プラズマ発生源及びプラズマ発生装置並びに成膜装置、エッチング装置、アッシング装置、表面処理装置
【課題】 均一で高密度且つ大面積のプラズマを安定的に生成することが可能であるプラズマ発生源及びプラズマ発生装置、並びにこのプラズマ発生装置を利用した成膜装置、エッチング装置、アッシング装置、表面処理装置を提供すること。
【解決手段】 絶縁体上方に配置された電極及び磁石と、前記電極に接続された交流電源を備えており、前記電極は、対向配置された一対の櫛型状電極からなり、
前記一対の櫛型状電極は、櫛歯状部が互いに平行に且つ交互に配置され、該櫛歯状部間に前記磁石が配置されており、前記電極からの電界と前記磁石からの磁界によりプラズマ生成用ガスをプラズマ化することを特徴とする磁場付容量結合プラズマ発生源とする。
【解決手段】 絶縁体上方に配置された電極及び磁石と、前記電極に接続された交流電源を備えており、前記電極は、対向配置された一対の櫛型状電極からなり、
前記一対の櫛型状電極は、櫛歯状部が互いに平行に且つ交互に配置され、該櫛歯状部間に前記磁石が配置されており、前記電極からの電界と前記磁石からの磁界によりプラズマ生成用ガスをプラズマ化することを特徴とする磁場付容量結合プラズマ発生源とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマ発生源及びプラズマ発生装置並びに成膜装置、エッチング装置、表面処理装置、アッシング装置に関し、より詳しくは、磁場付容量結合プラズマ(HCCP)発生装置及びこのプラズマ発生装置を利用した成膜装置、エッチング装置、アッシング装置、表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ等に用いられる薄膜トランジスタ(TFT)等の電子デバイスの製造工程では、プラズマを利用した加工や処理が多用されている。
近年、上記したディスプレイの大型化に伴って、大面積の基板に対してのプラズマ処理が可能なプラズマ発生源及びプラズマ処理技術が求められている。
【0003】
上記プラズマ処理に用いられるプラズマとしては、例えば誘導結合プラズマ(ICP)や容量結合プラズマ(CCP)等が知られており、これらを大面積基板のプラズマ処理に適用可能とするためのプラズマ発生装置が多く提案されている。
【0004】
特許文献1には、複数個の電極を備えた容量結合プラズマ発生装置が開示されている。
特許文献1の開示技術は、複数個の電極と複数個のガス供給口を備えた電極装着板をプラズマ生成用の反応器に設置し、夫々の電極間でプラズマを発生させようとするものである。この技術を用いると、電極の数を増加させることで大面積の基板に対してもプラズマ処理が可能となる。
【0005】
しかし、特許文献1の開示技術では、夫々の電極間ごとにプラズマ生成用のガスを供給しなければ、安定的に均一なプラズマを生成することは困難であった。
【0006】
一方、特許文献2には、二つ以上の電極を櫛型に且つ平面状に配置し、各電極を誘電体で被覆して電極に交流電力を印加してプラズマを生成する装置が開示されている。
この装置によれば、平面状に櫛型に配置した複数の電極を備えることにより、プラズマの生成可能な面積を増加させることができる。また、処理対象となる基板を走査することで大面積の基板へも利用することができる。
【0007】
しかし、上記した特許文献1及び2の開示技術は、大面積の基板に対しての処理は可能であるが、原理的には従来のCCPと同様であるため、電子密度が1010cm−3を超える高密度のプラズマを得ることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−105030号公報
【特許文献2】特開2003−062452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、均一で高密度且つ大面積のプラズマを安定的に生成することが可能であるプラズマ発生源及びプラズマ発生装置、並びにこのプラズマ発生装置を利用した成膜装置、エッチング装置、アッシング装置、表面処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、絶縁体上方に配置された電極及び磁石と、前記電極に接続された交流電源を備えており、前記電極は、対向配置された一対の櫛型状電極からなり、
前記一対の櫛型状電極は、櫛歯状部が互いに平行に且つ交互に配置され、該櫛歯状部間に前記磁石が配置されており、前記電極からの電界と前記磁石からの磁界によりプラズマ生成用ガスをプラズマ化することを特徴とする磁場付容量結合プラズマ発生源に関する。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記一対の櫛型状電極の一方が接地され、他方が交流電源に接続されていることを特徴とする請求項1記載の磁場付容量結合プラズマ発生源に関する。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記磁石はN極が前記絶縁体に向いて配置されており、前記N極から出射する磁力線方向が前記電界方向と直交していることを特徴とする請求項1又は2記載の磁場付容量結合プラズマ発生源に関する。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源と、前記プラズマ生成用ガスが供給されるチャンバーとからなることを特徴とする磁場付容量結合プラズマ発生装置に関する。
【0014】
請求項5に係る発明は、前記プラズマ発生源が、前記チャンバー外部に配設されていることを特徴とする請求項4記載の磁場付容量結合プラズマ発生装置に関する。
【0015】
請求項6に係る発明は、前記プラズマ発生源が、前記チャンバー内部に配設されていることを特徴とする請求項4記載の磁場付容量結合プラズマ発生装置に関する。
【0016】
請求項7に係る発明は、前記プラズマ発生源が、前記チャンバー1つに対して複数個配設されていることを特徴とする請求項4乃至6いずれかに記載の磁場付容量結合プラズマ発生装置に関する。
【0017】
請求項8に係る発明は、前記プラズマ発生源が、前記チャンバーの高さ方向あるいは幅方向の両側面に設置されていることを特徴とする請求項7記載の磁場付容量結合プラズマ発生装置に関する。
【0018】
請求項9に係る発明は、成膜用の原料ガスをプラズマ化して基板上に成膜させる成膜装置であって、前記プラズマの発生源が請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源からなることを特徴とする成膜装置に関する。
【0019】
請求項10に係る発明は、プラズマにより生成された活性種によってエッチング対象物をエッチングするエッチング装置であって、前記プラズマの発生源が請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源からなることを特徴とするプラズマエッチング装置に関する。
【0020】
請求項11に係る発明は、プラズマにより生成された活性種によってレジストパターンをアッシングするアッシング装置であって、前記プラズマの発生源が請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源からなることを特徴とするプラズマアッシング装置に関する。
【0021】
請求項12に係る発明は、原料ガスをプラズマ化して基板表面を改質するプラズマ表面処理装置であって、前記プラズマの発生源が請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源からなることを特徴とするプラズマ表面処理装置に関する。
【0022】
請求項13に係る発明は、前記基板の両面に対向して前記プラズマ発生源が配置されていることを特徴とする請求項12記載のプラズマ表面処理装置に関する。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に係る発明によれば、絶縁体上方に配置された電極及び磁石と、前記電極に接続された交流電源を備えており、前記電極は、対向配置された一対の櫛型状電極からなり、前記一対の櫛型状電極は、櫛歯状部が互いに平行に且つ交互に配置され、該櫛歯状部間に前記磁石が配置されており、前記電極からの電界と前記磁石からの磁界によりプラズマ生成用ガスをプラズマ化することにより、大面積且つ均一な電子密度のプラズマを生成することができるとともに、高い電子密度を有する高密度プラズマを得ることができる。
【0024】
請求項2に係る発明によれば、前記一対の櫛型状電極の一方が接地され、他方が交流電源に接続されているため、櫛型状電極からの放電を防止することができる。
【0025】
請求項3に係る発明によれば、前記磁石はN極が前記絶縁体に向いて配置されており、前記N極から出射する磁力線方向が前記電界方向と直交しているため、電界と磁界の直交する箇所で電子密度が高められることとなり、より高密度のプラズマを得ることができる。
【0026】
請求項4に係る発明によれば、請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源と、前記プラズマ生成用ガスが供給されるチャンバーとからなることにより、チャンバー内にて大面積且つ均一な電子密度のプラズマを高密度で生成することが可能なプラズマ発生装置を得ることができる。
【0027】
請求項5に係る発明によれば、前記プラズマ発生源が前記チャンバー外部に配設されているため、チャンバーを小型化することができるとともに、プラズマ発生源の調整やメンテナンスを容易に行うことができる。
【0028】
請求項6に係る発明によれば、前記プラズマ発生源が前記チャンバー内部に配設されているため、プラズマ発生源がチャンバー内に収容された安全性の高いプラズマ発生装置を得ることができる。
【0029】
