説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】半導体装置の性能を向上させる。
【解決手段】基板1Cは、半導体基板2と絶縁層3と半導体層4とが積層されたSOI領域1Aと、半導体基板2で構成されたバルク領域1Bとを有しており、SOI領域1Aの半導体層4に形成されたMISFETは、チャネル領域に不純物が導入されておらず、バルク領域1Bの半導体基板2に形成されたMISFETは、チャネル領域に不純物が導入されている。SOI領域1AのMISFETを形成する際には、MISFETのチャネル領域に不純物が導入されないようにし、ウエル領域形成用のイオン注入とチャネルドープイオン注入とハローイオン注入とは行なわない。バルク領域1BのMISFETを形成する際には、ウエル領域形成用のイオン注入とチャネルドープイオン注入とハローイオン注入とを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、特に、MISFETを有する半導体装置の製造に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MISFETなどの半導体素子を半導体基板に形成し、更に半導体基板上に多層配線構造を形成して半導体素子間を結線することで、半導体装置が製造される。
【0003】
特許文献1〜9には、SOI構造にMISFETを形成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−170718号公報
【特許文献2】特開2009−135140号公報
【特許文献3】特開2009−94369号公報
【特許文献4】特開2008−22732号公報
【特許文献5】特開2009−78672号公報
【特許文献6】特開2007−42730号公報
【特許文献7】特開2007−194547号公報
【特許文献8】特開2007−179602号公報
【特許文献9】特開2005−179602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者の検討によれば、次のことが分かった。
【0006】
MISFETを有する半導体装置は、次のようにして製造することができる。すなわち、半導体基板に素子分離領域を形成し、素子分離領域で規定された活性領域に、MISFETのしきい値を調整するためのチャネルドープイオン注入を行なってから、ゲート絶縁膜およびゲート電極を形成する。それから、ゲート電極をマスクにしてイオン注入によりLDD用のエクステンション領域と、ハロー領域を形成してから、ゲート電極の側壁上に側壁絶縁膜を形成し、ゲート電極および側壁絶縁膜をマスクにしてイオン注入により、エクステンション領域よりも高不純物濃度のソース・ドレイン領域を形成する。その後、ソース・ドレイン領域の上部にサリサイドプロセスにより金属シリサイド層を形成する。
【0007】
半導体装置の小型化や高性能化に伴い、半導体基板に形成する素子(MISFETなど)の微細化も進んでいる。しかしながら、微細化が加速するに従って、MISFETのしきい値に代表される特性ばらつきが増大してしまい、加工形状が同一である隣接するMISFET同士でもしきい値が大きく異なってしまい、この現象により半導体装置の性能や製造歩留まりが低下してしまう。このMISFETのしきい値のばらつきの主原因は、MISFETのしきい値を決めるチャネル不純物分布の離散性であり、このばらつきはランダムばらつきと呼ばれ、ランダムばらつきは、ゲート長とゲート幅の積(ゲート面積)の平方根に反比例する。微細化プロセスを適用した半導体装置では、ゲート長およびゲート幅が最小のMISFETを、SRAMなどのメモリに用いるため、微細化が進んでくるとランダムばらつきが大きくなり、メモリが正常に動作しなくなってくる。また、微細化により、ゲート長およびゲート幅が縮小するのに加え、ゲート絶縁膜の薄膜化に伴うチャネル不純物濃度の増大も、MISFETのしきい値のばらつきを更に大きくすることに寄与する。従って、半導体装置の性能を向上させるためには、ランダムばらつきを低減させることが望まれる。
【0008】
また、ランダムばらつきを低減するための対策を施す場合、半導体基板に形成された全ての素子に対して一律に同じ対策を施すと、ランダムばらつきが生じやすい素子と生じにくい素子とに同じ対策を施すことになるため、半導体装置全体の大幅な設計変更が必要となり、設計変更にともなう時間や労力やコストが大きくなってしまう。
【0009】
本発明の目的は、半導体装置の性能を向上できる技術を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、微細化を図りながら半導体装置の性能を向上させることができる技術を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、半導体装置の設計変更を容易にしながら、半導体装置の性能を向上できる技術を提供することにある。
【0012】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0014】
代表的な実施の形態による半導体装置は、絶縁層が埋め込まれたSOI構造を有する第1領域と、前記絶縁層が埋め込まれておらずSOI構造を有していない第2領域とを有する半導体基板に複数のMISFETが形成された半導体装置である。そして、前記複数のMISFETのうち、前記第1領域に形成されたMISFETのチャネル領域には不純物が導入されておらず、前記第2領域に形成されたMISFETのチャネル領域には不純物が導入されている。
【0015】
また、代表的な実施の形態による半導体装置の製造方法は、絶縁層が埋め込まれたSOI構造を有する第1領域と、前記絶縁層が埋め込まれておらずSOI構造を有していない第2領域とを有する半導体基板を準備し、前記半導体基板の前記第1領域に第1MISFETを形成し、前記半導体基板の前記第2領域に第2MISFETを形成する工程を有している。そして、前記工程は、前記第1領域に形成される前記第1MISFETのチャネル領域に不純物がイオン注入されないように行うものである。
【発明の効果】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0017】
代表的な実施の形態によれば、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0018】
また、微細化を図りながら半導体装置の性能を向上させることができる。
【0019】
また、半導体装置の設計変更を容易にしながら、半導体装置の性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態である半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図2】図1に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図3】図2に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図4】図3に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図5】図4に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図6】図5に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図7】図6に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図8】図7に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図9】図8に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図10】図9に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図11】図10に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図12】図11に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図13】図12に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図14】図13に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図15】図14に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図16】図15に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図17】図16に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図18】図17に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図19】図18に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図20】図19に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図21】図20に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図22】図21に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図23】本発明の他の実施の形態である半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図24】図23に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図25】図24に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図26】図25に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図27】図26に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図28】図27に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図29】本発明の他の実施の形態である半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図30】図29に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図31】図30に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図32】図31に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図33】本発明の他の実施の形態である半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図34】図33に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図35】図34に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図36】図35に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図37】図36に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図38】本発明の他の実施の形態である半導体装置の平面図である。
【図39】本発明の他の実施の形態である半導体装置の平面図である。
【図40】本発明の他の実施の形態である半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図41】図40に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図42】図41に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図43】図42に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図44】図43に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図45】図44に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図46】図45に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図47】図46に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図48】図47に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図49】図48に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図50】図49に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図51】図50に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図52】図51に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図53】図52に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図54】図53に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図55】図54に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図56】図55に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図57】図56に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0023】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
【0024】
(実施の形態1)
本実施の形態の半導体装置およびその製造工程を図面を参照して説明する。図1〜図22は、本発明の一実施の形態である半導体装置の製造工程中の要部断面図である。本実施の形態の半導体装置は、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を有する半導体装置である。
【0025】
まず、図1に示されるように、SOI(SOI:Silicon On Insulator)基板1を準備する。SOI基板1は、単結晶シリコンなどからなる半導体基板2と、半導体基板2の主面上に形成された酸化シリコンなどからなる絶縁層(埋め込み絶縁膜)3と、絶縁層3の上面上に形成された単結晶シリコンからなる半導体層4とを有している。
【0026】
SOI基板1は、種々の手法を用いて製造することができ、例えば、2枚の半導体基板(半導体ウエハ)を貼り合わせて研磨することにより製造することができる。他の手法、例えばスマートカット(Smart Cut)プロセスなどを用いてSOI基板1を製造することもできる。半導体基板2の厚みに比べて半導体層4の厚み(SOI基板1の主面に垂直な方向の厚み)は薄い。半導体層4の厚みは、例えば、10〜50nm程度とすることができ、絶縁層3の厚みは、例えば、10〜50nm程度とすることができる。半導体基板2の厚みは、例えば、300〜750μm程度とすることができる。
【0027】
なお、SOI基板1は、半導体装置が完成するまでSOI構造が維持される領域(平面領域)であるSOI領域1Aと、後で半導体層4および絶縁層3が除去されてSOI構造ではなくなる(但し半導体基板2は存在する)領域(平面領域)であるバルク領域1Bとを有している。また、SOI構造という場合に、絶縁層上の半導体層には、シリコン層(単結晶シリコン層)を好適に用いることができるが、これに限定されるものではない。例えば、後述の実施の形態4では、絶縁層上の半導体層には、シリコン単結晶以外の半導体層を用いている。
【0028】
次に、図2に示されるように、SOI基板1に素子分離領域(素子分離構造)5を形成する。この素子分離領域5は、素子分離溝5aに埋め込まれた絶縁体(例えば酸化シリコン)により形成されている。素子分離溝5aおよびそれを埋めている素子分離領域5は、半導体層4および絶縁層3を貫通して、その底部が半導体基板2に達しており、素子分離領域5の下部は、半導体基板2内に位置している。すなわち、半導体層4、絶縁層3および半導体基板2にかけて形成された素子分離溝5aに、素子分離領域5が埋め込まれた状態となっている。このため、素子分離領域5の一部は、絶縁層3の下面よりも下方に位置している。
【0029】
素子分離領域5は、SOI基板1(半導体層4)の主面に、半導体層4および絶縁層3を貫通して底部が半導体基板2中に位置する素子分離溝5aを、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング技術などを用いて形成し、この素子分離溝5aに、成膜技術およびCMP技術などを用いて絶縁膜を埋め込むことで、形成することができる。
【0030】
次に、図3に示されるように、SOI基板1のバルク領域1Bを覆い、かつSOI基板1のSOI領域1Aを露出するようなフォトレジストパターンPR1を、フォトリソグラフィ技術を用いてSOI基板1の半導体層4の主面上に形成する。それから、SOI基板1のSOI領域1Aに、しきい値調整用のイオン注入を行なう。このイオン注入を、図3では符号P1を付した矢印で示し、以降ではイオン注入P1と称することとする。また、図3では、イオン注入P1で不純物が導入された領域を、符号6を付して半導体領域(不純物拡散層)6として示してある。
【0031】
イオン注入P1は、SOI領域1Aに後で形成するMISFETのしきい値を制御するためのイオン注入である。このイオン注入P1では、SOI領域1Aにおいて、SOI基板1の半導体基板2に不純物イオンが導入されるが、SOI基板1の半導体層4には不純物イオンが導入されないようにする。また、このイオン注入P1では、フォトレジストパターンPR1がイオン注入阻止マスクとして機能するため、SOI基板1のバルク領域1Bには不純物が導入されない。
【0032】
本実施の形態で重要なのは、イオン注入P1では、SOI基板1の半導体層4に不純物イオンが注入されないようにすることであり、これは、本実施の形態とは異なり、イオン注入P1でSOI基板1の半導体層4に不純物イオンが注入されると、SOI領域1Aに後で形成されるMISFETのしきい値のばらつきの原因となるからである。
