基板処理装置
【課題】パターン倒れや汚染の発生を抑えつつ被処理基板を乾燥することの可能な基板処理装置等を提供する。
【解決手段】載置部42には、パターンの形成された面を上面として、当該上面が液体により濡れた状態で被処理基板Wが横向きに載置され、基板搬送機構41は、載置台42からこの被処理基板Wを受け取って、液槽32内の液体中に浸漬するにあたり、前記パターンの形成領域の上端が当該液体に接触した時点において、このパターン形成領域の上端の板面に液体が残るように当該被処理基板Wを縦向きの状態に変換してから液体に浸漬する。処理容器31では、この液槽32を内部に格納した状態で、当該液槽32内の液体を超臨界状態の流体に置換することにより、被処理基板Wを乾燥する処理が行われる。
【解決手段】載置部42には、パターンの形成された面を上面として、当該上面が液体により濡れた状態で被処理基板Wが横向きに載置され、基板搬送機構41は、載置台42からこの被処理基板Wを受け取って、液槽32内の液体中に浸漬するにあたり、前記パターンの形成領域の上端が当該液体に接触した時点において、このパターン形成領域の上端の板面に液体が残るように当該被処理基板Wを縦向きの状態に変換してから液体に浸漬する。処理容器31では、この液槽32を内部に格納した状態で、当該液槽32内の液体を超臨界状態の流体に置換することにより、被処理基板Wを乾燥する処理が行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄などの処理が行われた被処理基板を搬送し、超臨界状態の流体を利用して乾燥する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理基板である例えば半導体ウエハ(以下、ウエハという)の表面に集積回路の積層構造を形成する半導体装置の製造工程においては、薬液などの洗浄液によりウエハ表面の微小なごみや自然酸化膜を除去するなど、液体を利用してウエハ表面を処理する液処理工程が設けられている。
【0003】
例えばウエハの洗浄を行う枚葉式のスピン洗浄装置は、ノズルを用いてウエハの表面に例えばアルカリ性や酸性の薬液を供給しながらウエハを回転させることによってウエハ表面のごみや自然酸化物などを除去する。この場合にはウエハ表面は、例えば純水などによるリンス洗浄によりに残った薬液が除去された後、ウエハを回転させて残った液体を振り飛ばす振切乾燥などによって乾燥される。
【0004】
ところが半導体装置の高集積化に伴い、こうした液体などを除去する処理において、いわゆるパターン倒れの問題が大きくなってきている。パターン倒れは、例えばウエハ表面に残った液体を乾燥させる際に、パターンを形成する凹凸の例えば凸部の左右に残っている液体が不均一に乾燥することにより、この凸部を左右に引っ張る表面張力のバランスが崩れて液体の多く残っている方向に凸部が倒れる現象である。
【0005】
こうしたパターン倒れを抑えつつウエハ表面に残った液体を除去する手法として超臨界状態の流体(超臨界流体)を用いた乾燥方法が知られている。超臨界流体は、液体と比べて粘度が小さく、また液体を溶解する能力も高いことに加え、超臨界流体と平衡状態にある液体や気体との間で界面が存在しない。そこで、液体の付着した状態のウエハを超臨界流体と置換し、しかる後、超臨界流体を気体に状態変化させると、表面張力の影響を受けることなく液体を乾燥させることができる。
【0006】
ここで特許文献1には、洗浄部にて洗浄された基板を基板搬送ロボットにより乾燥装置内に搬送し、この乾燥装置内にて基板を超臨界流体と接触させて基板表面に付着している洗浄液を除去する技術が記載されている。この特許文献1に記載の技術では、被処理基板を搬送室に搬入して搬送用のロボットに受け渡し、しかる後、乾燥処理室に移送してから超臨界流体による乾燥を実行するので、処理が開始されるまでの間に被処理基板表面の液体が乾燥してしまいパターン倒れが発生してしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−72118号公報:段落0025〜0029、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、パターン倒れや汚染の発生を抑えつつ被処理基板を乾燥することの可能な基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る基板処理装置は、パターンが形成された被処理基板を、このパターンが形成された面を上面として、当該面が液体により濡れた状態で横向きに保持する載置部と、
液体が収容され、前記被処理基板を当該液体中に浸漬した状態で縦向きに保持するための液槽と、
この液槽が内部に格納された状態で、当該液槽内の液体を超臨界状態の流体に置換して前記被処理基板を乾燥する処理が行われる処理容器と、
前記載置部から被処理基板を受け取り、前記被処理基板のパターンの形成領域の上端が前記液槽内の液体に接触する時点において、このパターン形成領域の上端の板面に液膜が残っているように当該被処理基板を縦向きの状態に変換して当該液体に浸漬させる基板搬送機構と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
前記基板処理装置は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記基板搬送機構は、前記液槽の開口部よりも高い位置に配置されていること。
(b)前記液槽の開口部の面積が、被処理基板を平面視したときの面積よりも小さいこと。
(c)前記基板搬送機構は、被処理基板に上方向の加速度を加えた後、または加えながら当該被処理基板の姿勢を縦向きの状態に変換すること。
(d)前記基板搬送機構は、被処理基板の上面を濡らしている液体がこの被処理基板側へと押し付けられる方向への慣性力を働かせるために、当該被処理基板の中央よりも下方側の高さ位置を水平方向に伸びる回転軸を中心として回転させることにより、被処理基板を縦向きの状態に変換すること。
(e)前記被処理基板の上面に、液体を液盛りする機構と、液体が液盛りされた被処理基板を前記載置部へと搬送する他の基板搬送機構と、を備えていること。
(f)前記載置部は、被処理基板の上面に液体を供給する液供給機構を備えていること。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パターンの形成されている面が液体により濡れた状態の被処理基板を横向きから縦向きに変換しながら液体中に浸漬するにあたって、当該パターン形成領域の上端の板面に液膜を残したまま浸漬を完了するので、パターンの形成された面が自然乾燥する前にこれらの動作を終えることができる。しかる後、当該液体を超臨界状態の流体と置換することにより、パターン倒れの発生を抑えつつ、被処理基板を乾燥することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態の洗浄システムの平面図である。
【図2】前記洗浄システム内の洗浄処理装置の一例を示す縦断側面図である。
【図3】本実施の形態の超臨界処理部及びウエハの受け渡し機構の一例を示す斜視図である。
【図4】前記超臨界処理部の外観構成を示す一部破断斜視図である。
【図5】前記超臨界処理部に設けられている内チャンバーの構成を示す一部破断斜視図である。
【図6】前記超臨界処理部への各種の処理流体の供給、排出系統を示す説明図である。
【図7】前記超臨界処理部へのウエハの搬入動作を示す第1の説明図である。
【図8】前記ウエハの搬入動作を示す第2の説明図である。
【図9】前記超臨界処理部の作用を示す第1の説明図である。
【図10】前記超臨界処理部の作用を示す第2の説明図である。
【図11】前記超臨界処理部の作用を示す第3の説明図である。
【図12】記超臨界処理部に設けられた内チャンバーの変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の基板処理装置を備えた基板処理システムの一例として、被処理基板であるウエハWに洗浄液を供給して洗浄処理を行う洗浄装置2と、超臨界流体を利用して前記洗浄処理後のウエハWを乾燥する超臨界処理装置3とを備えた洗浄処理システム1について説明する。図1は洗浄処理システム1の全体構成を示す横断平面図であり、当該図に向かって左側を前方とすると、洗浄処理システム1は、例えば直径300mmの複数枚のウエハWを収納したFOUP7が載置される載置ブロック11と、FOUP7と洗浄処理システム1との間でのウエハWの搬入出が行われる搬入出ブロック12と、搬入出ブロック12と後段のウエハ処理ブロック14との間でのウエハWの受け渡しが行われる受け渡しブロック13と、ウエハWを洗浄装置2、超臨界処理装置3内に順番に搬入して洗浄処理や超臨界処理が行われるウエハ処理ブロック14と、を前方からこの順番に接続した構造となっている。
【0014】
載置ブロック11は、例えば4個のFOUP7が載置可能な載置台として構成され、載置台上に載置された各FOUP7を搬入出ブロック12に接続する。搬入出ブロック12では、各FOUP7との接続面に設けられた不図示の開閉機構により、FOUP7の開閉扉が取り外され、例えば前後方向に進退自在、左右方向に移動自在、及び回動、昇降自在に構成された第1の搬送部121によって、FOUP7内と受け渡しブロック13との間でウエハWが搬送される。前後を搬入出ブロック12とウエハ処理ブロック14とに挟まれた受け渡しブロック13には、例えば8枚のウエハWを載置可能なバッファとしての役割を果たす受け渡し棚131が設けられており、この受け渡し棚131を介して、搬入出ブロック12とウエハ処理ブロック14との間をウエハWが搬送される。
【0015】
ウエハ処理ブロック14には、受け渡しブロック13との間の開口部から前後方向に向かって伸びるウエハ搬送路142が設けられている。そしてこのウエハ搬送路142の手前側から見て左手には、例えば3台の洗浄装置2が当該ウエハ搬送路142に沿って列設されており、同じく右手には、本実施の形態の基板処理装置である例えば2台の超臨界処理装置3が列設されている。ウエハ搬送路142内には、ウエハ搬送路142に沿って移動可能、左右の洗浄装置2、超臨界処理装置3に向けて進退可能、そして回動、昇降可能に構成された第2の搬送部141が設けられており、既述の受け渡し棚131と各洗浄装置2、超臨界処理装置3との間でウエハWを搬送することができる。ここでウエハ処理ブロック14内に配置される洗浄装置2や超臨界処理装置3の個数は、上述の例に限定されるものではなく、単位時間当たりのウエハWの処理枚数や、洗浄装置2、超臨界処理装置3での処理時間の違いなどにより適宜選択され、またこれら洗浄装置2や超臨界処理装置3のレイアウトも図1に示した例とは異なる配置を採用してもよい。
【0016】
洗浄装置2は例えばスピン洗浄によりウエハWを1枚ずつ洗浄する枚葉式の洗浄装置2として構成され、例えば図2の縦断側面図に示すように、処理空間を形成するアウターチャンバー21内に配置されたウエハ保持機構23にてウエハWをほぼ水平に保持し、このウエハ保持機構23を鉛直軸周りに回転させることによりウエハWを回転させる。そして回転するウエハWの上方にノズルアーム24を進入させ、その先端部に設けられた薬液ノズル241から薬液及びリンス液を予め定められた順に供給することによりウエハWの表面(上面)の洗浄処理が行われる。また、ウエハ保持機構23の内部にも薬液供給路231が形成されており、ここから供給された薬液及びリンス液によってウエハWの裏面洗浄が行われる。
【0017】
洗浄処理は、例えばアルカリ性の薬液であるSC1液(アンモニアと過酸化水素水の混合液)によるパーティクルや有機性の汚染物質の除去→リンス液である脱イオン水(DeIonized Water:DIW)によるリンス洗浄→酸性薬液である希フッ酸水溶液(以下、DHF(Diluted HydroFluoric acid))による自然酸化膜の除去→DIWによるリンス洗浄がこの順に行われる。これらの薬液はアウターチャンバー21内に配置されたインナーカップ22やアウターチャンバー21に受け止められて排液口221、211より排出される。またアウターチャンバー21内の雰囲気は排気口212より排気されている。
【0018】
薬液による洗浄処理を終えたら、ウエハ保持機構23の回転を停止してから当該表面に乾燥防止用のIPA(IsoPropyl Alcohol)を供給し、ウエハWの表面及び裏面に残存しているDIWと置換する。こうして洗浄処理を終えたウエハWは、その表面にIPAが液盛りされた状態のまま例えばウエハ保持機構23に設けられた不図示の受け渡し機構により第2の搬送部141に受け渡され、洗浄装置2より搬出される。これらの観点から薬液ノズル241は、本実施の形態の超臨界処理装置3においてウエハWの上面に液体であるIPAを液盛りする機構に相当し、また第2の搬送部141はIPAが液盛りされたウエハWを載置台である後述の搬入棚42へと搬送する他の基板搬送機構に相当している。
