説明

表示装置及び表示装置の製造方法

【課題】同一の基板上にスイッチング素子と光センサ素子を形成する場合に、光センサ素子の感度が上げるために、活性層の膜厚を厚くすると、スイッチング素子(TFT)の特性に悪影響を及ぼしてしまう。
【解決手段】複数の画素がマトリクス状に配置されるガラス基板5上に、画素のスイッチング素子となる薄膜トランジスタを構成するチャネル層25と、光センサ素子を構成する光電変換層35とを有する表示装置の構成として、外光が入射する側と反対側で光電変換層35に最も近接して対向配置される電極33の表面に光反射膜34を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光センサを一体に有する表示装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、a-Si:H(水素化アモルファスシリコン)TFTやPoly−Si(多結晶シリコン)TFTを用いた液晶表示装置には、光センサを利用した自動バックライト調整機能やタッチスクリーン機能が設けられている。この種の液晶表示装置においては、画素のスイッチング素子となる薄膜トランジスタ(TFT)と同様の構造で光センサ素子を構成している(例えば、特許文献1を参照)。このため、小型化や薄型化などの特長を損なうことなく、光センサ付きの表示装置を安価に提供することが可能となっている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−018458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来においては、光センサ素子で光を感知して光電変換に寄与する層(以下、「光電変換層」と記す)が、画素のスイッチング素子となる薄膜トランジスタのチャネル層と同層に形成されている。このため、光電変換層がチャネル層と同じ厚みになっている。
【0005】
しかしながら、一般にa-Si:HTFTやPoly−SiTFTを用いた液晶表示装置では、トランジスタの特性を良好に維持するために、チャネル層が非常に薄い膜で形成される。そうした場合、光電変換層はチャネル層と同様に非常に薄い膜で形成されることになる。そのため、従来の光センサ付きの表示装置では、外部から光センサ素子に入射した光の多くが光電変換層を透過してしまい、十分なセンサ感度が得られないという問題があった。
【0006】
また、Poly−SiTFTのチャネル層は、一般に50nm〜100nmの厚さで形成されるが、仮に光電変換層をチャネル層と同等の50nm前後の膜厚で形成したとすると、膜の部分がPoly−Si及びa-Siのいずれであっても、その部分を殆どの可視光が透過してしまう。こうして透過した光は、電子−正孔対の生成に貢献しないため、光センサ素子としての感度は低くなる。
【0007】
図15は、チャネル層及び光電変換層としてPoly−Siを用いた場合に、光の波長(λ)を横軸、吸収係数(α)を左縦軸、光の強さ1/eになる膜厚を右縦軸にとったグラフである。また、図16は、チャネル層及び光電変換層としてa-Si:Hを用いた場合に、光の波長(λ)を横軸、吸収係数(α)を左縦軸、光の強さ1/eになる膜厚を右縦軸にとったグラフである。
【0008】
図15及び図16から分かるように、光を効率よく吸収するためには、少なくとも100nm以上の膜厚が必要となる。そこで、光センサの感度を上げるために、チャネル層及び光電変換層に相当する部分の膜厚を厚くすると、Poly−SiTFTの場合は、例えばトランジスタのオフ電流が高くなる、光リークが増加する、エキシマレーザ等を用いたレーザーアニール処理による結晶化が困難になる、などの不具合を招く。また、a-Si:HTFTの場合にも、例えばオフ電流が高くなる、S−D抵抗が増える、光リークが増加する、などの不具合を招く。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、同一の基板上にスイッチング素子と光センサ素子を形成する場合に、スイッチング素子の特性に影響を与えることなく、光センサ素子の感度を向上させることができる表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る表示装置は、複数の画素がマトリクス状に配置される基板上に、前記画素のスイッチング素子を構成する第1の活性層と光センサ素子を構成する第2の活性層とを有し、外光が入射する側と反対側で前記第2の活性層に最も近接して対向配置される電極の表面に光反射膜が形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明に係る表示装置においては、光センサ素子に入射した外光が第2の活性層を透過した場合に、この透過光が光反射膜で反射して再び第2の活性層に入射する。このため、外部からの光が第2の活性層に入射する回数が増える。また、画素のスイッチング素子とは別に、光センサ素子を構成する第2の活性層に対応する電極の表面に光反射膜を形成するため、スイッチング素子の特性に影響を与えることがない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光センサ付きの表示装置において、スイッチング素子の特性に影響を与えることなく、光センサ素子の感度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