【0033】
このため、不純物イオンが半導体層4を突き抜けることができるような高い注入エネルギーで、イオン注入P1を行なう。このイオン注入エネルギーは、半導体層4の厚さと絶縁層3の厚さとにより調整され、少なくとも、不純物イオンの飛影距離が半導体基板2内に位置するように設定する。これにより、イオン注入P1で、SOI領域1Aの半導体層4に不純物イオンを注入することなく、SOI領域1Aの半導体基板2に不純物イオンを注入することができる。
【0034】
また、イオン注入P1では、SOI領域1Aにおいて、絶縁層3の下部の半導体基板2に不純物をイオン注入するが、半導体基板2における絶縁層3に近い領域(絶縁層3に隣接する領域)にも不純物イオンが注入されるようにすることが好ましい。すなわち、半導体基板2内に形成された半導体領域6が絶縁層3に接する(隣接する)ようにすることが好ましい。この半導体領域6の不純物濃度をイオン注入P1の注入量(ドーズ量)で調整することにより、SOI領域1Aに後で形成するMISFETのしきい値を制御することができる。従って、製造された半導体装置においては、SOI領域1Aの絶縁層3の下の半導体基板2における絶縁層3に隣接する領域(半導体領域6に対応)には、不純物が導入された状態となる。イオン注入P1の後、フォトレジストパターンPR1は除去する。
【0035】
次に、図4に示されるように、SOI基板1のSOI領域1Aを覆い、かつSOI基板1のバルク領域1Bを露出するようなフォトレジストパターンPR2を、フォトリソグラフィ技術を用いてSOI基板1の半導体層4の主面上に形成する。
【0036】
次に、フォトレジストパターンPR2をエッチングマスクとして用いたエッチングにより、バルク領域1Bの半導体層4および絶縁層3を除去する。この際、SOI領域1AはフォトレジストパターンPR2で覆われているため、SOI領域1Aの半導体層4および絶縁層3は除去されずに残存する。これにより、バルク領域1Bでは、半導体基板2が露出し(SOI構造ではなくなり)、SOI領域1AではSOI構造(半導体基板2と絶縁層3と半導体層4との積層構造)が維持される。
【0037】
この段階のSOI基板1を基板1Cと称することとする。ここで、基板1Cのバルク領域1Bは、半導体層4および絶縁層3が除去されて半導体基板2で構成され、基板1CのSOI領域1Aは、SOI構造(半導体基板2と絶縁層3と半導体層4との積層構造)が維持されている。以下では、基板1Cの主面(または表面)と言うときは、SOI領域1Aの半導体層4の主面(または表面)およびバルク領域1Bの半導体基板2の主面(または表面)と同義である。基板1CはSOI領域1Aとバルク領域1Bとを有しているが、SOI領域1Aは、絶縁層3が埋め込まれたSOI構造を有する領域とみなすことができ、バルク領域1Bは、絶縁層3が埋め込まれておらずSOI構造を有していない領域とみなすことができる。具体的には、基板1CのSOI領域1Aは、半導体基板2と半導体基板2上の絶縁層3と絶縁層3上の半導体層4とが積層された積層構造(SOI構造)を有した領域であり、基板1Cのバルク領域1Bは、厚み全体が半導体基板2で構成された領域である。但し、SOI領域1Aおよびバルク領域1Bには、厚み方向に素子分離領域5,5bが存在している領域も含まれ得る。
【0038】
その後、フォトレジストパターンPR2は除去する。バルク領域1Bでは、素子分離領域5の一部(絶縁層3の下面よりも下方に位置していた部分)が、半導体層4および絶縁層3の除去後も、半導体基板2に埋め込まれた状態で残存し、これがバルク領域1Bの素子分離領域5bとなる。
【0039】
ここで、バルク領域1Bは、低耐圧のMISFETが形成される領域である低耐圧MIS形成領域1BLと高耐圧のMISFETが形成される領域である高耐圧MIS形成領域1BHとを有している。
【0040】
次に、表面の汚染防止のための薄い絶縁膜(スルー膜、ここでは図示せず)を基板1Cの表面(すなわちバルク領域1Bの半導体基板2の表面およびSOI領域1Aの半導体層4の表面)に形成してから、図5に示されるように、フォトレジストパターンPR3を基板1Cの主面上にフォトリソグラフィ技術を用いて形成する。このフォトレジストパターンPR3は、SOI領域1Aと、バルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLとを覆い、かつバルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHを露出するように形成される。このフォトレジストパターンPR3は、SOI領域1Aと、バルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLへのイオン注入阻止マスクとして機能することができる。
【0041】
次に、バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHにおいて、半導体基板2の上層(表層)部分に、後で形成されるMISFETのしきい値調整用のイオン注入(すなわちチャネルドープイオン注入)P2を行なう。なお、図5では、チャネルドープイオン注入P2を矢印で模式的に示してある。また、チャネルドープイオン注入P2では、バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHにおける半導体基板2の上層(表層)部分に不純物が導入され、図5では、チャネルドープイオン注入P2で導入された不純物(不純物イオン)を、×印で模式的に示し、符号15を付してある(図6およびそれ以降ではチャネルドープイオン注入P2で導入された不純物15を示す×印は図示を省略する)。SOI領域1Aの半導体層4および半導体基板2と、バルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLの半導体基板2とは、フォトレジストパターンPR3で覆われているため、チャネルドープイオン注入P2の際に不純物イオンは注入されない。その後、フォトレジストパターンPR3は除去する。
【0042】
次に、図6に示されるように、フォトレジストパターンPR4を基板1Cの主面上にフォトリソグラフィ技術を用いて形成する。このフォトレジストパターンPR4は、SOI領域1Aと、バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHとを覆い、かつバルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLを露出するように形成される。このフォトレジストパターンPR4は、SOI領域1Aと、高耐圧MIS形成領域1BHへのイオン注入阻止マスクとして機能することができる。
【0043】
次に、バルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLにおいて、半導体基板2の上層(表層)部分に、後で形成されるMISFETのしきい値調整用のイオン注入(すなわちチャネルドープイオン注入)P3を行なう。なお、図6では、チャネルドープイオン注入P3を矢印で模式的に示してある。また、チャネルドープイオン注入P3では、バルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLにおける半導体基板2の上層(表層)部分に不純物が導入され、図6では、チャネルドープイオン注入P3で導入された不純物(不純物イオン)を、×印で模式的に示し、符号16を付してある(図7およびそれ以降ではチャネルドープイオン注入P3で導入された不純物16を示す×印は図示を省略する)。SOI領域1Aの半導体層4および半導体基板2と、バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHの半導体基板2とは、フォトレジストパターンPR4で覆われているため、チャネルドープイオン注入P3の際に不純物イオンは注入されない。その後、フォトレジストパターンPR4は除去する。
【0044】
チャネルドープイオン注入P2によって、バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHに形成されるMISFETのチャネル領域に不純物が導入(ドープ)される。また、チャネルドープイオン注入P3によって、バルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLに形成されるMISFETのチャネル領域に不純物が導入(ドープ)される。すなわち、チャネルドープイオン注入では、MISFETのチャネル領域を含む領域に、不純物(不純物イオン)が導入(ドープ)される。なお、ここでいう「MISFETのチャネル領域」とは、チャネルドープイオン注入の段階ではMISFETは形成されていなくとも、その後MISFETが形成されると、MISFETのチャネル領域となる領域に対応する。
【0045】
本実施の形態で重要なのは、バルク領域1Bの半導体基板2に対してチャネルドープイオン注入(ここではチャネルドープイオン注入P2,P3)を行うが、SOI領域1Aの半導体層4に対してはチャネルドープイオン注入を行なわないことである。このため、バルク領域1Bの半導体基板2に対してチャネルドープイオン注入(ここではチャネルドープイオン注入P2,P3)を行う際には、SOI領域1Aはイオン注入阻止マスク(ここではフォトレジストパターンPR3,PR4)で覆っておく。
【0046】
次に、図7に示されるように、バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHの半導体基板2にp型ウエルPW1を形成し、バルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLの半導体基板2にp型ウエルPW2を形成する。p型ウエルPW1およびp型ウエルPW2は、それぞれ、フォトレジストパターン(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして用いたイオン注入によって形成することができる。p型ウエルPW1を形成するためのイオン注入とp型ウエルPW2を形成するためのイオン注入とは、同じイオン注入工程で行なえば工程数を低減できるが、異なるイオン注入工程として行なってもよい。また、p型ウエルPW1,p型ウエルPW2形成後に上記チャネルドープイオン注入P2,P3を行うこともできる。
【0047】
なお、本実施の形態では、バルク領域1Bの半導体基板2に対してウエル領域形成のためのイオン注入を行うが、SOI領域1Aの半導体層4に対してはウエル領域形成のためのイオン注入を行なわない。このため、p型ウエルPW1を形成するためのイオン注入とp型ウエルPW2を形成するためのイオン注入の際には、SOI領域1Aは、イオン注入阻止マスクとしてのフォトレジストパターン(図示せず)で覆っておき、SOI領域1Aの半導体層4に対しては不純物イオンが注入されないようにする。
【0048】
バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHにおいて、チャネルドープイオン注入P2で不純物が導入された領域(チャネルドープ層)は、半導体基板2の上層部分に浅く形成され、p型ウエルPW1は、半導体基板2において、このチャネルドープ層よりも深くまで形成されている。また、バルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLにおいて、チャネルドープイオン注入P3で不純物が導入された領域(チャネルドープ層)は、半導体基板2の上層部分に浅く形成され、p型ウエルPW2は、半導体基板2において、このチャネルドープ層よりも深くまで形成されている。
【0049】
次に、例えばフッ酸(HF)水溶液を用いたウェットエッチングなどにより、基板1Cの表面(主面)を清浄化(不要な酸化膜などを除去)した後、図8に示されるように、SOI領域1Aの半導体層4上にゲート絶縁膜7aを形成し、バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHの半導体基板2上にゲート絶縁膜7bを形成し、バルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLの半導体基板2上にゲート絶縁膜7cを形成する。高耐圧MIS形成領域1BHに形成されたゲート絶縁膜7bは、SOI領域1Aに形成されたゲート絶縁膜7aおよび低耐圧MIS形成領域1BLに形成されたゲート絶縁膜7cよりも厚く、耐圧が高い。
【0050】
膜厚の異なるゲート絶縁膜7a,7b,7cは、例えば次のようにして形成することができる。
【0051】
すなわち、基板1Cの主面全体にゲート絶縁膜7b用の絶縁膜を熱酸化およびCVDなどで形成してから、エッチングによりSOI領域1Aおよび低耐圧MIS形成領域1BLでこの絶縁膜を除去し、高耐圧MIS形成領域1BHにこの絶縁膜を残す。それから、熱酸化により基板1Cの主面に酸化シリコン膜を形成する。これにより、SOI領域1Aの半導体層4およびバルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLの半導体基板2上に薄い酸化シリコン膜(熱酸化膜)からなるゲート絶縁膜7a,7cが形成されるとともに、高耐圧MIS形成領域1BHでゲート絶縁膜7b用の絶縁膜の厚みが厚くなって、厚いゲート絶縁膜7bとなる。ゲート絶縁膜7aをゲート絶縁膜7cよりも薄くする必要がある場合は、SOI領域1Aの半導体層4の表面の酸化シリコン膜をエッチングにより除去してから、再度熱酸化により基板1Cの主面に酸化シリコン膜を形成すればよい。
【0052】
高耐圧用のゲート絶縁膜7bは、SOI領域1Aのゲート絶縁膜7aおよび低耐圧MIS形成領域1BLのゲート絶縁膜7cよりも厚いので、高耐圧MIS形成領域1BHに形成されるMISFETの耐圧は、SOI領域1Aに形成されるMISFETおよび低耐圧MIS形成領域1BLに形成されるMISFETの耐圧よりも高くなる。
【0053】
次に、図9に示されるように、基板1Cの主面全面上に(すなわちゲート絶縁膜7a,7b,7c上に)、ゲート電極形成用の導電体膜として、多結晶シリコン膜(ドープトポリシリコン膜)のようなシリコン膜8を形成してから、このシリコン膜8上に窒化シリコン膜などの絶縁膜9を形成する。ゲート絶縁膜7a,7b,7cを形成してからのシリコン膜8の成膜は、連続的に行うことが好ましい。それから、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いて絶縁膜9をパターニングしてから、パターニングされた絶縁膜9をハードマスク(エッチングマスク)として用いてシリコン膜8をドライエッチングしてパターニングする。シリコン膜8をドライエッチングする際には、各領域(SOI領域1Aおよびバルク領域1B)のゲート絶縁膜が露出した段階でエッチングを停止し、基板1C(SOI領域1Aの半導体層4およびバルク領域1Bの半導体基板2)が過剰にエッチングされないようにすることが好ましい。その後、絶縁膜9はエッチングなどにより除去される。
【0054】
パターニングされたシリコン膜8により、図10に示されるように、ゲート電極GE1,GE2,GE3が形成される。このうち、ゲート電極GE1は、SOI領域1Aにおいて、半導体層4上にゲート絶縁膜7aを介して形成される。また、ゲート電極GE2は、バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHにおいて、半導体基板2(p型ウエルPW1)上にゲート絶縁膜7bを介して形成される。また、ゲート電極GE3は、バルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLにおいて、半導体基板2(p型ウエルPW2)上にゲート絶縁膜7cを介して形成される。
【0055】
他の形態として、絶縁膜9を形成せずに、シリコン膜8上に形成したフォトレジストパターンを用いてシリコン膜8をドライエッチングしてパターニングすることで、ゲート電極GE1,GE2,GE3を形成することもできる。
【0056】
本実施の形態では、SOI領域1Aに形成されるMISFETのチャネル領域に不純物がイオン注入されないように、半導体装置の製造工程を行うことを主要な特徴の一つとしている。このため、SOI領域1Aに形成すべきゲート電極GE1を形成する前には、SOI領域1Aの半導体層4内に不純物をイオン注入しない。従って、ゲート電極GE1,GE2,GE3を形成する前には、SOI領域1Aの半導体層4内に不純物をイオン注入しない。一方、バルク領域1Bでは、イオン注入により半導体基板2にウエル領域(ここではp型ウエルPW1,PW2)を形成する工程を、ゲート電極GE1,GE2,GE3を形成する前に行い、また、バルク領域1Bに形成されるMISFETのしきい値調整用のチャネルドープイオン注入(ここではチャネルドープイオン注入P2,P3)をバルク領域1Bの半導体基板2に行う工程を、ゲート電極GE1,GE2,GE3を形成する前に行う。
【0057】
また、ゲート電極GE1形成後は、イオン注入(後述のエクステンション領域EX1を形成するためのイオン注入P4およびソース・ドレイン領域SD1を形成するためのイオン注入)を行っても、ゲート電極GE1が存在するので、ゲート電極GE1の下に形成されるチャネル領域に不純物がイオン注入されるのを防止するこができる。また、上記イオン注入P1は、ゲート電極GE1がイオン注入の邪魔にならないように、ゲート電極GE1形成前に行う必要がある。但し、上述のように、上記イオン注入P1は、SOI領域1Aにおいて、SOI基板1の半導体基板2に不純物イオンが導入されるが、SOI基板1の半導体層4には不純物イオンが導入されないようにする。
【0058】
次に、SOI領域1Aの半導体層4にイオン注入によりエクステンション領域EX1を形成し、バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHの半導体基板2(p型ウエルPW1)に、イオン注入によりエクステンション領域EX2を形成し、バルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLの半導体基板2(p型ウエルPW2)に、イオン注入によりエクステンション領域EX3を形成する。ここでは、SOI領域1A,バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHおよびバルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLに、それぞれnチャネル型MISFETを形成する場合を例に挙げて説明しているため、各エクステンション領域EX1,EX2,EX3は、n型の半導体領域である。
【0059】
エクステンション領域EX1,EX2,EX3形成工程について、具体的に説明する。
【0060】
