説明

半導体装置の製造方法、基板処理方法および基板処理装置

【課題】 膜中の炭素、水素、窒素、塩素等の不純物濃度が極めて低い絶縁膜を低温で形成する。
【解決手段】 基板を収容した処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給することで、基板上に所定元素含有層を形成する工程と、処理容器内に窒素を含むガスを活性化して供給することで、所定元素含有層を窒化層に変化させる工程と、大気圧よりも低い圧力に設定された処理容器内に酸素を含むガスと水素を含むガスとを活性化して供給することで、窒化層を酸化層または酸窒化層に変化させる工程と、を1サイクルとして、このサイクルを複数回繰り返すことで、基板上に所定膜厚の酸化膜または酸窒化膜を形成する工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板上に薄膜を形成する工程を含む半導体装置の製造方法、基板処理方法及び基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラッシュメモリは、絶縁膜で囲まれた電子蓄積領域(浮遊ゲート)を備え、薄いトンネル酸化膜を介した電子のやり取りによって、情報の書き込みを行うと同時に、この薄い酸化膜の絶縁性を利用し長時間にわたり電子を保持し記憶を保つのが動作原理である。フラッシュメモリに記憶された情報は、外部からの動作がなされなくても10年もの長時間保持する必要があり、浮遊ゲートと呼ばれる電荷蓄積領域を取り囲む絶縁膜に対する要求が厳しくなっている。メモリセル動作を制御するための制御ゲートとの間に設けられた層間絶縁膜には一般にONOと呼ばれる酸化膜(SiO)/窒化膜(Si)/酸化膜(SiO)の積層構造が用いられ、高いリーク電流特性を持つことが期待されている。
【0003】
従来、ONO積層構造におけるSiO絶縁膜形成は、例えばSiHClガスとNOガスとを用いてCVD法により800℃付近の高温で行われてきたが、デバイスの更なる微細化に伴い、ONO積層膜中の窒化膜の容量低下が起きるため、容量確保の観点から、窒化膜層に代わり高誘電体膜の採用が検討されている。高誘電体膜上に形成するSiO絶縁膜は高誘電体膜の結晶化を抑えるため、高誘電体膜形成温度よりも低温で形成される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
SiO絶縁膜を形成する場合、膜を形成する際に使用する原料中に含まれるシリコン(Si)及び酸素(O)以外の原子は形成温度の低温化に伴い、膜中に不純物として残る傾向にある。そのため、有機原料ガスを用いて低温でSiO絶縁膜を形成した場合、有機原料ガス分子に含まれる炭素(C)、水素(H)、窒素(N)などがSiO絶縁膜中に不純物として残ってしまう問題があった。また、無機原料ガスを用いた場合においても、原料に含まれる水素(H)、塩素(Cl)などが不純物として膜中に残ってしまう問題があった。これらの不純物は形成した絶縁膜の膜質を著しく劣化さるため、低温にて膜中不純物濃度が低い良質な絶縁膜を形成する技術が必要であった。
【0005】
従って本発明の目的は、上記課題を解決し、膜中の炭素、水素、窒素、塩素等の不純物濃度が極めて低い絶縁膜を低温で形成することができる半導体装置の製造方法、基板処理方法および基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、基板を収容した処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給することで、前記基板上に所定元素含有層を形成する工程と、前記処理容器内に窒素を含むガスを活性化して供給することで、前記所定元素含有層を窒化層に改質する工程と、前記処理容器内に酸素を含むガスを活性化して供給することで、前記窒化層を酸化層または酸窒化層に改質する工程と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行う半導体装置の製造方法が提供される。
【0007】
本発明の他の態様によれば、基板を収容した処理容器内にシリコンを含む原料ガスを供給することで、前記基板上にシリコン含有層を形成する工程と、前記処理容器内に窒素を
含むガスを活性化して供給することで、前記シリコン含有層をシリコン窒化層に改質する工程と、前記処理容器内に酸素を含むガスを活性化して供給することで、前記シリコン窒化層をシリコン酸化層またはシリコン酸窒化層に改質する工程と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行う半導体装置の製造方法が提供される。
【0008】
本発明のさらに他の態様によれば、基板を収容した処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給することで、前記基板上に所定元素含有層を形成する工程と、前記処理容器内に窒素を含むガスを活性化して供給することで、前記所定元素含有層を窒化層に改質する工程と、前記処理容器内に前記原料ガスを供給することで、前記窒化層上に所定元素含有層を形成する工程と、前記処理容器内に酸素を含むガスを活性化して供給することで、前記窒化層上に形成された所定元素含有層および前記窒化層を、酸化層または酸窒化層に改質する工程と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行う半導体装置の製造方法が提供される。
【0009】
本発明のさらに他の態様によれば、基板を収容した処理容器内にシリコンを含むガスを供給することで、前記基板上にシリコン含有層を形成する工程と、前記処理容器内に窒素を含むガスを活性化して供給することで、前記シリコン含有層をシリコン窒化層に改質する工程と、前記処理容器内に前記シリコンを含むガスを供給することで、前記シリコン窒化層上にシリコン含有層を形成する工程と、前記処理容器内に酸素を含むガスを活性化して供給することで、前記シリコン窒化層上に形成されたシリコン含有層および前記シリコン窒化層をシリコン酸化層またはシリコン酸窒化層に改質する工程と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行う半導体装置の製造方法が提供される。
【0010】
本発明のさらに他の態様によれば、基板を収容する処理容器と、前記処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給する原料ガス供給系と、前記処理容器内に窒素を含むガスを供給する窒素含有ガス供給系と、前記処理容器内に酸素を含むガスを供給する酸素含有ガス供給系と、前記窒素を含むガスまたは前記酸素を含むガスを活性化する活性化機構と、基板を収容した前記処理容器内に前記原料ガスを供給することで、前記基板上に所定元素含有層を形成し、前記処理容器内に前記窒素を含むガスを活性化して供給することで、前記所定元素含有層を窒化層に改質し、前記処理容器内に前記酸素を含むガスを活性化して供給することで、前記窒化層を酸化層または酸窒化層に改質し、これを1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うように前記原料ガス供給系、前記窒素含有ガス供給系、前記酸素含有ガス供給系、および、前記活性化機構を制御するコントローラと、を有する基板処理装置が提供される。
【0011】
本発明のさらに他の態様によれば、基板を収容する処理容器と、前記処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給する原料ガス供給系と、前記処理容器内に窒素を含むガスを供給する窒素含有ガス供給系と、前記処理容器内に酸素を含むガスを供給する酸素含有ガス供給系と、前記窒素を含むガスまたは前記酸素を含むガスを活性化する活性化機構と、基板を収容した前記処理容器内に前記原料ガスを供給することで、前記基板上に所定元素含有層を形成し、前記処理容器内に前記窒素を含むガスを活性化して供給することで、前記所定元素含有層を窒化層に改質し、前記処理容器内に前記原料ガスを供給することで、前記窒化層上に所定元素含有層を形成し、前記処理容器内に酸素を含むガスを活性化して供給することで、前記窒化層上に形成された所定元素含有層および前記窒化層を、酸化層または酸窒化層に改質し、これを1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うように前記原料ガス供給系、前記窒素含有ガス供給系、前記酸素含有ガス供給系、および、前記活性化機構を制御するコントローラと、を有する基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、膜中の炭素、水素、窒素、塩素等の不純物濃度が極めて低い絶縁膜を
低温で形成することができる半導体装置の製造方法、基板処理方法および基板処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面で示す図である。
【図2】本実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を図1のA−A線断面図で示す図である。
【図3】本実施形態の第1シーケンスにおけるガス供給およびプラズマパワー供給のタイミングを示す図である。
【図4】本実施形態の第2シーケンスにおけるガス供給およびプラズマパワー供給のタイミングを示す図である。
【図5】従来技術のシーケンスにより成膜したシリコン酸化膜と本実施形態の第1シーケンス、第2シーケンスにより成膜したシリコン酸化膜の成膜速度比率を表す図である。
【図6】従来技術のシーケンスにより成膜したシリコン酸化膜と本実施形態の第1シーケンス、第2シーケンスにより成膜したシリコン酸化膜の膜厚分布均一性比率を表す図である。
【図7】他の実施形態の第1シーケンスにおけるガス供給およびプラズマパワー供給のタイミングを示す図である。
【図8】他の実施形態の第2シーケンスにおけるガス供給およびプラズマパワー供給のタイミングを示す図である。
【図9】従来技術のシーケンスにおけるSiO堆積モデルを示す概略図である。
【図10】本実施形態の第2シーケンスにおけるSiO堆積モデルを示す概略図である。
【図11】(a)は、一般的なCVD法により形成したシリコン酸化膜の膜中に含まれる不純物(H、C、N、Cl)の濃度を表すグラフ図であり、(b)は、本実施形態の第2シーケンスにより形成したシリコン酸化膜の膜中に含まれる不純物(H、C、N、Cl)の濃度を表すグラフ図である。
【図12】他の実施形態の第1シーケンスにおけるガス供給およびプラズマパワー供給のタイミングを示す図である。
【図13】他の実施形態の第2シーケンスにおけるガス供給およびプラズマパワー供給のタイミングを示す図である。
【図14】他の実施形態のHガスを連続的に流す場合の第1シーケンスにおけるガス供給およびプラズマパワー供給のタイミングを示す図である。
【図15】他の実施形態のHガスを連続的に流す場合の第2シーケンスにおけるガス供給およびプラズマパワー供給のタイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面で示し、図2は本実施の形態で好適に用いられる縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を図1のA−A線断面図で示す。
【0016】
図1に示されているように、処理炉202は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。なお、ヒータ207は、後述するようにガスを熱で活性化する活性化機構としても機能する。
【0017】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成する反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の筒中空部には処理室201が形成されており、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0018】
反応管203の下部には、ガスノズル233が反応管203を貫通するように設けられている。ガスノズル233には第1ガス供給管232aが接続されており、第1ガス供給管232aには第3ガス供給管232cが接続されている。また、反応管203には第2ガス供給管232bが接続されている。このように、反応管203には3本のガス供給管232a、232b、232cが設けられており、処理室201内へ複数種類、ここでは3種類のガスを供給するように構成されている。
【0019】
第1ガス供給管232aには上流方向から順に流量制御器(流量制御手段)である第1マスフローコントローラ241a、及び開閉弁である第1バルブ243aが設けられている。また、第1ガス供給管232aの第1バルブ243aよりも下流側には、第3ガス供給管232cが接続されている。この第3ガス供給管232cには上流方向から順に流量制御器(流量制御手段)である第3マスフローコントローラ241c、及び開閉弁である第3バルブ243cが設けられている。第1ガス供給管232aは、上述のようにガスノズル233に接続されており、ガスノズル233の垂直部は、処理室201内に形成された後述するバッファ室237内に設けられている。
