表示装置用Al合金膜
【課題】450〜600℃程度の高温下に曝されてもヒロックが発生せず高温耐熱性に優れており、膜自体の電気抵抗(配線抵抗)も低く、アルカリ環境下の耐食性にも優れた表示装置用Al合金膜を提供する。
【解決手段】Ta、Nb、Re、Zr、W、Mo、V、Hf、Ti、CrおよびPtよりなる群(X群)から選択される少なくとも一種の元素と、希土類元素の少なくとも一種とを含み、450〜600℃の加熱処理を行なったとき、下記(1)の要件を満足する表示装置用Al合金膜である。
(1)Alと、X群から選択される少なくとも一種の元素と、希土類元素の少なくとも一種とを含む第1の析出物について、円相当直径20nm以上の析出物が500,000個/mm2以上の密度で存在する。
【解決手段】Ta、Nb、Re、Zr、W、Mo、V、Hf、Ti、CrおよびPtよりなる群(X群)から選択される少なくとも一種の元素と、希土類元素の少なくとも一種とを含み、450〜600℃の加熱処理を行なったとき、下記(1)の要件を満足する表示装置用Al合金膜である。
(1)Alと、X群から選択される少なくとも一種の元素と、希土類元素の少なくとも一種とを含む第1の析出物について、円相当直径20nm以上の析出物が500,000個/mm2以上の密度で存在する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイなどの表示装置に使用され、電極および配線材料として有用な表示装置用Al合金膜;上記Al合金膜を備えた表示装置、および上記Al合金膜を形成するためのスパッタリングターゲットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
表示装置用Al合金膜は主に電極および配線材料として用いられており、電極および配線材料としては、液晶ディスプレイ(LDC)における薄膜トランジスタ用のゲート、ソースおよびドレイン電極並びに配線材料、有機EL(OELD)における薄膜トランジスタ用のゲート、ソースおよびドレイン電極並びに配線材料、フィールドエミッションディスプレイ(FED)におけるカソードおよびゲート電極並びに配線材料、蛍光真空管(VFD)におけるアノード電極および配線材料、プラズマディスプレイ(PDP)におけるアドレス電極および配線材料、無機ELにおける背面電極などが挙げられる。
【0003】
以下では、液晶表示装置として液晶ディスプレイを代表的に取り上げ、説明するがこれに限定する趣旨ではない。
【0004】
液晶ディスプレイは、最近では100インチを超える大型のものが商品化され、低消費電力技術も進んでおり、主要な表示デバイスとして汎用されている。液晶ディスプレイには動作原理の異なるものがあるが、このうち、画素のスイッチングに薄膜トランジスタ(Thin Film Transitor、以下、TFTと呼ぶ。)を用いるアクティブ・マトリックス型液晶ディスプレイは、高精度画質を有し、高速動画にも対応できるため、主力となっている。そのなかで、更に低消費電力で画素の高速スイッチングが求められる液晶ディスプレイでは、多結晶シリコンや連続粒界結晶シリコンを半導体層に用いたTFTが用いられている。
【0005】
例えば、アクティブマトリクス型の液晶ディスプレイは、スイッチング素子であるTFT、導電性酸化膜から構成される画素電極、および走査線や信号線を含む配線を有するTFT基板を備えており、走査線や信号線は、画素電極に電気的に接続されている。走査線や信号線を構成する配線材料には、Al基合金薄膜が用いられている。
【0006】
図5を参照しながら、半導体層として水素化アモルファス・シリコンを用いたTFT基板の中核部の構成を説明する。
【0007】
図5に示すように、ガラス基板1a上には、走査線25が形成され、走査線25の一部は、TFTのオン・オフを制御するゲート電極26として機能する。ゲート電極26はゲート絶縁膜(窒化シリコン膜など)27で電気的に絶縁されている。ゲート絶縁膜27を介してチャンネル層である半導体シリコン層30が形成され、さらに保護膜(窒化シリコン膜など)31が形成される。半導体シリコン層30は、低抵抗シリコン層32を介して、ソース電極28およびドレイン電極29に接合され、電気的な導通性をもつ。
【0008】
ドレイン電極29は、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明電極5と直接に接触している構造[ダイレクト・コンタクト(DC)と呼ばれる。]を有している。ダイレクト・コンタクト用に用いられる電極配線材料として、例えば特許文献1〜5に記載のAl合金が挙げられる。Alは、電気抵抗率が小さく、微細加工性に優れるためである。これらのAl合金は、Mo、Cr、Ti、Wなどの高融点金属からなるバリアメタル層を介在させずに、透明電極を構成する酸化物透明導電膜と直接、またはシリコン半導体層と直接、接続されている。
【0009】
これらの配線膜や電極25〜32は、窒化シリコンなどの絶縁性保護膜33で覆われ、透明電極5を通じてドレイン電極29に電気を供給する。
【0010】
図5に示すTFTの動作特性を安定して確保するためには、特に半導体シリコン層30におけるキャリア(電子や正孔)の移動度を高める必要がある。そのため、液晶ディスプレイなどの製造プロセスでは、TFTの熱処理工程が含まれており、これにより、アモルファス構造の半導体シリコン層30の一部または全体が微結晶化・多結晶化される結果、キャリアの移動度が高くなり、TFTの応答速度が向上する。
【0011】
TFTの製造プロセスにおいて、例えば絶縁性保護膜33の蒸着などは約250〜350℃の比較的低い温度で行われる。また、液晶ディスプレイを構成するTFT基板(TFTがアレイ状に配置された液晶ディスプレイ駆動部)の安定性を向上させるために、約450℃以上の高温熱処理が行われる場合がある。実際のTFT、TFT基板、液晶ディスプレイの製造には、このような低温または高温の熱処理が複数回行なわれる場合がある。
【0012】
しかしながら、製造プロセス時の熱処理温度が例えば約450℃以上に高くなったり、更にこのような高温加熱処理が長時間に及ぶと、図5に示す薄膜層の剥離や、接触する薄膜間での原子の相互拡散が生じ、薄膜層自体が劣化するため、これまでは、高々300℃以下での熱処理しか行われていなかった。むしろ、加熱処理温度を出来るだけ低くしてもTFTが機能する配線材料や表示デバイスの構造に関する研究開発が集中して行なわれていたというのが実情である。これは、技術的な観点からは、TFT製造プロセスの全てを室温で処理することが理想的であると考えられていたからである。
【0013】
例えば前述した特許文献1〜5では、Al合金配線膜と透明導電膜との接触抵抗を低減する目的で約200〜350℃程度の熱処理が行われており、TFT構造全体としての耐熱性(特に高温加熱時における耐熱性)については考慮されていなかった。このうち特許文献1の実施例には、窒化シリコン絶縁膜の成膜を300〜350℃の温度で行ったり、ゲート配線膜の成膜を250℃で行なったときの結果は示されているが、これ以上の高温下で加熱処理したときの結果は示されていない。特許文献2は、特に低温の加熱処理に有用なTFT配線用Al合金材料の提供を目的としてなされたものであり、実施例では200℃の低温熱処理が有効であることが示されている。同様に、特許文献3には、230℃および300℃での耐熱性評価結果は示されているが、これ以上の高温加熱処理を行ったときの耐熱性は全く評価していない。特許文献4も同様である。
【0014】
一方、前述した特許文献5には、Al合金薄膜中の固溶元素の一部または全部を100〜600℃の熱処理により金属化合物として析出させ、電気抵抗値10μΩcm以下のAl合金薄膜を得ることは開示されているが、実施例では最高でも500℃の温度で加熱したときの結果が示されているに過ぎず、500℃以上の高温下に曝されたときの耐熱性は評価していない。勿論、このような高温下に複数回曝されたときの耐熱性については全く考慮していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−157917号公報
【特許文献2】特開2007−81385号公報
【特許文献3】特開2006−210477号公報
【特許文献4】特開2007−317934号公報
【特許文献5】特開平7−90552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
最近では、高温加熱処理を行なっても耐熱性に優れたAl合金膜の提供が望まれている。これは、TFTの性能を大きく左右する半導体シリコン層のキャリア移動度を出来るだけ高めて、結果的に液晶ディスプレイの省エネと高性能化(高速動画対応など)を進めるというニーズが強まっているからである。そのためには、半導体シリコン層の構成材料である水素化アモルファス・シリコンを結晶化させることが必要である。シリコンは電子の移動度が正孔の移動度より約3倍程度高いが、電子の移動度は連続粒界結晶シリコンでは約300cm2/V・s、多結晶シリコンでは約100cm2/V・s、水素化アモルファス・シリコンでは約1cm2/V・s以下である。水素化アモルファス・シリコンを蒸着した後に熱処理を行えば、水素化アモルファス・シリコンが微結晶化してキャリア移動度が向上する。この熱処理について、加熱温度が高く、加熱時間が長い方が、水素化アモルファス・シリコンの微結晶化は進み、キャリアの移動度は向上する反面、熱処理温度を高くすると、熱応力によりAl合金配線薄膜に突起状の形状異常(ヒロック)が発生するなどの問題が生じるため、従来は、Al合金薄膜を用いた場合の熱処理温度の上限を、せいぜい350℃程度にしていた。そのため、これよりも高温で熱処理するときは、Moなどの高融点金属薄膜が一般に用いられているが、配線抵抗が高く表示ディスプレイの大型化に対応できないという問題があった。
【0017】
上述した高温耐熱性のほか、表示装置用Al合金膜には、様々な特性が要求される。まず、Al合金膜に含まれる合金元素の添加量が多くなると、配線自体の電気抵抗が増加してしまうため、450〜600℃程度の高い熱処理温度を適用した場合でも、電気抵抗を十分に低減できることが求められている。
【0018】
また、透明画素電極と直接接続させた場合に低い接触抵抗(コンタクト抵抗)を示すことも求められる場合もある。
【0019】
更には、優れた耐食性の兼備も求められている。特に、TFT基板の製造工程では複数のウェットプロセスを通るが、Alよりも貴な金属を添加すると、ガルバニック腐食の問題が表れ、耐食性が劣化してしまう。例えばフォトリソグラフィ工程では、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)を含むアルカリ性の現像液を使用するが、ダイレクト・コンタクト構造の場合、バリアメタル層を省略しているためAl合金膜がむき出しとなり、現像液によるダメージを受けやすくなる。そこで、アルカリ現像液耐性などの耐アルカリ腐食性に優れていることが求められる。
【0020】
また、フォトリソグラフィの工程で形成したフォトレジスト(感光性樹脂)を剥離する洗浄工程では、アミン類を含む有機剥離液を用いて連続的に水洗が行なわれている。ところがアミンと水が混合するとアルカリ性溶液になるため、短時間でAlを腐食させてしまうという別の問題が生じる。ところでAl合金は、剥離洗浄工程を通るより以前にCVD工程を経ることによって熱履歴を受けている。この熱履歴の過程でAlマトリクス中には合金成分が析出物を形成する。しかるに、この析出物とAlの間には大きな電位差があるので、剥離液であるアミンが水と接触した瞬間に前記ガルバニック腐食によってアルカリ腐食が進行し、電気化学的に卑であるAlがイオン化して溶出し、ピット状の孔食(黒点)が形成されてしまう、といった問題がある。そこで、好ましくは感光性樹脂の剥離に用いる剥離液耐性に優れていることが求められる。
【0021】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、450〜600℃程度の高温下に曝されてもヒロックが発生せず高温耐熱性に優れており、膜自体の電気抵抗(配線抵抗)も低く抑えられており、また、アルカリ現像液耐性などの耐アルカリ腐食性にも優れた表示装置用Al合金膜を提供することにある。本発明の他の目的は、好ましくは、感光性樹脂の剥離液(剥離液耐性)にも優れており、バリアメタル層を省略して透明画素電極(透明導電膜)と直接接続させたときに低い接触抵抗を有し、透明導電膜との直接接続(ダイレクト・コンタクト)が可能な表示装置用Al合金膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決し得た本発明の表示装置用Al合金膜は、表示装置に用いられるAl合金膜であって、前記Al合金膜は、Ta、Nb、Re、Zr、W、Mo、V、Hf、Ti、CrおよびPtよりなる群(X群)から選択される少なくとも一種の元素と、希土類元素の少なくとも一種とを含み、前記Al合金膜に450〜600℃の加熱処理を行なったとき、下記(1)の要件を満足するところに要旨を有するものである。
【0023】
(1)Alと、前記X群から選択される少なくとも一種の元素と、前記希土類元素の少なくとも一種とを含む第1の析出物について、円相当直径20nm以上の析出物が500,000個/mm2以上の密度で存在する。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、前記Al合金膜は、更にCuおよび/またはGeとを含み、前記Al合金膜に450〜600℃の加熱処理を行なったとき、更に下記(2)の要件を満足するものである。
【0025】
(2)Alと、Cuおよび/またはGeと、前記希土類元素の少なくとも一種とを含む第2の析出物について、円相当直径200nm以上の析出物が10,000個/mm2以上の密度で存在する。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、前記Al合金膜は、前記Cuおよび/またはGeに加えて、更にNiおよび/またはCoとを含み、前記Al合金膜に450〜600℃の加熱処理を行なったとき、更に下記(3)の要件を満足するものである。
【0027】
(3)Alと、Niおよび/またはCoと、Cuおよび/またはGeと、前記希土類元素の少なくとも一種とを含む第3の析出物について、円相当直径200nm以上の析出物が2,000個/mm2以上の密度で存在する。
【0028】
本発明の好ましい実施形態において、前記第1の析出物の円相当直径は、1μm以下である。
【0029】
本発明の好ましい実施形態において、前記第2の析出物の円相当直径は、1μm以下である。
【0030】
本発明の好ましい実施形態において、前記第3の析出物の円相当直径は、3μm以下である。
【0031】
本発明の好ましい実施形態において、前記X群の元素の含有量は0.1〜5原子%である。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、前記希土類元素の含有量は0.1〜4原子%である。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、前記Cuおよび/またはGeの含有量は0.1〜2原子%である。
【0034】
本発明の好ましい実施形態において、前記Niおよび/またはCoの含有量は0.1〜3原子%である。
【0035】
本発明の好ましい実施形態において、前記加熱処理は、500〜600℃である。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、前記加熱処理は、少なくとも2回実施されるものである。
