説明

基板検査装置および基板検査システムならびに基板検査結果の確認用画面の表示方法

【課題】部品およびはんだに対する3次元計測結果に基づく検査の結果や検査対象部位の状態を、ユーザが容易に確認できるような表示を行い、検査結果の確認作業を支援する。
【解決手段】基板上の部品およびはんだに、それぞれ異なる手法の3次元計測を実施し、それぞれの計測により得た3次元情報をはんだ付け部毎および種別毎に読出可能に蓄積する。そして、これらの蓄積情報に基づき、はんだ付け部位毎に部品とはんだとの関係を表す画像を生成し、この画像を含む画面を検査結果の確認用の画面として表示する。好ましい確認用画面では、はんだの3次元情報が表す立体形状を部品のはんだへの接合面の近傍位置で切断した場合に得られるはんだの断面を正面として、このはんだの断面と部品との関係を示す画像(YZ図またはXZ図)が表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品がはんだ付けされた基板(以下、「部品実装基板」という。)を対象にした3次元計測を実行し、その計測結果に基づき当該基板の部品の実装状態やはんだ付け状態を検査する検査装置、およびこの検査の結果を確認するための表示の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
部品実装基板に対する検査装置としては、従前より、基板を撮像して2次元の計測処理を実施する外観検査装置が広く知られている(たとえば特許文献1を参照。)。
【0003】
また最近では、ドーム型の照明装置やステレオカメラを用いて、カメラ毎に、画像中のはんだに対応する画素の法線方向を計測し、この法線方向に基づきカメラ間での画素の対応づけを行うことによって、はんだの高さを計測する装置が開発されている(特許文献2,3を参照。)。また電子部品を対象にしたステレオ計測によって、部品本体や電極の高さを計測する技術も開発されている(特許文献4を参照。)。
【0004】
また、基板に対する3次元計測の結果を確認する技術について、高さ情報を等高線にて示した3次元平面画像を2次元の実画像と共に表示することを記載した文献がある(特許文献5を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−1173号公報
【特許文献2】国際公開 WO2010/118281号公報
【特許文献3】特開2010−71782号公報
【特許文献4】国際公開 WO2006/135040号公報
【特許文献5】特開2006−267018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献2および3に記載された技術によれば、部品実装基板上のはんだの表面形状を表す3次元情報を精度良く取得することができる。また、特許文献4などの3次元計測技術を応用して部品実装基板上の部品の3次元情報を取得することもできる。よって基板上の部品とはんだとにそれぞれの特性に応じた3次元計測処理を行えば、両者の関係を外観検査よりも精度良く分析することが可能になり、高精度の検査を実施することが可能になると考えられる。
【0007】
ただし、3次元情報による検査を実施する場合には、検査の対象となった箇所が具体的にどのようになっているかや、良・不良の判定結果が妥当であるかどうかを、ユーザが確認できるようにするのが望ましい。また、検査の前に、判定基準を設定する作業を行う際にも、検査対象箇所の実際の状態や計測すべき箇所を確認できるのが望ましい。
【0008】
本発明は上記の点に着目し、部品およびはんだに対する3次元計測結果に基づく検査の結果や検査対象部位の状態を、ユーザが容易に確認できるような表示を行うことによって、検査結果の確認作業を支援することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による基板検査装置は、基板上にはんだ付けされた部品を所定の照明下で撮像する撮像手段と、撮像手段により生成された画像からはんだ付け部位を特定するはんだ付け部位特定手段と、特定されたはんだ付け部位毎に、画像中の部品と当該部品に対応するはんだとを見分けて、それぞれに対する3次元計測を実行する3次元計測手段と、3次元計測手段の計測により導出された部品およびはんだの3次元情報を用いて部品の実装状態およびはんだ付け状態を判別するための検査を実行する検査実行手段と、部品およびはんだの3次元情報をはんだ付け部位毎および種別毎に読出可能な状態で蓄積する結果蓄積手段と、結果蓄積手段に蓄積された情報を用いて、はんだ付け部位毎に部品とはんだとの関係を表す画像を生成し、この画像を含む画面を表示するための表示用情報を出力する表示制御手段とを具備する。
【0010】
上記の構成において、3次元計測手段は、生成された画像に現れた特徴から部品と基板とを見分け、これらに対し、それぞれの特性に応じた3次元計測処理を実施する。たとえば、はんだに対しては、特許文献2または3に記載された計測処理を適用し、部品に対しては、特許文献4に記載された計測処理を適用することができる。
【0011】
はんだ付け部位特定手段は、たとえば、あらかじめ装置に登録された設定データに基づき、画像中のはんだ付け部位を含む範囲を、個別に特定することができる。または、はんだの鏡面反射性を利用して、画像中の輝度の高い領域を抽出し、その領域の分布パターンを基板のマップ情報と照合することにより、各ランドに相当する範囲をはんだ付け部位として特定してもよい。
【0012】
検査蓄積手段では、検査の際の計測により得た部品およびはんだの3次元情報が、たとえば、基板、部品、電極の各識別コードの組み合わせと部品又ははんだの種別コードとが添付された状態で保存される。本発明では、これらの蓄積情報に基づき、はんだ付け部位毎に部品とはんだとの関係を表す画像を生成して表示するので、ユーザは、両者の関係がどのようになっていたかを容易に確認することが可能になる。
【0013】
なお、この確認用の画面の表示は、検査装置本体で実施してもよいが、表示用情報を他の装置(パーソナルコンピュータなど)に出力して、当該他の装置で画面を表示してもよい。また、確認用の画面を外部の装置で表示する場合には、画面の表示用情報をハードディスクやディジタル・ビデオ・ディスクなどの記憶装置に出力してもよい。また、表示の対象は、部品毎またははんだ付け毎に行うことができるが、後記する第5の実施形態に示すように、同一規格の複数の部品に関する表示をまとめて行うこともできる。
【0014】
上記の基板検査装置の好ましい第1の実施形態では、表示制御手段は、はんだの3次元情報が表す立体形状を部品のはんだへの接合面(部品電極の端面や側面)の近傍位置で切断した場合に得られるはんだの断面を正面として、このはんだの断面と部品との関係を示す画像を生成する。