【0019】
洗浄装置2での洗浄処理を終えたウエハWは表面にIPAの液盛りがされた状態のまま超臨界処理装置3に搬送され、超臨界流体を利用して表面の液体を除去し、ウエハWを乾燥する超臨界処理が行われる。以下、本実施の形態に係る超臨界処理装置3の構成について図3〜図6を参照しながら説明する。図3〜図11においては、図に向かって左側を前方として説明を行う。
【0020】
超臨界処理装置3は、ウエハWに対する超臨界処理を実行する超臨界処理部30と、超臨界処理前の、超臨界処理部30へと搬入されるウエハWが専用に載置される搬入棚42と、超臨界処理を終え、超臨界処理部30から搬出されたウエハWが専用に載置される搬出棚43と、これらの搬入、搬出棚42、43と超臨界処理部30との間でウエハWを搬送する、本実施の形態の基板搬送機構である受け渡しアーム41と、を共通の筐体401内に設けた構造となっている。図3は、各超臨界処理部30が格納されている筐体401内の様子を示す一部破断斜視図である。
【0021】
超臨界処理部30は各筐体401内の例えば床面上に配置されており、その上方側の空間には、既述の受け渡しアーム41、搬入棚42、搬出棚43が設けられていて、超臨界処理部30と既述の第2の搬送部141との間でウエハWの受け渡しを行う受け渡し機構が構成されている。
【0022】
受け渡しアーム41は、先端部に設けられたフォーク411によってウエハWの側周面を把持することなどにより、当該ウエハWを1枚ずつ保持して、当該ウエハWを垂直軸周り及び水平軸周りに回転させながら、搬入、搬出棚42、43及び超臨界処理部30の間で搬送することが可能な多関節型の6軸アームである。この受け渡しアーム41は、例えば筐体401内の底部に配置されている超臨界処理部30の上方側、後方寄りの位置に配置されており、当該超臨界処理部30に設けられている後述の内チャンバー32の開口部よりも高い位置に配置されている。ここで内チャンバー32は、その上部側である上面に開口部が設けられているため、当該開口部よりも高い位置に受け渡しアーム41を配することにより、開口部からのウエハWの搬入出を容易にしている。また、この受け渡しアーム41の本体を超臨界処理部30の外チャンバー31上方位置に配し、これら受け渡しアーム41と超臨界処理部30とが上下に並ぶようにすることにより、超臨界処理装置3全体のフットプリントを低減している。
【0023】
また受け渡しアーム41は、仕切板406によって仕切られた空間内に設けられており、受け渡しアーム41の作動によって発生するパーティクルなどがウエハWの搬送される空間へ進入しにくくなるようにしている。図中、405はウエハWの受け渡しを行う空間に受け渡しアーム41を進入させるためのアクセス口である。
【0024】
搬入棚42及び搬出棚43は、例えば超臨界処理部30の上方側、前方寄りの位置にこれらの棚42、43が上下に並ぶように設けられており、超臨界処理前のウエハWが置かれる搬入棚42を下方側に、超臨界処理後のウエハWが置かれる搬出棚43を上方側に配置した構成となっている。この配置関係は、例えばIPAが液盛りされた状態で搬送される超臨界処理前のウエハWから滴下したIPAによって、超臨界処理を終えた後の乾燥したウエハWを濡らしてしまわないためである。
【0025】
これら搬入、搬出棚42、43は、例えばウエハWを1枚ずつ横向き(水平)に保持することが可能な載置棚として構成され、各棚42、43に設けられた3本の昇降ピンを介して第2の搬送部141及び受け渡しアーム41との間でウエハWの受け渡しを行うことができる。搬入棚42は、本実施の形態のウエハWの載置部の役割を果たす。
【0026】
さらに搬入棚42は、液体を満たすことが可能な皿形状に構成され、IPA供給ノズルとこのノズルに接続されたIPA貯留部並びにポンプや開閉弁などからなる不図示の液供給機構を備えている。この液供給機構より供給されたIPAによって、ウエハWの上面が濡れた状態を維持することにより、ウエハW表面の自然乾燥を防いで、超臨界処理前のパターン倒れの発生を抑えている。
【0027】
そして超臨界処理装置3を手前側から見ると、これら搬入棚42、搬出棚43は、内チャンバー32の上方側、側方寄りの位置に配置されている。これにより、上面に向けて開口する内チャンバー32へのウエハWの搬送経路が確保され、搬入棚42や搬出棚43と干渉することなく迅速にウエハWを搬送することができる。
【0028】
図3中、403は洗浄装置2にて洗浄処理を終えたウエハWが搬入される搬入口、404は超臨界処理を終えたウエハWが搬出される搬出口であり、第2の搬送部141は、これらの搬入、搬出口403、404を介して筐体401内に進入する。また図3中、402は筐体401内に清浄空気のダウンフローを形成するためのFFU(Fan Filter Unit)、407は当該ダウンフローの排気口である。
【0029】
各筐体401内に設けられた例えば超臨界処理部30は、互いにほぼ同様の構成を備えており、超臨界流体を利用してウエハW表面に気液界面を形成せずにウエハWを乾燥する超臨界処理を実行する役割を果たす。図4に示すように超臨界処理部30は、超臨界処理が行われる処理容器である外チャンバー31と、ウエハWをIPA中に浸漬した状態のまま前記外チャンバー31内に格納される内チャンバー32とを備えている。内チャンバー32は、本実施の形態の液槽に相当している。
【0030】
図4の各図に示すように外チャンバー31は、縦方向に扁平な直方体形状の耐圧容器として構成されており、図6に示すように、その内部には内チャンバー32を格納することが可能な処理空間310が形成されている。図1に示すように例えば外チャンバー31は、幅の狭い面をウエハ搬送路142の方向に向けて配置されており、その前面には内チャンバー32を搬入出するための開口部311が設けられている(図4(a))。
【0031】
また図6に示すように外チャンバー31には例えば抵抗発熱体からなるヒーター312が設けられていて、電源部313からの給電により、外チャンバー31の本体を加熱し、これにより処理空間310内に供給された例えば液体CO2を超臨界状態にすることができる。ヒーター312は本実施の形態のエネルギー供給部に相当する。
【0032】
さらに図4に示すように、例えば外チャンバー31の本体側面の底部寄りの位置にはCO2供給ライン511が接続されていて、このCO2供給ライン511は、図6に示すようにバルブV1と、フィルター及びポンプからなる送液機構512とを介してCO2貯留部51に接続されている。CO2貯留部51には液体CO2が貯留されており、これらCO2供給ライン511、送液機構512及びCO2貯留部51は、外チャンバー31の処理空間310内に液体CO2を供給するための流体供給部を構成している。
【0033】
また図4、図6に示す、例えば外チャンバー31本体の天井面に設けられた531は排気ラインであり、処理空間310内に液体CO2を供給する際に処理空間310内の雰囲気を排気し、また超臨界処理を終えた後の超臨界状態のCO2を排気して処理容器31内を減圧するために、バルブV4の開閉により処理空間310内を排気、密閉することができる。ここでバルブV4は圧力調整弁の役割も果たしており、処理空間310内の圧力を調整しながら処理空間310内の雰囲気を排気することができる。また、処理後の超臨界状態のCO2を排気するという観点において、排気ライン531は本実施の形態の排気部に相当している。
【0034】
図4(a)、図5に示すように内チャンバー32は例えば2枚のウエハWを縦向きに格納することが可能な容器であり、乾燥防止用の液体であるIPA中に浸漬した状態でウエハWを保持する役割を果たす。内チャンバー32は、処理空間310より幅の狭い、縦方向に扁平な形状に形成されており、内チャンバー32を処理空間内310に格納したとき、外チャンバー31の内面と内チャンバー32の外面との間には、処理空間310に供給された液体CO2や超臨界状態のCO2を通流させるための空間が形成されるうになっている。本例に係る内チャンバー32は、超臨界流体を扱う処理空間310の容積をできるだけ小さくする必要性と、洗浄処理システム1全体のウエハWの処理スピードとの兼ね合いから、例えば2枚のウエハWを格納する構成とした。但し、内チャンバー32に格納可能なウエハWの枚数はこれに限られるものではなく、1枚のみまたは3枚以上のウエハWを格納する構成としてもよい。また、内チャンバー32に複数枚のウエハWを格納する場合には、例えば隣り合うウエハWにて、パターンが形成される面同士を対向させるように配置することにより当該面へのパーティクル等の付着を避けるようにするとよい。ウエハWの枚数が奇数枚の場合には、残る1枚のウエハWは、パターンの形成面を他のウエハW側に向け、内チャンバー32の壁面に対向させないようにすることが好ましい。
【0035】
図5に示すように内チャンバー32の上面には開口部が設けられており、受け渡しアーム41に保持されたウエハWはこの開口部を介して内チャンバー32内に搬入される。ここで本例では、内チャンバー32の開口部の面積は、ウエハWを平面視したときの面積よりも小さくなっており、搬入棚42から横向きの状態で受け渡しアーム41に受け渡されたウエハWは、縦向きの方向に傾けないと、この開口部を通過することができない。
【0036】
また内チャンバー32の開口部には例えば鋸歯状の切り欠き部322が形成されており、処理空間310内の超臨界流体を内チャンバー32内へと流れ込みやすくしている。但し図示の便宜上、図4(a)、図5、図6以外の図では内チャンバー32の切り欠き部322の記載は省略してある。
【0037】
また内チャンバー32の底部はウエハWの形状に沿って湾曲した形状となっており、その内部側の底面には2枚のウエハWを保持するためのウエハ保持部材323が設けられている。ウエハ保持部材323には、ウエハWの形状に沿った溝が形成されており、ウエハWの周縁部をこの溝内に嵌合させてウエハWを縦向きに保持することができる。またウエハ保持部材323は、内チャンバー32に供給されたIPAが各ウエハWの表面に十分に接触し、且つ、ウエハWを保持したフォーク411が内チャンバー32内に進入しても、ウエハWやフォーク411が他のウエハWや内チャンバー32本体と干渉しないように溝の配置位置や溝同士の間隔が調整されている。
【0038】
図5に示すように例えば内チャンバー32の底面には、ウエハ保持部材323の形成されていない領域が設けられており、ここには内チャンバー32内にIPAを供給し、また排出するための排液部である通液口324が設けられている。この通液口324はIPAの供給・排液ライン524と接続されており、当該供給・排液ライン524は後述の蓋部材321の内部を通って切替弁525に接続されている(図6)。後述するように内チャンバー32は前後方向に移動可能に構成されているので、供給・排液ライン524は例えば耐圧性を備えたフレキシブル配管などにより構成され、内チャンバー32の移動に伴って変形することができる。図6中、V3はバルブである。
【0039】
切替弁525は、内チャンバー32にIPAを供給するためのIPA供給ライン521、内チャンバー32から排出されたIPAを回収するための回収ライン523及び上述の供給・排液ライン524と接続されている。IPA供給ライン521は、開閉バルブV2、フィルター及びポンプからなる送液機構522を介してIPAを貯留したIPA貯留部52に接続されている。一方、回収ライン523は内チャンバー32から排出されたIPAを回収可能なようにIPA貯留部52に直接接続されている。
【0040】
図5に示すように内チャンバー32は、例えば幅の狭い側面部にて厚板状の蓋部材321に固定されている。そしてこの蓋部材321を横方向に前後に移動させることによって、受け渡しアーム41との間でのウエハWの受け渡しが行われる外チャンバー31外部の受け渡し位置と、処理空間310内の処理位置との間で内チャンバー32を搬送することができる。また図6に破線で示すように、処理位置に内チャンバー32を搬送した蓋部材321は外チャンバー31の開口部311を塞ぐ役割も果たしている。外チャンバー31の開口部311の周囲には、当該開口部311を取り囲むように不図示のOリングが設けられており、蓋部材321は、このOリングを押しつぶして処理空間310内を密閉する。
【0041】
図4(a)、図4(b)に示すように蓋部材321は台座部35に支持されており、この台座部35には内チャンバー32を搬送する方向に沿って当該台座部35を切り抜いた走行軌道351が形成されている。一方、蓋部材321の下端部には、当該走行軌道351内に向けて下方側に伸びだした走行部材325が設けられている。そして図4(a)、図6に示すように、この走行部材325には走行軌道351に沿って掛け渡されたボールネジ353が貫通していて、これら走行部材325とボールネジ353とはボールネジ機構を構成している。
【0042】
