表面検査方法及び装置
【課題】半導体ウェハ表面や表面近傍に存在する異物や欠陥等に由来して発生する散乱光の強度が照明方向に依存する異方性を有する場合であっても主走査方向の回転角に依存せずに均一な感度で異物や欠陥等の検査が可能な表面検査装置を実現する。
【解決手段】光源11からの光はビームスプリッタ12で、略等しい仰角を有し、互いに略直交する2つの方位角からの2つの照明ビーム21、22となり、半導体ウェハ100に照射され、照明スポット3、4となる。照明光21、22による散乱・回折・反射光の和を検出するとウェハ100自身又はそこに存在する異物や欠陥が照明方向に関する異方性の影響を解消できる。これにより、異物や欠陥等に由来して発生する散乱光の強度が照明方向に依存する場合であっても主走査方向の回転角に依存せずに均一な感度で異物や欠陥等の検査が可能となる。
【解決手段】光源11からの光はビームスプリッタ12で、略等しい仰角を有し、互いに略直交する2つの方位角からの2つの照明ビーム21、22となり、半導体ウェハ100に照射され、照明スポット3、4となる。照明光21、22による散乱・回折・反射光の和を検出するとウェハ100自身又はそこに存在する異物や欠陥が照明方向に関する異方性の影響を解消できる。これにより、異物や欠陥等に由来して発生する散乱光の強度が照明方向に依存する場合であっても主走査方向の回転角に依存せずに均一な感度で異物や欠陥等の検査が可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板(半導体ウェハ)上の微小な異物・欠陥並びに基板の表面粗さに関する情報を計測する表面検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板(半導体ウェハ)の製造ラインにおいて、製造装置の発塵状況を監視するために、半導体基板の表面に付着した異物や加工中に発生したスクラッチ等の欠陥の検査が行われている。例えば、回路パターン形成前の半導体基板では、その表面において数10nm以下の微小な異物や欠陥の検出が必要である。また、半導体基板表面の検査としては、異物や欠陥以外に、基板表面近傍の浅い領域に存在する結晶欠陥や基板表面の表面粗さも検査対象となる。
【0003】
半導体基板等の被検査物体表面上の微小な欠陥を検出する技術としては、例えば、特許文献1に記載されているように、集光したレーザ光束を半導体基板表面に照射して、半導体基板上に異物が付着している場合に発生する散乱光を検出し、半導体基板の回転と並進送りとで半導体基板全面の異物や欠陥を検査している。
【0004】
散乱光の検出には楕円ミラーを用い、半導体基板上の検出位置を楕円の第1焦点位置とし、受光素子の受光面を第2焦点位置に配置することにより、異物で発生した散乱光を広い立体角で集光し、微小異物の検出もできるように構成されている。
【0005】
この特許文献1に記載の技術は、半導体基板を照明するためのレーザ光束は基板表面に対する仰角に関して斜方照明および垂直照明の両者を備えるが、1つの仰角に関してはただ1つの方位角からの照明光束しか持たない。
【0006】
また、例えば、特許文献2に記載されているように、半導体基板表面に関して複数の仰角と複数の方位角を組合せた位置に集光レンズと光検出器を配置し、各集光レンズで集光された散乱光を光検出器で検出することにより、微小異物からの散乱光の三次元放射分布特性に合わせて有利な方向での検出を可能にしたものもある。
【0007】
この特許文献2に記載された技術においても、半導体基板を照明するためのレーザ光束は斜方照明と垂直上方照明の2本が備わっているが、1つの入射角(仰角)に対応するレーザ光束の方位角はただ1つである。
【0008】
さらに、特許文献3には、光源に波長の異なる2つのレーザ光源を用いる技術が記載され、この技術においては、2つのレーザ光源からの照明光を、入射角の異なる、即ち仰角は異なるが同じ方位角から半導体基板表面に入射されている。
【0009】
また、特許文献4に記載された技術では、波長の異なる2つのレーザ光源を用いて半導体基板表面を、概略同じ仰角から異なる2つの方位角で照明する技術が記載されているが、この場合の2つの方位角は互いに180°異なる方向であり、2つの照明領域は互いに平行な関係にある。
【0010】
【特許文献1】米国特許第5798829号明細書
【特許文献2】特開2001−255278号公報
【特許文献3】特開2001−235431号公報
【特許文献4】特開平11−223607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来技術において、1つの方位角から照明を行うと、一般に図15に示すように、照明ビーム21は、照明領域と被検査物体移動ステージの主走査である回転動作の回転中心を結ぶ直線の方向に沿って半導体ウェハ上の照射領域に入射する。ここで、図16に示すように、その結晶方位が特定できる切り欠き部300を有する半導体ウェハ表面に固定した、(x、y)座標系を取るものとする。
【0012】
この半導体ウェハが回転移動させられて、固定方向からの照明ビーム21によって照明されるとき、半導体ウェハ上のA点では照明は(x、y)座標系のy軸に平行な方向から成されるが、B点では照明はx軸に平行な方向から成される。また、C点ではその中間のx軸・y軸と45°を成す方向から照明が成される。
【0013】
もし、照明光により発生する散乱光の強度が、照明光の入射方向に依存する異方性を持つような異物や欠陥が半導体ウェハ表面上に付着している場合には、半導体ウェハ上のどの位置に異物等が付着しているかによって、散乱光強度が異なる。従って、検出感度に差が生じたり、散乱光強度に基づいて異物や欠陥の大きさを算出するときに誤差を生じてしまうことが予想される。
【0014】
また、表面の平坦度を非常に高めるよう研磨された半導体ウェハにおいては、その表面を構成する原子の配列段差に近いレベルの表面粗さが見られるが、このような配列段差は一般にその半導体ウェハの結晶方位と大きな相関を持って現れる。そのため、そのような半導体ウェハの同一位置を同一の仰角の、異なる方位角から照明すると、異なる強度の散乱光が発生する。
【0015】
即ち、そのような半導体ウェハが回転移動によって異なる方向からの照明光によって照明されると、半導体ウェハ全面で一様な表面粗さを有する場合であっても、被検査物体移動ステージの主走査回転に伴ってその回転角毎に異なる強度の散乱光が観測されてしまう。このことは実際の表面検査装置で頻繁に発生しており、半導体ウェハの表面粗さに由来する信号(以下、これをヘイズ信号と呼ぶ)の半導体ウェハ上での強度分布は、例えば、図17に示すようになることが多い。
【0016】
図17中、ヘイズ信号が、a→b→c→d→e→f→gの順に大きいことを表している。このヘイズ信号の検出感度の異方性は、異物・欠陥の検出感度にも影響を及ぼす。すなわち、異物・欠陥からの散乱光を検出する際のノイズレベルは、一般に、表面粗さに由来する散乱光のゆらぎ(ショットノイズ)に依存することが良く知られており、ヘイズ信号の高い部位では異物・欠陥からの信号を検出する際のしきい値を大きくする必要が生じ、その結果として異物・欠陥の検出感度が低下してしまう。
【0017】
本発明の目的は、半導体ウェハ表面や表面近傍に存在する異物や欠陥、またはその半導体ウェハの表面粗さに由来して発生する散乱光の強度が照明方向に依存する異方性を有する場合であっても、主走査方向の回転角に依存せずに均一な感度で異物や欠陥、または表面粗さの検査が可能な表面検査方法及び装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の表面検査方法は、主走査が回転移動で副走査が並進移動を行う被検査物体移動ステージ上に搭載された被検査物体の表面に光ビームを照射し、上記被検査物体からの散乱・回折・反射された光を集光し、集光した光に基づいて上記被検査物体表面を検査する。
【0019】
そして、上記被検査物体の表面に対して、略同一の仰角で互いに異なる方位角から2つの光ビームを、上記被検査物体の表面の異なる2つの領域に照射し、上記2つの領域からの散乱・回折・反射された光を集光し、集光した光に基づいて上記被検査物体表面上又は表面近傍内部に存在する異物や欠陥の位置や大きさ又は上記被検査物体表面粗さを検出する。
【0020】
また、本発明の表面検査装置は、主走査が回転移動で副走査が並進移動を行う被検査物体移動ステージと、このステージ上に搭載された被検査物体の表面に光ビームを照射する手段と、上記被検査物体からの散乱・回折・反射された光を集光する手段と、集光した光に基づいて上記被検査物体表面を検査する検査手段とを有する。
【0021】
そして、上記被検査物体の表面に対して、略同一の仰角で互いに異なる方位角から2つの光ビームを、上記被検査物体の表面の異なる2つの領域に照射する光ビーム照射手段と、上記2つの領域からの散乱・回折・反射された光を集光する集光手段と、集光した光に基づいて上記被検査物体表面上又は表面近傍内部に存在する異物や欠陥の位置や大きさ又は上記被検査物体表面粗さを検出する検出手段とを備える。
【発明の効果】
【0022】
半導体ウェハ表面や表面近傍に存在する異物や欠陥、またはその半導体ウェハの表面粗さに由来して発生する散乱光の強度が照明方向に依存する異方性を有する場合であっても、主走査方向の回転角に依存せずに均一な感度で異物や欠陥、または表面粗さの検査が可能な表面検査方法及び装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施形態である異物・欠陥検査装置の概略構成図である。図1において、被検査物体である半導体ウェハ100はチャック101に真空吸着されており、このチャック101は、回転ステージ103と並進ステージ104とを備える被検査物体移動ステージ102及びZステージ105上に搭載されている。
【0025】
半導体ウェハ100の上方に配置されている照明・検出光学系110は、図2、図3に示す光学系である。図2は光学系の平面図であり、図3は光学系の側面図である。
【0026】
図2、図3において、照明・検出光学系110の、照明光の光源11には、紫外域の波長の光を時間的に繰返してパルス発振するパルスレーザを用いる。この光源11から出た光は、ビームスプリッタ12で2本の照明ビーム21、22に分けられる。
【0027】