図1(A)は液晶表示装置の構成例を示す平面図であり、図1(B)は同側面図、図1(C)は同要部断面図である。図示した液晶表示装置1は、駆動基板2と対向基板3とを貼り合わせた構造の表示パネルを備えている。表示パネルは、表示領域E1と、当該表示領域E1に隣接する周辺領域E2とに区分されている。周辺領域E2は表示領域E1の周辺に位置している。駆動基板2と対向基板3との間には、図示しないスペーサやシールを用いて液晶層4が封入されている。
【0015】
駆動基板2は、透明なガラス基板(絶縁性の基板)5を用いて構成されている。ガラス基板5の一方の面には画素電極6が形成されている。ガラス基板5の他方の面には偏光板7が貼り付けられている。対向基板3は、透明なガラス基板(絶縁性の基板)8を用いて構成されている。ガラス基板8の一方の面には共通電極(対向電極)9が形成されている。ガラス基板8の他方の面には偏光板10が貼り付けられている。駆動基板2と対向基板3は、液晶層4を介して画素電極6と共通電極9を対向させた状態で配置されている。
【0016】
駆動基板2の表示領域E1には、図2に示すように、画像を表示するための複数の画素11がマトリクス状に配置されている。駆動基板2の周辺領域E2には、走査線駆動回路12と信号線駆動回路13が配置されている。走査線駆動回路12は、水平方向に配線された複数の走査線14を選択的に駆動するものである。信号線駆動回路13は、垂直方向に配線された複数の信号線15を選択的に駆動するものである。画素11は、駆動基板2の表示領域E1内で、走査線14と信号線15が交差する部分に1つずつ設けられている。各々の画素11には上記画素電極6を含む画素回路が設けられている。
【0017】
画素回路は、例えば画素電極6、薄膜トランジスタTr及び保持容量Csを用いて構成されている。画素電極6は、薄膜トランジスタTrのドレイン電極に接続されている。薄膜トランジスタTrのゲート電極は走査線14に接続されている。薄膜トランジスタTrのソース電極は信号線15に接続されている。
【0018】
上記構成の画素回路においては、走査線駆動回路12と信号線駆動回路13の駆動により、薄膜トランジスタTrを介して信号線15から書き込まれた映像信号が保持容量Csに保持されるとともに、そこに保持された信号量に応じた電圧が画素電極6に供給され、この電圧に応じて上記液晶層4を構成する液晶分子が傾斜して表示光の透過が制御される仕組みになっている。
【0019】
なお、上記のような画素回路の構成は、あくまでも一例であり、必要に応じて画素回路内に容量素子を設けたり、さらに複数のトランジスタを設けたりして画素回路を構成してもよい。また、周辺領域E2には、画素回路の変更に応じて必要な駆動回路や素子を追加してもよい。
【0020】
<第1実施形態>
図3は本発明の第1実施形態に係る液晶表示装置1の駆動基板2の主要部を示す断面図である。図示のように、駆動基板2のベースとなるガラス基板5上には、画素11のスイッチング素子(薄膜トランジスタTr)を構成する第1の素子形成部21と、光センサ素子を構成する第2の素子形成部22が設けられている。上記図1に示す液晶層4側からガラス基板5を平面視すると、第1の素子形成部21は上記画素11とともに表示領域E1に配置され、第2の素子形成部22は、表示領域E1又は周辺領域E2或いはその両方に配置される。なお、図3においては、説明の便宜上、第1の素子形成部21と第2の素子形成部22を隣り合わせに横並びで表示しているが、特に、この並びに限定されるものではない。
【0021】
第1の素子形成部21は、ガラス基板5上に形成されたゲート電極23と、このゲート電極23にゲート絶縁膜24を介して対向するチャネル層25と、このチャネル層25の両側に位置するソース26及びドレイン27とを含むものである。ゲート電極23は、例えばクロム、モリブデン等の高融点金属を用いて形成されるものである。ゲート絶縁膜24は、高い光透過性を有する膜(透明な絶縁膜)であって、例えば、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜の2層構造になっている。