そしてボールネジ353の一端に設けられた駆動部352により当該ボールネジ353を左右いずれかの方向に回転させ、走行軌道351内で走行部材325を走行させることにより蓋部材321を移動させて、内チャンバー32を受け渡し位置から処理位置まで搬送する。また内チャンバー32を処理位置から受け渡し位置まで搬送する際には、ボールネジ353を反対方向に回転させる。但し蓋部材321を移動させる機構は、上述のボールネジ機構の例に限定されるものではなく、例えばリニアモータや伸縮アーム、エアシリンダーなどを用いて移動させてもよい。
【0043】
また図4(a)、図4(b)に示すように超臨界処理部30には、蓋部材321や内チャンバー32が移動する領域を側面から覆うように周囲壁33が設けられている。周囲壁33は蓋部材321の走行方向に沿って伸びる2枚の側壁部材331と、外チャンバー31の開口部311と対向するように設けられた前方壁部材332とから構成されている。そして前記2枚の側壁部材331の外チャンバー31側の一端が当該外チャンバー31の側壁面に強固に固定されていることにより、周囲壁33は外チャンバー31と一体になっている。
【0044】
また超臨界処理部30は、処理空間310内でCO2を超臨界状態とすることなどにより蓋部材321が受ける内圧に抗して、蓋部材321を外チャンバー31側へ向けて押さえつけるための固定板34を備えている。この固定板34は、内チャンバー32及び蓋部材321が移動する領域から退避した退避位置と、蓋部材321を外チャンバー31側へ向けて手前側から固定する固定位置との間を、不図示の駆動機構により左右方向に移動可能に構成されている。
【0045】
一方、各側壁部材331には、左右方向に移動する前記固定板34を貫通させることが可能な嵌入孔333が形成されており、周囲壁33(側壁部材331)の外方の待機位置で待機している固定板34は、一方側の側壁部材331の嵌入孔333を通り抜けて固定位置へと移動することができる。また固定位置まで移動した固定板34は、その左右両端部が各側壁部材331の嵌入孔333に嵌め込まれた状態となり、この結果、固定板34が「かんぬき」のように側壁部材331に係止され、処理空間310内の圧力に抗して蓋部材321を外チャンバー31に向けて押さえつけることができる(図1の超臨界処理部30及び図4(b)参照)。
【0046】
以上に説明した構成を備えた超臨界処理部30を含む洗浄処理システム1は、図1、図6に示すように制御部6と接続されている。制御部6は例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部にはこれら洗浄処理システム1や洗浄装置2、超臨界処理装置3の作用、即ちFOUP7からウエハWを取り出して洗浄装置2に搬送し洗浄処理を行い、次いで超臨界処理装置3にてウエハWの超臨界処理を行ってからFOUP7内にウエハWを搬入するまでの動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0047】
特に超臨界処理装置3について制御部6は、受け渡しアーム41による搬入棚42、搬出棚43と超臨界処理部30との間でのウエハWの搬送に係る動作を制御する役割を果たす。また図6に示すように制御部6はCO2供給ライン511及びIPA供給ライン521の各送液機構512、522に接続されて液体CO2やIPAの供給タイミングを調節し、さらに外チャンバー31に設けられた不図示の圧力計の検出値に基づいて送液機構512の吐出圧を調節することができるようになっている。そして制御部6は各バルブV1〜V4の開閉タイミングの調節や、駆動部352よるボールネジ353の回転タイミングや回転方向、回転量の調節、切替弁525に接続されるライン(IPA供給ライン521、回収ライン523)の切り替えなども行うことができる。このほか、制御部6は、不図示の温度計からの処理空間310内の温度の検出結果に基づいて、電源部313からヒーター312へ供給される電力を増減し処理空間310内の温度を予め設定した温度に調節する役割も果たしている。
【0048】
以上に説明した構成を備えた超臨界処理部30の作用について説明する。既述のように洗浄装置2における洗浄処理を終え、乾燥防止用のIPAが液盛りされたウエハWが第2の搬送部141に受け渡されたら、第2の搬送部141は、例えば予め設定された処理スケジュールに基づいて、何れか一方の筐体401内に搬入口403を介して進入し、当該ウエハWを搬入棚42の昇降ピンに受け渡す。
【0049】
超臨界処理部30の内チャンバー32へと直ちにウエハWを搬入することが可能な場合には、受け渡しアーム41は、第2の搬送部141からウエハWを受け取って、昇降ピンに保持されたままのウエハWの下方にフォーク411を進入させる。次いで昇降ピンを降下させることにより搬入棚42からフォーク411にウエハWが受け渡される(図7(a))。このとき、ウエハWの上面には、洗浄装置2で供給されたIPAが液盛りされて濡れた状態となっている。また、内チャンバー32にウエハWを搬入するまでに待ち時間が発生する場合には、昇降ピンを降下させて皿状の搬入棚42上にウエハWを載置し、ウエハWの表面にIPAを供給して乾燥を防ぐ。そして内チャンバー32側の準備が整ったら昇降ピンを上昇させてフォーク411にウエハWを受け渡す。この場合にもウエハWの上面は、搬入棚42で供給されたIPAが液盛りされて濡れた状態となっている。
【0050】
一方、内チャンバー32は、図7(a)、図9(a)に示すように内チャンバー32内にIPAを満たした状態で待機位置にて待機している。搬入棚42からウエハWを受け取った受け渡しアーム41は、図7(b)に示すように搬入棚42から内チャンバー32へ向けてウエハWを搬送すると共に、フォーク411の先端が、内チャンバー32の移動方向(前後方向)と直交する方向を向くようにフォーク411を回転させて内チャンバー32内にウエハWを搬送する準備姿勢をとる。
【0051】
ウエハWを搬入する準備が整い(図8(a))、フォーク411の先端が内チャンバー32の開口部の近傍に到達したら、図8(b)に示すように水平姿勢を保ったままフォーク411を上昇させて上向きの加速度を加えた後、この上昇動作を停止し、しかる後、フォーク411の先端が下方側を向くようにウエハWの姿勢変換を開始する(図8(c))。このように、一旦、フォーク411に加速度を加えた後、ウエハWの姿勢変換を開始すると、当該ウエハWの上面にIPAを液盛りして形成された液溜まりには、上向きの慣性力が働き、当該液溜まりに加わる重力が弱まった状態となる。そこで、このとき液溜まりがウエハWの表面から浮かないようにしつつウエハWを縦向きに姿勢変換すると、この動作を行わない場合に比べてウエハWの表面に残存しているIPAの量を増やすことができる。
【0052】
ここで受け渡しアーム41は、例えばフォーク411の後端側を先端側よりも上方へ持ち上げることにより、ウエハWの回転軸の位置が、当該ウエハWを縦向きにしたときの下端部またはこれより下方の位置となるように姿勢変換を行う。かかる位置に回転軸を設定することにより、ウエハW上面のIPAには、ウエハWによって押されるように角加速度が加えられ、この反力としてウエハWに押し付けられる方向に慣性力が働くので、この作用によってもIPAがウエハWの上面から流れ落ちにくくなる。
【0053】
ただし、例えばウエハWの回転軸は、上述の如くウエハWを縦向きにしたときの下端部またはこれより下方の位置に設定する場合に限定されず、例えばウエハWの下端からウエハWの中心までの高さ位置に設定してもよい。このような場合であっても回転軸より上方側の領域に液盛りされているIPAに、ウエハW側へ押し付けられる方向への慣性力を働かせることができる。回転軸の下方側の領域は、ウエハWの姿勢変換を開始してから比較的短い時間で内チャンバー32のIPAに到達するので、ウエハWの回転に起因する慣性力が働かずに液盛りされたIPAが自然に流下しても、当該領域のIPAが乾燥する前にウエハWをIPA中に浸漬することができる場合がある。
【0054】
こうしてウエハWの表面にできるだけIPAを残存させる動作を行いながらウエハWの姿勢変換を実行し、さらにこれらの動作と並行しながらフォーク411を内チャンバー32の開口部の上方位置に移動させる。そしてウエハWが前記開口部を通過することが可能な程度にまで傾けられたら、図8(d)に示すようにウエハWの姿勢変換を継続しつつフォーク411を下方側へ降下させてウエハWを内チャンバー32に進入させる。
【0055】
内チャンバー32に進入したウエハWは、その下端部側から内チャンバー32内のIPA中に浸漬されることにより自然乾燥が防止される。一方、IPA中に浸漬されていない、ウエハWの上方側の領域では、ウエハWが傾けられると共に、IPAの液溜まりが流下していく。しかしこのとき受け渡しアーム41は、既述の如くウエハWを一旦上昇させたり、姿勢変換を行う際の回転軸の位置をウエハWの下端よりも下方側に設定したりしながら当該ウエハWを内チャンバー32内に進入させているので、これらの動作を実行しない場合に比べてウエハWの表面には比較的多くのIPAが残存している。
【0056】
このため、例えばIPAの液溜まりが流下してしまった後でも、ウエハWの表面にはIPAの薄膜が比較的多く残っており、この薄膜がウエハWの表面に形成されたパターンの凹凸を覆っている状態が維持されていれば、パターン倒れの発生は抑制できる。そこで、例えばウエハWの姿勢変換に係る動作を開始してから、ウエハWのパターン形成領域の全体が内チャンバー32のIPA中に浸漬されるまでの時間を十分に短くして、例えば上記パターン形成領域の上端がIPA中に浸漬される時点において当該上端部に数十μm〜数百μm程度のIPAの液膜が残存する程度の時間を予め実験やシミュレーションで把握しておく。そしてこの設定時間内でウエハWを内チャンバー32に進入させれば、ウエハWの姿勢変換に起因するパターン倒れの発生を抑制することができる。
【0057】
そこで本例に係る超臨界処理装置30では、ウエハWの姿勢変換を開始してから当該ウエハWの上端が内チャンバー32のIPAに浸漬されるまでの時間が上述の設定時間である例えば数秒〜十数秒となるように、受け渡しアーム41の動作パターン及びその動作速度を設定してパターン倒れの発生を抑えている。さらにこのとき、既述のようにウエハWの姿勢変換を行いながら、ウエハWを降下させることにより、例えばこれらの動作を別々のタイミングで行い、ウエハWの姿勢変換を終え、IPAの液溜まりが流下してしまってからウエハWの降下を開始する場合に比べて、ウエハWの表面に残存するIPAの液膜を厚くすることができる。
【0058】
こうしてウエハWの全体が内チャンバー32のIPA中に浸漬されたら、フォーク411をさらに降下させる。そしてウエハWの下端部がウエハ保持部材323の溝の内側に嵌って保持されたら、フォーク411によるウエハWの保持を解除して受け渡しアーム41を上昇させ、当該フォーク411を内チャンバー32から退避させる。しかる後、2枚のウエハWに対して上述の受け渡し動作を繰り返し、図9(b)に模式的に示すように2枚のウエハWが内チャンバー32に格納され、IPAに浸漬された状態になったら、駆動部352によりボールネジ353を駆動させて内チャンバー32を処理位置まで移動させる(図9(c))。このとき内チャンバー32からIPAが排出されないように供給・排液ライン524のバルブV3は閉となっており(図9(c)中に「S」と記してある。以下同じ)、また外チャンバー31側においてもCO2供給ライン511及び排気ライン531のバルブV1、V4は閉となっている。
【0059】
そして図4(b)に示すように固定板34を待機位置から固定位置まで移動させたら、CO2供給ライン511側の送液機構512のバルブV1を開とし(図10(a)中に「O」と記してある。以下同じ)、ポンプを作動させて処理空間310内に液体CO2を供給する。例えば大気圧雰囲気となっている処理空間310内に液体CO2が供給されると、液体CO2の一部が気化して処理空間310内の圧力が上昇し、気相側の雰囲気が液体CO2と平衡状態になる。
【0060】
しかる後、処理空間310内の雰囲気が例えば6MPa〜9MPaの範囲内の例えば7.5MPaとなるように開度を調節しながらバルブV4を開くと、CO2供給ライン511から供給されるCO2の液体の状態が保たれたまま気相側の雰囲気が追い出され、処理空間310内が液体CO2で置換されていく(図10(a))。そして液体CO2の液面の位置が、図5に示した内チャンバー32の切り欠き部322の下端程度の位置まで到達し、液体CO2が内チャンバー32に流れ込むことが可能な状態となったら、CO2供給ライン511及び排気ライン531のバルブV1、V4を閉じて外チャンバー31を密閉する(図10(b))。
【0061】
しかる後、図10(c)に示すように電源部313よりヒーター312に電力を供給し、処理空間310内の温度が例えば30℃〜90℃の範囲の40℃となるように加熱を行う。CO2の臨界点は、7.38MPa、31.1℃であるので、この加熱操作により液体CO2が超臨界状態に変化し、CO2の気液界面が消失して処理空間310内が超臨界状態のCO2で満たされた状態となる。
