説明

成膜方法及び処理システム

【課題】比誘電率の低い絶縁層の表面にMn等の金属を含む薄膜、例えばMnOxを効率的に形成することが可能な成膜方法を提供する。
【解決手段】絶縁層1が表面に形成された被処理体Wに対して成膜処理を施す成膜方法において、第1の金属よりなる第1の薄膜60を形成する第1の薄膜形成工程と、前記第1の薄膜を酸化して酸化膜60Aを形成する酸化工程と、前記酸化膜上に第2の金属を含む第2の薄膜62を形成する第2の薄膜形成工程とを有する。これにより、比誘電率の低い絶縁層の表面にMn等の金属を含む薄膜、例えばMnOxを効率的に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被処理体の表面に形成された比誘電率の低い層間絶縁膜の凹部を銅等で埋め込んで配線する時の成膜方法及び処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイスを製造するには、半導体ウエハに成膜処理やパターンエッチング処理等の各種の処理を繰り返し行って所望のデバイスを製造するが、半導体デバイスの更なる高集積化及び高微細化の要請より、線幅やホール径が益々微細化されている。そして、配線材料や、トレンチ、ホールなどの凹部内への埋め込み材料としては、各種寸法の微細化により、より電気抵抗を小さくする必要から電気抵抗が非常に小さくて且つ安価である銅を用いる傾向にある(特許文献1)。そして、この配線材料や埋め込み材料として銅を用いる場合には、その下層への銅の拡散バリア性等を考慮して、一般的にはタンタル金属(Ta)やタンタル窒化膜(TaN)等がバリア層として用いられる。
【0003】
そして、上記凹部内を銅で埋め込むには、まずプラズマスパッタ装置内にて、この凹部内の壁面全体を含むウエハ表面全面に銅膜よりなる薄いシード膜を形成し、次にウエハ表面全体に銅メッキ処理を施すことにより、凹部内を完全に埋め込むようになっている。その後、ウエハ表面の余分な銅薄膜をCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理等により研磨処理して取り除くようになっている。
【0004】
この点については図7を参照して説明する。図7は半導体ウエハの凹部の従来の埋め込み工程を示す図である。この半導体ウエハWに形成された、例えばSiO 膜よりなる層間絶縁膜などの絶縁層1の表面には、Single Damascene構造、Dual Damascene構造、三次元実装構造等により、ビアホールやスルーホールや溝(トレンチ)等に対応する凹部2が形成されており、この凹部2の底部には、例えば銅等の金属膜よりなる下層の配線層3が露出状態で形成されている。
【0005】
具体的には、この凹部2は、細長く形成された断面凹状の溝(トレンチ)2Aと、この溝2Aの底部の一部に形成されたホール2Bとよりなり、このホール2Bがビアホールやスルーホールとなる。そして、このホール2Bの底部に上記配線層3が露出しており、下層の配線層やトランジスタ等の素子と電気的な接続を行うようになっている。なお、下層の配線層やトランジスタ等の素子については図示を省略している。上記凹部2は設計ルールの微細化に伴ってその幅、或いは内径は例えば120nm程度と非常に小さくなっており、アスペクト比は例えば2〜4程度になっている。なお、拡散防止膜およびエッチングストップ膜等については、図示を省略し形状を単純化して記載している。
【0006】
この半導体ウエハWの表面には上記凹部2内の内面も含めて略均一に例えばTaN膜及びTa膜の積層構造よりなるバリア層4がプラズマスパッタ装置にて予め形成されている(図7(A)参照)。そして、プラズマスパッタ装置にて上記凹部2内の表面を含むウエハ表面全体に亘って金属膜として薄い銅膜よりなるシード膜6を形成する(図7(B)参照)。上記ウエハ表面に銅メッキ処理を施すことにより上記凹部2内を例えば銅膜よりなる金属膜8で埋め込むようになっている(図7(C)参照)。その後は、上記ウエハ表面の余分な金属膜8、シード膜6及びバリア層4を上記したCMP処理等を用いて研磨処理して取り除くことになる。
【0007】
そして、上記バリア層の更なる信頼性の向上を目標として種々の開発がなされており、中でも上記Ta膜やTaN膜に代えてMn膜やCuMn合金膜を用いた自己形成バリア層が注目されている(特許文献2)。このMn膜やCuMn合金膜は、スパッタリングにより成膜されて、更にこのMn膜やCuMn合金膜自体がシード膜となるので、この上方にCuメッキ層を直接形成できメッキ後にアニールを施すことで自己整合的に下層の絶縁膜であるSiO 層と反応して、このSiO 層とMn膜やCuMn合金膜との境界部分にMnSixOy(x、y:任意の正数)膜、或いはMnとSiO 層の酸素とが反応することにより生ずるマンガン酸化物MnOx(x:任意の正数)膜というバリア膜が形成されるため、製造工程数も削減できる、という利点を有する。なおマンガン酸化物は、Mnの価数によってMnO、Mn、Mn、MnO等の種類が存在する が、本明細書中では、これらを総称してMnOxと記述する。また、この点は後述するTaOxについても同様である。
【0008】
またスパッタ法に比べて微細な線幅やホール径に対して良好な段差被覆性で膜を堆積することができるCVD法によりMnSixOy膜、あるいはMnOx膜の成膜をおこなうことが検討されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−107747号公報
【特許文献2】特開2005−277390号公報
【特許文献3】特開2008−013848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、最近にあっては、半導体装置の更なる高速動作の要請から層間絶縁膜の比誘電率をより低くすることが求められており、このような要請から、層間絶縁膜の材料としてTEOSにより形成したシリコン酸化膜から、より比誘電率の低い材料として例えばメチル基等の有機基を含んだSiOC、SiCOHなどからなるLow−k膜を用いることが検討されている。ここで上記TEOSを用いて形成したシリコン酸化膜の比誘電率は4.1程度であり、SiOCの比誘電率は3.0程度である。
【0011】
しかしながら、層間絶縁膜として上記Low−k膜(SiOC)等の比誘電率の低い材料を用いた場合には、この凹部内の露出面を含めて比誘電率の低い層間絶縁膜の表面にCVD法によりMn含有膜の成膜処理を施してもMnOx膜がほとんど堆積しないので、バリア層を形成することができない、といった問題があった。
