説明

三塩化ガリウムを製造するための大容量送達方法

【課題】本発明は、半導体処理装置および方法の分野に関し、特に、エピタキシャル堆積用の基板としてウェハーなどに使用される、光学および電子部品の製作に適切な、第III−V族化合物半導体材料の持続的大量生産のための方法および装置を提供する。
【解決手段】これらの方法および装置は、第III族−N(窒素)化合物半導体ウェハーを製造するために、特にGaNウェハーを製造するために最適化される。特に前駆体は、半導体材料の大量生産が促進されるよう、少なくとも48時間にわたり、第III族元素が少なくとも50g/時の質量流で提供される。気状第III族前駆体の質量流は、所望の量が送達されるように制御することが有利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体処理装置および方法の分野に関し、詳細には、エピタキシャル成長用の基板として使用されるような、光学および電子部品の製作に適切な第III−V族化合物半導体ウェハーの、大量生産のための装置および方法を提供する。好ましい実施形態では、装置および方法は、第III族窒化物半導体ウェハーの製造、詳細には窒化ガリウム(GaN)ウェハーの製造を対象とする。
【背景技術】
【0002】
第III−V族化合物は、重要であり、広く使用されている半導体材料である。第III族窒化物は、特に広い直接バンドギャップを有しており、そのため光学部品(特に、短波長LEDおよびレーザ)およびある特定の電子部品(特に、高温/高出力トランジスタ)の製作に特に有用なものになる。
【0003】
第III族窒化物は、何十年もの間、特に有利な半導体特性を有することが知られている。しかし、その商業的使用は、容易に入手可能な単結晶基板が不足していることによって、実質的に妨げられている。シリコンやGaAsなどのその他の半導体に使用されているチョクラルスキー法、垂直勾配凍結、ブリッジマン、または浮遊帯などの伝統的な方法を使用して、第III族窒化物化合物のバルク単結晶基板を成長させることは、実用上不可能である。これは、分解をもたらすGa−N結合の高結合エネルギーによるものであり、大気圧でのGaNの融解ではない。非常に高い圧力および温度(2500℃および>4GPaの圧力)が、融解GaNを実現するのに必要とされる。様々な高圧技法について調査されているが、それらは極めて複雑で、非常に小さい不規則な結晶しかもたらしていない(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
天然の単結晶基板が不足していることにより、低欠陥密度と望ましい電気的および光学的性質を有するエピタキシャル第III族窒化物層を作製する難しさが、大幅に増大する。その他の難しさとは、実用的なデバイスで使用するのに十分な導電率を有するp型GaNを、作製することができないことである。半導体級のGaNを製造する試みは、少なくとも1970年代初期に開始されたが、2つの画期的な発明が開発された1990年代後半まで、使用可能な進展はなされなかった。その第1は、サファイヤ上での第III族窒化物層の許容可能な成長をもたらす、低温GaNおよびAlNバッファ層の使用であった。第2は、許容可能なp型導電率を実現するプロセスの開発であった。これらの技術的進歩にも関わらず、第III族窒化物層の欠陥密度は、依然として極めて高く(転位に関して1E9〜1E11cm-3)、p型導電率は、その他の半導体の場合ほど高くはない。これらの制約にも関わらず、これらの進歩は、LEDに適切な第III族窒化物エピタキシャル被膜の商業生産をもたらした(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
高欠陥密度は、非天然基板上で成長させた結果である。サファイヤは、最も広く使用されている基板であり、その後にシリコンカーバイドが続く。第III族窒化物エピタキシャル層と基板との間の、格子定数、熱膨張係数、および結晶構造の差が、第III族窒化物被膜または基板の高い欠陥密度、応力、および亀裂をもたらす。さらに、サファイヤは、非常に高い抵抗率を有しており(導電性にすることができない)、不十分な熱伝導率を有している。
【0006】
SiC基板は、導電性形態および非常に抵抗性ある形態の両方に製造することができるが、サファイヤよりも非常に費用がかかり、より小さな直径(典型的には直径50mmであり、デモンストレーションとしては150mmおよび200mmである)でしか入手できない。これは、GaAsやシリコンなどのその他の半導体のための、より低いコストでかつ非常に大きな直径(サファイヤに関しては150mm;GaAsに関しては300mm)で入手可能なサファイヤや天然基板とは、対照的である。
【0007】
サファイヤおよびSiCの使用は、いくつかのデバイス適用例には適しているが、これらの基板上に成長させた第III族窒化物層に関連する高欠陥密度は、レーザダイオードに短寿命をもたらす。第III族レーザダイオードは、それらのより短い波長によって、光学記録法でさらに高い情報密度が可能になるので、特に関心が持たれている。より低い欠陥密度を有する基板は、白熱電球および蛍光灯に代わって必要とされる、より高い輝度のLEDをもたらすことが予測される。最後に、第III族窒化物材料は、高周波数、高出力電子デバイスに望ましい性質を有するが、これらデバイスの商品化は、1つには基板の制約によってなされていない。高欠陥密度は、電子デバイスに、不十分な性能および信頼性という問題をもたらす。サファイヤが低導電率であると、活性デバイス領域から熱を除去することが不可欠である高出力デバイスと共に使用するのに、不適切なものになる。SiC基板の直径は小さくかつコストが高いので、より大きなデバイスサイズ(レーザまたはLEDと比較して)でより低いコストの大面積基板を必要とする電子デバイス市場では、商業的に使用できない。
【0008】
非天然基板上のエピタキシャル第III族窒化物の欠陥密度をさらに低下させる、多数の方法について調査されている。残念ながら、上首尾の方法も扱いが面倒であり、費用がかかり、たとえコストが問題ではないとしても、非理想的である。ある一般的な手法は、エピタキシャル側方過成長(ELO)の形を使用することである。この技法では、基板が部分的にマスクされ、第III族窒化物層は、マスク上を側方に成長するように強制される。マスク上のエピタキシャル被膜は、大幅に低下した転位密度を有する。しかし、開放領域内のエピタキシャル被膜は、依然として、非マスク基板上で実現されたものと同じ高転位密度を有する。さらに、その他の欠陥は、隣接する側方過成長領域が出会う場所に生ずる。転位密度をさらに低下させるため、多数のELOステップを実施することができる。これは、非常に費用がかかりかつ時間がかかるプロセスであり、結局、低転位密度のいくつかの領域と高転位密度のいくつかの領域を有する不均質な基板が製造されることが、明らかである。
【0009】
欠陥密度を低下させる、今日までの最も首尾良い手法は、非常に厚い第III族窒化物材料層を成長させることである。転位は、成長方向に対して完全に平行に向いていないので、成長が進むにつれて、転位の一部が互いに出会いかつ消滅する。これを有効にするには、300から1000μm程度の層を成長させる必要がある。この手法の利点は、層が基板全体にわたって均質なことである。問題は、これらの層の厚さを実際に実現することのできる成長の化学およびそれに関連する装置に見られる。MOVPEまたはMBE技法は、1から約5μm/時未満程度の成長速度を有し、したがって、数ミクロンから数十ミクロンの成長を必要とする上記にて論じたELO技法の多くの場合であっても、非常に遅い。高成長速度を首尾良く実現した唯一の成長技法は、ハイドライド気相エピタキシー(HVPE)である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】A.Denis et al, Mat.Sci.Eng. R50 (2006) 167
【非特許文献2】Nakamura et al. 2nd ed. 2000, The Blue Laser Diode, Springer-Verlag, Berlin
【非特許文献3】B.J.Duke et al. Inorg.Chem. 30 (1991) 4225
【非特許文献4】Barman, 2003, Gallium Trichloride, SYNLETT, 2003, no.15, p.2440-2441
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
まとめると、低転位第III族窒化物材料を製造する当技術分野の現況は、非常に厚い層を生成するHVPEを使用することである。しかし、現行のHVPEプロセスおよび装置技術は、高成長速度を実現することができるが、いくつかの欠点を有している。本発明はついに、これらの欠点を克服し、比較的低いコストで高品質の第II族窒化物リードを、新しい革新的な適用例に、例えば住宅用および商業用照明システムに提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、単結晶第III−V族半導体材料を形成するための、気状第III族前駆体を提供する方法に関する。この方法は、半導体材料の大量生産を促進させるために、前駆体を、少なくとも48時間にわたって少なくとも第III族元素50g/時の質量流で、連続して供給するステップを含む。この方法はさらに、半導体材料を形成するのに望ましい量が送達されるよう、気状第III族前駆体の質量流を制御するステップを含むことが有利である。
【0013】
1つの好ましい気状第III族前駆体は、少なくとも5kgのガリウムを連続して送達する質量流として連続的に供給される、ガリウム化合物である。特に、このガリウム化合物は三塩化ガリウム化合物であり、固体の三塩化ガリウムを加熱することによって提供される。固体の三塩化ガリウムが液体にまで加熱される場合、この方法は、少なくとも100gガリウム/時の気状三塩化ガリウムの質量流量が提供されるように加熱する間、三塩化ガリウムの大量の蒸発を促すステップを含んでよい。固体三塩化ガリウムは、最初に、この固体三塩化ガリウムを110から130℃の温度に加熱するなどして、周囲温度の水程度の低粘度液相を誘発させるのに十分な温度まで加熱することが好ましい。キャリアガスは、気状三塩化ガリウムが生成されるように加熱する間、液体三塩化ガリウム中にバブリングすることが有利である。キャリアガスは、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、またはこれらの混合物でよい。
【0014】
あるいは、気状前駆体は第III族ハロゲン化物でよく、この場合の方法は、ハロゲン化物を、その融点よりも低い温度であるが質量流を実現する蒸気圧を発生させるには十分高い温度まで、加熱するステップをさらに含む。ガリウムハロゲン化物に加え、この実施形態は、気状塩化インジウムまたは塩化アルミニウム前駆体を提供するのに有用である。
【0015】
本発明の別の実施形態は、半導体材料の大量生産を促進させるため、少なくとも48時間にわたって第III族元素が少なくとも50g/時の質量流で前駆体を連続供給するための、十分な量の前駆体供給源を含む、単結晶第III−V族半導体材料を形成する気状第III族前駆体を提供するためのシステムに関する。このシステムでは、第III族前駆体供給源は、典型的には前駆体を保持するための容器を含む。
【0016】
第III族前駆体供給源は、半導体材料を形成するのに望ましい量が送達されるよう、質量流制御器に動作可能に関連付けられていることが有利である。一般に、第III族前駆体供給源は、前駆体を加熱するための、かつ前駆体のガス流を発生させるための、加熱配置構成をさらに含む。さらに容器は、前駆体のガス流の形成を促進させる手法で、キャリアガス供給源と、容器内にキャリアガスを導入する関連したコンジットとに、動作可能に関連付けられていてよい。気状第III族前駆体がガリウム化合物の場合、システムは、この化合物を、少なくとも5kgのガリウムを連続して供給する質量流で提供することが可能である。
【0017】
半導体材料の大量生産で望まれるように、様々なサイズの容器を使用してよい。一般に容器は、最初に、少なくとも10から60Kgの固体第III族ハロゲン化物を保持してよく、このとき、加熱配置構成は、気状前駆体が得られるよう十分に固体ハロゲン化物を加熱するために、構成されかつ寸法決めされる。容器は、三塩化インジウムや三塩化アルミニウムなどの固体ハロゲン化物を、少なくとも25Kg保持することができ、この場合、加熱配置構成は、気状前駆体が提供されるよう十分に三塩化物を加熱するために、構成され寸法決めされる。また、加熱配置構成は、第III族元素が少なくとも75g/時の質量流量が提供されるよう三塩化物を加熱するために、構成され寸法決めされてもよい。さらに拡張された製造では、単一の容器が使用される場合よりも長い時間にわたって気状前駆体の送達が促進されるように、複数の容器を直列に接続することができる。
【0018】
好ましい第III族ハロゲン化物は、三塩化ガリウムであり、この場合の容器および加熱配置構成は、固体三塩化ガリウムを液体にまで加熱するように構成され寸法決めされる。これは、周囲温度の水程度の低粘度液相を誘発させるのに十分な温度まで、固体三塩化ガリウムを加熱することによって実現することができ、このとき容器は、少なくとも100gガリウム/時の気状三塩化ガリウムの質量流量が提供されるよう加熱する間、三塩化ガリウムの大量蒸発を促すメカニズムをさらに含む。固体三塩化ガリウムは、典型的には110から130℃の温度に加熱されるが、大量蒸発を促すメカニズムは、キャリアガスの供給源と、気状三塩化ガリウムが生成されるように加熱する間に液体三塩化ガリウム中にキャリアガスをバブリングするための、容器に関連付けられたコンジットとを含む。キャリアガスの供給源は、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、またはこれらの混合物の任意の供給材料でよい。
【0019】