【0062】
ここで大気圧におけるIPAの沸点は82.4℃であるので、7.5MPa、40℃の処理空間310内においては内チャンバー32内のIPAは液体の状態を保っており、IPAに浸漬されたウエハWの表面も濡れた状態となっている。このとき図11(a)に示すように供給・排液ライン524のバルブV3を開くと、内チャンバー32内のIPAは内チャンバー32の開口部を介して超臨界状態のCO2によって押され、また重力が働いて供給・排液ライン524に向けて流れていく。この際に図6に示した切替弁525を回収ライン523側に切り替えておくことにより、内チャンバー32から流れ出たIPAはIPA貯留部52に回収される。
【0063】
内チャンバー32の底面に接続された供給・排液ライン524からIPAが流出していくと、処理空間310内の超臨界状態のCO2が膨張し、上面側の開口部を介して内チャンバー32内へと進入する。この結果、内チャンバー32内のIPAが上方側から下方側へ向けて超臨界状態のCO2へと置換されていくことになるが、超臨界状態のCO2は表面張力が働かないため、パターン倒れを殆ど引き起こすことなくウエハW表面の雰囲気を液体のIPAから超臨界状態のCO2に置換することができる。
【0064】
またこのとき内チャンバー32の上方側から下方側へ向けてIPAを超臨界状態のCO2へと置換していくことにより、IPAの排出時にウエハWから飛散したごみを内チャンバー32の底部側の通液口324へ向けてIPAと共に押し流していくので、これらのごみの巻き上げを抑制し、ウエハWへの再付着を低減することができる。
【0065】
ここで既述のように内チャンバー32は2枚のウエハWを格納することが可能な程度の大きさであるので、その容積は比較的小さい。このため、超臨界状態のCO2の温度及び圧力を臨界点よりも十分に高い状態としておき、膨張に伴う温度や圧力低下を見越した量のCO2を処理空間310内に予め供給しておけば、CO2の超臨界状態を十分に維持することができる。また例えば、内チャンバー32内のIPAが押し出され、超臨界状態のCO2が膨張してもその超臨界状態が維持されるようにヒーター312の出力を増加させてもよい。
【0066】
こうして内チャンバー32内のIPAが排出され、処理空間310の系内の雰囲気が全て超臨界状態のCO2に置換されたら、供給・排液ライン524のバルブV3を閉じ(図11(b))、排気ライン531のバルブV4を開いて処理空間310内を大気圧まで脱圧する。この結果、超臨界状態のCO2が気体の状態に変化することになるが、超臨界状態と気体との間には界面が形成されないので表面に形成されたパターンに表面張力を作用させることなく、ウエハWを乾燥することができる(図11(c))。
【0067】
このとき内チャンバー32にはウエハWが立て向きに保持されているので、例えばウエハWに付着していたパーティクルなどのごみがIPAや超臨界状態のCO2に流れに乗って飛散した場合であっても、これらのごみが重力によって沈降する位置にウエハWの表面が存在しないことからウエハWの再汚染が発生しにくい。
【0068】
ここで図11(c)に示した例では、液体CO2の供給時に外チャンバー31内の雰囲気を排気する既述の排気ライン531を利用して処理空間310内の脱圧を行う例を示したが、この脱圧操作時に処理空間310内にCO2の上昇流が形成されることに起因するごみの巻上げを抑えるため、例えば外チャンバー31の底部側に脱圧時専用の排気ラインを設けて処理空間310内に下降流が形成されるようにしながら脱圧を行ってもよい。また、内チャンバー32の底面に接続された供給・排液ライン524を利用して脱圧を行ってもよい。そして処理空間310内を脱圧する際には、CO2の膨張により処理空間310内の温度が低下して超臨界状態のCO2中に溶解していたIPAがウエハW表面で凝縮したりしないように、ヒーター312によって処理空間310内部の温度を上げるようにしてもよい。
【0069】
以上のプロセスにより、ウエハWの超臨界処理を終えたら、固定板34を退避位置まで退避させ、蓋部材321を前方側へ移動させて内チャンバー32を受け渡し位置まで引き出し、内チャンバー32内にフォーク411を進入させて処理を終えたウエハWを一枚ずつ取り出す。この際にはウエハWの表面は既に乾燥した状態となっているので、搬入時とは異なり、ウエハWの姿勢変換を行うタイミングや搬出動作などに特段の限定はない。
【0070】
内チャンバー32からウエハWが取り出されると、切替弁525の接続先をIPA供給ライン521側に切り替えて送液機構522を作動させてIPA貯留部52よりIPAを供給し、内チャンバー32にIPAが満たされた状態で次のウエハWが搬入されるまで待機する。
一方、取り出されたウエハWは搬出棚43を介して第1の搬送部121に受け渡され、搬入時とは逆の経路を通ってFOUP7内に格納され、ウエハWに対する一連の動作が完了する。
【0071】
本実施の形態に係る超臨界処理装置3によれば以下の効果がある。パターンの形成されている面がIPAにより濡れた状態のウエハWを横向きから縦向きに変換しながら内チャンバー32のIPA中に浸漬するにあたって、当該パターン形成領域の上端の板面に液膜を残したまま浸漬を完了するので、パターンの形成された面が自然乾燥する前にこれらの動作を終えることができる。しかる後、内チャンバー32のIPAを超臨界状態のCO2と置換することにより、パターン倒れの発生を抑えつつウエハWを乾燥することが可能となる。
【0072】
この結果、姿勢の変換動作に伴ってウエハWの上面を濡らしているIPAがこぼれ落ちたとしても、まだIPAがウエハW上に例えば液膜の状態で残っているうちにウエハWの全体を内チャンバー32のIPA中に浸漬することが可能となり、搬送中におけるウエハWの自然乾燥を防いでパターン倒れの発生を抑制することができる。
【0073】
ここで、内チャンバー32へウエハWを進入させる際に、ウエハWの表面にできるだけ多くのIPAを残存させるための動作として、図8(b)では水平の姿勢に保ったままフォーク411を上昇させて加速度を加えた後、ウエハWの姿勢変換を行う例について示したが、これらの動作を並行して同時に行ってもよい。この場合にはウエハW表面に液盛りされているIPAには、下向きの慣性力が働き、この慣性力のうちウエハWの表面に垂直に働く成分がIPAをウエハWの表面に押し付けて、IPAがウエハWの表面から流れ落ちにくくなるという効果を得ることができる。
【0074】
また図4〜図11などでは、内チャンバー32に満たされたIPA内にウエハWを浸漬し、この内チャンバー32を外チャンバー31内に搬入してから超臨界処理を行う、いわば2重容器型の超臨界処理部30の例について説明したが、本発明を適用可能な超臨界処理装置はこの例に限られない。例えば内チャンバー32を設けずに、処理容器である外チャンバー31に液槽の役割を一体に兼用させて、当該外チャンバー31内にウエハWを縦向きに保持する単体容器型の超臨界処理装置も、液槽を内部に格納した状態でウエハWの乾燥を行う処理容器に含まれている。以下の説明では処理容器と液槽とが一体となった容器を「チャンバー31」とし、他の構成要素については、図3〜図6にて示したものと同じ符号を用いて示す。
【0075】
この場合には、例えばチャンバー31の開口部311を開閉自在に構成し、当該開口部311を例えばチャンバー31の上面に設ける一方、当該チャンバー31の底部にはウエハ保持部材323を設けておき、予めIPAを満たした状態でウエハWを搬入する。この際にも、ウエハWを縦向きにする際に、ウエハW表面にできるだけ多くのIPAが残存するようにウエハWを傾ける受け渡しアーム41の動作パターンや、ウエハWの姿勢変換を開始してからウエハWのパターン形成領域の上端がチャンバー31内のIPA中に浸漬されるまでの時間を適正な値に設定することにより、超臨界処理を開始するまでのウエハWの自然乾燥に起因するパターン倒れの発生を抑制することができる。チャンバー31が処理容器及び液槽の役割を兼ねている場合には、当該チャンバー31に外部から直接超臨界流体を供給してIPAと置換することなどにより超臨界処理が行われる。
【0076】
さらにまた上述の各実施の形態では、ウエハWが浸漬される液体としてIPA、この液体と置換される超臨界状態の流体としてCO2を採用した例について説明したが、各流体の例はこれに限定されるものではない。例えば洗浄処理後のウエハWに乾燥防止用のIPAを供給する場合に替えて、ウエハWをリンス液(洗浄液)であるDIWに浸漬したまま超臨界流体と置換してもよい。また例えば超臨界流体としてHFE(Hydro FluoroEther)を利用する場合などに、液体のHFE中に浸漬した状態で外チャンバー31内にウエハWを配置し、この液体HFEを超臨界状態のHFEと置換してもよい。また超臨界状態の流体としてはIPAなども利用することができる。
【0077】
このほか、超臨界処理の前後のウエハWが載置される搬入棚42や搬出棚43は必ずしも設けなくてもよい。この場合には、例えば第2の搬送部121と、受け渡しアーム41との間で直接、ウエハWの受け渡しが行われる。したがって洗浄装置2での洗浄処理を終えた後、上面にIPAが液盛りされた状態でウエハWを搬送してくる第2の搬送部121は、搬入棚42に替わって載置部としての役割を果たすことになる。
【0078】
さらには、本実施の形態に係る超臨界処理装置3では、例えば6軸の多関節アームのような汎用的な受け渡しアーム41を利用して基板搬送機構を構成した例を示したが、基板搬送機構はこの構成例に限定されるものではないことは勿論である。例えば、搬入棚42と内チャンバー32の開口部上方の位置との間に搬送路を掛け渡し、この搬送路上を走行可能なシャトル状の搬送アームを設けて基板搬送機構を構成してもよい。この場合には、内チャンバー32の開口部の上方位置にて、例えば搬送アームがウエハWを横向きの状態から縦向きの状態にウエハWの姿勢変換を行いながら開口部を通過して内チャンバー32に進入することなどによりウエハWをIPA中に浸漬する動作を実行する場合などが考えられる。
【0079】
また、内チャンバー32の開口部は、その上面側に設ける場合に限定されるものではない。例えば図12に示すように内チャンバー32の上部にフード326を設け、このフード326の側面に設けられた開口部を通過する際にウエハWを横向きの状態から縦向きの状態に姿勢を変換する場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
W ウエハ
1 洗浄処理システム
2 洗浄装置
3 超臨界処理装置
30、30a
超臨界処理部
31 外チャンバー
310 処理空間
32 内チャンバー
41 受け渡しアーム
411 フォーク
42 搬入棚
43 搬出棚
511 CO2供給ライン
521 IPA供給ライン
524 供給・排液ライン
531 排気ライン
591 超臨界流体供給ライン
592 液体排出ライン
6 制御部
7 FOUP
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄などの処理が行われた被処理基板を搬送し、超臨界状態の流体を利用して乾燥する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理基板である例えば半導体ウエハ(以下、ウエハという)の表面に集積回路の積層構造を形成する半導体装置の製造工程においては、薬液などの洗浄液によりウエハ表面の微小なごみや自然酸化膜を除去するなど、液体を利用してウエハ表面を処理する液処理工程が設けられている。
【0003】
例えばウエハの洗浄を行う枚葉式のスピン洗浄装置は、ノズルを用いてウエハの表面に例えばアルカリ性や酸性の薬液を供給しながらウエハを回転させることによってウエハ表面のごみや自然酸化物などを除去する。この場合にはウエハ表面は、例えば純水などによるリンス洗浄によりに残った薬液が除去された後、ウエハを回転させて残った液体を振り飛ばす振切乾燥などによって乾燥される。
【0004】
ところが半導体装置の高集積化に伴い、こうした液体などを除去する処理において、いわゆるパターン倒れの問題が大きくなってきている。パターン倒れは、例えばウエハ表面に残った液体を乾燥させる際に、パターンを形成する凹凸の例えば凸部の左右に残っている液体が不均一に乾燥することにより、この凸部を左右に引っ張る表面張力のバランスが崩れて液体の多く残っている方向に凸部が倒れる現象である。
【0005】
こうしたパターン倒れを抑えつつウエハ表面に残った液体を除去する手法として超臨界状態の流体(超臨界流体)を用いた乾燥方法が知られている。超臨界流体は、液体と比べて粘度が小さく、また液体を溶解する能力も高いことに加え、超臨界流体と平衡状態にある液体や気体との間で界面が存在しない。そこで、液体の付着した状態のウエハを超臨界流体と置換し、しかる後、超臨界流体を気体に状態変化させると、表面張力の影響を受けることなく液体を乾燥させることができる。
