説明

MOSトランジスタおよびその製造方法、半導体集積回路装置

【課題】MOSトランジスタのチャネル領域に、基板上に形成した応力膜からより効率的に応力を印加する半導体装置の構造及びその製造方法を提供する。
【解決手段】MOSトランジスタは、n型またはp型のソース・ドレイン領域21e〜hと、素子分離領域21Iからチャネル領域に向かって延在し、ソース・ドレイン領域21e〜hを覆って形成された、引張応力、圧縮応力のいずれかである応力膜27A、27Bを備える。応力膜27A,27Bは、ゲート電極23A,23Bの側壁面に沿って、ただし側壁面からは隙間32A〜Dを介して形成される。ソース・ドレイン領域21e〜hがn型である場合、応力膜の応力は引張応力であり、ソース・ドレイン領域21e〜hがp型である場合、応力膜の応力は圧縮応力である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細化技術の進歩に伴い、今日では50nmを切るゲート長を有する超微細化・超高速半導体装置が可能になっている。
【0003】
このような超微細化・超高速トランジスタでは、ゲート電極直下のチャネル領域の面積が、従来の半導体装置に比較して非常に小さく、このためチャネル領域を走行する電子あるいはホールの移動度は、このようなチャネル領域に印加された応力により大きな影響を受ける。そこで、このようなチャネル領域に印加される応力を最適化して、半導体装置の動作速度を向上させる試みが数多くなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−123439号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Mayuzumi, S., et al., IEEE Trans ElectronDevices Vol.56, No.4, pp620-626, 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、nチャネルMOSトランジスタの動作速度を向上させるため、nチャネルMOSトランジスタの素子領域に、ゲート電極を含むように引張応力膜を形成し、ゲート電極直下のチャネル領域において電子移動度を向上させる構成が知られている。
【0007】
またpチャネルMOSトランジスタの場合、pチャネルMOSトランジスタの素子領域に、ゲート電極を含むように圧縮応力膜を形成し、ゲート電極直下のチャネル領域においてホール移動度を向上させる構成が知られている。
【0008】
上記nチャネルMOSトランジスタの場合には、このような引張応力膜がゲート電極をシリコン基板中のチャネル領域に押圧し、これにより前記チャネル領域に、あたかもゲート長方向に引張応力が作用したかのような歪みが誘起される。このような歪みの結果、前記チャネル領域においてシリコン結晶格子の対称性が変調され、電子の移動度、従ってpチャネルMOSトランジスタの動作速度が増大する。
【0009】
また上記pチャネルMOSトランジスタの場合には、ゲート電極に形成された圧縮応力膜がゲート電極をシリコン基板中のチャネル領域から引き離そうとする向きに作用し、これにより前記チャネル領域に、あたかもゲート長方向に圧縮応力が作用したかのような歪みが誘起される。このような歪みの結果、前記チャネル領域においてシリコン結晶格子の対称性が変調され、ホールの移動度、従ってpチャネルMOSトランジスタの動作速度が増大する。
【0010】
一方、このような従来の構成のnチャネルMOSトランジスタあるいはpチャネルMOSトランジスタでは、それぞれのゲート電極に形成される応力膜はチャネル領域周辺においてシリコン基板上を延在するため、このようなチャネル領域周辺ではシリコン基板表面に、例えば前記nチャネルMOSトランジスタの場合、シリコン結晶格子をチャネル長方向に引っ張って歪ませようとする引張応力が直接に作用する。同様に前記pチャネルMOSトランジスタの場合、シリコン結晶格子をチャネル長方向に圧縮して歪ませようとする圧縮応力が直接に作用する。
【0011】
ところが従来の構成のnチャネルMOSトランジスタあるいはpチャネルMOSトランジスタでは、このような引張応力膜あるいは圧縮応力膜は、それぞれのゲート電極の側壁面に、ゲート側壁絶縁膜を介してではあるが、固着しており、このような引張応力あるいは圧縮応力を蓄積していても、これをシリコン基板に伝達することができなかった。
【0012】
以下に説明する実施形態では、nチャネルMOSトランジスタあるいはpチャネルMOSトランジスタにおいて、ゲート電極に形成された引張応力膜あるいは圧縮応力膜に蓄積された応力を直接にシリコン基板に伝達でき、nチャネルMOSトランジスタにおいてはそのチャネル領域に2軸性引張応力を、またpチャネルMOSトランジスタにおいてはそのチャネル領域に2軸性圧縮応力を、効率的に伝達できる半導体装置の構造、およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一の側面によれば一実施形態によるMOSトランジスタは、素子分離領域により素子領域が画定されたシリコン基板と、前記素子領域内において、前記シリコン基板上にゲート絶縁膜を介して形成され、前記シリコン基板中にチャネル領域を形成するゲート電極と、前記素子領域内において前記シリコン基板中に、前記チャネル領域の第1の側および第2の側にそれぞれ形成されたn型、p型のいずれか一方である第1の導電型を有するソースエクステンション領域、および前記第1の導電型を有するドレインエクステンション領域と、前記素子領域内において前記シリコン基板中に、前記チャネル領域の前記第1の側に、前記チャネル領域から離間して前記ソースエクステンション領域の一部と重畳して形成された前記第1の導電型のソース領域と、前記素子領域内において前記シリコン基板中に、前記チャネル領域の前記第2の側に、前記チャネル領域から離間してドレインエクステンション領域の一部と重畳して形成された第1の導電型のドレイン領域と、前記素子領域内において前記シリコン基板上に、前記チャネル領域の前記第1の側において、前記素子分離領域から前記チャネル領域に向かって延在し、前記ソース領域を覆って形成された、引張応力、圧縮応力のいずれかである第1の応力を蓄積した第1の応力膜と、前記素子領域内において前記シリコン基板上に、前記チャネル領域の前記第2の側において、前記素子分離領域から前記チャネル領域に向かって延在し、前記ドレイン領域を覆って形成された、前記第1の応力を蓄積した第2の応力膜と、を備え、前記第1の応力膜は、前記チャネル領域に近い第1の先端部に、前記ゲート電極のうち、前記チャネル領域の前記第1の側に位置する第1の側壁面に沿って、ただし前記第1の側壁面からは離間して、前記シリコン基板表面から上方に向かって延在する第1の延在部を有し、前記第2の応力膜は、前記チャネル領域に近い第2の先端部に、前記ゲート電極のうち、前記チャネル領域の前記第2の側に位置する第2の側壁面に沿って、ただし前記第2の側壁面からは離間して、前記シリコン基板表面から上方に向かって延在する第2の延在部を有し、前記第1の導電型がn型である場合、前記第1の応力は引張応力であり、前記第1の導電型がp型である場合、前記第1の応力は圧縮応力である。
【0014】
第2の側面によれば他の実施形態による半導体集積回路装置は、素子分離領域により第1および第2の素子領域が画定されたシリコン基板と、前記第1の素子領域内において、前記シリコン基板上に第1のゲート絶縁膜を介して、前記シリコン基板中の第1のチャネル領域に対応して形成された第1のゲート電極と、前記第1の素子領域内において前記シリコン基板中に、前記第1のチャネル領域の第1の側および第2の側にそれぞれ形成されたn型のソースエクステンション領域およびn型のドレインエクステンション領域と、前記第1の素子領域内において前記シリコン基板中に、前記第1のチャネル領域の前記第1の側に、前記第1のチャネル領域から離間して前記n型のソースエクステンション領域の一部と重畳して形成されたn型のソース領域と、前記第1の素子領域内において前記シリコン基板中に、前記第1のチャネル領域の前記第2の側において、前記第1のチャネル領域から離間して前記n型のドレインエクステンション領域の一部と重畳して形成されたn型のドレイン領域と、前記第1の素子領域内において前記シリコン基板上に、前記第1のチャネル領域の前記第1の側において、前記第1の素子分離領域から前記第1のチャネル領域に向かって、前記n型のソース領域を覆って形成された第1の引張応力膜と、前記第1の素子領域内において前記シリコン基板上に、前記第1のチャネル領域の前記第2の側において、前記第1の素子分離領域から前記第1のチャネル領域に向かって、前記n型のドレイン領域を覆って形成された第2の引張応力膜と、を備え、前