説明

内燃機関の制御装置

【課題】2つの排気タービン式の過給機が直列に設けられている内燃機関において、排気通路の触媒を迅速にかつ効率よく活性化させることができ、排ガス特性を向上させることができる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関3の制御装置1は、ECU2を備える。ECU2は、第1触媒11が活性化しておりかつ第2触媒12が活性化していないとき(ステップ13,44の判別結果がNOのとき)には、第1バイパス弁9aを全閉状態に、第2バイパス弁10aを全開状態にそれぞれ制御する(ステップ11,12)とともに、ポスト噴射を実行する(ステップ46,55)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの排気タービン式の過給機が直列に設けられた内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の制御装置として、特許文献1に記載されたものが知られている。この内燃機関には、第1および第2タービンをそれぞれ有する排気タービン式の第1および第2過給機と、これらの第1および第2タービンをそれぞれ迂回する第1および第2バイパス通路と、これらの第1および第2バイパス通路をそれぞれ開閉する第1および第2バイパス弁と、排ガスを浄化する第1および第2触媒と、第1および第2バイパス弁の開閉状態を制御するECUなどが設けられている。この内燃機関では、第1過給機の第1タービンは、第2過給機の第2タービンよりも上流側の排気通路に配置されており、第1触媒は、第2バイパス通路の第2バイパス弁よりも上流側に、第2触媒は、排気通路の第2バイパス通路との合流部よりも下流側にそれぞれ配置されている。
【0003】
この制御装置では、内燃機関の始動直後おいて、排ガス温度が低いときおよび/または第2触媒の温度が低いときには、第1バイパス弁が閉弁状態に、第2バイパス弁が開弁状態にそれぞれ制御される。それにより、第1タービンを通過した排ガスは、その一部が第1触媒に導入され、その後、第2触媒に導入される。その結果、第1触媒および第2触媒が活性化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−24619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の内燃機関の制御装置によれば、第1タービンを通過した排ガスが第1触媒に流れ込むように構成されているので、排ガスは、第1タービンを通過する際、その熱量が第1タービンに奪われてしまうことになり、その分、第1触媒および第2触媒の活性化に時間を要するという問題がある。その結果、第1触媒および第2触媒が活性化するまでの間、排ガス特性が悪化してしまう。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、2つの排気タービン式の過給機が直列に設けられている内燃機関において、排気通路の触媒を迅速にかつ効率よく活性化させることができ、排ガス特性を向上させることができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る内燃機関3の制御装置1は、内燃機関3の排気通路6に設けられ、酸化性能を有するとともに排ガスを浄化する第1触媒11と、排気通路6の第1触媒11よりも下流側に設けられた第1タービン7bを有する排気タービン式の第1過給機7と、排気通路6の第1タービン7bよりも下流側に設けられた第2タービン8bを有する排気タービン式の第2過給機8と、排気通路6の第2タービン8bよりも上流側の分岐部(第2分岐部6d)と第2タービン8bよりも下流側の合流部(第2合流部6e)とに接続され、第2タービン8bをバイパスするバイパス通路(第2バイパス通路10)と、バイパス通路を開閉可能なバイパス弁(第2バイパス弁10a)と、排気通路6の合流部(第2合流部6e)よりも下流側に設けられ、排ガスを浄化する第2触媒12と、第1触媒11が活性化しているか否かを判定する第1活性判定手段(ECU2、ステップ1)と、第2触媒12が活性化しているか否かを判定する第2活性判定手段(ECU2、ステップ3)と、第1活性判定手段および第2活性判定手段の判定結果に基づき、第1触媒11が活性化しておりかつ第2触媒12が活性化していないとき(ステップ3の判別結果がNOのとき)に、バイパス弁(第2バイパス弁10a)を開弁状態に制御するバイパス弁制御手段(ECU2、ステップ12,13)と、第1触媒11が活性化しておりかつ第2触媒12が活性化していないときに、未燃燃料を第1触媒11の上流側に供給する未燃燃料供給手段(ECU2、燃料噴射弁4、ステップ44,46,55)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この内燃機関の制御装置によれば、第1触媒が第1タービンよりも上流側に配置されているので、内燃機関の燃焼室から排出された燃焼ガスすなわち排ガスは、その熱量を第1タービンに奪われることなく、第1触媒にダイレクトに供給される。それにより、第1触媒を従来よりも迅速に活性化させることができ、排ガス特性を向上させることができる。また、第1触媒が活性化しておりかつ第2触媒が活性化していないときに、バイパス弁が開弁状態に制御されるとともに、未燃燃料が第1触媒の上流側に供給されるので、未燃燃料は、第1触媒を通過する際、活性化している第1触媒との酸化反応によって燃焼し、それにより、排ガス温度が上昇する。ここで、バイパス弁が開弁状態に制御されている場合、第2タービンが設けられている排気通路側の排気抵抗(通気抵抗)は、バイパス通路側よりも大きくなるので、第1触媒で昇温された排ガスは、第2タービン側よりもバイパス通路側に多く流れ込むことになる。そして、そのようにバイパス通路側に流れ込んだ排ガスは、その熱量を第2タービンに奪われることなく、第2触媒にダイレクトに供給される。それにより、昇温された排ガスの熱量が第2タービンに奪われるのを抑制しながら、第2触媒を迅速にかつ効率よく活性化させることができ、排ガス特性をさらに向上させることができる。これに加えて、排ガスがすべて第1タービンを通過するので、第1過給機による過給動作を実行することができ、良好な運転性を確保することができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の内燃機関3の制御装置1において、第1触媒11は三元触媒で構成され、第1触媒11が活性化しておりかつ第2触媒12が活性化していないときに、内燃機関3で燃焼する混合気の空燃比を、理論空燃比以下の値に制御する空燃比制御手段(ECU2、ステップ23〜27,45,55)をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