請求項7に係る発明によれば、前記プラズマ発生源が、前記チャンバー1つに対して複数個配設されていることにより、大面積基板に対してより効率的にプラズマ処理を施すことが可能な装置とすることができる。
【0030】
請求項8に係る発明によれば、前記プラズマ発生源が、前記チャンバーの高さ方向あるいは幅方向の両側面に設置されているため、基板の両面に対して同時に高密度のプラズマ処理を施すことが可能な処理効率が高い装置とすることができる。
【0031】
請求項9に係る発明によれば、成膜用の原料ガスをプラズマ化して基板上に成膜させる成膜装置であって、前記プラズマの発生源が請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源からなることにより、高密度のプラズマにより大面積の基板に対して低温成膜を行うことが可能なプラズマCVD装置が得られる。
【0032】
請求項10に係る発明によれば、プラズマにより生成された活性種によってエッチング対象物をエッチングするエッチング装置であって、前記プラズマの発生源が請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源からなることにより、高密度のプラズマにより大面積のエッチング対象物に対してエッチング処理を施すことが可能なプラズマエッチング装置が得られる。
【0033】
請求項11に係る発明によれば、プラズマにより生成された活性種によってレジストパターンをアッシングするアッシング装置であって、前記プラズマの発生源が請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源からなることにより、高密度のプラズマにより大面積基板に形成されたレジストパターンをアッシングすることが可能なアッシング装置が得られる。
【0034】
請求項12に係る発明によれば、原料ガスをプラズマ化して基板表面を改質するプラズマ表面処理装置であって、前記プラズマの発生源が請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源からなることにより、大面積のシート状基板を高密度のプラズマにより改質することが可能なプラズマ表面処理装置が得られる。
【0035】
請求項13に係る発明によれば、前記基板の両面に対向して前記プラズマ発生源が配置されていることにより、大面積のシート状基板の両面を高密度のプラズマにより改質することが可能なプラズマ表面処理装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るプラズマ発生源の斜視図である。
【図2】本発明に係るプラズマ発生源の平面図である。
【図3】本発明に係るプラズマ発生源の他の例を示す平面図である。
【図4】本発明に係るプラズマ発生源の概略断面図であって、電界及び磁界の方向を模式的に示した図である。
【図5】本発明に係るプラズマ発生源を利用した成膜装置(プラズマCVD装置)を示す概略断面図である。
【図6】本発明に係るプラズマ発生源を利用したプラズマエッチング装置を示す概略断面図である。
【図7】本発明に係るプラズマ発生源を利用したプラズマ表面処理装置を示す概略断面図である。
【図8】プラズマ発生源をチャンバーの内部に配設したプラズマ発生装置の一例を示す概略断面図であってプラズマ表面処理装置を示している。
【図9】チャンバー1つに対してプラズマ発生源を複数個配設したプラズマ発生装置の概略断面図である。
【図10】(a)はプラズマ発生源をチャンバーの高さ方向の両側面に対向して設置した場合、(b)はプラズマ発生源をチャンバーの幅方向の両側面に対向して設置した場合のプラズマ発生装置の一例を示す概略断面図であってプラズマ表面処理装置を示している。
【図11】電子密度の測定結果を示す図であって、(a)は櫛型状電極の櫛型状電極の幅方向の電子密度の測定結果であり、(b)は櫛型状電極の長さ方向の電子密度の測定結果である。
【図12】成膜速度の基板−電極間距離に対する依存性を示す図である。
【図13】エッチング速度の基板−電極間距離に対する依存性を示す図である。
【図14】SiO2薄膜をゲート絶縁膜に使用したZnO−TFTの動作特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係るプラズマ発生源、及びプラズマ発生装置並びに成膜装置、エッチング装置、アッシング装置、表面処理装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係るプラズマ発生源の斜視図、図2は本発明に係るプラズマ発生源の平面図である。
【0038】
本発明に係るプラズマ発生源(1)は、絶縁体(2)上方に配置された電極(3)及び磁石(4)と、電極(3)に接続された交流電源(5)を備えている。(図1では交流電源(5)は省略している。)
電極(3)は、対向して配置された一対の櫛型状電極からなる。
一対の櫛型状電極(3)は、夫々の櫛歯状部が互いに平行に且つ交互に配置されている(図1,2参照)。
電極(3)を構成する夫々の櫛歯の形状は特に限定されない。図示例では角柱状のものが示されているが、放電を防止するためには円柱状であることが好ましい。
また夫々の櫛歯のサイズ(幅,長さ,厚さ)は所望の大きさとすることができ、櫛歯の数も限定されない。櫛歯の長さを長くする或いは櫛歯の数を増やすことにより、1つのプラズマ発生源にて大面積のプラズマ処理を行うことが可能となる。
【0039】
電極(3)には交流電源(5)が接続される。
電極(3)に接続される交流電源(5)は、高周波を印加可能な高周波電源であることが望ましい。具体的には、一般的に使用される13.56MHzやそれ以上の27MHz、40MHz等の高周波を印加可能であることが好ましい。高周波電源を使用することで、高密度のプラズマを生成することが可能となる。
【0040】
電極(3)に対する交流電源(5)の接続形態は、図2に示すように、一対の櫛型状電極(3)の一方を接地し、他方をマッチングボックス(6)を介して交流電源(5)に接続することが一般的であるが、これに限定されず例えば図3に示すような接続形態としてもよい。
図3に示す接続形態では、トランス(7)の1次側コイルに交流電源(5)が接続され、2次側コイルは中点が接地されるとともに両端が夫々の櫛形状電極(3)に接続されている。このような接続形態とすることで、電極(3)からの放電を防ぐことができる。
【0041】
電極(3)の櫛歯状部間には磁石(4)が配置されている。
磁石(4)には永久磁石や電磁石が好適に使用される。永久磁石を使用する場合はサマリウムコバルト磁石(SmCo5又はSm2Co17)やネオジム磁石(Nd2Fe14B)等の強力な永久磁石が好適である。
【0042】
電極(3)及び磁石(4)の下方に配置される絶縁体(誘電体)(2)は、プラズマ発生源(1)を後述するチャンバー外部に配設してプラズマ発生装置を構成する場合において、チャンバー内部にプラズマを生成するための誘電体窓としての役割を果たすものであり、石英、窒化アルミニウム、アルミナ等の平板から構成される。
【0043】
本発明においては、電極(3)及び磁石(4)の端部と絶縁体(2)との間に絶縁板(211)を介在させることができる(図1参照)。
絶縁板(211)は、電極(3)の端部における異常放電を防止する役割を果たすものであり、例えばポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))やポリオキシメチレン(デルリン(登録商標))等で形成される。
【0044】
図4は、プラズマ発生源(1)の概略断面図であって、電界及び磁界の発生を模式的に示した図である。図4において、電極(3)間に発生する電界は破線で示し、磁石(4)から発生する磁界は一点鎖線で示している。
図4に示すように、電界は隣り合う電極(3)間を繋ぐように円弧状に発生し、電極(3)間に配置された磁石(4)からは磁界が略垂直方向に発生する。これにより、電極(3)から発生する電界と磁石(4)のN極から出射する磁力線が直交することとなり、この電界と磁力線とが直交する箇所で最も励起され、高い電子密度(1011〜1013cm−3)を有する高密度のプラズマが生成されることとなる。
尚、図4では全ての磁石(4)のN極を絶縁体(2)側に向けて配置しているが、全ての磁石(4)のS極を絶縁体(2)側に向けて配置してもよい。
また、N極、S極を交互に絶縁体(2)側に向けて配置してもよく、この場合は磁力線が絶縁体(2)に対して略平行に発生し(図示略)、電界と磁力線が直交する箇所で最も励起され、高い電子密度(1011〜1013cm−3)を有する高密度のプラズマが生成されることとなる。
【0045】
上記したプラズマ発生源(1)とプラズマ生成用ガスが供給されるチャンバーとを組み合わせることにより、本発明に係るプラズマ発生装置が構成される。
【0046】
チャンバー内に供給されるプラズマ生成用ガスの種類は特に限定されず、目的に応じて適宜変更される。例えば、アルゴン(Ar)、窒素(N2)、ヘリウム(He)、キセノン(Xe)、クリプトン(Kr)、フッ素(F)等のラジカル(遊離基)が生じやすいガスが好適に使用される。更に、酸化膜を成膜する場合は酸素(O2)、亜酸化窒素(N2O)、オゾン(O3)等の酸化性ガスが使用され、シリコン(Si)膜の場合は水素(H2)等が好適に使用される。
チャンバー内に供給される上記のプラズマ生成用ガスは、電極(3)から発生する電界と磁石(4)から発生する磁界によってプラズマ化され、高密度のプラズマとなる。
【0047】
上記構成からなる本発明に係るプラズマ発生源(1)は、成膜装置(プラズマCVD装置)、プラズマエッチング装置、プラズマアッシング装置、プラズマ表面処理装置等のプラズマを使用する様々な装置に利用することが可能である。
【0048】
