説明

TFT基板及びその製造方法

【課題】生産性を向上させることができるTFT基板及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明にかかるTFT基板100は、ソース領域4a及びドレイン領域4bを有する半導体膜4と、ソース領域4aに電気的に接続され、透明導電膜21によってソース領域4a上に形成されるソース電極11と、ドレイン領域4bに電気的に接続され、透明導電膜21によってドレイン領域4b上に形成されるドレイン電極12と、ドレイン電極12から延在し、半導体膜4からはみ出すように形成される画素電極13と、ソース電極11に電気的に接続され、ソース電極11上において、ソース電極11からはみ出さないように、上部導電膜22によって形成された配線14とを有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TFT基板及びその製造方法に関し、例えばアクティブマトリクス型表示装置等のTFT基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリクス型表示装置には、画素領域に薄膜トランジスタ(TFT)等のスイッチング素子が形成されたTFT基板が用いられる。よく用いられるTFTとしては、半導体膜を用いたMOS構造が挙げられる。また、TFTの種類には、逆スタガ型やトップゲート型等がある。さらには、半導体膜として非晶質半導体膜を用いたTFTや多結晶半導体膜を用いたTFTがある。これらは、表示装置の用途や性能により適宜選択される。中型や大型のパネルにおいては、非晶質半導体膜である非晶質シリコン膜を用いたTFT(a−Si TFT)が用いられる。一方、小型のパネルにおいては、多結晶半導体膜である多結晶シリコン膜を用いたTFT(p−Si TFT)が用いられる。p−Si TFTとしては、例えば低温p−Si TFT(LTPS−TFT)が挙げられる。
【0003】
このLTPS−TFTを表示領域に用いることにより、画素ごとのスイッチングトランジスタの容量が小さくなるだけでなく、ドレイン側に接続する保持容量の面積も縮小できる。これにより、高解像度で高開口率の表示装置が実現できる。さらに、LTPS−TFTを表示領域だけでなく、表示装置周辺の回路として使用することにより、IC及びIC装着基板を削減することができる。すなわち、表示装置の周辺を簡略化することができ、狭額縁で高信頼性の表示装置を実現することができる。このため、携帯電話用程度の小型パネルでQVGA(画素数:240×320)やVGA(画素数:480×640)の高解像度液晶表示装置には、LTPS−TFTが主導的な役割を果たしている。このように、LTPS−TFTはa−Si TFTと比較して、性能面で大きな優位点があり、今後さらに高精細化が進むことが予想される。
【0004】
LTPS−TFTで用いられる多結晶半導体膜の作成方法としては、非晶質半導体膜を形成した後、レーザ光を照射することにより多結晶化する方法が知られている。また、多結晶半導体膜を作成した後にTFTを製造する方法も知られている(例えば特許文献1)。ここで、一般的なTFTの製造方法を説明する。まず、基板上に酸化シリコン膜等からなる下地膜を形成する。下地膜上に、非晶質シリコン膜を成膜する。そして、非晶質シリコン膜にレーザ光を照射することにより多結晶化し、多結晶シリコン膜を形成する。そして、多結晶シリコン膜上に導電膜を成膜し、導電膜及び多結晶シリコン膜をパターン形成する。
【0005】
次に、多結晶シリコン膜上に酸化シリコン膜等からなるゲート絶縁膜を成膜する。そして、ゲート絶縁膜を介して多結晶シリコン膜上にゲート電極を形成する。その後、ゲート電極をマスクとして、ゲート絶縁膜を介して多結晶シリコン膜にリンやボロン等の不純物を導入することによりソースドレイン領域を形成する。次に、ゲート電極やゲート絶縁膜を覆うように第1層間絶縁膜を成膜し、ソースドレイン領域に到達するコンタクトホールを第1層間絶縁膜及びゲート絶縁膜に形成する。第1層間絶縁膜上に金属膜を成膜し、コンタクトホールを介してソース領域に接続するソース電極と、コンタクトホールを介してドレイン領域に接続するドレイン電極とをパターン形成する。
【0006】
その後、ソースドレイン電極を覆うように第2層間絶縁膜を成膜した後、ドレイン電極に到達するコンタクトホールを第2層間絶縁膜に形成する。そして、ドレイン電極に接続されるように画素電極を形成することにより、アクティブマトリクス型表示装置のTFT基板が形成される。
【特許文献1】特開平11−261076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
LTPS−TFTは、a−Si TFTと比較して性能面で大きな優位点があるが、a−Si TFTと比較して製造工程数が多い。すなわち、LTPS−TFTが用いられるTFT基板は製造工程数が多い。製造工程数は、TFT基板の生産性に大きく影響し、一般的に工程数が多いほど生産コストが高くなり、製品競争力が低下する。このため、工程数を削減して生産性を向上することが望まれる。
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、生産性を向上させることができるTFT基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかるTFT基板は、ソース領域及びドレイン領域を有する半導体膜と、前記ソース領域に電気的に接続され、透明導電膜によって前記ソース領域上に形成されるソース電極と、前記ドレイン領域に電気的に接続され、前記透明導電膜によって前記ドレイン領域上に形成されるドレイン電極と、前記ドレイン電極から延在し、前記半導体膜からはみ出すように形成される延在電極と、前記ソース電極に電気的に接続され、前記ソース電極上において、前記ソース電極からはみ出さないように、上部導電膜によって形成された配線とを有するものである。
【0010】
本発明にかかるTFT基板の製造方法は、ソース領域及びドレイン領域を有する半導体膜を形成する工程と、前記半導体膜上に透明導電膜を成膜する工程と、前記透明導電膜上に上部導電膜を成膜する工程と、前記上部導電膜をパターニングすることにより、前記透明導電膜上に配線を形成する工程と、前記透明導電膜をパターニングすることにより、前記ソース領域に電気的に接続する前記ソース電極、前記ドレイン領域に電気的に接続するドレイン電極、及び前記ドレイン電極から延在する延在電極を形成する工程とを有する方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、生産性を向上させることができるTFT基板及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