まず、図11に示されるように、フォトレジストパターンPR5を基板1Cの主面上にフォトリソグラフィ技術を用いて形成する。このフォトレジストパターンPR5は、バルク領域1Bを覆い、かつ、SOI領域1Aを露出するように形成される。それから、SOI領域1Aの半導体層4に対してイオン注入を行うことにより、SOI領域1Aの半導体層4にエクステンション領域EX1を形成する。SOI領域1Aにおいて、エクステンション領域EX1は、半導体層4のゲート電極GE1の両側の領域に、ゲート電極GE1に整合して形成される。なお、図11では、エクステンション領域EX1を形成するためのイオン注入を矢印で模式的に示し、以下ではイオン注入P4と称することとする。
【0061】
エクステンション領域EX1を形成するためのイオン注入P4の際、ゲート電極GE1は、半導体層4へ不純物イオンが注入されるのを阻止するマスクとして機能することができるので、エクステンション領域EX1は、ゲート電極GE1(の側壁)に整合して形成され、ゲート電極GE1の直下には、不純物は導入(イオン注入)されない。また、エクステンション領域EX1を形成するためのイオン注入P4の際、フォトレジストパターンPR5は、バルク領域1Bへのイオン注入阻止マスクとして機能するため、バルク領域1Bの半導体基板2には、不純物は導入(イオン注入)されない。
【0062】
エクステンション領域EX1を形成した後、フォトレジストパターンPR5は除去される。
【0063】
次に、図12に示されるように、フォトレジストパターンPR6を基板1Cの主面上にフォトリソグラフィ技術を用いて形成する。このフォトレジストパターンPR6は、SOI領域1Aと、バルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLとを覆い、かつバルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHを露出するように形成される。それから、バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHの半導体基板2に対してイオン注入を行うことにより、バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHの半導体基板2(p型ウエルPW1)にエクステンション領域EX2を形成する。バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHにおいて、エクステンション領域EX2は、半導体基板2(p型ウエルPW1)のゲート電極GE2の両側の領域に、ゲート電極GE2に整合して形成される。なお、図12では、エクステンション領域EX2を形成するためのイオン注入を矢印で模式的に示し、以下ではイオン注入P5と称することとする。
【0064】
エクステンション領域EX2を形成するためのイオン注入P5の際、ゲート電極GE2は、半導体基板2(p型ウエルPW1)へ不純物イオンが注入されるのを阻止するマスクとして機能することができるので、エクステンション領域EX2は、ゲート電極GE2(の側壁)に整合して形成され、ゲート電極GE2の直下には、不純物は導入(イオン注入)されない。また、エクステンション領域EX2を形成するためのイオン注入P5の際、フォトレジストパターンPR6は、SOI領域1Aとバルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLへのイオン注入阻止マスクとして機能するため、SOI領域1Aの半導体層4とバルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLの半導体基板2には、不純物は導入(イオン注入)されない。
【0065】
エクステンション領域EX2を形成するためのイオン注入P5を行った後、図13に示されるように、バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHの半導体基板2に対して、ハロー領域を形成するためのイオン注入(ハローイオン注入)を行う。このハローイオン注入を、図13では矢印で模式的に示し、以下ではハローイオン注入P5aと称することとする。
【0066】
なお、ハローイオン注入とは、ハロー領域を形成するためのイオン注入であり、ハロー領域とは、LDD用のエクステンション領域(ここではエクステンション領域EX2)とは逆の導電型で、そのエクステンション領域を包み込むような半導体領域のことであり、
短チャネル特性(パンチスルー)抑制のために形成される。
【0067】
ハローイオン注入P5aで注入する不純物は、エクステンション領域EX2を形成するためのイオン注入P5で注入する不純物とは逆の導電型である。nチャネル型MISFETを形成する場合は、イオン注入P5でn型不純物(ヒ素またはリンなど)をイオン注入し、ハローイオン注入P5aでp型不純物(ホウ素など)をイオン注入する。ハローイオン注入P5aは、短チャネル特性抑制のために行われる。ハローイオン注入P5aの際、ゲート電極GE2もマスク(イオン注入阻止マスク)として機能することができる。
【0068】
ハローイオン注入P5aによって、バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHの半導体基板2(p型ウエルPW1)に、ハロー領域HO2が、エクステンション領域EX2を包み込む(覆う)ように形成される。ハロー領域HO2は、エクステンション領域EX2とは逆の導電型で、かつウエル領域(ここではp型ウエルPW1)と同じ導電型の半導体領域である。ハロー領域HO2は、p型ウエルPW1よりも不純物濃度(p型不純物濃度)が高い。また、ハローイオン注入P5aの際、フォトレジストパターンPR6は、イオン注入阻止マスクとして機能するため、SOI領域1Aの半導体層4とバルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLの半導体基板2には、不純物は導入(イオン注入)されない。
【0069】
ハローイオン注入P5aは、斜めイオン注入(傾斜イオン注入)とすることがより好ましく、これにより、エクステンション領域EX2を包み込む(覆う)ようにハロー領域HO2を的確に形成することができる。なお、一般のイオン注入では、基板の主面に対して垂直な方向に不純物イオンを加速して打ち込むが、斜めイオン注入では、基板の主面に対して垂直な方向から所定の角度(傾斜角)傾斜した方向に不純物イオンを加速して打ち込む。
【0070】
エクステンション領域EX2を形成するためのイオン注入P5と、ハロー領域HO2を形成するためのハローイオン注入P5aとは、必ずしもこの順序で形成しなくともよいが、イオン注入P5およびハローイオン注入P5aは、少なくとも、ゲート電極GE2形成後で、かつ、ゲート電極GE2の側壁上に後述のサイドウォールSWを形成する前に行う必要がある。
【0071】
イオン注入P5およびハローイオン注入P5aの後、フォトレジストパターンPR6は除去される。
【0072】
次に、図14に示されるように、フォトレジストパターンPR7を基板1Cの主面上にフォトリソグラフィ技術を用いて形成する。このフォトレジストパターンPR7は、SOI領域1Aと、バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHとを覆い、かつバルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLを露出するように形成される。それから、バルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLの半導体基板2に対してイオン注入を行うことにより、バルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLの半導体基板2(p型ウエルPW2)にエクステンション領域EX3を形成する。バルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLにおいて、エクステンション領域EX3は、半導体基板2(p型ウエルPW2)のゲート電極GE3の両側の領域に、ゲート電極GE3に整合して形成される。なお、図14では、エクステンション領域EX3を形成するためのイオン注入を矢印で模式的に示し、以下ではイオン注入P6と称することとする。
【0073】
エクステンション領域EX3を形成するためのイオン注入P6の際、ゲート電極GE3は、半導体基板2(p型ウエルPW2)へ不純物イオンが注入されるのを阻止するマスクとして機能することができるので、エクステンション領域EX3は、ゲート電極GE3(の側壁)に整合して形成され、ゲート電極GE3の直下には、不純物は導入(イオン注入)されない。また、エクステンション領域EX3を形成するためのイオン注入P6の際、フォトレジストパターンPR7は、SOI領域1Aとバルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHへのイオン注入阻止マスクとして機能するため、SOI領域1Aの半導体層4とバルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHの半導体基板2には、不純物は導入(イオン注入)されない。
【0074】
エクステンション領域EX3を形成するためのイオン注入P6を行った後、図15に示されるように、バルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLの半導体基板2に対して、ハロー領域を形成するためのイオン注入(ハローイオン注入)を行う。このハローイオン注入を、図15では矢印で模式的に示し、以下ではハローイオン注入P6aと称することとする。ハローイオン注入P6aで注入する不純物は、エクステンション領域EX3を形成するためのイオン注入P6で注入する不純物とは逆の導電型である。nチャネル型MISFETを形成する場合は、イオン注入P6でn型不純物(ヒ素またはリンなど)をイオン注入し、ハローイオン注入P6aでp型不純物(ホウ素など)をイオン注入する。ハローイオン注入P6aは、短チャネル特性抑制のために行われる。ハローイオン注入P6aの際、ゲート電極GE3もマスク(イオン注入阻止マスク)として機能することができる。
【0075】
ハローイオン注入P6aによって、バルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLの半導体基板2(p型ウエルPW2)に、ハロー領域HO3が、エクステンション領域EX3を包み込む(覆う)ように形成される。ハロー領域HO3は、エクステンション領域EX3とは逆の導電型で、かつウエル領域(ここではp型ウエルPW1)と同じ導電型の半導体領域である。ハロー領域HO3は、p型ウエルPW2よりも不純物濃度(p型不純物濃度)が高い。また、ハローイオン注入P6aの際、フォトレジストパターンPR7は、イオン注入阻止マスクとして機能するため、SOI領域1Aの半導体層4とバルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHの半導体基板2には、不純物は導入(イオン注入)されない。
【0076】
ハローイオン注入P6aは、斜めイオン注入(傾斜イオン注入)とすることがより好ましく、これにより、エクステンション領域EX3を包み込む(覆う)ようにハロー領域HO3を的確に形成することができる。
【0077】
エクステンション領域EX3を形成するためのイオン注入P6と、ハロー領域HO3を形成するためのハローイオン注入P6aとは、必ずしもこの順序で形成しなくともよいが、イオン注入P6およびハローイオン注入P6aは、少なくとも、ゲート電極GE3形成後で、かつ、ゲート電極GE3の側壁上に後述のサイドウォールSWを形成する前に行う必要がある。
【0078】
イオン注入P6およびハローイオン注入P6aの後、フォトレジストパターンPR7は除去される。
【0079】
また、他の形態として、高耐圧MIS形成領域1BHのエクステンション領域EX2と低耐圧MIS形成領域1BLのエクステンション領域EX3とを同じイオン注入工程で形成することも可能であり、また、高耐圧MIS形成領域1BHのハロー領域HO2と低耐圧MIS形成領域1BLのハロー領域HO3とを同じハローイオン注入工程で形成することも可能である。この場合は、上記フォトレジストパターンPR6,PR7の代わりに、SOI領域1Aを覆いかつバルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHおよび低耐圧MIS形成領域1BLを露出するフォトレジストパターンを形成する。そして、このフォトレジストパターンをイオン注入阻止マスクとして用いて、バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHおよび低耐圧MIS形成領域1BLの半導体基板2に、エクステンション領域EX2,EX3を同じイオン注入工程で形成し、また、ハロー領域HO2,HO3を同じハローイオン注入工程で形成する。
【0080】
また、SOI領域1Aのエクステンション領域EX1を形成するのは、バルク領域1Bのエクステンション領域EX2,EX3およびハロー領域HO2,HO3を形成する前でも後でもよいが、ゲート電極GE1,GE2,GE3形成後で後述の側壁絶縁膜SW形成前に、エクステンション領域EX1,EX2,EX3およびハロー領域HO2,HO3を形成する。
【0081】
本実施の形態では、SOI領域1Aの半導体層4に対してはハローイオン注入(エクステンション領域EX1のハロー領域を形成するためのイオン注入)を行なわないことを、主要な特徴の一つとしている。このため、バルク領域1Bの半導体基板2に対してハローイオン注入(ここではハローイオン注入P5a,P6a)を行う際には、SOI領域1Aは、イオン注入阻止マスク(ここではフォトレジストパターンPR6,PR7)で覆っておく。
【0082】
次に、図16に示されるように、ゲート電極GE1,GE2,GE3の側壁上に、絶縁膜(側壁絶縁膜)として、側壁スペーサまたはサイドウォール(側壁絶縁膜、サイドウォールスペーサ)SWを形成する。サイドウォールSWは、例えば、半導体基板2(の主面全面)上に酸化シリコン膜または窒化シリコン膜あるいはそれらの積層膜を堆積し、この酸化シリコン膜または窒化シリコン膜あるいはそれらの積層膜をRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)法などにより異方性エッチングすることによって形成することができる。
【0083】
次に、例えばフッ酸(HF)水溶液などでの清浄化処理により、SOI領域1Aの半導体層4およびバルク領域1Bの半導体基板2において、ゲート電極GE1,GE2,GE3およびサイドウォールSWで覆われていない領域を露出させて清浄化した後、図17に示されるように、半導体層として、シリコンのエピタキシャル成長によりエピタキシャル成長層10を形成する。エピタキシャル成長層10は、半導体層であり、エピタキシャル成長したシリコン(単結晶シリコン)からなる。エピタキシャル成長層10は、露出したシリコン領域(SOI領域1Aの半導体層4、バルク領域1Bの半導体基板2およびゲート電極GE1,GE2,GE3がこれに該当する)上に形成される。
【0084】
具体的には、エピタキシャル成長層10は、SOI領域1Aでは、ゲート電極GE1およびサイドウォールSWで覆われていない領域の半導体層4上と、ゲート電極GE1上とに形成され、バルク領域1Bでは、ゲート電極GE2,GE3およびサイドウォールSWで覆われていない領域の半導体基板2上と、ゲート電極GE2,GE3上とに形成される。エピタキシャル成長層10は、絶縁膜上には形成されないため、素子分離領域5,5bおよびサイドウォールSW上にはエピタキシャル成長層10は形成されない。これを利用して、ゲート電極GE1,GE2,GE3上に形成された部分のエピタキシャル成長層10が、半導体層4および半導体基板2上に形成された部分のエピタキシャル成長層10と接触しないようにする。
【0085】
エピタキシャル成長層10の形成は必須ではないが、エピタキシャル成長層10を形成すればより好ましい。エピタキシャル成長層10を形成しない場合には、SOI領域1Aに形成する後述のソース・ドレイン領域SD1の厚みは半導体層4の厚みに制限されるが、エピタキシャル成長層10を形成すれば、SOI領域1Aに形成する後述のソース・ドレイン領域SD1の厚みを、エピタキシャル成長層10の分、厚くすることが可能になり、それによって、ソース・ドレイン領域SD1の抵抗を低減することが可能になる。
【0086】
次に、図18に示されるように、SOI領域1Aの半導体層4およびエピタキシャル成長層10に、イオン注入によりソース・ドレイン領域SD1を形成する。また、バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHの半導体基板2(p型ウエルPW1)およびエピタキシャル成長層10に、イオン注入によりソース・ドレイン領域SD2を形成する。また、バルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLの半導体基板2(p型ウエルPW2)およびエピタキシャル成長層10に、イオン注入によりソース・ドレイン領域SD3を形成する。ここでは、SOI領域1A,バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHおよびバルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLにそれぞれnチャネル型MISFETを形成する場合を例に挙げて説明しているため、各ソース・ドレイン領域SD1,SD2,SD3はn型半導体領域である。
【0087】
なお、SOI領域1Aにソース・ドレイン領域SD1を形成する際には、バルク領域1Bを覆うフォトレジスト膜(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして用いればよい。また、バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHにソース・ドレイン領域SD2を形成する際には、SOI領域1Aとバルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLとを覆うフォトレジスト膜(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして用いればよい。また、バルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLにソース・ドレイン領域SD3を形成する際には、SOI領域1Aとバルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHとを覆うフォトレジスト膜(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして用いればよい。また、高耐圧MIS形成領域1BHのソース・ドレイン領域SD2と低耐圧MIS形成領域1BLのソース・ドレイン領域SD3とを同じイオン注入工程で形成することも可能であるが、この場合は、SOI領域1Aを覆うフォトレジスト膜をイオン注入阻止マスクとして用いればよい。
