説明

半導体装置及びその作製方法

【課題】しきい値電圧の制御が困難な酸化物半導体を活性層に用いたトランジスタに安定した電気的特性を付与し、信頼性の高い半導体装置を提供する。
【解決手段】一対の第1の領域、一対の第2の領域及び第3の領域を有する酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜と接して設けられる一対の電極と、酸化物半導体膜上のゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜を介し、一対の電極の間に設けられたゲート電極と、を有し、一対の第1の領域は一対の電極と重畳し、第3の領域はゲート電極と重畳し、一対の第2の領域は一対の第1の領域及び第3の領域の間に形成され、一対の第2の領域及び第3の領域には窒素、リン、または砒素のいずれかの元素が含まれており、該元素の濃度は、第3の領域より一対の第2の領域のほうが高い構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
トランジスタなどの半導体素子を含む回路を有する半導体装置及びその作製方法に関する。例えば、電源回路に搭載されるパワーデバイス、メモリ、サイリスタ、コンバータ、イメージセンサなどを含む半導体集積回路、液晶表示パネルに代表される電気光学装置、発光素子を有する発光表示装置等を部品として搭載した電子機器に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、発光表示装置、半導体回路及び電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
液晶表示装置に代表されるように、ガラス基板等に形成されるトランジスタはアモルファスシリコン、多結晶シリコンなどによって構成されている。アモルファスシリコンを用いたトランジスタは電界効果移動度が低いもののガラス基板の大面積化に対応することができる。また、多結晶シリコンを用いたトランジスタの電界効果移動度は高いがガラス基板の大面積化には適していないという欠点を有している。
【0004】
シリコンを用いたトランジスタに対して、酸化物半導体を用いてトランジスタを作製し、電子デバイスや光デバイスに応用する技術が注目されている。例えば、酸化物半導体として、酸化亜鉛、In−Ga−Zn−O系金属酸化物を用いてトランジスタを作製し、表示装置の画素のスイッチング素子などに用いる技術が特許文献1及び特許文献2で開示されている。
【0005】
特許文献3では、酸化物半導体を用いたスタガ型のトランジスタにおいて、ソース領域及びドレイン領域と、ソース電極及びドレイン電極との間に、緩衝層として導電性の高い窒素を含む酸化物半導体を設け、酸化物半導体と、ソース電極及びドレイン電極とのコンタクト抵抗を低減する技術が開示されている。
【0006】
非特許文献1では、セルフアラインでチャネル領域、ソース領域及びドレイン領域を形成したトップゲート構造の酸化物半導体トランジスタが開示されている。
【0007】
このように、酸化物半導体を用いたトランジスタの開発が行われている。しかし、酸化物半導体において、酸化物半導体中の酸素欠損はドナーとなり、キャリアである電子を放出する。酸化物半導体の酸素欠損を完全に取り除くことは困難であるため、結果としてしきい値電圧の制御も困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−123861号公報
【特許文献2】特開2007−96055号公報
【特許文献3】特開2010−135774号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Jae Chul Park et al.,”High performance amorphous oxide thin film transistors with self−aligned top−gate structure” IEDM2009, p191−194
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しきい値電圧の制御が困難な酸化物半導体を活性層に用いたトランジスタに安定した電気的特性を付与し、信頼性の高い半導体装置を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、トランジスタの活性層として酸化物半導体を用い、該酸化物半導体におけるにチャネル部分へイオンを添加することによりチャネル部分の電気抵抗値を増加させ、それによってトランジスタのしきい値をプラスシフトさせることを技術的思想とする。
【0012】
一般に、酸化物半導体膜の酸素欠損は、その一部がドナーとなりキャリアである電子を放出する。その結果、酸化物半導体膜をトランジスタの活性層に用いると、酸素欠損が原因でしきい値電圧がマイナス方向にシフトしてしまうことがある。また、生成されるキャリアが非常に多くなり、チャネル部分の電気抵抗値が低くなりすぎると、トランジスタのオンオフの切り替えさえ困難となってしまう。そのため、酸化物半導体膜は、酸素欠損が生じないように形成する必要があるが、酸化物半導体膜形成後の加熱処理や減圧下への暴露における、微量の酸素の放出まで抑制することは困難である。また、酸化物半導体膜中に生じる酸素欠損は、僅かでもトランジスタのしきい値電圧をマイナスシフトさせるため、ノーマリーオンの電気特性となりやすい。
【0013】
そこで本発明の一態様は、酸化物半導体膜の形成時に、酸化物半導体膜中の酸素欠損が多く存在し、電気抵抗値は小さい状態でも、その後の工程におけるイオン添加によって、酸化物半導体膜の電気抵抗値を制御し、トランジスタのオンオフ動作を可能にし、しきい値を制御したトランジスタを作製する。
【0014】
本発明の一態様は、一対の第1の領域、一対の第2の領域及び第3の領域を有する酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜と接して設けられる一対の電極と、酸化物半導体膜上のゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜を介し、一対の電極の間に設けられたゲート電極と、を有し、一対の第1の領域は一対の電極と重畳し、第3の領域はゲート電極と重畳し、一対の第2の領域は一対の第1の領域及び第3の領域の間に形成され、一対の第2の領域及び第3の領域には窒素、リン、または砒素のいずれかの元素が含まれており、該元素の濃度は、第3の領域より一対の第2の領域のほうが高いことを特徴とする半導体装置である。
【0015】
さらに、一対の第2の領域に含まれる該元素の濃度は、5×1021atoms/cm以上5×1022atoms/cm未満であり、前記第3の領域に含まれる該元素の濃度は、5×1020atoms/cm以上5×1021atoms/cm未満とする。
【0016】
また酸化物半導体膜は、In、Ga、Sn及びZnから選ばれた二種以上の元素を含むことができる。
【0017】
本発明の一態様は、上記のようなトランジスタ構造とすることによって、ソース電極及びドレイン電極として機能する一対の電極と、ゲート電極との重なりが生じない。そのため、寄生容量を低減することができるため、トランジスタを高速動作させることができる。
【0018】
さらに酸化物半導体膜において、トランジスタのソース電極及びドレイン電極として機能する一対の電極と接する部分には、前述した窒素、リン、または砒素の添加は無い。そのため、酸化物半導体膜を形成時に、成膜条件や、成膜後の加熱処理などにより酸化物半導体膜に酸素欠損を生成させ、電気抵抗値を下げておくことにより、一対の電極と酸化物半導体膜との接触抵抗を低減させることができる。それにより、トランジスタのオン電流を向上させることができる。
【0019】
また、酸化物半導体膜への窒素、リン、または砒素の添加は、酸化物半導体膜が露出している状態、又は酸化物半導体膜を覆って、絶縁膜などが形成されている状態のどちらでも行うことができる。
【0020】
さらに、上記窒素、リン、または砒素の添加は、イオンドーピング法またはイオンインプランテーション法などにより行うことができる。さらに、注入以外の方法でも行うことができる。例えば、添加する元素を含むガス雰囲気で、被添加物に対してプラズマ処理を行うことによって、目的の元素を添加することができる。上記プラズマを発生させる装置としては、ドライエッチング装置やプラズマCVD装置、高密度プラズマCVD装置などを用いることができる。
