説明

炭化ケイ素半導体装置およびその製造方法

【課題】炭化ケイ素からなる基板上に欠陥密度の低減された活性層が形成された炭化ケイ素半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置1は、面方位{0001}に対しオフ角が50°以上65°以下である、炭化ケイ素からなる基板2と、バッファ層21と、活性層(エピタキシャル層3、p型層4、およびn+領域5、6)とを備える。バッファ層21は、基板2上に形成され、炭化ケイ素からなる。活性層は、バッファ層21上に形成され、炭化ケイ素からなる。活性層におけるマイクロパイプ密度は基板2におけるマイクロパイプ密度より低い。また、活性層における、バーガーズベクトルの向きが[0001]である転位の密度は、基板2における当該転位の密度より高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭化ケイ素半導体装置およびその製造方法に関し、より特定的には、優れた電気的特性を示す炭化ケイ素半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭化ケイ素(SiC)を用いた半導体装置が知られている(たとえば、国際公開WO01/018872号パンフレット(以下、特許文献1と呼ぶ))。特許文献1では、炭化ケイ素半導体装置の構成として、面方位がほぼ{03−38}であり4H型ポリタイプのSiC基板上に、SiCからなるバッファ層を形成している。ここで、面方位が{03−38}である面({03−38}面)は、マイクロパイプやらせん転位が伸びる方向である<0001>軸方向に対して約35°の傾きを有する。そのため、上述したSiC基板上にバッファ層を形成した場合に、SiC基板のマイクロパイプやらせん転位は斜め方向に伸び、バッファ層などの側面で消滅するとしている。その結果、バッファ層上に形成されるエピタキシャル層(活性層)には当該マイクロパイプやらせん転位は引き継がれず、欠陥が少なく平坦性に優れたエピタキシャル層を得ることができるとしている。また、特許文献1では、上述したバッファ層の厚みとして0.1μm以上15μm以下という範囲が好ましいとしている。
【特許文献1】国際公開第01/018872号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、発明者が検討した結果、上述した従来の炭化ケイ素半導体装置においては、十分に欠陥数を低減することが困難であることがわかった。すなわち、上述のように主表面を{03−38}面としたSiC基板について、たとえばSiC基板のサイズを2インチと仮定する。この場合、上述のようにマイクロパイプなどの欠陥が斜め方向(<0001>軸方向)に延びることで、バッファ層の側面において完全に消滅するためには、計算上36mmの厚さのバッファ層が必要になり、現実的ではない。そのため、SiC基板上に形成される活性層における欠陥を低減することは依然として重要な課題である。
【0004】
この発明は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、この発明の目的は、炭化ケイ素からなる基板上に欠陥密度の低減された活性層が形成された炭化ケイ素半導体装置およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に従った炭化ケイ素半導体装置は、面方位{0001}に対しオフ角が50°以上65°以下である、炭化ケイ素からなる基板と、バッファ層と、活性層とを備える。バッファ層は、基板上に形成され、炭化ケイ素からなる。活性層は、バッファ層上に形成され、炭化ケイ素からなる。活性層におけるマイクロパイプ密度は基板におけるマイクロパイプ密度より低い。また、活性層における、バーガーズベクトルの向きが[0001]である転位の密度は、基板における当該転位の密度より高い。
【0006】
このようにすれば、活性層におけるマイクロパイプの密度を低減することにより活性層の電気的特性を向上させることができる。このため、電気的特性の優れた炭化ケイ素半導体装置を実現できる。
【0007】
この発明に従った炭化ケイ素半導体装置の製造方法では、まず、面方位{0001}に対しオフ角が50°以上65°以下である、炭化ケイ素からなる基板を準備する工程を実施する。当該基板上に、炭化ケイ素からなるバッファ層を形成する工程を実施する。バッファ層上に活性層を形成する工程を実施する。バッファ層を形成する工程では、バッファ層におけるマイクロパイプ密度が基板におけるマイクロパイプ密度より低く、バッファ層における、バーガーズベクトルの向きが[0001]である転位の密度は、基板における前記転位の密度より高くなる成膜条件で、バッファ層が形成される。具体的には、バッファ層を形成する工程では、マイクロパイプがらせん転位(バーガーズベクトルb=[0001]、転位の伸展方向がほぼ[0001]である転位)に分解するような成膜条件で、バッファ層が形成される。また、当該成膜条件は、らせん転位の一部が部分転位(バーガーズベクトルb=[0001]、転位の伸展方向がほぼ[11−20]である転位)に転換するような成膜条件であることが好ましい。
【0008】
このようにすれば、バッファ層中のマイクロパイプ密度を基板におけるマイクロパイプ密度より低減することにより、バッファ層上に形成される活性層では、結果的にマイクロパイプ密度を基板での当該密度に比べて低くすることができる。また、バッファ層におけるマイクロパイプ密度が低減することで、活性層の成長中に(バッファ層のマイクロパイプ欠陥に起因して)発生する欠陥の密度を低減できる。この結果、マイクロパイプ欠陥の少ない活性層を有する炭化ケイ素半導体装置を容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、炭化ケイ素基板上にバッファ層を介して形成される活性層において、マイクロパイプなどの欠陥密度を低減し、良好な電気的特性の炭化ケイ素半導体装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、本発明による半導体装置を示す断面模式図である。図1を参照して、本発明による半導体装置の実施の形態1を説明する。
【0012】
図1に示した半導体装置1は、炭化ケイ素半導体装置としての横型のMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−effect Transistor)であって、炭化ケイ素(SiC)からなる基板2と、この基板2上に形成された炭化ケイ素からなるバッファ層21と、バッファ層21上に形成された炭化ケイ素からなるエピタキシャル層3と、このエピタキシャル層3上に形成された炭化ケイ素からなるp型層4と、p型層4の表面に間隔を隔てて形成されたn+領域5、6と、このn+領域5、6の間のチャネル領域上に位置するゲート絶縁膜としての酸化膜8と、この酸化膜8上に形成されたゲート電極10と、n+領域5、6のそれぞれの上に形成されたソース電極11およびドレイン電極12とを備える。基板2は、面方位{0001}に対するオフ角が約53°程度である(03−38)面を主表面とするSiC基板である。基板2はn型の導電性不純物を含む。
【0013】
基板2上に形成された炭化ケイ素からなるバッファ層21は、導電型がn型であり、その厚みはたとえば0.5μmである。
【0014】
