説明

半導体装置の製造方法及び基板製造方法及び基板処理装置

【課題】複数枚の基板に不純物が均一にドーピングされた炭化珪素膜を成膜することができる半導体製造装置及び基板の製造方法及び基板処理装置を提供する
【解決手段】反応室内に延在されて設けられる第1のガス供給ノズル60及び第2のガス供給ノズル70と、第1のガス供給ノズルの基板の主面と平行であって、第2のガス供給ノズルの方向に1以上分岐され1以上の第1のガス供給口68を有する第1の分岐ノズルと、第2のガス供給ノズルの基板の主面と平行であって、第1のガス供給ノズルの方向に1以上分岐され、1以上の第2のガス供給口72を有する第2の分岐ノズルとを備え、第1のガス供給口と第2のガス供給口とが基板の積層方向に隣接するように設けられた基板処理装置によって課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する工程を有する半導体装置の製造方法及び基板製造方法及び基板処理装置に関して、特に、炭化ケイ素(SiC)膜を基板上に成膜する工程を有する、半導体装置の製造方法及び基板製造方法及び基板処理装置に関する。
【0002】
炭化珪素は特に、パワーデバイス用素子材料として注目されている。一方で、炭化珪素はシリコン(Si)に比べて結晶基板やデバイスの作製が難しいことが知られている。
【0003】
従来の炭化珪素膜を成膜する半導体製造装置は、複数枚の基板を板状サセプタに平面的に配置して、1500℃〜1800℃に加熱し、成膜に用いる原料ガスを一箇所から反応室内に供給して、基板上にSiCエピタキシャル膜を成長させた。
【0004】
特許文献1では、サセプタに対向する面への原料ガスに起因する堆積物の付着及び、原料ガス対流が発生することによる炭化珪素膜成長の不安定化、これらの課題を解決するためにサセプタの基板を保持する面を下方に向くように配置した真空成膜装置及び薄膜形成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−196807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術においては、いくつかの問題点がある。まず、多数枚の基板を処理する場合や、図11に示すように基板の径が大きくする場合にサセプタを大きくする必要があり、反応室の床面積が増大すること、また原料ガスは一箇所から供給される構成となっているため、反応室中のガス濃度分布が均一でなく、ウエハに成膜される膜の厚さが不均一になること、更にSiCエピタキシャル膜を成長する際に1500℃〜1800℃と高温で行われるため、ウエハ面内の温度制御が困難であること、炭化珪素膜中に不純物を均一にドーピング(doping)することが困難であること等が挙げられる。
【0007】
本発明は上述の問題点を解決し、複数枚の基板に不純物が均一にドーピングされた炭化珪素膜を成膜することができる半導体製造装置及び基板の製造方法及び基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、複数の基板が所定の間隔で積層される反応室と、前記複数の基板が積層される領域に延在されて設けられる第1のガス供給ノズルと、前記複数の基板が積層される領域に延在され、前記第1のガス供給ノズルと異なる位置に設けられる第2のガス供給ノズルと、前記第1のガス供給ノズルの前記基板の主面と平行であって、前記第2のガス供給ノズルの方向に1箇所以上分岐され、1以上の第1のガス供給口を有する第1の分岐ノズルと、前記第2のガス供給ノズルの前記基板の主面と平行であって、前記第1のガス供給ノズルの方向に1箇所以上分岐され、1以上の第2のガス供給口を有する第2の分岐ノズルと、を備え、前記第1のガス供給口と前記第2のガス供給口とが、前記複数の基板が積層される方向に隣接するように設けられた基板処理装置における半導体装置の製造方法であって、前記複数の基板を反応室内に搬入する工程と、前記第1のガス供給口から、少なくともシリコン含有ガスと塩素含有ガスと、もしくは、シリコンと塩素含有ガスを供給し、前記第2のガス供給口から、少なくとも炭素含有ガスと還元ガスとを供給し、前記基板に炭化珪素膜を成膜する工程と、を有する半導体装置の製造方法を提供する。
【0009】
本発明の他の態様によれば、複数の基板が所定の間隔で積層される反応室と、前記反応室内に少なくともシリコン含有ガスと塩素含有ガスと、もしくは、シリコンと塩素含有ガスを供給する第1のガス供給系と、前記反応室内に少なくとも炭素含有ガスと還元ガスとを供給する第2のガス供給系と、前記複数の基板が積層される領域に延在されて設けられる第1のガス供給ノズルと、前記第1のガス供給ノズルと異なる位置であり、前記複数の基板が積層される領域に延在されて設けられる第2のガス供給ノズルと、前記第1のガス供給ノズルの前記基板の主面と平行であって、前記第2のガス供給ノズルの方向に1箇所以上分岐され、1以上の第1のガス供給口を有する第1の分岐ノズルと、前記第2のガス供給ノズルの前記基板の主面と平行であって、前記第1のガス供給ノズルの方向に1箇所以上分岐され、1以上の第2のガス供給口を有する第2の分岐ノズルと、前記第1のガス供給系は、前記第1のガス供給口から少なくとも前記シリコン含有ガスと前記塩素含有ガスと、もしくは、シリコンおよび塩素含有ガスを前記反応室内へ供給し、前記第2のガス供給系は、前記第2のガス供給口から少なくとも前記炭素含有ガスと前記還元ガスとを前記反応室内へ供給し、前記基板に炭化珪素膜が形成されるよう制御するコントローラと、を備え、前記第1のガス供給口と前記第2のガス供給口とが、前記複数の基板が積層される方向に隣接するように設けられている基板処理装置を提供する。
【0010】
更に本発明の他の態様によれば、複数の基板が所定の間隔で積層される反応室と、前記複数の基板が積層される領域に延在されて設けられる第1のガス供給ノズルと、前記複数の基板が積層される領域に延在され、前記第1のガス供給ノズルと異なる位置に設けられる第2のガス供給ノズルと、前記第1のガス供給ノズルの前記基板の主面と平行であって、前記第2のガス供給ノズルの方向に1箇所以上分岐され、1以上の第1のガス供給口を有する第1の分岐ノズルと、前記第2のガス供給ノズルの前記基板の主面と平行であって、前記第1のガス供給ノズルの方向に1箇所以上分岐され、1以上の第2のガス供給口を有する第2の分岐ノズルと、を備え、前記第1のガス供給口と前記第2のガス供給口とが、前記複数の基板が積層される方向に隣接するように設けられた基板処理装置における基板製造方法であって、前記複数の基板を反応室内に搬入する工程と、前記第1のガス供給口から、少なくともシリコン含有ガスと塩素含有ガスと、もしくは、シリコンと塩素含有ガスを供給し、前記第2のガス供給口から、少なくとも炭素含有ガスと還元ガスとを供給し、前記基板に炭化珪素膜を成膜する工程と、を有する基板製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板に均一に炭化珪素膜を成膜することができる半導体製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態が適用される半導体製造装置10の斜視図を示す。
【図2】本発明の第1実施形態が適用される半導体製造装置10の側面断面図を示す。
【図3】本発明の第1実施形態が適用される半導体製造装置10の上面断面図を示す。
【図4】本発明の第1実施形態が適用される半導体製造装置10を構成する各部の制御構成を示す。
【図5】本発明の第1実施形態が適用される半導体製造装置10の処理炉40及びその周辺構造の略図を示す。
【図6】本発明の第1実施形態が適用される反応室構成におけるガス供給ノズルの形態の一例を示す。
【図7】本発明の第2実施形態が適用される反応室構成におけるガス供給ノズルの形態の一例を示す。
【図8】本発明の第2実施形態が適用される反応室構成における反応室上面図を示す。
【図9】本発明の第2実施形態が適用される反応室構成において成膜した際の、モニタライン上におけるC/Si値の分布を示す。
【図10】n型不純物がドーピングされた炭化珪素膜におけるC/Si値とドナー原子濃度との関係を示す。
【図11】パンケーキ型サセプタ構造と基板の位置関係を模式的に示す。
【図12】本発明の第3実施形態が適用されるガス供給ノズルの形態の一例を示す。
【図13】本発明の第4実施形態が適用されるガス供給ノズルの形態の一例を示す。
【図14】本発明の第3実施形態が適用されるガス供給ノズル構造におけるガス消費を考慮した熱流体解析結果を示す図である。
【図15】本発明の比較例である(a)で示すガス供給ノズル構造におけるガス消費を考慮した熱流体解析結果を示す図である。
【図16】参考例のガス供給条件における各温度での平衡状態を示す。
【図17】本発明の各実施形態のガス供給条件における各温度での平衡状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
次に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル膜を成膜する半導体製造装置10の一例であり、斜視図にて示す。この基板処理装置としての半導体製造装置10は、バッチ式縦型熱処理装置であり、主要部が配置される筐体12を有する。半導体製造装置10には、例えば、シリコン又は炭化珪素等で構成された基板としてのウエハ14を収納する基板収納器としてフープ(以下、ポッドという)16が、ウエハキャリアとして使用される。この筐体12の正面側には、ポッドステージ18が配置されており、このポッドステージ18にポッド16が搬送される。ポッド16には、例えば25枚のウエハ14が収納され、蓋が閉じられた状態でポッドステージ18に載置される。
【0014】
筐体12内の正面側であって、ポッドステージ18に対向する位置にはポッド搬送装置20が配置されている。また、このポッド搬送装置20の近傍にはポッド搬送装置22、ポッドオープナ24及び基板枚数検知器26が配置されている。ポッド搬送装置22はポッドオープナ24の上方に配置されポッド16を複数個載置した状態で保持するように構成されている。基板枚数検知器26はポッドオープナ24に隣接して配置される。ポッド搬送装置20はポッドステージ18とポッド搬送装置22とポッドオープナ24との間でポッド16を搬送する。ポッドオープナ24はポッド16の蓋を開けるものであり、基板枚数検知器26は蓋を開けられたポッド16内のウエハ14の枚数を検知する。
【0015】
筐体12内には基板移載機28、基板支持具としてのボート30が配置されている。基板移載機28は、アーム(ツィーザ)32を有し、図示しない駆動手段により、上下回転動作が可能な構造になっている。アーム32は例えば5枚のウエハを取り出すことができ、このアーム32を動かすことにより、ポッドオープナ24の位置に置かれたポッド16及びボート30間にてウエハ14を搬送する。
【0016】
ボート30は例えばカーボングラファイトや炭化珪素等の耐熱性材料で構成されており、複数枚のウエハ14を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて縦方向に積み上げて保持するように構成されている。なお、ボート30の下部には例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料で構成された円盤形状の断熱部材としてのボート断熱部34が配置されており、後述する被加熱体48からの熱が処理炉40の下方側に伝わりにくくなるように構成されている(図2参照)。