記第1の引張応力膜は、前記第1のチャネル領域に近い第1の先端部に、前記ゲート電極のうち、前記チャネル領域の前記第1の側の第1の側壁面に沿って、ただし前記第1の側壁面からは離間して、前記シリコン基板表面から上方に向かって延在する第1の延在部を有し、前記第2の引張応力膜は、前記チャネル領域に近い第2の先端部に、前記ゲート電極のうち、前記チャネル領域の前記第2の側の第2の側壁面に沿って、ただし前記第2の側壁面からは離間して、前記シリコン基板表面から上方に向かって延在する第2の延在部を有するnチャネルMOSトランジスタと、前記第2の素子領域内において、前記シリコン基板上に第2のゲート絶縁膜を介して、前記シリコン基板中の第2のチャネル領域に対応して形成された第2のゲート電極と、前記第2の素子領域内において前記シリコン基板中に、前記第2のチャネル領域の第1の側および第2の側にそれぞれ形成されたp型のソースエクステンション領域およびp型のドレインエクステンション領域と、前記第2の素子領域内において前記シリコン基板中に、前記第2のチャネル領域の前記第1の側に、前記第2のチャネル領域から離間して前記p型ソースエクステンション領域の一部と重畳して形成されたp型のソース領域と、前記第2の素子領域内において前記シリコン基板中に、前記第2のチャネル領域の前記第2の側において、前記第2のチャネル領域から離間して前記p型ドレインエクステンション領域の一部と重畳して形成されたp型のドレイン領域と、前記第2の素子領域内において前記シリコン基板上に、前記第2のチャネル領域の前記第1の側において、前記第2の素子分離領域から前記第2のチャネル領域に向かって、前記p型のソース領域を覆って形成された第1の圧縮応力膜と、前記第2の素子領域内において前記シリコン基板上に、前記第2のチャネル領域の前記第2の側において、前記第2の素子分離領域から前記第2のチャネル領域に向かって、前記p型のドレイン領域を覆って形成された第2の圧縮応力膜と、を備え、前記第1の圧縮応力膜は、前記第2のチャネル領域に近い第3の先端部に、前記第2のゲート電極のうち、前記チャネル領域の前記第1の側の第3の側壁面に沿って、ただし前記第3の側壁面からは離間して、前記シリコン基板表面から上方に向かって延在する第3の延在部を有し、前記第2の圧縮応力膜は、前記第2のチャネル領域に近い第4の先端部に、前記第2のゲート電極のうち、前記チャネル領域の前記第2の側の第4の側壁面に沿って、ただし前記第4の側壁面からは離間して、前記シリコン基板表面から上方に向かって延在する第4の延在部を有するpチャネルMOSトランジスタと、
を備える。
【0015】
第3の側面によれば他の実施形態によるMOSトランジスタの製造方法は、素子分離領域により素子領域が画定されたシリコン基板上に、前記素子領域内において、ゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、前記素子領域内において前記シリコン基板中にn型またはp型である第1の導電型の不純物元素をイオン注入し、前記ゲート電極直下のチャネル領域の第1の側および第2の側に、それぞれ前記第1の導電型のソースエクステンション領域およびドレインエクステンション領域を形成する工程と、前記シリコン基板上、前記ゲート電極の、前記チャネル領域の第1の側に対応する第1の側壁面および前記第2の側に対応する第2の側壁面に、それぞれ第1および第2のオフセット側壁膜を形成する工程と、前記素子領域内において前記シリコン基板中に、前記ゲート電極および前記第1および第2のオフセット側壁膜をマスクに第1の導電型の不純物元素をイオン注入することにより、前記シリコン基板中、前記チャネル領域の前記第1の側において前記チャネル領域から見て前記第1のオフセット側壁膜の外側に、前記ソースエクステンション領域の一部と重畳して前記第1の導電型を有するソース領域を、また前記シリコン基板中、前記チャネル領域の前記第2の側において前記チャネル領域から見て前記第2のオフセット側壁膜の外側に、前記ドレインエクステンション領域の一部と重畳して、前記第1の導電型を有するドレイン領域を、それぞれ形成する工程と、前記シリコン基板上に、前記第1のオフセット側壁膜、前記ゲート電極および前記第2のオフセット側壁膜を覆って、引張応力または圧縮応力である第1の応力を蓄積した応力膜を形成する工程と、前記シリコン基板上に前記応力膜を覆って保護膜を形成する工程と、前記保護膜を化学機械研磨して、前記応力膜のうち、前記第1および第2のオフセット側壁膜の頂部、および前記ゲート電極の頂部を覆う部分を露出する工程と、前記応力膜の露出部分をエッチングにより除去することにより、前記応力膜から、前記チャネル領域の第1の側に位置し前記第1の応力を蓄積した第1の応力膜と、前記チャネル領域の第2の側に位置し、前記第1の応力膜から分離し、前記第1の応力を蓄積した第2の応力膜を形成し、前記第1および第2のオフセット側壁膜の頂部を露出する工程と、前記第1および第2のオフセット絶縁膜を、それぞれの頂部からエッチングにより除去し、前記ゲート電極の第1の側壁面と、前記第1の引張応力膜のうち前記シリコン基板から前記第1の側壁面に沿って上方に延在する第1の延在部との間、および前記ゲート電極の第2の側壁絶縁膜と、前記第2の引張応力膜のうち前記シリコン基板から前記第2の側壁面に沿って上方に延在する第2の延在部との間に、それぞれ第1および第2の空隙を形成する工程と、を含み、前記第1の導電型がn型である場合は前記第1の応力が引張応力であり、前記第1の導電型がp型である場合は前記第1の応力が圧縮応力である。
【発明の効果】
【0016】
第1〜第3の側面によれば、MOSトランジスタのチャネル領域に、基板表面に形成した応力膜により、効率よく強い応力を印加することが可能となり、MOSトランジスタの動作速度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態による素子構造を説明する断面図である。
【図2A】応力膜が引張応力膜である場合について、図1の素子構造をもとに行った応力解析の結果を示す図である。
【図2B】応力膜が引張応力膜である場合について、図1の素子構造をもとに行った応力解析の結果を示す図である。
【図2C】応力膜が引張応力膜である場合について、図1の素子構造をもとに行った応力解析の結果を示す図である。
【図3】図2A〜図2Cの結果をまとめて示すグラフ図である。
【図4A】応力膜が圧縮応力膜である場合について、図1の素子構造をもとに行った応力解析の結果を示す図である。
【図4B】応力膜が圧縮応力膜である場合について、図1の素子構造をもとに行った応力解析の結果を示す図である。
【図4C】応力膜が圧縮応力膜である場合について、図1の素子構造をもとに行った応力解析の結果を示す図である。
【図5】図4A〜図4Cの結果をまとめて示すグラフ図である。
【図6A】第2の実施形態によるCMOS素子の製造方法を示す図(その1)である。
【図6B】第2の実施形態によるCMOS素子の製造方法を示す図(その2)である。
【図6C】第2の実施形態によるCMOS素子の製造方法を示す図(その3)である。
【図6D】第2の実施形態によるCMOS素子の製造方法を示す図(その4)である。
【図6E】第2の実施形態によるCMOS素子の製造方法を示す図(その5)である。
【図6F】第2の実施形態によるCMOS素子の製造方法を示す図(その6)である。
【図6G】第2の実施形態によるCMOS素子の製造方法を示す図(その7)である。
【図6H】第2の実施形態によるCMOS素子の製造方法を示す図(その8)である。
【図6I】第2の実施形態によるCMOS素子の製造方法を示す図(その9)である。
【図6J】第2の実施形態によるCMOS素子の製造方法を示す図(その10)である。
【図6K】第2の実施形態によるCMOS素子の製造方法を示す図(その11)である。
【図7A】隙間に残留した残渣の影響を検討したグラフである。
【図7B】図7Aの検討に使われたモデル構造を示す図である。
【図8】第2の実施形態の一変形例を示す図である。
【図9】第2の実施形態の別の変形例を示す図である。
【図10】第2の実施形態のさらに別の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態による応力解析で使われたモデル構造を説明する断面図である。
【0019】
図1を参照するに、シリコン基板1上には厚さが1.1〜1.2nmのゲート絶縁膜2を介してゲート長が30〜35nmのポリシリコンゲート電極3が60〜120nmの高さに形成されており、前記ポリシリコンゲート絶縁膜の第1の側壁面およびこれに対向する第2の側壁面には、厚さが30〜60nmのシリコン酸化膜よりなる第1のオフセット側壁絶縁膜3Aおよび第2のオフセット側壁絶縁膜3Bが、それぞれ前記基板1の表面から前記ポリシリコンゲート電極3の先端ないし頂部まで形成されている。