【0015】
第1の実施形態によれば、部品のはんだへの接合面とこの面に対するはんだの位置関係や大きさが明瞭に示された画像が表示されるので、ユーザは、部品とはんだとの接合状態を容易に確認することが可能になる。
なお、表示される画面には、部品のはんだへの接合面のうちの少なくとも1面に関する画像を含めればよいが、複数の接合面にかかる画像を含めてもよい。
【0016】
上記の基板検査装置の好ましい第2の実施形態では、表示制御手段は、部品およびはんだの3次元情報に基づきはんだ付け部位を上方から俯瞰した状態を示す画像を生成すると共に、当該部品のはんだへの接合面のうちの少なくとも1面を対象に、はんだの3次元情報が表す立体形状を当該接合面の近傍位置で切断した場合に得られるはんだの断面を正面として、このはんだの断面と部品との関係を示す画像を生成し、各画像を含む画面の表示用情報を出力する。
【0017】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の画像と共に、はんだ付け部位を上方から俯瞰した状態を示す画像が表示されるので、部品やはんだのずれや傾きなどを確認しながら、両者の接合部分における関係を確認することができる。よって、部品とはんだとの関係をより詳細に確認することが可能になる。
【0018】
上記の基板検査装置の好ましい第3の実施形態では、はんだ付け部位特定手段は、撮像手段により生成された画像において基板のランドに対応する範囲を特定する。また、表示制御手段は、はんだ付け部位特定手段により特定されたランドの範囲と3次元計測手段により見分けられた部品およびランドとの関係に基づき、部品およびはんだの関係と共に、両者に対するランドの関係を示す画像を生成する。
【0019】
第3の実施形態によれば、部品、はんだ、ランドの三者間の関係を表す画像が表示されるので、ユーザは、ランド上の部品電極やはんだの装着範囲が十分であるかどうかや、部品がランドから位置ずれしていないかなどを、容易に確認することが可能になる。
【0020】
なお、ランドを特定するには、たとえば、画像中の輝度の高い領域を抽出し、この領域の分布パターンに基板のマップ情報を照合すればよい。または、検査対象の基板がはんだ付けされる前に(たとえば、はんだの印刷工程や部品実装工程などにおいて、または、はんだの印刷工程を開始する前に)計測されたランドの情報を読み込み、これを用いて画像中のランドの範囲を特定してもよい。
【0021】
上記第1〜第4の実施形態において、結果蓄積手段が、さらに、検査において実施された計測処理の結果をはんだ付け部位毎に読出可能な状態で蓄積した場合には、表示制御手段は、生成された画像の中の検査のために計測された部位に、計測結果および検査に用いられた判定基準を示す指標を対応づけた画面を設定することができる。たとえば、部品電極の高さ方向および幅方向に対するはんだの割合が計測されている場合には、画像中のはんだや部品に計測対象範囲を示すゲージを対応づけて、計測データの実測値や計測データの良範囲を表示することができる。またはんだのフィレットの傾斜角度が計測されている場合には、はんだの傾斜状態を表す画像に計測された角度や良好な角度範囲を示すマークを対応づけて表示することができる。
【0022】
上記のように、生成された画像に検査のために計測された部位に、計測結果および検査に用いられた判定基準を対応づけて表示することにより、ユーザは、計測対象部位を実際の計測結果と対応づけて確認したり、判定基準が適切であるかどうかを判断することが容易になる。
【0023】
また、第1〜第3の実施形態において、表示制御手段は、表示用情報に基づき表示された画像に対し切断位置を示す直線を設定する操作を受け付けると共に、この操作により設定された直線に沿う断面の形状を表す画像が表示されるように、表示用情報を更新することができる。このようにすれば、ユーザは、確認したい箇所を自由に設定して、その断面形状を確認することができるから、利便性がさらに高められる。
【0024】
上記基板検査装置の好ましい第5の実施形態では、表示制御手段は、同一規格の複数の部品につき結果蓄積手段に蓄積された3次元情報を用いて、これらの部品とはんだとの関係を示す画像を共通の画像生成ルールに基づいて部品毎に生成し、各画像の一覧を含む画像の表示用情報を生成し、出力する。
【0025】
上記の実施形態によれば、同一規格の複数の部品について、表示の対象範囲、視線の方向、倍率など確認の条件を統一して画像を生成し、これらを一覧表示することができるので、ユーザは、それぞれの部品における部品とはんだとの関係のばらつき度合いを、容易に確認することが可能になる。
【0026】
第5の実施形態において、表示制御手段は、一覧表示の対象の部品毎に、その部品に対応するはんだの3次元情報が表す立体形状を部品のはんだへの接合面の近傍位置で切断した場合に得られるはんだの断面形状を正面として、このはんだと部品との関係を示す画像を生成することができる。
【0027】
また、第5の実施形態において、結果蓄積手段が、検査において実施された計測処理の結果をはんだ付け部位毎に読出可能な状態で蓄積する場合には、表示制御手段は、一覧表示される各画像に対し、それぞれ画像中の検査のために計測された部位に計測結果および検査に用いられた判定基準を示す指標を対応づけて表示することができる。
【0028】
本発明は、部品実装基板を検査する基板検査装置と、基板検査装置が検査のために実施した計測処理の結果を当該基板検査装置から取り込んで蓄積する情報蓄積処理装置と、情報蓄積処理装置に蓄積された情報を読み出し、読み出された情報を用いて検査結果の確認用の画面を表示する確認用端末装置とを含むシステムに適用することができる。このシステムにおける基板検査装置は、基板上にはんだ付けされた部品を所定の照明下で撮像する撮像手段と、撮像手段により生成された画像からはんだ付け部位を特定するはんだ付け部位特定手段と、特定されたはんだ付け部位毎に、画像中の部品と当該部品に対応するはんだとを見分けて、それぞれに対する3次元計測を実行する3次元計測手段と、3次元計測手段の計測により導出された部品およびはんだの3次元情報を用いて部品の実装状態およびはんだ付け状態を判別するための検査を実行する検査実行手段と、部品およびはんだの3次元情報をはんだ付け部位毎および種別毎に特定可能な形態に構成された情報を前記情報蓄積処理装置に出力する出力手段とを、具備する。
情報蓄積処理装置または確認用端末装置には、前記情報蓄積装置に蓄積された情報を用いて、はんだ付け部位毎に部品とはんだとの関係を表す画像を生成する表示用画像生成手段が設けられると共に、確認用端末装置において、前記表示用画像生成手段により生成された画像を含む確認用画面を表示する。
