説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】基板表面の全域に対して、処理液による処理を均一に施すことができる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【解決手段】この基板処理装置1は、スピンチャック4と、スピンチャック4に保持されたウエハWの表面に向けて、高温(たとえば80℃)のSC1を供給するためのSC1ノズル5と、スピンチャック4に保持されたウエハWの表面に水蒸気を供給するための蒸気ノズル6と、スピンチャック4を収容するカップ8とを備えている。SC1ノズル5から吐出された高温のSC1は、ウエハWの中央部に供給される。蒸気ノズル6から吐出された水蒸気は、ウエハWの中間位置Mに供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に処理液を用いた処理を施すための基板処理装置および基板処理方法に関する。処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などの基板が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程では、半導体ウエハや液晶表示パネル用ガラス基板などの基板の表面に処理液による処理を施すために、基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置が用いられることがある。
この枚葉式の基板処理装置は、基板をほぼ水平に保持しつつ回転させるスピンチャックと、スピンチャックによって回転される基板表面の中央部に処理液を吐出するための処理液ノズルとを備えている。基板の表面上に供給された処理液は、基板の回転により生じる遠心力を受けて、基板の表面上を周縁に向けて流れ、基板の表面の全域に行き渡る。これにより、基板の表面の全域に処理液による処理が施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−286221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような枚葉式の基板処理装置において、たとえば、処理速度を向上させるために、高温に加熱された処理液が用いられる場合がある。この場合、処理液ノズルから吐出される処理液は、基板の表面の中央部に供給された直後は高温であるが、基板の中央部から基板の周縁に向けて流れる過程で、その液温が低下してしまう。そのため、基板上において、その中央部で処理液の温度が相対的に高くなり、中央部以外の領域で処理液の温度が相対的に低くなってしまう。その結果、基板面内で処理速度がばらつくという問題がある。すなわち、基板表面の中央部では、処理が相対的に速く進むのに対して、基板表面における中央部以外の領域では処理速度が相対的に遅くなる。
【0005】
そこで、この発明の目的は、基板表面の全域に対して、処理液による処理を均一に施すことができる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)を保持する基板保持手段(4)と、前記基板保持手段に保持された基板表面に対して、常温よりも高温の処理液を吐出する処理液ノズル(5;35)と、前記基板保持手段に保持された基板表面に対して、前記処理液に含まれる液体の蒸気を吐出する蒸気ノズル(6;36)とを含む、基板処理装置(1;31)である。
【0007】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、特許請求の範囲を実施形態に限定する趣旨ではない。以下、この項において同じ。
基板表面に供給された高温処理液の温度が低下する主な原因の1つは、処理液に含まれる液体の蒸発である。すなわち、液体の蒸発時に奪われる気化熱によって、処理液の温度低下が生じる。そこで、この発明では、処理液ノズルから基板表面に高温の処理液が供給される一方で、蒸気ノズルから、基板表面に向けて、前記処理液に含まれる液体の蒸気が供給される。これにより、基板表面に供給された処理液が蒸発し難くなるので、処理液の蒸発による温度低下を抑制できる。
【0008】
とくに、基板表面に供給された蒸気が基板の周囲に滞留し、基板の周囲の雰囲気が飽和状態(雰囲気に含まれる液体の蒸気の量が飽和蒸気量に達した状態)になる。飽和状態にある雰囲気下では、雰囲気に蒸気が入り込めず、液体は蒸発しない。そのため、基板の周囲の雰囲気が飽和状態に保たれている場合は、基板表面に供給された高温の処理液に含まれる液体が基板表面上で蒸発せず、処理液に含まれる液体の蒸発にともなう熱損失がない。したがって、基板表面に供給された処理液の温度低下を抑制または防止することができ、基板表面上の処理液の温度をほぼ均一に保つことができる。それゆえ、基板表面の全域に対して処理液による処理を均一な処理速度で施すことができる。
【0009】
この発明の一実施形態に係る基板処理装置は、請求項2に記載されているように、前記基板保持手段に保持された基板を、所定の回転軸線まわりに回転させる基板回転手段(9)をさらに含み、前記処理液ノズルは、前記基板回転手段によって回転される基板表面の中央部に向けて処理液を吐出し、前記蒸気ノズルは、前記基板回転手段によって回転される基板表面における中央部以外の所定の領域(M)に向けて蒸気を吐出するように構成されている。
