アクティブマトリクス基板の製造方法及び電気光学装置並びに電子機器
【課題】着弾した液滴を確実に溝内に塗れ拡がらせて細線化を可能にする
【解決手段】基板上にゲート配線を形成する第1の工程と、ゲート配線上にゲート絶縁膜を形成する第2の工程と、ゲート絶縁膜を介して半導体層を積層する第3の工程と、ゲート絶縁層の上にソース電極及びドレイン電極を形成する第4の工程と、ソース電極及び前記ドレイン電極上に絶縁材料を配置する第5の工程と、絶縁材料を配置した上に画素電極を形成する第6の工程と、を有し、第1の工程及び第4の工程及び第6の工程の少なくとも一つの工程では、機能液32が塗布される被塗布領域31と、被塗布領域31を囲んで形成されたバンクBとを有し、被塗布領域に対する機能液の接触角と、バンクに対する機能液の接触角との差が40°以上であり、バンク間の溝幅Wが、吐出された機能液の液滴の直径Dよりも小さい基板Pに対して機能液を吐出する。
【解決手段】基板上にゲート配線を形成する第1の工程と、ゲート配線上にゲート絶縁膜を形成する第2の工程と、ゲート絶縁膜を介して半導体層を積層する第3の工程と、ゲート絶縁層の上にソース電極及びドレイン電極を形成する第4の工程と、ソース電極及び前記ドレイン電極上に絶縁材料を配置する第5の工程と、絶縁材料を配置した上に画素電極を形成する第6の工程と、を有し、第1の工程及び第4の工程及び第6の工程の少なくとも一つの工程では、機能液32が塗布される被塗布領域31と、被塗布領域31を囲んで形成されたバンクBとを有し、被塗布領域に対する機能液の接触角と、バンクに対する機能液の接触角との差が40°以上であり、バンク間の溝幅Wが、吐出された機能液の液滴の直径Dよりも小さい基板Pに対して機能液を吐出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブマトリクス基板の製造方法及び電気光学装置並びに電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体集積回路などの微細な配線パターンの製造方法としては、フォトリソグラフィー法が多用されている。一方、特許文献1、特許文献2などには、液滴吐出方式を用いた方法が開示されている。これら公報に開示されている技術は、パターン形成用材料を含んだ機能液を液滴吐出ヘッドから基板上に吐出することにより、パターン形成面に材料を配置(塗布)して配線パターンを形成するものであり、少量多種生産に対応可能であるなど大変有効であるとされている。
【0003】
ところで、近年ではデバイスを構成する回路の高密度化がますます進み、例えば配線パターンについてもさらなる微細化、細線化が要求されている。
しかしながら、このような微細な配線パターンを前記の液滴吐出方式による方法によって形成しようとした場合、特にその配線幅の精度を十分にだすのが難しい。そこで、特許文献3及び特許文献4には、基板上に仕切部材であるバンクを設けるとともに、バンクの上部を撥液性にし、それ以外の部分が親液性となるように表面処理を施す技術が記載されている。
この技術を用いることにより、細線であっても配線パターンの幅をバンク間の幅で規定することができるとともに、吐出した液滴の一部がバンクにのったとしても、撥液性のバンクではじかれてバンク間の溝の親液部に流れ落ちるようにすることができる。
【0004】
一方、バンクはフォトリソグラフィ法を用いて形成され、コスト高につながる可能性があることから、予め撥液部と親液部とのパターンを形成した基板の親液部に、液滴吐出方式により選択的に液体材料(機能液)を吐出することも提案されている。この場合、導電性微粒子を分散させた液体材料は、親液部に溜まりやすくなるため、バンクを形成することなく、位置精度を保って配線パターンを形成することが可能である。
【特許文献1】特開平11−274671号公報
【特許文献2】特開2000−216330号公報
【特許文献3】特開平9−203803号公報
【特許文献4】特開平9−230129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
撥液部と親液部との間で、液滴に対する濡れ性(親和性)の差が小さい場合、バンク上にのった液滴がはじかれても溝内に塗れ拡がらない可能性がある。
また、液滴径が溝幅よりも大きい場合、溝の上に着弾したままで残ってしまうことも考えられる。
一方、撥液部と親液部とがパターニングされた基板を用いる場合においても、撥液部と親液部との間で、液滴に対する濡れ性(親和性)の差が小さい場合、撥液部にのった液滴がはじかれても親液部内で十分に塗れ拡がらない可能性がある。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、着弾した液滴を確実に溝内に塗れ拡がらせて細線化を可能にするアクティブマトリクス基板の製造方法及び電気光学装置並びに電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用している。
本発明のアクティブマトリクス基板の製造方法は、アクティブマトリクス基板の製造方法において、基板上にゲート配線を形成する第1の工程と、前記ゲート配線上にゲート絶縁膜を形成する第2の工程と、前記ゲート絶縁膜を介して半導体層を積層する第3の工程と、前記ゲート絶縁層の上にソース電極及びドレイン電極を形成する第4の工程と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極上に絶縁材料を配置する第5の工程と、前記絶縁材料を配置した上に画素電極を形成する第6の工程と、を有し、前記第1の工程及び前記第4の工程及び前記第6の工程の少なくとも一つの工程では、機能液が塗布される被塗布領域と、該被塗布領域を囲んで形成されたバンクとを有し、前記被塗布領域に対する前記機能液の接触角と、前記バンクに対する前記機能液の接触角との差が40°以上であり、前記バンク間の溝幅が、吐出された前記機能液の液滴の直径よりも小さい基板に対して機能液を吐出することを特徴とするものである。
【0008】
従って、本発明では、吐出した機能液の一部がバンクにのった場合でも、機能液の流動性や毛細管現象等により機能液を確実にバンク間の被塗布領域に入り込ませることが可能になり、液滴よりも幅が狭い溝であっても液状体で埋めて、バンク間の幅で規定された細線パターンを得ることができる。また、被塗布領域に対する前記機能液の接触角は15°以下が好ましく、この場合、被塗布領域の機能液が基板上でより塗れ拡がり易くなり、より均一に被塗布領域を埋め込むことができる。そのため、被塗布領域において、間隔をあけて吐出した機能液を分断することなく一体化することができ、断線等の不良が生じることを防止することができる。
また、本発明によれば、ゲート配線、ソース電極及びドレイン電極、画素電極に断線等の品質低下が生じず、細線のパターンが形成された薄型のアクティブマトリクス基板を得ることが可能になる。
【0009】
バンクに対して接触角を大きくする方法としては、プラズマ処理により表面改質を施したり、フッ素またはフッ素化合物を含有させる構成を採用できる。プラズマ処理を実施する場合には、処理時間を調整することで、撥液性を制御することが可能である。
【0010】
そして、本発明の電気光学装置は、上記のアクティブマトリクス基板を備えることを特徴としている。
また、本発明の電子機器は、上記の電気光学装置を備えることを特徴としている。
これにより、断線等の不良がなく、また細線パターンを有する小型・薄型の電気光学装置及び電子機器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のアクティブマトリクス基板の製造方法及び電気光学装置並びに電子機器の実施の形態を、図1ないし図17を参照して説明する。
(第1実施形態)
本実施の形態では、液滴吐出法によって液体吐出ヘッドのノズルから導電性微粒子を含む配線パターン(パターン)用インク(機能液)を液滴状に吐出し、基板上に導電性膜で形成された配線パターンを形成する場合の例を用いて説明する。
【0012】
この配線パターン用インクは、導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液や有機銀化合物や酸化銀ナノ粒子を溶媒(分散媒)に分散させた溶液からなるものである。
本実施の形態では、導電性微粒子として、例えば、金、銀、銅、パラジウム、及びニッケルのうちのいずれかを含有する金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに有機銀化合物や導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。
これらの導電性微粒子は、分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。
導電性微粒子の粒径は1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。0.1μmより大きいと、後述する液体吐出ヘッドのノズルに目詰まりが生じるおそれがある。また、1nmより小さいと、導電性微粒子に対するコーティング剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多となる。
【0013】
分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法(インクジェット法)への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0014】
上記導電性微粒子の分散液の表面張力は0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲内であることが好ましい。インクジェット法にて液体を吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、インク組成物のノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやすくなり、0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量や、吐出タイミングの制御が困難になる。表面張力を調整するため、上記分散液には、基板との接触角を大きく低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、液体の基板への濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものである。上記表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
【0015】
上記分散液の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。インクジェット法を用いて液体材料を液滴として吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合にはノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。
【0016】
配線パターンが形成される基板としては、ガラス、石英ガラス、Siウエハ、プラスチックフィルム、金属板など各種のものを用いることができる。また、これら各種の素材基板の表面に半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜などが下地層として形成されたものも含む。
【0017】
ここで、液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換式、電気熱変換方式、静電吸引方式などが挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御してノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に30kg/cm2程度の超高圧を印加してノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進してノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散してノズルから吐出されない。また、電気機械変換方式は、ピエゾ素子(圧電素子)がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって材料を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から材料を押し出してノズルから吐出させるものである。
【0018】
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。なお、液滴吐出法により吐出される液状材料(流動体)の一滴の量は、例えば1〜300ナノグラムである。
【0019】
次に、本発明に係るデバイスを製造する際に用いられるデバイス製造装置について説明する。
このデバイス製造装置としては、液滴吐出ヘッドから基板に対して液滴を吐出することによりデバイスを製造する液滴吐出装置(インクジェット装置)が用いられる。
【0020】
図1は、液滴吐出装置IJの概略構成を示す斜視図である。
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と、X軸方向駆動軸4と、Y軸方向ガイド軸5と、制御装置CONTと、ステージ7と、クリーニング機構8と、基台9と、ヒータ15とを備えている。
ステージ7は、この液滴吐出装置IJによりインク(液体材料)を設けられる基板Pを支持するものであって、基板Pを基準位置に固定する不図示の固定機構を備えている。
【0021】
液滴吐出ヘッド1は、複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッドであり、長手方向とY軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド1の下面にY軸方向に並んで一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルからは、ステージ7に支持されている基板Pに対して、上述した導電性微粒子を含むインクが吐出される。
【0022】
X軸方向駆動軸4には、X軸方向駆動モータ2が接続されている。X軸方向駆動モータ2はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからX軸方向の駆動信号が供給されると、X軸方向駆動軸4を回転させる。X軸方向駆動軸4が回転すると、液滴吐出ヘッド1はX軸方向に移動する。
Y軸方向ガイド軸5は、基台9に対して動かないように固定されている。ステージ7は、Y軸方向駆動モータ3を備えている。Y軸方向駆動モータ3はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからY軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ7をY軸方向に移動する。
【0023】
制御装置CONTは、液滴吐出ヘッド1に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。また、X軸方向駆動モータ2に液滴吐出ヘッド1のX軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を、Y軸方向駆動モータ3にステージ7のY軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
クリーニング機構8は、液滴吐出ヘッド1をクリーニングするものである。クリーニング機構8には、図示しないY軸方向の駆動モータが備えられている。このY軸方向の駆動モータの駆動により、クリーニング機構は、Y軸方向ガイド軸5に沿って移動する。クリーニング機構8の移動も制御装置CONTにより制御される。
ヒータ15は、ここではランプアニールにより基板Pを熱処理する手段であり、基板P上に塗布された液体材料に含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。このヒータ15の電源の投入及び遮断も制御装置CONTにより制御される。
【0024】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と基板Pを支持するステージ7とを相対的に走査しつつ基板Pに対して液滴を吐出する。ここで、以下の説明において、X軸方向を走査方向、X軸方向と直交するY軸方向を非走査方向とする。したがって、液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルは、非走査方向であるY軸方向に一定間隔で並んで設けられている。なお、図1では、液滴吐出ヘッド1は、基板Pの進行方向に対し直角に配置されているが、液滴吐出ヘッド1の角度を調整し、基板Pの進行方向に対して交差させるようにしてもよい。このようにすれば、液滴吐出ヘッド1の角度を調整することで、ノズル間のピッチを調節することが出来る。また、基板Pとノズル面との距離を任意に調節することが出来るようにしてもよい。
