説明

樹脂組成物、樹脂ワニス、複合材料及びその製造方法、プリプレグ並びに樹脂フィルム

【課題】アンカー効果に頼らずに金属層(金属膜)と樹脂基材等との接着性に優れ、表面が平滑な複合材料を得ることができる樹脂組成物を提供する。また、当該樹脂組成物を用いた樹脂ワニス、複合材料及びその製造方法、プリプレグ、樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】少なくとも一部の表面を金属化する成形体に用いられ、加熱成形工程を経て成形される成形体用の樹脂組成物であって、(A)昇華性金属化合物と、(B)有機化合物とを含有し、(B)有機化合物が、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種である樹脂組成物である。また、当該樹脂組成物を用いた樹脂ワニス、複合材料及びその製造方法、プリプレグ、樹脂フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板や電子デバイス実装パッケージ等の電子用途;自動車外装用部品等の装飾用途;等に好適に使用される樹脂組成物及びこれを用いた樹脂ワニス、複合材料及びその製造方法、プリプレグ並びに樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化・軽量化・高速化の要求が高まり、プリント配線板の高密度化が進んでいる。そのため、配線幅や配線間隔をさらに小さくすることが求められている。配線幅を小さく保つためには、配線となる金属層(金属膜)と樹脂基材とが十分な接着性を備えている必要がある。従来のプリント配線板では、主に金属層と樹脂との接着性は、粗化した金属箔の凹凸や、樹脂表面をプラズマ処理等の物理粗化や過マンガン酸エッチング等の化学粗化によって得られる表面の凹凸(表面の算術平均粗さRaがおよそ0.2μm以上)によるアンカー効果にその大半を頼っている。また、自動車外装用部品等に用いられる表面を金属化した樹脂部品においても、樹脂表面をクロム酸溶液エッチング等で化学粗化して、凹凸によるアンカー効果を得ている。
【0003】
なお、例えば粗化されていない平滑な銅箔を用いた場合や、樹脂表面を粗化しないで配線を形成した場合には、金属層と樹脂基材との接着性が確保できないため、配線やパターンの剥離が問題となる。
【0004】
一方で、上記のようなアンカー効果に頼らずに金属層と樹脂との接着性を向上できるプリント配線板の製造方法としては、例えば接着性を確保するため、昇華性金属錯体を利用した浸透・付着による表層の改質方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−281821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、凹凸によりアンカー効果を得る場合、接着性を確保するために形成した凹凸の凹部は、金属層に配線やパターンを形成するために金属層をエッチングにより取り除く際にエッチング遅れの原因となり、配線やパターンのサイドエッチング(えぐれ)による電気抵抗の上昇や、配線間のめっき降り振れ等によるショート不良を生じる恐れがある。
また、昇華性金属錯体を利用した浸透・付着による表層の改質方法では、樹脂材料に浸透させる材料の有機化合物をあらかじめ昇華させておかなければならない等、設備、労力及び時間を要していた。
【0007】
一方、近年、大型サーバーやアンテナ等高周波用途のプリント配線板用途では、高周波信号を扱うことによる信号の減衰(伝送損失)が課題となっている。この伝送損失の低減には、誘電体(樹脂層)の損失低減のみでなく、導体損失の低減についても、その必要性を無視できない。この導体損失の低減を図る方法としては、表面凹凸が小さい導体層の適用が有効な手段となっている。
【0008】
そこで、本発明はかかる状況に鑑みなされたもので、アンカー効果に頼らずに金属層(金属膜)と樹脂基材等との接着性に優れ、表面が平滑な複合材料を得ることができる樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、当該樹脂組成物を用いた樹脂ワニス、複合材料及びその製造方法、プリプレグ並びに樹脂フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決できるよう鋭意研究を重ねた結果、昇華性金属化合物と有機化合物とを混合し樹脂組成物とすることで、アンカー効果に頼らずに金属層(金属膜)と樹脂層(有機層)等との接着性に優れ、かつ表面が平滑な複合材料が簡便に得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は下記の通りである。
[1] 少なくとも一部の表面を金属化する成形体に用いられ、加熱成形工程を経て成形される成形体用の樹脂組成物であって、(A)昇華性金属化合物と、(B)有機化合物とを含有し、(B)有機化合物が、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種である樹脂組成物。
[2] 金属張フィルム又は金属張積層板から選択される成形体に用いられ、加熱成形工程を経て成形される成形体用の樹脂組成物であって、(A)昇華性金属化合物と、(B)有機化合物とを含有し、(B)有機化合物が、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種である樹脂組成物。
【0011】
[3] 前記加熱成形工程において(B)有機化合物の内部の(A)昇華性金属化合物が拡散して移動するものである[1]又は[2]記載の樹脂組成物。
[4] 前記加熱成形工程において(A)昇華性金属化合物の全部又は一部が、成形されて得られる成形物の表面に移動する[3]に記載の樹脂組成物。
[5] 前記加熱成形工程の少なくとも一部において、系全体を減圧状態とし、温度100〜400℃、真空度1〜10000Paの条件下で(A)昇華性金属化合物が移動する[3]又は[4]に記載の樹脂組成物。
[6] 前記昇華性金属化合物における金属がルテニウム、コバルト、銅、白金、鉄、ニッケル、クロミウム及びパラジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0012】
[7] 前記有機化合物が、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、マレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、アクリレート化合物、トリアリルイソシアヌレート及びポリブタジエン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂である[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] 前記有機化合物が前記熱可塑性樹脂であり、当該熱可塑性樹脂が、フッ素樹脂、ポリオレフィン類及びその誘導体、ポリエステル類及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルフォン、(メタ)アクリル酸エステル共重合体類、ポリスチレン、アクリロニトリルスチレン共重合体類、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体類、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール類、ポリビニルアルコール類、ポリフェニレンエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体の完全又は部分水素添加物類、ポリブタジエンの完全又は部分水素添加物類、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイト、ポリアミドイミド、ポリアミド、熱可塑性ポリイミド及び芳香族ポリエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂である[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9] (A)昇華性金属化合物の配合割合が、(A)昇華性金属化合物と(B)有機化合物とを含む樹脂組成物全体中の0.1〜20質量%である[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0013】
[10] 上記[1]〜[9]のいずれかに記載の樹脂組成物を溶媒に溶解又は分散させて得られる樹脂ワニス。
[11] 上記[1]〜[9]のいずれかに記載の樹脂組成物をシート状に成形してシート成形体とするシート成形工程と、前記シート成形体を一対の金属板間に挟持させ、該シート成形体を加圧後あるいは加圧と同時に、該シート成形体を加熱する加熱加圧工程と、を含む複合材料の製造方法。
[12] 前記加熱加圧工程の少なくとも一部において、系全体を減圧状態とする[11]に記載の複合材料の製造方法。
[13] 前記加熱加圧工程における加熱温度が100℃以上400℃以下、圧力が0.1MPa以上50MPa以下である[11]又は[12]に記載の複合材料の製造方法。
[14] 前記減圧状態における真空度が10Pa以上1000Pa以下である[12]又は[13]に記載の複合材料の製造方法。
[15] 前記加熱加圧工程後、さらに前記シート成形体の表面に拡散した昇華性金属化合物を還元させる還元工程を含む[11]〜[14]のいずれかに記載の複合材料の製造方法。
[16] 前記加熱加圧工程後、さらに前記シート成形体の表面に拡散した昇華性金属化合物を核として、金属または昇華性金属化合物により構成される金属膜部分の厚膜化を行う厚膜化工程を含む[11]〜[15]のいずれかに記載の複合材料の製造方法。
[17] 前記昇華性金属化合物が、銅を含有する[11]〜[16]のいずれかに記載の複合材料の製造方法。
【0014】
[18] 上記[11]〜[17]のいずれかに記載の製造方法により製造される複合材料。
[19] 上記[1]〜[9]のいずれかに記載の樹脂組成物を加熱成形して得られ、昇華性金属化合物が表面に局在している複合材料。