照明ビーム21は偏向制御部111及び折り返しミラー112を介して照射レンズ18に到達し、この照射レンズ18の作用により、図4に示す照明スポット3を形成する。また、照明ビーム22は偏向制御部111及び折り返しミラー112を介して照射レンズ19に到達し、この照射レンズ19の作用により、図4に示す照明スポット4を形成する。照明スポット3、4は、被検査物体移動ステージ102の主走査方向に、互いに重ならないように調整されている。
【0028】
微小な異物や欠陥を高感度で検出するためには、照明ビームの被検査物体表面に対する仰角は、概略5°乃至25°程度の低い仰角、より望ましくは被検査物体を構成する材料に対するブリュースター角近辺とするのがよい。そこで、本発明の第1の実施形態では、両照明ビーム21、22を、共に概略、結晶Siに対するブリュースター角で、共に半導体ウェハ100の外周から内周へ向かう方向に沿って斜入射するように構成する。
【0029】
このため、照明スポット3、4は概略楕円形状をしている。ここで、照度が照明スポット中心部のeの2乗分の1(eは自然対数の底)に低下する輪郭線の内部を、あらためて照明スポットと定義することにする。図2に示すように、この照明スポットの長軸方向の幅をd1、短軸方向の幅をd2とする。照明スポット3および4は、互いに略等しいd1、d2を有し、略等しい照度で照明される。
【0030】
両照明ビーム21、22の偏光状態は偏光制御部111により照明スポット3、4に入射する段階で、「共にP偏光」または「共にs偏光」または「共に円偏光」または「共に概略等しい楕円率を有する楕円偏光」となるように制御される。
【0031】
図2に示すように、半導体ウェハ100に照射される照明ビーム21の方位角は、被検査物体移動ステージ102の主走査回転中心と照明スポット3及び4の長軸方向の延長線の交点とを結ぶ線分に対して概略45°の角度61を成す。また、半導体ウェハ100に照射される照明ビーム22の方位角は、照明ビーム21の方位角に対して概略90°の角度62を成す。
【0032】
このことから、照明スポット3及び4の長軸は互いに略90°の角度を成す。この配置により、被検査物体移動ステージ102の主走査回転に伴って照明スポット3が半導体ウェハ100の表面上で描く軌跡と、照明スポット4が描く軌跡とは、被検査物体移動ステージ102の半径方向において概略重なる。
【0033】
図3に示す集光レンズ5は、レーリー散乱に従うような微小な異物に対して効率良くその散乱光を捕捉できるよう、低い仰角で散乱・回折・反射光を集光できる構成となっている。この構成において、異物1は第1の照明スポット3を通過後、第2の照明スポット4を通過するので、光検出器7からは散乱・回折・反射光信号が2回得られる。なお、本発明の第1の実施形態では、光検出器7として光電子増倍管を用いるが、異物からの散乱・回折・反射光を高感度に検出できる光検出器であれば他の検出原理の光検出器であっても良い。
【0034】
光検出器7からの散乱・回折・反射光信号は、増幅器26で増幅された後、A/D変換器30で予め定められたサンプリング間隔dT毎にサンプリングされ、デジタルデータに変換される。サンプリング間隔dTは、異物1が照明スポット3を通過後、照明スポット4を通過するまでの時間間隔に対し、十分小さくなるように設定してある。
【0035】
サンプリング間隔dTごとのデジタルデータは異物・欠陥判定機構108で予め定められた検出しきい値と比較され、デジタルデータが閾値以上であれば異物・欠陥判定機構108はこのデジタルデータが異物・欠陥よるものだと判定して、異物・欠陥判定情報を発生する。
【0036】
なお、この異物・欠陥判定は、A/D変換器30から得られるデジタルデータを予め定められた閾値と比較して異物・欠陥の存在を判定する代わりに、増幅器26からの出力電気信号を予め定められた閾値電圧と比較して判定するようにしても良い。予め定められた閾値をノイズレベルに対して適切に設定すれば、異物1が照明スポット3の通過時と照明スポット4の通過時に2回発生する散乱・回折・反射光信号を、正しくデジタルデータ群として捉えることができる。
【0037】
異物・欠陥座標検出機構130は、異物・欠陥判定情報が発生すると、被検査物体移動ステージ102が発生する、主走査並びに副走査の現在位置の情報から、異物・欠陥の主走査方向並びに副走査方向の座標位置(r,θ)を算出する。このとき、異物・欠陥座標検出機構130は、2回発生する散乱・回折・反射光信号のデジタルデータ群を用いることにより、座標位置(r,θ)のうちr座標を更に高精度で算出する。
【0038】
具体的には、2回発生する散乱・回折・反射光信号間の時間間隔を算出し、時間間隔から異物1が各照明スポット3、4内のどの半径位置を通過したかを算出する。
【0039】
これは、図4に示す配置の場合、半導体ウェーハ100表面上の異物1が照明スポット3を通過後に照明スポット4を通過するまでの時間は、異物1が主走査の回転軸寄りである場合には、より短く、主走査の回転軸から隔たっている場合にはより長くなる、というように、異物1が各照明スポット3、4内のどの半径位置を通過したかが時間間隔に比例することを利用したものである。
【0040】
このとき、上記時間間隔が取り得る値の最小値及び最大値は、異物1が照明スポット3、4を通過するときの線速度によって決まる。被検査物体移動ステージ102を主走査と副走査の協調制御により線速度一定で走査する場合には、最小値および最大値は走査中の半径位置に依らず一定値であるが、回転速度一定で走査する場合には、走査中の半径位置により異なる。
【0041】
そのため、異物・欠陥座標検出機構130は、上記時間間隔から異物1が各照明スポット3、4内のどの半径位置を通過したかを算出する際には、被検査物体移動ステージ102が発生する副走査(r)方向の現在位置の情報も用いる。
【0042】
ここで、異物や欠陥の位置座標を高い精度で求めるには、隣り合う2周分の主走査間の副走査移動量を小さくし、主走査の各走査軌跡が一定の割合で重なり合うようにして得た複数周のデータから異物・欠陥の座標を求めることが考えられる。
【0043】
しかし、本発明の第1の実施形態では上記のように、ただ1周分の主走査データのみを用いて異物・欠陥の座標を高精度に求めることが可能であり、主走査の各走査軌跡が一定の割合で重なり合うようにする必要はなく、隣り合う2周分の主走査間の副走査移動量を大きくすることができるため、検査速度を向上できるという利点を有する。
【0044】
また、本発明の第1の実施形態で異物1の照明スポット内通過位置を求める精度は、照明スポット内の照度分布の形状に依らないので、異物や欠陥の検出感度を一定に保つ上でより有利なように、照明スポット内で概略一定の照度分布とすることも可能である。
【0045】
検出された異物・欠陥の座標位置が求まると、続いて粒径算出機構120はデシタルデータ群から、検出された異物・欠陥の大きさを算出する。具体的には、異物1が照明スポット3の通過時と照明スポット4の通過時に2回発生する散乱・回折・反射光信号の和に相当する信号をデジタルデータ群から算出して、総散乱・回折・反射光信号とし、総散乱・回折・反射光信号の強度を異物1の大きさに換算する。
【0046】
このように、本発明の第1の実施形態によれば、略等しい仰角を有し、互いに略直交する2つの方位角からの2つの照明ビーム21、22によって被検査物体表面を照明し、その両照明光による散乱・回折・反射光の和を検出すると、被検査物体自身またはそこに存在する異物や欠陥が照明方向に関して有する異方性の影響を解消もしくは軽減することが可能となる。
【0047】
なお、上述した例では、異物や欠陥の検出について説明したが、被検査対象の半導体ウェハ100の表面粗さを計測する場合にも同様の効果が得られることは明白である。
【0048】
また、上記例では、光源11を「紫外域の波長の光を時間的に繰返してパルス発振するパルスレーザ」としたが、「紫外域以外の波長のレーザ」でもよく、また「連続発振するレーザ」を光源に用いた場合でも、上記技術はそのまま適用することができる。
【0049】
また、1つのレーザ光源から発生した光を2つに分岐して2つの照明ビームとしているが、略発振波長の等しい2台の別々のレーザ光源を用いて2つの照明ビームを発生するようにしてもよい。同様に、2つの照明ビームが半導体ウェハ100表面を照明する方向は、「共に概略外周から内周に向かう方向」としたが、「共に概略内周から外周に向かう方向」からであっても上記技術はそのまま適用することができる。
【0050】
斜方照明では一般的に、照明ビームと被照明表面との高さ関係が変化した時に、照明スポット位置が変位してしまう現象を生じる。しかし、2つの照明ビームの照射方向を「共に略外周から内周に向かう方向」または「共に略内周から外周に向かう方向」とすることにより、このような場合に2つの照明スポット3、4は半導体ウェハ100の表面上で半径方向の同じ向きに同じ距離だけ移動するので、「被検査物体移動ステージ102の主走査回転に伴って照明スポット3が半導体ウェハ100の表面上で描く軌跡と、照明スポット4が描く軌跡は被検査物体移動ステージ102の半径方向において略重なる」という関係は崩れることなく保たれるという利点が得られる。
【0051】
上述した、本発明の第1の実施形態では、散乱・回折・反射光の検出方向を一つとしたが、複数の仰角と複数の方位角とを組合わせた複数の方向の各方向に配置して複数の方位から散乱・回折・反射光を検出するよう構成することもできる。
【0052】
図5、図6は、本発明の第2の実施形態の検出光学系の説明図であり、複数の仰角と複数の方位角とを組合わせた複数の方向の各方向に配置して複数の方位から散乱・回折・反射光を検出する例である。なお、図5は検出光学系の平面図、図6は検出光学系の側面図である。
【0053】
本発明の第2の実施形態における照明光学系は、第1の実施形態と同等であるで説明は省略する。
【0054】
本発明の第2実施形態における散乱・回折・反射光検出系は、略等しい第1の仰角を有し、被検査物体移動ステージ102の主走査回転軸に関して相互に異なり、互いに概略90°ずつ隔たった4つの方位角から散乱・回折・反射光を検出する集光する4個の集光素子71を含む第1仰角検出系70と、第1の仰角より大きく、略等しい第2の仰角を有し、被検査物体移動ステージ102の主走査回転軸に関して相互に異なり、互いに概略90°ずつ隔たった4つの方位角から散乱・回折・反射光を検出する集光する4個の集光素子81を含む第2仰角検出系80を備える。8個の各集光素子71、81はレンズから成る。
【0055】