【0017】
筐体12内の背面側上部には処理炉40が配置されている。この処理炉40内に複数枚のウエハ14を装填したボート30が搬入され熱処理が行われる。
【0018】
図2及び図3は炭化珪素エピタキシャル膜を成膜する半導体製造装置10の処理炉40の側面断面図及び上面断面図を示す。なお、少なくともシリコン含有ガスと塩素含有ガスとを供給する第1のガス供給口68を有するガス供給ノズル60、少なくとも炭素含有ガスと還元ガスとして例えば水素ガスと例えばn型不純物を含有するドーピングガスとを供給する第2のガス供給口72を有するガス供給ノズル70、及び排気口90を代表例としてそれぞれが1つずつ図示されている。また反応室を形成する反応管42と断熱材54との間に不活性ガスを供給する第3のガス供給口360、第2のガス排気口390が図示されている。
【0019】
処理炉40は、例えば円筒形状の反応室44を形成する反応管42を備える。反応管42は、石英または炭化珪素等の耐熱材料で構成されており、上端が閉塞し下端が開口した例えば円筒形状に形成されている。反応管42の内側の筒中空部には、反応室44が形成されており、シリコン又は炭化珪素等で構成された基板としてウエハ14をボート30によって水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて縦方向に積み上げて保持した状態で収納可能に構成されている。
【0020】
反応管42の下方には、この反応管42と同心円状にマニホールドが配設されている。マニホールドはたとえばステンレス等で構成されており、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。このマニホールドは反応管42を支持するように設けられている。なお、このマニホールドと反応管42との間にはシール部材としてOリングが設けられている。このマニホールドが図示しない保持体に支持されることにより、反応管42は垂直に据えつけられた状態になっている。この反応管42とマニホールドにより反応容器が形成されている。
【0021】
処理炉40は加熱される被加熱体48を備える。被加熱体48は反応室44内に配設されており、この被加熱体48は反応管42の外側に設けられた誘導コイル50により発生される磁場によって加熱される構成となっている。被加熱体48が発熱することにより、被加熱体48の内側が加熱される。
【0022】
被加熱体48の近傍には、反応室44内の温度を検出する温度検出体として図示しない温度センサが設けられている。誘導コイル50及び温度センサには、電気的に温度制御部52が接続されており、温度センサにより検出された温度情報に基づき誘導コイル50への通電具合を調節することにより被加熱体48の内側の温度が所定の温度分布となるよう所定のタイミングにて制御するように構成されている(図4参照)。
【0023】
なお、好ましくは、反応室44内において第1及び第2のガス供給ノズル60、70と第1のガス排気口90との間であって、被加熱体48とウエハ14との間には構造物400を設けることが良い。例えば、図3に示すように、対向する位置にそれぞれ構造物400を設ける。構造物400としては、好ましくは、断熱材、一例としてカーボンフェルト等で構成すると、処理炉の耐熱性を向上したり、例えば構造物400が劣化することによるパーティクルが発生したりすることを抑制することができる。
【0024】
被加熱体48と反応管42の間には、例えば誘導加熱されにくいカーボンフェルト等で構成された断熱材54が設けられ、この断熱材54を設けることにより、被加熱体48の熱が反応管42あるいは反応管42の外側へ伝達するのを抑制することができる。
【0025】
また、誘導コイル50の外側には、反応室44内の熱が外側に伝達するのを抑制するための、例えば水冷構造である外側断熱壁が反応室44を囲むように設けられている。更に、外側断熱壁の外側には、誘導コイル50により発生された磁場が外側に漏れるのを防止する磁気シールドが設けられている。
【0026】
図2に示すように、加熱体48とウエハ14との間に設置され、少なくともシリコン含有ガスと塩素含有ガスとを供給しガス供給ノズル60に少なくとも1つ設けられる第1のガス供給口68及び第1のガス供給ノズルとは異なる箇所であり、反応室内に設けられた第2のガス供給ノズル70に少なくとも1つ設けられ、少なくとも炭素含有ガスと還元ガスとして例えば、水素ガスと、不純物ガスとして、例えば、n型不純物ガスとを供給する第2のガス供給口72、第1のガス排気口90、また反応管42と断熱材54との間に、第3のガス供給口360、第2のガス排気口390が配置されている。それぞれについて詳細に説明をする。
【0027】
少なくともシリコン含有ガスとして例えばシラン(SiH)ガス、塩素含有ガスとして例えば塩化水素(HCl)ガスと、を第1のガス供給ノズル60を流通して供給する第1のガス供給口68は、例えばカーボングラファイトで構成され、被加熱体48の内側に設けられており、第1のガス供給ノズル60はマニホールドを貫通するようにマニホールドに取り付けられている。なお、第1のガス供給ノズル60は複数本設けても良い。
【0028】
ガス供給ノズル60は、第1のガスライン222に接続されている。この第1のガスライン222は、例えば、シランガスと塩化水素ガスとをそれぞれに対し流量制御器(流量制御手段)としてのマスフローコントローラ(Mass Flow Controller、以下、MFCとする。)211a、211b及びバルブ212a、212bを介して例えばシランガス源210a、塩化水素ガス源210bに接続されている。
【0029】
この構成により、例えばシランガス、塩化水素ガス、それぞれの供給流量、濃度、分圧を反応室44内において制御することができる。バルブ212a、212b、MFC211a、211bは、ガス流量制御部78によって電気的に接続されており、それぞれ供給するガスの流量が所定流量となるよう、所定のタイミングにて制御するようにされ(図4参照)、例えばシランガス、塩化水素ガス、それぞれのガス源210a、210b、バルブ212a、212b、MFC211a、211b、ガスライン222、ガス供給ノズル60、ガス供給ノズル60に少なくとも1つ設けられるガス供給口68によりガス供給系として、第1のガス供給系を構成される。
【0030】
なお、上述の実施形態では、塩素含有ガスとしてHClガスを例示したが塩素(Cl2)ガスを用いても良い。また、上述で説明された成膜寄与ガスに対し、キャリアガスとして希ガス又は水素含有ガス等を供給しても良い。希ガスとしては、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス、キセノン(Xe)ガス等が挙げられ、また、水素含有ガスとして、水素ガスが例示される。
好ましくはキャリアガスとして希ガスを供給すると良い。これは水素含有ガスとして、例えば、水素ガスをキャリアガスとして供給した場合、水素ガスの還元効果により、シリコン含有ガスはガス供給ノズル内にて分解してしまい、ガス供給ノズル内にシリコン膜が堆積し、ガス供給ノズル内またはガス供給口の閉塞やパーティクル発生の要因となるためである。
更に好ましくは、キャリアガスとしてアルゴンガスを供給することが良い。アルゴンガスは、ヘリウムガス等の他の希ガスよりも安価であるため、炭化珪素エピタキシャル膜を形成する基板処理装置を運用する際のランニングコストを低減することが出来る。
【0031】
なお、本実施形態では、シリコン含有ガスと塩素含有ガスとを供給したが、好ましくは、シリコンと塩素とを含むガス、例えば、テトラクロロシラン(SiCl)ガス、トリクロロシラン(SiHCl)ガス、ジクロロシラン(SiHCl)ガスを供給しても良く、更に好ましくは、テトラクロロシランガスを供給することが良く、ガス供給ノズル内に膜が形成されることを抑制でき、ガスの消費を抑制して反応室内へ供給することができる。
【0032】
少なくとも炭素含有ガスとして例えばプロパン(C)ガスと還元ガスとして水素含有ガス、例えば水素(H)ガスとを第2のガス供給ノズル70を流通して供給する第2のガス供給口72は、例えばカーボングラファイトで構成され、被加熱体48の内側に設けられており、第2のガス供給ノズル70はマニホールドを貫通するようにマニホールドに取り付けられている。なお、第2のガス供給ノズル70は複数本設けても良い。
【0033】
第2のガス供給ノズル70は、第2のガスライン260に接続されている。この第2のガスライン260は、炭素含有ガスとして例えばプロパンガス対しMFC211c及びバルブ212cを介してプロパンガス源210dに接続され、還元ガスとして例えば水素ガスに対しMFC211d及びバルブ212dを介して水素ガス源210dに接続されている。
【0034】
この構成により、例えばプロパンガス、水素ガスの供給流量、濃度、分圧を反応室44内において制御することができる。バルブ212c、212d、MFC211c、211dはガス流量制御部78によって電気的に接続されており、供給するガスの流量が所定の流量となるよう、所定のタイミングにて制御するようにされ(図4参照)、例えばプロパンガス、水素ガスのガス源210c、210d、バルブ212c、212d、MFC211c、211d、ガスライン260、第2のガス供給ノズル70、第2のガス供給口72によりガス供給系として、第2のガス供給系を構成される。
【0035】
なお、本実施形態では、炭素含有ガスとしてプロパンガスを例示したが、エチレン(C2H4)ガス、アセチレン(C)ガス等を用いても良い。
【0036】
また、本実施形態では、還元ガスとしてHガスを例示したが、これに限らず、水素を含有するガスを供給しても良い。
【0037】
ここで、本実施形態では、シリコン含有ガスを第1のガス供給ノズル60を介して供給し、還元ガスである水素ガスを第2のガス供給ノズル70から供給している。本実施形態のように、ウエハ14間の均一性を向上させる為に反応室44内にガス供給ノズルを配設した場合、シリコン含有ガスと共に還元ガスを供給すると、シリコン含有ガスの分解が促進してしまい、ガス供給ノズル内でシリコン膜の堆積が発生する可能性がある。この場合、上流側でシリコン含有ガスの消費が発生してしまうが、シリコン含有ガスと還元ガスを分離して供給することにより、ガス供給ノズル内の堆積、及び、シリコン含有ガスの消費を抑制できる。
【0038】
また、本実施形態では、更に炭素含有ガスを第2のガス供給ノズル70を介して供給し、シリコン含有ガスと分離して供給している。これにより、ガス供給ノズル内でのSiC膜の堆積を抑制することができ、ガス供給口が閉塞されること、及び、形成された膜が剥れることによるパーティクルや汚染物の発生も抑制することができる。
なお、シリコン含有ガスと還元ガスを分離して供給することで充分にガス供給内の堆積を防止できる場合は、シリコン含有ガスと炭素含有ガスとを同じガス供給ノズルを介して供給しても良い。これにより、シリコン含有ガスと炭素含有ガスとを予め混合しておくことができるためウエハ14に均一な膜を形成できる。
【0039】
ここで、上述の第1のガス供給系及び第2のガス供給系を構成する理由について詳細に述べる。従来の炭化ケイ素エピタキシャル膜を成膜する半導体製造装置では、複数枚のウエハ14をサセプタ上に重ならないよう並べ、シリコン含有ガスと炭素含有ガスと還元ガス等で構成される原料ガスを、反応室44の1箇所より供給し、炭化ケイ素エピタキシャル膜を成膜している。