【0020】
さらに前記シリコン基板上にはSiN膜よりなる応力膜4が、前記第1のオフセット側壁絶縁膜3Aの左側から前記ゲート電極4を超えて、前記第2のオフセット側壁絶縁膜3Bの右側まで、連続して覆うように形成されている。特に前記応力膜4のうち応力膜部分4Aは、前記オフセット側壁絶縁膜3Aの上端、ポリシリコンゲート電極3の状態、およびオフセット側壁絶縁膜3Bの上端を連続して覆っている。前記応力膜は、自身が収縮しようとするときは、引張応力σTを蓄積し、自身が膨張しようとするときは圧縮応力σCを蓄積する。
【0021】
図2Aは、前記応力膜4は引張応力膜、すなわち自身は収縮しようとする膜である場合に、このような構造の各部位において、チャネル方向に作用する応力Sxx(図1参照)の分布を求めたシミュレーション結果を示す。以下に説明する図2B,図2Cも同様である。ただし図2A〜図2Cのシミュレーションは市販の応力解析ソフトウェアであるTSUPREM4を使い、前記応力膜4に1.6〜2.0GPaの引張応力が蓄積されている場合について実行している。図2A中、引張応力Sxxが小さい領域は暗く、引張応力Sxxが大きい領域は明るく図示されている。図2Aのシミュレーションでは圧縮応力が非常に大きい領域も暗く表示されるが、図2A中にはそのような領域は存在しない。実際の応力値についての検討は、図3において行う。
【0022】
図2Aを参照するに、前記引張応力膜4の作用によりゲート電極3がシリコン基板1に押圧され、その結果、ゲート電極3直下のチャネル領域において応力Sxxが増大しているのがわかる。また前記応力膜4は、前記オフセット側壁絶縁膜3Aあるいは3Bのそれぞれ外側において、シリコン基板1をチャネル領域から遠ざけるように引っ張るため、この効果による応力Sxxの寄与が期待されるが、以下図2Bに説明するようにこの効果はほとんど得られていない。
【0023】
図2Bのシミュレーションでは、前記応力膜4のうち、前記オフセット側壁絶縁膜3Aの上部からゲート電極3上をオフセット絶縁膜3Bの上部まで延在する応力膜部分4Aを除去した状態において、構造の各部に印加される応力Sxxについて求めている。
【0024】
図2Bの状態では前記ポリシリコンゲート電極3およびオフセット側壁絶縁膜3A,3Bの頂部に作用してこれをシリコン基板1に押圧する力はほとんど作用しておらず、前記チャネル領域に作用する応力Sxxは主として前記応力膜4のうち、消失した前記応力膜部分4Aの外側の部分が前記オフセット側壁絶縁膜3Aおよび3Bを、それぞれ左方および右方に直接的に引っ張る効果によって生じると考えられ、実際に図2Bの状態では、前記オフセット側壁絶縁膜3Aおよび3B、および前記ポリシリコンゲート電極3中における応力Sxxは図2Bの状態に比べて増大しているが、チャネル領域に印加されている応力には、先の図2Aの場合と比べてほとんど違いが生じていない。
【0025】
この原因について検討したところ、図2Bの状態では前記応力膜4がオフセット側壁絶縁膜3Aおよび3Bのそれぞれの外側面に作用してこれを左右に引っ張ってはいるが、オフセット絶縁膜3Aおよび3B自体が前記ゲート電極3に固着しているため、オフセット絶縁膜3A,3Bは変位することができず、その結果、シリコン基板1中のチャネル領域に印加される応力に実質的な変化が生じないのであることが予測された。
【0026】
そこで、この予測を確認するため、図2Cにおいて、前記オフセット側壁絶縁膜3Aおよび3Bを除去してシミュレーションを同様にして行った。
【0027】
図2Cを参照するに、前記チャネル領域において非常に大きな応力分布の変化が生じており、引張応力Sxxが格段に増大していることが確認された。
【0028】
図3は、前記図1のモデル構造において、前記シリコン基板1の表面に誘起される引張応力Sxxの分布を、図2Aの状態、図2Bの状態、図2Cの状態について示すグラフである。ただし図中、横軸はチャネル中央を基点0.0とした、ゲート長方向への距離を1/100ミクロン単位で表し、縦軸は引張応力Sxxの大きさを、MPa×1010単位で表す。縦軸下端が無応力状態で、上にいくにつれて引張応力Sxxが増大する。
【0029】
図3を参照するに、図2Aの状態がライン1で、図2Bの状態がライン2で、図2Cの状態がライン3で示されているが、図2Cの状態ではチャネル領域における引張応力Sxxが、図2Bあるいは図2Cの状態の二倍近くまで増加しているのがわかる。
【0030】
さらに図3のグラフでは、チャネル中央からゲート長方向に約0.04μm離れた場所で引張応力Sxxが最大になっているが、この位置はオフセット側壁絶縁膜の外端位置に対応しており、特に図2Cの状態においてこの位置における引張応力Sxxが図2Aや図2Bの状態と比べて3倍近く増大しているのは、応力膜4が形成された後でオフセット側壁絶縁膜3A,3Bが除去されたことで、応力膜が前記外端位置より外側において変位可能になり、シリコン基板1を左右に引っ張っているからに他ならない。
【0031】
同じ図1のモデル構造において、前記応力膜4が自身は膨張しようとする圧縮応力を蓄積した場合にも、同様な傾向が見られる。
【0032】
図4Aは、前記応力膜4は引張応力膜、すなわち自身は収縮しようとする膜である場合に、このような構造の各部位において、チャネル方向に作用する圧縮応力−Sxx(図1参照)の分布を求めたシミュレーション結果を示す。以下に説明する図4B,図4Cも同様である。図4A〜図4Cのシミュレーションも市販の応力解析ソフトウェアであるTSUPREM4を使い、前記応力膜4に2.5〜3.5GPaの圧縮応力が蓄積されている場合について実行している。図4A中、圧縮応力−Sxxが小さい領域は暗く、圧縮応力−Sxxが大きい領域は明るく図示されている。図4Aのシミュレーションでは引張応力Sxxが非常に大きい領域も暗く表示されるが、図4A中にはそのような領域は存在しない。実際の応力値についての検討は、図5において行う。
【0033】
図4Aを参照するに、前記圧縮応力膜4の作用によりゲート電極3がシリコン基板1から引き離されるように付勢され、その結果、ゲート電極3直下のチャネル領域において圧縮応力−Sxxがやや増大しているのがわかる。また前記応力膜4は、前記オフセット側壁絶縁膜3Aあるいは3Bのそれぞれ外側において、シリコン基板1をチャネル領域に向かって押すため、この効果による圧縮応力−Sxxの寄与が期待されるが、以下図4Bに説明するようにこの効果はほとんど得られていない。
【0034】
図4Bのシミュレーションでは、前記応力膜4のうち、前記オフセット側壁絶縁膜3Aの上部からゲート電極3上をオフセット絶縁膜3Bの上部まで延在する応力膜部分4Aを除去した状態において、構造の各部に印加される圧縮応力−Sxxについて求めている。
【0035】
図4Bの状態では前記ポリシリコンゲート電極3およびオフセット側壁絶縁膜3A,3Bの頂部に作用してこれをシリコン基板1から引き離すように作用する力はほとんど作用しておらず、前記チャネル領域に作用する引張応力−Sxxは主として前記応力膜4のうち、消失した前記応力膜部分4Aの外側の部分が前記オフセット側壁絶縁膜3Aおよび3Bを、それぞれ右方および左方に直接的に押す効果によって生じると考えられ、実際に図4Bの状態では、前記オフセット側壁絶縁膜3Aおよび3B、および前記ポリシリコンゲート電極3中における圧縮応力−Sxxは図4Aの状態に比べて増大しているが、チャネル領域に印加されている応力には、先の図4Aの場合と比べてほとんど違いが生じていない。
【0036】
この原因についても、図4Bの状態では前記応力膜4がオフセット側壁絶縁膜3Aおよび3Bのそれぞれの外側面に作用してこれを左右から押してはいるが、オフセット絶縁膜3Aおよび3B自体が前記ゲート電極3に固着しているため、オフセット絶縁膜3A,3Bは変位することができず、その結果、シリコン基板1中のチャネル領域に印加される応力に実質的な変化が生じないのであると考えられる。
【0037】
事実、図4Cにおいて、前記オフセット側壁絶縁膜3Aおよび3Bを除去してシミュレーションを同様にして行ったところ、前記チャネル領域において非常に大きな応力分布の変化が生じており、圧縮応力−Sxxが格段に増大していることが確認された。
【0038】
図5は、前記図1のモデル構造において、前記シリコン基板1の表面に誘起される圧縮応力Sxxの分布を、図4Aの状態、図4Bの状態、図4Cの状態について示すグラフである。ただし図中、横軸はチャネル中央を基点0.0とした、ゲート長方向への距離を1/100ミクロン単位で表し、縦軸は圧縮応力−Sxxの大きさを、MPa×1010単位で表す。縦軸下端が無応力状態で、上にいくにつれて圧縮応力−Sxxが増大する。
【0039】
