説明

印刷半田検査方法及び装置

【課題】印刷半田の状態を的確に検査することができる印刷半田検査方法及び装置を提供することにある。
【解決手段】基板10に印刷された半田10xの2次元画像を撮像する光学系20、30と、当該印刷半田の3次元画像を撮像する光学系20、30と、撮像した2次元画像及び3次元画像を処理して、該印刷半田の底部面積、パッド面積等の2次元性状の項目61を測定すると共に断面積、突起面積、平均高さ、ピーク高さ、体積等の3次元性状の項目62を測定し、当該測定項目に基づいて該印刷半田の形状を決定し、また、少なくとも2つの前記測定項目をマトリックス状に組み合わせて該印刷半田の形成合否を判定する検査部50、60、80とを備える。これにより、2次元測定と3次元測定をそれぞれ単独で実施するよりも、正確に印刷半田の形状を決定することが可能となると共に正確に印刷半田の形成合否を判定することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に印刷された半田の検査方法及び装置に関し、特に該印刷半田の2次元測定結果及び3次元測定結果に基づいて検査する印刷半田検査方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷半田とは、メタルマスクと呼ばれる薄い金属板に設けられた開口部を通して、ペースト状のクリーム半田を基板のパッド上に転写する工程をいう。よって、基板に印刷されたクリーム半田(印刷半田)には、通常100μm〜150μm位の厚みがある。このような厚み方向の転写状況までしっかり把握するためには、当然ながら3次元測定技術が必要である。
【0003】
印刷半田検査方法における3次元測定において、印刷半田が転写されるパッド上面を高さ測定基準面として設定し、そこから突出した印刷半田の高さなり体積を測定できれば理想的である。しかし印刷済み基板においては、パッドは印刷半田で覆い隠されているので、高さ測定基準面としてパッド上面を検出することはできない。そこで、パッド以外のレジスト上面を高さ測定基準面とするのが一般的であるが、レジスト上面はパッド上面より高いのが一般的であり、従って高さ測定基準面より低い印刷半田の下部は測定できないことになる。
【0004】
また仮に、パッド上面と高さが同じところを高さ測定基準面とできたとしても、その基準面が少しでも下側に設定されると、印刷半田下面の基板部の体積まで測定することとなり、測定結果が実体と大きく乖離してしまう。そこで、印刷半田検査方法における3次元測定にあたっては、精度限界が測定結果に大きな影響を及ぼさないよう、高さ測定基準面を検出したところから20μm〜30μmほど上方向に設定するというのが一般的である(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−207918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
3次元測定による印刷半田検査方法では、上記2つの理由により、例えば印刷半田が薄く広がる「にじみ」と呼ばれる不良は検出できないという問題が発生する。
【0007】
本発明は、上記のような課題に鑑みなされたものであり、その目的は、印刷半田の状態を的確に検査することができる印刷半田検査方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的達成のため、本発明の印刷半田検査方法では、基板に印刷された半田を2次元測定すると共に3次元測定する工程と、当該2次元測定結果及び当該3次元測定結果を利用して当該印刷半田の形状を決定する工程とを含むことを特徴としている。これにより、2次元測定と3次元測定をそれぞれ単独で実施するよりも、正確に印刷半田の形状を決定することが可能となる。
【0009】
上記目的達成のため、本発明の他の印刷半田検査方法では、基板に印刷された半田を2次元測定すると共に3次元測定する工程と、当該2次元測定結果及び当該3次元測定結果を利用して当該印刷半田の形成合否を判定する工程とを含むことを特徴としている。
【0010】