【0088】
SOI領域1Aにおいて、ソース・ドレイン領域SD1は、半導体層4のゲート電極GE1の両側の領域とその上のエピタキシャル成長層10とにわたって形成される。また、バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHにおいて、ソース・ドレイン領域SD2は、半導体基板2(p型ウエルPW1)のゲート電極GE2の両側の領域とその上のエピタキシャル成長層10とにわたって形成される。また、バルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLにおいて、ソース・ドレイン領域SD3は、半導体基板2(p型ウエルPW2)のゲート電極GE3の両側の領域とその上のエピタキシャル成長層10とにわたって形成される。
【0089】
ソース・ドレイン領域SD1を形成するためのイオン注入の際、ゲート電極GE1およびその側壁上のサイドウォールSWは、半導体層4へ不純物イオンが注入されるのを阻止するマスクとして機能できるので、ソース・ドレイン領域SD1は、ゲート電極GE1の側壁上のサイドウォールSWに整合して形成され、ゲート電極GE1およびその側壁上のサイドウォールSWの直下には、不純物イオンは注入されない。また、ソース・ドレイン領域SD2を形成するためのイオン注入の際、ゲート電極GE2およびその側壁上のサイドウォールSWは、半導体基板2へ不純物イオンが注入されるのを阻止するマスクとして機能できるので、ソース・ドレイン領域SD2は、ゲート電極GE2の側壁上のサイドウォールSWに整合して形成され、ゲート電極GE2およびその側壁上のサイドウォールSWの直下には、不純物イオンは注入されない。また、ソース・ドレイン領域SD3を形成するためのイオン注入の際、ゲート電極GE3およびその側壁上のサイドウォールSWは、半導体基板2へ不純物イオンが注入されるのを阻止するマスクとして機能できるので、ソース・ドレイン領域SD3は、ゲート電極GE3の側壁上のサイドウォールSWに整合して形成され、ゲート電極GE3およびその側壁上のサイドウォールSWの直下には、不純物イオンは注入されない。
【0090】
SOI領域1Aに形成されたソース・ドレイン領域SD1とエクステンション領域EX1とは同じ導電型であるが、ソース・ドレイン領域SD1は、エクステンション領域EX1よりも、不純物濃度(n型不純物濃度)が高い。これにより、SOI領域1Aにおいて、MISFETのソースまたはドレインとして機能するLDD(Lightly doped Drain)構造の半導体領域(不純物拡散層)が、ソース・ドレイン領域SD1およびエクステンション領域EX1により形成される。換言すれば、エクステンション領域EX1と、それよりも高不純物濃度のソース・ドレイン領域SD1とは、MISFETのソースまたはドレイン用の半導体領域として機能する。従って、エクステンション領域EX1は、ソースまたはドレイン用の半導体領域の一部とみなすことができる。
【0091】
また、バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHに形成されたソース・ドレイン領域SD2とエクステンション領域EX2とは同じ導電型であるが、ソース・ドレイン領域SD2は、エクステンション領域EX2よりも、不純物濃度(n型不純物濃度)が高い。これにより、バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHにおいて、MISFETのソースまたはドレインとして機能するLDD構造の半導体領域(不純物拡散層)が、ソース・ドレイン領域SD2およびエクステンション領域EX2により形成される。換言すれば、エクステンション領域EX2と、それよりも高不純物濃度のソース・ドレイン領域SD2とは、MISFETのソースまたはドレイン用の半導体領域として機能する。従って、エクステンション領域EX2は、ソースまたはドレイン用の半導体領域の一部とみなすことができる。
【0092】
また、バルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLに形成されたソース・ドレイン領域SD3とエクステンション領域EX3とは同じ導電型であるが、ソース・ドレイン領域SD3は、エクステンション領域EX3よりも、不純物濃度(n型不純物濃度)が高い。これにより、バルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLにおいて、MISFETのソースまたはドレインとして機能するLDD構造の半導体領域(不純物拡散層)が、ソース・ドレイン領域SD3およびエクステンション領域EX3により形成される。換言すれば、エクステンション領域EX3と、それよりも高不純物濃度のソース・ドレイン領域SD3とは、MISFETのソースまたはドレイン用の半導体領域として機能する。従って、エクステンション領域EX3は、ソースまたはドレイン用の半導体領域の一部とみなすことができる。
【0093】
次に、これまでのイオン注入で導入した不純物の活性化のためのアニール処理(熱処理)を行う。このアニール処理は、例えば1050℃程度のスパイクアニール処理にて行うことができる。このようにして、SOI領域1Aとバルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHおよび低耐圧MIS形成領域1BLとに、それぞれ、電界効果トランジスタとしてMISFETが形成される。
【0094】
次に、図19に示されるように、サリサイド技術を用いて、ソース・ドレイン領域SD1,SD2,SD3の上層(表層)部分と、ゲート電極GE1,GE2,GE3の上部のエピタキシャル成長層10の上層(表層)部分とに、金属シリサイド層12を形成する。金属シリサイド層12は、例えばニッケルシリサイドまたはコバルトシリサイドなどからなる。金属シリサイド層12を形成するには、例えばニッケル(Ni)膜またはコバルト(Co)膜のような金属膜を基板1C上に堆積して熱処理することによって、金属シリサイド層12を形成し、その後、未反応の金属膜を除去する。金属シリサイド層12を形成することにより、拡散抵抗やコンタクト抵抗などを低抵抗化することができる。
【0095】
次に、図20に示されるように、基板1Cの主面上に絶縁膜(層間絶縁膜)21を形成する。すなわち、ゲート電極GE1,GE2,GE3およびサイドウォールSWを覆うように、金属シリサイド層12上を含む基板1C上に絶縁膜21を形成する。絶縁膜21は、例えば、酸化シリコン膜の単体膜や、あるいは、窒化シリコン膜とそれよりも厚い酸化シリコン膜との積層膜などからなる。その後、絶縁膜21の表面(上面)をCMP(CMP:Chemical Mechanical Polishing、化学機械研磨)法により研磨するなどして、絶縁膜21の上面を平坦化する。下地段差に起因して絶縁膜21の表面に凹凸形状が形成されていても、絶縁膜21の表面をCMP法により研磨することにより、その表面が平坦化された層間絶縁膜を得ることができる。
【0096】
次に、図21に示されるように、絶縁膜21上に形成したフォトレジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとして用いて、絶縁膜21をドライエッチングすることにより、絶縁膜21にコンタクトホール(貫通孔、孔)22を形成する。コンタクトホール22の底部では、基板1Cの主面の一部、例えばソース・ドレイン領域SD1,SD2,SD3の表面上の金属シリサイド層12の一部や、ゲート電極GE1,GE2,GE3上の金属シリサイド層12の一部などが露出される。
【0097】
次に、コンタクトホール22内に、タングステン(W)などからなる導電性のプラグ(接続用導体部)23を形成する。プラグ23を形成するには、例えば、コンタクトホール22の内部(底部および側壁上)を含む絶縁膜21上に、プラズマCVD法によりバリア導体膜(例えばチタン膜、窒化チタン膜、あるいはそれらの積層膜)を形成する。それから、タングステン膜などからなる主導体膜をCVD法などによってバリア導体膜上にコンタクトホール22を埋めるように形成し、絶縁膜21上の不要な主導体膜およびバリア導体膜をCMP法またはエッチバック法などによって除去することにより、プラグ23を形成することができる。図面の簡略化のために、プラグ23は、主導体膜とバリア導体膜を一体化して示してある。プラグ23は、その底部でソース・ドレイン領域SD1,SD2,SD3の表面上の金属シリサイド層12や、ゲート電極GE1,GE2,GE3上の金属シリサイド層12などと接して、電気的に接続される。
【0098】
次に、図22に示されるように、プラグ23が埋め込まれた絶縁膜21上に、絶縁膜24を形成する。絶縁膜24は、複数の絶縁膜の積層膜で形成することもできる。
【0099】
次に、シングルダマシン法により第1層目の配線である配線M1を形成する。具体的には、次のようにして配線M1を形成することができる。まず、フォトレジストパターン(図示せず)をマスクとしたドライエッチングによって絶縁膜24の所定の領域に配線溝を形成した後、配線溝の底部および側壁上を含む絶縁膜24上にバリア導体膜(例えば窒化チタン膜、タンタル膜または窒化タンタル膜など)を形成する。続いて、CVD法またはスパッタリング法などによりバリア導体膜上に銅のシード層を形成し、さらに電解めっき法などを用いてシード層上に銅めっき膜を形成して、銅めっき膜により配線溝の内部を埋め込む。それから、配線溝以外の領域の主導体膜(銅めっき膜およびシード層)とバリアメタル膜をCMP法により除去して、配線溝に埋め込まれ銅を主導電材料とする第1層目の配線M1を形成する。図面の簡略化のために、配線M1は、バリア導体膜、シード層および銅めっき膜を一体化して示してある。
【0100】
配線M1は、プラグ23を介して、SOI領域1Aに形成されたMISFET(ソース・ドレイン領域SD1又はゲート電極GE1)、バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHに形成されたMISFET(ソース・ドレイン領域SD2又はゲート電極GE2)、あるいは、バルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLに形成されたMISFET(ソース・ドレイン領域SD3又はゲート電極GE3)などと電気的に接続されている。その後、デュアルダマシン法により2層目の配線を形成するが、ここでは図示およびその説明は省略する。
【0101】
以上のようにして、本実施の形態の半導体装置が製造される。
【0102】
本実施の形態の半導体装置は、SOI領域1Aとバルク領域1Bとを有しており、SOI領域1Aとバルク領域1Bのそれぞれに複数のMISFETが形成されている。SOI領域1Aは、半導体基板2(単結晶半導体領域)と絶縁層3と半導体層4(単結晶半導体領域)とが下から順に積層されたSOI構造を有する領域であり、絶縁層3の上部に位置する半導体層4(単結晶半導体領域)に、MISFETが形成されている。このため、SOI領域1Aに形成された各MISFETのチャネル領域は、絶縁層3上の半導体層4中に形成される。一方、バルク領域1Bは、基板の厚み方向全体(素子分離領域5,5bは除く)が半導体基板2(単結晶半導体領域)で構成された領域であり、この半導体基板2(単結晶半導体領域)に、MISFETが形成されている。このため、バルク領域1Bに形成された各MISFETのチャネル領域は、半導体基板2中に形成され、チャネル領域の下方(半導体基板2の厚み方向の途中)には、絶縁層3のような絶縁層(埋め込み絶縁層)は存在していない。
【0103】
本実施の形態の半導体装置およびその製造工程の主要な特徴の一つは、製造された半導体装置において、SOI領域1Aに形成されているMISFETのチャネル領域には不純物が導入されておらず、バルク領域1Bに形成されているMISFETのチャネル領域には不純物が導入されていることである。このため、本実施の形態の半導体装置の製造工程は、SOI領域1Aに形成されるMISFETのチャネル領域に不純物がイオン注入されないように行われることを、主要な特徴の一つとしている。また、本実施の形態の半導体装置の製造工程は、バルク領域1Bに形成されるMISFETのチャネル領域に不純物がイオン注入されるように行われることも、他の主要な特徴の一つとしている。これは、以下のような理由によるものである。
【0104】
半導体基板に不純物をイオン注入した場合、注入直後の段階では、注入された不純物がある程度ランダムに配置されていても、その後の種々の加熱工程で不純物が拡散(移動)すると、不純物のランダム配置が崩れ、注入直後に比べて不純物の分布に偏りが生じてしまう。すなわち、イオン注入した直後の段階では、注入した不純物の配置のランダム性が高くとも、その後の種々の加熱工程で不純物が拡散(移動)すると、不純物の配置のランダム性が低下してしまう。このことは、イオン注入が、MISFETのしきい値調整用のチャネルドープイオン注入やウエル領域形成用のイオン注入である場合でも同様である。
【0105】
なお、不純物の配置のランダム性が高い状態では、微視的(原子配列のレベル)には、不純物は均一(規則的)に配置されているのではなく、ばらばら(ランダム)に存在しているが、微視的にランダムであるが故に、巨視的(チャネル領域のレベル)には、不純物は偏りなく同じように分布している。このため、不純物の配置のランダム性が高い状態では、チャネル領域同士を比べたときの不純物分布の違い(あるMISFETのチャネル領域の不純物分布と他のMISFETのチャネル領域の不純物分布との差)が小さく、MISFETのしきい値のばらつきが小さい。
【0106】
しかしながら、不純物配置のランダム性が低下すると、この状態が崩れ、巨視的な不純物の分布(チャネル領域のレベルでの不純物分布)に偏りが生じてしまう。このため、チャネルドープイオン注入後に、熱拡散によってチャネルドープ不純物の配置のランダム性が低くなった状態では、チャネル領域同士を比べたときの不純物分布の違い(あるMISFETのチャネル領域の不純物分布と他のMISFETのチャネル領域の不純物分布との差)が大きくなり、MISFETのしきい値のばらつきが大きくなってしまう。すなわち、MISFET毎にチャネル領域の状態(チャネル領域における不純物の配置状態)が変動してしまい、MISFET毎にしきい値電圧が変動してしまうのである。半導体装置の性能を向上させるためには、MISFET毎のしきい値電圧のばらつきを抑制することが望まれる。なお、チャネル領域同士を比べたときの不純物分布の違い(ばらつき)が、上記ランダムばらつきに対応している。
【0107】
このため、チャネルドープイオン注入を行わず、チャネル領域に不純物を導入しないようにすれば、MISFET毎にチャネル領域の状態(チャネル領域における不純物の配置状態)が変動しなくなるため、MISFET毎のしきい値電圧のばらつきを抑制することが可能になる。
【0108】
しかしながら、半導体基板に複数のMISFETを形成する場合に、全てのMISFETに対してチャネルドープイオン注入を全く行わなければ、MISFETのしきい値電圧を調整することが困難となるため、半導体装置の性能向上を図ることが難しくなる。また、チャネルドープイオン注入を行わない場合でも、ウエル領域を形成するためのイオン注入の際に、チャネル領域にも不純物が導入される。このため、その後の種々の加熱工程で不純物が拡散(移動)すると、ウエル領域形成のためにチャネル領域に導入された不純物の配置のランダム性が低下して、MISFET毎にチャネル領域の状態(チャネル領域における不純物の配置状態)が変動してしまい、MISFET毎にしきい値電圧が変動してしまう。また、半導体基板に形成された全てのMISFETに対して一律に同じ対策を施すと、ランダムばらつきが生じやすい素子と生じにくい素子とに同じ対策を施すことになるため、半導体装置全体の大幅な設計変更が必要となり、設計変更にともなう時間や労力やコストが大きくなってしまう。
【0109】
そこで、本実施の形態では、SOI構造を有するSOI領域1AとSOI構造を有していないバルク領域1Bとを有する基板1Cに複数のMISFETを形成する。そして、半導体装置の製造工程(MISFET形成工程)を、SOI領域1Aに形成されるMISFETのチャネル領域に不純物がイオン注入されないように行う。これにより、製造された半導体装置においては、SOI領域1Aに形成されているMISFETのチャネル領域には不純物が導入されていない状態となる。
【0110】
SOI領域1Aに形成されたMISFETは、チャネル領域に不純物が導入されていないため、MISFET毎にチャネル領域の状態(チャネル領域における不純物の配置状態)が変動することがなく、MISFET毎にしきい値電圧が変動するのを防止できる。
【0111】
SOI領域1Aでは、MISFETのチャネル領域に不純物が導入されないようにしているため、SOI領域1Aでは、チャネルドープイオン注入を行わず、また、ウエル領域を形成するためのイオン注入も行わない。バルク領域1Bでは、半導体基板2にウエル領域を形成してそこにMISFETを形成するが、SOI領域1Aは、SOI構造を有し、絶縁層3上の半導体層4にMISFETを形成するため、半導体層4にはウエル領域を形成しないで済む。すなわち、ウエル領域を形成しなくとも、SOI領域1Aの半導体層4に、素子分離領域5と絶縁層3とで区画された(囲まれた)領域を設け、そこにMISFETを形成することができるため、SOI領域1Aでは、半導体層4にウエル領域を形成するためのイオン注入を行わないで済む。
【0112】
また、SOI領域1Aでは、チャネルドープイオン注入を行わないが、SOI領域1AはSOI構造を有しているため、チャネルドープイオン注入を行わなくとも、MISFETのしきい値電圧を調整することが可能である。例えば、本実施の形態では、次のようにして、SOI領域1AのMISFETのしきい値電圧を調整している。
【0113】
SOI領域1Aにおいて、半導体層4は、絶縁層3を介して半導体基板2と容量結合しているが、この容量結合の状態が変化すると、半導体層4に形成されたMISFETが影響を受けて、そのしきい値電圧が変化する。このことを利用し、本実施の形態では、上記図3のイオン注入P1で、SOI領域1Aの半導体基板2に不純物イオンを導入することにより、SOI領域1Aにおける絶縁層3の下部の基板領域(半導体領域6に対応)の不純物濃度を調整し、それによって上記容量結合(絶縁層3を介した半導体層4と半導体基板2の容量結合)の状態を制御することで、SOI領域1AのMISFETのしきい値電圧を調整している。例えば、図3のイオン注入P1で半導体領域6にホウ素(B)などのp型の不純物を導入し、この半導体領域6のp型不純物濃度を高くするほど、半導体領域6の上方の半導体層4に形成されるnチャネル型MISFETのしきい値電圧の絶対値を大きくすることができる。このように、SOI領域1Aでは、チャネルドープイオン注入を行わなくとも、MISFETのしきい値電圧を調整することが可能である。
