説明

不揮発性記憶装置、集積回路装置及び電子機器

【課題】過消去ビットの発生を抑制してエンデュランス特性等を向上させることができる不揮発性記憶装置、集積回路装置及び電子機器等を提供すること。
【解決手段】不揮発性記憶装置は、電気的に書き換え及び消去可能な複数の不揮発性メモリーセルM11〜M44を有するメモリーセルアレイと、複数の不揮発性メモリーセルのうちの消去対象メモリーセルに対する消去動作の制御を行う消去制御回路ERCNとを含む。消去制御回路ERCNは、消去対象メモリーセルが多い場合には、消去対象メモリーセルに対応するビット線BL1〜BL4がフローティング状態に設定される第1の消去動作制御を行う。消去対象メモリーセルが少ない場合には、消去対象メモリーセルに対応するビット線BL1〜BL4が低電位電源電圧VSSに設定される第2の消去動作制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性記憶装置、集積回路装置及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MONOS(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Semiconductor)型やフローティングゲート型などの不揮発性メモリーセルを用いた不揮発性記憶装置が製品化されている。これらの不揮発性記憶装置では、メモリーセルの特性のばらつき等により、消去されにくいメモリーセルが存在する。このような消去されにくいメモリーセルを消去するために、消去動作を多数回実行すると、他の既に消去されたメモリーセルが過消去状態になり、その結果、不揮発性記憶装置のエンデュランス特性が向上しないという問題がある。
【0003】
この課題に対して例えば特許文献1には、消去動作が規定回数を超えた場合に部分消去を行って過消去ビットの発生を抑制する手法が開示されている。
【0004】
しかしながらこの手法では、ビット線をフローティング状態にしているため、消去効率を高めることができないなどの課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−126489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の幾つかの態様によれば、過消去ビットの発生を抑制してエンデュランス特性等を向上させることができる不揮発性記憶装置、集積回路装置及び電子機器等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、電気的に書き換え及び消去可能な複数の不揮発性メモリーセルを有するメモリーセルアレイと、前記複数の不揮発性メモリーセルのうちの消去対象メモリーセルに対する消去動作の制御を行う消去制御回路とを含み、前記消去制御回路は、前記消去対象メモリーセルが多い場合には、前記消去対象メモリーセルに対応するビット線がフローティング状態に設定される第1の消去動作制御を行い、前記消去対象メモリーセルが少ない場合には、前記消去対象メモリーセルに対応する前記ビット線が低電位電源電圧に設定される第2の消去動作制御を行う不揮発性記憶装置に関係する。
【0008】
本発明の一態様によれば、第1の消去動作制御では、ビット線がフローティング状態に設定されるから、消去電流を小さく抑えることができる。また、第2の消去動作制御では、ビット線が低電位電源電圧に設定されるから、消去効率を高めることができる。従って、消去対象メモリーセルが多い場合には、第1の消去動作制御により消去電流の増加を抑えて消去動作を行うことができる。一方、消去対象メモリーセルが少ない場合には、第2の消去動作制御により消去効率を高めて、消去しにくいメモリーセルを消去回数の増加を抑えながら確実に消去することができる。その結果、過消去ビットの発生を抑えることができるから、不揮発性記憶装置のエンデュランス特性を向上させることなどが可能になる。
【0009】
また本発明の一態様では、前記消去制御回路は、一括消去で消去動作を行う場合には、前記第1の消去動作制御を行い、部分消去で消去動作を行う場合には、前記第2の消去動作制御を行ってもよい。
【0010】
このようにすれば、一括消去では、消去電流の増加を抑えて、多くの不揮発性メモリーセルを消去することができる。また、部分消去では、消去効率を高めて、消去しにくいメモリーセルを確実に消去することが可能になる。
【0011】
また本発明の一態様では、前記消去制御回路は、セクター単位で消去動作を行う場合には、前記第1の消去動作制御を行い、前記セクター内の選択された前記不揮発性メモリーセルを消去対象として消去動作を行う場合には、前記第2の消去動作制御を行ってもよい。
【0012】
このようにすれば、セクター単位で消去動作を行う場合には、消去電流の増加を抑えて、多くの不揮発性メモリーセルを消去することができる。また、セクター内の選択された不揮発性メモリーセルを消去対象として消去動作を行う場合には、消去しにくいメモリーセルを選択して、消去効率の高い方法で確実に消去することが可能になる。
【0013】
また本発明の一態様では、前記消去制御回路は、前記セクター内において、ワード線選択信号とカラム選択信号とによって選択された前記不揮発性メモリーセルに対して前記第2の消去動作制御を行ってもよい。
【0014】
このようにすれば、消去しにくいメモリーセルを、ワード線選択信号とカラム選択信号とによって選択して、消去効率の高い方法で確実に消去することが可能になる。
【0015】
また本発明の一態様では、前記第2の消去動作制御の前記消去対象メモリーセルは、消去ベリファイの結果に基づいて選択されてもよい。
【0016】
このようにすれば、最初に多くのメモリーセルに対して第1の消去動作制御による消去動作を行い、その後の消去ベリファイの結果に基づいて、未消去メモリーセルを選択して第2の消去動作制御による消去動作を行うことができる。こうすることで、消去しにくいメモリーセルを選択して、消去効率の高い方法で確実に消去することが可能になる。
【0017】
また本発明の一態様では、複数の前記不揮発性メモリーセルが各メモリーブロックに設けられる第1のメモリーブロック〜第N(Nは2以上の整数)のメモリーブロックと、前記第1のメモリーブロック〜前記第Nのメモリーブロックに対応して設けられ、消去及び書き込み動作に用いられる印加電圧を前記第1のメモリーブロック〜前記第Nのメモリーブロックに供給するスイッチ制御を行う第1の電源スイッチ回路〜第Nの電源スイッチ回路とを含み、前記第1の電源スイッチ回路〜前記第Nの電源スイッチ回路のうちの第i(iは1≦i≦Nである整数)の電源スイッチ回路は、前記第1のメモリーブロック〜前記第Nのメモリーブロックのうちの第iのメモリーブロックへの入力データに基づいて、前記第iのメモリーブロックに前記印加電圧を供給するか否かを切り替えてもよい。
【0018】