図5は、本発明に係るプラズマ発生源を利用した成膜装置(プラズマCVD装置)を示す概略断面図である。
図5に示す成膜装置(21)は、成膜用の原料ガスをプラズマ化して基板(9)上に成膜させる成膜装置(プラズマCVD装置)であり、プラズマの発生源として上記構成からなる本発明に係るプラズマ発生源(1)が利用される。
【0049】
基板(9)は、成膜装置(21)の成膜室となるチャンバー(8)内の下方に配設された基板電極(12)上に載置されており、基板電極(12)にはパルス電源(13)あるいは高周波電源(図示略)が接続されている。尚、基板電極(12)には基板(9)を加熱可能なヒーター(14)を設けてもよい。
パルス電源(13)を使用する場合、両極性パルスバイアスを印加可能であることが好ましい。成膜時に基板(9)に対して両極性パルスバイアスを印加することにより、高速成膜時の膜質劣化を防止することができる。
また、成膜装置(21)は、基板(9)を走査するための走査手段(図示略)を備えている。
【0050】
チャンバー(8)内の上方且つプラズマ生成ガス供給口(15)の下方には多孔電極(16)が配置されている。
多孔電極(16)は、多数の小孔が全面に設けられた多孔板からなり、チャンバー(8)内を水平面内で上下に仕切るように設けられ、接地されている。また、必要に応じて両極性のバイアスが印加される。
また、基板(9)の上方には、複数のガス供給口(17)が配置されている。これらのガス供給口(17)には、別々のバルブ及び流量制御器を介して、例えば有機金属材料ガス、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、アルゴン(Ar)、窒素(N2)等の成膜に応じた複数のガス容器(18)が接続されている。これら複数のガス容器(18)に収容されたガスは、単独でもしくは2種以上を任意の割合で混合してガス供給口(17)からチャンバー(8)内へと供給することが可能となっている。
【0051】
チャンバー(8)の下部には、チャンバー(8)内の圧力を調整するための圧力調整バルブ(19)と、チャンバー(8)内の気体の排気システムとしてのターボ分子ポンプ(20)及びロータリーポンプ(22)が接続されている。このような排気システムを設けることにより、材料ガスを大流量で供給した条件において低成膜圧力を実現することが可能となる。
【0052】
図5に示した成膜装置(21)によれば、プラズマ生成ガス供給口(15)から供給されたプラズマ生成用ガスが、プラズマ発生源(1)に備えられる電極(3)から発生する電界と磁石(4)から発生する磁界によってプラズマ化される。
例えば、プラズマ生成ガス供給口(15)からチャンバー(8)内に大流量のオゾン(O3)を供給することにより、オゾンを材料とする酸化性プラズマ(高酸化プラズマ)を生成することができる。
【0053】
プラズマは、チャンバー(8)内に均一に生成され、高い電子密度(1011〜1013cm−3)を有する高密度プラズマとなる。
生成された高密度プラズマ(酸化性プラズマ)により、ガス供給口(17)から供給される成膜の原料となるガス(HMDS等)が励起分解され、酸化ケイ素(SiO2)等の酸化膜が基板(9)上に成膜される。
このとき、高密度プラズマ中の粒子(イオン)は、多孔電極(16)に設けられた小孔を通過する際に減速されてエネルギーが減少する、あるいは多孔電極(16)にトラップされるため、高エネルギー粒子の衝突による基板(9)の損傷を防ぐことができる。
【0054】
この成膜装置(21)では、プラズマ発生源(1)から高密度なプラズマが生成されるため、基板(9)を電極(3)を形成する櫛歯の長さ方向と直交する方向(矢印の方向)に走査することにより、大面積基板に対して成膜が可能となる。また、高密度プラズマにより低温での成膜が可能となる。
【0055】
尚、上記した成膜装置(21)において、チャンバー(8)内に供給されるガスの種類は上記したものに限定されず、成膜される膜の種類に合わせて変更が可能であることは言うまでもない。
【0056】
図6は本発明に係るプラズマ発生源を利用したプラズマエッチング装置を示す概略断面図である。
図6に示すプラズマエッチング装置(31)は、プラズマにより生成された活性種(電子、イオン、ラジカル)によって基板(9)にエッチング処理を施す。このプラズマエッチング装置(31)のプラズマの発生源として上記構成からなる本発明に係るプラズマ発生源(1)が利用される。
【0057】
基板(9)は、プラズマエッチング装置(31)のエッチング処理室となるチャンバー(8)内の下方に配設された基板電極(12)上に載置されており、基板電極(12)にはパルス電源(13)あるいは高周波電源(図示略)が接続されている。パルス電源(13)を使用する場合、両極性パルスバイアスを印加可能であることが好ましい。
【0058】
活性種の原料となる反応性ガスは、プラズマ生成ガス供給口(15)からチャンバー(8)内に供給される。
活性種の原料となる反応性ガス(プラズマ生成ガス)は公知のものを使用することができ、例えばパーフルオロカーボン(PFCガス)やハイドロフルオロカーボン(HFCガス)、無機ハロゲンガス、炭化水素系ガス、アルゴン(Ar)やキセノン(Xe)等の希ガス、酸素(O2)、窒素(N2)等が挙げられ、基板(9)に応じて適宜変更される。
また、エッチング処理時にチャンバー(8)内を減圧するための真空排気系が備えられており、圧力調整バルブ(19)を介してターボ分子ポンプ(20)とロータリーポンプ(22)とが設置されている。
【0059】
図6に示したプラズマエッチング装置(31)によれば、プラズマ生成ガス供給口(15)からチャンバー(8)内に供給されたプラズマ生成ガスが、プラズマ発生源(1)に備えられる電極(3)から発生する電界と磁石(4)から発生する磁界によってプラズマ化される。
これにより、チャンバー(8)内に均一なプラズマが生成され、高い電子密度(1011〜1013cm−3)を有する高密度プラズマとなる。
【0060】
このプラズマエッチング装置(31)では、プラズマ発生源(1)から高密度なプラズマが生成されるため、基板(9)を電極(3)を形成する櫛歯の長さ方向と直交する方向(矢印の方向)に走査することにより、大面積基板に対してエッチング処理が可能となる。
【0061】
また、本発明に係るプラズマ発生源(1)は、レジストパターンをアッシングするアッシング装置にも好適に利用可能である。
本発明に係るプラズマ発生装置を利用したアッシング装置の構成は、図6に示すプラズマエッチング装置(31)と構成が略同じであるため、詳細な説明を省略する。
プラズマアッシングにおいて、プラズマ化されるガスは酸素(O2)である。酸素はプラズマ生成ガス供給口(15)からチャンバー(8)内に供給され、プラズマ発生源(1)に備えられる電極(3)から発生する電界と磁石(4)から発生する磁界によってプラズマ化される。
これにより、チャンバー(8)内に均一なプラズマが生成され、高い電子密度(1011〜1013cm−3)を有する高密度プラズマとなる。
この高密度プラズマ中の酸素ラジカルとレジストパターンを形成するフォトレジストとが結合し、フォトレジストが二酸化炭素と水になり、蒸発して剥離される。
このプラズマアッシング装置では、プラズマ発生源(1)から高密度なプラズマが生成されるため、基板(9)を電極(3)を形成する櫛歯の長さ方向と直交する方向に走査することにより、大面積基板上のレジストパターンを効率的にアッシングすることが可能となる。
【0062】
図7は本発明に係るプラズマ発生装置を利用したプラズマ表面処理装置を示す概略断面図である。
図7に示すプラズマ表面処理装置(41)は、反応性ガスをプラズマ化して被処理物である基板(9)表面を改質する。このプラズマ表面処理装置(41)のプラズマ発生源として上記構成からなる本発明に係るプラズマ発生源(1)が利用される。
【0063】
プラズマ表面処理装置(41)は、図6に示したプラズマエッチング装置(31)と略同様の構成であるため、プラズマエッチング装置(31)と同じ符号を用いて説明する。
尚、本発明に係るプラズマ表面処理装置(41)は、上記した成膜装置(21)と略同様の構造としてもよい。
表面処理の被処理物、即ち表面処理の対象となる基板(9)はプラズマ表面処理装置の処理室となるチャンバー(8)の下方に配設された基板電極(12)上に載置される。基板電極(12)にはパルス電源(13)あるいは高周波電源(図示略)が接続される。
被処理物である基板(9)は、シート状の合成樹脂であり、巻き取り装置(42)により被処理面が走査される。
【0064】
反応性ガスは、プラズマ生成ガス供給口(15)からチャンバー(8)内に供給される。
この反応性ガスには酸素(O2)、窒素(N2)、アルゴン(Ar)等が用いられる。
また、表面処理時にチャンバー(8)内を減圧するための真空排気系がチャンバー(8)の下方に備えられている(図示略)。
【0065】
このプラズマ表面処理装置(41)では、プラズマ発生源(1)から高密度なプラズマが生成されるため、被処理物である基板(9)を電極(3)を形成する櫛歯の長さ方向と直交する方向に巻き取る(図7中矢印方向)ことにより、大面積の被処理物の表面に対して改質処理を施すことが可能となる。
【0066】
上記した本発明に係るプラズマ発生装置において、プラズマ発生源(1)は図5〜図7に示すようにチャンバー(8)の外部に配設することが一般的であるが、チャンバー(8)の内部に配設してもよい。
図8はプラズマ発生源(1)をチャンバー(8)の内部に配設したプラズマ発生装置の一例を示す概略断面図であって、プラズマ表面処理装置(41)を示している。
プラズマ発生源(1)をチャンバー(8)の外部に配設した場合、チャンバーを小型化することができるとともにプラズマ発生源(1)の調整やメンテナンスを容易に行うことができる点で有利であるが、プラズマ発生源(1)をチャンバー(8)の内部に配設した場合、プラズマ発生源(1)がチャンバー(8)内に収容された安全性の高いプラズマ発生装置を得ることができる。