本発明では、炭化ケイ素(SiC)等から構成される複数枚のウエハ14を、水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて縦方向に積み上げて保持し、原料ガスは、縦方向に延在されるガス供給ノズルから供給している。このとき、ガス供給ノズル内で原料ガスが消費されるため、ガス供給ノズルの下流側で原料ガス不足が生じ、また、ガス供給ノズル内で反応し堆積した炭化ケイ素(SiC)膜等の堆積物が、ガス供給ノズルを閉塞し、あるいは、原料ガス供給が不安定になることやパーティクル発生させること等の問題が生じ易くなる。
【0040】
本発明の発明者は、これらの点を解決する為、図16及び図17に示すような計算を行った。図16は、本発明と対比するための参考例であり、シリコンと塩素とを含有するガスとしてテトラクロロシラン(SiCl4)ガス、炭素含有ガスとしてプロパン(C3H8)ガス、キャリアガスの働きをする希ガスとしてアルゴン(Ar)ガスを、テトラクロロシランガス:プロパンガス:アルゴンガス=8:4:571の比率で供給した場合の各温度における化学平衡状態を示している。このときの各ガス種の流量はテトラクロロシラン(SiCl4)ガスが8.0sccm、プロパン(C3H8)ガスが4.0sccm、アルゴン(Ar)ガスが571sccmであり、このときの圧力は100Torrとしている。これは、1本のガス供給ノズルを用いて、テトラクロロシラン(SiCl4)ガス、プロパン(C3H8)ガス、アルゴン(Ar)ガスを供給した場合のガス供給ノズル内の状態を模擬している。なお、化学平衡状態とは、上記ガスのモル分率を初期条件として与え、無限時間その温度に保った場合に到達する各ガスの状態である。横軸は平衡状態における温度、縦軸は、供給された各原料ガス及び供給された各原料ガスが分解又は結合して生成されるモル分率を示している。また、アルゴン(Ar)ガスに関しては、図16から除外している。
【0041】
図16において、少なくとも、1000℃以上1600℃以下の温度範囲において、塩化水素(HCl)ガス、ジクロロクロロシラン(SiCl2)ガス、アセチレン(C2H2)ガス、水素(H2)ガスが多く存在している。つまり、炭化ケイ素(SiC)エピタキシャル成長が行われる上述の温度範囲において、反応室44内に1本のガス供給ノズルを設置し、テトラクロロシラン(SiCl4)ガス、プロパン(C3H8)ガス、アルゴン(Ar)ガスを供給した際に、上述の塩化水素(HCl)ガス、ジクロロクロロシラン(SiCl2)、アセチレン(C2H2)ガス、水素(H2)ガスがガス供給ノズル内で発生することになる。例えば平衡状態の温度が1400℃の場合においては、塩化水素(HCl)ガス、ジクロロクロロシラン(SiCl2)ガス、アセチレン(C2H2)ガス、水素(H2)ガスの順で多くガスが発生され、ジクロロクロロシラン(SiCl2)ガスとアセチレン(C2H2)ガスが反応することよって、ガス供給ノズル内で炭化ケイ素(SiC)の多結晶(SiC−Poly)膜が成膜されることが予想される。
【0042】
このときエッチング作用を有する塩化水素(HCl)ガスも存在するが、塩化水素(HCl)ガスは1500℃以下において炭化ケイ素(SiC)に対するエッチング効果が小さいため、炭化ケイ素(SiC)の多結晶膜は成長し、ガス供給ノズルは閉塞したり、付着した炭化ケイ素(SiC)の多結晶膜が剥がれ落ちる事によりパーティクルが発生したりする。
【0043】
この解決策として、本発明の発明者は、図17に示す計算を行った。図17は、本発明の実施形態のガス供給条件における各温度での平衡状態を示すものであり、図16の条件から、炭素含有ガスを除いた場合の計算結果である。シリコンと塩素とを含有するガスとしてテトラクロロシラン(SiCl4)ガス、キャリアガスとして希ガスとしてアルゴン(Ar)ガスを、テトラクロロシランガス:アルゴンガス=8:571の比率で供給した場合の各温度における平衡状態を示している。このときの各ガス種の流量はテトラクロロシラン(SiCl4)ガスが8.0sccm、アルゴン(Ar)ガスが570sccmで供給し、このときの圧力は100Torrとしている。これは本発明において第1のガス供給ノズルを用いてテトラクロロシラン(SiCl4)ガスとアルゴン(Ar)ガスを供給した場合のガス供給ノズル内の状態を模擬している。また、アルゴン(Ar)ガスに関しては、図17から除外している。
【0044】
図17に示すように、テトラクロロシラン(SiCl4)ガスは、1200℃付近まで殆ど分解しない。これは、図16の場合ではプロパン(C3H8)ガスに含まれる水素によるテトラクロロシラン(SiCl4)ガスの還元反応が起こっているためと考えられるのに対し、図17においては、プロパン(C3H8)ガスが存在しない為、テトラクロロシラン(SiCl4)ガスは1200℃付近まで殆ど分解しないと考えられる。また、テトラクロロシラン(SiCl4)ガス単体では炭化ケイ素膜を成膜する際に寄与しないガスであることは既知であり、少なくとも1200℃付近まではガス供給ノズル内に炭化ケイ素の多結晶膜等の堆積物が生成されにくいと考えられる。
【0045】
一方、1200℃以上になると、テトラクロロシラン(SiCl4)ガスが分解し、ジクロロシラン(SiCl2)ガスと塩素(Cl)ガスが発生する。ジクロロシラン(SiCl2)ガスによって例えば炭化ケイ素の多結晶膜が形成されると予想されるが、この場合は、同時にエッチング効果の塩素(Cl)ガスが発生するので、ガス供給ノズル内での膜の堆積は起きないと考えられる。また、ノズル内には水素が存在しないため、SiCl2+H2→Si(Solid)+2HCl等の成膜反応が起こらないため、ノズル内部には膜が付着されにくいと考えられる。
【0046】
つまり、第1のガス供給ノズル60より、少なくともシリコン含有ガスと塩素含有ガスとを供給し、第2のガス供給ノズル70より、少なくとも炭素含有ガスと還元ガスとを供給することで、ガス供給ノズル内での供給ガスの消費を抑制し、ガス供給ノズル内の閉塞を抑制し、それに伴うパーティクル発生を防ぐことができる。
【0047】
好ましくは、第1のガス供給ノズル60より、シリコン含有ガスと塩素含有ガスとキャリアガスとして希ガスの例えばアルゴン(Ar)ガスとを供給し、第2のガス供給ノズル70より、炭素含有ガスと還元ガスとしての例えば水素(H2)ガスとを供給すると良い。
【0048】
さらに好ましくは、第1のガス供給ノズル60より、シリコンと塩素とを含有するガスとして例えばテトラクロロシラン(SiCl4)ガスと、キャリアガスとして例えばアルゴン(Ar)ガス等の希ガスとを供給し、第2のガス供給ノズル70より、炭素含有ガスと、還元ガスとしての例えば水素(H2)ガスとを供給すると良い。
【0049】
また、不純物を添加する場合は、次の通り、ガス供給系を構成すると良い。少なくともn型不純物をドーピングするガスとしてn型不純物ガス、例えば窒素(N)ガスを第2のガス供給ノズル70を流通して供給する第2のガス供給口68は、例えばカーボングラファイトで構成され、反応室44内被加熱体48の内側に設けられており、第2のガス供給ノズル70はマニホールドを貫通するようにマニホールドに取り付けられている。なお、第2のガス供給ノズル70は複数本設けても良い。
【0050】
ガス供給ノズル70は、第2のガスライン260に接続されている。この第2のガスライン260は、例えば窒素ガスに対して流量制御器(流量制御手段)としてのMFC211f及びバルブ212fを介して例えば窒素ガス源210fに接続されている。
【0051】
この構成により、n型不純物ガスとして、例えば窒素ガスの供給流量、濃度、分圧を反応室44内において制御することができる。バルブ212f、MFC211fは、ガス流量制御部78によって電気的に接続されており、それぞれ供給するガスの流量が所定流量となるよう、所定のタイミングにて制御するようにされ(図4参照)、例えば窒素ガス源210f、バルブ212f、MFC211f、ガスライン260、ガス供給ノズル70、ガス供給ノズル70に少なくとも1つ設けられるガス供給口72によりガス供給系として、第3のガス供給系を構成される。
【0052】
また、上述の実施形態では、n型不純物ガスとして、窒素(N)ガスを例示したが、これに限らず、アンモニア(NH)ガス等の窒素含有ガスを用いても良く、また、これらのガスを組み合わせて用いても良い。窒素ガスは、水素雰囲気中では不活性なガスであり、例えば、1015cm-3から1018cm-3程度のドーピング量のn型ドーピング炭化珪素膜を形成する場合に用いやすい。
一方、アンモニアガスは気相中で分解されやすい窒素含有ガスの一例であり、このようなガス、若しくはアンモニアガスを含む混合ガス、例えば、アンモニアガスと窒素ガスの混合ガスを用いることで炭化珪素膜中への不純物のドーピング量を制御することができる。
【0053】
尚、本実施形態では、n型不純物ガスを用いて、基板であるウエハ14にn型不純物がドーピングされた炭化珪素エピタキシャル膜を形成する方法について説明されているが、p型の不純物がドーピングされた炭化珪素膜を形成する場合は、第1のガス供給ノズルよりシリコン含有ガスと塩素含有ガスとp型不純物を含有するガスであるp型不純物ガスとを供給することが好ましい。これにより後述の詳細説明に示すように、p型不純物が均一にドーピングされた炭化珪素エピタキシャル膜を形成することができる。
【0054】
なお、ボート30に水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて縦方向に積み上げて保持された基板として複数枚のウエハ14毎にガスを供給するために第1のガス供給ノズル60及び第2の供給ノズル70において基板の配列領域にウエハ14毎に第1のガス供給口68及び第2のガス供給口72が設けられても良い。これにより、ウエハ14それぞれに形成される膜の膜厚の面内均一性および不純物濃度の面内均一性を制御しやすくできる。
【0055】
しかし、これに限らず、第1のガス供給ノズル60及び第2のガス供給ノズル70それぞれにおいて、基板の配列領域に第1のガス供給口68、第2のガス供給口72が少なくとも1つ設けられても良い。また、第1のガス供給ノズル、第2のガス供給ノズルそれぞれにおいて、基板の配列領域に第1のガス供給口68、第2のガス供給口72がウエハ数枚ごとに設けても良い。
【0056】
また、本実施形態では、第1のガス供給ノズル60よりシリコン含有ガスと塩素含有ガスとを、第2のガス供給ノズル70より炭素含有ガスと還元ガスとn型不純物ガスとを供給したが、これに限らず、ガス種ごとにガス供給ノズルを設けて供給してもよい。
【0057】
また、ガス供給源210eより不活性ガスとして希ガスのアルゴン(Ar)ガスは所定の流量となるように、対応するMFC211eの開度が調整された後、バルブ212eが開かれ、ガス供給管240を流通して、第3のガス供給口360から反応室44内に供給される。第3のガス供給口360から供給された不活性ガスとして希ガスのアルゴンガスは、反応室44内の断熱材54と反応管42との間を通過し、第2のガス排気口390から排気される。
【0058】
また、本実施形態では、不活性ガスとして、アルゴンガスを例示したが、これに限らず、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)等の希ガスより少なくとも1つのガス、又はこれらの希ガス群より選択された2以上のガスを供給しても良い。