【0012】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、比誘電率の低い絶縁層の表面にMn等の金属を含む薄膜、例えばMnOx膜を効率的に形成することが可能な成膜方法及び処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る発明は、絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す成膜方法において、第1の金属よりなる第1の薄膜を形成する第1の薄膜形成工程と、前記第1の薄膜を酸化して酸化膜を形成する酸化工程と、前記酸化膜上に第2の金属を含む第2の薄膜を形成する第2の薄膜形成工程と、を有することを特徴とする成膜方法である。
【0014】
これにより、例えば比誘電率の低い、いわゆるLow−k膜よりなる絶縁層の表面に第2の金属である例えばマンガン(Mn)を含む第2の薄膜、例えば酸化マンガン(MnOx)膜を容易に形成することが可能となる。
【0015】
請求項2に係る発明は、絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す成膜方法において、第1の金属を含む酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、前記酸化膜上に第2の金属を含む第2の薄膜を形成する第2の薄膜形成工程と、を有することを特徴とする成膜方法である。
【0016】
これにより、例えば比誘電率の低い、いわゆるLow−k膜よりなる絶縁層の表面に第2の金属である例えばマンガン(Mn)を含む第2の薄膜、例えば酸化マンガン(MnOx)膜を容易に形成することが可能となる。
【0017】
請求項4に係る発明は、絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す成膜方法において、第1の金属よりなる第1の薄膜を形成する第1の薄膜形成工程と、前記第1の薄膜を酸化して酸化膜を形成する酸化工程と、前記酸化膜上にCuを含む第3の膜を形成する第3の膜形成工程と、前記第3の膜上に第2の金属を含む原料ガスを供給して前記酸化膜と前記第3の膜との界面に第2の薄膜を形成する第2の薄膜形成工程と、を有することを特徴とする成膜方法である。
これにより、第1の薄膜と第3の膜との境界部分に第2の薄膜、例えば酸化マンガン(MnOx)膜を自己形成により容易に形成することが可能となる。
【0018】
請求項5に係る発明は、絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す成膜方法において、第1の金属を含む酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、前記酸化膜上にCuを含む第3の膜を形成する第3の膜形成工程と、前記第3の膜上に第2の金属を含む原料ガスを供給して前記酸化膜と前記第3の膜との界面に第2の薄膜を形成する第2の薄膜形成工程と、を有することを特徴とする成膜方法である。
これにより、第1の薄膜と第3の膜との境界部分に第2の薄膜、例えば酸化マンガン(MnOx)膜を自己形成により容易に形成することが可能となる。
【0019】
請求項6に係る発明は、絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す成膜方法において、第1の金属よりなる第1の薄膜を形成する第1の薄膜形成工程と、前記第1の薄膜上にCuを含む第3の膜を形成する第3の膜形成工程と、前記第3の膜上に第2の金属を含む原料ガスを供給して前記酸化膜と前記第3の膜との界面に第2の薄膜を形成する第2の薄膜形成工程と、を有することを特徴とする成膜方法である。
これにより、第1の薄膜と第3の膜との境界部分に第2の薄膜、例えば酸化マンガン(MnOx)膜を自己形成により容易に形成することが可能となる。
【0020】
請求項18に係る発明は、絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す処理システムにおいて、前記被処理体の表面に第1の金属よりなる第1の薄膜を形成する処理装置と、前記第1の薄膜を酸化して酸化膜を形成する処理装置と、前記酸化膜上に第2の金属を含む第2の薄膜を形成する処理装置と、前記各処理装置が連結された共通搬送室と、前記共通搬送室内に設けられて、前記各処理装置内へ前記被処理体を搬送するための搬送機構と、請求項1記載の成膜方法を実施するように処理システム全体を制御するシステム制御部と、を備えたことを特徴とする処理システムである。
【0021】
請求項19に係る発明は、絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す処理システムにおいて、前記被処理体の表面に第1の金属を含む酸化膜を形成する処理装置と、前記酸化膜上に第2の金属を含む第2の薄膜を形成する処理装置と、前記各処理装置が連結された共通搬送室と、前記共通搬送室内に設けられて、前記各処理装置内へ前記被処理体を搬送するための搬送機構と、請求項2記載の成膜方法を実施するように処理システム全体を制御するシステム制御部と、を備えたことを特徴とする処理システムである。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る成膜方法及び処理システムによれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
請求項1、2及びこれらを引用する請求項に係る発明によれば、例えば比誘電率の低い、いわゆるLow−k膜よりなる絶縁層の表面に第2の金属である例えばマンガン(Mn)を含む第2の薄膜、例えば酸化マンガン(MnOx)膜を容易に形成することができる。
請求項4、5、6及びこれらを引用する請求項に係る発明によれば、第1の薄膜と第3の膜との境界部分に第2の薄膜、例えば酸化マンガン(MnOx)膜を自己形成により容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の処理システムを示す概略構成図である。
【図2】処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明方法の各工程を示すフローチャートである。
【図4】本発明方法の第1実施例の各工程における薄膜の堆積状況の一例を示す図である。
【図5】第3の処理装置の変形例を示す概略構成図である。
【図6】本発明方法を実施した時の評価結果を示すグラフである。
【図7】半導体ウエハの凹部の従来の埋め込み工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る成膜方法及び処理システムの一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
<処理システム>
まず、本発明の成膜方法を実施するための処理システムについて説明する。図1は本発明の処理システムを示す概略構成図、図2は処理装置の一例を示す概略構成図である。ここでは、第1の金属としてTaを用い、第2の金属としてMnを用いる場合を例にとって説明する。