バッファ層21上に形成された炭化ケイ素からなるエピタキシャル層3は、アンドープ層である。このエピタキシャル層3上に形成されたp型層4には、p型を示す導電性不純物が含有されている。また、n+領域5、6には、n型を示す導電性不純物が注入されている。そして、このp型層4およびn+領域5、6を覆うように酸化膜7、8が形成されている。この酸化膜7、8にはn+領域5、6上に位置する領域に開口部が形成されている。当該開口部の内部において、n+領域5、6のそれぞれに電気的に接続されたソース電極11およびドレイン電極12が形成されている。そして、ゲート絶縁膜として作用する酸化膜8上にゲート電極10が配置されている。n+領域5、6の間の距離であるチャネル長Lgは、たとえば100μm程度とすることができる。また、チャネル幅は上記チャネル長Lgのたとえば2倍程度(200μm程度)とすることができる。
【0015】
図1に示した半導体装置においては、基板2におけるマイクロパイプ密度より活性層としてのエピタキシャル層3、p型層4、およびn+領域5、6におけるマイクロパイプ密度の方が低くなっている。また、活性層としてのエピタキシャル層3、p型層4、およびn+領域5、6におけるバーガーズベクトルbの向きが[0001]である転位の密度は、基板2における当該転位の密度より高くなっている。このように、エピタキシャル層3やp型層4などでのマイクロパイプ密度を低くすることで、半導体装置1の電気的特性がp型層4などでのマイクロパイプの存在に起因して劣化することを抑制できる。
【0016】
また、上記半導体装置1では、活性層であるエピタキシャル層3、p型層4、およびn+領域5、6におけるマイクロパイプ密度が1cm-2以下となっている。この場合、半導体装置1において、マイクロパイプの存在に起因する動作不良の発生確率を低減できる。このため、半導体装置1の製造歩留りを向上させることができる。
【0017】
また、上記半導体装置1では、活性層であるエピタキシャル層3、p型層4、およびn+領域5、6における、バーガーズベクトルの向きが[11−20]で、転位線の向きが実質的に[11−20]である基底面転位の密度は、基板2における基底面転位の密度よりも低く、バーガーズベクトルの向きが[11−20]で、転位線の向きが実質的に[0001]である刃状転位の密度は、基板2における刃状転位の密度よりも高くなっている。
【0018】
この場合、半導体装置1の特性(リーク電流や電気的特性の長期信頼性)に比較的影響を与える基底面転位の密度がエピタキシャル層3、p型層4、およびn+領域5、6において低減されているため、半導体装置1の逆方向のリーク電流を低減することができる(耐圧を向上させることができる)とともに、半導体装置1の長期信頼性を向上させることができる。具体的には、図1のp型層4上に酸化膜7、8を形成した場合に、半導体装置1の繰返し動作寿命が延びる、といった効果が得られる。なお、上述した刃状転位は、基底面転位に比べると半導体装置1の特性に対する影響が少なく、ある程度活性層に存在していても当該半導体装置1の特性の劣化の程度は十分小さい。
【0019】
図2は、図1に示した半導体装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。図2を参照して、本発明による半導体装置の実施の形態1の製造方法を説明する。
【0020】
まず、図2に示すように、基板準備工程(S10)を実施する。この工程においては、具体的には面方位(03−38)面を主表面とする導電型がn型の炭化ケイ素基板を基板2(図1参照)として準備する。このような基板は、たとえば(0001)面を主表面とするインゴットから(03−38)面が主表面として露出するように基板を切出すといった手法により得ることができる。
【0021】
次に、バッファ層形成工程(S20)を実施する。具体的には、バッファ層として導電型がn型の炭化ケイ素からなり、たとえばその厚みが0.5μmのエピタキシャル層を形成する。また、このときバッファ層を形成するための原料ガスとして、たとえばSiH4ガスおよびC3H8ガスを用いる。そして、これらのガスにおけるC/Si比(ガスに含まれるケイ素原子に対する炭素原子の比率)が相対的に(後述するエピタキシャル層形成工程(S30)におけるC/Si比より)小さくなるように、それぞれのガスの流量を設定する。具体的には、たとえばC/Si比が1以上1.5以下、より好ましくは1以上1.2以下といった範囲になるように、ガスの流量を設定する。このようにすれば、バッファ層21を形成する際に、基板2のマイクロパイプに起因して形成されるバッファ層21中のマイクロパイプがらせん転位に分解する反応が促進される。また、このようにすれば、後述するエピタキシャル層形成工程(S30)において形成される、活性層となるべきエピタキシャル層3において、基底面転位の密度が基板2における基底面転位の密度より低くなるとともに、当該エピタキシャル層3での刃状転位の密度が基板2における刃状転位の密度より高くなる。
【0022】
次に、エピタキシャル層形成工程(S30)を実施する。具体的には、バッファ層21上にアンドープの炭化ケイ素からなるエピタキシャル層3(図1参照)を形成する。このエピタキシャル層形成工程(S30)においては、原料ガスとして、たとえばバッファ層形成工程(S20)と同様にSiHガスおよびCガスを用いることができる。そして、これらのガスにおけるC/Si比が相対的にバッファ層形成工程(S20)におけるC/Si比より大きくなるように、それぞれのガスの流量を設定する。この場合、バッファ層21におけるマイクロパイプ欠陥密度が低減されているため、活性層を構成するエピタキシャル層3においてマイクロパイプ欠陥密度などの欠陥密度を基板における欠陥密度より確実に低減できる。また、活性層となるべきエピタキシャル層3において、基底面転位の密度が基板2における基底面転位の密度より低くなるとともに、当該エピタキシャル層3での刃状転位の密度が基板2における刃状転位の密度より高くなっている。
【0023】
次に、注入工程(S40)を実施する。具体的には、まずエピタキシャル層3にp型の導電性を示す導電性不純物(たとえばアルミニウム(Al))を注入することにより、図1に示すようにp型層4を形成する。次にn型の導電型を示す不純物を注入することにより、図1に示すようにn+領域5、6を形成する。このn型を示す導電性不純物としては、たとえばリン(P)を用いることができる。このn+領域5、6を形成する場合、従来周知の任意の方法を利用することができる。たとえば、酸化膜をp型層4の上部表面を覆うように形成した後、フォトリソグラフィおよびエッチングによってn+領域5、6が形成されるべき領域の平面形状パターンと同じ平面形状パターンを有する開口部を当該酸化膜に形成する。さらに、このパターンが形成された酸化膜をマスクとして導電性不純物を注入する。このようにして、上述したn+領域5、6を形成することができる。
【0024】
この後、注入した不純物を活性化するための活性化アニール処理を行なう。この活性化アニール処理としては、たとえば加熱温度を1700℃、加熱時間を30分とする条件を用いてもよい。
【0025】
次に、図2に示すように、ゲート絶縁膜形成工程(S50)を実施する。具体的には、p型層4およびn+領域5、6の上部表面を犠牲酸化処理した後、p型層4およびn+領域5、6の表面を覆うように、ゲート絶縁膜としての酸化膜8および酸化膜7となるべき酸化膜を形成する。酸化膜の厚みとしては、たとえば40nmという値を用いることができる。
【0026】
次に、図2に示すように電極形成工程(S60)を実施する。具体的には、フォトリソグラフィ法により酸化膜上にパターンを有するレジスト膜を形成する。このレジスト膜をマスクとして用いて、酸化膜を部分的に除去することにより、n+領域5、6の上に位置する領域に開口部を形成する。この開口部の内部に、図1に示すソース電極11およびドレイン電極12となるべき導電体膜を形成する。この導電体膜は、上述したレジスト膜を残存させたまま形成する。その後、上述したレジスト膜を除去し、酸化膜上に位置する導電体膜をレジスト膜とともに除去(リフトオフ)することにより、図1に示すようなソース電極11およびドレイン電極12を形成することができる。
