説明

ハイブリッド電気自動車の制御装置

【課題】車両の大きさに対して限られたバッテリ容量であっても、回生発電による発電電力を有効に利用することができるハイブリッド電気自動車の制御装置を提供する。
【解決手段】バッテリ40の温度を検出するバッテリ温度検出手段53と、バッテリ温度検出手段53により、バッテリ40の温度が所定温度よりも高くなった場合、バッテリ40の充放電を制限するバッテリ充放電制限手段30と、ハイブリッド電気自動車のエネルギ回生による発電中に、バッテリ充放電制限手段30の作動によりバッテリ40の充放電が制限された場合には、電気ヒータ21の作動禁止条件が成立しない限り、電気ヒータ21に発電電力を供給する制御手段30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド電気自動車の制御装置に関し、特に、バッテリの充電と排気浄化装置の昇温とを制御する制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の走行駆動源として、内燃機関(以下、エンジンとも言う)と電動発電機(以下、電動モータ、又は単に、モータとも言う)とを搭載したハイブリッド電気自動車が実用化されている。このハイブリッド電気自動車では、電動モータの力行時の電力供給や、モータの回生制動時の発電電力による充電を行なうために、バッテリが装備される。特に、モータの回生電力によるバッテリの充電は、燃費向上に寄与する。
【0003】
このようなバッテリには充電容量に限度があり、過剰な充電はバッテリの負担を大きくし劣化を招くので、通常、バッテリが満充電(又は満充電よりも低い高充電)の状態になるとそれ以上の充電は行なわないように管理される。したがって、バッテリが満充電の状態になると、モータにおいて回生電力を発生させる回生制御も行なわないように管理され、回生制御を通じて本来利用することが可能な回生電力を無駄にしてしまうという技術的課題があった。
【0004】
これに対して、特許文献1には、EHC(Electric Heating Catalyst)等の電熱ヒータ付き触媒を備えるハイブリッド電気自動車において、バッテリが満充電の状態になると、モータにより発生した回生電力を触媒の電熱ヒータに供給して触媒を暖機して活性化することにより、排気を効率よく浄化するために回生電力を有効に利用する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−227038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の技術では、バッテリの充電容量に着目し、バッテリの保護を図りながら回生電力を有効に利用しているが、バッテリを保護するには、充電容量への着目だけでは十分でない。つまり、バッテリの劣化要因は、過充電だけではない。バッテリの過剰な温度上昇もバッテリの大きな劣化要因として挙げることができる。
ハイブリッド電気自動車の場合、通常、バッテリを収納するバッテリケース内を冷却して、バッテリの過剰な温度上昇が生じないようにしている。しかし、例えば商用車の場合には、このようなバッテリを冷却する装置を装備したハイブリッド電気自動車においても、バッテリの過剰な温度上昇が起こりうる。もちろん、冷却能力を高めれば、かかる課題は解消できるが、車両価格の高騰を招く等の理由から、かかる手段にも限度がある。
【0007】
したがって、このような観点からバッテリを保護する場合にも、回生電力を有効に利用できるようにしたい。特に、商用車の場合には、バッテリの過剰な温度上昇が起こり易く、かかる要望が強い。
すなわち、ハイブリッド電気自動車に搭載するバッテリは重量も重く容積も大きい。これに対して、商用車の場合、輸送可能な重量を確保することや積載スペースを確保することが重要であり、更には、車両コストの高騰を抑えることも重要である。また、現時点において、商用車にハイブリッド電気自動車を適用する第1の目的は燃費改善効果である。したがって、このような商用車に必要な条件とのバランスを考慮すると、搭載可能なバッテリの容量が限られ、車両の大きさに対して小容量のバッテリを搭載することになる。
【0008】
さらに、商用車の場合、乗用車に比べて車重が大きく、高出力の回生や力行を行なう場合も多い。つまり、限られた容量のバッテリで、高出力の回生や力行を行なう場合が多く発生する。また、バッテリは、充電時や放電時に発熱を伴うが、小容量(即ち、熱容量が小さい)のバッテリで大きな熱量の発熱を伴う高出力の回生や力行を行なうと、バッテリの温度上昇も著しくなる。
【0009】
バッテリは過剰に高温になると劣化が進むため、バッテリが過剰に高温にならないように、例えば、バッテリの温度が上限又は上限近傍に達したら回生制御を制限するなど充放電を制限して、バッテリの発熱を抑えて温度低下を促進するなど、バッテリの温度管理が必要である。
したがって、バッテリの温度管理上からも回生制御の制限が必要になり、回生制御を通じて本来利用することが可能な回生電力を無駄にしてしまう場合が発生し、課題となる。
【0010】
本発明は、かかる課題に鑑み創案されたものであり、車両の大きさに対して限られたバッテリ容量であっても、回生発電による発電電力を有効に利用することができるハイブリッド電気自動車の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明のハイブリッド電気自動車の制御装置は、走行用トルクを出力しうるエンジンと、上記エンジンから排出された排出ガスを浄化する排気浄化装置と、上記排気浄化装置に設けられた電気ヒータと、走行用トルクを出力しうると共に上記エンジンの駆動による発電及び制動時のエネルギ回生による発電が可能な電動発電機と、上記電動発電機による発電電力によって充電可能なバッテリとをそなえたハイブリッド電気自動車において、上記バッテリの温度を検出するバッテリ温度検出手段と、上記バッテリ温度検出手段により、上記バッテリの温度が予め設定された所定温度(充放電を制限しなければ上記バッテリの劣化が促進される温度)よりも高くなった場合、上記バッテリの充放電を制限するバッテリ充放電制限手段と、上記ハイブリッド電気自動車のエネルギ回生による発電中に、上記バッテリ充放電制限手段の作動により上記バッテリの充放電が制限された場合には、上記電気ヒータの作動禁止条件が成立しない限り、上記電気ヒータに上記回生による発電電力を供給する制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0012】
また、上記排気浄化装置は排気浄化触媒を備え、上記電気ヒータは上記排気浄化触媒を活性温度に昇温させる触媒昇温用ヒータであって、上記電気ヒータの作動禁止条件として、上記排気浄化触媒の温度が予め設定された第1上限温度以上であることが設定され、上記排気浄化触媒の温度を検出(又は推定)する触媒温度検出手段を更に備え、上記制御手段は、上記触媒温度検出手段により検出された上記排気浄化触媒の温度を上記第1上限温度と比較して上記電気ヒータの作動禁止条件が成立しないか否かを判定することが好ましい(請求項2)。