【0022】
チャネル層25は、「第1の活性層」として第1の素子形成部21に設けられたものである。チャネル層25は、トランジスタON時にゲート電極23に面する側でソース26−ドレイン27間にn型のチャネルを形成するものである。チャネル層25は、例えば多結晶シリコンによって形成されている。
【0023】
ソース26及びドレイン27は、n+型不純物の拡散領域となっている。ソース26は高濃度不純物領域26Hと低濃度不純物領域26Lとを有し、ドレイン27も高濃度不純物領域27Hと低濃度不純物領域27Lとを有している。ソース26の低濃度不純物領域26Lはチャネル層25に隣接し、ドレイン27の低濃度不純物領域27Lもチャネル層25に隣接している。このようにチャネル層25の両側に低濃度の不純物拡散領域を設けた構造は、LDD(Lightly Doped Drain)構造と呼ばれている。
【0024】
ソース26の高濃度不純物領域26Hはコンタクト用に低抵抗化された領域で、当該高濃度不純物領域26Hにソース電極28が接続されている。同様に、ドレイン27の高濃度不純物領域27Hはコンタクト用に低抵抗化された領域で、当該高濃度不純物領域27Hにドレイン電極29が接続されている。ソース電極28及びドレイン電極29は、それぞれ層間絶縁膜30を貫通する状態で形成されている。層間絶縁膜30は、高い光透過性を有する膜(透明な絶縁膜)であって、例えばシリコン酸化膜によって構成されている。
【0025】
第2の素子形成部22は、ガラス基板5上に形成されたゲート電極33と、このゲート電極33の表面に形成された光反射膜34と、この光反射膜34と上記ゲート絶縁膜24を介して対向する光電変換層35と、この光電変換層35の両側に位置するソース36及びドレイン37とを含むものである。ゲート電極33は、外光が入射する側と反対側で光電変換層35に最も近接して対向配置され、このゲート電極33の表面(上面)が光反射膜34によって被覆されている。光反射膜34は、少なくともゲート電極33よりも光の反射率が高い材料、例えば銀などの金属材料を用いて形成されている。
【0026】
光電変換層35は、「第2の活性層」として第2の素子形成部22に設けられたものである。この光電変換層35は、例えば、上記チャネル層25と同様に、多結晶シリコンによって形成されている。
【0027】
ソース36及びドレイン37は、n+型不純物の拡散領域となっている。ソース36は高濃度不純物領域36Hと低濃度不純物領域36Lとを有し、ドレイン37も高濃度不純物領域37Hと低濃度不純物領域37Lとを有している。ソース36の低濃度不純物領域36Lは光電変換層35に隣接し、ドレイン37の低濃度不純物領域27Lも光電変換層35に隣接している。
【0028】
ソース36の高濃度不純物領域36Hはコンタクト用に低抵抗化された領域で、当該高濃度不純物領域36Hにソース電極38が接続されている。同様に、ドレイン37の高濃度不純物領域37Hはコンタクト用に低抵抗化された領域で、当該高濃度不純物領域37Hにドレイン電極39が接続されている。ソース電極38及びドレイン電極39は、それぞれ層間絶縁膜30を貫通する状態で形成されている。
【0029】
このようにゲート電極33を覆うように光反射膜34を設けることにより、外部から入射して光電変換層35を透過した光が、光反射膜34で効率良く反射し、この反射光が戻り光となって再び光電変換層35に入射するようになる。このため、外部からの光が光電変換層35に入射する回数が増える。その結果、光電変換層35で発生する電子−正孔対の数が増加し、光センサ素子としての感度が向上する。したがって、光電変換層35上に光反射膜34を設けない場合に比較して、より大きな光電流が得られる。その結果、画素11のスイッチング素子となる薄膜トランジスタTrに影響を与えることなく、光センサ素子の感度を高めることができる。
【0030】
図4〜図6は本発明の第2実施形態に係る液晶表示装置の製造方法を示す図である。まず、図4(A)に示すように、上記複数の画素11をマトリクス状に形成するためのガラス基板5を用意したら、このガラス基板5上にゲート電極23,33を形成した後、一方のゲート電極33上に、当該ゲート電極33を覆う状態で、例えばインクジェット成膜法により銀を選択的に成膜することにより、光反射膜34を形成する。
【0031】
次に、図4(B)に示すように、ゲート電極23とゲート電極33上の光反射膜34を覆う状態で、例えばPECVD(plasma enhanced chemical vapor deposition)法などにより、ガラス基板5上にシリコン窒化膜とシリコン酸化膜を順に成膜してゲート絶縁膜24を形成する。