従来の印刷半田検査方法でも、2次元測定と3次元測定の併用について言及しているものがあるが、その内容は2次元で基板全面を測定して検査し、どうしても必要な部分のみ3次元で測定して検査するというものである。その趣旨、目的は、本来は3次元で基板全面を測定して検査したいのだが、測定速度の面で現実的ではなかったので、高速な2次元で基板全面を測定して検査し、どうしても厚さ方向の品質保証をしたい部分のみ3次元で測定して検査するという、やむを得ない消極的な共用という提案であった。
【0011】
しかし、本発明の印刷半田検査方法では、2次元測定と3次元測定はお互いに補完するものであり、その両方を使うことで正確に印刷半田の形成合否を判断できるというものである。例えば、2次元測定を用いてにじみ検出等に有効な印刷半田の底部面積を測定し、3次元測定を用いてかすれ検出等に有効な印刷半田(高さ測定基準面より上方向に突出した部分)の高さを測定するという2段構えの測定を行い、両者から印刷半田の良否判定とその形状を的確に表現する用語を抽出し表示する。これにより、2次元測定と3次元測定をそれぞれ単独で実施するよりも、正確に印刷半田の形成合否を判定することが可能となる。
【0012】
また、前記2次元測定工程は、前記印刷半田の底部面積、パッド面積等の2次元性状の項目を測定する工程を含み、前記3次元測定工程は、該印刷半田の断面積、突起面積、平均高さ、ピーク高さ、体積等の3次元性状の項目を測定する工程を含むことを特徴としている。そして、少なくとも2つの前記測定項目をマトリックス状に組み合わせて前記印刷半田の形成合否を判定することを特徴としている。これにより、より正確に印刷半田の形成合否を判定することが可能となる。
【0013】
上記目的達成のため、本発明の印刷半田検査装置では、基板に印刷された半田の2次元画像を撮像する光学系と、当該印刷半田の3次元画像を撮像する光学系と、撮像した2次元画像及び3次元画像を処理して、該印刷半田の底部面積、パッド面積等の2次元性状の項目を測定すると共に断面積、突起面積、平均高さ、ピーク高さ、体積等の3次元性状の項目を測定し、当該測定項目に基づいて該印刷半田の形状を決定し、また、少なくとも2つの前記測定項目をマトリックス状に組み合わせて該印刷半田の形成合否を判定する検査部とを備えたことを特徴としている。これにより、上記作用効果を奏する印刷半田検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態に係る印刷半田検査装置の全体構成を示す図である。この印刷半田検査装置100は、検査対象基板10に印刷されているクリーム半田(印刷半田)10a、10b、10cの2次元画像及び3次元画像を処理して2次元性状の項目及び3次元性状の項目を測定し、当該測定項目に基づいて該印刷半田の形状の決定及び形成合否の判断を行う機能を備えていることを特徴としている。このような印刷半田検査装置100の構成について以下説明する。
【0016】
この印刷半田検査装置100は、照明装置(光学系)20、撮像装置(光学系)30、画像入力記憶部(検査部)50、画像処理部(検査部)60、ロボット70、表示装置74、全体制御部(検査部)80等を備えている。
【0017】
照明装置20には、2次元測定用の赤緑色LED照明装置21と青色LED照明装置22が実装されている。赤緑色LED照明装置21は、パッド15(図3参照)を抽出するためのものである。青色LED照明装置22は、印刷半田10a、10b、10cを検出するためのものである。更に、3次元測定用のスリット照明装置23が組み込まれている。スリット照明装置23からはスリット光24が照射される。スリット光24の長さは約30mmで幅は約0.1mmである。各照明装置21、22、23は、全体制御部80によってその点灯・消灯が制御される。
【0018】