【0037】
本発明の好ましい実施形態において、前記Al合金膜は、透明導電膜と直接接続されるものである。
【0038】
本発明の好ましい実施形態において、前記Al合金膜は、Mo、Ti、W、およびCrよりなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む膜を介して透明導電膜と接続されるものである。
【0039】
本発明には、Ta、Nb、Re、Zr、W、Mo、V、Hf、Ti、CrおよびPtよりなる群(X群)から選択される少なくとも一種の元素を0.1〜5原子%、および希土類元素の少なくとも一種を0.1〜4原子%を含み、残部:Alおよび不可避的不純物であるスパッタリングターゲットも包含される。
【0040】
本発明の好ましい実施形態において、上記スパッタリングターゲットは、更にCuおよび/またはGeを0.1〜2原子%含むものである。
【0041】
本発明の好ましい実施形態において、上記スパッタリングターゲットは、更にNiおよび/またはCoを0.1〜3原子%含むものである。
【0042】
本発明には、上記の表示装置用Al合金膜を備えた表示装置も包含される。
【0043】
本発明には、上記の表示装置用Al合金膜を備えた液晶ディスプレイも包含される。
【0044】
本発明には、上記の表示装置用Al合金膜を備えた有機ELディスプレイも包含される。
【0045】
本発明には、上記の表示装置用Al合金膜を備えたフィールドエミッションディスプレイも包含される。
【0046】
本発明には、上記の表示装置用Al合金膜を備えた蛍光真空管も包含される。
【0047】
本発明には、上記の表示装置用Al合金膜を備えたプラズマディスプレイも包含される。
【0048】
本発明には、上記の表示装置用Al合金膜を備えた無機ELディスプレイも包含される。
【発明の効果】
【0049】
本発明に係る第1のAl合金膜(Al−X群元素−希土類元素合金)は、所定の合金元素と第1の析出物から構成されているため、約450〜600℃程度の高温下に曝されたときの耐熱性に優れており、耐アルカリ腐食性も良好であり、且つ、高温処理後の膜自体の電気抵抗(配線抵抗)も低く抑えることができた。好ましくは、本発明に係る第2のAl合金膜(Al−X群元素−希土類元素−Cu/Ge合金)は、所定の合金元素と第1の析出物、第2の析出物とから構成されているため、より高い耐熱性を示す。より好ましくは、本発明に係る第3のAl合金膜(Al−X群元素−希土類元素−Ni/Co−Cu/Ge合金)は、所定の合金元素と第1の析出物、第2の析出物と第3の析出物とから構成されているため、上記特性のみならず、上記高温下での高い剥離液耐性および透明導電膜との低い接触抵抗も達成できるため、透明導電膜との直接接続が可能である。
【0050】
本発明によれば、特に、多結晶シリコンや連続粒界結晶シリコンを半導体層に用いる薄膜トランジスタ基板を製造するプロセスにおいて、450〜600℃程度の高温加熱処理、更には上記高温加熱処理が少なくとも2回行なわれる苛酷な高温環境下に曝された場合でも、半導体シリコン層のキャリア移動度が高められるため、TFTの応答速度が向上し、省エネや高速動画などに対応可能な高性能の表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、表1BのNo.43の平面TEM(倍率30,000倍)写真である。
【図2】図2は、表1BのNo.43の平面TEM(倍率60,000倍)写真である。
【図3】図3は、図2の拡大図(倍率150,000倍)である。
【図4】図4は、図2の拡大図(倍率150,000倍)である。
【図5】図5は、薄膜トランジスタの中核部の断面構造を示す図である。
【図6】図6は、Al合金膜と透明画素電極の接触抵抗の測定に用いたケルビンパターン(TEGパターン)を示す図である。
【図7】図7は、図3、図4に示されている析出物(図3:析出物1、析出物2;図4:析出物3)のEDX面分析写真である。
【図8】図8は、液晶ディスプレイの一例を示す概略断面図である。
【図9】図9は、有機ELディスプレイの一例を示す概略断面図である。
【図10】図10は、フィールドエミッションディスプレイの一例を示す概略断面図である。
【図11】図11は、蛍光真空管の一例を示す概略断面図である。
【図12】図12は、プラズマディスプレイの一例を示す概略断面図である。
【図13】図13は、無機ELディスプレイの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明者らは、約450〜600℃の高温下に複数回曝されても、ヒロックが生じず高温耐熱性に優れ、且つ、膜自体の電気抵抗(配線抵抗)も低く抑えられており、また、アルカリ現像液などの耐アルカリ腐食性も高い表示装置用Al合金膜(第1のAl合金膜と呼ぶ場合がある。);更に、好ましくはより高い高温耐熱性に優れている表示装置用Al合金膜(第2のAl合金膜と呼ぶ場合がある。);また更に、好ましくは高温下での剥離液耐性にも優れており、透明導電膜と直接接続しても接触抵抗が低く抑えられるため透明導電膜との直接接続(ダイレクト・コンタクト)が可能な表示装置用Al合金膜(第3のAl合金膜と呼ぶ場合がある。)を提供するため、検討を重ねてきた。
【0053】
その結果、Ta、Nb、Re、Zr、W、Mo、V、Hf、Ti、CrおよびPtよりなる群(X群)から選択される少なくとも一種の元素と、希土類元素(REM)の少なくとも一種とを含むAl合金膜(Al−X群元素−REM合金膜)であって、450〜600℃の加熱処理を行なったとき、下記(1)の要件を満足する第1のAl合金膜は、上記課題(高温処理時の高い耐熱性および低い電気抵抗、更には高いアルカリ現像液耐性)を解決できることが分かった。
【0054】
(1)Alと、上記X群から選択される少なくとも一種の元素と、希土類元素の少なくとも一種とを含む第1の析出物について、円相当直径20nm以上の析出物が500,000個/mm2以上の密度で存在する。
【0055】
更に、Cuおよび/またはGeとを含むAl合金膜(Al−X群元素−REM−Cu/Ge合金膜)であって、450〜600℃の加熱処理を行なったとき、上記(1)の要件を満足し、且つ、下記(2)の要件を満足する第2のAl合金膜は、より高い耐熱性を示すことがわかった。
【0056】
(2)Alと、Cuおよび/またはGeと、希土類元素の少なくとも一種とを含む第2の析出物について、円相当直径200nm以上の析出物が10,000個/mm2以上の密度で存在する。
【0057】
更に、Niおよび/またはCoとを含むAl合金膜(Al−X群元素−REM−Ni/Co−Cu/Ge合金膜)であって、450〜600℃の加熱処理を行なったとき、上記(1)、(2)の要件を満足し、且つ、下記(3)の要件を満足する第3のAl合金膜は、第1のAl合金膜による上記課題を解決できるだけでなく、好ましい課題(高温処理時の高い剥離液耐性、および透明導電膜との接触抵抗)も同時に解決できることが分かった。
【0058】
(3)Alと、Niおよび/またはCoと、Cuおよび/またはGeと、希土類元素の少なくとも一種とを含む第3の析出物について、円相当直径200nm以上の析出物が2,000個/mm2以上の密度で存在する。
【0059】
上記第1のAl合金膜は、Al合金中に、高融点金属のX群元素(高温耐熱性向上元素)と、希土類元素(耐アルカリ腐食性向上元素)を含み、所定の第1の析出物を有しているため、高温下の耐熱性(高温耐熱性)および耐アルカリ腐食性も高く、且つ、膜自体の電気抵抗(配線抵抗)に優れているため、走査線や信号線などの配線;ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極などの電極の材料として好適に用いられる。特に、高温熱履歴の影響を受け易い薄膜トランジスタ基板のゲート電極および関連の配線膜材料として好適に用いられる。
【0060】
また上記第2のAl合金膜は、Al合金中に、上記のX群元素と希土類元素に加え、更にCuおよび/またはGe(剥離液耐性向上元素)を含むことで、所定の第2の析出物を有しているため、高温下の耐熱性(高温耐熱性)が一段と高くなり、走査線や信号線などの配線;ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極などの電極の材料として好適に用いられる。特に、高温熱履歴の影響を受け易い薄膜トランジスタ基板のゲート電極および関連の配線膜材料として好適に用いられる。
【0061】
上記第3のAl合金膜は、Al合金中に、上記のX群元素と希土類元素に加え、更にNiおよび/またはCo(透明導電膜との接触抵抗低減化元素)、およびCuおよび/またはGe(剥離液耐性向上元素)を含み、所定の第3の析出物を有しているため、バリアメタル層を介在させずに透明導電膜との直接接続が可能なダイレクト・コンタクト用の電極・配線の材料として好適に用いられる。
【0062】
本明細書において、高温耐熱性とは、少なくとも450〜600℃程度の高温下に曝されたときにヒロックが生じないことを意味し、好ましくは、上記の高温下に少なくとも2回以上繰り返し曝されたときにもヒロックが生じないことを意味する。
【0063】
本発明では、高温耐熱性のほか、表示装置の製造過程で使用される薬液(アルカリ現像液、剥離液)に対する高い耐性(耐食性)、透明導電膜との低い接触抵抗、Al合金膜自体の低い電気抵抗といった特性が得られるが、450℃未満の低温域のみならず、上記の高温域でも有効に発揮されるところに特徴がある。なお、TFT製造過程においてアルカリ環境下に曝されるのは、熱履歴を受ける前の段階であるため、後記する実施例では、加熱前のAl合金膜についてアルカリ現像液耐性を調べたが、本発明によれば、高温加熱処理後のAl合金膜においても、良好なアルカリ現像液耐性が得られることを実験により確認している。なお、アルカリ現像液に対する耐性(アルカリ現像液耐性)は、広義には耐アルカリ腐食性と呼ぶ場合がある。
【0064】
以下、本発明に用いられるAl合金膜について詳しく説明する。
【0065】
(第1のAl合金膜)
上記第1のAl合金膜は、Ta、Nb、Re、Zr、W、Mo、V、Hf、Ti、CrおよびPtよりなる群(X群)から選択される少なくとも一種の元素と、希土類元素(REM)の少なくとも一種とを含有するAl−X群元素−REM合金膜である。
【0066】
ここで、上記X群の元素(X群元素)は、融点が概ね1600℃以上の高融点金属から構成されており、単独で高温下の耐熱性向上に寄与する元素である。これらの元素は、単独で添加しても良いし、2種以上を併用しても良い。上記X群元素のうち好ましいのは、Ta、Tiであり、より好ましくはTaである。
【0067】
上記X群元素の含有量(単独で含有する場合は単独の量であり、2種以上を併用するときは合計量である。)は、0.1〜5原子%であることが好ましい。X群元素の含有量が0.1原子%未満では、上記作用が有効に発揮されない。一方、X群元素の含有量が5原子%を超えると、Al合金膜の電気抵抗が高くなり過ぎるほか、配線加工時に残渣が発生し易くなるなどの問題が生じる。X群元素のより好ましい含有量は、0.1原子%以上3.0原子%以下であり、更に好ましい含有量は、0.3原子%以上2.0原子%以下である。
【0068】
また、上記希土類元素(REM)は、上記X群元素と複合添加することによって高温耐熱性向上に寄与する元素である。更に、単独でアルカリ環境下での耐食性作用という上記X群元素にはない作用も有している。
【0069】
ここで、希土類元素とは、ランタノイド元素(周期表において、原子番号57のLaから原子番号71のLuまでの合計15元素)に、Sc(スカンジウム)とY(イットリウム)とを加えた元素群を意味する。本発明では、上記希土類元素を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。希土類元素のうち好ましいのは、Nd、La、Gdであり、より好ましいのは、Nd、Laである。
【0070】
希土類元素による上記作用を有効に発揮させるためには、希土類元素の含有量(単独で含有する場合は単独の量であり、2種以上を併用するときは合計量である。)は0.1〜4原子%であることが好ましい。希土類元素の含有量が0.1原子%未満であると、耐アルカリ腐食性が有効に発揮されず、一方、4原子%を超えると、Al合金膜自体の電気抵抗が高くなり過ぎ、配線加工時に残渣が発生し易くなるなどの問題がある。希土類元素のより好ましい含有量は、0.3原子%以上3.0原子%以下であり、更に好ましい含有量は、0.5原子%以上2.5原子%以下である。
【0071】
上記第1のAl合金膜は、上記元素を含有し、残部:Alおよび不可避的不純物である。
【0072】
ここで上記不可避的不純物としては、例えばFe、Si、Bなどが例示される。不可避的不純物の合計量は特に限定されないが、概ね0.5原子%以下程度含有してもよく、各不可避的不純物元素は、Bは0.012原子%以下、Fe、Siはそれぞれ0.12原子%以下含有していてもよい。
【0073】
更に上記第1のAl合金膜は、450〜600℃の高温加熱処理により、上記(1)に規定する所定サイズと所定密度の第1の析出物(Al−X群元素−REM含有析出物)を含むものであり、これにより、高温耐熱性が向上し、高温プロセス下でもヒロックの発生を防止できる。第1の析出物は、少なくともX群元素およびREMを含有していれば良く、当該析出物による作用を阻害しない限り、他の元素を含有していても良い。
【0074】
上記第1の析出物の円相当直径(サイズ)は、20nm以上である。本発明者らの検討結果によれば、20nm未満の析出物は、たとえ析出物の組成がAl−X群元素−REM含有析出物であっても、所望の効果が発揮されないことがわかった。なお、高温耐熱性向上作用を有効に発揮させるためには、上記円相当直径の下限が20nmであれば良く、その上限は、上記作用との関係では特に限定されないが、析出物のサイズが大きくなって巨大析出物になると、光学顕微鏡による検査で視認される可能性があり、外観不良を招くため、その上限は1μmであることが好ましい。第1の析出物の好ましい円相当直径は、20nm以上800nm以下である。
【0075】
更に本発明では、上記円相当直径20nm以上の析出物が500,000個/mm2以上の密度で存在することが必要である。本発明者らの検討結果によれば、第1の析出物のサイズが20nm以上であっても、500,000個/mm2未満の場合は、所望の効果が発揮されないことがわかった。高温耐熱性向上作用を有効に発揮させるためには、上記析出物の密度は高い程よく、2,000,000個/mm2以上であることが好ましい。
【0076】
(第2のAl合金膜)
上記第2のAl合金膜は、上述したX群元素および希土類元素(REM)のほか、更にCuおよび/またはGeを含有するAl−X群元素−REM−Cu/Ge合金膜である。
【0077】
ここで、Cuおよび/またはGeは、高温耐熱性向上に寄与し、高温プロセス下でのヒロックの発生を防止する作用を有している。第2のAl合金膜は、少なくとも上記X群元素およびREMと、Cuおよび/またはGeとを含有していれば良く、これら添加元素による作用を阻害しない限り、他の元素を含有していても良い。Cuおよび/またはGeは単独で添加しても良いし、両方を添加しても良い。
【0078】