【0010】
この構成によれば、基板表面の中央部に高温の処理液が供給され、基板表面における中央部以外の所定の領域に蒸気が供給される。基板表面の中央部に供給された高温の処理液は、基板の回転による遠心力を受けて中央部から周縁に向けて流れ、その基板表面上を流れる過程で基板に熱を奪われる。
一方、基板表面における中央部以外の所定の領域に蒸気が供給されるので、基板表面における中央部以外の領域を流れる処理液に蒸気から熱が付与される。そのため、基板表面における中央部以外の所定の領域にある処理液の液温を、たとえば、基板の中央部にある処理液の温度とほぼ同じ温度に保つことができる。すなわち、基板表面における処理液の温度を、その全域においてほぼ均一に分布させることができる。これにより、基板表面の全域に対して処理液による処理を、より一層均一に施すことができる。
【0011】
また、この発明の別の実施形態に係る基板処理装置は、基板保持手段に保持された基板を、所定の回転軸線周りに回転させる基板回転手段(9)と、前記処理液ノズルを、基板表面に沿って移動させるための処理液ノズル移動手段(34)と、前記蒸気ノズルを、基板表面に沿って移動させるための蒸気ノズル移動手段(39)と、基板表面における前記蒸気ノズルからの蒸気の供給位置の前記回転軸線からの距離が、基板表面における前記処理液ノズルからの高温の処理液の供給位置の前記回転軸線からの距離よりも大きくなるように、前記処理液ノズル移動手段および前記蒸気ノズル移動手段を移動制御する移動制御手段(30)とをさらに含む。
【0012】
この場合、基板が回転されるとともに、基板表面における処理液の供給位置が移動するので、処理液ノズルから吐出された高温の処理液を、基板表面の全域に直接供給することができる。また、基板表面における蒸気の供給位置が、基板表面における処理液の供給位置よりも基板の径方向の外方に位置しているので、基板の回転による遠心力を受けて基板表面を基板の周縁に向けて流れる処理液に、蒸気からの熱を付与することができる。そのため、基板表面における処理液の温度が、当該処理液が供給される領域のほぼ全部においてほぼ均一に分布する。これにより、基板表面の全域に対して処理液による処理を、より一層均一に施すことができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記処理液ノズルからの処理液の吐出と並行して、前記蒸気ノズルから蒸気を吐出させる制御手段(30)をさらに含む、請求項1または2記載の基板処理装置である。
この構成によれば、処理液ノズルからの処理液の吐出と並行して、蒸気ノズルからの蒸気が吐出される。そのため、高温の処理液が基板表面に供給されるときに、基板の周囲における蒸気圧を高く保つことができ、たとえば、飽和状態に保つことができる。これにより、基板表面に供給された処理液に含まれる液体の蒸発をより効果的に抑制することができるから、気化熱の放散による処理液の温度低下を効果的に抑制できる。
【0014】
請求項4に記載のように、前記処理液ノズルから吐出される処理液が薬液である場合に、前記蒸気ノズルは、前記薬液の溶媒の蒸気を吐出することが好ましい。これにより、基板の周辺における当該溶媒の蒸気圧を高く保つことができるので、処理液の蒸発を一層効果的に抑制できる。
請求項5記載の発明は、前記処理液に含まれる液体と同じ種類の液が流通する液流通管(18)と、不活性ガスが流通する不活性ガス流通管(19)と、前記液流通管を流通する前記液を加熱して蒸発させて蒸気を発生させる加熱手段(20)と、前記液流通管および前記不活性ガス流通管に接続されて、前記液流通管からの液と前記不活性ガス流通管からの不活性ガスとを混合する混合部(15)と、前記混合部で生成された蒸気を、前記蒸気ノズルに供給する蒸気供給管(16)とを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0015】
この構成によれば、処理液に含まれる液体と同じ種類の液が加熱手段によって加熱されることにより、その液体の蒸気が発生する。そして、発生した蒸気と不活性ガス(キャリアガス)とを混合部で混合することにより、基板に供給されるべき蒸気を生成することができる。そのため、比較的簡単な構成で、基板に供給されるべき蒸気を、蒸気ノズルに供給することができる。
【0016】
請求項6記載の発明は、前記液流通管を流通する液の流量を調節するための液流量調節手段(21)をさらに含む、請求項5記載の基板処理装置である。
この構成によれば、液流量調節手段による液流通管を流通する液の流量調節によって、蒸気ノズルから吐出される蒸気の濃度を変更することができる。これにより、基板の周囲の領域に含まれる蒸気量を変更することができる。また、基板の周囲の領域に含まれる蒸気量の変更を、比較的簡単な構成で実現することができる。
【0017】
請求項7記載の発明は、前記不活性ガス流通管を流通する前記不活性ガスの流量を調節するためのガス流量調節手段(23)をさらに含む、請求項5または6記載の基板処理装置である。
この構成によれば、不活性ガス流通管を流通する不活性ガスの流量を調節することによって、蒸気ノズルから吐出される蒸気の吐出流量を変更することができる。また、この不活性ガスの流量調節によって、基板の周囲の雰囲気の圧力を調節することも可能である。雰囲気に含まれる飽和蒸気量は、雰囲気の圧力に依存するので、この不活性ガスの流量を調節することにより、たとえば、基板の周囲の雰囲気を飽和状態に保つことも可能である。