このようにすれば、第1〜第Nのメモリーブロックに対応して、印加電圧供給のスイッチ制御を行う第1〜第Nの電源スイッチ回路が設けられる。そして第iの電源スイッチ回路は、対応する第iのメモリーブロックへの入力データに応じて、第iのメモリーブロックに書き込み動作用の印加電圧を供給するか否かを切り替える。このようにすれば、入力データを考慮すると書き込みが不要になると考えられるメモリーブロックに対しては、印加電圧を供給しないようにすることができる。従って、書き込み動作時のディスターブ等を抑止することが可能になり、不揮発性記憶装置の各種特性の改善を図れる。
【0019】
また本発明の一態様では、消去動作時に、前記入力データとして消去用データが入力され、前記第iの電源スイッチ回路は、前記消去動作時において、前記消去用データに基づいて、前記第iのメモリーブロックに対して消去用の前記印加電圧を供給するか否かを切り替えてもよい。
【0020】
このようにすれば、入力データに応じて印加電圧の供給を切り替え制御できる構成を有効利用して、消去動作時において、消去用データに応じて印加電圧の供給を切り替えることが可能になる。これにより、例えば過消去メモリーセルの発生の低減等を図れ、エンデュランス特性等を向上できる。
【0021】
また本発明の一態様では、前記第iの電源スイッチ回路は、前記消去動作時において、前記第iのメモリーブロックの前記消去用データが第1の論理レベルである場合には、前記第iのメモリーブロックに対して消去用の前記印加電圧を非供給にし、前記第iのメモリーブロックの前記消去用データが第2の論理レベルである場合には、前記第iのメモリーブロックに対して消去用の前記印加電圧を供給してもよい。
【0022】
このようにすれば、第iのメモリーブロックに設定される消去用データが第2の論理レベルである場合には、第iのメモリーブロックに対して印加電圧が供給され、消去動作が実現される。一方、第iのメモリーブロックに設定される消去用データが第1の論理レベルである場合には、その第1のメモリーブロックに対しては印加電圧が非供給になるため、過消去メモリーセルの発生の低減等を図れる。
【0023】
また本発明の一態様では、前記第iの電源スイッチ回路は、書き込み動作時において、前記第iのメモリーブロックへの前記入力データが第1の論理レベルである場合には、前記第iのメモリーブロックに対して前記印加電圧を供給し、前記第iのメモリーブロックへの前記入力データが第2の論理レベルである場合には、前記第iのメモリーブロックに対して前記印加電圧を非供給にしてもよい。
【0024】
このようにすれば、第iのメモリーブロックへの入力データが第1の論理レベルである場合には、第iのメモリーブロックに対して印加電圧が供給される。そして例えば第iのメモリーブロックのうちの書き込み対象となる不揮発性メモリーセルの書き込み動作が行われて、その記憶状態を書き込み状態に変化させることが可能になる。一方、第iのメモリーブロックへの入力データが第2の論理レベルである場合には、第iのメモリーブロックには印加電圧が供給されないようになるため、書き込み動作時のディスターブ等を抑止できる。
【0025】
本発明の他の態様は、電気的に書き換え及び消去可能な複数の不揮発性メモリーセルを有するメモリーセルアレイと、前記複数の不揮発性メモリーセルのうちの消去対象メモリーセルに対する消去動作の制御を行う消去制御回路とを含み、前記消去制御回路は、一括消去で消去動作を行う場合には、前記消去対象メモリーセルに対応するビット線がフローティング状態に設定される第1の消去動作制御を行い、部分消去で消去動作を行う場合には、前記消去対象メモリーセルに対応する前記ビット線が低電位電源電圧に設定される第2の消去動作制御を行う不揮発性記憶装置に関係する。
【0026】
本発明の他の態様によれば、第1の消去動作制御では、ビット線がフローティング状態に設定されるから、消去電流を小さく抑えることができる。また、第2の消去動作制御では、ビット線が低電位電源電圧に設定されるから、消去効率を高めることができる。従って、一括消去で消去動作を行う場合には、第1の消去動作制御により消去電流の増加を抑えて消去動作を行うことができる。一方、部分消去で消去動作を行う場合には、第2の消去動作制御により消去効率を高めて、消去しにくいメモリーセルを消去回数の増加を抑えながら確実に消去することができる。その結果、過消去ビットの発生を抑えることができるから、不揮発性記憶装置のエンデュランス特性を向上させることなどが可能になる。
【0027】
本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載の不揮発性記憶装置を含む集積回路装置及び電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】不揮発性メモリーセルの構造の一例。
【図2】図2(A)、図2(B)は、不揮発性メモリーセルの各動作を説明する図。
【図3】メモリーセルアレイの詳細な構成例(第1の消去動作制御)。
【図4】メモリーセルアレイの詳細な構成例(第2の消去動作制御)。
【図5】不揮発性記憶装置の基本的な構成例。
【図6】消去制御回路の動作を説明するフローチャート。
【図7】不揮発性記憶装置の変形例。
【図8】図8(A)、図8(B)は、不揮発性記憶装置の変形例の消去動作を説明する図。
【図9】図9(A)、図9(B)は、不揮発性記憶装置の変形例の書き込み動作を説明する図。
【図10】図10(A)、図10(B)は、集積回路装置及び電子機器の構成例。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0030】
1.不揮発性メモリーセル
図1は、電気的にデータの書き込み及び消去が可能な不揮発性メモリーセルの構造の一例として、MONOS(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Semiconductor)型を示したものである。なお、本実施形態の不揮発性メモリーセルは図1に示す構造に限定されるものではない。
【0031】
図1に示すメモリーセルは、半導体層510、ソースドレイン領域520、第1のゲート絶縁層530、ゲート電荷蓄積層540、第2のゲート絶縁層550、ゲート導電層560及び絶縁層570を有する。ソースドレイン領域520の一方はソース線SLに接続され、他方はビット線BLに接続される。また、ゲート導電層560はワード線WLに接続される。
【0032】
ゲート電荷蓄積層540は例えば窒化シリコン層(Si3N4層)で形成され、ゲート導電層560は例えばポリシリコン層で形成され、第1、第2のゲート絶縁層530、550及び絶縁層570は例えば酸化シリコン層(SiO2層)で形成される。これによりMONOS構造が実現される。
【0033】