【0025】
図2は、ピエゾ方式による液体材料の吐出原理を説明するための図である。
図2において、液体材料(配線パターン用インク、機能液)を収容する液体室21に隣接してピエゾ素子22が設置されている。液体室21には、液体材料を収容する材料タンクを含む液体材料供給系23を介して液体材料が供給される。ピエゾ素子22は駆動回路24に接続されており、この駆動回路24を介してピエゾ素子22に電圧を印加し、ピエゾ素子22を変形させることにより、液体室21が変形し、ノズル25から液体材料が吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子22の歪み量が制御される。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子22の歪み速度が制御される。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
【0026】
次に、本発明の配線パターン形成方法の実施形態の一例として、基板上に導電膜配線を形成する方法について図3を参照して説明する。本実施形態に係る配線パターン形成方法は、上述した配線パターン用のインクを基板P上に配置し、その基板P上に配線用の導電膜パターンを形成するものであり、バンク形成工程、残渣処理工程、撥液化処理工程、材料配置工程及び中間乾燥工程、焼成工程から概略構成される。
以下、各工程毎に詳細に説明する。
【0027】
(バンク形成工程)
バンクは、仕切部材として機能する部材であり、バンクの形成はリソグラフィ法や印刷法等、任意の方法で行うことができる。例えば、リソグラフィ法を使用する場合は、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、ダイコート、ディップコート等所定の方法で、基板P上にバンクの高さに合わせて有機系感光性材料を塗布し、その上にレジスト層を塗布する。そして、バンク形状(配線パターン)に合わせてマスクを施しレジストを露光・現像することによりバンク形状に合わせたレジストを残す。最後にエッチングしてマスク以外の部分のバンク材料を除去する。また、下層が無機物または有機物で機能液に対し親液性を示す材料で、上層が有機物で撥液性を示す材料で構成された2層以上でバンク(凸部)を形成してもよい。
これにより、図3(a)に示されるように、配線パターンを形成すべき領域である溝部(被塗布領域)31を囲むように、例えば10μm幅でバンクB、Bが形成される。
なお、基板Pに対しては、有機材料塗布前に表面改質処理として、HMDS処理((CH3)3SiNHSi(CH3)3を蒸気状にして塗布する方法)が施されているが、図3ではその図示を省略している。
【0028】
バンクを形成する有機材料としては、液体材料に対してもともと撥液性を示す材料でも良いし、後述するように、プラズマ処理による撥液化が可能で下地基板との密着性が良くフォトリソグラフィによるパターニングがし易い絶縁有機材料でも良い。例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、メラミン樹脂等の高分子材料を用いることが可能である。
【0029】
(残渣処理工程(親液化処理工程))
次に、バンク間におけるバンク形成時のレジスト(有機物)残渣を除去するために、基板Pに対して残渣処理を施す。
残渣処理としては、紫外線を照射することにより残渣処理を行う紫外線(UV)照射処理や大気雰囲気中で酸素を処理ガスとするO2プラズマ処理等を選択できるが、ここではO2プラズマ処理を実施する。
【0030】
具体的には、基板Pに対しプラズマ放電電極からプラズマ状態の酸素を照射することで行う。O2プラズマ処理の条件としては、例えばプラズマパワーが50〜1000W、酸素ガス流量が50〜100ml/min、プラズマ放電電極に対する基板Pの板搬送速度が0.5〜10mm/sec、基板温度が70〜90℃とされる。
なお、基板Pがガラス基板の場合、その表面は配線パターン形成材料に対して親液性を有しているが、本実施の形態のように残渣処理のためにO2プラズマ処理や紫外線照射処理を施すことで、溝部31の親液性を高めることができる。本実施の形態では、配線パターン形成材料として用いる有機銀化合物(後述)に対する溝部31の接触角が15°以下となるようにプラズマ処理条件を調整した(例えば基板Pの搬送速度を遅くしてプラズマ処理時間を長くする)。
【0031】
(撥液化処理工程)
続いて、バンクBに対し撥液化処理を行い、その表面に撥液性を付与する。撥液化処理としては、例えば大気雰囲気中でテトラフルオロメタンを処理ガスとするプラズマ処理法(CF4プラズマ処理法)を採用することができる。CF4プラズマ処理の条件は、例えばプラズマパワーが100〜800W、4フッ化メタンガス流量が50〜100ml/min、プラズマ放電電極に対する基体搬送速度が0.5〜1020mm/sec、基体温度が70〜90℃とされる。
なお、処理ガスとしては、テトラフルオロメタン(四フッ化炭素)に限らず、他のフルオロカーボン系のガスを用いることもできる。本実施の形態では、配線パターン形成材料として用いる有機銀化合物のバンクBに対する接触角が、溝部31に対する接触角よりも40°以上となるようにプラズマ処理条件を調整した(例えば基板Pの搬送速度を遅くしてプラズマ処理時間を長くする)。
【0032】
このような撥液化処理を行うことにより、バンクB、Bにはこれを構成する樹脂中にフッ素基が導入され、溝部31に対して高い撥液性が付与される。なお、上述した親液化処理としてのO2プラズマ処理は、バンクBの形成前に行ってもよいが、アクリル樹脂やポリイミド樹脂等は、O2プラズマによる前処理がなされた方がよりフッ素化(撥液化)されやすいという性質があるため、バンクBを形成した後にO2プラズマ処理することが好ましい。
なお、バンクB、Bに対する撥液化処理により、先に親液化処理した基板P表面に対し多少は影響があるものの、特に基板Pがガラス等からなる場合には、撥液化処理によるフッ素基の導入が起こらないため、基板Pはその親液性、すなわち濡れ性が実質上損なわれることはない。
また、バンクB、Bについては、撥液性を有する材料(例えばフッ素基を有する樹脂材料)によって形成することにより、その撥液処理を省略するようにしてもよい。
これらバンク形成工程、残渣処理工程及び撥液化処理工程により、薄膜パターニング用基板が形成される。
【0033】
(材料配置工程及び中間乾燥工程)
次に、液滴吐出装置IJによる液滴吐出法を用いて、配線パターン形成材料を基板P上の溝部31に塗布する。なお、ここでは、導電性材料として有機銀化合物を用い、溶媒(分散媒)としてジエチレングリコールジエチルエーテルを用いたインク(機能液)を吐出する。
【0034】
すなわち、材料配置工程では、図3(b)に示すように、液体吐出ヘッド1から配線パターン形成材料を含む液体材料を液滴32にして吐出し、その液滴32を基板P上の溝部31に配置する。液滴吐出の条件としては、インク重量4ng/dot、インク速度(吐出速度)5〜7m/secで行った。なお、本例では、液滴32の直径DがバンクB、Bによる溝部31の幅W(本例では溝部31の開口部における幅)より大きいものとする。具体的には、溝部31の開口部における幅Wが10μm以下程度であり、液滴32の直径Dが15〜20μm程度であるものとする。
【0035】
このような液滴32を液滴吐出ヘッド1から吐出し、溝部31内に液状体を配すと、液滴32はその直径Dが溝部31の幅Wより大きいことから、図3(c)中二点鎖線で示すようにその一部がバンクB、B上にのってしまう。ところが、バンク32、32の表面が撥液性となっておりしかもテーパ状になっていることから、これらバンクB、B上にのった液滴32部分がバンクB、Bからはじかれ、さらには溝部31の毛細管現象によって該溝部31内に流れ落ちることにより、図3(c)中実線で示すように液滴32が溝部31内に入り込む。
【0036】
また、溝部31内に吐出され、あるいはバンクB、Bから流れ落ちた液状体32aは、基板Pが親液処理されていることからより広がり易くなっており、これによって液状体32aはより均一に溝部31内を埋め込むようになる。したがって、溝部31の幅Wが液滴32の直径Dより狭い(小さい)にもかかわらず、溝部31内に向けて吐出された液滴32(液状体32a)は、溝部31内に良好に入り込んでこれを均一に埋め込むようになる。
【0037】
(中間乾燥工程)
基板Pに液滴を吐出した後、分散媒の除去のため、必要に応じて乾燥処理(中間乾燥)をする。乾燥処理は、例えば基板Pを加熱する通常のホットプレート、電気炉などによる加熱処理によって行うことができる。本実施形態では、例えば180℃加熱を60分間程度行う。この加熱はN2雰囲気下など、必ずしも大気中で行う必要はない。
また、この乾燥処理は、ランプアニールによって行なうこともできる。
ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを光源として使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態では100W以上1000W以下の範囲で十分である。
この中間乾燥工程と上記材料配置工程とを繰り返し行うことにより、所望の膜厚に形成することができる。
【0038】
(焼成工程)
吐出工程後の導電性材料は例えば、有機銀化合物の場合、導電性を得るために、熱処理を行ない、有機銀化合物の有機分を除去し銀粒子を残留させる必要がある。そのため、吐出工程後の基板には熱処理及び/又は光処理が施される。
【0039】
熱処理及び/又は光処理は通常大気中で行なわれるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行なうこともできる。熱処理及び/又は光処理の処理温度は、分散媒の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子や有機銀化合物の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング剤の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して適宜決定される。
たとえば、有機銀化合物の有機分を除去するためには、約200℃で焼成することが必要である。また、プラスチックなどの基板を使用する場合には、室温以上100℃以下で行なうことが好ましい。
以上の工程により吐出工程後の導電性材料(有機銀化合物)は銀粒子の残留により、導電性膜に変換されることで、図3(d)に示すように、連続した膜としての導電性パターン、すなわち配線パターン(薄膜パターン)33を得る。
【0040】
(実施例)
バンクが形成されたガラス基板を、プラズマパワーが550W、4フッ化メタンガス流量が100ml/min、Heガス流量が10L/min、プラズマ放電電極に対する基体搬送速度が2mm/secの条件で実施した所、有機銀化合物(ジエチレングリコールジメチルエーテル溶媒)の接触角は、撥液化処理前のバンクBに対しては10°以下であったのに対し、撥液化処理後のバンクBに対しては66.2°になった。また、純水の接触角は撥液化処理前のバンクBに対しては69.3°であったのに対し、撥液化処理後のバンクBに対しては104.1°になった。なお、いずれの場合もガラス基板の溝部31に対する接触角は15°以下であり、溝部31とバンクBとに対する接触角の差は40°以上となった。
【0041】
また、上述した液滴吐出装置IJを用いて有機銀化合物の液滴を吐出したところ、上記撥液化処理前の基板(バンク材;有機系感光性材料)においては溝部31の幅Wが100μmでは溝部31に液状体を埋め込むことができたが、幅Wが75μmでは十分に埋め込むことができなかった。これに対して、撥液化処理後の基板においては幅Wが25μm及び10μmの微細幅であっても埋め込むことができた。
【0042】
このように、本実施の形態では、パターニング用の基板として液状体の溝部31とバンクBに対する接触角の差を40°以上とすることで、液滴の一部がバンクBにのった場合でも、溝部31内に入り込ませることが可能になり、バンクB、B間の幅で規定された細線パターンを得ることができる。特に、本実施の形態では、液状体の溝部31に対する接触角を15°以下とすることで、液滴よりも幅が狭い溝であっても液状体で埋めて細線化を実現できるとともに、溝部31の液状体が基板P上でより塗れ拡がり易くなり、より均一に溝部31を埋め込むことができる。そのため、間隔をあけて吐出した液状体を溝部31において分断することなく一体化することが可能となり、断線等の不良が生じることを防止することができ、デバイスとしての品質も向上させることが可能である。
【0043】
(第2実施形態)
次に、本発明の配線パターン形成方法(パターン形成方法)の第2実施形態として、基板上に導電膜配線を形成する方法について図4を参照して説明する。本実施形態に係る配線パターン形成方法は、上述した配線パターン用のインクを基板P上に配置し、その基板P上に配線用の導電膜パターン(導電性膜)を形成するものであり、表面処理工程、材料配置工程及び熱処理/光処理工程から概略構成される。
以下、各工程毎に詳細に説明する。
【0044】
(表面処理工程)
表面処理工程は、基板表面を撥液化する撥液化処理工程と、撥液化された基板表面を親液化する親液化処理工程とに大別される。
撥液化処理工程では、導電膜配線を形成する基板の表面を、液体材料に対して撥液性に加工する。具体的には、導電性微粒子を含有した液体材料の接触角が、後述する被塗布領域に対する接触角との差が40°以上、好ましくは50°以上となるように基板に対して表面処理を施す。
表面の撥液性(濡れ性)を制御する方法としては、例えば、基板の表面に自己組織化膜を形成する方法を採用できる。
【0045】
自己組織膜形成法では、導電膜配線を形成すべき基板の表面に、有機分子膜などからなる自己組織化膜を形成する。
基板表面を処理するための有機分子膜は、基板に結合可能な官能基と、その反対側に親液基あるいは撥液基といった基板の表面性を改質する(表面エネルギーを制御する)官能基と、これらの官能基を結ぶ炭素の直鎖あるいは一部分岐した炭素鎖とを備えており、基板に結合して自己組織化して分子膜、例えば単分子膜を形成する。
【0046】
ここで、自己組織化膜とは、基板の下地層等の構成原子と反応可能な結合性官能基とそれ以外の直鎖分子とからなり、直鎖分子の相互作用により極めて高い配向性を有する化合物を、配向させて形成された膜である。この自己組織化膜は、単分子を配向させて形成されているので、極めて膜厚を薄くすることができ、しかも、分子レベルで均一な膜となる。すなわち、膜の表面に同じ分子が位置するため、膜の表面に均一でしかも優れた撥液性や親液性を付与することができる。
【0047】
上記の高い配向性を有する化合物として、例えばフルオロアルキルシランを用いることにより、膜の表面にフルオロアルキル基が位置するように各化合物が配向されて自己組織化膜が形成され、膜の表面に均一な撥液性が付与される。
自己組織化膜を形成する化合物としては、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリクロロシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン(以下「FAS」という)を例示できる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、FASを用いることにより、基板との密着性と良好な撥液性とを得ることができる。
【0048】
FASは、一般的に構造式RnSiX(4−n)で表される。ここでnは1以上3以下の整数を表し、Xはメトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子などの加水分解基である。またRはフルオロアルキル基であり、(CF3)(CF2)x(CH2)yの(ここでxは0以上10以下の整数を、yは0以上4以下の整数を表す)構造を持ち、複数個のR又はXがSiに結合している場合には、R又はXはそれぞれすべて同じでもよく、異なっていてもよい。Xで表される加水分解基は加水分解によりシラノールを形成して、基板(ガラス、シリコン)の下地のヒドロキシル基と反応してシロキサン結合で基板と結合する。一方、Rは表面に(CF2)等のフルオロ基を有するため、基板の下地表面を濡れない(表面エネルギーが低い)表面に改質する。
【0049】
有機分子膜などからなる自己組織化膜は、上記の原料化合物と基板とを同一の密閉容器中に入れておき、室温で2〜3日程度の間放置することにより基板上に形成される。また、密閉容器全体を100℃に保持することにより、3時間程度で基板上に形成される。これらは気相からの形成法であるが、液相からも自己組織化膜を形成できる。例えば、原料化合物を含む溶液中に基板を浸積し、洗浄、乾燥することで基板上に自己組織化膜が形成される。
なお、自己組織化膜を形成する前に、基板表面に紫外光を照射したり、溶媒により洗浄したりして、基板表面の前処理を施すことが望ましい。
このように、自己組織膜形成法を実施することにより、図4(a)に示されるように、基板Pの表面に撥液性膜Fが形成される。
【0050】