【0114】
従って、SOI領域1Aでは、MISFETのチャネル領域に不純物が導入されないようにすることができ、それによって、MISFET毎にしきい値電圧が変動するのを防止できる。
【0115】
しかしながら、本実施の形態とは異なり、全体がSOI構造を有するSOI基板に全てのMISFETを形成した構成の半導体装置では、MISFETのチャネル領域に不純物が導入されないようにすることでMISFET毎のしきい値電圧の変動は防止できるが、しきい値電圧の変動をある程度許容できるようなMISFETまでSOI基板に形成することになる。また、不純物配置のランダム性が低下しても、ゲート面積が大きいMISFETなどのように、しきい値電圧がそれほど変動しない場合もあるが、そのようなMISFETもSOI基板に形成することになる。この場合、しきい値電圧の変動をある程度許容できるようなMISFET(あるいは不純物配置のランダム性が低下してもしきい値電圧がそれほど変動しないMISFET)においても、SOI基板に形成されたことによる特性上の制限が付加されることになる。例えば、ソース・ドレイン領域の厚みが制限されることで、ソース・ドレイン領域の抵抗が高くなり、オン電流が低くなりやすい。また、半導体装置を構成する半導体基板をSOI基板に置き換え、形成すべき全てのMISFETをこのSOI基板に形成し、かつ全てのMISFETのチャネル領域に不純物が導入されないようにすると、半導体装置全体の大幅な設計変更が必要となり、設計変更にともなう時間や労力やコストが大きくなってしまう。
【0116】
それに対して、本実施の形態では、SOI領域1Aとバルク領域1Bとを有する基板1Cを用い、この基板1CのSOI領域1Aとバルク領域1Bとにそれぞれ複数のMISFETを形成している。この際、しきい値電圧の変動(ばらつき)を抑制することが重要なMISFETをSOI領域1Aに形成し、SOI領域1Aに形成するMISFETに比べてしきい値電圧の変動(ばらつき)を許容できるMISFETをバルク領域1Bに形成することを、設計思想とする。また、不純物配置のランダム性が低下するとしきい値電圧が変動しやすい(ばらつきやすい)MISFETをSOI領域1Aに形成し、SOI領域1Aに形成するMISFETに比べて、不純物配置のランダム性が低下してもしきい値電圧が変動しにくい(ばらつきやすい)MISFETをバルク領域1Bに形成することを、設計思想とする。
【0117】
そして、本実施の形態の半導体装置では、バルク領域1Bに形成されているMISFETのチャネル領域には不純物が導入されている。すなわち、本実施の形態の半導体装置の製造工程は、バルク領域1Bに形成されるMISFETのチャネル領域に不純物がイオン注入されるように行う。
【0118】
バルク領域1Bにおいて、MISFETのチャネル領域に不純物が導入されているのは、チャネルドープイオン注入を行い、また、ウエル領域を形成するためのイオン注入を行っているためである。バルク領域1Bの半導体基板2に、ウエル領域を形成するためのイオン注入とチャネルドープイオン注入のいずれも行わずにMISFETを形成すると、形成されたMISFETの特性が低下する虞がある。しかしながら、本実施の形態では、バルク領域1Bに形成されたMISFETのチャネル領域には不純物が導入されており、バルク領域1Bにおいて、チャネルドープイオン注入や、ウエル領域を形成するためのイオン注入を行っているため、バルク領域1Bの半導体基板2にMISFETを的確に形成することができる。また、形成したMISFETの特性を高めることができる。また、MISFETのしきい値電圧を所望の値に容易に制御することができる。
【0119】
また、バルク領域1Bに形成されたMISFETは、SOI領域1Aに形成されたことによる特性上の制限が付加されることがないため、特性(チャネル不純物のランダムばらつきに影響される特性以外の特性)の向上を図ることができる。例えば、ソース・ドレイン領域の厚みを厚くすることが容易であり、ソース・ドレイン領域の抵抗を低くして、オン電流を向上させることが可能である。
【0120】
但し、バルク領域1Bに形成したMISFETは、チャネル領域に不純物が導入されているため、MISFET毎にチャネル領域の状態(チャネル領域における不純物の配置状態)が変動する虞がある。しかしながら、バルク領域1Bには、半導体装置に形成すべきMISFETのうち、しきい値電圧の変動をある程度許容できるMISFETを形成し、しきい値電圧の変動を抑制することが重要なMISFETはSOI領域1Aに形成する。あるいは、バルク領域1Bには、半導体装置に形成すべきMISFETのうち、不純物配置のランダム性が低下してもしきい値電圧があまり変動しないMISFETを形成し、不純物配置のランダム性が低下するとしきい値電圧が変動しやすい(ばらつきやすい)MISFETはSOI領域1Aに形成する。これにより、バルク領域1Bに形成したMISFETにおいて、MISFET毎にチャネル領域の状態(チャネル領域における不純物の配置状態)が変動したとしても、それによって生じる不具合を抑制または防止することができる。
【0121】
また、本実施の形態では、半導体装置を構成する半導体基板を、SOI領域1Aとバルク領域1Bとを有する基板1Cに置き換え、形成すべき全てのMISFETのうち、一部(しきい値電圧の変動を抑制することが重要なMISFET)をSOI領域1Aに形成し、残りをバルク領域1Bに形成している。このため、半導体装置の設計変更が少なくて済み、設計変更にともなう時間や労力やコストを抑制することができる。
【0122】
このように、本実施の形態では、SOI領域1Aとバルク領域1Bとを有する基板1Cを用い、SOI領域1Aとバルク領域1Bのそれぞれに複数のMISFETを形成するが、SOI領域1Aに形成したMISFETのチャネル領域には不純物が導入され、バルク領域1Bに形成されたMISFETのチャネル領域には不純物が導入されているようにすることが重要である。
【0123】
また、本実施の形態では、SOI領域1Aでは、エクステンション領域EX1を形成するためのイオン注入とソース・ドレイン領域SD1を形成するためのイオン注入を行うが、ハロー領域を形成するためのイオン注入(ハローイオン注入)は行わない。一方、バルク領域1Bでは、ハロー領域を形成するためのイオン注入(ハローイオン注入P5a,P6a)を行う。
【0124】
ハローイオン注入によって、ハロー領域はチャネル領域(ゲート電極の直下の領域)の近くに形成される。このため、SOI領域1Aにおいて、ハロー領域を形成するためのイオン注入(ハローイオン注入)を行った場合、チャネルドープイオン注入と、ウエル領域を形成するためのイオン注入とを行わなかったとしても、ハローイオン注入で導入した不純物に起因して、MISFET毎にチャネル領域の状態(チャネル領域における不純物の配置状態)が変動する可能性がある。これは、MISFET毎のしきい値電圧の変動を招く可能性がある。
【0125】
それに対して、本実施の形態においては、SOI領域1Aでは、ハローイオン注入を行わないため、MISFET毎にチャネル領域の状態(チャネル領域における不純物の配置状態)が変動するのを、更に的確に防止できる。これにより、SOI領域1Aに形成されたMISFETのしきい値電圧の変動を、更に的確に防止できる。
【0126】
また、SOI領域1Aでは、絶縁層3上の半導体層4にエクステンション領域EX1を形成しているため、SOI領域1Aに形成したMISFETは、バルク領域1Bに形成したMISFETに比べて、パンチスルー(短チャネル効果)が生じにくい。このため、SOI領域1Aでは、ハロー領域を形成するためのイオン注入(ハローイオン注入)を行わなくとも、絶縁層3上の半導体層4にエクステンション領域EX1を形成していることで、パンチスルー(短チャネル効果)を抑制または防止することができる。一方、バルク領域1Bでは、半導体基板2にエクステンション領域EX2,EX3を形成しているため、バルク領域1Bに形成したMISFETは、SOI領域1Aに形成したMISFETに比べて、パンチスルー(短チャネル効果)が生じやすい。このため、バルク領域1BにMISFETを形成する際には、ハロー領域HO2,HO3も形成することで、パンチスルー(短チャネル効果)を抑制または防止することができる。
【0127】
このように、本実施の形態では、SOI領域1Aとバルク領域1Bとを有する基板1Cを用い、半導体装置に形成すべきMISFETを、SOI領域1Aとバルク領域1Bとに振り分け、SOI領域1Aでは、MISFET毎にチャネル領域の状態(不純物の配置状態)が変動しないようにするために、必要最低限のイオン注入(エクステンション領域形成用のイオン注入およびソース・ドレイン領域形成用のイオン注入)のみを行う。一方、バルク領域1Bでは、チャネル領域の状態(不純物の配置状態)が変動する可能性はあっても、それ以外の特性の向上を優先して、エクステンション領域形成用のイオン注入およびソース・ドレイン領域形成用のイオン注入に加えて、特性向上に必要なイオン注入(チャネルドープイオン注入、ウエル領域形成用のイオン注入およびハローイオン注入)も行う。そして、しきい値電圧の変動を抑制することが重要なMISFETをSOI領域1Aに配置し、SOI領域1Aに形成するMISFETに比べてしきい値電圧の変動を許容できるMISFETをバルク領域1Bに配置することで、半導体装置全体の性能を向上させることができる。
【0128】
なお、SOI領域1Aに形成されたMISFETのチャネル領域には不純物が導入されていないが、これは不純物を意図的には導入(添加、ドープ)していないことを意味する。このため、意図しない極微量の不純物が含まれる場合を除外するものではない。一方、バルク領域1Bに形成されたMISFETのチャネル領域には不純物が導入されているが、これは、不純物を意図的に導入(添加、ドープ)したことを意味する。このため、バルク領域1Bに形成されたMISFETのチャネル領域の不純物濃度は、SOI領域1Aに形成されたMISFETのチャネル領域の不純物濃度よりも十分に大きい。
【0129】
(実施の形態2)
本実施の形態は、上記実施の形態1の変形例に対応している。図23〜図28は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0130】
本実施の形態2においては、多結晶シリコン膜(ドープトポリシリコン膜)のようなシリコン膜8と窒化シリコン膜などの絶縁膜9を形成して上記実施の形態1の上記図9と同様の図23の構造を得るまでは、上記実施の形態1と同様の工程を行う。但し、上記実施の形態1では、SOI領域1Aに形成するMISFETのしきい値を制御するために、SOI基板1の半導体基板2にイオン注入P1で不純物イオンが導入していたが、本実施の形態では、このイオン注入P1は行なわなくともよい。このため、シリコン膜8およびその上の絶縁膜9を形成する工程までにおいて、上記フォトレジストパターンPR1の形成工程と上記イオン注入P1とを行なわない点が、本実施の形態の製造工程は、上記実施の形態1の製造工程と相違し、それ以外は同様である。
【0131】
シリコン膜8およびその上の絶縁膜9を形成した後、本実施の形態では、図24に示されるように、フォトレジストパターンPR11を基板1Cの主面上にフォトリソグラフィ技術を用いて形成する。このフォトレジストパターンPR11は、バルク領域1Bを覆い、かつ、SOI領域1Aを露出するように形成される。
【0132】
次に、フォトレジストパターンPR11をエッチングマスクとして用いて、SOI領域1Aにおいて、絶縁膜9の全部と、シリコン膜8の一部(上部)とを除去する。この際、SOI領域1Aでは、絶縁膜9は全部除去するが、シリコン膜8は、厚み方向の一部(上部)を除去し、エッチング後にシリコン膜8が層状に残存するようにし、一方、バルク領域1Bでは、フォトレジストパターンPR11がエッチングマスクとして機能するため、絶縁膜9およびシリコン膜8は除去されずに残存する。SOI領域1Aに残存するシリコン膜8を、以下ではシリコン膜8aと称することとする。図24には、この段階が示されている。
【0133】
エッチングの前と後とを比べると、SOI領域1Aではシリコン膜8の厚みが薄くなり、バルク領域1Bではシリコン膜8の厚みは変わらない。従って、エッチング前は、SOI領域1Aのシリコン膜8の厚みとバルク領域1Bのシリコン膜8の厚みがほぼ同じであったが、エッチング後は、SOI領域1Aのシリコン膜8aの厚みは、バルク領域1Bのシリコン膜8の厚みよりも薄くなる。エッチング後において、SOI領域1Aのシリコン膜8aの厚みは例えば10〜20nm程度とすることができ、また、バルク領域1Bのシリコン膜8の厚みは例えば100〜120nm程度とすることができる。その後、フォトレジストパターンPR11は除去される。
【0134】
次に、図25に示されるように、基板1C上に、メタルゲート電極用の金属膜31を形成する。金属膜31は、SOI領域1Aではシリコン膜8a上に形成され、バルク領域1Bでは絶縁膜9上に形成される。
【0135】
ここで用いられる金属膜31は、金属伝導を示す導電膜であり、単体の金属膜(純金属膜)や合金膜だけでなく、金属伝導を示す金属化合物膜(窒化金属膜や炭化金属膜など)も使用可能であり、これらを総称して金属膜31と呼ぶものとする。このため、金属膜31は、金属級に抵抗率が低い。金属膜31としては、例えば、チタン(Ti)膜、窒化チタン(TiN)膜、タングステン(W)膜、または窒化タングステン(WN)膜などを用いることができる。
【0136】
次に、図26に示されるように、フォトレジストパターンPR12を基板1Cの主面上(すなわち金属膜31上)にフォトリソグラフィ技術を用いて形成する。このフォトレジストパターンPR12は、SOI領域1Aを覆い、かつ、バルク領域1Bを露出するように形成される。
【0137】
次に、フォトレジストパターンPR12をエッチングマスクとして用いて、バルク領域1Bの金属膜31を除去する。これにより、バルク領域1Bでは絶縁膜9が露出されるが、SOI領域1Aでは、フォトレジストパターンPR12がエッチングマスクとして機能するため、金属膜31は除去されずに残存する。
【0138】
次に、形成すべきゲート電極と同様のパターン形状を有するフォトレジストパターン(図示せず)を基板1C上(すなわちSOI領域1Aの金属膜31上およびバルク領域1Bの絶縁膜9上)にフォトリソグラフィ技術を用いて形成する。それから、このフォトレジストパターンをエッチングマスクとして用いることにより、SOI領域1Aにおいて、金属膜31およびシリコン膜8aをドライエッチングしてパターニングすることによりゲート電極GE1を形成し、バルク領域1Bにおいて、絶縁膜9およびシリコン膜8をドライエッチングしてパターニングすることによりゲート電極GE2,GE3を形成する。その後、このフォトレジストパターンは除去される。図27は、この段階が示されている。
【0139】
本実施の形態では、図27に示されるように、SOI領域1Aに形成されたゲート電極GE1は、パターニングされたシリコン膜8a(下層側)および金属膜31(上層側)の積層構造(積層膜)によって形成され、バルク領域1Bに形成されたゲート電極GE2,GE3は、パターニングされたシリコン膜8によって形成される。
【0140】
上記実施の形態1と同様、本実施の形態においても、ゲート電極GE1は、SOI領域1Aにおいて、半導体層4上にゲート絶縁膜7aを介して形成される。同様に、ゲート電極GE2は、バルク領域1Bの高耐圧MIS形成領域1BHにおいて、半導体基板2(p型ウエルPW1)上にゲート絶縁膜7bを介して形成される。同様に、ゲート電極GE3は、バルク領域1Bの低耐圧MIS形成領域1BLにおいて、半導体基板2(p型ウエルPW2)上にゲート絶縁膜7cを介して形成される。
【0141】
また、ゲート電極GE1,GE2,GE3を形成するためにシリコン膜8,8aをドライエッチングする際には、各領域(SOI領域1Aおよびバルク領域1B)のゲート絶縁膜が露出した段階でエッチングを停止し、基板1C(SOI領域1Aの半導体層4およびバルク領域1Bの半導体基板2)が過剰にエッチングされないようにすることが好ましく、この条件を満たすように、金属膜31の形成膜厚を最適化しておくことが好ましい。その後、絶縁膜9はエッチングなどにより除去される。
【0142】
また、他の形態として、ゲート電極GE1,GE2,GE3を形成する際に、まずフォトレジストパターンPR13をエッチングマスクとして用いて金属膜31および絶縁膜9をパターニング(ドライエッチング)してから、パターニングされた絶縁膜9および金属膜31をマスクとして用いてシリコン膜8,8aをパターニング(ドライエッチング)することもできる。
【0143】
ゲート電極GE1,GE2,GE3を形成した後の工程は、上記実施の形態1と同様である。すなわち、上記エクステンション領域EX1,EX2,EX3を形成し、上記ハロー領域HO2,HO3を形成し、上記サイドウォールSWを形成し、上記エピタキシャル成長層10を形成し、上記ソース・ドレイン領域SD1,SD2,SD3を形成し、上記金属シリサイド層12を形成する。それから、上記絶縁膜21を形成し、上記コンタクトホール22を形成し、上記プラグ23を形成し、上記絶縁膜24を形成し、上記配線M1を形成する。図28は、本実施の形態において、配線M1形成工程までを行った段階の要部断面図であり、上記実施の形態1の上記図22に対応するものである。但し、本実施の形態では、ゲート電極GE1が、シリコン膜8aとシリコン膜8a上の金属膜31との積層構造を有しているため、ゲート電極GE1上には、上記エピタキシャル成長層10および上記金属シリサイド層12は形成されない。
【0144】
本実施の形態は、SOI領域1Aに形成するゲート電極GE1が、シリコン膜8aとシリコン膜8a上の金属膜31との積層構造を有している点が、上記実施の形態1と相違している。
【0145】
上記実施の形態1では、SOI領域1Aにおける絶縁層3の下部の基板領域(上記半導体領域6)の不純物濃度を調整することによって、SOI領域1AのMISFETのしきい値電圧を調整している。一方、本実施の形態では、ゲート電極GE1を、シリコン膜8aとシリコン膜8a上の金属膜31との積層構造とし、金属膜31の材料を各種金属材料から選択することで、金属膜31の仕事関数を調整することができるため、ゲート電極GE1を有するMISFETのしきい値電圧を制御することが可能である。
【0146】
このように、上記実施の形態1と同様、本実施の形態においても、SOI領域1Aでは、チャネルドープイオン注入を行わなくとも、MISFETのしきい値電圧を調整することが可能である。また、金属膜31の材料の種類でSOI領域1AのMISFETのしきい値電圧を調整することができるため、本実施の形態では、上記イオン注入P1によって上記半導体領域6を形成しなくともよい。
【0147】
(実施の形態3)
図29〜図32は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0148】
