説明

基板処理装置及びCVD装置並びに電子デバイスの製造方法

【課題】プラズマ生成部と成膜処理部の間に隔壁を配することによって被成膜基板にプラズマ生成部で発生する高エネルギー粒子が入射するのを抑制する構成を有する装置において、成膜分布を改善することを課題とする。
【解決手段】基板処理装置を、プラズマが生成される第一の空間、基板を載置する為の基板ホルダを有する第二の空間、第一の空間と第二の空間を分離する、内部に第三の空間を有する隔壁、第一の空間と第二の空間を繋ぐ前記隔壁に形成された複数の第一の孔、第二の空間と第三の空間を結ぶ前記隔壁の第二の空間に接する面に形成された複数の第二の孔、第一の空間に第一のガスを導入する第一のガス導入手段及び第三の空間に第二のガスを導入する第二のガス導入手段を有し、第一の孔に係わる単位面積当たりの開口率は、中心部より周辺部で大きい構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置及びこの基板処理装置を適用したCVD装置並びにこれらを使用した電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、高ネルギーのプラズマ粒子の入射を阻止しつつCVD成膜を行う装置としては特許文献1に記載のものがあった。該発明は、本発明と同様に真空容器内をプラズマ生成部と成膜処理部を画す隔壁を有するものである。そして、隔壁にはプラズマ生成部及び成膜処理部を繋ぐ貫通孔が穿孔されている。貫通孔は、貫通孔内でのガス流をu、貫通孔の特徴的な長さをL,プラズマ生成部の供給されるガスと隔壁内に供給されるガスの相互拡散係数をDとすると、uL/D>1を満たすように形成されている。
【0003】
また、特許文献2には、同様に隔壁を有するプラズマCVD装置において、分布を改善する為に隔壁内に更にガスの拡散板が設けられており、該拡散板にガス通過孔が設けられている発明が開示されている。そして、ガス通過孔は外周部よりも中心部がその開口率が大きくなるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−345349号公報 (第3〜4頁、図1)
【特許文献2】特開2001−135628号公報 (第5頁、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、プラズマを利用して発生した活性種を使用して成膜を行うCVD成膜であって、プラズマ生成部と成膜処理部の間に隔壁を配することによって被成膜基板にプラズマ生成部で発生する高エネルギー粒子が入射するのを抑制する構成を有する装置において、成膜分布を改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係わる基板処理装置は、プラズマが生成される第一の空間、基板を載置する為の基板ホルダを有する第二の空間、第一の空間と第二の空間を分離する、内部に第三の空間を有する隔壁、第一の空間と第二の空間を繋ぐ前記隔壁に形成された複数の第一の孔、第二の空間と第三の空間を結ぶ前記隔壁の第二の空間に接する面に形成された複数の第二の孔、第一の空間に第一のガスを導入する第一のガス導入手段及び第三の空間に第二のガスを導入する第二のガス導入手段を有し、第一の孔の単位面積当たりの開口率は、中心部より周辺部で大きいこという構成を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、プラズマ生成空間でプラズマを利用して活性種を生成してCVD成膜行う場合であっても、プラズマ生成部で発生する高エネルギー粒子が被成膜基板に入射を抑制しつつ、且つ良好な成膜分布の成膜を被成膜基板上に実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のCVD装置の実施の形態を示す断面図である。
【図2】本発明のCVD装置の隔壁部の拡大説明図である。
【図3】(a)、(b)は本発明のCVD装置の貫通孔と拡散孔の平面方向の配置の一例を表した説明図である。
【図4】従来のCVD装置の貫通孔と拡散孔の平面方向の配置を表した説明図である。
【図5】本発明のCVD装置と従来のCVD装置で成膜処理した場合の、基板径方向位置と成膜速度との関係をプロットしたものである。
【図6】本発明のCVD装置と従来のCVD装置で成膜処理した場合の、基板径方向位置と屈折率nとの関係をプロットしたものである。