別の好ましい実施形態において、本発明は、第III−V族半導体材料の大量生産を促進させるシステムを提供し、大量生産プロセスを中断する必要なく、少なくとも48時間にわたって1時間当たり少なくとも50gという第III族元素の制御可能な質量流の、気状第III族前駆体の供給源を含む。特に、第III族元素の制御可能な質量流は、前駆体が供給される時間中、200mmの基板上で少なくとも100μm/時に等しい第III−V半導体材料の堆積速度を可能にするのに十分である。
【0020】
前駆体供給源は、液体形態の第III族前駆体を保持するための耐腐食性内面と、容器内で液体中にキャリアガスをバブリングするための出口を有する容器内の浸漬管と、浸漬管に至る弁制御容器入口と;送達ラインに至る弁制御容器出口とを有する容器であって、この送達ラインは、キャリアガスおよび気状形態の第III族前駆体を反応ゾーンに運び、そこで第III族前駆体を第III−V半導体材料に変換するためのものである容器を含むことができる。この実施形態の態様は、キャリアガスから水分を除去して5ppb以下に低下させることが可能な精製器;または、キャリアガス精製器の下流にあるキャリアガスフィルタ;または、固体形態の第III族前駆体を融解するのに十分な温度まで、容器を加熱するための容器加熱器;キャリアガス供給源、および少なくとも110℃の温度にキャリアガスを加熱するためのキャリアガス加熱器;または、キャリアガス加熱器に近接した広い熱交換面積が提供されるように、正弦状の湾曲部を有するよう構成されたキャリアガスライン;または、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、またはこれらの混合物であり、110℃から130℃の温度に加熱されるキャリアガス;または、キャリアガスの質量流を制御するための質量流制御器;または、容器の絶縁外側部;または、キャリアガスおよび第III族前駆体を運ぶ内部ラインと、加熱媒体を収容するための環状空間を提供する封入同軸ラインとを有する同軸部分をさらに含む、送達ラインを含む。
【0021】
この実施形態の態様は、容器、または送達ライン、または弁付き入口、弁付き出口、そのような入口および出口の弁が、ステンレス鋼、ハステロイ(Hastelloy)、モネル(Monel)、またはこれらの組合せを含み;弁または容器の内面が、ポリテトラフルオロエチレンシートを含み;容器、弁付き入口、弁付き出口、入口弁、出口弁、または送達ラインの少なくとも1つが、ニッケルベースの合金、タンタル、タンタルベースの合金、シリコンカーバイド、窒化ホウ素、炭化ホウ素、窒化アルミニウム、溶融石英層、結合非晶質シリコン層、およびその他の知られている耐塩素性材料からなる群から選択された材料をさらに含むことを含む。
【0022】
別の好ましい実施形態では、本発明は、窒化ガリウムを合成するために、気状形態の第III族前駆体を反応ゾーンに送達するための方法であって、大気圧よりも高い圧力で、水素、窒素、ヘリウム、アルゴン、およびこれらの混合物からなる群から選択されたキャリアガスを供給するステップと;キャリアガスを少なくとも110℃の温度に加熱するステップと;キャリアガスを、液体形態の第III族前駆体の浴に注入するステップと;送達される第III族窒化物を合成するために、キャリアガスおよび任意の混入された第III族前駆体を、浴から反応ゾーンに運ぶステップとを含む方法を提供する。この実施形態の態様では、キャリアガスおよび混入された第III族前駆体は、少なくとも110℃の温度で反応ゾーンに送達され;またはキャリアガスは、5ppb以下に水分を除去することによって精製され;またはキャリアガスは、分当たり5から15リットルの流量で供給され;または浴中の第III族前駆体は、110℃から130℃の範囲内の温度に加熱され;または第III族前駆体は、三塩化ガリウムを含む。
【0023】
本発明の要素の別の態様および詳細および代替の組合せが、添付図面および下記の詳細な説明から明らかにされることになり、これらも本発明の範囲内に包含される。
【0024】
本発明は、本発明の好ましい実施形態の下記の詳細な説明、本発明の特定の実施形態の例示的な実施例、および添付される図を参照することによって、より完全に理解することができる。
【0025】
同じ参照番号は、種々の図において表される同じ構造を指すのに使用される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のシステムを概略的に示す図である。
【図2A】好ましいGaCl3供給源を示す図である。
【図2B】好ましいGaCl3供給源を示す図である。
【図2C】好ましいGaCl3供給源を示す図である。
【図3A】好ましい反応チャンバを示す図である。
【図3B】好ましい反応チャンバを示す図である。
【図3C】好ましい反応チャンバを示す図である。
【図4】好ましい移送/反応チャンバの組合せを概略的に示す図である。
【図5】好ましい入口マニホールド構造を概略的に示す図である。
【図6】代替の反応ガス入口の配置構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、これまで不可能だった第III−V族化合物半導体ウェハーの高成長速度および大量生産のための、装置および方法を提供する。装置は、何週間または何カ月もの間、メンテナンスのために生産を中断する必要のない、持続的な生産が可能である。装置は、少なくともウェハー(またはウェハーのバッチ)を1時間から4時間ごとに製造することができる、高速大量処理生産が可能である。そのように製造された第III−V族化合物半導体ウェハーは、さらなるエピタキシャル堆積およびその他の半導体材料適用例に用いられる基板用の、光学および電子部品の製作に適している。
【0028】
好ましい実施形態において、装置および方法は特に、GaN窒化物ウェハーの製造を対象とし、そのような実施形態が、後に続く記述のほとんどの焦点となっている。この焦点は、単なる簡略化を目的とし、本発明を限定すると解釈すべきではない。好ましい実施形態は、その他の第III族窒化物、例えば窒化アルミニウム、窒化インジウム、および混合型窒化アルミニウム/ガリウム/インジウムのウェハーの製造に、また、第III族リン化物およびヒ化物のウェハーの製造に、容易に適応できることが理解されよう。したがって、第III−V族化合物半導体のいずれかの半導体ウェハーの製造は、本発明の範囲内にある。
【0029】
本発明は特に、Siのエピタキシャル堆積用として既に市販されている装置に修正を加えることによって、特定の実施形態を実現することができるので、費用効果のあるものにすることができる。それによって、シリコン技術で十分に開発された大量生産に関する態様を維持することができる状態で、GaNエピタキシーに特に重要な要素および特徴に焦点を当てることができる。また、本発明の装置は、大量生産が可能になるように、有意な負荷サイクルを有するよう設計される。また本発明は、実際には堆積されないGa、したがって反応チャンバ装置から排出されるGaを、回収し再生することによって、高価なGaの使用に際して事実上100%の効率をもたらし;このとき、限られた中断時間しか必要としない。また本発明の方法および装置は、Ga前駆体の経済的な使用を含む。
【0030】
本発明は、知られている低熱質量サセプタ(基板ホルダ)、および温度制御された反応器の壁によるランプ加熱の使用を含む。ランプ加熱の使用によって、熱エネルギーを主にサセプタに結合させ、反応器の壁を加熱しないようにすることが可能になる。ランプ加熱システムは、ランプに対して非常に速い出力変化を可能にする制御システムを備える。ランプ加熱システムに結合された低熱質量サセプタは、上昇および下降の両方での非常に速い温度変化を可能にする。温度上昇速度は、2〜10度/秒の範囲内であり、好ましくは4〜7度/秒程度である。
【0031】
本発明は、望ましくない気相反応を最小限に抑え、かつ壁面への堆積を予防するために、特定の温度に制御される反応器の壁を含む。壁面への堆積が少ないことにより、成長速度、応力、およびその他の適切な成長パラメータの原位置モニタを、素直に用いることが可能になる。
【0032】
本発明は、第III族前駆体の、1つまたは複数の外部供給源を含む。第III族前駆体の流れは、電子質量流制御器によって直接制御される。外部第III族供給源のサイズには、実用上制約がない。第III族供給源容器は、50から100から300kgの範囲内にすることができ、いくつかの供給源容器は、中断時間がない状態で容器同士の切換えが可能になるように、マニホールド化することができる。GaNの堆積の場合、Ga前駆体はGaCl3である。このGa供給源は、GaCl3が十分に低い粘度状態にあるときに、通常の物理的手段、例えば液体GaCl3中へのキャリアガスのバブリングによって、GaCl3の十分な蒸発速度をもたらすことができるということ、またGaCl3は、そのような十分に低い粘度状態を、110から130℃の範囲の好ましい温度で示すという、観察および発見をベースとする。
【0033】
本発明は、低粘度状態で、一定温度および圧力でGaCl3を維持するための装置と、制御量のガスを液体GaCl3内に流動させ、GaCl3蒸気を反応器に送達するための装置を含む。この装置は、1枚の直径200mm基板上でまたはサセプタに適合する任意の枚数のより小さいウェハー上で、100から400μm/時の範囲内のGaN堆積速度をもたらす、GaCl3の高質量流(200から400g/時の範囲内)を持続させることができる。GaCl3容器からの送達システムは、GaCl3が凝縮しないように、特定の温度プロファイルで維持される。
【0034】
本発明は、堆積ゾーンまで第III族および第V族のガスを別々に保持し、かつ堆積ゾーン内で高い気相均質性を実現し、したがって反応チャンバ内に入って基板を支持するサセプタを横断するプロセスガスの均一な流れを実現するための方法も提供する、入口マニホールド構造も含む。プロセスガス流は、流速が均一になるように(したがって、非乱流)、かつ化学組成が均一になるように(したがって、均一なIII/V比)設計される。好ましい実施形態では、これは、第III族および第V族のガス用の別の1次入口ポートを設けることによって実現され、反応器の幅の端から端までガスの均一な分布が得られ、その結果、高い均一性が実現される。好ましい実施形態では、マニホールドおよびポート構造は、流体力学の原理に従ってガス流をモデル化することにより、設計され改良される。
【0035】
本発明は、第III族または第V族の入口のいずれかまたは両方にエネルギーを加えることにより、これらの前駆体の反応効率を高める方法も含む。好ましい実施形態では、これは、ダイマー形態の第III族前駆体Ga2Cl6からモノマーGaCl3に熱分解するための方法を含むと考えられる。別の好ましい実施形態では、これは、熱分解またはプラズマによってアンモニア前駆体を分解するための方法を含むと考えられる。
【0036】
本発明は、全てが完全にコンピュータ制御されかつ全成長プログラムと連係させた、完全自動カセット間ローディング、個別の冷却ステージ、ロードロック、非接触ウェハー処理器を含んだ自動化ウェハー処理用装置も含む。
【0037】
本発明は、反応器の入口および出口フランジと、排出システムと、低圧および高温で動作することのできる特別に設計された圧力調節弁との温度制御も含む。これらの領域での温度制御は、早すぎる気相反応を防止し、GaN並びに様々な反応副生成物の堆積を最小限に抑える。主な反応副生成物は、NH4Clである。反応器の下流の全排出温度は、NH4Clが凝縮しないように制御される。
【0038】
本発明は、弁材料表面および反応器側壁への堆積を少なくし、ガス再循環を少なくし、反応器内でのガスの滞留時間を短くする、ガスパージゲート弁も含む。
【0039】
本発明の追加の態様および詳細は、1回の成長操作中に1枚または複数のウェハーを保持することができるサセプタと、厚くする成長操作の間に基板がサセプタに取着しないように設計されたサセプタとの使用を含む。
【0040】
本発明は、特定の金属ハロゲン化化合物が、ある独自の化学的性質を有し、またこれらの性質に照らして設計された装置に結合したときに、その組合せを使用して、これまで実現できなかった高スループット、高動作時間、および低コストの第III−V族化合物半導体の厚い層を、特に窒化ガリウムの厚い層を、大量生産に特徴的な手法により堆積することができるという発見に基づく。
【0041】
本発明では、「大量生産」(または「HVM」)は、高スループット、高い前駆体効率、および高い装置利用を特徴とする。スループットは、処理することができるウェハー/時の枚数を意味する。前駆体効率とは、システムに投入される材料の大部分が生成物になり、廃棄されないことを意味する。材料、方法、および構造に関連した多数の変数があるが、HVM堆積速度は、少なくとも48時間にわたって1時間当たり50gの第III族元素(ガリウムなど)から、少なくとも100時間にわたって1時間当たり100gの第III族元素、少なくとも1週間にわたって1時間当たり200gの第III族元素、少なくとも1カ月にわたって1時間当たり300から400g程度の第III族元素に及ぶ。典型的な供給源容量は、1個の容器内および高いHVMで、5Kgから60Kgに及ぶことができ;多数の容器を順次動作させることができる。これは、シリコン製造で得られたものと同様の、第III−V族材料スループットを提供することができる。
【0042】
装置利用率は、24時間など所与の時間と比較した、基板が反応器内にある時間の割合を意味する。HVMでは、時間のほとんどが、設定、較正、清浄化、またはメンテナンスとは対照的に生成物を生成するのに費やされる。これらの尺度に関する定量的範囲は、成熟したシリコン半導体処理技術に利用可能である。第III−V族材料のHVMに関する装置利用率は、約75から85%程度であり、これはシリコンエピタキシャル堆積装置の場合と同様である。
【0043】
反応器利用率は、その間に基板上の材料の成長が反応器内で生ずる期間である。従来のHVPE反応器の場合、この値は40から45%程度であり、一方、本明細書に開示されるようなHVM反応器の場合には、この値は65から70%程度である。
【0044】
成長利用率は、反応器内でのオーバーヘッド時間であり、その間に、基板が内部に供給された後に成長が反応器内で生ずる時間を意味する。従来のHVPE反応器では、この値は65から70%程度であり、一方、本明細書に開示されるようなHVM反応器では、この値は、約95%から100%近くであり、即ち、シリコン製造プロセスの場合に近い。
【0045】