【0018】
請求項8記載の発明は、前記基板保持手段を収容するカップ(8)と、前記カップ内の雰囲気を排気するための排気手段(28)と、前記蒸気ノズルからの蒸気の吐出と並行して、前記カップ内の雰囲気の排気流量を低減させまたは停止させるように、前記排気手段による排気流量を調節するための排気流量調節機構(29)とをさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0019】
この構成によれば、蒸気ノズルによる蒸気の吐出中は、カップ内からの排気流量が低減または停止されるので、蒸気ノズルから吐出された蒸気がカップ内に留まり、カップ内の雰囲気を飽和状態に保ち易くなる。
請求項9記載の発明は、基板保持手段(4)に基板(W)を保持する基板保持工程と、前記基板保持手段に保持された基板表面に対して、常温よりも高温の処理液を供給する処理液供給工程(S4)と、前記処理液供給工程と並行して、基板表面に対して、前記処理液に含まれる液体の蒸気を供給する蒸気供給工程(S3)とを含む、基板処理方法である。
【0020】
この方法によれば、請求項1の発明に関連して述べた作用効果と同様な作用効果を達成することができる。
また、請求項10記載に記載のように、前記蒸気供給工程は、前記処理液供給工程よりも、先に開始されてもよい。この場合、たとえば、基板の周囲の雰囲気の飽和状態になった状態で、基板表面への処理液の供給を開始することができる。そのため、処理液の供給直後から、液体の蒸発を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す基板処理装置における処理の一例を示す工程図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図5】図4に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】高温のSC1および水蒸気の供給中におけるSC1ノズルおよび蒸気ノズルの動きを表す図解的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る基板処理装置1の構成を模式的に示す断面図である。この基板処理装置1は、基板の一例としての半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という。)におけるデバイス形成領域側の表面に対して、薬液の一例としてのSC1(アンモニア過酸化水素水)による洗浄処理(たとえば、パーティクル除去処理)を施すための枚葉型の装置である。SC1とは、アンモニア過酸化水素水(APM:ammonia-hydrogen peroxide mixture)であり、アンモニア、過酸化水素水および水を所定の混合比(たとえば、アンモニア:過酸化水素水:水=1:4:20)で混合して調製される薬液である。この薬液の溶媒は水である。
【0023】
この基板処理装置1は、隔壁2により区画された処理室3内に、ウエハWをほぼ水平に保持するとともに、その中心を通るほぼ鉛直な回転軸線CまわりにウエハWを回転させるスピンチャック(基板保持手段)4と、スピンチャック4に保持されたウエハWの表面(上面)に向けて、SC1を供給するためのSC1ノズル(処理液ノズル)5と、スピンチャック4に保持されたウエハWの表面に水蒸気を供給するための蒸気ノズル6と、スピンチャック4に保持されたウエハWの表面にDIW(脱イオン水)を供給するためのDIWノズル7と、スピンチャック4を収容するカップ8とを備えている。
【0024】
スピンチャック4は、スピンモータ(基板回転手段)9と、このスピンモータ9の回転駆動力によって鉛直軸線まわりに回転される円盤状のスピンベース11と、スピンベース11の周縁の複数箇所にほぼ等間隔で設けられ、ウエハWをほぼ水平な姿勢で挟持するための複数個の挟持部材12とを備えている。これにより、スピンチャック4は、複数個の挟持部材12によってウエハWを挟持した状態で、スピンモータ9の回転駆動力によってスピンベース11を回転させることにより、そのウエハWを、ほぼ水平な姿勢を保った状態で、スピンベース11とともに回転軸線Cまわりに回転させることができる。
【0025】
なお、スピンチャック4としては、挟持式のものに限らず、たとえば、ウエハWの裏面を真空吸着することにより、ウエハWを水平な姿勢で保持し、さらにその状態で鉛直な回転軸線まわりに回転することにより、その保持したウエハWを回転させることができる真空吸着式のもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
SC1ノズル5は、たとえば連続流の状態で高温(たとえば80℃)のSC1を吐出するストレートノズルであり、スピンチャック4の上方で、その吐出口をウエハWの回転中心付近(中央部)に向けて固定的に配置されている。このSC1ノズル5には、高温SC1供給源からの高温のSC1が供給されるSC1供給管13が接続されている。SC1供給管13の途中部には、SC1ノズル5からのSC1の吐出/吐出停止を切り換えるためのSC1バルブ14が介装されている。
【0026】