このような作用を有効に発揮させるためには、Cuおよび/またはGeの含有量(単独の場合は単独の含有量であり、両方を含有する場合は合計量である)を0.1〜2原子%とすることが好ましい。Cuおよび/またはGeの含有量が0.1原子%未満の場合、所望の効果が得られず、更なる耐熱性向上に寄与する第2の析出物の密度を確保できない。一方、Cuおよび/またはGeの含有量が2原子%を超えると、電気抵抗率が上昇するようになる。上記元素のより好ましい含有量は、0.1原子%以上1.0原子%以下であり、更に好ましくは、0.1原子%以上0.6原子%以下である。
【0079】
更に上記第2のAl合金膜は、450〜600℃の高温加熱処理により、上記(2)に規定する所定サイズと所定密度の第2の析出物(Al−REM−Cu/Ge含有析出物)を含むものであり、これにより、高温下での高い剥離液耐性および透明導電膜との低い接触抵抗を実現できる。第2の析出物は、少なくとも希土類元素と、Cuおよび/またはGeを含有していれば良く、当該析出物による作用を阻害しない限り、他の元素を含有していても良い。
【0080】
上記第2の析出物の円相当直径(サイズ)は、200nm以上である。本発明者らの検討結果によれば、200nm未満の析出物は、たとえ析出物の組成が上記組成を満足するものであっても、所望の効果が発揮されないことがわかった。なお、上記作用を有効に発揮させるためには、上記円相当直径の下限が200nmであれば良く、その上限は、上記作用との関係では特に限定されないが、析出物のサイズが大きくなって巨大析出物になると、光学顕微鏡による検査で視認される可能性があり、外観不良を招くため、その上限は1μmであることが好ましい。第2の析出物の好ましい円相当直径は、200nm以上800nm以下である。
【0081】
更に本発明では、上記円相当直径200nm以上の析出物が10,000個/mm2以上の密度で存在することが必要である。本発明者らの検討結果によれば、第2の析出物のサイズが200nm以上であっても、10,000個/mm2未満の場合は、所望の効果が発揮されないことがわかった。剥離液耐性向上および透明導電膜との接触抵抗低減化の両作用を有効に発揮させるためには、上記析出物の密度は高い程よく、25,000個/mm2以上であることが好ましい。
【0082】
(第3のAl合金膜)
上記第3のAl合金膜は、上述したX群元素および希土類元素(REM)、並びに上述したCuおよび/またはGeの他、更にNiおよび/またはCoを含有するAl−X群元素−REM−Ni/Co−Cu/Ge合金膜である。
【0083】
ここで、NiおよびCoは、透明導電膜との直接接続(ダイレクト・コンタクト)を可能にする元素である。これは、TFTの製造過程における熱履歴により形成される導電性の高いNiおよび/またはCo含有Al系析出物を介して、透明導電膜との電気的な導通が可能となるためである。これらは単独で添加しても良いし、両方を添加しても良い。
【0084】
このような作用を有効に発揮させるためには、Niおよび/またはCoの含有量(単独の場合は単独の含有量であり、両方を含有する場合は合計量である)を0.1〜3原子%とすることが好ましい。Niおよび/またはCoの含有量が0.1原子%未満の場合、所望の効果が得られず、透明導電膜との接触抵抗低減に寄与する第3の析出物の密度を確保できない。すなわち、第3の析出物のサイズが小さく、密度も減少するため、透明導電膜との低い接触抵抗を安定して維持することが困難になる。一方、Niおよび/またはCoの含有量が3原子%を超えると、アルカリ環境下での耐食性が低下するようになる。Niおよび/またはCoのより好ましい含有量は、0.1原子%以上1.0原子%以下であり、更に好ましくは、0.1原子%以上0.6原子%以下である。
【0085】
また、Cuおよび/またはGeは、上述したNiおよび/またはCoと併用することにより透明導電膜との直接接続(ダイレクト・コンタクト)を可能にする元素であり、これにより、所望とする第3の析出物を確保することができる。
【0086】
更に上記第3のAl合金膜は、450〜600℃の高温加熱処理により、上記(3)に規定する所定サイズと所定密度の第3の析出物(Al−REM−Ni/Co−Cu/Ge含有析出物)を含むものであり、これにより、高温下での高い剥離液耐性および透明導電膜との低い接触抵抗を実現できる。第3の析出物は、少なくとも希土類元素と、Niおよび/またはCoと、Cuおよび/またはGeを含有していれば良く、当該析出物による作用を阻害しない限り、他の元素を含有していても良い。
【0087】
上記第3の析出物の円相当直径(サイズ)は、200nm以上である。本発明者らの検討結果によれば、200nm未満の析出物は、たとえ析出物の組成が上記組成を満足するものであっても、所望の効果が発揮されないことがわかった。なお、上記作用を有効に発揮させるためには、上記円相当直径の下限が200nmであれば良く、その上限は、上記作用との関係では特に限定されないが、析出物のサイズが大きくなって巨大析出物になると、光学顕微鏡による検査で視認される可能性があり、外観不良を招くため、その上限は3μmであることが好ましい。第3の析出物の好ましい円相当直径は、200nm以上2μm以下である。
【0088】
更に本発明では、上記円相当直径200nm以上の析出物が2,000個/mm2以上の密度で存在することが必要である。本発明者らの検討結果によれば、第3の析出物のサイズが200nm以上であっても、2,000個/mm2未満の場合は、所望の効果が発揮されないことがわかった。剥離液耐性向上および透明導電膜との接触抵抗低減化の両作用を有効に発揮させるためには、上記析出物の密度は高い程よく、5,000個/mm2以上であることが好ましい。
【0089】
上記第2、第3のAl合金も第1のAl合金と同様、上記所定元素を含有し、残部Alおよび不可避的不純物であることが好ましく、不可避的不純物の具体例とは上記第1のAl合金と同様である。
【0090】
以上、本発明のAl合金膜について説明した。
【0091】
本発明において、上記の第1〜第3の析出物が形成されるための熱処理は、450〜600℃であり、好ましくは500〜600℃である。この熱処理は、真空または窒素および/または不活性ガス雰囲気中で行われることが好ましく、処理時間は、1分以上60分以下であることが好ましい。本発明によれば、上記の熱処理(高温熱処理)を2回以上行なっても、ヒロックなどが生じないことがわかった。
【0092】
このような高温加熱処理に対応するTFT製造プロセスとしては、例えば、アモルファス・シリコンの結晶化のためのレーザーなどによるアニール、各種薄膜形成のためのCVD(化学気相蒸着)による成膜、不純物拡散や保護膜を熱硬化させる際の熱処理炉の温度などが挙げられる。特にアモルファス・シリコンの結晶化のための熱処理で、上記のような高温下に曝されることが多い。
【0093】
上記Al合金の膜厚は、特に高温耐熱性と配線抵抗の低減化を確保するため、50nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましい。なお、その上限は、上記観点からは特に限定されないが、配線テーパ形状などを考慮すると、1μm以下であることが好ましく、より好ましくは600nm以下である。
【0094】
上記Al合金膜は、ソース−ドレイン電極やゲート電極などの各種配線材料に好ましく用いられるが、特に、高温耐熱性が要求されるゲート電極の配線材料として、より好ましく用いられる。
【0095】
上記Al合金膜は、スパッタリング法にてスパッタリングターゲット(以下「ターゲット」ということがある)を用いて形成することが望ましい。イオンプレーティング法や電子ビーム蒸着法、真空蒸着法で形成された薄膜よりも、成分や膜厚の膜面内均一性に優れた薄膜を容易に形成できるからである。
【0096】
また、上記スパッタリング法で上記Al合金膜を形成するには、上記ターゲットとして、前述した元素を含むものであって、所望のAl合金膜と同一組成のAl合金スパッタリングターゲットを用いれば、組成ズレの恐れがなく、所望の成分組成のAl合金膜を形成することができるのでよい。
【0097】
従って、本発明には、前述した第1、第2または第3のAl合金膜と同じ組成のスパッタリングターゲットも本発明の範囲内に包含される。詳細には、上記ターゲットとして、(i)Ta、Nb、Re、Zr、W、Mo、V、Hf、Ti、CrおよびPtよりなる群(X群)から選択される少なくとも一種の元素を0.1〜5原子%、および希土類元素の少なくとも一種を0.1〜4原子%を含み、残部:Alおよび不可避的不純物であるターゲットのほか、(ii)更に、Cuおよび/またはGeを0.1〜2原子%含むターゲットが挙げられ、(iii)更に、Niおよび/またはCoを0.1〜3原子%含むターゲットが挙げられる。
【0098】
上記ターゲットの形状は、スパッタリング装置の形状や構造に応じて任意の形状(角型プレート状、円形プレート状、ドーナツプレート状など)に加工したものが含まれる。
【0099】
上記ターゲットの製造方法としては、溶解鋳造法や粉末焼結法、スプレイフォーミング法で、Al基合金からなるインゴットを製造して得る方法や、Al基合金からなるプリフォーム(最終的な緻密体を得る前の中間体)を製造した後、該プリフォームを緻密化手段により緻密化して得られる方法が挙げられる。
【0100】
本発明は、上記Al合金膜が、薄膜トランジスタに用いられていることを特徴とする表示装置も含むものである。その態様として、前記Al合金膜が、薄膜トランジスタのソース電極および/またはドレイン電極並びに信号線に用いられ、ドレイン電極が透明導電膜に直接接続されているものや、ゲート電極および走査線に用いられているものなどが挙げられる。第1、第2のAl合金膜を用いる場合は、Mo、Ti、W、およびCrよりなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む高融点金属膜または高融点合金膜(バリアメタル)を介して透明導電膜と接続される。一方、第3のAl合金膜を用いる場合は、上記のバリアメタルを介さずに、透明導電膜と直接接続される。
【0101】
また前記ゲート電極および走査線と、前記ソース電極および/またはドレイン電極ならびに信号線が、同一組成のAl合金膜であるものが態様として含まれる。
【0102】
本発明に用いられる透明画素電極は特に限定されず、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)などが挙げられる。
【0103】
また、本発明に用いられる半導体層も特に限定されず、アモルファス・シリコン、多結晶シリコン、連続粒界結晶シリコンなどが挙げられる。
【0104】
本発明のAl合金膜を備えた表示装置を製造するにあたっては、表示装置の一般的な工程を採用することができ、例えば、前述した特許文献1〜5に記載の製造方法を参照すれば良い。
【0105】
以上、液晶表示装置として液晶ディスプレイを代表的に取り上げ、説明したが、上記説明した本発明の表示装置用Al合金膜は主に電極および配線材料として各種液晶表示装置に用いることができ、例えば図8に例示される液晶ディスプレイ(LDC)における薄膜トランジスタ用のゲート、ソースおよびドレイン電極並びに配線材料、例えば図9に例示される有機EL(OELD)における薄膜トランジスタ用のゲート、ソースおよびドレイン電極並びに配線材料、例えば図10に例示されるフィールドエミッションディスプレイ(FED)におけるカソードおよびゲート電極並びに配線材料、例えば図11に例示される蛍光真空管(VFD)におけるアノード電極および配線材料、例えば図12に例示されるプラズマディスプレイ(PDP)におけるアドレス電極および配線材料、例えば図13に例示される無機ELにおける背面電極などが挙げられる。これら液晶表示装置に本発明の表示装置用Al合金膜を用いた場合に、上記所定の効果が得られることは実験により確認済である。
【実施例】
【0106】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0107】
(実施例1)
表1および表2に示す種々の合金組成のAl合金膜(膜厚=300nm)を、DCマグネトロン・スパッタ法(基板=ガラス基板(コーニング社製 Eagle2000)、雰囲気ガス=アルゴン、圧力=2mTorr、基板温度=25℃(室温))によって成膜した。
【0108】
尚、上記種々の合金組成のAl合金膜の形成には、真空溶解法で作製した種々の組成のAl合金ターゲットをスパッタリングターゲットとして用いた。
【0109】
また実施例で用いた種々のAl合金膜における各合金元素の含有量は、ICP発光分析(誘導結合プラズマ発光分析)法によって求めた。
【0110】
上記のようにして成膜したAl合金膜に対し、450〜600℃の高温加熱処理を2回行い、高温加熱処理後のAl合金膜について、耐熱性、当該Al合金膜自体の電気抵抗(配線抵抗)、当該Al合金膜を透明画素電極に直接接続したときの接触抵抗(ITOとのコンタクト抵抗)、および剥離液耐性の各特性、並びに析出物のサイズおよび密度を、それぞれ下記に示す方法で測定した。参考のため、耐熱性については、350℃の実験も行なった。なお、アルカリ現像液耐性については、成膜後のAl合金膜を用いて実験を行い、加熱処理は行わなかった。TFT製造過程においてアルカリ環境下に曝されるのはAl合金配線を形成するフォトリソグラフィ工程であり、熱履歴を受ける前の段階だからである。
【0111】
(1)加熱処理後の耐熱性
成膜後のAl合金膜に対し、不活性雰囲気ガス(N2)雰囲気下にて、表1および表2に示す各温度にて10分間の加熱処理を2回行ない、その表面性状を光学顕微鏡(倍率:500倍)を用いて観察し、ヒロックの密度(個/m2)を測定した。表3に記載の判断基準により耐熱性を評価し、本実施例では◎または○を合格とした。
【0112】
(2)加熱処理後のAl合金膜自体の配線抵抗
成膜後のAl合金膜に10μm幅のラインアンドスペースパターンを形成したものに、不活性雰囲気ガス(N2)雰囲気下にて、450℃、550℃または600℃の各温度にて10分間の加熱処理を2回行ない、4端子法で電気抵抗率を測定した。表3に記載の判断基準により各温度の配線抵抗を評価し、本実施例では◎または○を合格とした。
【0113】
(3)透明画素電極とのダイレクト接触抵抗
成膜後のAl合金膜に対し、不活性雰囲気ガス(N2)雰囲気下にて、600℃で10分間の加熱処理を2回行なったものを用意した。このAl合金膜と透明画素電極を直接接触したときの接触抵抗は、透明画素電極(ITO;酸化インジウムに10質量%の酸化スズを加えた酸化インジウムスズ)を、下記条件でスパッタリングすることによって図6に示すケルビンパターン(コンタクトホールサイズ:10μm角)を作製し、4端子測定(ITO−Al合金膜に電流を流し、別の端子でITO−Al合金間の電圧降下を測定する方法)を行なった。具体的には、図6のI1−I2間に電流Iを流し、V1−V2間の電圧Vをモニターすることにより、コンタクト部Cのダイレクト接触抵抗Rを[R=(V2−V1)/I2]として求めた。表3に記載の判断基準によりITOとのダイレクト接触抵抗(ITOとのコンタクト抵抗)を評価し、本実施例では◎または○を合格とした。
(透明画素電極の成膜条件)
雰囲気ガス=アルゴン
圧力=0.8mTorr
基板温度=25℃(室温)
【0114】
(4)アルカリ現像液耐性(現像液エッチングレートの測定)
基板上に成膜したAl合金膜にマスクを施した後、現像液(TMAH2.38質量%を含む水溶液)中に25℃で5分間浸漬し、そのエッチング量を触診式段差計を用いて測定した。表3に記載の判断基準によりアルカリ現像液耐性を評価し、本実施例では◎または○を合格とした。
【0115】
(5)剥離液耐性