【0067】
また、上記した本発明に係るプラズマ発生装置において、チャンバー1つに対してプラズマ発生源(1)を複数個配設することもできる。
図9はチャンバー(8)1つに対してプラズマ発生源(1)を複数個配設したプラズマ発生装置の概略断面図である。尚、図9においては、プラズマ発生源(1)とチャンバー(8)のみを図示し、プラズマ生成用ガス供給経路等の他の構成は省略している。
図9に示すように、チャンバー(8)一つに対してプラズマ発生源(1)を複数個配設し、プラズマ発生源(1)が並んだ方向に基板(9)を走査する(図9中矢印方向)ことで、大面積の基板(9)であっても効率的にプラズマ処理を施すことが可能となり、成膜装置として利用した場合には成膜速度を向上させることができる。
また、図示例のプラズマ発生装置(11)では、チャンバー(8)の外部にプラズマ発生源(1)が配設されているが、チャンバー(8)の内部にプラズマ発生源(1)を複数個配設してもよい。
【0068】
更に、上記した本発明に係るプラズマ発生装置(11)において、プラズマ発生源(1)をチャンバーの高さ方向あるいは幅方向の両側面に設置することもできる。
図10(a)はプラズマ発生源(1)をチャンバー(8)の高さ方向の両側面に対向して設置した場合、図10(b)はプラズマ発生源(1)をチャンバー(8)の幅方向の両側面に対向して設置した場合のプラズマ発生装置の一例を示す概略断面図であってプラズマ表面処理装置(41)を示している。尚、図10においても、プラズマ発生源(1)とチャンバー(8)のみを図示し、プラズマ生成用ガス供給経路等の他の構成は省略している。
このような構成とすることで、基板(9)の両面に対して同時に高密度プラズマによりプラズマ処理を施すことが可能となり、改質処理の効率を向上させることができる。また、成膜装置として利用した場合には基板の両面に同時に成膜することができるため成膜効率を向上させることができる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明に係るプラズマ発生源の実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。但し、本発明は以下の実施例には限定されない。
【0070】
(実施例1)
図1,2に示す構成を備えた本発明に係るプラズマ発生源(1)をチャンバー(8)の上部に取り付け、電極(3)の櫛歯の幅方向(図2左右方向)の電子密度、及び櫛型状電極(3)の長さ方向(図2上下方向)の電子密度(プラズマ密度)を絶縁体(2)下面から5cmの距離において測定した。
プラズマ生成面積を80mm×80mmとし、チャンバー(8)内に供給されるプラズマ生成用ガスとしてはアルゴンガスを使用した。
【0071】
測定結果を図11に示す。図11(a)は電極(3)の櫛歯の幅方向の電子密度の測定結果であり、図11(b)は電極(3)の長さ方向の電子密度の測定結果である。尚、図11(a)上部に示された太線は電極(3)の櫛歯状部の位置を示している。
図11から明らかなように、実施例の装置においては電極(3)の幅方向、長さ方向にかかわらず、約3×1010cm−3の高い電子密度が得られた。
この結果から、本発明(実施例)に係るプラズマ発生源によれば、従来のICPやCCPと比して格段に高密度で且つ均一なプラズマが得られることが確認された。
【0072】
(実施例2)
図5に示す構成を備えた本発明に係る成膜装置(プラズマCVD装置)を使用して表1に示す条件にてSiO2薄膜を成膜し、成膜速度及びエッチング速度についてテトラメチルジシラザン(TMS)供給量の依存性を評価した。結果を図12及び図13に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
図12は、成膜速度の基板−電極間距離に対する依存性の結果である。◆はTMS供給量が2.5sccm、■は3.3sccm、▲は5.0sccmにおける結果である。
基板−電極間距離が20mm、TMS供給量が5.0sccmにおいて、約40nm/minの成膜速度での成膜が可能であることが確認された。
【0075】
また、図13はバッファードフッ酸(BHF)エッチング速度の基板−電極間距離に対する依存性の結果である。◆はTMS供給量が2.5sccm、■は3.3sccm、▲は5.0sccmにおける結果である。
基板−電極間距離が20mmにおいては、いずれのTMS供給量においても約200nm/minのエッチング速度を得ることができた。
【0076】
従来のICPやCCPを利用して成膜した場合、TMS供給量が増加すると、投入電力を増加させてもTMSが分解されない(TMSの供給律速)が、本発明に係るプラズマ発生源を使用すると、TMS供給量を増加させた場合にも高密度プラズマによりTMSの分解が促進されることとなる。
以上の結果から、150℃の低温且つ200mTorrの低真空において40nm/minという高い成膜速度で、緻密なSiO2薄膜の成膜が可能であることが明らかとなった。
【0077】
(実施例3)
表2に示す条件において成膜したSiO2薄膜をゲート絶縁膜としてZnO−TFTを作製し、TFTの動作特性を評価した。結果を図14に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
図14より、ドレイン電流、リーク電圧ともに良好な特性を示すことがわかった。特に電界効果移動度(μ)においては、1cm2/V・secの優れた特性を示すことが確認された。
以上の結果より、本発明に係るプラズマ発生源を利用すると、150℃の低温且つ200mTorrの低真空において、段差被覆性(カバレッジ)に優れたゲート絶縁膜を作製することが可能となり、良好な特性を有するTFTを得ることが可能であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係るプラズマ発生源はプラズマ発生装置に好適に利用され、このプラズマ発生装置は、例えばプラズマCVD装置等の成膜装置、プラズマエッチング装置、プラズマアッシング装置、プラズマ表面処理装置等に好適に利用することが可能である。本発明に係る成膜装置は、例えばフレキシブルディスプレイ用の酸化亜鉛薄膜トランジスタや、次世代ディスプレイのための大面積有機エレクトロルミネッセンス並びに大面積液晶ディスプレイのシリコン薄膜トランジスタの作製等に好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 プラズマ発生源
2 絶縁体
3 電極
4 磁石
5 交流電源
8 チャンバー
9 基板
11 プラズマ発生装置
21 成膜装置(プラズマCVD装置)
31 プラズマエッチング装置
41 プラズマ表面処理装置
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマ発生源及びプラズマ発生装置並びに成膜装置、エッチング装置、表面処理装置、アッシング装置に関し、より詳しくは、磁場付容量結合プラズマ(HCCP)発生装置及びこのプラズマ発生装置を利用した成膜装置、エッチング装置、アッシング装置、表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ等に用いられる薄膜トランジスタ(TFT)等の電子デバイスの製造工程では、プラズマを利用した加工や処理が多用されている。
近年、上記したディスプレイの大型化に伴って、大面積の基板に対してのプラズマ処理が可能なプラズマ発生源及びプラズマ処理技術が求められている。
【0003】
上記プラズマ処理に用いられるプラズマとしては、例えば誘導結合プラズマ(ICP)や容量結合プラズマ(CCP)等が知られており、これらを大面積基板のプラズマ処理に適用可能とするためのプラズマ発生装置が多く提案されている。
【0004】
特許文献1には、複数個の電極を備えた容量結合プラズマ発生装置が開示されている。
特許文献1の開示技術は、複数個の電極と複数個のガス供給口を備えた電極装着板をプラズマ生成用の反応器に設置し、夫々の電極間でプラズマを発生させようとするものである。この技術を用いると、電極の数を増加させることで大面積の基板に対してもプラズマ処理が可能となる。
【0005】
しかし、特許文献1の開示技術では、夫々の電極間ごとにプラズマ生成用のガスを供給しなければ、安定的に均一なプラズマを生成することは困難であった。
【0006】
一方、特許文献2には、二つ以上の電極を櫛型に且つ平面状に配置し、各電極を誘電体で被覆して電極に交流電力を印加してプラズマを生成する装置が開示されている。
この装置によれば、平面状に櫛型に配置した複数の電極を備えることにより、プラズマの生成可能な面積を増加させることができる。また、処理対象となる基板を走査することで大面積の基板へも利用することができる。
【0007】
しかし、上記した特許文献1及び2の開示技術は、大面積の基板に対しての処理は可能であるが、原理的には従来のCCPと同様であるため、電子密度が1010cm−3を超える高密度のプラズマを得ることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−105030号公報
【特許文献2】特開2003−062452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、均一で高密度且つ大面積のプラズマを安定的に生成することが可能であるプラズマ発生源及びプラズマ発生装置、並びにこのプラズマ発生装置を利用した成膜装置、エッチング装置、アッシング装置、表面処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、絶縁体上方に配置された電極及び磁石と、前記電極に接続された交流電源を備えており、前記電極は、対向配置された一対の櫛型状電極からなり、