この内燃機関の制御装置によれば、第1触媒が活性化しておりかつ第2触媒が活性化していないときに、内燃機関で燃焼する混合気の空燃比が、理論空燃比以下の値に制御されるので、第1触媒に流入する排ガスの空燃比を理論空燃比以下の値に制御することができる。それにより、三元触媒で構成された第1触媒によって、排ガスを効率よく浄化することができ、良好な排ガス特性を確保することができる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の内燃機関3の制御装置1において、第2触媒12は酸化性能を有しており、排気通路6の第1触媒11よりも上流側の上流側分岐部(第1分岐部6b)と、排気通路6の第1タービン7bよりも下流側でかつ分岐部よりも上流側の上流側合流部(第1合流部6c)とに接続され、第1触媒11および第1タービン7bをバイパスする上流側バイパス通路(第1バイパス通路9)と、上流側バイパス通路を開閉可能な上流側バイパス弁(第1バイパス弁9a)と、排気通路6の第2触媒12よりも下流側に設けられた第3触媒13と、第3触媒が活性化しているか否かを判定する第3活性判定手段(ECU2、ステップ5)と、第2活性判定手段および第3活性判定手段の判定結果に基づき、第2触媒12が活性化しておりかつ第3触媒が活性化していないとき(ステップ5の判別結果がNOのとき)に、上流側バイパス弁(第1バイパス弁9a)を開弁状態に制御する上流側バイパス弁制御手段(ECU2、ステップ14,15)と、をさらに備え、未燃燃料供給手段は、第2触媒12が活性化しておりかつ第3触媒が活性化していないときに、未燃燃料を排気通路6の上流側分岐部(第1分岐部6b)よりも上流側に供給するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
この内燃機関の制御装置によれば、第2触媒が活性化しておりかつ第3触媒が活性化していないときに、上流側バイパス弁が開弁状態に制御されるとともに、未燃燃料が排気通路の上流側分岐部よりも上流側に供給されるので、未燃燃料はその一部が上流側バイパス通路側に流れ込むとともに、残りが第1触媒および第1タービンが設けられている排気通路側に流れ込む。ここで、上流側バイパス弁が開弁状態に制御されている場合、第1触媒および第1タービンが設けられている排気通路側の排気抵抗は、上流側バイパス通路側よりも大きくなるので、未燃燃料は、第1触媒および第1タービン側よりも上流側バイパス通路側に多く流れ込むことになる。そして、上流側バイパス通路側に流れ込んだ未燃燃料は、第2触媒にダイレクトに供給されることで、活性化している第2触媒との酸化反応によって燃焼し、排ガスの温度を上昇させる。それにより、未燃燃料が第1触媒で酸化されるのを抑制しながら、第3触媒を迅速にかつ効率よく活性化させることができ、排ガス特性をより一層、向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る制御装置の一部およびこれを適用した内燃機関の概略構成を模式的に示す図である。
【図2】制御装置の電気的な概略構成を示すブロック図である。
【図3】触媒活性判定処理を示すフローチャートである。
【図4】バイパス弁制御処理を示すフローチャートである。
【図5】吸入空気量制御処理を示すフローチャートである。
【図6】燃料噴射制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る内燃機関の制御装置について説明する。図2に示すように、本実施形態の制御装置1は、ECU2を備えており、このECU2は、後述するように、図1に示す内燃機関(以下「エンジン」という)3を制御する。
【0015】
エンジン3は、ディーゼルエンジンタイプのものであり、図示しない車両に動力源として搭載されている。このエンジン3は、4つの気筒3aと、気筒3aごとに設けられた燃料噴射弁4などを備えている。これらの燃料噴射弁4は、ECU2に電気的に接続されており(図2では1つのみ図示)、ECU2からの制御入力信号によってその開閉タイミングが制御される。それにより、燃料噴射量および燃料噴射時期が制御される。
【0016】
また、4つの気筒3aには、各気筒3aに吸気を導入するための吸気通路5が、吸気マニホールド5aの4つの分岐部をそれぞれ介して接続されているとともに、各気筒3aからの排ガスを外部に排出するための排気通路6が、排気マニホールド6aの4つの分岐部をそれぞれ介して接続されている。
【0017】
また、エンジン3には、第1過給機7および第2過給機8が直列に設けられており、これらの過給機7,8はいずれも、排気タービン式すなわちターボチャージャタイプのものである。第1過給機7は、容量が比較的小さな高圧ターボチャージャタイプのものであり、エンジン3が低回転域にあるときでも、有効な過給能力が得られるように構成されている。また、第1過給機7は、吸気通路5に設けられた回転自在の第1コンプレッサ7aと、排気通路6に設けられた回転自在の第1タービン7bと、両者7a,7bを一体に連結するシャフト7cなどを備えている。この第1過給機7では、排気通路6内の排ガスにより第1タービン7bが回転駆動されると、それに伴い、第1タービン7bと一体の第1コンプレッサ7aが回転駆動されることによって、吸気通路5内の吸入空気が加圧される。すなわち、過給動作が実行される。
【0018】
