半導体装置とその製造方法
【課題】 ヘテロ接合を有する半導体装置において、素子領域から電流がリークすることを抑制する。
【解決手段】 半導体装置100は、バンドギャップを異にする窒化物半導体層6、10が積層されている半導体積層部11を有しており、半導体積層部11が素子領域100aと素子領域100aの周囲に形成されている素子分離領域100bを備えている。素子領域100aは、素子分離領域100bにより他の領域から絶縁されている。半導体装置100は、素子領域100a内の半導体積層部11の表面に、主電極に接続する一対の電極群24,16を形成する電極群形成工程と、素子分離領域100b内の半導体積層部11の表面に、スパッタ法を用いてスパッタ層12を形成するスパッタ工程を備えている。
【解決手段】 半導体装置100は、バンドギャップを異にする窒化物半導体層6、10が積層されている半導体積層部11を有しており、半導体積層部11が素子領域100aと素子領域100aの周囲に形成されている素子分離領域100bを備えている。素子領域100aは、素子分離領域100bにより他の領域から絶縁されている。半導体装置100は、素子領域100a内の半導体積層部11の表面に、主電極に接続する一対の電極群24,16を形成する電極群形成工程と、素子分離領域100b内の半導体積層部11の表面に、スパッタ法を用いてスパッタ層12を形成するスパッタ工程を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンドギャップを異にする少なくとも2種類の窒化物半導体層が積層された半導体積層部を有する半導体装置に関する。本発明はまた、その半導体装置の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
バンドギャップを異にする2種類の窒化物半導体層を積層し、そのヘテロ接合面に誘起される2次元電子ガス層を利用する半導体装置が開発されている。その半導体装置の一例が、非特許文献1に開示されている。半導体積層部の表面には、スイッチング素子の電極群(ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極等)が形成されている。ソース電極から注入された電子は、ヘテロ接合面の2次元電子ガス層を通過して、ドレイン電極に至る。ソース電極とドレイン電極の間にゲート電極が形成されており、ゲート電極に印加する電圧によって、オン・オフを切換える。
【0003】
【非特許文献1】“高出力AlGaN/GaNへテロ接合FETの現状と展望” 電気情報通信学会論文誌 C Vol.J86−C No.4 pp.396−403 2003年4月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の半導体装置では、素子領域の周囲に素子分離領域を形成し、素子領域を周囲の領域から絶縁する必要がある。素子分離領域での絶縁性が確保されていなければ、ドレイン電極とソース電極の間を流れる電流が素子分離領域を超えて周囲の領域にリークしてしまう。半導体積層部が絶縁性の素子分離領域内に形成されている構造を実現するために、従来は絶縁性の素子分離領域の内側の領域のみに半導体積層部を形成している。この方法は工程数を要し、より簡単な製造方法が必要とされる。
素子領域と素子分離領域に亘って延びる半導体積層部を形成し、その後に素子分離領域内の半導体積層部を絶縁化できればよいが、絶縁化するための有効な手法が開発されていない。半導体積層部の一部に不純物をイオン注入すれば、イオン注入された範囲の半導体積層部の結晶構造が壊れて絶縁化される。しかしながら、熱処置等の工程で壊れた結晶構造が回復することがあり充分でない。素子分離領域内の半導体積層部を確実に絶縁化することができない。
【0005】
本発明は、バンドギャップを異にする少なくとも2種類の窒化物半導体層が積層された半導体積層部を有する半導体装置において、素子分離領域内の半導体積層部を絶縁化し、素子領域から電流がリークすることを抑制できる半導体装置の製造方法と、その製造方法で製造できる半導体装置を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示される技術は、スパッタ法を利用することを特徴としている。本明細書で開示される技術では、スパッタ法を利用して、素子分離領域の半導体積層部の表面にスパッタ層を形成する。バンドギャップを異にする少なくとも2種類の窒化物半導体層が積層されている半導体積層部の表面にスパッタ法を用いてスパッタ層を形成すると、半導体積層部の結晶構造が壊れ、半導体積層部のヘテロ接合面の導電性を悪化させることができる。本明細書で開示される技術では。素子分離領域内の半導体積層部の表面にスパッタ層を選択的に形成することによって、素子領域から電流がリークすることを抑制する。
【0007】
本明細書で開示される製造方法は、バンドギャップを異にする少なくとも2種類の窒化物半導体層が積層された半導体積層部を有する半導体装置に用いられる。その半導体積層部は、素子領域と、その素子領域の周囲に形成されているとともにその素子領域を他の領域から絶縁する素子分離領域を備えている。本明細書で開示される製造方法は、電極群形成工程とスパッタ工程を備えている。電極群形成工程では、素子領域内の半導体積層部の表面に、スイッチング素子の電極群を形成する。スパッタ工程では、素子分離領域内の半導体積層部の表面に、スパッタ法を用いてスパッタ層を形成する。なお、「電極群形成工程」と「スパッタ工程」を実施する順序は任意である。すなわち、「電極群形成工程」に先立って「スパッタ工程」を実施してもよいし、「電極群形成工程」の後に「スパッタ工程」を実施してもよい。
【0008】
「電極群形成工程」の後に「スパッタ工程」を実施する場合、スパッタ工程に先立って、電極群で覆われていない素子領域内の半導体積層部の表面に、スパッタ法による場合よりも半導体積層部を損傷させる度合いが低い方法で下地絶縁層を形成する工程が付加されており、スパッタ工程で、素子分離領域内の半導体積層部の表面と、電極群の表面と、下地絶縁層の表面に、絶縁物質をスパッタし、スパッタ工程で形成された絶縁層を貫通して電極群に達する配線群を形成する工程が付加されていることが好ましい。