前記一対の櫛型状電極は、櫛歯状部が互いに平行に且つ交互に配置され、該櫛歯状部間に前記磁石が配置されており、前記電極からの電界と前記磁石からの磁界によりプラズマ生成用ガスをプラズマ化することを特徴とする磁場付容量結合プラズマ発生源に関する。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記一対の櫛型状電極の一方が接地され、他方が交流電源に接続されていることを特徴とする請求項1記載の磁場付容量結合プラズマ発生源に関する。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記磁石はN極が前記絶縁体に向いて配置されており、前記N極から出射する磁力線方向が前記電界方向と直交していることを特徴とする請求項1又は2記載の磁場付容量結合プラズマ発生源に関する。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源と、前記プラズマ生成用ガスが供給されるチャンバーとからなることを特徴とする磁場付容量結合プラズマ発生装置に関する。
【0014】
請求項5に係る発明は、前記プラズマ発生源が、前記チャンバー外部に配設されていることを特徴とする請求項4記載の磁場付容量結合プラズマ発生装置に関する。
【0015】
請求項6に係る発明は、前記プラズマ発生源が、前記チャンバー内部に配設されていることを特徴とする請求項4記載の磁場付容量結合プラズマ発生装置に関する。
【0016】
請求項7に係る発明は、前記プラズマ発生源が、前記チャンバー1つに対して複数個配設されていることを特徴とする請求項4乃至6いずれかに記載の磁場付容量結合プラズマ発生装置に関する。
【0017】
請求項8に係る発明は、前記プラズマ発生源が、前記チャンバーの高さ方向あるいは幅方向の両側面に設置されていることを特徴とする請求項7記載の磁場付容量結合プラズマ発生装置に関する。
【0018】
請求項9に係る発明は、成膜用の原料ガスをプラズマ化して基板上に成膜させる成膜装置であって、前記プラズマの発生源が請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源からなることを特徴とする成膜装置に関する。
【0019】
請求項10に係る発明は、プラズマにより生成された活性種によってエッチング対象物をエッチングするエッチング装置であって、前記プラズマの発生源が請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源からなることを特徴とするプラズマエッチング装置に関する。
【0020】
請求項11に係る発明は、プラズマにより生成された活性種によってレジストパターンをアッシングするアッシング装置であって、前記プラズマの発生源が請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源からなることを特徴とするプラズマアッシング装置に関する。
【0021】
請求項12に係る発明は、原料ガスをプラズマ化して基板表面を改質するプラズマ表面処理装置であって、前記プラズマの発生源が請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源からなることを特徴とするプラズマ表面処理装置に関する。
【0022】
請求項13に係る発明は、前記基板の両面に対向して前記プラズマ発生源が配置されていることを特徴とする請求項12記載のプラズマ表面処理装置に関する。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に係る発明によれば、絶縁体上方に配置された電極及び磁石と、前記電極に接続された交流電源を備えており、前記電極は、対向配置された一対の櫛型状電極からなり、前記一対の櫛型状電極は、櫛歯状部が互いに平行に且つ交互に配置され、該櫛歯状部間に前記磁石が配置されており、前記電極からの電界と前記磁石からの磁界によりプラズマ生成用ガスをプラズマ化することにより、大面積且つ均一な電子密度のプラズマを生成することができるとともに、高い電子密度を有する高密度プラズマを得ることができる。
【0024】
請求項2に係る発明によれば、前記一対の櫛型状電極の一方が接地され、他方が交流電源に接続されているため、櫛型状電極からの放電を防止することができる。
【0025】
請求項3に係る発明によれば、前記磁石はN極が前記絶縁体に向いて配置されており、前記N極から出射する磁力線方向が前記電界方向と直交しているため、電界と磁界の直交する箇所で電子密度が高められることとなり、より高密度のプラズマを得ることができる。
【0026】
請求項4に係る発明によれば、請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源と、前記プラズマ生成用ガスが供給されるチャンバーとからなることにより、チャンバー内にて大面積且つ均一な電子密度のプラズマを高密度で生成することが可能なプラズマ発生装置を得ることができる。
【0027】
請求項5に係る発明によれば、前記プラズマ発生源が前記チャンバー外部に配設されているため、チャンバーを小型化することができるとともに、プラズマ発生源の調整やメンテナンスを容易に行うことができる。
【0028】
請求項6に係る発明によれば、前記プラズマ発生源が前記チャンバー内部に配設されているため、プラズマ発生源がチャンバー内に収容された安全性の高いプラズマ発生装置を得ることができる。
【0029】
請求項7に係る発明によれば、前記プラズマ発生源が、前記チャンバー1つに対して複数個配設されていることにより、大面積基板に対してより効率的にプラズマ処理を施すことが可能な装置とすることができる。
【0030】
請求項8に係る発明によれば、前記プラズマ発生源が、前記チャンバーの高さ方向あるいは幅方向の両側面に設置されているため、基板の両面に対して同時に高密度のプラズマ処理を施すことが可能な処理効率が高い装置とすることができる。
【0031】
請求項9に係る発明によれば、成膜用の原料ガスをプラズマ化して基板上に成膜させる成膜装置であって、前記プラズマの発生源が請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源からなることにより、高密度のプラズマにより大面積の基板に対して低温成膜を行うことが可能なプラズマCVD装置が得られる。
【0032】
請求項10に係る発明によれば、プラズマにより生成された活性種によってエッチング対象物をエッチングするエッチング装置であって、前記プラズマの発生源が請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源からなることにより、高密度のプラズマにより大面積のエッチング対象物に対してエッチング処理を施すことが可能なプラズマエッチング装置が得られる。
【0033】
請求項11に係る発明によれば、プラズマにより生成された活性種によってレジストパターンをアッシングするアッシング装置であって、前記プラズマの発生源が請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源からなることにより、高密度のプラズマにより大面積基板に形成されたレジストパターンをアッシングすることが可能なアッシング装置が得られる。
【0034】
請求項12に係る発明によれば、原料ガスをプラズマ化して基板表面を改質するプラズマ表面処理装置であって、前記プラズマの発生源が請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源からなることにより、大面積のシート状基板を高密度のプラズマにより改質することが可能なプラズマ表面処理装置が得られる。
【0035】
請求項13に係る発明によれば、前記基板の両面に対向して前記プラズマ発生源が配置されていることにより、大面積のシート状基板の両面を高密度のプラズマにより改質することが可能なプラズマ表面処理装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るプラズマ発生源の斜視図である。
【図2】本発明に係るプラズマ発生源の平面図である。
【図3】本発明に係るプラズマ発生源の他の例を示す平面図である。
【図4】本発明に係るプラズマ発生源の概略断面図であって、電界及び磁界の方向を模式的に示した図である。
【図5】本発明に係るプラズマ発生源を利用した成膜装置(プラズマCVD装置)を示す概略断面図である。
【図6】本発明に係るプラズマ発生源を利用したプラズマエッチング装置を示す概略断面図である。
【図7】本発明に係るプラズマ発生源を利用したプラズマ表面処理装置を示す概略断面図である。
【図8】プラズマ発生源をチャンバーの内部に配設したプラズマ発生装置の一例を示す概略断面図であってプラズマ表面処理装置を示している。
【図9】チャンバー1つに対してプラズマ発生源を複数個配設したプラズマ発生装置の概略断面図である。
【図10】(a)はプラズマ発生源をチャンバーの高さ方向の両側面に対向して設置した場合、(b)はプラズマ発生源をチャンバーの幅方向の両側面に対向して設置した場合のプラズマ発生装置の一例を示す概略断面図であってプラズマ表面処理装置を示している。
【図11】電子密度の測定結果を示す図であって、(a)は櫛型状電極の櫛型状電極の幅方向の電子密度の測定結果であり、(b)は櫛型状電極の長さ方向の電子密度の測定結果である。
【図12】成膜速度の基板−電極間距離に対する依存性を示す図である。
【図13】エッチング速度の基板−電極間距離に対する依存性を示す図である。