[20] 前記複合材料を構成する前記樹脂組成物の硬化物の貯蔵弾性率が、前記昇華性金属化合物の昇華温度において、3×106Pa以上3×107Pa以下である請求項18又は19に記載の複合材料。
[21] 前記有機化合物が、フェニル骨格またはビフェニル骨格を有するフェノールアラルキル樹脂を含む[20]に記載の複合材料。
[22] 上記[10]に記載の樹脂ワニスを基材に含浸後、60〜200℃で乾燥又は半硬化させて得られるプリプレグ。
[23] 上記[10]に記載の樹脂ワニスを60〜200℃で乾燥又は半硬化させて得られる樹脂フィルム。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アンカー効果に頼らずに金属層(金属膜)と樹脂基材等との接着性に優れ、表面が平滑な複合材料を得ることができる樹脂組成物を提供することができる。また、当該樹脂組成物を用いた樹脂ワニス、複合材料及びその製造方法、プリプレグ並びに樹脂フィルムを提供することができる
【発明を実施するための形態】
【0016】
<樹脂組成物及び樹脂ワニス>
以下、本発明の樹脂組成物の各成分及びその好適な製造方法及び本発明の樹脂ワニスについて説明する。
【0017】
本発明の樹脂組成物は、加熱成形工程を経て成形される成形体用の樹脂組成物である。前記成形体としては、少なくとも一部の表面を金属化する成形体(例えば、金属メッキが施される自動車外装部品等が挙げられる)か、金属張フィルム又は金属張積層板から選択される成形体である。
本発明の樹脂組成物は、(A)昇華性金属化合物(以下、「(A)成分」ということがある)と、(B)有機化合物(以下、「(B)成分」ということがある)とを含有する。当該樹脂組成物において、(B)成分は熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、(B)成分の内部の(A)成分は、加熱成形工程において拡散して移動することができる。以下、上記各成分について説明する。
【0018】
(A)成分は既述の通り、樹脂組成物の加熱成形工程において(A)成分が(B)成分内部から拡散で移動することのできる昇華性金属化合物である。昇華性金属化合物としては特に限定されないが、ルテニウム、コバルト、銅、白金、鉄、ニッケル、クロミウム、パラジウム等を含有するものが好ましく、銅を含有するものがより好ましい。
加熱成形工程において樹脂組成物が成形される際に、当該(A)成分はその全部又は一部(好ましくは(A)成分の50質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上)が、成形されて得られる成形物の表面に移動することができる。その結果、当該成形物の表面には(A)成分が高濃度の存在する昇華性金属化合物高濃度領域が形成される。
【0019】
ここで、「昇華性」とは、元素や化合物が液体を経ずに固体から気体、または気体から固体へと相転移する特性を有することを意味するが、本実施形態に用いられる昇華性金属化合物としては、減圧下(1Pa以上10000Pa以下程度、(好ましくは10Pa以上1000Pa以下程度))、加熱温度100℃以上400℃以下程度(好ましくは150℃以上300℃以下程度)で昇華するものが好ましい。さらに、本実施形態においては空気中において安定であり、昇華温度において分解反応が進行しないものが好ましい。
【0020】
昇華性金属化合物としては、有機配位子が金属原子の周囲に配位した金属錯体構造をとるものが好ましい。配位子の種類について特に限定されないが、具体的な昇華性金属化合物としては、例えばアセチルアセトナト錯体等のβ−ジケトン錯体類が挙げられ、より具体的には、Fe(acac)3、Ru(acac)3、Co(acac)3、Cr(acac)3、Pd(acac)2、Ni(acac)2、Pt(acac)2、Cu(acac)2等で示される錯体は、適切な昇華性を有しているので好適に用いられる。なお、上記においてacacはアセチルアセトナト配位子を示している。
【0021】
これらのアセチルアセトナト錯体は、末端メチル基の代わりにトリフルオロプロピル基が導入されていてもよい。また上述した錯体の中でも、Cu(acac)2は昇華性に優れ、配線のエッチング加工への適応性が高いことからさらに好ましい。
【0022】
本発明の樹脂組成物において好適に用いられる(B)成分の有機化合物としては、通常、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の合成高分子化合物並びに天然高分子化合物が用いられ、ガラス転移温度が200℃以下の合成熱可塑性樹脂または硬化温度200℃以下の熱硬化性樹脂が好ましく、例えばナイロン6及びナイロン66のようなポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートのようなアクリル樹脂、ポリプロピレンのような不飽和炭化水素重合体、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、マレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン(BT)樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ポリブタジエン樹脂、または低誘電率の樹脂、たとえばポリフェニレンオキサイド樹脂及びフッ素樹脂等の合成高分子化合物が挙げられる。酢酸セルロースのような天然高分子化合物から誘導されたものも用いることができる。これらのうち、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂やエポキシ樹脂が成型性の点で好ましいものとして挙げられるが、最終的な複合材料としたときの耐熱性、耐湿性、機械的強度、金属層(金属膜)と樹脂(有機層)との接着性等の特性及びそれらとコスト等のバランスの観点から、エポキシ樹脂を用いることがより好ましい。
【0023】
熱可塑性樹脂の好ましい具体例としては、ポリ4フッ化エチレン等のフッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン・プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−ペンテン)等のポリオレフィン類及びその誘導体、ポリエステル類及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルフォン、(メタ)アクリル酸エステル共重合体類、ポリスチレン、アクリロニトリルスチレン共重合体類、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体類、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール類、ポリビニルアルコール類、ポリフェニレンエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体の完全又は部分水素添加物類、ポリブタジエンの完全又は部分水素添加物類、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリアミド、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等が挙げられる。
また、上記熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂は単独でも、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
ここで、エポキシ樹脂を用いる場合、1分子内に2つ以上のエポキシ基を有するものであればどのようなものでもよい。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂、2官能ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂、ビフェノールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびこれらのアルキル置換体、ハロゲン化物等が挙げられ、これらは併用されてもよい。
また、硬化後の樹脂組成物のTgや耐熱性を向上するために、分子内に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を用いることが好ましい。このような樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等がある。
【0025】
さらに、積層板とした後の、難燃性や誘電特性の点から、本発明に係る有機化合物は、フェニル骨格またはビフェニル骨格を有するフェノールアラルキル樹脂を含むことが好ましい。
【0026】
本実施形態における樹脂組成物には、樹脂の硬化剤が含まれていてもよい。樹脂がエポキシ樹脂である場合には、例えば、多官能フェノール類、アミン類、イミダゾール化合物、酸無水物、有機リン化合物およびこれらのハロゲン化物等があるが、添加した(A)成分によって硬化反応が阻害されないものが好ましい。
【0027】
多官能フェノール類の例としては、単環二官能フェノールであるヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、多環二官能フェノールであるビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフタレンジオール類、ビフェノール類、及びこれらのハロゲン化物、アルキル基置換体等が挙げられる。
また、これらのフェノール類とアルデヒド類との重縮合物であるフェノールノボラック樹脂、レゾール樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂等が挙げられる。
【0028】
