説明

貼り合わせ基板の製造方法

【課題】接合強度を十分に維持できると共に、短時間で分離することができる、貼り合わせ基板の製造方法を提供する。
【解決手段】この貼り合わせ基板の製造方法は、III族窒化物半導体基板及び第1支持基板のうち少なくとも一方上に、表面粗さRrmsが0.1〜10000nmの表面を有する第1緩衝膜を形成する工程と、第1緩衝膜を介して、第1支持基板にIII族窒化物半導体基板を貼り合わせる工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼り合わせ基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GaN基板とシリコン基板とを貼り合わせることによって、シリコン基板上にGaN層を形成する方法が知られている(特許文献1参照)。この方法では、まずGaN基板の表面に水素及び窒素イオンをイオン注入法により注入する。その後、GaN基板のイオン注入された表面とシリコン基板とを貼り合わせる。さらに、イオン注入によってGaN基板の表面近傍に形成された脆弱層を境にGaN基板をシリコン基板から剥離する。このようにして、シリコン基板上にGaN層が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−210660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の方法では、GaN基板とシリコン基板とが直接接合しているため、GaN基板をシリコン基板から分離することは困難である。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたものであり、接合強度を十分に維持できると共に、短時間で分離することができる、貼り合わせ基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明の貼り合わせ基板の製造方法は、III族窒化物半導体基板及び第1支持基板のうち少なくとも一方上に、表面粗さRrmsが0.1〜10000nmの表面を有する第1緩衝膜を形成する工程と、前記第1緩衝膜を介して、前記第1支持基板に前記III族窒化物半導体基板を貼り合わせる工程と、を含む。
【0007】
本発明の貼り合わせ基板の製造方法では、第1緩衝膜を介して第1支持基板にIII族窒化物半導体基板を貼り合わせている。このため、所望のタイミングで第1緩衝膜を除去すれば、第1支持基板からIII族窒化物半導体基板を分離することができる。
【0008】
また、第1緩衝膜の表面における表面粗さRrmsが0.1nm以上であるので、第1支持基板とIII族窒化物半導体基板との過度な密着を抑制し、第1支持基板からIII族窒化物半導体基板を短時間で分離することができる。また、第1緩衝膜の表面における表面粗さRrmsが10000nm以下であるので、第1支持基板とIII族窒化物半導体基板との接合強度を十分に維持することができる。
【0009】
したがって、本発明の貼り合わせ基板の製造方法によれば、第1支持基板とIII族窒化物半導体基板との接合強度を十分に維持できると共に、所望のタイミングでは、第1支持基板からIII族窒化物半導体基板を短時間で分離することができる。
【0010】
上記貼り合わせ基板の製造方法は、前記III族窒化物半導体基板を貼り合わせる工程の後、前記III族窒化物半導体基板の一部を除去することによって、前記第1支持基板上にIII族窒化物半導体層を形成する工程と、前記III族窒化物半導体層上にエピタキシャル層を形成する工程と、前記エピタキシャル層に、前記第1支持基板とは異なる第2支持基板を貼り合わせる工程と、前記第1緩衝膜を除去することによって、前記第1支持基板を前記第2支持基板から分離する工程と、を更に含むことが好ましい。
【0011】
この場合、第1支持基板を別のIII族窒化物半導体基板に貼り付けて再使用することができる。このため、貼り合わせ基板の製造コストを低減できる。
【0012】
前記第2支持基板が導電性を有することが好ましい。
【0013】
この場合、第2支持基板の厚み方向に電流を流すことができる。そのため、得られた貼り合わせ基板を用いれば、小型化が可能な縦型の半導体デバイスを製造することができる。
【0014】
上記貼り合わせ基板の製造方法は、前記エピタキシャル層を形成する工程と前記第2支持基板を貼り合わせる工程との間に、前記エピタキシャル層上に、前記第1緩衝膜とは異なる第2緩衝膜を形成する工程を更に含むことが好ましい。
【0015】
これにより、エピタキシャル層と第2支持基板との接合強度を調節することができる。
【0016】
前記第1支持基板の貼り合わせ面、前記III族窒化物半導体基板の貼り合わせ面、及び前記第1緩衝膜の前記表面のうち少なくとも1つに凹部が形成されていることが好ましい。
【0017】
この場合、第1支持基板と前記III族窒化物半導体基板との間に隙間が形成されるので、第1支持基板からIII族窒化物半導体基板を分離するのに必要な時間を更に短縮することができる。
【0018】
前記III族窒化物半導体基板の貼り合わせ面における表面粗さRrmsが0.1〜10nmであり、前記III族窒化物半導体基板の前記貼り合わせ面を前記第1支持基板に貼り合わせてもよい。
【0019】
前記第1支持基板の貼り合わせ面における表面粗さRrmsが0.1〜10nmであり、前記第1支持基板の前記貼り合わせ面を前記III族窒化物半導体基板に貼り合わせてもよい。
【0020】
前記III族窒化物半導体基板を貼り合わせる工程では、前記III族窒化物半導体基板と前記第1支持基板とを対向させた状態で、前記III族窒化物半導体基板の反り量と前記第1支持基板の反り量との差の絶対値が70μm以下であることが好ましい。
【0021】
