説明

双方向型電界効果トランジスタおよびマトリクスコンバータ

【課題】単一のデバイスで双方向に流れる電流を制御できる双方向型電界効果トランジスタおよびこれを用いたマトリクスコンバータを提供する。
【解決手段】双方向型電界効果トランジスタは、半導体基板1と、半導体基板1上に設けられ、該基板1の主面に平行なチャネルと該チャネルのコンダクタンスを制御するためのゲート電極13aとを含むゲート領域と、チャネルの第1端側に設けられた第1領域と、チャネルの第2端側に設けられた第2領域とを備え、第1領域の第1電極11aからチャネルを介して第2領域の第2電極12aへ流れる順方向電流および第2電極12aからチャネルを介して第1電極11aへ流れる逆方向電流が、ゲート電極13aに印加されるゲート電圧によって制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双方向に流れる電流を制御可能な双方向型電界効果トランジスタおよび該トランジスタを用いたマトリクスコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
図7(a)は、従来のマトリクスコンバータの一例を示す回路図であり、図7(b)〜(d)は、スイッチング素子の回路図である。マトリクスコンバータCVは、ある周波数の交流電力を異なる周波数の交流電力に変換する機能を有する。
【0003】
三相交流電源PSは、3本のラインR,S,Tを通じて周波数Faの三相交流電力を供給する。三相交流モータMは、3本のラインU,V,Wを通じて供給される周波数Fbの三相交流電力によって駆動される。
【0004】
マトリクスコンバータCVは、入力側のラインR,S,Tと、出力側のラインU,V,Wと、各ラインR,S,Tと各ラインU,V,Wとの間にマトリクス状に配置され、ライン同士を開閉するための9個のスイッチング素子SWなどで構成される。各スイッチング素子SWは、所望のタイミングでPWM(パルス幅変調)制御を行う制御回路(不図示)によって駆動される。
【0005】
各スイッチング素子SWは、順方向および逆方向に流れる交流電流を開閉する必要があることから、一般のパワートランジスタでは実現できない。そのため、何らかの回路配置の工夫が要求される。
【0006】
従来のマトリクスコンバータは、図7(c)に示すように、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子Q1とダイオード素子D1の直列回路と、IGBT素子Q2とダイオード素子D2の直列回路とを逆並列に接続したものを1つのスイッチング素子SWとして使用している。これは、IGBT素子が一方向電流しか制御できないため、逆並列接続によって双方向電流の制御を可能とし、さらにIGBT素子の逆耐圧特性が低いことから、ダイオード素子の直列接続によって逆耐圧特性を改善している。
【0007】
しかしながら、こうした回路構成では、1つのスイッチング素子SWを実現するために4つのパワーデバイスを必要とする。図7(a)に示す三相−三相変換の場合、9個のスイッチング素子SWにつき36個のパワーデバイスが必要になる。また、個々のパワーデバイスも大きな電圧定格および電流定格が要求されることから、必然的に回路規模が大型化し、多量の発熱を放熱するための冷却機構も大型化してしまう。
【0008】
こうした課題を解決するため、図7(d)に示すようなRB(Reverse Blocking)−IGBT素子が、下記の非特許文献1で提案されている。
【0009】
【非特許文献1】Proceedings of 2004 International Symposium on Power Semiconductor Devices & ICs, Kitakyushu, pp. 121-124
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
RB−IGBT素子は、IGBT素子が形成された半導体基板の端部にダイオード領域が一体的に形成されたものであり、回路要素としては、図7(c)に示すIGBT素子とダイオード素子の直列回路と等価になる。
【0011】
しかしながら、RB−IGBT素子を用いた場合でも、双方向電流を制御可能とするために、2つのRB−IGBT素子を逆並列接続しなければならない。そのため、1つのスイッチング素子SWを実現するために、2つのパワーデバイスを必要とし、回路規模の大型化、冷却機構の大型化をもたらす。
【0012】
本発明の目的は、単一のデバイスで双方向に流れる電流を制御できる双方向型電界効果トランジスタを提供することである。
【0013】
また本発明の目的は、こうした双方向型電界効果トランジスタを用いて、小型で大容量のマトリクスコンバータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係る双方向型電界効果トランジスタは、半導体基板と、
半導体基板上に設けられ、該基板の主面に平行なチャネルと該チャネルのコンダクタンスを制御するためのゲート電極とを含むゲート領域と、
チャネルの第1端側に設けられた第1領域と、
チャネルの第2端側に設けられた第2領域とを備え、
第1領域からチャネルを介して第2領域へ流れる第1電流および第2領域からチャネルを介して第1領域へ流れる第2電流が、ゲート電極に印加されるゲート電圧によって制御されることを特徴とする。
【0015】
本発明において、ゲート領域は、第1領域と第2領域の中心に配置されていることが好ましい。
【0016】
また本発明において、ゲート電極と第1領域に含まれる第1電極との間隔は、ゲート電極と第2領域に含まれる第2電極との間隔と実質的に等しいことが好ましい。
【0017】
また本発明において、ゲート領域のチャネルと第1領域に含まれる第1コンタクト層との間隔は、ゲート領域のチャネルと第2領域に含まれる第2コンタクト層との間隔と実質的に等しいことが好ましい。
【0018】