【0020】
第2ガス供給管232bには上流方向から順に流量制御器(流量制御手段)である第2マスフローコントローラ241b、開閉弁である第2バルブ243bが設けられている。第2ガス供給管232bは、処理室201内に形成された後述するガス供給部249に接続されている。
【0021】
第1ガス供給管232aからは、酸素を含むガス(酸素含有ガス)として、例えば一酸化窒素ガス(NO)が、第1マスフローコントローラ241a、第1バルブ243a、ガスノズル233、バッファ室237を介して処理室201内に供給される。また、第2ガス供給管232bからは、シリコン原料ガス、すなわち所定元素としてのシリコンを含むガス(シリコン含有ガス)として、例えばヘキサクロロジシランガス(SiCl、略称HCD)が、第2マスフローコントローラ241b、第2バルブ243b、ガス供給部249を介して処理室201内に供給される。また、第3ガス供給管232cからは、窒素を含むガス(窒素含有ガス)として、例えばアンモニアガス(NH)が、第3マスフローコントローラ241c、第3バルブ243c、第1ガス供給管232a、ガスノズル233、バッファ室237を介して処理室201内に供給される。主に、第1ガス供給管232a,第1マスフローコントローラ241a,第1バルブ243a,ガスノズル233,バッファ室237により第1ガス供給系としての酸素含有ガス供給系が構成され、主に、第2ガス供給管232b、第2マスフローコントローラ241b、第2バルブ243b、ガス供給部249により第2ガス供給系としての原料ガス供給系、すなわちシリコン含有ガス供給系が構成され、主に、第3ガス供給管232c、第3マスフローコントローラ241c、第3バルブ243c、第1ガス供給管232a、ガスノズル233、バッファ室237により第3ガス供給系としての窒素含有ガス供給系が構成される。
【0022】
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231の反応管203との接続側と反対側である下流側には圧力検出器としての圧力センサ245および圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブで構成される第4バルブ243dを介して真空排気装置として
の真空ポンプ246が接続されており、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。なお、APCバルブである第4バルブ243dは弁を開閉して処理室201内の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調節して圧力調整可能となっている開閉弁である。主に、排気管231、第4バルブ243d、真空ポンプ246、圧力センサ245により排気系が構成される。
【0023】
処理炉202を構成している反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間には、反応管203内壁の下部より上部にわたる部分に、ウエハ200の積載方向に沿って、ガス分散空間であるバッファ室237が設けられている。バッファ室237のウエハ200と隣接する壁の端部にはガスを供給する供給孔である第1のガス供給孔248aが設けられている。この第1のガス供給孔248aは反応管203の中心を向くように開口している。この第1のガス供給孔248aは、図1に示すように、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0024】
バッファ室237の第1のガス供給孔248aが設けられた端部と反対側の端部には、上述のガスノズル233が、やはり反応管203の下部より上部にわたりウエハ200の積載方向に沿って配設されている。そしてノズル233にはガスを供給する供給孔である第2のガス供給孔248bがバッファ室237の中心を向くように開口して設けられている。この第2のガス供給孔248bは、バッファ室237の第1のガス供給孔248aと同様に、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれの開口面積は、バッファ室237内と処理室201内の差圧が小さい場合には、上流側(下部)から下流側(上部)まで、それぞれ同一の開口面積で同一の開口ピッチとするとよいが、差圧が大きい場合には上流側から下流側に向かって、それぞれ開口面積を大きくするか、開口ピッチを小さくするとよい。
【0025】
本実施形態においては、第2のガス供給孔248bのそれぞれの開口面積や開口ピッチを、上流側から下流側にかけて上述のように調節することで、まず、第2のガス供給孔248bのそれぞれから、流速の差はあるものの、流量がほぼ同量であるガスを噴出させる。そしてこの第2のガス供給孔248bのそれぞれから噴出するガスを、一旦、バッファ室237内に導入し、バッファ室237内においてガスの流速差の均一化を行うこととした。
【0026】
すなわち、第2のガス供給孔248bのそれぞれよりバッファ室237内に噴出したガスはバッファ室237内で各ガスの粒子速度が緩和された後、第1のガス供給孔248aより処理室201内に噴出する。これにより、第2のガス供給孔248bのそれぞれよりバッファ室237内に噴出したガスは、第1のガス供給孔248aのそれぞれより処理室201内に噴出する際には、均一な流量と流速とを有するガスとなる。
【0027】
さらに、バッファ室237内には、図2に示すように、細長い構造を有する第1の電極である第1の棒状電極269及び第2の電極である第2の棒状電極270が、反応管203の下部より上部にわたりウエハ200の積層方向に沿って配設されている。第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270のそれぞれは、ガスノズル233と平行に設けられている。第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270のそれぞれは、上部より下部にわたって各電極を保護する保護管である電極保護管275により覆われることで保護されている。この第1の棒状電極269又は第2の棒状電極270のいずれか一方は整合器272を介して高周波電源273に接続され、他方は基準電位であるアースに接続されている。この結果、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間のプラズマ生成領域224にプラズマが生成される。主に、第1の棒状電極269、第2の棒状電極270、電極保護管275、整合器272、高周波電源273によりプラズマ源(プラズマ発生器)
が構成される。なお、プラズマ源は、後述するようにガスをプラズマで活性化する活性化機構として機能する。
【0028】
電極保護管275は、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270のそれぞれをバッファ室237の雰囲気と隔離した状態でバッファ室237内に挿入できる構造となっている。ここで、電極保護管275の内部は外気(大気)と同一雰囲気であると、電極保護管275にそれぞれ挿入された第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270はヒータ207による熱で酸化されてしまう。そこで、電極保護管275の内部には窒素などの不活性ガスを充填あるいはパージし、酸素濃度を充分低く抑えて第1の棒状電極269又は第2の棒状電極270の酸化を防止するための不活性ガスパージ機構が設けられる。
【0029】
さらに、図2に示すように、第1のガス供給孔248aの位置より、反応管203の内周を120°程度回った内壁に、バッファ室237とは異なるガス分散空間としてのガス供給部249が設けられている。ガス供給部249は、反応管203内壁の下部より上部にわたる部分に、ウエハ200の積層方向に沿って設けられている。このガス供給部249は、後述する成膜工程において、ウエハ200へ複数種類のガスを1種類ずつ交互に供給する際に、バッファ室237とガス供給種を分担する供給部である。
【0030】
このガス供給部249にもバッファ室237と同様にウエハと隣接する位置にガスを供給する供給孔である第3のガス供給孔248cが設けられている。この第3のガス供給孔248cは、反応管203の中心を向くように開口している。ガス供給部249の下部には、第2ガス供給管232bが接続されている。
【0031】
第3のガス供給孔248cは、バッファ室237の第1のガス供給孔248aと同様に、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれの開口面積は、バッファ室237内と処理室201内の差圧が小さい場合には、上流側(下部)から下流側(上部)まで、それぞれ同一の開口面積で同一の開口ピッチとするとよいが、差圧が大きい場合には上流側から下流側に向かってそれぞれ開口面積を大きくするか開口ピッチを小さくするとよい。
【0032】
反応管203の下方には、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は反応管203の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ219は例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には反応管203の下端と当接するシール部材としてのOリング220が設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側には、ボートを回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255はシールキャップ219を貫通して、後述するボート217に接続されており、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート217を処理室201に対し搬入搬出することが可能となっている。
【0033】
基板保持具としてのボート217は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなり、複数枚のウエハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に保持するように構成されている。なおボート217の下部には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる断熱部材218が設けられており、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなるよう構成されている。なお、断熱部材218は、石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる複数枚の断熱板と、これらを水平姿勢で多段に支持する断熱板ホルダとにより構成してもよい。反応管203内には温度検出器としての温度セン
サ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ガスノズル233と同様に反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0034】
制御部(制御手段)であるコントローラ121は、第1〜第3のマスフローコントローラ241a、241b、241c、第1〜第4のバルブ243a、243b、243c、243d、圧力センサ245、ヒータ207、温度センサ263、真空ポンプ246、ボート回転機構267、ボートエレベータ115、高周波電源273、整合器272等に接続されている。コントローラ121により、第1〜第3のマスフローコントローラ241a、241b、241cの流量調整、第1〜第3のバルブ243a、243b、243cの開閉動作、第4バルブ(APCバルブ)243dの開閉及び圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整、真空ポンプ246の起動・停止、ボート回転機構267の回転速度調節、ボートエレベータ115の昇降動作等の制御や、高周波電源273の電力供給制御、整合器272によるインピーダンス制御が行われる。
【0035】
次に、上述の基板処理装置の処理炉を用いて半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に絶縁膜としての酸化膜を成膜する2つのシーケンス例(第1シーケンス、第2シーケンス)について説明する。尚、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0036】
(第1シーケンス)
まず、本実施形態の第1シーケンスについて説明する。
