説明

エッチング方法及び装置

【課題】基板に形成された絶縁膜をエッチングするとき、絶縁膜の下地に酸素プラズマの悪影響が生ずるのを防止できるエッチング方法を提供する
【解決手段】本発明のエッチング方法は、絶縁膜222をプラズマ化させた処理ガスに晒し、絶縁膜222を厚さ方向に途中までエッチングする第一のエッチング工程と、第一のエッチング工程の終了後に残存する絶縁膜222を酸素プラズマに晒し、残存する絶縁膜222の表面に堆積した堆積物を除去する堆積物除去工程と、残存する絶縁膜222をプラズマ化させた処理ガスに晒し、残存する絶縁膜222をエッチングする第二のエッチング工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に形成された絶縁膜をエッチングする方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において、基板に形成された絶縁膜をエッチングする際、下地膜にダメージを与えない選択比の高いエッチング工程が必要とされる。例えば、デュアルストレスライナ(Dual Stress Liner)技術においては、基板に形成された酸化シリコン膜をエッチングする際、下地の窒化シリコン膜にダメージを与えないように、窒化シリコン膜に対する酸化シリコン膜の選択比を高めたエッチングが必要となる。
【0003】
デュアルストレスライナ(Dual Stress Liner)技術は、窒化シリコン膜でNチャネル型FET(Field Effect Transistor)を覆ってNチャネル型FETに引張り応力を与え、窒化シリコン膜でPチャネル型FETを覆ってPチャネル型FETに圧縮応力を与える技術である(特許文献1参照)。トランジスタに応力を与えることにより、トランジスタのドレイン電流が増大するので、トランジスタの性能を向上させることができる。
【0004】
このデュアルストレスライナ技術においては、引張り応力を与える窒化シリコン膜と圧縮応力を与える窒化シリコン膜とを作り分けるために、基板上に順番に(1)酸化シリコン膜、(2)窒化シリコン膜、(3)酸化シリコン膜が積層される。その後、(3)酸化シリコン膜及び(2)窒化シリコン膜をエッチングする工程が必要になる。エッチングには、処理ガスを気密な処理容器に導入し、処理ガスをプラズマ化させ、エッチングすべき絶縁膜をプラズマ化させた処理ガスに晒すドライエッチングが用いられる。上述のように、(3)酸化シリコン膜をエッチングするときには、(2)窒化シリコン膜に対する(3)酸化シリコン膜の選択比を高くする必要がある。(2)窒化シリコン膜に対する(3)酸化シリコン膜の選択比を高くするために、エッチングガスとして、成膜反応とエッチング反応を同時に行うCF系又はCHF系のエッチングガスが用いられる。そして、CF系の堆積物の堆積とエッチングとのバランスを取りながらエッチングが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−88452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、CF系又はCHF系のエッチングガスを用いると、(3)酸化シリコン膜のエッチングを終了したとき(オーバーエッチング終了時)、(2)窒化シリコン膜の表面にはCF系の堆積物が堆積したままになる。CF系の堆積物が堆積すると、堆積物がエッチングマスクになって、下地膜の(2)窒化シリコン膜のエッチングが局所的に進まないという問題が発生する。
【0007】
この問題を解決するために、(3)酸化シリコン膜のオーバーエッチング終了時に、酸素プラズマを発生させ、酸素プラズマと堆積物とを反応させて堆積物を除去するアッシング技術を利用することが考えられる。
【0008】
しかし、酸素プラズマが高エネルギのアッシングの場合、(2)窒化シリコン膜の表面が酸素プラズマにより酸化され、(2)窒化シリコン膜の表面に酸化シリコン膜が形成されてしまう。酸化シリコン膜が形成されると、やはり次工程の(2)窒化シリコン膜のエッチングが進まなくなってしまう。
【0009】
ところで、ゲート電極の側壁に絶縁膜を形成するためのエッチングにおいても、設計どおりにデバイスを作成するため、酸素プラズマによって基板にダメージ(リセス)が入るのを防止することが要請されている。
【0010】
そこで本発明は、基板に形成された絶縁膜をエッチングするとき、絶縁膜の下地に酸素プラズマの悪影響を与えるのを防止できるエッチング方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、基板に形成された絶縁膜をエッチングする方法であって、前記絶縁膜をプラズマ化させた処理ガスに晒し、前記絶縁膜を厚さ方向の途中までエッチングする第一のエッチング工程と、第一のエッチング工程の終了時に残存する絶縁膜を酸素プラズマに晒し、前記残存する絶縁膜の表面に堆積した堆積物を除去する堆積物除去工程と、前記残存する絶縁膜をプラズマ化させた処理ガスに晒し、前記残存する絶縁膜をエッチングする第二のエッチング工程と、を備えるエッチング方法である。