また本発明において、ゲート領域がp−n接合を含む接合型であることが好ましい。
【0019】
また本発明において、ゲート領域が金属層、絶縁体層、半導体層を含むMIS型であることが好ましい。
【0020】
また本発明において、ゲート領域が金属と半導体のショットキー接合を含むMES型であることが好ましい。
【0021】
また本発明において、半導体基板は、SiCで形成されることが好ましい。
【0022】
本発明に係るマトリクスコンバータは、第1周波数の交流電流が流れる複数の入力ラインと、
第2周波数の交流電流が流れる複数の出力ラインと、
各入力ラインと各出力ラインとの間を開閉するための複数のスイッチング素子とを備え、
スイッチング素子として、上記の双方向型電界効果トランジスタを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、半導体基板上に、該基板の主面に平行なチャネルを含むゲート領域を設け、チャネルの第1端側に第1領域を、チャネルの第2端側に第2領域をそれぞれ配置して、第1領域がソースとして、第2領域がドレインとしてそれぞれ機能する順方向モードおよび、第2領域がソースとして、第1領域がドレインとしてそれぞれ機能する逆方向モードが動作可能な双方向型電界効果トランジスタを実現している。順方向電流および逆方向電流は、ゲート電極に印加されるゲート電圧によって制御することができる。従って、単一のデバイスだけで双方向に流れる交流電流を制御することが可能になり、小型で大容量の交流スイッチング素子が得られる。
【0024】
また、こうした双方向型電界効果トランジスタをスイッチング素子として用いたマトリクスコンバータは、パワーデバイスの数を大幅に低減できることから、従来と比べて回路規模の小型化、冷却機構の小型化、簡素化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1実施形態)
図1(a)は、本発明に係るマトリクスコンバータの一例を示す回路図であり、図1(b)(c)は、スイッチング素子の回路図である。マトリクスコンバータCVは、ある周波数の交流電力を異なる周波数の交流電力に変換する機能を有する。ここでは、三相−三相変換の例を説明するが、三相−単相変換、単相−三相変換、単相−単相変換、あるいはM相−N相変換も同様に適用できる。
【0026】
三相交流電源PSは、3本のラインR,S,Tを通じて周波数Faの三相交流電力を供給する。三相交流モータMは、3本のラインU,V,Wを通じて供給される周波数Fbの三相交流電力によって駆動される。
【0027】
マトリクスコンバータCVは、入力側のラインR,S,Tと、出力側のラインU,V,Wと、各ラインR,S,Tと各ラインU,V,Wとの間にマトリクス状に配置され、ライン同士を開閉するための9個のスイッチング素子SWなどで構成される。各スイッチング素子SWは、所望のタイミングでPWM(パルス幅変調)制御を行う制御回路(不図示)によって駆動される。
【0028】
本実施形態では、これらのスイッチング素子SWとして、図1(c)に示すように、単一のデバイスで双方向に流れる交流電流を制御可能な双方向型電界効果トランジスタQAを使用している。従って、1つのスイッチング素子SWにつき1つのパワーデバイスで足りるため、マトリクスコンバータで使用するパワーデバイスの数を大幅に低減できることから、従来と比べて回路規模の小型化、冷却機構の小型化、簡素化を図ることができる。
【0029】
(第2実施形態)
図2は、本発明に係る双方向型電界効果トランジスタの一例を示す断面図である。ここでは、接合型電界効果トランジスタ(J−FET)として構成した例について説明する。
【0030】
基板1の上にはバッファ層2が形成され、バッファ層2の上にはチャネル層3が形成される。チャネル層3には、基板1の主面に平行なチャネルを含むゲート領域と、チャネルの第1端側(図の左側)に設けられた第1領域と、チャネルの第2端側(図の右側)に設けられた第2領域とが形成される。
【0031】
ゲート領域には、チャネルのコンダクタンスを制御するためのゲート電極13aが設けられる。第1領域には、ソース電極またはドレイン電極として機能する第1電極11aが設けられる。第2領域には、第1電極11aとは逆に、ドレイン電極またはソース電極として機能する第2電極12aが設けられる。ゲート領域と第1領域との間およびゲート領域と第2領域との間には、多数キャリアが通過するドリフト領域が形成される。
【0032】
基板1は、Si、SiC、GaNなどの半導体ウエハで形成可能であり、ここでは比較的高いキャリア濃度のn層として形成している。基板1の裏面には、コモン電極10aが形成され、一般にはグランドに接続される。
【0033】
特に、基板1および各層2,3の半導体材料としてSiCを使用することが好ましく、Siと比較して、エネルギーギャップが約3倍、絶縁破壊電界強度が約10倍、飽和電子速度が約2倍、熱伝導度が約3倍と優れた物性値を有するため、小型で大容量のパワーFET素子を実現できる。
【0034】
バッファ層2は化学気相成長法(CVD)などを用いてエピタキシャル成長され、ここでは比較的低いキャリア濃度のp層として形成している。
【0035】
チャネル層3も化学気相成長法(CVD)などを用いてエピタキシャル成長され、ここでは通常のキャリア濃度を有するn層として形成している。
【0036】
チャネル層3のゲート領域には、p型ドーパントの拡散やイオン注入によって、比較的高いキャリア濃度のp層13が形成され、このp層13の上にゲート電極13aが形成される。チャネル層3の第1領域には、n型ドーパントの拡散やイオン注入によって、比較的高いキャリア濃度のnコンタクト層11が形成され、このnコンタクト層11の上に第1電極11aが形成される。チャネル層3の第2領域には、n型ドーパントの拡散やイオン注入によって、比較的高いキャリア濃度のnコンタクト層12が形成され、このnコンタクト層12の上に第2電極12aが形成される。