【0025】
図1に示すように、この処理システム10は、複数、例えば4つの処理装置12A、12B、12C、12Dと、略六角形状の共通搬送室14とを主に有している。そして、この共通搬送室14には、更にロードロック機能を有する第1及び第2ロードロック室16A、16Bが連結され、これらには細長い導入側搬送室18が更に連結されている。
【0026】
ここでは、上記4つの処理装置12A〜12Dの内、1つ目の処理装置、例えば処理装置12Aは被処理体である半導体ウエハに対して第1の金属であるTaよりなる第1の薄膜を形成する第1の処理装置12Aとして構成され、2つ目の処理装置、例えば処理装置12Bは半導体ウエハWに形成された上記第1の薄膜を酸化して酸化膜を形成する第2の処理装置12Bとして構成され、3つ目の処理装置、例えば処理装置12Cは半導体ウエハWに対して例えばMn等の第2の金属を含む第2の薄膜を形成する第3の処理装置12Cとして構成され、4つ目の処理装置、例えば処理装置12Dは半導体ウエハWに対して埋め込み金属の材料である金属として例えば銅膜を堆積させる第4の処理装置12Dとして構成されている。
【0027】
ここで、上記第4の処理装置12Dは、ここに設けなくてもよく、この処理システム10以外に設けた別の処理装置において上記第4の処理装置における処理を行うようにしてもよい。また上記第4の処理装置12DとしてはCVD法、ALD法、PVD(スパッタ)法、超臨界CO法、無電解メッキ法、電解メッキ 法、CVD−Cuシード+電解メッキ法及びスパッタCuシード+電解メッキ 法等の成膜処理装置が用いられる。
【0028】
具体的には、略六角形状の上記共通搬送室14の4辺に上記各処理装置12A〜12Dが接合され、他側の2つの辺に、上記第1及び第2ロードロック室16A、16Bがそれぞれ接合される。そして、この第1及び第2ロードロック室16A、16Bに、上記導入側搬送室18が共通に接続される。
【0029】
上記共通搬送室14と上記4つの各処理装置12A〜12Dとの間及び上記共通搬送室14と上記第1及び第2ロードロック室16A、16Bとの間は、それぞれ気密に開閉可能になされたゲートバルブGが介在して接合されて、クラスタツール化されており、必要に応じて共通搬送室14内と連通可能になされている。ここで、この共通搬送室14内は真空引きされている。また、上記第1及び第2各ロードロック室16A、16Bと上記導入側搬送室18との間にも、それぞれ気密に開閉可能になされたゲートバルブGが介在されている。この第1及び第2のロードロック室16A、16Bは真空引き、及び大気圧復帰がウエハの搬出入に伴って繰り返される。
【0030】
そして、この共通搬送室14内においては、上記2つの各ロードロック室16A、16B及び4つの各処理装置12A〜12Dにアクセスできる位置に、屈伸及び旋回可能になされた多関節アームよりなる搬送機構20が設けられており、これは、例えば互いに反対方向へ独立して屈伸できる2つのピック20A、20Bを有しており、一度に2枚のウエハを取り扱うことができるようになっている。
【0031】
上記導入側搬送室18は、横長の箱体により形成されており、この横長の一側には、被処理体である半導体ウエハを導入するための1つ乃至複数の、図示例では3つの搬入口が設けられ、各搬入口には、開閉可能になされた開閉ドア22が設けられる。そして、この各搬入口に対応させて、導入ポート24がそれぞれ設けられ、ここにそれぞれ1つずつカセット容器26を載置できるようになっている。各カセット容器26には、複数枚、例えば25枚のウエハWを等ピッチで多段に載置して収容できるようになっている。このカセット容器26内は、例えば密閉状態になされており、内部にはN ガス等の不活性ガスの雰囲気に満たされている。
【0032】
この導入側搬送室18内には、ウエハWをその長手方向に沿って搬送するための導入側搬送機構28が設けられる。この導入側搬送機構28は、屈伸及び旋回可能になされた2つのピック28A、28Bを有しており、一度に2枚のウエハWを取り扱い得るようになっている。この導入側搬送機構28は、導入側搬送室18内に、その長さ方向に沿って延びるように設けた案内レール30上にスライド移動可能に支持されている。
【0033】
また、導入側搬送室18の一方の端部には、ウエハの位置合わせを行なうオリエンタ32が設けられる。上記オリエンタ32は、駆動モータによって回転される回転台32Aを有しており、この上にウエハWを載置した状態で回転するようになっている。この回転台32Aの外周には、ウエハWの周縁部を検出するための光学センサ32Bが設けられ、これによりウエハWの位置決め切り欠き、例えばノッチやオリエンテーションフラットの位置方向やウエハWの中心の位置ずれ量を検出できるようになっている。
【0034】
ここで上記各処理装置の内の重要な処理であるMnを含む第2の薄膜を形成する第3の処理装置12Cの概略について説明する。図2に示すように、この第3の処理装置12Cは、真空排気が可能になされた処理容器40を有している。この処理容器40は上部空間の直径は大きく、下部空間の直径は小さく設定されている。この処理容器40内には、底部より起立させて載置台42が設けられており、この上面に半導体ウエハWを載置できるようになっている。この載置台42内には、例えば抵抗加熱ヒータよりなる加熱手段44が設けられており、ウエハWを加熱するようになっている。また、処理容器40の底部側には排気系46が接続されており、圧力制御しつつ処理容器40内の雰囲気を真空引きできるようになっている。また処理容器40の側壁はゲートバルブGを介して先の共通搬送室14に連結されている。
【0035】
また処理容器40には、必要なガスを導入するためのガス導入手段48が設けられる。ここでは、このガス導入手段48は、上記載置台42に対向させて容器天井部に設けたシャワーヘッド50よりなり、このシャワーヘッド50より下方の処理空間Sに向けてガスを噴射できるようになっている。このシャワーヘッド50には、ここでの成膜処理に必要な原料ガスを流す原料ガス供給系52が接続されており、原料ガスを流量制御しつつ供給できるようになっている。
【0036】
ここでは原料としては、Mnを含む有機金属材料を用いており、具体的には(EtCp) Mnが用いられている。この原料は、供給に十分な蒸気圧を得るための温度まで加熱されており、また加熱温度が融点を超えていれば液状となっており、バブリングガスである例えばArによりバブリングされて気化され、このバブリングガスと共に供給される。このバブリングガスとしてはArに限定されず、He等の他の希ガス、或いはH ガスやN ガスも用いることができる。
【0037】
尚、上記Mnの有機金属材料としては、
MnCp[=Mn(C]、