【0021】
また、上記元素を添加した後に、加熱処理を行ってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によって、しきい値電圧の制御が困難な酸化物半導体を活性層に用いたトランジスタに安定した電気的特性を付与し、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一態様である半導体装置の一例を示す断面図及び上面図。
【図2】本発明の一態様である半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【図3】本発明の一態様である半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【図4】本発明の一態様であるトランジスタを用いた液晶表示装置の一例を示す回路図。
【図5】本発明の一態様であるトランジスタを用いた半導体記憶装置の一例を示す回路図及び電圧(V)―時間(T)グラフ。
【図6】本発明の一態様であるトランジスタを用いた半導体記憶装置の一例を示す回路図及び電圧(V)―電流(I)グラフ。
【図7】本発明の一態様であるトランジスタを用いた半導体記憶装置の一例を示す回路図。
【図8】本発明の一態様であるトランジスタを用いたCPUの具体例を示すブロック図及びその一部の回路図。
【図9】本発明の一態様である電子機器の一例を示す斜視図。
【図10】本発明の一態様における酸化物半導体膜の電気抵抗値を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には、同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0025】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、膜の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0026】
また、本明細書にて用いる第1、第2、第3などの用語は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」または「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。
【0027】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタの一例について図1乃至図3を用いて説明する。
【0028】
図1(A)はトランジスタの上面図である。図1(A)に示した一点鎖線A−Bにおける断面を、図1(B)に示す。なお、図1(A)では、煩雑になることを避けるため、トランジスタの構成要素の一部(例えば、ゲート絶縁膜106、層間絶縁膜110など)を省略している。
【0029】
ここでは、図1(B)に示すA−B断面について詳細に説明する。
【0030】
図1(B)に示すトランジスタは、絶縁表面上の一対の第1の領域120、一対の第2の領域121及び第3の領域122を有する酸化物半導体膜104と、酸化物半導体膜104と接して設けられる一対の電極102と、酸化物半導体膜104上のゲート絶縁膜106と、ゲート絶縁膜106を介し、一対の電極102の間に設けられたゲート電極108と、ゲート絶縁膜106及びゲート電極108を覆う層間絶縁膜110と、層間絶縁膜110に設けられたコンタクトホールにおいて、一対の電極102と接続された配線116と、を有する。本実施の形態では、絶縁表面として、基板100上に下地絶縁膜101を設けた場合について説明する。
【0031】
また、一対の第1の領域120は一対の電極102と重畳し、第3の領域122はゲート電極108と重畳し、一対の第2の領域121は一対の第1の領域120及び第3の領域122の間に形成される。一対の第2の領域121には窒素、リン、または砒素のいずれか一以上の元素が含まれており、第3の領域122には窒素、リン、または砒素のいずれかの元素が含まれている。含まれる元素の濃度は、第3の領域122より一対の第2の領域121のほうが高い。
【0032】
一対の第2の領域に含まれる窒素、リン、および砒素の濃度の和は、5×1021atoms/cm以上5×1022atoms/cm未満であり、前記第3の領域に含まれる窒素、リン、および砒素の濃度の和は、5×1020atoms/cm以上5×1021atoms/cm未満である。
【0033】
基板100に大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを、基板100として用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI(Silicon On Insulator)基板などを適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板100として用いてもよい。
【0034】
基板100として、可とう性基板を用いてもよい。その場合は、可とう性基板上に直接トランジスタを作製すればよい。なお、可とう性基板上にトランジスタを設ける方法としては、非可とう性の基板上にトランジスタを作製した後、トランジスタを剥離し、可とう性基板である基板100に転置する方法もある。その場合には、非可とう性基板とトランジスタとの間に剥離層を設けるとよい。
【0035】
下地絶縁膜101は、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜及び酸化ガリウム膜の単層または積層させて用いればよい。また、下地絶縁膜101は加熱処理により酸素を放出する膜である必要は無い。それは、下地絶縁膜101からの酸素放出によって酸化物半導体膜中にある酸素欠損を埋めて電気抵抗値を増加させなくとも、後のトランジスタ作製工程におけるイオン添加によって、酸化物半導体膜の電気抵抗値を増加させることができるためである。
【0036】
ここで、酸化窒化シリコンとは、その組成において、窒素よりも酸素の含有量が多いものを示し、例えば、酸素が50原子%以上70原子%以下、窒素が0.5原子%以上15原子%以下、珪素が25原子%以上35原子%以下、水素が0原子%以上10原子%以下の範囲で含まれるものをいう。また、窒化酸化シリコンとは、その組成において、酸素よりも窒素の含有量が多いものを示し、例えば、酸素が5原子%以上30原子%以下、窒素が20原子%以上55原子%以下、珪素が25原子%以上35原子%以下、水素が10原子%以上25原子%以下の範囲で含まれるものをいう。但し、上記範囲は、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)や、水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Forward Scattering)を用いて測定した場合のものである。また、構成元素の含有比率は、その合計が100原子%を超えない値をとる。
【0037】
酸化物半導体膜104は、スパッタリング法、プラズマCVD法、PLD(Pulse Laser Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、塗布法、印刷法または蒸着法などを用いて形成すればよい。
【0038】
ここで、スパッタリング法により酸化物半導体膜を成膜する場合の、スパッタリング装置について、以下に詳細を説明する。
【0039】
酸化物半導体膜を成膜する処理室は、リークレートを1×10−10Pa・m/秒以下とすることが好ましく、それによりスパッタリング法により成膜する際、膜中への不純物の混入を低減することができる。
【0040】
リークレートを低くするには、外部リークのみならず内部リークを低減する必要がある。外部リークとは、微小な穴やシール不良などによって真空系の外から気体が流入することである。内部リークとは、真空系内のバルブなどの仕切りからの漏れや内部の部材からの放出ガスに起因する。リークレートを1×10−10Pa・m/秒以下とするためには、外部リーク及び内部リークの両面から対策をとる必要がある。
【0041】