図5を参照するに、図4Aの状態がライン1で、図4Bの状態がライン2で、図4Cの状態がライン3で示されているが、図4Cの状態ではチャネル領域における圧縮応力Sxxが、図4Bあるいは図4Cの状態の二倍近くまで増加しているのがわかる。
【0040】
さらに図5のグラフでは、チャネル中央からゲート長方向に約0.04μm離れた場所で応力Sxxが最大になっているが、この位置はオフセット側壁絶縁膜の外端位置に対応しており、特に図4Cの状態においてこの位置における圧縮応力−Sxxが図4Aや図4Bの状態と比べて3倍近く増大しているのは、応力膜4が形成された後でオフセット側壁絶縁膜3A,3Bが除去されたことで、応力膜4が前記外端位置より外側において変位可能になり、シリコン基板1を左右からチャネル方向に押しているからに他ならない。
【0041】
(第2の実施形態)
そこで以下の第2の実施形態において、上記の知見をもとにした、CMOS素子の製造方法を説明する。
【0042】
図6Aを参照するに、例えばp型のシリコン基板21上にはSTI型の素子分離領域21Iにより素子領域21A,21Bが形成されており、前記素子領域21Aにはp型ウェル21Pが、素子領域21Bにはn型ウェル21Nが形成されている。
【0043】
また前記素子領域21Aではシリコン基板21上に厚さが例えば1.0〜1.2nmの熱酸化膜あるいはプラズマ酸化膜、さらにはプラズマ窒化膜よりなるゲート絶縁膜22Aが形成され、前記ゲート絶縁膜22A上には、例えばゲート長が30〜35nmのポリシリコンゲート電極23Aが、例えば60nm〜120nmの高さに形成されている。
【0044】
同様に前記素子領域21Bではシリコン基板21上に同様なゲート絶縁膜22Bが形成され、前記ゲート絶縁膜22B上には、例えばゲート長が30〜35nmのポリシリコンゲート電極23Bが、同様な高さに形成されている。
【0045】
さらに前記シリコン基板21中には、前記素子領域21Aにおいて前記ポリシリコンゲート電極23Aをマスクとしたイオン注入工程により、AsあるいはPなどのn型不純物元素がイオン注入され、前記ゲート電極23Aの前記第1の側にn型のソースエクステンション領域21aが、また前記ゲート電極23Aの前記第2の側にn型のドレインエクステンション領域21bが形成されている。
【0046】
同様に前記シリコン基板21中には、前記素子領域21Bにおいて前記ポリシリコンゲート電極23Bをマスクとしたイオン注入工程により、Bなどのp型不純物元素がイオン注入され、前記ゲート電極23Bの前記第1の側にp型のソースエクステンション領域21cが、また前記ゲート電極23Bの前記第2の側にp型のドレインエクステンション領域21dが形成されている。なお、前記素子領域21A,21Bへのイオン注入は、どちらを先に行ってもよい。一方の素子領域へのイオン注入の間、他方の素子領域はレジストマスクにより覆っておく。
【0047】
さらに前記ゲート電極23Aの第1の側の側壁面および対向する第2の側の側壁面には、それぞれ第1のオフセット側壁絶縁膜23WA1および第2のオフセット側壁絶縁膜23WA2が、例えばCVD酸化膜により、前記ゲート電極23Aの基部から頂部まで、典型的には2nm〜3nm程度の厚さで形成されている。同様に前記ゲート電極23Bの第1の側の側壁面および対向する第2の側の側壁面には、それぞれ第1のオフセット側壁絶縁膜23WB1および第2のオフセット側壁絶縁膜23WB2が、例えば前記シリコン基板21上に形成されたCVD酸化膜のエッチバックにより、前記ゲート電極23Aの基部から頂部近傍まで形成されている。
【0048】
次に図6Bに示す工程において前記素子領域21AにAsやPなどのn型不純物元素を、前記ゲ―ト電極23Aおよびオフセット側壁絶縁膜23AW1,23AW2をマスクにイオン注入し、前記素子領域21A中、前記ゲート電極23Aに対し前記第1の側および前記第2の側において、前記ゲート電極23A直下のチャネル領域から見て前記オフセット側壁絶縁膜23AW1および23AW2のそれぞれの外側に、n+型のソース領域23eおよび23fを形成する。なおこの工程において前記ポリシリコンゲート電極23Aもn+型にドープされる。
【0049】
同様に図6Bに示す工程において前記素子領域21BにBなどのp型不純物元素を、前記ゲ―ト電極23Bおよびオフセット側壁絶縁膜23BW1,23BW2をマスクにイオン注入し、前記素子領域21B中、前記ゲート電極23Bに対し前記第1の側および前記第2の側において、前記ゲート電極23B直下のチャネル領域から見て前記オフセット側壁絶縁膜23BW1および23BW2のそれぞれの外側に、p+型のソース領域23gおよび23hを形成する。またこの工程において前記ポリシリコンゲート電極23Bもp+型にドープされる。
【0050】
なお図6Bの工程においても、前記素子領域21A,21Bへのイオン注入は、どちらを先に行ってもよい。一方の素子領域へのイオン注入の間、他方の素子領域はレジストマスクにより覆っておく。
【0051】
次に図6Cの工程においてサリサイド法により、前記図6Bの構造の露出シリコン面上にシリサイドを形成し、これにより、前記ポリシリコンゲート電極23Aおよび23Bの上面、前記ソース領域21eおよびドレイン領域21f、および前記ソース領域21gおよび21hに、シリサイド膜24GA,24GB,24SA,24SD,24SB,24SDをそれぞれ形成する。
【0052】
次に図6Dの工程において、前記シリコン基板21上に素子領域21A,21Bにわたり、シリコンナイトライド(SiN)膜27Aを、前記素子分離領域21Iからソース領域21eを覆うシリサイド膜24SA,オフセット側壁絶縁膜23WA1,ゲート電極23Aを覆うシリサイド膜23GA,オフセット側壁絶縁膜23WA2、およびドレイン領域21fを覆うシリサイド膜24DAを覆って、また前記素子分離領域21Iからソース領域21gを覆うシリサイド膜24SB,オフセット側壁絶縁膜23WB1,ゲート電極23Bを覆うシリサイド膜23GB,オフセット側壁絶縁膜23WB2、およびドレイン領域21hを覆うシリサイド膜24DBを覆って、例えば70nm〜80nmの厚さに形成し、さらに前記シリサイド膜27Aのうち、前記素子領域21Bを覆う部分をエッチングにより除去する。これにより、前記素子領域21Aにのみ、前記SiN膜27Aが残される。
【0053】
さらに図6Dの工程では、前記シリコン基板21上に素子領域21A,21Bにわたり、シリコンナイトライド(SiN)膜27Aを、前記素子分離領域21Iからソース領域21eを覆うシリサイド膜24SA,オフセット側壁絶縁膜23WA1,ゲート電極23Aを覆うシリサイド膜23GA,オフセット側壁絶縁膜23WA2、およびドレイン領域21fを覆うシリサイド膜24DAを覆って、また前記素子分離領域21Iからソース領域21gを覆うシリサイド膜24SB,オフセット側壁絶縁膜23WB1,ゲート電極23Bを覆うシリサイド膜23GB,オフセット側壁絶縁膜23WB2、およびドレイン領域21hを覆うシリサイド膜24DBを覆って、例えば70nm〜80nmの厚さに形成し、さらに前記シリサイド膜27Aのうち、前記素子領域21Aを覆う部分をエッチングにより除去する。これにより、前記素子領域21Bにのみ、前記SiN膜27Bが残される。
【0054】
前記SiN膜27Aの形成はプラズマCVD法により、原料ガスとしてジクロロシラン,シラン(SiH4),ジシラン(Si26)およびトリシラン(Si38)を、5〜50sccmの流量で、500sccm〜10000sccmの流量のアンモニア(NH3)ガスおよび500〜10000sccmの窒素ガスあるいはArガスと共に供給し、0.1〜400Torrの圧力下、400〜450℃の温度で、100W〜300Wの高周波パワーを印加することにより実行され、このようにして形成されたSiN膜27Aは、1.5〜2.0GPa程度の引張応力を蓄積する。
【0055】
一方SiN膜27Bの形成は同じくプラズマCVD法により、原料ガスとしてシランを100〜1000sccmの流量で、500sccm〜10000sccmの流量のアンモニア(NH3)ガスおよび500〜10000sccmの窒素ガスあるいはArガスと共に供給し、0.1〜400Torrの圧力下、400〜450℃の温度で、100W〜1000Wの高周波パワーを印加することにより実行され、このようにして形成されたSiN膜27Bは、2.5〜3.5GPa程度の圧縮応力を蓄積する。
【0056】
なお、上記SiN膜27AおよびSiN膜27Bを形成する順序は、逆にしてもかまわない。
【0057】
次に図6Eの工程において前記図6Dの構造上に例えば高密度プラズマ(HDP)酸化膜などの絶縁膜よりなる保護膜28を、前記シリコン基板21の全面に、従って前記素子領域Aおよび素子領域Bを覆って、連続的に形成する。例えば前記保護膜28の形成は、シランガスを50〜500sccmの流量で、200〜500sccmの流量の酸素ガスと1000sccmの流量のArガスとともに供給し、300℃〜400℃の温度において2000W〜5000Wの高密度プラズマパワーを供給することにより形成される。