「半導体積層部を損傷させる度合いがスパッタ法よりも低い方法」として、CVD法、EB蒸着法等が挙げられる。
【0009】
上記スパッタ工程で形成されるスパッタ層は、半導体積層部の表面において、スイッチング素子の電極群を電気的に絶縁するためにも用いられる。すなわち、上記製造方法によると、素子領域からのリーク電流の抑制と、スイッチング素子の電極群の絶縁分離を同時に実施することができる。なお、スパッタ層が素子領域内の半導体積層部の表面に接触しないので、素子領域内の半導体積層部の結晶構造が壊れることはない。
【0010】
本明細書で開示される半導体装置は、バンドギャップを異にする少なくとも2種類の窒化物半導体層が積層された半導体積層部を有し、その半導体積層部が素子領域とその素子領域の周囲に形成されているとともにその素子領域を他の領域から絶縁する素子分離領域を備えている。素子領域内の半導体積層部の表面には、スイッチング素子の電極群が形成されている。素子分離領域内の半導体積層部は、スパッタ法による損傷によって絶縁層に改質されている。
【発明の効果】
【0011】
素子分離領域内の半導体積層部の表面にスパッタ法を用いてスパッタ層を形成することによって、素子領域から電流がリークすることを抑制することができる。また、絶縁性の素子分離領域内にのみ導電性の半導体積層部が形成されている構造を簡単に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1実施形態)
図1に、半導体装置100の要部断面図を示す。図2に、半導体装置100の平面図を示す。なお、図1の要部断面図は、図2のI−I線に対応した縦断面図である。図1に示すように、半導体装置100は横型の半導体装置であり、半導体積層部11の表面に、電極群16、20及び24が設けられている。半導体積層部11は、バンドギャップを異にする窒化物半導体層6及び10を有する。電極16、20及び24は、図1の奥行き方向にストライプ状に伸びている(図2も参照)。素子領域100aを、素子分離領域100bが一巡して囲っている。素子分離領域100b内では、スパッタ層12が半導体積層部11の表面に接触している。素子領域100a内では、スパッタ層12が半導体積層部11の表面に接触していない。素子領域100a内では、スパッタ層12と半導体積層部11の間に、電極16、20、24あるいは絶縁膜(下地絶縁層)18が介在している。以下、半導体装置100の形態を裏面側から詳細に説明する。
【0013】
サファイアを材料とするサファイア基板2の表面に、窒化アルミニウム(AlN)を材料とするバッファ層4が設けられている。後述するように、サファイア基板2は、半導体積層部11を結晶成長する際の下地層である。したがって、サファイア基板2に用いられる材料は、サファイアに代えて、例えば炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)及びシリコン(Si)等を利用することができる。バッファ層4の表面に、窒化ガリウムを材料とする第1窒化物半導体層6が設けられている。第1窒化物半導体層6には不純物が含まれていない。第1窒化物半導体層6の表面に、窒化ガリウム・アルミニウム(Al0.25Ga0.75N)を材料とする第2窒化物半導体層10が設けられている。第2窒化物半導体層10にも不純物が含まれていない。第2窒化物半導体層10の厚みは、15nm以下である。第1窒化物半導体層6の表面に第2窒化物半導体層10が積層されることによって、半導体積層部11が形成されている。なお、半導体積層部11の符号8の範囲は、半導体積層部11の結晶性が他の範囲よりも低い範囲を示している。後述するように、半導体積層部11の符号8の範囲は、スパッタ法による損傷によって、半導体積層部11の一部が絶縁層に改質された範囲である。以下の説明では、符号8の範囲を絶縁領域8という。この絶縁領域8は、半導体積層部11の表面からヘテロ接合面を超えて深部にまで形成されている。また絶縁領域8は、素子領域100aの周囲を一巡しており、素子分離領域100bに対応している。
【0014】
半導体積層部11の表面に、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)及び金(Au)を材料とするソース電極24及びドレイン電極16が設けられている。ソース電極24は、ソース配線22を介して電源の低電位に接続されている。ドレイン電極16は、ドレイン配線14を介して電源の高電位に接続されている。ソース配線22とドレイン配線14の材料は、チタンとアルミニウムである。半導体装置100は、主電源に接続する一対の電極24、16の双方が半導体積層部11の表面に形成されているので、横型のスイッチング素子である。ソース電極24とドレイン電極16の間で半導体積層部11の表面に、ニッケルと金を材料とするゲート電極20が設けられている。ゲート電極20は、第2窒化物半導体層10に対してショットキー接触している。ゲート電極20は、ゲート配線(図示省略)を介して制御電源に接続されている。なお、ゲート電極20は、プラチナと金を材料としてもよい。
ソース電極24、ドレイン電極16及びゲート電極20は離反しており、各々の電極24、16、20はスパッタ層12によって電気的に分離されている。上記したソース配線22、ドレイン配線14及びゲート配線は、スパッタ層12を貫通して、各々ソース電極24、ドレイン電極16及びゲート電極20に達している。スパッタ層12は、スパッタ法で形成された酸化シリコン(SiO)膜である。スパッタ層12は、素子分離領域100b内では半導体積層部11の表面に形成されているが、素子領域100a内では電極24、16、20あるいは絶縁膜(下地絶縁層)18の表面に形成されている。なお、絶縁膜18は、CVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法で形成された窒化シリコン(SiN)膜である。
【0015】