【0027】
この後、さらにゲート絶縁膜として作用する酸化膜8上にゲート電極10(図1参照)を形成する。このゲート電極10の形成方法としては、以下のような方法を用いることができる。たとえば、予め酸化膜8上の領域に位置する開口パターンを有するレジスト膜を形成し、当該レジスト膜の全面を覆うようにゲート電極を構成する導電体膜を形成する。そして、レジスト膜を除去することによって、ゲート電極となるべき導電体膜の部分以外の導電体膜を除去(リフトオフ)する。この結果、図1に示すようにゲート電極10が形成される。このようにして、図1に示すような半導体装置を得ることができる。
【0028】
(実施の形態2)
図3は、本発明による半導体装置の実施の形態2を示す断面模式図である。図3を参照して、本発明による半導体装置の実施の形態2を説明する。
【0029】
図3を参照して、本発明による半導体装置1は、縦型DiMOSFET(Double Implanted MOSFET)であって、基板2、バッファ層21、耐圧保持層22、p領域23、n+領域24、p+領域25、酸化膜26、ソース電極11および上部ソース電極27、ゲート電極10および基板2の裏面側に形成されたドレイン電極12を備える。具体的には、導電型がnの炭化ケイ素からなる基板2の表面上に、炭化ケイ素からなるバッファ層21が形成されている。このバッファ層21は導電型がn型であり、その厚みはたとえば0.5μmである。また、バッファ層におけるn型の導電性不純物の濃度はたとえば5×1017cm-3とすることができる。このバッファ層21上には耐圧保持層22が形成されている。この耐圧保持層22は、導電型がn型の炭化ケイ素からなり、たとえばその厚みは10μmである。また、耐圧保持層22におけるn型の導電性不純物の濃度としては、5×1015cm-3という値を用いることができる。
【0030】
この耐圧保持層22の表面には、導電型がp型であるp領域23が互いに間隔を隔てて形成されている。p領域23の内部においては、p領域23の表面層にn+領域24が形成されている。また、このn+領域24に隣接する位置には、p+領域25が形成されている。一方のp領域23におけるn+領域24上から、p領域23、2つのp領域23の間において露出する耐圧保持層22、他方のp領域23および当該他方のp領域23におけるn+領域24上にまで延在するように、酸化膜26が形成されている。酸化膜26上にはゲート電極10が形成されている。また、n+領域24およびp+領域25上にはソース電極11が形成されている。このソース電極11上には上部ソース電極27が形成されている。そして、基板2において、バッファ層21が形成された側の表面とは反対側の裏面にドレイン電極12が形成されている。
【0031】
活性層としてのn+領域24、p+領域25、p領域23および耐圧保持層22におけるマイクロパイプ密度は、基板2におけるマイクロパイプ密度より低くなっている。また、活性層としてのn+領域24、p+領域25、p領域23および耐圧保持層22における、バーガーズベクトルの向きが[0001]である転位の密度は、基板2における当該転位の密度より高くなっている。このようにすれば、上述した活性層におけるマイクロパイプ密度を基板2におけるマイクロパイプ密度に比べて低減することで、当該マイクロパイプに起因する活性層の電気的特性の劣化を抑制できる。この結果、電気的特性の優れた半導体装置1(DiMOSFET)を実現できる。
【0032】
また、上記半導体装置1では、活性層としてのn+領域24、p+領域25、p領域23および耐圧保持層22におけるマイクロパイプ密度が1cm-2以下である。この場合、半導体装置1において、マイクロパイプの存在に起因する動作不良の発生確率を低減できる。このため、半導体装置1の製造歩留りを向上させることができる。
【0033】
上記半導体装置1では、活性層としてのn+領域24、p+領域25、p領域23および耐圧保持層22における基底転位の密度は、基板2における基底面転位の密度よりも低く、刃状転位の密度は、基板2における刃状転位の密度よりも高くなっている。
【0034】
この場合、半導体装置1の特性(リーク電流や電気的特性の長期信頼性)に比較的影響を与える基底面転位の密度がn+領域24、p+領域25、p領域23および耐圧保持層22において低減されているため、半導体装置1の逆方向のリーク電流を低減することができるとともに、半導体装置1の長期信頼性を向上させることができる。具体的には、図3の耐圧保持層22上に酸化膜26を形成した場合に、半導体装置1の繰返し動作寿命が延びる、といった効果が得られる。
【0035】
次に、図3に示した半導体装置1の製造方法を説明する。まず、図2に示した半導体装置の製造方法と同様に、基板準備工程(S10)を実施する。ここでは、本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法と同様に、(03−38)面が主表面となった炭化ケイ素からなる基板2(図3参照)を準備する。
【0036】
また、この基板2としては、たとえば導電型がn型であり、基板抵抗が0.02Ωcmといった基板を用いてもよい。また、基板2の導電型不純物の濃度は、たとえば1×1019cm-3といった値を用いることができる。
【0037】
次に、バッファ層形成工程(S20)を実施する。バッファ層21の形成方法としては、図1に示した半導体装置1におけるバッファ層21の形成方法と同様の方法を用いることができる。また、バッファ層として、導電型がn型の炭化ケイ素からなり、たとえばその厚みが0.5μmのエピタキシャル層を形成する。バッファ層21における導電型不純物の濃度は、たとえば5×1017cm-3といった値を用いることができる。なお、バッファ層を形成するための原料ガスにおけるC/Si比(ガスに含まれるケイ素原子に対する炭素原子の比率)が相対的に(後述するエピタキシャル層形成工程(S30)におけるC/Si比より)小さくなるように、原料ガスの流量を設定する。このようにすれば、バッファ層21を形成する際に、基板2のマイクロパイプに起因して形成されるバッファ層21中のマイクロパイプがらせん転位に分解する反応が促進される。また、このようにすれば、後述するエピタキシャル層形成工程(S30)において形成される、活性層となるべき耐圧保持層22において、基底面転位の密度が基板2における基底面転位の密度より低くなるとともに、当該耐圧保持層22での刃状転位の密度が基板2における刃状転位の密度より高くなる。
【0038】
次に、エピタキシャル層形成工程(S30)を実施する。具体的には、バッファ層21上に耐圧保持層22を形成する。この耐圧保持層22としては、導電型がn型の炭化ケイ素からなる層をエピタキシャル成長法によって形成する。このエピタキシャル層形成工程(S30)においては、図2に示した製造方法と同様に、原料ガスとしてたとえばSiHガスおよびCガスを用いることができる。そして、これらのガスにおけるC/Si比が相対的にバッファ層形成工程(S20)におけるC/Si比より大きくなるように、それぞれのガスの流量を設定する。この場合、実施の形態1における製造方法と同様に、バッファ層21におけるマイクロパイプ欠陥密度が低減されているため、活性層を構成する耐圧保持層22においてマイクロパイプ欠陥密度などの欠陥密度を基板における欠陥密度より確実に低減できる。また、活性層となるべき耐圧保持層22において、基底面転位の密度が基板2における基底面転位の密度より低くなるとともに、当該耐圧保持層22での刃状転位の密度が基板2における刃状転位の密度より高くなっている。