本発明の第2の実施形態における照明光は、第1の実施例と同等であり、2本の照明ビームが低い仰角から半導体ウェハ100表面に照射される。これら2本の照明ビームの方位角は互いに略直交する関係にあるため、それらの正反射光もまた略直交する。このため、2本の照明ビームと2本の正反射光の併せて4本の光ビームが互いに概略90°ずつを成す関係で存在している。各集光素子71、81、特に第1仰角検出系の各集光素子71は、これら4本の光ビームと機械的配置として干渉する恐れがある。
【0056】
そこで、本発明の第2の実施形態では、これら各集光素子71、81を、4本の光ビームの光路を避けて配置してある。具体的には、図5に示すように、同一仰角に属する4個の集光素子の各光軸を、照明ビーム21を基準にしてその前方右側45°、前方左側45°、後方右側45°、および後方左側45°の4方向となるように配置する。
【0057】
このように配置することにより、2本の照明ビームとそれらによる2本の正反射光の光路と干渉することなく、効率的に散乱・回折・反射光を検出することが可能となる。このとき、より高い仰角位置にある第2仰角検出系80において、4本の光ビームの光路と干渉する恐れがない場合には、図7に示すように、第1仰角検出系70のみを4本の光ビームの光路を避ける配置とすることもできる。
【0058】
上記第2の実施形態では、散乱・回折・反射光検出系の各集光素子をレンズから成るとしたが、これらを凹面鏡とすることも可能である。集光素子に凹面鏡を用いる場合には、上記と同様に凹面鏡の各光軸を4本の光ビームの光路を避けた配置とすることももちろん可能であるが、図8、9に示すように、同一仰角に属する4個の集光素子71の各光軸を、照明ビーム21を基準にしてその概略前方、左側方、右側方、および後方の4方向となるように配置することも可能である。このとき、各鏡面は2本の照明ビームとそれらによる2本の正反射光の光路と干渉するが、各鏡面にこれらの光ビームが貫通するよう貫通穴を設けることで、光学的な干渉を避けることができる。
【0059】
以上のように、本発明の第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる他、一つの異物・欠陥に対して異なる2つの仰角から測定した2つの散乱・回折・反射光信号が得られるので、異物・欠陥判定機構108は、第1および第2の合成散乱・回折・反射光信号を比較することにより、検出した異物・欠陥の種別、例えば、半導体ウェハ100表面の付着異物か、半導体ウェハ100内部の結晶欠陥かを判別し、分類することができる。
【0060】
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。図10は、本発明の第3の実施形態である表面検査装置の概略構成図である。なお、本発明の第1又は第2の実施形態と共通の部分については説明を省略する。
【0061】
図10において、光源11は時間的に繰返してパルス発振するパルスレーザを発生し、パルス発振の時間間隔は、異物1が主走査により照明スポット内を通過する時間内に複数回の発光が含まれるような時間間隔となっている。光源11から出た光は、ビームスプリッタ12で2本の照明ビーム21、22に分けられる。
【0062】
照明ビーム21は照射レンズ18の作用により図4に示す照明スポット3を形成し、照明ビーム22は照射レンズ19の作用により照明スポット4を形成する。照明ビーム22は、照明ビーム21に比べて遅延して、ウェハ100に照射されるように、より長い光路長の光路が構成されている。この光路長の差は、遅延時間が光源11のパルス発振間隔の1/10乃至1/2の時間に相当するように構成されている。
【0063】
照明ビーム21、22の光路には、各々のレーザ光の発光開始タイミングを信号として取り出すための発光開始タイミング信号生成手段として、照明ビーム21、22の一部を取り出すためのビームスプリッタ14、15と、その一部取り出した光の時間変化波形を電気信号に変換するフォトダイオード16、17とが設けてある。
【0064】
2つの照明スポット3、4の間の発光時刻差を正しく検出するために、2つのフォトダイオード16、17は、照明スポット3、4側から照明ビーム21、22の光路を逆にたどった時に等距離となる位置に配置してある。
【0065】
これらのフォトダイオード16、17から得られる発光タイミング信号は、例えば、図11の(A)、(B)に示すような波形となる。各照明ビームによって形成される照明スポットの特性は第1の実施形態と同等である。
【0066】
異物1は、第1の照明スポット3を通過後、第2の照明スポット4を通過し、光検出器7からは散乱・回折・反射光信号が2回得られる(図11の(C)、(D))。ただし、光源11がパルスレーザであるので、光検出器7の時間応答速度が十分に速ければ(光電子増倍管ではこの仮定は十分現実的である)、各照明スポット3、4を通過中に発生する散乱・回折・反射光信号の時間強度変化は連続波形ではなく、図11に示すように、光源11のパルス発振に対応した離散的な波形となる。
【0067】
図11の(C)、(D)から分かるように、厳密には、照明光は第1の照明スポット3と第2の照明スポット4に同時刻には照射されていないため、第1の照明スポット3からの第2の散乱・回折・反射光と、照明スポット4からの散乱・回折・反射光とは同時刻には発生していない。
【0068】
本発明の第3の実施形態では、先の発光タイミング信号生成手段(14、15、16、17)により、各照明スポット3、4に実際に照明光が照射されている時刻・時間を正確に知ることができる。そこで、この発光タイミング信号を用いて、図11の(E)に示す、光検出器7からの出力信号を分離すれば、1つの光検出器7のみを用いて、複数の照明スポット3、4からの散乱・回折・反射光信号を分離して検出することが可能となる。
【0069】
具体的には、光検出器7の出力信号は、図13に示す構成の分離回路で処理される。すなわち、光検出器7の出力信号は前置増幅器25で増幅された後、2個のゲート回路27a、27bに分配される。各ゲート回路の27a、27bのオン・オフは、フォトダイオード16、17からの発光タイミング信号に従って制御される。
【0070】
図12の(E)に示すように、一般に、光検出器7の出力信号は、照明光21、22の発光タイミングに対して遅れて立上がり、かつ周波数応答速度がパルスレーザの発光持続時間(例えば15ps程度)に比べて遅いために光検出器7の出力信号のパルス幅は照明光3、4の発光持続時間より長くなる。
【0071】
そこで、フォトダイオード16、17からの発光タイミング信号に所定の遅延時間とパルス持続時間を与えるため、波形整形器28を設ける。波形整形器28からの出力信号は、例えば、図12の(C)、(D)に示すような波形となる。この波形整形器28からのゲート信号によってゲート回路27a、27bをオン・オフすることにより、前置増幅器25の出力信号から、図12の(F)、(G)に示す各照明スポット3、4に対応した散乱・回折・反射光信号が分離される。分離された各散乱・回折・反射光信号は、その後、さらに増幅器26a、26bで増幅される。
【0072】
このように、図13に示した分離回路を用いることにより、1つの光検出器7の出力信号から、複数の照明スポット3、4に対応する散乱・回折・反射光信号を分離して検出でき、かつ分離された個々の散乱・回折・反射光信号は、対応していない側の照明スポット3、4の背景光の影響を受けることがない。
【0073】
本発明の第1の実施形態と同様に、2回の散乱・回折・反射光信号の和を算出して、総散乱・回折・反射光信号とする場合、総散乱・回折・反射光信号の大きさは照明スポットを1つだけ用いる場合の散乱・回折・反射光信号の2倍となる。
【0074】
また、分離された個々の散乱・回折・反射光信号は各々照明スポット1個分からの背景散乱光の影響しか受けていないため、個々の散乱・回折・反射光信号に含まれる雑音は照明スポットを1つだけ用いる場合と同等であり、2回の散乱・回折・反射光信号の和を取った結果に含まれる雑音の大きさは、2の平方根倍となる。その結果、S/N比は、総散乱・回折・反射光信号が2倍で雑音が2の平方根倍なので、2の平方根倍に改善される。
【0075】
このように、本発明の第3の実施形態による表面検査装置では、第1または第2の実施形態で得られる効果に加え、検出感度を向上させられるという効果が得られる。
【0076】
本発明の第3の実施形態では、2つの照明ビーム21、22の発光タイミングを各照明ビーム21、2の光路上で光学的にモニタしているが、これは、図14に示すように、2つの照明スポット3、4からの正反射光の一部をフォトダイオード16で光学的にモニタするように構成しても良い。
【0077】
また、パルスレーザ源11から出力される発光同期信号、もしくは、パルスレーザ源11の制御のために外部からパルスレーザ源11に与えられる発光制御信号を元にして生成するようにしても良い。
【0078】
この場合は、第1の照明スポット3に対して遅れた発光タイミングを有する第2の照明スポット4の遅延時間は、両者の光路長の差から予め計算により求めておけば良い。また、照明ビーム21と22との光路長を互いに変えることで2つの照明ビーム21、22間に遅延時間を与える代わりに、光源11のパルスレーザから出た光ビームを、カー効果等を利用したEO変調器に通すことで、パルス発光タイミングの異なる2つの光ビームに分離する技術を用いることもできる。
【0079】
一般に、EO変調器に連続発振するレーザ光を入射し、適当な周波数の信号で変調させると、2系等ある出力ビームのうち一方からは入射ビームを上記適当な周波数で強度変調した第1の出力ビームが得られ、他方からは第1の出力ビームと位相が反転、すなわち第1の出力ビームと強弱が逆転した出力ビームが得られる。
【0080】
このようなEO変調器にレーザ光源11からのパルス発振する光ビームを入射させ、EO変調器を光源11の繰返し発振周波数に同期し、かつ適切な位相差を与えてて変調させると、EO変調器の2系統ある出力からは、元のパルス発振間隔が2倍、すなわち発振周波数が1/2に間引きされた2つの出力ビームが得られる。
【0081】
そして、これら2系統の出力ビームの発振タイミングは互いに元の入射ビームの発振間隔分だけずれているので、「光路長を変えることで2つの照明ビーム間に遅延時間を与える」技術の代わりに用いることができる。
【0082】