次に、配線パターン形成材料を塗布して配線パターンを形成すべき被塗布領域の撥液性を緩和して親液性を付与することで(親液化処理)、基板表面の濡れ性を制御する。
以下、親液化処理について説明する。
親液化処理としては、波長170〜400nmの紫外光を照射する方法が挙げられる。このとき、配線パターンに応じたマスクを用いて紫外光を照射することで、一旦形成した撥液性膜Fの中、配線部分のみ部分的に変質させて撥液性を緩和して親液化することができる。つまり、上記撥液化処理及び親液化処理を施すことにより、図4(b)に示されるように、基板Pには、配線パターンが形成されるべき位置に親液性を付与された被塗布領域H1と、被塗布領域H1を囲む撥液性膜Fで構成される撥液領域H2とが形成される。
なお、撥液性の緩和の程度は紫外光の照射時間で調整できるが、紫外光の強度、波長、熱処理(加熱)との組み合わせ等によって調整することもできる。本実施の形態では、導電性微粒子を含有した液体材料の被塗布領域H1に対する接触角と撥液領域H2に対する接触角との差が40°以上となるように、被塗布領域H1に対する接触角が15°以下となる条件で紫外光を照射する。
【0051】
(材料配置工程)
次に、液滴吐出装置IJによる液滴吐出法を用いて、配線パターン形成材料を基板P上の被塗布領域H1に塗布する。なお、ここでは、機能液(配線パターン用インク)として、導電性微粒子を溶媒(分散媒)に分散させた分散液を吐出する。ここで用いられる導電性微粒子は、金、銀、銅、パラジウム、ニッケルの何れかを含有する金属微粒子の他、導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。
【0052】
すなわち、材料配置工程では、図4(c)に示すように、液体吐出ヘッド1から配線パターン形成材料を含む液体材料を液滴にして吐出し、その液滴を基板P上の被塗布領域H1に配置する。液滴吐出の条件としては、インク重量7ng/dot、インク速度(吐出速度)5〜7m/secで行った。
このとき、撥液領域H2は撥液性が付与されているため、吐出された液滴の一部が撥液領域H2にのっても撥液領域H2からはじかれ、図4(d)に示されるように、撥液領域H2間の被塗布領域H1に溜まるようになる。さらに、被塗布領域H1は親液性を付与されているため、吐出された液状体が被塗布領域H1にてより拡がり易くなり、これによって液状体が、分断されることなく所定位置内でより均一に被塗布領域H1を埋め込むようにすることができる。
【0053】
(熱処理/光処理工程)
吐出工程後の導電性材料は、微粒子間の電気的接触をよくするために、分散媒を完全に除去する必要がある。また、導電性微粒子の表面に分散性を向上させるために有機物などのコーティング材がコーティングされている場合には、このコーティング材も除去する必要がある。そのため、吐出工程後の基板には熱処理及び/又は光処理が施される。
【0054】
熱処理及び/又は光処理は通常大気中で行なわれるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。熱処理及び/又は光処理の処理温度は、分散媒の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング剤の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して適宜決定される。
【0055】
例えば、有機物からなるコーティング剤を除去するためには、約300℃で焼成することが必要である。また、プラスチックなどの基板を使用する場合には、室温以上100℃以下で行なうことが好ましい。
熱処理及び/又は光処理は、例えばホットプレート、電気炉などの加熱手段を用いた一般的な加熱処理の他に、ランプアニールを用いて行ってもよい。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態例では100W以上1000W以下の範囲で十分である。
上記熱処理及び/又は光処理により、微粒子間の電気的接触が確保され、導電膜に変換される。
以上説明した一連の工程により、基板上に線状の導電膜パターン(導電膜配線)が形成される。
【0056】
本実施の形態では、パターニング用基板として機能液の被塗布領域H1と撥液領域H2とに対する接触角の差を40°以上とすることで、液滴の一部が撥液領域H2にのった場合でも、被塗布領域H1内に流れ込ませることが可能になり、撥液領域H2間の幅で規定された細線パターンを得ることができる。特に、本実施の形態では、液状体の被塗布領域H1に対する接触角を15°以下とすることで、被塗布領域H1の液状体が基板P上でより塗れ拡がり易くなり、より均一に被塗布領域H1を埋め込むことができる。そのため、間隔をあけて吐出した液状体を被塗布領域H1において分断することなく一体化することが可能となり、断線等の不良が生じることを防止することができ、デバイスとしての品質も向上させることが可能である。
【0057】
(第3実施形態)
第3実施形態として、本発明の電気光学装置の一例である液晶表示装置について説明する。図5は、本発明に係る液晶表示装置について、各構成要素とともに示す対向基板側から見た平面図であり、図6は図5のH−H’線に沿う断面図である。図7は、液晶表示装置の画像表示領域においてマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図で、図8は、液晶表示装置の部分拡大断面図である。なお、以下の説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0058】
図5及び図6において、本実施の形態の液晶表示装置(電気光学装置)100は、対をなすTFTアレイ基板10と対向基板20とが光硬化性の封止材であるシール材52によって貼り合わされ、このシール材52によって区画された領域内に液晶50が封入、保持されている。シール材52は、基板面内の領域において閉ざされた枠状に形成されてなり、液晶注入口を備えず、封止材にて封止された痕跡がない構成となっている。
【0059】
シール材52の形成領域の内側の領域には、遮光性材料からなる周辺見切り53が形成されている。シール材52の外側の領域には、データ線駆動回路201及び実装端子202がTFTアレイ基板10の一辺に沿って形成されており、この一辺に隣接する2辺に沿って走査線駆動回路204が形成されている。TFTアレイ基板10の残る一辺には、画像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路204の間を接続するための複数の配線205が設けられている。また、対向基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通材206が配設されている。
【0060】
なお、データ線駆動回路201及び走査線駆動回路204をTFTアレイ基板10の上に形成する代わりに、例えば、駆動用LSIが実装されたTAB(Tape Automated Bonding)基板とTFTアレイ基板10の周辺部に形成された端子群とを異方性導電膜を介して電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。なお、液晶表示装置100においては、使用する液晶50の種類、すなわち、TN(Twisted Nematic)モード、C−TN法、VA方式、IPS方式等の動作モードや、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、位相差板、偏光板等が所定の向きに配置されるが、ここでは図示を省略する。
また、液晶表示装置100をカラー表示用として構成する場合には、対向基板20において、TFTアレイ基板10の後述する各画素電極に対向する領域に、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタをその保護膜とともに形成する。
【0061】
このような構造を有する液晶表示装置100の画像表示領域においては、図7に示すように、複数の画素100aがマトリクス状に構成されているとともに、これらの画素100aの各々には、画素スイッチング用のTFT(スイッチング素子)30が形成されており、画素信号S1、S2、…、Snを供給するデータ線6aがTFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画素信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次で供給してもよく、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。また、TFT30のゲートには走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmをこの順に線順次で印加するように構成されている。
【0062】
画素電極19は、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけオン状態とすることにより、データ線6aから供給される画素信号S1、S2、…、Snを各画素に所定のタイミングで書き込む。このようにして画素電極19を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画素信号S1、S2、…、Snは、図6に示す対向基板20の対向電極121との間で一定期間保持される。なお、保持された画素信号S1、S2、…、Snがリークするのを防ぐために、画素電極19と対向電極121との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量60が付加されている。例えば、画素電極19の電圧は、ソース電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ蓄積容量60により保持される。これにより、電荷の保持特性は改善され、コントラスト比の高い液晶表示装置100を実現することができる。
【0063】
図8は、ボトムゲート型TFT30を有する液晶表示装置100の部分拡大断面図であって、本実施形態では、ボトムゲート型の画素スイッチング用TFT30の上方に、蓄積容量60が構築されている。より具体的には、TFTアレイ基板10(上記配線パターン形成方法における基板Pに相当)上で、走査線3aからデータ線6aに沿って基板上に突出したゲート電極203a部分上に、ゲート絶縁膜42を介して半導体層210aが積層されている。このゲート電極203a部分に対向する半導体層210aの部分がチャネル領域とされている。半導体層210a上には、ソース電極204a及びドレイン電極204bが、データ線6aと同一膜から形成されている。ソース電極204a及びドレイン電極204bと半導体層210aとの間には夫々、オーミック接合を得るための例えばn+型a−Si(アモルファスシリコン)層からなる接合層205a及び205bが積層されており、チャネル領域の中央部における半導体層210a上には、チャネルを保護するための絶縁性のエッチストップ膜208が形成されている。ドレイン電極204bの端部上には、層間絶縁膜212を介して島状の容量電極222が積層されており、更に容量電極222上には、誘電体膜221を介して容量線3b(固定電位側容量電極)が積層されている。そして、容量線3bは、画像表示領域内をストライプ状に伸びて画像表示領域外まで延設されて、固定電位に落とされている。
【0064】
蓄積容量60の上方に画素電極19が配置されており、容量線3bと画素電極19との間には層間絶縁膜216が積層されている。層間絶縁膜216に開孔されたコンタクトホール217を介して、画素電極19と容量電極222とが接続されて、容量電極222は、画素電極電位とされている。そして、容量電極222には、TFT30のチャネル領域の上方にあたる領域に孔状の開口部222aが設けられている。
上記構成のTFTでは、上述した液滴吐出装置IJを用いて、例えば銀化合物の液滴を吐出することでゲート線、ソース線、ドレイン線等を形成することができるため、細線化による小型・薄型化が実現され、断線等の不良が生じない高品質の液晶表示装置を得ることができる。
【0065】
(第4実施形態)
上記実施の形態では、TFT30を液晶表示装置100の駆動のためのスイッチング素子として用いる構成としたが、液晶表示装置以外にも例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示デバイスに応用が可能である。有機EL表示デバイスは、蛍光性の無機および有機化合物を含む薄膜を、陰極と陽極とで挟んだ構成を有し、前記薄膜に電子および正孔(ホール)を注入して励起させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが再結合する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光させる素子である。そして、上記のTFT30を有する基板上に、有機EL表示素子に用いられる蛍光性材料のうち、赤、緑および青色の各発光色を呈する材料すなわち発光層形成材料及び正孔注入/電子輸送層を形成する材料をインクとし、各々をパターニングすることで、自発光フルカラーELデバイスを製造することができる。
本発明におけるデバイス(電気光学装置)の範囲にはこのような有機ELデバイスをも含むものであり、小型・薄型化が実現され、断線等の不良が生じない高品質の有機ELデバイスを得ることができる。
【0066】
図9は、前記液滴吐出装置IJにより一部の構成要素が製造された有機EL装置の側断面図である。図9を参照しながら、有機EL装置の概略構成を説明する。
図9において、有機EL装置301は、基板311、回路素子部321、画素電極331、バンク部341、発光素子351、陰極361(対向電極)、および封止基板371から構成された有機EL素子302に、フレキシブル基板(図示略)の配線および駆動IC(図示略)を接続したものである。回路素子部321は、アクティブ素子であるTFT30が基板311上に形成され、複数の画素電極331が回路素子部321上に整列して構成されたものである。そして、TFT30を構成するゲート配線61が、上述した実施形態の配線パターンの形成方法により形成されている。
【0067】
各画素電極331間にはバンク部341が格子状に形成されており、バンク部341により生じた凹部開口344に、発光素子351が形成されている。なお、発光素子351は、赤色の発光をなす素子と緑色の発光をなす素子と青色の発光をなす素子とからなっており、これによって有機EL装置301は、フルカラー表示を実現するものとなっている。陰極361は、バンク部341および発光素子351の上部全面に形成され、陰極361の上には封止用基板371が積層されている。
【0068】
有機EL素子を含む有機EL装置301の製造プロセスは、バンク部341を形成するバンク部形成工程と、発光素子351を適切に形成するためのプラズマ処理工程と、発光素子351を形成する発光素子形成工程と、陰極361を形成する対向電極形成工程と、封止用基板371を陰極361上に積層して封止する封止工程とを備えている。
【0069】
発光素子形成工程は、凹部開口344、すなわち画素電極331上に正孔注入層352および発光層353を形成することにより発光素子351を形成するもので、正孔注入層形成工程と発光層形成工程とを具備している。そして、正孔注入層形成工程は、正孔注入層352を形成するための液状体材料を各画素電極331上に吐出する第1吐出工程と、吐出された液状体材料を乾燥させて正孔注入層352を形成する第1乾燥工程とを有している。また、発光層形成工程は、発光層353を形成するための液状体材料を正孔注入層352の上に吐出する第2吐出工程と、吐出された液状体材料を乾燥させて発光層353を形成する第2乾燥工程とを有している。なお、発光層353は、前述したように赤、緑、青の3色に対応する材料によって3種類のものが形成されるようになっており、したがって前記の第2吐出工程は、3種類の材料をそれぞれに吐出するために3つの工程からなっている。
この発光素子形成工程において、正孔注入層形成工程における第1吐出工程と、発光層形成工程における第2吐出工程とで前記の液滴吐出装置IJを用いることができる。
【0070】
(第5実施形態)
上述した実施形態においては、本発明に係るパターン形成方法を使って、TFT(薄膜トランジスタ)のゲート配線を形成しているが、ソース電極、ドレイン電極、画素電極などの他の構成要素を製造することも可能である。以下、TFTを製造する方法について図10〜図13を参照しながら説明する。
【0071】
図10に示すように、まず、洗浄したガラス基板510の上面に、1画素ピッチの1/20〜1/10の溝511aを設けるための第1層目のバンク511が、フォトリソグラフィ法に基づいて形成される。このバンク511としては、形成後に光透過性と撥液性を備える必要があり、その素材としては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、メラミン樹脂などの高分子材料のほかポリシラザンなどの無機系の材料が好適に用いられる。
【0072】