【0039】
この耐圧保持層22の厚みとしては、たとえば10μmといった値を用いることができる。また、この耐圧保持層22におけるn型の導電性不純物の濃度としては、たとえば5×1015cm-3といった値を用いることができる。
【0040】
次に、図2に示した工程と同様に注入工程(S40)を実施する。具体的には、フォトリソグラフィおよびエッチングを用いて形成した酸化膜をマスクとして用いて、導電型がp型の不純物を耐圧保持層22に注入することにより、p領域23(図3参照)を形成する。また、用いた酸化膜を除去した後、再度新たなパターンを有する酸化膜を、フォトリソグラフィおよびエッチングを用いて形成する。そして、当該酸化膜をマスクとして、n型の導電性不純物を所定の領域に注入することにより、n+領域24(図3参照)を形成する。また、同様の手法により、導電型がp型の導電性不純物を注入することにより、p+領域25を形成する。
【0041】
このような注入工程(S40)の後、活性化アニール処理を行なう。この活性化アニール処理としては、たとえばアルゴンガスを雰囲気ガスとして用いて、加熱温度1700℃、加熱時間30分といった条件を用いることができる。
【0042】
次に、図2に示した工程と同様にゲート絶縁膜形成工程(S50)を実施する。具体的には、耐圧保持層22、p領域23、n+領域24、p+領域25上を覆うように酸化膜26となるべき酸化膜を形成する。この酸化膜を形成するための条件としては、たとえばドライ酸化(熱酸化)を行なってもよい。このドライ酸化の条件としては、加熱温度を1200℃、加熱時間を30分といった条件を用いることができる。
【0043】
次に、図2に示した工程と同様に電極形成工程(S60)を実施する。具体的には、上記酸化膜上にフォトリソグラフィ法を用いてパターンを有するレジスト膜を形成する。当該レジスト膜をマスクとして用いて、n+領域24およびp+領域25上に位置する酸化膜の部分をエッチングにより除去する。この後、レジスト膜上および当該酸化膜において形成された開口部内部においてn+領域24およびp+領域25と接触するように金属などの導電体膜を形成する。その後、レジスト膜を除去することにより、当該レジスト膜上に位置していた導電体膜を除去(リフトオフ)する。ここで、導電体としては、たとえばニッケル(Ni)を用いることができる。この結果、図3に示すように、ソース電極11およびドレイン電極12を得ることができる。なお、ここでアロイ化のための熱処理を行なうことが好ましい。具体的には、たとえば雰囲気ガスとして不活性ガスであるアルゴン(Ar)ガスを用い、加熱温度を950℃、加熱時間を2分といった熱処理(アロイ化処理)を行なう。
【0044】
その後、ソース電極11上に上部ソース電極27(図3参照)を形成する。また、基板2の裏面上にドレイン電極12(図3参照)を形成する。このようにして、図3に示す半導体装置を得ることができる。
【0045】
(実施の形態3)
図4は、本発明による半導体装置の実施の形態3を示す断面模式図である。図4を参照して、本発明による半導体装置の実施の形態3を説明する。
【0046】
図4を参照して、本発明による半導体装置1は、PNダイオードであって、基板2、バッファ層21、耐圧保持層22、n層31、p層32、p領域33、酸化膜7、電極34、35を備える。具体的には、導電型がnの炭化ケイ素からなる基板2の表面上に、炭化ケイ素からなるバッファ層21が形成されている。このバッファ層21は導電型がn型のn層であり、その厚みはたとえば0.5μmである。また、バッファ層におけるn型の導電性不純物の濃度はたとえば5×1016cm-3とすることができる。このバッファ層21上にはn層31が形成されている。このn層31は、導電型がn型の炭化ケイ素からなり、たとえばその厚みは50μmである。また、n層31におけるn型の導電性不純物の濃度としては、1×1015cm-3という値を用いることができる。
【0047】
このn層31上にはp層32が形成されている。このp層32は、導電型がp型の炭化ケイ素からなり、たとえばその厚みは1μmである。また、p層32におけるp型の導電性不純物の濃度としては、1×1017cm-3という値を用いることができる。
【0048】
このp層32の表面には、導電型がp型であるp領域33が形成されている。p領域33の厚みはたとえば0.3μmであって、p領域33におけるp型の導電性不純物の濃度としては、1×1019cm-3という値を用いることができる。p+領域33の端部からp層32の上部表面にまで延在するように、SiOからなる酸化膜7が形成されている。異なる観点から言えば、p層32の上部表面上に形成された酸化膜7には、p領域33の上部表面を露出させる開口部が形成されている。当該開口部の内部において、p領域33と接触するように電極34が形成されている。電極34としては、たとえばニッケル(Ni)膜、あるいはチタン(Ti)とアルミニウム(Al)との積層膜を用いることができる。そして、基板2において、バッファ層21が形成された側の表面とは反対側の裏面に電極35が形成されている。
【0049】
活性層としてのn層31、p層32、p+領域33におけるマイクロパイプ密度は、基板2におけるマイクロパイプ密度より低くなっている。また、活性層としてのn層31、p層32、p+領域33における、バーガーズベクトルの向きが[0001]である転位の密度は、基板2における当該転位の密度より高くなっている。このようにすれば、上述した活性層におけるマイクロパイプ密度を基板2におけるマイクロパイプ密度に比べて低減することで、当該マイクロパイプに起因する活性層の電気的特性の劣化を抑制できる。この結果、電気的特性の優れた半導体装置1(PNダイオード)を実現できる。
【0050】
また、上記半導体装置1では、活性層(たとえばn層31、p層32、p領域33)におけるマイクロパイプ密度が1cm-2以下である。この場合、半導体装置1において、マイクロパイプの存在に起因する動作不良の発生確率を低減できる。このため、半導体装置1の製造歩留りを向上させることができる。
【0051】
また、上記半導体装置1では、活性層(たとえばn層31、p層32、p領域33)における、基底面転位の密度は基板2における基底面転位の密度よりも低く、刃状転位の密度は基板2における刃状転位の密度よりも高くなっている。
【0052】
この場合、半導体装置1の特性(リーク電流や電気的特性の長期信頼性)に比較的影響を与える基底面転位の密度が活性層において低減されているため、半導体装置1の逆方向のリーク電流を低減することができるとともに、半導体装置1の長期信頼性を向上させることができる。具体的には、たとえば図4のp層32上に酸化膜7を形成した場合に、半導体装置1の繰返し動作寿命が延びる、図4に示すpnダイオードにおいては、順方向電圧特性の長期信頼性が向上する(すなわち、当該pnダイオードの使用につれてON抵抗が上がる傾向があるが、当該ON抵抗の上昇の程度が小さく抑制される)、といった効果が得られる。
【0053】
次に、図4に示した半導体装置1の製造方法を説明する。まず、図2に示した半導体装置の製造方法と同様に、基板準備工程(S10)を実施する。ここでは、本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法と同様に、(03−38)面が主表面となった炭化ケイ素からなる基板2(図4参照)を準備する。
【0054】
また、この基板2としては、たとえば導電型がn型であり、基板抵抗が0.02Ωcmといった基板を用いてもよい。また、基板2の導電型不純物の濃度は、たとえば1×1019cm-3といった値を用いることができる。
【0055】