市販されている好ましいエポキシ樹脂の硬化剤としてのフェノール樹脂は、例えば、フェノライトLF2882,フェノライトLF2822,フェノライトTD−2090,フェノライトTD−2149,フェノライトVH4150,フェノライトVH4170(以上、DIC大日本インキ化学工業株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0029】
アミン類の例としては、脂肪族あるいは芳香族の第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウム塩及び脂肪族環状アミン類、グアニジン類、尿素誘導体等が挙げられる。
これらの化合物の一例としては、N,N−ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.4.0]−5−ノネン、ヘキサメチレンテトラミン、ピリジン、ピコリン、ピペリジン、ピロリジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジフェニルアミン、N−メチルアニリン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリフェニルアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムアイオダイド、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジシアンジアミド、トリルビグアニド、グアニル尿素、ジメチル尿素等が挙げられる。
【0030】
イミダゾール化合物の例としては、イミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン、ベンズイミダゾール、1−シアノエチルイミダゾール等が挙げられる。
【0031】
酸無水物の例としては、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0032】
有機リン化合物としては、有機基を有するリン化合物であれば特に限定されずに使用でき、例えば、ヘキサメチルリン酸トリアミド、リン酸トリ(ジクロロプロピル)、リン酸トリ(クロロプロピル)、亜リン酸トリフェニル、リン酸トリメチル、フェニルフォスフォン酸、トリフェニルフォスフィン、トリ−n−ブチルフォスフィン、ジフェニルフォスフィン等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独、或いは、組み合わせて用いることもできる。
【0033】
本実施形態における樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤を配合してもよい。代表的な硬化促進剤として、第3級アミン、イミダゾール類、有機リン系化合物、第4級アンモニウム塩等があるが、これに限定されるものではない。
【0034】
イミダゾール類としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン等が挙げられる。
【0035】
これらイミダゾール系化合物はマスク化剤によりマスクされていてもよい。マスク化剤としては、アクリロニトリル、フェニレンジイソシアネート、トルイジンイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、メチレンビスフェニルイソシアネート、メラミンアクリレート等が挙げられる。
【0036】
有機リン系化合物としては、エチルホスフィン、プロピルホスフィン、ブチルホスフィン、フェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン/トリフェニルボラン錯体、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等が挙げられる。
【0037】
第3級アミンとしては、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジアミノメチル)フェノール等が挙げられる。
【0038】
また、本発明の樹脂組成物においては、各種アクリレート化合物、トリアリルイソシアヌレート等の重合性化合物や、さらにそれらとともに過酸化物やアゾ化合物などの各種熱重合開始剤を併用することもできる。
【0039】
本発明の樹脂組成物において用いられる(A)成分、(B)成分の配合割合は特に限定されないが、(A)成分の配合割合が、後述する加熱加圧工程において十分に(A)成分が表面に拡散し、かつ複合材料の絶縁性を低下させないために、(A)成分と(B)成分を含む樹脂組成物全体中の0.1〜20質量%の範囲が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。
【0040】
また、本発明の樹脂組成物においては、必要に応じて難燃剤、無機充填剤、及び各種添加剤を併用することができる。
【0041】
上記難燃剤としては、特に限定されないが、臭素系、リン系、金属水酸化物等の難燃剤が好適に用いられる。より具体的には、臭素系難燃剤としては、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化エポキシ樹脂、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン及び2,4,6−トリス(トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン等の臭素化添加型難燃剤、トリブロモフェニルマレイミド、トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、テトラブロモビスフェノールA型ジメタクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート及び臭素化スチレン等の不飽和二重結合基含有の臭素化反応型難燃剤等が挙げられる。
【0042】
リン系難燃剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ−2,6−キシレニルホスフェート及びレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)等の芳香族系リン酸エステル、フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル及びフェニルホスホン酸ビス(1−ブテニル)等のホスホン酸エステル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド誘導体等のホスフィン酸エステル、ビス(2−アリルフェノキシ)ホスファゼン、ジクレジルホスファゼン等のホスファゼン化合物、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸アンモニウム、リン含有ビニルベンジル化合物及び赤リン等のリン系難燃剤を例示できる。
金属水酸化物難燃剤としては水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等が例示される。
また、上述の難燃剤は一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
上記難燃剤の配合割合は特に限定されないが、(A)成分と(B)成分を含む樹脂組成物全体中の1〜50質量%の範囲が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、10〜30質量%がさらに好ましい。
【0044】
上記無機充填剤としては、特に限定されないが、具体的には、アルミナ、酸化チタン、マイカ、シリカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素等が用いられる。
これらの無機充填剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、無機充填剤の形状及び粒径についても特に制限はなく、通常、粒径0.01〜50μm、好ましくは0.1〜15μmのものが好適に用いられる。
【0045】
上記無機充填剤の配合割合は特に限定されないが、(A)成分と(B)成分を含む樹脂組成物全体中の1〜70質量%の範囲が好ましく、5〜60質量%がより好ましく、10〜50質量%がさらに好ましい。
【0046】
各種添加剤としては、特に限定されないが、具体例としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、滑剤等が挙げられる。
また、これら各種熱硬化性樹脂、各種熱可塑性樹脂及び各種添加剤は、それぞれ、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。また、上記各種添加剤の配合量は、上記に示した複合材料とした時の各特性に悪影響を及ぼさない範囲であれば特に限定されない。
【0047】
本発明において、(A)成分、(B)成分及び必要に応じて併用される難燃剤、無機充填剤、各種添加剤の混合方法は、特に限定されないが、(B)成分に(A)成分を添加して攪拌する方法がとられる。この場合、樹脂組成物中での(A)成分の分散性を向上させるため、有機化合物の溶解性に優れる有機溶媒を加えて攪拌、溶解、分散させる(以下、この樹脂組成物と有機溶媒の混合物をワニスという場合がある)ことが好ましい。
【0048】
有機溶媒としては、特に限定するものではないが、具体例としては、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、カルビトール、ブチルカルビトール等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類;メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の含窒素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤;酢酸エチル、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;ブチロニトリル等のニトリル系溶剤;ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物系溶剤;等の溶媒が挙げられる。また、これらは一種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