上記したように、半導体積層部11は、窒化ガリウムを材料とする第1窒化物半導体層6と、窒化ガリウム・アルミニウムを材料とする第2窒化物半導体層10を備えている。窒化ガリウムと窒化ガリウム・アルミニウムはバンドギャップの幅が異なるので、両者のヘテロ接合面には、2次元電子ガス層が形成されている。但し、絶縁領域8では、第1窒化物半導体層6と第2窒化物半導体層10の結晶構造が破壊されているので、両者の間に2次元電子ガス層が形成されにくい。
【0016】
半導体装置100では、ソース電極24から半導体積層部11に注入された電子が、2次元電子ガス層を通過してドレイン電極16に至る。すなわち、素子領域100a内では、半導体積層部11を電子が移動可能である。しかしながら、素子領域100a内の半導体積層部11は絶縁領域8に囲まれているので、電子は素子領域100a外に移動することができない。半導体装置100では、素子領域100aから電流がリークしにくい。
【0017】
図3〜7を参照し、半導体装置100の製造方法について説明する。
まず、図3に示すように、サファイア基板2上にバッファ層4を結晶成長させる。その後、バッファ層4上に第1窒化物半導体層6を結晶成長させ、第1窒化物半導体層6上に第2窒化物半導体層10を結晶成長させる。バッファ層4、第1窒化物半導体層6及び第2窒化物半導体層10は、MOCVD法を用いて結晶成長させる。なお、バッファ層4を結晶成長させるときは、第1窒化物半導体層6と第2窒化物半導体層10を結晶成長させるときよりも低温で実施する。サファイア基板2と第1窒化物半導体層6の格子不整合を緩和し、第1窒化物半導体層6を良好に結晶成長させることができる。
【0018】
次に、図4に示すように、第2窒化物半導体層10の表面に、フォトリソ工程を用いて、開口26aを有するフォトレジストマスク26と開口18aを有するマスク層(絶縁膜)18を形成する。マスク層18の材料は窒化シリコン(SiN)であり、CVD法を用いて形成する。なお、開口18aは、バッファードフッ酸(B−HF)でマスク層18をエッチングして形成する。次に、図5に示すように、リフトオフ法を用いて、図4で露出した第2窒化物半導体層10の表面に、ソース電極24とドレイン電極16を形成する(電極群形成工程)。
次に、図6に示すように、フォトリソ工程を用いて、開口28aを有するフォトレジストマスク28を形成し、マスク層18に開口18bを形成する。開口18bは、ソース電極24とドレイン電極16の間に形成する。次に、図7に示すように、リフトオフ法を用いて、図6で露出した第2窒化物半導体層10の表面に、ゲート電極20を形成する。ゲート電極20は、ソース電極24とドレイン電極16の間に形成される。
【0019】
次に、図8に示すように、第2窒化物半導体層10の表面に、開口18cを形成する。開口18cは、フォトリソ工程を用いてレジストマスクを形成し、バッファードフッ酸で絶縁膜18の一部を除去して形成する。絶縁膜18が、電極群24、16及び20で覆われていない素子領域100a内の半導体積層部11の表面に形成される。なお、開口18cは、素子分離領域100bに対応する位置に形成される。
次に、図9に示すように、半導体積層部11の表面に、スパッタ法を用いてスパッタ層12を形成する(スパッタ工程)。スパッタ工程では、素子分離領域100bの半導体積層部11の表面と、電極24、16及び20の表面と、絶縁膜18の表面に、スパッタ層12を形成する。上記したように、スパッタ層12の材料は酸化シリコンなので、スパッタ層12によって、電極24、16及び20の各々が電気的に絶縁される。
その後、ソース電極24上のスパッタ層12にコンタクトホールを形成し、ソース電極24とソース配線22を接続する。ドレイン電極16上のスパッタ層12にコンタクトホールを形成し、ドレイン電極16とドレイン配線14を接続する。ゲート電極20上のスパッタ層12にコンタクトホールを形成し、ゲート電極20とゲート配線を接続する。以上の工程により、図1の半導体装置100が得られる。
【0020】
窒化物半導体層上にスパッタ法を用いてスパッタ層を形成すると、スパッタ法による損傷によって、窒化物半導体層の結晶構造が破壊される。そのため、素子分離領域100b内の半導体積層部11の結晶構造が壊れ、絶縁領域8の導電性が悪化する。但し、素子領域100a内の半導体積層部11の結晶構造は壊れない。上記したように、本製造方法では、スパッタ層12を形成するときにのみスパッタ法を用いる。スパッタ層12を形成するときは、素子領域100a内の半導体積層部11の表面に、ソース電極24、ドレイン電極16、ゲート電極20あるいは絶縁膜18が形成されている。そのため、スパッタ層12は、素子領域100a内の半導体積層部11の表面に直接接触しない。また、マスク層26、28及び絶縁膜18は、CVD法を用いて形成される。窒化物半導体層上にCVD法を用いてマスク層あるいは絶縁膜を形成しても、窒化物半導体層の結晶構造は破壊されない。そのため、素子領域100a内の半導体積層部11の導電性が悪化することはない。
【0021】
(第2実施形態)
図10に、半導体装置200の要部断面図を示す。半導体装置200では、ゲート電極220が、絶縁膜18を介して第2窒化物半導体層10に対向している。絶縁膜18の厚みを調整することにより、半導体装置200の閾値電圧を調整することができる。なお、ゲート電極220の材料は、アルミニウム、プラチナ(Pt)あるいは多結晶シリコンが好ましい。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
窒化ガリウム層6の表面に窒化ガリウム・アルミニウム(Al0.25Ga0.75N)層10を結晶成長させた半導体積層部11を用意し、その半導体積層部11上にスパッタ法で酸化シリコン(SiO)膜を形成したサンプル(実施例1)を作成した。そのサンプルについて、カソードルミネセンス測定(以下CL測定)を行った。なお、窒化ガリウム・アルミニウム層10の厚みは15nmである。また、比較例1として、半導体積層部11のみのサンプルについてもCL測定を行った。
図11は窒化ガリウム・アルミニウム層10のCL強度の測定結果を示しており、曲線34は実施例1の測定結果を示し、曲線32は比較例1の測定結果を示している。図12は窒化ガリウム層6のCL強度の測定結果を示し、曲線38は実施例1の測定結果を示し、曲線36は比較例1の測定結果を示している。なお、グラフの横軸は測定波長(nm)を示しており、縦軸はCL強度を示している。
