回転させながら処理液によって処理する処理方法であって、
上記基板を回転テーブルに供給して回転駆動させる工程と、
上記基板の上面に上記処理液を供給するノズル体を上記基板を横切る方向に駆動する工程と、
上記ノズル体が上記基板の周辺部から中心部に向かうときに上記ノズル体の移動速度を次第に増加させ、中心部から周辺部に向かうときには移動速度を次第に低下させる工程と
を具備したことを特徴とする基板の処理方法。
【請求項6】
上記基板の下面に温度制御された流体を供給するとともに、上記流体の温度を上記基板の中心部から周辺部にゆくにつれて高くなるよう制御する工程を備えていることを特徴とする請求項5記載の基板の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−67819(P2010−67819A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233184(P2008−233184)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】