始めに、本発明にかかるTFT基板が用いられる液晶表示装置について図1を用いて説明する。図1は、TFT基板の構成を示す正面図である。TFT基板は、半導体装置に用いられる。ここでは、液晶表示装置を例として説明するが、あくまでも例示的なものであり、有機EL表示装置等の平面型表示装置(フラットパネルディスプレイ)等に用いることも可能である。もちろん、表示装置以外の半導体装置に用いることも可能である。
【0013】
液晶表示装置は、TFT基板100を有している。TFT基板100は、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)108がアレイ状に配列したTFTアレイ基板である。TFT基板100には、表示領域101と表示領域101を囲むように設けられた額縁領域102とが設けられている。この表示領域101には、複数のゲート配線(走査信号線)110、複数の保持容量配線(不図示)、及び複数のソース配線(表示信号線)111が形成されている。複数のゲート配線110及び複数の保持容量配線(蓄積容量配線)は平行に設けられている。保持容量配線は、隣接するゲート配線110間にそれぞれ設けられている。すなわち、ゲート配線110と保持容量配線とは、交互に配置されている。そして、複数のソース配線111は平行に設けられている。ゲート配線110及び保持容量配線と、ソース配線111とは、互いに交差するように形成されている。ゲート配線110及び保持容量配線と、ソース配線111とは直交している。そして、隣接するゲート配線110とソース配線111とで囲まれた領域が画素105となる。すなわち、保持容量配線は、画素105を横断するように形成されている。TFT基板100では、画素105がマトリクス状に配列される。
【0014】
さらに、TFT基板100の額縁領域102には、走査信号駆動回路103と表示信号駆動回路104とが設けられている。ゲート配線110は、表示領域101から額縁領域102まで延設されている。そして、ゲート配線110は、TFT基板100の端部で、走査信号駆動回路103に接続される。ソース配線111も同様に表示領域101から額縁領域102まで延設されている。そして、ソース配線111は、TFT基板100の端部で、表示信号駆動回路104と接続される。走査信号駆動回路103の近傍には、外部配線106が接続されている。また、表示信号駆動回路104の近傍には、外部配線107が接続されている。外部配線106、107は、例えば、FPC(Flexible Printed Circuit)などの配線基板である。
【0015】
外部配線106、107を介して走査信号駆動回路103、及び表示信号駆動回路104に外部からの各種信号が供給される。走査信号駆動回路103は外部からの制御信号に基づいて、ゲート信号(走査信号)をゲート配線110に供給する。このゲート信号によって、ゲート配線110が順次選択されていく。表示信号駆動回路104は外部からの制御信号や、表示データに基づいて表示信号をソース配線111に供給する。これにより、表示データに応じた表示電圧を各画素105に供給することができる。なお、走査信号駆動回路103と表示信号駆動回路104は、TFT基板100上に配置される構成に限られるものではない。例えば、TCP(Tape Carrier Package)により駆動回路を接続してもよい。
【0016】
画素105内には、少なくとも1つのTFT108と、保持容量109とが形成されている。そして、画素105内において、TFT108と保持容量109は直列に接続されている。TFT108はソース配線111とゲート配線110の交差点近傍に配置される。例えば、このTFT108が画素電極に表示電圧を供給する。スイッチング素子であるTFT108のゲート電極はゲート配線110に接続され、ゲート端子から入力されるゲート信号によってTFT108のONとOFFを制御している。TFT108のソース電極はソース配線111に接続されている。ゲート電極に電圧を印加され、TFT108がONされると、ソース配線111から電流が流れるようになる。これにより、ソース配線111から、TFT108のドレイン電極に接続された画素電極に表示電圧が印加される。そして、画素電極と、対向電極との間に、表示電圧に応じた電界が生じる。
【0017】
一方、保持容量109は、TFT108だけでなく、保持容量配線を介して対向電極とも電気的に接続されている。従って、保持容量109は、画素電極と対向電極との間の容量と並列接続されていることになる。保持容量109は、対向配置される電極間に誘電体絶縁膜を形成して構成される。そして、保持容量109によって画素電極に印加される電圧を一定時間保持することができる。TFT基板100の表面には、配向膜(不図示)が形成される。TFT基板100は、以上のように構成される。
【0018】
さらに、液晶表示装置の場合、TFT基板100には、対向基板が対向して配置されている。対向基板は、例えばカラーフィルタ基板であり、視認側に配置される。対向基板には、カラーフィルタ、ブラックマトリクス(BM)、対向電極、及び配向膜等が形成されている。なお、例えば、IPS方式の液晶表示装置の場合、対向電極は、TFT基板100側に配置される。そして、TFT基板100と対向基板との間に液晶層が挟持される。すなわち、TFT基板100と対向基板との間には液晶が注入されている。さらに、TFT基板100と対向基板との外側の面には、偏光板、及び位相差板等などが設けられる。また、液晶表示パネルの反視認側には、バックライトユニット等が配設される。
【0019】
画素電極と対向電極との間の電界によって、液晶が駆動される。すなわち、基板間の液晶の配向方向が変化する。これにより、液晶層を通過する光の偏光状態が変化する。すなわち、偏光板を通過して直線偏光となった光は液晶層によって、偏光状態が変化する。具体的には、バックライトユニットからの光及び外部から入射した外光は、偏光板によって直線偏光になる。そして、この直線偏光が液晶層を通過することによって、偏光状態が変化する。
【0020】
従って、偏光状態によって、対向基板側の偏光板を通過する光量が変化する。すなわち、バックライトユニットから液晶表示パネルを透過する透過光のうち、視認側の偏光板を通過する光の光量が変化する。液晶の配向方向は、印加される表示電圧によって変化する。従って、表示電圧を制御することによって、視認側の偏光板を通過する光量を変化させることができる。すなわち、画素毎に表示電圧を変えることによって、所望の画像を表示することができる。なお、これら一連の動作で、保持容量109においては画素電極と対向電極との間の電界と並列に電界を形成させることにより、表示電圧の保持に寄与する。
【0021】
実施の形態1.