本発明は、大量生産を妨げる、現行のHVPE技術に対する主な制約に対処する。これは、現行HVPEの原位置供給源発生を外部供給源に置き換え、現行HVPEの高熱質量の高温壁反応器を、温度制御された壁面を有する低熱質量反応器に置き換えることによって、行われる。外部供給源の使用により、前駆体充填の際に生産を停止する必要がなくなり、装置効率が大幅に上昇する。さらに、前駆体の質量流速は、電子質量流制御器によって直接制御され、その結果、成長プロセスの制御が改善され、収率が改善される。温度制御された壁面を有する低熱質量反応器は、成長中およびメンテナンス中の両方で、加熱および冷却に要する時間を大幅に短縮する。基板を素早く加熱し冷却することができるので、現行のHVPE高温壁面システムでは実用上不可能な、マルチ温度プロセスの使用も可能になる。壁面温度を制御する能力により、気相反応を低減させ、壁面への堆積がほぼ完全に排除される。壁面への堆積の排除によって、清浄化と清浄化の間の時間が大幅に延び、その結果、高い反応器利用率が得られる。
【0046】
本発明は、ある金属ハロゲン化化合物を、第III−V族化合物半導体のHVPE堆積用の外部供給源として使用することができ、また本発明で詳述される特定の送達装置と連結させて十分に高い質量流速をもたらし、それによって広い面積上に高い堆積速度を実現し維持することができるという事実に基づく。特に、融解した場合、GaCl3は十分に低い粘度状態にあり、その結果、通常の物理的手段、例えば液体GaCl3中にキャリアガスをバブリングすることが可能になり、GaCl3の十分な蒸発速度を提供することができ、GaCl3は、約130℃程度の範囲内の温度で十分に低い粘度状態を示す。さらに本発明は、約400℃よりも低い温度で液相および気相であるGaCl3が、実際にはダイマーであるという事実に基づく。ダイマーの化学式は、(GaCl32またはGa2Cl6と書くことができる。
【0047】
Ga2Cl6の他に、関連あるクロロガランもGa前駆体として使用することができる。これらの化合物は、Ga2Cl6のに類似しているが、Hが、1個または複数のCl原子の代わりになる。例えばモノクロロガランは、H原子によって置換される2個の架橋Cl原子を有する。以下に示されるように、末端Ga結合原子も、Hによって置換することができる(この化合物のシス形およびトランス形があることに留意されたい)。非特許文献3によれば、ダイマーの安定性は、Cl置換当たり1〜2kcal/モルだけ末端Ga−x結合の塩素化が増加するにつれて低下し、架橋H原子に対する各Cl置換ごとに、6〜8kcal/モルだけ増大する。このように、置換されたCl原子の数が減少するほど、所与の温度でのモノマーの割合が低下すると考えられる。
【0048】
【化1】

【0049】
InおよびAl含有化合物の成長は、実質的に類似する装置であって、これら供給源が液体状態で容易に維持されないという制約がある装置を使用して、実現することができる。GaCl3に関して記述された本発明は、583℃よりも高い温度で動作するように修正してよいが、これは、実用的に全く困難である。代替の手法は、InCl3を、その融点よりも低い温度であって、そのときの蒸気圧が、許容可能な堆積速度を実現するのに十分な温度に加熱する。
【0050】
AlCl3は、178℃で昇華し、190℃および2.5気圧で融解する。GaCl3に関して記述された本発明は、大気圧よりも高い圧力およびAlCl3の融点よりも高い温度で動作するように修正することができる。さらに、InCl3に関して既に記述された代替の手法、十分に高い蒸気圧が実現されるよう融点よりも低い温度に加熱することも、効果があることになる。AlCl3は、低温の液相中および気相中でダイマー(AlCl32も形成する。
【0051】
本発明の別の主な構成要素は、低熱質量反応器である。温度制御された壁面を有する低熱質量反応器は、成長中およびメンテナンス中の両方で、加熱および冷却に要する時間を大幅に短縮する。基板を素早く加熱し冷却することができるので、現行のHVPE高温壁面システムでは実用上不可能な、マルチ温度プロセスの使用も可能になる。壁面温度を制御する能力により、気相反応を低減させ、壁面への堆積がほぼ完全に排除される。壁面への堆積の排除によって、清浄化と清浄化の間の時間が大幅に延び、その結果、高い反応器利用率が得られる。
【0052】
低熱質量は、伝統的に低温壁面システムと呼ばれるものを使用することによって実現されるが、本発明では、壁面温度は特定の温度に制御される。現行の高温壁面システムは、炉内に閉じ込めることによって加熱される。新しいシステムでは、基板ホルダおよび基板のみが加熱される。これを実現するための、ランプ加熱、誘導加熱、または抵抗加熱を含めた多くの方法がある。一実施形態では、システムは、石英から構成された反応器チャンバと黒鉛で構成された基板加熱器とからなる。黒鉛は、石英反応器の外側で、ランプにより加熱される。石英反応器の壁面は、様々な方法を使用して制御することができる。ほとんどの場合、壁面温度制御システムは、事前設定弁で温度が維持されるように、壁面領域への冷却または加熱入力を調節するフィードバックシステムと組み合わせた、様々な部位で壁面温度を測定する1つまたは複数の方法からなる。別の実施形態では、壁面温度は、冷却のため反応器壁面の外部に空気を吹き付けるファンによって制御される。壁面温度は、常に一定である必要はなく;温度制御器は、温度を変化させて、成長中およびメンテナンス中に改善された性能が実現されるように、プログラミングすることができる。
【0053】
以下の記述の焦点は、主に窒化ガリウム(GaN)ウェハーを製造するための好ましい実施形態にあるが、記述される装置および方法は、当業者によって、本発明の範囲内にある第III−V族化合物半導体のいずれかのウェハーの生産にも容易に適合されることが、理解されよう。したがって、そのような装置は本発明の範囲内にある。見出しは、単なる明確化のために全体を通して使用され、限定を意図するものではない。
【0054】
本発明は、構成し動作させるのに経済的な、GaNウェハーを大量生産するための装置も提供する。本発明の好ましい実施形態は、シリコン(Si)エピタキシー用に設計されかつ市販されている既存のVPE装置を適応/修正することによって、経済的に実現/構成することができる。本発明を実施するには、ゼロからGaN堆積装置の全ての構成要素を設計し構成するという、費用がかかり時間がかかるプロセスに取り組むことを、必ずしも必要としない。代わりに、本発明の持続的な高スループットGaN堆積装置は、既存のSi処理生産実証済み装置に、目標とされ限定された修正を加えることによって、より迅速にかつ経済的に実現/構成することができる。しかし、そのような修正された既存の装置と共に、本発明は、新規な構成も包含する。
【0055】
したがって、以下の記述は、まず、GaN生成用に既存のSi装置に組み込まれる一般に好ましい特徴を対象とする。Si処理から保ち続けることのできる特徴は、当技術分野で周知であるので詳細に記述しない。種々の実施形態では、記述される特徴の種々の1つを実施することができ、本発明は、これらの特徴全てが実施された実施形態に限定するものではない。しかし、より高いレベルの持続型高スループット生産では、これらの特徴全てのほとんどが有利であり、カセット間ローディング、ロードロックと、別の冷却ステージを備えた完全自動化ウェハー処理であって、この別の冷却ステージが、他の1つを冷却している間に高速ローディングおよびアンローディングを可能にするものが含まれる。ロードロックは、雰囲気に対する反応器の望ましくない曝露を排除して、酸素およびウェハー蒸気の導入を最小限に抑え、実行前のパージ/ベーク時間を大幅に短縮させる。さらに、自動化処理は、ウェハーの手動処理よりも歩留まり損失およびウェハー破損を減少させる。ある場合には、ベルヌーイ棒を使用してウェハーを処理し、そのため900℃程度に高い温度で高温ローディングおよびアンローディングを実施しかつ長い冷却時間を節約することが可能になる。
【0056】
本発明の好ましい特徴の一般的な実施形態を、まず一般的なVPEシステムに関して記述する。これらの一般的な実施形態を、特定の市販されているSiエピタキシー装置にどのように普通に適応するかが、明らかにされよう。次いで以下の記述は、本発明の特定の好ましい実施形態と、ASM America,Inc.(Phoenix,AZ)から入手可能なEPSILON(登録商標)シリーズの単一ウェハーエピタキシャル反応器の1つを基にしたその好ましい特徴を対象とする。しかし本発明は、この特定の好ましい実施形態に限定されないことが明らかである。別の実施例として、本発明は、CENTURA(登録商標)シリーズのAMAT(Santa Clara,CA)に容易に適応させることができる。
【0057】
本発明の装置および方法の好ましい実施形態(GaNウェハーを製造するための)について、図1を参照しながら概略的に記述する。次いで特に好ましい実施形態について、図2〜5を参照しながらより詳細に記述する。一般に、本発明の装置は、基板上にエピタキシャルGaN層を大量生産するためにかつ構成および操作の経済性のために、設計され寸法決めされる。
【0058】
本発明の一般的実施形態
便宜上およびこれに限定することなく、本発明を、3つの基本的サブシステム:即ち、プロセスガス(または液体)を供給するためのサブシステム1;反応チャンバを含むサブシステム3;および無駄の低減のためのサブシステム5に関して、図1を参照しながら概略的に記述する。
【0059】
上述のように、HVMは、本明細書に記述される一般的特徴を含めたシステムの、様々な物理的特徴の組合せの属性である。
【0060】
1.GaCl3の外部供給源
第1のサブシステムの構造、プロセスガスサブシステム、特にガリウム化合物蒸気供給源は、本発明の重要な特徴である。知られているGaN VPEプロセスについて、次に簡単に記述する。GaV VPEエピタキシーは、窒素(N)およびガリウム(Ga)を含有する前駆体ガスから(および任意選択で、混合窒化物を形成するために、1種または複数のその他の第III族金属含有ガス、および任意選択で、特定の電子伝導率をもたらす1種または複数のドーパント)、加熱された基板の表面に直接GaNを合成するステップを含む。Ga含有ガスは、通常、一塩化ガリウム(GaCl)または三塩化ガリウム(GaCl3)、あるいはガリウム−有機化合物、例えばトリ−エチル−ガリウム(TEG)またはトリ−メチル−ガリウム(TMG)である。第1のケースでは、このプロセスをHVPE(ハロゲン化物蒸気エピタキシー)と呼び、第2のケースでは、MOVPE(有機金属蒸気圧エピタキシー)と呼ぶ。
【0061】
GaClの化学的性質(高温でのみ安定)により、GaCl蒸気は、反応容器内のその場所で、例えば液体Gaが入っているボート上にHClを通すことによって合成する必要がある。これとは対照的に、GaCl3は、周囲条件(水分が存在しない)で安定な固体であり、これは一般に、それぞれが約100g程度で密封された石英アンプルに入れられて供給される。TMGおよびTEGは、揮発性の液体である。N含有ガスは、通常はアンモニア(NH3)であり、半導体品質のNH3が標準的なシリンダで入手可能である。
【0062】
あるいは、例えばNイオンまたはラジカルを含有するプラズマ活性化N2を、N含有ガスとして使用することができる。分子N2は、高いプロセス温度であっても、GaCl3またはGaClに対して実質的に非反応性である。窒素ラジカルは、当技術分野で知られている手法によって、一般には窒素分子が分裂するようにエネルギーを与えることによって、調製することができる。例えば、窒素ラインにRF源を付加することによって、電磁誘導プラズマを発生させる。この形態で動作させる場合、反応器内の圧力は、通常低下する。
【0063】
知られているVPEプロセスの中で、MOCVDおよびGaCl HVPEは、第III族窒化物増の持続的な大量生産にそれほど望ましくないことがわかっている。第1に、MOCVDは、その実現可能な堆積速度が、HVPE処理器によって実現可能な堆積速度の5%未満であるので、10umよりも厚い被膜を成長させるのにそれほど望ましくない。例えばHVPE堆積速度は、100〜1000μ/時またはそれ以上の範囲内にすることができるが、MOCVD速度は、典型的には10μ/時未満である。第2に、GaCl HVPEは、HClとの反応によってGaClを形成するために、液体Gaの供給を反応チャンバ内で存在させる必要があるので、それほど望ましくない。そのような液体Gaの供給を、HClとの反応性を保持した形で、かつ大量生産に十分な形で維持することは、難しいことがわかっている。
【0064】
したがって、本発明の装置は主に、大量生産のためのGaCl3 HVPEを対象とする。任意選択で、例えば緩衝層などを堆積するために、MOCVDを提供することもできる。しかし、大量生産のためのGaCl3 HVPEの使用では、十分な時間にわたって中断することなく(反応チャンバ内でのウェハーのローディング/アンローディングを除く)維持することができる、十分な流量を実現するGaCl3蒸気の供給源が必要である。好ましくは、平均持続堆積速度は、1時間当たりのGaNが100から1000μm/時の範囲内であり、その結果、1枚程度のウェハー(または多数のウェハーの1バッチ分)は、さらに厚いGaN層に関して1または2時間以下の堆積時間を要することになる。そのような好ましい堆積速度の実現には、供給源が、GaCl3蒸気の質量流を約250または300g/時程度で提供する必要がある(200mmの円形の、300μmの厚いGaN層は、Gaを約56g程度含むが、GaCl3は、Gaが約40重量%である)。さらに、そのような流量は、供給源を再充填/提供するのに必要とされる製造中断が、好ましくは最長でも1週間に1回、またはより好ましくは少なくとも2から4週間ごとに1回になるように、十分な所要時間にわたって維持することができる。したがって、流量は、少なくとも50枚のウェハー(または多数のウェハーの複数バッチ分)に関して維持できることが好ましく、少なくとも100、または150、または200、または250から300枚のウェハー、あるいは数バッチ分またはそれ以上に関して維持できることが好ましい。そのような供給源は、従来技術では知られていない。
【0065】