図3に、本実施形態の第1シーケンスにおけるガス供給およびプラズマパワー供給のタイミング図を示す。本実施形態の第1シーケンスでは、ALD(Atomic Layer Deposition)反応またはCVD(Chemical Vapor Deposition)反応が生じる条件下で、基板に対し所定元素を含む原料ガスを供給することで基板上に原料の吸着層または所定元素の層(以下、所定元素含有層)を形成する第1工程と、その所定元素含有層に対し窒素を含むガスをプラズマまたは熱で活性化して供給することで、所定元素含有層を窒化層に改質する第2工程と、その窒化層に対し原料ガスを供給することで、窒化層上に所定元素含有層を形成する第3工程と、窒化層上に形成した所定元素含有層に対し酸素を含むガスをプラズマで活性化して供給することで、窒化層上に形成した所定元素含有層および窒化層を酸化層に改質する第4工程と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行う。これにより所望膜厚の酸化膜を形成する。なお、ALD反応が生じる条件下では基板上に原料の吸着層が形成され、CVD反応が生じる条件下では基板上に所定元素の層が形成される。ここで、原料の吸着層とは原料分子の連続的な吸着層の他、不連続な吸着層をも含む。また、所定元素の層とは、所定元素により構成される連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできる薄膜をも含む総称である。なお、所定元素により構成される連続的な層を薄膜という場合もある。第1工程では基板上に1原子層未満から数原子層の所定元素含有層が形成され、第2工程ではその所定元素含有層が窒化層に置換され、第3工程ではその窒化層上に1原子層未満から数原子層の所定元素含有層が形成され、第4工程ではその所定元素含有層とその下地である窒化層の両方が酸化層に置換される。なお、1原子層未満の層とは不連続に形成される原子層のことを意味している。
【0037】
以下、これを具体的に説明する。なお、本実施形態の第1シーケンスでは、原料ガスとして所定元素としてのシリコンを含むガスであるHCDガスを、窒素を含むガスとしてNHガスを、酸素を含むガスとしてNOガスを用い、基板上に絶縁膜としてシリコン酸化膜を形成する例について説明する。
【0038】
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、図1に示されているように、複数枚のウエハ200を保持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介して反応管203の下端をシールした状態となる。
【0039】
処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力に基づき第4バルブ(APCバルブ)243dが、フィードバック制御される。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、処理室201内の温度を検出する温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。続いて、回転機構267により、ボート217が回転されることで、ウエハ200が回転される。その後、後述する4つのステップを順次実行する。
【0040】
[ステップ1]
ステップ1では、第2ガス供給管232bの第2バルブ243b、及び、ガス排気管231の第4バルブ243dを共に開けて、第2ガス供給管232bから第2マスフローコントローラ241bにより流量調整されたHCDガスをガス供給部249の第3ガス供給孔248cから処理室201内に供給しつつガス排気管231から排気する。このとき、第4バルブ243dを適正に調整して処理室201内の圧力を、例えば10〜1000Paの範囲内の圧力とする。第2マスフローコントローラ241bで制御するHCDガスの供給流量は、例えば10〜1000sccmの範囲内の流量とする。HCDガスをウエハ200に晒す時間は、例えば2〜120秒間の範囲内の時間とする。このときヒータ207の温度は、処理室201内でALD反応またはCVD反応が生じる程度の温度、すなわちウエハ200の温度が、例えば300〜650℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。なお、ウエハ200の温度が300℃未満となるとウエハ200上にHCDが吸着しにくくなる。また、ウエハ200の温度が650℃を超えるとCVD反応が強くなり、均一性が悪化しやすくなる。よって、ウエハ200の温度は300〜650℃の範囲内の温度とするのが好ましい。HCDガスの供給により、ウエハ200表面の下地膜上にHCDが表面吸着、堆積し、さらに熱分解する等して、ウエハ200上(下地膜上)に1原子層未満から数原子層のHCDの吸着層またはシリコン層(以下、シリコン含有層)が形成される。なお、ALD反応が生じる条件下ではウエハ200上にHCDの吸着層が形成され、CVD反応が生じる条件下ではウエハ200上にシリコン層が形成される。ここでHCDの吸着層とはHCD分子の連続的な吸着層の他、不連続な吸着層をも含む。また、シリコン層とはシリコンにより構成される連続的な層の他、不連続な層やこれらが重なってできる薄膜をも含む。なお、シリコンにより構成される連続的な層を薄膜という場合もある。なお、ウエハ200上に形成されるシリコン含有層の厚さが数原子層を超えると、後述するステップ2,4での窒化、酸化の作用がシリコン含有層の全体に届かなくなる。また、ウエハ200上に形成可能なシリコン含有層の最小値は1原子層未満である。よって、シリコン含有層の厚さは1原子層未満から数原子層とするのが好ましい。シリコン含有層が形成された後、第2バルブ243bを閉じ、HCDガスの供給を停止する。このとき、第4バルブ243dは開いたままとして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは成膜に寄与した後のHCDガスを排除する。また、この時にはN等の不活性ガスを処理室201内に供給すると、更に処理室201内に残留する未反応もしくは成膜に寄与した後のHCDガスを処理室201内から排除する効果が高まる。
【0041】
Siを含む原料としては、HCDの他、TCS(テトラクロロシラン、SiCl)、
DCS(ジクロロシラン、SiHCl)、SiH(モノシラン)等の無機原料だけでなく、アミノシラン系の4DMAS(テトラキスジメチルアミノシラン、Si(N(CH)))、3DMAS(トリスジメチルアミノシラン、Si(N(CH))H)、2DEAS(ビスジエチルアミノシラン、Si(N(C)、BTBAS(ビスターシャリーブチルアミノシラン、SiH(NH(C)))などの有機原料を用いてもよい。
【0042】
[ステップ2]
ステップ2では、第3ガス供給管232cの第3バルブ243c、及び、ガス排気管231の第4バルブ243dを共に開けて、第3ガス供給管232cから第3マスフローコントローラ241cにより流量調整されたNHガスを、第1ガス供給管232aを介してガスノズル233の第2のガス供給孔248bからバッファ室237内へ噴出する。このとき、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を印加することで、このNHをプラズマ励起し、活性種として第1のガス供給孔248aから処理室201内に供給しつつガス排気管231から排気する。NHガスをプラズマ励起することにより活性種として流すときは、第4バルブ243dを適正に調整して処理室201内の圧力を、例えば10〜100Paの範囲内の圧力とする。第3マスフローコントローラ241cで制御するNHの供給流量は、例えば1000〜10000sccmの範囲内の流量とする。NHをプラズマ励起することにより得られた活性種にウエハ200を晒す時間は、例えば2〜120秒間の範囲内の時間とする。このときのヒータ207の温度は、ステップ1と同様、ウエハ200の温度が300〜650℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。なお、高周波電源273から第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に印加する高周波電力は、例えば50〜400Wの範囲内の電力となるように設定する。NHは反応温度が高く、上記のようなウエハ温度、処理室内圧力では反応しづらいので、プラズマ励起することにより活性種としてから流すようにしており、このためウエハ200の温度は上述のように設定した低い温度範囲のままでよい。また、NHガスを供給する際にプラズマ励起せず、第4バルブ243dを適正に調整して処理室201内の圧力を例えば50〜3000Paの範囲内の圧力とすることで、NHガスをノンプラズマで熱的に活性化することも可能である。
【0043】
このとき、処理室201内に流しているガスはNHをプラズマ励起することにより得られた活性種、もしくは処理室201内圧力を高くすることで熱的に活性化されたNHガスであり、処理室201内にはHCDガスは流していない。したがって、NHは気相反応を起こすことはなく、活性種となった、もしくは活性化されたNHは、ステップ1でウエハ200上に形成された下地シリコン含有層(HCDの吸着層またはシリコン層)と表面反応し、下地シリコン含有層は窒化されてシリコン窒化層(Si層、以下、単にSiN層ともいう。)へと改質される。
【0044】
その後、第3ガス供給管232cの第3バルブ243cを閉じて、NHの供給を止める。このとき、ガス排気管231の第4バルブ243dは開いたままにし、真空ポンプ246により処理室201内を20Pa以下に排気し、残留NHを処理室201内から排除する。また、この時にはN等の不活性ガスを処理室201内に供給すると、更に残留NHを排除する効果が高まる。
【0045】
Nを含む活性化されたガスとしては、NHをプラズマや熱で励起したガス以外に、N、NF、N等をプラズマや熱で励起したガスを用いてもよく、これらのガスをAr、He、Ne、Xe等の希ガスで希釈したガスをプラズマや熱で励起して用いてもよい。
【0046】
[ステップ3]
ステップ3では、第2ガス供給管232bの第2バルブ243b、及び、ガス排気管231の第4バルブ243dを共に開けて、第2ガス供給管232bから第2マスフローコントローラ241bにより流量調整されたHCDガスをガス供給部249の第3ガス供給孔248cから処理室201内に供給しつつガス排気管231から排気する。このとき、第4バルブ243dを適正に調整して処理室201内の圧力を、例えば10〜1000Paの範囲内の圧力とする。第2マスフローコントローラ241bで制御するHCDガスの供給流量は、例えば10〜1000sccmの範囲内の流量とする。HCDガスにウエハ200を晒す時間は、例えば2〜120秒間の範囲内の時間とする。このときヒータ207の温度は、処理室201内でALD反応またはCVD反応が生じる程度の温度、すなわちウエハ200の温度が、例えば300〜650℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。HCDガスの供給により、ウエハ200表面の下地膜、すなわちステップ2において形成されたシリコン窒化膜上にHCDが表面吸着、堆積し、さらに熱分解する等して、ウエハ200上(下地膜上)に1原子層未満から数原子層のシリコン含有層(HCDの吸着層またはシリコン層)が形成される。シリコン含有層が形成された後、第2バルブ243bを閉じ、HCDガスの供給を停止する。このとき、第4バルブ243dは開いたままとして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは成膜に寄与した後のHCDガスを排除する。また、この時にはN等の不活性ガスを処理室201内に供給すると、更に処理室201内に残留する未反応もしくは成膜に寄与した後のHCDガスを処理室201内から排除する効果が高まる。
【0047】
Siを含む原料としては、HCDの他、TCS(テトラクロロシラン、SiCl)、DCS(ジクロロシラン、SiHCl)、SiH(モノシラン)等の無機原料だけでなく、アミノシラン系の4DMAS(テトラキスジメチルアミノシラン、Si(N(CH)))、3DMAS(トリスジメチルアミノシラン、Si(N(CH))H)、2DEAS(ビスジエチルアミノシラン、Si(N(C)、BTBAS(ビスターシャリーブチルアミノシラン、SiH(NH(C)))などの有機原料を用いてもよい。
【0048】
[ステップ4]