Mn(MeCp)[=Mn(CH]、
Mn(MeCp)[=Mn((CH]、
Mn(EtCp)[=Mn(C]、
Mn(i−PrCp)[=Mn(C]、
Mn(t−BuCp)[=Mn(C]、
MeCpMn(CO)[=(CH)Mn(CO)]、
CpMn(CO)[=(C)Mn(CO)]、
MeMn(CO)[=(CH)Mn(CO)]、
Mn(CO)10
Mn(DPM)[=Mn(C1119]、
Mn(DPM)[=Mn(C1119]、
Mn(DMPD)(EtCp)[=Mn(C11)]、
Mn(acac)[=Mn(C]、
Mn(acac)[=Mn(C]、
Mn(hfac)[=Mn(CHF]、
Mn(iPr−AMD)[=Mn(CNC(CH)NC] 、
Mn(tBu−AMD)[=Mn(CNC(CH)NC] 、
Mn(AMD)[=Mn(CNC(C)NC
よりなる群から選択される1以上の材料を用いることができる。このようにして、原料ガスを供給することにより、ウエハW上に第2の金属であるMnを含む第2の薄膜、具体的にはMnOxを形成するようになっている。
【0038】
以上のような処理システム10はシステム全体の動作を制御するために、例えばコンピュータ等よりなるシステム制御部34を有している。そして、この処理システム全体の動作制御に必要なプログラムはフレキシブルディスクやCD(Compact Disc)やハードディスクやフラッシュメモリ等の記憶媒体36に記憶されている。具体的には、このシステム制御部34からの指令により、各ガスの供給の開始、停止や流量制御、プロセス温度(ウエハ温度)、プロセス圧力(各処理装置の処理容器内の圧力)の制御、ウエハの搬送作業等が行われる。
【0039】
このように、構成された処理システム10における概略的な動作である本発明方法について図3及び図4も参照して説明する。図3は本発明方法の各工程を示すフローチャートであり、図3(A)は本発明方法の第1実施例を示している。図4は本発明方法の第1実施例の各工程における薄膜の堆積状況の一例を示す図である。まず、導入ポート24に設置されたカセット容器26からは、未処理の半導体ウエハWが導入側搬送機構28により導入側搬送室18内に取り込まれ、この取り込まれたウエハWは導入側搬送室18の一端に設けたオリエンタ32へ搬送されて、ここで位置決めがなされる。
【0040】
処理システム10内へウエハWが搬入される時には、図4(A)に示すように、ウエハWに形成された、例えば層間絶縁膜などの絶縁層1の表面には、トレンチやホールのような凹部2が形成されており、この凹部2の底部に金属層として銅等よりなる下層の配線層3が露出している。この凹部2は、細長く形成された断面凹状の溝(トレンチ)2Aと、この溝2Aの底部の一部に形成されたホール2Bとよりなり、このホール2Bがコンタクトホールやスルーホールとなる。そして、このホール2Bの底部に金属層として上記配線層3が露出しており、下層の配線層やトランジスタ等の素子と電気的な接続を行うようになっている。なお下層の配線層やトランジスタ等の素子については図示を省略している。下地膜となる上記絶縁層1は、比誘電率が4.1よりも低い低誘電率の材料であるLow−k膜、例えばSiOCよりなる。
【0041】
上述のように位置決めがなされたウエハWは、上記導入側搬送機構28により再度搬送され、第1或いは第2のロードロック室16A、16Bの内のいずれか一方のロードロック室内へ搬入される。このロードロック室内が真空引きされた後に、予め真空引きされた共通搬送室14内の搬送機構20を用いて、上記ロードロック室内のウエハWが共通搬送室14内に取り込まれる。
【0042】
そして、本発明方法の第1実施例(図3(A)参照)においては、上記共通搬送室14内へ取り込まれた未処理のウエハは、まず第1の処理装置12A内に搬入され、ここでウエハWに対して例えばスパッタによりTaの金属膜よりなる第1の薄膜の形成を行う第1の薄膜形成工程(S1)が行われる。
【0043】
この第1の薄膜の形成が完了したウエハWは、次に第2の処理装置12B内へ搬入され、ここでウエハWの表面に形成されている第1の薄膜を酸化して酸化膜、すなわちTaOxを形成する酸化工程(S2)を行う。
【0044】
この酸化膜の形成が完了したウエハWは、次に第3の処理装置12C内へ搬入され、ここでウエハWの表面に凹部の埋め込み金属に対してバリア性を有する第2の金属を含む第2の薄膜を形成する第2の薄膜形成工程(S3)が行われる。この第2の薄膜としては、例えばMnOx膜が形成される。このように、上記第1の薄膜と第2の薄膜との層構造でCu膜に対するバリア層が形成されることになる。
【0045】
この第2の薄膜形成工程が完了したウエハWは、次に第4の処理装置12D内へ搬入され、ここでウエハWの表面に埋め込み金属として、例えば銅膜を堆積して上記凹部2内を埋め込む埋め込み工程(S4)が第3の膜形成工程として行われる。そして、上記埋め込み工程が完了したならば、この処理システム10での処理は完了することになる。この処理済みのウエハWは、いずれか一方のロードロック室16A又は16B、導入側搬送室18を経由して導入ポート24の処理済みウエハ用のカセット容器26内へ収容されることになる。尚、共通搬送室14内は、ArやHe等の希ガスやドライN 等の不活性ガスの雰囲気で減圧状態になされている。
【0046】
ここで上記各工程について詳しく説明する。まず、第1の処理装置12Aは、スパッタ装置として形成されており、金属ターゲットとしてTa金属が用いられている。第1の薄膜形成工程S1では、図4(A)に示すようなウエハWの表面にスパッタリングにより図4(B)に示すように第1の薄膜60を非常に薄く形成する。これにより、凹部2の内面全体を含む表面全体に第1の薄膜60が形成される。この第1の薄膜60は上述のようにTaの金属膜よりなり、この膜厚が厚すぎると後工程で凹部2に埋め込まれる銅の量が少なくなって配線抵抗やコンタクト抵抗の増加を引き起こすので、これを防止するために第1の薄膜60の膜厚は2nm以下に設定するのがよい。
【0047】
尚、ここでは第1の薄膜60を形成するためにスパッタ法を用いたが、これに限定されず、CVD法や原料ガスと還元ガスとを交互に繰り返し流して成膜するALD(Atomic Layer Deposition)法等を用いることもできる。
【0048】
次に、第2の処理装置12Bは、例えばアニール装置として形成されており、酸化処理が行われる。この酸化工程S2では、上記第1の薄膜60であるTa金属膜を酸化させることにより、図4(C)に示すように酸化膜60A、すなわちTaOx膜を形成する。この場合、ウエハWを所定の温度、例えば100〜400℃程度に加熱した状態で酸化ガスとして酸素やオゾンや水蒸気等を供給してこのガス雰囲気中でアニール処理するのが好ましく、ここでは酸素(O )を供給している。
【0049】