この場合、第1支持基板にIII族窒化物半導体基板を貼り合わせる時に、第1支持基板及びIII族窒化物半導体基板の割れが発生し難くなる。また、第1支持基板とIII族窒化物半導体基板との接合強度を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、接合強度を十分に維持できると共に、短時間で分離することができる、貼り合わせ基板の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】一実施形態に係る貼り合わせ基板の製造方法の各工程を模式的に示す断面図である。
【図2】一実施形態に係る貼り合わせ基板の製造方法の各工程を模式的に示す断面図である。
【図3】本実施形態に係る貼り合わせ基板の製造方法により製造されるLEDの一例を模式的に示す断面図である。
【図4】本実施形態に係る貼り合わせ基板の製造方法により製造されるLDの一例を模式的に示す断面図である。
【図5】本実施形態に係る貼り合わせ基板の製造方法により製造されるLDの一例を模式的に示す断面図である。
【図6】本実施形態に係る貼り合わせ基板の製造方法により製造されるショットキーダイオードの一例を模式的に示す断面図である。
【図7】実施例及び比較例の結果を示す図である。
【図8】実施例の結果を示す図である。
【図9】実施例の結果を示す図である。
【図10】実施例の結果を示す図である。
【図11】実施例の結果を示す図である。
【図12】実施例の結果を示す図である。
【図13】実施例の結果を示す図である。
【図14】実施例の結果を示す図である。
【図15】実施例の結果を示す図である。
【図16】実施例の結果を示す図である。
【図17】実施例の結果を示す図である。
【図18】実施例の結果を示す図である。
【図19】実施例の結果を示す図である。
【図20】実施例の結果を示す図である。
【図21】実施例の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0025】
図1及び図2は、一実施形態に係る貼り合わせ基板の製造方法の各工程を模式的に示す断面図である。以下、図1及び図2を参照して、本実施形態に係る貼り合わせ基板の製造方法の各工程について説明する。
(第1支持基板の準備工程)
【0026】
まず、図1(a)に示されるように、第1支持基板10を準備する。第1支持基板10としては、例えば、サファイア基板、Si基板、多結晶AlN基板、多結晶Si基板、多結晶スピネル基板、多結晶SiC基板、GaN基板等を用いることができる。第1支持基板10は、耐熱性及び耐薬品性を有する安価な基板であることが好ましい。さらには、後述の通り、第1支持基板10にGaN基板14を貼り合せた後、高温でエピタキシャル成長することから、GaN基板14と同等の熱膨張係数を有する、つまり多結晶AlN基板、多結晶SiC基板、GaN基板を第1支持基板10として用いることがより好ましい。
【0027】
第1支持基板10の貼り合わせ面10aの表面粗さRrmsは、0.1〜10nmであることが好ましい。
【0028】
第1支持基板10の反り量は、円盤状の第1支持基板10の直径が2インチ(50.8mm)の場合に、±70μm以下であることが好ましく、±30μm以下であることがさらに好ましい。反り量は、非接触光干渉式反り測定装置で格子状に1mm間隔で測定した。なお、第1支持基板10の貼り合わせ面10aを上に置いた場合に、上に凸となる第1支持基板10の反り方向をプラス、下に凸となる第1支持基板10の反り方向をマイナスとする。なお、以降、「反り量」とは貼り合わされる面の反り量を言う。
(第1緩衝膜の形成工程)
【0029】
次に、図1(b)に示されるように、第1支持基板10の貼り合わせ面10a上に第1緩衝膜12を形成する。第1緩衝膜12は、例えばCVD法、スパッタリング法、ゾルゲル法、蒸着法等を用いて形成される。第1緩衝膜12の表面12aにおける表面粗さRrmsは、0.1〜10000nmであり、1〜10000nmであることがより好ましく、500〜10000nmであることが特に好ましい。表面粗さRrmsの値は、平均値に対する偏差の2乗値の平均に対する平方根である。表面粗さRrmsは、非接触式レーザ干渉計を用いて100μm×100μm角の範囲内において測定される。第1緩衝膜1
2は、例えばPt、Ni、Zn、Sn、Al等からなる金属膜であってもよいし、例えばSiO等からなる酸化膜であってもよい。CVD法により第1緩衝膜12を形成する場合、第1緩衝膜12の成長速度を早くすることによって、第1緩衝膜12の表面12aにおける表面粗さRrmsを大きくできる。ゾルゲル法により第1緩衝膜12を形成する場合、熱処理温度を高くすることによって、第1緩衝膜12の表面12aにおける表面粗さRrmsを小さくできる。
(GaN基板の貼り合わせ工程)
【0030】
次に、図1(c)に示されるように、第1緩衝膜12を介して、第1支持基板10の貼り合わせ面10aにIII族窒化物半導体基板としてのGaN基板14の貼り合わせ面14sを貼り合わせる。GaN基板14は、例えば六方晶のGaN結晶からなり、バルク単結晶からなることが好ましい。貼り合わせは、例えば圧着により行われる。
【0031】
GaN基板14の貼り合わせ面14sにおける表面粗さRrmsは0.1〜10nmであることが好ましい。
【0032】
GaN基板14の反り量は、円盤状のGaN基板14の直径が2インチ(50.8mm)の場合に、±70μm以下であることが好ましく、±30μm以下であることがさらに好ましい。なお、GaN基板14の貼り合わせ面14sを下に置いた場合に、上に凸となるGaN基板14の反り方向をプラス、下に凸となるGaN基板14の反り方向をマイナスとする。
【0033】
GaN基板14の貼り合わせ面14sと第1支持基板10の貼り合わせ面10aとを対向させた状態で、GaN基板14の反り量と第1支持基板10の反り量との差の絶対値が70μm以下(小数点以下は四捨五入)であることが好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。また、GaN基板14の反りの方向と第1支持基板10の反りの方向とが一致していることが好ましい。