【0023】
図11に示すように、比較例1のサンプルは、波長325nm付近にCL強度のピークが見られる(曲線32)。これは、窒化ガリウム・アルミニウム層10の結晶性が高いことを示している。それに対して、実施例1のサンプルは、波長325nm付近にCL強度のピークが見られない(曲線34)。これは、窒化ガリウム・アルミニウム層10の結晶性が低いことを示している。すなわち、窒化ガリウム・アンモニウム層10の結晶構造が壊れていることを示している。
【0024】
図12に示すように、窒化ガリウム層6では、実施例1のサンプル(曲線38)と比較例1のサンプル(曲線36)の双方とも、波長360nm付近にCL強度のピークが見られる。但し、曲線38のCL強度は、曲線36のCL強度よりも小さい。これは、実施例1のサンプルが、比較例1のサンプルよりも窒化ガリウムの結晶性が低いことを示している。
本実施例の結果より、半導体積層部11上にスパッタ法を用いて酸化シリコン膜を形成すると、半導体積層部11の結晶性が低下することが確認された。すなわち、半導体積層部11上にスパッタ法を用いてスパッタ膜を形成すると、スパッタ法による損傷によって、半導体積層部11が絶縁層に改質されることが確認された。半導体装置100、200は、素子分離領域100bに絶縁領域8が形成されているので、素子領域100aから電流がリークすることが抑制される。
【0025】
(実施例2)
窒化ガリウム層6の表面に窒化ガリウム・アルミニウム(Al0.25Ga0.75N)層10を結晶成長させた半導体積層部11を用意し、その半導体積層部11上にスパッタ法で酸化シリコン(SiO)膜を形成したサンプル(実施例2)を作成した。そのサンプルについて、Hall測定を行った。
また、比較例2として、半導体積層部11のみのサンプルについてもHall測定を行った。なお、本実施例では、窒化ガリウム・アルミニウム層10の厚みを2条件(15nmと25nm)に変化させて実験を行った。表1に結果を示す。
【0026】
【表1】
【0027】
表1に示すように、半導体積層部11上に酸化シリコン膜を形成すると、シートキャリア密度が低下し、キャリア(電子)の移動度が低下し、シート抵抗が増大する。すなわち、半導体積層部11内を電流が流れにくくなる。窒化ガリウム・アルミニウム層10の厚みが変化しても、同じ結果が得られた。窒化ガリウム・アルミニウム層10の厚みが25nmであっても、絶縁領域8の結晶性を低下させることができることが確認された。
半導体装置100、200は、素子分離領域100b内の半導体積層部11の表面に、スパッタ法で酸化シリコン膜12を形成している。半導体装置100、200は、素子分離領域100bが素子領域100aを一巡して囲っている。本実施例の結果からも、半導体装置100、200は、素子領域100aから電流がリークするが抑制されることが確認できた。
【0028】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1実施形態の半導体装置の縦断面図を示す。
【図2】第1実施形態の半導体装置の平面図を示す。
【図3】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す。
【図4】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す。
【図5】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す。
【図6】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す。
【図7】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す。
【図8】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す。
【図9】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す。
【図10】第2実施形態の半導体装置の縦断面図を示す。
【図11】窒化ガリウム・アルミニウム層のCL測定結果を示す。
【図12】窒化ガリウム層のCL測定結果を示す。
【符号の説明】
【0030】
8:絶縁領域(絶縁層)
11:半導体積層部
12:スパッタ層
14:ドレイン配線
16:ドレイン電極
18:絶縁膜(下地絶縁層)
20:ゲート電極
22:ソース配線
24:ソース電極
100、200:半導体装置
100a:素子領域
100b:素子分離領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンドギャップを異にする少なくとも2種類の窒化物半導体層が積層された半導体積層部を有する半導体装置に関する。本発明はまた、その半導体装置の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
バンドギャップを異にする2種類の窒化物半導体層を積層し、そのヘテロ接合面に誘起される2次元電子ガス層を利用する半導体装置が開発されている。その半導体装置の一例が、非特許文献1に開示されている。半導体積層部の表面には、スイッチング素子の電極群(ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極等)が形成されている。ソース電極から注入された電子は、ヘテロ接合面の2次元電子ガス層を通過して、ドレイン電極に至る。ソース電極とドレイン電極の間にゲート電極が形成されており、ゲート電極に印加する電圧によって、オン・オフを切換える。
【0003】