ステップ4では、第1ガス供給管232aの第1バルブ243a、及び、ガス排気管231の第4バルブ243dを共に開けて、第1ガス供給管232aから第1マスフローコントローラ241aにより流量調整されたNOガスをガスノズル233の第2のガス供給孔248bからバッファ室237内へ噴出させる。このとき、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を印加することで、このNOガスをプラズマ励起し、活性種として第1のガス供給孔248aから処理室201内に供給しつつガス排気管231から排気する。NOガスをプラズマ励起することにより活性種として流すときは、第4バルブ243dを適正に調整して処理室201内の圧力を、例えば10〜100Paの範囲内の圧力とする。第1マスフローコントローラ241aで制御するNOガスの供給流量は、例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。NOガスをプラズマ励起することにより得られた活性種にウエハ200を晒す時間は、例えば2〜120秒間の範囲内の時間とする。このときのヒータ207の温度は、HCDガスの供給時と同じく、ウエハ200の温度が300〜650℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。なお、高周波電源273から第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に印加する高周波電力は、例えば、50〜400Wの範囲内の電力となるように設定する。NOガスは反応温度が高く、上記のようなウエハ温度、処理室内圧力では反応しづらいので、プラズマ励起することにより活性種としてから流すようにしており、このためウエハ200の温度は上述のように設定した低い温度範囲のままでよい。
【0049】
このとき、処理室201内に流しているガスはNOガスをプラズマ励起することにより得られた活性種であり、処理室201内には、HCDガスもNHガスも流していない。したがって、NOガスは気相反応を起こすことはなく、活性種となったNOは、ステップ3で形成されたシリコン含有層及びその下地であるステップ2で形成されたシリコン窒化層と表面反応し、シリコン含有層及びシリコン窒化層は、共に、酸化されてシリコン酸化層(SiO層、以下、単にSiO層ともいう。)へと改質される。
【0050】
その後、第1ガス供給管232aの第1バルブ243aを閉じて、NOガスの供給を停止する。このとき、ガス排気管231の第4バルブ243dは開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を20Pa以下に排気し、残留NOを処理室201内から排除する。また、この時にはN等の不活性ガスを処理室201内に供給すると、更に残留NOを排除する効果が高まる。
【0051】
上述のステップ4のように、活性化されたNOガスを用いてシリコン窒化層及びシリコン含有層をシリコン酸化層へ改質する改質工程を行うことにより、活性化されたNOガスの持つエネルギーがシリコン窒化層やシリコン含有層中に含まれるSi−N、Si−Cl、Si−H結合を切り離す。Si−O結合を形成するためのエネルギーは、Si−N、Si−Cl、Si−Hの結合エネルギーよりも高いため、Si−O結合形成に必要なエネルギーを酸化処理対象のシリコン窒化層及びシリコン含有層に与えることで、シリコン窒化層やシリコン含有層中のSi−N、Si−Cl、Si−H結合は切り離される。Siとの結合を切り離されたN、H、Clは膜中から除去され、N、H、Cl、HCl等として排出される。また、N、H、Clとの結合が切られることで余ったSiの結合手は、活性化されたNOガスに含まれるOと結びつきSiO層へと改質される。この手法により形成したSiO膜は、膜中窒素、水素、塩素濃度が極めて低く、Si/O比率は化学量論組成である0.5に極めて近い、良質な膜となることを確認した。
【0052】
Oを含む活性化されたガスとしては、NOをプラズマ励起したガス以外に、O、NO、N等をプラズマで励起したガスを用いてもよく、これらのガスをAr、He、Ne、Xe等の希ガスで希釈したガスをプラズマ励起して用いてもよい。またOを含む活性化されたガスとしてOを用いてよく、OをAr、He、Ne、Xe等の希ガスで希釈したガスをプラズマ励起して用いてもよい。
【0053】
上述したステップ1〜4を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことにより、ウエハ200上に所定膜厚のシリコン酸化膜を成膜することができる。
【0054】
所定膜厚のシリコン酸化膜を成膜すると、N等の不活性ガスが処理室201内へ供給されつつ排気されることで処理室201内が不活性ガスでパージされる。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され、処理室201内の圧力が常圧に復帰される。
【0055】
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、反応管203の下端が開口されるとともに、処理済ウエハ200がボート217に保持された状態で反応管203の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済ウエハ200はボート217より取出される(ウエハディスチャージ)。
【0056】
(第2シーケンス)
次に、本実施形態の第2シーケンスについて説明する。
図4に、本実施形態の第2シーケンスにおけるガス供給およびプラズマパワー供給のタイミング図を示す。本実施形態の第2シーケンスでは、ALD反応またはCVD反応が生じる条件下で、基板に対し所定元素を含む原料ガスを供給することで基板上に所定元素含有層(原料の吸着層または所定元素の層)を形成する第1工程と、その所定元素含有層に
対し窒素を含むガスをプラズマまたは熱で活性化して供給することで、所定元素含有層を窒化層に改質する第2工程と、その窒化層に対し酸素を含むガスをプラズマで活性化して供給することで、窒化層を酸化層に改質する第3工程と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行う。これにより所望膜厚の酸化膜を形成する。第1工程では基板上に1原子層未満から数原子層の所定元素含有層が形成され、第2工程ではその所定元素含有層が窒化層に置換され、第3工程ではその窒化層が酸化層に置換される。
【0057】
なお、第2シーケンスが第1シーケンスと異なるのは、第2シーケンスに、第1シーケンスにおけるステップ3(SiN層上へのSi含有層形成)に対応するステップがない点だけであり、その他の点は第1シーケンスと同様である。すなわち、第1シーケンスにおけるステップ3(SiN層上へのSi含有層形成)をなくし、その代わりに第1シーケンスにおけるステップ4(SiO層への改質)をステップ3として前倒しして行うシーケンスが第2シーケンスに相当する。第2シーケンスにおける各ステップでの処理条件、使用するガス等も第1シーケンスと同様である。ただし、第2シーケンスでは、ステップ3において、SiO層へ改質する対象が第1シーケンスとは異なる。第1シーケンスのステップ4では、Si含有層及びSiN層をSiO層へと改質したが、第2シーケンスのステップ3ではSiN層をSiO層へと改質する。
【0058】
第2シーケンスにおけるステップ3では、活性化されたNOガスを用いてシリコン窒化層をシリコン酸化層へ改質する改質工程を行うことにより、活性化されたNOガスの持つエネルギーがシリコン窒化層中に含まれるSi−N、Si−Cl、Si−H結合を切り離す。Si−O結合を形成するためのエネルギーは、Si−N、Si−Cl、Si−Hの結合エネルギーよりも高いため、Si−O結合形成に必要なエネルギーを酸化処理対象のシリコン窒化層に与えることで、シリコン窒化層中のSi−N、Si−Cl、Si−H結合は切り離される。Siとの結合を切り離されたN、H、Clは膜中から除去され、N、H、Cl、HCl等として排出される。また、N、H、Clとの結合が切られることで余ったSiの結合手は、活性化されたNOガスに含まれるOと結びつきSiO層へと改質される。この手法により形成したSiO膜は、膜中窒素、水素、塩素濃度が極めて低く、Si/O比率は化学量論組成である0.5に極めて近い、良質な膜となることを確認した。
【実施例】
【0059】
(第1実施例)
次に第1実施例について説明する。
本実施形態の第1シーケンス、第2シーケンスおよび従来技術のシーケンスによりシリコン酸化膜を形成し、成膜速度および膜厚分布均一性を測定した。なお、従来技術のシーケンスとは、本実施形態の第1シーケンスにおけるステップ1とステップ4とを交互に繰り返すシーケンス(第2シーケンスにおけるステップ1とステップ3とを交互に繰り返すシーケンス)である。また、本実施例における成膜条件(各ステップでの処理条件)は、上述の実施形態に記載の条件範囲内の条件とした。
【0060】
その結果を図5、図6に示す。図5は、従来技術のシーケンスにより成膜したシリコン酸化膜の成膜速度を1とした場合の、本実施形態の第1シーケンス、第2シーケンスにより成膜したシリコン酸化膜の成膜速度比率を表している。図6は、従来技術のシーケンスにより成膜したシリコン酸化膜のウエハ面内における膜厚分布均一性を1とした場合の、本実施形態の第1シーケンス、第2シーケンスにより成膜したシリコン酸化膜のウエハ面内における膜厚分布均一性比率を表している。なお、膜厚分布均一性は、ウエハ面内における膜厚分布のばらつきの度合を示しており、その値が小さいほどウエハ面内における膜厚分布均一性が良好なことを示している。
【0061】
図5に示すように、本実施形態の第1シーケンス及び第2シーケンスにより形成されたシリコン酸化膜は、従来技術のシーケンスにより形成されたシリコン酸化膜に比べ、成膜速度が格段に高いことが分かる。特に、本実施形態の第1シーケンスによれば、従来技術のシーケンスによる成膜速度の2倍近い成膜速度が得られることが分かる。また、本実施形態の第2シーケンスの場合においても、従来技術のシーケンスによる成膜速度の1.5倍程度の成膜速度が得られることが分かる。
【0062】
また、図6に示すように、本実施形態の第1シーケンス及び第2シーケンスにより形成されたシリコン酸化膜は、従来技術のシーケンスにより形成されたシリコン酸化膜に比べ、膜厚分布均一性も大幅に改善されていることが分かる。特に、本実施形態の第2シーケンスによれば、従来技術のシーケンスにより形成されたシリコン酸化膜の膜厚分布均一性の1/10程度の、非常に良好な膜厚分布均一性が得られることが分かる。また、本実施形態の第1シーケンスの場合においても、従来技術のシーケンスにより形成されたシリコン酸化膜の膜厚分布均一性の1/5程度の、非常に良好な膜厚分布均一性が得られることが分かる。
【0063】
また、本実施形態の第1シーケンスと第2シーケンスとを比較すると、第2シーケンスに比べ、第1シーケンスの方が、成膜速度が高いことが分かる。一方、膜厚分布均一性については、第1シーケンスに比べ、第2シーケンスの方が良好となることが分かる。これらのことから、成膜速度の点では第2シーケンスよりも第1シーケンスの方が優れており、膜厚分布均一性の点では、第1シーケンスよりも第2シーケンスの方が優れていることが分かる。
【0064】
また、本実施形態の第1シーケンス及び第2シーケンスで使用するガス種を比較すると、本実施形態の第1シーケンス及び第2シーケンスのいずれの場合においても、NO使用時に比べ、NO使用時の方が、成膜速度が高く、膜厚分布均一性もより改善されていることが分かる。よっていずれのシーケンスにおいてもNOを使用した場合の方が、より成膜速度が高く、より膜厚分布均一性が良好なものとなることが分かる。
【0065】
ここで、本実施形態の第1シーケンスおよび第2シーケンスにおいて、基板上に形成したシリコン含有層(HCDの吸着層またはシリコン層)を直接酸化するのではなく、シリコン含有層を一旦窒化してから酸化するメリットについて説明する。ここでは、本実施形態の第2シーケンスを例に、従来技術のシーケンス(本実施形態の第2シーケンスにおけるステップ1とステップ3とを交互に繰り返すシーケンス)と比較しつつ説明する。
【0066】
図9に従来技術のシーケンスにおけるSiO堆積モデルを、図10に本実施形態の第2シーケンスにおけるSiO堆積モデルを示す。なお、いずれのシーケンスも、第1ステップでシリコンウエハ表面に原料としてのHCDの吸着層が形成される場合を示している。
【0067】
図9の従来技術のシーケンスの場合、まず原料ガスとしてのHCDガスを供給すると、図9(a)に示すように、シリコンウエハ表面にHCDが吸着し、シリコンウエハ上にHCDの吸着層が形成される。
【0068】
この状態でNOガスをプラズマ励起して得られたNO活性種(NO)を含むガスを供給すると、図9(b)に示すように、ウエハ面内におけるNOガス(NO)流の上流から下流に向かってシリコンウエハ表面に吸着したHCD分子の酸化が進んでいく。一方、ウエハ面内におけるNOガス流の下流のHCD分子はシリコンウエハ表面から脱離を起こす。これは、NOガスをプラズマ励起することで得られたNOにはHCD分子を酸化させるだけでなく、Si−O結合やSi−Si結合を切ってしまうだけのエネルギーがある
からと考えられる。すなわち、この場合、シリコンウエハ表面上へのSiの固定を十分に行うことができず、シリコンウエハ表面上にSiが固定されない領域が生じることとなる。さらに、図9(c)に示すように、NOは、形成したSiO層の下地であるシリコンウエハの表面をも酸化してしまう。
【0069】