撮像装置30は、照明装置20の上方に設置されている。この撮像装置30は、画像を撮像素子に結像するためのレンズ32と、その結像画像を電子信号に変換するためのカメラ31を備えている。カメラ31は、エリアカメラであれば種類を問わないが、2次元測定と3次元測定の両方を効率よく実施するためCMOSエリアカメラが最適である。このカメラ31による2次元測定の時の撮像範囲は、図2に示す撮像素子全面40、例えば20.48mm×20.48mmの範囲を撮像する。また、3次元測定の時の撮像範囲は、スリット光24が照射されている部分を含む図2に示す撮像領域41、例えば20.48mm×0.64mmから20.48mm×5.12mmの間で必要な領域に限定して撮像する。どの範囲を撮像するかは、画像入力記憶部50を経由して全体制御部80から指示される。
【0019】
画像入力記憶部50には、カメラ31から入力される2次元測定用半田撮像画像データ51、2次元測定用パッド撮像画像データ52と、3次元測定用撮像画像データ53が格納されている。2次元測定の場合、青色LED照明装置22のみ点灯して撮像した画像は、2次元測定用半田撮像画像データ51として格納される。赤緑色LED照明装置のみを点灯して撮像した画像は、2次元測定用パッド撮像画像データ52として格納される。3次元測定の場合、スリット照明装置23のみを点灯し、かつ撮像範囲を図2に示す撮像領域41に限定して撮像した画像は、3次元測定用撮像画像データ53として格納される。更に、スリット光24の当る位置を少しずつ変えた撮像画像が、3次元測定用撮像画像データ53の2枚目、3枚目と次々に格納されていく。このように、3次元測定では、スリット光24の当る位置を少しずつ変えた画像を多数枚撮像するので、3次元測定用撮像画像データ53は、最低でも1024枚に及ぶ画像データで構成されている。
【0020】
画像処理部60は、画像入力記憶部50からの2次元測定用半田撮像画像データ51、2次元測定用パッド撮像画像データ52及び3次元測定用撮像画像データ53を処理する。そして、例えば印刷半田10a、10b、10cの底部面積、パッド面積等の2次元性状の項目・データ61を測定すると共に、断面積、突起面積、平均高さ、ピーク高さ、体積等の3次元性状の項目・データ62を測定する。そして、詳細は後述するが、上記2次元測定項目・データ61及び3次元測定項目・データ62に基づいて印刷半田10a、10b、10cの形状を決定し、立体表示データ63を求める。更に、上記2次元測定項目・データ61及び3次元測定項目・データ62から少なくとも2つを選択してマトリックス状に組み合わせた判定テーブル64に基づいて、印刷半田10a、10b、10cの形成合否を判定する。
【0021】
ロボット70は、X軸ロボット71、Y軸ロボット72、ロボット制御部73を備えている。X軸ロボット71は、Y軸ロボット72上に固定されている。また、X軸ロボット71上には、検査対象基板10が固定されている。X軸ロボット71とY軸ロボット72はロボット制御部73と接続され、そのロボット制御部73は全体制御部80に接続されている。ロボット制御部73は、全体制御部80からの指示により、X軸ロボット71とY軸ロボット72を動作させて、検査対象基板10をXY平面上でカメラ31、レンズ32と照明装置20に対して相対的に移動させることができる。これによって、カメラ31は、検査対象基板10の任意の位置を撮像することができる。
【0022】
表示装置74は、作業者が印刷半田検査装置100を操作する上で必要不可欠な情報を表示する装置である。この表示装置74には、撮像画像等も表示される。
【0023】
全体制御部80は、検査装置100を構成する照明装置20、画像入力記憶部50、画像処理部60、ロボット70、表示装置74を制御するためのものである。全体制御部80内には、パッドデータ81、視野割付データ82、撮像データ記憶領域83、検査データ作成プログラム84、検査実行プログラム85が存在する。
【0024】
図3(A)、(B)は、検査対象基板10の構造を示す平面図及びA−A線断面図である。基板基材12の上には、銅による配線パターン13が形成されている。この配線パターン13のうち、搭載される電子部品の端子と接続する部分、即ち印刷半田10a、10b、10cが転写される部分は、パッド15としてそのまま露出している。ただし、このパッド15には、場合によっては導電性を高めるために金メッキされる場合もある。パッド15以外の領域は、レジスト14によって覆われ絶縁されている。レジスト14に覆われた配線パターン13の部分は、通常、内層パターン16と呼ばれ、配線パターン13の無いレジスト14の部分と比較すると配線パターン13の厚さ分だけ高くなっている。