さらに、吸気通路5には、第1コンプレッサ7aをバイパスする吸気バイパス通路5bが設けられており、この吸気バイパス通路5bには、電磁弁タイプの吸気バイパス弁5cが設けられている。この吸気バイパス弁5cは、図2に示すように、ECU2に電気的に接続されており、ECU2からの制御入力信号によって、その開度が制御される。それにより、吸気バイパス通路5bの開口面積が変更され、吸気バイパス通路5bを介して第1コンプレッサ7aをバイパスする吸入空気の流量が変更されることで、第1過給機7による過給圧が制御される。
【0019】
一方、排気通路6の第1タービン7bの上流側には、第1触媒11が設けられている。この第1触媒11は、酸化性能を有する三元触媒タイプのものであり、排ガス中に含まれる未燃成分であるHCやCOを酸化することによって、排ガスを浄化するとともに、排ガスの空燃比が理論空燃比付近の領域にあるときに、高い浄化効率を示すように構成されている。
【0020】
また、この第1触媒11には、第1触媒温センサ21が取り付けられている。この第1触媒温センサ21は、第1触媒11の温度(以下「第1触媒温」という)TCAT1を検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。ECU2は、この第1触媒温センサ21の検出信号に基づき、第1触媒温TCAT1を算出する。
【0021】
また、排気通路6には、第1タービン7bをバイパスする第1バイパス通路9が設けられており、この第1バイパス通路9は、第1触媒11よりも上流側の第1分岐部6bと、第1タービン7bよりも下流側の第1合流部6cとに接続されている。この第1バイパス通路9には、電磁弁タイプの第1バイパス弁9aが設けられており、この第1バイパス弁9aは、図2に示すように、ECU2に電気的に接続されているとともに、ECU2からの制御入力信号によって、その開度が制御される。それにより、第1バイパス通路9の開口面積が変更され、第1バイパス通路9を介して第1タービン7bをバイパスする排ガスの流量が変更されることによって、第1過給機7による過給圧が制御される。なお、本実施形態では、第1バイパス通路9が上流側バイパス通路に、第1バイパス弁9aが上流側バイパス弁に、第1分岐部6bが上流側分岐部に、第1合流部6cが上流側合流部にそれぞれ相当する。
【0022】
また、第2過給機8は、第1過給機7よりも容量が大きな低圧ターボチャージャタイプのものであり、エンジン3が中・高速回転域にあるときに、大きな過給能力が得られるように構成されている。さらに、第2過給機8は、吸気通路5に設けられた回転自在の第2コンプレッサ8aと、排気通路6に設けられた回転自在の第2タービン8bと、両者8a,8bを一体に連結するシャフト8cなどを備えている。この第2過給機8では、排ガスにより第2タービン8bが回転駆動されると、それに伴い、第2コンプレッサ8aが回転駆動されることによって、吸気通路5内の吸入空気が加圧される。すなわち、過給動作が実行される。
【0023】
また、第2コンプレッサ8aは、吸気通路5の第1コンプレッサ7aの上流側で、かつ吸気通路5のバイパス通路5bとの分岐部よりも上流側に配置されている。さらに、第2タービン8bは、排気通路6の第1タービン7bよりも下流側で、かつ前述した第1合流部6cよりも下流側に配置されている。
【0024】
また、排気通路6には、第2タービン8bをバイパスする第2バイパス通路10が設けられており、この第2バイパス通路10は、排気通路6の第2タービン8bおよび第1合流部6cの間の第2分岐部6dと、第2タービン8bよりも下流側の第2合流部6eとに接続されている、この第2バイパス通路10には、電磁弁タイプの第2バイパス弁10aが設けられており、この第2バイパス弁10aは、図2に示すように、ECU2に電気的に接続されているとともに、ECU2からの制御入力信号によって、その開度が制御される。それにより、第2バイパス通路10の開口面積が変更され、第2バイパス通路10を介して第2タービン8bをバイパスする排ガスの流量が変更されることによって、第2過給機8による過給圧が制御される。
【0025】
また、排気通路6の第2合流部6eよりも下流側には、上流側から順に、第2触媒12および第3触媒13が設けられている。この第2触媒12は、酸化性能を有する酸化触媒であり、排ガス中のHCやCOを酸化することによって、排ガスを浄化する。また、第3触媒13は、NOx浄化触媒であり、排ガス中の酸素濃度が排ガス中に含まれるHCやCOなどの還元剤の濃度よりも高い酸化雰囲気下において、排ガス中のNOxを捕捉するとともに、排ガス中の還元剤の濃度が酸素濃度よりも高い還元雰囲気下において、この還元剤により、捕捉したNOxを還元し、それにより、排ガスを浄化する。
【0026】
さらに、第2触媒12および第3触媒13にはそれぞれ、第2触媒温センサ22および第3触媒温センサ23が取り付けられている。この第2触媒温センサ22は、第2触媒12の温度(以下「第2触媒温」という)TCAT2を検出して、それを表す検出信号をECU2に出力し、第3触媒温センサは、第3触媒13の温度(以下「第3触媒温」という)TCAT3を検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。ECU2は、これらのセンサ22,23の検出信号に基づき、第2および第3触媒温TCAT2,TCAT3をそれぞれ算出する。
【0027】
一方、吸気通路5の吸気マニホールド5aの合流部よりも下流側には、吸気絞り弁機構15が設けられており、この吸気絞り弁機構15は、吸気絞り弁15aおよびこれを駆動するISVアクチュエータ15bなどを備えている。吸気絞り弁15aは、吸気通路5の途中に回動自在に設けられており、当該回動に伴う開度の変化により吸気絞り弁15aを通過する空気の流量を変化させる。ISVアクチュエータ15bは、モータに減速ギヤ機構(いずれも図示せず)を組み合わせたものであり、ECU2に電気的に接続されている。
【0028】
ECU2は、ISVアクチュエータ15bを介して、吸気絞り弁15aの開度を制御する。より具体的には、吸気絞り弁15aは、通常運転時、全開状態に制御されるとともに、後述するように、エンジン3のストイキ運転時には、混合気の空燃比が理論空燃比になるように、開度が絞られた状態に制御される。