【非特許文献1】“高出力AlGaN/GaNへテロ接合FETの現状と展望” 電気情報通信学会論文誌 C Vol.J86−C No.4 pp.396−403 2003年4月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の半導体装置では、素子領域の周囲に素子分離領域を形成し、素子領域を周囲の領域から絶縁する必要がある。素子分離領域での絶縁性が確保されていなければ、ドレイン電極とソース電極の間を流れる電流が素子分離領域を超えて周囲の領域にリークしてしまう。半導体積層部が絶縁性の素子分離領域内に形成されている構造を実現するために、従来は絶縁性の素子分離領域の内側の領域のみに半導体積層部を形成している。この方法は工程数を要し、より簡単な製造方法が必要とされる。
素子領域と素子分離領域に亘って延びる半導体積層部を形成し、その後に素子分離領域内の半導体積層部を絶縁化できればよいが、絶縁化するための有効な手法が開発されていない。半導体積層部の一部に不純物をイオン注入すれば、イオン注入された範囲の半導体積層部の結晶構造が壊れて絶縁化される。しかしながら、熱処置等の工程で壊れた結晶構造が回復することがあり充分でない。素子分離領域内の半導体積層部を確実に絶縁化することができない。
【0005】
本発明は、バンドギャップを異にする少なくとも2種類の窒化物半導体層が積層された半導体積層部を有する半導体装置において、素子分離領域内の半導体積層部を絶縁化し、素子領域から電流がリークすることを抑制できる半導体装置の製造方法と、その製造方法で製造できる半導体装置を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示される技術は、スパッタ法を利用することを特徴としている。本明細書で開示される技術では、スパッタ法を利用して、素子分離領域の半導体積層部の表面にスパッタ層を形成する。バンドギャップを異にする少なくとも2種類の窒化物半導体層が積層されている半導体積層部の表面にスパッタ法を用いてスパッタ層を形成すると、半導体積層部の結晶構造が壊れ、半導体積層部のヘテロ接合面の導電性を悪化させることができる。本明細書で開示される技術では。素子分離領域内の半導体積層部の表面にスパッタ層を選択的に形成することによって、素子領域から電流がリークすることを抑制する。
【0007】
本明細書で開示される製造方法は、バンドギャップを異にする少なくとも2種類の窒化物半導体層が積層された半導体積層部を有する半導体装置に用いられる。その半導体積層部は、素子領域と、その素子領域の周囲に形成されているとともにその素子領域を他の領域から絶縁する素子分離領域を備えている。本明細書で開示される製造方法は、電極群形成工程とスパッタ工程を備えている。電極群形成工程では、素子領域内の半導体積層部の表面に、スイッチング素子の電極群を形成する。スパッタ工程では、素子分離領域内の半導体積層部の表面に、スパッタ法を用いてスパッタ層を形成する。なお、「電極群形成工程」と「スパッタ工程」を実施する順序は任意である。すなわち、「電極群形成工程」に先立って「スパッタ工程」を実施してもよいし、「電極群形成工程」の後に「スパッタ工程」を実施してもよい。
【0008】
「電極群形成工程」の後に「スパッタ工程」を実施する場合、スパッタ工程に先立って、電極群で覆われていない素子領域内の半導体積層部の表面に、スパッタ法による場合よりも半導体積層部を損傷させる度合いが低い方法で下地絶縁層を形成する工程が付加されており、スパッタ工程で、素子分離領域内の半導体積層部の表面と、電極群の表面と、下地絶縁層の表面に、絶縁物質をスパッタし、スパッタ工程で形成された絶縁層を貫通して電極群に達する配線群を形成する工程が付加されていることが好ましい。
「半導体積層部を損傷させる度合いがスパッタ法よりも低い方法」として、CVD法、EB蒸着法等が挙げられる。
【0009】
上記スパッタ工程で形成されるスパッタ層は、半導体積層部の表面において、スイッチング素子の電極群を電気的に絶縁するためにも用いられる。すなわち、上記製造方法によると、素子領域からのリーク電流の抑制と、スイッチング素子の電極群の絶縁分離を同時に実施することができる。なお、スパッタ層が素子領域内の半導体積層部の表面に接触しないので、素子領域内の半導体積層部の結晶構造が壊れることはない。
【0010】
本明細書で開示される半導体装置は、バンドギャップを異にする少なくとも2種類の窒化物半導体層が積層された半導体積層部を有し、その半導体積層部が素子領域とその素子領域の周囲に形成されているとともにその素子領域を他の領域から絶縁する素子分離領域を備えている。素子領域内の半導体積層部の表面には、スイッチング素子の電極群が形成されている。素子分離領域内の半導体積層部は、スパッタ法による損傷によって絶縁層に改質されている。
【発明の効果】
【0011】
素子分離領域内の半導体積層部の表面にスパッタ法を用いてスパッタ層を形成することによって、素子領域から電流がリークすることを抑制することができる。また、絶縁性の素子分離領域内にのみ導電性の半導体積層部が形成されている構造を簡単に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1実施形態)
図1に、半導体装置100の要部断面図を示す。図2に、半導体装置100の平面図を示す。なお、図1の要部断面図は、図2のI−I線に対応した縦断面図である。図1に示すように、半導体装置100は横型の半導体装置であり、半導体積層部11の表面に、電極群16、20及び24が設けられている。半導体積層部11は、バンドギャップを異にする窒化物半導体層6及び10を有する。電極16、20及び24は、図1の奥行き方向にストライプ状に伸びている(図2も参照)。素子領域100aを、素子分離領域100bが一巡して囲っている。素子分離領域100b内では、スパッタ層12が半導体積層部11の表面に接触している。素子領域100a内では、スパッタ層12が半導体積層部11の表面に接触していない。素子領域100a内では、スパッタ層12と半導体積層部11の間に、電極16、20、24あるいは絶縁膜(下地絶縁層)18が介在している。以下、半導体装置100の形態を裏面側から詳細に説明する。
【0013】