この形成後のバンク511に撥液性を持たせるために、CF4プラズマ処理等(フッ素成分を有するガスを用いたプラズマ処理)を施す必要があるが、代わりに、バンク511の素材自体に予め撥液成分(フッ素基等)を充填しておいても良い。この場合には、CF4プラズマ処理等を省略することができる。
【0073】
以上のようにして撥液化されたバンク511に対する、吐出インクの接触角としては、40°以上、またガラス面に対する接触角としては、10°以下を確保することが好ましい。すなわち、本発明者らが試験により確認した結果、例えば導電性微粒子(テトラデカン溶媒)の処理後の接触角は、バンク511の素材としてアクリル樹脂系を採用した場合には約54.0°(未処理の場合には10°以下)を確保することができる。なお、これら接触角は、プラズマパワー550Wのもと、4フッ化メタンガスを0.1L/minで供給する処理条件下で得たものである。
【0074】
上記第1層目のバンク形成工程に続くゲート走査電極形成工程(第1回目の導電性パターン形成工程)では、バンク511で区画された描画領域である前記溝511a内を満たすように、導電性材料を含む液滴をインクジェットで吐出することでゲート走査電極512を形成する。そして、ゲート走査電極512を形成するときに、本発明に係るパターンの形成方法が適用される。
【0075】
この時の導電性材料としては、Ag,Al,Au,Cu,パラジウム、Ni,W−si,導電性ポリマーなどが好適に採用可能である。このようにして形成されたゲート走査電極512は、バンク511に十分な撥液性が予め与えられているので、溝511aからはみ出ることなく微細な配線パターンを形成することが可能となっている。
【0076】
以上の工程により、基板510上には、バンク511とゲート走査電極512からなる平坦な上面を備えた銀(Ag)からなる第1の導電層A1が形成される。
【0077】
また、溝511a内における良好な吐出結果を得るためには、図10に示すように、この溝511aの形状として準テーパ(吐出元に向かって開く向きのテーパ形状)を採用するのが好ましい。これにより、吐出された液滴を十分に奥深くまで入り込ませることが可能となる。
【0078】
次に、図11に示すように、プラズマCVD法によりゲート絶縁膜513、活性層510、コンタクト層509の連続成膜を行う。ゲート絶縁膜513として窒化シリコン膜、活性層510としてアモルファスシリコン膜、コンタクト層509としてn+シリコン膜を原料ガスやプラズマ条件を変化させることにより形成する。CVD法で形成する場合、300℃〜350℃の熱履歴が必要になるが、無機系の材料をバンクに使用することで、透明性、耐熱性に関する問題を回避することが可能である。
【0079】
上記半導体層形成工程に続く第2層目のバンク形成工程では、図12に示すように、ゲート絶縁膜513の上面に、1画素ピッチの1/20〜1/10でかつ前記溝511aと交差する溝514aを設けるための2層目のバンク514を、フォトリソグラフィ法に基づいて形成する。このバンク514としては、形成後に光透過性と撥液性を備える必要があり、その素材としては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、メラミン樹脂などの高分子材料のほかポリシラザンなどの無機系の材料が好適に用いられる。
【0080】
この形成後のバンク514に撥液性を持たせるためにCF4プラズマ処理等(フッ素成分を有するガスを用いたプラズマ処理)を施す必要があるが、代わりに、バンク514の素材自体に予め撥液成分(フッ素基等)を充填しておくものとしても良い。この場合には、CF4プラズマ処理等を省略することができる。
【0081】
以上のようにして撥液化されたバンク514に対する、吐出インクの接触角としては、40°以上を確保することが好ましい。
【0082】
上記第2層目のバンク形成工程に続くソース・ドレイン電極形成工程(第2回目の導電性パターン形成工程)では、バンク514で区画された描画領域である前記溝514a内を満たすように、導電性材料を含む液滴をインクジェットで吐出することで、図13に示すように、前記ゲート走査電極512に対して交差するソース電極515及びソース電極516が形成される。そして、ソース電極515及びドレイン電極516を形成するときに、本発明に係るパターンの形成方法が適用される。
【0083】
この時の導電性材料としては、Ag,Al,Au,Cu,パラジウム、Ni,W−si,導電性ポリマーなどが好適に採用可能である。このようにして形成されたソース電極515及びドレイン電極516は、バンク514に十分な撥液性が予め与えられているので、溝514aからはみ出ることなく微細な配線パターンを形成することが可能となっている。
【0084】
また、ソース電極515及びドレイン電極516を配置した溝514aを埋めるように絶縁材料517が配置される。以上の工程により、基板510上には、バンク514と絶縁材料517からなる平坦な上面520が形成される。
【0085】
そして、絶縁材料517にコンタクトホール519を形成するとともに、上面520上にパターニングされた画素電極(ITO)518を形成し、コンタクトホール519を介してドレイン電極516と画素電極518とを接続することで、TFTが形成される。
【0086】
(第6実施形態)
図14は、液晶表示装置の別の実施形態を示す図である。
図14に示す液晶表示装置(電気光学装置)901は、大別するとカラーの液晶パネル(電気光学パネル)902と、液晶パネル902に接続される回路基板903とを備えている。また、必要に応じて、バックライト等の照明装置、その他の付帯機器が液晶パネル902に付設されている。
【0087】
液晶パネル902は、シール材904によって接着された一対の基板905a及び基板905bを有し、これらの基板905bと基板905bとの間に形成される間隙、いわゆるセルギャップには液晶が封入されている。これらの基板905a及び基板905bは、一般には透光性材料、例えばガラス、合成樹脂等によって形成されている。基板905a及び基板905bの外側表面には偏光板906a及び偏光板906bが貼り付けられている。なお、図14においては、偏光板906bの図示を省略している。
【0088】
また、基板905aの内側表面には電極907aが形成され、基板905bの内側表面には電極907bが形成されている。これらの電極907a、907bはストライプ状または文字、数字、その他の適宜のパターン状に形成されている。また、これらの電極907a、907bは、例えばITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)等の透光性材料によって形成されている。基板905aは、基板905bに対して張り出した張り出し部を有し、この張り出し部に複数の端子908が形成されている。これらの端子908は、基板905a上に電極907aを形成するときに電極907aと同時に形成される。従って、これらの端子908は、例えばITOによって形成されている。これらの端子908には、電極907aから一体に延びるもの、及び導電材(不図示)を介して電極907bに接続されるものが含まれる。
【0089】
回路基板903には、配線基板909上の所定位置に液晶駆動用ICとしての半導体素子900が実装されている。なお、図示は省略しているが、半導体素子900が実装される部位以外の部位の所定位置には抵抗、コンデンサ、その他のチップ部品が実装されていてもよい。配線基板909は、例えばポリイミド等の可撓性を有するフィルム状のベース基板911の上に形成されたCu等の金属膜をパターニングして配線パターン912を形成することによって製造されている。
【0090】
本実施形態では、液晶パネル902における電極907a、907b及び回路基板903における配線パターン912が上記デバイス製造方法によって形成されている。
本実施形態の液晶表示装置によれば、小型化、薄型化が実現され、断線等の不良が生じない高品質の液晶表示装置を得ることができる。
【0091】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態として、本発明の電気光学装置の一例であるプラズマ型表示装置について説明する。
図15は、本実施形態のプラズマ型表示装置500の分解斜視図を示している。
プラズマ型表示装置500は、互いに対向して配置された基板501、502、及びこれらの間に形成される放電表示部510を含んで構成される。
放電表示部510は、複数の放電室516が集合されたものである。複数の放電室516のうち、赤色放電室516(R)、緑色放電室516(G)、青色放電室516(B)の3つの放電室516が対になって1画素を構成するように配置されている。
【0092】
基板501の上面には所定の間隔でストライプ状にアドレス電極511が形成され、アドレス電極511と基板501の上面とを覆うように誘電体層519が形成されている。誘電体層519上には、アドレス電極511、511間に位置しかつ各アドレス電極511に沿うように隔壁515が形成されている。隔壁515は、アドレス電極511の幅方向左右両側に隣接する隔壁と、アドレス電極511と直交する方向に延設された隔壁とを含む。また、隔壁515によって仕切られた長方形状の領域に対応して放電室516が形成されている。
また、隔壁515によって区画される長方形状の領域の内側には蛍光体517が配置されている。蛍光体517は、赤、緑、青の何れかの蛍光を発光するもので、赤色放電室516(R)の底部には赤色蛍光体517(R)が、緑色放電室516(G)の底部には緑色蛍光体517(G)が、青色放電室516(B)の底部には青色蛍光体517(B)が各々配置されている。
【0093】
一方、基板502には、先のアドレス電極511と直交する方向に複数の表示電極512がストライプ状に所定の間隔で形成されている。さらに、これらを覆うように誘電体層513、及びMgOなどからなる保護膜514が形成されている。
基板501と基板502とは、前記アドレス電極511…と表示電極512…を互いに直交させるように対向させて相互に貼り合わされている。
上記アドレス電極511と表示電極512は図示略の交流電源に接続されている。各電極に通電することにより、放電表示部510において蛍光体517が励起発光し、カラー表示が可能となる。
【0094】
本実施形態では、上記アドレス電極511、及び表示電極512がそれぞれ、上述した配線パターン形成方法に基づいて形成されているため、小型・薄型化が実現され、断線等の不良が生じない高品質のプラズマ型表示装置を得ることができる。
【0095】
(第8実施形態)
続いて、第8実施形態として、非接触型カード媒体の実施形態について説明する。図16に示すように、本実施形態に係る非接触型カード媒体(電子機器)400は、カード基体402とカードカバー418から成る筐体内に、半導体集積回路チップ408とアンテナ回路412を内蔵し、図示されない外部の送受信機と電磁波または静電容量結合の少なくとも一方により電力供給あるいはデータ授受の少なくとも一方を行うようになっている。
【0096】
本実施形態では、上記アンテナ回路412が、上記実施形態に係る配線パターン形成方法によって形成されている。
本実施形態の非接触型カード媒体によれば、小型・薄型化が実現され、断線等の不良が生じない高品質の非接触型カード媒体を得ることができる。
なお、本発明に係るデバイス(電気光学装置)としては、上記の他に、基板上に形成された小面積の薄膜に膜面に平行に電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利用する表面伝導型電子放出素子等にも適用可能である。
【0097】
(第9実施形態)
第9実施形態として、本発明の電子機器の具体例について説明する。
図17(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図17(a)において、600は携帯電話本体を示し、601は上記実施形態の液晶表示装置を備えた液晶表示部を示している。
図17(b)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図17(b)において、700は情報処理装置、701はキーボードなどの入力部、703は情報処理本体、702は上記実施形態の液晶表示装置を備えた液晶表示部を示している。
図17(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図17(c)において、800は時計本体を示し、801は上記実施形態の液晶表示装置を備えた液晶表示部を示している。
図17(a)〜(c)に示す電子機器は、上記実施形態の液晶表示装置を備えたものであるので、小型化、薄型化及び高品質化が可能となる。
なお、本実施形態の電子機器は液晶装置を備えるものとしたが、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ型表示装置等、他の電気光学装置を備えた電子機器とすることもできる。
【0098】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0099】
例えば、バンクに撥液性を付与するためにプラズマ処理を行ったが、上述したように、フッ素またはフッ素化合物を含有する材料にてバンクを形成する構成としてもよい。また、プラズマ処理以外の処理を行う構成としてもよい。
さらに、上記実施の形態では、溝部の幅よりも大径の液滴を吐出する構成としたが、これに限定されるものではなく、溝部の幅の方が大きい構成であってもよい。
【0100】
また、上記実施の形態では基板P上の被塗布領域H1に対する接触角が15°以下としたが、これに限定されるものではなく、撥液領域H2と被塗布領域H1とに対する接触角の差が40°以上であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】液滴吐出装置の概略斜視図である。
【図2】ピエゾ方式による液状体の吐出原理を説明するための図である。
【図3】第1実施形態に係る配線パターン形成する手順を示す図である。
【図4】第2実施形態に係る配線パターン形成する手順を示す図である。
【図5】液晶表示装置を対向基板の側から見た平面図である。
【図6】図5のH−H’線に沿う断面図である。
【図7】液晶表示装置の等価回路図である。
【図8】液晶表示装置の部分拡大断面図である。
【図9】有機EL装置の部分拡大断面図である。
【図10】薄膜トランジスタを製造する工程を説明するための図である。
【図11】薄膜トランジスタを製造する工程を説明するための図である。
【図12】薄膜トランジスタを製造する工程を説明するための図である。
【図13】薄膜トランジスタを製造する工程を説明するための図である。
【図14】液晶表示装置の別形態を示す図である。
【図15】プラズマ型表示装置の分解斜視図である。
【図16】非接触型カード媒体の分解斜視図である。
【図17】本発明の電子機器の具体例を示す図である。
【符号の説明】
【0102】
B…バンク、F…撥液性膜、H1…被塗布領域、H2…撥液領域、P…基板(薄膜パターニング用基板)、、31…溝部(被塗布領域)、32…液滴(機能液)、33…配線パターン(薄膜パターン)、100…液晶表示装置(電気光学装置)、400…非接触型カード媒体(電子機器)、500…プラズマ型表示装置(電気光学装置)、600…携帯電話本体(電子機器)、700…情報処理装置(電子機器)、800…時計本体(電子機器)
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブマトリクス基板の製造方法及び電気光学装置並びに電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体集積回路などの微細な配線パターンの製造方法としては、フォトリソグラフィー法が多用されている。一方、特許文献1、特許文献2などには、液滴吐出方式を用いた方法が開示されている。これら公報に開示されている技術は、パターン形成用材料を含んだ機能液を液滴吐出ヘッドから基板上に吐出することにより、パターン形成面に材料を配置(塗布)して配線パターンを形成するものであり、少量多種生産に対応可能であるなど大変有効であるとされている。
【0003】
ところで、近年ではデバイスを構成する回路の高密度化がますます進み、例えば配線パターンについてもさらなる微細化、細線化が要求されている。
しかしながら、このような微細な配線パターンを前記の液滴吐出方式による方法によって形成しようとした場合、特にその配線幅の精度を十分にだすのが難しい。そこで、特許文献3及び特許文献4には、基板上に仕切部材であるバンクを設けるとともに、バンクの上部を撥液性にし、それ以外の部分が親液性となるように表面処理を施す技術が記載されている。
この技術を用いることにより、細線であっても配線パターンの幅をバンク間の幅で規定することができるとともに、吐出した液滴の一部がバンクにのったとしても、撥液性のバンクではじかれてバンク間の溝の親液部に流れ落ちるようにすることができる。
【0004】
一方、バンクはフォトリソグラフィ法を用いて形成され、コスト高につながる可能性があることから、予め撥液部と親液部とのパターンを形成した基板の親液部に、液滴吐出方式により選択的に液体材料(機能液)を吐出することも提案されている。この場合、導電性微粒子を分散させた液体材料は、親液部に溜まりやすくなるため、バンクを形成することなく、位置精度を保って配線パターンを形成することが可能である。