フォトレジスト剥離液の洗浄工程を模擬し、アミン系フォトレジストと水を混合したアルカリ性水溶液による腐食実験を行った。詳細には、成膜後のAl合金膜に対し、不活性ガス雰囲気(N2)中、600℃で20分間の加熱処理を2回行った後、東京応化工業(株)製のアミン系レジスト剥離液「TOK106」水溶液をpH10.5および9.5の各pHに調整したもの(液温25℃)に浸漬させた。具体的には、まず、pH10.5の溶液に1分間浸漬後、連続してpH9.5の溶液に5分間浸漬させた。そして、浸漬後の膜表面にみられるクレータ状の腐食(孔食)痕(円相当直径が150nm以上のもの)の個数を調べた(観察倍率は1000倍)。表3に記載の判断基準により剥離液耐性を評価し、本実施例では◎または○を合格とした。
【0116】
(6)析出物の測定
成膜後のAl合金膜に対し、不活性ガス雰囲気(N2)中、550℃または600℃で10分間の加熱処理を2回行い、析出した析出物を、平面TEM(透過電子顕微鏡、倍率30万倍)で観察した。析出物のサイズ(円相当直径)および密度(個/mm2)は、走査電子顕微鏡の反射電子像を用いて求めた。具体的には、1視野(mm2)内に観察される析出物の円相当直径および個数を測定し、3視野の平均値を求めた。析出物に含まれる元素はTEM−EDX分析により判断した。そして表3に記載の判断基準により各析出物のサイズおよび密度を分類した。析出物について、サイズが◎、○、または△であり、且つ、密度が◎または○を満足するものが、本発明の要件を満足するものである。
【0117】
これらの結果を表1〜2に併記する。
【0118】
【表1A】
【0119】
【表1B】
【0120】
【表1C】
【0121】
【表1D】
【0122】
【表1E】
【0123】
【表2A】
【0124】
【表2B】
【0125】
【表3】
【0126】
まず、表1A〜表1Eについて考察する。これらの表において、析出物サイズ(550℃/600℃)および析出物密度(550℃/600℃)が「◎」とは、第1〜第3の析出物のいずれも、サイズおよび密度が共に「◎」を意味する。同様に、析出物サイズ(550℃/600℃)および析出物密度(550℃/600℃)が「○」とは、第1〜第3の析出物のいずれも、サイズおよび密度が共に「○」を意味する。
【0127】
表1A〜表1Eに記載の各Al合金膜は、本発明に係る第3のAl合金膜に対応しており、本発明で規定する合金組成を満足し、且つ、第1〜第3の析出物の要件(サイズおよび密度)も満足しているため、低温(350℃)の耐熱性に優れているだけでなく450〜600℃の高温耐熱性にも優れている。更に、高温加熱処理後の電気抵抗について、高融点金属よりも低い電気抵抗を有しており、高温加熱処理後のアルカリ現像液および剥離液に対する耐性も良好であり、ITO(透明画素電極)とのダイレクト接触抵抗も大幅に低減することができた。
【0128】
例えば表1BのNo.43には、Al−0.5原子%Ta−2.0原子%La−0.1原子%Ni−0.5原子%Ge合金膜を加熱処理したときの結果が示されており、550℃および600℃のいずれの温度で処理したときに、以下の析出物が得られた。
【0129】
第1の析出物(Al−Ta−La含有析出物)について、サイズ(円相当直径):◎(20nm以上800nm以下)のものが、密度(個/mm2):◎(2,000,000個/mm2以上)で存在する。
【0130】
第2の析出物(Al−Ge−La含有析出物)について、サイズ(円相当直径):◎(200nm以上800nm以下)のものが、密度(個/mm2):◎(25,000個/mm2以上)で存在する。
【0131】
第3の析出物(Al−Ni−Ge−La含有析出物)について、サイズ(円相当直径):◎(200nm以上2μm以下)のものが、密度(個/mm2):◎(5,000個/mm2以上)で存在する。
【0132】
参考のため、上記表1BのNo.43に存在する析出物(1〜4)について、各析出物の組成をEDX半定量法によって分析した結果を表4に示す。
【0133】
【表4】
【0134】
また、これらの析出物(1〜4)の形態・分布状態を明らかにするため、図1〜2、およびこれらの拡大図である図3〜4に、No.43の平面TEM(透過電子顕微鏡)写真を示す。図3に析出物1、2が、図4に析出物3、4が、それぞれ示されている。これらの析出物は、様々なサイズを有し、しかもAl合金膜中に広く分散して存在しているため、倍率を変えた写真を示しており、図2(倍率60,000倍)は図1(倍率30,000倍)の拡大図、図3〜4(倍率150,000倍)は図2の拡大図である。また図7は、図3、図4に示されている析出物(図3:析出物1、析出物2;図4:析出物3)のEDX面分析写真である。
【0135】
次に、表2について考察する。表2において、析出物サイズ(550℃/600℃)および析出物密度(550℃/600℃)が「×××」(表2のNo.1〜9をご参照)とは、第1の析出物、第2の析出物、第3の析出物も、サイズおよび密度が共に「×」を意味する。
【0136】
また、表2において、析出物サイズ(550℃/600℃)および析出物密度(550℃/600℃)が「×◎◎」(表2のNo.10〜13をご参照)とは、第1の析出物のサイズおよび密度が共に「×」であるが、第2の析出物、第3の析出物のサイズおよび密度が共に「◎」を意味する。
【0137】
また、表2において、析出物サイズ(550℃/600℃)および析出物密度(550℃/600℃)が「◎××」(表2のNo.16〜21、56、57、59〜62、64〜69をご参照)とは、第1の析出物のサイズおよび密度が共に「◎」であるが、第2の析出物、第3の析出物のサイズおよび密度が共に「×」を意味する。なお、表2において、析出物サイズ(550℃/600℃)が「◎××」で、析出物密度(550℃/600℃)が「○××」(表2のNo.14、15、58、63をご参照)とは、第1の析出物サイズは「◎」で第1の析出物密度は「○」であり、第2の析出物、第3の析出物サイズおよび密度は共に「×」を意味する。
【0138】
また、表2において、析出物サイズ(550℃/600℃)および析出物密度(550℃/600℃)が「◎◎×」(表2のNo.24〜27、30〜45、48〜51、54、55をご参照)とは、第1の析出物、第2の析出物のサイズおよび密度が共に「◎」であるが、第3の析出物のサイズおよび密度が共に「×」を意味する。なお、表2において、析出物サイズ(550℃/600℃)が「◎◎×」で、析出物密度(550℃/600℃)が「○○×」(表2のNo.22、23、28、29、46、47、52、53をご参照)とは、第1の析出物、第2の析出物サイズは「◎」で第1の析出物、第2の析出物密度は「○」であり、第3の析出物サイズおよび密度は共に「×」を意味する。
【0139】
まず、表2に記載のNo.14〜21、56〜69の各Al合金膜は、本発明に係る第1のAl合金膜に対応しており、本発明で規定する合金組成(厳密には、No.14〜21はX群元素および希土類に加え、更にNi/Coも含有している)を満足し、且つ、第1の析出物の要件(サイズおよび密度)も満足しているため、低温域(350℃)から高温域(450〜600℃)に亘って広く耐熱性に優れている。更に、高温加熱処理後の低い電気抵抗および高い剥離液耐性、並びにアルカリ現像液耐性にも優れている。しかし、これらのAl合金膜は、Cuおよび/またはGeを含有していないために第2の析出物、第3の析出物の要件(サイズおよび密度)は満足せず、その結果、剥離液耐性が低下し、ITOとの接触抵抗は高くなった。
【0140】
また、表2に記載のNo.22〜55の各Al合金膜も、本発明に係る第2のAl合金膜に対応しており、本発明で規定する合金組成(厳密には、X群元素および希土類に加え、更にGeやCuも含有している)を満足し、且つ、第1の析出物の要件(サイズおよび密度)も満足しているため、低温域(350℃)から高温域(450〜600℃)に亘って広く耐熱性に優れている。更に、高温加熱処理後の低い電気抵抗および高い剥離液耐性、並びにアルカリ現像液耐性にも優れている。しかし、これらのAl合金膜は、Niおよび/またはCoを含有していないために第3の析出物の要件(サイズおよび密度)は満足せず、その結果、剥離液耐性が低下し、ITOとの接触抵抗は高くなった。
【0141】
これに対し、表2に記載のNo.1〜13は、本発明で規定する合金組成を満足せず、第1、第2または第3の析出物の要件(サイズおよび密度)も満足していないため、以下の不具合を抱えている。
【0142】
表2のNo.1は、純Alの従来例であり、所望の析出物が得られないために耐熱性が低下した。
【0143】
表2のNo.2/3は、Ni/Coのみを含有し、X群元素および希土類元素を含有しない比較例であり、所望とする第1、第2および第3の析出物がいずれも得られないために耐熱性が低下した。
【0144】
表2のNo.4〜9は、Niと希土類元素を含み、X群元素を含まない比較例であり、所望とする第1、第2および第3の析出物がいずれも得られないために耐熱性が低下した。なお、これらは希土類元素を含有しているため、アルカリ現像液耐性は良好であった。また、Ni量を2.0%と多く含むNo.4〜7は、Cu/Geを含まなくてもITOとの接触抵抗が低く抑えられているのに対し、Ni量が0.1原子%と少ないNo.8、9(Cu/Geの添加なし)は、ITOとの接触抵抗が高くなった。
【0145】
表2のNo.10〜13は、Ni/Coと希土類元素とGeを含み、X群元素を含まない比較例であり、所望とする第1の析出物(サイズおよび密度)が得られないために耐熱性が低下した。ただし、これらは希土類元素を含有し、且つ、所望とする第2および第3の析出物(サイズおよび密度)が得られているため、アルカリ現像液耐性は良好であった。また、これらはNiとCuの両方を含有しているため、ITOとの接触抵抗が低く抑えられた。
【符号の説明】
【0146】
1a ガラス基板
5 透明電極
25 走査線
26 ゲート電極
27 ゲート絶縁膜
28 ソース電極
29 ドレイン電極
30 半導体シリコン層
31 保護膜
32 低抵抗シリコン層
33 絶縁性保護膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイなどの表示装置に使用され、電極および配線材料として有用な表示装置用Al合金膜;上記Al合金膜を備えた表示装置、および上記Al合金膜を形成するためのスパッタリングターゲットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
表示装置用Al合金膜は主に電極および配線材料として用いられており、電極および配線材料としては、液晶ディスプレイ(LDC)における薄膜トランジスタ用のゲート、ソースおよびドレイン電極並びに配線材料、有機EL(OELD)における薄膜トランジスタ用のゲート、ソースおよびドレイン電極並びに配線材料、フィールドエミッションディスプレイ(FED)におけるカソードおよびゲート電極並びに配線材料、蛍光真空管(VFD)におけるアノード電極および配線材料、プラズマディスプレイ(PDP)におけるアドレス電極および配線材料、無機ELにおける背面電極などが挙げられる。
【0003】
以下では、液晶表示装置として液晶ディスプレイを代表的に取り上げ、説明するがこれに限定する趣旨ではない。
【0004】
液晶ディスプレイは、最近では100インチを超える大型のものが商品化され、低消費電力技術も進んでおり、主要な表示デバイスとして汎用されている。液晶ディスプレイには動作原理の異なるものがあるが、このうち、画素のスイッチングに薄膜トランジスタ(Thin Film Transitor、以下、TFTと呼ぶ。)を用いるアクティブ・マトリックス型液晶ディスプレイは、高精度画質を有し、高速動画にも対応できるため、主力となっている。そのなかで、更に低消費電力で画素の高速スイッチングが求められる液晶ディスプレイでは、多結晶シリコンや連続粒界結晶シリコンを半導体層に用いたTFTが用いられている。
【0005】
例えば、アクティブマトリクス型の液晶ディスプレイは、スイッチング素子であるTFT、導電性酸化膜から構成される画素電極、および走査線や信号線を含む配線を有するTFT基板を備えており、走査線や信号線は、画素電極に電気的に接続されている。走査線や信号線を構成する配線材料には、Al基合金薄膜が用いられている。
【0006】
図5を参照しながら、半導体層として水素化アモルファス・シリコンを用いたTFT基板の中核部の構成を説明する。
【0007】
図5に示すように、ガラス基板1a上には、走査線25が形成され、走査線25の一部は、TFTのオン・オフを制御するゲート電極26として機能する。ゲート電極26はゲート絶縁膜(窒化シリコン膜など)27で電気的に絶縁されている。ゲート絶縁膜27を介してチャンネル層である半導体シリコン層30が形成され、さらに保護膜(窒化シリコン膜など)31が形成される。半導体シリコン層30は、低抵抗シリコン層32を介して、ソース電極28およびドレイン電極29に接合され、電気的な導通性をもつ。
【0008】
ドレイン電極29は、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明電極5と直接に接触している構造[ダイレクト・コンタクト(DC)と呼ばれる。]を有している。ダイレクト・コンタクト用に用いられる電極配線材料として、例えば特許文献1〜5に記載のAl合金が挙げられる。Alは、電気抵抗率が小さく、微細加工性に優れるためである。これらのAl合金は、Mo、Cr、Ti、Wなどの高融点金属からなるバリアメタル層を介在させずに、透明電極を構成する酸化物透明導電膜と直接、またはシリコン半導体層と直接、接続されている。
【0009】
これらの配線膜や電極25〜32は、窒化シリコンなどの絶縁性保護膜33で覆われ、透明電極5を通じてドレイン電極29に電気を供給する。
【0010】
図5に示すTFTの動作特性を安定して確保するためには、特に半導体シリコン層30におけるキャリア(電子や正孔)の移動度を高める必要がある。そのため、液晶ディスプレイなどの製造プロセスでは、TFTの熱処理工程が含まれており、これにより、アモルファス構造の半導体シリコン層30の一部または全体が微結晶化・多結晶化される結果、キャリアの移動度が高くなり、TFTの応答速度が向上する。
【0011】
TFTの製造プロセスにおいて、例えば絶縁性保護膜33の蒸着などは約250〜350℃の比較的低い温度で行われる。また、液晶ディスプレイを構成するTFT基板(TFTがアレイ状に配置された液晶ディスプレイ駆動部)の安定性を向上させるために、約450℃以上の高温熱処理が行われる場合がある。実際のTFT、TFT基板、液晶ディスプレイの製造には、このような低温または高温の熱処理が複数回行なわれる場合がある。
【0012】
しかしながら、製造プロセス時の熱処理温度が例えば約450℃以上に高くなったり、更にこのような高温加熱処理が長時間に及ぶと、図5に示す薄膜層の剥離や、接触する薄膜間での原子の相互拡散が生じ、薄膜層自体が劣化するため、これまでは、高々300℃以下での熱処理しか行われていなかった。むしろ、加熱処理温度を出来るだけ低くしてもTFTが機能する配線材料や表示デバイスの構造に関する研究開発が集中して行なわれていたというのが実情である。これは、技術的な観点からは、TFT製造プロセスの全てを室温で処理することが理想的であると考えられていたからである。
【0013】