【0029】
さらに、エンジン3には、排気還流機構16が設けられている。この排気還流機構16は、排気通路6内の排ガスの一部を吸気通路5側に還流するものであり、吸気通路5および排気通路6の間に接続されたEGR通路16aと、このEGR通路16aを開閉するEGR制御弁16bなどで構成されている。EGR通路16aの一端は、排気通路6の排気マニホールド6aに開口し、他端は、吸気通路5の吸気マニホールド5aに開口している。
【0030】
EGR制御弁16bは、その開度が最大値と最小値との間でリニアに変化するリニア電磁弁で構成され、ECU2に電気的に接続されている。ECU2は、EGR制御弁16bを介して、EGR通路16aの開口面積を変化させることにより、排ガスの還流量すなわちEGR量を制御する。
【0031】
また、ECU2には、クランク角センサ24およびアクセル開度センサ25が電気的に接続されている。このクランク角センサ24は、マグネットロータおよびMREピックアップで構成されており、クランクシャフトの回転に伴い、いずれもパルス信号であるCRK信号およびTDC信号をECU2に出力する。このCRK信号は、所定クランク角(例えば1゜)毎に1パルスが出力され、ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。また、TDC信号は、各気筒のピストンが吸気行程のTDC位置よりも若干、手前の所定のクランク角位置にあることを表す信号であり、所定クランク角毎に1パルスが出力される。
【0032】
さらに、アクセル開度センサ25は、車両の図示しないアクセルペダルの踏み込み量(以下「アクセル開度」という)APを検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。
【0033】
一方、ECU2は、CPU、RAM、ROMおよびI/Oインターフェース(いずれも図示せず)などからなるマイクロコンピュータで構成されており、前述した各種のセンサ21〜25の検出信号などに応じ、エンジン3の運転状態を判別するとともに、後述するように、触媒活性判定処理および燃料噴射制御処理などを実行する。
【0034】
なお、本実施形態では、ECU2が、第1活性判定手段、第2活性判定手段、バイパス弁制御手段、未燃燃料供給手段、空燃比制御手段、第3活性判定手段および上流側バイパス弁制御手段に相当する。
【0035】
以下、図3を参照しながら、ECU2によって実行される触媒活性判定処理について説明する。この処理は、前述した第1〜第3触媒11〜13が活性化しているか否かを判定するものであり、所定の制御周期(例えば10msec)で実行される。
【0036】
同図に示すように、まず、ステップ1(図では「S1」と略す。以下同じ)で、第1触媒温TCAT1が第1判定値TREF1よりも高いか否かを判別する。この第1判定値TREF1は、第1触媒11が確実に活性化するような値に設定されている。
【0037】
ステップ1の判別結果がNOで、TCAT1≦TREF1のときには、第1〜第3触媒11〜13がいずれも活性化していないと判定して、ステップ2に進み、それを表すために、第1〜第3触媒活性フラグF_CAT1act,F_CAT2act,F_CAT3actをいずれも「0」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0038】
一方、ステップ1の判別結果がYESのときには、ステップ3に進み、第2触媒温TCAT2が第2判定値TREF2よりも高いか否かを判別する。この第2判定値TREF2は、第2触媒12が確実に活性化するような値に設定されている。
【0039】
ステップ3の判別結果がNOで、TCAT2≦TREF2のときには、第1触媒11が活性化しているとともに第2および第3触媒12,13が活性化していないと判定して、ステップ4に進み、それを表すために、第1触媒活性フラグF_CAT1actを「1」に設定するとともに、第2および第3触媒活性フラグF_CAT2act,F_CAT3actをいずれも「0」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0040】
一方、ステップ3の判別結果がYESのときには、ステップ5に進み、第3触媒温TCAT3が第3判定値TREF3よりも高いか否かを判別する。この第3判定値TREF3は、第3触媒13が確実に活性化するような値に設定されている。
【0041】
ステップ5の判別結果がNOで、TCAT3≦TREF3のときには、第1および第2触媒11,12が活性化しているとともに第3触媒13が活性化していないと判定して、ステップ6に進み、それを表すために、第1および第2触媒活性フラグF_CAT1act,F_CAT2actをいずれも「1」に設定するとともに、第3触媒活性フラグF_CAT3actを「0」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0042】
一方、ステップ5の判別結果がYESのときには、第1〜第3触媒11〜13がいずれも活性化していると判定して、ステップ7に進み、それを表すために、第1〜第3触媒活性フラグF_CAT1act,F_CAT2act,F_CAT3actをいずれも「1」に設定する。その後、本処理を終了する。
【0043】
次に、図4を参照しながら、ECU2によって実行されるバイパス弁制御処理について説明する。この処理は、前述した第1および第2バイパス弁9a,10aの開閉状態を制御するものであり、所定の制御周期(例えば10msec)で実行される。
【0044】
同図に示すように、まず、ステップ10で、前述した第1触媒活性フラグF_CAT1actが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がNOで、第1触媒11が活性化していないときには、ステップ11に進み、第1バイパス弁9aを全閉状態に制御する。それにより、排ガスは、第1バイパス通路9内を流れることなく、第1触媒11および第1タービン7bを通過しながら下流側に流れる。