【0037】
次に、素子の動作について説明する。コモン電極10aの電位を基準(=0ボルト)として、第1電極11aに正の電圧+V、第2電極12aに負の電圧−Vをそれぞれ印加すると、第1電極11a→nコンタクト層11→左側ドリフト領域→ゲート領域のチャネル→右側ドリフト領域→nコンタクト層12→第2電極12aという経路で順方向電流が流れる。この状態でゲート電極13aに負のゲート電圧を印加すると、p層13とn型チャネル層3からなるp−n接合部に空乏層が形成され、ゲート領域のチャネルのコンダクタンスが減少する。これにより経路の抵抗が高くなり、順方向電流は流れなくなる。
【0038】
一方、第1電極11aに負の電圧−V、第2電極12aに正の電圧+Vをそれぞれ印加すると、第2電極12a→nコンタクト層12→右側ドリフト領域→ゲート領域のチャネル→左側ドリフト領域→nコンタクト層11→第1電極11aという経路で逆方向電流が流れる。この状態でゲート電極13aに負のゲート電圧を印加すると、p層13とn型チャネル層3からなるp−n接合部に空乏層が形成され、ゲート領域のチャネルのコンダクタンスが減少する。これにより経路の抵抗が高くなり、逆方向電流は流れなくなる。
【0039】
こうして第1電極11aおよび第2電極12aが交互にソース電極またはドレイン電極として機能するとともに、ゲート電圧を変化させることによって、双方向に流れる交流電流を制御することができる。
【0040】
上述したマトリクスコンバータのように、交流電力を扱う場合には、双方向型電界効果トランジスタの順方向特性および逆方向特性(例えば、ドレイン電流−ドレイン・ソース間電圧特性、ドレイン電流−ゲート・ソース間電圧特性、オン抵抗、ゲート・ソース間容量、逆電圧特性など)は実質的に等価であることが好ましい。
【0041】
その手法として、ゲート電極13aを含むゲート領域は、第1電極11aを含む第1領域と第2電極12aを含む第2領域の中心に配置することが好ましく、これにより左側ドリフト領域の長さL1および右側ドリフト領域の長さL2が一致するようになり、順方向特性および逆方向特性を実質的に等価にすることができる。
【0042】
別の手法として、ゲート電極13aと第1電極11aとの間隔は、ゲート電極13aと第2電極12aとの間隔と実質的に等しいことが好ましく、これにより順方向特性および逆方向特性を実質的に等価にすることができる。
【0043】
さらに別の手法として、ゲート領域のチャネルとnコンタクト層11との間隔は、ゲート領域のチャネルとnコンタクト層12との間隔と実質的に等しいことが好ましく、これにより順方向特性および逆方向特性を実質的に等価にすることができる。
【0044】
さらに別の手法として、nコンタクト層11のキャリア濃度は、nコンタクト層12のキャリア濃度と実質的に等しいことが好ましく、これにより順方向特性および逆方向特性を実質的に等価にすることができる。
【0045】
さらに別の手法として、nコンタクト層11の深さは、nコンタクト層12の深さと実質的に等しいことが好ましく、これにより順方向特性および逆方向特性を実質的に等価にすることができる。
【0046】
(第3実施形態)
図3は、本発明に係る双方向型電界効果トランジスタの他の例を示す断面図である。ここでは、リサーフ(RESURF: Reduced Surface Field)層を有する接合型電界効果トランジスタ(J−FET)として構成した例について説明する。
【0047】
基板1の上にはバッファ層2が形成され、バッファ層2の上にはチャネル層3が形成され、チャネル層3の上にはリサーフ層4が形成される。チャネル層3およびリサーフ層4には、基板1の主面に平行なチャネルを含むゲート領域と、チャネルの第1端側(図の左側)に設けられた第1領域と、チャネルの第2端側(図の右側)に設けられた第2領域とが形成される。
【0048】
ゲート領域には、チャネルのコンダクタンスを制御するためのゲート電極13aが設けられる。第1領域には、ソース電極またはドレイン電極として機能する第1電極11aが設けられる。第2領域には、第1電極11aとは逆に、ドレイン電極またはソース電極として機能する第2電極12aが設けられる。ゲート領域と第1領域との間およびゲート領域と第2領域との間には、多数キャリアが通過するドリフト領域が形成される。
【0049】
基板1は、Si、SiC、GaNなどの半導体ウエハで形成可能であり、ここでは比較的高いキャリア濃度のn層として形成している。基板1の裏面には、コモン電極10aが形成され、一般にはグランドに接続される。
【0050】
特に、基板1および各層2,3の半導体材料としてSiCを使用することが好ましく、Siと比較して、エネルギーギャップが約3倍、絶縁破壊電界強度が約10倍、飽和電子速度が約2倍、熱伝導度が約3倍と優れた物性値を有するため、小型で大容量のパワーFET素子を実現できる。
【0051】
バッファ層2は化学気相成長法(CVD)などを用いてエピタキシャル成長され、ここでは比較的低いキャリア濃度のp層として形成している。
【0052】
チャネル層3およびリサーフ層4も化学気相成長法(CVD)などを用いてエピタキシャル成長される。チャネル層3は、ここでは通常のキャリア濃度を有するn層として形成している。
【0053】
リサーフ層4は、p型ドーパントの拡散やイオン注入によって、通常のキャリア濃度のp層として形成している。これによりドリフト領域にもp−n接合が存在するようになり、表面近傍の電界集中が緩和して、耐圧特性を改善することができる。
【0054】
ゲート領域には、p型ドーパントの拡散やイオン注入によって、比較的高いキャリア濃度のp層13が形成され、このp層13の上にゲート電極13aが形成される。第1領域には、n型ドーパントの拡散やイオン注入によって、比較的高いキャリア濃度のnコンタクト層11が形成され、このnコンタクト層11の上に第1電極11aが形成される。第2領域には、n型ドーパントの拡散やイオン注入によって、比較的高いキャリア濃度のnコンタクト層12が形成され、このnコンタクト層12の上に第2電極12aが形成される。