【0029】
上記のシステムによれば、基板検査装置において検査のために実施された計測結果を外部の情報蓄積処理装置に蓄積し、確認用端末装置において、蓄積された情報を用いた確認用画面を表示する場合にも、はんだ付け部位毎に部品とはんだとの関係を表す画像を確認することができる。
なお、先に述べた基板検査装置の各実施形態は、この基板検査システムにも適用することができる。
【0030】
つぎに、本発明による表示方法は、基板にはんだ付けされた部品を所定の照明下で撮像し、生成された画像中のはんだ付け部位毎に、部品と当該部品に対応するはんだとを見分けてそれぞれに対する3次元計測を実行し、計測により導出された部品およびはんだの3次元情報を用いて部品の実装状態およびはんだ付け状態を判別するための検査が実行されたことに応じて、実施される。
【0031】
この方法では、3次元計測により導出された部品およびはんだの3次元情報を、はんだ付け部位毎および種別毎に読み出し可能な状態で蓄積する。そして、蓄積された情報を用いて、はんだ付け部位毎にはんだの3次元情報が表す立体形状を部品のはんだへの接合面の近傍位置で切断した場合に得られるはんだの断面を正面として、このはんだの断面と部品との関係を示す画像を生成し、この画像を含む画面を表示する。
【0032】
さらに、好ましい実施形態による表示方法では、画面の画像の中の検査のために計測された部位に、計測結果および検査に用いられた判定基準を示す指標を対応づけて表示する。
【0033】
上記の方法は、検査を実施した検査装置のほか、この検査装置が実施した3次元計測や検査の結果を取得した外部のコンピュータにおいて実施することができる。または、検査装置において表示対象の画像を生成し、この画像のデータまたは当該画像を含む画面全体の表示用情報を検査装置から外部装置に送信し、外部装置において、確認用の画面を表示する処理を行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、基板上の部品およびはんだに対する3次元計測の結果に基づき、部品とはんだとの関係を確認するのに適した画像を生成し、この画像を含む画面を表示することができる。よって、ユーザは、表示された画面から検査された箇所の状態を容易に確認することができ、検査結果が妥当であるかどうかを判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】基板検査装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】照明装置における各色成分の強度の変化をマップにして示す図である。
【図3】照明装置における各色成分の強度の変化の方向の関係を天頂角が同一の高さ位置からの光と共に示す図である。
【図4】基板検査装置の機能ブロック図である。
【図5】確認対象のチップ部品を表示される範囲と共に示す図である。
【図6】確認用画面の第1の例を示す模式図である。
【図7】図6のYZ図を作成する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】確認用画面の第2の例を示す模式図である。
【図9】確認用画面の第3の例を示す模式図である。
【図10】確認用画面の第4の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、本発明が適用された基板検査装置の一例を示す。
この実施例の基板検査装置100(以下、単に「検査装置100」という。)は、部品実装基板の生産ラインのリフロー工程までの各工程を経た基板Sを検査対象として、基板S上の部品の実装状態やはんだ付け状態を検査するもので、ステレオカメラ1、照明装置2、基板ステージ4、制御処理部3などにより構成される。
【0037】
基板ステージ4は、検査対象の基板Sを水平な姿勢で支持しながら、この基板Sを各辺に沿う方向に移動させる。
ステレオカメラ1は2台のカラーカメラ1A,1B(以下、単に「カメラ1A,1B」という。)により構成される。一方のカメラ1Aは、基板ステージ4の上方に、光軸をほぼ鉛直方向に向けた状態(ステージ4上の基板Sを正面視する状態)で配備され、他方のカメラ1Bは、光軸を鉛直方向に対して斜めに向けた状態で配備される。
【0038】
照明装置2は、ドーム状の筐体20を本体とするもので、カメラ1A,1Bと基板ステージ4との間に配備される。筐体20の内周面には、LEDなどの点光源が全面にわたって配列されている。また、図1には示していないが、筐体20の各カメラ1A,1Bの光軸に対応する箇所には、撮像用の窓部が形成されている。
【0039】
制御処理部3には、各カメラ1A,1B毎の画像インターフェース30A,30B、照明制御部31、ステージ制御部32、制御部33、メモリ34、ハードディスク装置35、通信用インターフェース36、入力部37、表示部38などが含まれる。
【0040】
画像インターフェース30A,30Bには、対応するカメラ1A,1Bの駆動回路やカメラ1A,1Bからの画像信号を処理する回路(アンプ、A/D変換回路など)が含まれる。照明制御部31は、照明装置2内の各光源の発光強度や発光タイミングを制御し、ステージ制御部32は、基板ステージ4の動きを制御する。
【0041】
制御部33は、上記の光学系や基板ステージ4の動作を統括制御しながら検査に関する種々の演算を実施する。制御部33には、CPUが含まれるが、さらに画像処理用のディジタル演算回路や高速演算の機能を有する回路(FPGAなど)を含めることもできる。
【0042】
メモリ34には、基本的なプログラムが保存されるほか、処理対象の画像データや演算結果などが一時的に保存される。ハードディスク装置35には、検査に関わる各種の処理(画像処理や計測処理を含む。)に用いられるプログラム群や、後記する検査結果データベース108、法線・特徴量テーブル111などが保存される。
【0043】
通信用インターフェース36は、現場に設置されたLAN回線(図示せず。)を介して、他の工程に設置されている検査装置や生産ラインを管理するサーバー装置と通信をするのに用いられる。入力部37は、検査の開始および終了を指定する操作や種々の設定データの入力に用いられる。表示部38は、検査結果の確認用の画面や設定用の画面を表示するのに用いられる。
【0044】
制御部33は、カメラ1A,1Bにより生成されたステレオ画像を用いて、部品およびはんだに対する3次元計測を実施する。また、基板Sのランドについても、画像中のはんだの分布パターンや基板Sのマップ情報などに基づき3次元情報を作成する。そして、各3次元情報を用いて、ランドと部品との位置関係、部品電極とはんだとの関係、はんだのフィレットの傾斜状態などを検査する。さらに、これらの検査結果を部品毎および基板毎に統合して、部品単位および基板単位での良・不良を判定する。