【図7】本発明による磁気抵抗効果素子の製造装置の一例の構成を示す図である。
【図8】磁気抵抗効果素子の構成の一例を示す図である。
【図9】(a)は、本発明の実施形態の製造方法のフローチャート、(b)は、このフローチャートの各ステップに対応した磁気抵抗効果素子の状態を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明を更に説明する。
【0010】
図1は本発明に係わる基板処理装置100の模式図である。
【0011】
図1において、1は真空容器、2は電極、2aは電極に穿孔された孔、3は電力導入棒、4は電力導入棒3の外周部を覆う絶縁物、5は第一のガスを導入する第一のガス導入手段、6はクリーニングガス導入手段、7及び8は絶縁物、9は後述する隔壁を地絡するための金属等から出来ている電気的導体、10は電極2の上、孔2aの中及び電極2の下に拡がるプラズマ生成空間を示す。
【0012】
20は隔壁を示している。21は貫通孔、22は拡散孔、23は内部空間、24は材料ガスを導入する第二のガス導入手段、25は孔形成領域を表している。ここで、貫通孔21はプラズマが発生している部分よりなるプラズマ生成空間10(第一の空間)と図1では隔壁20に下に位置する基板処理空間11(第二の空間)を繋ぐ孔であり、隔壁20中を柱状の形をして貫いている。従って、内部空間は柱状部以外で繋がっている。従って、そのコンダクタンスは十分に大きい為に、内部に亘ってほぼ一定の圧力になっている。
【0013】
上述のように、内部空間23の全体に亘り圧力はほぼ均一のなっているので、拡散孔22を通って噴出してくるガスもかなり均一なものとなっているが、更に均一なガスの吹き出しが求められる場合には、内部空間の隔壁の上面又は下面の間に且つそれらに平行に分布された穴を有する1又は2以上の拡散板を配置することも出来る。
【0014】
30は基板ホルダ、31はその内部に埋設されているヒータである。そして、基板ホルダ30の上部には基板14が載置されている。11は基板処理空間、12は排気ポート、13はターボ分子ポンプ等の排気手段である。
【0015】
ここで、真空容器1はその組立て性を良好にする観点から、上容器1aと、1bとから構成される。そして、それらは分離可能に構成されており、これらは組み合わせた場合には、それらがお互いに接する面には不図示のOリング等のシール手段が配されており内部を外部から圧力的に遮断できる構成となっている。
【0016】
図2は、隔壁20の一部の拡大図である。同一の構成要素には同一の符号を付して、説明は省略する。
【0017】
プラズマ10aはプラズマ生成空間10で発生するプラズマである。矢印41は該プラズマの活性種が貫通孔21を通り基板処理空間11に供給される方向を示し、矢印42は第二のガス導入手段24より内部空間23に導入された材料ガスが拡散孔22を通り該基板処理空間に供給される方向を示している。
【0018】
貫通孔21は、3つの部分に分けることが出来る。プラズマ生成空間10の側の21aはより小さな直径を有している。一方、基板処理空間11の側の21cは大きな直径となっている。その間は錐状の形状をした21bで繋がっている。
【0019】
このような形状をしているので、孔部に放電が入り込み、その結果プラズマが基板処理空間11に漏れるのを防止できる。また、孔部では放電が生じ易いが、図2の構造ではプラズマ10に対しては、隔壁は以下で記述する形状に比べてよりフラットである為、異常放電も起こり難い。また、径の小さな部分21aの長さが短いので製作も容易であるというメリットがある。
【0020】
しかし、必要に応じては、逆の構成を採用することもできる。即ち、貫通孔21のプラズマ生成空間10の側の部分の径を大きくし、基板処理空間11側の径を小さくする。そしてその間を錘状の径状部で繋ぐ構造である。また、プラズマ生成空間10の側から基板処理空間11まで同一の径の孔で繋いでも良い。
【0021】
ここで、貫通孔の形状は、uL/D>1の条件を満たしていると望ましい。前式において、uは21a部でのガス流速、すなわち、プラズマ生成空間に導入され、活性種を生成して成膜に寄与するガスの流速を表すものである。
【0022】
Lは実質的な貫通孔の長さを表すものである。具体的には、Lは貫通孔の直径が最小の部分の長さである。例えば、図2の例でいえば、21aの長さである。