【0025】
以上のような構成の印刷半田検査装置100において、先ず、印刷半田の2次元測定方法について説明する。検査対象基板10をカメラ31で撮像できるように、X軸ロボット71、Y軸ロボット72を制御する。ここで、印刷半田10a、10b、10c(以下、単に10xとする)は、径が20μm〜30μm程度の半田粒の集合体なので、該表面はマクロ的に見ると乱反射面である。一方、パッド15は、金あるいは銅で組成されているのが一般的であり、該表面は印刷半田10x表面と比較すると鏡面である。また、レジスト14表面も相対的に鏡面である。
【0026】
そこで、照明装置20のうち、青色LED照明装置22のみを点灯して、印刷半田10xの画像を採取し、それを画像入力記憶部50の中に2次元測定用半田撮像画像データ51として記憶する。青色LED照明装置22は、かなり低位置から照明するような構成になっているので、鏡面であるパッド15表面及びレジスト14表面からの反射光は、カメラ31には向かわず、入射方向と反対側に逃げていく。それに対して、乱反射面である印刷半田10x表面からの反射光は、カメラ31に向かう光成分が相対的に多い。よって、印刷半田10xは、パッド15、レジスト14と比較してより多くの反射光をカメラ31に返すこととなる。このような原理で、2次元測定用半田撮像画像データ51は、印刷半田10xが相対的に明るく撮像された画像となる。
【0027】
続いて照明装置20のうち、赤緑色LED照明装置21の赤色を点灯して、印刷半田10xの画像を採取し、それを画像入力記憶部50の中に2次元測定用パッド撮像画像データ52として記憶する。レジスト14表面もパッド15表面も印刷半田10x表面と比較すると鏡面であるが、パッド15は金ないしは銅でレジスト14よりも反射率が高いので、パッド15はレジスト14よりもより多くの反射光をカメラ31に返すこととなる。更に、一般的にレジスト14は緑色なので、照明色の赤色と補色の関係になって照明光をより多く吸収するのに対して、パッド15は金あるいは銅という赤系の色なので照明光を反射する。このような作用が加わり、パッド15はレジスト14よりもより多くの反射光をカメラ31に返すこととなる。
【0028】
また、赤緑色LED照明装置21は、かなり高位置から照明するような構成になっているので、鏡面であるパッド15表面及びレジスト14表面からの反射光は、その多くが赤緑色LED照明装置21とほぼ同じ方向のカメラ31に向かう。それに対して、乱反射面である印刷半田10x表面からの反射光は、カメラ31に向かう光成分は相対的に低下する。よって、パッド15は、レジスト14、印刷半田10xと比較してより多くの反射光をカメラ31に返すこととなる。このような原理で、2次元測定用パッド撮像画像データ52は、パッド15が相対的に明るく撮像された画像となる。そして、2次元測定用半田撮像画像データ51から印刷半田10xの底部面積101(図11参照)を得ることができる。また、2次元測定用パッド撮像画像データ52からパッド15の面積を得ることができる。
【0029】
次に、印刷半田の3次元測定方法について説明する。検査対象基板10にスリット光24が当るように、X軸ロボット71、Y軸ロボット72を制御する。図4に示すように、検査対象基板10上の印刷半田10xにスリット光24が当ると、印刷半田10x上にはスリット光跡242が、検査対象基板10上にはスリット光跡241が発生する。そして、カメラ31が撮像した3次元測定用撮像画像53には、印刷半田10x上のスリット光跡242はスリット光跡532として、検査対象基板10上のスリット光跡241はスリット光跡531として、印刷半田10xの高さ分だけ位置がずれたように撮像される。
【0030】