外部リークを減らすには、処理室の開閉部分はメタルガスケットでシールするとよい。メタルガスケットは、フッ化鉄、酸化アルミニウム、または酸化クロムによって被覆された金属材料を用いると好ましい。メタルガスケットはOリングと比べ密着性が高く、外部リークを低減できる。また、フッ化鉄、酸化アルミニウム、酸化クロムなどの不動態によって被覆された金属材料を用いることで、メタルガスケットから生じる水素を含む放出ガスが抑制され、内部リークも低減することができる。
【0042】
処理室の内壁を構成する部材として、水素を含む放出ガスの少ないアルミニウム、クロム、チタン、ジルコニウム、ニッケルまたはバナジウムを用いる。また、前述の材料を鉄、クロム及びニッケルなどを含む合金材料に被覆して用いてもよい。鉄、クロム及びニッケルなどを含む合金材料は、剛性があり、熱に強く、また加工に適している。ここで、表面積を小さくするために部材の表面凹凸を研磨などによって低減しておくと、放出ガスを低減できる。あるいは、前述の成膜装置の部材をフッ化鉄、酸化アルミニウム、酸化クロムなどの不動態で被覆してもよい。
【0043】
さらに、スパッタガスを処理室に導入する直前に、スパッタガスの精製機を設けることが好ましい。このとき、精製機から処理室までの配管の長さを5m以下、好ましくは1m以下とする。配管の長さを5m以下、好ましくは1m以下とすることで、配管からの放出ガスの影響を長さに応じて低減できる。
【0044】
処理室の排気は、ドライポンプなどの粗引きポンプと、スパッタイオンポンプ、ターボ分子ポンプ及びクライオポンプなどの高真空ポンプとを適宜組み合わせて行うとよい。ターボ分子ポンプは大きいサイズの分子の排気が優れる一方、水素や水の排気能力が低い。そこで、水の排気能力の高いクライオポンプまたは水素の排気能力の高いスパッタイオンポンプを組み合わせることが有効となる。
【0045】
処理室の内側に存在する吸着物は、内壁に吸着しているために処理室の圧力に影響しないが、処理室を排気した際のガス放出の原因となる。そのため、リークレートと排気速度に相関はないが、排気能力の高いポンプを用いて、処理室に存在する吸着物をできる限り脱離し、予め排気しておくことが好ましい。なお、吸着物の脱離を促すために、処理室をベーキングしてもよい。ベーキングすることで吸着物の脱離速度を10倍程度大きくすることができる。ベーキングは100℃以上450℃以下で行えばよい。このとき、不活性ガスを導入しながら吸着物の除去を行うと、排気するだけでは脱離しにくい水などの脱離速度をさらに大きくすることができる。
【0046】
スパッタリング法において、プラズマを発生させるための電源装置は、RF電源装置、AC電源装置、DC電源装置等を適宜用いることができる。
【0047】
酸化物半導体膜104として、少なくともIn、Ga、Sn及びZnから選ばれた一種以上の元素を含有する。このような酸化物半導体は、例えば、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系金属酸化物や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系金属酸化物、In−Sn−Zn−O系金属酸化物、In−Al−Zn−O系金属酸化物、Sn−Ga−Zn−O系金属酸化物、Al−Ga−Zn−O系金属酸化物、Sn−Al−Zn−O系金属酸化物や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O系金属酸化物、Sn−Zn−O系金属酸化物や、一元系金属酸化物であるZn−O系金属酸化物、Sn−O系金属酸化物などのターゲットを用いて成膜することができる。また、上記酸化物半導体に、In、Ga、Sn及びZn以外の元素やその元素を含む化合物、例えばSiOを含ませてもよい。
【0048】
例えば、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物半導体、という意味であり、その組成比は問わない。
【0049】
また、酸化物半導体は、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記される薄膜を用いることができる。ここで、Mは、Zn、Ga、Al、Mn、Co、Sn、Hf、Ti又はZrから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えばMとして、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn、またはGa及びCoなどがある。
【0050】
酸化物半導体としてIn−Ga−Zn−O系の材料を用いる場合、ターゲットの一例として、In、Ga、及びZnを含む金属酸化物ターゲットを、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol数比]の組成比とする。また、In:Ga:ZnO=1:1:2[mol数比]の組成比を有するターゲット、またはIn:Ga:ZnO=1:1:4[mol数比]の組成比を有するターゲット、In:Ga:ZnO=2:1:8[mol数比]の組成比を有するターゲットを用いることもできる。また、In:ZnO=25:1[mol数比]〜1:4の組成比を有するターゲットを用いることもできる。
【0051】
また、酸化物半導体としてIn−Zn−O系の材料を用いる場合、用いるターゲットの組成比は、原子数比で、In:Zn=50:1〜1:2(mol数比に換算するとIn:ZnO=25:1〜1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1〜1:1(mol数比に換算するとIn:ZnO=10:1〜1:2)、さらに好ましくはIn:Zn=15:1〜1.5:1(mol数比に換算するとIn:ZnO=15:2〜3:4)とする。例えば、In−Zn−O系酸化物半導体の形成に用いるターゲットは、原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。
【0052】
なお、スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素ガス、希ガス及び酸素ガスの混合ガスを適宜用いる。また、スパッタリングガスには、水素、水、水酸基または水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0053】
酸化物半導体膜104は、トランジスタのオフ電流を低減するため、バンドギャップが2.5eV以上、好ましくは3.0eV以上の材料を選択する。ただし、酸化物半導体に代えて、バンドギャップが前述の範囲である半導体性を示す材料を用いても構わない。
【0054】
酸化物半導体膜104は、水素、アルカリ金属及びアルカリ土類金属などが低減され、極めて不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。そのため、酸化物半導体膜をチャネル領域に用いたトランジスタはオフ電流を小さくできる。
【0055】
酸化物半導体膜中の水素濃度は、5×1018atoms/cm未満、好ましくは1×1018atoms/cm以下、より好ましくは5×1017atoms/cm以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm以下とすることが好ましい。
【0056】
アルカリ金属は酸化物半導体を構成する元素ではないため、不純物である。アルカリ土類金属も、酸化物半導体を構成する元素ではない場合において、不純物となる。特に、アルカリ金属のうちナトリウム(Na)は、酸化物半導体膜に接する絶縁膜が酸化物である場合、当該絶縁膜中に拡散してNaとなる。また、Naは、酸化物半導体膜内において、酸化物半導体を構成する金属と酸素の結合を分断する、または、その結合中に割り込む。その結果、例えば、しきい値電圧がマイナス方向にシフトすることによるノーマリーオン化、電界効果移動度の低下などの、トランジスタ特性の劣化が起こり、加えて、特性のばらつきも生じる。この不純物によりもたらされるトランジスタ特性の劣化と、特性のばらつきは、酸化物半導体膜中の水素濃度が十分に低い場合において顕著に現れる。従って、酸化物半導体膜中の水素濃度が1×1018atoms/cm以下、より好ましくは1×1017atoms/cm以下である場合には、上記不純物の濃度を低減することが望ましい。具体的に、Na濃度の測定値は、5×1016atoms/cm以下、好ましくは1×1016atoms/cm以下、更に好ましくは1×1015atoms/cm以下とするとよい。同様に、リチウム(Li)濃度の測定値は、5×1015atoms/cm以下、好ましくは1×1015atoms/cm以下とするとよい。同様に、カリウム(K)濃度の測定値は、5×1015atoms/cm以下、好ましくは1×1015atoms/cm以下とするとよい。