次に、バッファ層形成工程(S20)を実施する。バッファ層21の形成方法としては、図1に示した半導体装置1におけるバッファ層21の形成方法と同様の方法を用いることができる。また、バッファ層として、導電型がn型の炭化ケイ素からなり、たとえばその厚みが0.5μmのエピタキシャル層を形成する。バッファ層21における導電型不純物の濃度は、たとえば5×1016cm-3といった値を用いることができる。なお、バッファ層を形成するための原料ガスにおけるC/Si比(ガスに含まれるケイ素原子に対する炭素原子の比率)が相対的に(後述するエピタキシャル層形成工程(S30)におけるC/Si比より)小さくなるように、原料ガスの流量を設定する。具体的には、実施の形態1における半導体装置の製造方法と同様に、たとえばC/Si比が1以上1.5以下、より好ましくは1以上1.2以下といった範囲になるように、ガスの流量を設定する。このようにすれば、バッファ層21を形成する際に、基板2のマイクロパイプに起因して形成されるバッファ層21中のマイクロパイプがらせん転位に分解する反応が促進される。また、このようにすれば、後述するエピタキシャル層形成工程(S30)において形成される、活性層となるべきn層31などにおいて、基底面転位の密度が基板2における基底面転位の密度より低くなるとともに、当該n層31での刃状転位の密度が基板2における刃状転位の密度より高くなる。
【0056】
次に、エピタキシャル層形成工程(S30)を実施する。具体的には、バッファ層21上にn層31を形成する。このn層31としては、導電型がn型の炭化ケイ素からなる層をエピタキシャル成長法によって形成する。また、n層31上にp層32を形成する。このp層32としては、導電型がp型の炭化ケイ素からなる層をエピタキシャル成長法によって形成する。このエピタキシャル層形成工程(S30)においては、図2に示した製造方法と同様に、原料ガスとしてたとえばSiHガスおよびCガスを用いることができる。そして、これらのガスにおけるC/Si比が相対的にバッファ層形成工程(S20)におけるC/Si比より大きくなるように、それぞれのガスの流量を設定する。この場合、実施の形態1における製造方法と同様に、バッファ層21におけるマイクロパイプ欠陥密度が低減されているため、活性層を構成するn層31およびp層32においてマイクロパイプ欠陥密度などの欠陥密度を基板における欠陥密度より確実に低減できる。
【0057】
このn層31の厚みとしては、たとえば50μmといった値を用いることができる。また、このn層31におけるn型の導電性不純物の濃度としては、たとえば1×1015cm-3といった値を用いることができる。また、p層32の厚みとしては、たとえば1μmといった値を用いることができる。また、このp層32におけるp型の導電性不純物の濃度としては、たとえば1×1017cm-3といった値を用いることができる。
【0058】
次に、図2に示した工程と同様に注入工程(S40)を実施する。具体的には、フォトリソグラフィおよびエッチングを用いて形成した酸化膜をマスクとして用いて、導電型がp型の不純物をp層32に注入することにより、p領域33(図4参照)を形成する。
【0059】
このような注入工程(S40)の後、活性化アニール処理を行なう。この活性化アニール処理としては、たとえばアルゴンガスを雰囲気ガスとして用いて、加熱温度1700℃、加熱時間30分といった条件を用いることができる。
【0060】
次に、図2に示した工程とは異なり、ゲート絶縁膜形成工程(S50)は実施せず、電極形成工程(S60)を実施する。具体的には、上述した注入工程(S40)において形成した酸化膜を除去した後、再度p領域33およびp層32の上部表面を覆う酸化膜を形成する。当該酸化膜上にフォトリソグラフィ法を用いてパターンを有するレジスト膜を形成する。当該レジスト膜をマスクとして用いて、p+領域33上に位置する酸化膜の部分をエッチングにより除去する。この後、レジスト膜上および当該酸化膜において形成された開口部内部に金属(たとえばNiあるいはTiとAlとの積層構造(Ti/Al積層構造))からなる導電体膜を形成する。当該導電体膜は、開口部の内部においてp+領域33と接触するように形成される。その後、レジスト膜を除去することにより、当該レジスト膜上に位置していた導電体膜を除去(リフトオフ)する。この結果、図4に示すように、電極34を得ることができる。なお、ここでアロイ化のための熱処理を行なうことが好ましい。具体的には、たとえば雰囲気ガスとして不活性ガスであるアルゴン(Ar)ガスを用い、加熱温度を950℃、加熱時間を2分といった熱処理(アロイ化処理)を行なう。
【0061】
その後、基板2の裏面上に電極35(図4参照)を形成する。このようにして、図4に示す半導体装置を得ることができる。
【0062】
ここで、上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、本発明の特徴的な構成を列挙する。
【0063】
この発明に従った炭化ケイ素半導体装置としての半導体装置1は、面方位{0001}に対しオフ角が50°以上65°以下である、炭化ケイ素からなる基板2と、バッファ層21と、活性層(図1のエピタキシャル層3、p型層4、およびn+領域5、6、または図3におけるn+領域24、p+領域25、p領域23および耐圧保持層22または図4におけるn層31、p層32、p領域33)cとを備える。バッファ層21は、基板2上に形成され、炭化ケイ素からなる。活性層は、バッファ層21上に形成され、炭化ケイ素からなる。活性層(たとえばp型層4、耐圧保持層22またはn層31)におけるマイクロパイプ密度は基板2におけるマイクロパイプ密度より低い。また、p型層4、耐圧保持層22またはn層31などにおける、バーガーズベクトルの向きが[0001]である転位の密度は、基板2における当該転位の密度より高い。
【0064】
このようにすれば、活性層(たとえばp型層4、耐圧保持層22またはn層31)におけるマイクロパイプの密度を低減することによりp型層4、耐圧保持層22またはn層31などの電気的特性を向上させることができる。このため、電気的特性の優れた半導体装置1を実現できる。
【0065】
なお、マイクロパイプの密度の測定方法としては、光学顕微鏡による観察、KOHエッチングによるエッチピット観察、などを用いることができる。また、バーガーズベクトルの向きが[0001]である転位の密度の測定方法としては、KOHエッチングによるエッチピット観察や、X線トポグラフィーなどを用いることができる。
【0066】
上記半導体装置1では、活性層(たとえばp型層4、耐圧保持層22またはn層31)におけるマイクロパイプ密度が1cm-2以下であってもよい。この場合、半導体装置1において、マイクロパイプの存在に起因する動作不良の発生確率を低減できる。このため、半導体装置1の製造歩留りを向上させることができる。
【0067】
上記半導体装置1では、活性層(たとえばp型層4、耐圧保持層22またはn層31)における、バーガーズベクトルの向きが[11−20]で、転位線の向きが実質的に[11−20]である基底面転位の密度は、基板2における基底面転位の密度よりも低く、バーガーズベクトルの向きが[11−20]で、転位線の向きが実質的に[0001]である刃状転位の密度は、基板2における刃状転位の密度よりも高くなっていてもよい。
【0068】