【0032】
次に、図4(C)に示すように、PECVD法などにより、ゲート絶縁膜24を覆う状態で非晶質シリコンからなる半導体膜31を形成する。
【0033】
次に、図5(A)に示すように、レーザーアニールによって上記非晶質の半導体膜31を多結晶化することにより、多結晶シリコンからなる半導体膜32を得る。この段階でガラス基板5上に多結晶の半導体膜32が形成された状態となる。
【0034】
次に、図5(B)に示すように、多結晶の半導体膜32に対して、ゲート電極23上でチャネル層25を構成する多結晶シリコン部分とゲート電極33上で光電変換層35を構成する多結晶シリコン部分とを除いた領域に、例えばイオン打ち込み、イオン注入又はプラズマ注入などで不純物を導入することにより、上記半導体膜32を、多結晶シリコン領域32Pと、高濃度不純物領域32Hと、低濃度不純物領域32Lに区分する。このとき、イオン注入等を行なう前に、半導体層32を保護する目的で酸化物などをスパッタ法で形成してもよい。
【0035】
次に、図6(A)に示すように、上記第1の素子形成部21と第2の素子形成部22に対応する部分で、ウェットエッチング又はドライエッチングによって半導体膜32を島状に分離することにより、上記第1の素子形成部21に含まれるゲート電極23側にソース26とドレイン27を形成し、上記第2の素子形成部22に含まれるゲート電極33側にソース36とドレイン37を形成する。このとき、ソース26は高濃度不純物領域26Hと低濃度不純物領域26Lに区分され、ドレイン27も高濃度不純物領域27Hと低濃度不純物領域27Lに区分される。同様に、ソース36は高濃度不純物領域36Hと低濃度不純物領域36Lに区分され、ドレイン37も高濃度不純物領域37Hと低濃度不純物領域37Lに区分される。
【0036】
次に、図6(B)に示すように、チャネル層25、ソース26及びドレイン27と、光電変換層35、ソース36及びドレイン37とを覆う状態で、ガラス基板5上に層間絶縁膜30を形成する。
【0037】
次に、図6(C)に示すように、チャネル層25の両側でソース26の高濃度不純物領域26Hに通じるコンタクトホールとドレイン27の高濃度不純物領域27Hに通じるコンタクトホールを形成し、これらのコンタクトホールを配線材料で埋め込む状態で層間絶縁膜30にソース電極28とドレイン電極29を形成する。また、それと並行して、光電変換層35の両側でソース36の高濃度不純物領域36Hに通じるコンタクトホールとドレイン37の高濃度不純物領域37Hに通じるコンタクトホールを形成し、これらのコンタクトホールを配線材料で埋め込む状態でソース電極38とドレイン電極39を形成する。
【0038】
以上の製造方法により、チャネル層25を含むスイッチング素子(薄膜トランジスタ)と光電変換層35を含む光センサ素子を同一のガラス基板5上に形成することができる。また、第2の素子形成部22において、ゲート電極33上に光反射膜34を設けることができる。
【0039】
<第2実施形態>
図7は本発明の第2実施形態に係る液晶表示装置1の駆動基板2の主要部を示す断面図である。この第2実施形態においては、上記第1実施形態と比較して、特に、透明LCD(Liquid Crystal Display)を実現するために、第1の素子形成部21のゲート電極23を透明電極とした点と、ソース26,36及びドレイン27,37をそれぞれ透明導電膜で形成した点と、ソース電極28,38及びドレイン電極29,39をそれぞれ透明電極とした点と、チャネル層25を透明酸化物半導体又は有機物半導体で形成した点と、光電変換層35をチャネル層25と異なる材料で形成した点と、第2の素子形成部22を周辺領域E2だけに配置する点が異なる。
【0040】
ゲート電極23,33は、例えばITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電材料を用いて形成されている。ソース26,36及びドレイン27,37の各々は、例えばITO(Indium Tin Oxide)、ZnO(酸化亜鉛)、FZO(フッ素含有ZnO)、GZO(ガリウム含有ZnO)、FGZO(フッ素・ガリウム含有ZnO)、AZO(アルミニウム含有ZnO)などの透明導電材料を用いて形成されている。
【0041】
ソース電極28,38及びドレイン電極29,39の各々は、例えばITO(Indium Tin Oxide)を用いて形成されている。チャネル層25は、例えばInGaZnO(Indium Gallium Zinc Oxide)を用いて形成されている。光電変換層35は、例えば、非晶質シリコン(a-si)、非晶質ゲルマニウム(a-Ge)、非晶質シリコンゲルマニウム(a-SixGe1)、シリコンとゲルマニウムの積層層、又はそれらの結晶粒径をナノレベルまで微細化(微結晶化)した層などによって形成されている。