【0034】
なお、貼り合わせ前に、第1緩衝膜12の表面12a及びGaN基板14の貼り合わせ面14sの少なくとも一方に、例えばArイオン等のイオンを照射して活性化してもよい。これにより、表面に付着した不純物を除去すると共に、貼り合わせ後の接合強度を向上させることができる。
【0035】
GaN基板14の貼り合わせ面14s上に第1緩衝膜12を形成してもよい。III族窒化物半導体基板として、GaN基板に代えて、AlN基板、InN基板、AlGaN基板、InGaN基板等を用いてもよい。
【0036】
第1支持基板10の貼り合わせ面10a、GaN基板14の貼り合わせ面14s、及び第1緩衝膜12の表面12aのうち少なくとも1つに、凹部が形成されていることが好ましい。凹部としては、例えば溝、開口部、貫通穴等が挙げられる。例えば、第1支持基板10の貼り合わせ面10a及びGaN基板14の貼り合わせ面14sのうち少なくとも一方に、例えばストライプ状の溝(凹部)が形成されていることが好ましい。この場合、接合面積が減少すると共に、後述する分離工程においてエッチング液が貼り合わせ面10a,14sの中心まで短時間で侵入できる。このため、分離に要する時間を短くすることができる。溝は、第1支持基板10及びGaN基板14のうち、第1緩衝膜12が形成されていない方に形成されることが好ましい。GaN基板14として、N面及びGa面がストライプ状に配置されたストライプ基板を用いてもよい。この場合、N面とGa面との間に段差が形成される。また、フォトリソグラフィー法を用いて、第1支持基板10又はGaN基板14の表面にストライプ状の溝を形成してもよい。
【0037】
あるいは、第1支持基板10の貼り合わせ面10aから裏面まで厚み方向に貫通する貫通穴(凹部)が第1支持基板10に形成されてもよい。この場合、接合面積が減少すると共に、後述する分離工程においてエッチング液が貼り合わせ面10a,14sの中心まで短時間で侵入できる。このため、分離に要する時間を短くすることができる。貫通穴の形状は円形でも四角形でも良いが、円形の方が加工しやすく、またクラック抑制にもなるので好ましい。貫通穴のサイズは円形の場合、直径1μm〜3mmが好ましい。エッチング液が短時間に浸入でき、かつ第1支持基板10とGaN基板14の接合強度が高くなるように、直径3μm〜2mmの貫通穴がより好ましく、直径10μm〜1mmの貫通穴がさらに好ましい。また、貫通穴が四角形の場合、貫通穴の断面が前述の円形の場合の断面内に収まる範囲が好ましい。貫通穴の形成に用いられる方法としては、ドリル加工あるいはレーザ加工、コアドリル加工などが考えられる。
【0038】
あるいは、第1支持基板10の貼り合わせ面10a及びGaN基板14の貼り合わせ面14sのうち少なくとも一方に形成された第1緩衝膜12の表面12aに開口部(凹部)が形成されている(パターニングされている)ことが好ましい。この場合、接合面積が減少するとともに、後述する分離工程においてエッチング液が貼り合せ面10a,14sの中心まで短時間で侵入できる。このため、分離に要する時間を短くすることができる。パターニングでは、エッチング液が浸入しやすいように、凹部としての開口部が連続的につながるように形成されることが好ましい。このとき、エッチング液が短時間に浸入でき、かつ第1支持基板10とGaN基板14の接合強度が高くなるように、開口部の幅が1μm〜3mm、好ましくは3μm〜2mm、より好ましくは5μm〜1mmになるように開口部を形成する。パターニングには一般的なフォトリソグラフィー法を用いることができる。
【0039】
上記の溝加工、貫通穴形成、第1緩衝膜12のパターニングは、使用する基板のサイズが大きくなると特に効果がある。
(GaN層の形成工程)
【0040】
次に、図1(d)に示されるように、GaN基板14の一部14bを除去することによって、第1支持基板10上にIII族窒化物半導体層としてのGaN層14aを形成する。例えばワイヤーソーや内周刃等を用いてGaN基板14をスライスすることによって、GaN基板14の一部14bを除去してもよい。貼り合わせ前にGaN基板14の貼り合わせ面14sにイオン注入を施して脆弱層を形成し、熱処理により脆弱層を境にGaN基板14の一部14bを除去してもよい。イオン注入では、水素イオン、Heイオン、Nイオン等の軽元素を用いる事が好ましい。を用いることが好ましい。イオン注入量は1×1017〜1×1019/cmであることが好ましい。熱処理は、300〜800℃で行われることが好ましい。
(エピタキシャル層の形成工程)
【0041】
次に、図1(e)に示されるように、必要に応じて、GaN層14a上にエピタキシャル層16を形成する。エピタキシャル層16は単層でもよいし、複数層でもよい。エピタキシャル層16は、例えばMOCVD法、MBE法等により形成される。エピタキシャル層16上に、p型電極を形成してもよい。
(第2緩衝膜の形成工程)
【0042】
次に、図2(a)に示されるように、必要に応じて、エピタキシャル層16上に、第1緩衝膜12とは異なる第2緩衝膜18を形成する。第2緩衝膜18は、第1緩衝膜12の材料とは異なる材料からなることが好ましい。第2緩衝膜18の材料及び形成方法としては、第1緩衝膜12の材料及び形成方法と同じもの、あるいはZnO、Ga,Au−Ni膜、ITO膜などの透明導電性膜が挙げられる。本実施形態の貼り合わせ基板をLED用途として使用する場合、光の反射率を上げるように、透明導電性膜と後述の第2支持基板20との間にAgを挿入すればさらに好ましい。
(第2支持基板の貼り合わせ工程)
【0043】