本実施の形態では、図29に示されるように、まず、単結晶シリコンなどからなる半導体基板2を準備する。それから、半導体基板2の主面(表面)に酸化シリコン膜などの表面保護用の絶縁膜41を形成してから、絶縁膜41上に、窒化シリコン膜などのハードマスク用の絶縁膜42を形成する。
【0149】
次に、図30に示されるように、バルク領域1Bを覆い、かつSOI領域1Aを露出するようなフォトレジストパターンPR21を絶縁膜42上にフォトリソグラフィ技術を用いて形成してから、このフォトレジストパターンPR21をエッチングマスクとして用いて、SOI領域1Aの絶縁膜42をエッチングして除去する。
【0150】
次に、フォトレジストパターンPR21をイオン注入阻止マスクとして用いて、SOI領域1Aの半導体基板2に酸素イオンをイオン注入する。この酸素イオンのイオン注入を、図30では、を矢印で模式的に示し、以下ではイオン注入P11と称することとする。また、図30では、イオン注入P11で導入された酸素イオンを、×印で模式的に示し、符号43を付してある。イオン注入P11の際、フォトレジストパターンPR21は、バルク領域1Bへのイオン注入阻止マスクとして機能するため、バルク領域1Bの半導体基板2には、酸素イオンは導入(イオン注入)されない。イオン注入P11の後、フォトレジストパターンPR21は除去される。
【0151】
イオン注入P11では、半導体基板2の表面(半導体基板2と絶縁膜41との界面)から所定の深さ位置に酸素イオンが局所的に注入(導入)されるように、イオン注入エネルギーを調整する。例えば、酸素イオンを100keVの注入エネルギーで1×1016cm−2の注入量で注入する。これにより、半導体基板2の表面から所定の深さ位置(例えば50nm程度)までは、酸素イオンが注入されないようにすることができる。
【0152】
次に、半導体基板2に対して熱処理を施すことで、上記イオン注入P11で導入された酸素イオン43を半導体基板2と反応させて、図31に示されるように、酸化シリコンからなる絶縁層3aを形成する。この熱処理は、例えば、1100℃程度で6時間程度の熱処理とすることができる。上記イオン注入P11において酸素イオン43はSOI領域1Aの半導体基板2には注入されるが、バルク領域1Bの半導体基板2には注入されないため、絶縁層3aは、SOI領域1Aの半導体基板2中に形成されるが、バルク領域1Bの半導体基板2には形成されない。
【0153】
SOI領域1Aにおいて、絶縁層3aは、半導体基板2の表面ではなく、半導体基板2の表面から所定の深さ位置に形成される。すなわち、SOI領域1Aにおいて、半導体基板2の厚み方向の内部(途中)に絶縁層3aが形成された状態となる。このため、絶縁層3aの上部には、所定の厚みの半導体基板2が残存し、絶縁層3aの下部にも半導体基板2が残存し、絶縁層3aの主面(表面)は半導体基板2の主面(表面)に略平行である。
【0154】
SOI領域1Aにおいて、絶縁層3aの上部の半導体基板2を、以下では半導体層4aと称することとする。半導体層4aは、半導体基板2と同様の構成を有しており、半導体基板2が単結晶シリコンからなる場合は、半導体層4aも単結晶シリコンからなる。半導体層4aの厚みは、好ましくは10〜30nm程度とすることができる。また、絶縁層3aの厚みは、例えば20〜60nm程度とすることができ、絶縁層3aの下部の半導体基板2の厚みは、例えば300〜750μm程度とすることができる。
【0155】
以下では、内部に絶縁層3aを形成した半導体基板2全体を、基板1C1と称することとする。SOI領域1Aにおいては、基板1C1は、半導体基板2とその上の絶縁層3aとその上の半導体層4aとの積層構造(SOI構造)を有し、バルク領域1Bにおいては、基板1C1は、SOI構造を有さずに、半導体基板2で構成されている。
【0156】
次に、図32に示されるように、バルク領域1Bの絶縁膜42を除去してから、基板1C1に素子分離領域(素子分離構造)5を、上記実施の形態1と同様にして形成する。この素子分離領域5は、素子分離溝5aに埋め込まれた絶縁体(例えば酸化シリコン)により形成されている。
【0157】
SOI領域1Aにおいて、素子分離溝5aおよびそれを埋めている素子分離領域5は、半導体層4aおよび絶縁層3aを貫通して、その底部が半導体基板2に達しており、素子分離領域5の下部は、半導体基板2内に位置している。バルク領域1Bにおいて、素子分離溝5aおよびそれを埋めている素子分離領域5は、半導体基板2に形成されている。
【0158】
以降の工程(素子分離領域5形成工程よりも後の工程)は、上記実施の形態1または上記実施の形態2と基本的には同じである。このため、製造された半導体装置の構成も、上記実施の形態1または上記実施の形態2と基本的には同じである。但し、本実施の形態では、バルク領域1Bに絶縁層3aは形成されていないため、上記図4の工程(バルク領域1Bの上記半導体層4および上記絶縁層3を除去する工程)は、本実施の形態では行わない。すなわち、基板1C1は上記基板1Cに相当し、絶縁層3aは上記絶縁層3に相当し、半導体層4aは上記半導体層4に相当する。
【0159】
本実施の形態の基板1C1を用いて上記実施の形態1の製造工程を行う場合は、上記実施の形態1の製造工程の説明において、上記基板1Cを基板1C1と読み替え、上記絶縁層3を絶縁層3aと読み替え、上記半導体層4を半導体層4aと読み替えればよい。上記イオン注入P1は、基板1C1のSOI領域1Aの半導体基板2(絶縁層3aの下部の半導体基板2)に対して行ない、SOI領域1Aの半導体層4a(絶縁層3aの上部の半導体層4a)には、不純物イオンが注入されないようにする。本実施の形態の基板1C1を用いて上記実施の形態2の製造工程を行う場合は、上記実施の形態2の製造工程の説明において、上記基板1Cを基板1C1と読み替え、上記絶縁層3を絶縁層3aと読み替え、上記半導体層4を半導体層4aと読み替えればよい。
【0160】
本実施の形態は、高価なSOI基板を用いなくとも、SOI領域1Aとバルク領域1Bとを有する基板1C1を用意することができる。このため、上記実施の形態1,2で得られる効果に加えて、更に、半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0161】
(実施の形態4)
図33〜図37は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0162】
本実施の形態では、図33に示されるように、まず、単結晶シリコンなどからなる半導体基板2を準備する。それから、半導体基板2の主面(表面)に酸化シリコン膜などの表面保護用の絶縁膜51を形成する。
【0163】
次に、バルク領域1Bを覆い、かつSOI領域1Aを露出するようなフォトレジストパターン(図示せず)を絶縁膜51上にフォトリソグラフィ技術を用いて形成してから、このフォトレジストパターンをエッチングマスクとして用いて、図34に示されるように、SOI領域1Aの絶縁膜51をエッチングして除去する。その後、このフォトレジストパターンは除去する。
【0164】
これにより、SOI領域1Aにおいては、半導体基板2の表面(単結晶シリコン面)が露出され、バルク領域1Bにおいては、半導体基板2の表面上に絶縁膜51が存在した状態となる。
【0165】
次に、SOI領域1Aにおける半導体基板2の表面(単結晶シリコン面)上に、エピタキシャル成長により、半導体層4bを形成する。半導体層4bは、半導体基板2とは異なる半導体材料(の単結晶)からなり、例えば、シリコンゲルマニウム混晶、シリコンカーバイド混晶、またはガリウムヒ素などからなる。半導体層4bは、絶縁膜51上には形成されないため、バルク領域1Bには形成されない。図34は、この段階が示されている。
【0166】
次に、図35に示されるように、バルク領域1Bを覆い、かつSOI領域1Aを露出するようなフォトレジストパターンPR31をバルク領域1Bの絶縁膜51上にフォトリソグラフィ技術を用いて形成する。それから、このフォトレジストパターンPR31をイオン注入阻止マスクとして用いて、SOI領域1Aの半導体基板2に酸素イオンをイオン注入する。この酸素イオンのイオン注入を、図35では、を矢印で模式的に示し、以下ではイオン注入P11aと称することとする。また、図35では、イオン注入P11aで導入された酸素イオンを、×印で模式的に示し、符号43aを付してある。イオン注入P11aの前に、SOI領域1Aの半導体層4bの表面に表面保護用の絶縁膜(図示せず)を形成してから、イオン注入P11aを行なうこともできる。イオン注入P11aの際、フォトレジストパターンPR31は、バルク領域1Bへのイオン注入阻止マスクとして機能するため、バルク領域1Bの半導体基板2には、酸素イオンは導入(イオン注入)されない。イオン注入P11aの後、フォトレジストパターンPR31は除去される。
【0167】
イオン注入P11aでは、半導体層4bの少なくとも上層部分には酸素イオンが注入されないようにする。すなわち、SOI領域1Aにおいて、半導体層4bの表面から所定の深さ位置に酸素イオンが局所的に注入(導入)されるように、イオン注入エネルギーを調整する。例えば、酸素イオンを100keVの注入エネルギーで1×1016cm−2の注入量で注入する。これにより、半導体層4bの表面から所定の深さ位置(例えば50nm程度)までは、酸素イオンが注入されないようにすることができる。
【0168】
次に、半導体基板2に対して熱処理を施すことで、上記イオン注入P11aで導入された酸素イオン43aを半導体基板2や半導体層4bと反応させて、図36に示されるように、酸化物からなる絶縁層3bを形成する。この熱処理は、例えば、1100℃程度で6時間程度の熱処理とすることができる。上記イオン注入P11aにおいて酸素イオン43aはSOI領域1Aの半導体基板2(場合によっては半導体層4bの下層部分も)には注入されるが、バルク領域1Bの半導体基板2には注入されないため、絶縁層3bは、SOI領域1Aの半導体基板2に形成されるが、バルク領域1Bの半導体基板2には形成されない。
【0169】
SOI領域1Aにおいて、絶縁層3bは、半導体層4bの表面ではなく、半導体層4bの表面から所定の深さ位置に形成される。すなわち、SOI領域1Aにおいて、半導体基板2および半導体層4bの積層構造の厚み方向の内部(途中)に絶縁層3bが形成された状態となる。この際、絶縁層3bの上部には、所定の厚みの半導体層4bが残存し、絶縁層3bの下部にも半導体基板2が残存し、絶縁層3bの主面(表面)は半導体基板2の主面(表面)に略平行である。
【0170】
絶縁層3bの上部の半導体層4bの厚みは、好ましくは20〜40nm程度とすることができる。また、絶縁層3bの厚みは、例えば10〜50nm程度とすることができ、絶縁層3bの下部の半導体基板2の厚みは、例えば300〜750μm程度とすることができる。
【0171】
以下では、半導体層4bおよび絶縁層3bを形成した半導体基板2全体を、基板1C2と称することとする。SOI領域1Aにおいては、基板1C2は、半導体基板2とその上の絶縁層3bとその上の半導体層4bとの積層構造(SOI構造)を有し、バルク領域1Bにおいては、基板1C2は、SOI構造を有さずに、半導体基板2で構成されている。
【0172】
次に、図37に示されるように、バルク領域1Bの絶縁膜51を除去してから、基板1C2に素子分離領域(素子分離構造)5を、上記実施の形態1と同様にして形成する。この素子分離領域5は、素子分離溝5aに埋め込まれた絶縁体(例えば酸化シリコン)により形成されている。
【0173】
SOI領域1Aにおいて、素子分離溝5aおよびそれを埋めている素子分離領域5は、半導体層4bおよび絶縁層3bを貫通して、その底部が半導体基板2に達しており、素子分離領域5の下部は、半導体基板2内に位置している。バルク領域1Bにおいて、素子分離溝5aおよびそれを埋めている素子分離領域5は、半導体基板2に形成されている。
【0174】
以降の工程(素子分離領域5形成工程よりも後の工程)は、上記実施の形態1または上記実施の形態2と基本的には同じである。このため、製造された半導体装置の構成も、上記実施の形態1または上記実施の形態2と基本的には同じである。但し、本実施の形態では、バルク領域1Bに絶縁層3bは形成されていないため、上記図4の工程(バルク領域1Bの上記半導体層4および上記絶縁層3を除去する工程)は、本実施の形態では行わない。すなわち、基板1C2は上記基板1Cに相当し、絶縁層3bは上記絶縁層3に相当し、半導体層4bは上記半導体層4に相当する。
【0175】
本実施の形態の基板1C2を用いて上記実施の形態1の製造工程を行う場合は、上記実施の形態1の製造工程の説明において、上記基板1Cを基板1C2と読み替え、上記絶縁層3を絶縁層3bと読み替え、上記半導体層4を半導体層4bと読み替えればよい。上記イオン注入P1は、基板1C2のSOI領域1Aの半導体基板2(絶縁層3bの下部の半導体基板2)に対して行ない、SOI領域1Aの半導体層4b(絶縁層3bの上部の半導体層4b)には、不純物イオンが注入されないようにする。本実施の形態の基板1C2を用いて上記実施の形態2の製造工程を行う場合は、上記実施の形態2の製造工程の説明において、上記基板1Cを基板1C2と読み替え、上記絶縁層3を絶縁層3bと読み替え、上記半導体層4を半導体層4bと読み替えればよい。
【0176】
本実施の形態は、高価なSOI基板を用いなくとも、SOI領域1Aとバルク領域1Bとを有する基板1C2を用意することができる。このため、上記実施の形態1,2で得られる効果に加えて、更に、半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0177】
また、本実施の形態では、SOI領域1Aの半導体層4bを、半導体基板2とは異なる半導体材料(の単結晶)、例えば、シリコンゲルマニウム混晶、シリコンカーバイド混晶、またはガリウムヒ素などで形成したことにより、SOI領域1Aに形成する回路の特性をより向上させることが可能になる。また、SOI領域1Aの半導体層4bを、直接遷移型の半導体材料や半導体超格子構造、例えばGaAs、InP、GaN、AlGaAs、GaP、Si/Ge超格子、などで形成すれば、SOI領域1Aに形成する回路に、光通信、発光または受光機能などを持たせることができる。
【0178】
(実施の形態5)
図38は、上記実施の形態1〜4を適用した本実施の形態の半導体チップ(半導体装置)CP1の全体構成を示す平面図である。
【0179】
図38に示される本実施の形態の半導体チップ(半導体装置)CP1は、SRAM(Static Random Access Memory)などのメモリセルアレイが形成されたメモリ領域(メモリ回路領域、メモリセルアレイ領域、SRAM領域)MRYと、メモリ以外の回路(周辺回路)が形成された周辺回路領域PCRとを有している。周辺回路領域PCRは、例えば、アナログ回路が形成されたアナログ回路領域や、制御回路(論理回路)が形成されたCPU領域などを含んでいる。メモリ領域MRYと周辺回路領域PCRとの間や、周辺回路領域PCR同士の間は、半導体チップCP1の内部配線層を介して必要に応じて電気的に接続されている。また、半導体チップCP1の主面(表面)の周辺部には、半導体チップCP1の主面の四辺に沿って複数のパッド電極PDが形成されている。各パッド電極PDは、半導体チップCP1の内部配線層を介してメモリ領域MRYや周辺回路領域PCRなどに電気的に接続されている。図38は、平面図であるが、理解を簡単にするために、SOI構造を有するSOI領域1Aにハッチングを付して示してある。
【0180】
本実施の形態の半導体チップ(半導体装置)CP1に上記実施の形態1〜4を適用する場合、メモリ領域MRYを上記SOI領域1Aに形成(配置)し、周辺回路領域PCRを上記バルク領域1Bに形成(配置)する。すなわち、メモリ領域MRYと、メモリ以外の回路が形成された周辺回路領域PCRとを有する半導体チップCP1を構成する基板を、SOI領域1Aとバルク領域1Bとを有する基板(上記基板1C,1C1,1C2のいずれか)とし、メモリ領域MRYは、SOI領域1Aの半導体層(上記半導体層4,4a,4bのいずれかに対応)に形成し、周辺回路領域PCRは、バルク領域1Bの半導体基板2に形成する。つまり、上記実施の形態1〜4において、半導体チップCP1が有する複数のMISFETのうち、メモリ(メモリ領域MRY)を構成するMISFETをSOI領域1Aの半導体層(上記半導体層4,4a,4bのいずれかに対応)に形成し、メモリ以外の回路(周辺回路領域PCR)を構成するMISFETは、バルク領域1Bの半導体基板2に形成する。従って、上記実施の形態1〜4において、SOI領域1Aに形成されたMISFETは、メモリ領域MRYを構成するMISFETであり、バルク領域1Bに形成されたMISFETは、周辺回路領域PCRを構成するMISFETである。
【0181】
メモリ領域MRYは、MISFET毎にしきい値電圧が変動してしまうと、メモリの正確な動作が行えなくなるため、しきい値電圧の変動を可能な限り抑制することが望まれる。また、メモリセルを構成するMISFET(特にSRAMを構成するMISFET)は、メモリ以外の回路を構成するMISFETに比べて微細化されている。MISFET毎にチャネル領域の状態(チャネル領域における不純物の配置状態)が変動した場合、微細化されているMISFET(ゲート面積の小さなMISFET)ほど、しきい値電圧の変動が大きくなる。このため、メモリ領域MRYのMISFETは、周辺回路領域PCRのMISFETに比べて、チャネル領域における不純物の配置状態の変動(ランダムばらつき)に起因したしきい値電圧の変動が発生しやすい。
【0182】
上記実施の形態1で説明したように、しきい値電圧の変動を抑制することが重要なMISFETをSOI領域1Aに配置し、SOI領域1Aに形成するMISFETに比べてしきい値電圧の変動を許容できるMISFETをバルク領域1Bに配置するが、本実施の形態では、前者のMISFETがメモリ領域MRYのMISFETに対応し、後者のMISFETが周辺回路領域PCRのMISFETに対応している。
【0183】
すなわち、しきい値電圧の変動を抑制することが重要なMISFETはメモリ領域MRYのMISFETであるため、メモリ領域MRYをSOI領域1Aに配置(形成)し、周辺回路領域PCRはメモリ領域MRYに比べてMISFETのしきい値電圧の変動を許容できるか、あるいは、しきい値電圧の変動が生じにくいため、周辺回路領域PCRはバルク領域1Bに配置(形成)する。
【0184】
メモリ領域MRYのMISFETの構成および製造工程は、上記実施の形態1〜4でSOI領域1Aに形成したMISFETと同様であり、周辺回路領域PCRのMISFETの構成および製造工程は、上記実施の形態1〜4でバルク領域1Bに形成したMISFETと同様である。このため、周辺回路領域PCRのMISFETのチャネル領域には不純物が導入されるが、メモリ領域MRYのMISFETのチャネル領域には不純物が導入されない。すなわち、メモリ領域MRYのMISFETをSOI領域1Aに形成し、周辺回路領域PCRのMISFETをバルク領域1Bに形成するが、SOI領域1Aにメモリ領域MRYのMISFETを形成する際には、チャネルドープイオン注入を行わず(ウエル形成用のイオン注入も行わず)、バルク領域1Bに周辺回路領域PCRのMISFETを形成する際には、チャネルドープイオン注入を行う(ウエル形成用のイオン注入も行なう)。これにより、SOI領域1Aに形成されるメモリ領域MRYのMISFETのチャネル領域には不純物がイオン注入されないようにし、一方、バルク領域1Bに形成される周辺回路領域PCRのMISFETのチャネル領域には不純物がイオン注入される。また、SOI領域1Aにメモリ領域MRYのMISFETを形成する際には、ハローイオン注入を行わず、バルク領域1Bに周辺回路領域PCRのMISFETを形成する際には、ハローイオン注入を行う。