【0013】
また、上記排気浄化装置は、排気中の微粒物質を捕捉するフィルタを備え、上記電気ヒータは上記フィルタに堆積した排気微粒物質を燃焼させ上記フィルタを再生するフィルタ再生用ヒータであって、上記電気ヒータの作動禁止条件として、上記フィルタの温度が予め設定された第2上限温度以上であることが設定され、上記フィルタの温度を検出(又は推定)するフィルタ温度検出手段を更に備え、上記制御手段は、上記フィルタ温度検出手段により検出された上記フィルタの温度を上記第2上限温度と比較して上記電気ヒータの作動禁止条件が成立しないか否かを判定することが好ましい。
【0014】
また、上記排気浄化装置は、排気中の微粒物質を捕捉するフィルタを備え、上記電気ヒータは上記フィルタに堆積した排気微粒物質を燃焼させ上記フィルタを再生するフィルタ再生用ヒータであって、上記電気ヒータの作動禁止条件として、上記フィルタに排気微粒物質が堆積していないことが設定され、上記フィルタに堆積した排気微粒物質の堆積量を検出(又は推定)する排気微粒子検出手段を更に備え、上記制御手段は、上記排気微粒子検出手段により検出された排気微粒物質の堆積量から上記電気ヒータの作動禁止条件が成立しないか否かを判定することが好ましい。
【0015】
また、上記バッテリの充電量を検出するバッテリ充電量検出手段を更に備え、上記制御手段は、上記ハイブリッド電気自動車のエネルギ回生による発電中に、上記バッテリ充放電制限手段の作動により上記バッテリの充放電が制限されない場合には、上記バッテリ充電量検出手段により検出されるバッテリ充電量が予め設定された所定充電量(略満充電)未満ならば、発電電力を上記バッテリに充電し、上記バッテリ充電量検出手段により検出されるバッテリ充電量が上記所定充電量以上ならば、上記回生による発電電力を上記電気ヒータに供給することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、電動発電機の回生発電中にバッテリ温度が所定温度よりも高くなり、バッテリの充放電が制限された場合には、電動発電機の回生発電による電力(回生電力)を電気ヒータに供給して排気浄化装置を昇温させるので、回生電力を有効に利用することができる。このように電気ヒータに回生電力を供給することにより、バッテリの電力消費が抑えられ、車両の燃費の向上に寄与する。
【0017】
また、電気ヒータが排気浄化触媒を活性温度に昇温させる触媒昇温用ヒータであれば、回生電力を有効利用して排気浄化触媒を活性温度に昇温させることができる。
ただし、バッテリの充電が制限された場合であっても、排気浄化触媒の温度が第1上限温度以上であれば、触媒昇温用ヒータである電気ヒータに発電電力を供給しないため、排気浄化触媒の過昇温を防止し、排気浄化触媒の熱劣化や熱損傷を防止することができる。
【0018】
また、電気ヒータがフィルタに堆積した排気微粒物質を燃焼させフィルタを再生するフィルタ再生用ヒータであれば、回生電力を有効利用してフィルタに堆積した排気微粒物質を燃焼させフィルタを再生することができる。
ただし、バッテリの充放電が制限された場合であっても、フィルタの温度が第2上限温度以上であれば、フィルタ再生用ヒータである電気ヒータに回生電力を供給しないため、フィルタの過昇温を防止して、フィルタの熱劣化や熱損傷を防止することができる。
【0019】
また、バッテリの充放電が制限された場合、排気微粒子検出手段によりフィルタに排気微粒物質が堆積していると検出されると、フィルタ再生用ヒータである電気ヒータへ回生電力を供給するため、回生電力を有効利用してフィルタを昇温してフィルタに堆積している排気微粒物質を燃焼させフィルタを再生することができる。
ただし、フィルタに排気微粒物質が堆積していない場合、フィルタ再生用ヒータである電気ヒータへ発電電力を供給しないため、フィルタの過昇温を防止して、フィルタの熱劣化や熱損傷を防止することができる。
【0020】
また、バッテリ温度が所定温度よりも高くなく、バッテリの充放電が制限されない場合には、バッテリ充電量が所定充電量未満ならば、回生電力によりバッテリが充電されるため、バッテリの充電量を確保することができる。バッテリ充電量が所定充電量以上ならば、回生電力を電気ヒータに供給するため、バッテリの過充電を防ぐとともに、回生電力を有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1〜4実施形態にかかるハイブリッド電気自動車の制御装置の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の第1〜4実施形態にかかるハイブリッド電気自動車の制御のメインルーチンのフローチャートである。
【図3】本発明の第1実施形態にかかるハイブリッド電気自動車の制御のサブルーチンのフローチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態にかかるハイブリッド電気自動車の制御のサブルーチンのフローチャートである。
【図5】本発明の第3実施形態にかかるハイブリッド電気自動車の制御のサブルーチンのフローチャートである。
【図6】本発明の第4実施形態にかかるハイブリッド電気自動車の制御装置の要部の構成を示す図である。
【図7】本発明の第4実施形態にかかるハイブリッド電気自動車の制御のサブルーチンのフローチャートである。
【図8】第1〜第4実施形態の変形例にかかるハイブリッド電気自動車の制御装置の要部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
図1〜図3は本発明の第1実施形態にかかるハイブリッド電気自動車の制御装置を説明するもので、図1はその全体構成を示す図、図2,3はその制御のフローチャートである。
【0023】
〔動力系の構成〕
まず、本実施形態にかかる制御装置が適用されるハイブリッド電気自動車の動力系の構成を説明する。本実施形態にかかるハイブリッド電気自動車は、例えば、トラック又はバスといった商用車であり、ディーゼルエンジンを搭載している。
図1に示すように、車両の前部には、駆動系として、エンジン(内燃機関)1,クラッチ2,モータ(電動発電機)3及び変速機(トランスミッション)4を備えている。
【0024】
エンジン1は、ディーゼルエンジンであり、このエンジン1の排気管12には排気浄化装置20が装備されている。この排気浄化装置20には電気ヒータ21が装備されている。
クラッチ2は、エンジン1とモータ3との間に介装され、クラッチ2を遮断すれば、エンジン1は車両の駆動系から切り離されて動力伝達はなされず、クラッチ2を接続すれば、エンジン1は車両の駆動系に加わり動力伝達がなされる。
【0025】
モータ3は、その直下流側の変速機4と常時接続されており、インバータ41によって作動を制御される。インバータ41は、力行時には、バッテリ(例えば、リチウムイオン電池等の充放電可能な複数個のセルからなる二次電池)40からモータ3に電力を供給して出力トルクを発生させる電動機として機能させ、回生制動時には、車両の運動エネルギを用いて電力を発電(回生発電)する発電機としてモータ3を機能させ、回生発電による電力を、通常状態ではバッテリ40の充電に用い、特定状態では排気浄化装置20の電気ヒータ21に供給するよう構成される。