液晶表示装置に備えられるTFT基板100の要部の構成について図2を用いて説明する。図2は、本実施の形態にかかるTFT基板100の要部の構成を示す断面図である。具体的には、図2は、図1に示されたTFT基板100のTFT108及び画素電極の構成を示す断面図である。ここでは、TFT108の一例として、低温p−Si TFT(LTPS−TFT)について説明する。LTPS−TFTは、例えば相補型MOS(C/MOS)構造で、トップゲート型となっている。なお、以下で参照する図においては、C/MOS構造を構成する2つのTFTのうち、一方のTFTのみを示す。
【0022】
ガラス基板等の絶縁性基板1上に、透過性の無機絶縁膜であるシリコン窒化膜(SiN膜)2、シリコン酸化膜(SiO膜)3が順次形成される。これらは、下地膜として形成され、例えばガラス基板からのNaなどの可動イオンが後述する半導体膜4へ拡散することを防止する目的で設けられる。つまり、不純物拡散を遮断するバリア層である。絶縁性基板1としては、ガラスや石英基板等の透明絶縁性基板を用いることができる。そして、SiO膜3の上には、島状の半導体膜4が形成される。半導体膜4としては、多結晶シリコン(p−Si)膜を用いることができる。半導体膜4には、不純物を含む導電性領域があり、これがソース領域4a、ドレイン領域4bである。ソースドレイン領域は、半導体膜4の両端に形成され、ソースドレイン領域に挟まれる領域がチャネル領域4cである。ソースドレイン領域は、チャネル領域4cより低抵抗となっている。
【0023】
ソース領域4a上の一部には、下部導電膜5が形成される。同様に、ドレイン領域4b上の一部にも、下部導電膜5が形成される。なお、下部導電膜5は、半導体膜4のパターンからはみ出さないように形成される。そして、半導体膜4、下部導電膜5、及びSiO膜3を覆うように、ゲート絶縁膜6が形成される。ゲート絶縁膜6は、例えばSiO膜によって形成される。そして、チャネル領域4cと対向して、ゲート絶縁膜6上にゲート電極7が形成される。ゲート電極7は、ゲート配線110から半導体膜4の上部まで延設されている。そして、ゲート配線110を介して、ゲート電極7にゲート信号が入力され、TFT108のONとOFFとを制御している。
【0024】
ゲート電極7を覆うように、層間絶縁膜8が形成される。下部導電膜5上のゲート絶縁膜6及び層間絶縁膜8には、コンタクトホール9、10が形成される。そして、ソース電極11及びドレイン電極12は、層間絶縁膜8上に形成される。換言すると、ソース電極11は、層間絶縁膜8等を介して、ソース領域4a上に形成される。そして、ドレイン電極12は、層間絶縁膜8等を介して、ドレイン領域4b上に形成される。
【0025】
ソース電極11は、コンタクトホール9に充填され、下部導電膜5を介在させてソース領域4aと電気的に接続される。すなわち、コンタクトホール9を通じて、ソース電極11とソース領域4aとが電気的に接続される。また、ドレイン電極12は、コンタクトホール10に充填され、下部導電膜5を介在させてドレイン領域4bと電気的に接続される。すなわち、コンタクトホール10を通じて、ドレイン電極12とドレイン領域4bとが電気的に接続される。このように、ソース電極11及びドレイン電極12と、ソース領域4a及びドレイン電極4bとの接続部(コンタクト部)に下部導電膜5が形成される。これにより、コンタクト抵抗が低くなり、高速動作が可能となる。
【0026】
そして、ドレイン電極12から延在して半導体膜4からはみ出すように、延在電極としての画素電極13が形成される。すなわち、ドレイン電極12及び画素電極13は、一体的に形成される。ソース電極11、ドレイン電極12、及び画素電極13は、ITO、IZO、ITZO、InO、ITSO、SnO等の透明導電膜によって形成される。そして、ソース電極11上には、上部導電膜から形成される配線14が形成される。これにより、ソース電極11と配線14とが電気的に接続する。また、配線14は、ソース領域4a上に形成される。ここでは、配線14は、表示信号を伝送する配線、すなわちソース配線111として機能する。つまり、図1に示されるソース配線111は、ソース領域4a上に形成される。配線14は、複数の画素105に配置されるそれぞれのTFT108に表示信号を伝送する。換言すると、配線14は、複数の画素105に亘って形成される。また、配線14の端部は、表示信号駆動回路104に接続されている。
【0027】
また、配線14は、ソース電極11のパターンからはみ出さないように形成される。換言すると、配線14は、ソース電極11のパターンに内包されるように形成される。ここでは、配線14及びソース電極11を略同じ形状とする。このように、配線14の形成領域では、透明導電膜及び上部導電膜の積層構造となっている。配線14を形成する上部導電膜としては、例えば配線抵抗を低減させるために低抵抗の導電材料が用いられる。具体的には、上部導電膜は、Cr、Mo、W、Ta、Alやこれらを主成分とする合金膜もしくはこれら積層膜からなる。これにより、ゲート電極7に電圧が印加され、TFT108がONのときに、ソース配線111、すなわち配線14からの電流がドレイン電極12を通じて画素電極13に流れる。そして、画素電極13によって、液晶や自発光材料等の電気光学材料に電圧が印加されることにより表示が行われる。本実施の形態にかかるTFT基板100のTFT108及び画素電極13は、以上のような構成である。
【0028】
このような構成のTFT基板100を用いることにより、従来と比較して、写真製版工程を少なくすることができる。そして、作業効率性、歩留等が改善され、生産性が向上する。さらに、生産コストを削減することができる。このように、本実施の形態によれば、生産性に優れたTFT基板100を作製することができる。すなわち、本実施の形態にかかるTFT基板100を用いることにより、生産性に優れた液晶表示装置等の半導体装置を作製することができる。
【0029】
次に、上記のTFT基板100の製造方法について図3及び図4を用いて説明する。図3及び図4は、TFT基板100の製造方法を示す断面図である。上記と同様、TFT108の一例として、相補型MOS(C/MOS)構造で、トップゲート型のLTPS−TFTについて説明する。
【0030】
まず、ガラス基板や石英基板などの光透過性を有する絶縁性基板1上に、CVD法を用いて、光透過性の無機絶縁膜であるSiN膜2、SiO膜3を順次成膜する。これらは、後の工程で形成する半導体膜4の下地膜として形成される。本実施の形態では、絶縁性基板1としてのガラス基板上に、SiN膜2を40〜60nmの膜厚に成膜する。そして、SiN膜2上にSiO膜3を180〜220nmの膜厚に成膜する。このように、下地膜をSiN膜2、SiO膜3の2層構造とする。下地膜は、ガラス基板からのNaなどの可動イオンが半導体膜へ拡散することを防止する目的で設けたものであり、上記膜構成、膜厚に限るものではない。
【0031】