【0023】
Dは、相互ガス拡散係数、すなわち2種のガス(第三の空間に導入される第二のガス、例えば材料ガスであるモノシランガスと、プラズマ生成空間に導入され活性種を生成して成膜に寄与する第一のガス、例えばアンモニアガス)の相互ガス拡散係数を表すものである。
【0024】
ここで、D/Lは第二の空間に導入された材料ガスが第一の空間に拡散して行く速度の目安を表す。よって、uL/D>1の条件が満たされていれば、プラズマ生成空間(第一の空間)から(第二の空間)へ流速が第二の空間に導入された材料ガスの第一の空間への拡散速度を上回ることになり、プラズマ生成空間である第一の空間への材料ガスの拡散は抑制される。
【0025】
このように貫通孔の小さい直径部での流速、特徴的な長さ及び相互拡散係数の物理量を調整することにより、基板処理空間11からプラズマ生成空間10への材料ガスの逆拡散するのを防止できる。
【0026】
上述したように、上記uL/D>1なる条件は材料ガスの基板処理空間11からプラズマ生成空間10への逆拡散を防止するための条件であるが、発明者は更に研究した結果、プラズマ生成空間10から基板処理空間11への荷電粒子の漏れも極端に防止できることを見出した。
【0027】
上述の現象を具体的に説明すると、1010/cmのプラズマ密度が発生するプロセス条件では、典型的には基板への入射イオン電流密度は10−3A/cm台である。しかし、uL/D>1の条件が満たされていると同一のプロセス条件で測定された基板への入射イオン電流密度は10−7A/cm台であった。即ち 基板へのイオン入射電流密度を概ね10分の1に低減することが分った。
【0028】
図3は、本発明に係わる隔壁20に形成される貫通孔21及び拡散孔22の穿孔の仕方を説明するための図である。ここで、今まで説明した実質同一の構成要素には同一の符号を付して、説明を省略する。ここで、点線で表してある線は、本隔壁20に対向して配置される基板14の外周を表す線14aである。この線は、基板を隔壁に垂直に投影することによって得ることが出来る。
【0029】
貫通孔21及び拡散孔22は、孔形成領域25の内側に形成される。例えば、円板状の基板を処理する場合には孔形成領域25は円状に形成すると良い。そして、例えば貫通孔21及び拡散孔22はその孔形成領域と同心の異なる径を持つ円周上に形成することで実現できる。
【0030】
図3(a)のおいても図3(b)においても、拡散孔22は孔形成領域25内全域に亘って単位面積あたり同一の開口率で配置されている。このような配置は、同一の孔径を持つ拡散孔22を、同一のピッチで円周上に配置し、且つ隣接する円の径方向のピッチを同一にして配置することにより実現できる。
【0031】
一方、貫通孔21については周辺部における配置を増やし、中心部に比べ周辺部25aでの単位面積あたりの開口率を大きくしている。
【0032】
図3(a)は、貫通孔21を配する円周上でのピッチを外側の円周では狭くし、一方拡散孔22を配置する円は同一のピッチで配置することにより実現している。
【0033】
一方、図3(b)は、貫通孔21を2個ずつまとめて配置している。但し、該2個ずつまとめて配置した間の円周上のピッチは中心部での配置のピッチと同一であり、また貫通孔21を配する円の径方向のピッチも中心部と同一にしてある。このとき拡散孔22は図3(a)と同様に円周上で同一のピッチとし、且つ径方向の配置も同一のピッチとしている。
【0034】
貫通孔の単位面積当たりの開口率を変える方法は、なんら上述の例示に限定させるものではなく、例えば、貫通孔の径を変えたり、あるいは貫通孔を配置する円の径方向のピッチを変えたりすることによっても実現できる。貫通孔の単位面性当たりの開口率を変えるという技術思想の下、様々な変更或いは変形が可能であることは言うまでも無い。
【0035】
図4は、比較のための貫通孔21及び拡散孔22を孔形成領域25の全域に亘り単位面積あたり均一の配置させた場合を表している。
【0036】
貫通孔21は、同一の孔径で、各円周上に同一のピッチで且つ各円も径方向に同一のピッチとなっている。拡散孔22も貫通孔21と同様な相互間関係で配置されている。
【0037】