また、樹脂ワニス化する際は、ワニス中の固形分(不揮発分)濃度は特に制限はなく、樹脂組成物の配合組成等により適宜変更できるが、5〜80質量%(好ましくは10〜60質量%)となるように溶媒の使用量を調節することが好ましいが、本発明の樹脂ワニスを用いてプリプレグや樹脂フィルム等の製造する際、溶媒量を調節することにより、塗工作業に最適な(例えば、優れた成膜性、良好な外観及び適正な樹脂付着量となるように)固形分(不揮発分)濃度やワニス粘度に調製することができる。
なお、固形分濃度が上記範囲にあると、キャストしてフィルムとするときの成膜性に優れ、またプリプレグを得る場合にも樹脂分の低下や外観等の低下することを防ぐことができる。
【0050】
<複合材料及びその製造方法>
本発明の複合材料の製造方法には、本発明の樹脂組成物をシート状に成形してシート成形体とするシート成形工程と、当該シート成形体を一対の金属板間に挟持させ、該シート成形体を加圧後あるいは加圧と同時に、加熱する加熱加圧工程と、が含まれる。以下、これらの工程について説明する。
【0051】
(シート成形工程)
本工程では、本発明の樹脂組成物をシート状のシート成形体とする。シート成形体とすることにより、最終的に得られる複合材料をプリント配線板などの用途に好適に用いることができる。
【0052】
成形方法としては、特に制限されないが、フィルムのようなシート状成形体とする場合には、例えば樹脂組成物を前記のように有機溶媒に溶解した状態(ワニス)で得る場合には、この溶液をPETフィルム等のベース上にキャストし、乾燥させて前記有機溶媒を除去後ベースから剥離することが好ましい。
また樹脂組成物が粉体や塊状で得られる場合には、これらを一対のベースフィルム間に挟み、加熱加圧することによりシート成形体としてもよい。なおこの場合には、シート成形工程が後述する加熱加圧工程を兼ねてもよい。
【0053】
また、プリプレグのようなシート成形体とする場合には、例えば溶液状の樹脂組成物を繊維状物質や布など基材に、前記ワニスとして樹脂組成物を含浸させることにより成形することが好ましい。含浸後は80℃以上200℃以下で乾燥させることが好ましい。
【0054】
基材としては、金属箔張り積層板や多層印刷配線板を製造する際に用いられるものであれば特に制限されないが、織布や不織布等の繊維基材を用いることが好ましい。繊維基材としては、例えば、ガラス、アルミナ、ボロン、シリカアルミナガラス、シリカガラス、チラノ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア等の無機繊維やアラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、カーボン、セルロース等の有機繊維など及びこれらの混抄系があり、特にガラス繊維の織布が好ましく用いられる。ガラス織布の種類は特に指定はなく、厚さ20μm〜200μmまでのものを、目的のプリプレグまたは積層板の厚さに合わせて使用することができる。
【0055】
基材にワニスを含浸させる方法としては特に制限されるものではない。例えば、ウェット方式やドライ方式などで、ワニスに基材を含浸させる方法、ワニスを基材に塗布する方法などが挙げられる。
また、上記より成形されたシート成形体の厚みは0.01mm以上1mm以下とすることが好ましく、0.05mm以上0.5mm以下とすることがより好ましい。
【0056】
(加熱加圧工程(加熱成形工程ともいう))
本工程では、既述の本発明のプリプレグ又は樹脂フィルムを金属板間に挟持させ、加圧・加熱することにより、プリプレグ又は樹脂フィルム中の昇華性金属化合物を表面に拡散させる。昇華性金属化合物を表面へ拡散させる工程は、本実施形態の複合材料の形成工程に不可欠な、本工程(加熱加圧工程)中に行われることが、工程の簡略化の点から好ましい。すなわち、プリプレグ又は樹脂フィルムを硬化させて成形体とする工程と成形体表面に昇華性金属化合物を拡散させる工程を同時に行うものである。
【0057】
本工程における昇華性金属化合物の成形体の表面への拡散は、均一な拡散性と拡散速度の点から、気体状態での拡散、すなわち昇華によることが好ましい。このため本実施形態では、前述の工程においてプリプレグ及び樹脂フィルムの内部に昇華性金属化合物を分散させる。
【0058】
すなわち本工程では、昇華性金属化合物を内部に含有するプリプレグ又は樹脂フィルムを加熱加圧することにより、昇華性金属化合物が成形体の外部に逃げようとして表裏面側に移動し、結果としてフィルムの表面へ拡散されることとなる。このとき、本実施形態では成形体を一対の金属板間に挟持させているため、昇華に伴うプリプレグ又は樹脂フィルム表面からの昇華性金属化合物の離散が防止(ブロッキング)され、硬化後の成形体の表面側に昇華性金属化合物が効率的に残存することとなるものと考えられる。
【0059】
シート成形体の加圧は、加圧プレス機等により容易に行うことができる。このときの加圧の圧力は0.1MPa以上50MPa以下とすることが好ましく、0.2MPa以上40MPa以下とすることがより好ましい。
圧力が上記範囲にあると、昇華性金属化合物がフィルム等のシート成形体表面に効率的に拡散され、またシート成形体の破壊を防止することができる。
【0060】
またシート成形体の加熱は、前記加圧プレス機に加熱機能を付加した加熱加圧プレス機等により容易に行うことができる。このときの加熱温度は、昇華性金属化合物の昇華による拡散を促進するために、樹脂組成物のガラス転移温度以上とすることが好ましく、具体的には100℃以上400℃以下とすることが好ましく、150℃以上300℃以下とすることがより好ましい。
加熱温度が上記範囲にあると、昇華性金属化合物がフィルム等のシート成形体表面に効率的に拡散され、また樹脂組成物の劣化や昇華性金属化合物の分解を防止することができる。また、必要な装置やエネルギー等経済性の面からも400℃以下が好ましい。なお、上記加熱は前記加圧と同時に行うこともできる。
【0061】
さらに本実施形態においては、前記シート成形体表面への昇華性金属化合物の拡散をより効率的にするため、前記加熱加圧工程の少なくとも一部において、系全体を減圧状態とすることが好ましい。上記減圧状態は、例えば高温真空プレス装置や、前記加熱加圧プレス機を減圧乾燥機等の内部に設置して、内部を減圧した状態でシート成形体の加熱加圧を行うことにより行うことができる。
【0062】
前記減圧状態における真空度は、大気圧より低ければ特に制限されないが、10Pa以上1000Pa以下とすることが好ましく、50Pa以上800Pa以下とすることがより好ましい。
真空度が上記範囲にあると、昇華性金属化合物がフィルム等のシート成形体表面に効率的に拡散され、またフィルム等における気泡の発生や昇華性金属化合物のフィルム表面からの放出を防止することができる。
なお、前記減圧状態は加熱加圧工程の少なくとも一部において達成されればよいが、前記加圧開始時から終了時までを通して減圧状態とすることが望ましい。
【0063】
本実施形態において、前記加熱加圧工程の時間は、拡散を十分に進行させるために10分間以上5時間以下が好ましく、30分間以上3時間以下がより好ましい。
より具体的には、例えば前記加圧、減圧状態とした後、昇温速度5℃/分で加熱を行い、230℃に達した後2時間保持し、次いで降温速度5℃/分で冷却するというサイクルで行うことが好適である。
【0064】
なお本実施形態において、前記金属板としてはSUS板や亜鉛鋼板等の金属の板を用いることが望ましい。また、シート成形体を一対の金属板で挟む際には、金属板とシート成形体との密着を防ぐため、両者の間にテフロン(登録商標)フィルム等の離型フィルムやアルミ箔、銅箔等を介在させることが好ましい。
【0065】
(還元工程)
本実施形態においては、加熱加圧工程終了後の成形体表面に拡散させた昇華性金属化合物を導体化する必要がある。この導体化の方法は、特に限定されるものではなく、拡散後においてすでに導体化している場合には、特段の工程は不要である。一方、表面に拡散させた昇華性金属化合物が酸化されて不導体となっている場合には、還元工程によって導体化することが好ましい。
【0066】
還元工程は、水素気流中での加熱や、例えば水素化ホウ素ナトリウムやジメチルアミンボラン等の還元剤溶液中に浸漬することによって行うことができるが、処理装置の簡易性の点から、還元剤溶液中に浸漬して還元を行うことがより好ましい。またこの還元剤溶液として、市販の無電解めっき用還元剤溶液もまた好適に使用できる。
【0067】
(厚膜化工程)
本実施形態においては、前記各工程を経て製造された表裏面に金属膜部分を有する成形体(複合材料)は、必要に応じて、例えば電気めっき等を行って、金属膜としての厚さを適宜増すことができる。
具体的には、例えば還元工程により導体化された昇華性金属化合物(又は金属)を核として、無電解めっきを行うことで、金属膜部分の厚膜化を行うことができる。厚膜化後の金属膜の厚さは、1〜40μm以下とすることが好ましい。なお、本実施形態における金属膜部分には、金属が緻密に配置されて金属膜となっているものだけでなく、既述のように、膜となる前の(A)成分が高濃度の存在する昇華性金属化合物高濃度領域も含まれる。ここで、「昇華性金属化合物高濃度領域」とは、還元工程により金属膜となる領域に(A)成分が80質量%以上存在する領域をいう。
【0068】
以上のように、本実施形態の製造方法によって製造された表裏面に金属膜部分を有する成形体(複合材料)では、金属膜部分と樹脂基材との界面が、昇華性金属化合物の拡散により形成された分子レベルの混合状態を有している。そのため、物理粗化や化学粗化によって表面に凹凸を形成することなく、金属膜部分と樹脂層との接着性を確保することができる。
【0069】