【特許文献1】特開平11−274671号公報
【特許文献2】特開2000−216330号公報
【特許文献3】特開平9−203803号公報
【特許文献4】特開平9−230129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
撥液部と親液部との間で、液滴に対する濡れ性(親和性)の差が小さい場合、バンク上にのった液滴がはじかれても溝内に塗れ拡がらない可能性がある。
また、液滴径が溝幅よりも大きい場合、溝の上に着弾したままで残ってしまうことも考えられる。
一方、撥液部と親液部とがパターニングされた基板を用いる場合においても、撥液部と親液部との間で、液滴に対する濡れ性(親和性)の差が小さい場合、撥液部にのった液滴がはじかれても親液部内で十分に塗れ拡がらない可能性がある。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、着弾した液滴を確実に溝内に塗れ拡がらせて細線化を可能にするアクティブマトリクス基板の製造方法及び電気光学装置並びに電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用している。
本発明のアクティブマトリクス基板の製造方法は、アクティブマトリクス基板の製造方法において、基板上にゲート配線を形成する第1の工程と、前記ゲート配線上にゲート絶縁膜を形成する第2の工程と、前記ゲート絶縁膜を介して半導体層を積層する第3の工程と、前記ゲート絶縁層の上にソース電極及びドレイン電極を形成する第4の工程と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極上に絶縁材料を配置する第5の工程と、前記絶縁材料を配置した上に画素電極を形成する第6の工程と、を有し、前記第1の工程及び前記第4の工程及び前記第6の工程の少なくとも一つの工程では、機能液が塗布される被塗布領域と、該被塗布領域を囲んで形成されたバンクとを有し、前記被塗布領域に対する前記機能液の接触角と、前記バンクに対する前記機能液の接触角との差が40°以上であり、前記バンク間の溝幅が、吐出された前記機能液の液滴の直径よりも小さい基板に対して機能液を吐出することを特徴とするものである。
【0008】
従って、本発明では、吐出した機能液の一部がバンクにのった場合でも、機能液の流動性や毛細管現象等により機能液を確実にバンク間の被塗布領域に入り込ませることが可能になり、液滴よりも幅が狭い溝であっても液状体で埋めて、バンク間の幅で規定された細線パターンを得ることができる。また、被塗布領域に対する前記機能液の接触角は15°以下が好ましく、この場合、被塗布領域の機能液が基板上でより塗れ拡がり易くなり、より均一に被塗布領域を埋め込むことができる。そのため、被塗布領域において、間隔をあけて吐出した機能液を分断することなく一体化することができ、断線等の不良が生じることを防止することができる。
また、本発明によれば、ゲート配線、ソース電極及びドレイン電極、画素電極に断線等の品質低下が生じず、細線のパターンが形成された薄型のアクティブマトリクス基板を得ることが可能になる。
【0009】
バンクに対して接触角を大きくする方法としては、プラズマ処理により表面改質を施したり、フッ素またはフッ素化合物を含有させる構成を採用できる。プラズマ処理を実施する場合には、処理時間を調整することで、撥液性を制御することが可能である。
【0010】
そして、本発明の電気光学装置は、上記のアクティブマトリクス基板を備えることを特徴としている。
また、本発明の電子機器は、上記の電気光学装置を備えることを特徴としている。
これにより、断線等の不良がなく、また細線パターンを有する小型・薄型の電気光学装置及び電子機器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のアクティブマトリクス基板の製造方法及び電気光学装置並びに電子機器の実施の形態を、図1ないし図17を参照して説明する。
(第1実施形態)
本実施の形態では、液滴吐出法によって液体吐出ヘッドのノズルから導電性微粒子を含む配線パターン(パターン)用インク(機能液)を液滴状に吐出し、基板上に導電性膜で形成された配線パターンを形成する場合の例を用いて説明する。
【0012】
この配線パターン用インクは、導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液や有機銀化合物や酸化銀ナノ粒子を溶媒(分散媒)に分散させた溶液からなるものである。
本実施の形態では、導電性微粒子として、例えば、金、銀、銅、パラジウム、及びニッケルのうちのいずれかを含有する金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに有機銀化合物や導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。
これらの導電性微粒子は、分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。
導電性微粒子の粒径は1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。0.1μmより大きいと、後述する液体吐出ヘッドのノズルに目詰まりが生じるおそれがある。また、1nmより小さいと、導電性微粒子に対するコーティング剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多となる。
【0013】
分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法(インクジェット法)への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0014】
上記導電性微粒子の分散液の表面張力は0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲内であることが好ましい。インクジェット法にて液体を吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、インク組成物のノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやすくなり、0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量や、吐出タイミングの制御が困難になる。表面張力を調整するため、上記分散液には、基板との接触角を大きく低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、液体の基板への濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものである。上記表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
【0015】
上記分散液の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。インクジェット法を用いて液体材料を液滴として吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合にはノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。
【0016】
配線パターンが形成される基板としては、ガラス、石英ガラス、Siウエハ、プラスチックフィルム、金属板など各種のものを用いることができる。また、これら各種の素材基板の表面に半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜などが下地層として形成されたものも含む。
【0017】
ここで、液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換式、電気熱変換方式、静電吸引方式などが挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御してノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に30kg/cm2程度の超高圧を印加してノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進してノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散してノズルから吐出されない。また、電気機械変換方式は、ピエゾ素子(圧電素子)がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって材料を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から材料を押し出してノズルから吐出させるものである。
【0018】
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。なお、液滴吐出法により吐出される液状材料(流動体)の一滴の量は、例えば1〜300ナノグラムである。
【0019】
次に、本発明に係るデバイスを製造する際に用いられるデバイス製造装置について説明する。
このデバイス製造装置としては、液滴吐出ヘッドから基板に対して液滴を吐出することによりデバイスを製造する液滴吐出装置(インクジェット装置)が用いられる。
【0020】
図1は、液滴吐出装置IJの概略構成を示す斜視図である。
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と、X軸方向駆動軸4と、Y軸方向ガイド軸5と、制御装置CONTと、ステージ7と、クリーニング機構8と、基台9と、ヒータ15とを備えている。
ステージ7は、この液滴吐出装置IJによりインク(液体材料)を設けられる基板Pを支持するものであって、基板Pを基準位置に固定する不図示の固定機構を備えている。
【0021】
液滴吐出ヘッド1は、複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッドであり、長手方向とY軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド1の下面にY軸方向に並んで一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルからは、ステージ7に支持されている基板Pに対して、上述した導電性微粒子を含むインクが吐出される。
【0022】
X軸方向駆動軸4には、X軸方向駆動モータ2が接続されている。X軸方向駆動モータ2はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからX軸方向の駆動信号が供給されると、X軸方向駆動軸4を回転させる。X軸方向駆動軸4が回転すると、液滴吐出ヘッド1はX軸方向に移動する。
Y軸方向ガイド軸5は、基台9に対して動かないように固定されている。ステージ7は、Y軸方向駆動モータ3を備えている。Y軸方向駆動モータ3はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからY軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ7をY軸方向に移動する。
【0023】
制御装置CONTは、液滴吐出ヘッド1に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。また、X軸方向駆動モータ2に液滴吐出ヘッド1のX軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を、Y軸方向駆動モータ3にステージ7のY軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
クリーニング機構8は、液滴吐出ヘッド1をクリーニングするものである。クリーニング機構8には、図示しないY軸方向の駆動モータが備えられている。このY軸方向の駆動モータの駆動により、クリーニング機構は、Y軸方向ガイド軸5に沿って移動する。クリーニング機構8の移動も制御装置CONTにより制御される。
ヒータ15は、ここではランプアニールにより基板Pを熱処理する手段であり、基板P上に塗布された液体材料に含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。このヒータ15の電源の投入及び遮断も制御装置CONTにより制御される。
【0024】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と基板Pを支持するステージ7とを相対的に走査しつつ基板Pに対して液滴を吐出する。ここで、以下の説明において、X軸方向を走査方向、X軸方向と直交するY軸方向を非走査方向とする。したがって、液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルは、非走査方向であるY軸方向に一定間隔で並んで設けられている。なお、図1では、液滴吐出ヘッド1は、基板Pの進行方向に対し直角に配置されているが、液滴吐出ヘッド1の角度を調整し、基板Pの進行方向に対して交差させるようにしてもよい。このようにすれば、液滴吐出ヘッド1の角度を調整することで、ノズル間のピッチを調節することが出来る。また、基板Pとノズル面との距離を任意に調節することが出来るようにしてもよい。
【0025】
図2は、ピエゾ方式による液体材料の吐出原理を説明するための図である。
図2において、液体材料(配線パターン用インク、機能液)を収容する液体室21に隣接してピエゾ素子22が設置されている。液体室21には、液体材料を収容する材料タンクを含む液体材料供給系23を介して液体材料が供給される。ピエゾ素子22は駆動回路24に接続されており、この駆動回路24を介してピエゾ素子22に電圧を印加し、ピエゾ素子22を変形させることにより、液体室21が変形し、ノズル25から液体材料が吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子22の歪み量が制御される。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子22の歪み速度が制御される。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
【0026】
次に、本発明の配線パターン形成方法の実施形態の一例として、基板上に導電膜配線を形成する方法について図3を参照して説明する。本実施形態に係る配線パターン形成方法は、上述した配線パターン用のインクを基板P上に配置し、その基板P上に配線用の導電膜パターンを形成するものであり、バンク形成工程、残渣処理工程、撥液化処理工程、材料配置工程及び中間乾燥工程、焼成工程から概略構成される。
以下、各工程毎に詳細に説明する。
【0027】
(バンク形成工程)
バンクは、仕切部材として機能する部材であり、バンクの形成はリソグラフィ法や印刷法等、任意の方法で行うことができる。例えば、リソグラフィ法を使用する場合は、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、ダイコート、ディップコート等所定の方法で、基板P上にバンクの高さに合わせて有機系感光性材料を塗布し、その上にレジスト層を塗布する。そして、バンク形状(配線パターン)に合わせてマスクを施しレジストを露光・現像することによりバンク形状に合わせたレジストを残す。最後にエッチングしてマスク以外の部分のバンク材料を除去する。また、下層が無機物または有機物で機能液に対し親液性を示す材料で、上層が有機物で撥液性を示す材料で構成された2層以上でバンク(凸部)を形成してもよい。
これにより、図3(a)に示されるように、配線パターンを形成すべき領域である溝部(被塗布領域)31を囲むように、例えば10μm幅でバンクB、Bが形成される。
なお、基板Pに対しては、有機材料塗布前に表面改質処理として、HMDS処理((CH3)3SiNHSi(CH3)3を蒸気状にして塗布する方法)が施されているが、図3ではその図示を省略している。
【0028】
バンクを形成する有機材料としては、液体材料に対してもともと撥液性を示す材料でも良いし、後述するように、プラズマ処理による撥液化が可能で下地基板との密着性が良くフォトリソグラフィによるパターニングがし易い絶縁有機材料でも良い。例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、メラミン樹脂等の高分子材料を用いることが可能である。
【0029】
(残渣処理工程(親液化処理工程))
次に、バンク間におけるバンク形成時のレジスト(有機物)残渣を除去するために、基板Pに対して残渣処理を施す。
残渣処理としては、紫外線を照射することにより残渣処理を行う紫外線(UV)照射処理や大気雰囲気中で酸素を処理ガスとするO2プラズマ処理等を選択できるが、ここではO2プラズマ処理を実施する。
【0030】