蒸気ノズル6は、スピンチャック4の上方で、その吐出口をウエハWの回転軸線Cと周縁との間の所定の中間位置M(たとえば、ウエハWの回転軸線Cから、そのウエハWの半径の半分に相当する距離を隔てた位置。)に向けて固定的に配置されている。この蒸気ノズル6には、混合部15から延びる蒸気供給管16が接続されている。蒸気供給管16の途中部には、水蒸気の吐出/吐出停止を切り換えるための蒸気バルブ17が介装されている。混合部15には、DIW流通管(液流通管)18および窒素ガス流通管(不活性ガス流通管)19が接続されている。
【0027】
DIW流通管18には、DIW供給源からDIWが供給されている。DIW流通管18の途中部には、ヒータ(加熱手段)20、DIW流量調節バルブ(液流量調節手段)21および第1DIWバルブ22が、混合部15側からこの順に介装されている。第1DIWバルブ22は、DIW流通管18を開閉するためのものである。DIW流量調節バルブ21は、DIW流通管18を流通するDIWの流量を調節するものである。ヒータ20の温度は、DIW流通管18を流通するDIWを瞬時に蒸発させることができる程度の高温に制御されている。そのため、DIW流通管18を流通するDIWは、ヒータ20により加熱されて、蒸発する。これにより、DIW流通管18で水蒸気が生成される。
【0028】
窒素ガス流通管19には、窒素ガス供給源から窒素ガスが供給されている。この窒素ガスは、水蒸気のキャリアガスとして用いられる。窒素ガス流通管19の途中部には、窒素ガス流量調節バルブ(ガス流量調節手段)23および窒素ガスバルブ24が、混合部15側からこの順に介装されている。窒素ガスバルブ24は、窒素ガス流通管19を開閉するためのものである。窒素ガス流量調節バルブ23は、窒素ガス流通管19を流通する窒素ガスの流量を調節するものである。
【0029】
混合部15は、DIW流通管18からの水蒸気と、窒素ガス流通管19からの窒素ガスとを混合して、予め定める濃度(水蒸気および窒素ガスの混合ガス中における水蒸気濃度)の水蒸気(正確には前記混合ガス)を調製し、その調製後の水蒸気を蒸気供給管16に供給する。
第1DIWバルブ22および窒素ガスバルブ24が開かれると、DIWを加熱して生成した水蒸気および窒素ガス流通管19からの窒素ガスが、所定の混合比で混合部15に供給される。これにより、混合部15において予め定める濃度の水蒸気が生成(調製)される。そして、第1DIWバルブ22および窒素ガスバルブ24が開かれた状態で、蒸気バルブ17が開かれると、混合部15で調整された水蒸気が、蒸気供給管16を通して蒸気ノズル6に供給され、蒸気ノズル6から吐出される。
【0030】
DIW流量調節バルブ21の開度を変更することにより、蒸気ノズル6から吐出される水蒸気の濃度を変更することができる。これにより、カップ8内に含まれる水蒸気量(水蒸気圧)を調節することができる。DIW流量調節バルブ21の開度は、カップ8内の雰囲気が飽和状態(雰囲気に含まれる水蒸気が飽和水蒸気量に達した状態)に保たれるような開度に設定されている。
【0031】
DIWノズル7は、たとえば、連続流の状態でDIWを吐出するストレートノズルであり、スピンチャック4の上方で、その吐出口をウエハWの回転中心(中央部)付近に向けて固定的に配置されている。このDIWノズル7には、DIW供給源からの常温(たとえば22〜23℃)のDIWが供給されるDIW供給管25が接続されている。DIW供給管25の途中部には、DIWノズル7からのDIWの吐出/吐出停止を切り換えるための第2DIWバルブ26が介装されている。
【0032】
カップ8は、ウエハWの処理に用いられた後のSC1およびDIWを処理するためのものであり、有底円筒容器状に形成されている。カップ8の底部には、カップ8内の雰囲気を排気するための排気孔(図示しない)が形成されている。排気孔には、排気管(排気手段)28が接続されている。排気管28は、処理室3の外方に延びて、その下流端が図示しない排気設備に接続されている。排気管28の途中部には、排気管28を流通する排気の流量を調節するため排気流量調節機構29が介装されている。この排気流量調節機構29として、たとえば、ロータリーアクチュエータ(モータやエアシリンダなど)の駆動により排気管28の流量を変更させる排気ダンパを例示することができる。その他、排気流量調節機構29として、流量調節バルブを例示することもできる。
【0033】
図2は、基板処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。
基板処理装置1は、マイクロコンピュータを含む構成の制御装置30を備えている。この制御装置30には、スピンモータ9、SC1バルブ14、第1DIWバルブ22、蒸気バルブ17、第2DIWバルブ26、DIW流量調節バルブ21、ヒータ20、窒素ガスバルブ24、窒素ガス流量調節バルブ23および排気流量調節機構29などが制御対象として接続されている。
【0034】
図3は、基板処理装置1における処理の一例を示す工程図である。
処理対象のウエハWは、搬送ロボット(図示しない)によって処理室3に搬入されて(ステップS1)、その表面を上方に向けた状態でスピンチャック4に保持される。
ウエハWがスピンチャック4に保持された後、制御装置30は、スピンモータ9を駆動して、ウエハWを回転開始させる(ステップS2)。ウエハWの回転速度が所定の液処理速度(たとえば、1000rpm)に達すると、制御装置30は、蒸気バルブ17を開いて、蒸気ノズル6から水蒸気を吐出する。蒸気ノズル6からの水蒸気は、ウエハW表面の中間位置Mに供給される。(S3:水蒸気供給)。また、制御装置30は、排気流量調節機構29を制御して、排気管28を流通する排気の流量を低減させる(たとえば、通常時の1/5程度にする)。そのため、ウエハW表面に供給された水蒸気の大部分がカップ8内に留まる。そして、カップ8内には、水蒸気を含む雰囲気が充満する。