このため、シリコンウエハを回転させつつ従来技術のシーケンスによりSiO膜を形成すると、そのSiO膜の外周部の膜厚が厚くなり、ウエハ面内における膜厚均一性が悪化してしまう(図6参照)。また、シリコンウエハ表面から脱離したHCD分子は処理室内の下流へと流れ、処理室内におけるNOガス流の下流、すなわち、ウエハ配列領域下部のウエハに再吸着し、酸化するため、ウエハ間における膜厚均一性も悪化してしまうことが考えられる。
【0070】
これに対し、図10の本実施形態の第2シーケンスの場合、まずHCDガスを供給すると、図10(a)に示すように、シリコンウエハ表面にHCDが吸着し、シリコンウエハ上にHCDの吸着層が形成される。
【0071】
この状態でNHガスをプラズマ励起して得られたNH活性種(NH)を含むガスを供給すると、図10(b)に示すように、ウエハ面内におけるNHガス(NH)流の上流から下流に向かってシリコンウエハ表面に吸着したHCD分子の窒化が進んでいく。このときウエハ面内におけるNHガス流の下流のHCD分子はシリコンウエハ表面から脱離することはない。すなわち従来技術のシーケンスにおいて生じていたHCD分子のシリコンウエハ表面からの脱離は抑制される。これは、NHガスをプラズマ励起することで得られたNHのエネルギーは比較的低く、また、Si−N結合は、Si−O結合と比べて低いエネルギーで生まれ、そして、そのような低いエネルギーであってもHCDを十分に窒化させることができるからと考えられる。すなわち、この場合、シリコンウエハ表面上へのSiの固定を十分に行うことができ、シリコンウエハ表面上に均一にSiが固定されることとなる。このため、図10(b)に示すように、シリコンウエハ表面に吸着したHCD分子はウエハ面内にわたり均一に窒化され、シリコンウエハ表面上にSiN層がウエハ面内にわたり均一に形成される。
【0072】
この状態でNOガスをプラズマ励起して得られたNO活性種(NO)を含むガスを供給すると、図10(c)に示すように、シリコンウエハ表面上に形成されたSiN層の酸化が行われる。このSiN層を酸化するためには、HCDを酸化するよりも高いエネルギーが必要となるが、それにより、そのエネルギーのSi−O結合やSi−Si結合を切る分への寄与は少なくなり、そのエネルギーは主としてSiN層中の窒素(N)を酸素(O)に置き換える反応に使用される。そのため、一度得られたウエハ面内における層厚均一性を維持したままSiN層をSiO層へ改質することができる。そして、その結果としてシリコンウエハ上に形成されるSiO膜のウエハ面内における膜厚均一性が良好なものとなる(図6参照)。また、Si−N結合の結合エネルギー(約3.7eV)は、Si−Si結合の結合エネルギー(約2.0eV)よりも高いため、SiN層はその下地であるシリコンウエハの酸化防止効果を示すこととなる。また、ウエハ面内におけるNOガス(NO)流の上流で酸化に寄与できなかったNOはその下流に流れ、下流部のSiN層の酸化に寄与し、より均一化が進むこととなる。
【0073】
なお、図9の従来技術のシーケンスおよび図10の本実施形態の第2シーケンスでは、第1ステップでシリコンウエハ表面にHCDの吸着層が形成される場合について説明したが、第1ステップで供給したHCDガスが自己分解してシリコンウエハ表面にシリコン層が形成される場合についても同様なことが言える。その場合、図9、図10のHCD分子をSi分子に置き換えれば、同様に説明することができる。
【0074】
ここで、上述の従来技術のシーケンスを変更した例、すなわち、ウエハ上へのシリコン含有層の形成と、そのシリコン含有層の酸化による酸化層の形成と、その酸化層の窒化と、を繰り返す例について説明する。
【0075】
この例の場合、まず、従来技術のシーケンスと同様にウエハ上にシリコン含有膜を形成した後、このシリコン含有層を酸化することとなるが、上述のように、シリコン含有層を酸化してSiO層に改質すると、そのSiO層のウエハ面内における層厚均一性は悪化する。よって、そのSiO層を窒化しても層厚均一性の良い層を得ることはできない。すなわち、この例の場合、膜厚均一性が良好な膜を形成するのは難しい。
【0076】
また、SiO層を窒化する場合においては、上述のように、Si−O結合は、Si−N結合と比べ結合エネルギーが高いため、一度形成されたSi−O結合をSi−N結合に変えるには非常に高いエネルギーが必要となる。そしてSi−O結合をSi−N結合に変えるには、まずSi−O結合を切る必要がある。しかしながら、Si−O結合は熱エネルギーでは容易に切ることができない。例えば、1000℃程度の温度でもSiO層を窒化することができないことを確認した。また、SiO層の形成と、SiO層のプラズマ窒化と、を繰り返しても、それにより得られるSiO膜中の窒素濃度は増加しないことも確認した。すなわち、SiO層を窒化するには非常に高いエネルギーが必要であり、SiO層を窒化するのは容易ではないことが判明した。
【0077】
(第2実施例)
次に第2実施例について説明する。
本実施形態の第2シーケンスおよび一般的なCVD法によりシリコン酸化膜を形成し、膜中不純物の濃度を測定した。なお、一般的なCVD法とは、DCSとNOとを同時に供給してCVD法によりシリコン酸化膜(HTO(High Temperature Oxide)膜)を形成する方法であり、成膜温度は780℃とした。また、本実施形態の第2シーケンスにおける各ステップでの成膜温度は600℃一定とし、それ以外の成膜条件(各ステップでの処理条件)は、上述の実施形態に記載の条件範囲内の条件とした。また膜中不純物の測定はSIMSを用いて行った。
【0078】
その結果を図11に示す。図11(a)は、一般的なCVD法により形成したシリコン酸化膜の膜中に含まれる不純物(H、C、N、Cl)の濃度を表している。図11(b)は、本実施形態の第2シーケンスにより形成したシリコン酸化膜の膜中に含まれる不純物(H、C、N、Cl)の濃度を表している。いずれの図も、横軸はSiO膜表面からの深さ(nm)を示しており、左側の縦軸は、H、C、N、Clの濃度(atoms/cm)を、右側の縦軸は、O、Siの二次イオン強度(counts/sec)を示している
【0079】
図11(a)、図11(b)に示すように、本実施形態の第2シーケンスにより形成したシリコン酸化膜の膜中に含まれる不純物のうちC、N、Hの濃度については、一般的なCVD法により形成したシリコン酸化膜の膜中に含まれるC、N、Hの濃度と同等であることが分かる。しかしながら本実施形態の第2シーケンスにより形成したシリコン酸化膜の膜中に含まれる不純物のうちClの濃度については、一般的なCVD法により形成したシリコン酸化膜の膜中に含まれるClの濃度よりも2桁程度も低いことが分かる。すなわち、本実施形態の第2シーケンスにより形成されたシリコン酸化膜は、一般的なCVD法により形成されたシリコン酸化膜に比べ、不純物、特にClの濃度が極めて低いことが分かる。なお、本実施形態の第1シーケンスにより形成したシリコン酸化膜の膜中に含まれる不純物の濃度についても第2シーケンスと同等であることを確認した。すなわち、本実施形態の第1シーケンスにより形成されたシリコン酸化膜も、一般的なCVD法により形成されたシリコン酸化膜に比べ、不純物、特にClの濃度が極めて低いことを確認した。
【0080】
なお、上記実施形態では、第1シーケンスおよび第2シーケンスにおいて、Oを含む活性化されたガスとしてNOをプラズマで励起したガスを用いる例について説明した。また、Oを含む活性化されたガスとしては、NOをプラズマで励起したガス以外に、O、NO、N等をプラズマで励起したガスを用いてもよく、Oを用いてもよいこと等についても説明した。さらに、Oを含む活性化されたガスとしては、加熱された減圧の処理室内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給して、これらのガスをノンプラズマで活性化したガスを用いることも可能である。この場合、処理室内に供給された酸素含有ガスと水素含有ガスは、加熱された減圧の雰囲気下にある処理室内において活性化されて反応し、それにより原子状酸素等のOを含む酸化種が形成され、この酸化種により酸化処理が行われることとなる。この酸化処理によれば、酸素含有ガスを単独で供給する場合に比べ、酸化力を大幅に向上させることができる。すなわち、減圧雰囲気下において酸素含有ガスに水素含有ガスを添加することで、酸素含有ガス単独供給の場合に比べ大幅な酸化力向上効果が得られる。図12、13に、この場合の第1シーケンス、第2シーケンスにおけるガス供給およびプラズマパワー供給のタイミング図をそれぞれ示す。
【0081】
図12の第1シーケンスにおいては、ウエハを収容した処理室内にシリコンを含む原料ガスを供給することで、ウエハ上にシリコン含有層を形成する工程(ステップ1)と、処理室内に窒素を含むガスをプラズマまたは熱で活性化して供給することで、シリコン含有層を窒化してシリコン窒化層に改質する工程(ステップ2)と、処理室内にシリコンを含む原料ガスを供給することで、シリコン窒化層上にシリコン含有層を形成する工程(ステップ3)と、加熱された減圧の処理室内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給することで、シリコン窒化層上に形成されたシリコン含有層およびシリコン窒化層を酸化してシリコン酸化層に改質する工程(ステップ4)と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行う。
【0082】
図13の第2シーケンスにおいては、ウエハを収容した処理室内にシリコンを含む原料ガスを供給することで、ウエハ上にシリコン含有層を形成する工程(ステップ1)と、処理室内に窒素を含むガスをプラズマまたは熱で活性化して供給することで、シリコン含有層を窒化してシリコン窒化層に改質する工程(ステップ2)と、加熱された減圧の処理室内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給することで、シリコン窒化層を酸化してシリコン酸化層に改質する工程(ステップ3)と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行う。
【0083】
この場合において、酸素含有ガスとしては、酸素(O)ガスおよびオゾン(O)ガスよりなる群から選択される少なくとも一つのガスを用いることができる。水素含有ガスとしては、水素(H)ガス、アンモニア(NH)ガスおよびメタン(CH)ガスよりなる群から選択される少なくとも一つのガスを用いることができる。
【0084】
なお、図12、13のいずれも、原料ガスがHCDガスであり、窒素を含むガスがNHガスであり、酸素含有ガスがOガスであり、水素含有ガスがHガスである場合の例を示している。
【0085】
加熱された減圧の処理室内に酸素含有ガス(例えばOガス)と水素含有ガス(例えばHガス)とを供給して酸化処理を行う場合、処理室内の圧力は、大気圧よりも低い圧力、例えば1〜1000Paの範囲内の圧力とする。Oガスの供給流量は、例えば1〜20000sccmの範囲内の流量とし、Hガスの供給流量は、例えば1〜20000sccmの範囲内の流量とする。OガスとHガスが反応することで得られた酸化種にウエハを晒す時間は、例えば2〜120秒間の範囲内の時間とする。このときのヒータの温度は、ウエハの温度が、例えば350〜1000℃の範囲内の温度となるように設定する
。なお、この範囲内の温度であれば減圧雰囲気下でのOガスへのHガス添加による酸化力向上の効果が得られることを確認した。また、ウエハの温度が低すぎると酸化力向上の効果が得られないことも確認した。ただしスループットを考慮すると、この酸化処理時のウエハの温度はシリコン含有層形成時や窒化処理時と同一の温度となるように、すなわち、処理室内の温度をシリコン含有層形成時や窒化処理時と同一の温度に保持するようにヒータの温度を設定するのが好ましい。この場合、第1シーケンスではステップ1からステップ4にかけてウエハの温度、すなわち処理室内の温度が350〜650℃の範囲内の一定の温度となるようにヒータの温度を設定する。第2シーケンスではステップ1からステップ3にかけて処理室内の温度が350〜650℃の範囲内の一定の温度となるようにヒータの温度を設定する。なお、減圧雰囲気下でのOガスへのHガス添加による酸化力向上の効果を得るには、処理室内の温度を350℃以上とする必要があるが、処理室内の温度は400℃以上とするのが好ましく、さらには450℃以上とするのが好ましい。処理室内の温度を400℃以上とすれば、400℃以上の温度で行うO酸化処理による酸化力を超える酸化力を得ることができ、処理室201内の温度を450℃以上とすれば、450℃以上の温度で行うOプラズマ酸化処理による酸化力を超える酸化力を得ることができる。
【0086】
第1シーケンスでは、OガスとHガスが反応することで得られた酸化種がステップ3で形成されたシリコン含有層及びその下地であるステップ2で形成されたシリコン窒化層と表面反応し、シリコン含有層及びシリコン窒化層は、共に、その酸化種により酸化されてシリコン酸化層へと改質される。また、第2シーケンスでは、OガスとHガスとが反応することで得られた酸化種がステップ2で形成されたシリコン窒化層と表面反応し、シリコン窒化層は、その酸化種により酸化されてシリコン酸化層へと改質される。