スリット光24の検査対象基板10面からの取り付け角度をθとすると、印刷半田10xの高さは、そのずれ量にtanθを掛けたものになる。この考え方に基づき、3次元測定用撮像画像データ53からスリット光跡532とスリット光跡531の画像上におけるY方向の座標差を求め、その値にtanθを掛ければ印刷半田10xの高さが計測できたことになる。しかし、これだけでは、スリット光24が当った線分部分の高さしか計測できないので、印刷半田10xの検査に最も求められる体積の測定ができない。そこで、カメラ31とスリット光24のユニットに対し、検査対象基板10を相対的に動作させる。動作させる方向は、スリット光跡241、242の長さ方向に直交する方向とする。
【0031】
図5(a)に示すように、3次元測定したい範囲を高さ測定領域11とする。図5(b)に示すように、撮像領域41内に高さ測定領域11の上端である高さ測定基準ライン11aが入るように、X軸ロボット71とY軸ロボット72を制御する。そして、上記位置にて画像を撮像する。更に、撮像領域41を検査対象基板10に対して相対的に必要な測定分解能分(例えば20μm)だけ移動させて画像を撮像する。この動作を、図5(c)に示すように、高さ測定領域11の下端である高さ測定基準ライン11bが撮像領域41内に入り、その画像を撮像するまで繰返し行う。高さ測定領域11の範囲を20.48mm×20.48mmとし、20μm単位で撮像を繰り返すとすると、3次元測定用撮像画像データ53は、20.48/0.02=1,024枚撮像することになる。実際に撮像される画像イメージの一部を図6に示す。図6において、(a)の実画像データ53cは検査対象基板10の基板面、(b)の実画像データ53dは印刷半田10xの高さが高い部分、(c)の実画像データ53eは印刷半田10xの高さが低い部分の写り方である。
【0032】
3次元測定用撮像画像データ53において、図7に示す計測基準ライン533を定義する。この計測基準ライン533は、3次元測定用撮像画像データ53の領域のどこに設定しても構わないが、この実施例では、スリット光跡531にほぼ合わせて設定するものとする。実際の3次元測定用撮像画像データ53は、サイズが1,024画素×32画素〜256画素、撮像枚数は1,024枚である。ここでは、以降の処理内容を判り易く説明するために、図8に示すように、3次元測定用撮像画像データ53のサイズを、横方向(X方向)10画素、縦方向(Y方向)10画素、撮像枚数10枚として説明する。
【0033】
3次元測定用撮像画像データ53の1枚目から処理する。画像上におけるx=0画素の時のスリット光跡531、532のy座標を求める。スリット光24には約0.1mmの幅があるので、画像上では最低でも5画素分の幅があることになる。この5画素は、同じ明度値をもっているわけではなく、中心が明るく外側に行くほど暗いという分布をしている。この5画素から2次あるいは4次曲線を求めることで、スリット光24の幅方向の明度分布を正確に近似することができる。この曲線のピーク位置をy座標とすることで、x=0におけるスリット光のy座標値を1画素以下の単位で正確に求めることができる。y座標は、計測基準ライン533を原点として測定する。このy座標にtanθを掛けることにより、スリット光24の当った部分の計測基準ライン533からの高さとなる。この処理をx=1からx=9まで繰り返す。更に同様の処理を、2枚目から9枚目の3次元測定用撮像画像データ53について繰返し行う。すべて終了した時点で、高さ測定領域11内のすべての点における高さが計測できたことになる。計測間隔は、この実施例ではXY方向ともに20μmになる。
【0034】
測定した高さデータは、3次元測定項目・データ62に格納保存する。3次元測定項目・データ62は、測定した全点の高さ情報が記録できるように(10,10)の2次元マトリックス構造を持っている。m枚目のx=n(n=0〜9)における高さデータがyn×tanθ(n=0〜9)の時、このデータは3次元測定項目・データ62の(10,10)のどのセルに書き込むかについて説明する。x=nなので、明らかにX座標はX=nとなる。m枚目なので、Y座標はY=mが基本となる。しかしながら、図4から明らかなように、yn×tanθの高さを持った点は、計測基準ライン533よりもY方向に−ynだけずれた位置にある。そこで、結果を格納するセルのY座標は、m−ynとなる。