例えば前述した特許文献1〜5では、Al合金配線膜と透明導電膜との接触抵抗を低減する目的で約200〜350℃程度の熱処理が行われており、TFT構造全体としての耐熱性(特に高温加熱時における耐熱性)については考慮されていなかった。このうち特許文献1の実施例には、窒化シリコン絶縁膜の成膜を300〜350℃の温度で行ったり、ゲート配線膜の成膜を250℃で行なったときの結果は示されているが、これ以上の高温下で加熱処理したときの結果は示されていない。特許文献2は、特に低温の加熱処理に有用なTFT配線用Al合金材料の提供を目的としてなされたものであり、実施例では200℃の低温熱処理が有効であることが示されている。同様に、特許文献3には、230℃および300℃での耐熱性評価結果は示されているが、これ以上の高温加熱処理を行ったときの耐熱性は全く評価していない。特許文献4も同様である。
【0014】
一方、前述した特許文献5には、Al合金薄膜中の固溶元素の一部または全部を100〜600℃の熱処理により金属化合物として析出させ、電気抵抗値10μΩcm以下のAl合金薄膜を得ることは開示されているが、実施例では最高でも500℃の温度で加熱したときの結果が示されているに過ぎず、500℃以上の高温下に曝されたときの耐熱性は評価していない。勿論、このような高温下に複数回曝されたときの耐熱性については全く考慮していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−157917号公報
【特許文献2】特開2007−81385号公報
【特許文献3】特開2006−210477号公報
【特許文献4】特開2007−317934号公報
【特許文献5】特開平7−90552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
最近では、高温加熱処理を行なっても耐熱性に優れたAl合金膜の提供が望まれている。これは、TFTの性能を大きく左右する半導体シリコン層のキャリア移動度を出来るだけ高めて、結果的に液晶ディスプレイの省エネと高性能化(高速動画対応など)を進めるというニーズが強まっているからである。そのためには、半導体シリコン層の構成材料である水素化アモルファス・シリコンを結晶化させることが必要である。シリコンは電子の移動度が正孔の移動度より約3倍程度高いが、電子の移動度は連続粒界結晶シリコンでは約300cm2/V・s、多結晶シリコンでは約100cm2/V・s、水素化アモルファス・シリコンでは約1cm2/V・s以下である。水素化アモルファス・シリコンを蒸着した後に熱処理を行えば、水素化アモルファス・シリコンが微結晶化してキャリア移動度が向上する。この熱処理について、加熱温度が高く、加熱時間が長い方が、水素化アモルファス・シリコンの微結晶化は進み、キャリアの移動度は向上する反面、熱処理温度を高くすると、熱応力によりAl合金配線薄膜に突起状の形状異常(ヒロック)が発生するなどの問題が生じるため、従来は、Al合金薄膜を用いた場合の熱処理温度の上限を、せいぜい350℃程度にしていた。そのため、これよりも高温で熱処理するときは、Moなどの高融点金属薄膜が一般に用いられているが、配線抵抗が高く表示ディスプレイの大型化に対応できないという問題があった。
【0017】
上述した高温耐熱性のほか、表示装置用Al合金膜には、様々な特性が要求される。まず、Al合金膜に含まれる合金元素の添加量が多くなると、配線自体の電気抵抗が増加してしまうため、450〜600℃程度の高い熱処理温度を適用した場合でも、電気抵抗を十分に低減できることが求められている。
【0018】
また、透明画素電極と直接接続させた場合に低い接触抵抗(コンタクト抵抗)を示すことも求められる場合もある。
【0019】
更には、優れた耐食性の兼備も求められている。特に、TFT基板の製造工程では複数のウェットプロセスを通るが、Alよりも貴な金属を添加すると、ガルバニック腐食の問題が表れ、耐食性が劣化してしまう。例えばフォトリソグラフィ工程では、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)を含むアルカリ性の現像液を使用するが、ダイレクト・コンタクト構造の場合、バリアメタル層を省略しているためAl合金膜がむき出しとなり、現像液によるダメージを受けやすくなる。そこで、アルカリ現像液耐性などの耐アルカリ腐食性に優れていることが求められる。
【0020】
また、フォトリソグラフィの工程で形成したフォトレジスト(感光性樹脂)を剥離する洗浄工程では、アミン類を含む有機剥離液を用いて連続的に水洗が行なわれている。ところがアミンと水が混合するとアルカリ性溶液になるため、短時間でAlを腐食させてしまうという別の問題が生じる。ところでAl合金は、剥離洗浄工程を通るより以前にCVD工程を経ることによって熱履歴を受けている。この熱履歴の過程でAlマトリクス中には合金成分が析出物を形成する。しかるに、この析出物とAlの間には大きな電位差があるので、剥離液であるアミンが水と接触した瞬間に前記ガルバニック腐食によってアルカリ腐食が進行し、電気化学的に卑であるAlがイオン化して溶出し、ピット状の孔食(黒点)が形成されてしまう、といった問題がある。そこで、好ましくは感光性樹脂の剥離に用いる剥離液耐性に優れていることが求められる。
【0021】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、450〜600℃程度の高温下に曝されてもヒロックが発生せず高温耐熱性に優れており、膜自体の電気抵抗(配線抵抗)も低く抑えられており、また、アルカリ現像液耐性などの耐アルカリ腐食性にも優れた表示装置用Al合金膜を提供することにある。本発明の他の目的は、好ましくは、感光性樹脂の剥離液(剥離液耐性)にも優れており、バリアメタル層を省略して透明画素電極(透明導電膜)と直接接続させたときに低い接触抵抗を有し、透明導電膜との直接接続(ダイレクト・コンタクト)が可能な表示装置用Al合金膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決し得た本発明の表示装置用Al合金膜は、表示装置に用いられるAl合金膜であって、前記Al合金膜は、Ta、Nb、Re、Zr、W、Mo、V、Hf、Ti、CrおよびPtよりなる群(X群)から選択される少なくとも一種の元素と、希土類元素の少なくとも一種とを含み、前記Al合金膜に450〜600℃の加熱処理を行なったとき、下記(1)の要件を満足するところに要旨を有するものである。
【0023】
(1)Alと、前記X群から選択される少なくとも一種の元素と、前記希土類元素の少なくとも一種とを含む第1の析出物について、円相当直径20nm以上の析出物が500,000個/mm2以上の密度で存在する。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、前記Al合金膜は、更にCuおよび/またはGeとを含み、前記Al合金膜に450〜600℃の加熱処理を行なったとき、更に下記(2)の要件を満足するものである。
【0025】
(2)Alと、Cuおよび/またはGeと、前記希土類元素の少なくとも一種とを含む第2の析出物について、円相当直径200nm以上の析出物が10,000個/mm2以上の密度で存在する。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、前記Al合金膜は、前記Cuおよび/またはGeに加えて、更にNiおよび/またはCoとを含み、前記Al合金膜に450〜600℃の加熱処理を行なったとき、更に下記(3)の要件を満足するものである。
【0027】
(3)Alと、Niおよび/またはCoと、Cuおよび/またはGeと、前記希土類元素の少なくとも一種とを含む第3の析出物について、円相当直径200nm以上の析出物が2,000個/mm2以上の密度で存在する。
【0028】
本発明の好ましい実施形態において、前記第1の析出物の円相当直径は、1μm以下である。
【0029】
本発明の好ましい実施形態において、前記第2の析出物の円相当直径は、1μm以下である。
【0030】
本発明の好ましい実施形態において、前記第3の析出物の円相当直径は、3μm以下である。
【0031】
本発明の好ましい実施形態において、前記X群の元素の含有量は0.1〜5原子%である。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、前記希土類元素の含有量は0.1〜4原子%である。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、前記Cuおよび/またはGeの含有量は0.1〜2原子%である。
【0034】
本発明の好ましい実施形態において、前記Niおよび/またはCoの含有量は0.1〜3原子%である。
【0035】
本発明の好ましい実施形態において、前記加熱処理は、500〜600℃である。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、前記加熱処理は、少なくとも2回実施されるものである。
【0037】
本発明の好ましい実施形態において、前記Al合金膜は、透明導電膜と直接接続されるものである。
【0038】
本発明の好ましい実施形態において、前記Al合金膜は、Mo、Ti、W、およびCrよりなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む膜を介して透明導電膜と接続されるものである。
【0039】
本発明には、Ta、Nb、Re、Zr、W、Mo、V、Hf、Ti、CrおよびPtよりなる群(X群)から選択される少なくとも一種の元素を0.1〜5原子%、および希土類元素の少なくとも一種を0.1〜4原子%を含み、残部:Alおよび不可避的不純物であるスパッタリングターゲットも包含される。
【0040】
本発明の好ましい実施形態において、上記スパッタリングターゲットは、更にCuおよび/またはGeを0.1〜2原子%含むものである。
【0041】
本発明の好ましい実施形態において、上記スパッタリングターゲットは、更にNiおよび/またはCoを0.1〜3原子%含むものである。
【0042】
本発明には、上記の表示装置用Al合金膜を備えた表示装置も包含される。
【0043】
本発明には、上記の表示装置用Al合金膜を備えた液晶ディスプレイも包含される。
【0044】
本発明には、上記の表示装置用Al合金膜を備えた有機ELディスプレイも包含される。
【0045】
本発明には、上記の表示装置用Al合金膜を備えたフィールドエミッションディスプレイも包含される。
【0046】
本発明には、上記の表示装置用Al合金膜を備えた蛍光真空管も包含される。
【0047】
本発明には、上記の表示装置用Al合金膜を備えたプラズマディスプレイも包含される。
【0048】
本発明には、上記の表示装置用Al合金膜を備えた無機ELディスプレイも包含される。
【発明の効果】
【0049】
本発明に係る第1のAl合金膜(Al−X群元素−希土類元素合金)は、所定の合金元素と第1の析出物から構成されているため、約450〜600℃程度の高温下に曝されたときの耐熱性に優れており、耐アルカリ腐食性も良好であり、且つ、高温処理後の膜自体の電気抵抗(配線抵抗)も低く抑えることができた。好ましくは、本発明に係る第2のAl合金膜(Al−X群元素−希土類元素−Cu/Ge合金)は、所定の合金元素と第1の析出物、第2の析出物とから構成されているため、より高い耐熱性を示す。より好ましくは、本発明に係る第3のAl合金膜(Al−X群元素−希土類元素−Ni/Co−Cu/Ge合金)は、所定の合金元素と第1の析出物、第2の析出物と第3の析出物とから構成されているため、上記特性のみならず、上記高温下での高い剥離液耐性および透明導電膜との低い接触抵抗も達成できるため、透明導電膜との直接接続が可能である。
【0050】
本発明によれば、特に、多結晶シリコンや連続粒界結晶シリコンを半導体層に用いる薄膜トランジスタ基板を製造するプロセスにおいて、450〜600℃程度の高温加熱処理、更には上記高温加熱処理が少なくとも2回行なわれる苛酷な高温環境下に曝された場合でも、半導体シリコン層のキャリア移動度が高められるため、TFTの応答速度が向上し、省エネや高速動画などに対応可能な高性能の表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、表1BのNo.43の平面TEM(倍率30,000倍)写真である。
【図2】図2は、表1BのNo.43の平面TEM(倍率60,000倍)写真である。
【図3】図3は、図2の拡大図(倍率150,000倍)である。
【図4】図4は、図2の拡大図(倍率150,000倍)である。
【図5】図5は、薄膜トランジスタの中核部の断面構造を示す図である。
【図6】図6は、Al合金膜と透明画素電極の接触抵抗の測定に用いたケルビンパターン(TEGパターン)を示す図である。
【図7】図7は、図3、図4に示されている析出物(図3:析出物1、析出物2;図4:析出物3)のEDX面分析写真である。
【図8】図8は、液晶ディスプレイの一例を示す概略断面図である。
【図9】図9は、有機ELディスプレイの一例を示す概略断面図である。
【図10】図10は、フィールドエミッションディスプレイの一例を示す概略断面図である。
【図11】図11は、蛍光真空管の一例を示す概略断面図である。
【図12】図12は、プラズマディスプレイの一例を示す概略断面図である。
【図13】図13は、無機ELディスプレイの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明者らは、約450〜600℃の高温下に複数回曝されても、ヒロックが生じず高温耐熱性に優れ、且つ、膜自体の電気抵抗(配線抵抗)も低く抑えられており、また、アルカリ現像液などの耐アルカリ腐食性も高い表示装置用Al合金膜(第1のAl合金膜と呼ぶ場合がある。);更に、好ましくはより高い高温耐熱性に優れている表示装置用Al合金膜(第2のAl合金膜と呼ぶ場合がある。);また更に、好ましくは高温下での剥離液耐性にも優れており、透明導電膜と直接接続しても接触抵抗が低く抑えられるため透明導電膜との直接接続(ダイレクト・コンタクト)が可能な表示装置用Al合金膜(第3のAl合金膜と呼ぶ場合がある。)を提供するため、検討を重ねてきた。
【0053】
その結果、Ta、Nb、Re、Zr、W、Mo、V、Hf、Ti、CrおよびPtよりなる群(X群)から選択される少なくとも一種の元素と、希土類元素(REM)の少なくとも一種とを含むAl合金膜(Al−X群元素−REM合金膜)であって、450〜600℃の加熱処理を行なったとき、下記(1)の要件を満足する第1のAl合金膜は、上記課題(高温処理時の高い耐熱性および低い電気抵抗、更には高いアルカリ現像液耐性)を解決できることが分かった。
【0054】
(1)Alと、上記X群から選択される少なくとも一種の元素と、希土類元素の少なくとも一種とを含む第1の析出物について、円相当直径20nm以上の析出物が500,000個/mm2以上の密度で存在する。
【0055】
更に、Cuおよび/またはGeとを含むAl合金膜(Al−X群元素−REM−Cu/Ge合金膜)であって、450〜600℃の加熱処理を行なったとき、上記(1)の要件を満足し、且つ、下記(2)の要件を満足する第2のAl合金膜は、より高い耐熱性を示すことがわかった。
【0056】
(2)Alと、Cuおよび/またはGeと、希土類元素の少なくとも一種とを含む第2の析出物について、円相当直径200nm以上の析出物が10,000個/mm2以上の密度で存在する。
【0057】