次に、図2(b)に示されるように、第2緩衝膜18を介して、エピタキシャル層16に、第1支持基板10とは異なる第2支持基板20を貼り合わせる。この貼り合わせは、上述の第1支持基板10とGaN基板14との貼り合わせと同様の方法で行われる。第2支持基板20は導電性を有することが好ましい。第2支持基板20としては、例えば、Fe、Cu、W、Mo、WC、CuW等の金属からなる金属基板や金属化合物基板、Si、ZnO、Ga、SiC等の半導体からなる単結晶半導体基板もしくは多結晶半導体基板が挙げられる。
(分離工程)
【0044】
次に、図2(c)に示されるように、第1緩衝膜12を除去することによって、第1支持基板10を第2支持基板20から分離する。このようにして、貼り合わせ基板100が得られる。
【0045】
例えば、酸やアルカリ等のエッチング液を用いて第1緩衝膜12をエッチング除去する。第1緩衝膜12がSiOからなる場合、HF溶液を用いて第1緩衝膜12をエッチング除去することができる。第1緩衝膜12が金属からなる場合、塩酸、硫酸、王水等の酸性溶液、NaOH等のアルカリ性溶液を用いて第1緩衝膜12をエッチング除去することができる。
【0046】
また、第1支持基板10及び第1緩衝膜12がレーザ光を透過する場合、第1支持基板10側から当該レーザ光を照射することによって、第1支持基板10を第2支持基板20から分離してもよい。レーザ光としては、例えば紫外エキシマレーザを用いることができる。
【0047】
分離された第1支持基板10は、図1(a)に示される第1支持基板10として再使用することができる。そのため、半導体デバイスの製造コストを低減することができる。さらに、分離によって露出したGaN層14a上にn型電極を形成してもよい。
(ダイシング工程)
【0048】
次に、図2(d)に示されるように、第2支持基板20を例えばダイシングすることによって、チップ化された半導体デバイス30を作製する。半導体デバイス30としては、LED(発光ダイオード)やLD(半導体レーザ)等の発光デバイス、ショットキーダイオードや縦型トランジスタ等の電子デバイスが挙げられる。導電性を有する第2支持基板20を用いると、縦型の半導体デバイス30を製造できるので、半導体デバイス30を小型化できる。なお、半導体デバイス30を放熱基板上に実装してもよい。
【0049】
本実施形態の貼り合わせ基板の製造方法では、第1緩衝膜12を介して第1支持基板10にGaN基板14を貼り合わせている。このため、所望のタイミングで第1緩衝膜12を除去すれば、第1支持基板10からGaN基板14を分離することができる。
【0050】
また、第1緩衝膜12の表面粗さRrmsが0.1nm以上であるので、第1支持基板10とGaN基板14との過度な密着を抑制し、第1支持基板10からGaN基板14を短時間で分離することができる。例えば、エッチング液を用いて第1緩衝膜12をエッチング除去する場合、第1緩衝膜12の表面粗さRrmsが0.1nm以上であると、エッチング液が第1緩衝膜12とGaN層14aとの間に侵入し易くなる。また、第1緩衝膜12の表面粗さRrmsが10000nm以下であるので、第1支持基板10とGaN基板14との接合強度を十分に維持することができる。例えば、エピタキシャル層形成時のように高温条件下では、第1緩衝膜12の表面粗さRrmsが10000nm以下であると、GaN層14aが第1緩衝膜12から離脱することを抑制できる。
【0051】
したがって、本実施形態の貼り合わせ基板の製造方法によれば、第1支持基板10とGaN基板14との接合強度を十分に維持できると共に、所望のタイミングでは、第1支持基板10からGaN基板14を短時間で分離することができる。
【0052】
本実施形態の貼り合わせ基板の製造方法では、第1支持基板10を、GaN基板14とは別のIII族窒化物半導体基板に貼り付けて再使用することができる。このため、貼り合わせ基板の製造コストを低減できる。
【0053】
第2支持基板20が導電性を有していると、第2支持基板20の厚み方向に電流を流すことができる。そのため、得られた貼り合わせ基板を用いれば、小型化が可能な縦型の半導体デバイス30を製造することができる。
【0054】
エピタキシャル層16上に第2緩衝膜18を形成すると、GaN層14aと第2支持基板20との接合強度を調節することができる。
【0055】
第1支持基板10の貼り合わせ面10a及びGaN基板14の貼り合わせ面14sのうち少なくとも一方に溝が形成されていることが好ましい。この場合、第1支持基板10の貼り合わせ面10aとGaN基板14の貼り合わせ面14sとの間に隙間が形成されるので、第1支持基板10からGaN基板14を分離するのに必要な時間を更に短縮することができる。
【0056】
GaN基板14の貼り合わせ面14sと第1支持基板10の貼り合わせ面10aとを対向させた状態で、GaN基板14の反り量と第1支持基板10の反り量との差の絶対値が70μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。第1支持基板10にGaN基板14を貼り合わせる時に、第1支持基板10及びGaN基板14の割れが発生し難くなる。また、第1支持基板10とGaN基板14との接合強度を大きくすることができる。
【0057】
図3は、本実施形態に係る貼り合わせ基板の製造方法により製造されるLEDの一例を模式的に示す断面図である。図3に示されるLED30aは、n型のGaN層14a上に設けられたエピタキシャル層16と、エピタキシャル層16上に設けられた導電性を有する第2支持基板20とを備える。エピタキシャル層16では、n型GaN層40、AlGaN層42、多重量子井戸構造(MQW)44、及びp型AlGaN層46が、n型のGaN層14a上にこの順に設けられている。第2支持基板20、エピタキシャル層16、及びGaN層14aは、p型の電極48とn型の電極50との間に挟まれている。p電極48は第2支持基板20側に設けられている。n型電極50は、GaN層14a側に設けられている。
【0058】