【0055】
次に、素子の動作について説明する。コモン電極10aの電位を基準(=0ボルト)として、第1電極11aに正の電圧+V、第2電極12aに負の電圧−Vをそれぞれ印加すると、第1電極11a→nコンタクト層11→左側ドリフト領域→ゲート領域のチャネル→右側ドリフト領域→nコンタクト層12→第2電極12aという経路で順方向電流が流れる。この状態でゲート電極13aに負のゲート電圧を印加すると、p層13とn型チャネル層3からなるp−n接合部に空乏層が形成され、ゲート領域のチャネルのコンダクタンスが減少する。これにより経路の抵抗が高くなり、順方向電流は流れなくなる。
【0056】
一方、第1電極11aに負の電圧−V、第2電極12aに正の電圧+Vをそれぞれ印加すると、第2電極12a→nコンタクト層12→右側ドリフト領域→ゲート領域のチャネル→左側ドリフト領域→nコンタクト層11→第1電極11aという経路で逆方向電流が流れる。この状態でゲート電極13aに負のゲート電圧を印加すると、p層13とn型チャネル層3からなるp−n接合部に空乏層が形成され、ゲート領域のチャネルのコンダクタンスが減少する。これにより経路の抵抗が高くなり、逆方向電流は流れなくなる。
【0057】
こうして第1電極11aおよび第2電極12aが交互にソース電極またはドレイン電極として機能するとともに、ゲート電圧を変化させることによって、双方向に流れる交流電流を制御することができる。
【0058】
上述したマトリクスコンバータのように、交流電力を扱う場合には、双方向型電界効果トランジスタの順方向特性および逆方向特性(例えば、ドレイン電流−ドレイン・ソース間電圧特性、ドレイン電流−ゲート・ソース間電圧特性、オン抵抗、ゲート・ソース間容量、逆電圧特性など)は実質的に等価であることが好ましい。
【0059】
その手法として、ゲート電極13aを含むゲート領域は、第1電極11aを含む第1領域と第2電極12aを含む第2領域の中心に配置することが好ましく、これにより左側ドリフト領域の長さL1および右側ドリフト領域の長さL2が一致するようになり、順方向特性および逆方向特性を実質的に等価にすることができる。
【0060】
別の手法として、ゲート電極13aと第1電極11aとの間隔は、ゲート電極13aと第2電極12aとの間隔と実質的に等しいことが好ましく、これにより順方向特性および逆方向特性を実質的に等価にすることができる。
【0061】
さらに別の手法として、ゲート領域のチャネルとnコンタクト層11との間隔は、ゲート領域のチャネルとnコンタクト層12との間隔と実質的に等しいことが好ましく、これにより順方向特性および逆方向特性を実質的に等価にすることができる。
【0062】
さらに別の手法として、nコンタクト層11のキャリア濃度は、nコンタクト層12のキャリア濃度と実質的に等しいことが好ましく、これにより順方向特性および逆方向特性を実質的に等価にすることができる。
【0063】
さらに別の手法として、nコンタクト層11の深さは、nコンタクト層12の深さと実質的に等しいことが好ましく、これにより順方向特性および逆方向特性を実質的に等価にすることができる。
【0064】
(第4実施形態)
図4は、本発明に係る双方向型電界効果トランジスタのさらに他の例を示す断面図である。ここでは、ゲート領域に金属層、酸化物層、半導体層を含むMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)FETとして構成した例について説明する。酸化物層の代わりに一般の電気絶縁層を用いれば、上位概念のMIS(Metal-Insulator-Semiconductor)型FETを構成できる。MIS型FETの場合、金属層にバイアス電圧が印加されると、半導体層と絶縁層との界面付近に反転層が形成され、この反転層がキャリアのチャネルとして機能する。
【0065】
基板1の上にはバッファ層2が形成され、バッファ層2の上にはチャネル層3が形成される。チャネル層3には、基板1の主面に平行なチャネルを含むゲート領域と、チャネルの第1端側(図の左側)に設けられた第1領域と、チャネルの第2端側(図の右側)に設けられた第2領域とが形成される。
【0066】
ゲート領域には、チャネル層3の上に形成された絶縁体層14と、チャネルのコンダクタンスを制御するためのゲート電極13aが設けられる。第1領域には、ソース電極またはドレイン電極として機能する第1電極11aが設けられる。第2領域には、第1電極11aとは逆に、ドレイン電極またはソース電極として機能する第2電極12aが設けられる。ゲート領域と第1領域との間およびゲート領域と第2領域との間には、多数キャリアが通過するドリフト領域が形成される。
【0067】
基板1は、Si、SiC、GaNなどの半導体ウエハで形成可能であり、ここでは比較的高いキャリア濃度のn層として形成している。基板1の裏面には、コモン電極10aが形成され、一般にはグランドに接続される。
【0068】
特に、基板1および各層2,3の半導体材料としてSiCを使用することが好ましく、Siと比較して、エネルギーギャップが約3倍、絶縁破壊電界強度が約10倍、飽和電子速度が約2倍、熱伝導度が約3倍と優れた物性値を有するため、小型で大容量のパワーFET素子を実現できる。また、チャネル層3をSiCで形成した場合、所定開口を持つマスクを用いて酸化処理を施すことによって、SiベースのMOSFETと同様に、SiOからなる絶縁体層14を形成することができる。
【0069】
バッファ層2は化学気相成長法(CVD)などを用いてエピタキシャル成長され、ここでは比較的低いキャリア濃度のp層として形成している。
【0070】
チャネル層3も化学気相成長法(CVD)などを用いてエピタキシャル成長される。チャネル層3は、ここでは通常のキャリア濃度を有するn層として形成している。
【0071】