【図14】SiO2薄膜をゲート絶縁膜に使用したZnO−TFTの動作特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係るプラズマ発生源、及びプラズマ発生装置並びに成膜装置、エッチング装置、アッシング装置、表面処理装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係るプラズマ発生源の斜視図、図2は本発明に係るプラズマ発生源の平面図である。
【0038】
本発明に係るプラズマ発生源(1)は、絶縁体(2)上方に配置された電極(3)及び磁石(4)と、電極(3)に接続された交流電源(5)を備えている。(図1では交流電源(5)は省略している。)
電極(3)は、対向して配置された一対の櫛型状電極からなる。
一対の櫛型状電極(3)は、夫々の櫛歯状部が互いに平行に且つ交互に配置されている(図1,2参照)。
電極(3)を構成する夫々の櫛歯の形状は特に限定されない。図示例では角柱状のものが示されているが、放電を防止するためには円柱状であることが好ましい。
また夫々の櫛歯のサイズ(幅,長さ,厚さ)は所望の大きさとすることができ、櫛歯の数も限定されない。櫛歯の長さを長くする或いは櫛歯の数を増やすことにより、1つのプラズマ発生源にて大面積のプラズマ処理を行うことが可能となる。
【0039】
電極(3)には交流電源(5)が接続される。
電極(3)に接続される交流電源(5)は、高周波を印加可能な高周波電源であることが望ましい。具体的には、一般的に使用される13.56MHzやそれ以上の27MHz、40MHz等の高周波を印加可能であることが好ましい。高周波電源を使用することで、高密度のプラズマを生成することが可能となる。
【0040】
電極(3)に対する交流電源(5)の接続形態は、図2に示すように、一対の櫛型状電極(3)の一方を接地し、他方をマッチングボックス(6)を介して交流電源(5)に接続することが一般的であるが、これに限定されず例えば図3に示すような接続形態としてもよい。
図3に示す接続形態では、トランス(7)の1次側コイルに交流電源(5)が接続され、2次側コイルは中点が接地されるとともに両端が夫々の櫛形状電極(3)に接続されている。このような接続形態とすることで、電極(3)からの放電を防ぐことができる。
【0041】
電極(3)の櫛歯状部間には磁石(4)が配置されている。
磁石(4)には永久磁石や電磁石が好適に使用される。永久磁石を使用する場合はサマリウムコバルト磁石(SmCo5又はSm2Co17)やネオジム磁石(Nd2Fe14B)等の強力な永久磁石が好適である。
【0042】
電極(3)及び磁石(4)の下方に配置される絶縁体(誘電体)(2)は、プラズマ発生源(1)を後述するチャンバー外部に配設してプラズマ発生装置を構成する場合において、チャンバー内部にプラズマを生成するための誘電体窓としての役割を果たすものであり、石英、窒化アルミニウム、アルミナ等の平板から構成される。
【0043】
本発明においては、電極(3)及び磁石(4)の端部と絶縁体(2)との間に絶縁板(211)を介在させることができる(図1参照)。
絶縁板(211)は、電極(3)の端部における異常放電を防止する役割を果たすものであり、例えばポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))やポリオキシメチレン(デルリン(登録商標))等で形成される。
【0044】
図4は、プラズマ発生源(1)の概略断面図であって、電界及び磁界の発生を模式的に示した図である。図4において、電極(3)間に発生する電界は破線で示し、磁石(4)から発生する磁界は一点鎖線で示している。
図4に示すように、電界は隣り合う電極(3)間を繋ぐように円弧状に発生し、電極(3)間に配置された磁石(4)からは磁界が略垂直方向に発生する。これにより、電極(3)から発生する電界と磁石(4)のN極から出射する磁力線が直交することとなり、この電界と磁力線とが直交する箇所で最も励起され、高い電子密度(1011〜1013cm−3)を有する高密度のプラズマが生成されることとなる。
尚、図4では全ての磁石(4)のN極を絶縁体(2)側に向けて配置しているが、全ての磁石(4)のS極を絶縁体(2)側に向けて配置してもよい。
また、N極、S極を交互に絶縁体(2)側に向けて配置してもよく、この場合は磁力線が絶縁体(2)に対して略平行に発生し(図示略)、電界と磁力線が直交する箇所で最も励起され、高い電子密度(1011〜1013cm−3)を有する高密度のプラズマが生成されることとなる。
【0045】
上記したプラズマ発生源(1)とプラズマ生成用ガスが供給されるチャンバーとを組み合わせることにより、本発明に係るプラズマ発生装置が構成される。
【0046】
チャンバー内に供給されるプラズマ生成用ガスの種類は特に限定されず、目的に応じて適宜変更される。例えば、アルゴン(Ar)、窒素(N2)、ヘリウム(He)、キセノン(Xe)、クリプトン(Kr)、フッ素(F)等のラジカル(遊離基)が生じやすいガスが好適に使用される。更に、酸化膜を成膜する場合は酸素(O2)、亜酸化窒素(N2O)、オゾン(O3)等の酸化性ガスが使用され、シリコン(Si)膜の場合は水素(H2)等が好適に使用される。
チャンバー内に供給される上記のプラズマ生成用ガスは、電極(3)から発生する電界と磁石(4)から発生する磁界によってプラズマ化され、高密度のプラズマとなる。
【0047】
上記構成からなる本発明に係るプラズマ発生源(1)は、成膜装置(プラズマCVD装置)、プラズマエッチング装置、プラズマアッシング装置、プラズマ表面処理装置等のプラズマを使用する様々な装置に利用することが可能である。
【0048】
図5は、本発明に係るプラズマ発生源を利用した成膜装置(プラズマCVD装置)を示す概略断面図である。
図5に示す成膜装置(21)は、成膜用の原料ガスをプラズマ化して基板(9)上に成膜させる成膜装置(プラズマCVD装置)であり、プラズマの発生源として上記構成からなる本発明に係るプラズマ発生源(1)が利用される。
【0049】
基板(9)は、成膜装置(21)の成膜室となるチャンバー(8)内の下方に配設された基板電極(12)上に載置されており、基板電極(12)にはパルス電源(13)あるいは高周波電源(図示略)が接続されている。尚、基板電極(12)には基板(9)を加熱可能なヒーター(14)を設けてもよい。
パルス電源(13)を使用する場合、両極性パルスバイアスを印加可能であることが好ましい。成膜時に基板(9)に対して両極性パルスバイアスを印加することにより、高速成膜時の膜質劣化を防止することができる。
また、成膜装置(21)は、基板(9)を走査するための走査手段(図示略)を備えている。
【0050】
チャンバー(8)内の上方且つプラズマ生成ガス供給口(15)の下方には多孔電極(16)が配置されている。
多孔電極(16)は、多数の小孔が全面に設けられた多孔板からなり、チャンバー(8)内を水平面内で上下に仕切るように設けられ、接地されている。また、必要に応じて両極性のバイアスが印加される。
また、基板(9)の上方には、複数のガス供給口(17)が配置されている。これらのガス供給口(17)には、別々のバルブ及び流量制御器を介して、例えば有機金属材料ガス、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、アルゴン(Ar)、窒素(N2)等の成膜に応じた複数のガス容器(18)が接続されている。これら複数のガス容器(18)に収容されたガスは、単独でもしくは2種以上を任意の割合で混合してガス供給口(17)からチャンバー(8)内へと供給することが可能となっている。
【0051】
チャンバー(8)の下部には、チャンバー(8)内の圧力を調整するための圧力調整バルブ(19)と、チャンバー(8)内の気体の排気システムとしてのターボ分子ポンプ(20)及びロータリーポンプ(22)が接続されている。このような排気システムを設けることにより、材料ガスを大流量で供給した条件において低成膜圧力を実現することが可能となる。
【0052】
図5に示した成膜装置(21)によれば、プラズマ生成ガス供給口(15)から供給されたプラズマ生成用ガスが、プラズマ発生源(1)に備えられる電極(3)から発生する電界と磁石(4)から発生する磁界によってプラズマ化される。
例えば、プラズマ生成ガス供給口(15)からチャンバー(8)内に大流量のオゾン(O3)を供給することにより、オゾンを材料とする酸化性プラズマ(高酸化プラズマ)を生成することができる。
【0053】
プラズマは、チャンバー(8)内に均一に生成され、高い電子密度(1011〜1013cm−3)を有する高密度プラズマとなる。
生成された高密度プラズマ(酸化性プラズマ)により、ガス供給口(17)から供給される成膜の原料となるガス(HMDS等)が励起分解され、酸化ケイ素(SiO2)等の酸化膜が基板(9)上に成膜される。
このとき、高密度プラズマ中の粒子(イオン)は、多孔電極(16)に設けられた小孔を通過する際に減速されてエネルギーが減少する、あるいは多孔電極(16)にトラップされるため、高エネルギー粒子の衝突による基板(9)の損傷を防ぐことができる。
【0054】
この成膜装置(21)では、プラズマ発生源(1)から高密度なプラズマが生成されるため、基板(9)を電極(3)を形成する櫛歯の長さ方向と直交する方向(矢印の方向)に走査することにより、大面積基板に対して成膜が可能となる。また、高密度プラズマにより低温での成膜が可能となる。
【0055】
尚、上記した成膜装置(21)において、チャンバー(8)内に供給されるガスの種類は上記したものに限定されず、成膜される膜の種類に合わせて変更が可能であることは言うまでもない。
【0056】
図6は本発明に係るプラズマ発生源を利用したプラズマエッチング装置を示す概略断面図である。