【0035】
3次元測定項目・データ62は(10,10)の2次元マトリックスなので、セルのXY座標値は単位(この実施例では20μm)の整数倍となる。m−ynが単位の整数値と一致しない場合、もっとも近いY座標値のセルに書き込むことになる。まとめると、m枚目の3次元測定用撮像画像データ53のx=nにおけるスリット光跡532のy座標がynのとき、その高さデータyn×tanθは、3次元測定項目・データ62のセル(n、<m−yn>)に書き込むことになる。ただし、<m−yn>は、m−ynと最も近い“単位の整数倍値”とする。こうして高さ測定領域11の3次元測定項目・データ62を得る。計測基準ライン533は、スリット光跡531に合わせてあるので、3次元測定項目・データ62は、検査対象基板10上面から測定した凹凸が記録されていることになる。このデータを積分することで、印刷半田10xの体積を得ることができる。また、立体表示データ63を3次元グラフィック処理することで図9に示すような画像を得ることができる。
【0036】
以上のように、印刷半田10xの高さは、検査対象基板10の上面基準で測定できるが、正確にはパッド15の上面基準で求める必要がある。3次元測定は、高さ測定領域11単位に行われる。この高さ測定領域11は、検査データ作成時に自動生成される。よって、高さ測定基準ライン11aと高さ測定基準ライン11bも自動的に定義される。図10に示すように、高さ測定基準ライン11a上と高さ測定基準ライン11b上での検査対象基板10上面高さを測定することにより、高さ測定基準面17を求めることができる。これまで説明してきた印刷半田10xの高さあるいは体積は、この高さ測定基準面17を基準として測定したものである。
【0037】
ここで、上述した同様の3次元測定を生基板で行う場合を考える。生基板は、クリーム半田が印刷されていない基板であるので、印刷半田の高さを測定しようとして得られる高さは、図10に示すように、高さ測定基準面17を測定基準としたパッド15a、15b、15cの上面高さ18a、18b、18cとなる。このパッド15a、15b、15cの上面高さ18a、18b、18cを、生基板を測定することで事前に測定してパッドデータ81の基準面からの高さにパッド15a、15b、15c毎に記憶しておく。そして、パッド15a、15b、15c毎に印刷半田の高さ測定を行い、その結果に対しパッド15a、15b、15c毎に記憶された基準面からの高さを減算する。これにより、印刷半田高さはパッド15a、15b、15cの上面基準で測定した値となる。このように、検査データ作成時の最終段階で生基板を測定し、自動で生成した高さ測定基準面17に対する各パッド15a、15b、15cの基準面からの高さを測定・記憶しておくことで、パッド15a、15b、15cの上面基準による印刷半田の高さ測定が行える。
【0038】
以上の2次元測定方法により、図11に示す印刷半田10xの底部面積101やパッド面積という2次元性状の項目・データ61を測定することができる。また、3次元測定方法により、図11に示す印刷半田10xの断面積102、突起面積103、平均高さ104、ピーク高さ105、体積106という3次元性状の項目・データ62を測定することができる。即ち、これらの測定項目から、図11に示すような印刷半田10xの幾何学的形状をより正確に決定することが可能となる。尚、それぞれの測定項目・データ61、62は、上記したものに限定されるものでは無く、印刷半田10xの2次元性状や3次元性状を表すものであれば良い。
【0039】
一方、それぞれの測定項目・データ61、62で許容値に対して合格範囲内か否かを判定する検査であると、例えば底部面積101が許容値よりも大きいときは「底部面積が許容値よりも大きい不良」という検査結果が表示されるのみである。その他の測定項目・データ61、62についての判定も同様である。このような検査結果の表示は、印刷半田10xの幾何学形状からは正しいが、印刷半田10xの不良状態を言い表す概念と必ずしも一致しない。例えば、「底部面積が許容値よりも大きい不良」は「にじみ」と言い表すべきである。更に、「体積が許容値よりも少ない不良」は、平均高さが低くて(薄くて)少ないのか、欠けていて少ないのかによって、言い表すべき不良状態が明らかに違ってくる。「体積が少ない」+「高さが低い」+「底部面積が正常」は「かすれ」と言い表すべきであり、「体積が少ない」+「高さは正常」+「底部面積が少ない」は「欠け」と言い表すべきである。そこで、2次元測定方法と3次元測定方法で印刷半田10xのすべての幾何学的要素を測定し、更に、それらの要素をすべて加味することで、印刷半田10xの形成合否を判定して表示することが可能となる。