【0059】
また、本実施形態では、シリコン含有ガス、炭素含有ガス、還元ガス、n型不純物ガスとをそれぞれ、第1のガス供給口又は第2のガス供給口から被加熱体48の内側に供給しているが、例えば、キャリアガスとして希ガス、例えばアルゴンガスとともに供給しても良い。これにより、原料ガスを反応室内に均一に供給することができる。
【0060】
また、図3に示すように第1のガス排気口90が、第1のガス供給口68に接続されたガス供給ノズル60及び第2のガス供給口72に接続されたガス供給ノズル70の位置に対して対向面に位置するように配置され、マニホールドには、第1のガス排気口90に接続されたガス排気管230が貫通するように設けられている。ガス排気管230の下流側には図示しない圧力検出器として圧力センサ及び圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller、以下、APCとする)バルブ214を介して真空ポンプ等の真空排気装置220が接続されている。圧力センサ及びAPCバルブ214には、圧力制御部98が電気的に接続されており、この圧力制御部は圧力センサにより検出された圧力に基づいて、APCバルブ214の開度を調整することにより処理炉40内の圧力が所定の圧力になるよう、所定のタイミングにて制御するように構成されている(図4参照)。
【0061】
また、図3に示すように第3のガス供給口360は反応管42と断熱材54との間に配置されており、マニホールドを貫通するように取り付けられている。更にガス排気口390が、反応管42と断熱材54との間に配置され、第3のガス供給口360に対して対向面に位置するように配置され、マニホールドには第2のガス排気口390に接続されたガス排気管230が貫通するように設けられている。この第3のガス供給口360は不活性ガスとして、例えば、希ガスであるアルゴンガスが供給され、炭化珪素エピタキシャル膜成長に寄与するガスとして、例えばシリコン含有ガス又は炭素含有ガス又は塩素含有ガス又はそれらの混合ガスが反応管42と断熱材54との間に侵入するのを防ぎ、反応管42の内壁又は断熱材54の外壁が劣化したり、副生成物が付着したりすることを抑制することができる。
【0062】
反応管42と断熱材54との間に供給された不活性ガスは、第2のガス排気口390よりガス排気管230の下流側には図示しない圧力検出器として圧力センサ及び圧力調整器としてのAPCバルブ214を介して真空等の真空排気装置220から排気される。圧力センサ及びAPCバルブ214には、圧力制御部が電気的に接続されており、この圧力制御部は圧力センサにより検出された圧力に基づいて、APCバルブ214の開度を調整することにより反応室44内の圧力が所定の圧力になるよう、所定のタイミングにて制御するように構成されている(図4参照)。
【0063】
次に処理炉40周辺の構成について説明する。
図5は処理炉40及びその周辺構造の概略図を示す。処理炉40の下方には、この処理炉40の下端開口を機密に閉塞するための炉口蓋体としてシールキャップ102が設けられている。シールキャップ102は例えばステンレス等の金属で構成されており、円盤状に形成されている。シールキャップ102の上面には処理炉40の下端と当接するシール材としてのOリングが設けられている。シールキャップ102には回転機218が設けられている。回転機構104の回転軸106はシールキャップ102を貫通してボート30に接続されており、このボート30を回転させることで、ウエハ14を回転させるように構成されている。シールキャップ102は処理炉40の外側に向けられた昇降機構として後述する昇降モータ122によって垂直方向に昇降されるように構成されており、これにより、ボート30を処理炉40に対し搬入搬出することが可能となっている。回転機構104及び昇降モータ122には、駆動制御部108が電気的に接続されており、所定の動作をするよう所定のタイミングにて制御するよう構成されている(図4参照)。
【0064】
予備室としてロードロック室110の外面に下基板112が設けられている。下基板112には昇降台114と嵌合するガイドシャフト116及びこの昇降台114と螺合するボール螺子118が設けられている。下基板112に立設したガイドシャフト116及びボール螺子118の上端に上基板120が設けられている。ボール螺子118は上基板120に設けられた昇降モータ122により回転される。ボール螺子118が回転することにより昇降台114が昇降するように構成されている。
【0065】
昇降台114には中空の昇降シャフト124が垂設され、昇降台114と昇降シャフト124の連結部は気密となっている。昇降シャフト124は昇降台114と共に昇降するようになっている。昇降シャフト124はロードロック室110の天板126を遊貫する。昇降シャフト124が貫通する天板126の貫通穴はこの昇降シャフト124に対して接触することがないよう十分な余裕がある。ロードロック室110と昇降台114との間には昇降シャフト124の周囲を覆うように伸縮性を有する中空伸縮体としてベローズ128がロードロック室110を気密に保つために設けられている。ベローズ128は昇降台114の昇降量に対応できる十分な伸縮量を有し、このベローズ128の内径は昇降シャフト124の外形に比べ十分に大きく、ベローズ128の伸縮により接触することがないように構成されている。
【0066】
昇降シャフト124の下端には昇降基板130が水平に固着されている。昇降基板130の下面にはOリング等のシール部材を介して駆動部カバー132が気密に取り付けられる。昇降基板130と駆動部カバー132とで駆動部収納ケース134が構成されている。
この構成により駆動部収納ケース134内部はロードロック室110内の雰囲気と隔離される。
【0067】
また、駆動部収納ケース134の内部にはボート30の回転機構104が設けられ、この回転機構104の周辺は冷却機構135により冷却される。
【0068】
電力ケーブル138は昇降シャフト124の上端からこの昇降シャフト124の中空部を通り回転機構104に導かれて接続されている。また、冷却機構136及びシールキャップ102には冷却水流路140が形成されている。冷却水配管142は昇降シャフト124の上端からこの昇降シャフト124の中空部を通り冷却流路140に導かれて接続されている。
【0069】
昇降モータ122が駆動されボール螺子118が回転することで、昇降台114及び昇降シャフト124を介して駆動部収納ケース134を昇降させる。
【0070】
駆動部収納ケース134が上昇することにより、昇降基板130に気密に設けられているシールキャップ102が処理炉40の開口部である炉口144を閉塞し、ウエハ処理が可能な状態となる。駆動部収納ケース134が下降することにより、シールキャップ102と共にボート30が降下され、ウエハ14を外部に搬出できる状態となる。
【0071】
図4は炭化珪素エピタキシャル膜を成膜する半導体製造装置10を構成する各部の制御構成を示す。温度制御部52、ガス流量制御部78、圧力制御部98、駆動制御部108は、操作部及び入出力部を構成し、半導体製造装置10全体を制御する主制御部150に電気的に接続されている。これら、温度制御部52、ガス流量制御部78、圧力制御部98、駆動制御部108は、コントローラ152として構成されている。
【0072】
このように、第1のガス供給口68から少なくともシリコン含有ガスと塩素含有ガスとを供給し、第2のガス供給口72から少なくとも炭素含有ガスと還元ガスとn型不純物含有ガスとを供給し、供給されたガスはシリコン又は炭化珪素等で構成されたウエハ14に対し平行に流れ、第1の排気口90に向かって流れるため、ウエハ14全体が効率的にかつ均一にガスに晒される。
【0073】
次に、上述したように構成された熱処理装置10を用いて、半導体デバイスの製造工程の一工程として、炭化珪素等で構成されるウエハ14などの基板に、例えばn型不純物がドーピングされた炭化珪素エピタキシャル膜を形成する方法について説明する。なお、以下の説明において、熱処理装置10を構成する各部の動作は、コントローラ152により制御される。
【0074】
まず、ポッドステージ18に複数枚のウエハ14を収容したポッド16がセットされると、ポッド搬送装置20によりポッド16をポッドステージ18からポッド搬送装置20へ搬送し、このポッド搬送装置22にストックする。次に、ポッド搬送装置20により、ポッド搬送装置22にストックされたポッド16をポッドオープナ24に搬送してセットし、このポッドオープナ24によりポッド16の蓋を開き、基板枚数検知器26によりポッド16に収容されているウエハ14の枚数を検知する。
【0075】
次に、基板移載機28により、ポッドオープナ24の位置にあるポッド16からウエハ14を取り出し、ボート30に移載する。
【0076】
複数枚のウエハ14がボート30に装填されると、複数枚のウエハ14を保持したボート30は、昇降モータ122による昇降台114及び昇降シャフト124の昇降動作により反応室44内に搬入(ボートローディング)される。この状態で、シールキャップ102はOリングを介してマニホールドの下端をシールした状態となる。
【0077】
反応室44内が所定の圧力(真空度)となるように真空排気装置220によって真空排気される。この際、反応室44内の圧力は、圧力センサで測定され、この測定された圧力に基づき第1のガス排気口90及び第2のガス排気口390に連通するAPCバルブ214がフィードバック制御される。
また、ウエハ14及び被加熱体48の内側が所定の温度となるように磁場発生部としての誘導コイル50によって誘導加熱された被加熱体48により加熱される。この際、被加熱体48の内側が所定の温度分布となるように温度センサが検出した温度情報に基づき誘導コイル50への通電具合がフィードバック制御される。続いて、回転機構104により、ボート30が回転されることでウエハ14が周方向に回転される。
【0078】
続いて、n型不純物がドーピングされた炭化珪素エピタキシャル膜の成長反応に寄与するシリコン含有ガス及び塩素含有ガスはそれぞれ、ガス源210a、210bからガス供給口68より供給され、また炭素含有ガス及び還元ガスであるH2ガス及びn型不純物ガスは、ガス源210c、210d、210fからガス供給口72より供給されて、n型不純物がドーピングされた炭化珪素膜をエピタキシャル成長により形成する。
【0079】
このとき、シリコン含有ガス及び塩素含有ガスは所定の流量となるように、対応するMFC211a、211bの開度が調整された後、バルブ212a、212bが開かれ、それぞれのガスがガス供給管222、第1のガス供給ノズル60と流通して、第1のガス供給口68から供給される。
また、炭素含有ガス及び還元ガス及びn型不純物ガスとは、所定の流量となるように、対応するMFC211c、211d、211fの開度が調整された後、バルブ212c、212d、212fが開かれ、それぞれのガスがガス供給管260流通して、第2のガス供給ノズル70と流通して第2のガス供給口72より供給される。
【0080】
第1のガス供給口68及び第2のガス供給口72より供給されたガスは、反応室44内の被加熱体48の内側を通り、ガス排気口90からガス排気管230を通り排気される。第1のガス供給口68及び第2のガス供給口72より供給されたガスは、被加熱体48の内側を通過する際に炭化珪素等で構成されるウエハ14と接触しウエハ14の表面にn型不純物がドーピングされた炭化珪素エピタキシャル膜の成長がなされる。