以上のように、本発明によれば、被検査物体表面を方位角が互いに90°異なる2方向から照明してその両照明光による散乱・回折・反射光を検出することにより、被検査物体自身またはそこに存在する異物や欠陥が照明方向に関して有する異方性の影響を解消もしくは軽減することができるので、主走査方向の回転角に依存せずに略均一な感度で前記異物や欠陥、または表面粗さの検査を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1の実施形態である異物・欠陥検査装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態である異物・欠陥検査装置の半導体ウェハの上方に配置されている照明・検出光学系の平面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態である異物・欠陥検査装置の半導体ウェハの上方に配置されている照明・検出光学系の側面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態である異物・欠陥検査装置の原理説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の検出光学系の平面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の検出光学系の側面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の変形例の平面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の変形例の平面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態の変形例の側面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態である表面検査装置の概略構成図である。
【図11】本発明の第3の実施形態における照明スポットからの散乱光の発光タイミングを示す図である。
【図12】本発明の第3の実施形態における発光開始タイミング信号から生成されるゲート信号の説明図である。
【図13】本発明の第3の実施形態において分離回路で信号を分離する説明図である。
【図14】本発明の第3の実施形態である表面検査装置の変形例の概略構成図である。
【図15】一つの方位角から半導体ウェハを照明した場合の説明図である。
【図16】一つの方位角から半導体ウェハを照明した場合の説明図である。
【図17】半導体ウェハの表面粗さに由来する信号の強度分布を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
1 異物、2 異物の移動軌跡、3、4 照明スポット、5 集光レンズ、7 光検出器、11 光源、12、14、15 ビームスプリッタ、16、17、 フォトダイオード、18、19 照射レンズ、21、22 照明ビーム、25 前置増幅器、26a、26b 増幅器、27a、27b ゲート回路、28 波形整形器、30 A/D変換器、、70 第1仰角検出系、80 第2仰角検出系、71、81 集光素子、100 半導体ウェハ、101 チャック、102 被検査物体移動ステージ、103 回転ステージ、104 並進ステージ、105 Zステージ、106 検査座標検出機構、108 異物・欠陥判定機構、110 照明・検出光学系、111 偏光制御部、112 折り返しミラー、120 粒径算出機構、130 異物・欠陥座標検出機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板(半導体ウェハ)上の微小な異物・欠陥並びに基板の表面粗さに関する情報を計測する表面検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板(半導体ウェハ)の製造ラインにおいて、製造装置の発塵状況を監視するために、半導体基板の表面に付着した異物や加工中に発生したスクラッチ等の欠陥の検査が行われている。例えば、回路パターン形成前の半導体基板では、その表面において数10nm以下の微小な異物や欠陥の検出が必要である。また、半導体基板表面の検査としては、異物や欠陥以外に、基板表面近傍の浅い領域に存在する結晶欠陥や基板表面の表面粗さも検査対象となる。
【0003】
半導体基板等の被検査物体表面上の微小な欠陥を検出する技術としては、例えば、特許文献1に記載されているように、集光したレーザ光束を半導体基板表面に照射して、半導体基板上に異物が付着している場合に発生する散乱光を検出し、半導体基板の回転と並進送りとで半導体基板全面の異物や欠陥を検査している。
【0004】
散乱光の検出には楕円ミラーを用い、半導体基板上の検出位置を楕円の第1焦点位置とし、受光素子の受光面を第2焦点位置に配置することにより、異物で発生した散乱光を広い立体角で集光し、微小異物の検出もできるように構成されている。
【0005】
この特許文献1に記載の技術は、半導体基板を照明するためのレーザ光束は基板表面に対する仰角に関して斜方照明および垂直照明の両者を備えるが、1つの仰角に関してはただ1つの方位角からの照明光束しか持たない。
【0006】
また、例えば、特許文献2に記載されているように、半導体基板表面に関して複数の仰角と複数の方位角を組合せた位置に集光レンズと光検出器を配置し、各集光レンズで集光された散乱光を光検出器で検出することにより、微小異物からの散乱光の三次元放射分布特性に合わせて有利な方向での検出を可能にしたものもある。
【0007】
この特許文献2に記載された技術においても、半導体基板を照明するためのレーザ光束は斜方照明と垂直上方照明の2本が備わっているが、1つの入射角(仰角)に対応するレーザ光束の方位角はただ1つである。
【0008】
さらに、特許文献3には、光源に波長の異なる2つのレーザ光源を用いる技術が記載され、この技術においては、2つのレーザ光源からの照明光を、入射角の異なる、即ち仰角は異なるが同じ方位角から半導体基板表面に入射されている。
【0009】
また、特許文献4に記載された技術では、波長の異なる2つのレーザ光源を用いて半導体基板表面を、概略同じ仰角から異なる2つの方位角で照明する技術が記載されているが、この場合の2つの方位角は互いに180°異なる方向であり、2つの照明領域は互いに平行な関係にある。
【0010】
【特許文献1】米国特許第5798829号明細書
【特許文献2】特開2001−255278号公報
【特許文献3】特開2001−235431号公報
【特許文献4】特開平11−223607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来技術において、1つの方位角から照明を行うと、一般に図15に示すように、照明ビーム21は、照明領域と被検査物体移動ステージの主走査である回転動作の回転中心を結ぶ直線の方向に沿って半導体ウェハ上の照射領域に入射する。ここで、図16に示すように、その結晶方位が特定できる切り欠き部300を有する半導体ウェハ表面に固定した、(x、y)座標系を取るものとする。
【0012】
この半導体ウェハが回転移動させられて、固定方向からの照明ビーム21によって照明されるとき、半導体ウェハ上のA点では照明は(x、y)座標系のy軸に平行な方向から成されるが、B点では照明はx軸に平行な方向から成される。また、C点ではその中間のx軸・y軸と45°を成す方向から照明が成される。
【0013】
もし、照明光により発生する散乱光の強度が、照明光の入射方向に依存する異方性を持つような異物や欠陥が半導体ウェハ表面上に付着している場合には、半導体ウェハ上のどの位置に異物等が付着しているかによって、散乱光強度が異なる。従って、検出感度に差が生じたり、散乱光強度に基づいて異物や欠陥の大きさを算出するときに誤差を生じてしまうことが予想される。
【0014】
また、表面の平坦度を非常に高めるよう研磨された半導体ウェハにおいては、その表面を構成する原子の配列段差に近いレベルの表面粗さが見られるが、このような配列段差は一般にその半導体ウェハの結晶方位と大きな相関を持って現れる。そのため、そのような半導体ウェハの同一位置を同一の仰角の、異なる方位角から照明すると、異なる強度の散乱光が発生する。
【0015】
即ち、そのような半導体ウェハが回転移動によって異なる方向からの照明光によって照明されると、半導体ウェハ全面で一様な表面粗さを有する場合であっても、被検査物体移動ステージの主走査回転に伴ってその回転角毎に異なる強度の散乱光が観測されてしまう。このことは実際の表面検査装置で頻繁に発生しており、半導体ウェハの表面粗さに由来する信号(以下、これをヘイズ信号と呼ぶ)の半導体ウェハ上での強度分布は、例えば、図17に示すようになることが多い。
【0016】
図17中、ヘイズ信号が、a→b→c→d→e→f→gの順に大きいことを表している。このヘイズ信号の検出感度の異方性は、異物・欠陥の検出感度にも影響を及ぼす。すなわち、異物・欠陥からの散乱光を検出する際のノイズレベルは、一般に、表面粗さに由来する散乱光のゆらぎ(ショットノイズ)に依存することが良く知られており、ヘイズ信号の高い部位では異物・欠陥からの信号を検出する際のしきい値を大きくする必要が生じ、その結果として異物・欠陥の検出感度が低下してしまう。
【0017】
本発明の目的は、半導体ウェハ表面や表面近傍に存在する異物や欠陥、またはその半導体ウェハの表面粗さに由来して発生する散乱光の強度が照明方向に依存する異方性を有する場合であっても、主走査方向の回転角に依存せずに均一な感度で異物や欠陥、または表面粗さの検査が可能な表面検査方法及び装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の表面検査方法は、主走査が回転移動で副走査が並進移動を行う被検査物体移動ステージ上に搭載された被検査物体の表面に光ビームを照射し、上記被検査物体からの散乱・回折・反射された光を集光し、集光した光に基づいて上記被検査物体表面を検査する。
【0019】
そして、上記被検査物体の表面に対して、略同一の仰角で互いに異なる方位角から2つの光ビームを、上記被検査物体の表面の異なる2つの領域に照射し、上記2つの領域からの散乱・回折・反射された光を集光し、集光した光に基づいて上記被検査物体表面上又は表面近傍内部に存在する異物や欠陥の位置や大きさ又は上記被検査物体表面粗さを検出する。
【0020】