【0042】
このように第2実施形態に係る液晶表示装置1では、上記第1実施形態と同様に、ゲート電極33の表面に光反射膜34を形成しているため、当該光反射膜34での光の反射により、外部からの光が光電変換層35に入射する回数が増える。このため、光電変換層35で発生する電子−正孔対の数が増加し、光センサ素子としての感度が向上する。したがって、光電変換層35上に光反射膜34を設けない場合に比較して、より大きな光電流が得られる。その結果、画素11のスイッチング素子となる薄膜トランジスタTrに影響を与えることなく、光センサ素子の感度を高めることができる。
【0043】
また、上記第2実施形態においては、第1の素子形成部21のチャネル層25を透明酸化物半導体で形成する一方、第2の素子形成部22の光電変換層35をそれよりも光吸収性の高い材料(非晶質シリコン等)で厚く形成することにより、光電変換層35の光吸収率(特に、可視光吸収率)をチャネル層25の光吸収率よりも高くしている。これにより、第2の素子形成部22を光センサ素子として機能させる場合に、光電変換層35への光の入射によって発生する電子−正孔対の数が増加するため、第1の素子形成部21と同じ材料及び厚さで光電変換層を形成する場合に比較して、より大きな光電流が得られる。その結果、光センサ素子の感度をより一層高めることができる。
【0044】
また、透明LCDを実現するにあたって、ゲート電極33上に光反射膜34を形成したことで、図示しないバックライトから入射する光(以下、「バックライト光」と記す)が光反射膜34によって遮蔽される。このため、光電変換層35に対するバックライト光の入射を光反射膜34で防止することができる。
【0045】
また、第2実施形態に係る液晶表示装置1においては、表示領域E1に配置される第1の素子形成部21全体が光を透過するようになるため、非駆動時には表示領域E1を透明な状態とし、駆動時には表示領域E1に画像を表示させることができる。また、第2の素子形成部22の光反射膜34は光を遮蔽し、光電変換層35は光の一部を吸収するものの、表示パネルの面内で第2の素子形成部22を周辺領域E2の目立たない端の位置(例えば、表示パネルの四隅)に配置すれば、表示パネルの透明性を損なうことがない。
【0046】
図8及び図9は本発明の第2実施形態に係る液晶表示装置の製造方法を示す図である。まず、図8(A)に示すように、上記複数の画素11をマトリクス状に形成するためのガラス基板5を用意したら、このガラス基板5上に透明なゲート電極23を形成した後、一方のゲート電極33上に、当該ゲート電極33を覆う状態で、例えばインクジェット成膜法により銀を選択的に成膜することにより、光反射膜34を形成する。
【0047】
次に、図8(B)に示すように、ゲート電極23とゲート電極33上の光反射膜34を覆う状態で、例えばPECVD(plasma enhanced chemical vapor deposition)法などにより、ガラス基板5上にシリコン窒化膜とシリコン酸化膜を順に成膜してゲート絶縁膜24を形成する。
【0048】
次に、図8(C)に示すように、ゲート絶縁膜24を覆う状態で、スパッタ法や塗布法などにより、ガラス基板5上に透明導電膜41を形成する。
【0049】
次に、図8(D)に示すように、上記第1の素子形成部21と第2の素子形成部22に対応する部分で、ウェットエッチング又はドライエッチングによって透明導電膜41を島状に分離することにより、上記第1の素子形成部21に含まれるゲート電極23側にソース26とドレイン27を形成するとともに、上記第2の素子形成部22に含まれるゲート電極33側にソース36とドレイン37を形成する。また、ゲート電極23上では、第1の活性層(チャネル層)に相当する部分の透明導電膜41を除去することにより、ソース26とドレイン27の間でゲート絶縁膜24の表面を露出させ、ゲート電極33上では、第2の活性層(光電変換層)に相当する部分の透明導電膜41を除去することにより、ソース36とドレイン37の間でゲート絶縁膜24の表面を露出させる。
【0050】
次に、図9(A)に示すように、ゲート電極23上で透明導電膜41を除去した部分に、例えばPECVD法、スパッタ法、蒸着法又は塗布法などで透明酸化物半導体又は有機物半導体からなるチャネル層25を形成する。また、その前に又はその後に、ゲート電極33上で透明導電膜41を除去した部分に、例えばインクジェット成膜法等の印刷法、レーザCVD等の光CVD法又はスタンピング法などの選択的膜形成法によって光電変換層35を形成する。インクジェット成膜法や光CVD法では、膜厚を任意に制御することができる。このため、ここではチャネル層25よりも膜厚を厚くして光電変換層35を形成する。