【0081】
またガス供給源210eより不活性ガスとして希ガスのアルゴンガスは所定の流量となるように、対応するMFC211eの開度が調整された後、バルブ212eが開かれ、240ガス供給管240を流通して、第3のガス供給口360から反応室44内に供給される。第3のガス供給口360から供給された不活性ガスとして希ガスのアルゴンガスは、反応室44内の断熱材54と反応管42との間を通過し、第2のガス排気口390から排気される。
【0082】
図6に、本実施形態で適用されるガス供給ノズルの一例を示す。基板であるウエハ14の配列された領域に延在されている第1のガス供給ノズル60に、ウエハ14の表面と平行方向であり、第2のガス供給口70の方向へ延在されて分岐される第1の分岐ノズルに1以上設けられた第1のガス供給口68よりシリコン含有ガスと塩素含有ガスとを供給し、第1のガス供給ノズルと異なる位置に設けられており、ウエハ14の配列された領域に延在されている第2のガス供給ノズル70に、ウエハ14の表面と平行方向であり、第1のガス供給口60の方向へ延在されて分岐される第2の分岐ノズルに1以上設けられた第2のガス供給口72より炭素含有ガスとn型不純物ガスとして例えば、窒素ガスと還元ガスとして例えば、水素ガスとを供給され、ウエハ14に、n型不純物がドーピングされた炭化珪素膜を形成している。
【0083】
図6(a)に示すようにウエハ14に対し、平行方向にガスを供給することができるため、ウエハ14に形成される炭化珪素膜の膜厚は均一に形成され、また、不純物である窒素を均一にドーピングすることができる。
特に、図6(b)に示すような第1の分岐管、第2の分岐管を介して供給することで、ウエハ14を支えるボート柱30aの影響も軽減できる。具体的に説明すると次の通りである。ウエハ14は、複数のボート柱30aで支持され、面内膜厚の均一化のため回転している。そうすると、ボート柱30aがガス供給口の前を通過することになる。この場合、ボート柱30aによりガス供給が阻害されるが、図6のようにウエハ14に対し並行方向に複数のガス供給口を設けることで、広い範囲での、又は、密にガス供給を実現でき、結果としてボート柱の影響を小さくすることができる。
【0084】
また、更に、ボート柱30aの影響を少なくするために図6(c)に示すようにウエハホルダ300を用いてボート柱30aからウエハ14を離すようにしてもよい。ウエハホルダ300は、円環状の第1ウエハホルダ300aを有しており、ウエハ14は、第1ウエハホルダ300aに保持される。これにより、ウエハ14とボート柱30aとの距離をウエハホルダ300aの分、離すことができ、ボート柱30aの影響を小さくできる。また、本形態では成膜をする面を下向きにする所謂フェースダウン方式を採用し、ウエハ14の上面側を第1ウエハホルダ300aで覆う構成としている。このようにウエハ14の上面を覆うことにより、上部から落下してくるパーティクルの影響を抑制できると共に、第1ウエハホルダ300aをウエハ14の上面側と接触させることにより成膜面と反対側の裏面側への成膜を抑制できる。
【0085】
また、好ましくは、第1の分岐ノズルと第2の分岐ノズルとを交互に配置できるように設けられることが良い。これにより、第1のガス供給から供給されるシリコン含有ガス及び塩素含有ガスと、第2のガス供給ノズルより炭素含有ガスと、n型の不純物原子として窒素ガスと、還元ガスである水素ガスと、の濃度分布をモニタライン上(ガスの流れに垂直な方向)において均一化することができる。
【0086】
また、一対の第1の分岐ノズルと第2の分岐ノズルが、高さ方向に並んだウエハ14の夫々の間に配置されることが望ましい。これにより、各ウエハ14に対する条件を同一することができ、ウエハ間の均一性が向上させることができる。更に、この場合、ウエハ14の成膜面は、第1のガス供給口68及び第2のガス供給口70のうち、シリコン含有ガスを供給する第1のガス供給口68に近いほうが望ましい。炭化珪素膜の形成においては、炭素とシリコンの比(C/Si)が重要となり、特に炭素の濃度が高い場合は、膜質を劣化させる。従って、シリコンリッチとなりやすい環境とするためシリコン含有ガスを供給する第1のガス供給口68を炭素原子含有ガスを供給する第2のガス供給口72よりウエハ14の成膜面に近くするほうが望ましい。そのため、本実施形態では、ウエハ14間の空間に上から第1の分岐ノズル、第2の分岐ノズルの順で並んでいる。
【0087】
また、図6に示すように、ウエハに対し、平行方向に延びた第1の分岐ノズル、第2の分岐ノズルからガスを供給する構成を採用した場合、第1の分岐ノズルから供給されるガスと第2の分岐ノズルから供給されるガスの混合箇所を制御することにより、図6(a)で示すモニタラインに垂直な方向(ガスの流れ方向)のウエハ14の成膜面におけるC/Si比を均一化することができる。以下、図6(a)で示すモニタラインに垂直な方向の成膜面の上のラインを第2モニタラインとして、具体的に説明する。まず、仮にシリコン原子含有ガスと炭素原子含有ガスの比率(C/Si)を0.5として供給を開始したとする。シリコン原子含有ガスと炭素原子含有ガスをウエハ14に到達する前に完全に混合した場合、ガス消費を考えなければ第2モニタライン上のC/Siは0.5で一定である。しかしながら、ガス消費を考慮に入れるとシリコン原子含有ガスと炭素原子含有ガスは、同じように消費されるため、ガス供給ノズルに近い側と遠い側で混合比率が変わってしまう。例えば、シリコン原子含有ガスを100、炭素原子含有ガスを50で供給したとすると、ガス供給口から遠くなるにつれて、シリコン原子と炭素原子含有ガスは同じように消費され、減少する。ここで、極端な例ではあるが、シリコン原子含有ガスが60まで消費されたとすると、炭素原子含有ガスは、10まで消費されることになる。この時のC/Siは、10/60=0.17となり、ガス供給ノズルに近い側と遠い側とでC/Si比が変わってしまう。
【0088】
一方、シリコン原子含有ガスと炭素原子含有ガスをウエハ14に到達する前に完全に混合せず、第2モニタライン上で徐々に混合されるように制御すると、ガス供給ノズルに近い側と遠い側とのSi/Cが均一にできるようになる。このことについて、以下、説明する。
【0089】
まず、本形態のように2つのガスを平行に供給した場合、夫々のガスの拡散により2つのガスの混合が生じる。従って、第2モニタラインに近い第1の分岐ノズルから供給されたガス流に徐々に第2の分岐ノズルから供給されたガスの拡散が生じる。そのため、途中でのガス消費を考えなければ、第2モニタライン上の第2の分岐ノズルから供給されたガスの濃度は、分岐ノズルから遠くなるほど高くなる。一方、ガス消費を考慮した場合、C/Siの値を均一化するためには、第2モニタライン上のシリコン原子含有ガスの減少に対し、炭素原子含有ガスの減少を小さくすればよい。従って、拡散により徐々に第2の分岐ノズルから供給された炭素原子含有ガスが第1の分岐ノズルから供給されたシリコン原子含有ガスのガス流に拡散するようにすれば、第2モニタライン上では、徐々に炭素原子含有ガスが拡散により補充されることになり、シリコン原子含有ガスの減少に対し、炭素原子含有ガスの減少を小さくすることができる。
【0090】
このように第2の分岐ノズルから供給されたガスを徐々に第1の分岐ノズルから供給されたガス流に拡散させるためには、第1のガス供給口68から供給されるガス流の流速を第2のガス供給口72から供給されたガスがウエハ14の成膜面を通過する間に徐々に拡散していくような速さとすればよい。なお、一般的にガス流の流速を速くすると他のガスの拡散はしにくい状態となるため、第1のガス供給口から供給されるガスの流速を制御すればよい。第1のガス供給口68から供給されるガス流の流速を制御する方法としては、例えば、シリコン元素含有ガスのキャリアガスの流量を大きくする、又は、第1のガス供給口68の大きさを小さくすることが挙げられる。
【0091】
また、シリコン原子含有ガスと炭素原子含有ガスをウエハ14に到達するまでに混合させない点については、図6(c)に示されるようなウエハホルダ300を用いる際に、更なる効果を発揮する。即ち、シリコン原子含有ガスと炭素原子含有ガスがウエハ14に到達する前に混合されるとウエハホルダ300上にSiC膜が形成されることになる。SiC膜が形成されるということは、原料ガスが消費されることになり、原料ガスの効率が悪くなる。一方、ウエハ14上で混合が始まる場合は、ウエハホルダ300では成膜されないため、原料ガスの消費が生じない。従って、原料ガスの使用効率が向上する、即ち、成膜レートが向上し、生産性を向上させることができる。
【0092】
なお、図6に示すように、ガス供給口は複数の孔状のガス供給口を設けているが、これに限らず、スリット形状であっても良い。
【0093】
従来では、形成される炭化珪素膜において、シリコン濃度が高い部分(シリコンリッチ部分)及び炭素濃度が高い部分(炭素リッチ部分)を生じてしまい、形成される炭化珪素膜のシリコンと炭素との濃度比C/Siの値に偏差を生じていた。炭化珪素膜の膜質は、濃度比C/Siの値に大きく依存する。従って、偏差が生じるとウエハ14の面内の膜質の維持が困難である。しかしながら、本実施形態のように分岐管によりウエハ14に対して平行方向に複数のガス供給口を設けることで、面内のC/Siの値を均一化できる。また、濃度比C/Siの値に偏差があると不純物ドーピングにも影響が出る。従って、本実施形態は、不純物ドーピングをする場合も好適である。
【0094】
次に、不純物のドーピングを更に均一化する方法を説明する。例えばn型不純物として窒素をドーピングするために、反応室44内に窒素ガスを供給するが、炭化珪素膜表面において、窒素は炭素の吸着すべきシリコンサイトに取り込まれやすく、炭素リッチ部分では、より多くの炭素がシリコンサイトに吸着、もしくは占有する為、窒素の取り込みが阻害され、ドーピング濃度が低くなる、それにより、不純物のドーピング量で形成される膜の特性、例えば電気抵抗率値を制御することが困難な一因となることが考えられる。
そこで、後述するサイトコンペティションの原理を用い、不純物ガスとして窒素ガスは、炭素含有ガスともに第2のガス供給口から供給し、ウエハ14に形成されるn型不純物がドーピングされた炭化珪素膜、例えば窒素ドーピングされた炭化珪素膜の不純物濃度の面内分布を均一にすることを行った。
【0095】
ここで、サイトコンペティションの原理について説明する。
不純物が炭化珪素膜中に取り込まれるとき、不純物は、炭化珪素膜に於ける炭素サイトか、シリコンサイトのどちらかに取り込まれることが知られており、n型不純物として、例えば、窒素がドーピングされる場合は、炭化珪素膜のシリコンサイトに吸着し炭化珪素膜に取り込まれようとする炭素と置き換わることで、窒素が炭化珪素膜中に取り込まれ、n型不純物がドーピングされた炭化珪素膜が形成される。
また、p型不純物として、例えば、アルミニウムがドーピングされる場合は、炭化珪素膜
の炭素サイトに吸着し炭化珪素膜に取り込まれようとするシリコンと置き換わることで、アルミニウムが膜中に取り込まれ、p型不純物がドーピングされた炭化珪素膜が形成される。
これらはサイトコンペティションの原理と云われている。
【0096】