【0045】
つぎに、部品およびはんだに対する3次元計測を実現するための光学系の構成を説明する。この実施例の照明装置2では、ドーム状の筐体20の内面の全域にわたって配置された点光源を用いて、ステレオカメラ1による計測範囲に全方位から光を照射する。さらに、この実施例では、R,G,Bの色成分毎に発光強度を調整することが可能な発光体を点光源として用いると共に、はんだおよび部品のそれぞれに対する3次元計測に適した照明がなされるように、各光源の発光強度を調整する。
【0046】
図2および図3は、照明装置2の筐体20における各色成分の発光強度の変化を模式的に示したものである。この実施例では、各色成分の強度を、それぞれ筐体20の一端縁から天頂部を介して反対側の端縁へと向かう方向に沿って変化させると共に、各変化の方向の間に120度の角度差を設定している。
【0047】
図2は、各色成分の強度の変化を色成分毎にマップとして示したものであるが、図示の便宜上、強度が同値となる点を結んだ線(等輝度線)を8本設定して、これらの等輝度線を境界に塗りパターンを変更している。実際には、いずれの色成分でも、マップ上の太矢印の方向に沿って、0から255までの範囲で徐々に強度が強められる。この強度変化は、1つ1つの光源毎または数個の光源を含むブロック毎に、R,G,Bの発光強度を変更することにより実現する。色成分毎の強度変化の相互作用によって、照明装置2の各位置から照射される光におけるR,G,Bの強度比は、それぞれの光の方位角や入射角によって異なるものとなる。
【0048】
さらに、この実施例では、はんだの表面が完全な鏡面でない場合でも、正反射光による成分以外の反射成分(カメラの光軸方向と正反射の関係にはない方向からの光による反射光)がキャンセルされて、正反射成分のみを反映させた光像が生成されるように、各強度変化の方向における変化量を調整している(具体的な調整のしくみや原理については、特許文献2を参照されたい。)。
【0049】
この調整により、照明装置2による照明下で撮像をすると、カメラ1A,1Bのいずれによる画像においても、その画像中のはんだに生じた正反射光像のR,G,Bの強度比率によって、その像を生成させた光の方向を特定することができる。また、特定された方向とカメラ1A,1Bの光軸方向との関係に基づき、はんだの傾斜面の法線方向を特定することができる。
【0050】
さらにこの実施例では、照明装置2の天頂角が同一になる高さからの光(図3を参照)を対象にR,G,B毎の強度の総和を求めた場合のRの強度総和、Gの強度総和、Bの強度総和が同じ値になるように、各光源の発光強度を調整している。よって、全ての光源からの光によるR,G,B毎の強度総和もほぼ一致することとなり、部品や基板本体などの拡散反射性を有する構成物に照射されて反射した光は、混合して白色光となってカメラ1A,1Bに入射する。よって、部品や基板本体を、白色照明がされた場合と同様の照明状態で撮像することができるので、実際の色彩に近い画像を生成することができる。
【0051】
つぎに、図4は、上記の検査装置100に設定される機能を示す。この図に示すとおり、この実施例の検査装置100には、画像入力部101、ランド特定部102、はんだ計測部103、部品計測部104、3次元情報生成部105、検査実行部106、確認画面表示部107の各機能が設定される。また、はんだ計測部103内の法線・特徴量テーブル111および検査結果データベース108は、図1に示したハードディスク装置35に格納される。
【0052】
画像入力部101は、画像インターフェース30A,30Bを介して各カメラ1A,1Bにより生成されたステレオ画像を入力する。図4では、特に個々の画像との関係を切り分けて示していないが、ランド特定部102、はんだ計測部103、部品計測部104には、双方の画像データが入力され、処理される。
【0053】
画像入力部101には、検査領域の設定機能が含まれる。この機能によって、画像中の対象部品およびはんだ付け部位が包含される範囲に処理対象領域が設定される。
【0054】
ランド特定部102は、各画素の輝度(R,G,Bの強度の総和)に基づき、画像中の処理対象領域からはんだを含む領域を抽出し、この抽出結果を基板Sのマップ情報と照合するなどして、ランドに対応する範囲を特定する(マップ情報からはんだを示す画素が集合する範囲に適合するランドを特定し、当該範囲にランドの大きさを対応づける。)。このランドの特定結果に基づき、はんだ計測部103や部品計測部104の計測領域も特定される。
【0055】
はんだ計測部103には、特徴量算出部110、法線・特徴量テーブル111、法線導出部112、画素対応づけ部113、高さ算出部114などが含まれる。法線・特徴量テーブル111には、照明装置2の各方向からの光におけるR,G,Bの強度比率(以下、「R,G,B比」という。)を特徴量として、カメラ1A,1B毎に、上記の特徴量とこの特徴量により表される面の法線方向(角度情報として表される。)との対応関係を示すテーブルが保存される。
【0056】
特徴量算出部110は、ランド特定部102によりランドとして特定された範囲内に計測領域を設定し、この領域内でR,G,Bの強度の総和が所定値を超えている画素を対象に、R,G,B比を算出する。法線導出部112は、上記のR,G,B比を法線・特徴量テーブル111と照合することにより、対応する法線方向を導出する。これらの処理により、はんだを表す画素毎に対応する法線方向が求められる。
【0057】
特徴量算出部110および法線導出部112による処理は、ステレオ画像を構成する各画像に対して実施される。これらの処理により、各画像から、それぞれ法線方向を画素情報とする疑似画像が生成される。画素対応づけ部113は、この疑似画像にカメラ1A,1Bの関係を適用して、画像間において、エピポーラ拘束の条件を満たし、かつ法線方向がほぼ一致する関係にある画素同士を対応づける。高さ算出部114は、対応づけられた画素の組毎に三角測量を適用した演算を実施し、高さを算出する。
【0058】
部品計測部104には、部品領域抽出部115、計測点抽出部116、計測点対応づけ部117、高さ算出部118などが含まれる。
部品領域抽出部115は、各画像に部品のモデル画像を照合する(たとえば正規化相関演算などを行う。)などして、部品の形状の特徴が現れた領域(部品領域)を抽出する。
【0059】
計測点抽出部116は、処理対象の部品につき登録されている検査基準に基づき、各画像の部品領域から所定数の計測点を抽出する。たとえば、処理対象部品がチップ部品であれば、部品本体および両側の電極の上面のエッジの構成点を抽出する。また処理対象部品がリード部品であれば、部品本体の上面および各電極の先端部分のエッジの構成点を抽出する。