次に、下地膜上に非晶質半導体膜をCVD法により成膜する。具体的には、SiO膜3上に非晶質半導体膜をCVD法により成膜する。本実施の形態では、非晶質半導体膜として非晶質シリコン(a−Si)膜を用い、30〜100nm、好ましくは60〜80nmの膜厚に成膜する。これら下地膜及び非晶質半導体膜は、同一装置あるいは同一チャンバ内にて連続的に成膜することが好ましい。これにより、大気雰囲気中に存在するボロンなどの汚染物質が各膜の界面に取り込まれることを抑制することができる。なお、非晶質半導体膜の成膜後に、高温中でアニールを行うことが好ましい。これは、CVD法によって成膜された非晶質半導体膜の膜中に、多量に含有された水素を低減するために行う。本実施の形態では、窒素雰囲気の低真空状態で保持したチャンバ内を480℃程度に加熱し、非晶質半導体膜を成膜した基板を45分間保持する。このような処理を行っておくことにより、非晶質半導体を結晶化する際に、温度が上昇しても水素の急激な脱離が起こらない。そして、非晶質半導体膜表面の荒れを抑制することが可能となる。
【0032】
次に、非晶質半導体膜表面に形成された自然酸化膜をフッ酸などでエッチング除去する。そして、非晶質半導体膜に対して窒素などのガスを吹きつけながら、非晶質半導体膜上からレーザー光を照射する。レーザー光は、所定の光学系を通して線状のビーム形状に変換された後、非晶質半導体膜に照射される。これにより、非晶質半導体膜が多結晶半導体膜に変換される。すなわち、下地膜上に半導体膜4としての多結晶半導体膜が成膜された状態となる。本実施の形態では、非晶質半導体膜としてa−Si膜を用いているので、半導体膜4として多結晶シリコン(p−Si)膜に変換される。本実施の形態では、レーザー光としてYAGレーザーの第2高調波(発振波長:532nm)を用いたが、YAGレーザーの第2高調波の代わりにエキシマレーザーを用いることもできる。ここで、窒素を吹きつけながら非晶質半導体膜にレーザー光を照射することにより、結晶粒界部分に発生する隆起高さを抑制することができる。これにより、多結晶化後の表面凹凸が低減し、半導体膜4の表面粗さが十分に小さくなる。本実施の形態では、半導体膜4の結晶表面の平均粗さを3nm以下とする。
【0033】
次に、半導体膜4上に、ソースドレイン領域とソースドレイン電極との接続部を形成するために、下部導電膜5を成膜する。下部導電膜5は、Cr、Mo、W、Taやこれらを主成分とする合金膜であればよい。本実施の形態では、Mo合金膜をおよそ20nmの膜厚でDCマグネトロンを用いたスパッタリング法により成膜する。ここで、下部導電膜5の膜厚を20nmとしたが、25nm以下であればよい。下部導電膜5の膜厚を25nm以下とすることにより、この後に行う不純物イオンドーピングの際に、下部導電膜5の下層の半導体膜4にまで不純物イオンが到達する。このため、下部導電膜5と半導体膜4との良好なオーミック性コンタクトが得ることができるという効果を奏する。以上の工程により、図3(a)に示す構成となる。
【0034】
そして、成膜された下部導電膜5上に感光性樹脂であるフォトレジストをスピンコートによって塗布し、塗布したフォトレジストをマスク上から露光・感光し、現像する公知の写真製版工程を行う。これにより、所望の形状にフォトレジストがパターニングされる。このフォトレジストパターン上から下部導電膜5をエッチングして、下部導電膜5を所望の形状にパターン形成する。これにより、後の工程で形成される半導体膜4のソースドレイン領域上に、下部導電膜5がそれぞれ形成される。ここでは、硝酸と燐酸を混合した薬液を用いたウェットエッチング法によりエッチングを行う。以上の工程により、図3(b)に示す構成となる。
【0035】
次に、下部導電膜5下層の半導体膜4を上記の写真製版工程及びエッチングによって島状にパターン形成する。半導体膜4のエッチングには、CFとOを混合したガスを用いたドライエッチング法を用いることができる。また、エッチングガスにOを混合しているため、写真製版工程により形成したフォトレジストのパターン端部を後退させながらエッチングすることが可能となる。従って、半導体膜4は端部にテーパー形状を有する構造とすることができる。以上の工程により、図3(c)に示す構成となる。
【0036】
また、上記の半導体膜4及びその上に接する下部導電膜5のパターニングには、公知の多階調マスクを用いることができる。これにより、半導体膜4及び下部導電膜5を1回の写真製版工程で形成することが可能である。すなわち、上記のように、フォトレジストを2回形成する必要がなく、1回形成すればよい。多階調マスクには、グレイトーンマスクとハーフトーンマスクがある。このような多階調マスク上からフォトレジストを露光することにより、例えば露光領域、中間露光領域、未露光領域の3段階の露光レベルを実現でき、ハーフ露光が可能となる。そして、多階調マスクを用いることにより、膜厚差を有するフォトレジストが形成できる。
【0037】
ここで、多階調マスクを用い、1回の写真製版工程によって半導体膜4及び下部導電膜5をパターニングする方法を図5を用いて説明する。図5は、半導体膜4及び下部導電膜5をパターニングする他の方法を示す断面図である。図5(a)は、下部導電膜5を成膜した後の断面図であり、図3(a)と同一である。
【0038】
まず、下部導電膜5上にフォトレジスト20をスピンコートによって塗布し、塗布したフォトレジスト20を多階調マスク上から露光・感光し、現像する写真製版工程を行う。そして、半導体膜4の形成領域内で下部導電膜5の形成領域以外の領域(領域Aとする)にフォトレジスト20を薄く形成し、下部導電膜5の形成領域(領域Bとする)にフォトレジスト20を厚く形成する。換言すると、半導体膜4のチャネル領域4cに対応する領域では、フォトレジストを薄く形成し、半導体膜4のソースドレイン領域に対応する領域の一部では、フォトレジストを厚く形成する。また、領域A及び領域B以外の領域(領域Cとする)には、フォトレジストを形成しない。すなわち、半導体膜4の形成領域以外の領域には、フォトレジストを形成しない。これにより、下部導電膜5上に膜厚差を有するフォトレジストが形成される。
【0039】
ここでのフォトレジストは、半導体膜4のチャネル領域4cに対応する領域、及びソースドレイン領域とソースドレイン電極とが接続する領域に対応する領域のフォトレジストを含む。また、上記の半導体膜4や下部導電膜5の形成領域とは、これらが図5(a)に示されるように成膜された領域ではなく、後の工程でパターン形成される領域のことである。なお、領域A〜Cは、最終的に半導体膜4や下部導電膜5が形成される領域という意味であり、加工に伴うパターンの縮小などが生じる場合は、それらを見込んだ領域が必要なことは言うまでもない。フォトレジスト20も同様である。
【0040】
ここでは、フォトレジスト20としてポジ型レジストを用いる。ポジ型レジストは、光可溶化(分解)するため、露光量が多いほど、現像後に残存するポジ型レジストの膜厚が薄くなる。従って、領域Aへの露光量(照射光量)が、領域Bへの露光量より大きく、領域Cへの露光より小さくなるように、多階調マスクによって露光する。このように、露光部位ごとに露光量が調整されるように、透過光量が少なくとも2段階で異なる領域を有する多階調マスクを用いて露光を行う。このような多階調マスクを用いることにより、露光回数を1回で行うことが可能である。