【0040】
図12は、印刷半田の底部面積とパッド面積を使った具体的な判定テーブルを示す図である。測定した印刷半田10xの底部面積101を予め設定されている上限許容値及び下限許容値と比較することで、過小、適正、過多に区分する。一方、測定したパッド面積も予め設定されている上限許容値及び下限許容値と比較することで、過小、適正、過多に区分する。そして、上記過小、適正、過多をマトリックス状に組み合わせた判定テーブル64を用いて、印刷半田10xとそれに対応するパッドの区分が領域1〜9のどの領域に当てはまるかを判定する。
【0041】
例えば、印刷半田10xの底部面積101が過多であり、パッド面積が過少もしくは適正であるとき(領域1もしくは領域2)は「にじみ」という検査結果を表示装置74に表示する。同様に、印刷半田10xの底部面積101が過多もしくは適正であり、パッド面積が過多であるとき(領域3もしくは領域6)は「ずれ」という検査結果を表示装置74に表示する。また、印刷半田10xの底部面積101が適正であり、パッド面積が適正であるとき(領域5)は「良品」という検査結果を表示装置74に表示する。また、印刷半田10xの底部面積101が過少であり、パッド面積が適正もしくは過多であるとき(領域8もしくは領域9)は「かすれ」という検査結果を表示装置74に表示する。
【0042】
図13は、印刷半田の体積と印刷半田の底部面積を使った具体的な判定テーブルを示す図である。測定した印刷半田10xの体積を予め設定されている上限許容値及び下限許容値と比較することで、過小、適正、過多に区分する。一方、測定した印刷半田10xの底部面積101も予め設定されている上限許容値及び下限許容値と比較することで、過小、適正、過多に区分する。そして、上記過小、適正、過多をマトリックス状に組み合わせた判定テーブル64を用いて、印刷半田10xの区分が領域1〜9のどの領域に当てはまるかを判定する。
【0043】
例えば、印刷半田10xの体積が過多であり、印刷半田10xの底部面積101が適正もしくは過多であるとき(領域2もしくは領域3)は「過多」という検査結果を表示装置74に表示する。同様に、印刷半田10xの体積が適正であり、印刷半田10xの底部面積101が適正であるとき(領域5)は「良品」という検査結果を表示装置74に表示する。また、印刷半田10xの体積が過少もしくは適正であり、印刷半田10xの底部面積101が過多であるとき(領域6もしくは領域9)は「にじみ」という検査結果を表示装置74に表示する。また、印刷半田10xの体積が過少であり、印刷半田10xの底部面積101が過少もしくは適正であるとき(領域7もしくは領域8)は「かすれ」という検査結果を表示装置74に表示する。
【0044】
尚、上述した実施形態では、判定テーブルは2次元マトリックスとしたが、これに限定されるものでは無く、3次元以上のマトリックスとして判定するようにしても良い。また、2次元測定と3次元測定のカメラを共用としているが、2次元測定用のカメラと3次元測定用のカメラをそれぞれ個別に実装しても発明の本質は全く変わらない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施の形態に係る印刷半田検査装置の全体構成を示す図である。
【図2】図1のカメラによる撮像範囲を示す斜視図である。
【図3】図1の検査対象基板の構造を示す平面図及びA−A線断面図である。
【図4】検査対象基板にスリット光を当てて撮像した場合を示す図である。
【図5】検査対象基板上の3次元測定の撮像領域と撮像範囲の位置関係を示す平面図である。
【図6】3次元測定の撮像領域におけるスリット光の実際の写り方を模式的に示す図である。