【0006】
ここで特許文献1には、洗浄部にて洗浄された基板を基板搬送ロボットにより乾燥装置内に搬送し、この乾燥装置内にて基板を超臨界流体と接触させて基板表面に付着している洗浄液を除去する技術が記載されている。この特許文献1に記載の技術では、被処理基板を搬送室に搬入して搬送用のロボットに受け渡し、しかる後、乾燥処理室に移送してから超臨界流体による乾燥を実行するので、処理が開始されるまでの間に被処理基板表面の液体が乾燥してしまいパターン倒れが発生してしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−72118号公報:段落0025〜0029、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、パターン倒れや汚染の発生を抑えつつ被処理基板を乾燥することの可能な基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る基板処理装置は、パターンが形成された被処理基板を、このパターンが形成された面を上面として、当該面が液体により濡れた状態で横向きに保持する載置部と、
液体が収容され、前記被処理基板を当該液体中に浸漬した状態で縦向きに保持するための液槽と、
この液槽が内部に格納された状態で、当該液槽内の液体を超臨界状態の流体に置換して前記被処理基板を乾燥する処理が行われる処理容器と、
前記載置部から被処理基板を受け取り、前記被処理基板のパターンの形成領域の上端が前記液槽内の液体に接触する時点において、このパターン形成領域の上端の板面に液膜が残っているように当該被処理基板を縦向きの状態に変換して当該液体に浸漬させる基板搬送機構と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
前記基板処理装置は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記基板搬送機構は、前記液槽の開口部よりも高い位置に配置されていること。
(b)前記液槽の開口部の面積が、被処理基板を平面視したときの面積よりも小さいこと。
(c)前記基板搬送機構は、被処理基板に上方向の加速度を加えた後、または加えながら当該被処理基板の姿勢を縦向きの状態に変換すること。
(d)前記基板搬送機構は、被処理基板の上面を濡らしている液体がこの被処理基板側へと押し付けられる方向への慣性力を働かせるために、当該被処理基板の中央よりも下方側の高さ位置を水平方向に伸びる回転軸を中心として回転させることにより、被処理基板を縦向きの状態に変換すること。
(e)前記被処理基板の上面に、液体を液盛りする機構と、液体が液盛りされた被処理基板を前記載置部へと搬送する他の基板搬送機構と、を備えていること。
(f)前記載置部は、被処理基板の上面に液体を供給する液供給機構を備えていること。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パターンの形成されている面が液体により濡れた状態の被処理基板を横向きから縦向きに変換しながら液体中に浸漬するにあたって、当該パターン形成領域の上端の板面に液膜を残したまま浸漬を完了するので、パターンの形成された面が自然乾燥する前にこれらの動作を終えることができる。しかる後、当該液体を超臨界状態の流体と置換することにより、パターン倒れの発生を抑えつつ、被処理基板を乾燥することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態の洗浄システムの平面図である。
【図2】前記洗浄システム内の洗浄処理装置の一例を示す縦断側面図である。
【図3】本実施の形態の超臨界処理部及びウエハの受け渡し機構の一例を示す斜視図である。
【図4】前記超臨界処理部の外観構成を示す一部破断斜視図である。
【図5】前記超臨界処理部に設けられている内チャンバーの構成を示す一部破断斜視図である。
【図6】前記超臨界処理部への各種の処理流体の供給、排出系統を示す説明図である。
【図7】前記超臨界処理部へのウエハの搬入動作を示す第1の説明図である。
【図8】前記ウエハの搬入動作を示す第2の説明図である。
【図9】前記超臨界処理部の作用を示す第1の説明図である。
【図10】前記超臨界処理部の作用を示す第2の説明図である。
【図11】前記超臨界処理部の作用を示す第3の説明図である。
【図12】記超臨界処理部に設けられた内チャンバーの変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の基板処理装置を備えた基板処理システムの一例として、被処理基板であるウエハWに洗浄液を供給して洗浄処理を行う洗浄装置2と、超臨界流体を利用して前記洗浄処理後のウエハWを乾燥する超臨界処理装置3とを備えた洗浄処理システム1について説明する。図1は洗浄処理システム1の全体構成を示す横断平面図であり、当該図に向かって左側を前方とすると、洗浄処理システム1は、例えば直径300mmの複数枚のウエハWを収納したFOUP7が載置される載置ブロック11と、FOUP7と洗浄処理システム1との間でのウエハWの搬入出が行われる搬入出ブロック12と、搬入出ブロック12と後段のウエハ処理ブロック14との間でのウエハWの受け渡しが行われる受け渡しブロック13と、ウエハWを洗浄装置2、超臨界処理装置3内に順番に搬入して洗浄処理や超臨界処理が行われるウエハ処理ブロック14と、を前方からこの順番に接続した構造となっている。
【0014】
載置ブロック11は、例えば4個のFOUP7が載置可能な載置台として構成され、載置台上に載置された各FOUP7を搬入出ブロック12に接続する。搬入出ブロック12では、各FOUP7との接続面に設けられた不図示の開閉機構により、FOUP7の開閉扉が取り外され、例えば前後方向に進退自在、左右方向に移動自在、及び回動、昇降自在に構成された第1の搬送部121によって、FOUP7内と受け渡しブロック13との間でウエハWが搬送される。前後を搬入出ブロック12とウエハ処理ブロック14とに挟まれた受け渡しブロック13には、例えば8枚のウエハWを載置可能なバッファとしての役割を果たす受け渡し棚131が設けられており、この受け渡し棚131を介して、搬入出ブロック12とウエハ処理ブロック14との間をウエハWが搬送される。
【0015】
ウエハ処理ブロック14には、受け渡しブロック13との間の開口部から前後方向に向かって伸びるウエハ搬送路142が設けられている。そしてこのウエハ搬送路142の手前側から見て左手には、例えば3台の洗浄装置2が当該ウエハ搬送路142に沿って列設されており、同じく右手には、本実施の形態の基板処理装置である例えば2台の超臨界処理装置3が列設されている。ウエハ搬送路142内には、ウエハ搬送路142に沿って移動可能、左右の洗浄装置2、超臨界処理装置3に向けて進退可能、そして回動、昇降可能に構成された第2の搬送部141が設けられており、既述の受け渡し棚131と各洗浄装置2、超臨界処理装置3との間でウエハWを搬送することができる。ここでウエハ処理ブロック14内に配置される洗浄装置2や超臨界処理装置3の個数は、上述の例に限定されるものではなく、単位時間当たりのウエハWの処理枚数や、洗浄装置2、超臨界処理装置3での処理時間の違いなどにより適宜選択され、またこれら洗浄装置2や超臨界処理装置3のレイアウトも図1に示した例とは異なる配置を採用してもよい。
【0016】
洗浄装置2は例えばスピン洗浄によりウエハWを1枚ずつ洗浄する枚葉式の洗浄装置2として構成され、例えば図2の縦断側面図に示すように、処理空間を形成するアウターチャンバー21内に配置されたウエハ保持機構23にてウエハWをほぼ水平に保持し、このウエハ保持機構23を鉛直軸周りに回転させることによりウエハWを回転させる。そして回転するウエハWの上方にノズルアーム24を進入させ、その先端部に設けられた薬液ノズル241から薬液及びリンス液を予め定められた順に供給することによりウエハWの表面(上面)の洗浄処理が行われる。また、ウエハ保持機構23の内部にも薬液供給路231が形成されており、ここから供給された薬液及びリンス液によってウエハWの裏面洗浄が行われる。
【0017】
洗浄処理は、例えばアルカリ性の薬液であるSC1液(アンモニアと過酸化水素水の混合液)によるパーティクルや有機性の汚染物質の除去→リンス液である脱イオン水(DeIonized Water:DIW)によるリンス洗浄→酸性薬液である希フッ酸水溶液(以下、DHF(Diluted HydroFluoric acid))による自然酸化膜の除去→DIWによるリンス洗浄がこの順に行われる。これらの薬液はアウターチャンバー21内に配置されたインナーカップ22やアウターチャンバー21に受け止められて排液口221、211より排出される。またアウターチャンバー21内の雰囲気は排気口212より排気されている。
【0018】
薬液による洗浄処理を終えたら、ウエハ保持機構23の回転を停止してから当該表面に乾燥防止用のIPA(IsoPropyl Alcohol)を供給し、ウエハWの表面及び裏面に残存しているDIWと置換する。こうして洗浄処理を終えたウエハWは、その表面にIPAが液盛りされた状態のまま例えばウエハ保持機構23に設けられた不図示の受け渡し機構により第2の搬送部141に受け渡され、洗浄装置2より搬出される。これらの観点から薬液ノズル241は、本実施の形態の超臨界処理装置3においてウエハWの上面に液体であるIPAを液盛りする機構に相当し、また第2の搬送部141はIPAが液盛りされたウエハWを載置台である後述の搬入棚42へと搬送する他の基板搬送機構に相当している。
【0019】
洗浄装置2での洗浄処理を終えたウエハWは表面にIPAの液盛りがされた状態のまま超臨界処理装置3に搬送され、超臨界流体を利用して表面の液体を除去し、ウエハWを乾燥する超臨界処理が行われる。以下、本実施の形態に係る超臨界処理装置3の構成について図3〜図6を参照しながら説明する。図3〜図11においては、図に向かって左側を前方として説明を行う。
【0020】
超臨界処理装置3は、ウエハWに対する超臨界処理を実行する超臨界処理部30と、超臨界処理前の、超臨界処理部30へと搬入されるウエハWが専用に載置される搬入棚42と、超臨界処理を終え、超臨界処理部30から搬出されたウエハWが専用に載置される搬出棚43と、これらの搬入、搬出棚42、43と超臨界処理部30との間でウエハWを搬送する、本実施の形態の基板搬送機構である受け渡しアーム41と、を共通の筐体401内に設けた構造となっている。図3は、各超臨界処理部30が格納されている筐体401内の様子を示す一部破断斜視図である。
【0021】
超臨界処理部30は各筐体401内の例えば床面上に配置されており、その上方側の空間には、既述の受け渡しアーム41、搬入棚42、搬出棚43が設けられていて、超臨界処理部30と既述の第2の搬送部141との間でウエハWの受け渡しを行う受け渡し機構が構成されている。
【0022】
受け渡しアーム41は、先端部に設けられたフォーク411によってウエハWの側周面を把持することなどにより、当該ウエハWを1枚ずつ保持して、当該ウエハWを垂直軸周り及び水平軸周りに回転させながら、搬入、搬出棚42、43及び超臨界処理部30の間で搬送することが可能な多関節型の6軸アームである。この受け渡しアーム41は、例えば筐体401内の底部に配置されている超臨界処理部30の上方側、後方寄りの位置に配置されており、当該超臨界処理部30に設けられている後述の内チャンバー32の開口部よりも高い位置に配置されている。ここで内チャンバー32は、その上部側である上面に開口部が設けられているため、当該開口部よりも高い位置に受け渡しアーム41を配することにより、開口部からのウエハWの搬入出を容易にしている。また、この受け渡しアーム41の本体を超臨界処理部30の外チャンバー31上方位置に配し、これら受け渡しアーム41と超臨界処理部30とが上下に並ぶようにすることにより、超臨界処理装置3全体のフットプリントを低減している。
【0023】
また受け渡しアーム41は、仕切板406によって仕切られた空間内に設けられており、受け渡しアーム41の作動によって発生するパーティクルなどがウエハWの搬送される空間へ進入しにくくなるようにしている。図中、405はウエハWの受け渡しを行う空間に受け渡しアーム41を進入させるためのアクセス口である。
【0024】
搬入棚42及び搬出棚43は、例えば超臨界処理部30の上方側、前方寄りの位置にこれらの棚42、43が上下に並ぶように設けられており、超臨界処理前のウエハWが置かれる搬入棚42を下方側に、超臨界処理後のウエハWが置かれる搬出棚43を上方側に配置した構成となっている。この配置関係は、例えばIPAが液盛りされた状態で搬送される超臨界処理前のウエハWから滴下したIPAによって、超臨界処理を終えた後の乾燥したウエハWを濡らしてしまわないためである。
【0025】