【0035】
蒸気ノズル6からの水蒸気の吐出開始から予め定める時間(たとえば5秒間)が経過すると、制御装置30は、SC1バルブ14を開いて、SC1ノズル5から高温(たとえば、40〜80℃。好ましくは80℃)のSC1を吐出する。SC1ノズル5からの高温のSC1は、ウエハW表面の中央部に供給される。(S4:高温SC1供給)。このSC1の吐出開始時には、蒸気ノズル6からの水蒸気の吐出により、カップ8内の雰囲気はほぼ飽和状態になっている。
【0036】
SC1ノズル5から吐出された高温のSC1は、ウエハWの表面の回転中心付近(中央部)に供給される。そして、ウエハWの表面に供給されたSC1は、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWに熱を奪われながら、ウエハWの表面を中央部から周縁に向けて拡がる。このステップS4では、SC1ノズル5からのSC1の吐出と並行して、蒸気ノズル6からの水蒸気の吐出が継続されているので、カップ8内の雰囲気の飽和状態が維持されている。そのため、ウエハW表面に供給される高温のSC1に含まれる水は、ウエハW表面を流れる過程でほとんど蒸発しない。
【0037】
一方、ウエハW表面の中間位置Mに供給された水蒸気は、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの周縁に向けて移動する。水蒸気は非常に高温であるので、ウエハW表面における中間位置Mよりも径方向外方にあるSC1に対して水蒸気からの熱が与えられる。そのため、ウエハWの表面の中間位置Mから周縁に至る領域に存在するSC1の温度は高温に保たれる。これにより、ウエハW表面におけるSC1の液温は、ウエハW表面の全域においてほぼ同じ温度(高温)になる。
【0038】
このSC1を用いた処理により、ウエハWの表面に付着しているパーティクル等の異物がウエハWの表面全域から除去される。
SC1ノズル5によるSC1の供給開始から予め定めるSC1処理時間が経過すると、制御装置30はSC1バルブ14を閉じて、SC1ノズル5からのSC1の吐出を停止させる。また、制御装置30は、SC1バルブ14の閉成と同じタイミングで、蒸気バルブ17を閉じる。これにより、蒸気ノズル6からの水蒸気の吐出が停止される。
【0039】
また、制御装置30は、排気流量調節機構29を制御して、排気管28を流通する排気の流量を、所定の低流量から通常の流量に戻す。これにより、カップ8内から水蒸気が排気される。
さらに、制御装置30は、第2DIWバルブ26を開いて、DIWノズル7からウエハWの表面の回転中心付近(中央部)に向けて常温のDIWを吐出する。ウエハWの表面に供給されたDIWが、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの周縁に向けて流れ、このDIWによってウエハWの上面に付着しているSC1が洗い流される(S5:リンス処理)。
【0040】
DIWノズル7によるDIWの吐出開始から所定のリンス処理時間が経過すると、制御装置30は、第2DIWバルブ26を閉じて、ウエハWへのDIWの供給を停止する。
その後、制御装置30は、スピンチャック4をスピン乾燥回転速度(たとえば2500rpm程度)まで加速する。これにより、DIWによるリンス後のウエハWの表面に付着しているDIWが遠心力で振り切られて、ウエハWが乾燥される(S6:スピンドライ)。
【0041】
スピンドライ処理が所定時間にわたって行われると、スピンチャック4の回転が停止される(ステップS7)。その後、搬送ロボット(図示しない)によってウエハWが処理室3から搬出される(ステップS8)。
以上により、この実施形態によれば、ウエハW表面に高温のSC1が供給される際に、ウエハWに水蒸気が供給される。ウエハW表面に供給された水蒸気はカップ8内に滞留し、カップ8内の雰囲気が飽和状態になる。飽和状態にある雰囲気下では、雰囲気に水蒸気が入り込めず、水は蒸発しない。そのため、カップ8内の雰囲気が飽和状態に保たれている場合は、ウエハW表面に供給された高温のSC1に含まれる水は蒸発をせずに、ウエハW表面上を流れる。そのため、SC1に含まれる水の蒸発にともなう熱(すなわち気化熱)の損失がない。
【0042】
また、ウエハW表面の中央部に高温のSC1が供給され、ウエハW表面における所定の中間位置Mに水蒸気が供給される。ウエハW表面の中央部に供給された高温のSC1は、ウエハWの回転による遠心力を受けて中央部から周縁に向けて流れ、そのウエハW表面上を流れる過程でウエハWに熱を奪われる。一方、ウエハW表面における中間位置Mに水蒸気が供給されるので、ウエハW表面を流れるSC1に水蒸気から熱が与えられる。そのため、ウエハW表面上では中間位置Mから周縁に至る領域におけるSC1の温度は高温に保たれ、ウエハW表面におけるSC1は、その全域においてほぼ同じ温度(高温)で分布する。これにより、ウエハW表面の全域に対してSC1による処理を、均一に施すことができる。
【0043】