ゲート領域には、p型ドーパントの拡散やイオン注入によって、通常のキャリア濃度のp層15が形成され、このp層15の上にゲート電極13aが形成される。第1領域には、n型ドーパントの拡散やイオン注入によって、比較的高いキャリア濃度のnコンタクト層11が形成され、このnコンタクト層11の上に第1電極11aが形成される。第2領域には、n型ドーパントの拡散やイオン注入によって、比較的高いキャリア濃度のnコンタクト層12が形成され、このnコンタクト層12の上に第2電極12aが形成される。
【0072】
次に、素子の動作について説明する。コモン電極10aの電位を基準(=0ボルト)として、ゲート電極13aに正のゲート電圧を印加すると、チャネルとして機能する反転層が誘起される。この状態で第1電極11aに正の電圧+V、第2電極12aに負の電圧−Vをそれぞれ印加すると、第1電極11a→nコンタクト層11→左側ドリフト領域→ゲート領域のチャネル→右側ドリフト領域→nコンタクト層12→第2電極12aという経路で順方向電流が流れる。次に、ゲート電極13aに負のゲート電圧を印加すると、反転層が消滅して、チャネルのコンダクタンスが減少する。これにより経路の抵抗が高くなり、順方向電流は流れなくなる。
【0073】
一方、ゲート電極13aに正のゲート電圧を印加した状態で、第1電極11aに負の電圧−V、第2電極12aに正の電圧+Vをそれぞれ印加すると、第2電極12a→nコンタクト層12→右側ドリフト領域→ゲート領域のチャネル→左側ドリフト領域→nコンタクト層11→第1電極11aという経路で逆方向電流が流れる。次に、ゲート電極13aに負のゲート電圧を印加すると、チャネルのコンダクタンスが減少する。これにより経路の抵抗が高くなり、逆方向電流は流れなくなる。
【0074】
こうして第1電極11aおよび第2電極12aが交互にソース電極またはドレイン電極として機能するとともに、ゲート電圧を変化させることによって、双方向に流れる交流電流を制御することができる。なお、ゲート電圧を変化させる範囲は、MOSFETの特性がエンハンスメント形あるいはディプレッション形であるかに応じて適宜設定される。
【0075】
上述したマトリクスコンバータのように、交流電力を扱う場合には、双方向型電界効果トランジスタの順方向特性および逆方向特性(例えば、ドレイン電流−ドレイン・ソース間電圧特性、ドレイン電流−ゲート・ソース間電圧特性、オン抵抗、ゲート・ソース間容量、逆電圧特性など)は実質的に等価であることが好ましい。
【0076】
その手法として、ゲート電極13aを含むゲート領域は、第1電極11aを含む第1領域と第2電極12aを含む第2領域の中心に配置することが好ましく、これにより左側ドリフト領域の長さL1および右側ドリフト領域の長さL2が一致するようになり、順方向特性および逆方向特性を実質的に等価にすることができる。
【0077】
別の手法として、ゲート電極13aと第1電極11aとの間隔は、ゲート電極13aと第2電極12aとの間隔と実質的に等しいことが好ましく、これにより順方向特性および逆方向特性を実質的に等価にすることができる。
【0078】
さらに別の手法として、ゲート領域のチャネルとnコンタクト層11との間隔は、ゲート領域のチャネルとnコンタクト層12との間隔と実質的に等しいことが好ましく、これにより順方向特性および逆方向特性を実質的に等価にすることができる。
【0079】
さらに別の手法として、nコンタクト層11のキャリア濃度は、nコンタクト層12のキャリア濃度と実質的に等しいことが好ましく、これにより順方向特性および逆方向特性を実質的に等価にすることができる。
【0080】
さらに別の手法として、nコンタクト層11の深さは、nコンタクト層12の深さと実質的に等しいことが好ましく、これにより順方向特性および逆方向特性を実質的に等価にすることができる。
【0081】
(第5実施形態)
図5は、本発明に係る双方向型電界効果トランジスタのさらに他の例を示す断面図である。ここでは、ゲート領域に金属と半導体のショットキー接合を含むMES(Metal-Semiconductor)型FETとして構成した例について説明する。MES型FETの場合、ショットキー接合で生ずる空乏層がチャネルのコンダクタンスを変化させる。
【0082】
基板1の上にはバッファ層2が形成され、バッファ層2の上にはチャネル層3が形成される。チャネル層3には、基板1の主面に平行なチャネルを含むゲート領域と、チャネルの第1端側(図の左側)に設けられた第1領域と、チャネルの第2端側(図の右側)に設けられた第2領域とが形成される。
【0083】
ゲート領域には、チャネルのコンダクタンスを制御するためのゲート電極13aが設けられる。第1領域には、ソース電極またはドレイン電極として機能する第1電極11aが設けられる。第2領域には、第1電極11aとは逆に、ドレイン電極またはソース電極として機能する第2電極12aが設けられる。ゲート領域と第1領域との間およびゲート領域と第2領域との間には、多数キャリアが通過するドリフト領域が形成される。
【0084】
基板1は、Si、SiC、GaNなどの半導体ウエハで形成可能であり、ここでは比較的高いキャリア濃度のn層として形成している。基板1の裏面には、コモン電極10aが形成され、一般にはグランドに接続される。
【0085】
特に、基板1および各層2,3の半導体材料としてSiCを使用することが好ましく、Siと比較して、エネルギーギャップが約3倍、絶縁破壊電界強度が約10倍、飽和電子速度が約2倍、熱伝導度が約3倍と優れた物性値を有するため、小型で大容量のパワーFET素子を実現できる。
【0086】
バッファ層2は化学気相成長法(CVD)などを用いてエピタキシャル成長され、ここでは比較的低いキャリア濃度のp層として形成している。
【0087】
チャネル層3も化学気相成長法(CVD)などを用いてエピタキシャル成長される。チャネル層3は、ここでは通常のキャリア濃度を有するn層として形成している。
【0088】