【0087】
なお、この減圧雰囲気下でのOガスへのHガス添加による酸化処理(以下、減圧酸化処理ともいう)と、Oプラズマ酸化処理と、O酸化処理とを比較したところ、450℃以上650℃以下における低温雰囲気下においては、この減圧酸化処理の酸化力が最も強力であることを確認した。正確には、400℃以上650℃以下では、減圧酸化処理による酸化力は、O酸化処理による酸化力を上回り、450℃以上650℃以下では、減圧酸化処理による酸化力は、O酸化処理およびOプラズマ酸化処理による酸化力を上回ることを確認した。これにより、この減圧酸化処理は、このような低温雰囲気下では非常に有効であることが判明した。ただし、減圧酸化処理においては、酸素含有ガスとしてOやOプラズマを用いるという選択肢もあり、これらのガスの使用を否定するものではない。OやOプラズマに水素含有ガスを添加することで、よりエネルギーの高い酸化種を生成することができ、この酸化種により酸化処理を行うことで、デバイス特性が向上する等の効果も考えられる。
【0088】
減圧酸化処理で用いる水素含有ガスとしてのHガスは、間欠的に、すなわち、図12、13のように酸化処理時においてのみ供給するようにしてもよいし、連続的に、すなわち、図14、15に示すように各ステップを繰り返す間中、常に供給し続けるようにしてもよい。なお、図14、15は、Hガスを連続的に流す場合の第1シーケンス、第2シーケンスにおけるガス供給およびプラズマパワー供給のタイミング図をそれぞれ示している。
【0089】
また、Hガスを間欠的に供給する場合でも、酸化処理時においてのみ供給する以外に、シリコン含有層形成時および酸化処理時においてのみHガスを供給するようにしてもよい。また、酸化処理前から酸化処理時にかけてHガスを供給するようにしてもよいし、酸化処理時から酸化処理後にかけてHガスを供給するようにしてもよい。また、酸化処理前から酸化処理後にかけてHガスを供給するようにしてもよい。
【0090】
シリコン含有層形成時、すなわちHCDガス供給時にHガスを供給することで、HCDガス中のClを引き抜くことが考えられ、成膜レートの向上、膜中Cl不純物の低減効果が考えられる。また、酸化処理前に、すなわちHCDガスの供給を停止した後またはNHガスの供給を停止した後にOガスよりも先行してHガスの供給を開始することで、膜厚均一性制御に有効となることが考えられる。また、Oガスよりも先行してHガスの供給を開始することで、例えば金属とシリコンが露出した部分に対しては、選択的にシリコンに酸化膜を形成できるようになることが考えられる。また、酸化処理後に、すなわちOガスの供給を停止した後、HCDガスの供給を開始する前に、Hガスを供給することで、酸化処理により形成されたSiO層の表面を水素終端させて改質させ、次のシリコン含有層形成時において供給するHCDガスがSiO層の表面に吸着しやすくなるようにできることが考えられる。
【0091】
(第3実施例)
次に第3実施例について説明する。
図13のシーケンスによりシリコン酸化膜(SiO膜)を形成し、そのシリコン酸化膜のウエハ面内における膜厚分布均一性と成膜レートを測定した。ステップ1〜3におけるウエハ温度は600℃に保持し、その他の成膜条件(各ステップでの処理条件)は、上述の実施形態等に記載の条件範囲内の条件とした。
【0092】
このようにしてウエハ上にSiO膜を形成したところ、形成されたSiO膜のウエハ面内における膜厚分布均一性は±0.8%程度であり、そのときの成膜レートは1.6Å/サイクル程度であった。膜厚分布均一性、成膜レートは何れも良好なものであり、上記実施形態の第2シーケンスにより形成されたSiO膜の膜厚分布均一性、成膜レートと同等であることを確認した。なお、図12のシーケンスにより形成されたSiO膜の膜厚分布均一性、成膜レートについても上記実施形態の第1シーケンスにより形成されたSiO膜の膜厚分布均一性、成膜レートと同等であることを確認した。
【0093】
なお、上記実施形態では、第1シーケンスおよび第2シーケンスのステップ1、および第1シーケンスのステップ3で、Si含有層を形成し、最終的にSiO膜を形成する例について説明したが、Si含有層(半導体元素を含む層)の代わりにTi、Al、Hf等の金属元素を含む層を形成し、最終的に金属酸化膜を形成するようにしてもよい。例えば、TiO膜を形成する場合には、第1シーケンスの場合、ステップ1でウエハ上にTi含有層(Ti原料の吸着層またはTi層)を形成し、第2ステップでTi含有層をTiN層に改質し、第3ステップでTiN層上にTi含有層を形成し、ステップ4でTi含有層/TiN層をTiO層に改質することも考えられる。第2シーケンスの場合、ステップ1でウエハ上にTi含有層を形成し、第2ステップでTi含有層をTiN層に改質し、第3ステップでTiN層をTiO層に改質することも考えられる。AlO膜やHfO膜を形成する場合も同様である。このように本発明は、所定元素が半導体元素である場合だけでなく、金属元素である場合にも適用できる。
【0094】
また、上記実施形態では、第1シーケンスのステップ4、および第2シーケンスのステップ3で、酸素を含むガスをプラズマで活性化して供給することで、SiN層等をSiO層に改質する例について説明したが、酸素を含むガスの活性化量を制御(抑制)することで、酸化力を抑え、SiN層等のSiO層への改質を完全には行わず、SiON層に改質することも可能である。例えば、酸素を含むガスをプラズマではなく、熱で活性化することで、SiN層等をSiON層に改質することが可能となる。図7、8に、この場合の第1シーケンス、第2シーケンスにおけるガス供給およびプラズマパワー供給のタイミング図をそれぞれ示す。
【0095】
図7の第1シーケンスでは、ALD反応またはCVD反応が生じる条件下で、基板に対
し所定元素を含む原料ガスを供給することで基板上に所定元素含有層(原料の吸着層または所定元素の層)を形成する第1工程(ステップ1)と、その所定元素含有層に対し窒素を含むガスをプラズマまたは熱で活性化して供給することで、所定元素含有層を窒化層に改質する第2工程(ステップ2)と、その窒化層に対し原料ガスを供給することで窒化層上に所定元素含有層を形成する第3工程(ステップ3)と、窒化層上に形成した所定元素含有層に対し酸素を含むガスを熱で活性化して供給することで、窒化層上に形成した所定元素含有層および窒化層を酸窒化層に改質する第4工程(ステップ4)と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行う。これにより所望膜厚の酸窒化膜を形成する。第1工程では基板上に1原子層未満から数原子層の所定元素含有層が形成され、第2工程ではその所定元素含有層が窒化層に置換され、第3工程ではその窒化層上に1原子層未満から数原子層の所定元素含有層が形成され、第4工程ではその所定元素含有層とその下地である窒化層の両方が酸窒化層に置換される。
【0096】
図8の第2シーケンスでは、ALD反応またはCVD反応が生じる条件下で、基板に対し所定元素を含む原料ガスを供給することで基板上に所定元素含有層を形成する第1工程(ステップ1)と、その所定元素含有層に対し窒素を含むガスをプラズマまたは熱で活性化して供給することで、所定元素含有層を窒化層に改質する第2工程(ステップ2)と、その窒化層に対し酸素を含むガスを熱で活性化して供給することで、窒化層を酸窒化層に改質する第3工程(ステップ3)と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行う。これにより所望膜厚の酸窒化膜を形成する。第1工程では基板上に1原子層未満から数原子層の所定元素含有層が形成され、第2工程ではその所定元素含有層が窒化層に置換され、第3工程ではその窒化層が酸窒化層に置換される。なお、図7、8のいずれも、所定元素がSiであり、原料ガスがHCDガスであり、窒素を含むガスがNHガスであり、酸素を含むガスがNOガスまたはNOガスである場合の例を示している。この場合、所定元素含有層はシリコン含有層となり、窒化層はシリコン窒化層(SiN層)となり、酸窒化層はシリコン酸窒化層(SiON層)となり、酸窒化膜はシリコン酸窒化膜(SiON膜)となる。
【0097】
図7、8のように、酸素を含むガスをプラズマではなく、熱で(ノンプラズマで)活性化して供給することで、SiN層等をSiON層に改質する場合、第1シーケンスのステップ4、および第2シーケンスのステップ3では、第1ガス供給管232aの第1バルブ243a、及び、ガス排気管231の第4バルブ243dを共に開けて、第1ガス供給管232aから第1マスフローコントローラ241aにより流量調整されたNOガスをガスノズル233の第2のガス供給孔248bからバッファ室237内へ噴出させる。このとき、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間には高周波電力を印加しないことでプラズマは発生させず、NOガスをヒータ207で加熱された領域内の熱で励起し、活性種を含む活性化されたガスとして第1のガス供給孔248aから処理室201内に供給しつつガス排気管231から排気する。NOガスを熱で励起することにより活性種を含む活性化されたガスとして流すときは、第4バルブ243dを適正に調整して処理室201内の圧力を、例えば10〜5000Paの範囲内の圧力とする。第1マスフローコントローラ241aで制御するNOガスの供給流量は、例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。NOガスを熱で励起することにより得られた活性種を含む活性化されたガスにウエハ200を晒す時間は、例えば2〜120秒間の範囲内の時間とする。このときのヒータ207の温度は、HCDガスの供給時と同じく、ウエハ200の温度が300〜650℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。NOガスは反応温度が高く、上記のようなウエハ温度では反応しづらいので、NOガスを熱で励起する場合は、プラズマ励起する場合よりも、NOガスの活性化量は抑制され、発生する活性種の量は非常に少なくなる。これにより、SiN層等の酸化量を抑えることができるようになる。なお、NOガスを熱で励起する場合は、プラズマ励起する場合よりも処理室201内の圧力を高くするのが好ましい。
【0098】
NOガスを熱で励起することにより得られた活性種を含む活性化されたガスを処理室201内に流す際、処理室201内には、HCDガスもNHガスも流していない。したがって、NOガスは気相反応を起こすことはなく、活性種を含む活性化されたNOガスは、第1シーケンスにおいては、ステップ3で形成されたシリコン含有層及びその下地であるステップ2で形成されたシリコン窒化層(SiN層)と表面反応し、シリコン層及びシリコン窒化層は、共に、酸化されてシリコン酸窒化層(SiON層)へと改質される。また、第2シーケンスにおいては、活性化されたNOガスは、ステップ2で形成されたシリコン窒化層(SiN層)と表面反応し、シリコン窒化層は、酸化されてシリコン酸窒化層(SiON層)へと改質される。なお、減圧酸化処理を用いる場合は、プラズマを用いて酸化処理する場合よりも処理室内の圧力を高くするのが好ましい。
【0099】
図7の第1シーケンスにおけるステップ4では、熱で活性化されたNOガスを用いてシリコン窒化層及びシリコン含有層をシリコン酸窒化層へ改質する改質工程を行うことにより、図8の第2シーケンスにおけるステップ3では、熱で活性化されたNOガスを用いてシリコン窒化層をシリコン酸窒化層へ改質する改質工程を行うことにより、熱で活性化されたNOガスの持つエネルギーがシリコン窒化層やシリコン含有層中に含まれるSi−N、Si−Cl、Si−H結合を部分的に切り離す。Si−O結合を形成するためのエネルギーは、Si−N、Si−Cl、Si−Hの結合エネルギーよりも高いため、Si−O結合形成に必要なエネルギーを酸化処理対象のシリコン窒化層やシリコン含有層に与えることで、シリコン窒化層やシリコン含有層中のSi−N、Si−Cl、Si−H結合は部分的に切り離される。なお、熱で活性化されたNOガスは、プラズマで活性化されたNOガスよりも、活性化量は低く、発生する活性種の量も少ない。すなわち、熱で活性化されたNOガスの持つエネルギーは、プラズマで活性化されたNOガスの持つエネルギーよりも低く、シリコン窒化層やシリコン含有層中に含まれるSi−N結合の全てが切り離されることはなく、一部は切り離されることなく残ることとなる。Siとの結合を切り離されたN、H、Clは層中から除去され、N、H、Cl、HCl等として排出される。また、N、H、Clとの結合が切られることで余ったSiの結合手は、活性化されたNOガスに含まれるOと結びつきSiON層へと改質される。この手法により形成したSiON膜は、膜中水素、塩素濃度が極めて低い、良質な膜となることを確認した。
【0100】