図4は、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置31の構成を模式的に示す断面図である。この第2実施形態において、図1〜図3に示す実施形態(第1実施形態)に示された各部に対応する部分には、第1実施形態と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。また、この図4に示す基板処理装置31が、第1実施形態に係る基板処理装置1と相違する点は、スピンチャック4に対して固定的に配置されたSC1ノズル5および蒸気ノズル6に代えて、いわゆるスキャンノズルの形態のSC1ノズル(処理液ノズル)35および蒸気ノズル36を採用した点である。
【0044】
SC1ノズル35は、たとえば、連続流の状態で高温のSC1を吐出するストレートノズルであり、その吐出口を下方に向けた状態で、ほぼ水平に延びる第1アーム32の先端部に取り付けられている。第1アーム32の基端部は、カップ8の側方においてほぼ鉛直に延びる第1支持軸33の上端部に支持されている。第1支持軸33には、モータ(図示しない)を含む第1アーム揺動駆動機構(処理液ノズル移動手段)34が結合されている。第1アーム揺動駆動機構34から第1支持軸33に回転力を入力して、第1支持軸33を回動させることにより、スピンチャック4の上方で第1アーム32を揺動させることができる。SC1ノズル35には、SC1供給管13の先端部が接続されている。
【0045】
スピンチャック4にウエハWが保持され、そのウエハWの上方にSC1ノズル35が配置された状態で、SC1ノズル35からSC1を吐出させることにより、ウエハWの表面にSC1を供給することができる。そして、このSC1ノズル35からウエハWの表面へのSC1の供給時に、第1アーム32を所定の角度範囲内で揺動させることにより、ウエハWの表面におけるSC1の供給位置を、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁に至る範囲内を円弧状の軌跡を描きつつ移動させることができる。
【0046】
蒸気ノズル36は、その吐出口を下方に向けた状態で、ほぼ水平に延びる第2アーム37の先端部に取り付けられている。第2アーム37の基端部は、カップ8の側方においてほぼ鉛直に延びる第2支持軸38の上端部に支持されている。第2支持軸38には、モータ(図示しない)を含む第2アーム揺動駆動機構(蒸気ノズル移動手段)39が結合されている。第2アーム揺動駆動機構39から第2支持軸38に回転力を入力して、第2支持軸38を回動させることにより、スピンチャック4の上方で第2アーム37を揺動させることができる。蒸気ノズル36には、蒸気供給管16の先端部が接続されている。
【0047】
スピンチャック4にウエハWが保持され、そのウエハWの上方に蒸気ノズル36が配置された状態で、蒸気ノズル36から水蒸気を吐出させることにより、ウエハWの表面に水蒸気を供給することができる。そして、この蒸気ノズル36からウエハWの表面への水蒸気の供給時に、第2アーム37を所定の角度範囲内で揺動させることにより、ウエハWの表面における水蒸気の供給位置を、ウエハWの中間位置MからウエハWの周縁を経てウエハW外に至る範囲内を円弧状の軌跡を描きつつ移動させることができる。
【0048】
図5は、図4に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。制御装置30には、スピンモータ9、第1アーム揺動駆動機構34、第2アーム揺動駆動機構39、SC1バルブ14、第1DIWバルブ22、蒸気バルブ17、第2DIWバルブ26、DIW流量調節バルブ21、ヒータ20、窒素ガスバルブ24、窒素ガス流量調節バルブ23および排気流量調節機構29などが制御対象として接続されている。この第2実施形態では、図3に示す工程図に示された処理と同様の処理が施される。
【0049】
図6は、高温のSC1および水蒸気の供給中におけるSC1ノズル35および蒸気ノズル36の動きを表す図解的な平面図である。図3のステップS4(高温SC1供給)における、SC1ノズル35からの高温のSC1の吐出中および蒸気ノズル36からの蒸気の吐出中において、制御装置30は、第1アーム揺動駆動機構34および第2アーム揺動駆動機構39を制御して、ウエハW表面における蒸気ノズル36からの水蒸気の供給位置Qが、ウエハW表面におけるSC1ノズル35からのSC1の供給位置よりもウエハWの径方向の外方に位置した状態で、SC1ノズル35および蒸気ノズル36を移動させている。
【0050】
ウエハW表面におけるSC1の供給位置Pは、第1支持軸33(図4参照)を中心とする円弧形状(ほぼ直線形状)の軌跡PPに沿って移動する。この軌跡PPは、ウエハWの回転半径方向にほぼ沿って延びている。また、ウエハW表面における水蒸気の供給位置Qは、第2支持軸38(図4参照)を中心とする円弧形状(ほぼ直線形状)の軌跡QQに沿って移動する。この軌跡QQは、軌跡PPにほぼ沿うように延びている。
【0051】
具体的には、ウエハW表面におけるSC1の供給位置Pが回転中心(回転軸線C)上にあるとき、ウエハW表面における水蒸気の供給位置Qが、ウエハW表面の中間位置M(ウエハWにおける回転中心と周縁との間の部分)上に位置している(図6に実線で図示)。制御装置30は、第1アーム揺動駆動機構34および第2アーム揺動駆動機構39を制御し、第1アーム32および第2アーム37をそれぞれ揺動させて、SC1ノズル35および蒸気ノズル36を、ウエハWの回転半径方向の外方に向けて移動させる。たとえば、水蒸気供給位置Qの移動速度がSC1供給位置Pの移動速度のほぼ半分となるように、第1および第2アーム32,37の揺動が制御されてもよい。