図4と図3(a)を比較すると、図4と図3(a)で貫通孔21が配置される円間のピッチは同一であるが、図3(a)では同一の円周上での貫通孔21のピッチが周辺部25aでは小さくなっている。従って、外周部25での貫通孔21の単位面積当たりの開口率は図3(a)においては図4におけるより大きくなっている。
【0038】
図4と図3(b)を比較すると、図4と図3(b)で貫通孔21の2個ずつ間のピッチは図4と同一である。一方、貫通孔が配置される円間のピッチは同一となっている。従って、図3(b)においては周辺部25aでは図4に比較して2倍の貫通孔21が配置されることになるので、周辺部25aでは貫通孔21の開口率は図3(b)においては図4における開口率の2倍になる。
【0039】
図4に示すような隔壁を採用したuL/D>1なる条件を満たす基板処理装置を使用することにより、基板への高エネルギー粒子の入射を低減することは可能であるが、該基板処理装置を使用してCVD成膜を行った場合膜の分布が基板14の周辺部で悪いという問題があった。
【0040】
しかし、本発明のように構成を有する隔壁14を使用することによりCVD成膜における膜分布を改善することが出来た。
【0041】
図5と図6は、図4に示す隔壁と本発明の隔壁を使用したCVD装置を用いて、シリコン窒化物を成膜した場合の成膜速度及びその際に成膜された膜の屈折率の分布を示している。300mmのSi基板上に成膜を行った。
【0042】
成膜条件は、第一の空間にアンモニアガスを1500SCCM(1SCCM=1.69×10−3Pa・m/s)、第三の空間にアルゴンとシランの混合ガスを290SCCM導入した。そして、基板ホルダ30はヒータ31により180℃に維持した。
【0043】
この際の貫通孔は、図2の形状をしていた。21aの部分の直径が1.2mm、該直径の部分の長さが2mm、21cの直径が2mm、該直径部分の長さが3mm、個数が1728個であった。そして、上記条件下、基板処理空間11の圧力が55Paのとき、uL/Dは約1.2と見積もられた。これは、第二の空間から第一の空間への材料ガスの逆拡散が抑制され且つ基板へのイオン入射が抑制される条件である。
【0044】
上記見積もったuL/Dの値は、見積もる際に使用した55Paは以下のプロセスで使用する20Pa又は30Paのいずれよりも大きい為、以下で説明するプロセスにおいても満たされていると考えられる。
【0045】
図5は本発明のおいては、第二の空間である基板処理部の圧力が20Paでは、成膜速度が26.2nm/min.、成膜分布を示す1σの値が0.13%;30Paでは成膜速度が21.0nm/min.1σが1.81%を得ることが出来たことを示している。
【0046】
ここで、1σとは注目している量が正規分布していると仮定した場合、その約68%が入る平均値に対する幅である。
【0047】
比較例として、図4に示す隔壁を使用して同一の成膜を行った場合は、20Paでは成膜速度が25.8nm/min、1σが7.15%;30Paでは21.2nm/min.、1σが5.52%であった。
【0048】
一方、上記の成膜された膜の屈折率も測定した。その結果を図6に示す。
【0049】
図6は本発明のおいては、第二の空間である基板処理部の圧力が20Paでは、屈折率は1.88、該分布の1σは0.18%;30Paでは屈折率は1.89、1σが0.12%を得られてことを示している。
【0050】
比較例として、図4に示す隔壁を使用して同一の成膜を行った場合の結果は、20Paのでは屈折率が1.88、1σが0.17%;30Paでは屈折率が1.89.1σが0.18%であった。
【0051】
即ち、屈折率が代表すると考えられる膜質に関しては、図4に示す隔壁で得られるものと同等のものが径方向に亘って得られ一方、成膜速度の均一性に関しては顕著に改善されたことが分る。
【0052】
以下に、本発明の基板処理装置を使用して磁気抵抗効果素子を製造するプロセスについて説明する。
【0053】
本発明の発明の対象とする磁気抵抗効果素子には、磁気ランダムアクセスメモリ(Magnetic Random Access Memory、以降MRAMと略記する)、トンネル型磁気抵抗効果素子(Tunneling Magnetoresistive 素子、以降TMR素子と略記する)等の磁気記録媒体、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive、以降HDDと略記する)の磁気ヘッド等が含まれる。
【0054】