本実施形態では、n型不純物がドーピングされた炭化珪素膜を形成する際、炭化珪素膜の原料であるシリコン含有ガスと炭素含有ガスと塩素含有ガスとともにn型不純物ガスとして窒素ガスとを供給している。
上述のように炭化珪素膜におけるシリコンと炭素の比C/Si値の面内分布には偏差が生じており、炭素とシリコンサイトを競合する窒素は、シリコンリッチの部分のほうが炭素リッチの部分より多く膜中に取り込まれ、不純物濃度も面内分布に偏差を生じてしまう。
ここで、不純物ガスと同一の吸着座を競合するガスを含む混合ガスを供給する、つまり、窒素ガスを炭素含有ガスとともに供給し、炭素リッチの部分に多くn型不純物ガスを供給することで、シリコンリッチの部分にドーピングされるn型不純物量と炭素リッチの部分にドーピングされるn型不純物量とを相対的に均一する。
また、p型不純物がドーピングされた炭化珪素膜を形成する際は、p型不純物として、例えばアルミニウムを含むガスは、シリコン含有ガスとともに供給することで、p型不純物の面内分布を均一する。
これは、p型不純物は膜中に取り込まれる時にカーボンサイトに吸着し、同じくカーボンサイトに吸着しようとするシリコンと競合するためであり、シリコンリッチの部分に多くp型不純物ガスを供給することで、シリコンリッチの部分にドーピングされるp型不純物量と炭素リッチの部分にドーピングされるp型不純物量とを相対的に均一する。
【0097】
このように、形成される炭化珪素膜の不純物濃度の面内分布を均一にすることにより、不純物濃度により制御される電気抵抗率値を制御することが容易になる
【0098】
図10に、成膜寄与ガスの主成分である炭素含有ガスの濃度分布とシリコン含有ガスの濃度分布の比であるC/Siの値と炭化珪素膜中にドーピングされたn型ドーピング原子との関係を示す(SiC半導体の基礎と応用、著者 奥村元、児島一聡、福田憲司、 発行所 EDリサーチ社、27ページ、図4.5より出展)。これより、原料ガス中のC/Siの値が大きくなる場合、炭化珪素膜ではn型不純物のドーピングが阻害されることが分かる。以上のことから、ウエハ14の面内分布においてn型不純物がドーピングされた炭化珪素膜中の窒素濃度を均一にするためには、ウエハ14に形成されている炭化珪素膜の各部分におけるC/Siの値の偏差が小さいことが好ましい。
又は、n型不純物がドーピングされた炭化珪素膜を形成するために、n型不純物ガスとして例えば、窒素(N)ガスを供給する際に、または、p型不純物がドーピングされた炭化珪素膜を形成するために、p型不純物ガスとして例えば、トリメチルアルミニウムガスを供給する際に、これらの不純物ガスを供給する方法に関し、工夫が必要となることが分かる。
【0099】
発明者は上述のことを考慮し、本発明は、n型不純物またはp型不純物がドーピングされた炭化珪素膜を形成する際に、n型不純物ガスまたはp型不純物ガスの供給方法に関して発明したものであり、例えば、n型不純物がドーピングされた炭化珪素膜の場合、炭素含有ガスが供給される第2のガス供給ノズルより炭素含有ガスと共にn型不純物ガス、例えば窒素ガスを供給することで、ウエハ14において、C/Siの値が大きい部分、つまり、相対的に炭素濃度の大きい部分に積極的に窒素ガスを供給して窒素濃度が高い状態とすることで炭素サイトへの窒素の置き換わりを促進することで、ウエハ14においてC/Siの値が小さい部分との相対的な窒素濃度分布を均一にすることが出来る。
これにより、ウエハ14に形成されるn型不純物がドーピングされた炭化珪素膜におけるn型不純物の濃度分布の面内均一性を向上することを図る。
【0100】
一方、p型不純物がドーピングされた炭化珪素の場合においては、シリコン含有ガスが供給される第1のガス供給ノズルよりシリコン含有ガスと共にp型不純物ガス、例えばトリメチルアルミニウムガスを供給することで、ウエハ14において、C/Siの値が小さい部分、つまり、相対的にシリコン濃度の大きい部分に積極的にトリメチルアルミニウムガスを供給してアルミニウム濃度が高い状態とすることでシリコンサイトへのアルミニウムの置き換わりを促進することで、ウエハ14においてC/Siの値が大きい部分との相対的なアルミニウム濃度分布を均一にすることができる。
これにより、ウエハ14に形成されるp型不純物がドーピングされた炭化珪素膜におけるp型不純物の濃度分布の面内均一性を向上することを図る。
【0101】
炭化珪素エピタキシャル膜の成長は、予め設定された時間が経過すると、上述のガスの供給を停止し、図示しない不活性ガス供給源から不活性ガスが供給され、反応室44内が不活性ガスで置換されると共に、被加熱体48の内側の圧力が常圧に復帰される。
【0102】
その後、昇降モータ122によりシールキャップ102が下降されて、マニホールドの下端が開口されると共に、処理済ウエハ14がボート30に保持された状態でマニホールドの下端から反応管42の外部に搬出(ボートアンローディング)し、ボート30に支持された全てのウエハ14が冷えるまで、ボート30を所定位置で待機させる。次に、待機させたボート30のウエハ14が所定温度まで冷却されると、基板移載機28により、ボート30からウエハ14を取り出し、ポッドオープナ24にセットされている空のポッド16に搬送して収容する。その後、ポッド搬送装置20により、ウエハ14が収容されたポッド16をポッド搬送装置22、またはポッドステージ18に搬送する。このようにして半導体製造装置10の一連の作用が完了する。
【0103】
これにより、ガス供給ノズル内での堆積膜の成長を抑制し、被加熱体48の内側ではガス供給ノズルより供給されるシリコン含有ガス及び炭素含有ガス及び塩素含有ガス及び還元ガスである水素ガス及び不純物ガスが反応することで、炭化珪素等から構成される複数枚のウエハ14を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて縦方向に積み上げて保持される場合において、不純物がドーピングされた炭化珪素エピタキシャル膜の成長を行うことができる。
【0104】
また、好ましくは、第1ガス供給ノズル及び第2のガス供給ノズルは、第1及び第2のガス供給口68、72それぞれをウエハ14中心に向けてガスを噴出可能なように配置し、第1のガス供給ノズルと第2のガス供給ノズルを交互に設けることが良い。これにより、供給ガスの偏りを抑制し、より一層、膜厚面内均一性が向上する。
【0105】
また、本実施形態では、第1のガス供給ノズル及び第2のガス供給ノズルは、円筒形状であったが、これに限らず、角筒形状、多角形の形状であっても良く、好ましくは、ガス供給ノズルの形状は、その一部が被加熱体の内周面に沿うような形状であることが良く、これにより、ガス供給ノズルと被加熱体との間の隙間に膜を形成することを抑制することができ、この形成された膜が起因となるパーティクルが発生する虞を低減することができる。
【0106】
また、本実施形態では、第1のガス供給口68および第2のガス供給口72は孔形状のガス供給口を1以上設けたが、これに限らず、例えば、ウエハ14表面と平行な方向にスリット状のガス供給口を設けても良い。これにより、ウエハ14に対し、平行な方向にガスを供給することができ、ウエハ14に形成される不純物がドーピングされた炭化珪素膜において、膜厚の面内分布や不純物濃度の面内分布を均一にすることができる。
また、ガス供給口がスリット状の形状であることにより、供給されるガスのガス流速を小さくすることができるため、供給される原料ガスを十分に反応させることができる。
【0107】
なお、本実施形態では、不活性ガスとして希ガスのアルゴンガスを用いることが好ましいが、これに限らず、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、クリプトン(Kr)ガス、キセノン(Xe)ガスを用いても良い。
【0108】
[第2実施形態]
次に第2実施形態について説明する。
第1実施形態では、第1のガス供給ノズル60にウエハ表面に平行であり、第2のガス供給ノズル70の方向に延在した少なくとも1箇所分岐する第1の分岐ノズルと、第1のガス供給ノズルと異なる位置に設けられ第2のガス供給ノズル70にウエハ14表面に平行であり、第1のガス供給ノズル60の方向に延在した少なくとも1箇所分岐する第2の分岐ノズルとを設け、第1の分岐ノズルと第2の分岐ノズルそれぞれに1以上設けられる第1のガス供給口68および第2のガス供給口より原料ガスを供給することで、膜厚および不純物濃度の均一性を向上させたが、第2実施形態では、第1及び第2のガス供給ノズルを一体物にした形態を用いることで、メンテナンス性を向上、組立て誤差をなくすことができる。
【0109】
図7に本発明の第2実施形態に適用される、ガス供給ノズルの形態を示す。
図7(a)及び(b)に示されるノズル形状が本実施形態の一体構造の一例であり、図7に記載のAは、図7(a)と図7(b)における同じ位置であることを示している。図7に示すように、図6に示した構造と比較して構造がシンプルとなっており、図6の構造と比較し、例えばノズルを製作する際にコストを低減できる。または、例えば、定期メンテナンス作業等における組立てのし易さの点で有利である。
また、ノズルの形状は反応室44構成の形状に合わせて変形しても良く、例えば、図8に示すように被加熱体48の内壁に沿うようにノズルを湾曲させても良く、これにより、被加熱体48との隙間を小さくできることができるので、ガスが侵入することを抑制し、該隙間での膜の形成を抑制することができる。
また、これに限らず、多角形の形状であっても良い。
【0110】
よって、本実施形態では、ウエハ14表面に平行に原料ガスを供給することができるので、ウエハ14に形成される炭化珪素膜の膜質の均一になり、また、不純物濃度が均一になる。
【0111】
また、本実施形態では、ガス供給ノズルは一体物であるため、メンテナンス作業として、例えばガス供給ノズルの交換作業のときの取り外しまたは取り付ける作業が容易になり、また、ガス供給ノズルが一体ものになることで、ガス供給ノズルの交換作業の前後において、第1のガス供給口68および第2のガス供給口72の位置に差異を生じることを抑制することができるので、メンテナンス作業前後の成膜結果に差異が生じることを低減することができる。
【0112】
[第3実施形態]
次に第3実施形態について図12を用いて説明する。
図6に示されるガス供給ノズルは、第1のガス供給ノズル60と第2のガス供給ノズル70を夫々1本ずつ設け、第1のガス供給ノズル60と第2のガス供給ノズル70との間の空間に、第1のガス供給ノズル60から分岐した第1の分岐管と第2のガス供給ノズル70から分岐した第2の分岐管を交互に配置するようにしている。それに対し、本実施形態では、第1のガス供給ノズル60と第2のガス供給ノズル70を夫々複数本設け、その間の空間に夫々の分岐管を設けるようにしている。図6に示されるように第1のガス供給ノズル60と第2のガス供給ノズル70を夫々1本のみ設けた場合、夫々のガス供給ノズルに多量のガスを供給する必要がある。そうすると、ガスの加熱が不十分となり、ウエハ14の積層方向やウエハ内の温度均一性を乱す恐れがある。一方、本実施形態では、複数本のガス供給ノズルを設けているため夫々に流すガス流量を分散させることができ、ガス加熱に対し有利となる。
【0113】
また図6に示されるガス供給ノズルの形態では、分岐管内の圧力損失により、分岐管の根元に配置されたガス供給口と分岐管の先端に配置されたガス供給口からでるガスの質量流量に差が生じる可能性がある。これを防ぐためには、ある程度分岐管を太くする必要がある。その一方、本実施例では、分岐管の部分に設けられるガス供給口の数を少なくしているため、分岐管の流路を細くすることができ、縦方向に密にガス供給口を設けることができる。