【0052】
第1アーム32の揺動によって、SC1の供給位置PがウエハWの周縁に達すると(図6に二点鎖線で図示)、制御装置30は、SC1バルブ14を開けた状態を継続しつつ、第1アーム揺動駆動機構34を駆動し、第1アーム32を揺動させて、SC1ノズル35をウエハW表面の回転中心付近の上方へと戻す。また、第1アーム32の反転動作と同期して、制御装置30は、蒸気バルブ17を開けた状態を継続しつつ、第2アーム揺動駆動機構39を駆動し、第2アーム37を揺動させて、蒸気ノズル36をウエハW表面の中間位置Mの上方へと戻す。この場合も、たとえば、水蒸気供給位置Qの移動速度がSC1供給位置Pの移動速度のほぼ半分となるように、第1および第2アーム32,37の揺動が制御されることが好ましい。
【0053】
このようにして、ウエハWの上面上で、SC1供給位置Pおよび水蒸気供給位置Qが、ウエハWの半径にほぼ沿って往復移動し、その過程で、SC1と水蒸気との供給を並行して行うことができる。
この第2実施形態によれば、ウエハWが回転されるとともに、ウエハW表面におけるSC1の供給位置Pが移動するので、SC1ノズル35から吐出されたSC1を、ウエハ表面の全域に直接供給することができる。また、ウエハW表面における水蒸気の供給位置が、ウエハW表面におけるSC1の供給位置よりもウエハWの径方向の外方に位置しているので、ウエハW表面における中央部以外の領域をウエハWの周縁に向けて流れるSC1に、水蒸気からの熱を付与することができる。そのため、ウエハW表面の全域に対してほぼ均一な温度でSC1を供給できる。これにより、ウエハW表面の全域に対してSC1による処理を、より一層均一に施すことができる。
【0054】
以上、この発明の2つの実施形態について説明したが、この発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の第1実施形態では、蒸気ノズル6が、吐出口をウエハWの回転中心と周縁との間の所定の中間位置Mに向けて配置される構成を示したが、蒸気ノズル6の吐出口がウエハWの周縁付近の領域(たとえば、ウエハWの周端縁から幅1〜4mmの環状領域)に向けて配置されており、蒸気ノズル6から吐出された水蒸気が、ウエハW表面の周縁領域に供給される構成としてもよい。
【0055】
また、前述の第2実施形態では、図3のステップS3(水蒸気供給)およびステップS4(高温SC1供給)において、蒸気ノズル36がSC1ノズル35よりもウエハWの回転半径方向の外方に常時位置するように、第1アーム揺動駆動機構34および第2アーム揺動駆動機構39が制御される例を示したが、これは一例に過ぎない。すなわち、SC1ノズル35からのSC1の供給位置の軌跡PPと蒸気ノズル36からの蒸気の軌跡QQとが互いに沿わない場合、制御装置30は、ウエハW表面における蒸気ノズル36からの水蒸気の供給位置の回転軸線Cからの距離が、ウエハW表面におけるSC1ノズル35からの高温のSC1の供給位置の回転軸線Cからの距離よりも常時大きくなるように、第1アーム揺動駆動機構34および第2アーム揺動駆動機構39を制御すればよい。
【0056】
また、前述の各実施形態では、蒸気ノズル6,36による水蒸気の吐出中は、カップ8内からの排気流量が低減される例を示したが、蒸気ノズル6,36による水蒸気の吐出中は、排気管28を閉塞し、カップ8内からの排気を停止する構成としてもよい。この場合、蒸気ノズル6,36から吐出された水蒸気が全てカップ8内に留まるので、カップ8内の雰囲気を飽和状態に保ち易い。
【0057】
また、窒素ガス流量調節バルブ23の開度を調節することにより、蒸気ノズル6から吐出される水蒸気の吐出流量を変更することができる。そこで、蒸気ノズル6,36による水蒸気の吐出中にカップ8からの排気が停止/排気流量が低減されている場合に、窒素ガス流量調節バルブ23の開度の調節により、カップ8内の雰囲気の圧力を調節することができる。そして、雰囲気に含まれる飽和水蒸気量は、雰囲気の圧力に依存するので、窒素ガスの流量調節によって、カップ8内の雰囲気を飽和状態に保つことも可能である。
【0058】
また、前述の各実施形態を変形して、蒸気ノズル6,36による水蒸気の吐出中に、排気流量を低減/排気の停止を行わない構成としてもよい。
また、前述の各実施形態では、不活性ガスとして窒素ガスを例示したが、清浄空気やその他の種類の不活性ガスを採用することもできる。
また、前述の各実施形態では、薬液としてSC1を例示したが、SC1以外の薬液も用いることができる。たとえば、その他の薬液として、SC2(塩酸過酸化水素水混合液)、SPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水混合液)、フッ酸、バファードフッ酸(Buffered HF:フッ酸とフッ化アンモニウムとの混合液)およびアンモニア水を例示することができる。これらの薬液が採用される場合は、蒸気ノズル6,36から吐出される蒸気として、これらの薬液の溶媒である水の蒸気、即ち水蒸気が用いられる。
【0059】