また、酸化ガス供給しないでArガス等の希ガスやN ガス等の不活性ガスを供給しつつウエハWを単に加熱して酸化してもよいし、或いはガスを何ら供給しないでウエハWを単に加熱してアニール処理をすることにより酸化してもよい。この場合、下地である絶縁層1中に含まれる水分や酸素成分がTa金属膜と反応して酸化膜60AであるTaOxが形成される。この場合には、図4(C)に示す状態でこの凹部2の底部に露出している下層の銅等よりなる配線層3に接しているTa金属膜は酸化されずにTaのままとなる一方、絶縁層1に接しているTa金属膜は酸化されてTaOxとなることから、その後の第2の薄膜形成工程でMnOx膜が形成されるのは、配線層3に接しているTa金属膜以外の部分となる。つまり、絶縁膜1の上面や溝(トレンチ)2Aやホール2Bの側壁部分にはMnOx/Taからなる積層構造が形成される一方、ホール2Bの底部においてはTaのみが形成されるので、このホールを通じた配線抵抗(ヴィア抵抗)を低くすることが期待できる。
【0050】
また、他の酸化方法として、図4(B)に示す状態で、すなわち第1の薄膜60であるTa金属膜が形成された状態で、ウエハWを処理システムの外まで搬送してこのウエハWを大気暴露し、大気中の酸素成分や水蒸気成分でこのTa金属膜を酸化するようにしてもよい。さらに、上述の酸化工程S2を経ることによって形成された前記第1の金属を含む酸化膜60Aの表面には、水が物理吸着している状態であってもよい。この水の出所としては、別途チャンバー内に水を供給させてもよいし、加熱することによって絶縁膜1から放出された水分であってもよいし、大気中の水蒸気成分であってもよい。
【0051】
次に、第3の処理装置12Cは、前述したように、図2に示すように形成されている。この第2の薄膜形成工程S3では、上記酸化膜60A上に図4(D)に示すように第2の金属であるMnを含む第2の薄膜62、すなわちMnOxを形成する。具体的には、処理容器40内では載置台42に載置されたウエハWが例えば100〜400℃の範囲内、例えば200℃程度に加熱されており、原料ガス供給系52にてバブリングガスで原料を気化させてMnの原料ガスを発生し、この原料ガスをシャワーヘッド50より処理容器40の処理空間Sへ供給している。プロセス圧力は10 〜10 Paの範囲内、例えば133Pa程度、Mn原料ガスは0.1〜10sccm程度、キャリアガスは10〜500sccm程度である。ここでは、処理容器40内へは、ガスとしてバブリングガスを伴った原料ガスのみが供給されている。
【0052】
これにより、酸化膜60AであるTaOx膜上にCVDによりMnの原料ガス又は金属のMnが付着すると、このMnの原料ガス又は金属Mnが直ちに下地のTaOx膜の酸素成分又は/及び表面の物理吸着水と反応して第2の薄膜62としてMnOx膜を形成することになる。この場合、上記酸化膜60Aは還元されることになるので、Ta金属膜60(第1の薄膜)に戻ることになる。本来であれば、絶縁膜1の表面は疎水性の傾向を有するためにMn原料ガスや、Mn原料ガスを分解させる働きを有する水の付着確率が著しく低下しており、Mn膜やMnOx膜の形成が阻害される傾向となっている。しかしながら、絶縁膜1上に先にTaOx膜を形成したことにより、基板表面の疎水性がTaOx膜によって覆われて親水性の傾向となることにより、この表面上にMnの原料ガスが非常に付着し易い状態となっており、この表面に付着した原料ガスが分解されて、もしくは酸化されて一時的には金属膜のMnが堆積するが、この金属Mnは直ちに酸化されて、結果的にMnOx膜が直ちに形成されることになる。
【0053】
このように、ウエハ表面にはMnOx膜を形成するに際して、下地として酸化膜60AであるTaOx膜が形成されているので、MnOx膜が非常に付着乃至堆積し易くなっており、ここでは容易にMnOx膜を形成することが可能となる。この場合、一つのケースとしては、上述のようにウエハWの表面に付着した第2の金属の原料ガス、例えばMnの原料ガスを、この下地の酸化膜表面において反応させる必要があることから、この酸化膜の表面には、水が物理吸着している状態にしておく。もう一つのケースとしては、ウエハWの表面に堆積した金属Mnを、この下地の酸化膜より酸素を奪って酸化させる必要があることから、上記第1の金属、例えばCuを含む金属酸化物(CuxO)の標準生成自由エネルギーは、上記第2の金属、例えばMnを含む金属酸化物(MnOx)の標準生成自由エネルギー以上の大きさとなるように各金属を選択する。
【0054】
このようにして、第1の薄膜60と第2の薄膜62とよりなる2層構造のバリア層が形成されることになる。さらに別のケースとしては、ウエハWの表面に堆積した第2の金属、例えば金属Mnを、この下地の酸化膜表面の物理吸着水より酸素を奪って酸化させる必要があることから、上記第2の金属、例えばMnを含む金属酸化物(MnOx)の標準生成自由エネルギーは、上記物理吸着水(H O)の標準生成自由エネルギー以下の大きさとなるように各金属を選択する。このようにして、第1の薄膜60と第2の薄膜62とよりなる2層構造のバリア層が形成されることになる。
【0055】
次に、第4の処理装置12Dでは、図4(E)に示すように埋め込み工程S4を行って凹部2内を埋め込み金属64により埋め込む。これにより、上記凹部2内を完全に埋め込むと同時にウエハ表面全体に埋め込み金属64が形成されることになる。この埋め込み金属64としては、ここではCu(Cu膜)が用いられる。
【0056】
上記埋め込み金属64の形成は、CVD法、ALD法、PVD(スパッタ)法、超臨界CO 法、無電解メッキ法、電解メッキ法のいずれを用いてもよい。尚、電解メッキ法や超臨界CO 法による埋め込み処理を行う場合には、第4の処理装置12Dにて例えばスパッタ法によりCuシード膜を堆積し、この処理システム10の外に設けた処理装置にてこの埋め込み処理を行ってもよい。
【0057】
以上のようにして、成膜処理は終了することになり、以後は、ウエハ表面上の余分な埋め込み金属64等をCMP処理により削り取ることになる。これにより、例えば比誘電率の低い、いわゆるLow−k膜よりなる絶縁層の表面に第2の金属である例えばマンガン(Mn)を含む第2の薄膜、例えば酸化マンガン(MnOx)膜を容易に形成することができる。
【0058】
尚、図1に示す処理システムでは、第2及び第3の処理装置12B、12Cをそれぞれ設けて酸化工程と第2の薄膜形成工程を別々の処理装置で行うようにしたが、上記2つの処理装置12B、12Cに替えて、図5に示すような処理装置12C−1を設けて、この1台の処理装置12C−1内で、上記酸化工程と第2の薄膜形成工程とを連続的に行うようにしてもよい。図5は上記したような第3の処理装置の変形例を示す概略構成図である。この第3の処理装置12C−1は、先に図2を参照して説明した第3の処理装置12Cに対して単に、シャワーヘッド50に酸化ガス供給系70を連結させて設けるようにして構成されている。図5においては、図2に示す構成部分と同じ構成部分については同一参照符号を付してある。