【0114】
また、第1の実施形態でも同様に、第1のガス供給口68及び第2のガス供給口72は、ウエハ間の空間の夫々に設けられるほうが望ましい。ウエハ14間の夫々に設けられることで、ウエハ毎の成膜条件を等しくすることができ、ウエハ14間の均一性が向上する。特に、本実施形態では、上述の通り、ガス供給口を密に配置することができるため、ウエハ14間の夫々に第1のガス供給口68及び第2のガス供給口72を配置したとしてもウエハ14間を小さくすることができ、結果として、一度に処理できるウエハ14の枚数を多くすることができる。
【0115】
なお、図12において、分岐管は、角柱となっているが、円柱であっても良いことは言うまでもない。また、分岐管に設けられるガス供給口が1つとなっているが、複数であってもよい。
更には、本実施形態では、第1のガス供給口68と第2のガス供給口72が直線上に配置される。シリコン元素含有ガスと炭素元素含有ガスの混合を考えれば、直線上に配置することが望ましいが、許容できる範囲内で位置がずれても良い。
【0116】
[第4実施形態]
次に図13を用いて、第4実施形態を説明する。図13(a)は、第4実施形態のガス供給ノズルの側面図を示しており、図13(b)は、図13(a)に示す夫々の箇所の矢視図を示している。この第4実施形態のガス供給ノズルは、シリコン元素含有ガスを供給する第1のガス供給口68と炭素元素含有ガスを供給する第2のガス供給口72の間に、第4のガス供給口85が設けられており、第4のガス供給口からは、不活性ガス(例えば、アルゴン(Ar))が供給される。
【0117】
前述した通り、バッチ式縦型熱処理装置では、反応炉内にガス供給ノズルを設ける必要があるため、予め成膜に必要なガスを混合して一つのガス供給ノズルに供給するとガス供給ノズル内でSiC膜が堆積してしまい、ウエハ間の均一条件での成膜が難しい。そこで、本発明では、ガス供給ノズルを2系統、設けることにより、成膜条件とは異なるガス混合比率で反応炉内に供給し、ガス供給ノズル内の堆積によるガス消費を抑制している。しかしながら、ガス供給ノズル内は、反応炉とは隔離されているため2系統設けることで解決できるが、ガス供給口は、反応炉内に曝されており、2つのガス供給ノズルから供給されたガスが混合されることで、成膜条件とほぼ等しい条件となってしまう。従って、ガス供給口が堆積によって閉塞してしまうことも考えられる。そこで、本実施形態では、第4のガス供給口85を第1のガス供給口68と第2のガス供給口72との間に設け、不活性ガス(例えば、Ar)を供給している。これにより、ガス供給口68、72付近では、不活性ガスの流れにより、第1のガス供給口68から供給されるガスと第2のガス供給口から供給されるガスとが分離され、ガス供給口への堆積を抑制することができる。
【0118】
図13におけるガス供給ノズルは、第1のガス供給ノズル68、第2のガス供給ノズル72、及び、第4のガス供給ノズル80が図7に示されるガス供給ノズルのように一体的に形成されている。また、ガス供給口が設けられる反対側の面は、円弧状となっており、反応室44の形状に合わせるようにしている。第4のガス供給ノズル80は、図面の左右方向では、第1のガス供給ノズル60と第2のガス供給ノズル70との間に位置し、第1の分岐管及び第2の分岐管が形成される部分を避けるように円弧状となっている部分に設けられている。即ち、ガス供給口が設けられるガス供給面の反対側に設けられている。この部分に設けられることにより、図7に示されるガス供給ノズルに対し、大きくすることなく実現することが可能となる。
【0119】
第4のガス供給口85は、第1のガス供給口68と第2のガス供給口72との間に夫々設けられている。これにより、第1のガス供給口68から供給されるガスと第2のガス供給口から供給されるガスとを分離することができ、互いのガス供給口の膜の堆積による閉塞を抑制することができる。
【0120】
なお、図13では、複数のガス供給口を設けるようにしたが、図7のようにスリット方としても良い。また、図13では、一体型のガス供給ノズルにて説明したが、図6や図12に示されるような分離型のガス供給ノズルとした場合であっても、同様に第1のガス供給口68と第2のガス供給口72との間に第3のガス供給口85を設けることで同様の効果を得ることが可能である。
【0121】
なお、本発明は炭化珪素エピタキシャル膜成長に関して説明したが、その他のエピタキシャル膜及びCVD膜等に関しても適用することができる。
【0122】
(本発明の実施形態の効果の説明)
図9に第2実施形態の反応室構成にて成膜した不純物がドーピングされた炭化珪素膜の図8に示すモニタライン上におけるC/Si値の分布を示す。
図9は、横軸は図7にて点線で示したモニタラインの位置であり、縦軸にモニタライン上の各位置におけるシリコンと炭素との比C/Siの分布を示し、C/Si値の分布は均一であり、形成される炭化珪素膜のC/Si値の分布が均一であることが分かる。
また、C/Si値が均一な炭化珪素膜が形成されるので、n型不純物またp型不純物は均一にドーピングされ、均一に不純物がドーピングされた炭化珪素膜を形成することができる。
【0123】
更に、図14、図15を用いて本発明の効果を説明する。図14は、図12のガス供給ノズルを用いた際の、ウエハ面内のシリコン、炭素、及び、C/Siの分布の計算結果を示している。図15は、その比較例として、図15(c)に示されるように、横方向にシリコン含有ガスを供給するガス供給ノズル65と炭素含有ガスを供給するガス供給ノズル75を並べた場合のウエハ面内のシリコン、炭素、及び、C/Siの分布の計算結果を示している。なお、図14(a)及び図15(a)の夫々は、左側がウエハとウエハの間におけるSiソースの濃度分布、右側がその時の膜厚分布を示している。また、図14(b)及び図15(b)の夫々は、図14(a)及び図15(a)のそれぞれに示すモニタライン上のSiソースの濃度分布、Cソースの濃度分布、及び、C/Si値をプロットしたものである。なお、モニタラインは、ウエハ表面と同じ高さである。
【0124】
ここで、図15に示すガス供給ノズル構造では、夫々のガス供給口から供給されたガスは、ウエハの中央部に向かって流れ込む。その結果、モニタライン上のSiソース及びCソース濃度分布並びにC/Si分布に大きなばらつきがあることが判る。原料供給ノズルから噴出されたSiソース及びCソースガスは、互いに混合しながらウエハ領域へ流れ込むが、この混合が不十分であるが故に、モニタライン上のばらつきが生じると考えられる。上述のようにC/Si分布にばらつきがあると、ウエハ面内の膜厚のバラツキが生じる。また、上述のサイトコンペティション原理により、ウエハ面内のドナー濃度分布に偏りが生じる懸念がある。
【0125】
また、エピタキシャル膜の成長速度を向上させる為に原料濃度を高くすることが考えられる。原料濃度を上げていくと、ウエハ表面に接する気相中のSiソース濃度が高くなる為、ウエハ表面に於いてSiが凝集し、Si液滴としてSiC表面に残り、良質な膜を得られない可能性がある。従って、Si液滴がウエハ表面に残った時点で、それ以上原料濃度を上げられない事になるため、成長速度を上げられない。
【0126】
一方、本発明のように分岐管を用いてウエハに対し平行方向に複数のガス供給口を設けることで、Siソースガス及びCソースガスはノズルから噴出された後、高いに混合しながらウエハ間へ流れる。その結果、図14を見ると明らかなように、モニタライン上のSiソース・Cソースの濃度分布が平坦であり、必然的にC/Siも平坦化しているのがわかる。この時モニタライン上のSiソース濃度に注目すると、局所的に高濃度の場所が見当たらない。これは即ち、同一原料濃度に対し、ウエハ表面に於いてSi液滴が発生するまでの余裕が生じた事になり、図15の条件と比較し約2倍の成長速度を見込めることになる。また、サイトコンペティション原理によるドナー濃度偏差に対しても、本発明ではC/Siが面内で平坦となることから有利となる。
【0127】
本実施形態によれば、以下に示す、主な効果のうち少なくとも1つ以上の効果を奏する。
(1)ウエハ14と平行方向に延びる第1の分岐ノズル、第2の分岐ノズルからシリコン原子含有ガス、炭素原子含有ガスを供給することにより、形成される炭化珪素膜を構成するシリコンと炭素との比の炭化珪素膜の面内分布の偏差を小さくすることができるため、炭化珪素膜の膜質の面内均一性を向上できる。また、原料ガスの濃度を高くすることができるため、成長速度が向上する。
(2)形成される炭化珪素膜を構成するシリコンと炭素との比が、炭化珪素膜の面内分布の偏差を小さくし、不純物と置き換わる元素が含有される反応ガスとともに不純物ガスを供給することで、ウエハに形成される不純物がドーピングされた炭化珪素膜の膜厚及び不純物濃度の均一性を向上することが出来る。
(3)p型不純物がドーピングされた炭化珪素膜を形成する際に、第1のガス供給ノズルから少なくともシリコン含有ガスと塩素含有ガスとp型不純物ガスとを反応室44内へ供給し、第2のガス供給ノズルから少なくとも炭素含有ガスと還元ガスとを反応室44内へ供給して、ウエハに形成されるp型不純物がドーピングされた炭化珪素膜におけるp型不純物の濃度の面内均一性を向上することが出来る。
(4)n型不純物原子がドーピングされた炭化珪素膜を形成する際に、第1のガス供給ノズルから少なくともシリコン含有ガスと塩素含有ガスとを反応室44内へ供給し、第2のガス供給ノズルから少なくとも炭素含有ガスと還元ガスとn型不純物ガスとを反応室44内へ供給して、ウエハに形成されるn型不純物がドーピングされた炭化珪素膜におけるn型不純物の濃度の面内均一性を向上することが出来る。
(5)(1)〜(4)により、シリコン原子含有ガスと炭素原子含有ガスとを異なるガス供給ノズルによりそれぞれ反応室44内へ供給することができるので、ガス供給ノズル内での炭化珪素膜の形成を抑制することができる。
(6)(5)により、堆積する炭化珪素膜によるノズル内の閉塞を抑制することができる。
(7)(5)により、堆積する炭化珪素膜に起因するパーティクルの発生を抑制することができる。
(8)(1)〜(4)により、シリコン含有ガスと還元ガスとを異なるガス供給ノズルによりそれぞれ反応室44内供給することができるので、ガス供給ノズル内でのシリコン含有ガスの分解を抑制することができる。
(9)(8)により、ガス供給ノズル内でのシリコン含有ガスの消費を抑制することができる。
(10)(8)により、シリコン含有ガスのガス供給ノズル内でのシリコン膜の堆積を抑制することができる。
(11)(8)により、堆積するシリコン膜に起因するパーティクルの発生を抑制することができる。
(12)上記の効果により、一度の処理にての基板に対して不純物がドーピングされた炭化珪素エピタキシャル膜の成長を行うことができる。
(13)第2の実施形態において説明したように、第1のガス供給ノズル及び第2のガス供給ノズルと、を一体物の形態にすることにより、第1のガス供給口及び第2のガス供給口の位置きめを容易にすることができる。
(14)(13)により、メンテナンス作業の前後による成膜結果に差異を生じることを低減することができる。
(15)(13)により、取り付け作業が容易になり、メンテナンス作業時間を短縮することができる。