なお、図7,8では、NOガスやNOガスを用いてノンプラズマで酸化処理を行う例について説明したが、上述の実施形態と同様、酸化処理としては上述の減圧酸化処理を用いるようにしてもよい。この場合、上述の減圧酸化処理における酸化処理条件を、OガスとHガスとが反応することで得られる酸化種の量が減少するような条件に設定し、酸化力を抑えることでSiN層等をSiON層に改質する。また、図7,8では、所定元素が半導体元素としてのSiである場合の例について説明したが、上記実施形態と同様、所定元素はTi,Al,Hf等の金属元素であってもよい。
【0101】
(第4実施例)
次に第4実施例について説明する。
本実施形態の第2シーケンスのステップ3においてNOガスを熱で活性化して供給することでシリコン酸窒化膜(SiON膜)を形成し、そのシリコン酸窒化膜の屈折率とウエハ面内における膜厚分布均一性と成膜レートを測定した。成膜条件(各ステップでの処理条件)は、上述の実施形態等に記載の条件範囲内の条件とした。
【0102】
まず、膜の屈折率を指標としてSiO膜の屈折率を1.48、Si膜の屈折率を2.00、SiON膜の屈折率を1.48超、2.00未満とし、各ステップ(例えばステップ3)での処理条件を上述の実施形態等に記載の条件範囲内で種々変更し、形成される膜の屈折率を変化させた。結果、各ステップでの処理条件を制御することで、形成さ
れる膜の屈折率を1.48〜2.00の間のどの値にでも制御でき、そのときのウエハ面内における膜厚分布均一性を±1.5%以下に制御できることを確認した。また、SiON膜の成膜レートは屈折率がSi膜の屈折率(2.00)に近いほど高く、屈折率がSiO膜の屈折率(1.48)に近いほど低くなることを確認した。
【0103】
また、ステップ1〜3におけるウエハ温度を630℃に保持して成膜したところ、屈折率が1.65程度のSiON膜が形成された。そのときのウエハ面内における膜厚分布均一性は±0.4%程度、ウエハ間における膜厚分布均一性は±0.5%程度と良好なものだった。また、そのときのウエハ面内における屈折率の均一性は±0.1%程度、ウエハ間における屈折率の均一性は±0.01%と良好なものだった。また、そのときの成膜レートは1.5Å/サイクル程度であった。
【0104】
なお、SiN層形成を1サイクル実施後、すなわちSi含有層をSiN層に改質した後、酸素を含むガスをプラズマで活性化して供給した場合、酸化力が強いため、SiN層の殆どがSiO層になってしまう。この場合に、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に印加する高周波電力を弱くしたり、処理室201内の圧力を上げたり、NOガスフロー時間を短くしたりすることで、酸化力を弱めた場合、SiON層は形成できるものの、そのSiON層中のSi、O、N分布はウエハ200の外周部と内側で差が生じてしまい、均一にSiON層を形成できないことが判明した。なお、SiN層形成サイクル数を増やすこと等によって、酸化対象であるSiN層を厚くすれば、酸素を含むガスをプラズマで活性化して供給した場合にも、SiON膜は形成可能と考えられるが、この場合、Si、O、Nの深さ方向の濃度差が生じてしまうことが考えられる。よって、SiN層をSiON層に改質する場合に、Si、O、Nの面内濃度分布および深さ方向の濃度分布が均一なSiON膜を得るには、プラズマではなく熱で活性化した酸素を含むガスを用いることが好ましい。
【0105】
本発明の好ましい態様を付記する。
【0106】
本発明の一態様によれば、基板を収容した処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給することで、前記基板上に所定元素含有層を形成する工程と、前記処理容器内に窒素を含むガスを活性化して供給することで、前記所定元素含有層を窒化層に改質する工程と、前記処理容器内に酸素を含むガスを活性化して供給することで、前記窒化層を酸化層または酸窒化層に改質する工程と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行う半導体装置の製造方法が提供される。
【0107】
好ましくは、前記窒化層を酸化層または酸窒化層に改質する工程では、前記処理容器内に前記酸素を含むガスをプラズマで活性化して供給することで、前記窒化層を酸化層に改質する。
【0108】
また好ましくは、前記窒化層を酸化層または酸窒化層に改質する工程では、前記処理容器内に前記酸素を含むガスを熱で活性化して供給することで、前記窒化層を酸窒化層に改質する。
【0109】
本発明の他の態様によれば、基板を収容した処理容器内にシリコンを含む原料ガスを供給することで、前記基板上にシリコン含有層を形成する工程と、前記処理容器内に窒素を含むガスを活性化して供給することで、前記シリコン含有層をシリコン窒化層に改質する工程と、前記処理容器内に酸素を含むガスを活性化して供給することで、前記シリコン窒化層をシリコン酸化層またはシリコン酸窒化層に改質する工程と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行う半導体装置の製造方法が提供される。
【0110】
本発明のさらに他の態様によれば、基板を収容した処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給することで、前記基板上に所定元素含有層を形成する工程と、前記処理容器内に窒素を含むガスを活性化して供給することで、前記所定元素含有層を窒化層に改質する工程と、前記処理容器内に前記原料ガスを供給することで、前記窒化層上に所定元素含有層を形成する工程と、前記処理容器内に酸素を含むガスを活性化して供給することで、前記窒化層上に形成された所定元素含有層および前記窒化層を、酸化層または酸窒化層に改質する工程と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行う半導体装置の製造方法が提供される。
【0111】
本発明のさらに他の態様によれば、基板を収容した処理容器内にシリコンを含むガスを供給することで、前記基板上にシリコン含有層を形成する工程と、前記処理容器内に窒素を含むガスを活性化して供給することで、前記シリコン含有層をシリコン窒化層に改質する工程と、前記処理容器内に前記シリコンを含むガスを供給することで、前記シリコン窒化層上にシリコン含有層を形成する工程と、前記処理容器内に酸素を含むガスを活性化して供給することで、前記シリコン窒化層上に形成されたシリコン含有層および前記シリコン窒化層をシリコン酸化層またはシリコン酸窒化層に改質する工程と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行う半導体装置の製造方法が提供される。
【0112】
本発明のさらに他の態様によれば、基板を収容する処理容器と、前記処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給する原料ガス供給系と、前記処理容器内に窒素を含むガスを供給する窒素含有ガス供給系と、前記処理容器内に酸素を含むガスを供給する酸素含有ガス供給系と、前記窒素を含むガスまたは前記酸素を含むガスを活性化する活性化機構と、基板を収容した前記処理容器内に前記原料ガスを供給することで、前記基板上に所定元素含有層を形成し、前記処理容器内に前記窒素を含むガスを活性化して供給することで、前記所定元素含有層を窒化層に改質し、前記処理容器内に前記酸素を含むガスを活性化して供給することで、前記窒化層を酸化層または酸窒化層に改質し、これを1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うように前記原料ガス供給系、前記窒素含有ガス供給系、前記酸素含有ガス供給系、および、前記活性化機構を制御するコントローラと、を有する基板処理装置が提供される。
【0113】
本発明のさらに他の態様によれば、基板を収容する処理容器と、前記処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給する原料ガス供給系と、前記処理容器内に窒素を含むガスを供給する窒素含有ガス供給系と、前記処理容器内に酸素を含むガスを供給する酸素含有ガス供給系と、前記窒素を含むガスまたは前記酸素を含むガスを活性化する活性化機構と、基板を収容した前記処理容器内に前記原料ガスを供給することで、前記基板上に所定元素含有層を形成し、前記処理容器内に前記窒素を含むガスを活性化して供給することで、前記所定元素含有層を窒化層に改質し、前記処理容器内に前記原料ガスを供給することで、前記窒化層上に所定元素含有層を形成し、前記処理容器内に酸素を含むガスを活性化して供給することで、前記窒化層上に形成された所定元素含有層および前記窒化層を、酸化層または酸窒化層に改質し、これを1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うように前記原料ガス供給系、前記窒素含有ガス供給系、前記酸素含有ガス供給系、および、前記活性化機構を制御するコントローラと、を有する基板処理装置が提供される。
【0114】
本発明のさらに他の態様によれば、基板上に第1の元素を含む第1の薄膜を形成する第1工程と、前記第1の薄膜を、前記第1の元素および第2の元素を含む第2の薄膜に改質する第2工程と、前記第2の薄膜を、前記第1の元素および第3の元素を含む第3の薄膜に改質する第3工程と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行う半導体装置の製造方法が提供される。
【0115】
好ましくは、前記第2の元素が窒素(N)であり、前記第2の薄膜が窒化膜であり、前
記第3の元素が酸素(O)であり、前記第3の薄膜が酸化膜である。
【0116】
また好ましくは、前記第1の元素がシリコン(Si)であり、前記第1の薄膜がシリコン膜であり、前記第2の元素が窒素(N)であり、前記第2の薄膜がシリコン窒化膜であり、前記第3の元素が酸素(O)であり、前記第3の薄膜がシリコン酸化膜である。
【0117】
また好ましくは、前記第2の元素が窒素(N)であり、前記第2の薄膜が窒化膜であり、前記第3の元素が酸素(O)であり、前記第3の薄膜が酸窒化膜である。
【0118】
また好ましくは、前記第1の元素がシリコン(Si)であり、前記第1の薄膜がシリコン膜であり、前記第2の元素が窒素(N)であり、前記第2の薄膜がシリコン窒化膜であり、前記第3の元素が酸素(O)であり、前記第3の薄膜がシリコン酸窒化膜である。
【0119】
また好ましくは、前記第2工程では、前記第1の薄膜に対し窒素を含むガスを活性化して供給することで窒化処理を行い、前記第3工程では、前記第2の薄膜に対し酸素を含むガスを活性化して供給することで酸化処理を行う。
【0120】
また好ましくは、前記第2工程では、前記第1の薄膜に対し窒素を含むガスをプラズマまたは熱で活性化して供給し、前記第3工程では、前記第2の薄膜に対し酸素を含むガスをプラズマで活性化して供給する。
【0121】
また好ましくは、前記第2工程では、前記第1の薄膜に対し窒素を含むガスをプラズマまたは熱で活性化して供給し、前記第3工程では、前記第2の薄膜に対し酸素を含むガスを熱で活性化して供給する。
【0122】
本発明のさらに他の態様によれば、基板上に第1の元素を含む第1の薄膜を形成する第1工程と、前記第1の薄膜を、前記第1の元素および第2の元素を含む第2の薄膜に改質する第2工程と、前記第2の薄膜上に前記第1の薄膜を形成する第3工程と、前記第2の薄膜上に形成した前記第1の薄膜および前記第2の薄膜を、前記第1の元素および第3の元素を含む第3の薄膜に改質する第4工程と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行う半導体装置の製造方法が提供される。
【0123】
好ましくは、前記第2の元素が窒素(N)であり、前記第2の薄膜が窒化膜であり、前記第3の元素が酸素(O)であり、前記第3の薄膜が酸化膜である。
【0124】
また好ましくは、前記第1の元素がシリコン(Si)であり、前記第1の薄膜がシリコン膜であり、前記第2の元素が窒素(N)であり、前記第2の薄膜がシリコン窒化膜であり、前記第3の元素が酸素(O)であり、前記第3の薄膜がシリコン酸化膜である。
【0125】
また好ましくは、前記第2の元素が窒素(N)であり、前記第2の薄膜が窒化膜であり、前記第3の元素が酸素(O)であり、前記第3の薄膜が酸窒化膜である。
【0126】
また好ましくは、前記第1の元素がシリコン(Si)であり、前記第1の薄膜がシリコン膜であり、前記第2の元素が窒素(N)であり、前記第2の薄膜がシリコン窒化膜であり、前記第3の元素が酸素(O)であり、前記第3の薄膜がシリコン酸窒化膜である。
【0127】
また好ましくは、前記第2工程では、前記第1の薄膜に対し窒素を含むガスを活性化して供給することで窒化処理を行い、前記第4工程では、前記第2の薄膜上に形成した前記第1の薄膜に対し酸素を含むガスを活性化して供給することで酸化処理を行う。
【0128】
また好ましくは、前記第2工程では、前記第1の薄膜に対し窒素を含むガスをプラズマまたは熱で活性化して供給し、前記第4工程では、前記第2の薄膜上に形成した前記第1の薄膜に対し酸素を含むガスをプラズマで活性化して供給する。
【0129】