ゲート領域には、チャネル層3の上に直接ゲート電極13aが形成される。第1領域には、n型ドーパントの拡散やイオン注入によって、比較的高いキャリア濃度のnコンタクト層11が形成され、このnコンタクト層11の上に第1電極11aが形成される。第2領域には、n型ドーパントの拡散やイオン注入によって、比較的高いキャリア濃度のnコンタクト層12が形成され、このnコンタクト層12の上に第2電極12aが形成される。
【0089】
次に、素子の動作について説明する。コモン電極10aの電位を基準(=0ボルト)として、ゲート電極13aに正のゲート電圧を印加すると、ゲート領域の空乏層が減少する。この状態で第1電極11aに正の電圧+V、第2電極12aに負の電圧−Vをそれぞれ印加すると、第1電極11a→nコンタクト層11→左側ドリフト領域→ゲート領域のチャネル→右側ドリフト領域→nコンタクト層12→第2電極12aという経路で順方向電流が流れる。次に、ゲート電極13aに負のゲート電圧を印加すると、空乏層が増加して、チャネルのコンダクタンスが減少する。これにより経路の抵抗が高くなり、順方向電流は流れなくなる。
【0090】
一方、ゲート電極13aに正のゲート電圧を印加した状態で、第1電極11aに負の電圧−V、第2電極12aに正の電圧+Vをそれぞれ印加すると、第2電極12a→nコンタクト層12→右側ドリフト領域→ゲート領域のチャネル→左側ドリフト領域→nコンタクト層11→第1電極11aという経路で逆方向電流が流れる。次に、ゲート電極13aに負のゲート電圧を印加すると、チャネルのコンダクタンスが減少する。これにより経路の抵抗が高くなり、逆方向電流は流れなくなる。
【0091】
こうして第1電極11aおよび第2電極12aが交互にソース電極またはドレイン電極として機能するとともに、ゲート電圧を変化させることによって、双方向に流れる交流電流を制御することができる。
【0092】
上述したマトリクスコンバータのように、交流電力を扱う場合には、双方向型電界効果トランジスタの順方向特性および逆方向特性(例えば、ドレイン電流−ドレイン・ソース間電圧特性、ドレイン電流−ゲート・ソース間電圧特性、オン抵抗、ゲート・ソース間容量、逆電圧特性など)は実質的に等価であることが好ましい。
【0093】
その手法として、ゲート電極13aを含むゲート領域は、第1電極11aを含む第1領域と第2電極12aを含む第2領域の中心に配置すること、即ち、図5に示すように、ゲート領域の中心線Sと第1領域との距離L1がゲート領域の中心線Sと第2領域との距離L2と等しいことが好ましく、これにより左側ドリフト領域の長さおよび右側ドリフト領域の長さが一致するようになり、順方向特性および逆方向特性を実質的に等価にすることができる。
【0094】
別の手法として、ゲート電極13aと第1電極11aとの間隔は、ゲート電極13aと第2電極12aとの間隔と実質的に等しいことが好ましく、これにより順方向特性および逆方向特性を実質的に等価にすることができる。
【0095】
さらに別の手法として、ゲート領域のチャネルとnコンタクト層11との間隔は、ゲート領域のチャネルとnコンタクト層12との間隔と実質的に等しいことが好ましく、これにより順方向特性および逆方向特性を実質的に等価にすることができる。
【0096】
さらに別の手法として、nコンタクト層11のキャリア濃度は、nコンタクト層12のキャリア濃度と実質的に等しいことが好ましく、これにより順方向特性および逆方向特性を実質的に等価にすることができる。
【0097】
さらに別の手法として、nコンタクト層11の深さは、nコンタクト層12の深さと実質的に等しいことが好ましく、これにより順方向特性および逆方向特性を実質的に等価にすることができる。
【0098】
(第6実施形態)
図6は、本発明に係る双方向型電界効果トランジスタのさらに他の例を示す断面図である。ここでは、フィールドプレート構造を有するMES型FETとして構成した例について説明する。フィールドプレート構造は、半導体内部での電界集中を緩和して、破壊耐圧を改善するために設けられ、ここではゲート電極に設けた例を説明するが、ソース電極またはドレイン電極に設けても構わない。
【0099】
基板1の上にはバッファ層2が形成され、バッファ層2の上にはチャネル層3が形成される。チャネル層3には、基板1の主面に平行なチャネルを含むゲート領域と、チャネルの第1端側(図の左側)に設けられた第1領域と、チャネルの第2端側(図の右側)に設けられた第2領域とが形成される。
【0100】
ゲート領域には、チャネルのコンダクタンスを制御するためのゲート電極13aが設けられる。第1領域には、ソース電極またはドレイン電極として機能する第1電極11aが設けられる。第2領域には、第1電極11aとは逆に、ドレイン電極またはソース電極として機能する第2電極12aが設けられる。ゲート領域と第1領域との間およびゲート領域と第2領域との間には、多数キャリアが通過するドリフト領域が形成される。
【0101】
基板1は、Si、SiC、GaNなどの半導体ウエハで形成可能であり、ここでは比較的高いキャリア濃度のn層として形成している。基板1の裏面には、コモン電極10aが形成され、一般にはグランドに接続される。
【0102】
特に、基板1および各層2,3の半導体材料としてSiCを使用することが好ましく、Siと比較して、エネルギーギャップが約3倍、絶縁破壊電界強度が約10倍、飽和電子速度が約2倍、熱伝導度が約3倍と優れた物性値を有するため、小型で大容量のパワーFET素子を実現できる。
【0103】
バッファ層2は化学気相成長法(CVD)などを用いてエピタキシャル成長され、ここでは比較的低いキャリア濃度のp層として形成している。
【0104】
チャネル層3も化学気相成長法(CVD)などを用いてエピタキシャル成長される。チャネル層3は、ここでは通常のキャリア濃度を有するn層として形成している。また、チャネル層3の上には、各電極位置を除いてSiOからなる絶縁体層16が形成される。
【0105】