図6に示すプラズマエッチング装置(31)は、プラズマにより生成された活性種(電子、イオン、ラジカル)によって基板(9)にエッチング処理を施す。このプラズマエッチング装置(31)のプラズマの発生源として上記構成からなる本発明に係るプラズマ発生源(1)が利用される。
【0057】
基板(9)は、プラズマエッチング装置(31)のエッチング処理室となるチャンバー(8)内の下方に配設された基板電極(12)上に載置されており、基板電極(12)にはパルス電源(13)あるいは高周波電源(図示略)が接続されている。パルス電源(13)を使用する場合、両極性パルスバイアスを印加可能であることが好ましい。
【0058】
活性種の原料となる反応性ガスは、プラズマ生成ガス供給口(15)からチャンバー(8)内に供給される。
活性種の原料となる反応性ガス(プラズマ生成ガス)は公知のものを使用することができ、例えばパーフルオロカーボン(PFCガス)やハイドロフルオロカーボン(HFCガス)、無機ハロゲンガス、炭化水素系ガス、アルゴン(Ar)やキセノン(Xe)等の希ガス、酸素(O2)、窒素(N2)等が挙げられ、基板(9)に応じて適宜変更される。
また、エッチング処理時にチャンバー(8)内を減圧するための真空排気系が備えられており、圧力調整バルブ(19)を介してターボ分子ポンプ(20)とロータリーポンプ(22)とが設置されている。
【0059】
図6に示したプラズマエッチング装置(31)によれば、プラズマ生成ガス供給口(15)からチャンバー(8)内に供給されたプラズマ生成ガスが、プラズマ発生源(1)に備えられる電極(3)から発生する電界と磁石(4)から発生する磁界によってプラズマ化される。
これにより、チャンバー(8)内に均一なプラズマが生成され、高い電子密度(1011〜1013cm−3)を有する高密度プラズマとなる。
【0060】
このプラズマエッチング装置(31)では、プラズマ発生源(1)から高密度なプラズマが生成されるため、基板(9)を電極(3)を形成する櫛歯の長さ方向と直交する方向(矢印の方向)に走査することにより、大面積基板に対してエッチング処理が可能となる。
【0061】
また、本発明に係るプラズマ発生源(1)は、レジストパターンをアッシングするアッシング装置にも好適に利用可能である。
本発明に係るプラズマ発生装置を利用したアッシング装置の構成は、図6に示すプラズマエッチング装置(31)と構成が略同じであるため、詳細な説明を省略する。
プラズマアッシングにおいて、プラズマ化されるガスは酸素(O2)である。酸素はプラズマ生成ガス供給口(15)からチャンバー(8)内に供給され、プラズマ発生源(1)に備えられる電極(3)から発生する電界と磁石(4)から発生する磁界によってプラズマ化される。
これにより、チャンバー(8)内に均一なプラズマが生成され、高い電子密度(1011〜1013cm−3)を有する高密度プラズマとなる。
この高密度プラズマ中の酸素ラジカルとレジストパターンを形成するフォトレジストとが結合し、フォトレジストが二酸化炭素と水になり、蒸発して剥離される。
このプラズマアッシング装置では、プラズマ発生源(1)から高密度なプラズマが生成されるため、基板(9)を電極(3)を形成する櫛歯の長さ方向と直交する方向に走査することにより、大面積基板上のレジストパターンを効率的にアッシングすることが可能となる。
【0062】
図7は本発明に係るプラズマ発生装置を利用したプラズマ表面処理装置を示す概略断面図である。
図7に示すプラズマ表面処理装置(41)は、反応性ガスをプラズマ化して被処理物である基板(9)表面を改質する。このプラズマ表面処理装置(41)のプラズマ発生源として上記構成からなる本発明に係るプラズマ発生源(1)が利用される。
【0063】
プラズマ表面処理装置(41)は、図6に示したプラズマエッチング装置(31)と略同様の構成であるため、プラズマエッチング装置(31)と同じ符号を用いて説明する。
尚、本発明に係るプラズマ表面処理装置(41)は、上記した成膜装置(21)と略同様の構造としてもよい。
表面処理の被処理物、即ち表面処理の対象となる基板(9)はプラズマ表面処理装置の処理室となるチャンバー(8)の下方に配設された基板電極(12)上に載置される。基板電極(12)にはパルス電源(13)あるいは高周波電源(図示略)が接続される。
被処理物である基板(9)は、シート状の合成樹脂であり、巻き取り装置(42)により被処理面が走査される。
【0064】
反応性ガスは、プラズマ生成ガス供給口(15)からチャンバー(8)内に供給される。
この反応性ガスには酸素(O2)、窒素(N2)、アルゴン(Ar)等が用いられる。
また、表面処理時にチャンバー(8)内を減圧するための真空排気系がチャンバー(8)の下方に備えられている(図示略)。
【0065】
このプラズマ表面処理装置(41)では、プラズマ発生源(1)から高密度なプラズマが生成されるため、被処理物である基板(9)を電極(3)を形成する櫛歯の長さ方向と直交する方向に巻き取る(図7中矢印方向)ことにより、大面積の被処理物の表面に対して改質処理を施すことが可能となる。
【0066】
上記した本発明に係るプラズマ発生装置において、プラズマ発生源(1)は図5〜図7に示すようにチャンバー(8)の外部に配設することが一般的であるが、チャンバー(8)の内部に配設してもよい。
図8はプラズマ発生源(1)をチャンバー(8)の内部に配設したプラズマ発生装置の一例を示す概略断面図であって、プラズマ表面処理装置(41)を示している。
プラズマ発生源(1)をチャンバー(8)の外部に配設した場合、チャンバーを小型化することができるとともにプラズマ発生源(1)の調整やメンテナンスを容易に行うことができる点で有利であるが、プラズマ発生源(1)をチャンバー(8)の内部に配設した場合、プラズマ発生源(1)がチャンバー(8)内に収容された安全性の高いプラズマ発生装置を得ることができる。
【0067】
また、上記した本発明に係るプラズマ発生装置において、チャンバー1つに対してプラズマ発生源(1)を複数個配設することもできる。
図9はチャンバー(8)1つに対してプラズマ発生源(1)を複数個配設したプラズマ発生装置の概略断面図である。尚、図9においては、プラズマ発生源(1)とチャンバー(8)のみを図示し、プラズマ生成用ガス供給経路等の他の構成は省略している。
図9に示すように、チャンバー(8)一つに対してプラズマ発生源(1)を複数個配設し、プラズマ発生源(1)が並んだ方向に基板(9)を走査する(図9中矢印方向)ことで、大面積の基板(9)であっても効率的にプラズマ処理を施すことが可能となり、成膜装置として利用した場合には成膜速度を向上させることができる。
また、図示例のプラズマ発生装置(11)では、チャンバー(8)の外部にプラズマ発生源(1)が配設されているが、チャンバー(8)の内部にプラズマ発生源(1)を複数個配設してもよい。
【0068】
更に、上記した本発明に係るプラズマ発生装置(11)において、プラズマ発生源(1)をチャンバーの高さ方向あるいは幅方向の両側面に設置することもできる。
図10(a)はプラズマ発生源(1)をチャンバー(8)の高さ方向の両側面に対向して設置した場合、図10(b)はプラズマ発生源(1)をチャンバー(8)の幅方向の両側面に対向して設置した場合のプラズマ発生装置の一例を示す概略断面図であってプラズマ表面処理装置(41)を示している。尚、図10においても、プラズマ発生源(1)とチャンバー(8)のみを図示し、プラズマ生成用ガス供給経路等の他の構成は省略している。
このような構成とすることで、基板(9)の両面に対して同時に高密度プラズマによりプラズマ処理を施すことが可能となり、改質処理の効率を向上させることができる。また、成膜装置として利用した場合には基板の両面に同時に成膜することができるため成膜効率を向上させることができる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明に係るプラズマ発生源の実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。但し、本発明は以下の実施例には限定されない。
【0070】
(実施例1)
図1,2に示す構成を備えた本発明に係るプラズマ発生源(1)をチャンバー(8)の上部に取り付け、電極(3)の櫛歯の幅方向(図2左右方向)の電子密度、及び櫛型状電極(3)の長さ方向(図2上下方向)の電子密度(プラズマ密度)を絶縁体(2)下面から5cmの距離において測定した。
プラズマ生成面積を80mm×80mmとし、チャンバー(8)内に供給されるプラズマ生成用ガスとしてはアルゴンガスを使用した。
【0071】
測定結果を図11に示す。図11(a)は電極(3)の櫛歯の幅方向の電子密度の測定結果であり、図11(b)は電極(3)の長さ方向の電子密度の測定結果である。尚、図11(a)上部に示された太線は電極(3)の櫛歯状部の位置を示している。
図11から明らかなように、実施例の装置においては電極(3)の幅方向、長さ方向にかかわらず、約3×1010cm−3の高い電子密度が得られた。
この結果から、本発明(実施例)に係るプラズマ発生源によれば、従来のICPやCCPと比して格段に高密度で且つ均一なプラズマが得られることが確認された。
【0072】
(実施例2)
図5に示す構成を備えた本発明に係る成膜装置(プラズマCVD装置)を使用して表1に示す条件にてSiO2薄膜を成膜し、成膜速度及びエッチング速度についてテトラメチルジシラザン(TMS)供給量の依存性を評価した。結果を図12及び図13に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
図12は、成膜速度の基板−電極間距離に対する依存性の結果である。◆はTMS供給量が2.5sccm、■は3.3sccm、▲は5.0sccmにおける結果である。
基板−電極間距離が20mm、TMS供給量が5.0sccmにおいて、約40nm/minの成膜速度での成膜が可能であることが確認された。