この場合、半導体装置1の特性(リーク電流や電気的特性の長期信頼性)に比較的影響を与える基底面転位の密度が活性層において低減されているため、半導体装置1の逆方向のリーク電流を低減することができる(耐圧を向上させることができる)とともに、半導体装置1の長期信頼性を向上させることができる。具体的には、たとえば図1、図3、図4に示すように活性層上に酸化膜を形成した場合(図1のp型層4上に酸化膜7、8を形成した場合、あるいは図3の耐圧保持層22上に酸化膜26を形成した場合、あるいは図4のp層32上に酸化膜7を形成した場合)に、半導体装置1の繰返し動作寿命が延びる、あるいは半導体装置1として図4に示すようなpnダイオードを形成した場合には、順方向電圧特性の長期信頼性が向上する(当該pnダイオードの使用につれてON抵抗が上がる傾向があるが、当該ON抵抗の上昇の程度が小さく抑制される)、といった効果が得られる。なお、上述した刃状転位は、基底面転位に比べると半導体装置1の特性に対する影響が少なく、ある程度活性層に存在していても当該半導体装置1の特性の顕著な劣化を招かない。
【0069】
なお、ここで基底面転位について転移線の向きが実質的に[11−20]であるとは、転位線の向きが[11−20]である場合のみならず、たとえば当該転位線の向きと[11−20]で示される方位とのなす角度が30°以下、より好ましくは20°以下である場合をいう。また、刃状転位について転位線の向きが実質的に[0001]であるとは、転位線の向きが[0001]である場合のみならず、たとえば当該転位線の向きと[0001]で示される方位とのなす角度が30°以下、より好ましくは20°以下である場合をいう。ただし、基底面転位や刃状転位などの転位の判別は、バーガーズベクトルの向き、転位線の向き、さらにKOHなどによるエッチング後の凹部(エッチピット)の形状などを綜合し、判断することができる。
【0070】
上記半導体装置1において、基板2のオフ方位は<11−20>方向±5°以下の範囲であってもよい。また、炭化ケイ素からなる基板2が4H型ポリタイプのSiC基板であってもよい。また、上記半導体装置1において、基板2のオフ方位が<01−10>方向±5°以下の範囲であってもよい。この場合、上述したオフ方位は4H型ポリタイプのSiC基板における代表的なオフ方位であり、SiC基板上へのエピタキシャル層の形成などを容易に行なうことができる。なお、オフ方位の範囲をそれぞれ±5°以下としたのは、基板スライス時の加工ばらつきを考慮したからである。
【0071】
上記半導体装置1において、基板2の主表面の面方位は、面方位{03−38}に対しオフ角が−3°以上+5°以下であってもよい。また、より好ましくは基板の主表面の面方位が実質的に{03−38}であり、さらに好ましくは基板の主表面の面方位が{03−38}である。ここで、基板の主表面が実質的に{03−38}であるとは、基板の加工精度などにより実質的に面方位が{03−38}とみなせるオフ角の範囲に基板の主表面の面方位が入っていることを意味し、この場合のオフ角の範囲としてはたとえば{03−38}に対してオフ角が±2°といった範囲である。このように、炭化ケイ素半導体装置としてMOSFETを形成した場合、活性層に形成されるチャネル領域(図1のp型層4におけるn+領域5、6の間の領域、または図3ので酸化膜26に接する部分であって、n+領域24と耐圧保持層22との間のp領域23の部分)のキャリア移動度(チャネル移動度)を大きくすることができるので、マイクロパイプの低減された活性層を利用して良好な特性の半導体装置1を得ることができる。
【0072】
なお、面方位{03−38}に対する任意の方向でのオフ角の範囲を−3°以上+5°以下としたのは、良好なキャリア移動度(チャネル移動度)と考えられる90cm/Vs程度以上のチャネル移動度を示すオフ角度の範囲が少なくとも上記範囲と考えられるためである。
【0073】
上記半導体装置1において、基板2の不純物濃度は、バッファ層21の不純物濃度より高くてもよい。また、バッファ層21の不純物濃度は、活性層(図3の耐圧保持層22)の不純物濃度より高くてもよい。この場合、いわゆる縦型のデバイスを形成する場合に好都合な不純物濃度分布となるため、本発明に従った炭化ケイ素半導体装置として図3に示す半導体装置1のような縦型デバイスを容易に構成できる。
【0074】
この発明に従った炭化ケイ素半導体装置の製造方法では、まず、面方位{0001}に対しオフ角が50°以上65°以下である、炭化ケイ素からなる基板2を準備する工程(基板準備工程(S10))を実施する。当該基板2上に、炭化ケイ素からなるバッファ層21を形成する工程(バッファ層形成工程(S20))を実施する。バッファ層21上に活性層を形成する工程(エピタキシャル層形成工程(S30))を実施する。バッファ層形成工程(S20)では、バッファ層21におけるマイクロパイプ密度が基板2におけるマイクロパイプ密度より低く、当該バッファ層21における、バーガーズベクトルの向きが[0001]である転位の密度は、基板2における転位の密度より高くなる成膜条件で、バッファ層21が形成される。具体的には、バッファ層を形成する工程では、マイクロパイプがらせん転位(バーガーズベクトルb=[0001]、転位の伸展方向がほぼ[0001]である転位)に分解するような成膜条件で、バッファ層21が形成される。また、当該成膜条件は、らせん転位の一部が部分転位(バーガーズベクトルb=[0001]、転位の伸展方向がほぼ[11−20]である転位)に転換するような成膜条件であってもよい。
【0075】
このようにすれば、バッファ層21中のマイクロパイプ密度を基板2におけるマイクロパイプ密度より低減することにより、バッファ層21上に形成される活性層(たとえばp型層4または耐圧保持層22)では、結果的にマイクロパイプ密度を基板2での当該密度に比べて低くすることができる。また、バッファ層21におけるマイクロパイプ密度が低減することで、活性層の成長中に(バッファ層21のマイクロパイプ欠陥に起因して)発生する活性層での欠陥の密度を低減できる。この結果、マイクロパイプ欠陥の少ない活性層を有する半導体装置1を容易に得ることができる。
【0076】
上記炭化ケイ素半導体装置の製造方法において、バッファ層21を形成する工程では、活性層(図1のエピタキシャル層3、p型層4、およびn+領域5、6、または図3におけるn+領域24、p+領域25、p領域23および耐圧保持層22または図4におけるn層31、p層32、p領域33)における、バーガーズベクトルの向きが[11−20]で、転位線の向きが実質的に[11−20]である基底面転位の密度は、基板2における基底面転位の密度よりも低く、バーガーズベクトルの向きが[11−20]で、転位線の向きが実質的に[0001]である刃状転位の密度は、基板2における刃状転位の密度よりも高くなる成膜条件で、バッファ層21が形成されていてもよい。この場合、バッファ層21上に形成される活性層において基底面転位の密度を基板2中の当該基底面転位の密度より低減することができるので、逆方向リーク電流を低減するとともに電気的特性の長期信頼性が向上した半導体装置1を得ることができる。
【0077】
上記炭化ケイ素半導体装置の製造方法において、バッファ層形成工程(S20)における成膜条件では、バッファ層21を形成するための原料ガスにおけるケイ素原子に対する炭素原子の割合であるC/Si比の値が、活性層を形成する工程であるエピタキシャル層形成工程(S30)におけるC/Si比の値より小さくなるように、原料ガスの組成および流量が決定されていてもよい。
【0078】
この場合、バッファ層21の形成時にはマイクロパイプがらせん転位に分解する反応を促進することができる。このため、バッファ層21におけるマイクロパイプ密度を基板2におけるマイクロパイプ密度より確実に低くすることができる。また、上述のようにバッファ層21におけるマイクロパイプ密度を基板2におけるマイクロパイプ密度より低くしておけば、結果的にバッファ層上に形成される活性層での基底面転位の密度を基板における基底面転位の密度より低くすることができる。また、当該基底面転位の密度の低下に伴って、活性層での刃状転位の密度が基板における刃状転位の密度より高くなる。
【0079】