【0060】
計測点対応づけ部117は、カメラ1Aによる正面視画像を基準に、この基準画像中の計測点毎に、もう一方の画像において、エピポーラ拘束条件を満たし、周囲近傍の画像の特徴が類似する計測点を検索し、検索により抽出された計測点を基準画像側の計測点に対応づける。高さ算出部118は対応づけられた計測点の組毎に、三角測量を適用した演算を実施し、高さを算出する。
なお、計測点抽出部116は、部品本体と部品電極とを識別して計測点を抽出する。計測点対応づけ部117および高さ算出部118でも、部品本体を示す計測点と部品電極を示す計測点とを識別して処理を実行する。
【0061】
3次元情報生成部105は、上記のランド特定部102、はんだ計測部103、部品計測部104の処理結果を取得し、ランド、はんだ、部品の種毎に3次元情報を生成する。具体的には、はんだと部品とに関しては、それぞれカメラ1Aによる正面視画像のうち計測の対象となった画素の座標と計測された高さとを対応づけることにより、3次元座標を設定する。一方、ランドについては、カメラ1Aによる正面視画像でランドに対応するとして特定された範囲内の各画素の座標に、一定の値の高さ(基板の厚みに応じた値であり、はんだや部品の高さよりはるかに低い値)を設定する。
さらに3次元情報生成部105は、各3次元座標に、それぞれその座標が示す構成物(ランド、はんだ、部品)の種別を示すコード、および部品やはんだ付け部位の識別コードを添付して、検査結果データベース108に格納する。また、部品の3次元座標には、部品本体、部品電極のいずれかを示すコードが添付される。
【0062】
上記の3次元情報生成部105の処理によれば、カメラ1Aによる正面視画像の座標がそのままランド、はんだ、部品の3次元座標に適用されるので、三者の3次元情報はおのずと整合する。この情報の特徴を利用して、検査実行部106では、部品種毎に設定されている検査プログラムを用いて、部品、はんだ、およびランドの三者間における関係をチェックするための様々な計測を実施し、各計測結果を判定基準と照合して良・不良を判定する。
判定の結果および計測処理の際に得た計測値は、検査結果情報として、処理対象の部品およびはんだ付け部位の識別コードに紐付けられて検査結果データベース108に格納される。
【0063】
確認画面表示部107は、上記の検査が完了した部品を対象に、その検査や計測の結果を容易に確認できるような画面を設定し、この画面を表示部38に表示する。この画面には、検査結果データベース108に蓄積された検査結果情報および3次元情報を用いて生成された部品の模式図の画像が含まれる。
【0064】
以下、図5に示すようなチップ部品を確認対象の部品として、この部品の片側の電極に対する検査結果を確認する画面の表示例を説明する。なお、以下の実施例では、基板の長辺の方向をX方向とし、短辺の方向をY方向とし、高さをZ方向とする。また、確認対象の部品は、電極の並び方向をX方向に合わせて実装されているものとする。
【0065】
図6は、図5中のチップ部品の点線枠で示した範囲を対象に、確認用の画面G1を表示した例を示す。この画面G1では、チップ部品の表示対象範囲を上方から俯瞰した状態を示す画像(以下「XY図」と呼ぶ。)、YZ平面を正面とする画像(以下「YZ図」と呼ぶ。)、およびXZ平面を正面とする画像(以下「XZ図」と呼ぶ。)が、それぞれのスケールや位置を合わせた状態で表示されている。
【0066】
いずれの画像でも、部品本体、電極、はんだ、ランドを、それぞれその構成に特有の色彩(図では、塗りパターンに置き換えて示すと共に、各パターンと構成物との対応関係を図中の右下の枠内に示す。)により着色している。また、各画像のパターンが付されていない白抜きの部分は、3次元情報が生成されていない基板本体に対応するが、この部分にもランドと同じ高さデータが設定される。
【0067】
XY図は、図5のチップ部品の点線枠の範囲を上方から俯瞰した状態を示す画像である。この画像によれば、ランドが広がる範囲におけるはんだや部品の位置関係が明瞭に示される。
【0068】
YZ図は、部品電極の端面の外側の直近位置をY−Z方向に沿って切断した場合に生じるはんだの断面を正面として、背後の部品電極や下方のランドと共に表したものである。XZ図は、部品電極の側面の外側の直近位置をX−Z方向に沿って切断した場合に生じるはんだの断面を正面として、背後の部品電極および部品ならびに下方のランドと共に表したものである。これらYZ図およびXZ図により、部品電極に対するはんだの接合状態やはんだのぬれ上がり状態を確認することができる。
【0069】
さらに、この実施例の確認用画面G1では、各画像中の検査の対象となった箇所に補助線を介してゲージを対応づけ、計測結果および判定基準を示している。
具体的に、図中の各ゲージg〜gでは、計測開始点と計測終了点とに黒の三角印を対応づけ、白の三角印を良判定の基準値に対応させている。2つの黒の三角印の間の着色された部分(図では斜線パターンにより示す。)が計測された値に相当する。
【0070】
各ゲージが示す情報の内容を簡単に説明する。
YZ図のゲージgは、部品電極の端面に対するフィレットのぬれ上がり状態の検査結果を示すものである。具体的には、部品電極の端面に接合されたはんだ(すなわちYZ図の正面部分のはんだ)の部品電極に対する高さの割合が計測されたこと、計測値の良判定の基準が50%から100%の範囲に設定されていること、および計測値が80%であったことが、示されている。
【0071】
YZ図のゲージgは、部品電極の端面の幅方向におけるはんだの接合状態の検査結果を示すものである。具体的には、部品電極の端面に接合されたはんだの部品電極に対する幅の割合が計測されたこと、計測値の良判定の基準が75%以上に設定されていること、および計測値が92%であったことが示されている。
【0072】
XY図のゲージgは、ランドと部品との位置関係の検査結果を示すものである。具体的には、ランド上における部品の搭載範囲がランドのX方向の幅に対する割合として求められたこと、計測値の良判定の基準が100%以下に設定されていること、および計測値が60%であったことが示されている。
【0073】
XY図のゲージgおよびgは、ランドと部品電極との位置関係に関する検査結果を示すものである。ゲージgでは、部品電極のうちX方向においてランドに重なっている部分の割合が計測されたこと、計測値の良判定の基準が75%以上に設定されていること、計測値が100%であったこと(部品電極全体がランド上にあることを意味する。)が示されている。ゲージgでは、部品電極のうちY方向においてランドからはみ出している部分の割合が計測されたこと、計測値の良判定の基準が25%以下に設定されていること、計測値が0%であったこと(ランドからのはみ出しがないことを意味する。)が示されている。