【0059】
すなわち、この処理装置12C−1で酸化工程を行う時には、酸化ガス供給系70より酸化ガスとして例えばO ガスを流し、第2の薄膜形成工程を行う時には原料ガス供給系52からMn原料ガスを流すようにすればよい。
【0060】
<本発明方法の第2実施例>
次に、本発明方法の第2実施例について説明する。先に説明した第1実施例では、図3(A)に示すように、Ta膜を形成する第1の薄膜形成工程S1と、このTa膜を酸化してTaOx膜を形成する酸化工程S2とを別々の工程で行うようにしたが、これに限定されず、図3(B)に示す第2実施例のように1つのステップ(S1−1)において酸化膜形成工程としてTaOx膜を形成するようにしてもよい。このようにTaOx膜を1つのステップで形成するには、スパッタ装置においてターゲットとしてTaOxターゲットを用いてスパッタリングを行なえばよく、これにより上述したように1つのステップでTaOx膜を形成することができる。この場合には、装置構成を大幅に簡略化することができる。
【0061】
<本発明方法の第3実施例>
次に、本発明方法の第3実施例について説明する。先に説明した第1実施例では、図3(A)に示すように、第2の薄膜形成工程S3の後、埋め込み工程S4を行うようにしていたが、これに限定されず、図3(C)に示す第3実施例のように酸化工程S2を行った後に埋め込み工程S4を行い、この後に第2の薄膜形成工程S3を実施するようにしてもよい。このように、成膜工程S3と埋め込み工程S4の順序を逆にすることにより、Cu中をMnが拡散し、Cu/Ta界面 においてMnOx膜が自己形成することができる。すなわち、第3の膜である Cu膜上に原料ガスが供給されると、この原料ガスはCu表面で分解すると共に生じたMn元素はCu中を拡散してCu/Ta界面でMnOx膜(第2の薄膜)を形成することができる。
【0062】
<本発明方法の第4実施例>
次に、本発明方法の第4実施例について説明する。先に説明した第3実施例では、図3(C)に示すように、Ta膜を形成する第1の薄膜形成工程S1と、このTa膜を酸化してTaOx膜を形成する酸化工程S2とを別々の工程で行うようにしたが、これに限定されず、図3(D)に示す第4実施例のように1つのステップ(S1−1)において酸化膜形成工程としてTaOx膜を形成するようにしてもよい。これら第3、第4の実施例の場合には、第2の薄膜形成工程S3におけるCVD由来のカーボン等の不純物がCu/Ta界面には存在しないことに なるため、密着性の改善が期待できる。このような本発明方法の第3、第4実施例においては、Cu中をMnが拡散し、Cu/Ta界面においてMnOx膜が自 己形成することによって確実なバリア層が形成されることになるが、このようなバリア層が形成されるまでの間は、上記酸化膜60Aが仮のバリア層となり、Cuが絶縁膜1側に拡散することを防ぐことになる。
【0063】
<本発明方法の第5実施例>
次に、本発明方法の第5実施例について説明する。先に説明した第3実施例では、図3(C)に示すように、Ta膜を形成する第1の薄膜形成工程S1の後に、このTa膜を酸化してTaOx膜を形成する酸化工程S2を行うようにしたが、これに限定されず、図3(E)に示す第5実施例のように酸化工程S2を省略するようにしてもよい。この場合にはTaが金属のままであるので、このTaを電極としてCu電解メッキを行い易いという利点がある。電解メッキ液中の水分もしくは、絶縁膜1に含まれていた水分はTaの周囲に滞在する。そして、電解メッキ後に行われる第2の薄膜形成工程S3を実施することで、もしくは第2の薄膜形成工程S3の後にアニール工程を実施することで、MnはCu中を拡散し、MnがCu/Ta界面に到達するとTa周囲の水分と反応して、Cu/Ta界 面にMnOx膜が形成される。
【0064】
尚、本発明方法の第1〜第2実施例のいずれにおいても、埋め込み工程S4の後にアニール工程S5(図3において点線で示す)を追加してもよく、本発明方法の第3〜第5実施例のいずれにおいても、第2の薄膜形成工程S3の後にアニール工程S5(図3において点線で示す)を追加してもよい。このように、最後にアニール工程を加えることにより、第1の薄膜60と第2の薄膜62とよりなる2層構造のバリア層の形成をより確実におこなうことができる。この場合のアニール工程のプロセス条件としては、プロセス温度が例えば300〜500℃であり、ArやNなどの不活性ガス雰囲気にて、0.5〜10時間のアニール処 理を行う。
【0065】
尚、上記各実施例では絶縁層1を形成するLow−k膜としてSiOC膜を用いた場合を例にとって説明したが、これに限定されず、上記絶縁層は、SiOC膜とSiCOH膜とSiCN膜とシリカ膜とメチルシルセスキオキサン膜とポリアリレン膜とSiOF膜とフロロカーボン膜とよりなる群から選択される1つ以上の膜を用いることができる。この場合、上記SiOF膜としては、SiLK(登録商標)を用いることができる。
【0066】
また、上記各実施例では、第1の金属としてTaを用いた場合を例にとって説明したが、これに限定されず、上記第1の金属としては、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Sr、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ba、Hf、Ta、W、Os、Ir、Pt、Auよりなる群から選択される1以上の金属を用いることができる。
【0067】
また、上記各実施例では、第2の金属としてMnを用いた場合を例にとって説明したが、これに限定されず、上記第2の金属としては、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Sr、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ba、Hf、Ta、W、Os、Ir、Pt、Auよりなる群から選択される1以上の金属を用いることができる。
【0068】
この場合、前述したように上記第1の金属を含む金属酸化物の標準生成自由エネルギーは、上記第2の金属を含む金属酸化物の標準生成自由エネルギー以上の大きさとなるように、上記第1及び第2の各金属をそれぞれ選択する。
【0069】
<本発明方法の評価>