MONOS型のメモリーセルでは、チャネルを走行する電子の一部がホットエレクトロンとなり、第1のゲート絶縁層530の障壁を越えて、ゲート電荷蓄積層540に捕獲される(トラップされる)ことで、データの書き込みが行われる。すなわち、ゲート電荷蓄積層540にトラップされた電荷の有無によって、メモリーセルのしきい値電圧が変化することで、記憶されたデータの0、1を判定する。具体的には、書き込み動作によりゲート電荷蓄積層540に負電荷が蓄積された状態(例えばデータ0の状態)では、しきい値電圧が高くなる。一方、消去動作ではバンド間トンネル効果で発生したホール(正孔)の一部が電界により加速されてホットホールになりゲート電荷蓄積層540に注入される。注入されたホールがトラップされた負電荷を電気的に中和することで、データが消去される(例えばデータ1の状態になる)。
【0034】
図2(A)、図2(B)は、不揮発性メモリーセル(MONOS型)の各動作(消去、書き込み、読み出し)を説明する図である。後述するように、本実施形態の不揮発性記憶装置では、第1及び第2の消去動作制御が用いられる。
【0035】
図2(A)に示す消去動作は、第1の消去動作制御によるものであって、ワード線WLは低電位電源電圧VSS(例えば0V)、ソース線SLは印加電圧VPP、ビット線BLはフローティング状態に設定される。この消去動作によりデータ1が記憶される。また書き込み動作時には、ワード線WLはVPP、ソース線SLはVPP、ビット線BLはVSSに設定される。この書き込み動作によりデータ0が記憶される。また読み出し動作時には、ワード線WLは通常の回路の電源電圧VDD、ソース線SLはVSSに設定され、ビット線BLの電位がセンスアンプによりセンシングされてデータ1又は0が読み出される。
【0036】
ここで印加電圧VPPは、例えば消去動作(データ消去)及び書き込み動作(データ書き込み)に用いられる電圧である。また印加電圧VPPは、通常の回路の電源電圧VDDよりも高い電位の電圧(例えば5V以上の電圧)であり、例えば不揮発性メモリーセルのソース又はゲートに印加される電圧である。
【0037】
図2(B)に示す消去動作は、第2の消去動作制御によるものであって、ワード線WLは低電位電源電圧VSS(例えば0V)、ソース線SLは印加電圧VPP、ビット線BLは低電位電源電圧VSSに設定される。第1、第2の消去動作制御の違いは、ビット線BLの設定であって、第1の消去動作制御ではビット線BLがフローティング状態に設定されるが、第2の消去動作制御ではビット線BLがVSSに設定される。なお、書き込み及び読み出し動作については、図2(A)と同一である。
【0038】
消去動作時にビット線BLをVSSに設定することで、不揮発性メモリーセルの消去効率が向上する。しかしその反面、消去電流が増加するという問題がある。例えば、一括消去やメモリーブロック単位(又はセクター単位)での消去など消去対象メモリーセルが多い場合には、消去動作時にビット線BLをVSSに設定すると、消去電流による電圧降下が大きくなり、所定の印加電圧がメモリーセルに供給されないという問題がある。そのために、一括消去などでは、消去動作時にビット線BLをVSSに設定することが難しい。
【0039】
一方、消去動作時にビット線BLをフローティング状態に設定すると、上記の消去電流による電圧降下は生じないが、消去効率が低いために、消去しにくいメモリーセルを消去するために多数回の消去動作が必要になる。その結果、既に消去された大部分のメモリーセルに対しては、過剰な消去動作が行われることになり、過消去状態のメモリーセルが生じるおそれがある。この過消去状態のメモリーセルは、しきい値電圧が低くなりすぎてオフ状態でのリーク電流が増加すること、書き込みにくくなることなどの問題があり、書き換え可能回数の向上を難しくしている。
【0040】
本実施形態の不揮発性記憶装置によれば、上述した消去動作の課題を解決するための手段を提供することができる。本実施形態の不揮発性記憶装置では、消去動作の制御を行う消去制御回路が設けられ、この消去制御回路が第1、第2の消去動作制御を行う。消去制御回路は、消去対象メモリーセルが多い場合には、第1の消去動作制御を行い、消去対象メモリーセルが少ない場合には、第2の消去動作制御を行う。第1の消去動作制御では、消去対象メモリーセルに対応するビット線がフローティング状態に設定される。また、第2の消去動作制御では、消去対象メモリーセルに対応するビット線が低電位電源電圧に設定される。
【0041】
ここで消去対象メモリーセルが多い場合とは、例えば消去対象となるメモリーセルの個数が、基準となる個数以上である場合である。また消去対象メモリーセルが少ない場合とは、例えば消去対象となるメモリーセルの個数が、基準となる個数未満である場合である。
【0042】
具体的には、例えば一括消去で消去動作を行う場合には、第1の消去動作制御を行い、部分消去で消去動作を行う場合には、第2の消去動作制御を行う。或いは、例えばセクター単位で消去動作を行う場合には、第1の消去動作制御を行い、またセクター内の選択された不揮発性メモリーセルを消去対象として消去動作を行う場合には、第2の消去動作制御を行ってもよい。さらにセクター内において、ワード線選択信号とカラム選択信号とによって選択された不揮発性メモリーセルに対して第2の消去動作制御を行ってもよい。
【0043】
このようにすることで、消去対象メモリーセルが多い場合には、第1の消去動作制御により消去電流の増加を抑えて消去動作を行うことができる。一方、消去対象メモリーセルが少ない場合には、第2の消去動作制御により消去効率を高めて、消去しにくいメモリーセルを消去回数の増加を抑えながら確実に消去することができる。その結果、過消去状態のメモリーセルの発生を抑えることができるから、不揮発性記憶装置のエンデュランス特性(書き換え可能回数)を向上させることなどが可能になる。
【0044】
2.不揮発性記憶装置
図3に、本実施形態のメモリーセルアレイの詳細な構成例(第1の消去動作制御)を示す。メモリーセルアレイは、電気的に書き換え及び消去可能な複数の不揮発性メモリーセルM11、M12・・・、複数のワード線WL1、WL2・・・、複数のソース線SL1、SL2・・・及び複数のビット線BL1、BL2・・・を含む。各不揮発性メモリーセルは、各ワード線(各ソース線)と各ビット線の交差位置に対応する場所に設けられる。なおビット線、ワード線、ソース線の本数は任意である。
【0045】
なお、本実施形態の不揮発性記憶装置は図3の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0046】
図3に示すように、第1の消去動作制御により、ワード線WL1、WL2・・・は低電位電源電圧VSSに設定され、ソース線SL1、SL2・・・は印加電圧VPPに設定され、ビット線BL1、BL2・・・はフローティング状態に設定される。上述したように、第1の消去動作制御は、一括消去やメモリーブロック単位(又はセクター単位)での消去など消去対象メモリーセルが多い場合に行われる。図3では一部だけを示しているが、例えばメモリーブロック単位の消去では、消去対象となるメモリーブロックに含まれる全てのワード線WL、ソース線SL、ビット線BLについて、図2(A)に示したように設定される。また例えばセクター単位での消去では、消去対象となるセクターに含まれる全てのワード線WL、ソース線SL、ビット線BLについて、図2(A)に示したように設定される。