【0057】
以上に示した酸化物半導体膜104を用いることでトランジスタのオフ電流を小さくできる。具体的には、トランジスタのチャネル幅1μmあたりのオフ電流を1×10−18A以下、または1×10−21A以下、または1×10−24A以下とすることができる。
【0058】
また、成膜時の基板温度は150℃以上450℃以下、好ましくは200℃以上350℃以下である。150℃以上450℃以下、好ましくは200℃以上350℃以下に基板を加熱しながら成膜をすることによって、膜中への水分(水素を含む)などの混入を防ぐことができる。
【0059】
酸化物半導体膜104は、単結晶、多結晶(ポリクリスタルともいう。)または非晶質などの状態をとる。
【0060】
好ましくは、酸化物半導体膜104は、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜とする。
【0061】
CAAC−OS膜は、完全な単結晶ではなく、完全な非晶質でもない。CAAC−OS膜は、非晶質相に結晶部を有する結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体膜である。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであることが多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像では、CAAC−OS膜に含まれる非晶質部と結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC−OS膜には粒界(グレインバウンダリーともいう。)は確認できない。そのため、CAAC−OS膜は、粒界に起因する電子移動度の低下が抑制される。
【0062】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、c軸がCAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃い、かつab面に垂直な方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸及びb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、−5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
【0063】
なお、CAAC−OS膜において、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の形成過程において、酸化物半導体膜の表面側から結晶成長させる場合、被形成面の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC−OS膜へ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶質化することもある。
【0064】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC−OS膜の形状(被形成面の断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。なお、結晶部のc軸の方向は、CAAC−OS膜が形成されたときの被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向となる。結晶部は、成膜することにより、または成膜後に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
【0065】
CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動を低減することが可能である。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
【0066】
一対の電極102は、導電材料としてアルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタングステンからなる単体金属、またはこれを主成分とする合金を単層構造または積層構造として用いる。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、タングステン膜上にチタン膜を積層する二層構造、銅−マグネシウム−アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造などがある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。なお、一対の電極102は配線としても機能する。
【0067】
ゲート絶縁膜106は、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウムまたは酸化ガリウムなどを用いればよく、積層または単層で設ける。例えば、熱酸化法、CVD法、スパッタリング法などで形成すればよい。
【0068】
また、ゲート絶縁膜106として、ハフニウムシリケート(HfSiO)、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSi)、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAl)、酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh−k材料を用いることでゲートリークを低減できる。さらには、high−k材料と、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、及び酸化ガリウムのいずれか一以上との積層構造とすることができる。ゲート絶縁膜106の厚さは、1nm以上300nm以下、より好ましくは5nm以上50nm以下とするとよい。
【0069】
ゲート電極108は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金などを用いて形成することができる。また、マンガン、ジルコニウムのいずれか一または複数から選択された金属元素を用いてもよい。また、ゲート電極108は、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜上にタングステン膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造などがある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素の膜、または複数組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0070】
また、ゲート電極108は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
【0071】
また、ゲート電極108とゲート絶縁膜106との間に、ゲート絶縁膜106に接する材料層として、窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜や、窒素を含むIn−Sn−O膜や、窒素を含むIn−Ga−O膜や、窒素を含むIn−Zn−O膜や、窒素を含むSn−O膜や、窒素を含むIn−O膜や、金属窒化膜(InN、ZnNなど)を設けることが好ましい。これらの膜は5eV、好ましくは5.5eV以上の仕事関数を有し、トランジスタの電気特性のしきい値電圧をプラスにすることができ、所謂ノーマリーオフのスイッチング素子を実現できる。例えば、窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜を用いる場合、少なくとも酸化物半導体膜104より高い窒素濃度、具体的には7原子%以上のIn−Ga−Zn−O膜を用いる。
【0072】
層間絶縁膜110の材料は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムを単層または積層させて用いることができ、スパッタリング法、CVD法などで成膜すればよい。例えば、プラズマCVD法により、シランガスを主材料とし、酸化窒素ガス、窒素ガス、水素ガス及び希ガスから適切な原料ガスを混合して成膜すればよい。また、基板温度を200℃以上550℃以下とすればよい。