【図7】カメラの撮像素子上における3次元測定の撮像領域を示す図である。
【図8】3次元測定項目の構造を示す図である。
【図9】立体表示データを3次元グラフィック処理した図である。
【図10】高さ測定基準線、高さ測定基準面と、パッド表面高さの位置関係を示した図である。
【図11】印刷半田の外観形状を示す斜視図である。
【図12】印刷半田の底部面積とパッド面積を使った具体的な判定テーブルを示す図である。
【図13】印刷半田の体積と印刷半田の底部面積を使った具体的な判定テーブルを示す図である。
【符号の説明】
【0046】
10 検査対象基板、10a、10b、10c、10x 印刷半田、11 高さ測定領域、11a、11b 高さ測定基準ライン、12 基板基材、13 配線パターン、14 レジスト、15 パッド、16 内層パターン、17 高さ測定基準面、18a、18b、18c パッド上面高さ、20 照明装置、21 赤緑色LED照明装置、22 青色LED照明装置、23 スリット照明装置、24 スリット光、30 撮像装置、31 カメラ、32 レンズ、40 撮像素子全面、41 撮像領域、50 画像入力記憶部、51 2次元測定用半田撮像画像データ、52 2次元測定用パッド撮像画像データ、53 3次元測定用撮像画像データ、531、532 スリット光跡、533 計測基準ライン、60 画像処理部、61 2次元測定項目・データ、62 3次元測定項目・データ、63 立体表示データ、64 判定テーブル、70 ロボット、71 X軸ロボット71、72 Y軸ロボット72、73 ロボット制御部、74 表示装置、80 全体制御部、81 パッドデータ、82 視野割付データ、83 撮像データ記憶領域、84 検査データ作成プログラム、85 検査実行プログラム、100 印刷半田検査装置、101 底部面積、102 断面積、103 突起面積、104 平均高さ、105 ピーク高さ、106 体積

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に印刷された半田を2次元測定すると共に3次元測定する工程と、
当該2次元測定結果及び当該3次元測定結果を利用して当該印刷半田の形状を決定する工程とを含むことを特徴とする印刷半田検査方法。
【請求項2】
基板に印刷された半田を2次元測定すると共に3次元測定する工程と、
当該2次元測定結果及び当該3次元測定結果を利用して当該印刷半田の形成合否を判定する工程とを含むことを特徴とする印刷半田検査方法。
【請求項3】
前記2次元測定工程は、前記印刷半田の底部面積、パッド面積等の2次元性状の項目を測定する工程を含み、前記3次元測定工程は、該印刷半田の断面積、突起面積、平均高さ、ピーク高さ、体積等の3次元性状の項目を測定する工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷半田検査方法。
【請求項4】
少なくとも2つの前記測定項目をマトリックス状に組み合わせて前記印刷半田の形成合否を判定することを特徴とする請求項3に記載の印刷半田検査方法。
【請求項5】
基板に印刷された半田の2次元画像を撮像する光学系と、
当該印刷半田の3次元画像を撮像する光学系と、
撮像した2次元画像及び3次元画像を処理して、該印刷半田の底部面積、パッド面積等の2次元性状の項目を測定すると共に断面積、突起面積、平均高さ、ピーク高さ、体積等の3次元性状の項目を測定し、当該測定項目に基づいて該印刷半田の形状を決定し、また、少なくとも2つの前記測定項目をマトリックス状に組み合わせて該印刷半田の形成合否を判定する検査部とを備えたことを特徴とする印刷半田検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−36736(P2009−36736A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203707(P2007−203707)
【出願日】平成19年8月4日(2007.8.4)
【出願人】(504184503)株式会社DJTECH (9)
【Fターム(参考)】