次に、先に説明した本発明方法を実施したので、その評価結果について説明する。図6は本発明方法を実施した時の評価結果を示すグラフである。ここでは第1の金属としてTaを用いた場合とCuを用いた場合の2種類について行っており、第2の金属としてMnを用いてMnOx膜を形成している。また酸化処理としては、単なる大気暴露を行っている。また比較例1として、上記各処理(前工程)を何ら行っていないものに対してMnOx膜の成膜処理を行っている。更に比較例2として大気暴露を行っていないCu膜に対してもMnOx膜の成膜処理を行った。尚、上記Ta膜及びCu膜はそれぞれ7nmの厚さで形成した。また絶縁層1としては、SiOC膜であるブラックダイヤモンド(登録商標)を用いた。また、MnOx膜の成膜に際しては、プロセス温度は200℃に設定した。
【0070】
図6に示すように、前処理なしの場合、すなわち第1の薄膜60を形成していない比較例1の場合には、MnOx膜の膜厚は0.04nm程度であってMnOx膜はほとんど堆積しなかった。これに対して、第1の金属としてTaやCuを用いた場合には、MnOx膜の膜厚はそれぞれ0.3nm及び2.4nm程度であり、共に良好な結果を示すことが判明した。特にCuを第1の金属として用いた場合には、非常に多くのMnOx膜を堆積できることが判明した。第2の金属としてMnを用いた場合には、その標準生成自由エネルギーの大小関係から、MnによってCuOxを還元することは出来てもTaOxを還元することは出来ない。
【0071】
よって、第1の金属としてTaを用いた今回の評価結果で得られた、膜厚0.3nmのMnOx膜は、大気暴露時にTaもしくはTaOx表面に付着した物理吸着水と、Mnの原料ガスとが反応して形成したものであると考えられる。一方、第1の金属としてCuを用いた今回の評価結果で得られた、膜厚2.4nmのMnOx膜は、大気暴露時にCuもしくはCuOx表面に付着した物理吸着水と、Mnの原料ガスとが反応して形成したMnOxに加え、CuOxを還元することによって形成されたMnOxであると考えられる。ただし、比較例2として大気暴露を行っていないCu膜に対して同様の成膜処理を行ったときに形成されたMnOx膜の膜厚は0.9nmという結果であり、これはMnがCu中に拡散した結果であるから、この分は差し引いて考える必要がある(つまり、正しくは2.4−0.9=1.5nmのMnOx膜と考える)。
【0072】
尚、上記各実施例では被処理体として半導体ウエハを例にとって説明したが、この半導体ウエハにはシリコン基板やGaAs、SiC、GaNなどの化合物半導体基板も含まれ、更にはこれらの基板に限定されず、液晶表示装置に用いるガラス基板やセラミック基板等にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 絶縁層
2 凹部
10 処理システム
12A〜12D 処理装置
14 共通搬送室
16A,16B ロードロック室
18 導入側搬送室
20 搬送機構
60 第1の薄膜
60A 酸化膜
62 第2の薄膜
64 埋め込み金属
W 半導体ウエハ(被処理体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す成膜方法において、
第1の金属よりなる第1の薄膜を形成する第1の薄膜形成工程と、
前記第1の薄膜を酸化して酸化膜を形成する酸化工程と、
前記酸化膜上に第2の金属を含む第2の薄膜を形成する第2の薄膜形成工程と、
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す成膜方法において、
第1の金属を含む酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、
前記酸化膜上に第2の金属を含む第2の薄膜を形成する第2の薄膜形成工程と、
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項3】
前記第2の薄膜上にCuを含む第3の膜を形成する第3の膜形成工程を有することを特徴とする請求項1又は2記載の成膜方法。
【請求項4】
絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す成膜方法において、
第1の金属よりなる第1の薄膜を形成する第1の薄膜形成工程と、
前記第1の薄膜を酸化して酸化膜を形成する酸化工程と、
前記酸化膜上にCuを含む第3の膜を形成する第3の膜形成工程と、
前記第3の膜上に第2の金属を含む原料ガスを供給して前記酸化膜と前記第3の膜との界面に第2の薄膜を形成する第2の薄膜形成工程と、
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項5】
絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す成膜方法において、
第1の金属を含む酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、
前記酸化膜上にCuを含む第3の膜を形成する第3の膜形成工程と、
前記第3の膜上に第2の金属を含む原料ガスを供給して前記酸化膜と前記第3の膜との界面に第2の薄膜を形成する第2の薄膜形成工程と、
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項6】
絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す成膜方法において、
第1の金属よりなる第1の薄膜を形成する第1の薄膜形成工程と、
前記第1の薄膜上にCuを含む第3の膜を形成する第3の膜形成工程と、
前記第3の膜上に第2の金属を含む原料ガスを供給して前記酸化膜と前記第3の膜との界面に第2の薄膜を形成する第2の薄膜形成工程と、
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項7】
Cuを含む前記第3の膜形成後、熱処理をおこなう第4の処理工程を有することを特徴とする請求項3乃至6のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記酸化工程と前記第2の薄膜形成工程とは同一の処理装置内で連続的に行われることを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
【請求項9】
前記絶縁層は、SiOC膜とSiCOH膜とSiCN膜とシリカ膜とメチルシルセスキオキサン膜とポリアリレン膜とSiOF膜とフロロカーボン膜とよりなる群から選択される1つ以上の膜よりなることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記絶縁層は、ポーラス構造を有することを特徴とする請求項9に記載の成膜方法。
【請求項11】
前記第1の金属を含む酸化膜の表面に、水を物理吸着させる工程を有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項12】
前記第1の金属を含む金属酸化物の標準生成自由エネルギーは、前記第2の金属を含む金属酸化物の標準生成自由エネルギー以上の大きさであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項13】