【0045】
次に、ステップ12で、第2バイパス弁10aを全開状態に制御する。それにより、排ガスは、その一部が第2バイパス通路10内を流れるとともに、残りが第2タービン8bを通過しながら下流側に流れる。この場合、第2タービン8bが排気抵抗(通気抵抗)となる関係上、第2バイパス通路10内を流れる排ガスの方が、第2タービン8b側の排気通路6内を流れる排ガスよりも多くなる。以上のようにステップ12を実行した後、本処理を終了する。
【0046】
一方、ステップ10の判別結果がYESのときには、ステップ13に進み、前述した第2触媒活性フラグF_CAT2actが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がNOで、第1触媒11が活性化しておりかつ第2触媒12が活性化していないときには、前述したように、ステップ11,12を実行した後、本処理を終了する。
【0047】
一方、ステップ13の判別結果がYESで、第1および第2触媒11,12がいずれも活性化しているときには、ステップ14に進み、前述した第3触媒活性フラグF_CAT3actが「1」であるか否かを判別する。
【0048】
この判別結果がNOで、第1および第2触媒11,12が活性化しておりかつ第3触媒13が活性化していないときには、ステップ15に進み、第1バイパス弁9aを全開状態に制御する。それにより、排ガスは、その一部が第1バイパス通路9内を流れるとともに、残りが第1触媒11および第1タービン7bを通過しながら、下流側に流れる。この場合、第1触媒11および第1タービン7bが排気抵抗となる関係上、第1バイパス通路9内を流れる排ガスの方が、第1触媒11側の排気通路6内を流れる排ガスよりも多くなる。
【0049】
次に、ステップ16で、第2バイパス弁10aを全閉状態に制御する。それにより、排ガスは、第2バイパス通路10内を流れることなく、第2タービン8bを通過しながら下流側に流れる。以上のようにステップ16を実行した後、本処理を終了する。
【0050】
一方、ステップ14の判別結果がYESで、第1〜第3触媒11〜13がすべて活性化しているときには、ステップ17に進み、通常制御処理を実行する。この処理では、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APなどのエンジン3の運転状態に応じて、第1および第2バイパス弁9a,10aの開度が制御される。それにより、2つの過給機7,8による過給圧が制御される。以上のようにステップ17を実行した後、本処理を終了する。
【0051】
次に、図5を参照しながら、ECU2によって実行される吸入空気量制御処理について説明する。この処理は、前述した吸気絞り弁機構15の吸気絞り弁15aの開度および排気還流機構16のEGR制御弁16bの開度を制御することによって、吸入空気量を制御するものであり、所定の制御周期(例えば10msec)で実行される。
【0052】
同図に示すように、まず、ステップ20で、前述した第1触媒活性フラグF_CAT1actが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がNOで、第1触媒11が活性化していないときには、ステップ21に進み、目標絞り弁開度ISV_cmdを所定のリーンバーン運転用値ISV_leanに設定する。この所定のリーンバーン運転用値ISV_leanは、エンジン3でリーンバーン運転を実行するのに最適な吸気絞り弁15aの開度に設定されている。
【0053】
次に、ステップ22で、目標EGR弁開度EGRV_cmdを所定のリーンバーン運転用値EGRV_leanに設定する。この所定のリーンバーン運転用値EGRV_leanは、エンジン3でリーンバーン運転を実行するのに最適なEGR制御弁16bの開度に設定されている。
【0054】
次いで、ステップ23に進み、上述した目標絞り弁開度ISV_cmdに対応する制御入力信号をISVアクチュエータ15bに供給することにより、ISVアクチュエータ15bを駆動する。それにより、吸気絞り弁15aの開度が目標絞り弁開度ISV_cmdになるように制御される。
【0055】
ステップ23に続くステップ24で、上述した目標EGR弁開度EGRV_cmdに対応する制御入力信号をEGR制御弁16bに供給することにより、EGR制御弁16bを駆動する。それにより、EGR制御弁16bの開度が目標絞り弁開度ISV_cmdになるように制御される。以上のように、ステップ24を実行した後、本処理を終了する。
【0056】
一方、ステップ20の判別結果がYESで、第1触媒11が活性化しているときには、ステップ25に進み、前述した第2触媒活性フラグF_CAT2actが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がNOで、第1触媒11が活性化しておりかつ第2触媒12が活性化していないときには、ステップ26に進み、目標絞り弁開度ISV_cmdを所定のストイキ運転用値ISV_stoiに設定する。この所定のストイキ運転用値ISV_stoiは、エンジン3において理論空燃比の混合気を燃焼させるストイキ運転を実行するのに最適な吸気絞り弁15aの開度に設定されている。
【0057】
次いで、ステップ27に進み、目標EGR弁開度EGRV_cmdを所定のストイキ運転用値EGRV_stoiに設定する。この所定のストイキ運転用値EGRV_stoiは、エンジン3でストイキ運転を実行するのに最適なEGR制御弁16bの開度に設定されている。次に、前述したように、ステップ23,24を実行した後、本処理を終了する。
【0058】
一方、ステップ25の判別結果がYESで、第1および第2触媒11,12がいずれも活性化しているときには、ステップ28に進み、前述した第3触媒活性フラグF_CAT3actが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がNOで、第1および第2触媒11,12が活性化しておりかつ第3触媒13が活性化していないときには、前述したように、ステップ21〜24を実行した後、本処理を終了する。
【0059】