前述のように、金属膜部分には膜となる前の昇華性金属化合物高濃度領域が含まれる。この昇華性金属化合物高濃度領域においては、昇華性金属化合物が表面に局在している。この局在した状態の昇華性金属化合物は、特に厚膜化を行った場合の金属膜と樹脂層との接着性向上に有効な役割を果たす。すなわち、金属膜部分と樹脂層との界面に存在する昇華性金属化合物の拡散により形成された分子レベルの混合状態が、そのさらに表面側に形成される金属膜との密着性を良好にするものと考えられる。
【0070】
また本実施形態の複合材料では、既述のように表面に凹凸を形成することなく金属膜と樹脂層との十分な接着性を確保することができる。このため、特にプリント配線板等を用いた回路パターン形成時に、深さ方向のパターン形成の精度が向上し、微細配線を有する配線板の製造が可能となる。
上記微細配線を有効に可能とするためには、基材を含む積層板や硬化フィルムに成形された複合材料の表裏面の算術平均粗さRaを0.005〜0.15μmとすることが好ましく、0.01〜0.1μmとすることがより好ましい。なお、算術平均粗さRaの測定方法については後述する。
【0071】
さらに、本実施形態の複合材料では、配線板等への使用上、一定電圧印加後の厚さ方向(表裏面間方向)の絶縁抵抗値がある程度以上であることが好ましい(絶縁抵抗特性)。
具体的には、シート状の複合材料の表裏面間に500Vの直流電圧を1分間印加後の厚さ方向の銅張積層板試験規格JIS−C−6481:1996に準拠して測定した絶縁抵抗値は1×109Ω以上であることが好ましく、1×1011Ω以上であることがより好ましい。
【0072】
また、複合材料を構成する樹脂組成物の硬化物の貯蔵弾性率は、昇華性金属化合物の昇華温度において、3×106Pa以上3×107Pa以下であることが好ましく、3.2×106Pa以上2.8×107Pa以下であることが好ましい。貯蔵弾性率が上記範囲にあることで、十分な銅はく引き剥がし強さを満足できる。
【0073】
<プリプレグ及び樹脂フィルム>
上述した本発明の樹脂組成物及び樹脂ワニスを用いて、公知の方法により、本発明のプリプレグ及び本発明の樹脂フィルムを製造することができる。以下、これらについて説明する。
【0074】
(プリプレグ)
本発明の樹脂組成物又は樹脂ワニスを、強化繊維基材に含浸させた後、乾燥炉中等で、60〜200℃、好ましくは80〜170℃の温度で、2〜30分間、好ましくは3〜15分間乾燥させることによって本発明のプリプレグが得られる。強化繊維基材としては織布や不織布等の繊維基材を用いることが好ましい。
【0075】
繊維基材としては、例えば、ガラス、アルミナ、ボロン、シリカアルミナガラス、シリカガラス、チラノ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア等の無機繊維やアラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、カーボン、セルロース等の有機繊維等及びこれらの混抄系があり、特にガラス繊維の織布が好ましく用いられる。ガラス織布の種類は特に指定はなく、厚さ10μmから200μmまでのものを、目的のプリプレグまたは積層板の厚さに合わせて使用することができる。
【0076】
(樹脂フィルム)
本発明の樹脂組成物又は樹脂ワニスをPETフィルム等のベース基材上にキャストし、乾燥炉中等で60〜200℃、好ましくは80〜170℃の温度で、2〜30分間、好ましくは3〜15分間乾燥させることによってBステージ状に半硬化するか、又は有機溶媒を除去することによって本発明の樹脂フィルムを得ることができる。
なお、ベース基材としては、本発明の複合材料に用いられるものを使用することができる。
【0077】
上記によって得られるプリプレグ又は樹脂フィルムを用いて既述の複合材料の各工程による方法によりプリント配線板用の導体張積層板及び硬化した導体張樹脂シートを製造することができる。
【0078】
また、上述のようにして製造されたプリプレグ、樹脂フィルム、複合材料(積層板、硬化フィルム)を用いて、公知の方法によって、穴開け加工、金属めっき加工、金属箔をエッチング等による回路形成加工及び多層化接着加工を行うことによって、片面、両面又は多層プリント配線板を得ることができる。
【0079】
以上、実施形態により本発明を説明したが、本発明は上記の形態に限定されず、その発明の目的から逸脱しない範囲内において、任意の変更、改変を行うことができる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお以下において、特に断りのない限り、「部」は質量部を、「%」は質量%を各々意味する。
【0081】
<実施例1〜4、比較例1〜3>
(実施例1)
ポリメチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製)100部とビス(アセチルアセトナト)銅(II)(和光純薬工業(株)製)3部とをアセトン500部に溶解して樹脂組成物とした。これをPETフィルム上に塗布し、120℃で乾燥後PETフィルムから剥離して、樹脂組成物のフィルム(シート成形体)を得た。これをテフロン(登録商標)製で深さ0.5mmの平面状の凹みを有するスペーサ内に入れ、次いでこの上下をSUSよりなる金属板ではさみ、高温真空プレス装置により温度230℃、圧力1MPa、真空度500Paのプレス条件で1.5時間加熱加圧成形して、厚さ0.5mmで表裏面が金属光沢を帯びたフィルムを得た。前記のように加熱加圧成形の前後で表面の状態が変化していることから、フィルム内部の銅が、拡散して表面に移動しており、結果的に金属が表面に局在していることがわかった。
なお、上記加熱、冷却は各々5℃/分の昇温、降温速度で行い、真空度500Paの減圧状態は加圧プレス開始から終了までの全工程中とした。以下の実施例、比較例においても同様である。
【0082】
次いで、このフィルムを、5%水素化ホウ素ナトリウム水溶液に10分間浸漬して表面の金属を還元させた後、無電解銅めっき液CUST−2000(日立化成工業(株)製)に40℃で30分間浸漬し、表裏面に膜厚2μmの金属銅膜を有するフィルムを得た。この両面金属銅膜を有するフィルムに、さらに電気銅めっきを施して、表裏面に膜厚20μmの金属銅膜を有するフィルム1(複合材料)を得た。
【0083】
(実施例2)
ポリメチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製)100部とビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II)(三津和化学薬品(株)製)1部とをアセトン500部に溶解した。これをPETフィルム上に塗布し、120℃で乾燥後PETフィルムから剥離して、樹脂組成物のフィルム(シート成形体)を得た。これをテフロン(登録商標)製の深さ0.3mmの平面状の凹みを有するスペーサ内に入れ、次いでこの上下をSUSよりなる金属板ではさみ、高温真空プレス装置により温度170℃、圧力1MPa、真空度50Paのプレス条件で1時間加熱加圧成形して、厚さ0.3mmの表裏面が金属光沢を帯びたフィルムを得た。前記のように加熱加圧成形の前後で表面の状態が変化していることから、フィルム内部のパラジウムが、拡散して表面に移動しており、結果的に金属が表面に局在していることがわかった。
【0084】
次いでこのフィルムを、5%ジメチルアミンボラン水溶液に5分間浸漬して表面の金属を還元させた後、無電解銅めっき液CUST−2000(日立化成工業(株)製)に40℃で30分間浸漬し、表裏面に膜厚2μmの金属銅膜を有するフィルムを得た。この両面金属銅膜を有するフィルムに、さらに電気銅めっきを施して、表裏面に膜厚20μmの金属銅膜を有するフィルム2(複合材料)を得た。
【0085】
(実施例3)
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC製HP−7200H、エポキシ等量:278)556部、ノボラック型フェノール樹脂(DIC製TD−2090、OH等量:105)210部、2−エチル−4−メチルイミダゾール2.8部およびビス(アセチルアセトナト)銅(II)23gをメチルエチルケトン1850部に溶解し、樹脂組成物のワニスを得た。これを厚さ0.2mmのガラス布に含浸させ、140℃で10分間加熱乾燥し、樹脂分40%のプリプレグ(シート成形体)を得た。このプリプレグを4枚重ね、その最上面、最下面に各々アルミ箔を重ね、この上下を金属板ではさみ、高温真空プレス装置により温度230℃、圧力4MPa、真空度500Paのプレス条件で2時間加熱加圧成形し、その後両面のアルミ箔を引き剥がして、金属光沢を帯びた黒褐色の積層板を得た。前記のように加熱加圧成形の前後で表面の状態が変化していることから、フィルム内部の銅が、拡散して表面に移動しており、結果的に金属が表面に局在していることがわかった。
【0086】
次いでこの積層板を、5%ジメチルアミンボラン水溶液に5分間浸漬して表面の金属を還元させた後、無電解銅めっき液CUST−2000に40℃で30分間浸漬し、表裏面に膜厚2μmの金属銅膜を有する積層板を得た。この金属銅膜を有する積層板に、さらに電気銅めっきを施して、表裏面に膜厚20μmの金属銅膜を有する積層板1(複合材料)を得た。
【0087】
(実施例4)
ポリメチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製)100部とビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II)(三津和化学薬品(株)製)1部とをアセトン500部に溶解した。これをPETフィルム上に塗布し、120℃で乾燥後PETフィルムから剥離して、樹脂組成物のフィルム(シート成形体)を得た。これをテフロン(登録商標)製の深さ0.3mmの平面状の凹みを有するスペーサ内に入れ、次いでこの上下面に各々アルミ箔を重ね、この上下を金属板ではさみ、加熱加圧プレス装置により温度350℃、圧力1MPaのプレス条件で30分間加熱加圧成形して、厚さ0.3mmの表裏面が金属光沢を帯びたフィルムを得た。前記のように加熱加圧成形の前後で表面の状態が変化していることから、フィルム内部のパラジウムが、拡散して表面に移動しており、結果的に金属が表面に局在していることがわかった。