【0047】
図4に、本実施形態のメモリーセルアレイの詳細な構成例(第2の消去動作制御)を示す。不揮発性メモリーセルM11、M12・・・、複数のワード線WL1、WL2・・・、複数のソース線SL1、SL2・・・及び複数のビット線BL1、BL2・・・の構成は、図3と同様である。
【0048】
図4に示すように、第2の消去動作制御により、例えばワード線WL1、WL2・・・は低電位電源電圧VSSに設定され、ソース線SL1は印加電圧VPPに設定され、他のソース線SL2、SL3・・・はVSSに設定され、ビット線BL1〜BL4はVSSに設定される。こうすることで、図4のB1に示す選択されたメモリーセルM11〜M14を消去対象メモリーセルとして、第2の消去動作制御が行われる。
【0049】
第2の消去動作制御は、例えば部分消去で消去動作を行う場合、セクター内の選択された不揮発性メモリーセルを消去対象として消去動作を行う場合、或いはセクター内においてワード線選択信号とカラム選択信号とによって選択された不揮発性メモリーセルを消去対象として消去動作を行う場合などに行われる。
【0050】
第2の消去動作制御において消去対象となるメモリーセルは、後述するように、第1の消去動作制御による一括消去(ブロック単位消去など)後の消去ベリファイの結果に基づいて選択される。例えば図4において、第1の消去動作制御による一括消去の後、消去ベリファイによりメモリーセルM13が未消去であることが判明した場合には、M13を含む複数のメモリーセルを消去対象メモリーセルとして第2の消去動作制御が行われる(図4のB1)。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の不揮発性記憶装置によれば、一括消去(ブロック単位又はセクター単位の消去)など消去対象メモリーセルが多い場合には、第1の消去動作制御により消去電流の増加を抑えて消去動作を行うことができる。そして第1の消去動作で消去されないメモリーセルがあった場合には、その未消去メモリーセル又はその未消去メモリーセルを含む複数のメモリーセルを消去対象として、第2の消去動作制御により消去効率を高めて確実に消去することができる。その結果、過消去状態のメモリーセルの発生を抑えることができるから、不揮発性記憶装置のエンデュランス特性(書き換え可能回数)を向上させることなどが可能になる。
【0052】
図5に、本実施形態の不揮発性記憶装置の基本的な構成例を示す。この不揮発性記憶装置は、例えばMONOS(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Semiconductor)型又はフローティングゲート型などの不揮発性記憶装置であって、消去制御回路ERCN、メモリーブロックMB1、MB2・・・と、アドレスバッファーADBFと、ローアドレスデコーダーRDECと、カラムデコーダーCDECとを含む。なお、本実施形態の記憶装置は図5の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0053】
消去制御回路ERCNは、消去対象メモリーセルに対する消去動作の制御を行う回路であって、上述したように、消去対象メモリーセルが多い場合(一括消去など)には、第1の消去動作制御を行い、消去対象メモリーセルが少ない場合(部分消去など)には、第2の消去動作制御を行う。消去制御回路ERCNは、消去ベリファイの結果に基づいて、消去対象メモリーセルを選択し、第2の消去動作制御を行う。具体的には、例えば、消去制御回路ERCNは、ワード・ソース線ドライバーWSDR11、WSDR12、読み出し&書き込み回路RWC1、アドレスバッファーADBFなどを制御して、第1、第2の消去動作制御を行う。
【0054】
メモリーブロックMB1は、メモリーセルアレイMA1、ワード・ソース線ドライバーWSDR11、WSDR12、読み出し&書き込み回路RWC1、入出力バッファーIO1を含む。メモリーブロックMB2は、メモリーセルアレイMA2、ワード・ソース線ドライバーWSDR21、WSDR22、読み出し&書き込み回路RWC2、入出力バッファーIO2を含む。
【0055】
メモリーセルアレイMA1は、電気的にデータの書き込み及び消去が可能な複数の不揮発性メモリーセルを含む。この不揮発性メモリーセルとしては、例えば図1に示したMONOS構造のメモリーセルを用いることができる。
【0056】
メモリーセルアレイMA1は、セクターST11〜ST14に分割され、セクター消去では各セクター毎に消去動作が行われる。なお、各メモリーセルアレイのセクター数は4に限定されるものではなく、任意である。
【0057】
ワード・ソース線ドライバーWSDR11、WSDR12は、各メモリーセルに接続されるワード線及びソース線に、読み出し、書き込み、消去の各動作に必要な電圧を印加させるための回路である。
【0058】
読み出し&書き込み回路RWC1は、メモリーブロックMB1からのデータの読み出しや、MB1へのデータの書き込みを行うための回路であり、センスアンプやビット線のライトドライバーなどにより構成される。例えばメモリーブロックMB1からのデータの読み出し時には、読み出し&書き込み回路RWC1のセンスアンプが、ビット線の電位をセンシングして増幅することで、データの読み出しが実現される。またメモリーブロックMB1へのデータの書き込み時には、読み出し&書き込み回路RWC1のライトドライバーが、例えばカラムデコーダーCDECにより選択されたビット線をVSSに設定することで、データの書き込み動作が実現される。
【0059】
入出力バッファーIO1は、外部の処理部(CPU、制御回路等)が、データを書き込んだり、データを読み出すためのバッファーである。例えば書き込み動作時には、処理部が、メモリーブロックMB1に書き込むべき入力データを、入出力バッファーIO1(書き込み用のデータレジスター)に書き込む。また読み出し動作時には、読み出し&書き込み回路RWC1により読み出されたデータが、入出力バッファーIO1(読み出し用のデータレジスター)を介して処理部により読み出される。
【0060】
なおメモリーブロックMB2の構成・動作はメモリーブロックMB1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0061】
図6は、消去制御回路ERCNの動作を説明するフローチャートである。以下では、図6に示すステップS1〜S11に従って、消去制御回路ERCNの動作を説明する。
【0062】
最初に消去回数をカウントする変数Nの初期値を0に設定し、セクター消去(一括消去、ブロック消去)回数の上限値K及びセクター消去回数に部分消去回数を加えた全消去回数の上限値Lを設定する(ステップS1)。セクター消去回数の上限値K及び全消去回数の上限値Lは、消去されにくいメモリーセルが確実に消去され、且つ過消去状態のメモリーセル(過消去ビット)が発生しないように値を決める。