【0073】
配線116の材料は、ゲート電極108と同様の構成とすればよい。
【0074】
また、本実施の形態では、ゲート電極と一対の電極を重畳させない構成としているが、これに限定されるものではない。例えば、一対の第1の領域と第3の領域により形成される酸化物半導体膜を用いたトランジスタを形成することができる。さらに、本実施の形態にて示したトップゲート型トランジスタではなく、ボトムゲート型トランジスタとしても構わない。
【0075】
以上のような構造を有することによって、しきい値電圧の制御が困難な酸化物半導体を活性層に用いたトランジスタに安定した電気的特性を付与し、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0076】
<トランジスタの作製方法の一例>
次に、図1に示したトランジスタの作製方法について、図2及び図3を用いて説明する。
【0077】
まず、基板100上に下地絶縁膜101を形成する。
【0078】
次に、下地絶縁膜101上に酸化物半導体膜104を形成する。
【0079】
酸化物半導体膜104は、スパッタリング法により、厚さ1nm以上50nm以下の酸化物半導体膜を成膜し、該酸化物半導体膜上にマスクを形成した後、当該マスクを用いて酸化物半導体膜を選択的にエッチングして形成される(図2(A)参照。)。
【0080】
酸化物半導体膜をエッチングするためのマスクは、フォトリソグラフィ工程、インクジェット法、印刷法等を適宜用いて形成することができる。また、酸化物半導体膜のエッチングはウエットエッチングまたはドライエッチングを適宜用いることができる。
【0081】
また、酸化物半導体膜成膜後に、基板100に加熱処理を施して、酸化物半導体膜から水分及び水素を放出させることが好ましい。また、該加熱処理を行うことによって、より結晶性の高いCAAC―OS膜を形成することができる。さらに、該加熱処理によって酸化物半導体膜から多少の酸素も脱離するため、酸化物半導体膜中に酸素欠損が生成されることにより電気抵抗値が減少する。このことにより、後の工程にて形成される一対の電極102との接触抵抗を下げることができ、トランジスタのオン電流を向上させることができる。
【0082】
該加熱処理の温度は、酸化物半導体膜から水分及び水素を放出させる温度が好ましく、代表的には、200℃以上基板100の歪み点未満、好ましくは250℃以上450℃以下とする。
【0083】
また該加熱処理は、RTA(Rapid Thermal Annealing)装置を用いることができる。RTA装置を用いることで、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で加熱処理を行うことができる。そのため、CAAC―OS膜を形成するための時間を短縮することができる。
【0084】
加熱処理は、不活性ガス雰囲気で行うことができ、代表的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガス、または窒素雰囲気で行うことが好ましい。また、酸素雰囲気、減圧雰囲気及び真空雰囲気で行ってもよい。処理時間は3分〜24時間とする。24時間を超える熱処理は生産性の低下を招くため好ましくない。
【0085】
次に、図2(B)に示すように、酸化物半導体膜104上に、一対の電極102及びゲート絶縁膜106を形成する。一対の電極102は、導電膜を成膜し、該導電膜上にマスクを形成した後、当該マスクを用いて導電膜を選択的にエッチングして形成される。
【0086】
次に、一対の電極102をマスクにして、酸化物半導体膜104にイオン150を添加する処理を行う。
【0087】
酸化物半導体膜104へイオン150を添加することによって、一対の電極102がマスクとなりイオン150が添加されない一対の第1の領域120と、イオン150が添加された領域123がセルフアラインで形成される(図2(C)参照。)。
【0088】
酸化物半導体膜104にイオン150を添加する方法として、イオンドーピング法またはイオンインプランテーション法を用いることができる。また、添加するイオン150としては、窒素、リン、または砒素のいずれかの元素を有するイオンを用いる。該イオンの濃度は、5×1020atoms/cm以上5×1021atoms/cm未満である。
【0089】
上記濃度でイオン150を酸化物半導体膜104に添加することによって、イオン150が添加された領域の電気抵抗値が増加する。このようにイオンを添加することによってトランジスタのチャネルとなる部分の電気抵抗値を増加させることにより、しきい値の制御を行うことができる。
【0090】
また、上記酸化物半導体膜104へのイオン150の添加は、酸化物半導体膜104を覆って、絶縁膜(本実施の形態ではゲート絶縁膜106にあたる)などが形成されている状態を示したが、酸化物半導体膜104が露出している状態でイオン150の添加を行ってもよい。
【0091】
さらに、上記イオン150の添加はイオンドーピング法またはイオンインプランテーション法などによる注入する以外の方法でも行うことができる。例えば、添加する元素を含むガス雰囲気にてプラズマを発生させて、被添加物に対してプラズマ処理を行うことによって、イオンを添加することができる。上記プラズマを発生させる装置としては、ドライエッチング装置やプラズマCVD装置、高密度プラズマCVD装置などを用いることができる。
【0092】
また、上記イオン150を添加した後に、加熱処理を行ってもよい。該加熱処理の温度は、200℃以上基板100の歪み点未満、好ましくは450℃以上650℃以下とする。
【0093】
次に、図3(A)に示すように、ゲート絶縁膜106上に、ゲート電極108を形成する。ゲート電極108は、導電膜を成膜し、該導電膜上にマスクを形成した後、当該マスクを用いて導電膜を選択的にエッチングして形成される。このとき、ゲート電極108と一対の電極102が重畳しないように形成する。
【0094】
次に、ゲート電極108及び一対の電極102をマスクにして、酸化物半導体膜におけるイオン150が添加された領域123にイオン160を添加する処理を行う。
【0095】
酸化物半導体膜におけるイオン150が添加された領域123へイオン160を添加することによって、ゲート電極108及び一対の電極102がマスクとなり、イオン150が添加されておりイオン160が添加されない第3の領域122と、イオン150及びイオン160が添加された一対の第2の領域121がセルフアラインで形成される(図3(B)参照。)。
【0096】
添加するイオン160としては、窒素、リン、または砒素のいずれかの元素を有するイオンを用いる。イオン160の濃度は、イオン150及びイオン160の濃度の和が、5×1021atoms/cm以上5×1022atoms/cm未満となるようにする。
【0097】
上記濃度でイオン160を酸化物半導体膜におけるイオン150が添加された領域123に添加することによって、電気抵抗値の低い、イオン160が添加された一対の第2の領域121が形成される。このようにイオン160を添加することによってゲート電極108と一対の電極102との間にある酸化物半導体膜の電気抵抗値を減少させ、それによってトランジスタのオン電流を増加させることができる。
【0098】
また、上記イオン160を添加した後に、加熱処理を行ってもよい。該加熱処理の温度は、200℃以上基板100の歪み点未満、好ましくは450℃以上650℃以下とする。
【0099】
次に、図3(C)に示すように、ゲート電極108及びゲート絶縁膜106上に層間絶縁膜110を形成し、層間絶縁膜110にコンタクトホールを設けて、一対の電極102と接続する配線116を形成する。
【0100】
以上のような工程により、しきい値電圧の制御が困難な酸化物半導体を活性層に用いたトランジスタに安定した電気的特性を付与し、信頼性の高い半導体装置を作製することができる。
【0101】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0102】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1に示したトランジスタを用いて作製した液晶表示装置について説明する。なお、本実施の形態では液晶表示装置に本発明の一形態を適用した例について説明するが、これに限定されるものではない。例えば、EL(Electro Luminescence)表示装置に本発明の一形態を適用することも、当業者であれば容易に想到しうるものである。