サファイアを材料とするサファイア基板2の表面に、窒化アルミニウム(AlN)を材料とするバッファ層4が設けられている。後述するように、サファイア基板2は、半導体積層部11を結晶成長する際の下地層である。したがって、サファイア基板2に用いられる材料は、サファイアに代えて、例えば炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)及びシリコン(Si)等を利用することができる。バッファ層4の表面に、窒化ガリウムを材料とする第1窒化物半導体層6が設けられている。第1窒化物半導体層6には不純物が含まれていない。第1窒化物半導体層6の表面に、窒化ガリウム・アルミニウム(Al0.25Ga0.75N)を材料とする第2窒化物半導体層10が設けられている。第2窒化物半導体層10にも不純物が含まれていない。第2窒化物半導体層10の厚みは、15nm以下である。第1窒化物半導体層6の表面に第2窒化物半導体層10が積層されることによって、半導体積層部11が形成されている。なお、半導体積層部11の符号8の範囲は、半導体積層部11の結晶性が他の範囲よりも低い範囲を示している。後述するように、半導体積層部11の符号8の範囲は、スパッタ法による損傷によって、半導体積層部11の一部が絶縁層に改質された範囲である。以下の説明では、符号8の範囲を絶縁領域8という。この絶縁領域8は、半導体積層部11の表面からヘテロ接合面を超えて深部にまで形成されている。また絶縁領域8は、素子領域100aの周囲を一巡しており、素子分離領域100bに対応している。
【0014】
半導体積層部11の表面に、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)及び金(Au)を材料とするソース電極24及びドレイン電極16が設けられている。ソース電極24は、ソース配線22を介して電源の低電位に接続されている。ドレイン電極16は、ドレイン配線14を介して電源の高電位に接続されている。ソース配線22とドレイン配線14の材料は、チタンとアルミニウムである。半導体装置100は、主電源に接続する一対の電極24、16の双方が半導体積層部11の表面に形成されているので、横型のスイッチング素子である。ソース電極24とドレイン電極16の間で半導体積層部11の表面に、ニッケルと金を材料とするゲート電極20が設けられている。ゲート電極20は、第2窒化物半導体層10に対してショットキー接触している。ゲート電極20は、ゲート配線(図示省略)を介して制御電源に接続されている。なお、ゲート電極20は、プラチナと金を材料としてもよい。
ソース電極24、ドレイン電極16及びゲート電極20は離反しており、各々の電極24、16、20はスパッタ層12によって電気的に分離されている。上記したソース配線22、ドレイン配線14及びゲート配線は、スパッタ層12を貫通して、各々ソース電極24、ドレイン電極16及びゲート電極20に達している。スパッタ層12は、スパッタ法で形成された酸化シリコン(SiO)膜である。スパッタ層12は、素子分離領域100b内では半導体積層部11の表面に形成されているが、素子領域100a内では電極24、16、20あるいは絶縁膜(下地絶縁層)18の表面に形成されている。なお、絶縁膜18は、CVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法で形成された窒化シリコン(SiN)膜である。
【0015】
上記したように、半導体積層部11は、窒化ガリウムを材料とする第1窒化物半導体層6と、窒化ガリウム・アルミニウムを材料とする第2窒化物半導体層10を備えている。窒化ガリウムと窒化ガリウム・アルミニウムはバンドギャップの幅が異なるので、両者のヘテロ接合面には、2次元電子ガス層が形成されている。但し、絶縁領域8では、第1窒化物半導体層6と第2窒化物半導体層10の結晶構造が破壊されているので、両者の間に2次元電子ガス層が形成されにくい。
【0016】
半導体装置100では、ソース電極24から半導体積層部11に注入された電子が、2次元電子ガス層を通過してドレイン電極16に至る。すなわち、素子領域100a内では、半導体積層部11を電子が移動可能である。しかしながら、素子領域100a内の半導体積層部11は絶縁領域8に囲まれているので、電子は素子領域100a外に移動することができない。半導体装置100では、素子領域100aから電流がリークしにくい。
【0017】
図3〜7を参照し、半導体装置100の製造方法について説明する。
まず、図3に示すように、サファイア基板2上にバッファ層4を結晶成長させる。その後、バッファ層4上に第1窒化物半導体層6を結晶成長させ、第1窒化物半導体層6上に第2窒化物半導体層10を結晶成長させる。バッファ層4、第1窒化物半導体層6及び第2窒化物半導体層10は、MOCVD法を用いて結晶成長させる。なお、バッファ層4を結晶成長させるときは、第1窒化物半導体層6と第2窒化物半導体層10を結晶成長させるときよりも低温で実施する。サファイア基板2と第1窒化物半導体層6の格子不整合を緩和し、第1窒化物半導体層6を良好に結晶成長させることができる。
【0018】
次に、図4に示すように、第2窒化物半導体層10の表面に、フォトリソ工程を用いて、開口26aを有するフォトレジストマスク26と開口18aを有するマスク層(絶縁膜)18を形成する。マスク層18の材料は窒化シリコン(SiN)であり、CVD法を用いて形成する。なお、開口18aは、バッファードフッ酸(B−HF)でマスク層18をエッチングして形成する。次に、図5に示すように、リフトオフ法を用いて、図4で露出した第2窒化物半導体層10の表面に、ソース電極24とドレイン電極16を形成する(電極群形成工程)。
次に、図6に示すように、フォトリソ工程を用いて、開口28aを有するフォトレジストマスク28を形成し、マスク層18に開口18bを形成する。開口18bは、ソース電極24とドレイン電極16の間に形成する。次に、図7に示すように、リフトオフ法を用いて、図6で露出した第2窒化物半導体層10の表面に、ゲート電極20を形成する。ゲート電極20は、ソース電極24とドレイン電極16の間に形成される。
【0019】