【0063】
次にセクター消去(一括消去、ブロック消去)を実行する(ステップS2)。この消去動作は、第1の消去動作制御により行われる。すなわち、消去対象メモリーセルに対応するビット線をフローティング状態に設定して消去動作を実行する。
【0064】
次に消去回数をカウントする変数Nに1を加える(ステップS3)。
【0065】
次に消去ベリファイを実行する(ステップS4)。具体的には、上記のセクター消去を実行したメモリーセルについて読み出し動作を行い、読み出されたデータが例えば1であれば消去された状態であり、0であれば消去されていない状態であると判断する。全てのメモリーセルが消去されている場合は、消去動作がパスし(ステップS10)、消去動作制御を終了する。
【0066】
消去されていないメモリーセルが存在する場合には、ステップS5に進み、消去回数Nがセクター消去回数の上限値Kより小さければステップS2に戻り、再びセクター消去を行う。このようにして、未消去メモリーセルが残っている場合は、消去回数Nがセクター消去回数の上限値Kに達するまでセクター消去を繰り返す。
【0067】
未消去メモリーセルが残り、且つ消去回数Nがセクター消去回数の上限値Kに達した場合は、部分消去を実行する(ステップS6)。この部分消去は、未消去メモリーセル又は未消去メモリーセルを含む複数のメモリーセルを消去対象として、第2の消去動作制御により行われる。すなわち、消去対象メモリーセルに対応するビット線を低電位電源電圧VSSに設定して消去動作を実行する。
【0068】
部分消去を実行した後、消去回数Nに1を加える(ステップS7)。
【0069】
次に消去ベリファイを実行する(ステップS8)。具体的には、上記の部分消去を実行したメモリーセルについて読み出し動作を行い、読み出されたデータが例えば1であれば消去された状態であり、0であれば消去されていない状態であると判断する。全てのメモリーセルが消去されている場合は、消去動作をパスし(ステップS10)、消去動作制御を終了する。
【0070】
消去されていないメモリーセルが存在する場合には、ステップS9に進み、消去回数Nが全消去回数の上限値Lより小さければステップS6に戻り、再び部分消去を行う。このようにして、未消去メモリーセルが残っている場合は、消去回数Nが全消去回数の上限値Lに達するまで部分消去を繰り返す。
【0071】
未消去メモリーセルが残り、且つ消去回数Nが全消去回数の上限値Lに達した場合は、消去動作がフェイルし(ステップS11)、消去動作制御を終了する。
【0072】
以上説明したように、本実施形態の不揮発性記憶装置によれば、消去しにくいメモリーセルがある場合でも、消去対象メモリーセルを限定して第2の消去動作制御を行うことができるから、消去効率を高めて、消去回数の増加を抑えながら確実に消去することができる。その結果、過消去状態のメモリーセルの発生を抑えることができるから、不揮発性記憶装置のエンデュランス特性(書き換え可能回数)を向上させることなどが可能になる。
【0073】
3.不揮発性記憶装置の変形例
図7に本実施形態の不揮発性記憶装置の変形例を示す。図7に示すように本実施形態の不揮発性記憶装置の変形例は、複数のメモリーブロックMB1〜MB4(広義には第1〜第Nのメモリーブロック。Nは2以上の整数)と、複数の電源スイッチ回路SC1〜SC4(広義には第1〜第Nの電源スイッチ回路)を含む。なお、本実施形態の不揮発性記憶装置は図7の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。また図7では、説明の簡素化のために、メモリーブロックや電源スイッチ回路の個数が4であり、入力データD0〜D3のビット数が4である場合を示しているが、メモリーブロック及び電源スイッチ回路の個数や入力データのビット数は4には限定されず、任意(例えば8、16、32等)である。
【0074】
MB1〜MB4(第1〜第Nのメモリーブロック)の各メモリーブロックには、電気的にデータの書き込み及び消去が可能な複数の不揮発性メモリーセルが設けられる。具体的には不揮発性メモリーセルがアレイ配置(2次元又は1次元アレイ配置)される。不揮発性メモリーセルとしては、MONOS型、フローティングゲート型、強誘電体型、相変化型、磁気抵抗型などの種々のタイプのメモリーセルを想定できる。
【0075】
MB1〜MB4の各メモリーブロックには、複数のワード線と複数のソース線と複数のビット線が設けられ、各ワード線と各ビット線の交差位置に対応する場所に各不揮発性メモリーセルが配置される。また各ソース線は、各ワード線に対応して配線され、不揮発性メモリーセルのソースに接続される。また各ソース線に対応して、各ソーススイッチ回路が設けられる。また各ワード線により不揮発性メモリーセル(メモリートランジスター)のゲートが制御され、各ビット線は不揮発性メモリーセルのドレインに接続される。また後述するように、各メモリーブロックは、読み出し&書き込み回路(センスアンプ&ライトドライバー)や、ワード線やソース線を駆動するワード・ソース線ドライバーなどを含むことができる。
【0076】
電源スイッチ回路SC1〜SC4(第1〜第Nの電源スイッチ回路)は、メモリーブロックMB1〜MB4(第1〜第Nのメモリーブロック)に対応して設けられる。例えば電源スイッチ回路SC1はメモリーブロックMB1に対応して設けられ、電源スイッチ回路SC2はメモリーブロックMB2に対応して設けられる。同様にSC3、SC4はMB3、MB4に対応して設けられる。そして電源スイッチ回路SC1〜SC4は、印加電圧VPPをメモリーブロックMB1〜MB4に供給するスイッチ制御(電源供給制御)を行う。
【0077】
ここで印加電圧VPPは、少なくとも書き込み動作(データ書き込み)に用いられる電圧であり、例えば消去動作(データ消去)にも用いることができる。また印加電圧VPPは、通常の回路の電源電圧VDD(動作電源電圧)よりも高い電位の電圧(例えば5V以上の電圧)であり、例えば不揮発性メモリーセルのソースに印加される電圧である。この印加電圧VPPは、例えば不揮発性記憶装置が設けられる集積回路装置(IC)の外部端子から、電源スイッチ回路SC1〜SC4に対して供給してもよい。或いは図示しない昇圧回路(チャージポンプ回路)を内蔵させて、この昇圧回路により印加電圧VPPを生成し、この昇圧回路から電源スイッチ回路SC1〜SC4にVPPを供給してもよい。
【0078】
そしてSC1〜SC4の各電源スイッチ回路(第iの電源スイッチ回路。1≦i≦N)は、MB1〜MB4の各メモリーブロック(第iのメモリーブロック)への入力データに基づいて、各メモリーブロックに印加電圧VPPを供給するか否かを切り替える。例えば図7では、入力データとして4ビット(広義にはNビット)の入力データ(D0〜D3)が入力される。そして、SC1〜SC4の各電源スイッチ回路(第iの電源スイッチ回路)は、4ビット(Nビット)の入力データの各ビット(第iビット)のデータに基づいて、各メモリーブロック(第iのメモリーブロック)に印加電圧VPPを供給するか否かを切り替える。