本発明の装置は、好ましい流量および所要時間を実現するために、問題を克服したGaCl3供給源を提供する。好ましい流量の実現は、過去において、GaCl3のある物理的性質によって妨げられていた。第1に、周囲条件でGaCl3は固体であり、蒸気は昇華によってのみ形成することができる。しかし、GaCl3昇華速度は、好ましい質量流量で蒸気を供給するのに不適切であると判断されている。第2に、GaCl3は約78℃で融解し、次いで蒸気は、液体表面からの蒸発によって形成することができる。しかし蒸発速度は、好ましい質量流をもたらすのに不適切であることもわかっている。さらに、蒸発速度を上昇させるための典型的な物理的手段、例えば撹拌およびバブリングなどは、GaCl3液体が比較的粘性であることが知られているので、蒸発速度を十分に上昇させない。
【0066】
必要なことは、十分に低い粘度の液体GaCl3を形成することであり、約120℃程度、特に約130℃程度またはそれ以上で開始すると、GaCl3は、例えば水の場合と同様の粘度を有するような、より低い粘度状態を示すことが、観察され発見されている。さらに、このより低い粘度状態では、通常の物理的手段は、好ましい質量流量が得られるよう十分に、GaCl3蒸発速度を効果的に上昇させることが可能であることが、観察され発見されている。
【0067】
したがって、本発明のGaCl3供給源は、約130℃程度に制御された温度T1を有する液体GaCl3のリザーバを維持し、蒸発速度を高めるための物理的手段を提供する。そのような物理的手段は、液体の撹拌;液体の噴霧;液体上にキャリアガスを素早く流すこと;液体中へのキャリアガスのバブリング;および超音波による液体の分散などを含むことができる。特に、約130℃でより低い粘度状態の液体GaCl3を通した、技術分野で知られている配置構成によるHe、N2、またはH2、またはArなどの不活性キャリアガスのバブリングは、GaCl3の好ましい質量流量をもたらすことが可能であることが発見されている。GaCl3供給源の好ましい構成は、リザーバの外側の加熱要素を使用してより良い温度制御を実現するために、その体積に比例して全表面積が増大している。例えば、例示されるGaCl3供給源は、高さが直径よりも著しく大きい円筒状である。GaCl3の場合、これは、少なくとも48時間にわたる期間では、1時間当たり120g程度、少なくとも100時間にわたる期間では、1時間当たり250gまで、少なくとも1週間にわたる期間では、1時間当たり500gまで、少なくとも1カ月にわたる期間では、1時間当たり750から1000g程度までと考えられる。
【0068】
さらに、好ましい流量および所要時間が可能なGaCl3供給源は、個々の100gアンプルに供給されたGaCl3に頼ることはできない。そのような量は、中断のないわずか15から45分間の堆積に十分と考えられる。したがって、本発明のGaCl3供給源の別の態様は、大GaCl3容量である。本発明の高スループットという目標を達成するには、GaCl3源の再充填に費やされる時間が限定されることが好ましい。しかし再充填は、大気中の水分と容易に反応するというGaCl3の傾向によって、より複雑になる。GaCl3の充填、供給源、およびGaCl3の供給ラインは、ウェハー生産の前には水分を含んではならない。様々な実施形態のスループットの目標に応じて、本発明は、GaCl3を少なくとも約25kg、または少なくとも約35kg、または少なくとも約50から70kg保持することが可能な供給源を含む(上限は、反応チャンバに近接して供給源を位置決めするという利点に鑑み、サイズおよび重量の要件によって決定される)。好ましい実施形態では、GaCl3供給源は、約50から100kgの間、好ましくは約60から70kgの間のGaCl3を保持することができる。GaCl3供給源の容量には、その構成および使用のロジスティックスを除き、実際の上限はないことが理解されよう。さらに、多数のGaCl3供給源は、反応器の停止時間がない状態で1つの供給源から別の供給源に切り替えることが可能になるように、マニホールドを通してセットアップすることができた。次いで空の供給源を取り出すことができ、それと共に反応器を動作させ、新たなたっぷりの供給源に置き換える。
【0069】
本発明のGaCl3供給源のその他の態様は、供給源と反応チャンバとの間での、供給ラインの慎重な温度制御である。GaCl3供給ラインと、これに関連する質量流量センサ、および制御器などの温度は、供給ラインなどでのGaCl3蒸気の凝縮を防止するために、好ましくは供給源からの出口でのT2から、反応チャンバ入口33でのT3まで徐々に上昇する。しかし、反応チャンバ入口での温度は、例えば、ガスケットおよびOリングに関して石英反応チャンバを密閉するように、供給ラインおよびチャンバ入口で使用される封止材料(およびその他の材料)を損傷させる可能性があるほど高くあってはならない。現在、Cl曝露に耐性がありかつ半導体産業への通常の商業的用途に利用可能な封止材料は、一般に、約160℃よりも高い温度に耐えることができない。したがって本発明は、GaCl3供給ラインの温度を感知し、次いで供給ラインの温度がこの供給ラインに沿って、好ましくは約130℃である供給源から好ましくは最大で約145から155℃程度(または、Oリングもしくはその他の封止材料の高温耐性よりも安全な状態で低いその他の温度)である反応チャンバ入口まで上昇するように(または少なくとも低下しないように)、必要に応じた供給ラインの加熱または冷却(一般に、供給ラインの温度を「制御」する)を含む。必要な温度制御をより良く実現するために、供給源装置と反応チャンバ入口との間の供給ラインの長さを短くすべきであり、好ましくは約1ft.、または2ft.、または3ft.である。GaCl3供給源に対する圧力は、圧力制御システム17によって制御される。
【0070】
本発明のGaCl3供給源のその他の態様は、チャンバ内へのGaCl3流束の精密な制御である。バブラーの実施形態では、供給源からのGaCl3流束は、GaCl3の温度、GaCl3に対する圧力、およびGaCl3を通してバブリングされたガスの流れに依存する。GaCl3の質量流束は、原則として、これらのパラメータのいずれかによって制御することができるが、好ましい実施形態は、制御器21でキャリアガスの流れを変化させることによって、質量流束を制御することである。Piezocorおよび同様のもの71などの、日常的に利用可能なガス組成センサは、反応チャンバへの、例えば秒当たりのグラム数で表される実際のGaCl3質量流束の追加の制御をもたらすのに使用することができる。さらに、GaCl3供給源に対する圧力は、バブラーの出口に配置された圧力制御システム17によって制御することができる。圧力制御システム、例えば背圧調節器では、供給源容器内の過圧を制御することが可能である。制御されたバブラーの温度およびキャリアガスの流量と組み合わせた容器圧力の制御は、前駆体流量の改善された決定を促進させる。任意選択で、容器は、絶縁外側部も含む。
【0071】
GaCl3供給源、GaCl3供給ライン、およびGaCl3と接触している入口マニホールド構造に使用される材料は、耐塩素性であることが望ましい。金属成分の場合、ハステロイ(Hastelloy)などのニッケルベースの合金、タンタル、またはタンタルベースの合金が好ましい。金属成分に関するさらなる耐腐食性は、保護耐腐食性コーティングにより提供することができる。そのようなコーティングは、シリコンカーバイド、窒化ホウ素、窒化アルミニウムを含むことができ、好ましい実施形態では、金属成分に、溶融石英層または結合非晶質シリコン層をコーティングすることができ、例えばSiltek(登録商標)およびSilcosteel(登録商標)(Restek Corporationから市販されている)は、酸化環境に対して高い耐腐食性をもたらすことが実証されている。非金属成分の場合、耐塩素性ポリマー材料(炭素またはシリコンポリマー)が好ましい。
【0072】
好ましい実施形態では、本発明の装置は、MOCVDプロセスを実施することができるように、第III族有機金属化合物の供給源を提供することもできる。例えばMOCVDは、例えば薄いGaNまたはAIN緩衝層、薄い中間層、および混合金属窒化物層などを堆積するのに使用することができる。追加のプロセスガスは、当技術分野で知られているように、通常通りに供給することができる。
【0073】
第V族前駆体は、1種または複数の第V族原子を含有するガスである。そのようなガスの例には、NH3、AsH3、およびPH3が含まれる。GaNの成長では、典型的な成長温度でNの十分な組込みを行うことができるので、NH3が典型的に使用される。アンモニアおよびその他のN前駆体は、外部供給源である。例えば半導体級NH3は、様々なサイズのシリンダ19で容易に入手可能であり、キャリアガス72は、やはり様々なサイズの容器に低温液体としてまたは気体として入手可能である。これらの気体の流束は、質量流制御器21などによって通常通りに制御することができる。代替の実施形態では、本発明の装置は、その他の第III族塩化物の供給源も提供することができる。
【0074】
2.反応器の幾何形状
次に、高い経済性を実現するために、反応器サブシステムは、市販の反応器システムを好ましく応用したものである。本発明での適用および使用に好ましい入手可能な反応器は、次に記述される特徴のほとんどまたは全てをそのまま含む。これらの特徴は、本明細書に開示される修正および強化により、GaN層のHVMに有用であることが決定されている。以下の記述は、主に、既存の装置を適応させた実施形態を対象とするが、反応器および反応器システムは、これから記述される特徴を含むように専用のものにすることができる。本発明は、既存の装置の再設計および修正と、新しい装置の設計および製作の両方を含む。本発明は、結果的に得られる装置も含む。
【0075】
一般に、好ましい反応チャンバは、水平プロセスガス流を有し、垂直寸法が小さく水平寸法が大きなほぼボックス状または半球状の構成に成形されている。水平反応チャンバの、ある特徴は、非生産的反応時間を制限しかつ品質の良いGaNウェハーのHVMを実現するのに重要である。
【0076】
3.低熱質量サセプタおよびランプ加熱
まず、新しいウェハーを導入した後の温度上昇に費やされる時間、および堆積を実行した後の温度低下に費やされる時間は、生産的ではなく、制限しまたは最小限に抑えるべきである。したがって、好ましい反応器および加熱装置は、やはりより低い熱質量を有し(即ち、熱を素早く吸収する能力)、熱質量が低くなるほどより好ましい。そのような好ましい反応器は、赤外線(IR)加熱ランプで加熱され、赤外線透過壁を有する。図1は、石英で作製され、かつ下部縦方向IRランプ27および上部横方向IRランプ29により加熱される、反応器25を示す。石英は、十分にIR透過性であり、十分に耐Cl性であり、十分に耐火性であるので、好ましいチャンバ壁材料である。
【0077】
4.チャンバ壁およびフランジでの閉ループ温度制御
反応チャンバ内部を清浄化するのに費やされる時間も生産的ではなく、やはりこの時間を制限しまたは最小限に抑えるべきである。GaN堆積プロセス中、前駆体、生成物、または副生成物が、内壁に堆積しまたは凝縮する可能性がある。そのような堆積または凝縮は、一般に、前駆体および副生成物が凝縮しないよう十分に高く、しかし壁面でのGaNの形成および堆積が防止されるよう十分に低い中間温度に冷却することでチャンバ壁の温度を制御することにより、著しく制限しまたは低減させることができる。GaCl3 HVPEプロセスに使用される前駆体は、約70から80℃よりも低い温度で凝縮し;主な副生成物、NH4Clは、約140℃よりも低い温度でしか凝縮せず、GaNは、約500℃よりも高い温度で形成および堆積し始める。チャンバ壁は、好ましくは前駆体および副生成物の凝縮が著しく制限されるように十分高いことがわかっている200℃と、チャンバ壁でのGaN堆積が著しく制限されるように十分低いことがわかっている500℃との間の温度T5に制御される。チャンバ壁に好ましい温度範囲は、250から350℃である。
【0078】
好ましい範囲への温度制御は、一般に、チャンバ壁の冷却を必要とする。IR透過性であるが、チャンバ壁は、それにも関わらず、高温サセプタからの熱伝達によってある程度まで加熱される。図1は、好ましい冷却配置構成を示し、反応チャンバ25が完全または部分シュラウド37に収容されており、冷却空気はシュラウドを通って反応チャンバの外側上方および周りに誘導される。壁温度は、赤外線高温測定によって測定することができ、それに応じて冷却空気流を調節することができる。例えば、1枚(または複数)の多重速度または可変速度ファンを設け、チャンバ壁温度に対して感受性のあるセンサによって制御することができる。
【0079】
5.ロードロック、カセット間
ウェハーローディングおよびアンローディング時間も、生産的ではない。この時間は、39で概略的に示される自動装置によって、通常通り制限することができる。当技術分野で知られるように、この装置はウェハーを格納することができ、ウェハーを反応チャンバにロードすることができ、ウェハーを反応チャンバからアンロードすることができ、一般には、例えば移送棒を使用して、外部ホルダと反応チャンバ内のサセプタとの間で例えばウェハーを移動させるロボットアームなどを含む。ウェハーの移送中、反応チャンバは、中間ウェハー移送チャンバによって周囲への曝露から切り離すことができる。例えば、移送チャンバと外部との間の制御可能なドアは、ローディングおよびアンローディングを可能にし、次いで周囲への曝露に対して移送チャンバを密閉することができる。フラッシングおよび調製の後、移送チャンバと反応器との間の別の制御可能なドアを開放して、サセプタ上にウェハーを配置しまたは除去することが可能になる。また、そのようなシステムは、酸素、水分、またはその他の雰囲気中汚染部物質に対する反応器内側の曝露も防止し、ウェハーをロードしアンロードする前のパージ時間を短縮する。汚染を引き起こさずに高温ウェハーの取扱いを可能にすることによって、非生産的時間を短縮するので、石英ベルヌーイ移送棒を使用することが好ましい。
【0080】
6.個別の注入
矢印31の方向で入口マニホールド33から出口マニホールド35までのプロセスガス流制御は、高品質のGaN層を堆積するのに重要である。この流れは、プロセスガスに関する下記の好ましい特徴を含む。まず、ガリウム含有ガス、例えばGaCl3と、窒素含有ガス、例えばNH3は、個別の入口を通して反応器内に進入することが好ましい。これらのガスは、反応チャンバの外側で混合されるべきではなく、その理由は、そのような混合が、望ましくない反応をもたらす可能性があり、例えば、後続のGaN堆積を妨げるGaCl3およびNH3分子の複合体が形成されるからである。