更に、Niおよび/またはCoとを含むAl合金膜(Al−X群元素−REM−Ni/Co−Cu/Ge合金膜)であって、450〜600℃の加熱処理を行なったとき、上記(1)、(2)の要件を満足し、且つ、下記(3)の要件を満足する第3のAl合金膜は、第1のAl合金膜による上記課題を解決できるだけでなく、好ましい課題(高温処理時の高い剥離液耐性、および透明導電膜との接触抵抗)も同時に解決できることが分かった。
【0058】
(3)Alと、Niおよび/またはCoと、Cuおよび/またはGeと、希土類元素の少なくとも一種とを含む第3の析出物について、円相当直径200nm以上の析出物が2,000個/mm2以上の密度で存在する。
【0059】
上記第1のAl合金膜は、Al合金中に、高融点金属のX群元素(高温耐熱性向上元素)と、希土類元素(耐アルカリ腐食性向上元素)を含み、所定の第1の析出物を有しているため、高温下の耐熱性(高温耐熱性)および耐アルカリ腐食性も高く、且つ、膜自体の電気抵抗(配線抵抗)に優れているため、走査線や信号線などの配線;ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極などの電極の材料として好適に用いられる。特に、高温熱履歴の影響を受け易い薄膜トランジスタ基板のゲート電極および関連の配線膜材料として好適に用いられる。
【0060】
また上記第2のAl合金膜は、Al合金中に、上記のX群元素と希土類元素に加え、更にCuおよび/またはGe(剥離液耐性向上元素)を含むことで、所定の第2の析出物を有しているため、高温下の耐熱性(高温耐熱性)が一段と高くなり、走査線や信号線などの配線;ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極などの電極の材料として好適に用いられる。特に、高温熱履歴の影響を受け易い薄膜トランジスタ基板のゲート電極および関連の配線膜材料として好適に用いられる。
【0061】
上記第3のAl合金膜は、Al合金中に、上記のX群元素と希土類元素に加え、更にNiおよび/またはCo(透明導電膜との接触抵抗低減化元素)、およびCuおよび/またはGe(剥離液耐性向上元素)を含み、所定の第3の析出物を有しているため、バリアメタル層を介在させずに透明導電膜との直接接続が可能なダイレクト・コンタクト用の電極・配線の材料として好適に用いられる。
【0062】
本明細書において、高温耐熱性とは、少なくとも450〜600℃程度の高温下に曝されたときにヒロックが生じないことを意味し、好ましくは、上記の高温下に少なくとも2回以上繰り返し曝されたときにもヒロックが生じないことを意味する。
【0063】
本発明では、高温耐熱性のほか、表示装置の製造過程で使用される薬液(アルカリ現像液、剥離液)に対する高い耐性(耐食性)、透明導電膜との低い接触抵抗、Al合金膜自体の低い電気抵抗といった特性が得られるが、450℃未満の低温域のみならず、上記の高温域でも有効に発揮されるところに特徴がある。なお、TFT製造過程においてアルカリ環境下に曝されるのは、熱履歴を受ける前の段階であるため、後記する実施例では、加熱前のAl合金膜についてアルカリ現像液耐性を調べたが、本発明によれば、高温加熱処理後のAl合金膜においても、良好なアルカリ現像液耐性が得られることを実験により確認している。なお、アルカリ現像液に対する耐性(アルカリ現像液耐性)は、広義には耐アルカリ腐食性と呼ぶ場合がある。
【0064】
以下、本発明に用いられるAl合金膜について詳しく説明する。
【0065】
(第1のAl合金膜)
上記第1のAl合金膜は、Ta、Nb、Re、Zr、W、Mo、V、Hf、Ti、CrおよびPtよりなる群(X群)から選択される少なくとも一種の元素と、希土類元素(REM)の少なくとも一種とを含有するAl−X群元素−REM合金膜である。
【0066】
ここで、上記X群の元素(X群元素)は、融点が概ね1600℃以上の高融点金属から構成されており、単独で高温下の耐熱性向上に寄与する元素である。これらの元素は、単独で添加しても良いし、2種以上を併用しても良い。上記X群元素のうち好ましいのは、Ta、Tiであり、より好ましくはTaである。
【0067】
上記X群元素の含有量(単独で含有する場合は単独の量であり、2種以上を併用するときは合計量である。)は、0.1〜5原子%であることが好ましい。X群元素の含有量が0.1原子%未満では、上記作用が有効に発揮されない。一方、X群元素の含有量が5原子%を超えると、Al合金膜の電気抵抗が高くなり過ぎるほか、配線加工時に残渣が発生し易くなるなどの問題が生じる。X群元素のより好ましい含有量は、0.1原子%以上3.0原子%以下であり、更に好ましい含有量は、0.3原子%以上2.0原子%以下である。
【0068】
また、上記希土類元素(REM)は、上記X群元素と複合添加することによって高温耐熱性向上に寄与する元素である。更に、単独でアルカリ環境下での耐食性作用という上記X群元素にはない作用も有している。
【0069】
ここで、希土類元素とは、ランタノイド元素(周期表において、原子番号57のLaから原子番号71のLuまでの合計15元素)に、Sc(スカンジウム)とY(イットリウム)とを加えた元素群を意味する。本発明では、上記希土類元素を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。希土類元素のうち好ましいのは、Nd、La、Gdであり、より好ましいのは、Nd、Laである。
【0070】
希土類元素による上記作用を有効に発揮させるためには、希土類元素の含有量(単独で含有する場合は単独の量であり、2種以上を併用するときは合計量である。)は0.1〜4原子%であることが好ましい。希土類元素の含有量が0.1原子%未満であると、耐アルカリ腐食性が有効に発揮されず、一方、4原子%を超えると、Al合金膜自体の電気抵抗が高くなり過ぎ、配線加工時に残渣が発生し易くなるなどの問題がある。希土類元素のより好ましい含有量は、0.3原子%以上3.0原子%以下であり、更に好ましい含有量は、0.5原子%以上2.5原子%以下である。
【0071】
上記第1のAl合金膜は、上記元素を含有し、残部:Alおよび不可避的不純物である。
【0072】
ここで上記不可避的不純物としては、例えばFe、Si、Bなどが例示される。不可避的不純物の合計量は特に限定されないが、概ね0.5原子%以下程度含有してもよく、各不可避的不純物元素は、Bは0.012原子%以下、Fe、Siはそれぞれ0.12原子%以下含有していてもよい。
【0073】
更に上記第1のAl合金膜は、450〜600℃の高温加熱処理により、上記(1)に規定する所定サイズと所定密度の第1の析出物(Al−X群元素−REM含有析出物)を含むものであり、これにより、高温耐熱性が向上し、高温プロセス下でもヒロックの発生を防止できる。第1の析出物は、少なくともX群元素およびREMを含有していれば良く、当該析出物による作用を阻害しない限り、他の元素を含有していても良い。
【0074】
上記第1の析出物の円相当直径(サイズ)は、20nm以上である。本発明者らの検討結果によれば、20nm未満の析出物は、たとえ析出物の組成がAl−X群元素−REM含有析出物であっても、所望の効果が発揮されないことがわかった。なお、高温耐熱性向上作用を有効に発揮させるためには、上記円相当直径の下限が20nmであれば良く、その上限は、上記作用との関係では特に限定されないが、析出物のサイズが大きくなって巨大析出物になると、光学顕微鏡による検査で視認される可能性があり、外観不良を招くため、その上限は1μmであることが好ましい。第1の析出物の好ましい円相当直径は、20nm以上800nm以下である。
【0075】
更に本発明では、上記円相当直径20nm以上の析出物が500,000個/mm2以上の密度で存在することが必要である。本発明者らの検討結果によれば、第1の析出物のサイズが20nm以上であっても、500,000個/mm2未満の場合は、所望の効果が発揮されないことがわかった。高温耐熱性向上作用を有効に発揮させるためには、上記析出物の密度は高い程よく、2,000,000個/mm2以上であることが好ましい。
【0076】
(第2のAl合金膜)
上記第2のAl合金膜は、上述したX群元素および希土類元素(REM)のほか、更にCuおよび/またはGeを含有するAl−X群元素−REM−Cu/Ge合金膜である。
【0077】
ここで、Cuおよび/またはGeは、高温耐熱性向上に寄与し、高温プロセス下でのヒロックの発生を防止する作用を有している。第2のAl合金膜は、少なくとも上記X群元素およびREMと、Cuおよび/またはGeとを含有していれば良く、これら添加元素による作用を阻害しない限り、他の元素を含有していても良い。Cuおよび/またはGeは単独で添加しても良いし、両方を添加しても良い。
【0078】
このような作用を有効に発揮させるためには、Cuおよび/またはGeの含有量(単独の場合は単独の含有量であり、両方を含有する場合は合計量である)を0.1〜2原子%とすることが好ましい。Cuおよび/またはGeの含有量が0.1原子%未満の場合、所望の効果が得られず、更なる耐熱性向上に寄与する第2の析出物の密度を確保できない。一方、Cuおよび/またはGeの含有量が2原子%を超えると、電気抵抗率が上昇するようになる。上記元素のより好ましい含有量は、0.1原子%以上1.0原子%以下であり、更に好ましくは、0.1原子%以上0.6原子%以下である。
【0079】
更に上記第2のAl合金膜は、450〜600℃の高温加熱処理により、上記(2)に規定する所定サイズと所定密度の第2の析出物(Al−REM−Cu/Ge含有析出物)を含むものであり、これにより、高温下での高い剥離液耐性および透明導電膜との低い接触抵抗を実現できる。第2の析出物は、少なくとも希土類元素と、Cuおよび/またはGeを含有していれば良く、当該析出物による作用を阻害しない限り、他の元素を含有していても良い。
【0080】
上記第2の析出物の円相当直径(サイズ)は、200nm以上である。本発明者らの検討結果によれば、200nm未満の析出物は、たとえ析出物の組成が上記組成を満足するものであっても、所望の効果が発揮されないことがわかった。なお、上記作用を有効に発揮させるためには、上記円相当直径の下限が200nmであれば良く、その上限は、上記作用との関係では特に限定されないが、析出物のサイズが大きくなって巨大析出物になると、光学顕微鏡による検査で視認される可能性があり、外観不良を招くため、その上限は1μmであることが好ましい。第2の析出物の好ましい円相当直径は、200nm以上800nm以下である。
【0081】
更に本発明では、上記円相当直径200nm以上の析出物が10,000個/mm2以上の密度で存在することが必要である。本発明者らの検討結果によれば、第2の析出物のサイズが200nm以上であっても、10,000個/mm2未満の場合は、所望の効果が発揮されないことがわかった。剥離液耐性向上および透明導電膜との接触抵抗低減化の両作用を有効に発揮させるためには、上記析出物の密度は高い程よく、25,000個/mm2以上であることが好ましい。
【0082】
(第3のAl合金膜)
上記第3のAl合金膜は、上述したX群元素および希土類元素(REM)、並びに上述したCuおよび/またはGeの他、更にNiおよび/またはCoを含有するAl−X群元素−REM−Ni/Co−Cu/Ge合金膜である。
【0083】
ここで、NiおよびCoは、透明導電膜との直接接続(ダイレクト・コンタクト)を可能にする元素である。これは、TFTの製造過程における熱履歴により形成される導電性の高いNiおよび/またはCo含有Al系析出物を介して、透明導電膜との電気的な導通が可能となるためである。これらは単独で添加しても良いし、両方を添加しても良い。
【0084】
このような作用を有効に発揮させるためには、Niおよび/またはCoの含有量(単独の場合は単独の含有量であり、両方を含有する場合は合計量である)を0.1〜3原子%とすることが好ましい。Niおよび/またはCoの含有量が0.1原子%未満の場合、所望の効果が得られず、透明導電膜との接触抵抗低減に寄与する第3の析出物の密度を確保できない。すなわち、第3の析出物のサイズが小さく、密度も減少するため、透明導電膜との低い接触抵抗を安定して維持することが困難になる。一方、Niおよび/またはCoの含有量が3原子%を超えると、アルカリ環境下での耐食性が低下するようになる。Niおよび/またはCoのより好ましい含有量は、0.1原子%以上1.0原子%以下であり、更に好ましくは、0.1原子%以上0.6原子%以下である。
【0085】
また、Cuおよび/またはGeは、上述したNiおよび/またはCoと併用することにより透明導電膜との直接接続(ダイレクト・コンタクト)を可能にする元素であり、これにより、所望とする第3の析出物を確保することができる。
【0086】
更に上記第3のAl合金膜は、450〜600℃の高温加熱処理により、上記(3)に規定する所定サイズと所定密度の第3の析出物(Al−REM−Ni/Co−Cu/Ge含有析出物)を含むものであり、これにより、高温下での高い剥離液耐性および透明導電膜との低い接触抵抗を実現できる。第3の析出物は、少なくとも希土類元素と、Niおよび/またはCoと、Cuおよび/またはGeを含有していれば良く、当該析出物による作用を阻害しない限り、他の元素を含有していても良い。
【0087】
上記第3の析出物の円相当直径(サイズ)は、200nm以上である。本発明者らの検討結果によれば、200nm未満の析出物は、たとえ析出物の組成が上記組成を満足するものであっても、所望の効果が発揮されないことがわかった。なお、上記作用を有効に発揮させるためには、上記円相当直径の下限が200nmであれば良く、その上限は、上記作用との関係では特に限定されないが、析出物のサイズが大きくなって巨大析出物になると、光学顕微鏡による検査で視認される可能性があり、外観不良を招くため、その上限は3μmであることが好ましい。第3の析出物の好ましい円相当直径は、200nm以上2μm以下である。
【0088】
更に本発明では、上記円相当直径200nm以上の析出物が2,000個/mm2以上の密度で存在することが必要である。本発明者らの検討結果によれば、第3の析出物のサイズが200nm以上であっても、2,000個/mm2未満の場合は、所望の効果が発揮されないことがわかった。剥離液耐性向上および透明導電膜との接触抵抗低減化の両作用を有効に発揮させるためには、上記析出物の密度は高い程よく、5,000個/mm2以上であることが好ましい。
【0089】
上記第2、第3のAl合金も第1のAl合金と同様、上記所定元素を含有し、残部Alおよび不可避的不純物であることが好ましく、不可避的不純物の具体例とは上記第1のAl合金と同様である。
【0090】
以上、本発明のAl合金膜について説明した。
【0091】
本発明において、上記の第1〜第3の析出物が形成されるための熱処理は、450〜600℃であり、好ましくは500〜600℃である。この熱処理は、真空または窒素および/または不活性ガス雰囲気中で行われることが好ましく、処理時間は、1分以上60分以下であることが好ましい。本発明によれば、上記の熱処理(高温熱処理)を2回以上行なっても、ヒロックなどが生じないことがわかった。
【0092】
このような高温加熱処理に対応するTFT製造プロセスとしては、例えば、アモルファス・シリコンの結晶化のためのレーザーなどによるアニール、各種薄膜形成のためのCVD(化学気相蒸着)による成膜、不純物拡散や保護膜を熱硬化させる際の熱処理炉の温度などが挙げられる。特にアモルファス・シリコンの結晶化のための熱処理で、上記のような高温下に曝されることが多い。
【0093】