LED30aは、本実施形態に係る貼り合わせ基板の製造方法により製造される。エピタキシャル層16は、MOCVD法を用いて形成される。第2緩衝膜18は形成しても、しなくてもよい。第2緩衝膜18を形成する場合には、オーミック特性を示す金属、例えばAu/Mo/Pd,Au/Niなどが使用できる。半導体もしくは金属などからなる第2支持基板20をエピタキシャル層16に貼り合わせた後、第1支持基板10を剥離する。電極48及び電極50の形成は、第2の支持基板20を貼り合わせる前でもよいし、貼り合わせた後でもよい。
【0059】
図4は、本実施形態に係る貼り合わせ基板の製造方法により製造されるLDの一例を模式的に示す断面図である。図4に示されるLD30bは、n型のGaN層14a上に設けられたエピタキシャル層16と、エピタキシャル層16上に設けられた第2支持基板20とを備える。エピタキシャル層16では、n型GaNバッファ層52、n型AlGaNクラッド層54、n型GaN光導波層56、アンドープのGa1-x Inx N/Ga1-y Iny N多重量子井戸構造の活性層58、アンドープInGaN劣化防止層60、p型AlGaNキャップ層62、p型GaN光導波層64、及びp型AlGaNクラッド層66が、n型のGaN層14a上にこの順に設けられている。
【0060】
LD30bは、本実施形態に係る貼り合わせ基板の製造方法により製造される。エピタキシャル層16は、MOCVD法を用いて形成される。第2緩衝膜18は形成しても、しなくてもよい。第2緩衝膜18を形成する場合には、オーミック特性を示す金属、例えばAu/Mo/Pd,Au/Niなどが使用できる。半導体もしくは金属などからなる第2支持基板20をエピタキシャル層16に貼り合わせた後、第1支持基板10を剥離する。
【0061】
図5は、本実施形態に係る貼り合わせ基板の製造方法により製造されるLDの一例を模式的に示す断面図である。図5(a)に示されるLD30cは、LD30bのp型AlGaNクラッド層66がエッチングによりパターニングされた構造を有する。パターニングにより、p型AlGaNクラッド層66の一部からなるリッジ部66aが形成されている。リッジ部66aの頂面上には、p型電極70が形成されている。p型電極70の上には第2支持基板20が設けられている。
【0062】
LD30cは、本実施形態に係る貼り合わせ基板の製造方法により製造される。図4に示されるLD30bの第2支持基板20貼り合わせる前に、p型AlGaNクラッド層66上に絶縁膜を形成し、フォトリソグラフィー法により開口を形成する。その開口からp型AlGaNクラッド層66の一部をエッチングすることにより、リッジ部66aを形成する。その後、リフトオフ法によりp型電極70をリッジ部66aの頂面上に形成する。さらに、第2支持基板20を貼り合わせる。その後、第2支持基板20の裏面上にp型電極68を形成してもよい。なお、図5(b)に示すように、第2支持基板20と絶縁膜72との間の隙間部にSiOなどからなる埋め込み層67を形成してもよい。
【0063】
図6は、本実施形態に係る貼り合わせ基板の製造方法により製造されるショットキーダイオードの一例を模式的に示す断面図である。図6に示されるショットキーダイオード30dは、導電性を有する第2支持基板20と、第2支持基板20上に設けられたエピタキシャル層16と、エピタキシャル層16上に設けられたGaN層14aとを備える。エピタキシャル層16は、n型のGaNからなる。エピタキシャル層16及びGaN層14aは、ショットキー電極74とオーミック電極76との間に挟まれている。ショットキー電極74はエピタキシャル層16と第2支持基板20との間に設けられている。オーミック電極76は、GaN層14a側に設けられている。
【0064】
ショットキーダイオード30dは、本実施形態に係る貼り合わせ基板の製造方法により製造される。エピタキシャル層16は、MOCVD法を用いて形成される。第2緩衝膜18はショットキーコンタクトがとれるような既知の材料を選択すればよい。予めショットキー電極74が形成された第2支持基板20をエピタキシャル層16に貼り合わせた後、第1支持基板10を剥離する。さらに、GaN層14a上にオーミック電極76を形成する。ここで、第2支持基板20自体をショットキー電極として使用することも可能である。
【0065】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【実施例】
【0066】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。図7〜図21は、実施例及び比較例の結果を示す図である。
(比較例1)
【0067】
直径2インチ(50.8mm)、厚み2000μm、貼り合わせ面である(000-1)面の反り量が8μm、貼り合わせ面の表面粗さRrmsが1.8nmであるGaN基板を準備した。また、第1支持基板として、直径2インチ(50.8mm)、厚み350μm、反り量が2.1μm、貼り合わせ面の表面粗さRrmsが0.15nmであるサファイア基板を準備した。したがって、GaN基板の反り量と第1支持基板の貼り合わせ面である(0001)面の反り量との差は5.9μmであった。
【0068】
次に、CVD法を用いて、サファイア基板の貼り合わせ面上に、厚み100nmのSiOからなる第1緩衝膜を形成した。第1緩衝膜の表面粗さRrmsは0.01nmであった。
【0069】
続いて、第1緩衝膜にGaN基板の貼り合わせ面を接触させて圧着した。ワイヤーソーを用いて、1mm/hrの速度で得られた貼り合わせ基板をスライスした。これにより、第1緩衝膜上に厚み80μmのGaN層を形成した。
【0070】
さらに、MOCVD法を用いて、GaN層上にエピタキシャル層を形成した。具体的には、厚さ5μmのn型GaN層、厚さ3nmのIn0.2Ga0.8N層、厚さ60nmのAl0.2Ga0.8N層、厚さ150nmのp型GaN層を順次成長させた。
【0071】