また、薬液としてポリマ除去液を採用することもできる。この場合、ポリマ除去液の溶媒はアルコールであるため、蒸気ノズル6,36から吐出される蒸気として、その溶媒であるアルコールの蒸気が用いられることが好ましい。
また、高温の処理液として、薬液だけでなく、DIW(脱イオン化された水)を用いることもできる。むろん、この場合には、水蒸気の供給を並行して行うことによって、高温DIWの蒸発を抑制できる。
【0060】
また、前述の実施形態では、基板Wの周辺が飽和水蒸気圧に保持される例について説明したが、基板W周辺を必ずしも飽和状態とする必要はない。すなわち、処理液が基板表面に供給されるときに、その処理液に含まれる液体の蒸気が基板の周辺に存在することにより、その液体の蒸気圧が高まるから、必ずしも飽和状態でなくとも、処理液の蒸発を抑制できる。これにより、処理液の気化に起因する温度低下を抑制できる。
【0061】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 基板処理装置
4 スピンチャック(基板保持手段)
5 SC1ノズル(処理液ノズル)
6 蒸気ノズル
8 カップ
9 スピンモータ(基板回転手段)
15 混合部
16 蒸気供給管
18 DIW流通管(液流通管)
19 窒素ガス流通管(不活性ガス流通管)
20 ヒータ(加熱手段)
21 DIW流量調節バルブ(液流量調節手段)
23 窒素ガス流量調節バルブ(ガス流量調節手段)
28 排気管(排気手段)
29 排気流量調節機構
30 制御装置
31 基板処理装置
34 第1アーム揺動駆動機構(処理液ノズル移動手段)
35 SC1ノズル(処理液ノズル)
36 蒸気ノズル
39 第2アーム揺動駆動機構(蒸気ノズル移動手段)
M 中間位置(中央部以外の所定の領域)
W ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板表面に対して、常温よりも高温の処理液を吐出する処理液ノズルと、
前記基板保持手段に保持された基板表面に対して、前記処理液に含まれる液体の蒸気を吐出する蒸気ノズルとを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記基板保持手段に保持された基板を、所定の回転軸線まわりに回転させる基板回転手段をさらに含み、
前記処理液ノズルは、前記基板回転手段によって回転される基板表面の中央部に向けて処理液を吐出し、
前記蒸気ノズルは、前記基板回転手段によって回転される基板表面における中央部以外の所定の領域に向けて蒸気を吐出する、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記処理液ノズルからの処理液の吐出と並行して、前記蒸気ノズルから蒸気を吐出させる制御手段をさらに含む、請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理液ノズルから吐出される処理液は薬液であり、
前記蒸気ノズルは、前記薬液の溶媒の蒸気を吐出する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記処理液に含まれる液体と同じ種類の液が流通する液流通管と、
不活性ガスが流通する不活性ガス流通管と、
前記液流通管を流通する前記液を加熱して蒸発させて蒸気を発生させる加熱手段と、
前記液流通管および前記不活性ガス流通管に接続されて、前記液流通管からの液と前記不活性ガス流通管からの不活性ガスとを混合する混合部と、
前記混合部で生成された蒸気を、前記蒸気ノズルに供給する蒸気供給管とを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記液流通管を流通する液の流量を調節するための液流量調節手段をさらに含む、請求項5記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記不活性ガス流通管を流通する前記不活性ガスの流量を調節するためのガス流量調節手段をさらに含む、請求項5または6記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記基板保持手段を収容するカップと、
前記カップ内の雰囲気を排気するための排気手段と、
前記蒸気ノズルからの蒸気の吐出と並行して、前記カップ内の雰囲気の排気流量を低減または停止させるように、前記排気手段による排気流量を調節するための排気流量調節機構とをさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
基板保持手段に基板を保持する基板保持工程と、
前記基板保持手段に保持された基板表面に対して、常温よりも高温の処理液を供給する処理液供給工程と、
前記処理液供給工程と並行して、基板表面に対して、前記処理液に含まれる液体の蒸気を供給する蒸気供給工程とを含む、基板処理方法。
【請求項10】
前記蒸気供給工程は、前記処理液供給工程よりも、先に開始される、請求項9記載の基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−66322(P2011−66322A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217590(P2009−217590)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】