次いで、このフィルムを、5%水素化ホウ素ナトリウム水溶液に10分間浸漬して表面の金属を還元させた後、無電解銅めっき液CUST−2000(日立化成工業(株)製)に40℃で30分間浸漬し、表裏面に膜厚2μmの金属銅膜を有するフィルムを得た。この両面金属銅膜を有するフィルムに、さらに電気銅めっきを施して、表裏面に膜厚20μmの金属銅膜を有するフィルム3(複合材料)を得た。
【0088】
(比較例1)
ポリメチルメタクリレート100部をアセトン500部に溶解した。これをPETフィルム上に塗布し、120℃で乾燥後PETフィルムから剥離して、樹脂組成物のフィルムを得た。これをテフロン(登録商標)製の深さ0.1mmの平面状の凹みを有するスペーサ内に入れ、次いでこの上下をSUSよりなる金属板ではさみ、高温真空プレス装置により温度230℃、圧力1MPa、真空度500Paのプレス条件で2時間加熱加圧成形して、厚さ0.1mmの透明なフィルムを得た。
【0089】
このフィルムを、5%水素化ホウ素ナトリウム水溶液に10分間浸漬した後、無電解銅めっき液CUST−2000に40℃で30分間浸漬したが、フィルムは依然透明のままで、表裏面に金属銅膜を有するフィルムを得ることができなかった。
【0090】
(比較例2)
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC製HP−7200H、エポキシ等量:278)556部、ノボラック型フェノール樹脂(DIC製TD−2090、OH等量:105)210部、2−エチル−4−メチルイミダゾール2.8部をメチルエチルケトン1850部に溶解し、樹脂組成物のワニスを得た。これを厚さ0.2mmのガラス布に含浸させ、140℃で10分間加熱乾燥し、樹脂分40%のプリプレグ(シート成形体)を得た。このプリプレグを4枚重ね、その最上面、最下面に各々アルミ箔を重ね、この上下を金属板ではさみ、高温真空プレス装置により温度230℃、圧力4MPa、真空度500Paのプレス条件で2時間加熱加圧成形し、その後両面のアルミ箔を引き剥がして、黒褐色の積層板を得た。
【0091】
次いでこの積層板を、5%ジメチルアミンボラン水溶液に5分間浸漬した後、無電解銅めっき液CUST−2000に40℃で30分間浸漬したが、表裏面に金属銅膜を有する積層板は得られなかった。
【0092】
(比較例3)
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC製HP−7200H、エポキシ等量:278)556部、ノボラック型フェノール樹脂(DIC製TD−2090、OH等量:105)210部、2−エチル−4−メチルイミダゾール2.8部および酸化銅(CuO)23部をメチルエチルケトン1850部に溶解し、樹脂組成物のワニスを得た。これを厚さ0.2mmのガラス布に含浸させ、140℃で10分間加熱乾燥し、樹脂分40%のプリプレグ(シート成形体)を得た。このプリプレグを4枚重ね、その最上面、最下面に各々アルミ箔を重ね、この上下を金属板ではさみ、高温真空プレス装置により温度230℃、圧力4MPa、真空度500Paのプレス条件で2時間加熱加圧成形し、その後両面のアルミ箔を引き剥がして、黒褐色の積層板を得た。
【0093】
この積層板上に、公知のキャタライザ・アクセラレータ法によりパラジウムめっき触媒を付与し、無電解銅めっき液CUST−2000に40℃で30分間浸漬して、表裏面に膜厚2μmの金属銅膜を有する積層板を得た。この両面金属銅膜を有する積層板に、さらに電気銅めっきを施して、表裏面に膜厚20μmの金属銅膜を有する積層板2を得た。
【0094】
(特性評価)
上述の実施例、比較例により得られたフィルム1〜3、積層板1〜2について、銅箔引きはがし強さ、はんだ耐熱性、絶縁抵抗特性を評価した。結果を表1に示す。
なお、比較例1、2については、評価可能なフィルム、積層板が得られなかったため評価を行っていない。また、フィルム1〜3(実施例1、2、4)については、樹脂(ポリメチルメタクリレート)自体の耐熱性の面から、はんだ耐熱性は評価していない。
【0095】
前記各特性の評価方法は以下の通りである。
−銅箔引きはがし強さ−
得られたフィルムまたは積層板における銅箔引きはがし強さは、銅張積層板試験規格JIS−C−6481:1996に準拠して測定した。
【0096】
−はんだ耐熱性−
各々の積層板を、50mm×50mmの面となるように切断し、各試料の片面の銅箔をエッチングした。これを288℃の溶融はんだに20秒間浸漬し、得られた試料の外観を目視で調べた。なお、表中のOKとは、はんだ浸漬後の積層板またはフィルムの基材と銅箔との間に膨れやミーズリングの発生が全く無いことを意味する。一方、NGとは、観察範囲で前記膨れ等が少なくも1つ存在することを意味する。
【0097】
−絶縁抵抗特性−
得られた積層板またはフィルムの絶縁抵抗特性は、銅張積層板試験規格JIS−C−6481:1996に準拠して測定した。
【0098】
−表面粗さ−
得られた積層板またはフィルムにおける金属銅膜を過硫酸アンモニウム水溶液によるエッチングにより取り除き、積層板またはフィルム表面の算術平均粗さRaを光干渉式非接触表面粗さ計((株)菱化システム製)によりで測定した。
【0099】
【表1】

【0100】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1、2、4のフィルムおよび実施例3の積層板は、表面粗さが小さいにもかかわらず、何れも銅箔引き剥がし強さ、はんだ耐熱性(実施例3のみ)が良好であり、絶縁抵抗特性も問題ないレベルであった。これに対して、比較例3の積層板では、金属膜と樹脂基材の接着性が低いために、銅箔引き剥がし強さやはんだ耐熱性に問題があった。
【0101】
<実施例5〜7、比較例4〜7>
(樹脂ワニス(樹脂組成物)の調製)
−調製例1−
温度計、還流冷却器、減圧濃縮装置及び攪拌装置を備えた1リットルのセパラブルフラスコに、トルエン200部とポリフェニレンエーテル(S202A、旭化成ケミカルズ社製、Mn:16000、以下、PPEと称す)50部を投入し、フラスコ内の温度を90℃に設定して攪拌溶解した。PPEの溶解を確認後、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(N770、DIC社製)30部、クレゾールノボラック樹脂(KA1165、DIC社製)20部をそれぞれ投入し、攪拌溶解させた。次に、溶液を室温まで冷却した後、ビス(アセチルアセトナト)銅(II)(和光純薬工業(株)社製)3部と、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.5部を添加した後、メチルエチルケトン(MEK)を配合して、調製例1の樹脂ワニス(固形分濃度約30質量%)を調製した。
【0102】
−調製例2−
温度計、還流冷却器、減圧濃縮装置及び攪拌装置を備えた1リットルのセパラブルフラスコに、メチルエチルケトン(以下、MEKと称す)200部とジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(HP−7200H、DIC社製)200部、クレゾールノボラック樹脂(KA1165、DIC社製)120部、ビス(アセチルアセトナト)銅(II)10部、2−エチル−4−メチルイミダゾール1部添加した後、MEKを配合して、調製例2の樹脂ワニス(固形分濃度約60質量%)を調製した。
【0103】
−調製例3−
温度計、還流冷却器、減圧濃縮装置及び攪拌装置を備えた1リットルのセパラブルフラスコに、メチルエチルケトン(以下、MEKと称す)200部とビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC−3000H、日本化薬社製)300部、クレゾールノボラック樹脂(KA1165、DIC社製)120部、ビス(アセチルアセトナト)銅(II)10部、2−エチル−4−メチルイミダゾール2部添加した後、MEKを配合して、調製例3の樹脂ワニス(固形分濃度約65質量%)を調製した。
【0104】
−比較調製例1−
上記調製例1において、ビス(アセチルアセトナト)銅(II)を配合しないこと以外は、調製例1と同様にして比較調製例1の樹脂ワニス(固形分濃度約30質量%)を調製した。
【0105】
−比較調製例2−
上記調製例2において、ビス(アセチルアセトナト)銅(II)を配合しないこと以外は、調製例2と同様にして比較調製例2の樹脂ワニス(固形分濃度約60質量%)を調製した。
【0106】
−比較調製例3−
上記調製例2において、ビス(アセチルアセトナト)銅(II)の代わりに酸化銅(CuO)を10部配合したこと以外は、調製例2と同様にして比較調製例3の樹脂ワニス(固形分濃度約60質量%)を調製した。
【0107】
(樹脂フィルム及びプリプレグの作製)
調製例1及び比較調製例1で得られた樹脂ワニスをPETフィルム上に塗布し、120℃で10分間乾燥後PETフィルムから剥離して、厚さ50μmのBステージ状の樹脂フィルムを得た。
また、調製例2、3及び比較調製例2、3で得られた樹脂ワニスを、厚さ0.1mmのガラス織布(Eガラス、日東紡社製)に含浸させた後、160℃で5分間加熱乾燥して、樹脂含有割合42質量%(厚さ0.1mm)のプリプレグをそれぞれ作製した。
【0108】
(成形体(金属張フィルム及び金属張積層板の作製)
上記で得られた樹脂フィルム(1枚)、プリプレグ(4枚重ね)のそれぞれの最上面、最下面に各々アルミ箔を重ね、この上下を金属板で挟み、高温真空プレス装置により温度230℃、圧力4MPa、真空度500Paのプレス条件で2時間加熱加圧成形した。その後、両面のアルミ箔を引き剥がして、硬化フィルム及び積層板を得た。この時、調製例1の樹脂ワニスによる硬化フィルム及び調製例2、3の樹脂ワニスによる積層板の表面は金属光沢を帯びた黒褐色であった(すなわち、前記のように加熱加圧成形の前後で表面の状態が変化していることから、フィルム内部の銅が、拡散して表面に移動しており、結果的に金属が表面に局在していることがわかった)が、比較調製例1、2の樹脂ワニスによる硬化フィルム又は積層板の表面は透明であり、比較調製例3の樹脂ワニスによる積層板は黒褐色であった。
【0109】