具体的には、基板Pに対しプラズマ放電電極からプラズマ状態の酸素を照射することで行う。O2プラズマ処理の条件としては、例えばプラズマパワーが50〜1000W、酸素ガス流量が50〜100ml/min、プラズマ放電電極に対する基板Pの板搬送速度が0.5〜10mm/sec、基板温度が70〜90℃とされる。
なお、基板Pがガラス基板の場合、その表面は配線パターン形成材料に対して親液性を有しているが、本実施の形態のように残渣処理のためにO2プラズマ処理や紫外線照射処理を施すことで、溝部31の親液性を高めることができる。本実施の形態では、配線パターン形成材料として用いる有機銀化合物(後述)に対する溝部31の接触角が15°以下となるようにプラズマ処理条件を調整した(例えば基板Pの搬送速度を遅くしてプラズマ処理時間を長くする)。
【0031】
(撥液化処理工程)
続いて、バンクBに対し撥液化処理を行い、その表面に撥液性を付与する。撥液化処理としては、例えば大気雰囲気中でテトラフルオロメタンを処理ガスとするプラズマ処理法(CF4プラズマ処理法)を採用することができる。CF4プラズマ処理の条件は、例えばプラズマパワーが100〜800W、4フッ化メタンガス流量が50〜100ml/min、プラズマ放電電極に対する基体搬送速度が0.5〜1020mm/sec、基体温度が70〜90℃とされる。
なお、処理ガスとしては、テトラフルオロメタン(四フッ化炭素)に限らず、他のフルオロカーボン系のガスを用いることもできる。本実施の形態では、配線パターン形成材料として用いる有機銀化合物のバンクBに対する接触角が、溝部31に対する接触角よりも40°以上となるようにプラズマ処理条件を調整した(例えば基板Pの搬送速度を遅くしてプラズマ処理時間を長くする)。
【0032】
このような撥液化処理を行うことにより、バンクB、Bにはこれを構成する樹脂中にフッ素基が導入され、溝部31に対して高い撥液性が付与される。なお、上述した親液化処理としてのO2プラズマ処理は、バンクBの形成前に行ってもよいが、アクリル樹脂やポリイミド樹脂等は、O2プラズマによる前処理がなされた方がよりフッ素化(撥液化)されやすいという性質があるため、バンクBを形成した後にO2プラズマ処理することが好ましい。
なお、バンクB、Bに対する撥液化処理により、先に親液化処理した基板P表面に対し多少は影響があるものの、特に基板Pがガラス等からなる場合には、撥液化処理によるフッ素基の導入が起こらないため、基板Pはその親液性、すなわち濡れ性が実質上損なわれることはない。
また、バンクB、Bについては、撥液性を有する材料(例えばフッ素基を有する樹脂材料)によって形成することにより、その撥液処理を省略するようにしてもよい。
これらバンク形成工程、残渣処理工程及び撥液化処理工程により、薄膜パターニング用基板が形成される。
【0033】
(材料配置工程及び中間乾燥工程)
次に、液滴吐出装置IJによる液滴吐出法を用いて、配線パターン形成材料を基板P上の溝部31に塗布する。なお、ここでは、導電性材料として有機銀化合物を用い、溶媒(分散媒)としてジエチレングリコールジエチルエーテルを用いたインク(機能液)を吐出する。
【0034】
すなわち、材料配置工程では、図3(b)に示すように、液体吐出ヘッド1から配線パターン形成材料を含む液体材料を液滴32にして吐出し、その液滴32を基板P上の溝部31に配置する。液滴吐出の条件としては、インク重量4ng/dot、インク速度(吐出速度)5〜7m/secで行った。なお、本例では、液滴32の直径DがバンクB、Bによる溝部31の幅W(本例では溝部31の開口部における幅)より大きいものとする。具体的には、溝部31の開口部における幅Wが10μm以下程度であり、液滴32の直径Dが15〜20μm程度であるものとする。
【0035】
このような液滴32を液滴吐出ヘッド1から吐出し、溝部31内に液状体を配すと、液滴32はその直径Dが溝部31の幅Wより大きいことから、図3(c)中二点鎖線で示すようにその一部がバンクB、B上にのってしまう。ところが、バンク32、32の表面が撥液性となっておりしかもテーパ状になっていることから、これらバンクB、B上にのった液滴32部分がバンクB、Bからはじかれ、さらには溝部31の毛細管現象によって該溝部31内に流れ落ちることにより、図3(c)中実線で示すように液滴32が溝部31内に入り込む。
【0036】
また、溝部31内に吐出され、あるいはバンクB、Bから流れ落ちた液状体32aは、基板Pが親液処理されていることからより広がり易くなっており、これによって液状体32aはより均一に溝部31内を埋め込むようになる。したがって、溝部31の幅Wが液滴32の直径Dより狭い(小さい)にもかかわらず、溝部31内に向けて吐出された液滴32(液状体32a)は、溝部31内に良好に入り込んでこれを均一に埋め込むようになる。
【0037】
(中間乾燥工程)
基板Pに液滴を吐出した後、分散媒の除去のため、必要に応じて乾燥処理(中間乾燥)をする。乾燥処理は、例えば基板Pを加熱する通常のホットプレート、電気炉などによる加熱処理によって行うことができる。本実施形態では、例えば180℃加熱を60分間程度行う。この加熱はN2雰囲気下など、必ずしも大気中で行う必要はない。
また、この乾燥処理は、ランプアニールによって行なうこともできる。
ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを光源として使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態では100W以上1000W以下の範囲で十分である。
この中間乾燥工程と上記材料配置工程とを繰り返し行うことにより、所望の膜厚に形成することができる。
【0038】
(焼成工程)
吐出工程後の導電性材料は例えば、有機銀化合物の場合、導電性を得るために、熱処理を行ない、有機銀化合物の有機分を除去し銀粒子を残留させる必要がある。そのため、吐出工程後の基板には熱処理及び/又は光処理が施される。
【0039】
熱処理及び/又は光処理は通常大気中で行なわれるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行なうこともできる。熱処理及び/又は光処理の処理温度は、分散媒の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子や有機銀化合物の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング剤の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して適宜決定される。
たとえば、有機銀化合物の有機分を除去するためには、約200℃で焼成することが必要である。また、プラスチックなどの基板を使用する場合には、室温以上100℃以下で行なうことが好ましい。
以上の工程により吐出工程後の導電性材料(有機銀化合物)は銀粒子の残留により、導電性膜に変換されることで、図3(d)に示すように、連続した膜としての導電性パターン、すなわち配線パターン(薄膜パターン)33を得る。
【0040】
(実施例)
バンクが形成されたガラス基板を、プラズマパワーが550W、4フッ化メタンガス流量が100ml/min、Heガス流量が10L/min、プラズマ放電電極に対する基体搬送速度が2mm/secの条件で実施した所、有機銀化合物(ジエチレングリコールジメチルエーテル溶媒)の接触角は、撥液化処理前のバンクBに対しては10°以下であったのに対し、撥液化処理後のバンクBに対しては66.2°になった。また、純水の接触角は撥液化処理前のバンクBに対しては69.3°であったのに対し、撥液化処理後のバンクBに対しては104.1°になった。なお、いずれの場合もガラス基板の溝部31に対する接触角は15°以下であり、溝部31とバンクBとに対する接触角の差は40°以上となった。
【0041】
また、上述した液滴吐出装置IJを用いて有機銀化合物の液滴を吐出したところ、上記撥液化処理前の基板(バンク材;有機系感光性材料)においては溝部31の幅Wが100μmでは溝部31に液状体を埋め込むことができたが、幅Wが75μmでは十分に埋め込むことができなかった。これに対して、撥液化処理後の基板においては幅Wが25μm及び10μmの微細幅であっても埋め込むことができた。
【0042】
このように、本実施の形態では、パターニング用の基板として液状体の溝部31とバンクBに対する接触角の差を40°以上とすることで、液滴の一部がバンクBにのった場合でも、溝部31内に入り込ませることが可能になり、バンクB、B間の幅で規定された細線パターンを得ることができる。特に、本実施の形態では、液状体の溝部31に対する接触角を15°以下とすることで、液滴よりも幅が狭い溝であっても液状体で埋めて細線化を実現できるとともに、溝部31の液状体が基板P上でより塗れ拡がり易くなり、より均一に溝部31を埋め込むことができる。そのため、間隔をあけて吐出した液状体を溝部31において分断することなく一体化することが可能となり、断線等の不良が生じることを防止することができ、デバイスとしての品質も向上させることが可能である。
【0043】
(第2実施形態)
次に、本発明の配線パターン形成方法(パターン形成方法)の第2実施形態として、基板上に導電膜配線を形成する方法について図4を参照して説明する。本実施形態に係る配線パターン形成方法は、上述した配線パターン用のインクを基板P上に配置し、その基板P上に配線用の導電膜パターン(導電性膜)を形成するものであり、表面処理工程、材料配置工程及び熱処理/光処理工程から概略構成される。
以下、各工程毎に詳細に説明する。
【0044】
(表面処理工程)
表面処理工程は、基板表面を撥液化する撥液化処理工程と、撥液化された基板表面を親液化する親液化処理工程とに大別される。
撥液化処理工程では、導電膜配線を形成する基板の表面を、液体材料に対して撥液性に加工する。具体的には、導電性微粒子を含有した液体材料の接触角が、後述する被塗布領域に対する接触角との差が40°以上、好ましくは50°以上となるように基板に対して表面処理を施す。
表面の撥液性(濡れ性)を制御する方法としては、例えば、基板の表面に自己組織化膜を形成する方法を採用できる。
【0045】
自己組織膜形成法では、導電膜配線を形成すべき基板の表面に、有機分子膜などからなる自己組織化膜を形成する。
基板表面を処理するための有機分子膜は、基板に結合可能な官能基と、その反対側に親液基あるいは撥液基といった基板の表面性を改質する(表面エネルギーを制御する)官能基と、これらの官能基を結ぶ炭素の直鎖あるいは一部分岐した炭素鎖とを備えており、基板に結合して自己組織化して分子膜、例えば単分子膜を形成する。
【0046】
ここで、自己組織化膜とは、基板の下地層等の構成原子と反応可能な結合性官能基とそれ以外の直鎖分子とからなり、直鎖分子の相互作用により極めて高い配向性を有する化合物を、配向させて形成された膜である。この自己組織化膜は、単分子を配向させて形成されているので、極めて膜厚を薄くすることができ、しかも、分子レベルで均一な膜となる。すなわち、膜の表面に同じ分子が位置するため、膜の表面に均一でしかも優れた撥液性や親液性を付与することができる。
【0047】
上記の高い配向性を有する化合物として、例えばフルオロアルキルシランを用いることにより、膜の表面にフルオロアルキル基が位置するように各化合物が配向されて自己組織化膜が形成され、膜の表面に均一な撥液性が付与される。
自己組織化膜を形成する化合物としては、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリクロロシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン(以下「FAS」という)を例示できる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、FASを用いることにより、基板との密着性と良好な撥液性とを得ることができる。
【0048】
FASは、一般的に構造式RnSiX(4−n)で表される。ここでnは1以上3以下の整数を表し、Xはメトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子などの加水分解基である。またRはフルオロアルキル基であり、(CF3)(CF2)x(CH2)yの(ここでxは0以上10以下の整数を、yは0以上4以下の整数を表す)構造を持ち、複数個のR又はXがSiに結合している場合には、R又はXはそれぞれすべて同じでもよく、異なっていてもよい。Xで表される加水分解基は加水分解によりシラノールを形成して、基板(ガラス、シリコン)の下地のヒドロキシル基と反応してシロキサン結合で基板と結合する。一方、Rは表面に(CF2)等のフルオロ基を有するため、基板の下地表面を濡れない(表面エネルギーが低い)表面に改質する。
【0049】
有機分子膜などからなる自己組織化膜は、上記の原料化合物と基板とを同一の密閉容器中に入れておき、室温で2〜3日程度の間放置することにより基板上に形成される。また、密閉容器全体を100℃に保持することにより、3時間程度で基板上に形成される。これらは気相からの形成法であるが、液相からも自己組織化膜を形成できる。例えば、原料化合物を含む溶液中に基板を浸積し、洗浄、乾燥することで基板上に自己組織化膜が形成される。
なお、自己組織化膜を形成する前に、基板表面に紫外光を照射したり、溶媒により洗浄したりして、基板表面の前処理を施すことが望ましい。
このように、自己組織膜形成法を実施することにより、図4(a)に示されるように、基板Pの表面に撥液性膜Fが形成される。
【0050】
次に、配線パターン形成材料を塗布して配線パターンを形成すべき被塗布領域の撥液性を緩和して親液性を付与することで(親液化処理)、基板表面の濡れ性を制御する。
以下、親液化処理について説明する。
親液化処理としては、波長170〜400nmの紫外光を照射する方法が挙げられる。このとき、配線パターンに応じたマスクを用いて紫外光を照射することで、一旦形成した撥液性膜Fの中、配線部分のみ部分的に変質させて撥液性を緩和して親液化することができる。つまり、上記撥液化処理及び親液化処理を施すことにより、図4(b)に示されるように、基板Pには、配線パターンが形成されるべき位置に親液性を付与された被塗布領域H1と、被塗布領域H1を囲む撥液性膜Fで構成される撥液領域H2とが形成される。
なお、撥液性の緩和の程度は紫外光の照射時間で調整できるが、紫外光の強度、波長、熱処理(加熱)との組み合わせ等によって調整することもできる。本実施の形態では、導電性微粒子を含有した液体材料の被塗布領域H1に対する接触角と撥液領域H2に対する接触角との差が40°以上となるように、被塗布領域H1に対する接触角が15°以下となる条件で紫外光を照射する。
【0051】
(材料配置工程)
次に、液滴吐出装置IJによる液滴吐出法を用いて、配線パターン形成材料を基板P上の被塗布領域H1に塗布する。なお、ここでは、機能液(配線パターン用インク)として、導電性微粒子を溶媒(分散媒)に分散させた分散液を吐出する。ここで用いられる導電性微粒子は、金、銀、銅、パラジウム、ニッケルの何れかを含有する金属微粒子の他、導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。
【0052】
すなわち、材料配置工程では、図4(c)に示すように、液体吐出ヘッド1から配線パターン形成材料を含む液体材料を液滴にして吐出し、その液滴を基板P上の被塗布領域H1に配置する。液滴吐出の条件としては、インク重量7ng/dot、インク速度(吐出速度)5〜7m/secで行った。
このとき、撥液領域H2は撥液性が付与されているため、吐出された液滴の一部が撥液領域H2にのっても撥液領域H2からはじかれ、図4(d)に示されるように、撥液領域H2間の被塗布領域H1に溜まるようになる。さらに、被塗布領域H1は親液性を付与されているため、吐出された液状体が被塗布領域H1にてより拡がり易くなり、これによって液状体が、分断されることなく所定位置内でより均一に被塗布領域H1を埋め込むようにすることができる。
【0053】
(熱処理/光処理工程)
吐出工程後の導電性材料は、微粒子間の電気的接触をよくするために、分散媒を完全に除去する必要がある。また、導電性微粒子の表面に分散性を向上させるために有機物などのコーティング材がコーティングされている場合には、このコーティング材も除去する必要がある。そのため、吐出工程後の基板には熱処理及び/又は光処理が施される。
【0054】
熱処理及び/又は光処理は通常大気中で行なわれるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。熱処理及び/又は光処理の処理温度は、分散媒の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング剤の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して適宜決定される。
【0055】
例えば、有機物からなるコーティング剤を除去するためには、約300℃で焼成することが必要である。また、プラスチックなどの基板を使用する場合には、室温以上100℃以下で行なうことが好ましい。