【0103】
図4にアクティブマトリクス駆動方式の液晶表示装置の回路図を示す。液晶表示装置は、ソース線SL_1乃至SL_a、ゲート線GL_1乃至GL_b及び複数の画素200を有する。画素200は、トランジスタ230と、キャパシタ220と、液晶素子210と、を含む。こうした画素200が複数集まって液晶表示装置の画素部を構成する。なお、単にソース線またはゲート線を指す場合には、ソース線SLまたはゲート線GLと記載することもある。
【0104】
トランジスタ230は、実施の形態1で示したトランジスタを用いる。本発明の一態様であるトランジスタを用いることで、消費電力が小さく、電気特性が良好かつ信頼性の高い表示装置を得ることができる。
【0105】
ゲート線GLはトランジスタ230のゲートと接続し、ソース線SLはトランジスタ230のソースと接続し、トランジスタ230のドレインは、キャパシタ220の一方の容量電極及び液晶素子210の一方の画素電極と接続する。キャパシタ220の他方の容量電極及び液晶素子210の他方の画素電極は、共通電極と接続する。なお、共通電極はゲート線GLと同一層かつ同一材料で設けてもよい。
【0106】
また、ゲート線GLは、ゲート駆動回路と接続される。ゲート駆動回路は、実施の形態1に示したトランジスタを含んでもよい。該トランジスタはしきい値電圧が制御されているため、オフ電流を小さくでき、またトランジスタをオン状態にするための電圧を小さくすることができる。そのため、消費電力を低減することができる。
【0107】
また、ソース線SLは、ソース駆動回路と接続される。ソース駆動回路は、実施の形態1に示したトランジスタを含んでもよい。該トランジスタはしきい値電圧が制御されているため、オフ電流を小さくでき、またトランジスタをオン状態にするための電圧を小さくすることができる。そのため、消費電力を低減することができる。
【0108】
なお、ゲート駆動回路及びソース駆動回路のいずれかまたは両方を、別途形成し、COG(Chip On Glass)、ワイヤボンディング、またはTAB(Tape Automated Bonding)などの方法を用いて接続してもよい。
【0109】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0110】
ゲート線GLにトランジスタ230のしきい値電圧以上になるように電位を印加すると、ソース線SLから供給された電荷がトランジスタ230のドレイン電流となってキャパシタ220に電荷が蓄積される。一行分の充電後、該行にあるトランジスタ230はオフ状態となり、ソース線SLから電圧が掛からなくなるが、キャパシタ220に蓄積された電荷によって必要な電圧を維持することができる。その後、次の行のキャパシタ220の充電に移る。このようにして、1行からb行の充電を行う。
【0111】
なお、トランジスタ230にオフ電流の小さなトランジスタを用いる場合、電圧を維持する期間を長くすることができる。この効果によって、動きの少ない画像(静止画を含む。)では、表示の書き換え周波数を低減でき、さらなる消費電力の低減が可能となる。また、キャパシタ220の容量をさらに小さくすることが可能となるため、充電に必要な消費電力を低減することができる。
【0112】
以上のように、本発明の一態様によって、信頼性が高く、消費電力の小さい液晶表示装置を得ることができる。
【0113】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0114】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1に示したトランジスタを用いて、半導体記憶装置を作製する例について説明する。
【0115】
揮発性半導体記憶装置の代表的な例としては、記憶素子を構成するトランジスタを選択してキャパシタに電荷を蓄積することで、情報を記憶するDRAM(Dynamic Random Access Memory)、フリップフロップなどの回路を用いて記憶内容を保持するSRAM(Static Random Access Memory)がある。
【0116】
不揮発性半導体記憶装置の代表例としては、トランジスタのゲート電極とチャネル領域との間にフローティングゲートを有し、当該フローティングゲートに電荷を保持することで記憶を行うフラッシュメモリがある。
【0117】
上述した半導体記憶装置に含まれるトランジスタの一部に実施の形態1で示したトランジスタを適用することができる。
【0118】
まずは、実施の形態1で示したトランジスタを適用したDRAMについて図5を用いて説明する。
【0119】
DRAMは、ビット線BLと、ワード線WLと、センスアンプSAmpと、トランジスタTrと、キャパシタCと、を有する(図5(A)参照。)。
【0120】
キャパシタCに保持された電圧の時間変化は、トランジスタTrのオフ電流によって図5(B)に示すように徐々に低減していくことが知られている。当初V0からV1まで充電された電圧は、時間が経過するとdata1を読み出す限界点であるVAまで低減する。この期間を保持期間T_1とする。即ち、2値DRAMの場合、保持期間T_1の間にリフレッシュをする必要がある。
【0121】
ここで、トランジスタTrに実施の形態1で示したトランジスタを適用すると、しきい値電圧が制御されており、かつオフ電流が小さいため、保持期間T_1を長くすることができる。即ち、リフレッシュ回数を減らすことが可能となるため、消費電力を低減することができる。例えば、高純度化されオフ電流が1×10−21A以下、好ましくは1×10−24A以下となった酸化物半導体膜を用いたトランジスタでDRAMを構成すると、電力を供給せずに数日間〜数十年間に渡ってデータを保持することが可能となる。
【0122】
以上のように、本発明の一態様によって、信頼性が高く、消費電力の小さいDRAMを得ることができる。
【0123】
次に、実施の形態1で示したトランジスタを適用した不揮発性メモリについて図6を用いて説明する。
【0124】
図6(A)は、NOR型不揮発性メモリの回路図である。不揮発性メモリは、トランジスタTr_1と、トランジスタTr_1のゲートと接続するゲート配線GL_1と、トランジスタTr_1のソースと接続するソース配線SL_1と、トランジスタTr_2と、トランジスタTr_2のソースと接続するソース配線SL_2と、トランジスタTr_2のドレインと接続するドレイン配線DL_2と、キャパシタCと、キャパシタCの一端と接続する容量配線CLと、キャパシタCの他端、トランジスタTr_1のドレイン及びトランジスタTr_2のゲートと接続するフローティングゲートFGと、を有する。
【0125】
なお、本実施の形態に示す不揮発性メモリは、フローティングゲートFGの電圧に応じて、トランジスタTr_2のしきい値電圧が変動することを利用したものである。例えば、図6(B)は容量配線CLの電圧VCLと、トランジスタTr_2を流れるドレイン電流Id_2との関係を説明する図である。
【0126】
ここで、フローティングゲートFGは、トランジスタTr_1を介して、電圧を調整することができる。例えば、ソース配線SL_1の電圧をVDDとする。このとき、ゲート配線GL_1の電圧をTr_1のしきい値電圧VthにVDDを加えた電圧以上とすることで、フローティングゲートFGの電圧をHIGHにすることができる。また、ゲート配線GL_1の電圧をトランジスタTr_1のしきい値電圧Vth以下とすることで、フローティングゲートFGの電圧をLOWにすることができる。
【0127】
そのため、FG=LOWで示したVCL−Id_2カーブと、FG=HIGHで示したVCL−Id_2カーブのいずれかを得ることができる。即ち、FG=LOWでは、VCL=0VにてId_2が小さいため、データ0となる。また、FG=HIGHでは、VCL=0VにてId_2が大きいため、データ1となる。このようにして、データを記憶することができる。
【0128】