【0075】
また、図13はバッファードフッ酸(BHF)エッチング速度の基板−電極間距離に対する依存性の結果である。◆はTMS供給量が2.5sccm、■は3.3sccm、▲は5.0sccmにおける結果である。
基板−電極間距離が20mmにおいては、いずれのTMS供給量においても約200nm/minのエッチング速度を得ることができた。
【0076】
従来のICPやCCPを利用して成膜した場合、TMS供給量が増加すると、投入電力を増加させてもTMSが分解されない(TMSの供給律速)が、本発明に係るプラズマ発生源を使用すると、TMS供給量を増加させた場合にも高密度プラズマによりTMSの分解が促進されることとなる。
以上の結果から、150℃の低温且つ200mTorrの低真空において40nm/minという高い成膜速度で、緻密なSiO2薄膜の成膜が可能であることが明らかとなった。
【0077】
(実施例3)
表2に示す条件において成膜したSiO2薄膜をゲート絶縁膜としてZnO−TFTを作製し、TFTの動作特性を評価した。結果を図14に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
図14より、ドレイン電流、リーク電圧ともに良好な特性を示すことがわかった。特に電界効果移動度(μ)においては、1cm2/V・secの優れた特性を示すことが確認された。
以上の結果より、本発明に係るプラズマ発生源を利用すると、150℃の低温且つ200mTorrの低真空において、段差被覆性(カバレッジ)に優れたゲート絶縁膜を作製することが可能となり、良好な特性を有するTFTを得ることが可能であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係るプラズマ発生源はプラズマ発生装置に好適に利用され、このプラズマ発生装置は、例えばプラズマCVD装置等の成膜装置、プラズマエッチング装置、プラズマアッシング装置、プラズマ表面処理装置等に好適に利用することが可能である。本発明に係る成膜装置は、例えばフレキシブルディスプレイ用の酸化亜鉛薄膜トランジスタや、次世代ディスプレイのための大面積有機エレクトロルミネッセンス並びに大面積液晶ディスプレイのシリコン薄膜トランジスタの作製等に好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 プラズマ発生源
2 絶縁体
3 電極
4 磁石
5 交流電源
8 チャンバー
9 基板
11 プラズマ発生装置
21 成膜装置(プラズマCVD装置)
31 プラズマエッチング装置
41 プラズマ表面処理装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体上方に配置された電極及び磁石と、前記電極に接続された交流電源を備えており、
前記電極は、対向配置された一対の櫛型状電極からなり、
前記一対の櫛型状電極は、櫛歯状部が互いに平行に且つ交互に配置され、該櫛歯状部間に前記磁石が配置されており、
前記電極からの電界と前記磁石からの磁界によりプラズマ生成用ガスをプラズマ化することを特徴とする磁場付容量結合プラズマ発生源。
【請求項2】
前記一対の櫛型状電極の一方が接地され、他方が交流電源に接続されていることを特徴とする請求項1記載の磁場付容量結合プラズマ発生源。
【請求項3】
前記磁石はN極が前記絶縁体に向いて配置されており、
前記N極から出射する磁力線方向が前記電界方向と直交していることを特徴とする請求項1又は2記載の磁場付容量結合プラズマ発生源。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源と、
前記プラズマ生成用ガスが供給されるチャンバーとからなることを特徴とする磁場付容量結合プラズマ発生装置。
【請求項5】
前記プラズマ発生源が、前記チャンバー外部に配設されていることを特徴とする請求項4記載の磁場付容量結合プラズマ発生装置。
【請求項6】
前記プラズマ発生源が、前記チャンバー内部に配設されていることを特徴とする請求項4記載の磁場付容量結合プラズマ発生装置。
【請求項7】
前記プラズマ発生源が、前記チャンバー1つに対して複数個配設されていることを特徴とする請求項4乃至6いずれかに記載の磁場付容量結合プラズマ発生装置。
【請求項8】
前記プラズマ発生源が、前記チャンバーの高さ方向あるいは幅方向の両側面に設置されていることを特徴とする請求項7記載の磁場付容量結合プラズマ発生装置。
【請求項9】
成膜用の原料ガスをプラズマ化して基板上に成膜させる成膜装置であって、
前記プラズマの発生源が請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源からなることを特徴とする成膜装置。
【請求項10】
プラズマにより生成された活性種によってエッチング対象物をエッチングするエッチング装置であって、
前記プラズマの発生源が請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源からなることを特徴とするプラズマエッチング装置。
【請求項11】
プラズマにより生成された活性種によってレジストパターンをアッシングするアッシング装置であって、
前記プラズマの発生源が請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源からなることを特徴とするプラズマアッシング装置。
【請求項12】
原料ガスをプラズマ化して基板表面を改質するプラズマ表面処理装置であって、
前記プラズマの発生源が請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源からなることを特徴とすることを特徴とするプラズマ表面処理装置。
【請求項13】
前記基板の両面に対向して前記プラズマ発生源が配置されていることを特徴とする請求項12記載のプラズマ表面処理装置。
【請求項1】
絶縁体上方に配置された電極及び磁石と、前記電極に接続された交流電源を備えており、
前記電極は、対向配置された一対の櫛型状電極からなり、
前記一対の櫛型状電極は、櫛歯状部が互いに平行に且つ交互に配置され、該櫛歯状部間に前記磁石が配置されており、
前記電極からの電界と前記磁石からの磁界によりプラズマ生成用ガスをプラズマ化することを特徴とする磁場付容量結合プラズマ発生源。
【請求項2】
前記一対の櫛型状電極の一方が接地され、他方が交流電源に接続されていることを特徴とする請求項1記載の磁場付容量結合プラズマ発生源。
【請求項3】
前記磁石はN極が前記絶縁体に向いて配置されており、
前記N極から出射する磁力線方向が前記電界方向と直交していることを特徴とする請求項1又は2記載の磁場付容量結合プラズマ発生源。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源と、
前記プラズマ生成用ガスが供給されるチャンバーとからなることを特徴とする磁場付容量結合プラズマ発生装置。
【請求項5】
前記プラズマ発生源が、前記チャンバー外部に配設されていることを特徴とする請求項4記載の磁場付容量結合プラズマ発生装置。
【請求項6】
前記プラズマ発生源が、前記チャンバー内部に配設されていることを特徴とする請求項4記載の磁場付容量結合プラズマ発生装置。
【請求項7】
前記プラズマ発生源が、前記チャンバー1つに対して複数個配設されていることを特徴とする請求項4乃至6いずれかに記載の磁場付容量結合プラズマ発生装置。
【請求項8】
前記プラズマ発生源が、前記チャンバーの高さ方向あるいは幅方向の両側面に設置されていることを特徴とする請求項7記載の磁場付容量結合プラズマ発生装置。
【請求項9】
成膜用の原料ガスをプラズマ化して基板上に成膜させる成膜装置であって、
前記プラズマの発生源が請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源からなることを特徴とする成膜装置。
【請求項10】
プラズマにより生成された活性種によってエッチング対象物をエッチングするエッチング装置であって、
前記プラズマの発生源が請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源からなることを特徴とするプラズマエッチング装置。
【請求項11】
プラズマにより生成された活性種によってレジストパターンをアッシングするアッシング装置であって、
前記プラズマの発生源が請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源からなることを特徴とするプラズマアッシング装置。
【請求項12】
原料ガスをプラズマ化して基板表面を改質するプラズマ表面処理装置であって、
前記プラズマの発生源が請求項1乃至3いずれかに記載のプラズマ発生源からなることを特徴とすることを特徴とするプラズマ表面処理装置。
【請求項13】
前記基板の両面に対向して前記プラズマ発生源が配置されていることを特徴とする請求項12記載のプラズマ表面処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−138712(P2011−138712A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298964(P2009−298964)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(509093026)公立大学法人高知工科大学 (95)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(509093026)公立大学法人高知工科大学 (95)
【Fターム(参考)】
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