図7は、上記電子デバイスを製造する装置700である。
【0055】
700は、中心部に不図示の搬送ロボットを有する搬送室709を中心に、その周囲にプロセスユニット(室)が配置されている、いわゆるクラスタ型の基板処理装置である。このような構成になっているので、基板を大気に曝さず処理が行える為、処理中に汚染あるいは意図しない酸化あるいは窒化を抑制することができる。
【0056】
701はロードロックチャンバ、702は第1の反応性イオンエッチング室(ハードマスク層エッチング及びフォトレジストマスクアッシング用)、703は第2の反応性イオンエッチング室(磁性層エッチング用)、704ラジカル処理室(還元処理室)、705は本発明の成膜処理室、711から715は基板が搬送される方向を示す矢印である。
【0057】
図8は、磁気抵抗効果素子の構成の一例である。
【0058】
801はシリコンやガラス等の基板、802はCuNなどからなるシード電極、803はTaなどからなる下地層、804はPtMn又はIrMnからなる反強磁性層、805は磁化固定層、806はAlOx又はMgOからなる絶縁層、807はCoFeBからなるフリー層、808はTaなどからなるハードマスク層である。このハードマスク層808はフリー層807の保護層及び上部電極としての役割も有している。本発明の装置はこの磁気抵抗効果素子に対して保護膜814を形成する。尚、HDDの磁気ヘッドに於いては、シード層802としては主にNiFeが用いられる。
【0059】
また、805の磁化固定層は例えば基板側からピン層であるCoFe、Ru,ピン層であるCoFeBの3層から構成することもできる。
【0060】
下地層803からハードマスク層808まではスパッタ法で成膜する。このような薄い多層膜は、複数のターゲットと搭載でき、且つそれらを回転することできる装置のよれば、異種の膜を同一チャンバーで作製できる。さらに複数のチャンバーを真空一貫で搬送し処理することができる装置、例えば(キヤノンアネルバ(株)製;C−7100、C−7100EX)によれば、更に多くの膜を大気に曝すことなく真空一貫の状態で作製できる。
【0061】
このような装置で基板・シード層810上に下地層803、804から807の多層磁性層811及びハードマスク層808を作製して、該多層磁性層を微細加工をする為に、ハードマスク808上にレジスト層を塗布する。
【0062】
次いで、上記レジストに露光機及びレジスト現像装置を用いて所望のレジストパターンを形成する。ここまでは、他の装置で実施する。
【0063】
上記のパターニングされたレジストを有する基板を、装置700のロードロックチャンバ701に搬入する。そして、搬送室709を介して、第1の反応性イオンエッチング室702に搬送する。
【0064】

第1の反応エッチング室702で、該レジストをマスクとして反応性エッチングを行い、ハードマスク層にパターン形状を転写させた後、酸素プラズマなどを用いて該レジストの残膜を除去する。その後、基板を搬送室709を介して、第二の反応イオンエッチング室703に移送する。そして、パターン形状が転写されたハードマスク層をマスクとして多層磁性層をエッチングし所望の形状に加工する。
【0065】
このときハードマスク及び下地層には磁性膜材料に対しエッチング速度の遅い材料(たとえばTa)を選択することで多層磁性膜のみを選択的にエッチングすることができ、ハードマスクのパターン形状を多層磁性膜に転写することができる。
【0066】
ここで、多層磁性膜のエッチングに用いられる反応性ガスに酸素が含まれる場合、ハードマスク層803、多層磁性膜811の側面及び下地層803上の表面に酸化によるダメージ層が形成されることがある。
【0067】
ハードマスク803は前述したように上部電極としても使用される。よって、表面が酸化されると抵抗が増大するという問題を生じる。
【0068】
一方、多層磁性膜811の側面が酸化すると、精細な素子設計に於いては設計寸法どおりの特性が得られず、素子の特性劣化の要因となる。そこで、これらの酸化層を取り除き設計値通りの磁気特性を実現するには、これらの酸化膜層を還元してやる必要がある。
【0069】
そこで、該基板は搬送室709を通って、ラジカル処理室704に搬送し、還元処理を行う。
【0070】