【0058】
次に図6Fの工程において、このようにして形成された保護膜28およびその下のSiN膜27Aおよび27Bに対し化学機械研磨を行い、前記ゲート電極23A上のシリサイド層24GAおよび24GBを露出させる。
【0059】
次に図6Gの工程において前記6Fの工程において前記シリサイド層24GAおよび24GBの周囲で露出されていたSiN膜27A,27Bを、CHF3/Ar/O2混合ガスを使った反応性イオンエッチングにより除去し、オフセット側壁絶縁膜23WA1,23WA2,23WB1および23WB2の上端部を露出させる。またこの工程により前記SiN膜27Aはパターニングされ、前記素子領域21Aにおいて前記シリコン基板21上を左側の素子分離領域から前記ゲート電極23Aに向かって右方に延在する部分の先端に、前記オフセット側壁絶縁膜23WA1に沿って上方に延在する第1の延在部31Aが形成される。また前記素子領域21Aにおいて前記シリコン基板21上を右側の素子分離領域から前記ゲート電極23Aに向かって左方に延在する部分の先端に、前記オフセット側壁絶縁膜23WA2に沿って上方に延在する第2の延在部31Bが形成される。
【0060】
同様にこの工程により前記SiN膜27Bもパターニングされ、前記素子領域21Bにおいて前記シリコン基板21上を左側の素子分離領域から前記ゲート電極23Bに向かって右方に延在する部分の先端に、前記オフセット側壁絶縁膜23WB1に沿って上方に延在する第1の延在部31Cが形成される。また前記素子領域21Bにおいて前記シリコン基板21上を右側の素子分離領域から前記ゲート電極23Bに向かって左方に延在する部分の先端に、前記オフセット側壁絶縁膜23WB2に沿って上方に延在する第2の延在部31Dが形成される。
【0061】
さらに図6Hの工程において、前記オフセット側壁絶縁膜23WA1,23WA2,23WB1および23WB2を、それぞれの上端部からあるいはC48/Ar/O2混合ガスを使った反応性イオンエッチングにより除去し、前記ゲート電極23Aの前記第1の側の側壁面と前記延在部31Aの間、前記ゲート電極23Aの前記第2の側の側壁面と前記延在部31Bの間、前記ゲート電極23Bの前記第1の側の側壁面と前記延在部31Cの間、および前記ゲート電極23Bの前記第2の側の側壁面と前記延在部31Dの間に、それぞれ隙間32A,32B,32C,32Dを形成する。この工程により、先に図1〜5で説明したように前記ゲート電極23Aおよびゲート電極23B直下のチャネル領域に、それぞれ引張応力Sxxおよび圧縮応力−Sxxが印加される。
【0062】
なお図6Hのウェットエッチング工程は、前記オフセット側壁絶縁膜23WA1,23WA2,23WB1および23WB2を完全に除去することが望ましいが、前記ゲート電極23Aとこれに対応する延在部31A,31Bの間の距離、あるいは前記ゲート電極23Aとこれに対応する延在部31A,31Bの間の距離は、前記オフセット側壁絶縁膜23WA1,23WA2,23WB1および23WB2の厚さがせいぜい2nm〜3nmであるのに対応して、2nm〜3nm程度しかなく、下方のシリコン基板21表面に多少の残渣28Xが残ることもある。この残渣の影響については、後ほど、図7Aを参照して検討する。
【0063】
図6Hの工程では、前記保護膜28も前記エッチングの結果、膜厚を減じているのがわかる。
【0064】
次に図6Iの工程において前記図6Iの構造上に層間絶縁膜29を高密度プラズマCVD法により、例えばシランガスを50sccm〜500sccmの流量で、酸素ガスを200sccm〜500sccmの流量で、Arガスを1000sccmの流量で供給し、300〜450℃の温度において2000W〜5000Wの高密度プラズマパワーを供給することにより、形成し、さらにこのようにして形成した層間絶縁膜29を化学機械研磨により平坦化する。層間絶縁膜29を高密度プラズマCVD法により形成することにより、前記隙間32A〜32Cが実質的に埋まることはない。このようにして形成された層間絶縁膜29は、実質的な応力を蓄積していない、無応力膜である。
【0065】
さらに図6Jの工程で前記層間絶縁膜29中に、前記ソース領域32eを覆うシリサイド層24SA,前記ドレイン領域32fを覆うシリサイド層24DA,前記ソース領域32gを覆うシリサイド層24SB,前記ドレイン領域32hを覆うシリサイド層24DBを露出するビアホール29A,29B,29C,29Dを、前記ポリシリコンゲート電極23Aを覆うシリサイド層24GAを露出するビアホール29Eおよび前記ポリシリコンゲート電極23Bを覆うシリサイド層24GBを露出するビアホール(図示せず)を形成し、図6Kの工程において前記ビアホール29A〜29Eにそれぞれビアプラグ30A〜30Eを形成する。
【0066】
図7Aは、前記空隙32A〜32Dに前記残渣28Xが残留した場合の、チャネル応力が受ける影響をシミュレートした結果を示す。ただし図7A中、横軸は図7Bに規定する残渣28Xの高さに対応しており、縦軸は前記高さが100nmであった場合を基準としたチャネル応力Sxxの大きさの変化を示している。
【0067】
図7Aを参照するに、残渣28Xの高さが低減するにつれてチャネル応力は増大しており、残渣28Xが存在しない場合(高さtがゼロ)、100nmの高さの残渣28Xが存在した場合に比べ、チャネル応力は約二倍増加することがわかる。
【0068】
図7Aより、前記空隙32A〜32Dに残渣28Xが残留する場合には、その高さは40nm以下、好ましくは30nm以下とするのが好ましいことがわかる。
【0069】
図8は、本実施形態の一変形例によるCMOS素子20Aを示す。図8中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0070】
図8の変形例では、前記オフセット側壁絶縁膜23WA1,23WA2,23WB1,23WB2をCVD絶縁膜のエッチバックにより形成する際、前記CVD絶縁膜の膜厚をやや大きめに設定し、前記ゲート電極23A,23Bを覆う絶縁膜が、前記ゲート電極の側壁面上においてゲート電極の上部から下部に向かって膜厚を増大させ斜面をなすように形成する。そこでこのような斜面をなす絶縁膜を基板表面に垂直方向にエッチバックすることにより、ゲート電極23A,23Bにおいて、ゲート電極上部で膜厚が薄く、下部で膜厚が大きい形状の側壁絶縁膜を、前記オフセット側壁絶縁膜23WA1,23WA2,23WB1,23WB2として形成できる。
【0071】
そこでこのような形状のオフセット側壁絶縁膜23WA1,23WA2,23WB1,23WB2をエッチングにより除去することにより、前記隙間32A〜32Dの各々を、下部から上部に向けて隙間が狭まるような形状、すなわちゲート長方向に測った寸法が、前記シリコン基板の表面に近い部分から遠い部分に向かって減少する形状をに形成することができる。前記隙間32a〜32Dをこのような形状に形成することにより、層間絶縁膜29を形成した場合に、形成された層間絶縁膜29が前記隙間32A〜32Dに侵入するのを抑制することができる。図8中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0072】
図9は本実施形態の別の変形例によるCMOS素子20Bを示す。
【0073】
図9は前記層間絶縁膜29として、ステップカバレッジの良い通常のCVD酸化膜などを使う場合に適した構成であり、図6Hの工程の後、図6Iの工程の前に前記図6Hの構造を、高密度プラズマCVD法により形成されたシリコン酸化膜など、ステップカバレッジの悪い膜よりなるカバー膜290により覆う。このカバー膜290の堆積は短時間に止め、その結果、カバー膜290は略一定の膜厚に形成される。
【0074】
このような構成によっても、前記隙間32A〜32Dへの層間絶縁膜の侵入を抑制することができる。
【0075】
図10は、本実施形態のさらに別の変形例によるCMOS素子20Cを示す。
【0076】
図10の変形例は、前記層間絶縁膜29が無応力である場合に適用可能な構成であり、前記層間絶縁膜29が隙間32A〜32Dを完全に充填している。このような無応力層間絶縁膜29は、例えばCVD法やALD法により形成することが可能である。
【0077】
以上、本発明を好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において様々な変形・変更が可能である。
(付記1)
素子分離領域により素子領域が画定されたシリコン基板と、
前記素子領域内において、前記シリコン基板上にゲート絶縁膜を介して形成され、前記シリコン基板中にチャネル領域を形成するゲート電極と、