【0041】
本実施の形態では、上記のように、露光回数を1回として、ポジ型レジストをパターン形成したがこれに限らない。例えば、領域Aに弱い光量で照射を行う露光工程と、領域Cに強い光量で照射を行う露光工程とに分けてもよい。この場合、露光工程が2回必要となるが、透過光量が少なくとも2段階で異なる多階調マスクは不要であり、通常のフォトマスクを用いることが可能となる。また、本実施の形態では、ポジ型レジストを用いたが、ネガ型レジストを用いてもよい。この場合、露光時の露光量の大小関係は逆になる。以上の工程により、図5(b)に示す構成となる。
【0042】
そして、図5(b)に示すフォトレジスト20をマスクとして、下部導電膜5をエッチングした後に、半導体膜4をエッチングして下部導電膜5及び半導体膜4を島状にパターニングする。これにより、領域Cの下部導電膜5及び半導体膜4が除去され、領域A及び領域Bに下部導電膜5及び半導体膜4が形成される。本実施の形態では、下部導電膜5としてMo合金膜を用いたので、CFとOとの混合ガスを用いたドライエッチングを行う。また、エッチングガスにOを混合しているため、写真製版工程により形成したフォトレジスト20のパターン端部を後退させながらエッチングすることが可能となる。従って、半導体膜4及び下部導電膜5は端部にテーパー形状を有する構造とすることができる。以上の工程により、図5(c)に示す構成となる。
【0043】
次に、フォトレジスト膜厚を予め厚く形成した部分、すなわち領域Bのみにフォトレジスト20が残存するまでフォトレジスト20の膜厚を減じる。具体的には、アッシング処理によって、フォトレジスト膜厚を予め薄く形成した部分、すなわち領域Aのフォトレジスト20を除去し、下部導電膜5を露出させる。そして、領域Bのフォトレジスト20のみを残存させる。本実施の形態では、Oガスを用いたアッシング処理により、フォトレジスト20の膜厚を一様に減じさせる。なお、アッシング時間は予め決めておいてもよいし、下部導電膜5がアッシング時のプラズマに曝されたときに生じる発光現象をモニターして決めてもよい。以上の工程により、図5(d)に示す構成となる。なお、ここでは下部導電膜5と半導体膜4とをエッチングした後に、フォトレジスト20の膜厚を減じたが、この2つの工程を同時に行ってもよい。すなわち、エッチングされる膜の膜厚やエッチング速度の比率を考慮したエッチングにより、図5(b)で示す状態からいきなり図5(d)で示す状態に移行してもよい。
【0044】
そして、残したフォトレジスト20をマスクとして、フォトレジスト20上から再度下部導電膜5をエッチングする。これにより、領域Aの不要な下部導電膜5が除去され、領域Bのみに下部導電膜5が形成される。ここで、下部導電膜5の下層の半導体膜4をエッチングしないような選択性を有したエッチングが望ましいが、下部導電膜5と半導体膜4との界面に生じる反応層もエッチング除去してもよい。本実施の形態においては、下部導電膜5としてMo合金膜を使用したので燐酸と硝酸を混合した薬液を用いたウェットエッチングにより下部導電膜5をエッチング除去する。以上の工程により、図5(e)に示す構成となる。
【0045】
そして、残ったフォトレジスト20を除去して、図3(c)に示すような構成となる。このように、1回の写真製版工程により図3(c)に示すような構成、すなわち下部導電膜5のパターンが半導体膜4のパターン内において所望の位置に配置される構成を得ることができる。換言すれば、下部導電膜5の形成領域は半導体膜4の形成領域の内部である。また、このような構成をとることにより、製造方法においても、下部導電膜5と半導体膜4とを別々にパターニングするよりも写真製版工程を1つ減少させることができ、生産性を向上させることができる。
【0046】
そして、図3(c)のように、半導体膜4及び下部導電膜5をパターニングした後、ゲート絶縁膜6を基板表面全体を覆うように成膜する。すなわち、半導体膜4及び下部導電膜5上にゲート絶縁膜6を成膜する。ゲート絶縁膜6としては、SiN膜、SiO膜などが用いられる。本実施の形態では、ゲート絶縁膜6としてSiO膜を用い、CVD法にて80〜100nmの膜厚に成膜する。また、半導体膜4の表面粗さを3nm以下とし、ゲート電極7と交差するパターンの端部をテーパー形状としている。このため、ゲート絶縁膜6の被覆性が高くなり、初期故障を大幅に低減することが可能となる。
【0047】
次に、ゲート絶縁膜6上にゲート電極7及びゲート配線110を形成するための導電膜を成膜する。導電膜としては、Cr、Mo、W、Taやこれらを主成分とする合金膜を用いることができる。本実施の形態では、DCマグネトロンを用いたスパッタリング法により、Moを主成分とする合金膜を200nm〜400nmの膜厚に成膜する。次に、成膜した導電膜を公知の写真製版工程及びエッチングによって、所望の形状にパターニングし、ゲート電極7及びゲート配線110を形成する。本実施の形態では、導電膜のエッチングは、燐酸と硝酸を混合した薬液を用いたウェットエッチング法により行う。
【0048】
そして、形成されたゲート電極7をマスクとして、ゲート絶縁膜6を介して半導体膜4に不純物元素を導入する。ここで導入する不純物元素としてリン(P)、ボロン(B)を用いることができる。Pを導入すればn型のTFT108を形成することができ、Bを導入すればp型のTFT108を形成することができる。また、ゲート電極7の加工をn型TFT用ゲート電極とp型TFT用ゲート電極の2回に分けて行えば、n型とp型のTFTを同一基板上に作り分けることができる。すなわち、C/MOS構造を形成することができる。ここで、PやBの不純物の導入にはイオンドーピング法を用いて行う。このイオンドーピング法においては、絶縁性基板1の表面と垂直方向からイオンを照射する公知の方法を用いてもよいが、斜め方向からイオンを照射してもよい。
【0049】
このように、不純物が導入された半導体膜4の領域がソース領域4a又はドレイン領域4bとなり、ソースドレイン領域に挟まれる領域がチャネル領域4cとなる。すなわち、不純物が導入されたソースドレイン領域が形成されると同時に、ゲート電極7によりマスクされ不純物が導入されないチャネル領域4cも形成される。また、ソースドレイン領域上には、下部導電膜5が形成されているが、上記のように下部導電膜5の膜厚は25nm以下と薄い。従って、下部導電膜5下層の半導体膜4にも不純物が導入され、下部導電膜5と半導体膜4との間にオーミック性コンタクトを得ることができる。以上の工程により、図3(d)に示す構成となる。
【0050】
次に、層間絶縁膜8を基板表面全体を覆うように成膜する。すなわち、ゲート電極7上に層間絶縁膜8を成膜する。本実施の形態では、層間絶縁膜8をSiO膜及びSiN膜の積層構造とする。まず、SiO膜をCVD法により500〜700nmの膜厚に成膜する。さらに、SiO膜上に、SiN膜をCVD法により300nmの膜厚に成膜する。そして、窒素雰囲気中で450℃に加熱したアニール炉に1時間程度保持する。これは、半導体膜4のソースドレイン領域に導入した不純物元素を活性化させるために行う。