【0074】
XZ図のゲージgは、はんだの傾斜角度に関する検査結果を示すもので、ランドの面に対してはんだの傾斜面がなす角度(30度)が表されている。またこのゲージgには、60度の傾斜角度を良判定の基準とすることが示されている。
【0075】
上記のとおり、この実施例の確認用画面G1には、部品、はんだ、ランドの三者の関係を上方から見たXY図と、部品電極に接合するはんだの断面形状を部品やランドの関係と共に示したYZ図およびXZ図とが表示されると共に、画像中の計測対象箇所に計測結果や判定基準を示す指標が対応づけて表示される。よってユーザは、各画像における部品、はんだ、ランドの関係や計測結果を容易に確認することができる。また、画像中の各構成の状態と判定基準との関係から、妥当な検査結果が得られているかどうかを判断することができる。
【0076】
上記の確認用画面G1のうちのXY図は、検査結果データベース108に保存された各構成の3次元座標の中のX,Y座標や部品のモデル画像を用いて作成されたものである。たとえば、ランドおよびはんだについては、保存されている3次元座標中のX座標およびY座標を描画用のXY平面にプロットして、各点に対応する色彩を設定する。一方、部品については、輪郭を表すエッジ構成点の3次元座標を取得していることを前提に、その3次元座標中のX座標およびY座標を描画用のXY平面にプロットして輪郭線を特定し、輪郭線およびその内側の画素に部品本体や部品電極の色彩を設定する。
【0077】
YZ図およびXZ図を作成するには、各構成の3次元座標から切断面の位置(YZ図ではX座標、XZ図ではY座標)を定め、これを基準に、画像に現れる構成を特定する必要がある。具体例として、図6のYZ図を生成する場合の処理の例を、図7のフローチャートを用いて説明する。
【0078】
まず、ステップS1では、部品電極の3次元座標をX方向(部品の外側に向かう方向)に沿ってサーチして、部品電極の端縁のX座標Xを取得する。つぎにステップS2では、XよりΔx外側に位置するYZ平面に分布するはんだの座標を取得する。なお、Δxの値は、数画素以内、すなわち部品電極に密着する場所または部品電極のごく近傍の場所までの距離を表す値に設定される。
【0079】
ステップS3では、ステップS2で取得した座標を用いて、YZ平面におけるはんだの断面形状を表す線Pを特定する。
ステップS4では、再び部品電極の3次元情報を参照して、各3次元座標を上記のYZ平面に投影する。そして各投影点のうち曲線Pより上に位置する点を用いて、部品の外形を表す線Qを特定する。
【0080】
ステップS5では、ランドの3次元座標をYZ平面に投影し、各投影点にランドの色彩を設定する。また、ランドの色彩が設定された範囲の両側に基板本体の色彩を設定する。これによりランドおよび基板本体の画像が生成される。
【0081】
ステップS6では、ステップS5の処理により設定されたランドおよび基板本体の画像の上端縁から線Pまでの範囲にはんだの色彩を設定する。さらにステップS7では、線Pから線Qまでの範囲に部品電極の色彩を設定する。これらステップS6,S7の処理により、はんだの画像および部品電極の画像が生成され、YZ図が完成する。
【0082】
XZ平面を作成する場合にも、上記に準じた手順により、部品(この場合には部品電極を含む。)の3次元座標をY方向に沿ってサーチして部品の側面のY座標を取得する。そしてこのY座標の外側の直近位置にあるXZ平面に分布するはんだの3次元座標を用いて、はんだの断面形状を表す線を特定する。また、部品本体および部品電極の3次元座標をXZ平面に投影し、はんだの線より上に位置する投影点を用いて部品の外形を示す線を特定する。さらに、ランドの3次元情報に基づいてランドおよび基板本体の画像を生成し、さらに、各線に基づきはんだや部品の画像を生成することにより、XZ図を完成することができる。
【0083】
上記のYZ図やXZ図によれば、部品電極のはんだへの接合面の直近の位置の垂直断面を正面とした画像が作成されるので、部品電極とこれに接合するはんだとの関係を明確に表すことが可能になる。また、はんだが部品電極にぬれ上がらずに、両者の間に間隙が生じた場合には、正面のはんだが出現していないYZ図や、はんだと部品電極とが離れた状態のXZ図により、不良の状態を明確に示すことができる。
【0084】
図8は、確認用画面の第2の例を示す。
この実施例の確認用画面G2では、図6の例と同様の構成のXY図、YZ図、XZ図を表示すると共に、表示中の各画像に対して切断位置を指定する操作を受け付ける。この指定操作が行われると、各画像には、その指定された位置または断面形状を示す線画が各画像に加えられる。
【0085】
切断位置は、設定したい断面に直交する面を正面とする画像に断面を表す直線を引く操作により指定される。設定された直線は、それぞれ異なる色彩で表され、他の画像にも当該直線と同じ色彩により断面を表す線画が表示される。なお、図示例では、各線画の色彩の違いを線種の違いに置き換えて示す。
【0086】
図8の例では、XY図またはXZ図において、部品電極の端縁からかなり離れた箇所にY方向に沿う直線L1が設定されたことに伴い、YZ図に、当該直線L1に対応する位置のYZ平面におけるはんだの断面形状を示す線M1が表示されている。また、XY図またはYZ図において、部品電極の一側縁に近い箇所にZ方向に沿う直線L2が設定されたことに伴い、XZ図に、当該直線L2に対応する位置のXZ平面における部品およびはんだの断面形状を示す線M2が表示されている。
【0087】
さらに、XZ図またはYZ図において、部品の底部より下の位置と部品の上部(はんだより高い場所)とに直線L3,L4が設定されたことに伴い、XY図に、部品より下方のはんだの形状を示す線M3と部品の上部の輪郭形状を示す線M4とが表示されている。
【0088】
上記の線M1〜M4は、設定された直線に対応する平面内に分布する3次元座標に基づき特定することができる。
【0089】
図8の例の画面G2でも、表示中の画像に図6の例と同様のゲージg〜gを対応づけることができる。また、指定される断面の方向は、X−Y、Y−Z、X−Zの方向に沿うものに限らず、これらの方向に対して斜めになる断面を指定し、この指定に応じて画像の表示を更新してもよい。
【0090】
図9は、切断位置の指定に応じて再計測を実行し、その結果を表示した例を示す。なおこの例の確認用画面G3では、図示を簡単にするために、表示の対象をXY平面およびYZ平面に限定する。また、この例では、ランドに対して部品が回転ずれしており、XY図において、その回転した部品の端面の方向に合わせて、Y方向を斜めに横切る方向に沿って切断するように直線Lが設定されている。
【0091】