前記第1の金属は、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Sr、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ba、Hf、Ta、W、Os、Ir、Pt、Auよりなる群から選択される1以上の金属であることを特徴とする請求項12記載の成膜方法。
【請求項14】
前記第2の金属は、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Sr、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ba、Hf、Ta、W、Os、Ir、Pt、Auよりなる群から選択される1以上の金属であることを特徴とする請求項12又は13に記載の成膜方法。
【請求項15】
前記第2の金属はマンガン(Mn)よりなり、該マンガンを含む有機金属材料は、
MnCp[=Mn(C]、
Mn(MeCp)[=Mn(CH]、
Mn(MeCp)[=Mn((CH]、
Mn(EtCp)[=Mn(C]、
Mn(i−PrCp)[=Mn(C]、
Mn(t−BuCp)[=Mn(C]、
MeCpMn(CO)[=(CH)Mn(CO)]、
CpMn(CO)[=(C)Mn(CO)]、
MeMn(CO)[=(CH)Mn(CO)]、
Mn(CO)10
Mn(DPM)[=Mn(C1119]、
Mn(DPM)[=Mn(C1119]、
Mn(DMPD)(EtCp)[=Mn(C11)]、
Mn(acac)[=Mn(C]、
Mn(acac)[=Mn(C]、
Mn(hfac)[=Mn(CHF]、
Mn(iPr−AMD)[=Mn(CNC(CH)NC] 、
Mn(tBu−AMD)[=Mn(CNC(CH)NC] 、
Mn(AMD)[=Mn(CNC(C)NC
よりなる群から選択される1以上の材料であることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項16】
前記第1の薄膜と第2の薄膜は、スパッタ法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法及びALD(AtomicLayer Deposition)法の内のいずれか1の方法で形成されることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項17】
前記第3の薄膜は、CVD法、ALD法、PVD(スパッタ)法、超臨界CO法、無電解メッキ法、電解メッキ法、CVD−Cuシード+電 解メッキ法及びスパッタCuシード+電解メッキ法の内のいずれか1の方法で 形成されることを特徴とする請求項3乃至7及び9乃至16のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項18】
絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す処理システムにおいて、
前記被処理体の表面に第1の金属よりなる第1の薄膜を形成する処理装置と、
前記第1の薄膜を酸化して酸化膜を形成する処理装置と、
前記酸化膜上に第2の金属を含む第2の薄膜を形成する処理装置と、
前記各処理装置が連結された共通搬送室と、
前記共通搬送室内に設けられて、前記各処理装置内へ前記被処理体を搬送するための搬送機構と、
請求項1記載の成膜方法を実施するように処理システム全体を制御するシステム制御部と、
を備えたことを特徴とする処理システム。
【請求項19】
絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す処理システムにおいて、
前記被処理体の表面に第1の金属を含む酸化膜を形成する処理装置と、
前記酸化膜上に第2の金属を含む第2の薄膜を形成する処理装置と、
前記各処理装置が連結された共通搬送室と、
前記共通搬送室内に設けられて、前記各処理装置内へ前記被処理体を搬送するための搬送機構と、
請求項2記載の成膜方法を実施するように処理システム全体を制御するシステム制御部と、
を備えたことを特徴とする処理システム。
【請求項20】
絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す処理システムにおいて、
第1の金属よりなる第1の薄膜を形成する処理装置と、
前記第1の薄膜を酸化して酸化膜を形成する処理装置と、
前記酸化膜上にCuを含む第3の膜を形成する処理装置と、
前記第3の膜上に第2の金属を含む原料ガスを供給して前記酸化膜と前記第3の膜との界面に第2の薄膜を形成する処理装置と、
前記各処理装置が連結された共通搬送室と、
前記共通搬送室内に設けられて、前記各処理装置内へ前記被処理体を搬送するための搬送機構と、
請求項4記載の成膜方法を実施するように処理システム全体を制御するシステム制御部と、
を備えたことを特徴とする処理システム。
【請求項21】
絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す処理システムにおいて、
第1の金属を含む酸化膜を形成する処理装置と、
前記酸化膜上にCuを含む第3の膜を形成する処理装置と、
前記第3の膜上に第2の金属を含む原料ガスを供給して前記酸化膜と前記第3の膜との界面に第2の薄膜を形成する処理装置と、
前記各処理装置が連結された共通搬送室と、
前記共通搬送室内に設けられて、前記各処理装置内へ前記被処理体を搬送するための搬送機構と、
請求項5記載の成膜方法を実施するように処理システム全体を制御するシステム制御部と、
を備えたことを特徴とする処理システム。
【請求項22】
絶縁層が表面に形成された被処理体に対して成膜処理を施す処理システムにおいて、
第1の金属よりなる第1の薄膜を形成する処理装置と、
前記第1の薄膜上にCuを含む第3の膜を形成する処理装置と、
前記第3の膜上に第2の金属を含む原料ガスを供給して前記酸化膜と前記第3の膜との界面に第2の薄膜を形成する処理装置と、
前記各処理装置が連結された共通搬送室と、
前記共通搬送室内に設けられて、前記各処理装置内へ前記被処理体を搬送するための搬送機構と、
請求項6記載の成膜方法を実施するように処理システム全体を制御するシステム制御部と、
を備えたことを特徴とする処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−9788(P2012−9788A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146880(P2010−146880)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】