また好ましくは、前記第2工程では、前記第1の薄膜に対し窒素を含むガスをプラズマまたは熱で活性化して供給し、前記第4工程では、前記第2の薄膜上に形成した前記第1の薄膜に対し酸素を含むガスを熱で活性化して供給する。
【0130】
本発明のさらに他の態様によれば、基板に対し原料ガスを供給することで基板上に薄膜を形成する第1工程と、前記薄膜に対し窒素を含むガスをプラズマまたは熱で活性化して供給することで、前記薄膜を窒化膜に改質する第2工程と、前記窒化膜に対し酸素を含むガスをプラズマで活性化して供給することで、前記窒化膜を酸化膜に改質する第3工程と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行う半導体装置の製造方法が提供される。
【0131】
好ましくは、前記薄膜がシリコン膜であり、前記第3工程では、前記窒化膜中に含まれるSi−N、Si−Cl、Si−H結合のうち少なくともいずれか1つの結合を励起してこの結合を切り離し、N、Cl、Hを膜中から除去するとともに、結合手の余ったSiにOを結合させることによって、前記窒化膜を前記酸化膜に改質する。
【0132】
本発明のさらに他の態様によれば、基板に対し原料ガスを供給することで基板上に薄膜を形成する第1工程と、前記薄膜に対し窒素を含むガスをプラズマまたは熱で活性化して供給することで、前記薄膜を窒化膜に改質する第2工程と、前記窒化膜に対し酸素を含むガスを熱で活性化して供給することで、前記窒化膜を酸窒化膜に改質する第3工程と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行う半導体装置の製造方法が提供される。
【0133】
好ましくは、前記薄膜がシリコン膜であり、前記第3工程では、前記窒化膜中に含まれるSi−N、Si−Cl、Si−H結合のうち少なくともいずれか1つの結合を励起してこの結合を切り離し、N、Cl、Hを膜中から除去するとともに、結合手の余ったSiにOを結合させることによって、前記窒化膜を前記酸窒化膜に改質する。
【0134】
本発明のさらに他の態様によれば、基板に対し原料ガスを供給することで基板上に薄膜を形成する第1工程と、前記薄膜に対し窒素を含むガスをプラズマまたは熱で活性化して供給することで、前記薄膜を窒化膜に改質する第2工程と、前記窒化膜に対し前記原料ガスを供給することで前記窒化膜上に前記薄膜を形成する第3工程と、前記窒化膜上に形成した前記薄膜に対し酸素を含むガスをプラズマで活性化して供給することで、前記窒化膜上に形成した薄膜および前記窒化膜を酸化膜に改質する第4工程と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行う半導体装置の製造方法が提供される。
【0135】
好ましくは、前記薄膜がシリコン膜であり、前記第4工程では、前記窒化膜上に形成した薄膜および前記窒化膜中に含まれるSi−N、Si−Cl、Si−H結合のうち少なくともいずれか1つの結合を励起してこの結合を切り離し、N、Cl、Hを膜中から除去するとともに、結合手の余ったSiにOを結合させることによって、前記窒化膜上に形成した薄膜および前記窒化膜を前記酸化膜に改質する。
【0136】
本発明のさらに他の態様によれば、基板に対し原料ガスを供給することで基板上に薄膜を形成する第1工程と、前記薄膜に対し窒素を含むガスをプラズマまたは熱で活性化して供給することで、前記薄膜を窒化膜に改質する第2工程と、前記窒化膜に対し前記原料ガスを供給することで前記窒化膜上に前記薄膜を形成する第3工程と、前記窒化膜上に形成
した前記薄膜に対し酸素を含むガスを熱で活性化して供給することで、前記窒化膜上に形成した薄膜および前記窒化膜を酸窒化膜に改質する第4工程と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行う半導体装置の製造方法が提供される。
【0137】
好ましくは、前記薄膜がシリコン膜であり、前記第4工程では、前記窒化膜上に形成した薄膜および前記窒化膜中に含まれるSi−N、Si−Cl、Si−H結合のうち少なくともいずれか1つの結合を励起してこの結合を切り離し、N、Cl、Hを膜中から除去するとともに、結合手の余ったSiにOを結合させることによって、前記窒化膜上に形成した薄膜および前記窒化膜を前記酸窒化膜に改質する。
【0138】
本発明のさらに他の態様によれば、基板を処理する処理容器と、前記処理容器内に原料ガスを供給する原料ガス供給管と、前記処理容器内に窒素を含むガスを供給する窒素含有ガス供給管と、前記処理容器内に酸素を含むガスを供給する酸素含有ガス供給管と、前記窒素を含むガスまたは酸素を含むガスをプラズマにより活性化するプラズマユニットと、前記処理容器内を加熱するヒータと、前記処理容器内に原料ガスを供給することで基板上に薄膜を形成し、前記処理容器内に窒素を含むガスをプラズマまたはヒータによる熱で活性化して供給することで、前記薄膜を窒化膜に改質し、前記処理容器内に酸素を含むガスをプラズマで活性化して供給することで、前記窒化膜を酸化膜に改質し、これを1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うように制御するコントローラと、を有する基板処理装置が提供される。
【0139】
本発明のさらに他の態様によれば、基板を処理する処理容器と、前記処理容器内に原料ガスを供給する原料ガス供給管と、前記処理容器内に窒素を含むガスを供給する窒素含有ガス供給管と、前記処理容器内に酸素を含むガスを供給する酸素含有ガス供給管と、前記窒素を含むガスまたは酸素を含むガスをプラズマにより活性化するプラズマユニットと、前記処理容器内を加熱するヒータと、前記処理容器内に原料ガスを供給することで基板上に薄膜を形成し、前記処理容器内に窒素を含むガスをプラズマまたはヒータによる熱で活性化して供給することで、前記薄膜を窒化膜に改質し、前記処理容器内に原料ガスを供給することで前記窒化膜上に前記薄膜を形成し、前記処理容器内に酸素を含むガスをプラズマで活性化して供給することで、前記窒化膜上に形成した前記薄膜および前記窒化膜を酸化膜に改質し、これを1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うように制御するコントローラと、を有する基板処理装置が提供される。
【0140】
本発明のさらに他の態様によれば、基板を処理する処理容器と、前記処理容器内に原料ガスを供給する原料ガス供給管と、前記処理容器内に窒素を含むガスを供給する窒素含有ガス供給管と、前記処理容器内に酸素を含むガスを供給する酸素含有ガス供給管と、前記窒素を含むガスまたは前記酸素を含むガスをプラズマにより活性化するプラズマ源と、前記処理容器内を加熱するヒータと、前記処理容器内に原料ガスを供給することで基板上に薄膜を形成し、前記処理容器内に窒素を含むガスをプラズマまたはヒータによる熱で活性化して供給することで、前記薄膜を窒化膜に改質し、前記処理容器内に酸素を含むガスを熱で活性化して供給することで、前記窒化膜を酸窒化膜に改質し、これを1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うように制御するコントローラと、を有する基板処理装置が提供される。
【0141】
本発明のさらに他の態様によれば、基板を処理する処理容器と、前記処理容器内に原料ガスを供給する原料ガス供給管と、前記処理容器内に窒素を含むガスを供給する窒素含有ガス供給管と、前記処理容器内に酸素を含むガスを供給する酸素含有ガス供給管と、前記窒素を含むガスまたは酸素を含むガスをプラズマにより活性化するプラズマ源と、前記処理容器内を加熱するヒータと、前記処理容器内に原料ガスを供給することで基板上に薄膜を形成し、前記処理容器内に窒素を含むガスをプラズマまたはヒータによる熱で活性化し
て供給することで、前記薄膜を窒化膜に改質し、前記処理容器内に原料ガスを供給することで前記窒化膜上に前記薄膜を形成し、前記処理容器内に酸素を含むガスを熱で活性化して供給することで、前記窒化膜上に形成した前記薄膜および前記窒化膜を酸窒化膜に改質し、これを1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うように制御するコントローラと、を有する基板処理装置が提供される。
【符号の説明】
【0142】
121 コントローラ
200 ウエハ
201 処理室
202 処理炉
203 反応管
207 ヒータ
231 ガス排気管
232a 第1ガス供給管
232b 第2ガス供給管
232c 第3ガス供給管
269 第1の棒状電極
270 第2の棒状電極
272 整合器
273 高周波電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容した処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給することで、前記基板上に所定元素含有層を形成する工程と、
前記処理容器内に窒素を含むガスを活性化して供給することで、前記所定元素含有層を窒化層に変化させる工程と、
大気圧よりも低い圧力に設定された前記処理容器内に酸素を含むガスと水素を含むガスとを活性化して供給することで、前記窒化層を酸化層または酸窒化層に変化させる工程と、
を1サイクルとして、このサイクルを複数回繰り返すことで、前記基板上に所定膜厚の酸化膜または酸窒化膜を形成する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記窒化層を酸化層または酸窒化層に変化させる工程では、大気圧よりも低い圧力に設定された前記処理容器内で前記酸素を含むガスと前記水素を含むガスとを反応させて酸化種を生成し、この酸化種により前記窒化層を酸化することで、前記窒化層を酸化層または酸窒化層に変化させることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
基板を収容した処理容器内にシリコンを含むガスを供給することで、前記基板上にシリコン含有層を形成する工程と、
前記処理容器内に窒素を含むガスを活性化して供給することで、前記シリコン含有層をシリコン窒化層に変化させる工程と、
大気圧よりも低い圧力に設定された前記処理容器内に酸素を含むガスと水素を含むガスとを活性化して供給することで、前記シリコン窒化層をシリコン酸化層またはシリコン酸窒化層に変化させる工程と、
を1サイクルとして、このサイクルを複数回繰り返すことで、前記基板上に所定膜厚のシリコン酸化膜またはシリコン酸窒化膜を形成する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
基板を収容した処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給することで、前記基板上に所定元素含有層を形成する工程と、
前記処理容器内に窒素を含むガスを活性化して供給することで、前記所定元素含有層を窒化層に変化させる工程と、
大気圧よりも低い圧力に設定された前記処理容器内に酸素を含むガスと水素を含むガスとを活性化して供給することで、前記窒化層を酸化層または酸窒化層に変化させる工程と、
を1サイクルとして、このサイクルを複数回繰り返すことで、前記基板上に所定膜厚の酸化膜または酸窒化膜を形成する工程を有することを特徴とする基板処理方法。
【請求項5】
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記処理容器内に窒素を含むガスを供給する窒素含有ガス供給系と、
前記処理容器内に酸素を含むガスを供給する酸素含有ガス供給系と、
前記処理容器内に水素を含むガスを供給する水素含有ガス供給系と、
前記窒素を含むガス、または、前記酸素を含むガスおよび前記水素を含むガスを活性化する活性化機構と、
基板を収容した前記処理容器内に前記原料ガスを供給することで、前記基板上に所定元素含有層を形成する工程と、前記処理容器内に前記窒素を含むガスを活性化して供給することで、前記所定元素含有層を窒化層に変化させる工程と、大気圧よりも低い圧力に設定された前記処理容器内に酸素を含むガスと水素を含むガスとを活性化して供給することで、前記窒化層を酸化層または酸窒化層に変化させる工程と、を1サイクルとして、このサ
イクルを複数回繰り返すことで、前記基板上に所定膜厚の酸化膜または酸窒化膜を形成するように前記原料ガス供給系、前記窒素含有ガス供給系、前記酸素含有ガス供給系、前記水素含有ガス供給系、および、前記活性化機構を制御するコントローラと、
を有することを特徴とする基板処理装置。

【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−61218(P2011−61218A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230594(P2010−230594)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【分割の表示】特願2008−283971(P2008−283971)の分割
【原出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】