この確認用画面G3のYZ図は、当初は、図7に示した処理により作成されるので、部品が斜めになった状態が示されるが、上記の直線Lの設定に伴い、YZ図の表示は、直線Lに対応する方向に沿う断面(部品電極の直近を直線Lに沿って切断したもの。)を正面とするものに変更されている。さらに、直線Lの位置ではんだを切断した場合に得られるはんだの形状を示す線Mが表示される。
【0092】
この例でも、検査のときに取得した計測データに基づき、YZ図に部品電極とはんだとの関係を示すゲージg,gを対応づけて表示する。さらに、この例では、指定された切断面のはんだの曲線Mに計測点を設定して(YZ図において×印により示す。)、これらの計測点の間の距離を求め、その計測結果を示すゲージgや計測点の関係を示すゲージgを表している。なお、ゲージgは、直線Lに沿うはんだの表面のうち部品電極の高さの20%に相当する高さ位置の点と、部品電極の高さの40%に相当する高さ位置の点とを計測点とすることを示す。ゲージgは、これらの計測点の間の幅が部品電極の幅の40%であったことを示す。これらの計測処理は自動的に実施されているが、これに限らず、ユーザによる計測点の指定を受け付けて再計測を行うことも可能である。
【0093】
つぎに、上記した3例の確認用画面G1〜G3では、特定の部品の1箇所のはんだ付け部を対象に、複数種の画像を表示したが、表示態様はこれに限らず、いずれか1つの画像のみを表示してもよい。また、各種画像を切り替えて表示してもよい。また、表示される画像が1つの場合には、その画像に切断位置を指定する直線が引かれたことに応じて、指定された位置の断面を正面とする画像に表示を切り替えるようにしてもよい。これらの表示態様や表示対象部位は、適宜、入力部37における指定操作に応じて切り替えることができる。
【0094】
また、1つの部品における全てのはんだ付け部を示す画像を、一画面に収めるようにしてもよい。たとえばチップ部品であれば、部品および両側のはんだ付け部位を含む範囲のXY図と、はんだ付け部位毎のYZ図とを表示することができる。
【0095】
また、同一種の部品についてそれぞれ同じ画像生成ルールに基づく画像を生成し、これらの画像を一覧表示した画面を設定してもよい。図10にその一例を示す。
【0096】
図10の例では、複数の同種のチップ部品の一方のはんだ付け部位を対象にYZ図を作成し、これらのYZ図の一覧表示欄201を含む確認用画面G4が表示されている。表示欄201内の各YZ図には、それぞれ図6の例に示したゲージg(部品電極に対するはんだのフィレットの高さの割合を示す指標)が対応づけられている。さらに、フィレットの高さの計測値が判定基準が示す良範囲に達していない部品の画像(一覧表示中の2段目までの画像)には、「NG」の表示が設定される。フィレットの高さの計測値が良範囲に含まれている部品の画像は、所定の色彩による太枠201aで囲まれた範囲に表示されている。
【0097】
さらに、この画面の右手には、表示対象のチップ部品のフィレットの高さ検査に設定されている判定基準を表す画像202と、一覧表示欄201の各対象部品につき計測されたフィレットの高さの分布を示すグラフ203が表示されている。画像202は、チップ部品の3次元モデルデータを用いて生成されたもので、部品電極の端縁におけるはんだの高さが良・不良の境界ぎりぎりの位置(部品の高さの25%)にある状態を示している。また、この画像202にも判定基準を示すゲージgが添付されている。
フィレットの分布を示すグラフ203では、判定基準が示す良品の範囲に含まれる計測データに網掛け表示が施されている。
【0098】
上記図10の表示例によれば、ユーザは、表示欄201の各YZ図を見比べると共に、各YZ図のゲージgの表示や右手の画像202およびグラフ203の表示に基づき、現在の判定基準が適切であるか否かを判定することができる。ここで、判定基準を変更する必要があると判断した場合には、ユーザは、画像202中のゲージgやグラフ203に示されている良判定の範囲の境界線を移動させることにより判定基準を修正することができる。この修正操作が行われると、モデルデータの表示や表示欄201における良品、不良品の切り分け表示も変動するので、ユーザは、修正の適否を容易に認識することができる。
【0099】
なお、図10の例による表示画面は、判定基準の確認や修正作業の目的に限らず、初めて判定基準を設定する場合の設定画面として採用することもできる。たとえば、はんだ付けがされたサンプル部品を相当数準備して、これらの部品、はんだ、ランドの3次元情報の取得および計測を実施し、取得した情報を用いて図10と同様の一覧表示画面や計測データの分布を表すグラフなどを表示し、ユーザに、計測データの良範囲を指定させることができる。
【0100】
上記図6,8,9,10の各例に示した確認用画面G1〜G4の表示用情報の生成および表示は、検査装置100内での実施に限定されるものではない。たとえば、検査装置100から外部の装置に、3次元計測結果を含む検査結果情報を送信し、この外部装置において、確認用画面の作成や表示を行うことも可能である。または、確認用画面の表示用情報の作成は検査装置100で実施し、作成された表示用情報を外部装置に送信してもよい。もしくは、検査結果情報を外部装置に蓄積し、この外部装置または外部装置に接続された端末装置において蓄積された情報を用いて表示用情報を作成し、この表示用情報による確認用画面を端末装置に表示するようにしてもよい。
【0101】
このほか、検査結果情報をリムーバブル記憶媒体に蓄積し、表示用情報の作成機能が組み込まれたパーソナルコンピュータにこの記憶媒体を接続して、確認用画面を表示させることも可能である。
【0102】
また、上記の各実施例では、3次元計測の対象を部品およびはんだに限定したが、その他の画像に現れる構成物(スルーホール、シルクパターンなど)に対しても、部品に対するのと同様の方法で3次元計測を実施し、その計測結果を含む確認用画面を表示してもよい。
【符号の説明】
【0103】
100 基板検査装置
101 画像入力部
102 ランド特定部
103 はんだ計測部
104 部品計測部
105 3次元情報生成部
106 検査実行部
107 確認画面表示部
108 検査結果データベース
1A,1B カメラ
1 ステレオカメラ
2 照明装置
3 制御処理部
4 基板ステージ
33 制御部
38 表示部
G1〜G4 確認用画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にはんだ付けされた部品を所定の照明下で撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により生成された画像からはんだ付け部位を特定するはんだ付け部位特定手段と、