これら搬入、搬出棚42、43は、例えばウエハWを1枚ずつ横向き(水平)に保持することが可能な載置棚として構成され、各棚42、43に設けられた3本の昇降ピンを介して第2の搬送部141及び受け渡しアーム41との間でウエハWの受け渡しを行うことができる。搬入棚42は、本実施の形態のウエハWの載置部の役割を果たす。
【0026】
さらに搬入棚42は、液体を満たすことが可能な皿形状に構成され、IPA供給ノズルとこのノズルに接続されたIPA貯留部並びにポンプや開閉弁などからなる不図示の液供給機構を備えている。この液供給機構より供給されたIPAによって、ウエハWの上面が濡れた状態を維持することにより、ウエハW表面の自然乾燥を防いで、超臨界処理前のパターン倒れの発生を抑えている。
【0027】
そして超臨界処理装置3を手前側から見ると、これら搬入棚42、搬出棚43は、内チャンバー32の上方側、側方寄りの位置に配置されている。これにより、上面に向けて開口する内チャンバー32へのウエハWの搬送経路が確保され、搬入棚42や搬出棚43と干渉することなく迅速にウエハWを搬送することができる。
【0028】
図3中、403は洗浄装置2にて洗浄処理を終えたウエハWが搬入される搬入口、404は超臨界処理を終えたウエハWが搬出される搬出口であり、第2の搬送部141は、これらの搬入、搬出口403、404を介して筐体401内に進入する。また図3中、402は筐体401内に清浄空気のダウンフローを形成するためのFFU(Fan Filter Unit)、407は当該ダウンフローの排気口である。
【0029】
各筐体401内に設けられた例えば超臨界処理部30は、互いにほぼ同様の構成を備えており、超臨界流体を利用してウエハW表面に気液界面を形成せずにウエハWを乾燥する超臨界処理を実行する役割を果たす。図4に示すように超臨界処理部30は、超臨界処理が行われる処理容器である外チャンバー31と、ウエハWをIPA中に浸漬した状態のまま前記外チャンバー31内に格納される内チャンバー32とを備えている。内チャンバー32は、本実施の形態の液槽に相当している。
【0030】
図4の各図に示すように外チャンバー31は、縦方向に扁平な直方体形状の耐圧容器として構成されており、図6に示すように、その内部には内チャンバー32を格納することが可能な処理空間310が形成されている。図1に示すように例えば外チャンバー31は、幅の狭い面をウエハ搬送路142の方向に向けて配置されており、その前面には内チャンバー32を搬入出するための開口部311が設けられている(図4(a))。
【0031】
また図6に示すように外チャンバー31には例えば抵抗発熱体からなるヒーター312が設けられていて、電源部313からの給電により、外チャンバー31の本体を加熱し、これにより処理空間310内に供給された例えば液体CO2を超臨界状態にすることができる。ヒーター312は本実施の形態のエネルギー供給部に相当する。
【0032】
さらに図4に示すように、例えば外チャンバー31の本体側面の底部寄りの位置にはCO2供給ライン511が接続されていて、このCO2供給ライン511は、図6に示すようにバルブV1と、フィルター及びポンプからなる送液機構512とを介してCO2貯留部51に接続されている。CO2貯留部51には液体CO2が貯留されており、これらCO2供給ライン511、送液機構512及びCO2貯留部51は、外チャンバー31の処理空間310内に液体CO2を供給するための流体供給部を構成している。
【0033】
また図4、図6に示す、例えば外チャンバー31本体の天井面に設けられた531は排気ラインであり、処理空間310内に液体CO2を供給する際に処理空間310内の雰囲気を排気し、また超臨界処理を終えた後の超臨界状態のCO2を排気して処理容器31内を減圧するために、バルブV4の開閉により処理空間310内を排気、密閉することができる。ここでバルブV4は圧力調整弁の役割も果たしており、処理空間310内の圧力を調整しながら処理空間310内の雰囲気を排気することができる。また、処理後の超臨界状態のCO2を排気するという観点において、排気ライン531は本実施の形態の排気部に相当している。
【0034】
図4(a)、図5に示すように内チャンバー32は例えば2枚のウエハWを縦向きに格納することが可能な容器であり、乾燥防止用の液体であるIPA中に浸漬した状態でウエハWを保持する役割を果たす。内チャンバー32は、処理空間310より幅の狭い、縦方向に扁平な形状に形成されており、内チャンバー32を処理空間内310に格納したとき、外チャンバー31の内面と内チャンバー32の外面との間には、処理空間310に供給された液体CO2や超臨界状態のCO2を通流させるための空間が形成されるうになっている。本例に係る内チャンバー32は、超臨界流体を扱う処理空間310の容積をできるだけ小さくする必要性と、洗浄処理システム1全体のウエハWの処理スピードとの兼ね合いから、例えば2枚のウエハWを格納する構成とした。但し、内チャンバー32に格納可能なウエハWの枚数はこれに限られるものではなく、1枚のみまたは3枚以上のウエハWを格納する構成としてもよい。また、内チャンバー32に複数枚のウエハWを格納する場合には、例えば隣り合うウエハWにて、パターンが形成される面同士を対向させるように配置することにより当該面へのパーティクル等の付着を避けるようにするとよい。ウエハWの枚数が奇数枚の場合には、残る1枚のウエハWは、パターンの形成面を他のウエハW側に向け、内チャンバー32の壁面に対向させないようにすることが好ましい。
【0035】
図5に示すように内チャンバー32の上面には開口部が設けられており、受け渡しアーム41に保持されたウエハWはこの開口部を介して内チャンバー32内に搬入される。ここで本例では、内チャンバー32の開口部の面積は、ウエハWを平面視したときの面積よりも小さくなっており、搬入棚42から横向きの状態で受け渡しアーム41に受け渡されたウエハWは、縦向きの方向に傾けないと、この開口部を通過することができない。
【0036】
また内チャンバー32の開口部には例えば鋸歯状の切り欠き部322が形成されており、処理空間310内の超臨界流体を内チャンバー32内へと流れ込みやすくしている。但し図示の便宜上、図4(a)、図5、図6以外の図では内チャンバー32の切り欠き部322の記載は省略してある。
【0037】
また内チャンバー32の底部はウエハWの形状に沿って湾曲した形状となっており、その内部側の底面には2枚のウエハWを保持するためのウエハ保持部材323が設けられている。ウエハ保持部材323には、ウエハWの形状に沿った溝が形成されており、ウエハWの周縁部をこの溝内に嵌合させてウエハWを縦向きに保持することができる。またウエハ保持部材323は、内チャンバー32に供給されたIPAが各ウエハWの表面に十分に接触し、且つ、ウエハWを保持したフォーク411が内チャンバー32内に進入しても、ウエハWやフォーク411が他のウエハWや内チャンバー32本体と干渉しないように溝の配置位置や溝同士の間隔が調整されている。
【0038】
図5に示すように例えば内チャンバー32の底面には、ウエハ保持部材323の形成されていない領域が設けられており、ここには内チャンバー32内にIPAを供給し、また排出するための排液部である通液口324が設けられている。この通液口324はIPAの供給・排液ライン524と接続されており、当該供給・排液ライン524は後述の蓋部材321の内部を通って切替弁525に接続されている(図6)。後述するように内チャンバー32は前後方向に移動可能に構成されているので、供給・排液ライン524は例えば耐圧性を備えたフレキシブル配管などにより構成され、内チャンバー32の移動に伴って変形することができる。図6中、V3はバルブである。
【0039】
切替弁525は、内チャンバー32にIPAを供給するためのIPA供給ライン521、内チャンバー32から排出されたIPAを回収するための回収ライン523及び上述の供給・排液ライン524と接続されている。IPA供給ライン521は、開閉バルブV2、フィルター及びポンプからなる送液機構522を介してIPAを貯留したIPA貯留部52に接続されている。一方、回収ライン523は内チャンバー32から排出されたIPAを回収可能なようにIPA貯留部52に直接接続されている。
【0040】
図5に示すように内チャンバー32は、例えば幅の狭い側面部にて厚板状の蓋部材321に固定されている。そしてこの蓋部材321を横方向に前後に移動させることによって、受け渡しアーム41との間でのウエハWの受け渡しが行われる外チャンバー31外部の受け渡し位置と、処理空間310内の処理位置との間で内チャンバー32を搬送することができる。また図6に破線で示すように、処理位置に内チャンバー32を搬送した蓋部材321は外チャンバー31の開口部311を塞ぐ役割も果たしている。外チャンバー31の開口部311の周囲には、当該開口部311を取り囲むように不図示のOリングが設けられており、蓋部材321は、このOリングを押しつぶして処理空間310内を密閉する。
【0041】
図4(a)、図4(b)に示すように蓋部材321は台座部35に支持されており、この台座部35には内チャンバー32を搬送する方向に沿って当該台座部35を切り抜いた走行軌道351が形成されている。一方、蓋部材321の下端部には、当該走行軌道351内に向けて下方側に伸びだした走行部材325が設けられている。そして図4(a)、図6に示すように、この走行部材325には走行軌道351に沿って掛け渡されたボールネジ353が貫通していて、これら走行部材325とボールネジ353とはボールネジ機構を構成している。
【0042】
そしてボールネジ353の一端に設けられた駆動部352により当該ボールネジ353を左右いずれかの方向に回転させ、走行軌道351内で走行部材325を走行させることにより蓋部材321を移動させて、内チャンバー32を受け渡し位置から処理位置まで搬送する。また内チャンバー32を処理位置から受け渡し位置まで搬送する際には、ボールネジ353を反対方向に回転させる。但し蓋部材321を移動させる機構は、上述のボールネジ機構の例に限定されるものではなく、例えばリニアモータや伸縮アーム、エアシリンダーなどを用いて移動させてもよい。
【0043】
また図4(a)、図4(b)に示すように超臨界処理部30には、蓋部材321や内チャンバー32が移動する領域を側面から覆うように周囲壁33が設けられている。周囲壁33は蓋部材321の走行方向に沿って伸びる2枚の側壁部材331と、外チャンバー31の開口部311と対向するように設けられた前方壁部材332とから構成されている。そして前記2枚の側壁部材331の外チャンバー31側の一端が当該外チャンバー31の側壁面に強固に固定されていることにより、周囲壁33は外チャンバー31と一体になっている。
【0044】
また超臨界処理部30は、処理空間310内でCO2を超臨界状態とすることなどにより蓋部材321が受ける内圧に抗して、蓋部材321を外チャンバー31側へ向けて押さえつけるための固定板34を備えている。この固定板34は、内チャンバー32及び蓋部材321が移動する領域から退避した退避位置と、蓋部材321を外チャンバー31側へ向けて手前側から固定する固定位置との間を、不図示の駆動機構により左右方向に移動可能に構成されている。
【0045】
一方、各側壁部材331には、左右方向に移動する前記固定板34を貫通させることが可能な嵌入孔333が形成されており、周囲壁33(側壁部材331)の外方の待機位置で待機している固定板34は、一方側の側壁部材331の嵌入孔333を通り抜けて固定位置へと移動することができる。また固定位置まで移動した固定板34は、その左右両端部が各側壁部材331の嵌入孔333に嵌め込まれた状態となり、この結果、固定板34が「かんぬき」のように側壁部材331に係止され、処理空間310内の圧力に抗して蓋部材321を外チャンバー31に向けて押さえつけることができる(図1の超臨界処理部30及び図4(b)参照)。
【0046】
以上に説明した構成を備えた超臨界処理部30を含む洗浄処理システム1は、図1、図6に示すように制御部6と接続されている。制御部6は例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部にはこれら洗浄処理システム1や洗浄装置2、超臨界処理装置3の作用、即ちFOUP7からウエハWを取り出して洗浄装置2に搬送し洗浄処理を行い、次いで超臨界処理装置3にてウエハWの超臨界処理を行ってからFOUP7内にウエハWを搬入するまでの動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0047】