【0079】
具体的には電源スイッチ回路SC1(第1の電源スイッチ回路)は、入力データD0(第1のビット)に基づいて、メモリーブロックMB1に印加電圧VPPを供給するか否かを切り替える。例えば電源スイッチ回路SC1は、入力データD0が第1の論理レベル(例えばLレベル)である場合には、メモリーブロックMB1に高電位の印加電圧VPPを供給する。一方、D0が第2の論理レベル(例えばHレベル)である場合には、MB1にVPPを供給せずに、例えばVPPの供給線VL1をフローティング状態に設定する。
【0080】
また電源スイッチ回路SC2(第2の電源スイッチ回路)は、入力データD1(第2のビット)に基づいて、メモリーブロックMB2に印加電圧VPPを供給するか否かを切り替える。例えば電源スイッチ回路SC2は、入力データD1が第1の論理レベルである場合には、メモリーブロックMB2にVPPを供給する。一方、D1が第2の論理レベルである場合には、MB2にVPPを供給せずに、例えばVPPの供給線VL2をフローティング状態に設定する。電源スイッチ回路SC3、SC4も同様である。
【0081】
次に、図8(A)、図8(B)を用いて、本実施形態の不揮発性記憶装置の変形例(図7)の消去動作について説明する。
【0082】
消去動作を行う場合に本実施形態の変形例では、入力データとして消去用データを入力する。例えば外部のCPU(CPUコア、マイクロコンピューター)等の処理部が、各メモリーブロックを消去するための消去用データを作成して、不揮発性記憶装置に入力する。この消去用データは、図8(A)、図8(B)のような各メモリーブロックに対して書き込むデータではなく、消去対象ブロックを選択するために作成されるデータである。
【0083】
例えば図8(A)では、メモリーブロックMB1が消去対象ブロックとなっている。この場合には、入力データである消去用データD0がHレベルに設定され、消去用データD1、D2、D3はLレベルに設定される。即ち、入力データの設定を行う処理部(CPU等)が、D0=Hレベル、D1=D2=D3=Lレベルとなるような消去用データを作成して、不揮発性記憶装置に入力する。これらの消去用データは、不揮発性記憶装置の入出力バッファーに設けられる消去用のデータレジスターに書き込まれる。
【0084】
そしてSC1〜SC4の各電源スイッチ回路(第iの電源スイッチ回路)は、消去動作時には、入力された消去用データに基づいて、MB1〜MB4の各メモリーブロック(第iのメモリーブロック)に、消去用の印加電圧VPPを供給するか否かを切り替える。具体的には各電源スイッチ回路は、消去用データがLレベル(第1の論理レベル)である場合には、対応するメモリーブロックに対して消去用の印加電圧VPPを非供給にし、消去用データがHレベル(第2の論理レベル)である場合には、対応するメモリーブロックに対して消去用の印加電圧を供給する。
【0085】
例えば図8(A)の消去動作において、電源スイッチ回路SC1(第1の電源スイッチ回路)は、消去用データD0がHレベル(第2の論理レベル)に設定されているため、メモリーブロックMB1に対して消去用の印加電圧VPPを供給する。これにより、メモリーブロックMB1の不揮発性メモリーセルのソースにはVPPが印加されて、これらの不揮発性メモリーセルの消去動作が実行される。
【0086】
一方、図8(A)の消去動作において、電源スイッチ回路SC2、SC3、SC4(第2、第3、第4の電源スイッチ回路)は、消去用データD1、D2、D3がLレベル(第1の論理レベル)に設定されているため、メモリーブロックMB2、MB3、MB4に対して、消去用の印加電圧VPPを非供給にする。即ち供給線VL2、VL3、VL4を例えばフローティング状態(ハイインピーダンス状態)に設定する。これにより、メモリーブロックMB2、MB3、MB4の不揮発性メモリーセルのソースにはVPPが印加されないようになるため、これらの不揮発性メモリーセルの消去動作は行われないようになる。
【0087】
例えば図8(B)では、メモリーブロックMB2が消去対象ブロックとなっている。この場合には、入力データである消去用データD1がHレベルに設定され、消去用データD0、D2、D3はLレベルに設定される。
【0088】
即ち図8(B)の消去動作において、電源スイッチ回路SC2は、消去用データD1がHレベルであるため、メモリーブロックMB2に対して、印加電圧VPPを供給する。これにより、メモリーブロックMB2の不揮発性メモリーセルのソースにはVPPが印加されて、これらの不揮発性メモリーセルの消去動作が実行される。
【0089】
一方、図8(B)の消去動作において、電源スイッチ回路SC1、SC3、SC4は、消去用データD1、D3、D4がLレベルに設定されているため、MB1、MB3、MB4に対してVPPを非供給にして、VL1、VL3、VL4をフローティング状態に設定する。これにより、MB1、MB3、MB4の不揮発性メモリーセルのソースにはVPPが印加されないようになるため、消去動作は行われないようになる。
【0090】
次に、図9(A)、図9(B)を用いて、本実施形態の不揮発性記憶装置の変形例(図7)の書き込み動作について説明する。図9(A)ではワード線WL1(メインワード線)が選択されており、図9(B)ではワード線WL2が選択されている。
【0091】
図9(A)のワード線WL1の選択時には、4ビットの入力データとして、例えばD0=L、D1=H、D2=H、D3=Lが入力されている。ここでD0はLSBのビットであり、D3はMSBのビットである。この場合に、SC1〜SC4の各電源スイッチ回路は、入力データ(入力データの各ビット)が、例えばLレベル(第1の論理レベル)である場合には、印加電圧VPPを供給し、Hレベル(第2の論理レベル)である場合には、VPPを非供給(例えばフローティング)にする。
【0092】
そして図9(A)では、ワード線WL1の選択時のメモリーブロックMB1、MB4の入力データD0、D3はLレベルになっている。従って、電源スイッチ回路SC1、SC4は、メモリーブロックMB1、MB4に対してVPPを供給する。これにより、メモリーブロックMB1、MB4の不揮発性メモリーセルのうち、ワード線WL1(及びビット線)により選択された不揮発性メモリーセルに対して、入力データ(Lレベル)が書き込まれることになる。具体的には、選択された不揮発性メモリーセルのソースにVPPが印加されて、入力データが書き込まれる。
【0093】
一方、図9(A)では、ワード線WL1の選択時のメモリーブロックMB2、MB3の入力データD1、D2はHレベルになっている。従って、電源スイッチ回路SC2、SC3は、メモリーブロックMB2、MB3に対してVPPを供給せずに、供給線VL2、VL3をフローティング状態に設定する。従って、メモリーブロックMB2、MB3の不揮発性メモリーセルは、ワード線WL1により選択された不揮発性メモリーセルであっても、そのソースにVPPが供給されないため、入力データの書き込みは行われないようになる。