一方、ステップ28の判別結果がYESで、第1〜第3触媒11〜13がいずれも活性化しているときには、ステップ29に進み、通常制御処理を実行する。この通常制御処理では、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APなどのエンジン3の運転状態に応じて、目標絞り弁開度ISV_cmdおよび目標EGR弁開度EGRV_cmdが算出される。次に、前述したように、ステップ23,24を実行した後、本処理を終了する。
【0060】
以上のように、この吸入空気量制御処理では、第1触媒11が活性化していないとき、または、第1および第2触媒11,12が活性化しておりかつ第3触媒13が活性化していないときには、目標絞り弁開度ISV_cmdが所定のリーンバーン運転用値ISV_leanに、目標EGR弁開度EGRV_cmdが所定のリーンバーン運転用値EGRV_leanにそれぞれ設定される。それにより、吸入空気量がリーンバーン運転に最適な値に制御される。さらに、第1触媒11が活性化しておりかつ第2触媒12が活性化していないときには、目標絞り弁開度ISV_cmdが所定のストイキ運転用値ISV_stoiに、目標EGR弁開度EGRV_cmdが所定のストイキ運転用値EGRV_stoiにそれぞれ設定されることで、吸入空気量がストイキ運転に最適な値に制御される。
【0061】
次に、図6を参照しながら、ECU2によって実行される燃料噴射制御処理について説明する。この処理は、燃料噴射弁4による燃料噴射量および燃料噴射時期を制御するものであり、TDC信号の発生タイミングに同期して実行される。
【0062】
同図に示すように、まず、ステップ40で、前述した第1触媒活性フラグF_CAT1actが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がNOで、第1触媒11が活性化していないときには、ステップ41に進み、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じて、図示しないリーンバーン運転用のマップを検索することにより、リーンバーン運転用の要求トルクを算出し、この要求トルクおよびエンジン回転数NEに応じて、図示しないリーンバーン運転用のマップを検索することにより、トルク燃料噴射量Gcombを算出する。このトルク燃料噴射量Gcombは、燃料噴射弁4から燃焼室内に噴射され、混合気として燃焼することで、トルクを発生させる燃料量に相当するものであり、このステップ41では、トルク燃料噴射量Gcombは、前述した吸入空気量制御との関係から、エンジン3をリーンバーン運転するのに最適な値として算出される。
【0063】
次に、ステップ42で、ポスト噴射量Gpostを値0に設定する。このポスト噴射量Gpostは、未燃燃料として排気系に供給されるものであり、Gpost=0のときには、ポスト噴射は実行されないように構成されている。
【0064】
ステップ42に続くステップ43で、トルク燃料噴射時期φcombを算出する。このトルク燃料噴射時期φcombは、燃料噴射の開始タイミングを表す値であり、上述したトルク燃料噴射量Gcombおよびエンジン回転数NEに応じて、図示しないマップを検索することにより算出される。なお、トルク燃料噴射量Gcombを、1燃焼サイクル中に複数回に分けて噴射する場合には、トルク燃料噴射時期φcombも、複数回分の値が算出される。
【0065】
一方、ステップ40の判別結果がYESで、第1触媒11が活性化しているときには、ステップ44に進み、前述した第2触媒活性フラグF_CAT2actが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がNOで、第1触媒11が活性化しておりかつ第2触媒12が活性化していないときには、ステップ45に進み、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じて、図示しないストイキ運転用のマップを検索することにより、ストイキ運転用の要求トルクを算出し、この要求トルクおよびエンジン回転数NEに応じて、図示しないストイキ運転用のマップを検索することにより、トルク燃料噴射量Gcombを算出する。このステップ45では、トルク燃料噴射量Gcombは、前述した吸入空気量制御との関係から、エンジン3をストイキ運転するのに最適な値として算出される。
【0066】
次いで、ステップ46に進み、ポスト噴射量Gpostを所定の第2触媒暖機用値Gref2に設定する。この所定の第2触媒暖機用値Gref2は、第2触媒12を活性化させるとともに、ストイキ運転でNOxを浄化するのに最適な値に設定されている。
【0067】
ステップ46に続くステップ47で、トルク燃料噴射時期φcombを、上述したステップ43と同様の手法により算出する。次に、ステップ48で、ポスト噴射量Gpostおよびエンジン回転数NEに応じて、図示しないマップを検索することにより、ポスト噴射時期φpostを算出する。このポスト噴射時期φpostは、燃料噴射の開始タイミングを表す値であり、膨張行程以降のクランク角度位置として算出される。
【0068】
一方、ステップ44の判別結果がYESで、第1および第2触媒11,12がいずれも活性化しているときには、ステップ49に進み、前述した第3触媒活性フラグF_CAT3actが「1」であるか否かを判別する。この判別結果がNOで、第1および第2触媒11,12が活性化しておりかつ第3触媒13が活性化していないときには、ステップ50に進み、前述したステップ41と同様の手法により、トルク燃料噴射量Gcombを算出する。すなわち、ステップ50では、トルク燃料噴射量Gcombは、前述した吸入空気量制御との関係から、エンジン3をリーンバーン運転するのに最適な値として算出される。
【0069】
次いで、ステップ51に進み、ポスト噴射量Gpostを所定の第3触媒暖機用値Gref3に設定する。この所定の第3触媒暖機用値Gref3は、第3触媒13を活性化させるのに最適な値に設定されている。
【0070】