特定されたはんだ付け部位毎に、画像中の部品と当該部品に対応するはんだとを見分けて、それぞれに対する3次元計測を実行する3次元計測手段と、
前記3次元計測手段の計測により導出された部品およびはんだの3次元情報を用いて部品の実装状態およびはんだ付け状態を判別するための検査を実行する検査実行手段と、
前記部品およびはんだの3次元情報をはんだ付け部位毎および種別毎に読出可能な状態で蓄積する結果蓄積手段と、
前記結果蓄積手段に蓄積された情報を用いて、はんだ付け部位毎に部品とはんだとの関係を表す画像を生成し、この画像を含む画面を表示するための表示用情報を出力する表示制御手段とを具備する、基板検査装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記はんだの3次元情報が表す立体形状を部品のはんだへの接合面の近傍位置で切断した場合に得られるはんだの断面を正面として、このはんだの断面と部品との関係を示す画像を生成する、請求項1に記載された基板検査装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、部品およびはんだの3次元情報に基づきはんだ付け部位を上方から俯瞰した状態を示す画像を生成すると共に、当該部品のはんだへの接合面のうちの少なくとも1面を対象に、はんだの3次元情報が表す立体形状を当該接合面の近傍位置で切断した場合に得られるはんだの断面を正面として、このはんだの断面と部品との関係を示す画像を生成し、各画像を含む画面の表示用情報を出力する、請求項1に記載された基板検査装置。
【請求項4】
前記はんだ付け部位特定手段は、撮像手段により生成された画像において基板のランドに対応する範囲を特定し、
前記表示制御手段は、前記はんだ付け部位特定手段により特定されたランドの範囲と3次元計測手段により見分けられた部品およびランドとの関係に基づき、部品およびはんだの関係と共に、両者に対するランドの関係を示す画像を生成する、請求項1〜3のいずれかに記載された基板検査装置。
【請求項5】
前記結果蓄積手段は、さらに、前記検査において実施された計測処理の結果をはんだ付け部位毎に読出可能な状態で蓄積し、
前記表示制御手段は、生成された画像の中の検査のために計測された部位に、計測結果および検査に用いられた判定基準を示す指標を対応づけた画面を設定する、請求項1〜4のいずれかに記載された基板検査装置。
【請求項6】
前記表示制御手段は、表示用情報に基づき表示された画像に対し切断位置を示す直線を設定する操作を受け付けると共に、この操作により設定された直線に沿う断面の形状を表す画像が表示されるように、表示用情報を更新する、請求項1〜3のいずれかに記載された基板検査装置。
【請求項7】
前記表示制御手段は、同一規格の複数の部品につき結果蓄積手段に蓄積された3次元情報を用いて、これらの部品とはんだとの関係を示す画像を共通の画像生成ルールに基づいて部品毎に生成し、各画像の一覧を含む画面の表示用情報を生成して出力する、請求項1に記載された基板検査装置。
【請求項8】
前記表示制御手段は、一覧表示の対象の部品毎に、その部品に対応するはんだの3次元情報が表す立体形状を部品のはんだへの接合面の近傍位置で切断した場合に得られるはんだの断面形状を正面として、このはんだと部品との関係を示す画像を生成する、請求項7に記載された基板検査装置。
【請求項9】
前記結果蓄積手段は、さらに、前記検査において実施された計測処理の結果をはんだ付け部位毎に読出可能な状態で蓄積し、
前記表示制御手段は、一覧表示される各画像に対し、それぞれ画像中の検査のために計測された部位に計測結果および検査に用いられた判定基準を示す指標を対応づけて表示する、請求項7または8に記載された基板検査装置。
【請求項10】
部品実装基板を検査する基板検査装置と、基板検査装置が検査のために実施した計測処理の結果を当該基板検査装置から取り込んで蓄積する情報蓄積処理装置と、情報蓄積処理装置に蓄積された情報を読み出し、読み出された情報を用いて検査結果の確認用画面を表示する確認用端末装置とを含むシステムであって、
前記基板検査装置は、
基板上にはんだ付けされた部品を所定の照明下で撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により生成された画像からはんだ付け部位を特定するはんだ付け部位特定手段と、
特定されたはんだ付け部位毎に、画像中の部品と当該部品に対応するはんだとを見分けて、それぞれに対する3次元計測を実行する3次元計測手段と、
前記3次元計測手段の計測により導出された部品およびはんだの3次元情報を用いて部品の実装状態およびはんだ付け状態を判別するための検査を実行する検査実行手段と、
前記部品およびはんだの3次元情報をはんだ付け部位毎および種別毎に特定可能な形態に構成された情報を前記情報蓄積処理装置に出力する出力手段とを、具備し、
前記情報蓄積処理装置または確認用端末装置には、前記情報蓄積装置に蓄積された情報を用いて、はんだ付け部位毎に部品とはんだとの関係を表す画像を生成する表示用画像生成手段が設けられると共に、確認用端末装置において、前記表示用画像生成手段により生成された画像を含む確認用画面を表示する、
基板検査システム。
【請求項11】
基板にはんだ付けされた部品を所定の照明下で撮像し、生成された画像中のはんだ付け部位毎に、部品と当該部品に対応するはんだとを見分けてそれぞれに対する3次元計測を実行し、計測により導出された部品およびはんだの3次元情報を用いて部品の実装状態およびはんだ付け状態を判別するための検査が実行されたことに応じて、この検査結果を確認するための画面を表示する方法であって、
前記3次元計測により導出された部品およびはんだの3次元情報を、はんだ付け部位毎および種別毎に読み出し可能な状態で蓄積し、蓄積された情報を用いて、はんだ付け部位毎に前記はんだの3次元情報が表す立体形状を部品のはんだへの接合面の近傍位置で切断した場合に得られるはんだの断面を正面として、このはんだの断面と部品との関係を示す画像を生成し、この画像を含む画面を表示する、基板検査結果の確認用画面の表示方法。
【請求項12】
前記画面中の画像の検査のために計測された部位に、計測結果および検査に用いられた判定基準を示す指標を対応づけて表示する、請求項11に記載された基板検査結果の確認用画面の表示方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−149905(P2012−149905A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6860(P2011−6860)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】