【0026】
変速機4は、その入力軸がモータ3の回転軸に接続されており、この変速機4の出力軸は、プロペラシャフト5,ディファレンシャル6,ドライブシャフト7等を備えた動力伝達系を介して、駆動輪(ここでは、左右の後輪)8に接続されている。
したがって、車両の力行時には、変速機4の入力軸に入力された駆動トルクを、選択された変速段に応じた変速比で変速して動力伝達系に出力する。この場合、クラッチ2を接続すれば、このクラッチ2を介して伝達されたエンジン1およびモータ3の両出力トルクが変速機4に入力され、クラッチ2を遮断すれば、モータ3のみの出力トルクが変速機4に入力される。
【0027】
また、回生制動時には、車両の運動エネルギによる回転トルクが駆動輪8から動力伝達系7,6,5を経て変速機4に入力され、駆動輪8からの入力回転を変速機4の変速段に応じた変速比で変速して、発電機として機能するモータ3を回転駆動し、車両の制動と共に回生発電を実施することができる。この場合、クラッチ2を遮断すれば、車両の運動エネルギが発電機としてのモータ3の駆動のみに利用され、効率よくエネルギ回収を行なうことができる。また、クラッチ2を接続すれば、インバータ41によるモータ3の制御による回生ブレーキとエンジンブレーキとの併用や、エンジンブレーキのみの作動を行なうことができる。
【0028】
エンジン1には、吸気を取り込む吸気管11がインテークマニホールド(図示略)を介して接続され、排気を排出する排気管12がエキゾーストマニホールド(図示略)を介して接続されている。この排気管12の途中には、排気浄化装置20が介装されている。
この排気浄化装置20は、排気中のCO(一酸化炭素)やHC(炭化水素)を除去する排気浄化触媒としての酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)22と、排気中のPM(排気微粒物質)を捕捉するDPF(Diesel particulate filter:ディーゼルパティキュレータフィルタ)23とを一体のケース内に収納してそなえている。
【0029】
このような排気浄化装置20には、前述の電気ヒータ21が装備されている。
電気ヒータ21は、酸化触媒22を昇温させて活性化するため、及び、DPF23に捕捉されたPMを燃焼させて除去しDPF23を再生するために設けられている。
【0030】
〔制御系の構成〕
エンジン1,クラッチ2,モータ3,バッテリ40及びインバータ41の制御又は管理は、コンピュータを用いた電子制御によって行なわれるようになっている。
エンジン1を制御するためにエンジンECU31が、モータ3及び電気ヒータ21を操作するインバータ41を制御するためにインバータECU32が、バッテリ40を管理するためにバッテリECU33が、それぞれ設けられ、これらのエンジンECU31,インバータECU32,バッテリECU33及びクラッチ2を制御するために、車両ECU30が設けられている。
【0031】
これらの各ECU30,31,32,33は、CPU,ROM,RAM,入出力回路等からなるコンピュータであって、適宜の機器類が付設又は接続されている。
車両ECU30は、車両の走行状態(例えば、車速),車両への駆動又は制動指令の状態(例えば、アクセル操作量やブレーキ操作量),バッテリ40の充電量(以下、充電量の値を「SOC」で示す)等に基づいて、エンジンECU31,インバータECU32,バッテリECU33及びクラッチ2を制御する。車両ECU30には、後述する制御手段30a,バッテリ充放電制限手段30b,排気微粒子検出手段30cの各機能がソフトウェアとして設けられている。
【0032】
なお、バッテリECU33には、バッテリ40の充放電電流を検出するバッテリ電流センサ51と、バッテリ40の充放電電圧を検出するバッテリ電圧センサ52と、バッテリ40の充放電回数を検出するバッテリ充放電カウンタ54とが接続されており、バッテリ40の充電量は、このバッテリECU33によって、バッテリ40の充放電時の電流,電圧に基づいて算出される。これらの各センサ51,52やカウンタ54は、バッテリ40の各セルに接続され、この各セルの電流,電圧,充放電回数を検出してもよいし、幾つかのセルに対して一つのセンサが接続され、この幾つかのセルの電流,電圧,充放電回数を検出してもよいし、これらの各セルに対してまたは幾つかのセルに対して1つのセンサを接続することを適宜組み合わせて各センサを配設してもよい。
【0033】
また、インバータECU32は、インバータ41を制御することにより、インバータ41に接続されたモータ3,バッテリ40及び電気ヒータ21の電力の授受を管理する。例えば、モータ3の回生発電による発電電力を、通常状態であればバッテリ40の充電にあてるが、後述の特定状態であれば電気ヒータ21への通電にあてる。
車両ECU30は、駆動時には、アクセル操作量に基づいて、車両に必要な駆動トルクを設定すると共に、エンジン1とモータ3との何れを使用するか或いは両方を使用するかを設定し、エンジン1とモータ3との両方を使う場合には駆動トルクの配分を行なう。エンジンECU31やインバータECU32は、車両ECU30により設定された駆動トルクを出力するようにエンジン1又はモータ3の作動を制御する。
【0034】
例えば車両の発進時には、基本的には、クラッチ2を切ってモータ3のみの駆動トルクを用い、その後の走行時には、エンジン1を始動させてクラッチ2を接続して、エンジン1の駆動トルクを主体に、モータ3の駆動トルクを補助的に用いて走行する。ただし、バッテリ40の充電量が不足している場合には、発進時や走行時にモータ3を用いずエンジン1のみを用いて走行することもある。
【0035】
また、制動時には、基本的には、クラッチ2を切って駆動輪8の回転エネルギをモータ3のみに送って回生発電を行なう。この回生発電による電力は、通常は、バッテリ40の充電に用いられる。ただし、バッテリ40の充電量が上限(満充電)又は上限の近傍(略満充電)に達している場合には、回生発電による電力をバッテリ40の充電に用いることはできず、別の利用をする。
【0036】
また、車両EUC30は、排気浄化装置20の酸化触媒22及びDPF23の管理も行なう。酸化触媒22については、触媒が活性化する温度(触媒活性下限温度)まで昇温しないと所望の触媒作用を得られないので触媒温度が触媒活性下限温度以上を維持するように管理する。DPF23については、PM堆積量が過剰になると再生時に大量のPMが燃焼することから過昇温をも招くので、PM堆積量を管理する。ただし、酸化触媒22もDPF23も、過剰に温度上昇すると熱損傷を受けるので、酸化触媒22及びDPF23の上限温度も規定しており、車両EUC30は、酸化触媒22及びDPF23を上限温度以下に管理する。すなわち、本実施形態では、酸化触媒22及びDPF23の双方、すなわちこれらの22,23から構成される排気浄化装置20全体に着目して、車両ECU30は、酸化触媒22及びDPF23の温度管理を行なう。