ラジカル処理室704での処理条件は、例えばアンモニア500SCCM、処理圧力15Pa、RF電力700Wである。この処理により、ハードマスク層808、多層磁性膜811の側面及び下地層803上の表面酸化層からなるダメージ層は、還元性ラジカルへの暴露によって還元される。
【0071】
また、前述したが隔壁は本発明の係わる基板処理装置とプラズマの通過を抑制するということに関しては同様の構造をしていので、基板に入射するイオン電流密度を4×10−7A/cm以下とすることができる。その結果、プラズマ入射に伴うプラズマダメージの発生が十分小さい状態で、還元処理を行うことができる。
【0072】
次いで、該基板を搬送室709を介して、本願発明に係わる成膜処理室705に搬送する。そして、微細加工及び該還元処理を行った多層磁性膜素子に対して保護膜を形成する。
【0073】
成膜条件に関しては、前述したのでここで繰り返して説明することはしない。
【0074】
本願発明の効果により、プラズマダメージの少ない状態で且つ良好な分布の保護膜の成膜が可能となる。
【0075】
図9を使用して、磁気抵抗素子の作製フローについて順を追って説明する。
【0076】
ここで、図8と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0077】
S901で、基板・シード層810上に、下地層803、多層磁性膜811及びハードマスク層808を形成する。図9(b)(1)は、基板・シード層810上に、下地層803、多層磁性膜811及びハードマスク層808が形成された状態を表している。
【0078】
S902では、ハードマスク808上にレジストを塗布し、露光及び現像処理を行い、レジスト812を形成する。図9(b)(2)は、レジスト812がパターニングされた状態を表している。図7の装置を使用する場合、ここまでは他の装置で実施される。
【0079】
以上の準備がされた基板801を図7記載の装置700のロードロックチャンバ701に収納する。該基板は搬送室709を介してハードマスク層エッチング用の第1の反応性イオンエッチング室702に搬送される。
【0080】
S903では、前記パターニングされたレジストマスクを使用して、ハードマスク808をエッチングして、レジストマスクパターンをハードマスク層に転写させる。次いで、酸素プラズマなどを用いレジスト812の残膜を除去する。図9(b)(3)は、ハードマスク808にレジストパターンが転写され、更にレジストが除去された状態を表している。
【0081】
次いで、S904では、該ハードマスク808を使用して、多層磁性膜811を磁性層エッチング用の第2の反応性イオンエッチング室703でエッチングする。図9(b)(4)は、多層磁性膜811がエッチングされた状態を表している。この状態では、ハードマスク808、多層磁性層811の側面及び下地層803上に表面酸化膜層813が出来ていることを表している。
【0082】
次いで、前記基板801を搬送室709を介してラジカル処理室704に搬送する。ラジカル処理室ではS905の処理を行う。ハードマスク808、多層磁性膜811の側面及び下地層803上に生じている表面酸化膜層813をラジカルで還元処理する。図9(b)(5)はハードマスク808、多層磁性膜811の側面及び下地層803上に生じている表面酸化膜層813が除去された状態を表している。
【0083】
次いで、S906で本願発明の成膜処理室で保護膜814を成膜する。図9(b)(6)は、保護膜814が成膜された状態を表している。
【符号の説明】
【0084】
100 本発明に係わる基板処理装置
1 真空容器
1a 上容器
1b 下容器
2 電極
2a 電極に穿孔された孔
3 電力導入棒
4 、7,8 絶縁物
5 第一のガス導入手段
6 クリーニングガス導入手段
9 電気的導体
10 プラズマ生成空間
10a プラズマ
11 基板処理空間
12 排気ポート
13 排気手段
14 基板
14a 基板14の外周を表す線
15 接地電位
20 隔壁
21 貫通孔
22 拡散孔
23 内部空間
24 材料ガスを導入する第二のガス導入手段
25 孔形成領域
25a 周辺部
30 基板ホルダ
31 ヒータ
41 活性種の流れの方向
42 材料ガスの流れの方向
700 電子デバイスを製造する装置
701 ロードロックチャンバ
702 第1の反応性イオンエッチング室
703 第2の反応性イオンエッチング室
704 ラジカル処理室