【0051】
そして、成膜したゲート絶縁膜6及び層間絶縁膜8を公知の写真製版工程、エッチングによって所望の形状にパターニングする。ここでは、半導体膜4のソース領域4a、ドレイン領域4b上の下部導電膜5に到達するコンタクトホール9、10を形成する。つまり、コンタクトホール9、10では、ゲート絶縁膜6及び層間絶縁膜8が除去され、半導体膜4のソースドレイン領域上に積層した下部導電膜5が露出する。本実施の形態では、コンタクトホール9、10のエッチングは、CHF、OとArの混合したガスを用いたドライエッチング法により行う。以上の工程により、図3(e)に示す構成となる。
【0052】
そして、層間絶縁膜8上に、ソースドレイン電極と画素電極13とを形成するための透明導電膜21、及び配線14を形成するための上部導電膜22を順次成膜する。これにより、コンタクトホール9、10では、透明導電膜21が埋設され、透明導電膜21と下部導電膜5とが接続する。透明導電膜21としては、ITO、IZO、ITZO、InO、ITSO、SnOを用いることができる。本実施の形態では、透明導電膜21としてIZO膜を用い、DCマグネトロンを用いたスパッタリング法により約100nmの膜厚に成膜する。また、上部導電膜22としては、Cr、Mo、W、Ta、Alやこれらを主成分とする合金膜もしくはこれら積層膜を用いることができる。本実施の形態では、上部導電膜22をMo膜及びAl膜の積層構造とする。まず、Mo膜をDCマグネトロンを用いたスパッタリング法により100nmの膜厚に成膜する。さらに、Mo膜上に、Al膜をDCマグネトロンを用いたスパッタリング法により300nmの膜厚に成膜する。以上の工程により、図4(f)に示す構成となる。
【0053】
そして、成膜した上部導電膜22を公知の写真製版工程、エッチングによって所望の形状にパターニングし、配線14を形成する。本実施の形態では、上部導電膜22のエッチングは硝酸と燐酸を混合した薬液を用いたウェットエッチング法により行う。また、配線14は、ソース配線111の機能を有する領域に形成する。すなわち、配線14は、ソース配線111として機能する。以上の工程により、図4(g)に示す構成となる。
【0054】
次に、透明導電膜21を公知の写真製版工程、エッチングによって所望の形状にパターニングする。これにより、ソース電極11、ドレイン電極12、及びドレイン電極12から延在する画素電極13が形成される。本実施の形態では、透明導電膜21のエッチングはシュウ酸を主成分とする薬液を用いたウェットエッチング法により行う。ソース電極11は、コンタクトホール9によってソース領域4a上の下部導電膜5に接続される。ドレイン電極12は、コンタクトホール10によってドレイン領域4b上の下部導電膜5に接続される。このように、ソースドレイン領域と透明導電膜21、詳細には透明導電性酸化膜がコンタクトする部分には下部導電膜5が形成されている。このため、コンタクトホール9、10を介して、透明導電性酸化膜を接続した場合でも、半導体膜4が酸化されることはない。これにより、良好なコンタクト抵抗を得ることができるという効果を奏する。以上の工程により、図4(h)に示す構成となる。このようにして、TFT基板100が製造される。
【0055】
また、上記の透明導電膜21及びその上に接する上部導電膜22のパターニングには、公知の多階調マスクを用いることができる。これにより、透明導電膜21及び上部導電膜22を1回の写真製版工程でパターニングすることが可能である。ここで、多階調マスクを用い、1回の写真製版工程によって透明導電膜21及び上部導電膜22をパターニングする工程を図6及び図7を用いて説明する。図6及び図7は、透明導電膜21及び上部導電膜22をパターニングする他の方法を示す断面図である。図6(a)は、上部導電膜22を成膜した後の断面図であり、図4(f)と同一である。
【0056】
まず、上部導電膜22上にフォトレジスト20をスピンコートによって塗布し、塗布したフォトレジスト20を多階調マスク上から露光・感光し、現像する写真製版工程を行う。そして、透明導電膜21の形成領域内で上部導電膜22の形成領域以外の領域(領域Dとする)にフォトレジスト20を薄く形成し、上部導電膜22の形成領域(領域Eとする)にフォトレジスト20を厚く形成する。また、領域D及び領域E以外の領域(領域Fとする)には、フォトレジストを形成しない。すなわち、透明導電膜21の形成領域以外の領域には、フォトレジストを形成しない。これにより、上部導電膜22上に膜厚差を有するフォトレジストが形成される。
【0057】
ここでのフォトレジストは、ドレイン電極12と画素電極13とに対応する領域、及び配線14に対応する領域のフォトレジストを含む。また、上記の透明導電膜21や上部導電膜22の形成領域とは、これらが図6(a)に示されるように成膜された領域ではなく、後の工程でパターン形成される領域のことである。すなわち、透明導電膜21の形成領域とは、ソース電極11、ドレイン電極12、及び画素電極13が形成される領域のことである。そして、上部導電膜22の形成領域とは、配線14が形成される領域のことである。なお、領域D〜Fは、最終的に透明導電膜21や上部導電膜22が形成される領域という意味であり、加工に伴うパターンの縮小などが生じる場合は、それらを見込んだ領域が必要なことは言うまでもない。フォトレジスト20も同様である。
【0058】
ここでは、フォトレジストとしてポジ型レジストを用いる。従って、領域Dへの露光量(照射光量)が、領域Eへの露光量より大きく、領域Fへの露光より小さくなるように、多階調マスクによって露光する。このように、露光部位ごとに露光量が調整されるように、透過光量が少なくとも2段階で異なる領域を有する多階調マスクを用いて露光を行う。このような多階調マスクを用いることにより、露光回数を1回で行うことが可能である。
【0059】
本実施の形態では、上記のように、露光回数を1回として、ポジ型レジストを形成したがこれに限らない。例えば、領域Dに弱い光量で照射を行う露光工程と、領域Fに強い光量で照射を行う露光工程とに分けてもよい。また、本実施の形態では、ポジ型レジストを用いたが、ネガ型レジストを用いてもよい。以上の工程により、図6(b)に示す構成となる。
【0060】
そして、図6(b)に示すフォトレジスト20をマスクとして、上部導電膜22をエッチングした後に、透明導電膜21をエッチングして上部導電膜22及び透明導電膜21を所望の形状にパターニングする。これにより、領域Fの上部導電膜22及び透明導電膜21が除去され、領域D及び領域Eに上部導電膜22及び透明導電膜21が形成される。具体的には、領域D又は領域Eに、ソース電極11、ドレイン電極12、画素電極13、及び配線14が形成される。以上の工程により、図6(c)に示す構成となる。
【0061】