ここで、トランジスタTr_1に実施の形態1で示したトランジスタを適用すると、該トランジスタはオフ電流を極めて小さくすることができるため、フローティングゲートFGに蓄積された電荷がトランジスタTr_1を通して意図せずにリークすることを抑制できる。そのため、長期間に渡ってデータを保持することができる。また、本発明の一態様を用いることでトランジスタTr_1のしきい値電圧が制御されるため、書き込みに必要な電圧を低減することが可能となり、フラッシュメモリなどと比較して消費電力を低減することができる。
【0129】
なお、トランジスタTr_2に、実施の形態1で示したトランジスタを適用しても構わない。
【0130】
次に、図6(A)に示した不揮発性メモリにおいて、キャパシタを含まない構成について図7を用いて説明する。
【0131】
図7は、NOR型不揮発性メモリの回路図である。不揮発性メモリは、トランジスタTr_1と、トランジスタTr_1のゲートと接続するゲート配線GL_1と、トランジスタTr_1のソースと接続するソース配線SL_1と、トランジスタTr_2と、トランジスタTr_2のソースと接続するソース配線SL_2と、トランジスタTr_2のドレインと接続するドレイン配線DL_2と、トランジスタTr_1のドレインと接続するトランジスタTr_2のゲートと、を有する。
【0132】
トランジスタTr_1にオフ電流の小さなトランジスタを用いる場合、キャパシタを設けなくてもトランジスタTr_1のドレインとトランジスタTr_2のゲートの間に電荷を保持できる。キャパシタを設けない構成であるため、小面積化が可能となり、キャパシタを設けた場合と比べ集積化することができる。
【0133】
また、本実施の形態では、配線を4本または5本用いるNOR型不揮発性メモリを示したが、これに限定されるものではない。例えば、ソース配線SL_1とドレイン配線DL_2を共通にする構成としても構わない。また、NAND型不揮発性メモリに本発明の一態様を適用しても構わない。
【0134】
以上のように、本発明の一態様によって、長期間の信頼性が高く、消費電力の小さい半導体記憶装置を得ることができる。
【0135】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0136】
(実施の形態4)
酸化物半導体を活性層に用いたトランジスタを少なくとも一部に用いてCPU(Central Processing Unit)を構成することができる。
【0137】
図8(A)は、CPUの具体的な構成を示すブロック図である。図8(A)に示すCPUは、基板1190上に、演算回路(ALU:Arithmetic logic unit)1191、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、タイミングコントローラ1195、レジスタ1196、レジスタコントローラ1197、バスインターフェース(Bus I/F)1198、書き換え可能なROM1199、及びROMインターフェース(ROM I/F)1189を有している。基板1190は、半導体基板、SOI基板、ガラス基板などを用いる。ROM1199及びROMインターフェース1189は、別チップに設けてもよい。もちろん、図8(A)に示すCPUは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。
【0138】
バスインターフェース1198を介してCPUに入力された命令は、インストラクションデコーダ1193に入力され、デコードされた後、ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195に入力される。
【0139】
ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195は、デコードされた命令に基づき、各種制御を行なう。具体的にALUコントローラ1192は、ALU1191の動作を制御するための信号を生成する。また、インタラプトコントローラ1194は、CPUのプログラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク状態から判断し、処理する。レジスタコントローラ1197は、レジスタ1196のアドレスを生成し、CPUの状態に応じてレジスタ1196の読み出しや書き込みを行なう。
【0140】
また、タイミングコントローラ1195は、ALU1191、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、及びレジスタコントローラ1197の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタイミングコントローラ1195は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、クロック信号CLK2を上記各種回路に供給する。
【0141】
図8(A)に示すCPUでは、レジスタ1196に、記憶素子が設けられている。レジスタ1196の記憶素子には、実施の形態3に記載されている記憶素子を用いることができる。
【0142】
図8(A)に示すCPUにおいて、レジスタコントローラ1197は、ALU1191からの指示に従い、レジスタ1196における保持動作の選択を行う。すなわち、レジスタ1196が有する記憶素子において、位相反転素子によるデータの保持を行うか、容量素子によるデータの保持を行うかを、選択する。位相反転素子によるデータの保持が選択されている場合、レジスタ1196内の記憶素子への、電源電圧の供給が行われる。容量素子におけるデータの保持が選択されている場合、容量素子へのデータの書き換えが行われ、レジスタ1196内の記憶素子への電源電圧の供給を停止することができる。
【0143】
電源停止に関しては、図8(B)または図8(C)に示すように、記憶素子群と、電源電位VDDまたは電源電位VSSの与えられているノード間に、スイッチング素子を設けることにより行うことができる。以下に図8(B)及び図8(C)の回路の説明を行う。
【0144】
図8(B)及び図8(C)では、記憶素子への電源電位の供給を制御するスイッチング素子に、酸化物半導体を活性層に用いたトランジスタを含む記憶回路の構成の一例を示す。
【0145】
図8(B)に示す記憶装置は、スイッチング素子1141と、記憶素子1142を複数有する記憶素子群1143とを有している。具体的に、各記憶素子1142には、実施の形態3に記載されている記憶素子を用いることができる。記憶素子群1143が有する各記憶素子1142には、スイッチング素子1141を介して、ハイレベルの電源電位VDDが供給されている。さらに、記憶素子群1143が有する各記憶素子1142には、信号INの電位と、ローレベルの電源電位VSSの電位が与えられている。
【0146】
図8(B)では、スイッチング素子1141として、酸化物半導体などのバンドギャップの大きい半導体を活性層に有するトランジスタを用いており、該トランジスタは、そのゲート電極に与えられる信号SigAによりスイッチングが制御される。
【0147】
なお、図8(B)では、スイッチング素子1141がトランジスタを一つだけ有する構成を示しているが、特に限定されず、トランジスタを複数有していてもよい。スイッチング素子1141が、スイッチング素子として機能するトランジスタを複数有している場合、上記複数のトランジスタは並列に接続されていてもよいし、直列に接続されていてもよいし、直列と並列が組み合わされて接続されていてもよい。
【0148】
また、図8(B)では、スイッチング素子1141により、記憶素子群1143が有する各記憶素子1142への、ハイレベルの電源電位VDDの供給が制御されているが、スイッチング素子1141により、ローレベルの電源電位VSSの供給が制御されていてもよい。
【0149】
また、図8(C)には、記憶素子群1143が有する各記憶素子1142に、スイッチング素子1141を介して、ローレベルの電源電位VSSが供給されている、記憶装置の一例を示す。スイッチング素子1141により、記憶素子群1143が有する各記憶素子1142への、ローレベルの電源電位VSSの供給を制御することができる。
【0150】
記憶素子群と、電源電位VDDまたは電源電位VSSの与えられているノード間に、スイッチング素子を設け、一時的にCPUの動作を停止し、電源電圧の供給を停止した場合においてもデータを保持することが可能であり、消費電力の低減を行うことができる。例えば、パーソナルコンピュータのユーザーが、キーボードなどの入力装置への情報の入力を停止している間でも、CPUの動作を停止することができ、それにより消費電力を低減することができる。
【0151】