【0185】
従って、メモリ領域MRYのMISFETのしきい値電圧の変動を防止できるなど、上記実施の形態1で説明したような効果をメモリ領域MRYおよび周辺回路領域PCRを有する半導体チップCP1でも得ることができる。
【0186】
例えば、メモリ領域MRYのMISFETのしきい値電圧の変動を防止できることで、メモリ領域MRYに形成されているメモリの信頼性や性能を向上させることができるとともに、メモリ領域MRYに形成されているメモリセルの書き込みや読み出しのマージンが設計基準よりも良くなり、製品不良の発生率を大幅に低減することができる。また、周辺回路領域PCRのMISFETは、バルク領域1Bの半導体基板2に形成するため、SOI領域1Aに形成されることによる特性上の制限が付加されることがないため、特性(チャネル不純物のランダムばらつきに影響される特性以外の特性)の向上を図ることができる。周辺回路領域PCRは、バルク領域1Bの半導体基板2に形成するため、SOI領域1Aに形成されることによる再設計が不要となり、メモリ領域MRYのみの再設計で済み、設計変更にともなう時間や労力やコストを抑制することができる。
【0187】
また、メモリ領域MRYには、SRAM以外にも、フラッシュメモリなど、他の種類のメモリセルアレイを形成することもできる。但し、SRAMの場合は、特に素子が微細化され、しきい値電圧の変動の許容量も少ないため、メモリ領域MRYに形成されるメモリがSRAMの場合は、特に効果が大きい。
【0188】
(実施の形態6)
図39は、上記実施の形態1〜4を適用した本実施の形態の半導体チップ(半導体装置)CP2の全体構成を示す平面図である。
【0189】
図39に示される本実施の形態の半導体チップ(半導体装置)CP2は、SRAMなどのメモリセルアレイが形成されたメモリ領域MRYと、メモリ以外の回路(周辺回路)が形成された周辺回路領域PCRとを有している。半導体チップ(半導体装置)CP2には、メモリ領域MRYが主として形成されており、半導体チップ(半導体装置)CP2は、いわゆるメモリチップであり、上記実施の形態5の半導体装置CP1のようにアナログ回路領域やCPU領域は有していない。メモリ領域MRYと周辺回路領域PCRとの間は、半導体チップCP2の内部配線層を介して必要に応じて電気的に接続されている。また、半導体チップCP2の主面(表面)の周辺部には、半導体チップCP2の主面の二辺に沿って複数のパッド電極PDが形成されている。各パッド電極PDは、半導体チップCP2の内部配線層を介してメモリ領域MRYや周辺回路領域PCRなどに電気的に接続されている。図39は、平面図であるが、理解を簡単にするために、SOI構造を有するSOI領域1Aにハッチングを付して示してある。
【0190】
本実施の形態の半導体チップ(半導体装置)CP2においても、上記実施の形態5の半導体チップCP1と同様に、メモリ領域MRYを上記SOI領域1Aに形成(配置)し、周辺回路領域PCRを上記バルク領域1Bに形成(配置)する。すなわち、メモリ領域MRYと、メモリ以外の回路が形成された周辺回路領域PCRとを有する半導体チップCP2を構成する基板を、SOI領域1Aとバルク領域1Bとを有する基板(上記基板1C,1C1,1C2のいずれか)とし、メモリ領域MRYは、SOI領域1Aの半導体層(上記半導体層4,4a,4bのいずれかに対応)に形成し、周辺回路領域PCRは、バルク領域1Bの半導体基板2に形成する。つまり、上記実施の形態1〜4において、半導体チップCP2が有する複数のMISFETのうち、メモリ(メモリ領域MRY)を構成するMISFETをSOI領域1Aの半導体層(上記半導体層4,4a,4bのいずれかに対応)に形成し、メモリ以外の回路(周辺回路領域PCR)を構成するMISFETは、バルク領域1Bの半導体基板2に形成する。従って、上記実施の形態1〜4において、SOI領域1Aに形成されたMISFETは、メモリ領域MRYを構成するMISFETであり、バルク領域1Bに形成されたMISFETは、周辺回路領域PCRを構成するMISFETである。メモリ領域MRYのMISFETの構成および製造工程は、上記実施の形態1〜4でSOI領域1Aに形成したMISFETと同様であり、周辺回路領域PCRのMISFETの構成および製造工程は、上記実施の形態1〜4でバルク領域1Bに形成したMISFETと同様である。
【0191】
本実施の形態においても、MISFETのしきい値電圧の変動を抑制することが重要なメモリ領域MRYはSOI領域1Aに配置(形成)し、メモリ領域MRYに比べてMISFETのしきい値電圧の変動を許容できるか、あるいは、しきい値電圧の変動が生じにくい周辺回路領域PCRは、バルク領域1Bに配置(形成)する。バルク領域1Bに配置(形成)された周辺回路領域PCRのMISFETのチャネル領域には不純物が導入されるが、SOI領域1Aに配置(形成)されたメモリ領域MRYのMISFETのチャネル領域には不純物が導入されないため、メモリ領域MRYのMISFETのしきい値電圧の変動を防止できるなど、上記実施の形態1で説明したような効果を本実施の形態でも得ることができる。従って、上記実施の形態5と同様の効果を得ることができる。
【0192】
(実施の形態7)
図40〜図57は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0193】
本実施の形態では、図40に示されるように、まず、単結晶シリコン(例えばp型の単結晶シリコン)などからなる半導体基板2を準備する。それから、半導体基板2の主面(表面)に酸化シリコン膜などの表面保護用の絶縁膜61を形成する。
【0194】
次に、図41に示されるように、フォトレジストパターンPR41を絶縁膜61上にフォトリソグラフィ技術を用いて形成する。このフォトレジストパターンPR41は、バルク領域1B全体を覆い、かつ、SON(SON:Silicon On Nothing)領域1Dのうち、空洞形成予定領域(後で空洞CAVが形成される領域を空洞形成予定領域と称する)を露出し、他の領域(空洞形成予定領域以外の領域)を覆うように形成される。なお、図40〜図57において、SON領域1Dのうち、符号1D1で示された断面領域には、後で形成されるゲート電極GE1のゲート長方向に平行な断面が示され、符号1D2で示された断面領域には、後で形成されるゲート電極GE1のゲート幅方向に平行な断面が示されている。
【0195】
次に、フォトレジストパターンPR41をエッチングマスクとして用いて、SON領域1Dの絶縁膜61をエッチングして除去する。その後、フォトレジストパターンPR41は除去される。
【0196】
これにより、SON領域1Dのうち、空洞形成予定領域では絶縁膜61が除去されて半導体基板2の表面(単結晶シリコン面)が露出され、他の領域(空洞形成予定領域以外の領域)は半導体基板2の表面上に絶縁膜61が存在した状態となり、一方、バルク領域1Bは全体が半導体基板2の表面上に絶縁膜61が存在した状態となる。なお、空洞形成予定領域とは、後で空洞CAVが形成される領域に対応する。
【0197】
次に、図42に示されるように、SOI領域1Aにおける半導体基板2の露出部分(単結晶シリコンが露出した部分)上に、エピタキシャル成長により、半導体層62を選択的に成長させる。半導体層62は、半導体基板2とは異なる半導体材料(の単結晶)からなり、例えばシリコンゲルマニウムなどからなる。半導体層62は、半導体基板2が露出した部分(単結晶シリコンが露出した部分)上には形成されるが、絶縁膜61上には形成されない。このため、バルク領域1B全体に半導体層62が形成されず、また、SON領域1Dでも、空洞形成予定領域以外には半導体層62が形成されず、SON領域1Dのうち、空洞形成予定領域に半導体層62が選択的に形成される。
【0198】
次に、図43に示されるように、SON領域1Dおよびバルク領域1Bの絶縁膜61を除去してから、シリコンのエピタキシャル成長により、半導体層63を形成する。半導体層63は、シリコン層(単結晶シリコン層)からなる。バルク領域1Bでは、半導体基板2の表面上に半導体層63が形成され、SON領域1Dのうち、空洞形成予定領域では、半導体層62上に半導体層63が形成され、空洞形成予定領域以外の領域では、半導体基板2の表面上に半導体層63が形成される。
【0199】
次に、図44に示されるように、素子分離領域(素子分離構造)5を形成する。この素子分離領域5は、素子分離溝5aに埋め込まれた絶縁体(例えば酸化シリコン)により形成される。素子分離溝5aおよびそれを埋めている素子分離領域5は、半導体層63を貫通して、その底部が半導体基板2に達しており、素子分離領域5の下部は、半導体基板2内に位置している。
【0200】
素子分離領域5は、半導体層63を貫通して底部が半導体基板2中に位置する素子分離溝5aを、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング技術などを用いて形成し、この素子分離溝5aに、成膜技術およびCMP技術などを用いて絶縁膜を埋め込むことで、形成することができる。
【0201】
この段階では、バルク領域1Bにおいて、素子分離領域5で規定(区画)された活性領域は、半導体基板2と半導体層63の積層構造となっており、SON領域1Dにおいて、素子分離領域5で規定(区画)された活性領域は、半導体基板2と半導体層63の積層構造となっている部分と、半導体基板2と半導体層62と半導体層63の積層構造となっている部分とがある。半導体基板2と半導体層62と半導体層63の積層構造となっている部分は、空洞形成予定領域に対応している。
【0202】
次に、図45に示されるように、素子分離領域5の上部をエッチングすることで、素子分離領域5の上面を後退させる(すなわち素子分離領域5の上面の高さ位置を低くする)。このエッチングは、素子分離領域5を構成する絶縁材料を選択的にエッチングできるような条件で行うことで、半導体層62,63はできるだけエッチングされないようにする。これにより、バルク領域1Bにおいて、素子分離領域5の上面は半導体層63の表面よりも低くなる。また、SON領域1Dにおいて、素子分離領域5の上面は半導体層62,63の各表面よりも低くなり、素子分離領域5の上面が後退した領域において、半導体層62の側面が露出される。
【0203】
次に、図46に示されるように、半導体層62を選択的にエッチングして除去する。このエッチングは、半導体層62を構成する絶縁材料を選択的にエッチングできるような条件で行い、半導体層63および半導体基板2はできるだけエッチングされないようにする。上述のように、素子分離領域5の上面を後退させて半導体層62の側面を露出されていたので、露出した側面側(断面領域1D2に示される側面側)から、半導体層62をエッチングすることができる。このため、半導体層62のエッチングは、等方性のエッチングを行い、例えば、半導体層62を選択的にエッチング可能なエッチング液を用いたウェットエッチングを行うことができる。
【0204】
半導体層62がエッチングされて除去されたことで、半導体層62が存在していた領域は、空洞CAVとなる。半導体層62は、バルク領域1Bには形成されず、SON領域1Dの空洞形成予定領域にだけ形成されていたので、空洞CAVは、バルク領域1Bには形成されず、SON領域1Dの空洞形成予定領域にだけ形成される。
【0205】
この段階の半導体基板2を、すなわち、空洞CAV、半導体層63および素子分離領域5が形成されている半導体基板2を、基板1Eと称することとする。SON領域1Dは、チャネル領域の下部に空洞CAVを有するMISFETが形成される領域であり、MISFETの形成位置に合わせて空洞CAVが形成されている。バルク領域1Bは、チャネル領域の下部に空洞CAVを有さないMISFETが形成される領域であり、空洞CAVは形成されておらず、バルク領域1Bでは、素子分離領域5上を除く半導体基板2上に半導体層63が形成されている。上記実施の形態1,2でバルク領域1Bが高耐圧MIS形成領域1BHと低耐圧MIS形成領域1BLとを有していたのと同様、本実施の形態においても、バルク領域1Bは高耐圧MIS形成領域1BHと低耐圧MIS形成領域1BLとを有することができるが、簡略化のために、高耐圧MIS形成領域1BHの図示および説明を省略し、バルク領域1Bを低耐圧MIS形成領域1BLとして図示および説明する。
【0206】
次に、表面の汚染防止のための薄い絶縁膜(スルー膜、ここでは図示せず)を基板1Eの表面(すなわちSON領域1Dおよびバルク領域1Bの半導体層63の表面)に形成してから、図47に示されるように、フォトレジストパターンPR3aを基板1Eの主面上にフォトリソグラフィ技術を用いて形成する。このフォトレジストパターンPR3aは、SON領域1Dを覆い、かつバルク領域1Bを露出するように形成される。このフォトレジストパターンPR3aは、SON領域1Dへのイオン注入阻止マスクとして機能することができる。
【0207】
次に、バルク領域1Bにおいて、半導体層63に、後で形成されるMISFETのしきい値調整用のイオン注入(すなわちチャネルドープイオン注入)P2aを行なう。チャネルドープイオン注入P2aによって、バルク領域1Bに形成されるMISFETのチャネル領域に不純物が導入(ドープ)される。なお、図47では、チャネルドープイオン注入P2aを矢印で模式的に示してある。SON領域1Dの半導体層63は、フォトレジストパターンPR3aで覆われているため、チャネルドープイオン注入P2aの際に不純物イオンは注入されない。その後、フォトレジストパターンPR3aは除去される。
【0208】
次に、図48に示されるように、上記実施の形態1と同様にして、バルク領域1Bの半導体層63および半導体基板2にp型ウエルPW1を形成する。
【0209】
本実施の形態では、バルク領域1Bの半導体層63や半導体基板2に対しては、ウエル領域形成のためのイオン注入を行うことができるが、SON領域1Dの半導体層63に対してはウエル領域形成のためのイオン注入を行なわない。このため、p型ウエルPW1を形成するためのイオン注入の際には、SON領域1Dは、イオン注入阻止マスクとしてのフォトレジストパターン(図示せず)で覆っておき、SON領域1Dの半導体層63に対しては不純物イオンが注入されないようにする。
【0210】
次に、例えばフッ酸(HF)水溶液を用いたウェットエッチングなどにより、基板1Eの表面(主面)を清浄化(不要な酸化膜などを除去)した後、図49に示されるように、SON領域1Dの半導体層63上にゲート絶縁膜7aを形成し、バルク領域1Bの半導体層63(p型ウエルPW1)上にゲート絶縁膜7bを形成する。ゲート絶縁膜7a,7bの厚みの関係や形成法は、上記実施の形態1と同様とすることができる。
【0211】
次に、図50に示されるように、基板1Eの主面全面上に(すなわちゲート絶縁膜7a,7b上に)、ゲート電極形成用の導電体膜として、多結晶シリコン膜(ドープトポリシリコン膜)のようなシリコン膜8を形成する。それから、シリコン膜8上に形成したフォトレジストパターン(図示せず)を用いてシリコン膜8をドライエッチングしてパターニングすることで、図51に示されるように、ゲート電極GE1,GE2を形成する。ゲート電極GE1,GE2は、パターニングされたシリコン膜8からなり、ゲート電極GE1は、SON領域1Dの半導体層63上にゲート絶縁膜7aを介して形成され、ゲート電極GE2は、バルク領域1Bの半導体層63(p型ウエルPW1)上にゲート絶縁膜7bを介して形成される。
【0212】
この際、SON領域1Dにゲート電極GE1が形成され、バルク領域1Bにゲート電極GE2が形成されるが、本実施の形態では、SON領域1Dに形成されたゲート電極GE1の直下には、ゲート絶縁膜7aおよび半導体層63を介して、空洞CAVが存在している。すなわち、SON領域1Dに形成されるMISFETのチャネル領域(すなわちゲート電極GE1の下に形成されるチャネル領域)の直下に空洞CAVが存在するようにしている。このため、上記半導体層62の形成工程(エピタキシャル成長工程)では、後で形成されるゲート電極GE1の直下に空洞CAVが形成されるように、上記半導体層62を形成する。一方、バルク領域1Bには空洞CAVは形成されていないため、バルク領域1Bに形成されるゲート電極GE2の直下には空洞CAVは存在しない。
【0213】
また、後述の図55などを参照すると分かるように、SON領域1Dにおいて、ゲート電極GE1の直下(すなわちチャネル領域の直下)の領域から、ゲート電極GE1の側壁上に形成されたサイドウォールSWの直下の領域にかけて、空洞CAVを延在させることができる。また、ソース・ドレイン領域SD1の直下にも空洞CAVを延在させることができるが、ソース・ドレイン領域SD1の直下には空洞CAVが延在していないようにすれば、空洞CAV上の半導体層63を保持しやすくなり、空洞CAVをより的確に形成することができるようになる。
【0214】
ゲート電極GE1,GE2,GE3を形成した後の工程は、上記実施の形態1と基本的には同じである。
【0215】
すなわち、上記実施の形態1と同様にして、図52に示されるように、上記エクステンション領域EX1,EX2を形成する。この際、エクステンション領域EX1は、SON領域1Dの半導体層63に形成され、エクステンション領域EX2は、バルク領域1Bのp型ウエルPW1に形成される。
【0216】
エクステンション領域EX2を形成するための上記イオン注入P5の前または後に、バルク領域1Bのp型ウエルPW1に対して、上記ハローイオン注入P5aを行い、上記ハロー領域HO2を形成する。一方、SON領域1Dの半導体層63に対してはハローイオン注入(エクステンション領域EX1のハロー領域を形成するためのイオン注入)は行なわない。
【0217】
次に、上記実施の形態1と同様にして、図53に示されるように、ゲート電極GE1,GE2の側壁上に、サイドウォールSWを形成する。
【0218】
次に、上記実施の形態1と同様にして、図54に示されるように、エピタキシャル成長層10を形成する。エピタキシャル成長層10は、SON領域1Dでは、ゲート電極GE1およびサイドウォールSWで覆われていない領域の半導体層63(エクステンション領域EX1)上と、ゲート電極GE1上とに形成され、バルク領域1Bでは、ゲート電極GE2およびサイドウォールSWで覆われていない領域の半導体層63(エクステンション領域EX2)上と、ゲート電極GE2上とに形成される。
【0219】
次に、上記実施の形態1と同様にして、図55に示されるように、ソース・ドレイン領域SD1,SD2を形成する。
【0220】