また、本発明の表面検査装置は、主走査が回転移動で副走査が並進移動を行う被検査物体移動ステージと、このステージ上に搭載された被検査物体の表面に光ビームを照射する手段と、上記被検査物体からの散乱・回折・反射された光を集光する手段と、集光した光に基づいて上記被検査物体表面を検査する検査手段とを有する。
【0021】
そして、上記被検査物体の表面に対して、略同一の仰角で互いに異なる方位角から2つの光ビームを、上記被検査物体の表面の異なる2つの領域に照射する光ビーム照射手段と、上記2つの領域からの散乱・回折・反射された光を集光する集光手段と、集光した光に基づいて上記被検査物体表面上又は表面近傍内部に存在する異物や欠陥の位置や大きさ又は上記被検査物体表面粗さを検出する検出手段とを備える。
【発明の効果】
【0022】
半導体ウェハ表面や表面近傍に存在する異物や欠陥、またはその半導体ウェハの表面粗さに由来して発生する散乱光の強度が照明方向に依存する異方性を有する場合であっても、主走査方向の回転角に依存せずに均一な感度で異物や欠陥、または表面粗さの検査が可能な表面検査方法及び装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施形態である異物・欠陥検査装置の概略構成図である。図1において、被検査物体である半導体ウェハ100はチャック101に真空吸着されており、このチャック101は、回転ステージ103と並進ステージ104とを備える被検査物体移動ステージ102及びZステージ105上に搭載されている。
【0025】
半導体ウェハ100の上方に配置されている照明・検出光学系110は、図2、図3に示す光学系である。図2は光学系の平面図であり、図3は光学系の側面図である。
【0026】
図2、図3において、照明・検出光学系110の、照明光の光源11には、紫外域の波長の光を時間的に繰返してパルス発振するパルスレーザを用いる。この光源11から出た光は、ビームスプリッタ12で2本の照明ビーム21、22に分けられる。
【0027】
照明ビーム21は偏向制御部111及び折り返しミラー112を介して照射レンズ18に到達し、この照射レンズ18の作用により、図4に示す照明スポット3を形成する。また、照明ビーム22は偏向制御部111及び折り返しミラー112を介して照射レンズ19に到達し、この照射レンズ19の作用により、図4に示す照明スポット4を形成する。照明スポット3、4は、被検査物体移動ステージ102の主走査方向に、互いに重ならないように調整されている。
【0028】
微小な異物や欠陥を高感度で検出するためには、照明ビームの被検査物体表面に対する仰角は、概略5°乃至25°程度の低い仰角、より望ましくは被検査物体を構成する材料に対するブリュースター角近辺とするのがよい。そこで、本発明の第1の実施形態では、両照明ビーム21、22を、共に概略、結晶Siに対するブリュースター角で、共に半導体ウェハ100の外周から内周へ向かう方向に沿って斜入射するように構成する。
【0029】
このため、照明スポット3、4は概略楕円形状をしている。ここで、照度が照明スポット中心部のeの2乗分の1(eは自然対数の底)に低下する輪郭線の内部を、あらためて照明スポットと定義することにする。図2に示すように、この照明スポットの長軸方向の幅をd1、短軸方向の幅をd2とする。照明スポット3および4は、互いに略等しいd1、d2を有し、略等しい照度で照明される。
【0030】
両照明ビーム21、22の偏光状態は偏光制御部111により照明スポット3、4に入射する段階で、「共にP偏光」または「共にs偏光」または「共に円偏光」または「共に概略等しい楕円率を有する楕円偏光」となるように制御される。
【0031】
図2に示すように、半導体ウェハ100に照射される照明ビーム21の方位角は、被検査物体移動ステージ102の主走査回転中心と照明スポット3及び4の長軸方向の延長線の交点とを結ぶ線分に対して概略45°の角度61を成す。また、半導体ウェハ100に照射される照明ビーム22の方位角は、照明ビーム21の方位角に対して概略90°の角度62を成す。
【0032】
このことから、照明スポット3及び4の長軸は互いに略90°の角度を成す。この配置により、被検査物体移動ステージ102の主走査回転に伴って照明スポット3が半導体ウェハ100の表面上で描く軌跡と、照明スポット4が描く軌跡とは、被検査物体移動ステージ102の半径方向において概略重なる。
【0033】
図3に示す集光レンズ5は、レーリー散乱に従うような微小な異物に対して効率良くその散乱光を捕捉できるよう、低い仰角で散乱・回折・反射光を集光できる構成となっている。この構成において、異物1は第1の照明スポット3を通過後、第2の照明スポット4を通過するので、光検出器7からは散乱・回折・反射光信号が2回得られる。なお、本発明の第1の実施形態では、光検出器7として光電子増倍管を用いるが、異物からの散乱・回折・反射光を高感度に検出できる光検出器であれば他の検出原理の光検出器であっても良い。
【0034】
光検出器7からの散乱・回折・反射光信号は、増幅器26で増幅された後、A/D変換器30で予め定められたサンプリング間隔dT毎にサンプリングされ、デジタルデータに変換される。サンプリング間隔dTは、異物1が照明スポット3を通過後、照明スポット4を通過するまでの時間間隔に対し、十分小さくなるように設定してある。
【0035】
サンプリング間隔dTごとのデジタルデータは異物・欠陥判定機構108で予め定められた検出しきい値と比較され、デジタルデータが閾値以上であれば異物・欠陥判定機構108はこのデジタルデータが異物・欠陥よるものだと判定して、異物・欠陥判定情報を発生する。
【0036】
なお、この異物・欠陥判定は、A/D変換器30から得られるデジタルデータを予め定められた閾値と比較して異物・欠陥の存在を判定する代わりに、増幅器26からの出力電気信号を予め定められた閾値電圧と比較して判定するようにしても良い。予め定められた閾値をノイズレベルに対して適切に設定すれば、異物1が照明スポット3の通過時と照明スポット4の通過時に2回発生する散乱・回折・反射光信号を、正しくデジタルデータ群として捉えることができる。
【0037】
異物・欠陥座標検出機構130は、異物・欠陥判定情報が発生すると、被検査物体移動ステージ102が発生する、主走査並びに副走査の現在位置の情報から、異物・欠陥の主走査方向並びに副走査方向の座標位置(r,θ)を算出する。このとき、異物・欠陥座標検出機構130は、2回発生する散乱・回折・反射光信号のデジタルデータ群を用いることにより、座標位置(r,θ)のうちr座標を更に高精度で算出する。
【0038】
具体的には、2回発生する散乱・回折・反射光信号間の時間間隔を算出し、時間間隔から異物1が各照明スポット3、4内のどの半径位置を通過したかを算出する。
【0039】
これは、図4に示す配置の場合、半導体ウェーハ100表面上の異物1が照明スポット3を通過後に照明スポット4を通過するまでの時間は、異物1が主走査の回転軸寄りである場合には、より短く、主走査の回転軸から隔たっている場合にはより長くなる、というように、異物1が各照明スポット3、4内のどの半径位置を通過したかが時間間隔に比例することを利用したものである。
【0040】
このとき、上記時間間隔が取り得る値の最小値及び最大値は、異物1が照明スポット3、4を通過するときの線速度によって決まる。被検査物体移動ステージ102を主走査と副走査の協調制御により線速度一定で走査する場合には、最小値および最大値は走査中の半径位置に依らず一定値であるが、回転速度一定で走査する場合には、走査中の半径位置により異なる。
【0041】
そのため、異物・欠陥座標検出機構130は、上記時間間隔から異物1が各照明スポット3、4内のどの半径位置を通過したかを算出する際には、被検査物体移動ステージ102が発生する副走査(r)方向の現在位置の情報も用いる。
【0042】
ここで、異物や欠陥の位置座標を高い精度で求めるには、隣り合う2周分の主走査間の副走査移動量を小さくし、主走査の各走査軌跡が一定の割合で重なり合うようにして得た複数周のデータから異物・欠陥の座標を求めることが考えられる。
【0043】
しかし、本発明の第1の実施形態では上記のように、ただ1周分の主走査データのみを用いて異物・欠陥の座標を高精度に求めることが可能であり、主走査の各走査軌跡が一定の割合で重なり合うようにする必要はなく、隣り合う2周分の主走査間の副走査移動量を大きくすることができるため、検査速度を向上できるという利点を有する。
【0044】
また、本発明の第1の実施形態で異物1の照明スポット内通過位置を求める精度は、照明スポット内の照度分布の形状に依らないので、異物や欠陥の検出感度を一定に保つ上でより有利なように、照明スポット内で概略一定の照度分布とすることも可能である。
【0045】
検出された異物・欠陥の座標位置が求まると、続いて粒径算出機構120はデシタルデータ群から、検出された異物・欠陥の大きさを算出する。具体的には、異物1が照明スポット3の通過時と照明スポット4の通過時に2回発生する散乱・回折・反射光信号の和に相当する信号をデジタルデータ群から算出して、総散乱・回折・反射光信号とし、総散乱・回折・反射光信号の強度を異物1の大きさに換算する。
【0046】
このように、本発明の第1の実施形態によれば、略等しい仰角を有し、互いに略直交する2つの方位角からの2つの照明ビーム21、22によって被検査物体表面を照明し、その両照明光による散乱・回折・反射光の和を検出すると、被検査物体自身またはそこに存在する異物や欠陥が照明方向に関して有する異方性の影響を解消もしくは軽減することが可能となる。
【0047】
なお、上述した例では、異物や欠陥の検出について説明したが、被検査対象の半導体ウェハ100の表面粗さを計測する場合にも同様の効果が得られることは明白である。
【0048】
また、上記例では、光源11を「紫外域の波長の光を時間的に繰返してパルス発振するパルスレーザ」としたが、「紫外域以外の波長のレーザ」でもよく、また「連続発振するレーザ」を光源に用いた場合でも、上記技術はそのまま適用することができる。
【0049】
また、1つのレーザ光源から発生した光を2つに分岐して2つの照明ビームとしているが、略発振波長の等しい2台の別々のレーザ光源を用いて2つの照明ビームを発生するようにしてもよい。同様に、2つの照明ビームが半導体ウェハ100表面を照明する方向は、「共に概略外周から内周に向かう方向」としたが、「共に概略内周から外周に向かう方向」からであっても上記技術はそのまま適用することができる。
【0050】