前記素子領域内において前記シリコン基板中に、前記チャネル領域の第1の側および第2の側にそれぞれ形成されたn型、p型のいずれか一方である第1の導電型を有するソースエクステンション領域、および前記第1の導電型を有するドレインエクステンション領域と、
前記素子領域内において前記シリコン基板中に、前記チャネル領域の前記第1の側に、前記チャネル領域から離間して前記ソースエクステンション領域の一部と重畳して形成された前記第1の導電型のソース領域と、
前記素子領域内において前記シリコン基板中に、前記チャネル領域の前記第2の側に、前記チャネル領域から離間してドレインエクステンション領域の一部と重畳して形成された第1の導電型のドレイン領域と、
前記素子領域内において前記シリコン基板上に、前記チャネル領域の前記第1の側において、前記素子分離領域から前記チャネル領域に向かって延在し、前記ソース領域を覆って形成された、引張応力、圧縮応力のいずれかである第1の応力を蓄積した第1の応力膜と、
前記素子領域内において前記シリコン基板上に、前記チャネル領域の前記第2の側において、前記素子分離領域から前記チャネル領域に向かって延在し、前記ドレイン領域を覆って形成された、前記第1の応力を蓄積した第2の応力膜と、
を備え、
前記第1の応力膜は、前記チャネル領域に近い第1の先端部に、前記ゲート電極のうち、前記チャネル領域の前記第1の側に位置する第1の側壁面に沿って、ただし前記第1の側壁面からは離間して、前記シリコン基板表面から上方に向かって延在する第1の延在部を有し、
前記第2の応力膜は、前記チャネル領域に近い第2の先端部に、前記ゲート電極のうち、前記チャネル領域の前記第2の側に位置する第2の側壁面に沿って、ただし前記第2の側壁面からは離間して、前記シリコン基板表面から上方に向かって延在する第2の延在部を有し、
前記第1の導電型がn型である場合、前記第1の応力は引張応力であり、前記第1の導電型がp型である場合、前記第1の応力は圧縮応力であることを特徴とするMOSトランジスタ。
(付記2)
前記第1の側壁面と前記第1の延在部、および前記第2の側壁面と前記第2の延在部の間には、それぞれ第1および第2の空隙が形成されていることを特徴とする請求項1記載のMOSトランジスタ。
(付記3)
前記第1および第2の空隙はいずれも、ゲート長方向に測った寸法が、前記シリコン基板の表面に近い部分から遠い部分に向かって減少する形状を有することを特徴とする請求項1または2記載のMOSトランジスタ。
(付記4)
前記第1の側壁面と前記第1の延在部の間には、前記第1の空隙の下方に第1のオフセット側壁絶縁膜が、また前記第2の側壁面と前記第2の延在部の間には、前記第2の空隙の下方に第2のオフセット側壁絶縁膜が存在しており、前記第1および第2のオフセット側壁絶縁膜は、前記シリコン基板表面から測った高さが前記ゲート電極の高さの40%以下であることを特徴とする請求項1または2記載のMOSトランジスタ。
(付記5)
前記シリコン基板上には実質的に無応力の層間絶縁膜が、前記ゲート電極および前記第1,第2の応力膜を覆って形成されており、前記第1および第2の空隙は、前記第1の延在部と前記第1の側壁面の間、および前記第2の延在部と前記第2の側壁面の間において、前記層間絶縁膜の下方に形成されることを特徴とする請求項1〜4のうち、いずれか一項記載のMOSトランジスタ。
(付記6)
前記層間絶縁膜は前記ゲート電極および前記第1,第2の応力膜を、前記ゲート電極および前記第1,第2の応力膜上に略一定の膜厚で形成された絶縁膜を介して覆っており、前記第1および第2の隙間は、前記絶縁膜の下方に形成されることを特徴とする請求項5記載のMOSトランジスタ。
(付記7)
前記第1の側壁面と前記第1の延在部の間、および前記第2の側壁面と前記第2の延在部の間は、応力を蓄積していない絶縁膜により充填されていることを特徴とする請求項1記載のMOSトランジスタ。
(付記8)
素子分離領域により第1および第2の素子領域が画定されたシリコン基板と、
前記第1の素子領域内において、前記シリコン基板上に第1のゲート絶縁膜を介して、前記シリコン基板中の第1のチャネル領域に対応して形成された第1のゲート電極と、
前記第1の素子領域内において前記シリコン基板中に、前記第1のチャネル領域の第1の側および第2の側にそれぞれ形成されたn型のソースエクステンション領域およびn型のドレインエクステンション領域と、
前記第1の素子領域内において前記シリコン基板中に、前記第1のチャネル領域の前記第1の側に、前記第1のチャネル領域から離間して前記n型のソースエクステンション領域の一部と重畳して形成されたn型のソース領域と、
前記第1の素子領域内において前記シリコン基板中に、前記第1のチャネル領域の前記第2の側において、前記第1のチャネル領域から離間して前記n型のドレインエクステンション領域の一部と重畳して形成されたn型のドレイン領域と、
前記第1の素子領域内において前記シリコン基板上に、前記第1のチャネル領域の前記第1の側において、前記第1の素子分離領域から前記第1のチャネル領域に向かって、前記n型のソース領域を覆って形成された第1の引張応力膜と、
前記第1の素子領域内において前記シリコン基板上に、前記第1のチャネル領域の前記第2の側において、前記第1の素子分離領域から前記第1のチャネル領域に向かって、前記n型のドレイン領域を覆って形成された第2の引張応力膜と、
を備え、
前記第1の引張応力膜は、前記第1のチャネル領域に近い第1の先端部に、前記ゲート電極のうち、前記チャネル領域の前記第1の側の第1の側壁面に沿って、ただし前記第1の側壁面からは離間して、前記シリコン基板表面から上方に向かって延在する第1の延在部を有し、
前記第2の引張応力膜は、前記チャネル領域に近い第2の先端部に、前記ゲート電極のうち、前記チャネル領域の前記第2の側の第2の側壁面に沿って、ただし前記第2の側壁面からは離間して、前記シリコン基板表面から上方に向かって延在する第2の延在部を有するnチャネルMOSトランジスタと、
前記第2の素子領域内において、前記シリコン基板上に第2のゲート絶縁膜を介して、前記シリコン基板中の第2のチャネル領域に対応して形成された第2のゲート電極と、
前記第2の素子領域内において前記シリコン基板中に、前記第2のチャネル領域の第1の側および第2の側にそれぞれ形成されたp型のソースエクステンション領域およびp型のドレインエクステンション領域と、
前記第2の素子領域内において前記シリコン基板中に、前記第2のチャネル領域の前記第1の側に、前記第2のチャネル領域から離間して前記p型ソースエクステンション領域の一部と重畳して形成されたp型のソース領域と、
前記第2の素子領域内において前記シリコン基板中に、前記第2のチャネル領域の前記第2の側において、前記第2のチャネル領域から離間して前記p型ドレインエクステンション領域の一部と重畳して形成されたp型のドレイン領域と、
前記第2の素子領域内において前記シリコン基板上に、前記第2のチャネル領域の前記第1の側において、前記第2の素子分離領域から前記第2のチャネル領域に向かって、前記p型のソース領域を覆って形成された第1の圧縮応力膜と、
前記第2の素子領域内において前記シリコン基板上に、前記第2のチャネル領域の前記第2の側において、前記第2の素子分離領域から前記第2のチャネル領域に向かって、前記p型のドレイン領域を覆って形成された第2の圧縮応力膜と、
を備え、
前記第1の圧縮応力膜は、前記第2のチャネル領域に近い第3の先端部に、前記第2のゲート電極のうち、前記チャネル領域の前記第1の側の第3の側壁面に沿って、ただし前記第3の側壁面からは離間して、前記シリコン基板表面から上方に向かって延在する第3の延在部を有し、
前記第2の圧縮応力膜は、前記第2のチャネル領域に近い第4の先端部に、前記第2のゲート電極のうち、前記チャネル領域の前記第2の側の第4の側壁面に沿って、ただし前記第4の側壁面からは離間して、前記シリコン基板表面から上方に向かって延在する第4の延在部を有するpチャネルMOSトランジスタと、
を備えたことを特徴とする半導体集積回路装置。
(付記9)
素子分離領域により素子領域が画定されたシリコン基板上に、前記素子領域内において、ゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、
前記素子領域内において前記シリコン基板中にn型またはp型である第1の導電型の不純物元素をイオン注入し、前記ゲート電極直下のチャネル領域の第1の側および第2の側に、それぞれ前記第1の導電型のソースエクステンション領域およびドレインエクステンション領域を形成する工程と、
前記シリコン基板上、前記ゲート電極の、前記チャネル領域の第1の側に対応する第1の側壁面および前記第2の側に対応する第2の側壁面に、それぞれ第1および第2のオフセット側壁膜を形成する工程と、