【0081】
次いで個別の進入の後、GaCl3およびNH3の流れは、ガスがサセプタに対して空間的にも時間的にも均一な組成を有するように、調整されることが好ましい。III/V比は、任意の特定の時間に、好ましくは約5%未満だけ、より好ましくは約3%または2%または1%未満だけ、サセプタ(および支持された1枚または複数のウェハー)の面上で変化すべきことがわかっている。また、III/V比は、サセプタの面の全ての部分に対して時間的に、同様に実質的に均一であるべきである。したがって、GaCl3およびNH3の速度プロファイルは、両方のガスが共に反応チャンバの幅の端から端まで横方向に広がり、その結果、サセプタに到達したときに、両方のガスが反応器チャンバの幅の端から端まで、好ましくはサセプタの少なくとも端から端まで均一な非乱流を有するようになることを示すべきである。
【0082】
最後に、流れは、プロセスガスの1種または複数が変則的に高い濃度で蓄積される可能性のある、変則的に低流量の再循環ゾーンまたは領域を有するべきではない。低ガス流の局在化領域、またはガス停滞の局在化領域でさえ、最も良く回避される。
【0083】
好ましいプロセスガス流は、新しい、または既存の反応チャンバの入口マニホールドの、慎重な設計または再設計によって実現される。本明細書で使用される「入口マニホールド」という用語は、プロセスおよびキャリアガスの反応チャンバ内に誘導する構造であって、一体化した構造または2つ以上の物理的に個別のユニットを含む構造を指す。
【0084】
下記の一般的特徴を有するように設計され製作された入口マニホールドは、好ましいプロセスガス流を実現することがわかっている。しかし、ほとんどの実施形態では、提案された入口マニホールド設計によって製造された、選択された反応チャンバに入るガス流は、当技術分野で知られている流体動的モデル化ソフトウェアパッケージを使用してモデル化されることが有利である。提案された設計は、実際に製作する前に高い均一性を実現するために、それによって繰り返し改善することができる。
【0085】
まず、反応チャンバ内へのプロセスガスの進入は、チャンバの幅の一部、ほとんど、または全ての端から端まで分布することが有利であることがわかっている。例えば、ガスが進入することのできる多数のガス入口ポートまたは1つもしくは複数のスロットを、チャンバの幅の端から端まで横方向に分布させることができる。窒素や水素などのキャリアガスは、GaCl3およびNH3ガスを反応器に通してサセプタ上方の所望の反応部位に誘導するのを助けるために、導入することができる。さらに、入口ポート付近の擬似堆積を防止するには、約400〜500℃よりも高い加熱されないように、実際の入口ポートを加熱されたサセプタに対して間をおいて配置することが有利である。あるいは入口ポートは、冷却することができ、またはその付近でプロセスガスが混合されないように間をおいて配置することができる。
【0086】
次に、GaCl3およびNH3入口の特定の構成によってもたらされたガス流特性は、改善することができ、またはダイナミックに「調整」できることがわかっている。例えばサセプタに影響を及ぼしかつサセプタの下から生じ、GaCl3およびNH3流と混合される、2次パージガス流は、組成および速度の均一性が増すように、または反応器構成要素上での堆積が防止されるように、使用することができる。例えば、GaCl3およびNH3流が異なる入口から反応チャンバに進入する実施形態では、GaCl3のいくらか上流で、反応チャンバに進入するパージガス流を提供することが有利であることがわかっており、NH3は、意図される堆積ゾーン上方にプロセスガスを閉じ込め、かつ意図しない堆積から反応器の側壁を遮断するように流れる。この目的で、より多くの量のキャリアガスを、チャンバ付近で側方に導入し、より少ない量を、チャンバの中心を中心として導入することが有利である。
【0087】
また、好ましい入口マニホールドは、動作中に観察された不均一性を改善することができるように、少なくともプロセスガス流の1種の動的調節をもたらす。例えば、プロセスガス用の入口は、2つ以上の流れに分割することができ、個々の流れ制御弁は、各流れの流動の独立した調節を得ることができるように設けることができる。好ましい実施形態では、GaCl3入口は、独立して制御可能な相対的流れを有する5つの流れに配列される。
【0088】
好ましい入口マニホールドの別の態様は、温度制御を含む。それによって、前駆体、例えばGaCl3の凝縮が防止されるように、かつ温度感受性材料、例えばガスケットまたはOリング材料への損傷が防止されるように、入口マニホールド温度T3を制御することができる。論じたように、GaCl3入口ポートは、GaCl3供給ラインで到達した最高温度以上の温度であるべきであり、好ましくは約130℃程度から約150℃程度の上昇である。入口マニホールドに、特に石英反応器チャンバに対してマニホールドを密封するのに使用できる、ガスケット材料やOリング材料などの市販の耐塩素性密封材料は、約160℃程度よりも高い温度で劣化する。より高い温度で使用可能なシリコンo−リングなどの耐塩素性密封材料は、可能な場合に使用することができ、その場合は、入口マニホールドの温度上限を上昇させることができる。
【0089】
したがって、入口マニホールド温度T3は、温度を周囲から上昇させるように熱を供給することによって、または高温反応チャンバおよび非常に高温のサセプタから伝達された熱を除去することによって、約155から160℃程度の範囲内に維持されるように制御すべきである。好ましい実施形態では、入口マニホールドは、温度センサおよび温度制御流体用チャネルを含む。例えば、155から160℃の温度は、温度制御されたGALDEN(商標)流体を循環させることによって実現できる。その他の知られている流体は、その他の温度範囲に関して使用することができる。流体チャネルは、好ましくは、入口マニホールドの温度感受性部分近く、例えばGaCl3入口ポートおよび密封Oリング近くを流れる。チャネルの配列は、当技術分野で知られているソフトウェアパッケージを使用する熱モデル化に鑑みて、より精密に選択することができる。
【0090】
固体または液体または蒸気相にあるか否かに関わらず、GaCl3分子は主にGa2Cl6ダイマー形態で存在することが知られている。その形態は、実際に800℃まで非常に安定であり、気相ラマン分光法によって裏付けられた熱力学計算によれば、300℃では、気相の90%超がダイマー分子からなり、700℃では、ダイマーの99%以下が、GaCl3モノマーに分解している。
【0091】
150℃以下の温度に保持される金属注入ポートを通してダイマー分子が注入されるにつれ、ダイマーの分解は、1000℃よりも高い温度にある高温サセプタに接触したときだけ生ずることになる。サセプタ上方のガスの速度またはその滞留時間に応じて、分解することになるダイマーの部分は、ウェハー上の高い成長速度を持続させるには小さすぎる可能性がある。GaN分解プロセスは、全ての塩素が除去されて吸着形態のGaが得られるようになるまで、GaCl3の吸着およびそのGaClx(x<3)への別の分解を通して進行する。したがって、モノマー形態のGaCl3から操作することが望ましい。本発明の好ましい実施形態は、サセプタ領域の上流に位置する反応チャンバの下の石英管を通して、ダイマーを導入する。この石英管は、断面が楕円形の漏斗を通して反応チャンバに接続される。エネルギーは、ダイマーが漏斗内にある間に供給されて、ダイマーをモノマーに分解する。好ましい実施形態は、石英管および漏斗が高流束のIR放射線を受け取るように位置付けられ成形された、IRランプからのIR放射線を使用する。この実施形態では、漏斗領域がIR吸収材料で満たされ、放射線出力は、IR吸収材料が600℃以上、またはより好ましくは700℃以上の温度になるように調節される。ダイマー形態のGaCl3が石英注入器に注入されかつ高温漏斗ゾーンを通過するにつれ、ダイマーは、モノマーに分解するようになり、サセプタのすぐ上流にある反応チャンバに注入される。好ましくは、反応器へのGaCl3の注入点とサセプタとの間の領域は、ダイマーの再形成が防止されるように800℃よりも高い温度で維持される。好ましい実施形態は、漏斗と、700℃よりも高い温度、好ましくは800℃よりも高い温度を維持するためにIR加熱ランプによって加熱されたサセプタとの間で、SiC板を使用することである。
【0092】
7.サセプタおよびマルチウェハーサセプタ
サセプタおよびその取付けは、当技術分野で一般に知られている標準的な構成のものである。例えば、シリコンカーバイドまたは窒化シリコンでコーティングされた黒鉛、あるいは耐熱金属または合金を含むことができる。サセプタは、シャフト上での回転のために取り付けられることが好ましい。GaN堆積中、サセプタ温度T4は、約1000から1100℃(またはそれ以上)にすることができ、知られている温度制御回路によって、石英IRランプにより維持される。サセプタ直下にデッドゾーンが形成されないようにするために、サセプタの取付けでは、パージガスの注入を行うことが好ましい。この注入は、加熱されたサセプタおよび加熱してもよい(直接または間接的に)隣接する構成要素の下面での、望ましくない堆積を制限しまたは最小限に抑えることができるので、やはり有利である。サセプタは、1枚または複数の基板を保持するように構成することができる。
【0093】
8.加熱排出管
反応チャンバの出口マニホールド35は、反応チャンバから排出ライン41を通って廃棄物低減システム5に至る、自由で遮るもののない排出ガス流を提供する。排出システムは、ポンプ(42)、およびこれに関連した圧力制御システム(圧力制御弁(44)、圧力計(46)、およびこれに関連した、減圧下で動作させるための制御装置)を含むこともできる。出口マニホールド排出ラインおよび圧力制御装置(使用する場合)は、反応生成物の凝縮が制限されるように温度制御することも有利である。排出ガスおよび反応生成物は、典型的にはキャリアガス;未反応プロセスガス、GaCl3およびNH3;主にNH4Cl、NH4GaCl4、HCl、およびH2である反応副生成物を含む。上述のように、約130℃程度よりも高い温度は、GaCl3の凝集を防止するのに必要である。NH4Clは、約140℃程度よりも低い温度で粉末状材料に凝縮し、出口マニホールドおよび廃棄システムは、この温度よりも高い温度に保たれるべきである。その一方で、密封材料の劣化を防止するには、出口マニホールド温度が約160℃程度よりも超えるべきである。
【0094】
したがって、出口マニホールド温度T6は、入口マニホールド温度制御に使用するもの同様の温度制御手段によって(任意選択の熱モデル化を含む)、約155から160℃程度の範囲内に維持されることが好ましい。最高排出ライン温度T7は、封止材に関して許容される最高温度によって制限され、好ましくは約155から160℃の範囲内である。
【0095】
9.廃棄物管理
次に廃棄物低減サブシステム5について検討すると、好ましい低減システムは、反応チャンバから排出された廃棄物ガリウム化合物を回収することによって、本発明の経済的な操作を補助することができる。本発明の一実施形態は、1カ月の持続的な大量生産中に、30kg、または60kg、またはそれ以上(廃棄物約50%と想定される)を排出することができる。現在のGa価格では、この廃棄物Gaを回収し、GaCl3前駆体に再生することが経済的であり、それによって、約90から100%のGa効率を効果的に実現することが経済的である。
【0096】
図1は、ガリウムの回収を行い、かつ市販の製品から容易に適合させることのできる、廃棄物低減サブシステム5の好ましい実施形態も概略的に示す。反応チャンバ25から排出された流れは、排出生成物の凝縮が制限されるようにT7に温度制御された、例えば都合良く約155から160℃またはそれ以上の温度範囲に制御された排出ライン41内を通過し、次いでバーナーユニット43に入る。バーナーユニットは、排出ガスを、例えばH2/O2燃焼を含む高温燃焼ゾーン45に通すことによって、排出ガスを酸化する。次いで酸化した排出流を管47に通し、向流水スクラバーユニット49に入れ、そこで、水流51に対して逆行するように移動させる。この水流は、酸化した排出流から実質的に全ての水溶性および粒子状成分を除去する。次いで洗浄された排出ガスが、システム57から放出される。
【0097】
可溶性および粒子状材料を含む水流は、セパレータ59に移動し、粒子状成分、特に粒子状酸化ガリウム(例えば、Ga23)が、水溶性成分、主に溶解したNH4ClおよびHClから分離される61。分離は、スクリーニング、濾過、遠心分離、および凝集など、知られている技法によって得ることができる。本発明の一実施形態は、操作するそれぞれの月の最中に、60kg、または120kgまで、またはそれ以上の粒子状Ga23を生成することができる。粒子状酸化ガリウム没食子酸塩が収集され、Gaが有利に回収され、例えば知られている化学技法によってGaCl3に再生される。非特許文献4を参照されたい。水溶性成分は、システムから移動する。
【0098】
本発明の好ましい特定の実施形態
次に、上記にて概略的に述べてきた、本発明の特に好ましい実施形態について述べる。この実施形態は、ASM America,Inc.製のEPSILON(登録商標)シリーズ、単一ウェハーエピタキシャル反応器の修正および適応に基づく。したがって、下記の特徴の多くは、この好ましい特定の実施形態に特有のものである。しかし、これらの特徴は、限定するものではない。その他の特定の実施形態は、その他の入手可能なエピタキシャル反応器の修正および適応を基にすることができ、本発明の範囲内である。
【0099】
図2A〜Cは、GaCl3を50から75kg保持することができ、かつそれを約130から150℃程度までの制御温度で液体として維持することができるリザーバ103と、ライン内でのGaCl3の凝縮を制限しまたは防止しながら反応器チャンバにGaCl3の制御された質量流を提供する、供給ライン、弁、および制御器を有する供給アセンブリ105とを含む、GaCl3送達システム101の態様を示す。リザーバは、液体GaCl3の蒸発を高めるための内部手段を含む。好ましい実施形態では、これらは、当技術分野で知られているバブラー装置を含み;代替の実施形態では、これらは、GaCl3液体を物理的に撹拌し、液体を噴霧し、液体超音波分散などを行うための手段を含むことができる。