【0094】
本実施形態では、書き込み状態(プログラム状態)の不揮発性メモリーセルからデータを読み出した場合には、Lレベル(論理0)のデータが読み出され、消去状態の不揮発性メモリーセルからデータを読み出した場合には、Hレベル(論理1)のデータが読み出されるように規定している。従って、図9(A)のメモリーブロックMB1、MB4のうちWL1により選択された不揮発性メモリーセルでは、VPPがソースに供給されて入力データが書き込まれることで、例えば消去状態(論理1)であった場合には、書き込み状態(論理0)に遷移し、そのデータを読み出した場合には、Lレベルが読み出されるようになる。一方、メモリーブロックMB2、MB3の不揮発性メモリーセルでは、入力データが書き込まれないことで、消去状態(論理1)が維持され、そのデータを読み出した場合には、Hレベルが読み出されるようになる。
【0095】
図9(B)では、ワード線WL2の選択時のメモリーブロックMB3、MB4の入力データD2、D3はLレベルになっている。従って、電源スイッチ回路SC3、SC4はMB3、MB4に対してVPPを供給する。これにより、MB3、MB4の不揮発性メモリーセルのうち、ワード線WL2(及びビット線)により選択された不揮発性メモリーセルに対して、そのソースにVPPが供給されて入力データ(Lレベル)が書き込まれるようになる。
【0096】
一方、図9(B)では、ワード線WL2の選択時のメモリーブロックMB1、MB2の入力データD0、D1はHレベルになっている。従って、電源スイッチ回路SC1、SC2はMB1、MB2に対してVPPを供給しない。従って、MB1、MB2の不揮発性メモリーセルは、ワード線WL2により選択された不揮発性メモリーセルであっても、そのソースにVPPが供給されないため、入力データの書き込みは行われないようになる。
【0097】
以上のように本実施形態では、各メモリーブロックに高電位の印加電圧VPPを供給するか否かを各メモリーブロックの入力データに基づいて切り替えている。消去動作時においては、入力データである消去用データに応じてVPPの供給を切り替えている。即ち、通常は書き込みデータとして使用される入力データを、消去用データとして使用し、この消去用のデータの設定により、消去対象となるメモリーブロックを選択して、各メモリーブロック毎の選択消去を実現している。これにより過消去メモリーセルの発生を低減でき、エンデュランス特性等を向上できる。
【0098】
即ち、従来の手法では、例えば図8(A)のA1に示すセクター消去を行った時に、A1に示すセクター内に1ビットでも未消去メモリーセルが存在すると、全てのメモリーブロックのセクターに対して高電位のVPPが印加されるようになってしまう。このため、過消去されるメモリーセルの発生確率が高くなってしまう。
【0099】
これに対して本実施形態によれば、図8(A)のA1に示すセクター消去を行った場合にも、A1に示すセクター内の不揮発性メモリーセルのうち、メモリーブロックMB1の不揮発性メモリーセルのソースに対してだけVPPが印加され、メモリーブロックMB2、MB3、MB4の不揮発性メモリーセルのソースに対してはVPPが印加されないようになる。即ち、消去ベリファイ等により特定されたセクター内の未消去メモリーセルが、メモリーブロックMB1にだけ存在する場合には、このメモリーブロックMB1だけを消去対象として消去動作を実行できる。同様に、図8(B)のA2に示すセクター消去を行った場合にも、A2に示すセクター内の不揮発性メモリーセルのうち、メモリーブロックMB2の不揮発性メモリーセルのソースに対してだけVPPが印加され、メモリーブロックMB1、MB3、MB4の不揮発性メモリーセルのソースに対してはVPPが印加されないようになる。即ち、消去ベリファイ等により特定されたセクター内の未消去メモリーセルが、メモリーブロックMB2にだけ存在する場合には、このメモリーブロックMB2だけを消去対象として消去動作を実行できる。
【0100】
従って、セクター消去時に、消去完了ブロック(図8(A)の場合のMB2、MB3、MB4、図8(B)の場合のMB1、MB3、MB4)に対してVPPが印加されないようになるため、過消去メモリーセルの発生確率等を低減でき、エンデュランス特性等の向上を図れる。
【0101】
4.集積回路装置及び電子機器
図10(A)、図10(B)に、本実施形態の不揮発性記憶装置を含む集積回路装置及び電子機器の構成例を示す。なお本実施形態の集積回路装置、電子機器は図10(A)、図10(B)の構成には限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0102】
図10(A)の電子機器は、集積回路装置600、センサー700、アンテナ710を含む。また集積回路装置600(マイクロコンピューター等)は、処理部610、記憶部620、不揮発性記憶装置630、検出回路640、無線回路650を含む。
【0103】
センサー700は、例えば煙センサー、光センサー、人感センサー、圧力センサー、生体センサー、ジャイロセンサーなどである。
【0104】
集積回路装置600の検出回路は、センサー700(物理量トランスデューサ)からのセンサー信号に基づいて種々の検出処理(物理量の検出処理)を行う。例えばセンサー信号から所望信号を検出する処理を行う。集積回路装置600の処理部610は、各種の演算処理や集積回路装置600の全体的な制御を行う。この処理部610は、CPU等のプロセッサーやASICの制御回路により実現される。記憶部620は、各種のデータを記憶するものであり、RAM等により実現される。不揮発性記憶装置630は、本実施形態の記憶装置であって、電気的にデータの書き込み等が可能な記憶装置である。無線回路650は、アンテナ710への信号の無線送信処理を行ったり、アンテナ710からの信号の無線受信処理を行う。
【0105】
図10(B)の電子機器は、集積回路装置600、外部デバイス720、電気光学パネル730を含む。また集積回路装置600は、処理部610、記憶部620、不揮発性記憶装置630、外部I/F部660、ドライバー670を含む。
【0106】
外部デバイス720は、電子機器に設けられる種々のデバイスであり、例えば操作部等である。電気光学パネル730は、例えば液晶パネル、有機EL(Electro Luminescence)パネル、無機ELパネル、或いは電気泳動パネル(Electrophoretic Display)などである。
【0107】
集積回路装置600の外部I/F(インターフェース)部660は、例えばSPI、USBなどの各種のインターフェースのための制御を行う。ドライバー670は、電気光学パネル730を駆動して画像を表示する制御を行う。
【0108】
なお本実施形態の電子機器としては、携帯型情報端末、携帯電話機、PDA、携帯型オーディオ機器、時計、リモコン、各種家電装置等の種々の機器を想定できる。
【0109】