熱処理及び/又は光処理は、例えばホットプレート、電気炉などの加熱手段を用いた一般的な加熱処理の他に、ランプアニールを用いて行ってもよい。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態例では100W以上1000W以下の範囲で十分である。
上記熱処理及び/又は光処理により、微粒子間の電気的接触が確保され、導電膜に変換される。
以上説明した一連の工程により、基板上に線状の導電膜パターン(導電膜配線)が形成される。
【0056】
本実施の形態では、パターニング用基板として機能液の被塗布領域H1と撥液領域H2とに対する接触角の差を40°以上とすることで、液滴の一部が撥液領域H2にのった場合でも、被塗布領域H1内に流れ込ませることが可能になり、撥液領域H2間の幅で規定された細線パターンを得ることができる。特に、本実施の形態では、液状体の被塗布領域H1に対する接触角を15°以下とすることで、被塗布領域H1の液状体が基板P上でより塗れ拡がり易くなり、より均一に被塗布領域H1を埋め込むことができる。そのため、間隔をあけて吐出した液状体を被塗布領域H1において分断することなく一体化することが可能となり、断線等の不良が生じることを防止することができ、デバイスとしての品質も向上させることが可能である。
【0057】
(第3実施形態)
第3実施形態として、本発明の電気光学装置の一例である液晶表示装置について説明する。図5は、本発明に係る液晶表示装置について、各構成要素とともに示す対向基板側から見た平面図であり、図6は図5のH−H’線に沿う断面図である。図7は、液晶表示装置の画像表示領域においてマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図で、図8は、液晶表示装置の部分拡大断面図である。なお、以下の説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0058】
図5及び図6において、本実施の形態の液晶表示装置(電気光学装置)100は、対をなすTFTアレイ基板10と対向基板20とが光硬化性の封止材であるシール材52によって貼り合わされ、このシール材52によって区画された領域内に液晶50が封入、保持されている。シール材52は、基板面内の領域において閉ざされた枠状に形成されてなり、液晶注入口を備えず、封止材にて封止された痕跡がない構成となっている。
【0059】
シール材52の形成領域の内側の領域には、遮光性材料からなる周辺見切り53が形成されている。シール材52の外側の領域には、データ線駆動回路201及び実装端子202がTFTアレイ基板10の一辺に沿って形成されており、この一辺に隣接する2辺に沿って走査線駆動回路204が形成されている。TFTアレイ基板10の残る一辺には、画像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路204の間を接続するための複数の配線205が設けられている。また、対向基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通材206が配設されている。
【0060】
なお、データ線駆動回路201及び走査線駆動回路204をTFTアレイ基板10の上に形成する代わりに、例えば、駆動用LSIが実装されたTAB(Tape Automated Bonding)基板とTFTアレイ基板10の周辺部に形成された端子群とを異方性導電膜を介して電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。なお、液晶表示装置100においては、使用する液晶50の種類、すなわち、TN(Twisted Nematic)モード、C−TN法、VA方式、IPS方式等の動作モードや、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、位相差板、偏光板等が所定の向きに配置されるが、ここでは図示を省略する。
また、液晶表示装置100をカラー表示用として構成する場合には、対向基板20において、TFTアレイ基板10の後述する各画素電極に対向する領域に、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタをその保護膜とともに形成する。
【0061】
このような構造を有する液晶表示装置100の画像表示領域においては、図7に示すように、複数の画素100aがマトリクス状に構成されているとともに、これらの画素100aの各々には、画素スイッチング用のTFT(スイッチング素子)30が形成されており、画素信号S1、S2、…、Snを供給するデータ線6aがTFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画素信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次で供給してもよく、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。また、TFT30のゲートには走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmをこの順に線順次で印加するように構成されている。
【0062】
画素電極19は、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけオン状態とすることにより、データ線6aから供給される画素信号S1、S2、…、Snを各画素に所定のタイミングで書き込む。このようにして画素電極19を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画素信号S1、S2、…、Snは、図6に示す対向基板20の対向電極121との間で一定期間保持される。なお、保持された画素信号S1、S2、…、Snがリークするのを防ぐために、画素電極19と対向電極121との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量60が付加されている。例えば、画素電極19の電圧は、ソース電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ蓄積容量60により保持される。これにより、電荷の保持特性は改善され、コントラスト比の高い液晶表示装置100を実現することができる。
【0063】
図8は、ボトムゲート型TFT30を有する液晶表示装置100の部分拡大断面図であって、本実施形態では、ボトムゲート型の画素スイッチング用TFT30の上方に、蓄積容量60が構築されている。より具体的には、TFTアレイ基板10(上記配線パターン形成方法における基板Pに相当)上で、走査線3aからデータ線6aに沿って基板上に突出したゲート電極203a部分上に、ゲート絶縁膜42を介して半導体層210aが積層されている。このゲート電極203a部分に対向する半導体層210aの部分がチャネル領域とされている。半導体層210a上には、ソース電極204a及びドレイン電極204bが、データ線6aと同一膜から形成されている。ソース電極204a及びドレイン電極204bと半導体層210aとの間には夫々、オーミック接合を得るための例えばn+型a−Si(アモルファスシリコン)層からなる接合層205a及び205bが積層されており、チャネル領域の中央部における半導体層210a上には、チャネルを保護するための絶縁性のエッチストップ膜208が形成されている。ドレイン電極204bの端部上には、層間絶縁膜212を介して島状の容量電極222が積層されており、更に容量電極222上には、誘電体膜221を介して容量線3b(固定電位側容量電極)が積層されている。そして、容量線3bは、画像表示領域内をストライプ状に伸びて画像表示領域外まで延設されて、固定電位に落とされている。
【0064】
蓄積容量60の上方に画素電極19が配置されており、容量線3bと画素電極19との間には層間絶縁膜216が積層されている。層間絶縁膜216に開孔されたコンタクトホール217を介して、画素電極19と容量電極222とが接続されて、容量電極222は、画素電極電位とされている。そして、容量電極222には、TFT30のチャネル領域の上方にあたる領域に孔状の開口部222aが設けられている。
上記構成のTFTでは、上述した液滴吐出装置IJを用いて、例えば銀化合物の液滴を吐出することでゲート線、ソース線、ドレイン線等を形成することができるため、細線化による小型・薄型化が実現され、断線等の不良が生じない高品質の液晶表示装置を得ることができる。
【0065】
(第4実施形態)
上記実施の形態では、TFT30を液晶表示装置100の駆動のためのスイッチング素子として用いる構成としたが、液晶表示装置以外にも例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示デバイスに応用が可能である。有機EL表示デバイスは、蛍光性の無機および有機化合物を含む薄膜を、陰極と陽極とで挟んだ構成を有し、前記薄膜に電子および正孔(ホール)を注入して励起させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが再結合する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光させる素子である。そして、上記のTFT30を有する基板上に、有機EL表示素子に用いられる蛍光性材料のうち、赤、緑および青色の各発光色を呈する材料すなわち発光層形成材料及び正孔注入/電子輸送層を形成する材料をインクとし、各々をパターニングすることで、自発光フルカラーELデバイスを製造することができる。
本発明におけるデバイス(電気光学装置)の範囲にはこのような有機ELデバイスをも含むものであり、小型・薄型化が実現され、断線等の不良が生じない高品質の有機ELデバイスを得ることができる。
【0066】
図9は、前記液滴吐出装置IJにより一部の構成要素が製造された有機EL装置の側断面図である。図9を参照しながら、有機EL装置の概略構成を説明する。
図9において、有機EL装置301は、基板311、回路素子部321、画素電極331、バンク部341、発光素子351、陰極361(対向電極)、および封止基板371から構成された有機EL素子302に、フレキシブル基板(図示略)の配線および駆動IC(図示略)を接続したものである。回路素子部321は、アクティブ素子であるTFT30が基板311上に形成され、複数の画素電極331が回路素子部321上に整列して構成されたものである。そして、TFT30を構成するゲート配線61が、上述した実施形態の配線パターンの形成方法により形成されている。
【0067】
各画素電極331間にはバンク部341が格子状に形成されており、バンク部341により生じた凹部開口344に、発光素子351が形成されている。なお、発光素子351は、赤色の発光をなす素子と緑色の発光をなす素子と青色の発光をなす素子とからなっており、これによって有機EL装置301は、フルカラー表示を実現するものとなっている。陰極361は、バンク部341および発光素子351の上部全面に形成され、陰極361の上には封止用基板371が積層されている。
【0068】
有機EL素子を含む有機EL装置301の製造プロセスは、バンク部341を形成するバンク部形成工程と、発光素子351を適切に形成するためのプラズマ処理工程と、発光素子351を形成する発光素子形成工程と、陰極361を形成する対向電極形成工程と、封止用基板371を陰極361上に積層して封止する封止工程とを備えている。
【0069】
発光素子形成工程は、凹部開口344、すなわち画素電極331上に正孔注入層352および発光層353を形成することにより発光素子351を形成するもので、正孔注入層形成工程と発光層形成工程とを具備している。そして、正孔注入層形成工程は、正孔注入層352を形成するための液状体材料を各画素電極331上に吐出する第1吐出工程と、吐出された液状体材料を乾燥させて正孔注入層352を形成する第1乾燥工程とを有している。また、発光層形成工程は、発光層353を形成するための液状体材料を正孔注入層352の上に吐出する第2吐出工程と、吐出された液状体材料を乾燥させて発光層353を形成する第2乾燥工程とを有している。なお、発光層353は、前述したように赤、緑、青の3色に対応する材料によって3種類のものが形成されるようになっており、したがって前記の第2吐出工程は、3種類の材料をそれぞれに吐出するために3つの工程からなっている。
この発光素子形成工程において、正孔注入層形成工程における第1吐出工程と、発光層形成工程における第2吐出工程とで前記の液滴吐出装置IJを用いることができる。
【0070】
(第5実施形態)
上述した実施形態においては、本発明に係るパターン形成方法を使って、TFT(薄膜トランジスタ)のゲート配線を形成しているが、ソース電極、ドレイン電極、画素電極などの他の構成要素を製造することも可能である。以下、TFTを製造する方法について図10〜図13を参照しながら説明する。
【0071】
図10に示すように、まず、洗浄したガラス基板510の上面に、1画素ピッチの1/20〜1/10の溝511aを設けるための第1層目のバンク511が、フォトリソグラフィ法に基づいて形成される。このバンク511としては、形成後に光透過性と撥液性を備える必要があり、その素材としては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、メラミン樹脂などの高分子材料のほかポリシラザンなどの無機系の材料が好適に用いられる。
【0072】
この形成後のバンク511に撥液性を持たせるために、CF4プラズマ処理等(フッ素成分を有するガスを用いたプラズマ処理)を施す必要があるが、代わりに、バンク511の素材自体に予め撥液成分(フッ素基等)を充填しておいても良い。この場合には、CF4プラズマ処理等を省略することができる。
【0073】
以上のようにして撥液化されたバンク511に対する、吐出インクの接触角としては、40°以上、またガラス面に対する接触角としては、10°以下を確保することが好ましい。すなわち、本発明者らが試験により確認した結果、例えば導電性微粒子(テトラデカン溶媒)の処理後の接触角は、バンク511の素材としてアクリル樹脂系を採用した場合には約54.0°(未処理の場合には10°以下)を確保することができる。なお、これら接触角は、プラズマパワー550Wのもと、4フッ化メタンガスを0.1L/minで供給する処理条件下で得たものである。
【0074】
上記第1層目のバンク形成工程に続くゲート走査電極形成工程(第1回目の導電性パターン形成工程)では、バンク511で区画された描画領域である前記溝511a内を満たすように、導電性材料を含む液滴をインクジェットで吐出することでゲート走査電極512を形成する。そして、ゲート走査電極512を形成するときに、本発明に係るパターンの形成方法が適用される。
【0075】
この時の導電性材料としては、Ag,Al,Au,Cu,パラジウム、Ni,W−si,導電性ポリマーなどが好適に採用可能である。このようにして形成されたゲート走査電極512は、バンク511に十分な撥液性が予め与えられているので、溝511aからはみ出ることなく微細な配線パターンを形成することが可能となっている。
【0076】
以上の工程により、基板510上には、バンク511とゲート走査電極512からなる平坦な上面を備えた銀(Ag)からなる第1の導電層A1が形成される。
【0077】
また、溝511a内における良好な吐出結果を得るためには、図10に示すように、この溝511aの形状として準テーパ(吐出元に向かって開く向きのテーパ形状)を採用するのが好ましい。これにより、吐出された液滴を十分に奥深くまで入り込ませることが可能となる。
【0078】
次に、図11に示すように、プラズマCVD法によりゲート絶縁膜513、活性層510、コンタクト層509の連続成膜を行う。ゲート絶縁膜513として窒化シリコン膜、活性層510としてアモルファスシリコン膜、コンタクト層509としてn+シリコン膜を原料ガスやプラズマ条件を変化させることにより形成する。CVD法で形成する場合、300℃〜350℃の熱履歴が必要になるが、無機系の材料をバンクに使用することで、透明性、耐熱性に関する問題を回避することが可能である。
【0079】
上記半導体層形成工程に続く第2層目のバンク形成工程では、図12に示すように、ゲート絶縁膜513の上面に、1画素ピッチの1/20〜1/10でかつ前記溝511aと交差する溝514aを設けるための2層目のバンク514を、フォトリソグラフィ法に基づいて形成する。このバンク514としては、形成後に光透過性と撥液性を備える必要があり、その素材としては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、メラミン樹脂などの高分子材料のほかポリシラザンなどの無機系の材料が好適に用いられる。
【0080】
この形成後のバンク514に撥液性を持たせるためにCF4プラズマ処理等(フッ素成分を有するガスを用いたプラズマ処理)を施す必要があるが、代わりに、バンク514の素材自体に予め撥液成分(フッ素基等)を充填しておくものとしても良い。この場合には、CF4プラズマ処理等を省略することができる。
【0081】
以上のようにして撥液化されたバンク514に対する、吐出インクの接触角としては、40°以上を確保することが好ましい。
【0082】