次に、図8に示すように、第2窒化物半導体層10の表面に、開口18cを形成する。開口18cは、フォトリソ工程を用いてレジストマスクを形成し、バッファードフッ酸で絶縁膜18の一部を除去して形成する。絶縁膜18が、電極群24、16及び20で覆われていない素子領域100a内の半導体積層部11の表面に形成される。なお、開口18cは、素子分離領域100bに対応する位置に形成される。
次に、図9に示すように、半導体積層部11の表面に、スパッタ法を用いてスパッタ層12を形成する(スパッタ工程)。スパッタ工程では、素子分離領域100bの半導体積層部11の表面と、電極24、16及び20の表面と、絶縁膜18の表面に、スパッタ層12を形成する。上記したように、スパッタ層12の材料は酸化シリコンなので、スパッタ層12によって、電極24、16及び20の各々が電気的に絶縁される。
その後、ソース電極24上のスパッタ層12にコンタクトホールを形成し、ソース電極24とソース配線22を接続する。ドレイン電極16上のスパッタ層12にコンタクトホールを形成し、ドレイン電極16とドレイン配線14を接続する。ゲート電極20上のスパッタ層12にコンタクトホールを形成し、ゲート電極20とゲート配線を接続する。以上の工程により、図1の半導体装置100が得られる。
【0020】
窒化物半導体層上にスパッタ法を用いてスパッタ層を形成すると、スパッタ法による損傷によって、窒化物半導体層の結晶構造が破壊される。そのため、素子分離領域100b内の半導体積層部11の結晶構造が壊れ、絶縁領域8の導電性が悪化する。但し、素子領域100a内の半導体積層部11の結晶構造は壊れない。上記したように、本製造方法では、スパッタ層12を形成するときにのみスパッタ法を用いる。スパッタ層12を形成するときは、素子領域100a内の半導体積層部11の表面に、ソース電極24、ドレイン電極16、ゲート電極20あるいは絶縁膜18が形成されている。そのため、スパッタ層12は、素子領域100a内の半導体積層部11の表面に直接接触しない。また、マスク層26、28及び絶縁膜18は、CVD法を用いて形成される。窒化物半導体層上にCVD法を用いてマスク層あるいは絶縁膜を形成しても、窒化物半導体層の結晶構造は破壊されない。そのため、素子領域100a内の半導体積層部11の導電性が悪化することはない。
【0021】
(第2実施形態)
図10に、半導体装置200の要部断面図を示す。半導体装置200では、ゲート電極220が、絶縁膜18を介して第2窒化物半導体層10に対向している。絶縁膜18の厚みを調整することにより、半導体装置200の閾値電圧を調整することができる。なお、ゲート電極220の材料は、アルミニウム、プラチナ(Pt)あるいは多結晶シリコンが好ましい。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
窒化ガリウム層6の表面に窒化ガリウム・アルミニウム(Al0.25Ga0.75N)層10を結晶成長させた半導体積層部11を用意し、その半導体積層部11上にスパッタ法で酸化シリコン(SiO)膜を形成したサンプル(実施例1)を作成した。そのサンプルについて、カソードルミネセンス測定(以下CL測定)を行った。なお、窒化ガリウム・アルミニウム層10の厚みは15nmである。また、比較例1として、半導体積層部11のみのサンプルについてもCL測定を行った。
図11は窒化ガリウム・アルミニウム層10のCL強度の測定結果を示しており、曲線34は実施例1の測定結果を示し、曲線32は比較例1の測定結果を示している。図12は窒化ガリウム層6のCL強度の測定結果を示し、曲線38は実施例1の測定結果を示し、曲線36は比較例1の測定結果を示している。なお、グラフの横軸は測定波長(nm)を示しており、縦軸はCL強度を示している。
【0023】
図11に示すように、比較例1のサンプルは、波長325nm付近にCL強度のピークが見られる(曲線32)。これは、窒化ガリウム・アルミニウム層10の結晶性が高いことを示している。それに対して、実施例1のサンプルは、波長325nm付近にCL強度のピークが見られない(曲線34)。これは、窒化ガリウム・アルミニウム層10の結晶性が低いことを示している。すなわち、窒化ガリウム・アンモニウム層10の結晶構造が壊れていることを示している。
【0024】
図12に示すように、窒化ガリウム層6では、実施例1のサンプル(曲線38)と比較例1のサンプル(曲線36)の双方とも、波長360nm付近にCL強度のピークが見られる。但し、曲線38のCL強度は、曲線36のCL強度よりも小さい。これは、実施例1のサンプルが、比較例1のサンプルよりも窒化ガリウムの結晶性が低いことを示している。
本実施例の結果より、半導体積層部11上にスパッタ法を用いて酸化シリコン膜を形成すると、半導体積層部11の結晶性が低下することが確認された。すなわち、半導体積層部11上にスパッタ法を用いてスパッタ膜を形成すると、スパッタ法による損傷によって、半導体積層部11が絶縁層に改質されることが確認された。半導体装置100、200は、素子分離領域100bに絶縁領域8が形成されているので、素子領域100aから電流がリークすることが抑制される。
【0025】
(実施例2)
窒化ガリウム層6の表面に窒化ガリウム・アルミニウム(Al0.25Ga0.75N)層10を結晶成長させた半導体積層部11を用意し、その半導体積層部11上にスパッタ法で酸化シリコン(SiO)膜を形成したサンプル(実施例2)を作成した。そのサンプルについて、Hall測定を行った。
また、比較例2として、半導体積層部11のみのサンプルについてもHall測定を行った。なお、本実施例では、窒化ガリウム・アルミニウム層10の厚みを2条件(15nmと25nm)に変化させて実験を行った。表1に結果を示す。
【0026】
【表1】
【0027】
表1に示すように、半導体積層部11上に酸化シリコン膜を形成すると、シートキャリア密度が低下し、キャリア(電子)の移動度が低下し、シート抵抗が増大する。すなわち、半導体積層部11内を電流が流れにくくなる。窒化ガリウム・アルミニウム層10の厚みが変化しても、同じ結果が得られた。窒化ガリウム・アルミニウム層10の厚みが25nmであっても、絶縁領域8の結晶性を低下させることができることが確認された。