特に超臨界処理装置3について制御部6は、受け渡しアーム41による搬入棚42、搬出棚43と超臨界処理部30との間でのウエハWの搬送に係る動作を制御する役割を果たす。また図6に示すように制御部6はCO2供給ライン511及びIPA供給ライン521の各送液機構512、522に接続されて液体CO2やIPAの供給タイミングを調節し、さらに外チャンバー31に設けられた不図示の圧力計の検出値に基づいて送液機構512の吐出圧を調節することができるようになっている。そして制御部6は各バルブV1〜V4の開閉タイミングの調節や、駆動部352よるボールネジ353の回転タイミングや回転方向、回転量の調節、切替弁525に接続されるライン(IPA供給ライン521、回収ライン523)の切り替えなども行うことができる。このほか、制御部6は、不図示の温度計からの処理空間310内の温度の検出結果に基づいて、電源部313からヒーター312へ供給される電力を増減し処理空間310内の温度を予め設定した温度に調節する役割も果たしている。
【0048】
以上に説明した構成を備えた超臨界処理部30の作用について説明する。既述のように洗浄装置2における洗浄処理を終え、乾燥防止用のIPAが液盛りされたウエハWが第2の搬送部141に受け渡されたら、第2の搬送部141は、例えば予め設定された処理スケジュールに基づいて、何れか一方の筐体401内に搬入口403を介して進入し、当該ウエハWを搬入棚42の昇降ピンに受け渡す。
【0049】
超臨界処理部30の内チャンバー32へと直ちにウエハWを搬入することが可能な場合には、受け渡しアーム41は、第2の搬送部141からウエハWを受け取って、昇降ピンに保持されたままのウエハWの下方にフォーク411を進入させる。次いで昇降ピンを降下させることにより搬入棚42からフォーク411にウエハWが受け渡される(図7(a))。このとき、ウエハWの上面には、洗浄装置2で供給されたIPAが液盛りされて濡れた状態となっている。また、内チャンバー32にウエハWを搬入するまでに待ち時間が発生する場合には、昇降ピンを降下させて皿状の搬入棚42上にウエハWを載置し、ウエハWの表面にIPAを供給して乾燥を防ぐ。そして内チャンバー32側の準備が整ったら昇降ピンを上昇させてフォーク411にウエハWを受け渡す。この場合にもウエハWの上面は、搬入棚42で供給されたIPAが液盛りされて濡れた状態となっている。
【0050】
一方、内チャンバー32は、図7(a)、図9(a)に示すように内チャンバー32内にIPAを満たした状態で待機位置にて待機している。搬入棚42からウエハWを受け取った受け渡しアーム41は、図7(b)に示すように搬入棚42から内チャンバー32へ向けてウエハWを搬送すると共に、フォーク411の先端が、内チャンバー32の移動方向(前後方向)と直交する方向を向くようにフォーク411を回転させて内チャンバー32内にウエハWを搬送する準備姿勢をとる。
【0051】
ウエハWを搬入する準備が整い(図8(a))、フォーク411の先端が内チャンバー32の開口部の近傍に到達したら、図8(b)に示すように水平姿勢を保ったままフォーク411を上昇させて上向きの加速度を加えた後、この上昇動作を停止し、しかる後、フォーク411の先端が下方側を向くようにウエハWの姿勢変換を開始する(図8(c))。このように、一旦、フォーク411に加速度を加えた後、ウエハWの姿勢変換を開始すると、当該ウエハWの上面にIPAを液盛りして形成された液溜まりには、上向きの慣性力が働き、当該液溜まりに加わる重力が弱まった状態となる。そこで、このとき液溜まりがウエハWの表面から浮かないようにしつつウエハWを縦向きに姿勢変換すると、この動作を行わない場合に比べてウエハWの表面に残存しているIPAの量を増やすことができる。
【0052】
ここで受け渡しアーム41は、例えばフォーク411の後端側を先端側よりも上方へ持ち上げることにより、ウエハWの回転軸の位置が、当該ウエハWを縦向きにしたときの下端部またはこれより下方の位置となるように姿勢変換を行う。かかる位置に回転軸を設定することにより、ウエハW上面のIPAには、ウエハWによって押されるように角加速度が加えられ、この反力としてウエハWに押し付けられる方向に慣性力が働くので、この作用によってもIPAがウエハWの上面から流れ落ちにくくなる。
【0053】
ただし、例えばウエハWの回転軸は、上述の如くウエハWを縦向きにしたときの下端部またはこれより下方の位置に設定する場合に限定されず、例えばウエハWの下端からウエハWの中心までの高さ位置に設定してもよい。このような場合であっても回転軸より上方側の領域に液盛りされているIPAに、ウエハW側へ押し付けられる方向への慣性力を働かせることができる。回転軸の下方側の領域は、ウエハWの姿勢変換を開始してから比較的短い時間で内チャンバー32のIPAに到達するので、ウエハWの回転に起因する慣性力が働かずに液盛りされたIPAが自然に流下しても、当該領域のIPAが乾燥する前にウエハWをIPA中に浸漬することができる場合がある。
【0054】
こうしてウエハWの表面にできるだけIPAを残存させる動作を行いながらウエハWの姿勢変換を実行し、さらにこれらの動作と並行しながらフォーク411を内チャンバー32の開口部の上方位置に移動させる。そしてウエハWが前記開口部を通過することが可能な程度にまで傾けられたら、図8(d)に示すようにウエハWの姿勢変換を継続しつつフォーク411を下方側へ降下させてウエハWを内チャンバー32に進入させる。
【0055】
内チャンバー32に進入したウエハWは、その下端部側から内チャンバー32内のIPA中に浸漬されることにより自然乾燥が防止される。一方、IPA中に浸漬されていない、ウエハWの上方側の領域では、ウエハWが傾けられると共に、IPAの液溜まりが流下していく。しかしこのとき受け渡しアーム41は、既述の如くウエハWを一旦上昇させたり、姿勢変換を行う際の回転軸の位置をウエハWの下端よりも下方側に設定したりしながら当該ウエハWを内チャンバー32内に進入させているので、これらの動作を実行しない場合に比べてウエハWの表面には比較的多くのIPAが残存している。
【0056】
このため、例えばIPAの液溜まりが流下してしまった後でも、ウエハWの表面にはIPAの薄膜が比較的多く残っており、この薄膜がウエハWの表面に形成されたパターンの凹凸を覆っている状態が維持されていれば、パターン倒れの発生は抑制できる。そこで、例えばウエハWの姿勢変換に係る動作を開始してから、ウエハWのパターン形成領域の全体が内チャンバー32のIPA中に浸漬されるまでの時間を十分に短くして、例えば上記パターン形成領域の上端がIPA中に浸漬される時点において当該上端部に数十μm〜数百μm程度のIPAの液膜が残存する程度の時間を予め実験やシミュレーションで把握しておく。そしてこの設定時間内でウエハWを内チャンバー32に進入させれば、ウエハWの姿勢変換に起因するパターン倒れの発生を抑制することができる。
【0057】
そこで本例に係る超臨界処理装置30では、ウエハWの姿勢変換を開始してから当該ウエハWの上端が内チャンバー32のIPAに浸漬されるまでの時間が上述の設定時間である例えば数秒〜十数秒となるように、受け渡しアーム41の動作パターン及びその動作速度を設定してパターン倒れの発生を抑えている。さらにこのとき、既述のようにウエハWの姿勢変換を行いながら、ウエハWを降下させることにより、例えばこれらの動作を別々のタイミングで行い、ウエハWの姿勢変換を終え、IPAの液溜まりが流下してしまってからウエハWの降下を開始する場合に比べて、ウエハWの表面に残存するIPAの液膜を厚くすることができる。
【0058】
こうしてウエハWの全体が内チャンバー32のIPA中に浸漬されたら、フォーク411をさらに降下させる。そしてウエハWの下端部がウエハ保持部材323の溝の内側に嵌って保持されたら、フォーク411によるウエハWの保持を解除して受け渡しアーム41を上昇させ、当該フォーク411を内チャンバー32から退避させる。しかる後、2枚のウエハWに対して上述の受け渡し動作を繰り返し、図9(b)に模式的に示すように2枚のウエハWが内チャンバー32に格納され、IPAに浸漬された状態になったら、駆動部352によりボールネジ353を駆動させて内チャンバー32を処理位置まで移動させる(図9(c))。このとき内チャンバー32からIPAが排出されないように供給・排液ライン524のバルブV3は閉となっており(図9(c)中に「S」と記してある。以下同じ)、また外チャンバー31側においてもCO2供給ライン511及び排気ライン531のバルブV1、V4は閉となっている。
【0059】
そして図4(b)に示すように固定板34を待機位置から固定位置まで移動させたら、CO2供給ライン511側の送液機構512のバルブV1を開とし(図10(a)中に「O」と記してある。以下同じ)、ポンプを作動させて処理空間310内に液体CO2を供給する。例えば大気圧雰囲気となっている処理空間310内に液体CO2が供給されると、液体CO2の一部が気化して処理空間310内の圧力が上昇し、気相側の雰囲気が液体CO2と平衡状態になる。
【0060】
しかる後、処理空間310内の雰囲気が例えば6MPa〜9MPaの範囲内の例えば7.5MPaとなるように開度を調節しながらバルブV4を開くと、CO2供給ライン511から供給されるCO2の液体の状態が保たれたまま気相側の雰囲気が追い出され、処理空間310内が液体CO2で置換されていく(図10(a))。そして液体CO2の液面の位置が、図5に示した内チャンバー32の切り欠き部322の下端程度の位置まで到達し、液体CO2が内チャンバー32に流れ込むことが可能な状態となったら、CO2供給ライン511及び排気ライン531のバルブV1、V4を閉じて外チャンバー31を密閉する(図10(b))。
【0061】
しかる後、図10(c)に示すように電源部313よりヒーター312に電力を供給し、処理空間310内の温度が例えば30℃〜90℃の範囲の40℃となるように加熱を行う。CO2の臨界点は、7.38MPa、31.1℃であるので、この加熱操作により液体CO2が超臨界状態に変化し、CO2の気液界面が消失して処理空間310内が超臨界状態のCO2で満たされた状態となる。
【0062】
ここで大気圧におけるIPAの沸点は82.4℃であるので、7.5MPa、40℃の処理空間310内においては内チャンバー32内のIPAは液体の状態を保っており、IPAに浸漬されたウエハWの表面も濡れた状態となっている。このとき図11(a)に示すように供給・排液ライン524のバルブV3を開くと、内チャンバー32内のIPAは内チャンバー32の開口部を介して超臨界状態のCO2によって押され、また重力が働いて供給・排液ライン524に向けて流れていく。この際に図6に示した切替弁525を回収ライン523側に切り替えておくことにより、内チャンバー32から流れ出たIPAはIPA貯留部52に回収される。
【0063】
内チャンバー32の底面に接続された供給・排液ライン524からIPAが流出していくと、処理空間310内の超臨界状態のCO2が膨張し、上面側の開口部を介して内チャンバー32内へと進入する。この結果、内チャンバー32内のIPAが上方側から下方側へ向けて超臨界状態のCO2へと置換されていくことになるが、超臨界状態のCO2は表面張力が働かないため、パターン倒れを殆ど引き起こすことなくウエハW表面の雰囲気を液体のIPAから超臨界状態のCO2に置換することができる。
【0064】
またこのとき内チャンバー32の上方側から下方側へ向けてIPAを超臨界状態のCO2へと置換していくことにより、IPAの排出時にウエハWから飛散したごみを内チャンバー32の底部側の通液口324へ向けてIPAと共に押し流していくので、これらのごみの巻き上げを抑制し、ウエハWへの再付着を低減することができる。
【0065】
ここで既述のように内チャンバー32は2枚のウエハWを格納することが可能な程度の大きさであるので、その容積は比較的小さい。このため、超臨界状態のCO2の温度及び圧力を臨界点よりも十分に高い状態としておき、膨張に伴う温度や圧力低下を見越した量のCO2を処理空間310内に予め供給しておけば、CO2の超臨界状態を十分に維持することができる。また例えば、内チャンバー32内のIPAが押し出され、超臨界状態のCO2が膨張してもその超臨界状態が維持されるようにヒーター312の出力を増加させてもよい。
【0066】
こうして内チャンバー32内のIPAが排出され、処理空間310の系内の雰囲気が全て超臨界状態のCO2に置換されたら、供給・排液ライン524のバルブV3を閉じ(図11(b))、排気ライン531のバルブV4を開いて処理空間310内を大気圧まで脱圧する。この結果、超臨界状態のCO2が気体の状態に変化することになるが、超臨界状態と気体との間には界面が形成されないので表面に形成されたパターンに表面張力を作用させることなく、ウエハWを乾燥することができる(図11(c))。
【0067】
このとき内チャンバー32にはウエハWが立て向きに保持されているので、例えばウエハWに付着していたパーティクルなどのごみがIPAや超臨界状態のCO2に流れに乗って飛散した場合であっても、これらのごみが重力によって沈降する位置にウエハWの表面が存在しないことからウエハWの再汚染が発生しにくい。
【0068】