上記第2層目のバンク形成工程に続くソース・ドレイン電極形成工程(第2回目の導電性パターン形成工程)では、バンク514で区画された描画領域である前記溝514a内を満たすように、導電性材料を含む液滴をインクジェットで吐出することで、図13に示すように、前記ゲート走査電極512に対して交差するソース電極515及びソース電極516が形成される。そして、ソース電極515及びドレイン電極516を形成するときに、本発明に係るパターンの形成方法が適用される。
【0083】
この時の導電性材料としては、Ag,Al,Au,Cu,パラジウム、Ni,W−si,導電性ポリマーなどが好適に採用可能である。このようにして形成されたソース電極515及びドレイン電極516は、バンク514に十分な撥液性が予め与えられているので、溝514aからはみ出ることなく微細な配線パターンを形成することが可能となっている。
【0084】
また、ソース電極515及びドレイン電極516を配置した溝514aを埋めるように絶縁材料517が配置される。以上の工程により、基板510上には、バンク514と絶縁材料517からなる平坦な上面520が形成される。
【0085】
そして、絶縁材料517にコンタクトホール519を形成するとともに、上面520上にパターニングされた画素電極(ITO)518を形成し、コンタクトホール519を介してドレイン電極516と画素電極518とを接続することで、TFTが形成される。
【0086】
(第6実施形態)
図14は、液晶表示装置の別の実施形態を示す図である。
図14に示す液晶表示装置(電気光学装置)901は、大別するとカラーの液晶パネル(電気光学パネル)902と、液晶パネル902に接続される回路基板903とを備えている。また、必要に応じて、バックライト等の照明装置、その他の付帯機器が液晶パネル902に付設されている。
【0087】
液晶パネル902は、シール材904によって接着された一対の基板905a及び基板905bを有し、これらの基板905bと基板905bとの間に形成される間隙、いわゆるセルギャップには液晶が封入されている。これらの基板905a及び基板905bは、一般には透光性材料、例えばガラス、合成樹脂等によって形成されている。基板905a及び基板905bの外側表面には偏光板906a及び偏光板906bが貼り付けられている。なお、図14においては、偏光板906bの図示を省略している。
【0088】
また、基板905aの内側表面には電極907aが形成され、基板905bの内側表面には電極907bが形成されている。これらの電極907a、907bはストライプ状または文字、数字、その他の適宜のパターン状に形成されている。また、これらの電極907a、907bは、例えばITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)等の透光性材料によって形成されている。基板905aは、基板905bに対して張り出した張り出し部を有し、この張り出し部に複数の端子908が形成されている。これらの端子908は、基板905a上に電極907aを形成するときに電極907aと同時に形成される。従って、これらの端子908は、例えばITOによって形成されている。これらの端子908には、電極907aから一体に延びるもの、及び導電材(不図示)を介して電極907bに接続されるものが含まれる。
【0089】
回路基板903には、配線基板909上の所定位置に液晶駆動用ICとしての半導体素子900が実装されている。なお、図示は省略しているが、半導体素子900が実装される部位以外の部位の所定位置には抵抗、コンデンサ、その他のチップ部品が実装されていてもよい。配線基板909は、例えばポリイミド等の可撓性を有するフィルム状のベース基板911の上に形成されたCu等の金属膜をパターニングして配線パターン912を形成することによって製造されている。
【0090】
本実施形態では、液晶パネル902における電極907a、907b及び回路基板903における配線パターン912が上記デバイス製造方法によって形成されている。
本実施形態の液晶表示装置によれば、小型化、薄型化が実現され、断線等の不良が生じない高品質の液晶表示装置を得ることができる。
【0091】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態として、本発明の電気光学装置の一例であるプラズマ型表示装置について説明する。
図15は、本実施形態のプラズマ型表示装置500の分解斜視図を示している。
プラズマ型表示装置500は、互いに対向して配置された基板501、502、及びこれらの間に形成される放電表示部510を含んで構成される。
放電表示部510は、複数の放電室516が集合されたものである。複数の放電室516のうち、赤色放電室516(R)、緑色放電室516(G)、青色放電室516(B)の3つの放電室516が対になって1画素を構成するように配置されている。
【0092】
基板501の上面には所定の間隔でストライプ状にアドレス電極511が形成され、アドレス電極511と基板501の上面とを覆うように誘電体層519が形成されている。誘電体層519上には、アドレス電極511、511間に位置しかつ各アドレス電極511に沿うように隔壁515が形成されている。隔壁515は、アドレス電極511の幅方向左右両側に隣接する隔壁と、アドレス電極511と直交する方向に延設された隔壁とを含む。また、隔壁515によって仕切られた長方形状の領域に対応して放電室516が形成されている。
また、隔壁515によって区画される長方形状の領域の内側には蛍光体517が配置されている。蛍光体517は、赤、緑、青の何れかの蛍光を発光するもので、赤色放電室516(R)の底部には赤色蛍光体517(R)が、緑色放電室516(G)の底部には緑色蛍光体517(G)が、青色放電室516(B)の底部には青色蛍光体517(B)が各々配置されている。
【0093】
一方、基板502には、先のアドレス電極511と直交する方向に複数の表示電極512がストライプ状に所定の間隔で形成されている。さらに、これらを覆うように誘電体層513、及びMgOなどからなる保護膜514が形成されている。
基板501と基板502とは、前記アドレス電極511…と表示電極512…を互いに直交させるように対向させて相互に貼り合わされている。
上記アドレス電極511と表示電極512は図示略の交流電源に接続されている。各電極に通電することにより、放電表示部510において蛍光体517が励起発光し、カラー表示が可能となる。
【0094】
本実施形態では、上記アドレス電極511、及び表示電極512がそれぞれ、上述した配線パターン形成方法に基づいて形成されているため、小型・薄型化が実現され、断線等の不良が生じない高品質のプラズマ型表示装置を得ることができる。
【0095】
(第8実施形態)
続いて、第8実施形態として、非接触型カード媒体の実施形態について説明する。図16に示すように、本実施形態に係る非接触型カード媒体(電子機器)400は、カード基体402とカードカバー418から成る筐体内に、半導体集積回路チップ408とアンテナ回路412を内蔵し、図示されない外部の送受信機と電磁波または静電容量結合の少なくとも一方により電力供給あるいはデータ授受の少なくとも一方を行うようになっている。
【0096】
本実施形態では、上記アンテナ回路412が、上記実施形態に係る配線パターン形成方法によって形成されている。
本実施形態の非接触型カード媒体によれば、小型・薄型化が実現され、断線等の不良が生じない高品質の非接触型カード媒体を得ることができる。
なお、本発明に係るデバイス(電気光学装置)としては、上記の他に、基板上に形成された小面積の薄膜に膜面に平行に電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利用する表面伝導型電子放出素子等にも適用可能である。
【0097】
(第9実施形態)
第9実施形態として、本発明の電子機器の具体例について説明する。
図17(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図17(a)において、600は携帯電話本体を示し、601は上記実施形態の液晶表示装置を備えた液晶表示部を示している。
図17(b)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図17(b)において、700は情報処理装置、701はキーボードなどの入力部、703は情報処理本体、702は上記実施形態の液晶表示装置を備えた液晶表示部を示している。
図17(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図17(c)において、800は時計本体を示し、801は上記実施形態の液晶表示装置を備えた液晶表示部を示している。
図17(a)〜(c)に示す電子機器は、上記実施形態の液晶表示装置を備えたものであるので、小型化、薄型化及び高品質化が可能となる。
なお、本実施形態の電子機器は液晶装置を備えるものとしたが、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ型表示装置等、他の電気光学装置を備えた電子機器とすることもできる。
【0098】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0099】
例えば、バンクに撥液性を付与するためにプラズマ処理を行ったが、上述したように、フッ素またはフッ素化合物を含有する材料にてバンクを形成する構成としてもよい。また、プラズマ処理以外の処理を行う構成としてもよい。
さらに、上記実施の形態では、溝部の幅よりも大径の液滴を吐出する構成としたが、これに限定されるものではなく、溝部の幅の方が大きい構成であってもよい。
【0100】
また、上記実施の形態では基板P上の被塗布領域H1に対する接触角が15°以下としたが、これに限定されるものではなく、撥液領域H2と被塗布領域H1とに対する接触角の差が40°以上であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】液滴吐出装置の概略斜視図である。
【図2】ピエゾ方式による液状体の吐出原理を説明するための図である。
【図3】第1実施形態に係る配線パターン形成する手順を示す図である。
【図4】第2実施形態に係る配線パターン形成する手順を示す図である。
【図5】液晶表示装置を対向基板の側から見た平面図である。
【図6】図5のH−H’線に沿う断面図である。
【図7】液晶表示装置の等価回路図である。
【図8】液晶表示装置の部分拡大断面図である。
【図9】有機EL装置の部分拡大断面図である。
【図10】薄膜トランジスタを製造する工程を説明するための図である。
【図11】薄膜トランジスタを製造する工程を説明するための図である。
【図12】薄膜トランジスタを製造する工程を説明するための図である。
【図13】薄膜トランジスタを製造する工程を説明するための図である。
【図14】液晶表示装置の別形態を示す図である。
【図15】プラズマ型表示装置の分解斜視図である。
【図16】非接触型カード媒体の分解斜視図である。
【図17】本発明の電子機器の具体例を示す図である。
【符号の説明】
【0102】
B…バンク、F…撥液性膜、H1…被塗布領域、H2…撥液領域、P…基板(薄膜パターニング用基板)、、31…溝部(被塗布領域)、32…液滴(機能液)、33…配線パターン(薄膜パターン)、100…液晶表示装置(電気光学装置)、400…非接触型カード媒体(電子機器)、500…プラズマ型表示装置(電気光学装置)、600…携帯電話本体(電子機器)、700…情報処理装置(電子機器)、800…時計本体(電子機器)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブマトリクス基板の製造方法において、
基板上にゲート配線を形成する第1の工程と、
前記ゲート配線上にゲート絶縁膜を形成する第2の工程と、
前記ゲート絶縁膜を介して半導体層を積層する第3の工程と、
前記ゲート絶縁層の上にソース電極及びドレイン電極を形成する第4の工程と、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極上に絶縁材料を配置する第5の工程と、
前記絶縁材料を配置した上に画素電極を形成する第6の工程と、を有し、
前記第1の工程及び前記第4の工程及び前記第6の工程の少なくとも一つの工程では、機能液が塗布される被塗布領域と、該被塗布領域を囲んで形成されたバンクとを有し、前記被塗布領域に対する前記機能液の接触角と、前記バンクに対する前記機能液の接触角との差が40°以上であり、前記バンク間の溝幅が、吐出された前記機能液の液滴の直径よりも小さい基板に対して機能液を吐出することを特徴とするアクティブマトリクス基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のアクティブマトリクス基板の製造方法において、
前記被塗布領域に対する前記機能液の接触角が15°以下であることを特徴とするアクティブマトリクス基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載のアクティブマトリクス基板の製造方法において、
前記バンクは、プラズマ処理により表面改質が施されていることを特徴とするアクティブマトリクス基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2記載のアクティブマトリクス基板の製造方法において、
前記バンクは、フッ素またはフッ素化合物を含有することを特徴とするアクティブマトリクス基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の製造方法で製造されたアクティブマトリクス基板を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
請求項5記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
アクティブマトリクス基板の製造方法において、
基板上にゲート配線を形成する第1の工程と、
前記ゲート配線上にゲート絶縁膜を形成する第2の工程と、
前記ゲート絶縁膜を介して半導体層を積層する第3の工程と、
前記ゲート絶縁層の上にソース電極及びドレイン電極を形成する第4の工程と、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極上に絶縁材料を配置する第5の工程と、
前記絶縁材料を配置した上に画素電極を形成する第6の工程と、を有し、
前記第1の工程及び前記第4の工程及び前記第6の工程の少なくとも一つの工程では、機能液が塗布される被塗布領域と、該被塗布領域を囲んで形成されたバンクとを有し、前記被塗布領域に対する前記機能液の接触角と、前記バンクに対する前記機能液の接触角との差が40°以上であり、前記バンク間の溝幅が、吐出された前記機能液の液滴の直径よりも小さい基板に対して機能液を吐出することを特徴とするアクティブマトリクス基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のアクティブマトリクス基板の製造方法において、
前記被塗布領域に対する前記機能液の接触角が15°以下であることを特徴とするアクティブマトリクス基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載のアクティブマトリクス基板の製造方法において、
前記バンクは、プラズマ処理により表面改質が施されていることを特徴とするアクティブマトリクス基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2記載のアクティブマトリクス基板の製造方法において、
前記バンクは、フッ素またはフッ素化合物を含有することを特徴とするアクティブマトリクス基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の製造方法で製造されたアクティブマトリクス基板を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
請求項5記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−100855(P2006−100855A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348952(P2005−348952)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【分割の表示】特願2004−115371(P2004−115371)の分割
【原出願日】平成16年4月9日(2004.4.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【分割の表示】特願2004−115371(P2004−115371)の分割
【原出願日】平成16年4月9日(2004.4.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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