斜方照明では一般的に、照明ビームと被照明表面との高さ関係が変化した時に、照明スポット位置が変位してしまう現象を生じる。しかし、2つの照明ビームの照射方向を「共に略外周から内周に向かう方向」または「共に略内周から外周に向かう方向」とすることにより、このような場合に2つの照明スポット3、4は半導体ウェハ100の表面上で半径方向の同じ向きに同じ距離だけ移動するので、「被検査物体移動ステージ102の主走査回転に伴って照明スポット3が半導体ウェハ100の表面上で描く軌跡と、照明スポット4が描く軌跡は被検査物体移動ステージ102の半径方向において略重なる」という関係は崩れることなく保たれるという利点が得られる。
【0051】
上述した、本発明の第1の実施形態では、散乱・回折・反射光の検出方向を一つとしたが、複数の仰角と複数の方位角とを組合わせた複数の方向の各方向に配置して複数の方位から散乱・回折・反射光を検出するよう構成することもできる。
【0052】
図5、図6は、本発明の第2の実施形態の検出光学系の説明図であり、複数の仰角と複数の方位角とを組合わせた複数の方向の各方向に配置して複数の方位から散乱・回折・反射光を検出する例である。なお、図5は検出光学系の平面図、図6は検出光学系の側面図である。
【0053】
本発明の第2の実施形態における照明光学系は、第1の実施形態と同等であるで説明は省略する。
【0054】
本発明の第2実施形態における散乱・回折・反射光検出系は、略等しい第1の仰角を有し、被検査物体移動ステージ102の主走査回転軸に関して相互に異なり、互いに概略90°ずつ隔たった4つの方位角から散乱・回折・反射光を検出する集光する4個の集光素子71を含む第1仰角検出系70と、第1の仰角より大きく、略等しい第2の仰角を有し、被検査物体移動ステージ102の主走査回転軸に関して相互に異なり、互いに概略90°ずつ隔たった4つの方位角から散乱・回折・反射光を検出する集光する4個の集光素子81を含む第2仰角検出系80を備える。8個の各集光素子71、81はレンズから成る。
【0055】
本発明の第2の実施形態における照明光は、第1の実施例と同等であり、2本の照明ビームが低い仰角から半導体ウェハ100表面に照射される。これら2本の照明ビームの方位角は互いに略直交する関係にあるため、それらの正反射光もまた略直交する。このため、2本の照明ビームと2本の正反射光の併せて4本の光ビームが互いに概略90°ずつを成す関係で存在している。各集光素子71、81、特に第1仰角検出系の各集光素子71は、これら4本の光ビームと機械的配置として干渉する恐れがある。
【0056】
そこで、本発明の第2の実施形態では、これら各集光素子71、81を、4本の光ビームの光路を避けて配置してある。具体的には、図5に示すように、同一仰角に属する4個の集光素子の各光軸を、照明ビーム21を基準にしてその前方右側45°、前方左側45°、後方右側45°、および後方左側45°の4方向となるように配置する。
【0057】
このように配置することにより、2本の照明ビームとそれらによる2本の正反射光の光路と干渉することなく、効率的に散乱・回折・反射光を検出することが可能となる。このとき、より高い仰角位置にある第2仰角検出系80において、4本の光ビームの光路と干渉する恐れがない場合には、図7に示すように、第1仰角検出系70のみを4本の光ビームの光路を避ける配置とすることもできる。
【0058】
上記第2の実施形態では、散乱・回折・反射光検出系の各集光素子をレンズから成るとしたが、これらを凹面鏡とすることも可能である。集光素子に凹面鏡を用いる場合には、上記と同様に凹面鏡の各光軸を4本の光ビームの光路を避けた配置とすることももちろん可能であるが、図8、9に示すように、同一仰角に属する4個の集光素子71の各光軸を、照明ビーム21を基準にしてその概略前方、左側方、右側方、および後方の4方向となるように配置することも可能である。このとき、各鏡面は2本の照明ビームとそれらによる2本の正反射光の光路と干渉するが、各鏡面にこれらの光ビームが貫通するよう貫通穴を設けることで、光学的な干渉を避けることができる。
【0059】
以上のように、本発明の第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる他、一つの異物・欠陥に対して異なる2つの仰角から測定した2つの散乱・回折・反射光信号が得られるので、異物・欠陥判定機構108は、第1および第2の合成散乱・回折・反射光信号を比較することにより、検出した異物・欠陥の種別、例えば、半導体ウェハ100表面の付着異物か、半導体ウェハ100内部の結晶欠陥かを判別し、分類することができる。
【0060】
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。図10は、本発明の第3の実施形態である表面検査装置の概略構成図である。なお、本発明の第1又は第2の実施形態と共通の部分については説明を省略する。
【0061】
図10において、光源11は時間的に繰返してパルス発振するパルスレーザを発生し、パルス発振の時間間隔は、異物1が主走査により照明スポット内を通過する時間内に複数回の発光が含まれるような時間間隔となっている。光源11から出た光は、ビームスプリッタ12で2本の照明ビーム21、22に分けられる。
【0062】
照明ビーム21は照射レンズ18の作用により図4に示す照明スポット3を形成し、照明ビーム22は照射レンズ19の作用により照明スポット4を形成する。照明ビーム22は、照明ビーム21に比べて遅延して、ウェハ100に照射されるように、より長い光路長の光路が構成されている。この光路長の差は、遅延時間が光源11のパルス発振間隔の1/10乃至1/2の時間に相当するように構成されている。
【0063】
照明ビーム21、22の光路には、各々のレーザ光の発光開始タイミングを信号として取り出すための発光開始タイミング信号生成手段として、照明ビーム21、22の一部を取り出すためのビームスプリッタ14、15と、その一部取り出した光の時間変化波形を電気信号に変換するフォトダイオード16、17とが設けてある。
【0064】
2つの照明スポット3、4の間の発光時刻差を正しく検出するために、2つのフォトダイオード16、17は、照明スポット3、4側から照明ビーム21、22の光路を逆にたどった時に等距離となる位置に配置してある。
【0065】
これらのフォトダイオード16、17から得られる発光タイミング信号は、例えば、図11の(A)、(B)に示すような波形となる。各照明ビームによって形成される照明スポットの特性は第1の実施形態と同等である。
【0066】
異物1は、第1の照明スポット3を通過後、第2の照明スポット4を通過し、光検出器7からは散乱・回折・反射光信号が2回得られる(図11の(C)、(D))。ただし、光源11がパルスレーザであるので、光検出器7の時間応答速度が十分に速ければ(光電子増倍管ではこの仮定は十分現実的である)、各照明スポット3、4を通過中に発生する散乱・回折・反射光信号の時間強度変化は連続波形ではなく、図11に示すように、光源11のパルス発振に対応した離散的な波形となる。
【0067】
図11の(C)、(D)から分かるように、厳密には、照明光は第1の照明スポット3と第2の照明スポット4に同時刻には照射されていないため、第1の照明スポット3からの第2の散乱・回折・反射光と、照明スポット4からの散乱・回折・反射光とは同時刻には発生していない。
【0068】
本発明の第3の実施形態では、先の発光タイミング信号生成手段(14、15、16、17)により、各照明スポット3、4に実際に照明光が照射されている時刻・時間を正確に知ることができる。そこで、この発光タイミング信号を用いて、図11の(E)に示す、光検出器7からの出力信号を分離すれば、1つの光検出器7のみを用いて、複数の照明スポット3、4からの散乱・回折・反射光信号を分離して検出することが可能となる。
【0069】
具体的には、光検出器7の出力信号は、図13に示す構成の分離回路で処理される。すなわち、光検出器7の出力信号は前置増幅器25で増幅された後、2個のゲート回路27a、27bに分配される。各ゲート回路の27a、27bのオン・オフは、フォトダイオード16、17からの発光タイミング信号に従って制御される。
【0070】
図12の(E)に示すように、一般に、光検出器7の出力信号は、照明光21、22の発光タイミングに対して遅れて立上がり、かつ周波数応答速度がパルスレーザの発光持続時間(例えば15ps程度)に比べて遅いために光検出器7の出力信号のパルス幅は照明光3、4の発光持続時間より長くなる。
【0071】
そこで、フォトダイオード16、17からの発光タイミング信号に所定の遅延時間とパルス持続時間を与えるため、波形整形器28を設ける。波形整形器28からの出力信号は、例えば、図12の(C)、(D)に示すような波形となる。この波形整形器28からのゲート信号によってゲート回路27a、27bをオン・オフすることにより、前置増幅器25の出力信号から、図12の(F)、(G)に示す各照明スポット3、4に対応した散乱・回折・反射光信号が分離される。分離された各散乱・回折・反射光信号は、その後、さらに増幅器26a、26bで増幅される。
【0072】
このように、図13に示した分離回路を用いることにより、1つの光検出器7の出力信号から、複数の照明スポット3、4に対応する散乱・回折・反射光信号を分離して検出でき、かつ分離された個々の散乱・回折・反射光信号は、対応していない側の照明スポット3、4の背景光の影響を受けることがない。
【0073】
本発明の第1の実施形態と同様に、2回の散乱・回折・反射光信号の和を算出して、総散乱・回折・反射光信号とする場合、総散乱・回折・反射光信号の大きさは照明スポットを1つだけ用いる場合の散乱・回折・反射光信号の2倍となる。
【0074】
また、分離された個々の散乱・回折・反射光信号は各々照明スポット1個分からの背景散乱光の影響しか受けていないため、個々の散乱・回折・反射光信号に含まれる雑音は照明スポットを1つだけ用いる場合と同等であり、2回の散乱・回折・反射光信号の和を取った結果に含まれる雑音の大きさは、2の平方根倍となる。その結果、S/N比は、総散乱・回折・反射光信号が2倍で雑音が2の平方根倍なので、2の平方根倍に改善される。
【0075】
このように、本発明の第3の実施形態による表面検査装置では、第1または第2の実施形態で得られる効果に加え、検出感度を向上させられるという効果が得られる。
【0076】