【0100】
図2Cは、従来のプロセスガス制御キャビネット137に隣接して位置決めされた、キャビネット135内の送達システム101の、例示的な配置構成を示す。GaCl3供給ラインの長さを限定するために、キャビネット135は、ここではキャビネット137に隠れている反応チャンバにも、隣接して位置決めされている。プロセスガス制御キャビネット137は、例えば、ガス制御パネル139と、第III族有機金属化合物などの追加のプロセスガスまたは液体用の分離部分141〜147を含む。任意選択で、供給ライン(または送達ライン)は、キャリアガスおよび第III族前駆体を運ぶ内部ラインと、内部に封入されたラインの内側であるが内部ラインの外側に環状空間を提供する、内部に封入された同軸ラインとを有する同軸部分を含む。環状空間は、加熱媒体を含有することができる。
【0101】
図2Bは、好ましい供給アセンブリ105をより詳細に示す。弁107および109は、キャリアガスをリザーバ103に導き、次いで内部バブラーを通してリザーバに入れ、次いで蒸発したGaCl3蒸気と共にリザーバから出すラインを制御する。これらは、メンテナンスなどのために、リザーバを切り離すことができる。弁110は、容器システムの出口および入口弁の上方でのシステムのパージを促進させる。特に、凝縮は、おそらくピッグテール要素111、112で生ずる可能性があるので、弁110は、これらの領域をパージするのに有用である。バブラーの制御された温度およびキャリアガスの流量と併せた容器圧力の制御によって、前駆体流量の改善された決定が促進される。弁110の付加により、成長モードではないときに非腐食性キャリアガスで完全送達システムをパージすることが可能になり、それによって、腐食環境へのシステムの曝露が低減し、その結果、装置の寿命が改善される。アセンブリは、供給ライン内を通る様々な態様の流れを制御するための、弁111〜121も含む。またアセンブリは、GaCl3容器に対して一定の圧力が維持されるように、圧力制御器および変換器129も含む。GaCl3容器へのキャリアガスの精密な流れを提供するための、質量流制御器131も提供される。これらは、制御され較正されたGaCl3質量流が反応チャンバに供給されるように作用する。圧力調節器125および127も含む。供給ライン、弁、および制御器を含む供給ラインアセンブリは、各部品が封入されるように、クラムシェル形の多数のアルミニウム加熱ブロックに封入されている。アルミニウムブロックは、供給ライン部品の温度を制御する温度センサも含有し、リザーバの出口から反応チャンバの入口まで温度が上昇するように(または、少なくとも低下しないように)なされている。ガス加熱器は、入口ガスをGaCl3供給源に、好ましくは少なくとも110℃の温度に加熱するよう設けられる。
【0102】
任意選択で、キャリアガスから水分を5ppb以下にまで除去することが可能な精製器が、キャリアガス入口ラインに配置され、さらにキャリアガスフィルタが、キャリアガス精製器の下流にある。キャリアガスは、任意選択で、キャリアガス加熱器に近接した広い熱交換面積を提供するために、正弦状の湾曲部を、例えばピッグテール112を構成することができる。
【0103】
図3Aおよび3Bは、反応チャンバ201の好ましい実施形態の平面図を示す。この反応チャンバは、石英壁を有し、一般に、幅が広く高さの低い細長い長方形ボックス構造として成形される。いくつかの石英リッジ203が、チャンバ壁の端から端まで横に渡され、特にチャンバが真空中で動作するときに、この壁を支持する。反応チャンバは、サセプタの場合よりも実質的に低い温度にチャンバ壁を制御することができるように冷却空気を仕向ける、シュラウド内に封入される。このシュラウドは、一般に、反応チャンバが露出するように、これらの図に示されるよう開放することのできるスーツケース状の配置構成を有する。この図には、シュラウドの長い側面205および上面207が示されている。サセプタ215(この図面には示されていない)は、反応器内に位置決めされている。サセプタは、2列の平行なランプに配置される石英ランプによって加熱される。上部ランプ列209はシュラウドの上面に示されており、下部列は、反応チャンバの下に隠れている。入口マニホールドの部分は図示されている。
【0104】
図3Cは、特定の好ましい反応チャンバ301の縦断面を示すが、強化リブ203は省略されている。この図には、上部石英壁303、底部石英壁305、および1つの石英側壁307が示されている。石英フランジ313は、入口マニホールド構造への反応チャンバの入口端部を封止し、石英フランジ309は、出口マニホールド構造への反応チャンバの出口端部を封止する。ポート315は、プロセスガス、およびキャリアガスなどの進入をもたらし、ポート311は、排出ガスの出口を提供する。サセプタは、一般に、その最上面が石英シェルフ317の上面と同一平面上になるように、半円開口319内に位置決めされる。それによって、実質的に滑らかな面が、入口マニホールド構造から進入するプロセスガスに提供され、その結果、これらのガスは、サセプタ下で乱流にならずまたは逸れることなくサセプタの上面を横断するようになる。円筒状石英管321は、その周りでサセプタが回転することのできる、サセプタ支持シャフトを提供する。キャリアガスは、プロセスガスが蓄積する可能性のあるデッドゾーンを防止するために、サセプタ下である体積がパージされるよう、この管を通して注入できることが有利である。特に、加熱されたサセプタ下でのGaCl3の蓄積は、制限される。
【0105】
入口マニホールド構造は、ポート315およびスリット状ポート329の両方を通してプロセスガスを供給する。ガスは、石英管323を通してポート329に到達し;この管は、扁平漏斗325に開放されており、ガスは横に広がることが可能になり(反応チャンバ内のプロセスガス流に対して横方向);この漏斗は、シェルフ317に横に配列されたスロットを通して、反応チャンバの基部へと開放している。
【0106】
図6を参照すると、漏斗には、シリコンカーバイドのビーズ607が密集して充填されており、扁平漏斗の上面のシリコンカーバイドインサート327は、漏斗325から反応チャンバにGaCl3を進入させるためにスリット状ポート329を提供する。2個のIRスポットランプ601と、それらのリフレクタ光学部品が、漏斗の各面上に位置付けられている。熱電対605を含有する石英シース603は、SiCビーズが約800℃の温度に維持されるよう、スポットランプ出力の閉ループ制御を可能にするために、石英管323の底部を通ってSiCビーズの中央の漏斗の高さの中央付近まで挿入される。好ましくは、GaCl3はポート329を通して導入され、NH3はポート315を通して導入される。あるいはGaCl3は、ポート315を通して導入することができ、NH3は、ポート329を通して導入することができる。あるいは、イオンまたはラジカルの生成によってNH3を活性化することができるように、管323の下部で、当技術分野で知られているようにRF電界を生成してもよい。あるいは、NH3の一部または全てをN2によって置き換えることができ、これはRF電界によって同様に活性化されることになる。SiC拡張板335は、スリットポート329とサセプタの縁部との間に配置する。このSiC拡張板は、ダイマーがスリット状ポート329とサセプタとの間の気相中で確実に改質されないようにするために、主加熱ランプによって加熱される。SiC拡張板の温度は、700℃よりも高くすべきであり、好ましくは800℃よりも高い。
【0107】
図4は、反応チャンバアセンブリ403と結合されたウェハー移送チャンバ401アセンブリを含む、特定の好ましい反応/移送チャンバアセンブリの、対角線での破断図を示す。先に図2および3で特定された構造を、この図では同じ参照番号により特定する。例示的な移送チャンバ401は、ロボットアーム、ベルヌーイ棒、および基板をシステムの外側から反応チャンバ内に移送しかつ反応チャンバから元の外側に戻すためのその他の手段(図示せず)を収容する。その他の設計の移送チャンバを、本発明では使用することができる。
【0108】
反応チャンバアセンブリは、シュラウド405内に取り付けられた反応チャンバ301を含む。この図には、シュラウドの底部壁面407および奥の壁面205の一部が示されている。シュラウドは、制御された壁面温度が維持されるよう、反応チャンバに冷却空気を伝達する働きをする。ある反応チャンバ構造は、底部壁面305、側壁307、出口マニホールド対するフランジ309、シェルフ317、サセプタ215、およびサセプタを支持し任意選択のパージガス流のための円筒管321を含むものが、既に記述されている。サセプタは、サセプタに横方向の安定性を与えかつシェルフ317、SiC拡張板335、およびスリット状ポート329と同一平面にある丸みの付いたプレート409内で、円形開口319内で回転する。これらの部品の平面性により、ガス入口からサセプタへの滑らかなガス流が確実になる。出口マニホールド構造は、指示される方向で反応チャンバから排気ライン419に排出ガスを伝達するプレナム407を含む。出口マニホールドおよび反応チャンバのフランジ309は、例えば、耐温度性および耐塩素性材料で作製されたガスケットまたはOリング(図示せず)と共に封止される。
【0109】
入口マニホールド構造(この用語が本明細書で使用されるように)は、破線ボックス411内に示されている。以下に示すプレナム211は、耐温度性および耐塩素性材料で作製されたガスケットまたはOリング(図示せず)などで、反応チャンバの前面フランジに封止される。移送チャンバと反応チャンバとの間のゲート弁413は、時計回り(下向き)に回転して、2つのチャンバ間の通路を開放し、反時計回り(上向き)に回転して、2つのチャンバ間の通路を閉鎖して封止する。ゲート弁は、例えばガスケットまたはOリングを用いて、面板415に対して封止することができる。Oリングに好ましい材料は、その他のOリングに関して既に述べたものと同じである。ゲート弁は、上述のガス進入用ポートを提供することも好ましい。前述のような下部ガス入口の構造は、連絡石英管323、扁平漏斗325、およびスリット状ポート329を含む。
【0110】
図5は、特定の好ましい入口マニホールド構造と、反応チャンバアセンブリにおけるその配置構成の詳細を示す。図2および3で既に特定された構造は、この図において同じ参照番号で特定する。まず、周りを囲む反応チャンバアセンブリについて検討すると、シュラウド405および反応チャンバ301を含む反応チャンバアセンブリ403が左側にあり、一方、移送チャンバ構造401が右側にある。サセプタ215およびサセプタ安定板409は、反応チャンバの内側にある。反応チャンバの石英フランジ313は、シュラウド405の拡張部501によって、プレナム構造211に対して押しやられる。反応チャンバフランジおよびプレナム構造は、ポート315の両側に断面で示されるOリングガスケット503によって、封止される。
【0111】
次に、GaCl3(好ましくは、しかし任意選択で、代わりにNH3)のスリット状ポート329内を通る入口構造について検討する。これは、石英管323と、反応チャンバの底部壁面のかなりの部分が端から端まで開放されるように、縦方向に扁平であるが横方向に拡張された漏斗325とからなる。小さなビーズ、または小さな管、または任意の形の多孔質IR吸収材料が、漏斗325を満たす。インサート327は、漏斗の上部開口に適合し、サセプタとスリット状ポートとの間の空間を覆う拡張板335によってサセプタに向かって角度が付けられた、スリット状ポート329を含む。動作中、GaCl3(および任意選択のキャリアガス)は、供給管内を上向きに移動し、漏斗内で横方向に広がり、スリットによって反応チャンバ内およびサセプタ内に向けられる。それによって、GaCl3は、反応チャンバの幅の端から端まで実質的に均一な層流で、ポート329からサセプタ215に向かって移動する。
【0112】
次に、ポート315内を通る入口構造について検討すると、これらの構造は、プレナム構造211、面板415、およびゲート弁413を含む。NH3(好ましくは、しかし任意選択で、代わりにGaCl3)蒸気が、供給ライン517を通してプレナム構造に導入され、いくつかの垂直間519を通して反応チャンバに向かって下向きに移動する。次いでNH3蒸気が垂直管から出て行き、または任意選択で各垂直管が並んで一群の分散ポートを形成するその分散ポート内を通り、プレナムのリップ511の周りを通過する。それによって、NH3蒸気は、反応チャンバの幅の端から端まで実質的に均一な層流で、サセプタに向かって移動する。各垂直管を通る流れは、全てを外側から調節可能な個別の弁機構509によって制御される。プレナムは、NH3が内部を通過するプレナム構造が上述の温度範囲内で維持されるように、かつOリング503に隣接するプレナム構造が、Oリングに使用される封止材料に関する動作範囲内で維持されるように、温度制御流体、例えば温度制御されたGALDEN(商標)流体を導く管も含む。記述されるように、Oリングに関する好ましい材料は、その他のOリングに関して既に述べたものと同じである。温度制御管505は、Oリング503に隣接して示されている(対応する管は、ポート315の下にも示されている)。典型的には動作中に、この管は、その動作範囲内にあり続けるように、Oリングを冷却する働きをする。
【0113】
ゲート弁413は、いくつかのガス入口ポート515を含み、それと共に反応および移送チャンバを切り離すように働くことが有利である。これは、ポート315を通して、移送チャンバと反応チャンバとの間のウェハーおよび基板に対して制御された接触をもたらすように、開放され閉鎖される。Oリング507によって面板415に封止される閉位置が、示されている。好ましい実施形態では、ガス入口ポート515は、パージガス、例えばN2を注入するのに使用される。そのサイズおよび間隔は、この場合はゲート弁(および反応チャンバ)の縁部付近でより稠密であり、ゲート弁(および反応チャンバ)の中心部分ではよりまばらであるが、GaCl3ガスがサセプタの真下から流れてその部位に望ましくないGaN堆積が生じるのを避けるため、サセプタの端から端まで流動しかつチャンバの側壁に沿ってパージガスのカーテンが構築されるときに、プロセスガスの組成および速度の均一性を改善するように設計される。