なお、上述した本発明による半導体装置は、pnダイオード以外であって、基板2上にバッファ層21を介して活性層を形成するような半導体装置であれば適用可能である。たとえば、バイポーラトランジスタ、サイリスタ、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ:Insulated Gate Bipolar Transistor)に本発明を適用することができる。
【0080】
(実施例1)
本発明の効果を確認するため、以下のような実験を行なった。
【0081】
(試料)
実施例の試料:
実施例の試料として、主表面の面方位が(03−38)である4Hポリタイプの炭化ケイ素基板(SiC基板)を準備した。SiC基板のサイズは2インチであり、当該基板におけるマイクロパイプ密度は100cm−2であった。また、当該基板におけるバーガーズベクトルの向きが[0001]である転位の密度は1.5×10cm−2であった。
【0082】
当該基板上に、SiCからなるバッファ層をエピタキシャル成長法により形成した。バッファ層の厚みは1μmである。このときの成膜条件としては、SiHの流量を7.5sccm、Cの流量を3sccm、基板温度を1550℃、成長時間を10分とした。つまり、バッファ層を形成する工程におけるC/Si比の値は1.2である。
【0083】
次に、当該バッファ層上に活性層としてのSiC層をエピタキシャル成長法により形成した。活性層の厚みは10μmである。このときの成膜条件としては、SiHの流量を7.5sccm、Cの流量を5sccm、基板温度を1550℃、成長時間を90分とした。つまり、活性層を形成する工程におけるC/Si比の値は2である。
【0084】
比較例1の試料:
まず、実施例の試料と同様のSiC基板を準備した。このSiC基板上に、SiCからなるバッファ層を形成した。バッファ層の厚みは実施例の試料におけるバッファ層の厚みと同じとした。ただし、このバッファ層の成膜条件は実施例1における成膜条件と異なる。具体的には、成膜条件として、SiHの流量を7.5sccm、Cの流量を5sccm、基板温度を1550℃、成長時間を10分とした。つまり、バッファ層を形成する工程におけるC/Si比の値は2である。
【0085】
次に、バッファ層上に活性層としてのSiC層を形成した。成膜条件は、実施例における活性層の成膜条件と同様とした。
【0086】
比較例2の試料:
まず、実施例の試料と同様のSiC基板を準備した。このSiC基板上に、バッファ層を形成せず直接活性層としてのSiC層を直接形成した。活性層の厚みは実施例における活性層の厚みと同様とした。また、このときの成膜条件としては、SiHの流量を7.5sccm、Cの流量を5sccm、基板温度を1550℃、成長時間を90分とした。
【0087】
(測定方法)
基板のマイクロパイプ密度の測定方法としては、KOHエッチングによるエッチピット観察という方法を用いた。
【0088】
また、基板のバーガーズベクトルの向きが[0001]である転位の密度の測定方法としては、KOHエッチングによるエッチピット観察という方法を用いた。
【0089】
また、活性層およびバッファ層についても、同様の手法を用いてマイクロパイプ密度および上記転位の密度を測定した。
【0090】
また、実施例および比較例2については、活性層の表面状態を顕微鏡を用いて観察した。
【0091】
(結果)
実施例における活性層のマイクロパイプ密度は0cm−2であり、また、バーガーズベクトルの向きが[0001]である転位の密度は1.8×10cm−2であった。
【0092】
また、実施例におけるバッファ層のマイクロパイプ密度は0cm−2であり、また、バーガーズベクトルの向きが[0001]である転位の密度は1.8×10cm−2であった。
【0093】
また、比較例1における活性層のマイクロパイプ密度は100cm−2であり、また、バーガーズベクトルの向きが[0001]である転位の密度は1.5×10cm−2であった。
【0094】
また、比較例1におけるバッファ層のマイクロパイプ密度は100cm−2であり、また、バーガーズベクトルの向きが[0001]である転位の密度は1.5×10cm−2であった。
【0095】
また、比較例2における活性層のマイクロパイプ密度は100cm−2であり、また、バーガーズベクトルの向きが[0001]である転位の密度は1.5×10cm−2であった。
【0096】
このように、実施例の試料では活性層におけるマイクロパイプ密度が基板におけるマイクロパイプ密度より低く、また、活性層における、バーガーズベクトルの向きが[0001]である転位の密度が、基板における当該転位の密度より高くなっている。
【0097】
また、活性層の表面について観察した結果を図5および図6に示す。ここで、図5は、実施例の試料の表面状態を示す顕微鏡写真であり、図6は、比較例2の試料の表面状態を示す顕微鏡写真である。
【0098】
図4に示すように、実施例の試料については、活性層の表面は平坦な形状になっていた。一方、図5に示すように、比較例2の試料については、活性層の表面において、欠陥に起因する開口部などが観察された。なお、比較例1の試料については、比較例2の試料より活性層の表面は平坦であったが、実施例の試料と比べると活性層の表面に欠陥が多少観察された。
【0099】
このように、実施例の試料では、活性層のマイクロパイプ密度を低減することで、活性層表面の平坦性を向上させることができた。
【0100】
(実施例2)
本発明の効果を確認するため、さらに以下のような実験を行なった。
【0101】
(試料)
上述した実施例1における実施例の試料および比較例2の試料と同様の製造方法を用いて、実施例の試料および比較例の試料を準備した。
【0102】
(測定方法)
基板におけるマイクロパイプ密度の測定方法としては、KOHエッチングによるエッチピット観察という方法を用いた。また、基板におけるバーガーズベクトルの向きが[11−20]で、転位線の向きが実質的に[11−20]である基底面転位の密度の測定方法、および基板におけるバーガーズベクトルの向きが[11−20]で、転位線の向きが実質的に[0001]である刃状転位の密度の測定方法としても、KOHエッチングによるエッチピット観察という手法を用いた。
【0103】
また、活性層およびバッファ層についても、同様の手法を用いてマイクロパイプ密度、基底面転位密度および刃状転位密度を測定した。
【0104】
また、比較例について、活性層の表面状態を顕微鏡を用いて観察した。
(結果)
実施例における基板のマイクロパイプ密度は100cm−2であり、基底面転位密度は2.5×103cm−2であり、刃状転位密度は1.1×104cm−2であった。また、実施例におけるバッファ層のマイクロパイプ密度は0cm−2であり、基底面転位密度は1.5×102cm−2であり、刃状転位密度は1.3×104cm−2であった。また、実施例における活性層のマイクロパイプ密度は0cm−2であり、基底面転位密度は1.5×102cm−2であり、刃状転位密度は1.3×104cm−2であった。
【0105】
一方、比較例における基板のマイクロパイプ密度は100cm−2であり、基底面転位密度は2.5×103cm−2であり、刃状転位密度は1.1×104cm−2であった。また、比較例におけるバッファ層のマイクロパイプ密度は100cm−2であり、基底面転位密度は2.5×103cm−2であり、刃状転位密度は1.1×104cm−2であった。また、比較例における活性層のマイクロパイプ密度は100cm−2であり、基底面転位密度は2.5×103cm−2であり、刃状転位密度は1.1×104cm−2であった。
【0106】