また、上記比較調製例2を用いて得られたプリプレグ4枚を用いて、上記アルミ箔の代わりに18μm厚のロープロファイル銅箔(F3−WS−18、古河電工製)を用いて、上記と同様のプレス条件で両面銅張積層板を作製した。
【0110】
上記で得られた調製例1〜3の樹脂ワニスを用いて得られた硬化フィルム及び積層板を、5%ジメチルアミンボラン水溶液に5分間浸漬して表面の金属を還元させた後、無電解銅めっき液CUST−2000に60℃で30分間浸漬し、表裏面に膜厚2μmの金属銅膜を有する金属張フィルム及び金属張積層板を得た。一方、比較調製例1〜3の樹脂ワニスによる硬化フィルム又は積層板は、上記同様の無電解銅めっき工程を試みたが、比較調製例1、2のフィルム又は積層板は依然透明のままで、表裏面に金属銅膜を有するフィルム、積層板を得ることができず、比較調製例3の積層板は、表面のほとんど全てが黒褐色のままで(金属斑点がごくわずかに点在)、金属銅膜を形成することはできなかった。
【0111】
上記各調製例の樹脂ワニスを用いて作製した金属銅膜を有する金属張フィルム及び金属張積層板に、さらに電気銅めっきを施して、表裏面に膜厚20μmの金属銅膜を有する各種の複合材料(両面金属張フィルム、両面金属張積層板)を作製した。
【0112】
なお、調製例1〜3の樹脂ワニスを用いた場合がそれぞれ実施例5〜7に該当する。また、比較調製例1〜3の樹脂ワニスを用いた金属銅膜を有していないフィルム及び積層板をそれぞれ比較例4〜6とする。
また、上記銅箔を用いて作製した両面銅張積層板の銅箔を全面エッチングにより除去し、めっき触媒付与処理工程後、上記と同様の条件で無電解銅めっき及び電気めっき工程を経て、両面金属張積層板を作製した。これを比較例7とする。
【0113】
(特性評価)
上記で得られた硬化フィルム及び積層板について、金属銅膜の引きはがし強さ、はんだ耐熱性、絶縁抵抗、表面粗さを評価した。その評価結果を表1に示す。特性評価方法は以下の通りである。なお、比較例6の積層板の特性評価ははんだ耐熱性、絶縁抵抗、表面粗さのみとし、金属銅膜を形成できなかった比較例4の硬化フィルム及び比較例5の積層板の特性評価は、絶縁抵抗、表面粗さのみとした。
【0114】
−金属銅膜の引きはがし強さ−
金属銅膜の引きはがし強さは、実施例1と同様で銅張積層板試験規格JIS−C−6481に準拠して測定した。
【0115】
−はんだ耐熱性の評価−
50mm角に切断した上述の硬化フィルム、積層板の片面の金属層を過硫酸アンモニウム20%水溶液を用いてエッチングにより除去したものを、288℃の溶融はんだに20秒間浸漬し、試験後の試料の外観を目視で調べた。なお、表中の「異常なし」とは、溶融はんだ浸漬後の積層板又はフィルムの樹脂層と金属層との間に膨れやミーズリングの発生が全く無いことを意味する。一方、「NG」とは、観察範囲で膨れ等が少なくも1つ存在することを意味する。
【0116】
−絶縁抵抗特性−
絶縁抵抗特性は、実施例1と同様で銅張積層板試験規格JIS−C−6481に準拠して測定した。
【0117】
−表面粗さ−
実施例1と同様にして、金属銅膜をエッチングにより除去した積層板又はフィルム表面の算術平均粗さRaを光干渉式非接触表面粗さ計((株)菱化システム製)により測定した。
【0118】
【表2】

【0119】
表2に示す結果から明らかなように、実施例5〜7の硬化フィルム及び積層板は、表面粗さが小さいにもかかわらず、何れも金属膜の引きはがし強さ、はんだ耐熱性が良好であり、絶縁抵抗特性も問題ないレベルであった。これに対して、比較例4及び5の硬化フィルム及び積層板は、無電解銅めっき工程を試みたが、積層板は依然透明のままであり、表裏面に金属銅膜を有するフィルム、積層板を得ることができなかった。また、金属斑点がごくわずかに点在し、均一な金属膜を形成できなかった比較例6の積層板は、はんだへの浸漬中に点在している金属が剥がれ、耐熱性に問題があった。比較例7の積層板は金属膜と樹脂基材の接着性が高く、銅箔引き剥がし強さやはんだ耐熱性にも問題はないが、表面粗さが大きかった。
【0120】
<実施例8>
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC製HP−7200H、エポキシ等量:278)56部、フェノールアラルキル樹脂(明和化成製MEH−7851M、OH等量:214)43部、2−エチル−4−メチルイミダゾール1.1部およびビス(アセチルアセトナト)銅(II)3部をメチルエチルケトン53部に溶解し、樹脂組成物のワニスを得た。これを厚さ0.2mmのガラス布に含浸させ、140℃で10分間加熱乾燥し、樹脂分40%のプリプレグ(シート成形体)を得た。このプリプレグを4枚重ね、その最上面、最下面に各々アルミ箔を重ね、この上下を金属板ではさみ、高温真空プレス装置により温度180℃、圧力4MPa、真空度500Paのプレス条件で1時間加熱加圧成形し、次いで温度230℃、圧力4MPa、真空度500Paのプレス条件で10分間加熱成形し、その後両面のアルミ箔を引き剥がして、金属光沢を帯びた黒褐色の積層板を得た。
なお、上記加熱、冷却は各々5℃/分の昇温、降温速度で行い、真空度500Paの減圧状態は加圧プレス開始から終了までの全工程中とした。以下の実施例、比較例においても同様である。
【0121】
また、樹脂組成物のワニスをPETフィルム上に塗布し、120℃で乾燥後PETフィルムから剥離して、樹脂組成物の半硬化物を得た。これをテフロン(登録商標)製の深さ0.3mmの平面状の凹みを有するスペーサ内に入れ、次いでこの上下をSUSよりなる金属板ではさみ、高温真空プレス装置により温度180℃、圧力1MPa、真空度500Paのプレス条件で1時間加熱加圧成形して、厚さ0.3mmの樹脂組成物の硬化物1を得た。
【0122】
次いでこの積層板を、5%ジメチルアミンボラン水溶液に5分間浸漬して表面の金属を還元させた後、無電解銅めっき液CUST−2000に60℃で15分間浸漬し、表裏面に膜厚0.5μmの金属銅膜を有する積層板を得た。この金属銅膜を有する積層板に、さらに電気銅めっきを施して、表裏面に膜厚20μmの金属銅膜を有する積層板A(複合材料)を得た。
【0123】
<実施例9>
フェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬製NC−3000H、エポキシ等量:288)56部、フェノールアラルキル樹脂(明和化成製MEH−7851M、OH等量:214)41部、2−エチル−4−メチルイミダゾール1.1部およびビス(アセチルアセトナト)銅(II)3部をメチルエチルケトン53部に溶解し、樹脂組成物のワニスを得た。これを厚さ0.2mmのガラス布に含浸させ、140℃で10分間加熱乾燥し、樹脂分40%のプリプレグ(シート成形体)を得た。このプリプレグを4枚重ね、その最上面、最下面に各々アルミ箔を重ね、この上下を金属板ではさみ、高温真空プレス装置により温度180℃、圧力4MPa、真空度500Paのプレス条件で1時間加熱加圧成形し、次いで温度230℃、圧力4MPa、真空度500Paのプレス条件で5分間加熱成形し、その後両面のアルミ箔を引き剥がして、金属光沢を帯びた黒褐色の積層板を得た。
【0124】
また、樹脂組成物のワニスをPETフィルム上に塗布し、120℃で乾燥後PETフィルムから剥離して、樹脂組成物の半硬化物を得た。これをテフロン(登録商標)製の深さ0.3mmの平面状の凹みを有するスペーサ内に入れ、次いでこの上下をSUSよりなる金属板ではさみ、高温真空プレス装置により温度180℃、圧力1MPa、真空度500Paのプレス条件で1時間加熱加圧成形して、厚さ0.3mmの樹脂組成物の硬化物2を得た。
【0125】
次いでこの積層板を、5%水素化ホウ素ナトリウム水溶液に5分間浸漬して表面の金属を還元させた後、無電解銅めっき液CUST−2000に60℃で15分間浸漬し、表裏面に膜厚0.5μmの金属銅膜を有する積層板を得た。この金属銅膜を有する積層板に、さらに電気銅めっきを施して、表裏面に膜厚20μmの金属銅膜を有する積層板B(複合材料)を得た。
【0126】
<実施例10>
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC製HP−7200H、エポキシ等量:278)56部、ノボラック型フェノール樹脂(DIC製TD−2090、OH等量:105)21部、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.3部およびビス(アセチルアセトナト)銅(II)3部をメチルエチルケトン185部に溶解し、樹脂組成物のワニスを得た。これを厚さ0.2mmのガラス布に含浸させ、140℃で10分間加熱乾燥し、樹脂分40%のプリプレグ(シート成形体)を得た。このプリプレグを4枚重ね、その最上面、最下面に各々アルミ箔を重ね、この上下を金属板ではさみ、高温真空プレス装置により温度230℃、圧力4MPa、真空度500Paのプレス条件で2時間加熱加圧成形し、その後両面のアルミ箔を引き剥がして、金属光沢を帯びた黒褐色の積層板を得た。
【0127】
また、樹脂組成物のワニスをPETフィルム上に塗布し、120℃で乾燥後PETフィルムから剥離して、樹脂組成物の半硬化物を得た。これをテフロン(登録商標)製の深さ0.3mmの平面状の凹みを有するスペーサ内に入れ、次いでこの上下をSUSよりなる金属板ではさみ、高温真空プレス装置により温度180℃、圧力1MPa、真空度500Paのプレス条件で1時間加熱加圧成形して、厚さ0.3mmの樹脂組成物の硬化物3を得た。
【0128】
次いでこの積層板を、5%ジメチルアミンボラン水溶液に5分間浸漬して表面の金属を還元させた後、無電解銅めっき液CUST−2000に60℃で15分間浸漬し、表裏面に膜厚0.5μmの金属銅膜を有する積層板を得た。この金属銅膜を有する積層板に、さらに電気銅めっきを施して、表裏面に膜厚20μmの金属銅膜を有する積層板C(複合材料)を得た。
【0129】
<比較例8>