【0037】
このため、排気浄化装置20には、酸化触媒22及びDPF23の温度を検出する温度センサ15が装備され、この温度センサ15は、検出した温度情報が車両ECU30に入力されるように接続される。車両ECU30では、例えば、排気浄化装置20の代表温度として酸化触媒22が活性下限温度未満であれば電気ヒータ21を通電し、酸化触媒22を活性温度下限以上に昇温させる。
【0038】
ところで、本ハイブリッド電気自動車は、前述のように、大型或いは中型の商用車であり、輸送可能な重量を確保することや積載スペースを確保することが重要であり、更には、車両コストの高騰を抑えることも重要である。また、ハイブリッド電気自動車を適用する第1の目的は燃費改善効果である。したがって、このような商用車に必要な条件とのバランスを考慮して、このバッテリ40は、車両の大きさに対するバッテリ容量(充電容量,熱容量)が、乗用車のハイブリッド電気自動車の場合よりも相対的に小さいものが搭載されている。
【0039】
さらに、商用車の場合、積載重量を確保し効率良く輸送をする観点から、乗用車に比べて大型車両が多く、このため、高出力の回生や力行を行なう場合も多い。つまり、限られた容量のバッテリ40で、高出力の回生や力行を行なう場合が多く発生する。バッテリ40は小容量なので熱容量も小さいため、バッテリ40で大きな熱量の発熱を伴う高出力の回生や力行を行なうと、バッテリ40の温度上昇も著しくなる。
【0040】
バッテリ40は高温状態になると劣化が促進するので、バッテリ40の温度が過剰に上昇しないように、車両ECU30は、バッテリ40の温度を管理する。
また、バッテリ40は充電量が過剰に高くなると発熱し劣化を招くと共に、充電量が過剰に低下しても劣化を招く。そこで、車両ECU30は、バッテリ40の充電量も管理する。
【0041】
このため、バッテリ40には、バッテリ40の温度を検出するバッテリ温度センサ53が装備され、このバッテリ温度センサ53は、検出したバッテリ温度T情報が車両ECU30に入力されるように接続される。また、車両ECU30に接続されたバッテリECU33から算出されたバッテリ40の充電量SOCが入力されるように接続される。
これにより、車両ECU30のバッテリ充放電制限手段30bは、バッテリ温度センサ53により検出されたバッテリ40の温度Tが所定の温度(上限温度)TB1を超えたらバッテリ40の充放電を禁止し(または充放電量を減少させる)、また、バッテリ40の充電量SOCが上限値(所定の充電量)SOC以上になったらバッテリ40の充放電を禁止する(または充放電量を減少させる)。この所定の温度TB1は、バッテリの充放電を制限しないと劣化が進んでしまう温度として設定されるもので、予め経験的、実験的に設定されるものである。また、バッテリ温度Tは、バッテリ電流センサ51により検出された電流、バッテリ電圧センサ52により検出された電圧に基づいて推定してもよく、バッテリ温度センサ53により検出された温度を各センサ51,52及びカウンタ54により検出された電流等により補正して算出するものとしてもよい。ここで、バッテリ充放電を禁止する条件に用いられる上限温度TB1よりも、バッテリ充放電量を減少させる条件に用いられる上限温度TB1のほうが低い温度に設定される。
【0042】
なお、バッテリ40の充電には、回生制動時の回生電力を利用することが最もエネルギを有効利用することになり省エネルギ効果が得られるが、バッテリ40の充電量SOCが所定の下限値以下になったら充電量を確保してバッテリ40を保護するために、車両ECU30は、インバータECU32を制御して、エンジン1の駆動トルクによりモータ3を発電機として駆動し、この発電電力によりバッテリ40を充電する。
【0043】
そして、バッテリ40の温度Tが所定の温度TB1を超えてバッテリ40の充放電を禁止している状態や、バッテリ40の充電量SOCが上限値SOC以上になってバッテリ40の充電を禁止している状態で、回生制動が行なわれる場合には、車両ECU30は、回生発電による電力をバッテリ40に供給することができないので、電気ヒータ21の作動禁止条件が成立しない限り、回生発電による電力を電気ヒータ21に供給するように制御する。
【0044】
なお、ここで、電気ヒータ21の作動禁止条件とは、前述のように、酸化触媒22及びDPF23を上限温度以下に管理するための条件であり、温度センサ15により検出された酸化触媒22及びDPF23の温度Tが予め設定された第1上限温度TA1以上であることと規定している。第1上限温度TA1は、例えば、予め実験的、経験的に求められ、酸化触媒22及びDPF23が過昇温により熱損傷しない上限温度として設定されてもよいし、触媒活性温度域の上限として設定されてもよい。
【0045】
したがって、換言すれば、バッテリ40の温度Tが所定の温度TB1を超えるかバッテリ40の充電量SOCが上限値SOC以上になるかのいずれかの理由によりバッテリ40の充放電を禁止している状態で、回生制動が行なわれる場合には、車両ECU30の制御手段30aは、酸化触媒22及びDPF23の温度Tが予め設定された第1上限温度TA1未満である限り、回生発電による電力を電気ヒータ21に供給するように制御する。
【0046】
なお、バッテリ40の温度Tが所定の温度TB1を超えてバッテリ40の充放電を禁止している状態や、バッテリ40の充電量SOCが上限値SOC以上になってバッテリ40の充電を禁止している状態で、電気ヒータ21の作動禁止条件が成立する場合には、回生発電は禁止されるため、回生制動トルクが発生しないことになるが、車両ECU30は、例えば、エンジンECU31を制御して回生制動トルクに替えてエンジンブレーキを作動させ、制動要求時であれば、当然に各左右前後輪に配設された機械式の制動機構(ブレーキ機構)の作動を行なう。
【0047】
〔作用・効果〕
本発明の第1実施形態にかかるハイブリッド電気自動車の制御装置は、上述のように構成されるため、例えば、図2に示すような制御が車両ECU30により行なわれる。この制御フローは、例えば数10ms毎に、周期的に行なわれる。
まず、モータ3により回生発電を行なう条件が成立しているかを判定する(ステップS10)。例えば、車両減速時の制動力を、モータ3の回生制動により発生させようとする場合である。
【0048】
この回生発電条件が成立していると判定すると、モータ3を発電機として駆動して回生発電が行なわれる(ステップS12)。
次に、バッテリ温度センサ52により検出されたバッテリ40の温度Tが所定の温度TB1よりも高いかを判定する(ステップS14)。
バッテリ温度Tが所定の温度TB1よりも低いと判定されると、バッテリECU33により算出されたバッテリ40の充電量SOCが所定の充電量(上限値)SOCよりも大きいかを判定する(ステップS16)。前述のように、所定の充電量SOCは、これ以上の過剰な充電はバッテリ40の負担を大きくし劣化を招く充電量の上限として設定され、略満充電に相当する充電量として設定される。