前記素子領域内において前記シリコン基板中に、前記ゲート電極および前記第1および第2のオフセット側壁膜をマスクに第1の導電型の不純物元素をイオン注入することにより、前記シリコン基板中、前記チャネル領域の前記第1の側において前記チャネル領域から見て前記第1のオフセット側壁膜の外側に、前記ソースエクステンション領域の一部と重畳して前記第1の導電型を有するソース領域を、また前記シリコン基板中、前記チャネル領域の前記第2の側において前記チャネル領域から見て前記第2のオフセット側壁膜の外側に、前記ドレインエクステンション領域の一部と重畳して、前記第1の導電型を有するドレイン領域を、それぞれ形成する工程と、
前記シリコン基板上に、前記第1のオフセット側壁膜、前記ゲート電極および前記第2のオフセット側壁膜を覆って、引張応力または圧縮応力である第1の応力を蓄積した応力膜を形成する工程と、
前記シリコン基板上に前記応力膜を覆って保護膜を形成する工程と、
前記保護膜を化学機械研磨して、前記応力膜のうち、前記第1および第2のオフセット側壁膜の頂部、および前記ゲート電極の頂部を覆う部分を露出する工程と、
前記応力膜の露出部分をエッチングにより除去することにより、前記応力膜から、前記チャネル領域の第1の側に位置し前記第1の応力を蓄積した第1の応力膜と、前記チャネル領域の第2の側に位置し、前記第1の応力膜から分離し、前記第1の応力を蓄積した第2の応力膜を形成し、前記第1および第2のオフセット側壁膜の頂部を露出する工程と、
前記第1および第2のオフセット絶縁膜を、それぞれの頂部からエッチングにより除去し、前記ゲート電極の第1の側壁面と、前記第1の引張応力膜のうち前記シリコン基板から前記第1の側壁面に沿って上方に延在する第1の延在部との間、および前記ゲート電極の第2の側壁絶縁膜と、前記第2の引張応力膜のうち前記シリコン基板から前記第2の側壁面に沿って上方に延在する第2の延在部との間に、それぞれ第1および第2の空隙を形成する工程と、
を含み、
前記第1の導電型がn型である場合は前記第1の応力が引張応力であり、前記第1の導電型がp型である場合は前記第1の応力が圧縮応力であることを特徴とするMOSトランジスタの製造方法。
(付記10)
前記第1および第2のオフセット絶縁膜を、それぞれの頂部からエッチングにより除去する工程は、前記第1の側壁面および前記第1の延在部の間に残留する第1のオフセット膜、および前記第2の側壁面および前記第2の延在部の間に残留する第2のオフセット膜の、前記シリコン基板表面から測った高さが、前記ゲート電極の高さの40%以下になるように実行されることを特徴とする請求項9記載のMOSトランジスタの製造方法。
(付記11)
前記第1および第2のオフセット絶縁膜の形成工程は、前記第1および第2のオフセット絶縁膜が、前記シリコン基板表面に接する部分ではゲート長方向に第1の幅を有し、前記シリコン基板表面から離間するにつれてより小さい第2の幅に変化する形状に形成されていることを特徴とする請求項9または10記載のMOSトランジスタの製造方法。
(付記12)
前記第1および第2のオフセット絶縁膜を、それぞれの頂部からエッチングにより除去する工程では、前記保護膜も同時にエッチングされることを特徴とする請求項10または11記載のMOSトランジスタの製造方法。
(付記13)
さらに前記第1および第2の空隙を形成する工程の後、前記シリコン基板上に層間絶縁膜を、プラズマCVD法により、実質的な応力を蓄積しないような条件で形成する工程を含むことを特徴とする請求項9〜12のうち、いずれか一項記載のMOSトランジスタの製造方法。
(付記14)
前記層間絶縁膜を形成する工程は、前記層間絶縁膜が、前記第1および第2の延在部の上端において前記第1および第2の空隙2をそれぞれ閉じ込めるように実行されることを特徴とする請求項13記載のMOSトランジスタの製造方法。
(付記15)
前記層間絶縁膜を形成する工程は、前記層間絶縁膜が、前記第1および第2の空隙を充填するように実行されることを特徴とする請求項13記載のMOSトランジスタの製造方法。
(付記16)
さらに前記第1および第2の空隙を形成する工程の後、前記シリコン基板上に絶縁膜を、前記絶縁膜が前記第1および第2の延在部の上端部において前記第1および第2の空隙をそれぞれ閉じ込めるように略一定の厚さに堆積する工程と、前記絶縁膜上に層間絶縁膜を堆積する工程を含むことを特徴とする請求項9〜12のうち、いずれか一項記載のMOSトランジスタの製造方法。
【符号の説明】
【0078】
1,21 シリコン基板
2,22A,22B ゲート絶縁膜
3,23A,23B ポリシリコンゲート電極
3A,3B,23WA1,23WA2,23WB1,23WB2 オフセット側壁絶縁膜
4 応力膜
4A 応力膜部分
21A,21B素子領域
21P,21N ウェル
21a,21c ソースエクステンション領域
21b,21d ドレインエクステンション領域
21e,21g ソース領域
21f,21h ドレイン領域
24SA,24DA,23SB,24DB,23GA,24GB シリサイド領域
27A 引張応力膜
27B 圧縮応力膜
28 保護膜
28X 残渣
29 層間絶縁膜
29A〜29E ビアホール
30A〜30E ビアプラグ
31A〜31D 延在部
32A〜32D 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子分離領域により素子領域が画定されたシリコン基板と、
前記素子領域内において、前記シリコン基板上にゲート絶縁膜を介して形成され、前記シリコン基板中にチャネル領域を形成するゲート電極と、
前記素子領域内において前記シリコン基板中に、前記チャネル領域の第1の側および第2の側にそれぞれ形成されたn型、p型のいずれか一方である第1の導電型を有するソースエクステンション領域、および前記第1の導電型を有するドレインエクステンション領域と、
前記素子領域内において前記シリコン基板中に、前記チャネル領域の前記第1の側に、前記チャネル領域から離間して前記ソースエクステンション領域の一部と重畳して形成された前記第1の導電型のソース領域と、
前記素子領域内において前記シリコン基板中に、前記チャネル領域の前記第2の側に、前記チャネル領域から離間してドレインエクステンション領域の一部と重畳して形成された第1の導電型のドレイン領域と、
前記素子領域内において前記シリコン基板上に、前記チャネル領域の前記第1の側において、前記素子分離領域から前記チャネル領域に向かって延在し、前記ソース領域を覆って形成された、引張応力、圧縮応力のいずれかである第1の応力を蓄積した第1の応力膜と、
前記素子領域内において前記シリコン基板上に、前記チャネル領域の前記第2の側において、前記素子分離領域から前記チャネル領域に向かって延在し、前記ドレイン領域を覆って形成された、前記第1の応力を蓄積した第2の応力膜と、
を備え、
前記第1の応力膜は、前記チャネル領域に近い第1の先端部に、前記ゲート電極のうち、前記チャネル領域の前記第1の側に位置する第1の側壁面に沿って、ただし前記第1の側壁面からは離間して、前記シリコン基板表面から上方に向かって延在する第1の延在部を有し、
前記第2の応力膜は、前記チャネル領域に近い第2の先端部に、前記ゲート電極のうち、前記チャネル領域の前記第2の側に位置する第2の側壁面に沿って、ただし前記第2の側壁面からは離間して、前記シリコン基板表面から上方に向かって延在する第2の延在部を有し、
前記第1の導電型がn型である場合、前記第1の応力は引張応力であり、前記第1の導電型がp型である場合、前記第1の応力は圧縮応力であることを特徴とするMOSトランジスタ。
【請求項2】
前記第1の側壁面と前記第1の延在部、および前記第2の側壁面と前記第2の延在部の間には、それぞれ第1および第2の空隙が形成されていることを特徴とする請求項1記載のMOSトランジスタ。
【請求項3】
前記シリコン基板上には実質的に無応力の層間絶縁膜が、前記ゲート電極および前記第1,第2の応力膜を覆って形成されており、前記第1および第2の空隙は、前記第1の延在部と前記第1の側壁面の間、および前記第2の延在部と前記第2の側壁面の間において、前記層間絶縁膜の下方に形成されることを特徴とする請求項1または2記載のMOSトランジスタ。
【請求項4】
素子分離領域により第1および第2の素子領域が画定されたシリコン基板と、
前記第1の素子領域内において、前記シリコン基板上に第1のゲート絶縁膜を介して、前記シリコン基板中の第1のチャネル領域に対応して形成された第1のゲート電極と、
前記第1の素子領域内において前記シリコン基板中に、前記第1のチャネル領域の第1の側および第2の側にそれぞれ形成されたn型のソースエクステンション領域およびn型のドレインエクステンション領域と、