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC製HP−7200H、エポキシ等量:278)56部、フェノールアラルキル樹脂(明和化成製MEH−7851M、OH等量:214)43部、2−エチル−4−メチルイミダゾール1.1部をメチルエチルケトン53部に溶解し、樹脂組成物のワニスを得た。これを厚さ0.2mmのガラス布に含浸させ、140℃で10分間加熱乾燥し、樹脂分40%のプリプレグ(シート成形体)を得た。このプリプレグを4枚重ね、その最上面、最下面に各々アルミ箔を重ね、この上下を金属板ではさみ、高温真空プレス装置により温度180℃、圧力4MPa、真空度500Paのプレス条件で1時間加熱加圧成形し、次いで温度230℃、圧力4MPa、真空度500Paのプレス条件で10分間加熱成形し、その後両面のアルミ箔を引き剥がして、金属光沢を帯びた黒褐色の積層板4を得た。
【0130】
また、樹脂組成物のワニスをPETフィルム上に塗布し、120℃で乾燥後PETフィルムから剥離して、樹脂組成物の半硬化物を得た。これをテフロン(登録商標)製の深さ0.3mmの平面状の凹みを有するスペーサ内に入れ、次いでこの上下をSUSよりなる金属板ではさみ、高温真空プレス装置により温度180℃、圧力1MPa、真空度500Paのプレス条件で1時間加熱加圧成形して、厚さ0.3mmの樹脂組成物の硬化物4を得た。
【0131】
次いでこの積層板4を、5%ジメチルアミンボラン水溶液に5分間浸漬した後、無電解銅めっき液CUST−2000に60℃で30分間浸漬したが、表裏面に金属銅膜を有する積層板は得られなかった。
【0132】
<比較例9>
比較例1で得られた積層板4の両表面に、公知のキャタライザ・アクセラレータ法によりパラジウムめっき触媒を付与し、無電解銅めっき液CUST−2000に60℃で15分間浸漬して、表裏面に膜厚0.5μmの金属銅膜を有する積層板を得た。この両面金属銅膜を有する積層板に、さらに電気銅めっきを施して、表裏面に膜厚20μmの金属銅膜を有する積層板Dを得た。
【0133】
得られた積層体について、既述の実施例と同様に評価を行った。また、貯蔵弾性率も下記のようにして行った。これらの結果を下記表に示す。
【0134】
−貯蔵弾性率−
得られた厚さ0.3mmの硬化物を5mm×30mmの棒状に切り出し、縦振動型動的粘弾性測定装置((株)UBM製Rheogel−E4000)を用いて、引っ張りモード、歪振幅(正弦波)0.5%、昇温速度5℃/分の条件で40℃から300℃まで測定し、230℃における貯蔵弾性率E’を求めた。
【0135】
【表3】

【0136】
実施例8〜10では、十分な銅箔引き剥がし強さを得ることが出来たが、公知のキャタライザ・アクセラレータ法によりパラジウムめっき触媒を付与し、無電解銅めっき液に浸漬して作成した比較例9では、銅箔引き剥がし強さは十分ではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明によれば、樹脂層表面に物理粗化や化学粗化等による凹凸を形成することなく、金属層と樹脂基材等との接着性が確保された複合材料を得るための樹脂組成物や樹脂ワニス等を提供することができる。したがって、これらを用いて得られる金属張フィルム及び積層板は、高周波分野で使用されるプリント配線板の製造に好適に用いることができる。このため、挟ピッチ・ファインパターンが要求される電子デバイス実装パッケージ等や、高速信号処理を要求される高周波回路用のプリント配線板の部材・部品用途として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部の表面を金属化する成形体に用いられ、加熱成形工程を経て成形される成形体用の樹脂組成物であって、
(A)昇華性金属化合物と、(B)有機化合物とを含有し、
(B)有機化合物が、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種である樹脂組成物。
【請求項2】
金属張フィルム又は金属張積層板から選択される成形体に用いられ、加熱成形工程を経て成形される成形体用の樹脂組成物であって、(A)昇華性金属化合物と、(B)有機化合物とを含有し、
(B)有機化合物が、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種である樹脂組成物。
【請求項3】
前記加熱成形工程において(B)有機化合物の内部の(A)昇華性金属化合物が拡散して移動するものである請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記加熱成形工程において(A)昇華性金属化合物の全部又は一部が、成形されて得られる成形物の表面に移動する請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記加熱成形工程の少なくとも一部において、系全体を減圧状態とし、温度100〜400℃、真空度1〜10000Paの条件下で(A)昇華性金属化合物が移動する請求項3又は4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記昇華性金属化合物における金属が、ルテニウム、コバルト、銅、白金、鉄、ニッケル、クロミウム及びパラジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記有機化合物が、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、マレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、アクリレート化合物、トリアリルイソシアヌレート及びポリブタジエン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂である請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記有機化合物が前記熱可塑性樹脂であり、当該熱可塑性樹脂が、フッ素樹脂、ポリオレフィン類及びその誘導体、ポリエステル類及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルフォン、(メタ)アクリル酸エステル共重合体類、ポリスチレン、アクリロニトリルスチレン共重合体類、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体類、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール類、ポリビニルアルコール類、ポリフェニレンエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体の完全又は部分水素添加物類、ポリブタジエンの完全又は部分水素添加物類、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイト、ポリアミドイミド、ポリアミド、熱可塑性ポリイミド及び芳香族ポリエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂である請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
(A)昇華性金属化合物の配合割合が、(A)昇華性金属化合物と(B)有機化合物とを含む樹脂組成物全体中の0.1〜20質量%である請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂組成物を溶媒に溶解又は分散させて得られる樹脂ワニス。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂組成物をシート状に成形してシート成形体とするシート成形工程と、
前記シート成形体を一対の金属板間に挟持させ、該シート成形体を加圧後あるいは加圧と同時に、該シート成形体を加熱する加熱加圧工程と、
を含む複合材料の製造方法。
【請求項12】
前記加熱加圧工程の少なくとも一部において、系全体を減圧状態とする請求項11に記載の複合材料の製造方法。
【請求項13】
前記加熱加圧工程における加熱温度が100℃以上400℃以下、圧力が0.1MPa以上50MPa以下である請求項11又は12に記載の複合材料の製造方法。
【請求項14】
前記減圧状態における真空度が10Pa以上1000Pa以下である請求項12又は13に記載の複合材料の製造方法。
【請求項15】
前記加熱加圧工程後、さらに前記シート成形体の表面に拡散した昇華性金属化合物を還元させる還元工程を含む請求項11〜14のいずれか1項に記載の複合材料の製造方法。
【請求項16】
前記加熱加圧工程後、さらに前記シート成形体の表面に拡散した昇華性金属化合物を核として、金属または昇華性金属化合物により構成される金属膜部分の厚膜化を行う厚膜化工程を含む請求項11〜15のいずれか1項に記載の複合材料の製造方法。
【請求項17】
前記昇華性金属化合物が、銅を含有する請求項11〜16のいずれか1項に記載の複合材料の製造方法。
【請求項18】
請求項11〜17のいずれか1項に記載の製造方法により製造される複合材料。
【請求項19】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂組成物を加熱成形して得られ、昇華性金属化合物が表面に局在している複合材料。
【請求項20】
前記複合材料を構成する前記樹脂組成物の硬化物の貯蔵弾性率が、前記昇華性金属化合物の昇華温度において、3×106Pa以上3×107Pa以下である請求項18又は19に記載の複合材料。
【請求項21】
前記有機化合物が、フェニル骨格またはビフェニル骨格を有するフェノールアラルキル樹脂を含む請求項20に記載の複合材料。
【請求項22】
請求項10に記載の樹脂ワニスを基材に含浸後、60〜200℃で乾燥又は半硬化させて得られるプリプレグ。
【請求項23】
請求項10に記載の樹脂ワニスを60〜200℃で乾燥又は半硬化させて得られる樹脂フィルム。

【公開番号】特開2010−275527(P2010−275527A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70344(P2010−70344)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】