次に、フォトレジスト膜厚を予め厚く形成した部分、すなわち領域Eのみにフォトレジスト20が残存するまでフォトレジスト20の膜厚を減じる。具体的には、アッシング処理によって、フォトレジスト膜厚を予め薄く形成した部分、すなわち領域Dのフォトレジスト20を除去し、上部導電膜22を露出させる。そして、領域Eのフォトレジスト20のみを残存させる。本実施の形態では、Oガスを用いたアッシング処理により、フォトレジスト20の膜厚を一様に減じさせる。なお、アッシング時間は予め決めておいてもよいし、上部導電膜22がアッシング時のプラズマに曝されたときに生じる発光現象をモニターして決めてもよい。以上の工程により、図7(d)に示す構成となる。
【0062】
そして、残したフォトレジスト20をマスクとして、フォトレジスト20上から再度上部導電膜22をエッチングする。これにより、領域Dの不要な上部導電膜22が除去され、領域Eのみに上部導電膜22、すなわち配線14が形成された状態となる。本実施の形態においては、上部導電膜22としてAlとMoとの積層膜を使用したので燐酸と硝酸を混合した薬液を用いたウェットエッチングにより上部導電膜22をエッチング除去する。以上の工程により、図7(e)に示す構成となる。
【0063】
そして、残ったフォトレジスト20を除去して、図4(h)に示すような構成となる。このように、1回の写真製版工程により図4(h)に示すような構造、すなわち上部導電膜22のパターンが透明導電膜21のパターン内において所望の位置に配置される構造を得ることができる。換言すれば、上部導電膜22の形成領域は透明導電膜21の形成領域の内部である。また、このような構造をとることにより、製造方法においても、上部導電膜22と透明導電膜21とを別々にパターニングするよりも写真製版工程を1つ減少させることができ、生産性を向上させることができる。
【0064】
これら一連の工程を経ることで、TFT基板100を製造することができる。そして、以上のようにTFT基板100を製造することにより、写真製版工程を削減することが可能となる。従来では、ドレイン電極に通じるコンタクトホールのパターニング工程(写真製版工程)、及びドレイン電極と接続される画素電極のパターニング工程が必要であった。一方、本実施の形態では、配線14のパターニング工程が必要となるが、上記の2工程が不要となる。これは、ソースドレイン電極を画素電極13と同一の透明導電膜21を用いて形成し、ドレイン電極12と画素電極13とを一体的なパターンとして形成したためである。また、ソース電極11と配線14とをコンタクトホールを形成して接続するのではなく、これらを積層構造として接続することにより、パターニング工程数を少なくすることができる。これにより、従来のLTPS−TFTの製造工程では、8工程のパターニング工程数が必要であったが、本実施の形態によればパターニング工程数を7工程に削減することができる。
【0065】
また、本実施の形態では、半導体膜4と下部導電膜5、及び透明導電膜21と上部導電膜22が積層する構成となっている。このため、多階調マスクを用い、これらをパターニングすることにより、パターニング工程数をさらに5工程に削減することができる。このように、本実施の形態によれば、生産性が向上するという効果を奏する。さらに、生産コストを削減することができる。そして、高い製品競争力を有するTFT基板100を得ることができる。
【0066】
なお、本実施の形態では、TFTの一例として、C/MOS構造のLTPS−TFTについて説明したが、他のTFT、例えばC/MOS構造ではない逆スタガ型のa−Si TFTでも適用可能である。従来のa−Si TFTの場合、パターニング工程数が5工程であったが、本発明にかかる半導体装置のa−Si TFTの場合、4工程に削減することができる。さらに、上記と同様、多階調マスクを用いた場合、パターニング工程数を3工程に削減することができる。
【0067】
実施の形態2.
実施の形態1では、ソース電極11及びソース配線111に相当する領域は、透明導電膜21と上部導電膜22との積層構造としたが、本実施の形態では、上部導電膜22上にさらに絶縁膜を形成する。なお、それ以外の構成、製造方法等は実施の形態1と同様なので、説明を省略する。ここで、本実施の形態にかかるTFT基板100の要部の構成について図8を用いて説明する。図8は、TFT基板100の要部の構成を示す断面図である。
【0068】
図8に示されるように、上部導電膜から形成される配線14上に、絶縁膜30が形成される。すなわち、ソース電極11、配線14、絶縁膜30が順次形成されている。また、絶縁膜30は、ソース電極11及び配線14のパターンからはみ出さないように形成される。実施の形態1と同様、配線14は、例えばソース配線111として機能する。このため、配線14上に絶縁膜30を形成することにより、配線14からの電位が液晶層に及ぼす影響を抑制することができる。すなわち、ソース配線電位による液晶配向の変化を抑制することができる。このため、表示特性に優れた表示装置を得ることができる。
【0069】
次に、本実施の形態にかかるTFT基板100の製造方法について説明する。まず、実施の形態1と同様、層間絶縁膜8を覆うように、透明導電膜21、及び上部導電膜22を順次成膜する。これにより、図4(f)に示される構成となる。本実施の形態では、上部導電膜22上に、さらに絶縁膜30を成膜する。すなわち、層間絶縁膜8上では、透明導電膜21、上部導電膜22、絶縁膜30の3層構造となっている。絶縁膜30としては、SiN膜、又はSiO膜等のSiO膜を用いることができる。本実施の形態では、絶縁膜30としてSiN膜を用い、CVD法にて約100nmの膜厚に成膜する。
【0070】
次に、成膜された絶縁膜30上に、フォトレジストを所望の形状にパターニングする。その後、フォトレジスト上から絶縁膜30及び上部導電膜22を順次エッチングする。本実施の形態では、絶縁膜30のエッチングは、CFとOとを混合したドライエッチング法により行う。また、実施の形態1と同様、上部導電膜22は、AlとMoとの積層膜とする。上部導電膜22のエッチングは、硝酸と燐酸を混合した薬液を用いたウェットエッチング法により行う。そして、透明導電膜21を公知の写真製版工程、エッチングによって所望の形状にパターニングする。これにより、ソース電極11、ドレイン電極12、画素電極13、配線14、絶縁膜30が形成される。ここでは、絶縁膜30及び上部導電膜22をパターニングした後、透明導電膜21をパターニングしたが、実施の形態1と同様、1回の写真製版工程によって形成してもよい。以上のように、TFT基板100が製造される。
【0071】
本実施の形態のように、上記のTFT基板100においても、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。また、本実施の形態では、実施の形態1におけるTFT基板100に絶縁膜30を追加した構成としたが、パターニング工程数は、実施の形態1と同様となる。これは、絶縁膜30及び上部導電膜22を積層させ、これらを略同一形状にパターニングしたためである。
【0072】
実施の形態3.