半導体装置100、200は、素子分離領域100b内の半導体積層部11の表面に、スパッタ法で酸化シリコン膜12を形成している。半導体装置100、200は、素子分離領域100bが素子領域100aを一巡して囲っている。本実施例の結果からも、半導体装置100、200は、素子領域100aから電流がリークするが抑制されることが確認できた。
【0028】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1実施形態の半導体装置の縦断面図を示す。
【図2】第1実施形態の半導体装置の平面図を示す。
【図3】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す。
【図4】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す。
【図5】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す。
【図6】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す。
【図7】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す。
【図8】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す。
【図9】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す。
【図10】第2実施形態の半導体装置の縦断面図を示す。
【図11】窒化ガリウム・アルミニウム層のCL測定結果を示す。
【図12】窒化ガリウム層のCL測定結果を示す。
【符号の説明】
【0030】
8:絶縁領域(絶縁層)
11:半導体積層部
12:スパッタ層
14:ドレイン配線
16:ドレイン電極
18:絶縁膜(下地絶縁層)
20:ゲート電極
22:ソース配線
24:ソース電極
100、200:半導体装置
100a:素子領域
100b:素子分離領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンドギャップを異にする少なくとも2種類の窒化物半導体層が積層されている半導体積層部を有し、その半導体積層部が素子領域とその素子領域の周囲に形成されているとともにその素子領域を他の領域から絶縁する素子分離領域を備えている半導体装置を製造する方法であって、
前記素子領域内の半導体積層部の表面に、スイッチング素子の電極群を形成する電極群形成工程と、
前記素子分離領域内の半導体積層部の表面に、スパッタ法を用いてスパッタ層を形成するスパッタ工程と、
を備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記電極群で覆われていない前記素子領域内の半導体積層部の表面に、スパッタ法による場合よりも半導体積層部を損傷させる度合いが低い方法で下地絶縁層を形成する工程が付加されており、
前記スパッタ工程で、前記素子分離領域内の半導体積層部の表面と、前記電極群の表面と、前記下地絶縁層の表面に、絶縁物質をスパッタし、
前記スパッタ工程で形成された絶縁層を貫通して前記電極群に達する配線群を形成する工程が付加されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
バンドギャップを異にする少なくとも2種類の窒化物半導体層が積層されている半導体積層部を有し、その半導体積層部が素子領域とその素子領域の周囲に形成されているとともにその素子領域を他の領域から絶縁する素子分離領域を備えている半導体装置であり、
前記素子領域内の半導体積層部の表面に、スイッチング素子の電極群が形成されており、
前記素子分離領域内の半導体積層部が、スパッタ法による損傷によって絶縁層に改質されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項1】
バンドギャップを異にする少なくとも2種類の窒化物半導体層が積層されている半導体積層部を有し、その半導体積層部が素子領域とその素子領域の周囲に形成されているとともにその素子領域を他の領域から絶縁する素子分離領域を備えている半導体装置を製造する方法であって、
前記素子領域内の半導体積層部の表面に、スイッチング素子の電極群を形成する電極群形成工程と、
前記素子分離領域内の半導体積層部の表面に、スパッタ法を用いてスパッタ層を形成するスパッタ工程と、
を備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記電極群で覆われていない前記素子領域内の半導体積層部の表面に、スパッタ法による場合よりも半導体積層部を損傷させる度合いが低い方法で下地絶縁層を形成する工程が付加されており、
前記スパッタ工程で、前記素子分離領域内の半導体積層部の表面と、前記電極群の表面と、前記下地絶縁層の表面に、絶縁物質をスパッタし、
前記スパッタ工程で形成された絶縁層を貫通して前記電極群に達する配線群を形成する工程が付加されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
バンドギャップを異にする少なくとも2種類の窒化物半導体層が積層されている半導体積層部を有し、その半導体積層部が素子領域とその素子領域の周囲に形成されているとともにその素子領域を他の領域から絶縁する素子分離領域を備えている半導体装置であり、
前記素子領域内の半導体積層部の表面に、スイッチング素子の電極群が形成されており、
前記素子分離領域内の半導体積層部が、スパッタ法による損傷によって絶縁層に改質されていることを特徴とする半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−302388(P2009−302388A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156824(P2008−156824)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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