【0051】
次に、図9(B)に示すように、チャネル層25、ソース26及びドレイン27と、光電変換層35、ソース36及びドレイン37とを覆う状態で、ガラス基板5上に層間絶縁膜30を形成する。
【0052】
次に、図9(C)に示すように、チャネル層25の両側でソース26に通じるコンタクトホールとドレイン27に通じるコンタクトホールを形成し、これらのコンタクトホールを配線材料で埋め込む状態で層間絶縁膜30にソース電極28とドレイン電極29を形成する。また、それと並行して、光電変換層35の両側でソース36に通じるコンタクトホールとドレイン37に通じるコンタクトホールを形成し、これらのコンタクトホールを配線材料で埋め込む状態でソース電極38とドレイン電極39を形成する。
【0053】
以上の製造方法により、チャネル層25を含むスイッチング素子(薄膜トランジスタ)と光電変換層35を含む光センサ素子を同一のガラス基板5上に形成することができる。また、第1の素子形成部21で画素のスイッチング素子(薄膜トランジスタ)を構成するチャネル層25と、第2の素子形成部22で光センサ素子を構成する光電変換層35を、それぞれ異なる材料及び厚さで形成することができる。
【0054】
このため、光電変換層35の形成材料を任意に選ぶことができる。また、画素のスイッチング素子を構成するチャネル層25は透明な半導体膜で形成し、光センサ素子を構成する光電変換層35は可視光を吸収する膜で形成することができる。さらに、第2の素子形成部22では、外部からの光を光電変換層35に戻すように反射させる機能とバックライトからの光が光電変換層35に入射しないように遮蔽する機能とを兼ね備える光反射膜34をゲート電極33上に形成することができる。
【0055】
なお、上記各実施形態においては、ボトムゲート型の薄膜トランジスタを例に挙げたが、薄膜トランジスタの構造としてトップゲート型であってもよい。
【0056】
また、上記各実施形態においては、チャネル層を含む薄膜トランジスタと同様の構造で光センサ素子を構成しているが、これ以外にも、例えばpn接合型又はpin接合型のフォトダイオードで光センサ素子を構成してもよい。pin接合型のフォトダイオードでは、p層とn層の間のi層で光電変換を行なうため、i層が「第2の活性層」に相当するものとなる。また、pn接合型のフォトダイオードでは、pn接合部付近で光電変換を行なうため、基板厚み方向でp層に重なるn層、又はn層に重なるp層が、「第2の活性層」に相当するものとなる。
【0057】
<適用例>
上記構成からなる液晶表示装置1は、図10〜図14に示す様々な電子機器、例えば、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置、ビデオカメラなど、電子機器に入力された映像信号、若しくは、電子機器内で生成した映像信号を、画像若しくは映像として表示するあらゆる分野の電子機器に適用可能である。
【0058】
図10は第1適用例となるテレビを示す斜視図である。本適用例に係るテレビは、フロントパネル102やフィルターガラス103等から構成される映像表示画面部101を含み、その映像表示画面部101に上記の液晶表示装置1を適用可能である。
【0059】
図11は第2適用例となるデジタルカメラを示す図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。本適用例に係るデジタルカメラは、フラッシュ用の発光部111、表示部112、メニュースイッチ113、シャッターボタン114等を含み、その表示部112に上記の液晶表示装置1を適用可能である。
【0060】
図12は第3適用例となるノート型パーソナルコンピュータを示す斜視図である。本適用例に係るノート型パーソナルコンピュータは、本体121に、文字等を入力するとき操作されるキーボード122、画像を表示する表示部123等を含み、その表示部123に上記の液晶表示装置1を適用可能である。
【0061】
図13は第4適用例となるビデオカメラを示す斜視図である。本適用例に係るビデオカメラは、本体部131、前方を向いた側面に被写体撮影用のレンズ132、撮影時のスタート/ストップスイッチ133、表示部134等を含み、その表示部134に上記の液晶表示装置1を適用可能である。
【0062】
図14は第5適用例となる携帯端末装置、例えば携帯電話機を示す図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。本適用例に係る携帯電話機は、上側筐体141、下側筐体142、連結部(ここではヒンジ部)143、ディスプレイ144、サブディスプレイ145、ピクチャーライト146、カメラ147等を含み、そのディスプレイ144やサブディスプレイ145に上記の液晶表示装置1を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】液晶表示装置の構成例を示す図である。