次に、p型GaN層上に第2緩衝膜を形成し、第1緩衝膜とGaN基板との貼り合わせ方法と同様の方法を用いて、導電性SiC基板を第2緩衝膜に貼り合わせた。さらに、導電性SiC基板を第2緩衝膜に貼り合わせた接合基板を室温でHF溶液中に180分間浸漬させたが、サファイア基板を導電性SiC基板から分離することはできなかった。
(比較例2)
【0072】
CVD法に代えて、ゾルゲル法を用いて厚さ50000nmの第1緩衝膜を形成したこと以外は比較例1と同様にして、実験を行った。具体的には、サファイア基板の貼り合わせ面上に、TEOSをスピンコートし、熱処理することによってSiOからなる第1緩衝膜を形成した。第1緩衝膜の表面粗さRrmsは12156nmであった。
【0073】
比較例2では、室温でHF溶液により第1緩衝膜をエッチング除去することによって、2分でサファイア基板を導電性SiC基板から分離することができた。その後、導電性SiC基板をダイシングすることによって、チップ化されたLEDを作製した。
【0074】
比較例2では、GaN層上にエピタキシャル層を形成した後に、GaN層が剥離していることが判明した。これは、第1緩衝膜の表面粗さRrmsが大き過ぎたために、第1緩衝膜とGaN層との接合強度が不十分となったからと考えられる。
(実施例1〜6)
【0075】
成長速度を速くすることによって第1緩衝膜の表面粗さRrmsを制御しながら第1緩衝膜を形成したこと以外は比較例1と同様にして、実験を行った。実施例1〜6において、第1緩衝膜の表面粗さRrmsは、それぞれ0.10nm、0.34nm、1.05nm、3.50nm、10.50nm、21.50nmであった。
【0076】
実施例1〜6では、室温でHF溶液により第1緩衝膜をエッチング除去することによって、それぞれ46分、34分、20分、17.5分、17分、14.5分でサファイア基板を導電性SiC基板から分離することができた。その後、導電性SiC基板をダイシングすることによって、チップ化されたLEDを作製した。
(実施例7〜9)
【0077】
スパッタリング法を用いて第1緩衝膜を形成し、成長速度を速くすることによって第1緩衝膜の表面粗さRrmsを制御しながら第1緩衝膜を形成したこと以外は実施例3と同様にして、実験を行った。
(実施例10〜13)
【0078】
熱処理温度を変えることによって第1緩衝膜の表面粗さRrmsを制御しながら第1緩衝膜を形成したこと以外は比較例2と同様にして、実験を行った。
(評価結果)
【0079】
比較例1及び2、実施例1〜13について、第1緩衝膜が成膜される基板の材料、第1緩衝膜の材料、成膜方法、厚み、表面粗さRrms、エピタキシャル層の状態、第1支持基板の剥離に要した時間の結果を図7に示す。実施例1〜13では、エピタキシャル層の状態が良好であり、かつ、サファイア基板を46分以下と短時間で剥離することができた。
(実施例14〜16)
【0080】
実施例14〜16において、第1緩衝膜をサファイア基板の貼り合わせ面上ではなくGaN基板の貼り合わせ面上に形成したこと以外はそれぞれ実施例3、7、10と同様にして、実験を行った。第1緩衝膜が成膜される基板の材料、第1緩衝膜の材料、成膜方法、厚み、表面粗さRrms、エピタキシャル層の状態、第1支持基板の剥離に要した時間の結果を図8に示す。
(実施例17〜21)
【0081】
第1支持基板としてサファイア基板に代えて図9に示される第1支持基板を用いたこと以外は実施例3と同様にして、実験を行った。第1緩衝膜が成膜される基板の材料、第1緩衝膜の材料、成膜方法、厚み、表面粗さRrms、エピタキシャル層の状態、第1支持基板の剥離に要した時間、第1支持基板の材料、厚み、反り量、表面粗さRrms、GaN基板の反り量と第1支持基板の反り量との差の絶対値の結果を図9に示す。実施例17〜21では、実施例3と同等の結果が得られた。
(実施例22〜26)
【0082】
第1支持基板として、サファイア基板に代えて、実施例3,17,18,19で剥離された第1支持基板を再使用したこと以外は実施例3と同様にして、実験を行った。実施例25では、実施例3を10回繰り返して得られたサファイア基板を用いた。第1緩衝膜が成膜される基板の材料、第1緩衝膜の材料、成膜方法、厚み、表面粗さRrms、エピタキシャル層の状態、第1支持基板の剥離に要した時間、第1支持基板の材料、厚み、反り量、表面粗さRrms、GaN基板の反り量と第1支持基板の反り量との差の絶対値の結果を図10に示す。実施例22〜26では、実施例3と同等の結果が得られた。
(実施例27〜32)
【0083】
実施例27〜29では、第1支持基板の貼り合わせ面の表面粗さRrmsを変えたこと以外は実施例14と同様にして、実験を行った。実施例30〜32では、GaN基板の貼り合わせ面の表面粗さRrmsを変えたこと以外は実施例3と同様にして、実験を行った。第1緩衝膜が成膜される基板の材料、第1緩衝膜の材料、成膜方法、厚み、表面粗さRrms、エピタキシャル層の状態、第1支持基板の剥離に要した時間、GaN基板の貼り合わせ面の表面粗さRrms、第1支持基板の貼り合わせ面の表面粗さRrmsの結果を図11に示す。
(実施例33〜36)
【0084】
GaN基板及び第1支持基板の反り量を変えたこと以外は実施例3と同様にして、実験を行った。第1緩衝膜が成膜される基板の材料、第1緩衝膜の材料、成膜方法、厚み、表面粗さRrms、エピタキシャル層の状態、第1支持基板の剥離に要した時間、GaN基板の反り量、第1支持基板の反り量、GaN基板の反り量と第1支持基板の反り量との差の絶対値の結果を図12に示す。反り量の差の絶対値が25μm以下の場合、エピタキシャル層の状態は良好であった。反り量の差の絶対値が25μm超50μm以下の場合、エピタキシャル層の形成後、基板の外周から2mm以内の範囲においてGaN層が剥離していた。しかし、実用に耐えうる程度であった。
(実施例37〜41)
【0085】