【0049】
バッテリ40の充電量SOCが所定の充電量SOCよりも小さいと判定されると、バッテリ40を充電する(ステップS18)。
そして、制御フローを終了する(リターン)。
一方、バッテリ40の温度Tが所定の温度TB1よりも高いと判定され、または、バッテリ40の充電量SOCが所定の充電量SOCよりも大きいと判定されると、図3に示す電気ヒータ制御が行なわれる。まず、温度センサ15により検出された酸化触媒22の温度Tが第1上限温度TA1より高いかを判定する(ステップS120)。酸化触媒22の温度Tが第1上限温度TA1より低いと判定されると、電気ヒータ21に通電する(ステップS122)。これにより、酸化触媒22が電気ヒータ21により昇温される。そして、図2に示すメインルーチンに戻って制御フローを終了する(リターン)。
【0050】
また、酸化触媒22の温度Tが第1上限温度TA1より高いと判定されると、電気ヒータ21への通電を停止する(ステップS130)。この場合、電気ヒータ21への通電を停止するとともにバッテリ40の充電も行なっていない。すなわち、回生制動による回生発電を行なわないが、適宜、エンジンブレーキを作動させ、制動要求時であれば、当然に各前後左右輪に配設された機械式の制動機構の作動を行なう。
【0051】
そして、図2に示すメインルーチンに戻って制御フローを終了する(リターン)。
本発明の第1実施形態にかかるハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、車両ECU30により、モータ3の回生発電中にバッテリ温度Tが、バッテリ40の充放電を制限しないと劣化が進んでしまう温度所定の温度TB1よりも高いと判定されると、バッテリ40の充放電が制限されるため、バッテリ40の劣化を防止することができる。
【0052】
車両ECU30により、モータ3の回生発電中にバッテリ40の充電量SOCが、これ以上の過剰な充電はバッテリ40の負担を大きくし劣化を招く充電量の上限である所定の充電量SOCよりも高いと判定されると、バッテリ40の充放電が制限されるため、バッテリ40の劣化を防止することができる。
すなわち、バッテリ温度Tがバッテリ温度TB1よりも低いと判定され、バッテリ40の充電量SOCが所定の充電量SOCより小さいと判定されると、モータ3の回生発電による発電電力によりバッテリ40は充電されるため、バッテリ40の充電量を確保することができる。バッテリ温度Tがバッテリ温度TB1よりも高い、または、バッテリ40の充電量SOCが所定の充電量SOCより高いと判定されると、モータ3の発電電力によりバッテリ40の充電は制限され、発電電力を電気ヒータ21に供給するため、モータ3の回生発電による発電電力を有効に利用することができる。つまり、回生電力を有効利用して酸化触媒22を活性温度に昇温させることができる。
【0053】
さらに、酸化触媒22で昇温された排出ガスは、直下流のDPF23に供給され、DPF23を昇温することにより、堆積したPMを焼却してDPF23を再生することができる。
ただし、バッテリ40の充電が制限された場合であっても、酸化触媒22の温度Tが第1上限温度TA1以上であれば、電気ヒータ21に発電電力を供給しないため、酸化触媒22の過昇温を防止し、酸化触媒22の熱劣化や熱損傷を防止することができる。さらに、酸化触媒22の直下流のDPF23の過昇温を防止し、熱劣化や熱損傷を防止することができる。DPF23の過昇温を防止することにより、DPF23に堆積したPMが連鎖燃焼することを防止することができる。この連鎖燃焼の防止により、DPF23の温度制御がしやすくなる。
【0054】
すなわち、車両ECU30は、バッテリ40の充放電が制限された場合に、酸化触媒22の温度が第1上限温度TA1より低ければ、電気ヒータ21の作動禁止条件が成立しないと判定し、電気ヒータ21に発電電力を供給するため、酸化触媒22を昇温することで、バッテリ40の消費電力が抑えられ燃費の向上に寄与する。また、排気浄化装置20の昇温のために使用するエンジン燃料噴射の機会が減少することで、さらに車両の燃費の向上に寄与する。
【0055】
〔第2実施形態〕
図4は、第2実施形態にかかる電気ヒータ制御を説明するフローチャートである。この図4を用いるとともに、図1を流用して、本発明のハイブリッド電気自動車の制御装置の第2実施形態を説明する。
〔全体構成〕
本実施形態は、酸化触媒22及びDPF23の温度の何れか一方に着目して電気ヒータ21の作動を制御するものである。このため、排気浄化装置20には、酸化触媒22又はDPF23の温度を検出する温度センサ15が装備され、この温度センサ15は、検出した酸化触媒22又はDPF23の温度情報が車両ECU30に入力されるように接続される。
【0056】
バッテリ40の温度Tが所定の温度TB1を超えてバッテリ40の充放電を禁止している状態や、バッテリ40の充電量SOCが上限値SOC以上になってバッテリ40の充電を禁止している状態で、回生制動が行なわれる場合には、車両ECU30は、回生発電による電力をバッテリ40に供給することができないので、電気ヒータ21の作動禁止条件が成立しない限り、回生発電による電力を触媒昇温用ヒータ又はフィルタ再生用ヒータとしての電気ヒータ21に供給するように制御する。
【0057】
なお、ここで、電気ヒータ21の作動禁止条件とは、酸化触媒22又はDPF23を上限温度以下に管理するための条件であり、温度センサ15により検出された酸化触媒22又はDPF23の温度Tが予め設定された第2上限温度TA2以上であることと規定している。第2上限温度TA2は、例えば、予め実験的、経験的に求められ、酸化触媒22又はDPF23が過昇温により熱損傷しない上限温度として設定される。
その他の構成は、図1に示す第1実施形態と同様である。
【0058】
〔作用・効果〕
本発明の第2実施形態にかかるハイブリッド電気自動車の制御装置は、上述のように構成されるため、例えば、図4に示すような電気ヒータ制御が車両ECU30により行なわれる。なお、第2実施形態にかかるハイブリッド電気自動車の制御の図2に示すメインルーチンは、第1実施形態と同様である。
【0059】
バッテリ40の温度Tが所定の温度TB1よりも高いと判定され、または、バッテリ40の充電量SOCが所定の充電量SOCよりも大きいと判定されると、図4に示す電気ヒータ制御が行なわれる。まず、温度センサ15により検出された酸化触媒22又はDPF23の温度Tが第2上限温度TA2より高いかを判定する(ステップS220)。
酸化触媒22又はDPF23の温度Tが第2上限温度TA2より低いと判定されると、電気ヒータ21に通電する(ステップS222)。これにより、酸化触媒22又はDPF23が電気ヒータ21により昇温される。そして、図2に示すメインルーチンに戻って制御フローを終了する(リターン)。
【0060】