このように、実施例の試料では活性層におけるマイクロパイプ密度が基板におけるマイクロパイプ密度より低く、さらに、活性層における基底面転位密度は基板における基底面転位密度より低い。一方、実施例の活性層における刃状転位密度は基板における波状転位密度より高くなっている。
【0107】
また、比較例の試料における活性層表面について、KOHにてエッチングした後の状態を観察した結果を図7〜図10に示す。図7は、比較例の活性層表面をKOHエッチングした後の状態を示す顕微鏡写真である。図8は、図7に示した顕微鏡写真を説明するための模式図である。図9は、比較例の活性層表面をKOHエッチングした後の状態を示す他の顕微鏡写真である。図10は、図9に示した顕微鏡写真を説明するための模式図である。
【0108】
図7〜図10を参照して、比較例の活性層の表面では、KOHエッチングを行なうことによりマイクロパイプを示す凹部42、基底面転位を示す凹部41、螺旋転位を示す凹部43、刃状転位を示す凹部44が観察されている。マイクロパイプを示す凹部42のサイズが最も大きく、その平面形状は(活性層の表面状態にもよるが)多角形状(正確には六角形状)であり、その最大直径は40μm以上70μm以下である。また、次に大きな凹部は螺旋転位を示す凹部43であり、その平面形状は基本的に六角形状である。螺旋転位を示す凹部43の最大直径は10μm以上40μm未満である。刃状転位を示す凹部44は、上述した螺旋転位を示す凹部43と同様にその平面形状は基本的に六角形状であるが、螺旋転位を示す凹部43よりサイズ的に小さい。具体的には、刃状転位を示す凹部44の最大直径は5μm以上10μm未満である。また、基底面転位を示す凹部41は、基底面転位の転位線の向き([11−20]方向)に延びる線状の形状を有している。このように、上述した基底面転位やマイクロパイプなどはKOHエッチング後の凹部41〜44の形状およびサイズにより容易に判別できる。
【0109】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、MOSFETやDiMOSFETなど、炭化ケイ素からなる半導体層を活性層として用いる炭化ケイ素半導体装置に有利に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明による半導体装置を示す断面模式図である。
【図2】図1に示した半導体装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明による半導体装置の実施の形態2を示す断面模式図である。
【図4】本発明による半導体装置の実施の形態3を示す断面模式図である。
【図5】実施例の試料の表面状態を示す顕微鏡写真である。
【図6】比較例2の試料の表面状態を示す顕微鏡写真である。
【図7】比較例の活性層表面をKOHエッチングした後の状態を示す顕微鏡写真である。
【図8】図7に示した顕微鏡写真を説明するための模式図である。
【図9】比較例の活性層表面をKOHエッチングした後の状態を示す他の顕微鏡写真である。
【図10】図9に示した顕微鏡写真を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0112】
1 半導体装置、2 基板、3 エピタキシャル層、4 p型層、5,6,24 n領域、7,8,26 酸化膜、10 ゲート電極、11 ソース電極、12 ドレイン電極、21 バッファ層、22 耐圧保持層、23 p領域、25,33 p領域、27 上部ソース電極、31 n層、32 p層、34,35 電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面方位{0001}に対しオフ角が50°以上65°以下である、炭化ケイ素からなる基板と、
前記基板上に形成され、炭化ケイ素からなるバッファ層と、
前記バッファ層上に形成され、炭化ケイ素からなる活性層とを備え、
前記活性層におけるマイクロパイプ密度は前記基板におけるマイクロパイプ密度より低く、
前記活性層における、バーガーズベクトルの向きが[0001]である転位の密度は、前記基板における前記転位の密度より高い、炭化ケイ素半導体装置。
【請求項2】
前記活性層におけるマイクロパイプ密度は1cm-2以下である、請求項1に記載の炭化ケイ素半導体装置。
【請求項3】
前記活性層における、バーガーズベクトルの向きが[11−20]で、転位線の向きが実質的に[11−20]である基底面転位の密度は、前記基板における前記基底面転位の密度よりも低く、バーガーズベクトルの向きが[11−20]で、転位線の向きが実質的に[0001]である刃状転位の密度は、前記基板における前記刃状転位の密度よりも高い、請求項1または2に記載の炭化ケイ素半導体装置。
【請求項4】
前記基板のオフ方位が<11−20>方向±5°の範囲である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化ケイ素半導体装置。
【請求項5】
前記基板のオフ方位が<01−10>方向±5°の範囲である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化ケイ素半導体装置。
【請求項6】
前記基板の主表面の面方位が、面方位{03−38}に対するオフ角が−3°以上+5°以下である、請求項5に記載の炭化ケイ素半導体装置。
【請求項7】
前記基板の不純物濃度は、前記バッファ層の不純物濃度より高く、
前記バッファ層の不純物濃度は、前記活性層の不純物濃度より高い、請求項1〜6のいずれか1項に記載の炭化ケイ素半導体装置。
【請求項8】
面方位{0001}に対しオフ角が50°以上65°以下である、炭化ケイ素からなる基板を準備する工程と、
前記基板上に、炭化ケイ素からなるバッファ層を形成する工程と、
前記バッファ層上に活性層を形成する工程とを備え、
前記バッファ層を形成する工程では、前記バッファ層におけるマイクロパイプ密度が前記基板におけるマイクロパイプ密度より低く、前記バッファ層における、バーガーズベクトルの向きが[0001]である転位の密度は、前記基板における前記転位の密度より高くなる成膜条件で、前記バッファ層が形成される、炭化ケイ素半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記バッファ層を形成する工程では、前記活性層における、バーガーズベクトルの向きが[11−20]で、転位線の向きが実質的に[11−20]である基底面転位の密度は、前記基板における前記基底面転位の密度よりも低く、バーガーズベクトルの向きが[11−20]で、転位線の向きが実質的に[0001]である刃状転位の密度は、前記基板における前記刃状転位の密度よりも高くなる成膜条件で、前記バッファ層が形成される、請求項8に記載の炭化ケイ素半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記バッファ層を形成する工程における前記成膜条件では、前記バッファ層を形成するための原料ガスにおける珪素原子に対する炭素原子の割合であるC/Si比の値が、前記活性層を形成する工程における前記C/Si比の値より小さくなるように、前記原料ガスの組成および流量が決定されている、請求項8または9に記載の炭化ケイ素半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図10】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−164571(P2009−164571A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235303(P2008−235303)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】