SiOからなる第1緩衝膜に代えて、図13に示される金属材料からなる第1緩衝膜を用いたこと以外は実施例3と同様にして、実験を行った。図13に示される剥離方法及び剥離条件を用いて、第1支持基板を剥離した。第1緩衝膜が成膜される基板の材料、第1緩衝膜の材料、成膜方法、厚み、表面粗さRrms、エピタキシャル層の状態、第1支持基板の剥離に要した時間、第1支持基板の剥離方法、剥離条件の結果を図13に示す。実施例37〜41では、実施例3と同等の結果が得られた。
(実施例42)
【0086】
図14に示される剥離方法及び剥離条件を用いて第1支持基板を剥離したこと以外は実施例3と同様にして、実験を行った。第1緩衝膜が成膜される基板の材料、第1緩衝膜の材料、成膜方法、厚み、表面粗さRrms、エピタキシャル層の状態、第1支持基板の剥離に要した時間、第1支持基板の剥離方法、剥離条件の結果を図14に示す。実施例42では、実施例3と同等の結果が得られた。
(実施例43〜46)
【0087】
実施例43〜44では、図15に示される溝が形成されたGaN基板を用いたこと以外は実施例3と同様にして、実験を行った。実施例45〜46では、図15に示される溝が形成されたサファイア基板を用いて、第1緩衝膜をGaN基板の貼り合わせ面上に形成したこと以外は実施例3と同様にして、実験を行った。第1緩衝膜が成膜される基板の材料、第1緩衝膜の材料、成膜方法、厚み、表面粗さRrms、エピタキシャル層の状態、第1支持基板の剥離に要した時間、溝を有する基板の材料、溝の形状、幅、ピッチ、深さの結果を図15に示す。実施例43〜46では、実施例3に比べて、サファイア基板を短時間で剥離できた。
(実施例47〜56)
【0088】
実施例47〜56では、図16に示される貫通穴が形成されたサファイア基板を用いて、第1緩衝膜をGaN基板の貼り合わせ面上に形成したこと以外は実施例3と同様にして、実験を行った。第1緩衝膜が成膜される基板の材料、第1緩衝膜の材料、成膜方法、厚み、表面粗さRrms、エピタキシャル層の状態、第1支持基板の剥離に要した時間、貫通穴を有する基板の材料、貫通穴の形状、直径、ピッチの結果を図16に示す。実施例47〜56では、実施例3に比べて、サファイア基板を短時間で剥離できた。
(実施例57〜62)
【0089】
実施例57〜62では、第1支持基板としてサファイア基板に代えて図17に示されるGaN基板を用いて、図17に示される開口部が形成された第1緩衝膜を第1支持基板であるGaN基板上に形成したこと以外は実施例3と同様にして、実験を行った。第1緩衝膜が成膜される基板の材料、第1緩衝膜の材料、成膜方法、厚み、表面粗さRrms、エピタキシャル層の状態、第1支持基板の剥離に要した時間、第1支持基板の材料、厚み、反り量、表面粗さRrms、GaN基板の反り量と第1支持基板の反り量との差の絶対値、開口部の形状、直径、ピッチ、深さの結果を図17に示す。
(実施例63)
【0090】
スライスではなくイオン注入及び熱処理によってGaN基板の一部を除去したこと以外は実施例3と同様にして、実験を行った。第1緩衝膜が成膜される基板の材料、第1緩衝膜の材料、成膜方法、厚み、表面粗さRrms、エピタキシャル層の状態、第1支持基板の剥離に要した時間、イオン注入に用いるイオンの種類、ドーズ量、GaN基板の一部を除去する方法、条件、得られたGaN層の厚みの結果を図18に示す。実施例63では、実施例3と同等の結果が得られた。
(実施例64)
【0091】
LEDに代えてLDを作製したこと以外は実施例3と同様にして、実験を行った。第1緩衝膜が成膜される基板の材料、第1緩衝膜の材料、成膜方法、厚み、表面粗さRrms、エピタキシャル層の状態、第1支持基板の剥離に要した時間、作製したデバイスの種類の結果を図19に示す。
【0092】
具体的には、エピタキシャル層として、Siドープしたn型GaNバッファ層(厚さ0.05μm)、Siドープしたn型Al0.08Ga0.92Nクラッド層(厚さ1.0μm)、Siドープしたn型GaN光導波層(厚さ0.1μm)、多重量子井戸構造を有する活性層、Mg(マグネシウム)をドープしたp型Al0.2Ga0.8Nキャップ層(厚さ10nm)、Mgをドープしたp型GaN光導波層(厚さ0.1μm)、Mgをドープしたp型Al0.08Ga0.92Nクラッド層(厚さ0.3μm)、Mgをドープしたp型GaNコンタクト層を順次成長させた。活性層は、アンドープのIn0.15Ga0.85N層(厚さ3nm)と、アンドープのIn0.03Ga0.97N層(厚さ6nm)とを交互に5回繰り返して成長させた。
【0093】
続いて、p型GaNコンタクト層の全面に厚さ0.1μmのSiO膜をCVD法により形成した。このSiO膜を、フォトリソグラフィーによりパターニングした。なお、真空蒸着法、スパッタリング法等を用いてSiO膜を形成してもよい。フッ素を含むエッチングガスを用いて、SiO膜をRIEエッチングしてもよい。
【0094】
次に、パターニングされたSiO膜をエッチングマスクとして、p型GaNコンタクト層及びp型Al0.08Ga0.92Nクラッド層の一部を、塩素系ガスを用いてRIEエッチングした。これにより、<1−100>方向に延在する幅2μmのリッジ部を形成した。
【0095】
エッチングマスクをエッチングにより除去した後、基板全面に厚さ0.3μmのSiO絶縁膜を形成した。CVD法、真空蒸着法、スパッタリング法等を用いて、SiO絶縁膜を形成することができる。
【0096】
次に、フォトリソグラフィーにより、p側電極を形成するための領域を除いた領域に位置するSiO絶縁膜の表面を覆うレジストパターンを形成した。このレジストパターンをマスクとして、SiO絶縁膜をエッチングすることにより、開口を形成した。さらに、レジストパターンを残した状態で、基板全面に真空蒸着法によりp側電極を形成した。その後、レジストパターンを除去することによって、レジストパターン上のp側電極を除去した。このようにして、p型GaNコンタクト層上にp側電極を形成した。その後、導電性SiC基板をp側電極上に貼り合わせた後、第1支持基板を除去した。
(実施例65)