また、酸化触媒22又はDPF23の温度Tが第2上限温度TA2より高いと判定されると、電気ヒータ21への通電を停止する(ステップS230)。この場合、電気ヒータ21への通電を停止するとともにバッテリ40の充電も行なっていない。この場合、例えば、回生制動による回生発電を行なわないが、適宜、エンジンブレーキを作動させ、制動要求時であれば、当然に各前後左右輪に配設された機械式の制動機構(ブレーキ機構)の作動を行なう。
【0061】
そして、図2に示すメインルーチンに戻って制御フローを終了する(リターン)。
本発明の第2実施形態にかかるハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、車両ECU30は、バッテリ40の充電が制限された場合であっても、酸化触媒22又はDPF23の温度Tが第2上限温度TA2以上であれば、電気ヒータ21に発電電力を供給しないため、酸化触媒22又はDPF23の過昇温を防止することができる。酸化触媒22又はDPF23の過昇温を防止することにより、酸化触媒22又はDPF23の溶損等による破損を防止することができる。DPF23の過昇温を防止することにより、DPF23に堆積したPMが連鎖燃焼することを防止することができる。この連鎖燃焼の防止により、DPF23を適切に温度制御することができる。
【0062】
すなわち、車両ECU30は、バッテリ40の充放電が制限された場合に、酸化触媒22又はDPF23の温度が第2上限温度TA2より低ければ、電気ヒータ21の作動禁止条件が成立しないと判定し、電気ヒータ21に発電電力を供給するため、酸化触媒22又はDPF23を昇温して、酸化触媒22の場合には活性化させることができ、DPF23の場合には堆積したPMを燃焼させDPF23を再生することができる。回生電力を用いて酸化触媒22を活性化させたり、回生電力を用いて堆積したPMを燃焼させDPF23を再生したりすることで、バッテリ40の消費電力が抑えられ燃費の向上に寄与する。
【0063】
なお、本発明の第2実施形態の変形例として、酸化触媒22及びDPF23にそれぞれ温度センサ15a,15bを装備し、例えば上流側の酸化触媒22に、酸化触媒22及びDPF23を昇温する電気ヒータ21を装備する構成としてもよい。この場合、車両ECU30は、酸化触媒22及びDPF23の各温度Ta,Tbがそれぞれの上限温度Ta,Tbに達しないように電気ヒータ21の通電制御を行なう。
【0064】
つまり、温度センサ15aにより検出された酸化触媒22の温度Taがその上限温度Ta以下であり、且つ、温度センサ15bにより検出されたDPF23の温度Tbがその上限温度Tb以下であると判定されると、電気ヒータ21への通電を行なう。また、温度センサ15aにより検出された酸化触媒22の温度Taがその上限温度Taよりも大きい、又は、温度センサ15bにより検出されたDPF23の温度Tbがその上限温度Tbよりも大きいと判定されると、電気ヒータ21への電力供給を停止する。これにより、酸化触媒22及びDPF23がそれぞれ上限温度を超えないように管理することができる。
【0065】
本発明の第2実施形態の変形例にかかるハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、それぞれの温度センサ15a,15bにより検出された温度Ta,Tbが上限温度に達しないように電気ヒータ21の通電制御を行なうため、酸化触媒22及びDPF23のそれぞれの過昇温を防止することができる。また、この過昇温の防止により、酸化触媒22及びDPF23の熱損傷を防止することができる。
【0066】
〔第3実施形態〕
図5は第3実施形態にかかる電気ヒータ制御を説明するフローチャートである。この図5を用いると共に、図1を流用して、本発明のハイブリッド電気自動車の制御装置の第3実施形態を説明する。
【0067】
〔全体構成〕
本実施形態では、電気ヒータ21が、フィルタ再生用ヒータとして装備され、インバータ41から電力を供給されうるように接続される。
また、車両ECU30の排気微粒子検出手段30cは、DPF23に捕捉されて堆積したPMの量を推定する。このPMの堆積量の推定は、PMの堆積量が大きくなるとDPF23の上下流差圧も大きくなり、PMの堆積量が所定量に達するとDPF23の上下流差圧もこれに応じた値になることに着目して、PMの堆積量が所定値に達したことを判定する。
【0068】
このため、DPF23の上流側および下流側に図示しない差圧センサが設けられ、差圧の検出情報が車両ECU30に送られるようになっており、車両ECU30では、差圧検出情報から上記の判定を行なって、PMの堆積量が所定値に達したら、再生処理を始める。再生処理は、エンジン1を再生用で運転する場合と、電気ヒータ21で加熱する場合があり、再生処理中は、エンジン1の運転状態を監視して、エンジン1の運転状態に応じて燃焼するPM燃焼量を逐次算出して、または、電気ヒータ21は、PM燃焼量が通電時間等に対応するものとして、所定値からPM燃焼量を逐次減算していくことにより、その時点のPMの堆積量を算出する。
【0069】
なお、PMの堆積量が僅かであってもDPF23の上下流差圧からPMの堆積量を推定できる場合には、この差圧センサにより検出された差圧のみに応じて、PMの堆積量を推定するものとしてもよい。例えば、差圧センサにより検出された差圧が下限値なった場合にPMが堆積されていない(PMの堆積量が検出されない)と推定することもできる。
その他の構成は図1に示す第1実施形態と同様である。
【0070】
〔作用・効果〕
本発明の第3実施形態にかかるハイブリッド電気自動車の制御装置は上述のように構成されるため、例えば図5に示すような電気ヒータ制御の制御フローが実行される。なお、第3実施形態にかかるハイブリッド電気自動車の制御の図2に示すメインルーチンは、第1実施形態と同様である。
【0071】
まず、DPF23に堆積したPMの量が検出されるかを判定して(ステップS320)、PMの堆積量が検出された場合には、電気ヒータ21に通電する(ステップS322)。そして、図2に示すメインルーチンに戻って制御フローを終了する(リターン)。また、DPF23に堆積したPMの量が検出されないと判定されると、電気ヒータ21への通電を停止し(ステップS330)、図2に示すメインルーチンに戻って制御フローを終了(リターン)する。
【0072】
本発明の第3実施形態にかかるハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、車両ECU30は、バッテリ40の充放電が制限された場合、車両ECU30によりDPF23にPMが堆積していると推定されると、電気ヒータ21へ発電電力を供給するため、DPF23にPMが堆積している場合に、適切にDPF23を昇温して、堆積したPMを焼却し、DPF23を再生することができる。
【0073】
車両ECU30は、例えばDPF23の温度が十分高くPMが燃焼されて堆積したPMが検出されない場合、電気ヒータ21への発電電力を供給しないため、DPF23の過昇温を防止することができる。この過昇温を防止することにより、DPF23の溶損等による破損を防止することができる。
【0074】
〔第4実施形態〕