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また記憶装置、集積回路装置及び電子機器の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0110】
MB1〜MB4 メモリーブロック、MA1、MA2 メモリーセルアレイ、
M11〜M44 不揮発性メモリーセル、WL1〜WL4 ワード線、
SL1〜SL4 ソース線、BL1〜BL4 ビット線、
WSDR11〜WSDR22 ワード・ソース線ドライバー、
RWC1、RWC2 読み出し&書き込み回路、IO1、IO2 入出力バッファー、
ADBF アドレスバッファー、RDEC ローアドレスデコーダー、
CDEC カラムデコーダー、ST11〜ST24 セクター、
ERCN 消去制御回路、
510 半導体層、520 ソースドレイン領域、530 第1のゲート絶縁層、
540 ゲート電荷蓄積層、550 第2のゲート絶縁層、560 ゲート導電層、
570 絶縁層、
600 集積回路装置、610 処理部、620 記憶部、630 不揮発性記憶装置、
640 検出回路、650 無線回路、660 外部I/F部、670 ドライバー、
700 センサー、710 アンテナ、720 外部デバイス、730 電気光学パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に書き換え及び消去可能な複数の不揮発性メモリーセルを有するメモリーセルアレイと、
前記複数の不揮発性メモリーセルのうちの消去対象メモリーセルに対する消去動作の制御を行う消去制御回路とを含み、
前記消去制御回路は、
前記消去対象メモリーセルが多い場合には、前記消去対象メモリーセルに対応するビット線がフローティング状態に設定される第1の消去動作制御を行い、
前記消去対象メモリーセルが少ない場合には、前記消去対象メモリーセルに対応する前記ビット線が低電位電源電圧に設定される第2の消去動作制御を行うことを特徴とする不揮発性記憶装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記消去制御回路は、
一括消去で消去動作を行う場合には、前記第1の消去動作制御を行い、
部分消去で消去動作を行う場合には、前記第2の消去動作制御を行うことを特徴とする不揮発性記憶装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記消去制御回路は、
セクター単位で消去動作を行う場合には、前記第1の消去動作制御を行い、
前記セクター内の選択された前記不揮発性メモリーセルを消去対象として消去動作を行う場合には、前記第2の消去動作制御を行うことを特徴とする不揮発性記憶装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記消去制御回路は、
前記セクター内において、ワード線選択信号とカラム選択信号とによって選択された前記不揮発性メモリーセルに対して前記第2の消去動作制御を行うことを特徴とする不揮発性記憶装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記第2の消去動作制御の前記消去対象メモリーセルは、消去ベリファイの結果に基づいて選択されることを特徴とする不揮発性記憶装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
複数の前記不揮発性メモリーセルが各メモリーブロックに設けられる第1のメモリーブロック〜第N(Nは2以上の整数)のメモリーブロックと、
前記第1のメモリーブロック〜前記第Nのメモリーブロックに対応して設けられ、消去及び書き込み動作に用いられる印加電圧を前記第1のメモリーブロック〜前記第Nのメモリーブロックに供給するスイッチ制御を行う第1の電源スイッチ回路〜第Nの電源スイッチ回路とを含み、
前記第1の電源スイッチ回路〜前記第Nの電源スイッチ回路のうちの第i(iは1≦i≦Nである整数)の電源スイッチ回路は、前記第1のメモリーブロック〜前記第Nのメモリーブロックのうちの第iのメモリーブロックへの入力データに基づいて、前記第iのメモリーブロックに前記印加電圧を供給するか否かを切り替えることを特徴とする不揮発性記憶装置。
【請求項7】
請求項6において、
消去動作時に、前記入力データとして消去用データが入力され、
前記第iの電源スイッチ回路は、
前記消去動作時において、前記消去用データに基づいて、前記第iのメモリーブロックに対して消去用の前記印加電圧を供給するか否かを切り替えることを特徴とする不揮発性記憶装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記第iの電源スイッチ回路は、
前記消去動作時において、前記第iのメモリーブロックの前記消去用データが第1の論理レベルである場合には、前記第iのメモリーブロックに対して消去用の前記印加電圧を非供給にし、前記第iのメモリーブロックの前記消去用データが第2の論理レベルである場合には、前記第iのメモリーブロックに対して消去用の前記印加電圧を供給することを特徴とする不揮発性記憶装置。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれかにおいて、
前記第iの電源スイッチ回路は、
書き込み動作時において、前記第iのメモリーブロックへの前記入力データが第1の論理レベルである場合には、前記第iのメモリーブロックに対して前記印加電圧を供給し、前記第iのメモリーブロックへの前記入力データが第2の論理レベルである場合には、前記第iのメモリーブロックに対して前記印加電圧を非供給にすることを特徴とする不揮発性記憶装置。
【請求項10】
電気的に書き換え及び消去可能な複数の不揮発性メモリーセルを有するメモリーセルアレイと、
前記複数の不揮発性メモリーセルのうちの消去対象メモリーセルに対する消去動作の制御を行う消去制御回路とを含み、
前記消去制御回路は、
一括消去で消去動作を行う場合には、前記消去対象メモリーセルに対応するビット線がフローティング状態に設定される第1の消去動作制御を行い、
部分消去で消去動作を行う場合には、前記消去対象メモリーセルに対応する前記ビット線が低電位電源電圧に設定される第2の消去動作制御を行うことを特徴とする不揮発性記憶装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の不揮発性記憶装置を含むことを特徴とする集積回路装置。
【請求項12】
請求項11に記載の集積回路装置を含むことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−192364(P2011−192364A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59596(P2010−59596)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】