ゲート領域には、チャネル層3の上に直接ゲート電極13aが形成され、さらにゲート電極13aのエッジ周辺を囲むように、導電性のフィールドプレート13bが絶縁体層16の上に設けられる。チャネル層3の内部において、ゲート電極13aのエッジ付近で電界集中が生ずることから、フィールドプレート13bはエッジ付近での電界集中を緩和する機能を果たす。
【0106】
第1領域には、n型ドーパントの拡散やイオン注入によって、比較的高いキャリア濃度のnコンタクト層11が形成され、このnコンタクト層11の上に第1電極11aが形成される。第2領域には、n型ドーパントの拡散やイオン注入によって、比較的高いキャリア濃度のnコンタクト層12が形成され、このnコンタクト層12の上に第2電極12aが形成される。
【0107】
次に、素子の動作について説明する。コモン電極10aの電位を基準(=0ボルト)として、ゲート電極13aに正のゲート電圧を印加すると、ゲート領域の空乏層が減少する。この状態で第1電極11aに正の電圧+V、第2電極12aに負の電圧−Vをそれぞれ印加すると、第1電極11a→nコンタクト層11→左側ドリフト領域→ゲート領域のチャネル→右側ドリフト領域→nコンタクト層12→第2電極12aという経路で順方向電流が流れる。次に、ゲート電極13aに負のゲート電圧を印加すると、空乏層が増加して、チャネルのコンダクタンスが減少する。これにより経路の抵抗が高くなり、順方向電流は流れなくなる。
【0108】
一方、ゲート電極13aに正のゲート電圧を印加した状態で、第1電極11aに負の電圧−V、第2電極12aに正の電圧+Vをそれぞれ印加すると、第2電極12a→nコンタクト層12→右側ドリフト領域→ゲート領域のチャネル→左側ドリフト領域→nコンタクト層11→第1電極11aという経路で逆方向電流が流れる。次に、ゲート電極13aに負のゲート電圧を印加すると、チャネルのコンダクタンスが減少する。これにより経路の抵抗が高くなり、逆方向電流は流れなくなる。
【0109】
こうして第1電極11aおよび第2電極12aが交互にソース電極またはドレイン電極として機能するとともに、ゲート電圧を変化させることによって、双方向に流れる交流電流を制御することができる。
【0110】
上述したマトリクスコンバータのように、交流電力を扱う場合には、双方向型電界効果トランジスタの順方向特性および逆方向特性(例えば、ドレイン電流−ドレイン・ソース間電圧特性、ドレイン電流−ゲート・ソース間電圧特性、オン抵抗、ゲート・ソース間容量、逆電圧特性など)は実質的に等価であることが好ましい。
【0111】
その手法として、ゲート電極13aを含むゲート領域は、第1電極11aを含む第1領域と第2電極12aを含む第2領域の中心に配置すること、即ち、図6に示すように、ゲート領域の中心線Sと第1領域との距離L1がゲート領域の中心線Sと第2領域との距離L2と等しいことが好ましく、これにより左側ドリフト領域の長さおよび右側ドリフト領域の長さが一致するようになり、順方向特性および逆方向特性を実質的に等価にすることができる。
【0112】
別の手法として、ゲート電極13aと第1電極11aとの間隔は、ゲート電極13aと第2電極12aとの間隔と実質的に等しいことが好ましく、これにより順方向特性および逆方向特性を実質的に等価にすることができる。
【0113】
さらに別の手法として、ゲート領域のチャネルとnコンタクト層11との間隔は、ゲート領域のチャネルとnコンタクト層12との間隔と実質的に等しいことが好ましく、これにより順方向特性および逆方向特性を実質的に等価にすることができる。
【0114】
さらに別の手法として、nコンタクト層11のキャリア濃度は、nコンタクト層12のキャリア濃度と実質的に等しいことが好ましく、これにより順方向特性および逆方向特性を実質的に等価にすることができる。
【0115】
さらに別の手法として、nコンタクト層11の深さは、nコンタクト層12の深さと実質的に等しいことが好ましく、これにより順方向特性および逆方向特性を実質的に等価にすることができる。
【0116】
なお上述した各実施形態では、基板1、チャネル層3をn導電型とし、バッファ層2、リサーフ層4(図3)、p層15(図4)をp導電型とした例について説明したが、各層について導電型を逆にした構成も同様に本発明は適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、新規な双方向型電界効果トランジスタを提案するものであり、マトリクスコンバータなどの交流電力制御機器を小型化、大容量化できる点で極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1(a)は、本発明に係るマトリクスコンバータの一例を示す回路図であり、図1(b)(c)は、スイッチング素子の回路図である。
【図2】本発明に係る双方向型電界効果トランジスタの一例を示す断面図である。
【図3】本発明に係る双方向型電界効果トランジスタの他の例を示す断面図である。
【図4】本発明に係る双方向型電界効果トランジスタのさらに他の例を示す断面図である。
【図5】本発明に係る双方向型電界効果トランジスタのさらに他の例を示す断面図である。
【図6】本発明に係る双方向型電界効果トランジスタのさらに他の例を示す断面図である。
【図7】図7(a)は、従来のマトリクスコンバータの一例を示す回路図であり、図7(b)〜(d)は、スイッチング素子の回路図である。
【符号の説明】
【0119】
1 基板
2 バッファ層
3 チャネル層
4 リサーフ層
10a コモン電極
11a 第1電極
11,12 nコンタクト層
12a 第2電極
13 p
13a ゲート電極
13b フィールドプレート
14,16 絶縁体層
15 p層
CV マトリクスコンバータ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
半導体基板上に設けられ、該基板の主面に平行なチャネルと該チャネルのコンダクタンスを制御するためのゲート電極とを含むゲート領域と、