【0114】
一般に、高品質エピタキシャル層の堆積では、入口マニホールドおよびポート構造は、実質的に層流(したがって、非乱流)でありかつ速度および組成が実質的に均一であるプロセスガス流を、供給するように協働する。実質的に層状および均一な流れは、サセプタまでおよびサセプタ上に縦方向に延びるべきであり、反応チャンバの端から端まで横方向に延びる(または、サセプタの表面を少なくとも横断する)べきである。好ましくは、反応チャンバ内のプロセスガス流は、少なくとも5%、より好ましくは2%または1%まで、チャンバの端から端まで速度および組成が均一である。組成の均一性は、III/V比(即ち、GaCl3/NH3比)の均一性を意味する。これは、第1に、反応チャンバを通る既にほぼ均一なプロセスガス流が得られるように、プロセスガス入口ポートを設計することによって、第2に、ほぼ均一な流れがますます均一になるように、キャリアガスの選択的注入を設計することによって実現される。サセプタから下流の流れの制御は、それほど重要ではない。
【0115】
特に好ましい実施形態の、ガス流の動力学の数値モデル化によって、実質的に均一な流れが生成されるように、好ましいプロセスガス入口ポート構成が決定された。全プロセスガス流量に関する指針は、意図される持続的高スループット操作に必要とされる、選択されたGaN堆積条件および速度に従って確立される。次に、これらの全体的な流動指針の中で、インサート327およびスリット329は、反応チャンバ内へのモデル化されたGaCl3流が、反応チャンバの端から端まで実質的に均一になるように、設計されている。また、意図されるGaCl3流のモデル化は、NH3蒸気がリップ511の周りに生じて反応チャンバに入った後に、この流れも、反応チャンバの端から端まで実質的に均一になることを示している。さらに、弁509は、操作中に生じ得る不均一性が改善されるように制御することができる。
【0116】
さらに、数値モデル化によって導かれるように、1次プロセスガス流の均一性を増大させるため、2次的なキャリアガス入口が付加されている。例えば、特定の好ましい実施形態では、ゲート弁413の面とリップ511との間(即ち、面板415により取り囲まれた領域)に高濃度のGaCl3蒸気が蓄積されるのを防止することによって、ゲート弁413を通るパージガスの供給が改善をもたらすことが見出されている。また、反応チャンバの縁部でより多くのキャリアガス流が供給されるように、かつ中心でより少ないパージガス流が供給されるように入口を配列することによって、サセプタでの流れの組成および速度の均一性も改善され、サセプタの表面上方に反応性ガスがより良く維持されることも見出されている。
(実施例)
次に、本発明による第III−V族材料のHVMを実施した場合にもたらされた、利点および予期せぬ利益について示すために、本発明を、標準的なまたは従来のHVPEシステムと比較する。この比較の前にかつ前置きとして、従来のHVPEシステムを、その要部についてまず手短に説明する。
【0117】
従来のHVPEシステムは、通常は石英で製作された高温壁面環状炉からなる。第III族前駆体は、液体の形をとる第III族金属を保持したボート上にHClを流すことによって、反応器内の原位置で形成される。第V族前駆体は、外部貯蔵部から、例えば圧力シリンダから供給される。従来のHVPEは、ヒ化物、リン化物、および窒化物半導体の成長に使用されてきた。GaNを成長させる場合、第III族供給源は、典型的には石英ボート内の溶融Gaであり(これとHClとが反応してGaClを形成する)、第V族供給源は、通常はアンモニアガスである。
【0118】
より詳細には、石英管を、垂直にまたは水平に向けることができる。周りを取り囲む炉は、通常、少なくとも2つの温度ゾーンを備えた抵抗タイプのものであり、その1つは、第III族金属をその融点よりも高い温度に維持するためのものであり、他は、基板/ウェハーをエピタキシャル成長させるのに十分高い温度に維持するためのものである。液体第III族金属用ボート、基板/ウェハーホルダ、およびガス入口を含む、第III族金属供給源装置は、石英炉管の一端に配置され配列され、他方の端部は、反応副生成物を排出する働きをする。この装置全て(または少なくとも、炉管に入るもの)は、石英で製作されなければならず、ステンレス鋼を使用することはできない。ほとんどの反応器は、大気圧で1回に1枚のウェハーしか処理できない。多数のウェハーは、均一な堆積を実現するために、全てのウェハーの表面がガス流に沿って真っ直ぐ並ぶよう、反応器内に並べなければならない。
【0119】
ウェハーは、まず基板支持体上に配置され、次いで基板支持体を、石英炉管の高温ゾーンに位置決めすることによって、投入される。ウェハーは、支持体を炉から取り出し、次いでウェハーを支持体から持ち上げることによって、取り出される。基板支持体を位置決めするための機構、例えばプッシュ/プルロッドは、やはり完全成長温度に曝されるので、石英で作製されなければならない。支持されたウェハー、基板支持体、および位置決め機構は、熱損傷、例えばウェハーおよび/または基板支持体の亀裂が生じないように、よく注意して、通常は高温反応器管内に位置決めしなければならない。また、反応器管そのものは、ウェハーのローディングおよびアンローディング中に空気に曝すことができる。
【0120】
そのような従来のHVPE反応器は、いくつかの理由で、本発明のHVM法およびシステムで可能な持続的大量生産を行うことができない。1つの理由は、本発明の反応器は、著しく低い熱質量を有することができるので、従来のHVPE反応器よりも少ない非生産的加熱および冷却時間しか必要としないことである。本発明の反応器では、サセプタ(基板/ウェハー支持体)しか加熱する必要がなく、素早く動作するIRランプによって加熱される。したがって加熱および冷却は、素早く行うことができる。しかし、従来のHVPE反応器では、抵抗炉は、数時間から数十時間に至る、長期にわたる加熱および(特に)冷却時間を必要とする可能性がある。そのような長期にわたる加熱および冷却時間中、このシステムはアイドル状態であり、ウェハーの生産、反応器の清浄化、およびシステムのメンテナンスなどは、遅らせなければならない。さらに、熱損傷の危険性にも関わらず、ウェハーは通常、さらなる加熱および冷却遅延が回避されるよう、動作温度付近にあるときに反応器内に配置されかつそこから取り出される。これらの目的で、本発明のシステムおよび方法は、従来のHVPEシステムで実現することができるよりも、高いスループットを実現することができる。
【0121】
従来のHVPEシステムのスループットが限定される別の理由は、そのようなシステムが、本発明の反応器で行われるよりもかなり多くの反応器清浄化が必要になることである。従来のHVPE反応器の全ての内部部品は、外部抵抗炉によって加熱されるので、第III−V族材料は、望ましい基板上での成長だけでなく、反応器の内側全体で成長する可能性がある。そのような望ましくない堆積は、反応器から頻繁に清浄化されなければならず、さもないと、ウェハーを汚染する塵および破片が形成される可能性がある。清浄化は、反応器が生産的ではなくなる時間を必要とする。
【0122】
また、第III族前駆体は非効率的に使用され;ほとんどが反応器の内部に堆積し;ごく一部が望み通りに基板ウェハー上に堆積し;再使用のために再生され得る反応器排出管にはほとんどまたは全く生じない。第V族前駆体も非効率的に使用され、過剰分が未使用のHClと反応して、反応ゾーン下流の低温領域上に堆積する可能性のある塩化物(NH4Cl)を、形成する可能性がある。そのような塩化物の堆積物は、やはり反応器から清浄化されなければならない。
【0123】
これとは対照的に、本発明の反応器は、第III−V族材料の望ましくない成長がほとんどまたは全く生じないように、温度制御された壁面を有する。本発明の反応器は、非生産的な清浄化およびメンテナンスをより短縮することができ、または頻繁に行う必要がなく、あるいはその両方を実現することができるので、より生産的にすることができる。これらの理由で、やはり本発明のシステムおよび方法は、従来のHVPEシステムで実現することができるよりも、高いスループットを実現することができる。
【0124】
従来のHVPEシステムのスループットが限定される別の理由は、従来の内部Ga供給源は、本発明の外部Ga供給源でなされるよりも(Ga前駆体GaCl3が再充填される)かなり頻繁に、再充填(液体Gaまたはその他の第III族金属による)を必要とするからである。本発明の外部供給源は、約200gm/時以上に至る最高持続速度で、速度および組成の両方を制御することができるGa前駆体の流れを送達する。外部供給源の容量は、反応器の幾何形状によって制限されないので、何日もまたは何週間もの持続生産を行うのに十分なものにすることができる。例えば外部供給源は、最大何十キログラムものGa、例えば約60kgのGaを貯蔵することができ、多数の供給源は、本質的に非限定的な持続生産において順次動作することができる。
【0125】
従来のHVPEシステムにおいて、Ga供給源は、厳密に限定された容量を有する。供給源は、反応器の内側に適合しなければならず、反応器そのものと同じかそれ以下の長さになる可能性があり、従来の供給源に対する上限は、Gaが5kg未満と考えられる。例えばGaが3kgの場合、液体Gaが4cmの深さに充填された約7×7×20cmのボートが必要とされる。そのような大きなGaボートの開示は、これまで当技術分野において見出されていない。さらに、供給源の速度および組成は、HClを通し、反応器内のGa供給源ボートの液体Ga上に流すことによって、Ga前駆体(GaCl)が原位置で形成されるので、十分に制御することができない。この反応の効率は、反応器の幾何形状および正確なプロセス条件、例えば供給源ゾーンの温度に依存し、60%から90%超の様々な効率の値が報告されている。さらに、Gaのレベルが低下するにつれて、かつGa供給源が時を経るにつれて、堆積ゾーンへのGaClの流束は、一定のプロセス条件であっても変化する可能性がある。やはりこれらの理由で、本発明のシステムおよび方法は、従来のHVPEシステムで実現することができるよりも、高いスループットを実現することができる。
【0126】
従来のHVPEシステムのスループットが限定される別の理由は、これまで、その構成が規格化されていないからであり、実際にそのようなシステムは、特定ユーザのためにしばしば個別に設計され製作される。規格化が不十分であるために、例えばメンテナンスが遅く、複雑になる。このようなシステムは、しばしば、取り扱うのが困難な複雑で脆弱な石英部品を含む可能性があるので、そのような反応器は、分解および再組立てするのに時間がかかる。特に、第III族供給源ゾーンは、HCl用の個別の石英入口、このHCl入口に隣接して位置決めされた石英ボート、第V族前駆体(第III族前駆体とは別に保持されなければならない)用の個別の石英入口、およびキャリアガス用に可能な追加の石英入口を含んでいるので、込み入っている。これとは対照的に、本発明のシステムおよび方法は、効率的な操作およびメンテナンスのために最適化されかつ市販の部品を含んでいる、Si処理に関して知られている試験済みおよび規格化された設計の、かなりの部分を適応させたものである。例えば、特定の好ましい実施形態は、ゲート弁および第III族前駆体プレナムを備えた第III族供給源ゾーンと、部分的に金属で製作された入口ポートとを含む。ゲート弁は、開閉するのに短時間しか必要とせず、第III族前駆体プレナムおよび入口ポートは、脆弱性がかなり少ない。やはりこれらの理由で、本発明のシステムおよび方法は、従来のHVPEシステムで実現することができるよりも、高いスループットを実現することができる。
【0127】
本発明のシステムと従来のHVPEシステムとを区別する、質的な設計の選択により、エピタキシャル成長の効率、反応器の利用およびウェハー生産速度、および前駆体の利用効率に、驚くべき量的な利益がもたらされる。これらの驚くべき量的利益について、直径100mmの1枚の基板を取り扱うように設計されかつ直径約20cmおよび長さ約200cmの反応器管を含んだ従来のHVPEシステムを、これに対応する本発明のシステムと比較する、表1、2、および3のデータを使用して、以下に検討する。
【0128】
まず、実現可能なエピタキシャル成長効率について検討すると、表1のデータは、本発明のHVMシステムを、従来のHVPEシステムよりもかなり効率的にすることができることを実証している。
【0129】
【表1】

【0130】
エピタキシャル成長効率は、実際のエピタキシャル成長時間と反応器のロード/アンロード時間との合計に対する、実際のエピタキシャル成長時間の比によって表すことができる。HVMシステムおよび本発明の方法は、従来のHVPEシステムでできるよりも著しく速くロード/アンロードすることができ、したがって、より高いエピタキシャル成長効率を実現できることがわかる。実際の操作では、本発明の外部Ga供給源によって、従来のシステムで可能な時間よりもかなり長い時間にわたって持続的動作が可能になることも予測される。
【0131】
従来のHVPEシステムでは、操作と操作の間で反応器が堆積温度付近で維持されるので、熱損傷が回避されるよう十分に遅い速度で、基板を反応器から引き出しまたは反応器に押し入れなければならない。基板ホルダと反応器入口との間の距離が約80cmであり、かつ熱損傷を回避するための引張り速度が2cm/分以下であると仮定すると、反応器から基板を引き出しかつ反応器に基板を押し入れるのに約40分が必要である。さらに、基板およびウェハーを反応器内に位置決めしたら、熱安定化、反応器パージ、およびプロセスガスの設定のために最長10分が必要になる可能性がある(ロードロックがある場合、パージおよびガス設定には、それぞれ5分間を必要とする可能性がある;ロードロックがない場合、設定は、さらに長くなる可能性がある)。このように、全ロード/アンロード時間は約90分であり、または連続生産において52分である(時々、2つの連続した操作の間で等しく共用される可能性がある場合)。
【0132】