上記Al合金の膜厚は、特に高温耐熱性と配線抵抗の低減化を確保するため、50nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましい。なお、その上限は、上記観点からは特に限定されないが、配線テーパ形状などを考慮すると、1μm以下であることが好ましく、より好ましくは600nm以下である。
【0094】
上記Al合金膜は、ソース−ドレイン電極やゲート電極などの各種配線材料に好ましく用いられるが、特に、高温耐熱性が要求されるゲート電極の配線材料として、より好ましく用いられる。
【0095】
上記Al合金膜は、スパッタリング法にてスパッタリングターゲット(以下「ターゲット」ということがある)を用いて形成することが望ましい。イオンプレーティング法や電子ビーム蒸着法、真空蒸着法で形成された薄膜よりも、成分や膜厚の膜面内均一性に優れた薄膜を容易に形成できるからである。
【0096】
また、上記スパッタリング法で上記Al合金膜を形成するには、上記ターゲットとして、前述した元素を含むものであって、所望のAl合金膜と同一組成のAl合金スパッタリングターゲットを用いれば、組成ズレの恐れがなく、所望の成分組成のAl合金膜を形成することができるのでよい。
【0097】
従って、本発明には、前述した第1、第2または第3のAl合金膜と同じ組成のスパッタリングターゲットも本発明の範囲内に包含される。詳細には、上記ターゲットとして、(i)Ta、Nb、Re、Zr、W、Mo、V、Hf、Ti、CrおよびPtよりなる群(X群)から選択される少なくとも一種の元素を0.1〜5原子%、および希土類元素の少なくとも一種を0.1〜4原子%を含み、残部:Alおよび不可避的不純物であるターゲットのほか、(ii)更に、Cuおよび/またはGeを0.1〜2原子%含むターゲットが挙げられ、(iii)更に、Niおよび/またはCoを0.1〜3原子%含むターゲットが挙げられる。
【0098】
上記ターゲットの形状は、スパッタリング装置の形状や構造に応じて任意の形状(角型プレート状、円形プレート状、ドーナツプレート状など)に加工したものが含まれる。
【0099】
上記ターゲットの製造方法としては、溶解鋳造法や粉末焼結法、スプレイフォーミング法で、Al基合金からなるインゴットを製造して得る方法や、Al基合金からなるプリフォーム(最終的な緻密体を得る前の中間体)を製造した後、該プリフォームを緻密化手段により緻密化して得られる方法が挙げられる。
【0100】
本発明は、上記Al合金膜が、薄膜トランジスタに用いられていることを特徴とする表示装置も含むものである。その態様として、前記Al合金膜が、薄膜トランジスタのソース電極および/またはドレイン電極並びに信号線に用いられ、ドレイン電極が透明導電膜に直接接続されているものや、ゲート電極および走査線に用いられているものなどが挙げられる。第1、第2のAl合金膜を用いる場合は、Mo、Ti、W、およびCrよりなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む高融点金属膜または高融点合金膜(バリアメタル)を介して透明導電膜と接続される。一方、第3のAl合金膜を用いる場合は、上記のバリアメタルを介さずに、透明導電膜と直接接続される。
【0101】
また前記ゲート電極および走査線と、前記ソース電極および/またはドレイン電極ならびに信号線が、同一組成のAl合金膜であるものが態様として含まれる。
【0102】
本発明に用いられる透明画素電極は特に限定されず、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)などが挙げられる。
【0103】
また、本発明に用いられる半導体層も特に限定されず、アモルファス・シリコン、多結晶シリコン、連続粒界結晶シリコンなどが挙げられる。
【0104】
本発明のAl合金膜を備えた表示装置を製造するにあたっては、表示装置の一般的な工程を採用することができ、例えば、前述した特許文献1〜5に記載の製造方法を参照すれば良い。
【0105】
以上、液晶表示装置として液晶ディスプレイを代表的に取り上げ、説明したが、上記説明した本発明の表示装置用Al合金膜は主に電極および配線材料として各種液晶表示装置に用いることができ、例えば図8に例示される液晶ディスプレイ(LDC)における薄膜トランジスタ用のゲート、ソースおよびドレイン電極並びに配線材料、例えば図9に例示される有機EL(OELD)における薄膜トランジスタ用のゲート、ソースおよびドレイン電極並びに配線材料、例えば図10に例示されるフィールドエミッションディスプレイ(FED)におけるカソードおよびゲート電極並びに配線材料、例えば図11に例示される蛍光真空管(VFD)におけるアノード電極および配線材料、例えば図12に例示されるプラズマディスプレイ(PDP)におけるアドレス電極および配線材料、例えば図13に例示される無機ELにおける背面電極などが挙げられる。これら液晶表示装置に本発明の表示装置用Al合金膜を用いた場合に、上記所定の効果が得られることは実験により確認済である。
【実施例】
【0106】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0107】
(実施例1)
表1および表2に示す種々の合金組成のAl合金膜(膜厚=300nm)を、DCマグネトロン・スパッタ法(基板=ガラス基板(コーニング社製 Eagle2000)、雰囲気ガス=アルゴン、圧力=2mTorr、基板温度=25℃(室温))によって成膜した。
【0108】
尚、上記種々の合金組成のAl合金膜の形成には、真空溶解法で作製した種々の組成のAl合金ターゲットをスパッタリングターゲットとして用いた。
【0109】
また実施例で用いた種々のAl合金膜における各合金元素の含有量は、ICP発光分析(誘導結合プラズマ発光分析)法によって求めた。
【0110】
上記のようにして成膜したAl合金膜に対し、450〜600℃の高温加熱処理を2回行い、高温加熱処理後のAl合金膜について、耐熱性、当該Al合金膜自体の電気抵抗(配線抵抗)、当該Al合金膜を透明画素電極に直接接続したときの接触抵抗(ITOとのコンタクト抵抗)、および剥離液耐性の各特性、並びに析出物のサイズおよび密度を、それぞれ下記に示す方法で測定した。参考のため、耐熱性については、350℃の実験も行なった。なお、アルカリ現像液耐性については、成膜後のAl合金膜を用いて実験を行い、加熱処理は行わなかった。TFT製造過程においてアルカリ環境下に曝されるのはAl合金配線を形成するフォトリソグラフィ工程であり、熱履歴を受ける前の段階だからである。
【0111】
(1)加熱処理後の耐熱性
成膜後のAl合金膜に対し、不活性雰囲気ガス(N2)雰囲気下にて、表1および表2に示す各温度にて10分間の加熱処理を2回行ない、その表面性状を光学顕微鏡(倍率:500倍)を用いて観察し、ヒロックの密度(個/m2)を測定した。表3に記載の判断基準により耐熱性を評価し、本実施例では◎または○を合格とした。
【0112】
(2)加熱処理後のAl合金膜自体の配線抵抗
成膜後のAl合金膜に10μm幅のラインアンドスペースパターンを形成したものに、不活性雰囲気ガス(N2)雰囲気下にて、450℃、550℃または600℃の各温度にて10分間の加熱処理を2回行ない、4端子法で電気抵抗率を測定した。表3に記載の判断基準により各温度の配線抵抗を評価し、本実施例では◎または○を合格とした。
【0113】
(3)透明画素電極とのダイレクト接触抵抗
成膜後のAl合金膜に対し、不活性雰囲気ガス(N2)雰囲気下にて、600℃で10分間の加熱処理を2回行なったものを用意した。このAl合金膜と透明画素電極を直接接触したときの接触抵抗は、透明画素電極(ITO;酸化インジウムに10質量%の酸化スズを加えた酸化インジウムスズ)を、下記条件でスパッタリングすることによって図6に示すケルビンパターン(コンタクトホールサイズ:10μm角)を作製し、4端子測定(ITO−Al合金膜に電流を流し、別の端子でITO−Al合金間の電圧降下を測定する方法)を行なった。具体的には、図6のI1−I2間に電流Iを流し、V1−V2間の電圧Vをモニターすることにより、コンタクト部Cのダイレクト接触抵抗Rを[R=(V2−V1)/I2]として求めた。表3に記載の判断基準によりITOとのダイレクト接触抵抗(ITOとのコンタクト抵抗)を評価し、本実施例では◎または○を合格とした。
(透明画素電極の成膜条件)
雰囲気ガス=アルゴン
圧力=0.8mTorr
基板温度=25℃(室温)
【0114】
(4)アルカリ現像液耐性(現像液エッチングレートの測定)
基板上に成膜したAl合金膜にマスクを施した後、現像液(TMAH2.38質量%を含む水溶液)中に25℃で5分間浸漬し、そのエッチング量を触診式段差計を用いて測定した。表3に記載の判断基準によりアルカリ現像液耐性を評価し、本実施例では◎または○を合格とした。
【0115】
(5)剥離液耐性
フォトレジスト剥離液の洗浄工程を模擬し、アミン系フォトレジストと水を混合したアルカリ性水溶液による腐食実験を行った。詳細には、成膜後のAl合金膜に対し、不活性ガス雰囲気(N2)中、600℃で20分間の加熱処理を2回行った後、東京応化工業(株)製のアミン系レジスト剥離液「TOK106」水溶液をpH10.5および9.5の各pHに調整したもの(液温25℃)に浸漬させた。具体的には、まず、pH10.5の溶液に1分間浸漬後、連続してpH9.5の溶液に5分間浸漬させた。そして、浸漬後の膜表面にみられるクレータ状の腐食(孔食)痕(円相当直径が150nm以上のもの)の個数を調べた(観察倍率は1000倍)。表3に記載の判断基準により剥離液耐性を評価し、本実施例では◎または○を合格とした。
【0116】
(6)析出物の測定
成膜後のAl合金膜に対し、不活性ガス雰囲気(N2)中、550℃または600℃で10分間の加熱処理を2回行い、析出した析出物を、平面TEM(透過電子顕微鏡、倍率30万倍)で観察した。析出物のサイズ(円相当直径)および密度(個/mm2)は、走査電子顕微鏡の反射電子像を用いて求めた。具体的には、1視野(mm2)内に観察される析出物の円相当直径および個数を測定し、3視野の平均値を求めた。析出物に含まれる元素はTEM−EDX分析により判断した。そして表3に記載の判断基準により各析出物のサイズおよび密度を分類した。析出物について、サイズが◎、○、または△であり、且つ、密度が◎または○を満足するものが、本発明の要件を満足するものである。
【0117】
これらの結果を表1〜2に併記する。
【0118】
【表1A】
【0119】
【表1B】
【0120】
【表1C】
【0121】
【表1D】
【0122】
【表1E】
【0123】
【表2A】
【0124】
【表2B】
【0125】
【表3】
【0126】
まず、表1A〜表1Eについて考察する。これらの表において、析出物サイズ(550℃/600℃)および析出物密度(550℃/600℃)が「◎」とは、第1〜第3の析出物のいずれも、サイズおよび密度が共に「◎」を意味する。同様に、析出物サイズ(550℃/600℃)および析出物密度(550℃/600℃)が「○」とは、第1〜第3の析出物のいずれも、サイズおよび密度が共に「○」を意味する。
【0127】
表1A〜表1Eに記載の各Al合金膜は、本発明に係る第3のAl合金膜に対応しており、本発明で規定する合金組成を満足し、且つ、第1〜第3の析出物の要件(サイズおよび密度)も満足しているため、低温(350℃)の耐熱性に優れているだけでなく450〜600℃の高温耐熱性にも優れている。更に、高温加熱処理後の電気抵抗について、高融点金属よりも低い電気抵抗を有しており、高温加熱処理後のアルカリ現像液および剥離液に対する耐性も良好であり、ITO(透明画素電極)とのダイレクト接触抵抗も大幅に低減することができた。
【0128】
例えば表1BのNo.43には、Al−0.5原子%Ta−2.0原子%La−0.1原子%Ni−0.5原子%Ge合金膜を加熱処理したときの結果が示されており、550℃および600℃のいずれの温度で処理したときに、以下の析出物が得られた。
【0129】
第1の析出物(Al−Ta−La含有析出物)について、サイズ(円相当直径):◎(20nm以上800nm以下)のものが、密度(個/mm2):◎(2,000,000個/mm2以上)で存在する。
【0130】
第2の析出物(Al−Ge−La含有析出物)について、サイズ(円相当直径):◎(200nm以上800nm以下)のものが、密度(個/mm2):◎(25,000個/mm2以上)で存在する。
【0131】
第3の析出物(Al−Ni−Ge−La含有析出物)について、サイズ(円相当直径):◎(200nm以上2μm以下)のものが、密度(個/mm2):◎(5,000個/mm2以上)で存在する。
【0132】
参考のため、上記表1BのNo.43に存在する析出物(1〜4)について、各析出物の組成をEDX半定量法によって分析した結果を表4に示す。
【0133】
【表4】
【0134】
また、これらの析出物(1〜4)の形態・分布状態を明らかにするため、図1〜2、およびこれらの拡大図である図3〜4に、No.43の平面TEM(透過電子顕微鏡)写真を示す。図3に析出物1、2が、図4に析出物3、4が、それぞれ示されている。これらの析出物は、様々なサイズを有し、しかもAl合金膜中に広く分散して存在しているため、倍率を変えた写真を示しており、図2(倍率60,000倍)は図1(倍率30,000倍)の拡大図、図3〜4(倍率150,000倍)は図2の拡大図である。また図7は、図3、図4に示されている析出物(図3:析出物1、析出物2;図4:析出物3)のEDX面分析写真である。
【0135】
次に、表2について考察する。表2において、析出物サイズ(550℃/600℃)および析出物密度(550℃/600℃)が「×××」(表2のNo.1〜9をご参照)とは、第1の析出物、第2の析出物、第3の析出物も、サイズおよび密度が共に「×」を意味する。
【0136】
また、表2において、析出物サイズ(550℃/600℃)および析出物密度(550℃/600℃)が「×◎◎」(表2のNo.10〜13をご参照)とは、第1の析出物のサイズおよび密度が共に「×」であるが、第2の析出物、第3の析出物のサイズおよび密度が共に「◎」を意味する。
【0137】
また、表2において、析出物サイズ(550℃/600℃)および析出物密度(550℃/600℃)が「◎××」(表2のNo.16〜21、56、57、59〜62、64〜69をご参照)とは、第1の析出物のサイズおよび密度が共に「◎」であるが、第2の析出物、第3の析出物のサイズおよび密度が共に「×」を意味する。なお、表2において、析出物サイズ(550℃/600℃)が「◎××」で、析出物密度(550℃/600℃)が「○××」(表2のNo.14、15、58、63をご参照)とは、第1の析出物サイズは「◎」で第1の析出物密度は「○」であり、第2の析出物、第3の析出物サイズおよび密度は共に「×」を意味する。
【0138】
また、表2において、析出物サイズ(550℃/600℃)および析出物密度(550℃/600℃)が「◎◎×」(表2のNo.24〜27、30〜45、48〜51、54、55をご参照)とは、第1の析出物、第2の析出物のサイズおよび密度が共に「◎」であるが、第3の析出物のサイズおよび密度が共に「×」を意味する。なお、表2において、析出物サイズ(550℃/600℃)が「◎◎×」で、析出物密度(550℃/600℃)が「○○×」(表2のNo.22、23、28、29、46、47、52、53をご参照)とは、第1の析出物、第2の析出物サイズは「◎」で第1の析出物、第2の析出物密度は「○」であり、第3の析出物サイズおよび密度は共に「×」を意味する。
【0139】