本発明の第3の実施形態では、2つの照明ビーム21、22の発光タイミングを各照明ビーム21、2の光路上で光学的にモニタしているが、これは、図14に示すように、2つの照明スポット3、4からの正反射光の一部をフォトダイオード16で光学的にモニタするように構成しても良い。
【0077】
また、パルスレーザ源11から出力される発光同期信号、もしくは、パルスレーザ源11の制御のために外部からパルスレーザ源11に与えられる発光制御信号を元にして生成するようにしても良い。
【0078】
この場合は、第1の照明スポット3に対して遅れた発光タイミングを有する第2の照明スポット4の遅延時間は、両者の光路長の差から予め計算により求めておけば良い。また、照明ビーム21と22との光路長を互いに変えることで2つの照明ビーム21、22間に遅延時間を与える代わりに、光源11のパルスレーザから出た光ビームを、カー効果等を利用したEO変調器に通すことで、パルス発光タイミングの異なる2つの光ビームに分離する技術を用いることもできる。
【0079】
一般に、EO変調器に連続発振するレーザ光を入射し、適当な周波数の信号で変調させると、2系等ある出力ビームのうち一方からは入射ビームを上記適当な周波数で強度変調した第1の出力ビームが得られ、他方からは第1の出力ビームと位相が反転、すなわち第1の出力ビームと強弱が逆転した出力ビームが得られる。
【0080】
このようなEO変調器にレーザ光源11からのパルス発振する光ビームを入射させ、EO変調器を光源11の繰返し発振周波数に同期し、かつ適切な位相差を与えてて変調させると、EO変調器の2系統ある出力からは、元のパルス発振間隔が2倍、すなわち発振周波数が1/2に間引きされた2つの出力ビームが得られる。
【0081】
そして、これら2系統の出力ビームの発振タイミングは互いに元の入射ビームの発振間隔分だけずれているので、「光路長を変えることで2つの照明ビーム間に遅延時間を与える」技術の代わりに用いることができる。
【0082】
以上のように、本発明によれば、被検査物体表面を方位角が互いに90°異なる2方向から照明してその両照明光による散乱・回折・反射光を検出することにより、被検査物体自身またはそこに存在する異物や欠陥が照明方向に関して有する異方性の影響を解消もしくは軽減することができるので、主走査方向の回転角に依存せずに略均一な感度で前記異物や欠陥、または表面粗さの検査を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1の実施形態である異物・欠陥検査装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態である異物・欠陥検査装置の半導体ウェハの上方に配置されている照明・検出光学系の平面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態である異物・欠陥検査装置の半導体ウェハの上方に配置されている照明・検出光学系の側面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態である異物・欠陥検査装置の原理説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の検出光学系の平面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の検出光学系の側面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の変形例の平面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の変形例の平面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態の変形例の側面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態である表面検査装置の概略構成図である。
【図11】本発明の第3の実施形態における照明スポットからの散乱光の発光タイミングを示す図である。
【図12】本発明の第3の実施形態における発光開始タイミング信号から生成されるゲート信号の説明図である。
【図13】本発明の第3の実施形態において分離回路で信号を分離する説明図である。
【図14】本発明の第3の実施形態である表面検査装置の変形例の概略構成図である。
【図15】一つの方位角から半導体ウェハを照明した場合の説明図である。
【図16】一つの方位角から半導体ウェハを照明した場合の説明図である。
【図17】半導体ウェハの表面粗さに由来する信号の強度分布を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
1 異物、2 異物の移動軌跡、3、4 照明スポット、5 集光レンズ、7 光検出器、11 光源、12、14、15 ビームスプリッタ、16、17、 フォトダイオード、18、19 照射レンズ、21、22 照明ビーム、25 前置増幅器、26a、26b 増幅器、27a、27b ゲート回路、28 波形整形器、30 A/D変換器、、70 第1仰角検出系、80 第2仰角検出系、71、81 集光素子、100 半導体ウェハ、101 チャック、102 被検査物体移動ステージ、103 回転ステージ、104 並進ステージ、105 Zステージ、106 検査座標検出機構、108 異物・欠陥判定機構、110 照明・検出光学系、111 偏光制御部、112 折り返しミラー、120 粒径算出機構、130 異物・欠陥座標検出機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査が回転移動で副走査が並進移動を行う被検査物体移動ステージ上に搭載された被検査物体の表面に光ビームを照射し、上記被検査物体からの散乱・回折・反射された光を集光し、集光した光に基づいて上記被検査物体表面を検査する表面検査方法において、
上記被検査物体の表面に対して、略同一の仰角で互いに異なる方位角から2つの光ビームを、上記被検査物体の表面の異なる2つの領域に照射し、
上記2つの領域からの散乱・回折・反射された光を集光し、集光した光に基づいて上記被検査物体表面上又は表面近傍内部に存在する異物や欠陥の位置や大きさ又は上記被検査物体表面粗さを検出することを特徴とする表面検査方法。
【請求項2】
請求項1記載の表面検査方法において、1つの光源から発生された光ビームを分割して上記2つの光ビームとすることを特徴とする表面検査方法。
【請求項3】
請求項2記載の表面検査方法において、上記2つの光ビームの延長線は、上記回転移動の中心を通る直線上で互いに交差することを特徴とする表面検査方法。
【請求項4】
請求項3記載の表面検査方法において、上記2つの光ビームの延長線が互いに交差する角度は約90度であることを特徴とする表面検査方法。
【請求項5】
請求項2記載の表面検査方法において、上記2つの光ビームは、共にp偏光、または、共にs偏光、または、共に円偏光、または、共に略等しい楕円率を有する楕円偏光であることを特徴とする表面検査方法。
【請求項6】
請求項1記載の表面検査方法において、上記2つの領域からの散乱・回折・反射された光の和に基づいて、上記被検査物体表面上または表面近傍内部に存在する異物や欠陥の大きさ、または被検査物体表面の粗さを算出することを特徴とする表面検査方法。
【請求項7】
請求項1記載の表面検査方法において、上記2つの領域からの散乱・回折・反射された光を、上記被検査物体表面に対して略等しい仰角で、上記被検査物体移動ステージの主走査回転軸に関して相互に異なり、互いに略60°以上100°以下ずつ隔たった4乃至6の方位において散乱・回折・反射光を集光する集光素子により集光することを特徴とする表面検査方法。
【請求項8】
請求項2記載の表面検査方法において、上記1つの光源は、パルスレーザを発生し、このパルスレーザから分割された第1の光ビームの上記光源から上記被検査物体の表面の異なる2つの領域のうちの第1の領域に至るまでの光路長は、上記パルスレーザから分割された第2の光ビームの上記光源から上記被検査物体の表面の異なる2つの領域のうちの第2の領域に至るまでの光路長より短く設定され、上記第1の光ビームが上記光源から発せられ分割されてから、上記第1の領域に到達するまでの時間より、上記第2の光ビームが上記光源から発せられ分割されてから、上記第2の領域に到達するまでの時間を長くして遅延時間を設定することを特徴とする表面検査方法。
【請求項9】
請求項8記載の表面検査方法において、上記第2の光ビームが上記第2の領域に到達するまでの時間の、上記第1の光ビームが上記光源から発せられ分割されてから、上記第1の領域に到達するまでの時間に対する遅延時間は、上記光源のパルスレーザ発振周期の略1/10乃至1/2の範囲に設定することを特徴とする表面検査方法。
【請求項10】
請求項8記載の表面検査方法において、上記第1の領域から散乱・回折・反射された光と、上記第2の領域から散乱・回折・反射された光とは、一つの集光手段により集光し、上記遅延時間に基づいて、上記第1の領域から散乱・回折・反射された光と、上記第2の領域から散乱・回折・反射された光とを分離して検出することを特徴とする表面検査方法。
【請求項11】
主走査が回転移動で副走査が並進移動を行う被検査物体移動ステージと、このステージ上に搭載された被検査物体の表面に光ビームを照射する手段と、上記被検査物体からの散乱・回折・反射された光を集光する手段と、集光した光に基づいて上記被検査物体表面を検査する検査手段とを有する表面検査装置において、
上記被検査物体の表面に対して、略同一の仰角で互いに異なる方位角から2つの光ビームを、上記被検査物体の表面の異なる2つの領域に照射する光ビーム照射手段と、
上記2つの領域からの散乱・回折・反射された光を集光する集光手段と、
集光した光に基づいて上記被検査物体表面上又は表面近傍内部に存在する異物や欠陥の位置や大きさ又は上記被検査物体表面粗さを検出する検出手段と、
を備えることを特徴とする表面検査装置。
【請求項12】
請求項11記載の表面検査装置において、上記光ビーム照射手段は、1つの光源と、この1つの光源から発生された光ビームを2つの光ビームに分割する手段とを備えることを特徴とする表面検査装置。
【請求項13】
請求項12記載の表面検査装置において、上記光ビーム照射手段は、上記2つの光ビームの延長線を、上記回転移動の中心を通る直線上で互いに交差させることを特徴とする表面検査装置。
【請求項14】