これとは対照的に、本発明のHVMシステムでは、ウェハーを、熱損傷の危険性がないより低い温度で素早くロード/アンロードすることができ、したがって、長いウェハー位置決め時間がなくなる。その低熱質量およびIRランプ加熱により、本発明のHVMシステムおよび方法で使用される反応器(特に、そのような反応器内のサセプタおよびウェハー)を、より高い堆積温度とより低いローディング/アンローディング温度との間で素早く再生することができる。したがって、本発明のHVMシステムおよび方法は、従来のHVPE反応器で可能であるよりもかなり短いローディング/アンローディング時間を実現する。
【0133】
ロードした後、従来のHVPEシステムで使用されたGa前駆体供給源が、適切な質量流量の前駆体を維持できると仮定すると、従来のシステムと本発明のシステムでの実際のエピタキシャル成長時間は、ほぼ同じ長さである。しかし、本発明のHVMシステムおよび方法で使用されたGa前駆体供給源は、従来のHVPEシステムで使用されたGa前駆体供給源よりも著しい利点を有することが予測され、したがって、実際の操作では、本発明のシステムおよび方法が、表1に示された効率よりもさらに高い相対エピタキシャル成長効率を実現することになる。
【0134】
例えば、初期期間中に適切な質量流が可能であるとしても、従来のGa供給源は、長時間にわたって適切な質量流を持続することができそうもない。従来のHVPEシステムは、HClガスを液体形態の金属ガリウム上に通すことによって、反応器へ原位置でGa前駆体を生成する。このプロセスの効率は、反応器の幾何形状およびプロセス条件に強く依存しているので(例えば、約60%から約90%超がGa温度に依存する)、Ga前駆体(GaCl)の実際の質量流も変わることになる。さらに、Gaのレベルが低下するにつれて、かつGa供給源が時を経るにつれて、Ga前駆体の流束は、一定のプロセス条件(例えば、一定の温度および入力HCl流束)であっても変化する可能性がある。さらに、従来のGa供給源(特に、液体Gaボート)は、反応器内になければならず、したがってその容量は、反応器の幾何形状によって制約を受ける。従来のHVPEシステムにおいて合理的に可能と考えられる(かつ当技術分野で知られている事実として開示されていると考えられない)最大のボートは、約3から5kg程度以下を保持することができ、そのサイズが約7×7×20cmであり、かつ液体Gaが4cmの深さに充填されると考えられる。
【0135】
これとは対照的に、本発明のHVMシステムおよび方法は、長時間にわたって持続させることができる、Gaが最大200gm/時以上(300um/時を超えた成長速度を支持するのに十分である)で、一定の変化しないGa前駆体流を供給することができる外部Ga供給源を用いる。第1に、この供給源は、エピタキシャル成長中にGa質量流束を測定することができかつ制御することができるような手法で、GaCl3蒸気を提供することができる。第2に、この外部Ga供給源は、Ga前駆体が、何十キログラムもの前駆体を保持するリザーバから供給されるので、持続的な不断の操作が可能である。さらに、多数のリザーバを、効果的な非限定的操作のために順次作動させることができる。
【0136】
まとめると、相対エピタキシャル成長効率は、ウェハーが反応器内にあってその間に実際の成長が生ずる時間の割合によって定義される、反応器利用率(R.U.)と要約することができる。本発明のHVMシステムおよび方法は、約95%またはそれ以上のR.U.を実現し、一方、従来のHVPEシステムは、約65%以下のR.U.を実現する可能性があることがわかる。本発明のHVMシステムおよび方法は、実際の操作において、さらにより高い相対エピタキシャル成長効率を実現することになることが、予測される。
【0137】
次に、まず実現可能な反応器利用率およびウェハー生産速度について検討すると、表2のデータは、本発明のHVMシステムを従来のHVPEシステムよりも効率的にできることを実証している。
【0138】
【表2】

【0139】
反応器は、清浄化および予防的メンテナンスのために定期的に製造を中止しなければならない。本発明のHVMシステムおよび方法は、素早く清浄化しメンテナンスすることができるので、従来のHVPEシステムでできるよりも高い反応器利用率およびウェハー生産速度を実現することができる。
【0140】
操作中、材料は、反応器内の望ましくない部位で、例えば反応器壁面およびその他の内部反応器部品上に成長し、これらの材料の過剰な成長は、ウェハー汚染などの問題を引き起こす可能性がある。清浄化は、これらの望ましくない材料を除去するのに必要とされ、反応器の分解することのない原位置で、または反応器を分解した後の原位置外で行うことができる。原位置清浄化は、HClで望ましくない堆積物をエッチングすることによってしばしば行われる。何回かの原位置エッチングまたは清浄化の後は、より徹底した原位置外清浄化が有利である。
【0141】
本発明のHVMシステムは、従来のHVPEシステムよりもかなり短い原位置清浄化時間しか必要としない。本発明の反応器は、ウェハー製造中にその表面に材料がほとんど堆積しないように、制御されたより低い温度の壁面を有する。これとは対照的に、従来のHVPE反応器は、より高い堆積温度で動作し、その結果、ウェハーおよび基板上に成長する量と同じ量の材料が、反応器壁面および内部反応器部品上に成長するようになる。表2は、1.5mm以下の望ましくないGaNを、反応器壁面および内部反応器部品上に堆積させることが可能であると仮定したシナリオを示す。
【0142】
従来のHVPEシステムでは、原位置清浄化は、1.5mmの望ましくないGaNが反応器内部に成長される5回の操作ごとに(1回の操作当たり300um)、必要とされる。これとは対照的に、本発明の反応器の原位置清浄化も5回の操作ごとに行う場合、反応器内部にはGaNがわずかな量(例えば、従来のHVPEシステムで成長される量の20%以下)しか成長しない(事実、本発明のHVMシステムの原位置清浄化は、無理なく15回の操作ごとにしか遅延する可能性がない)。したがって、従来のHVPE反応器の原位置清浄化時間は、本発明のHVM反応器の原位置清浄化時間よりも、少なくとも5倍(および最長15倍)長い。
【0143】
また、本発明のHVMシステムは、従来のHVPEシステムよりもかなり少ない原位置外清浄化時間しか必要としない。まず、これらのHVMシステムは、原位置外清浄化の前および後にそれぞれ実行しなければならない著しく短い冷却/加熱時間を有する。また、それらの分解/清浄化/再組立て時間は、Si処理システムで知られているより短い時間と同様であるが、それは本発明のHVMシステムおよび方法が、Si処理で既に知られている市販の設計および部品を含んでいるからである。Si処理システムから組み込まれた設計および部品には、高速作動反応器ゲート、カセット間ローディングによる完全自動化ウェハー取扱い、高温ロード/アンロードを実行する能力、個別の冷却ステージ、原位置成長速度モニタリング、および反応器が雰囲気に曝露されるのを防止するロードロックが含まれる。
【0144】
また、既に論じたように、従来のHVPEシステムで使用されたGa前駆体供給源、即ちGaボートは、一定の前駆体流を維持するために、かつそれらの限定された容量が理由で、定期的に再充填しなければならない。清浄化中に行うことができる、この前駆体再充填は、これら従来のシステムの清浄化時間をさらに長くする。これとは対照的に、本発明のHVMシステムおよび方法の外部Ga供給源は、長期間にわたってほとんどまたは全く中断することなく、動作することができる。
【0145】
まとめると、反応器のメンテナンス時間は、別のR.U.およびウェハー生産速度によって要約することができる。この第2のR.U.は、ウェハーが反応器内にある時間と、ウェハーが反応器内にある時間および清浄化/メンテナンス時間の合計との比を表す。本発明のHMVシステムおよび方法は、約75%以上のR.U.を実現し、一方、従来のHVPEシステムは、約60%以下のR.U.を実現する可能性があることがわかる。
【0146】
相対システム効率は、生産されたウェハーの枚数を、これらのウェハーを生産するのに必要な全時間で割ることによって導き出すことができる、ウェハー生産速度によって表すことができる。ウェハー生産操作、原位置清浄化、および原位置外清浄化、速度の完全サイクルは、15操作を含むので(表1および2の仮定による)、これらの速度は、15を、15枚のウェハーを生産するための全時間(ロード/アンロード時間、原位置清浄化時間、原位置清浄化時間、メンテナンス時間、および供給源再充填時間を含む)で割ることによって、決定される。15枚のウェハーを生産(操作)するのに必要とされる、本発明のHVMシステムおよび方法の全時間は、従来のHVPEシステムによって必要とされる全時間よりもかなり短いことがわかる。したがって、本発明のシステムおよび方法は、従来技術に優る約2倍のスループットの改善を実現する。上記にて論じたように、より大きなスループットの改善が、実際の動作中に予測される。
【0147】
最後に、比較の前駆体効率について検討すると、本発明のHVMシステムおよび方法は、従来のHVPEシステムよりも効率的に、前駆体を、特にGa前駆体を利用する。これを、表3のデータによって例示する。
【0148】
【表3】

【0149】
Ga利用率は、表3において、まず、15cmウェハーに適した従来のHVPEシステムが約14slpm(分当たりの標準リットル数)のアンモニアを使用すると予測することができると見なすことによって決定される。V/III比が30であり、Ga前駆体からGaNへの変換率が95%であると仮定すると、従来のシステムは、約1.8gm/分のGaを使用すると予測することができる。したがって、200um/時でGaNを300um成長させるのに十分な90分の操作では、約151gmのGaを必要とする。15cmウェハー上には、300um層内に約31gmのGaがあるので、従来のHVPE反応器のGa効率は、約21%(=31/151)である。残りの120gm(151−31)のほとんどは、反応器の内側に堆積されるので、再生および再使用はほとんど不可能である。反応器から排出されたGaの再生および再使用がなされても、従来のHVPE反応器のGa効率は、約25%以下であることが予測される。
【0150】
これとは対照的に、HVMシステムおよび方法は、より少ないアンモニア流(例えば、10slpm)の使用を予測することができ、したがって、より少ないGa流およびより少ない全Gaが、15cmウェハーに必要とされる(例えば、114gm)。したがって、本発明のHVMシステムおよび方法は、再生および再使用なしで27%のGa効率を実現することができ、反応器から排出されたGaの再生および再使用を行った場合は、おそらく最大80%またはそれ以上のGa効率を実現することができる。さらに、残りの83gm(=114−31)は反応器の内側にほとんど堆積しないので、この未使用のGaのほとんどは、反応器排出間に現れ、それを再生および再使用に利用することができる。排出Gaを再生および再使用すると、本発明のHVMシステムおよび方法のGa効率が80%以上に到達できることが予測される。
【0151】
上述の本発明の好ましい実施形態は、これらの実施形態が本発明のいくつかの好ましい態様の例示であるので、本発明の範囲を限定するものではない。任意の均等な実施形態は、本発明の範囲内にあるものとする。実際に、記述されている要素の代替の有用な組合せなど、本明細書に図示され記述されているものに加えた本発明の様々な修正例は、後続の記述から、当業者により明らかにされよう。そのような修正例も、添付される特許請求の範囲内に包含されるものとする。下記において(かつ本出願の全体において)、見出しおよび凡例は、明確化および便宜上のためにのみ使用される。
【0152】
いくつかの参考文献が本明細書に引用されており、その開示全体は、あらゆる目的で参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。さらに、上記にてどのように特徴付けられたか否かに関わらず、引用されたどの参考文献の開示全体も、本明細書で主張されている対象の発明に先行するとは見なされない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧よりも高い圧力で、水素、窒素、ヘリウム、アルゴン、およびこれらの混合物からなる群から選択されたキャリアガスを供給するステップと、
少なくとも110℃の温度にキャリアガスを加熱するステップと、
液体形態の第III族前駆体の浴に、キャリアガスを注入するステップと、
送達される第III族窒化物を合成するために、浴から反応ゾーンまで、キャリアガスおよび任意の混入された第III族前駆体を運ぶステップと
を含むことを特徴とする、窒化ガリウムを合成するために、反応ゾーンに気状形態の第III族前駆体を送達するための方法。
【請求項2】
キャリアガスおよび混入された第III族前駆体は、少なくとも110℃の温度で反応ゾーンに送達されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
5ppb以下に水分を除去することによって、キャリアガスを精製するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
キャリアガスは、分当たり5から15リットルの流量で供給されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
浴内の第III族前駆体は、110℃から130℃の範囲の温度に加熱されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第III族前駆体は、三塩化ガリウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−96994(P2012−96994A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−24013(P2012−24013)
【出願日】平成24年2月7日(2012.2.7)
【分割の表示】特願2009−514548(P2009−514548)の分割
【原出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(507088071)ソイテック (93)
【Fターム(参考)】