前記第1の素子領域内において前記シリコン基板中に、前記第1のチャネル領域の前記第1の側に、前記第1のチャネル領域から離間して前記n型のソースエクステンション領域の一部と重畳して形成されたn型のソース領域と、
前記第1の素子領域内において前記シリコン基板中に、前記第1のチャネル領域の前記第2の側において、前記第1のチャネル領域から離間して前記n型のドレインエクステンション領域の一部と重畳して形成されたn型のドレイン領域と、
前記第1の素子領域内において前記シリコン基板上に、前記第1のチャネル領域の前記第1の側において、前記第1の素子分離領域から前記第1のチャネル領域に向かって、前記n型のソース領域を覆って形成された第1の引張応力膜と、
前記第1の素子領域内において前記シリコン基板上に、前記第1のチャネル領域の前記第2の側において、前記第1の素子分離領域から前記第1のチャネル領域に向かって、前記n型のドレイン領域を覆って形成された第2の引張応力膜と、
を備え、
前記第1の引張応力膜は、前記第1のチャネル領域に近い第1の先端部に、前記ゲート電極のうち、前記チャネル領域の前記第1の側の第1の側壁面に沿って、ただし前記第1の側壁面からは離間して、前記シリコン基板表面から上方に向かって延在する第1の延在部を有し、
前記第2の引張応力膜は、前記チャネル領域に近い第2の先端部に、前記ゲート電極のうち、前記チャネル領域の前記第2の側の第2の側壁面に沿って、ただし前記第2の側壁面からは離間して、前記シリコン基板表面から上方に向かって延在する第2の延在部を有するnチャネルMOSトランジスタと、
前記第2の素子領域内において、前記シリコン基板上に第2のゲート絶縁膜を介して、前記シリコン基板中の第2のチャネル領域に対応して形成された第2のゲート電極と、
前記第2の素子領域内において前記シリコン基板中に、前記第2のチャネル領域の第1の側および第2の側にそれぞれ形成されたp型のソースエクステンション領域およびp型のドレインエクステンション領域と、
前記第2の素子領域内において前記シリコン基板中に、前記第2のチャネル領域の前記第1の側に、前記第2のチャネル領域から離間して前記p型ソースエクステンション領域の一部と重畳して形成されたp型のソース領域と、
前記第2の素子領域内において前記シリコン基板中に、前記第2のチャネル領域の前記第2の側において、前記第2のチャネル領域から離間して前記p型ドレインエクステンション領域の一部と重畳して形成されたp型のドレイン領域と、
前記第2の素子領域内において前記シリコン基板上に、前記第2のチャネル領域の前記第1の側において、前記第2の素子分離領域から前記第2のチャネル領域に向かって、前記p型のソース領域を覆って形成された第1の圧縮応力膜と、
前記第2の素子領域内において前記シリコン基板上に、前記第2のチャネル領域の前記第2の側において、前記第2の素子分離領域から前記第2のチャネル領域に向かって、前記p型のドレイン領域を覆って形成された第2の圧縮応力膜と、
を備え、
前記第1の圧縮応力膜は、前記第2のチャネル領域に近い第3の先端部に、前記第2のゲート電極のうち、前記チャネル領域の前記第1の側の第3の側壁面に沿って、ただし前記第3の側壁面からは離間して、前記シリコン基板表面から上方に向かって延在する第3の延在部を有し、
前記第2の圧縮応力膜は、前記第2のチャネル領域に近い第4の先端部に、前記第2のゲート電極のうち、前記チャネル領域の前記第2の側の第4の側壁面に沿って、ただし前記第4の側壁面からは離間して、前記シリコン基板表面から上方に向かって延在する第4の延在部を有するpチャネルMOSトランジスタと、
を備えたことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項5】
素子分離領域により素子領域が画定されたシリコン基板上に、前記素子領域内において、ゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、
前記素子領域内において前記シリコン基板中にn型またはp型である第1の導電型の不純物元素をイオン注入し、前記ゲート電極直下のチャネル領域の第1の側および第2の側に、それぞれ前記第1の導電型のソースエクステンション領域およびドレインエクステンション領域を形成する工程と、
前記シリコン基板上、前記ゲート電極の、前記チャネル領域の第1の側に対応する第1の側壁面および前記第2の側に対応する第2の側壁面に、それぞれ第1および第2のオフセット側壁膜を形成する工程と、
前記素子領域内において前記シリコン基板中に、前記ゲート電極および前記第1および第2のオフセット側壁膜をマスクに第1の導電型の不純物元素をイオン注入することにより、前記シリコン基板中、前記チャネル領域の前記第1の側において前記チャネル領域から見て前記第1のオフセット側壁膜の外側に、前記ソースエクステンション領域の一部と重畳して前記第1の導電型を有するソース領域を、また前記シリコン基板中、前記チャネル領域の前記第2の側において前記チャネル領域から見て前記第2のオフセット側壁膜の外側に、前記ドレインエクステンション領域の一部と重畳して、前記第1の導電型を有するドレイン領域を、それぞれ形成する工程と、
前記シリコン基板上に、前記第1のオフセット側壁膜、前記ゲート電極および前記第2のオフセット側壁膜を覆って、引張応力または圧縮応力である第1の応力を蓄積した応力膜を形成する工程と、
前記シリコン基板上に前記応力膜を覆って保護膜を形成する工程と、
前記保護膜を化学機械研磨して、前記応力膜のうち、前記第1および第2のオフセット側壁膜の頂部、および前記ゲート電極の頂部を覆う部分を露出する工程と、
前記応力膜の露出部分をエッチングにより除去することにより、前記応力膜から、前記チャネル領域の第1の側に位置し前記第1の応力を蓄積した第1の応力膜と、前記チャネル領域の第2の側に位置し、前記第1の応力膜から分離し、前記第1の応力を蓄積した第2の応力膜を形成し、前記第1および第2のオフセット側壁膜の頂部を露出する工程と、
前記第1および第2のオフセット絶縁膜を、それぞれの頂部からエッチングにより除去し、前記ゲート電極の第1の側壁面と、前記第1の引張応力膜のうち前記シリコン基板から前記第1の側壁面に沿って上方に延在する第1の延在部との間、および前記ゲート電極の第2の側壁絶縁膜と、前記第2の引張応力膜のうち前記シリコン基板から前記第2の側壁面に沿って上方に延在する第2の延在部との間に、それぞれ第1および第2の空隙を形成する工程と、
を含み、
前記第1の導電型がn型である場合は前記第1の応力が引張応力であり、前記第1の導電型がp型である場合は前記第1の応力が圧縮応力であることを特徴とするMOSトランジスタの製造方法。
【請求項6】
前記第1および第2のオフセット絶縁膜を、それぞれの頂部からエッチングにより除去する工程は、前記第1の側壁面および前記第1の延在部の間に残留する第1のオフセット膜、および前記第2の側壁面および前記第2の延在部の間に残留する第2のオフセット膜の、前記シリコン基板表面から測った高さが、前記ゲート電極の高さの40%以下になるように実行されることを特徴とする請求項5記載のMOSトランジスタの製造方法。
【請求項7】
さらに前記第1および第2の空隙を形成する工程の後、前記シリコン基板上に層間絶縁膜を、プラズマCVD法により、実質的な応力を蓄積しないような条件で形成する工程を含むことを特徴とする請求項5または6記載のMOSトランジスタの製造方法。
【請求項8】
前記層間絶縁膜を形成する工程は、前記層間絶縁膜が、前記第1および第2の延在部の上端において前記第1および第2の空隙2をそれぞれ閉じ込めるように実行されることを特徴とする請求項7記載のMOSトランジスタの製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図6G】
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【図6H】
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【図6I】
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【図6J】
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【図6K】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公開番号】特開2012−9558(P2012−9558A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142936(P2010−142936)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】