(16)また、第3の実施形態のように少なくとも第1のガス供給ノズル60又は第2のガス供給ノズル70を複数本設け、その間に分岐ノズルを設けることにより、一つの分岐ノズルから供給されるガス流量を少なくすることができるため、分岐ノズルを細くすることが可能となる。これにより、分岐ノズルを密に配置することが可能となる。
(17)また、第4の実施形態のように第1の分岐ノズルと第2の分岐ノズルの間に不活性ガスを供給することにより、第1のガス供給口68、第2のガス供給口72のSiC膜の堆積による閉塞を抑制できる。
【0128】
[付記]
以下に、本実施形態に係る好ましい態様を付記する。
【0129】
[付記1]
複数の基板が所定の間隔で積層される反応室と、前記反応室内に少なくともシリコン含有ガスと塩素含有ガスと、もしくは、シリコンと塩素含有ガスを供給する第1のガス供給系と、前記反応室内に少なくとも炭素含有ガスと還元ガスとを供給する第2のガス供給系と、前記複数の基板が積層される領域に延在されて設けられる第1のガス供給ノズルと、前記第1のガス供給ノズルと異なる位置であり、前記複数の基板が積層される領域に延在されて設けられる第2のガス供給ノズルと、前記第1のガス供給ノズルの前記基板の主面と平行であって、前記第2のガス供給ノズルの方向に1箇所以上分岐され、1以上の第1のガス供給口を有する第1の分岐ノズルと、前記第2のガス供給ノズルの前記基板の主面と平行であって、前記第1のガス供給ノズルの方向に1箇所以上分岐され、1以上の第2のガス供給口を有する第2の分岐ノズルと、前記第1のガス供給系が前記第1のガス供給口から少なくとも前記シリコン含有ガスと前記塩素含有ガスの混合ガス、もしくは、シリコンおよび塩素含有ガスを前記反応室内へ供給し、前記第2のガス供給系が前記第2のガス供給口から少なくとも前記炭素含有ガスと前記還元ガスとを前記反応室内へ供給し、前記基板に炭化珪素膜が形成されるよう制御するコントローラと、を備え、前記第1のガス供給口と前記第2のガス供給口とが、前記複数の基板が積層される方向に隣接するように設けられている基板処理装置。
[付記2]
前記第1の分岐ノズルと前記第2の分岐ノズルとが交互に配置するように設けられる付記1に記載の基板処理装置。
【0130】
[付記3]
前記複数の基板の間の領域には、前記第1の分岐ノズルと前記第2の分岐ノズルが対となって配置される付記2に記載の基板処理装置。
【0131】
[付記4]
前記第1の分岐ノズルは、前記基板の成膜面に対し、前記第2の分岐ノズルより近く配置される付記3の基板処理装置。
【0132】
[付記5]
前記第2の分岐ノズルから供給される前記炭素含有ガスは、前記基板の成膜面上において、前記第1の分岐ノズルから供給される前記シリコン含有ガスと塩素含有ガスの混合ガス、もしくは、前記シリコン及び塩素含有ガスのガス流に拡散する付記4の基板処理装置。
【0133】
[付記6]
前記複数の基板を保持するボートを更に具備し、
前記複数の基板の夫々は、ウエハホルダに保持された状態で前記ボートに保持される付記5の基板処理装置。
【0134】
[付記7]
前記第1のガス供給口と前記第2のガス供給口とは、形状が基板表面と平行になるようなスリット形状である付記1に記載の基板処理装置。
【0135】
[付記8]
前記第1のガス供給ノズルと前記第2のガス供給ノズルとが一体物である付記1に記載の基板処理装置。
【0136】
[付記9]
前記第1のガス供給ノズル及び前記第2のガス供給ノズルとは、多角形の形状である付記1に記載の基板処理装置。
【0137】
[付記10]
前記第1のガス供給ノズル及び前記第2のガス供給ノズルとは、一部が円弧の形状である付記1に記載の基板処理装置。
【0138】
[付記11]
前記反応室内に少なくとも不純物ガスを供給する第3のガス供給系を更に有し、前記第3ガス供給系は、前記第1のガス供給口又は第2のガス供給口のいずれか一方から前記不純物ガスを供給する付記1に記載の基板処理装置。
【0139】
[付記12]
前記第1ガス供給ノズルを複数本設けると共に前記第2ガス供給ノズルを複数本設け、前記複数の第1ガス供給ノズルと前記複数の第2ガス供給ノズルを互いに交互に配置する付記1の基板処理装置。
【0140】
[付記13]
前記第1の分岐ノズルと前記第2の分岐ノズルの間に不活性ガスを供給する第3のガス供給ノズルを更に具備する基板処理装置。
【0141】
[付記14]
複数の基板が所定の間隔で積層される反応室と、前記複数の基板が積層される領域に延在されて設けられる第1のガス供給ノズルと、前記複数の基板が積層される領域に延在され、前記第1のガス供給ノズルと異なる位置に設けられる第2のガス供給ノズルと、前記第1のガス供給ノズルの前記基板の主面と平行であって、前記第2のガス供給ノズルの方向に1箇所以上分岐され、1以上の第1のガス供給口を有する第1の分岐ノズルと、前記第2のガス供給ノズルの前記基板の主面と平行であって、前記第1のガス供給ノズルの方向に1箇所以上分岐され、1以上の第2のガス供給口を有する第2の分岐ノズルと、を備え、前記第1のガス供給口と前記第2のガス供給口とが、前記複数の基板が積層される方向に隣接するように設けられた基板処理装置における半導体装置の製造方法であって、前記複数の基板を反応室内に搬入する工程と、前記第1のガス供給口から、少なくともシリコン含有ガスと塩素含有ガスと、もしくは、シリコンと塩素含有ガスを供給し、前記第2のガス供給口から、少なくとも炭素含有ガスと還元ガスとを供給し、炭化珪素膜を成膜する工程と、を有する半導体装置の製造方法。
【0142】
[付記15]
複数の基板が所定の間隔で積層される反応室と、前記複数の基板が積層される領域に延在されて設けられる第1のガス供給ノズルと、前記複数の基板が積層される領域に延在され、前記第1のガス供給ノズルと異なる位置に設けられる第2のガス供給ノズルと、前記第1のガス供給ノズルの前記基板の主面と平行であって、前記第2のガス供給ノズルの方向に1箇所以上分岐され、1以上の第1のガス供給口を有する第1の分岐ノズルと、前記第2のガス供給ノズルの前記基板の主面と平行であって、前記第1のガス供給ノズルの方向に1箇所以上分岐され、1以上の第2のガス供給口を有する第2の分岐ノズルと、を備え、前記第1のガス供給口と前記第2のガス供給口とが、前記複数の基板が積層される方向に隣接するように設けられた基板処理装置における基板製造方法であって、前記複数の基板を反応室内に搬入する工程と、前記第1のガス供給口から、少なくともシリコン含有ガスと塩素含有ガスと、もしくは、シリコンと塩素含有ガスを供給し、前記第2のガス供給口から、少なくとも炭素含有ガスと還元ガスとを供給し、前記基板に炭化珪素膜を成膜する工程と、を有する基板製造方法。
【符号の説明】
【0143】
10 半導体製造装置
12 筐体
14 ウエハ
16 ポッド
30 ボート
40 処理炉
42 アウターチューブ
44 反応室
48 サセプタ
50 磁気コイル
60 シリコン原子含有ガス供給ノズル
68 供給孔
70 第2のガス供給口
90 第1のガス排気口
150 主制御部
152 コントローラ
300 ウエハホルダ
360 第3のガス供給口
390 第2のガス排気口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板が所定の間隔で積層される反応室と、
前記複数の基板が積層される領域に延在されて設けられる第1のガス供給ノズルと、前記複数の基板が積層される領域に延在され、前記第1のガス供給ノズルと異なる位置に設けられる第2のガス供給ノズルと、
前記第1のガス供給ノズルの前記基板の主面と平行であって、前記第2のガス供給ノズルの方向に1箇所以上分岐され、1以上の第1のガス供給口を有する第1の分岐ノズルと、
前記第2のガス供給ノズルの前記基板の主面と平行であって、前記第1のガス供給ノズルの方向に1箇所以上分岐され、1以上の第2のガス供給口を有する第2の分岐ノズルと、
を備え、
前記第1のガス供給口と前記第2のガス供給口とが、前記複数の基板が積層される方向に隣接するように設けられた基板処理装置における半導体装置の製造方法であって、
前記複数の基板を反応室内に搬入する工程と、
前記第1のガス供給口から、少なくともシリコン含有ガスと塩素含有ガスと、もしくは、シリコンと塩素含有ガスを供給し、前記第2のガス供給口から、少なくとも炭素含有ガスと還元ガスとを供給し、前記基板に炭化珪素膜を成膜する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
複数の基板が所定の間隔で積層される反応室と、
前記反応室内に少なくともシリコン含有ガスと塩素含有ガスと、もしくは、シリコンと塩素含有ガスを供給する第1のガス供給系と、
前記反応室内に少なくとも炭素含有ガスと還元ガスとを供給する第2のガス供給系と、
前記複数の基板が積層される領域に延在されて設けられる第1のガス供給ノズルと、
前記第1のガス供給ノズルと異なる位置であり、前記複数の基板が積層される領域に延在されて設けられる第2のガス供給ノズルと、
前記第1のガス供給ノズルの前記基板の主面と平行であって、前記第2のガス供給ノズルの方向に1箇所以上分岐され、1以上の第1のガス供給口を有する第1の分岐ノズルと、
前記第2のガス供給ノズルの前記基板の主面と平行であって、前記第1のガス供給ノズルの方向に1箇所以上分岐され、1以上の第2のガス供給口を有する第2の分岐ノズルと、
前記第1のガス供給系は、前記第1のガス供給口から少なくとも前記シリコン含有ガス
と前記塩素含有ガスと、もしくは、シリコンおよび塩素含有ガスを前記反応室内へ供給し、前記第2のガス供給系は、前記第2のガス供給口から少なくとも前記炭素含有ガスと前記還元ガスとを前記反応室内へ供給し、前記基板に炭化珪素膜が形成されるよう制御するコントローラと、
を備え、
前記第1のガス供給口と前記第2のガス供給口とが、前記複数の基板が積層される方向に隣接するように設けられている基板処理装置。
【請求項3】
複数の基板が所定の間隔で積層される反応室と、
前記複数の基板が積層される領域に延在されて設けられる第1のガス供給ノズルと、
前記複数の基板が積層される領域に延在され、前記第1のガス供給ノズルと異なる位置に設けられる第2のガス供給ノズルと、
前記第1のガス供給ノズルの前記基板の主面と平行であって、前記第2のガス供給ノズルの方向に1箇所以上分岐され、1以上の第1のガス供給口を有する第1の分岐ノズルと、
前記第2のガス供給ノズルの前記基板の主面と平行であって、前記第1のガス供給ノズルの方向に1箇所以上分岐され、1以上の第2のガス供給口を有する第2の分岐ノズルと、
を備え、
前記第1のガス供給口と前記第2のガス供給口とが、前記複数の基板が積層される方向に隣接するように設けられた基板処理装置における基板製造方法であって、
前記複数の基板を反応室内に搬入する工程と、
前記第1のガス供給口から、少なくともシリコン含有ガスと塩素含有ガスと、もしくは、シリコンと塩素含有ガスを供給し、前記第2のガス供給口から、少なくとも炭素含有ガスと還元ガスとを供給し、前記基板に炭化珪素膜を成膜する工程と、
を有する基板製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−205059(P2011−205059A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285773(P2010−285773)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】