705 本発明の成膜処理室
709 搬送室
711〜715 基板が搬送される方向を示す矢印
801 基板
802 シード層
803 下地層
804 反強磁性層
805 磁化固定層
806 絶縁層
807 フリー層
808 ハードマスク層
810 基板・シード層
811 多層磁性層
812 レジスト
813 表面酸化層
814 保護層
S901 下地層・多層磁性膜・ハードマスク層成膜工程
S902 レジストマスクパターン形成工程
S903 ハードマスクパターン形成工程
S904 多層磁性膜パターン形成工程
S905 表面酸化層還元工程
S906 保護膜形成工程
907 還元性ラジカル





【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマが生成される第一の空間、
基板を載置する為の基板ホルダを有する第二の空間、
第一の空間と第二の空間を分離する、内部に第三の空間を有する隔壁、
第一の空間と第二の空間を繋ぐ前記隔壁に形成された複数の第一の孔、
第二の空間と第三の空間を結ぶ前記隔壁の第二の空間に接する面に形成された複数の第二の孔、
第一の空間に第一のガスを導入する第一のガス導入手段及び
第三の空間に第二のガスを導入する第二のガス導入手段を有し、
第一の孔に係わる単位面積当たりの開口率は、中心部より周辺部で大きいことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記第二の空間には前記隔壁に対向して基板保持手段が位置し、
前記第一の孔及び第二の孔は、前記基板が対面する前記隔壁の範囲の外側まであることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記基板を前記隔壁に垂直に投影した場合に、前記基板の周辺部が前記外周部に含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記基板の周辺部に対応する部位における前記第一の孔の開口率は、前記基板の中心部の対応する部位に対応する前記第一の孔の開口率の一倍より大きく2倍以下であることを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第一の孔及び第二の孔は半径の異なる周上に存し、且つ第一に孔及び第二の孔の配列が径方向に交互に繰り返されていることを特徴とする請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第一の孔の形状が、
前記第一の孔内での第一の空間から第二の空間に向かうガス速度をu、実質的な孔の長さをL,第一の空間に導入されるガスと第三の空間に導入されるガスの相互拡散係数をDとすると、
uL/D>1なる関係を満たしていることを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記基板処理装置は、CVD装置であることを特徴とする請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記第一の空間に導入されるガスがアンモニアを含むガスであり、前記第三の空間に導入されるガスがシランを含むガスであることを特徴とする請求項7に記載のCVD装置。
【請求項9】
請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載の基板処理装置又は請求項7若しくは8に記載のCVD装置を使用する工程を有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記電子デバイスは、磁気記録媒体であることを特徴とする請求項9に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記電子デバイスは、磁気ヘッドであることを特徴とする請求項9に記載の電子デバイスの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−255081(P2010−255081A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109840(P2009−109840)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】