SON領域1Dにおいて、ソース・ドレイン領域SD1は、半導体層63のゲート電極GE1の両側の領域とその上のエピタキシャル成長層10とにわたって形成される。また、バルク領域1Bにおいて、ソース・ドレイン領域SD2は、半導体層63のゲート電極GE2の両側の領域とその上のエピタキシャル成長層10とにわたって形成される。バルク領域1Bに形成されるソース・ドレイン領域SD2、エクステンション領域EX2およびハロー領域HO2の各底部は、半導体層63よりも下の半導体基板2(p型ウエルPW1)中に位置していてもよい。
【0221】
次に、上記実施の形態1と同様にして図56に示されるように、金属シリサイド層12を形成する。金属シリサイド層12は、ソース・ドレイン領域SD1,SD2の上層(表層)部分と、ゲート電極GE1,GE2の上部のエピタキシャル成長層10の上層(表層)部分とに形成される。
【0222】
その後、上記実施の形態1と同様にして、基板1Eの主面上に絶縁膜(層間絶縁膜)21を形成し、絶縁膜21にコンタクトホール22を形成し、コンタクトホール22内にプラグ23を形成し、プラグ23が埋め込まれた絶縁膜21上に絶縁膜24を形成し、絶縁膜24に配線M1を形成する。図57は、本実施の形態において、配線M1形成工程までを行った段階の要部断面図であり、上記実施の形態1の上記図22に対応するものである。
【0223】
上記実施の形態1〜4では、SOI領域1Aとバルク領域1Bとを有する基板1C(または基板1C1,1C2)を用い、半導体装置に形成すべきMISFETを、SOI領域1Aとバルク領域1Bとに振り分けて配置していた。それに対して、本実施の形態では、SOI構造ではなく、SON構造を適用する。
【0224】
すなわち、本実施の形態の半導体装置は、チャネル領域の下部に空洞CAVが形成されている複数のMISFETと、チャネル領域の下部に空洞CAVが形成されていない複数のMISFETとが基板1E(半導体基板2)の主面に形成された半導体装置である。基板1EのSON領域1Dに形成されたMISFETが、チャネル領域の下部に空洞CAVが形成されているMISFETに対応し、基板1Eのバルク領域1Bに形成されたMISFETが、チャネル領域の下部に空洞CAVが形成されていないMISFETに対応する。
【0225】
上記実施の形態1〜4では、SOI領域1Aに形成されるMISFETのチャネル領域には不純物が導入されないようにし、バルク領域1Bに形成されるMISFETのチャネル領域には不純物が導入されるようにしていた。これと同様の概念で、本実施の形態では、チャネル領域の下部に空洞CAVが形成されているMISFET(すなわちSON領域1Dに形成されたMISFET)のチャネル領域には不純物が導入されないようにし、チャネル領域の下部に空洞CAVが形成されていないMISFET(すなわちバルク領域1Bに形成されたMISFET)のチャネル領域には不純物が導入されるようにする。つまり、MISFETのチャネル領域の下部に空洞CAVが存在する場合は、そのMISFETのチャネル領域には不純物が導入されておらず、MISFETのチャネル領域の下部に空洞CAVが存在しない場合は、そのMISFETのチャネル領域に不純物が導入されているようにする。
【0226】
従って、本実施の形態の製造工程においては、チャネル領域の下部に空洞CAVが形成されているMISFET(すなわちSON領域1Dに形成されたMISFET)を形成する際には、そのMISFETのチャネルに不純物がイオン注入されないようにする。このため、上述したように、SON領域1DのMISFET(すなわちチャネル領域の下部に空洞CAVが形成されているMISFET)については、チャネルドープイオン注入を行なわず、また、ウエル領域形成のためのイオン注入も行なわない。これにより、製造された半導体装置においては、下部に空洞CAVが形成されているMISFETのチャネル領域は、不純物が導入されていない状態となる。
【0227】
また、本実施の形態の製造工程においては、チャネル領域の下部に空洞CAVが形成されていないMISFET(すなわちバルク領域1Bに形成されたMISFET)を形成する際には、そのMISFETのチャネル領域に不純物がイオン注入される。このため、上述したように、バルク領域1BのMISFET(すなわちチャネル領域の下部に空洞CAVが形成されていないMISFET)については、チャネルドープイオン注入を行ない、また、ウエル領域形成のためのイオン注入も行なう。これにより、製造された半導体装置においては、下部に空洞CAVが形成されているMISFETのチャネル領域は、不純物が導入された状態となる。
【0228】
また、上記実施の形態1〜4では、バルク領域1Bに形成されるMISFETにはハロー領域(HO2,HO3)を形成するが、SOI領域1Aに形成されるMISFETにはハロー領域を形成しなかった。これと同様の概念で、本実施の形態においては、バルク領域1Bに形成されるMISFETにはハロー領域(HO2)を形成するが、SON領域1Dに形成されるMISFETにはハロー領域を形成しない。
【0229】
本実施の形態は、SOI領域1Aの代わりにSON領域1Dを適用しているが、この場合も、SON領域1DのMISFETのチャネル領域に不純物を導入しないことで、SON領域1DのMISFETのしきい値電圧の変動を防止することができる。一方、バルク領域1Bでは、チャネル領域に不純物が導入されているが、特性向上に必要なイオン注入(チャネルドープイオン注入、ウエル領域形成用のイオン注入およびハローイオン注入)を行える。そして、しきい値電圧の変動を抑制することが重要なMISFETをSOI領域1Aに配置し、SOI領域1Aに形成するMISFETに比べてしきい値電圧の変動を許容できるMISFETをバルク領域1Bに配置することで、半導体装置全体の性能を向上させることができる。
【0230】
また、上記実施の形態5,6の半導体チップCP1,CP2に本実施の形態を適用する場合、メモリ領域MRYをSON領域1Dとし、周辺回路領域PCRをバルク領域1Bとする。すなわち、メモリ領域MRYと、メモリ以外の回路が形成された周辺回路領域PCRとを有する半導体チップCP1(または半導体チップCP2)を構成する基板を、SON領域1Dとバルク領域1Bとを有する基板1Eとし、メモリ領域MRYは、SON領域1Dに形成し、周辺回路領域PCRは、バルク領域1Bに形成する。つまり、上記半導体チップCP1(または半導体チップCP2)が有する複数のMISFETのうち、メモリ(メモリ領域MRY)を構成するMISFETを、チャネル領域の下部に空洞CAVが形成されているMISFET(すなわちSON領域1Dに形成されたMISFET)とする。そして、メモリ以外の回路(周辺回路領域PCR)を構成するMISFETは、チャネル領域の下部に空洞CAVが形成されていないMISFET(すなわちバルク領域1Bに形成されたMISFET)とする。
【0231】
これにより、メモリ領域MRYのMISFETのしきい値電圧の変動を防止できることで、メモリ領域MRYに形成されているメモリの信頼性や性能を向上させることができるとともに、メモリ領域MRYに形成されているメモリセルの書き込みや読み出しのマージンが設計基準よりも良くなり、製品不良の発生率を大幅に低減することができる。また、周辺回路領域PCRのMISFETは、空洞CAVが無いバルク領域1Bに形成するため、空洞CAV上に形成されることによる特性上の制限が付加されることがないため、特性(チャネル不純物のランダムばらつきに影響される特性以外の特性)の向上を図ることができる。周辺回路領域PCRは、バルク領域1Bに形成するため、SON領域1Dに形成されることによる再設計が不要となり、メモリ領域MRYのみの再設計で済み、設計変更にともなう時間や労力やコストを抑制することができる。
【0232】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0233】
本発明は、半導体装置を製造する製造業に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0234】
1 SOI基板
1A SOI領域
1B バルク領域
1BH 高耐圧MIS形成領域
1BL 低耐圧MIS形成領域
1C,1C1,1C2,1E 基板
1D SON領域
1D1,1D2 断面領域
2 半導体基板
3,3a,3b 絶縁層
4,4a,4b 半導体層
5,5b 素子分離領域
5a 素子分離溝
6 半導体領域
7a,7b,7c ゲート絶縁膜
8,8a シリコン膜
9 絶縁膜
10 エピタキシャル成長層
12 金属シリサイド層
15,16 不純物
21 絶縁膜
22 コンタクトホール
23 プラグ
24 絶縁膜
31 金属膜
41,42 絶縁膜
43,43a 酸素イオン
51 絶縁膜
61 絶縁膜
62 半導体層
CAV 空洞
CP1,CP2 半導体チップ(半導体装置)
EX1,EX2,EX3 エクステンション領域
GE1,GE2,GE3 ゲート電極
HO2,HO3 ハロー領域
M1 配線
MRY メモリ領域
P1,P2,P2a,P3,P4,P5,P5a,P6,P6a イオン注入
P11,P11a イオン注入
PCR 周辺回路領域
PD パッド電極
PR1,PR2,PR3,PR3a フォトレジストパターン
PR4,PR5,PR6,PR7 フォトレジストパターン
PR11,PR12,PR21,PR31,PR41 フォトレジストパターン
PW1,PW2 p型ウエル
SD1,SD2,SD3 ソース・ドレイン領域
SW サイドウォール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層が埋め込まれたSOI構造を有する第1領域と、前記絶縁層が埋め込まれておらずSOI構造を有していない第2領域とを有する半導体基板に複数のMISFETが形成された半導体装置であって、
前記複数のMISFETのうち、前記第1領域に形成されたMISFETのチャネル領域には不純物が導入されておらず、前記第2領域に形成されたMISFETのチャネル領域には不純物が導入されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
メモリが形成されたメモリ領域と、メモリ以外の回路が形成された周辺回路領域とを有し、
前記メモリ領域は、前記半導体基板の前記第1領域に形成され、前記周辺回路領域は、前記第2領域に形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項2記載の半導体装置において、
前記半導体基板は、前記第1領域では、前記半導体基板と前記半導体基板上の前記絶縁層と前記絶縁層上の半導体層とが積層されたSOI構造を有しており、
前記複数のMISFETのうち、前記第1領域に形成されたMISFETのチャネル領域は、前記半導体層に形成され、
前記複数のMISFETのうち、前記第2領域に形成されたMISFETのチャネル領域は、前記半導体基板に形成されることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項3記載の半導体装置において、
前記メモリ領域には、SRAMが形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項4記載の半導体装置において、
前記第1領域の前記絶縁層の下の前記半導体基板における前記絶縁層に隣接する領域には不純物が導入されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
チャネル領域の下部に空洞が形成されている複数の第1MISFETと、チャネル領域の下部に空洞が形成されていない複数の第2MISFETとが、半導体基板の主面に形成された半導体装置であって、
前記複数の第1MISFETのチャネル領域には不純物が導入されておらず、
前記複数の第2MISFETのチャネル領域には不純物が導入されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
(a)絶縁層が埋め込まれたSOI構造を有する第1領域と、前記絶縁層が埋め込まれておらずSOI構造を有していない第2領域とを有する半導体基板を準備し、前記半導体基板の前記第1領域に第1MISFETを形成し、前記半導体基板の前記第2領域に第2MISFETを形成する工程、
を有する半導体装置の製造方法であって、
前記(a)工程は、前記第1領域に形成される前記第1MISFETのチャネル領域に不純物がイオン注入されないように行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程は、前記第2領域に形成される前記第2MISFETのチャネル領域に不純物がイオン注入されるように行なわれることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程で準備された前記半導体基板は、前記第1領域では、前記半導体基板と前記半導体基板上の前記絶縁層と前記絶縁層上の半導体層とが積層されたSOI構造を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程は、
(a1)前記第1領域の前記半導体層上に第1ゲート絶縁膜を介して前記第1MISFETの第1ゲート電極を形成し、前記第2領域の前記半導体基板上に第2ゲート絶縁膜を介して前記第2MISFETの第2ゲート電極を形成する工程、
を含み、
前記(a1)工程前に、前記第1領域の前記半導体層内に不純物をイオン注入しないことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程は、
(a2)前記(a1)工程前に、前記第2領域の前記半導体基板にウエル領域をイオン注入により形成する工程、
を更に含み、
前記(a1)工程では、前記ウエル領域上に前記第2ゲート絶縁膜を介して前記第2MISFETの前記第2ゲート電極を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程は、
(a3)前記(a1)工程前に、前記第2領域の前記半導体基板に、前記第2MISFETのしきい値調整用のチャネルドープイオン注入を行なう工程、
を更に含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程は、
(a4)前記(a1)工程後、前記第1領域において、前記第1ゲート電極をマスクとして前記半導体層にイオン注入を行ない、前記半導体層に前記第1MISFETのソースまたはドレイン用の半導体領域の一部として機能する第1半導体領域を形成する工程、
(a5)前記(a1)工程後、前記第2領域において、前記第2ゲート電極をマスクとして前記半導体基板にイオン注入を行ない、前記半導体基板に前記第2MISFETのソースまたはドレイン用の半導体領域の一部として機能する第2半導体領域を形成する工程、
(a6)前記(a1)工程後、前記第2領域において、前記第2ゲート電極をマスクとして前記半導体基板にイオン注入を行ない、前記第2半導体領域とは逆の導電型で、前記第2半導体領域を包み込むような第1ハロー領域を形成する工程、
(a7)前記(a4)、(a5)および(a6)工程後に、前記第1ゲート電極および前記第2ゲート電極の側壁上に側壁絶縁膜を形成する工程、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a1)工程後で前記(a7)工程前に、前記第1領域の前記半導体層に対してハローイオン注入を行わないことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体装置の製造方法は、メモリが形成されたメモリ領域と、メモリ以外の回路が形成された周辺回路領域とを有する半導体装置の製造方法であって、
前記メモリ領域は、前記半導体基板の前記第1領域に形成され、前記周辺回路領域は、前記第2領域に形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項8記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程は、
(a8)前記(a1)工程前に、前記第1領域の前記絶縁層の下の前記半導体基板に不純物をイオン注入する工程、
を更に含み、
前記(a8)工程では、前記第1領域の前記絶縁層の下の前記半導体基板に不純物が導入されるが、前記第1領域の前記半導体層には不純物が導入されないように、イオン注入を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
メモリが形成されたメモリ領域と、メモリ以外の回路が形成された周辺回路領域とを有する半導体装置の製造方法であって、
(b)絶縁層が埋め込まれたSOI構造を有する第1領域と、前記絶縁層が埋め込まれておらずSOI構造を有していない第2領域とを有する半導体基板を準備する工程、
を有し、
前記(b)工程の後、前記メモリ領域のMISFETを前記半導体基板の前記第1領域に形成し、前記周辺回路領域のMISFETを前記半導体基板の前記第2領域に形成し、
前記第1領域に前記メモリ領域のMISFETを形成する際には、チャネルドープイオン注入を行わず、
前記第2領域に前記周辺回路領域のMISFETを形成する際には、チャネルドープイオン注入を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項17記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1領域に形成される前記メモリ領域のMISFETのチャネル領域には不純物がイオン注入されないことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項18記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1領域に前記メモリ領域のMISFETを形成する際には、ハローイオン注入を行わず、
前記第2領域に前記周辺回路領域のMISFETを形成する際には、ハローイオン注入を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項20】
チャネル領域の下部に空洞が形成されている複数の第1MISFETと、チャネル領域の下部に空洞が形成されていない複数の第2MISFETとが、半導体基板の主面に形成された半導体装置の製造方法であって、
前記複数の第1MISFETを形成する際には、前記複数の第1MISFETのチャネル領域に不純物がイオン注入されないようにし、
前記複数の第2MISFETを形成する際には、前記複数の第2MISFETのチャネル領域に不純物をイオン注入することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【公開番号】特開2012−4373(P2012−4373A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138439(P2010−138439)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】