【0097】
LEDに代えてショットキーダイオードを作製したこと以外は実施例3と同様にして、実験を行った。第1緩衝膜が成膜される基板の材料、第1緩衝膜の材料、成膜方法、厚み、表面粗さRrms、エピタキシャル層の状態、第1支持基板の剥離に要した時間、作製したデバイスの種類の結果を図19に示す。
【0098】
具体的には、エピタキシャル層として、MOCVD法により、厚さ5μmのn型GaN層(電子濃度が1×1016cm−3)を成長させた。
【0099】
次に、n型GaN層の貼り合わせ面に、ショットキー電極として、厚さ50nmのTi層、厚さ100nmのAl層、厚さ20nmのTi層、及び厚さ200nmのAu層からなる複合層を形成し、800℃で30秒間加熱して合金化するとともに、ショットキー電極を第2緩衝膜として導電性SiC基板を貼り合わせた。
【0100】
さらに、サファイア基板を剥離後、GaN層上に、オーミック電極として、直径200μm、厚さ300nmの円形Au層を形成した。
(実施例66〜70)
【0101】
実施例66では、直径5インチのGaN基板及び直径5インチの導電性SiC基板を用いたこと以外は実施例3と同様にして、実験を行った。実施例67〜69では、GaN基板の貼り合わせ面をそれぞれ(10−10)面、(11−20)面、(20−21)面としたこと以外は実施例3と同様にして、実験を行った。実施例70では、GaN基板とサファイア基板とを貼り合わせる前に、GaN基板の貼り合わせ面とサファイア基板の貼り合わせ面にArイオンを照射することによって、不純物を除去し、活性化したこと以外は実施例3と同様にして、実験を行った。
【0102】
第1緩衝膜が成膜される基板の材料、第1緩衝膜の材料、成膜方法、厚み、表面粗さRrms、エピタキシャル層の状態、第1支持基板の剥離に要した時間、GaN基板のサイズの結果を図20に示す。
(実施例71〜76)
【0103】
第2支持基板として、導電性SiC基板に代えて図21に示される材料からなる基板を用いたこと以外は実施例3と同様にして、実験を行った。第1緩衝膜が成膜される基板の材料、第1緩衝膜の材料、成膜方法、厚み、表面粗さRrms、エピタキシャル層の状態、第1支持基板の剥離に要した時間、第2支持基板の材料の結果を図21に示す。実施例71〜76では、実施例3と同等の結果が得られた。
【符号の説明】
【0104】
10…第1支持基板、10a…貼り合わせ面、12…第1緩衝膜、12a…表面、14…GaN基板(III族窒化物半導体基板)、14a…GaN層(III族窒化物半導体層)、14s…貼り合わせ面、16…エピタキシャル層、18…第2緩衝膜、20…第2支持基板、100…貼り合わせ基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族窒化物半導体基板及び第1支持基板のうち少なくとも一方上に、表面粗さRrmsが0.1〜10000nmの表面を有する第1緩衝膜を形成する工程と、
前記第1緩衝膜を介して、前記第1支持基板に前記III族窒化物半導体基板を貼り合わせる工程と、
を含む、貼り合わせ基板の製造方法。
【請求項2】
前記III族窒化物半導体基板を貼り合わせる工程の後、前記III族窒化物半導体基板の一部を除去することによって、前記第1支持基板上にIII族窒化物半導体層を形成する工程と、
前記III族窒化物半導体層上にエピタキシャル層を形成する工程と、
前記エピタキシャル層に、前記第1支持基板とは異なる第2支持基板を貼り合わせる工程と、
前記第1緩衝膜を除去することによって、前記第1支持基板を前記第2支持基板から分離する工程と、
を更に含む、請求項1に記載の貼り合わせ基板の製造方法。
【請求項3】
前記第2支持基板が導電性を有する、請求項2に記載の貼り合わせ基板の製造方法。
【請求項4】
前記エピタキシャル層を形成する工程と前記第2支持基板を貼り合わせる工程との間に、前記エピタキシャル層上に、前記第1緩衝膜とは異なる第2緩衝膜を形成する工程を更に含む、請求項2又は3に記載の貼り合わせ基板の製造方法。
【請求項5】
前記第1支持基板の貼り合わせ面、前記III族窒化物半導体基板の貼り合わせ面、及び前記第1緩衝膜の前記表面のうち少なくとも1つに凹部が形成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の貼り合わせ基板の製造方法。
【請求項6】
前記III族窒化物半導体基板の貼り合わせ面における表面粗さRrmsが0.1〜10nmであり、前記III族窒化物半導体基板の前記貼り合わせ面を前記第1支持基板に貼り合わせる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の貼り合わせ基板の製造方法。
【請求項7】
前記第1支持基板の貼り合わせ面における表面粗さRrmsが0.1〜10nmであり
、前記第1支持基板の前記貼り合わせ面を前記III族窒化物半導体基板に貼り合わせる、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の貼り合わせ基板の製造方法。
【請求項8】
前記III族窒化物半導体基板を貼り合わせる工程では、前記III族窒化物半導体基板と前記第1支持基板とを対向させた状態で、前記III族窒化物半導体基板の反り量と前記第1支持基板の反り量との差の絶対値が70μm以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の貼り合わせ基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−232625(P2010−232625A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150218(P2009−150218)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】