図6は第4実施形態にかかるハイブリッド電気自動車の制御装置の要部の構成を示す図であり、図7は第4実施形態にかかる電気ヒータ制御を説明するフローチャートである。これらの図6,図7を用いると共に、図1を流用して、本発明のハイブリッド電気自動車の制御装置の第4実施形態を説明する。
【0075】
〔全体構成〕
本実施形態では、図6に示すように、排気浄化装置20にそなえられた酸化触媒22およびDPF23には、酸化触媒22を昇温する第1電気ヒータ21aと,DPF23を昇温する第2電気ヒータ21bがそれぞれ装備され、インバータ41から電力を供給されうるように接続される。
【0076】
また、酸化触媒22の温度を検出する第1温度センサ15aとDPF23の温度を検出する第2温度センサ15bとが装備される。これらの温度センサ15a,15bにより検出された酸化触媒22の温度TおよびDPF23の温度Tは車両ECU30に入力されるように接続される。
バッテリ40の温度Tが所定の温度TB1を超えてバッテリ40の充放電を禁止している状態や、バッテリ40の充電量SOCが上限値SOC以上になってバッテリ40の充電を禁止している状態で、回生制動が行なわれる場合には、車両ECU30は、回生発電による電力をバッテリ40に供給することができないので、電気ヒータ21a,21bの作動禁止条件が成立しない限り、回生発電による電力を電気ヒータ21a,21bに供給するように制御する。
【0077】
なお、ここで、電気ヒータ21a,21bの作動禁止条件とは、酸化触媒22及びDPF23をそれぞれの上限温度T,T以下に管理するための条件である。
第1電気ヒータの作動禁止条件としては、例えば、予め試験等を実施して求められ、酸化触媒22の過昇温により酸化触媒22が熱損しない温度を第1上限温度TF1として設定してもよいし、触媒活性温度域(触媒が良好な活性状態である温度域)の上限温度を第1上限温度TF1として設定してもよい。また、第2電気ヒータの作動禁止条件としては、例えば、DPF23の過昇温により熱損しない第2上限温度TR1として設定する。
【0078】
また、図示しないタイマが装備され、時間をカウントしたカウント値tが車両ECU30に入力されるように接続される。このタイマは車両ECU30により、カウント開始およびリセットを制御される。
ここで、DPF23は、酸化触媒22の直下流にあるため、酸化触媒22の温度Tに影響を受ける。例えば、酸化触媒22の温度Tが昇温すれば、この昇温がDPF23に熱量が減衰し遅延して伝達し、DPF23の温度Tも昇温する。
【0079】
このため、DPF23の温度Tが第2上限温度TR1よりも高い場合、第2電気ヒータ21bの通電を停止すればDPF23の温度Tが第2上限温度TR1以下に下がる場合もあるが、第1電気ヒータ21aに通電して酸化触媒22を昇温し続けると、直下流のDPF23をも昇温し続け、DPF23の温度Tが第2上限温度TR1よりも高い状態を保持してしまう。これを防止するために、車両ECU30は電気ヒータ21a,21bをそれぞれ制御する。つまり、酸化触媒22の昇温によりDPF23が熱損傷しないように、第2電気ヒータ21bの通電を停止してから所定時間tだけDPF23の温度Tを監視して、所定時間tが経過してもDPF23の温度Tが第2上限温度TR1よりも高い場合には、電気ヒータ21a,21bへの通電をいずれも停止する制御を行なう。所定時間tは、酸化触媒22の昇温のDPF23への影響を監視する時間であり、酸化触媒22の昇温に対するDPF23の伝達応答時間等に基づいて、予め設定される。
その他の構成は、図1に示す第1実施形態と同様である。
【0080】
〔作用・効果〕
本発明の第4実施形態にかかるハイブリッド電気自動車の制御装置は、上述のように構成されるため、例えば、図7に示すような電気ヒータ制御が車両ECU30により行なわれる。なお、第4実施形態にかかるハイブリッド電気自動車の制御の図2に示すメインルーチンは、第1実施形態と同様である。
【0081】
かかる電気ヒータ制御は、まず、バッテリ40の温度Tが所定の温度TB1よりも高いと判定され、または、バッテリ40の充電量SOCが所定の充電量SOCよりも大きいと判定されると、図7に示す電気ヒータ制御が行なわれる。まず、第1温度センサ15aにより検出された酸化触媒22の温度Tが第1上限温度TF1より高いかを判定する(ステップS420)。酸化触媒22の温度Tが第1上限温度TF1以下と判定されると、第2温度センサ15bにより検出されたDPF23の温度Tが第2上限温度TR1より高いかを判定する(ステップS422)。DPF23の温度Tが第2上限温度TR1以下と判定されると、第1電気ヒータ21aに通電し、第2電気ヒータ21bに通電する(ステップS424)。第1電気ヒータ21aに通電し、第2電気ヒータ21bに通電すると、タイマをオフしてタイマカウントをリセットする(ステップS426)。そして、図2に示すメインルーチンに戻って制御フローを終了する(リターン)。
【0082】
また、ステップS422において、DPF23の温度Tが第2上限温度TR1より高いかと判定されると、タイマのカウント値tが所定時間t以上であるかを判定する(ステップS430)。タイマのカウント値tが所定時間tよりも小さいと判定されると、第1電気ヒータ21aに通電し、第2電気ヒータ21bへの通電を停止する(ステップS434)。そして、図2に示すメインルーチンに戻って制御フローを終了する(リターン)。
【0083】
また、ステップS420において、酸化触媒22の温度Tが第1上限温度TF1より高いと判定されると、第2温度センサ15bにより検出されたDPF23の温度Tが第2上限温度TR1より高いかを判定する(ステップS440)。DPF23の温度Tが第2上限温度TR1以下と判定されると、第1電気ヒータ21aへの通電を停止し、第2電気ヒータ21bへの通電を行なう(ステップS442)。次に、タイマをオフしてタイマカウントをリセットする(ステップS444)。そして、図2に示すメインルーチンに戻って制御フローを終了する(リターン)。
【0084】
また、ステップS440において、DPF23の温度Tが第2上限温度TR1より高いと判定されると、第1および第2電気ヒータ21a,21bへの通電を停止する(ステップS450)。この場合、電気ヒータ21a,21bへの通電を停止するとともにバッテリの充電も行なっていない場合には、発電電力を発生させる回生制動を行なわないが、適宜、エンジンブレーキを作動させ、制動要求時であれば、各前後左右輪に配設された機械式の制動機構(ブレーキ機構)の作動を行なう。次に、タイマをオフしてタイマカウントをリセットする(ステップS452)。そして、図2に示すメインルーチンに戻って制御フローを終了する(リターン)。
【0085】
本発明の第4実施形態にかかるハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、第1実施形態および第2実施形態の効果を奏する。
【0086】
〔その他〕
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0087】