請求項13記載の表面検査装置において、上記2つの光ビームの延長線が互いに交差する角度は約90度であることを特徴とする表面検査装置。
【請求項15】
請求項12記載の表面検査装置において、上記2つの光ビームを、共にp偏光、または、共にs偏光、または、共に円偏光、または、共に略等しい楕円率を有する楕円偏光に偏光する偏光手段を備えることを特徴とする表面検査装置。
【請求項16】
請求項11記載の表面検査装置において、上記検査手段は、上記2つの領域からの散乱・回折・反射された光の和に基づいて、上記被検査物体表面上または表面近傍内部に存在する異物や欠陥の大きさ、または被検査物体表面の粗さを算出することを特徴とする表面検査装置。
【請求項17】
請求項11記載の表面検査装置において、上記2つの領域からの散乱・回折・反射された光を、上記被検査物体表面に対して略等しい仰角で、上記被検査物体移動ステージの主走査回転軸に関して相互に異なり、互いに略60°以上100°以下ずつ隔たった4乃至6の方位において散乱・回折・反射光を集光する集光素子を備えることを特徴とする表面検査装置。
【請求項18】
請求項12記載の表面検査装置において、上記1つの光源は、パルスレーザを発生し、このパルスレーザから分割された第1の光ビームの上記光源から上記被検査物体の表面の異なる2つの領域のうちの第1の領域に至るまでの光路長は、上記パルスレーザから分割された第2の光ビームの上記光源から上記被検査物体の表面の異なる2つの領域のうちの第2の領域に至るまでの光路長より短く設定され、上記第1の光ビームが上記光源から発せられ分割されてから、上記第1の領域に到達するまでの時間より、上記第2の光ビームが上記光源から発せられ分割されてから、上記第2の領域に到達するまでの時間を長くして遅延時間を設定することを特徴とする表面検査装置。
【請求項19】
請求項18記載の表面検査装置において、上記第2の光ビームが上記第2の領域に到達するまでの時間の、上記第1の光ビームが上記光源から発せられ分割されてから、上記第1の領域に到達するまでの時間に対する遅延時間は、上記光源のパルスレーザ発振周期の略1/10乃至1/2の範囲に設定することを特徴とする表面検査装置。
【請求項20】
請求項18記載の表面検査装置において、上記第1の領域から散乱・回折・反射された光と、上記第2の領域から散乱・回折・反射された光とは、一つの集光手段により集光し、上記遅延時間に基づいて、上記第1の領域から散乱・回折・反射された光と、上記第2の領域から散乱・回折・反射された光とを分離して検出することを特徴とする表面検査装置。
【請求項1】
主走査が回転移動で副走査が並進移動を行う被検査物体移動ステージ上に搭載された被検査物体の表面に光ビームを照射し、上記被検査物体からの散乱・回折・反射された光を集光し、集光した光に基づいて上記被検査物体表面を検査する表面検査方法において、
上記被検査物体の表面に対して、略同一の仰角で互いに異なる方位角から2つの光ビームを、上記被検査物体の表面の異なる2つの領域に照射し、
上記2つの領域からの散乱・回折・反射された光を集光し、集光した光に基づいて上記被検査物体表面上又は表面近傍内部に存在する異物や欠陥の位置や大きさ又は上記被検査物体表面粗さを検出することを特徴とする表面検査方法。
【請求項2】
請求項1記載の表面検査方法において、1つの光源から発生された光ビームを分割して上記2つの光ビームとすることを特徴とする表面検査方法。
【請求項3】
請求項2記載の表面検査方法において、上記2つの光ビームの延長線は、上記回転移動の中心を通る直線上で互いに交差することを特徴とする表面検査方法。
【請求項4】
請求項3記載の表面検査方法において、上記2つの光ビームの延長線が互いに交差する角度は約90度であることを特徴とする表面検査方法。
【請求項5】
請求項2記載の表面検査方法において、上記2つの光ビームは、共にp偏光、または、共にs偏光、または、共に円偏光、または、共に略等しい楕円率を有する楕円偏光であることを特徴とする表面検査方法。
【請求項6】
請求項1記載の表面検査方法において、上記2つの領域からの散乱・回折・反射された光の和に基づいて、上記被検査物体表面上または表面近傍内部に存在する異物や欠陥の大きさ、または被検査物体表面の粗さを算出することを特徴とする表面検査方法。
【請求項7】
請求項1記載の表面検査方法において、上記2つの領域からの散乱・回折・反射された光を、上記被検査物体表面に対して略等しい仰角で、上記被検査物体移動ステージの主走査回転軸に関して相互に異なり、互いに略60°以上100°以下ずつ隔たった4乃至6の方位において散乱・回折・反射光を集光する集光素子により集光することを特徴とする表面検査方法。
【請求項8】
請求項2記載の表面検査方法において、上記1つの光源は、パルスレーザを発生し、このパルスレーザから分割された第1の光ビームの上記光源から上記被検査物体の表面の異なる2つの領域のうちの第1の領域に至るまでの光路長は、上記パルスレーザから分割された第2の光ビームの上記光源から上記被検査物体の表面の異なる2つの領域のうちの第2の領域に至るまでの光路長より短く設定され、上記第1の光ビームが上記光源から発せられ分割されてから、上記第1の領域に到達するまでの時間より、上記第2の光ビームが上記光源から発せられ分割されてから、上記第2の領域に到達するまでの時間を長くして遅延時間を設定することを特徴とする表面検査方法。
【請求項9】
請求項8記載の表面検査方法において、上記第2の光ビームが上記第2の領域に到達するまでの時間の、上記第1の光ビームが上記光源から発せられ分割されてから、上記第1の領域に到達するまでの時間に対する遅延時間は、上記光源のパルスレーザ発振周期の略1/10乃至1/2の範囲に設定することを特徴とする表面検査方法。
【請求項10】
請求項8記載の表面検査方法において、上記第1の領域から散乱・回折・反射された光と、上記第2の領域から散乱・回折・反射された光とは、一つの集光手段により集光し、上記遅延時間に基づいて、上記第1の領域から散乱・回折・反射された光と、上記第2の領域から散乱・回折・反射された光とを分離して検出することを特徴とする表面検査方法。
【請求項11】
主走査が回転移動で副走査が並進移動を行う被検査物体移動ステージと、このステージ上に搭載された被検査物体の表面に光ビームを照射する手段と、上記被検査物体からの散乱・回折・反射された光を集光する手段と、集光した光に基づいて上記被検査物体表面を検査する検査手段とを有する表面検査装置において、
上記被検査物体の表面に対して、略同一の仰角で互いに異なる方位角から2つの光ビームを、上記被検査物体の表面の異なる2つの領域に照射する光ビーム照射手段と、
上記2つの領域からの散乱・回折・反射された光を集光する集光手段と、
集光した光に基づいて上記被検査物体表面上又は表面近傍内部に存在する異物や欠陥の位置や大きさ又は上記被検査物体表面粗さを検出する検出手段と、
を備えることを特徴とする表面検査装置。
【請求項12】
請求項11記載の表面検査装置において、上記光ビーム照射手段は、1つの光源と、この1つの光源から発生された光ビームを2つの光ビームに分割する手段とを備えることを特徴とする表面検査装置。
【請求項13】
請求項12記載の表面検査装置において、上記光ビーム照射手段は、上記2つの光ビームの延長線を、上記回転移動の中心を通る直線上で互いに交差させることを特徴とする表面検査装置。
【請求項14】
請求項13記載の表面検査装置において、上記2つの光ビームの延長線が互いに交差する角度は約90度であることを特徴とする表面検査装置。
【請求項15】
請求項12記載の表面検査装置において、上記2つの光ビームを、共にp偏光、または、共にs偏光、または、共に円偏光、または、共に略等しい楕円率を有する楕円偏光に偏光する偏光手段を備えることを特徴とする表面検査装置。
【請求項16】
請求項11記載の表面検査装置において、上記検査手段は、上記2つの領域からの散乱・回折・反射された光の和に基づいて、上記被検査物体表面上または表面近傍内部に存在する異物や欠陥の大きさ、または被検査物体表面の粗さを算出することを特徴とする表面検査装置。
【請求項17】
請求項11記載の表面検査装置において、上記2つの領域からの散乱・回折・反射された光を、上記被検査物体表面に対して略等しい仰角で、上記被検査物体移動ステージの主走査回転軸に関して相互に異なり、互いに略60°以上100°以下ずつ隔たった4乃至6の方位において散乱・回折・反射光を集光する集光素子を備えることを特徴とする表面検査装置。
【請求項18】
請求項12記載の表面検査装置において、上記1つの光源は、パルスレーザを発生し、このパルスレーザから分割された第1の光ビームの上記光源から上記被検査物体の表面の異なる2つの領域のうちの第1の領域に至るまでの光路長は、上記パルスレーザから分割された第2の光ビームの上記光源から上記被検査物体の表面の異なる2つの領域のうちの第2の領域に至るまでの光路長より短く設定され、上記第1の光ビームが上記光源から発せられ分割されてから、上記第1の領域に到達するまでの時間より、上記第2の光ビームが上記光源から発せられ分割されてから、上記第2の領域に到達するまでの時間を長くして遅延時間を設定することを特徴とする表面検査装置。
【請求項19】
請求項18記載の表面検査装置において、上記第2の光ビームが上記第2の領域に到達するまでの時間の、上記第1の光ビームが上記光源から発せられ分割されてから、上記第1の領域に到達するまでの時間に対する遅延時間は、上記光源のパルスレーザ発振周期の略1/10乃至1/2の範囲に設定することを特徴とする表面検査装置。
【請求項20】
請求項18記載の表面検査装置において、上記第1の領域から散乱・回折・反射された光と、上記第2の領域から散乱・回折・反射された光とは、一つの集光手段により集光し、上記遅延時間に基づいて、上記第1の領域から散乱・回折・反射された光と、上記第2の領域から散乱・回折・反射された光とを分離して検出することを特徴とする表面検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−20359(P2008−20359A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−193184(P2006−193184)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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