ここで図11(c)に示した例では、液体CO2の供給時に外チャンバー31内の雰囲気を排気する既述の排気ライン531を利用して処理空間310内の脱圧を行う例を示したが、この脱圧操作時に処理空間310内にCO2の上昇流が形成されることに起因するごみの巻上げを抑えるため、例えば外チャンバー31の底部側に脱圧時専用の排気ラインを設けて処理空間310内に下降流が形成されるようにしながら脱圧を行ってもよい。また、内チャンバー32の底面に接続された供給・排液ライン524を利用して脱圧を行ってもよい。そして処理空間310内を脱圧する際には、CO2の膨張により処理空間310内の温度が低下して超臨界状態のCO2中に溶解していたIPAがウエハW表面で凝縮したりしないように、ヒーター312によって処理空間310内部の温度を上げるようにしてもよい。
【0069】
以上のプロセスにより、ウエハWの超臨界処理を終えたら、固定板34を退避位置まで退避させ、蓋部材321を前方側へ移動させて内チャンバー32を受け渡し位置まで引き出し、内チャンバー32内にフォーク411を進入させて処理を終えたウエハWを一枚ずつ取り出す。この際にはウエハWの表面は既に乾燥した状態となっているので、搬入時とは異なり、ウエハWの姿勢変換を行うタイミングや搬出動作などに特段の限定はない。
【0070】
内チャンバー32からウエハWが取り出されると、切替弁525の接続先をIPA供給ライン521側に切り替えて送液機構522を作動させてIPA貯留部52よりIPAを供給し、内チャンバー32にIPAが満たされた状態で次のウエハWが搬入されるまで待機する。
一方、取り出されたウエハWは搬出棚43を介して第1の搬送部121に受け渡され、搬入時とは逆の経路を通ってFOUP7内に格納され、ウエハWに対する一連の動作が完了する。
【0071】
本実施の形態に係る超臨界処理装置3によれば以下の効果がある。パターンの形成されている面がIPAにより濡れた状態のウエハWを横向きから縦向きに変換しながら内チャンバー32のIPA中に浸漬するにあたって、当該パターン形成領域の上端の板面に液膜を残したまま浸漬を完了するので、パターンの形成された面が自然乾燥する前にこれらの動作を終えることができる。しかる後、内チャンバー32のIPAを超臨界状態のCO2と置換することにより、パターン倒れの発生を抑えつつウエハWを乾燥することが可能となる。
【0072】
この結果、姿勢の変換動作に伴ってウエハWの上面を濡らしているIPAがこぼれ落ちたとしても、まだIPAがウエハW上に例えば液膜の状態で残っているうちにウエハWの全体を内チャンバー32のIPA中に浸漬することが可能となり、搬送中におけるウエハWの自然乾燥を防いでパターン倒れの発生を抑制することができる。
【0073】
ここで、内チャンバー32へウエハWを進入させる際に、ウエハWの表面にできるだけ多くのIPAを残存させるための動作として、図8(b)では水平の姿勢に保ったままフォーク411を上昇させて加速度を加えた後、ウエハWの姿勢変換を行う例について示したが、これらの動作を並行して同時に行ってもよい。この場合にはウエハW表面に液盛りされているIPAには、下向きの慣性力が働き、この慣性力のうちウエハWの表面に垂直に働く成分がIPAをウエハWの表面に押し付けて、IPAがウエハWの表面から流れ落ちにくくなるという効果を得ることができる。
【0074】
また図4〜図11などでは、内チャンバー32に満たされたIPA内にウエハWを浸漬し、この内チャンバー32を外チャンバー31内に搬入してから超臨界処理を行う、いわば2重容器型の超臨界処理部30の例について説明したが、本発明を適用可能な超臨界処理装置はこの例に限られない。例えば内チャンバー32を設けずに、処理容器である外チャンバー31に液槽の役割を一体に兼用させて、当該外チャンバー31内にウエハWを縦向きに保持する単体容器型の超臨界処理装置も、液槽を内部に格納した状態でウエハWの乾燥を行う処理容器に含まれている。以下の説明では処理容器と液槽とが一体となった容器を「チャンバー31」とし、他の構成要素については、図3〜図6にて示したものと同じ符号を用いて示す。
【0075】
この場合には、例えばチャンバー31の開口部311を開閉自在に構成し、当該開口部311を例えばチャンバー31の上面に設ける一方、当該チャンバー31の底部にはウエハ保持部材323を設けておき、予めIPAを満たした状態でウエハWを搬入する。この際にも、ウエハWを縦向きにする際に、ウエハW表面にできるだけ多くのIPAが残存するようにウエハWを傾ける受け渡しアーム41の動作パターンや、ウエハWの姿勢変換を開始してからウエハWのパターン形成領域の上端がチャンバー31内のIPA中に浸漬されるまでの時間を適正な値に設定することにより、超臨界処理を開始するまでのウエハWの自然乾燥に起因するパターン倒れの発生を抑制することができる。チャンバー31が処理容器及び液槽の役割を兼ねている場合には、当該チャンバー31に外部から直接超臨界流体を供給してIPAと置換することなどにより超臨界処理が行われる。
【0076】
さらにまた上述の各実施の形態では、ウエハWが浸漬される液体としてIPA、この液体と置換される超臨界状態の流体としてCO2を採用した例について説明したが、各流体の例はこれに限定されるものではない。例えば洗浄処理後のウエハWに乾燥防止用のIPAを供給する場合に替えて、ウエハWをリンス液(洗浄液)であるDIWに浸漬したまま超臨界流体と置換してもよい。また例えば超臨界流体としてHFE(Hydro FluoroEther)を利用する場合などに、液体のHFE中に浸漬した状態で外チャンバー31内にウエハWを配置し、この液体HFEを超臨界状態のHFEと置換してもよい。また超臨界状態の流体としてはIPAなども利用することができる。
【0077】
このほか、超臨界処理の前後のウエハWが載置される搬入棚42や搬出棚43は必ずしも設けなくてもよい。この場合には、例えば第2の搬送部121と、受け渡しアーム41との間で直接、ウエハWの受け渡しが行われる。したがって洗浄装置2での洗浄処理を終えた後、上面にIPAが液盛りされた状態でウエハWを搬送してくる第2の搬送部121は、搬入棚42に替わって載置部としての役割を果たすことになる。
【0078】
さらには、本実施の形態に係る超臨界処理装置3では、例えば6軸の多関節アームのような汎用的な受け渡しアーム41を利用して基板搬送機構を構成した例を示したが、基板搬送機構はこの構成例に限定されるものではないことは勿論である。例えば、搬入棚42と内チャンバー32の開口部上方の位置との間に搬送路を掛け渡し、この搬送路上を走行可能なシャトル状の搬送アームを設けて基板搬送機構を構成してもよい。この場合には、内チャンバー32の開口部の上方位置にて、例えば搬送アームがウエハWを横向きの状態から縦向きの状態にウエハWの姿勢変換を行いながら開口部を通過して内チャンバー32に進入することなどによりウエハWをIPA中に浸漬する動作を実行する場合などが考えられる。
【0079】
また、内チャンバー32の開口部は、その上面側に設ける場合に限定されるものではない。例えば図12に示すように内チャンバー32の上部にフード326を設け、このフード326の側面に設けられた開口部を通過する際にウエハWを横向きの状態から縦向きの状態に姿勢を変換する場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
W ウエハ
1 洗浄処理システム
2 洗浄装置
3 超臨界処理装置
30、30a
超臨界処理部
31 外チャンバー
310 処理空間
32 内チャンバー
41 受け渡しアーム
411 フォーク
42 搬入棚
43 搬出棚
511 CO2供給ライン
521 IPA供給ライン
524 供給・排液ライン
531 排気ライン
591 超臨界流体供給ライン
592 液体排出ライン
6 制御部
7 FOUP
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが形成された被処理基板を、このパターンが形成された面を上面として、当該面が液体により濡れた状態で横向きに保持する載置部と、
液体が収容され、前記被処理基板を当該液体中に浸漬した状態で縦向きに保持するための液槽と、
この液槽が内部に格納された状態で、当該液槽内の液体を超臨界状態の流体に置換して前記被処理基板を乾燥する処理が行われる処理容器と、
前記載置部から被処理基板を受け取り、前記被処理基板のパターンの形成領域の上端が前記液槽内の液体に接触する時点において、このパターン形成領域の上端の板面に液膜が残っているように当該被処理基板を縦向きの状態に変換して当該液体に浸漬させる基板搬送機構と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記基板搬送機構は、前記液槽の開口部よりも高い位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記液槽の開口部の面積が、被処理基板を平面視したときの面積よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記基板搬送機構は、被処理基板に上方向の加速度を加えた後、または加えながら当該被処理基板の姿勢を縦向きの状態に変換することを特徴とする1ないし3のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記基板搬送機構は、被処理基板の上面を濡らしている液体がこの被処理基板側へと押し付けられる方向への慣性力を働かせるために、当該被処理基板の中央よりも下方側の高さ位置を水平方向に伸びる回転軸を中心として回転させることにより、被処理基板を縦向きの状態に変換することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記被処理基板の上面に、液体を液盛りする機構と、液体が液盛りされた被処理基板を前記載置部へと搬送する他の基板搬送機構と、を備えていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記載置部は、被処理基板の上面に液体を供給する液供給機構を備えていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項1】
パターンが形成された被処理基板を、このパターンが形成された面を上面として、当該面が液体により濡れた状態で横向きに保持する載置部と、
液体が収容され、前記被処理基板を当該液体中に浸漬した状態で縦向きに保持するための液槽と、
この液槽が内部に格納された状態で、当該液槽内の液体を超臨界状態の流体に置換して前記被処理基板を乾燥する処理が行われる処理容器と、
前記載置部から被処理基板を受け取り、前記被処理基板のパターンの形成領域の上端が前記液槽内の液体に接触する時点において、このパターン形成領域の上端の板面に液膜が残っているように当該被処理基板を縦向きの状態に変換して当該液体に浸漬させる基板搬送機構と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記基板搬送機構は、前記液槽の開口部よりも高い位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記液槽の開口部の面積が、被処理基板を平面視したときの面積よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記基板搬送機構は、被処理基板に上方向の加速度を加えた後、または加えながら当該被処理基板の姿勢を縦向きの状態に変換することを特徴とする1ないし3のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記基板搬送機構は、被処理基板の上面を濡らしている液体がこの被処理基板側へと押し付けられる方向への慣性力を働かせるために、当該被処理基板の中央よりも下方側の高さ位置を水平方向に伸びる回転軸を中心として回転させることにより、被処理基板を縦向きの状態に変換することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記被処理基板の上面に、液体を液盛りする機構と、液体が液盛りされた被処理基板を前記載置部へと搬送する他の基板搬送機構と、を備えていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記載置部は、被処理基板の上面に液体を供給する液供給機構を備えていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−222676(P2011−222676A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88950(P2010−88950)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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