ここでは、CPUを例に挙げて説明したが、DSP(Digital Signal Processor)、カスタムLSI、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のLSIにも応用可能である。
【0152】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0153】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1を適用した電子機器の例について説明する。
【0154】
図9(A)は携帯型情報端末である。筐体9300と、ボタン9301と、マイクロフォン9302と、表示部9303と、スピーカ9304と、カメラ9305と、を具備し、携帯型電話機としての機能を有する。本発明の一態様は、表示部9303及びカメラ9305に適用することができる。また、図示しないが、本体内部にある演算装置、無線回路または記憶回路に本発明の一態様を適用することもできる。
【0155】
図9(B)は、ディスプレイである。筐体9310と、表示部9311と、を具備する。本発明の一態様は、表示部9311に適用することができる。本発明の一態様を用いることで、表示部9311のサイズを大きくしたときにも表示品位の高いディスプレイとすることができる。
【0156】
図9(C)は、デジタルスチルカメラである。筐体9320と、ボタン9321と、マイクロフォン9322と、表示部9323と、を具備する。本発明の一態様は、表示部9323に適用することができる。また、図示しないが、記憶回路またはイメージセンサに本発明の一態様を適用することもできる。
【0157】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例1】
【0158】
本実施例では、酸化物半導体膜に窒素イオンまたはリンイオンを添加し、そのイオン添加量と酸化物半導体膜のシート抵抗値との関係について説明する。
【0159】
以下の工程によりシート抵抗値を評価した試料を作製した。まず、ガラス基板上に下地絶縁膜として酸化シリコン膜を300nm形成し、その上に酸化物半導体膜としてIn−Ga−Zn−O(原子数比In:Ga:Zn=1:1:1)ターゲットを用い、スパッタリング法によって30nmの厚さで形成した。その後、脱水及び脱水素のための加熱処理を窒素雰囲気にて450℃1時間行った。また、該加熱処理によって、酸化物半導体膜からの酸素脱離による酸素欠損も生じる。その結果、酸化物半導体膜の電気抵抗値は低下する。次にプラズマCVD法により酸化窒化シリコン膜を形成し、イオンインプランテーション装置によって酸化物半導体膜へ窒素イオンまたはリンイオンを添加し、酸化窒化シリコン膜にコンタクトホールを形成させて、酸化物半導体膜へ電圧を印加するための電極を形成した。
【0160】
図10(A)に、上記方法により作製した試料を用いて、種々の窒素イオン添加量における酸化物半導体膜のシート抵抗値を測定した結果を示す。この結果より、窒素イオン添加量が3.3×1021atoms/cmのときシート抵抗値が大きく増加しており、窒素イオン添加量が1.7×1022atoms/cmのときはシート抵抗値が大きく減少していることがわかった。
【0161】
図10(B)に、上記方法により作製した試料を用いて、種々のリンイオン添加量における酸化物半導体膜のシート抵抗値を測定した結果を示す。この結果より、リンイオン添加量が1.7×1021atoms/cmのときシート抵抗値が大きく増加しており、リンイオン添加量が3.3×1021atoms/cmでは、シート抵抗値が減少してくることがわかった。
【符号の説明】
【0162】
100 基板
101 下地絶縁膜
102 一対の電極
104 酸化物半導体膜
106 ゲート絶縁膜
108 ゲート電極
110 層間絶縁膜
116 配線
120 一対の第1の領域
121 一対の第2の領域
122 第3の領域
123 領域
150 イオン
160 イオン
200 画素
210 液晶素子
220 キャパシタ
230 トランジスタ
1141 スイッチング素子
1142 記憶素子
1143 記憶素子群
1189 ROMインターフェース
1190 基板
1191 演算回路
1192 ALUコントローラ
1193 インストラクションデコーダ
1194 インタラプトコントローラ
1195 タイミングコントローラ
1196 レジスタ
1197 レジスタコントローラ
1198 バスインターフェース
1199 ROM
9300 筐体
9301 ボタン
9302 マイクロフォン
9303 表示部
9304 スピーカ
9305 カメラ
9310 筐体
9311 表示部
9320 筐体
9321 ボタン
9322 マイクロフォン
9323 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の第1の領域、一対の第2の領域及び第3の領域を有する酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜と接して設けられる一対の電極と、
前記酸化物半導体膜上のゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜を介し、前記一対の電極の間に設けられたゲート電極と、を有し、
前記一対の第1の領域は前記一対の電極と重畳し、前記第3の領域は前記ゲート電極と重畳し、前記一対の第2の領域は前記一対の第1の領域及び前記第3の領域の間に形成され、
前記一対の第2の領域及び前記第3の領域には窒素、リン、または砒素のいずれかの元素が含まれており、
前記元素の濃度は、前記第3の領域より前記一対の第2の領域のほうが高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記一対の第2の領域に含まれる前記元素の濃度は、5×1021atoms/cm以上5×1022atoms/cm未満であり、前記第3の領域に含まれる前記元素の濃度は、5×1020atoms/cm以上5×1021atoms/cm未満であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記酸化物半導体膜が、In、Ga、Sn及びZnから選ばれた二種以上の元素を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
絶縁表面上に酸化物半導体膜を形成し、
前記酸化物半導体膜上に一対の電極を形成し、
前記一対の電極及び前記酸化物半導体膜を覆ってゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜を介し、前記一対の電極をマスクにして前記酸化物半導体膜に第1のイオンを添加することで、前記第1のイオンの添加されない一対の第1の領域と前記第1のイオンが添加された第3の領域を形成し、
前記ゲート絶縁膜上に前記酸化物半導体膜と重畳してゲート電極を形成し、
前記ゲート電極をマスクとして、前記酸化物半導体膜に第2のイオンを添加することで、前記第2のイオンが添加された一対の第2の領域を形成し、
前記第1のイオン及び前記第2のイオンは窒素、リン、または砒素のいずれかの元素を有するイオンであり、
前記第1のイオン及び前記第2のイオンの濃度の和は、前記第3の領域より前記一対の第2の領域のほうが高いことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記酸化物半導体膜中の前記第1のイオンの濃度は、5×1020atoms/cm以上5×1021atoms/cm未満であり、前記第1のイオン及び前記第2のイオンの濃度の和は、5×1021atoms/cm以上5×1022atoms/cm未満であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5において、
前記酸化物半導体膜が、In、Ga、Sn及びZnから選ばれた二種以上の元素を含むことを特徴とする半導体装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−199542(P2012−199542A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−51314(P2012−51314)
【出願日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】