【図2】液晶表示装置の駆動基板の構成を示す平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る液晶表示装置の駆動基板の主要部を示す断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る液晶表示装置の製造方法を示す図(その1)である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る液晶表示装置の製造方法を示す図(その2)である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る液晶表示装置の製造方法を示す図(その3)である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る液晶表示装置の駆動基板の主要部を示す断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る液晶表示装置の製造方法を示す図(その1)である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る液晶表示装置の製造方法を示す図(その2)である。
【図10】本発明の第1適用例となるテレビを示す斜視図である。
【図11】本発明の第2適用例となるデジタルカメラを示す図である。
【図12】本発明の第3適用例となるノート型パーソナルコンピュータを示す斜視図である。
【図13】本発明の第4適用例となるビデオカメラを示す斜視図である。
【図14】本発明の第5適用例となる携帯端末装置を示す図である。
【図15】本発明のチャネル層及び光電変換層としてPoly−Siを用いた場合に、光の波長(λ)を横軸、吸収係数(α)を左縦軸、光の強さ1/eになる膜厚を右縦軸にとったグラフである。
【図16】チャネル層及び光電変換層としてa-Si:Hを用いた場合に、光の波長(λ)を横軸、吸収係数(α)を左縦軸、光の強さ1/eになる膜厚を右縦軸にとったグラフである。
【符号の説明】
【0064】
1…液晶表示装置、2…駆動基板、3…対向基板、4…液晶層、5,8…ガラス基板、6…画素電極、7,10…偏光板、11…画素、21…第1の素子形成部、22…第2の素子形成部、23,33…ゲート電極、24…ゲート絶縁膜、25…チャネル層、26,36…ソース、27,37…ドレイン、28,38…ソース電極、29,39…ドレイン電極、30…層間絶縁膜、31,32…半導体膜、34…光反射膜、35…光電変換層、41…透明導電膜、E1…表示領域、E2…周辺領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素がマトリクス状に配置される基板上に、前記画素のスイッチング素子を構成する第1の活性層と光センサ素子を構成する第2の活性層とを有し、
外光が入射する側と反対側で前記第2の活性層に最も近接して対向配置される電極の表面に光反射膜が形成されている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記基板は、前記複数の画素が配置される表示領域と、当該表示領域に隣接する周辺領域とを有し、
前記第1の活性層は前記表示領域に配置され、前記第2の活性層は前記周辺領域に配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
複数の画素をマトリクス状に形成するための基板上において、第1の素子形成部に第1の電極を形成するとともに、第2の素子形成部に第2の電極を形成する処理と、
前記第2の素子形成部に形成された前記第2の電極の表面に光反射膜を形成する処理と、
前記第1の素子形成部で前記第1の電極上に第1の活性層を形成するとともに、前記第2の素子形成部で前記光反射膜上に第2の活性層を形成する処理と
を順に行なうことにより、
前記基板上に前記第1の活性層を含むスイッチング素子と前記第2の活性層を含む光センサ素子を形成する
ことを特徴とする表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−75385(P2009−75385A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244883(P2007−244883)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】