ステップ51に続くステップ52で、トルク燃料噴射時期φcombを、ステップ43,47と同様の手法により算出する。次に、ステップ53に進み、ポスト噴射時期φpostを、ステップ48と同様の手法により算出する。
【0071】
一方、ステップ49の判別結果がYESで、第1〜第3触媒11〜13がいずれも活性化しているときには、ステップ54に進み、通常制御処理を実行する。この通常制御処理では、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APなどのエンジン3の運転状態に応じて、トルク燃料噴射量Gcombおよびトルク燃料噴射時期φcombが算出されるとともに、ポスト噴射を実行する場合には、ポスト噴射量Gpostおよびポスト噴射時期φpostも算出される。
【0072】
以上のステップ43,48,53,54のいずれかに続くステップ55で、前述したように算出されたトルク燃料噴射量Gcomb、ポスト噴射量Gpost、トルク燃料噴射時期φcombおよびポスト噴射時期φpostに応じて、燃料噴射弁4を駆動することにより、燃料噴射を実行する。その後、本処理を終了する。
【0073】
以上のように、この燃料噴射制御処理では、第1触媒11が活性化していないとき(ステップ40の判別結果がNOのとき)、または、第1および第2触媒11,12が活性化しておりかつ第3触媒13が活性化していないとき(ステップ49の判別結果がNOのとき)には、トルク燃料噴射量Gcombが、エンジン3をリーンバーン運転するのに最適な値として算出される。それにより、前述した吸入空気量制御処理との協働により、混合気の空燃比がリーンな値に制御され、エンジン3がリーンバーン運転される。
【0074】
さらに、第1触媒11が活性化しておりかつ第2触媒12が活性化していないとき(ステップ44の判別結果がNOのとき)には、トルク燃料噴射量Gcombが、エンジン3をストイキ運転するのに最適な値として算出される。それにより、前述した吸入空気量制御処理との協働により、混合気の空燃比が理論空燃比に制御され、エンジン3がストイキ運転される。これに加えて、第2触媒12または第3触媒13が活性化していないとき(ステップ44または49の判別結果がNOのとき)には、ポスト噴射が実行され、それにより、未燃燃料が排気通路6内に供給される。
【0075】
以上のように、本実施形態の制御装置1によれば、第1触媒11が活性化していないときには、第1バイパス弁9aが全閉状態に制御されるとともに、第1触媒11が第1タービン7bよりも上流側に配置されているので、エンジン3の燃焼室から排出された燃焼ガスは、その熱量を第1タービン7bに奪われることなく、第1触媒11にダイレクトに供給される。それにより、第1触媒11を従来よりも迅速に活性化させることができ、排ガス特性を向上させることができる。
【0076】
また、第1触媒11が活性化しておりかつ第2触媒12が活性化していないときには、第1バイパス弁9aが全閉状態に、第2バイパス弁10aが全開状態にそれぞれ制御されるとともに、ポスト噴射を実行することにより、未燃燃料が第1触媒11の上流側に供給されるので、未燃燃料は、第1触媒11を通過する際、活性化している第1触媒11との酸化反応によって燃焼し、それにより、排ガス温度が上昇する。その際、第2バイパス弁10aが開弁状態に制御されていることで、第2タービンが設けられている排気通路6側の排気抵抗が、バイパス通路側よりも大きくなるので、第1触媒11で昇温された排ガスは、第2タービン8b側よりも第2バイパス通路10側に多く流れ込むとともに、第2バイパス通路10側に流れ込んだ排ガスは、その熱量を第2タービン8bに奪われることなく、第2触媒12に流れ込む。それにより、昇温された排ガスの熱量が第2タービン8bに奪われるのを抑制しながら、第2触媒12を迅速にかつ効率よく活性化させることができ、排ガス特性をさらに向上させることができる。
【0077】
さらに、第1触媒11が活性化しておりかつ第2触媒12が活性化していないときには、第1バイパス弁9aが閉弁状態に制御されることで、排ガスがすべて第1タービン7bを通過することになる。それにより、第1過給機7による過給動作を実行することができ、良好な運転性を確保することができる。
【0078】
これに加えて、第1触媒11が活性化しておりかつ第2触媒12が活性化していないときには、エンジン3がストイキ運転されるので、第1触媒11に流入する排ガスの空燃比を理論空燃比に制御することができる。それにより、三元触媒タイプの第1触媒11によって、排ガスを効率よく浄化することができ、良好な排ガス特性を確保することができる。
【0079】
また、第2触媒12が活性化しておりかつ第3触媒13が活性化していないときには、第1バイパス弁9aが全開状態に、第2バイパス弁10aが全閉状態にそれぞれ制御されるとともに、ポスト噴射を実行することにより、未燃燃料が排気通路6の第1分岐部6bよりも上流側に供給されるので、未燃燃料はその一部が第1バイパス通路9側に流れ込むとともに、残りが第1触媒11および第1タービン7bが設けられている排気通路6側に流れ込む。その際、第1バイパス弁9aが開弁状態に制御されていることで、第1触媒11および第1タービン7bが設けられている排気通路6側の排気抵抗は、第1バイパス通路9側よりも大きくなるので、未燃燃料は、第1触媒11および第1タービン7b側よりも第1バイパス通路9側に多く流れ込むとともに、第1バイパス通路9側に流れ込んだ未燃燃料は、第2触媒12にダイレクトに供給されることで、活性化している第2触媒12との酸化反応によって燃焼し、排ガスの温度を上昇させる。それにより、未燃燃料が第1触媒11で酸化されるのを抑制しながら、第3触媒13を迅速にかつ効率よく活性化させることができ、排ガス特性をより一層、向上させることができる。
【0080】
なお、実施形態は、未燃燃料供給手段として、燃料噴射弁によるポスト噴射を用いた例であるが、本発明の未燃燃料供給手段はこれに限らず、未燃燃料を排気通路6に供給可能な構成であればよい。例えば、未燃燃料供給手段として、排気通路6の第1分岐部6bよりも上流側に、未燃燃料供給用の燃料噴射弁を設けてもよい。
【0081】