実施の形態1では、ソース電極11及びソース配線111に相当する領域は透明導電膜21と上部導電膜22との積層構造とし、ドレイン電極12及び画素電極13に相当する領域では透明導電膜21のみとした。これに対して、本実施の形態では、ドレイン電極12及び画素電極13に相当する領域も、透明導電膜21と上部導電膜22との積層構造とする。すなわち、ソース電極11の上のみでなく、ドレイン電極12や画素電極13の上にも上部導電膜22からなる上部電極31を形成する。なお、それ以外の構成、製造方法等は実施の形態1と同様なので、説明を省略する。ここで、本実施の形態にかかるTFT基板100の要部の構成について図9を用いて説明する。図9は、TFT基板100の要部の構成を示す断面図である。
【0073】
図9に示されるように、ドレイン電極12及び画素電極13の上の一部に上部電極31を形成する。また、上部電極31は、ドレイン電極12及び画素電極13のパターンからはみ出さないように形成される。上部電極31は、ドレイン電極12及び画素電極13の上のいずれか一方のみに形成してもよいし、ドレイン電極12及び画素電極13の上の略全面に形成してもよい。本実施の形態の場合、画素電極13上の上部電極31が反射板として機能する。すなわち、画素電極13及びその上に形成された上部電極31が画素電極として機能する。このような構成を液晶表示装置に用いることにより、所謂半透過型や反射型の液晶表示装置となる。従って、外光が強い場合においても視認性が得られ、表示特性に優れた半導体装置を得ることができる。
【0074】
次に、本実施の形態にかかるTFT基板100の製造方法について説明する。まず、実施の形態1と同様、層間絶縁膜8を覆うように、透明導電膜21、及び上部導電膜22を順次成膜する。これにより、図4(f)に示される構成となる。次に、成膜された上部導電膜22上に、フォトレジストを所望の形状にパターニングする。本実施の形態では、ソース電極11上のみならず、ドレイン電極12や画素電極13の上にもフォトレジストをパターニングする。そして、フォトレジスト上から上部導電膜22をエッチングする。これにより、上部導電膜22がパターニングされ、配線14及び上部電極31が形成される。そして、透明導電膜21を公知の写真製版工程、エッチングによって所望の形状にパターニングする。これにより、ソース電極11、ドレイン電極12、画素電極13、配線14、及び上部電極31が形成される。ここでは、上部導電膜22をパターニングした後、透明導電膜21をパターニングしたが、実施の形態1と同様、1回の写真製版工程によって形成してもよい。以上のように、TFT基板100が製造される。
【0075】
本実施の形態のように、上記のTFT基板100においても、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。また、本実施の形態では、実施の形態1におけるTFT基板100に上部電極31を追加した構成としたが、上部導電膜22のパターン形状を変更しただけなので、パターニング工程数は、実施の形態1と同様となる。
【0076】
なお、実施の形態2と本実施の形態とを組み合わせてもよい。すなわち、絶縁膜30及び上部電極31を両方形成してもよい。この場合でも、パターニング工程数は、実施の形態1と同様となり、生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施の形態にかかるTFT基板の構成を示す正面図である。
【図2】実施の形態1にかかるTFT基板の要部の構成を示す断面図である。
【図3】実施の形態1にかかるTFT基板の製造方法を示す断面図である。
【図4】実施の形態1にかかるTFT基板の製造方法を示す断面図である。
【図5】実施の形態1にかかる半導体膜及び下部導電膜をパターニングする他の方法を示す断面図である。
【図6】実施の形態1にかかる透明導電膜及び上部導電膜をパターニングする他の方法を示す断面図である。
【図7】実施の形態1にかかる透明導電膜及び上部導電膜をパターニングする他の方法を示す断面図である。
【図8】実施の形態2にかかるTFT基板の要部の構成を示す断面図である。
【図9】実施の形態3にかかるTFT基板の要部の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 絶縁性基板、2 SiN膜、3 SiO膜、4 半導体膜、4a ソース領域、
4b ドレイン領域、4c チャネル領域、5 下部導電膜、6 ゲート絶縁膜、
7 ゲート電極、8 層間絶縁膜、9 コンタクトホール、10 コンタクトホール、
11 ソース電極、12 ドレイン電極、13 画素電極、14 配線、
20 フォトレジスト、21 透明導電膜、22 上部導電膜、
30 絶縁膜、31 上部電極、
100 TFT基板、101 表示領域、102 額縁領域、
103 走査信号駆動回路、104 表示信号駆動回路、105 画素、
106 外部配線、107 外部配線、108 TFT、109 保持容量、
110 ゲート配線、111 ソース配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソース領域及びドレイン領域を有する半導体膜と、
前記ソース領域に電気的に接続され、透明導電膜によって前記ソース領域上に形成されるソース電極と、
前記ドレイン領域に電気的に接続され、前記透明導電膜によって前記ドレイン領域上に形成されるドレイン電極と、
前記ドレイン電極から延在し、前記半導体膜からはみ出すように形成される延在電極と、
前記ソース電極に電気的に接続され、前記ソース電極上において、前記ソース電極からはみ出さないように、上部導電膜によって形成された配線とを有するTFT基板。
【請求項2】
前記配線上に形成される絶縁膜をさらに有する請求項1に記載のTFT基板。
【請求項3】
前記絶縁膜は、SiN膜又はSiO膜からなる請求項2に記載のTFT基板。
【請求項4】
前記ドレイン電極又は/及び前記延在電極上に、前記上部導電膜によって形成された上部電極をさらに有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のTFT基板。
【請求項5】
前記延在電極、又は前記延在電極と前記上部電極との積層体が画素電極として機能する請求項1乃至4のいずれか1項に記載のTFT基板。
【請求項6】
前記配線が表示信号を伝送する配線として機能する請求項1乃至5のいずれか1項に記載のTFT基板。
【請求項7】
前記透明導電膜は、ITO、IZO、ITZO、InO、ITSO、又はSnOからなる請求項1乃至6のいずれか1項に記載のTFT基板。
【請求項8】
前記上部導電膜は、Cr、Mo、W、Ta、Alやこれらを主成分とする合金膜もしくはこれら積層膜からなる請求項1乃至7のいずれか1項に記載のTFT基板。
【請求項9】
ソース領域及びドレイン領域を有する半導体膜を形成する工程と、
前記半導体膜上に透明導電膜を成膜する工程と、
前記透明導電膜上に上部導電膜を成膜する工程と、
前記上部導電膜をパターニングすることにより、前記透明導電膜上に配線を形成する工程と、
前記透明導電膜をパターニングすることにより、前記ソース領域に電気的に接続するソース電極、前記ドレイン領域に電気的に接続するドレイン電極、及び前記ドレイン電極から延在する延在電極を形成する工程とを有するTFT基板の製造方法。
【請求項10】
前記上部導電膜を成膜する工程後に、1回の写真製版工程によって膜厚差を有するフォトレジストを前記上部導電膜上に形成する工程を有し、
前記配線を形成する工程と、前記ソース電極、前記ドレイン電極、及び前記延在電極を形成する工程では、前記フォトレジスト上からエッチングすることにより、前記上部導電膜及び前記透明導電膜をパターニングし、
前記ソース電極、前記ドレイン電極、及び前記延在電極を形成する工程後に、膜厚の薄い部分の前記フォトレジストを除去する工程と、
膜厚の薄い部分が除去された前記フォトレジストを介して、前記上部導電膜をエッチング除去する工程を有する請求項9に記載のTFT基板の製造方法。
【請求項11】
前記半導体膜を形成する工程前に、前記半導体膜を成膜する工程と、
前記半導体膜上に下部導電膜を成膜する工程と、
1回の写真製版工程によって膜厚差を有するフォトレジストを前記下部導電膜上に形成する工程と、
前記フォトレジストを介してエッチングすることにより、前記下部導電膜及び前記半導体膜をパターニングする工程と、
膜厚の薄い部分の前記フォトレジストを除去する工程と、
膜厚の薄い部分が除去された前記フォトレジストを介して、前記下部導電膜をエッチング除去する工程とを有する請求項9又は10に記載のTFT基板の製造方法。
【請求項12】
前記下部導電膜はCr、Mo、W、Taやこれらを主成分とする合金膜からなる請求項11に記載のTFT基板の製造方法。
【請求項13】
前記下部導電膜の膜厚は、25nm以下である請求項11又は12に記載のTFT基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−54836(P2009−54836A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220901(P2007−220901)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】