チャネルの第1端側に設けられた第1領域と、
チャネルの第2端側に設けられた第2領域とを備え、
第1領域からチャネルを介して第2領域へ流れる第1電流および第2領域からチャネルを介して第1領域へ流れる第2電流が、ゲート電極に印加されるゲート電圧によって制御されることを特徴とする双方向型電界効果トランジスタ。
【請求項2】
ゲート領域は、第1領域と第2領域の中心に配置されていることを特徴とする請求項1記載の双方向型電界効果トランジスタ。
【請求項3】
ゲート電極と第1領域に含まれる第1電極との間隔は、ゲート電極と第2領域に含まれる第2電極との間隔と実質的に等しいことを特徴とする請求項1記載の双方向型電界効果トランジスタ。
【請求項4】
ゲート領域のチャネルと第1領域に含まれる第1コンタクト層との間隔は、ゲート領域のチャネルと第2領域に含まれる第2コンタクト層との間隔と実質的に等しいことを特徴とする請求項1記載の双方向型電界効果トランジスタ。
【請求項5】
ゲート領域がp−n接合を含む接合型であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の双方向型電界効果トランジスタ。
【請求項6】
ゲート領域が金属層、絶縁体層、半導体層を含むMIS型であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の双方向型電界効果トランジスタ。
【請求項7】
ゲート領域が金属と半導体のショットキー接合を含むMES型であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の双方向型電界効果トランジスタ。
【請求項8】
半導体基板は、SiCで形成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の双方向型電界効果トランジスタ。
【請求項9】
第1周波数の交流電流が流れる複数の入力ラインと、
第2周波数の交流電流が流れる複数の出力ラインと、
各入力ラインと各出力ラインとの間を開閉するための複数のスイッチング素子とを備え、
スイッチング素子として、請求項1〜8のいずれかに記載の双方向型電界効果トランジスタを用いたことを特徴とするマトリクスコンバータ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
半導体基板上に設けられ、該基板の主面に平行なチャネルと該チャネルのコンダクタンスを制御するためのゲート電極とを含むゲート領域と、
チャネルの第1端側に設けられた第1領域と、
チャネルの第2端側に設けられた第2領域と
該半導体基板の裏面に設けられ、該半導体基板の電位を固定するためのコモン電極とを備え、
第1領域からチャネルを介して第2領域へ流れる第1電流および第2領域からチャネルを介して第1領域へ流れる第2電流が、ゲート電極に印加されるゲート電圧によって制御されることを特徴とする交流電力制御用双方向型電界効果トランジスタ。
【請求項2】
ゲート領域は、第1領域と第2領域の中心に配置されていることを特徴とする請求項1記載の交流電力制御用双方向型電界効果トランジスタ。
【請求項3】
ゲート電極と第1領域に含まれる第1電極との間隔は、ゲート電極と第2領域に含まれる第2電極との間隔と実質的に等しいことを特徴とする請求項1記載の交流電力制御用双方向型電界効果トランジスタ。
【請求項4】
ゲート領域のチャネルと第1領域に含まれる第1コンタクト層との間隔は、ゲート領域のチャネルと第2領域に含まれる第2コンタクト層との間隔と実質的に等しいことを特徴とする請求項1記載の交流電力制御用双方向型電界効果トランジスタ。
【請求項5】
ゲート領域がp−n接合を含む接合型であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の交流電力制御用双方向型電界効果トランジスタ。
【請求項6】
ゲート領域が金属層、絶縁体層、半導体層を含むMIS型であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の交流電力制御用双方向型電界効果トランジスタ。
【請求項7】
ゲート領域が金属と半導体のショットキー接合を含むMES型であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の交流電力制御用双方向型電界効果トランジスタ。
【請求項8】
半導体基板は、SiCで形成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の交流電力制御用双方向型電界効果トランジスタ。
【請求項9】
第1周波数の交流電流が流れる複数の入力ラインと、
第2周波数の交流電流が流れる複数の出力ラインと、
各入力ラインと各出力ラインとの間を開閉するための複数のスイッチング素子とを備え、
スイッチング素子として、請求項1〜8のいずれかに記載の交流電力制御用双方向型電界効果トランジスタを用いたことを特徴とするマトリクスコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−165387(P2006−165387A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356947(P2004−356947)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成15年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「エネルギー使用合理化技術戦略的開発/極低損失SiCトランジスタの研究開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適応を受ける特許出願)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】