また、実施形態は、第1触媒11が活性化しておりかつ第2触媒12が活性化していないときに、混合気の空燃比を理論空燃比に制御し、エンジン3をストイキ運転した例であるが、これに代えて、混合気の空燃比を理論空燃比よりも小さい値に制御し、エンジン3をリッチ運転するように構成してもよい。
【0082】
さらに、実施形態は、第1バイパス通路9を、その上流側端が排気通路6のエキゾーストマニホールド6aの集合部よりも下流側でかつ第1触媒11よりも上流側の部位から分岐するように構成した例であるが、第1バイパス通路9を、その上流側端がエキゾーストマニホールド6aから分岐するように構成してもよい。
【0083】
一方、実施形態は、第1触媒として、三元触媒タイプのものを用いた例であるが、本発明の第1触媒はこれに限らず、酸化性能を有するものであればよい。例えば、第1触媒として、ディーゼル用酸化触媒(DOC)を用いてもよい。
【0084】
また、実施形態は、第1〜第3触媒11〜13にそれぞれ取り付けられた第1〜第3触媒温センサ21〜23によって第1〜第3触媒温TCAT1〜3を検出し、これらの触媒温TCAT1〜3に基づいて、第1〜第3触媒11〜13が活性化しているか否かを判定した例であるが、排ガスの温度を検出する温度センサを、排気通路6における第1〜第3触媒11〜13の各々の上流側でかつ近傍の部位に設け、これらの温度センサの検出信号に基づいて、第1〜第3触媒温TCAT1〜3を推定し、その推定結果に基づいて、第1〜第3触媒11〜13が活性化しているか否かを判定するように構成してもよい。
【0085】
さらに、実施形態は、第3触媒13として、NOx浄化触媒を用いた例であるが、本発明の第3触媒はこれに限らず、活性化しているときに排ガスを浄化できるものであればよい。例えば、第3触媒として、尿素SCR装置(すなわち尿素噴射装置を排気通路に設けるとともに、その下流側に尿素選択還元触媒を設けたもの)を用いてもよい。
【0086】
また、実施形態は、本発明の制御装置を車両用のエンジン3に適用した例であるが、本発明の制御装置は、これに限らず、船舶用の内燃機関や、他の産業機器用の内燃機関にも適用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0087】
1 制御装置
2 ECU(第1活性判定手段、第2活性判定手段、バイパス弁制御手段、未燃燃料 供給手段、空燃比制御手段、第3活性判定手段、上流側バイパス弁制御手段)
3 内燃機関
4 燃料噴射弁
6 排気通路
6b 第1分岐部(上流側分岐部)
6c 第1合流部(上流側合流部)
6d 第2分岐部(第2タービンよりも上流側の分岐部)
6e 第2合流部(第2タービンよりも下流側の合流部)
7 第1過給機
7b 第1タービン
8 第2過給機
8b 第2タービン
9 第1バイパス通路(上流側バイパス通路)
9a 第1バイパス弁(上流側バイパス弁)
10 第2バイパス通路(第2タービンをバイパスするバイパス通路)
10a 第2バイパス弁(バイパス通路を開閉可能なバイパス弁)
11 第1触媒
12 第2触媒
13 第3触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられ、酸化性能を有するとともに排ガスを浄化する第1触媒と、
前記排気通路の前記第1触媒よりも下流側に設けられた第1タービンを有する排気タービン式の第1過給機と、
前記排気通路の前記第1タービンよりも下流側に設けられた第2タービンを有する排気タービン式の第2過給機と、
前記排気通路の前記第2タービンよりも上流側の分岐部と当該第2タービンよりも下流側の合流部とに接続され、当該第2タービンをバイパスするバイパス通路と、
当該バイパス通路を開閉可能なバイパス弁と、
前記排気通路の前記合流部よりも下流側に設けられ、排ガスを浄化する第2触媒と、
前記第1触媒が活性化しているか否かを判定する第1活性判定手段と、
前記第2触媒が活性化しているか否かを判定する第2活性判定手段と、
前記第1活性判定手段および前記第2活性判定手段の判定結果に基づき、前記第1触媒が活性化しておりかつ前記第2触媒が活性化していないときに、当該バイパス弁を開弁状態に制御するバイパス弁制御手段と、
前記第1触媒が活性化しておりかつ前記第2触媒が活性化していないときに、未燃燃料を前記第1触媒の上流側に供給する未燃燃料供給手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記第1触媒は三元触媒で構成され、
前記第1触媒が活性化しておりかつ前記第2触媒が活性化していないときに、前記内燃機関で燃焼する混合気の空燃比を、理論空燃比以下の値に制御する空燃比制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記第2触媒は酸化性能を有しており、
前記排気通路の前記第1触媒よりも上流側の上流側分岐部と、前記排気通路の前記第1タービンよりも下流側でかつ前記分岐部よりも上流側の上流側合流部とに接続され、前記第1触媒および前記第1タービンをバイパスする上流側バイパス通路と、
当該上流側バイパス通路を開閉可能な上流側バイパス弁と、
前記排気通路の前記第2触媒よりも下流側に設けられた第3触媒と、
当該第3触媒が活性化しているか否かを判定する第3活性判定手段と、
前記第2活性判定手段および前記第3活性判定手段の判定結果に基づき、前記第2触媒が活性化しておりかつ前記第3触媒が活性化していないときに、前記上流側バイパス弁を開弁状態に制御する上流側バイパス弁制御手段と、
をさらに備え、
前記未燃燃料供給手段は、前記第2触媒が活性化しておりかつ前記第3触媒が活性化していないときに、未燃燃料を前記排気通路の前記上流側分岐部よりも上流側に供給するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−179455(P2011−179455A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46330(P2010−46330)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】