上述の第1〜第4実施形態では、バッテリ40の充放電が制限された場合に、モータ3の回生発電による電力を電気ヒータ21に供給するが、この電力の供給先を、図8に示す吸気管11に介装された吸気加熱装置61にも供給する構成としてもよい。同様に、フィルタ10の上流側の排気管12に介装された排気加熱装置62にも供給する構成としてもよい。
【0088】
この構成によれば、バッテリ40の充放電が制限された場合、モータ3の回生時の発電電力を吸気加熱装置61または排気加熱装置62に供給するため、排出ガスの温度を上昇することができる。この排出ガスの温度上昇により、排気浄化装置20の昇温に寄与する。また、従来、バッテリの充放電が制限された場合に、捨てられていた回生発電による電力を吸気加熱装置61または排気加熱装置62に供給するための電力として有効に利用することができる。電気ヒータ21への発電電力の供給に加えて、吸気加熱装置61または排気加熱装置62への発電電力の供給をすることで、より効率的に排気浄化装置20を昇温することができる。また、排気浄化装置20の昇温のために使用するエンジン燃料噴射の機会が減少することで、さらに車両の燃費の向上に寄与する。
【0089】
上述の第1〜第4実施形態では、エンジン1、インバータ41、バッテリ40は、各ECU31,32,33により直接制御され、これらの各ECU31,32,33を車両ECU30が統合制御する構成であるが、かかる制御構成でなく、車両ECUが一括してエンジン1、インバータ41、バッテリ40を直接制御してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、内燃機関と電動発電機とを搭載したハイブリッド電気自動車に適用できる。特に、車両の大きさに対してバッテリの容量が限られているハイブリッド電気自動車に適用できる。
【符号の説明】
【0091】
1 エンジン
2 クラッチ
3 モータ
4 変速機
5 プロペラシャフト
6 ディファレンシャル
7 ドライブシャフト
8 駆動輪
11 吸気管
12 排気管
15 温度センサ
20 排気浄化装置
21 電気ヒータ(触媒昇温用ヒータ,フィルタ再生用ヒータ)
22 酸化触媒(排気浄化触媒)
23 DPF(フィルタ)
30 車両ECU
30a 制御手段
30b バッテリ充放電制限手段
30c 排気微粒子検出手段
31 エンジンECU
32 インバータECU
33 バッテリECU
40 バッテリ
41 インバータ
51 バッテリ電流センサ
52 バッテリ電圧センサ
53 バッテリ温度センサ
54 バッテリ充放電カウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用トルクを出力しうるエンジンと、
上記エンジンから排出された排出ガスを浄化する排気浄化装置と、
上記排気浄化装置に設けられた電気ヒータと、
走行用トルクを出力しうると共に上記エンジンの駆動による発電及び制動時のエネルギ回生による発電が可能な電動発電機と、
上記電動発電機による発電電力によって充電可能なバッテリと、
をそなえたハイブリッド電気自動車において、
上記バッテリの温度を検出するバッテリ温度検出手段と、
上記バッテリ温度検出手段により、上記バッテリの温度が予め設定された所定温度よりも高くなった場合、上記バッテリの充放電を制限するバッテリ充放電制限手段と、
上記ハイブリッド電気自動車のエネルギ回生による発電中に、上記バッテリ充放電制限手段の作動により上記バッテリの充放電が制限された場合には、上記電気ヒータの作動禁止条件が成立しない限り、上記電気ヒータに上記回生による発電電力を供給する制御手段とを備えた
ことを特徴とする、ハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項2】
上記排気浄化装置は排気浄化触媒を備え、
上記電気ヒータは上記排気浄化触媒を活性温度に昇温させる触媒昇温用ヒータであって、
上記電気ヒータの作動禁止条件として、上記排気浄化触媒の温度が予め設定された第1上限温度以上であることが設定され、
上記排気浄化触媒の温度を検出する触媒温度検出手段を更に備え、
上記制御手段は、上記触媒温度検出手段により検出された上記排気浄化触媒の温度を上記第1上限温度と比較して上記電気ヒータの作動禁止条件が成立しないか否かを判定する
ことを特徴とする、請求項1記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項3】
上記排気浄化装置は、排気中の微粒物質を捕捉するフィルタを備え、
上記電気ヒータは上記フィルタに堆積した排気微粒物質を燃焼させ上記フィルタを再生するフィルタ再生用ヒータであって、
上記電気ヒータの作動禁止条件として、上記フィルタの温度が予め設定された第2上限温度以上であることが設定され、
上記フィルタの温度を検出するフィルタ温度検出手段を更に備え、
上記制御手段は、上記フィルタ温度検出手段により検出された上記フィルタの温度を上記第2上限温度と比較して上記電気ヒータの作動禁止条件が成立しないか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1又は2記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項4】
上記排気浄化装置は、排気中の微粒物質を捕捉するフィルタを備え、
上記電気ヒータは上記フィルタに堆積した排気微粒物質を燃焼させ上記フィルタを再生するフィルタ再生用ヒータであって、
上記電気ヒータの作動禁止条件として、上記フィルタに排気微粒物質が堆積していないことが設定され、
上記フィルタに堆積した排気微粒物質の堆積量を検出する排気微粒子検出手段を更に備え、
上記制御手段は、上記排気微粒子検出手段により検出された排気微粒物質の堆積量から上記電気ヒータの作動禁止条件が成立しないか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1又は2記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項5】
上記バッテリの充電量を検出するバッテリ充電量検出手段を更に備え、
上記制御手段は、
上記ハイブリッド電気自動車のエネルギ回生による発電中に、上記バッテリ充放電制限手段の作動により上記バッテリの充放電が制限されない場合には、
上記バッテリ充電量検出手段により検出されるバッテリ充電量が予め設定された所定充電量未満ならば、発電電力を上記バッテリに充電し、
上記バッテリ充電量検出手段により検出されるバッテリ充電量が上記所定充電量以上ならば、上記回生による発電電力を上記電気ヒータに供給する
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−111381(P2012−111381A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262733(P2010−262733)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】