まず、表2に記載のNo.14〜21、56〜69の各Al合金膜は、本発明に係る第1のAl合金膜に対応しており、本発明で規定する合金組成(厳密には、No.14〜21はX群元素および希土類に加え、更にNi/Coも含有している)を満足し、且つ、第1の析出物の要件(サイズおよび密度)も満足しているため、低温域(350℃)から高温域(450〜600℃)に亘って広く耐熱性に優れている。更に、高温加熱処理後の低い電気抵抗および高い剥離液耐性、並びにアルカリ現像液耐性にも優れている。しかし、これらのAl合金膜は、Cuおよび/またはGeを含有していないために第2の析出物、第3の析出物の要件(サイズおよび密度)は満足せず、その結果、剥離液耐性が低下し、ITOとの接触抵抗は高くなった。
【0140】
また、表2に記載のNo.22〜55の各Al合金膜も、本発明に係る第2のAl合金膜に対応しており、本発明で規定する合金組成(厳密には、X群元素および希土類に加え、更にGeやCuも含有している)を満足し、且つ、第1の析出物の要件(サイズおよび密度)も満足しているため、低温域(350℃)から高温域(450〜600℃)に亘って広く耐熱性に優れている。更に、高温加熱処理後の低い電気抵抗および高い剥離液耐性、並びにアルカリ現像液耐性にも優れている。しかし、これらのAl合金膜は、Niおよび/またはCoを含有していないために第3の析出物の要件(サイズおよび密度)は満足せず、その結果、剥離液耐性が低下し、ITOとの接触抵抗は高くなった。
【0141】
これに対し、表2に記載のNo.1〜13は、本発明で規定する合金組成を満足せず、第1、第2または第3の析出物の要件(サイズおよび密度)も満足していないため、以下の不具合を抱えている。
【0142】
表2のNo.1は、純Alの従来例であり、所望の析出物が得られないために耐熱性が低下した。
【0143】
表2のNo.2/3は、Ni/Coのみを含有し、X群元素および希土類元素を含有しない比較例であり、所望とする第1、第2および第3の析出物がいずれも得られないために耐熱性が低下した。
【0144】
表2のNo.4〜9は、Niと希土類元素を含み、X群元素を含まない比較例であり、所望とする第1、第2および第3の析出物がいずれも得られないために耐熱性が低下した。なお、これらは希土類元素を含有しているため、アルカリ現像液耐性は良好であった。また、Ni量を2.0%と多く含むNo.4〜7は、Cu/Geを含まなくてもITOとの接触抵抗が低く抑えられているのに対し、Ni量が0.1原子%と少ないNo.8、9(Cu/Geの添加なし)は、ITOとの接触抵抗が高くなった。
【0145】
表2のNo.10〜13は、Ni/Coと希土類元素とGeを含み、X群元素を含まない比較例であり、所望とする第1の析出物(サイズおよび密度)が得られないために耐熱性が低下した。ただし、これらは希土類元素を含有し、且つ、所望とする第2および第3の析出物(サイズおよび密度)が得られているため、アルカリ現像液耐性は良好であった。また、これらはNiとCuの両方を含有しているため、ITOとの接触抵抗が低く抑えられた。
【符号の説明】
【0146】
1a ガラス基板
5 透明電極
25 走査線
26 ゲート電極
27 ゲート絶縁膜
28 ソース電極
29 ドレイン電極
30 半導体シリコン層
31 保護膜
32 低抵抗シリコン層
33 絶縁性保護膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置に用いられるAl合金膜であって、
前記Al合金膜は、Ta、Nb、Re、Zr、W、Mo、V、Hf、Ti、CrおよびPtよりなる群(X群)から選択される少なくとも一種の元素と、希土類元素の少なくとも一種とを含み、
前記Al合金膜に450〜600℃の加熱処理を行なったとき、下記(1)の要件を満足することを特徴とする表示装置用Al合金膜。
(1)Alと、前記X群から選択される少なくとも一種の元素と、前記希土類元素の少なくとも一種とを含む第1の析出物について、円相当直径20nm以上の析出物が500,000個/mm2以上の密度で存在する。
【請求項2】
前記Al合金膜は、更にCuおよび/またはGeとを含み、前記Al合金膜に450〜600℃の加熱処理を行なったとき、更に下記(2)の要件を満足するものである請求項1に記載の表示装置用Al合金膜。
(2)Alと、Cuおよび/またはGeと、前記希土類元素の少なくとも一種とを含む第2の析出物について、円相当直径200nm以上の析出物が10,000個/mm2以上の密度で存在する。
【請求項3】
前記Al合金膜は、更にNiおよび/またはCoとを含み、前記Al合金膜に450〜600℃の加熱処理を行なったとき、更に下記(3)の要件を満足するものである請求項2に記載の表示装置用Al合金膜。
(3)Alと、Niおよび/またはCoと、Cuおよび/またはGeと、前記希土類元素の少なくとも一種とを含む第3の析出物について、円相当直径200nm以上の析出物が2,000個/mm2以上の密度で存在する。
【請求項4】
前記第1の析出物の円相当直径は、1μm以下である請求項1に記載の表示装置用Al合金膜。
【請求項5】
前記第2の析出物の円相当直径は、1μm以下である請求項2または3に記載の表示装置用Al合金膜。
【請求項6】
前記第3の析出物の円相当直径は、3μm以下である請求項3に記載の表示装置用Al合金膜。
【請求項7】
前記X群の元素の含有量は0.1〜5原子%である請求項1〜6のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜。
【請求項8】
前記希土類元素の含有量は0.1〜4原子%である請求項1〜7のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜。
【請求項9】
前記Cuおよび/またはGeの含有量は0.1〜2原子%である請求項2〜8のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜。
【請求項10】
前記Niおよび/またはCoの含有量は0.1〜3原子%である請求項3〜9のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜。
【請求項11】
前記加熱処理は、500〜600℃である請求項1〜10のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜。
【請求項12】
前記加熱処理は、少なくとも2回実施されるものである請求項1〜11のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜。
【請求項13】
前記Al合金膜は、透明導電膜と直接接続されるものである請求項1〜12のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜。
【請求項14】
前記Al合金膜は、Mo、Ti、W、およびCrよりなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む膜を介して透明導電膜と接続されるものである請求項1〜13のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜。
【請求項15】
Ta、Nb、Re、Zr、W、Mo、V、Hf、Ti、CrおよびPtよりなる群(X群)から選択される少なくとも一種の元素を0.1〜5原子%、および希土類元素の少なくとも一種を0.1〜4原子%を含み、残部:Alおよび不可避的不純物であることを特徴とするスパッタリングターゲット。
【請求項16】
更にCuおよび/またはGeを0.1〜2原子%含むものである請求項15に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項17】
更にNiおよび/またはCoを0.1〜3原子%含むものである請求項15または16に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜を備えた表示装置。
【請求項19】
請求項1〜14のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜を備えた液晶ディスプレイ。
【請求項20】
請求項1〜14のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜を備えた有機ELディスプレイ。
【請求項21】
請求項1〜14のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜を備えたフィールドエミッションディスプレイ。
【請求項22】
請求項1〜14のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜を備えた蛍光真空管。
【請求項23】
請求項1〜14のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜を備えたプラズマディスプレイ。
【請求項24】
請求項1〜14のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜を備えた無機ELディスプレイ。
【請求項1】
表示装置に用いられるAl合金膜であって、
前記Al合金膜は、Ta、Nb、Re、Zr、W、Mo、V、Hf、Ti、CrおよびPtよりなる群(X群)から選択される少なくとも一種の元素と、希土類元素の少なくとも一種とを含み、
前記Al合金膜に450〜600℃の加熱処理を行なったとき、下記(1)の要件を満足することを特徴とする表示装置用Al合金膜。
(1)Alと、前記X群から選択される少なくとも一種の元素と、前記希土類元素の少なくとも一種とを含む第1の析出物について、円相当直径20nm以上の析出物が500,000個/mm2以上の密度で存在する。
【請求項2】
前記Al合金膜は、更にCuおよび/またはGeとを含み、前記Al合金膜に450〜600℃の加熱処理を行なったとき、更に下記(2)の要件を満足するものである請求項1に記載の表示装置用Al合金膜。
(2)Alと、Cuおよび/またはGeと、前記希土類元素の少なくとも一種とを含む第2の析出物について、円相当直径200nm以上の析出物が10,000個/mm2以上の密度で存在する。
【請求項3】
前記Al合金膜は、更にNiおよび/またはCoとを含み、前記Al合金膜に450〜600℃の加熱処理を行なったとき、更に下記(3)の要件を満足するものである請求項2に記載の表示装置用Al合金膜。
(3)Alと、Niおよび/またはCoと、Cuおよび/またはGeと、前記希土類元素の少なくとも一種とを含む第3の析出物について、円相当直径200nm以上の析出物が2,000個/mm2以上の密度で存在する。
【請求項4】
前記第1の析出物の円相当直径は、1μm以下である請求項1に記載の表示装置用Al合金膜。
【請求項5】
前記第2の析出物の円相当直径は、1μm以下である請求項2または3に記載の表示装置用Al合金膜。
【請求項6】
前記第3の析出物の円相当直径は、3μm以下である請求項3に記載の表示装置用Al合金膜。
【請求項7】
前記X群の元素の含有量は0.1〜5原子%である請求項1〜6のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜。
【請求項8】
前記希土類元素の含有量は0.1〜4原子%である請求項1〜7のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜。
【請求項9】
前記Cuおよび/またはGeの含有量は0.1〜2原子%である請求項2〜8のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜。
【請求項10】
前記Niおよび/またはCoの含有量は0.1〜3原子%である請求項3〜9のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜。
【請求項11】
前記加熱処理は、500〜600℃である請求項1〜10のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜。
【請求項12】
前記加熱処理は、少なくとも2回実施されるものである請求項1〜11のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜。
【請求項13】
前記Al合金膜は、透明導電膜と直接接続されるものである請求項1〜12のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜。
【請求項14】
前記Al合金膜は、Mo、Ti、W、およびCrよりなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む膜を介して透明導電膜と接続されるものである請求項1〜13のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜。
【請求項15】
Ta、Nb、Re、Zr、W、Mo、V、Hf、Ti、CrおよびPtよりなる群(X群)から選択される少なくとも一種の元素を0.1〜5原子%、および希土類元素の少なくとも一種を0.1〜4原子%を含み、残部:Alおよび不可避的不純物であることを特徴とするスパッタリングターゲット。
【請求項16】
更にCuおよび/またはGeを0.1〜2原子%含むものである請求項15に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項17】
更にNiおよび/またはCoを0.1〜3原子%含むものである請求項15または16に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜を備えた表示装置。
【請求項19】
請求項1〜14のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜を備えた液晶ディスプレイ。
【請求項20】
請求項1〜14のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜を備えた有機ELディスプレイ。
【請求項21】
請求項1〜14のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜を備えたフィールドエミッションディスプレイ。
【請求項22】
請求項1〜14のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜を備えた蛍光真空管。
【請求項23】
請求項1〜14のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜を備えたプラズマディスプレイ。
【請求項24】
請求項1〜14のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜を備えた無機ELディスプレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−190531(P2011−190531A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22034(P2011−22034)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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