【0012】
本発明の他の態様は、基板に形成された絶縁膜をエッチングする装置であって、気密な処理容器内に処理ガスを導入し、前記処理容器内にプラズマを発生させることによって、前記絶縁膜をプラズマ化させた処理ガスに晒し、前記絶縁膜を厚さ方向の途中までエッチングし、その後、前記処理容器内に酸素ガスを導入し、前記処理容器内にプラズマを発生させることによって、前記第一のエッチング工程の終了時に残存する絶縁膜を酸素プラズマに晒し、前記残存する絶縁膜の上に堆積した堆積物を除去し、その後、前記処理容器内に処理ガスを導入し、前記処理容器内にプラズマを発生させることによって、前記残存する絶縁膜をプラズマ化させた処理ガスに晒し、前記残存する絶縁膜をエッチングするエッチング装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、酸素プラズマによって絶縁膜上の堆積物を除去するとき、下地の表面が残存する絶縁膜で覆われているので、下地に酸素プラズマによるダメージ等の悪影響が発生するのを防止することができる。
【0014】
特に、窒化シリコン膜上の酸化シリコン膜をエッチングする場合、下地の窒化シリコン膜の表面が残存する酸化シリコン膜で覆われているので、窒化シリコン膜が酸素プラズマによって酸化してしまうのを防止できる。しかも、酸素プラズマによって酸化シリコン膜上のCF系の堆積物が除去されているので、堆積物がエッチングマスクになって下地の窒化シリコン膜のエッチングが局所的に進まなくなることもない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一の実施形態のエッチング方法が適用されるCMOSトランジスタの製造方法の工程図
【図2】本発明の第一の実施形態のエッチング方法の工程図
【図3】異なる圧力の下でのフォトレジストのエッチングレートの実験結果を示す図
【図4】異なるマイクロ波パワーの下でのフォトレジストのエッチングレートの実験結果を示す図
【図5】本発明の第二の実施形態のエッチング方法が適用されるMOSFETの製造方法の工程図
【図6】RLSAエッチング装置の概略断面図
【図7】RLSAエッチング装置の誘電体窓からの距離Zとプラズマの電子温度との関係を示すグラフ
【図8】スロットアンテナのスロットパターンの一例を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明のエッチング方法の第一の実施形態を説明する。図面において同一の構成要素には同一の符号が附されている。
【0017】
図1(A)〜(F)には、本発明の第一の実施形態のエッチング方法が適用される半導体装置の製造方法、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)トランジスタの製造方法が示されている。
【0018】
図1(A)に示すように、シリコンからなる基板W上には、PMOSトランジスタ203及びNMOSトランジスタ204が形成される。基板Wは、素子分離領域によって、PMOS領域201とNMOS領域202とに分離されており、PMOS領域201にはPMOSトランジスタ203が、NMOS領域202にはNMOSトランジスタ204が設けられている。NMOS領域202にはポリシリコンからなるゲート電極205が形成される。ゲート電極205の側壁には、オフセットスペーサ206を介してサイドウォールスペーサ207が形成される。サイドウォールスペーサ207の表面には酸化シリコン膜208が形成される。ゲート電極205の両側にはソース・ドレイン領域209が形成される。ソース・ドレイン領域209に挟まれた領域がチャネル領域210になる。PMOS領域201にもゲート電極211が形成され、ゲート電極211の側壁にオフセットスペーサ212を介してサイドウォールスペーサ213が形成される。ゲート電極211の両側のシリコン基板Wにはソース・ドレイン領域が215形成され、ソース・ドレイン領域215に挟まれた領域がチャネル領域216になる。上記PMOSトランジスタ203及びNMOSトランジスタ204は、公知の成膜、エッチング、フォトリソグラフィ、イオン注入等の技術により形成される。ゲート電極205,211の表面及びソース・ドレイン領域209,215の表面には、NiSi,CoSi,又はTiSi等からなるシリサイド層が形成される。
【0019】
上記のように形成されたNMOSトランジスタ204及びPMOSトランジスタ203のそれぞれに引張り又は圧縮方向の応力を与える応力誘起膜を作り分け、キャリアの移動度を最適化する技術がデユアルストレスライナー(Dual Stress Liner)技術である。NMOSトランジスタ204及びPMOSトランジスタ203のチャネル領域に応力を印加することにより、ドレイン電流が増大するので、トランジスタの性能を向上させることができる。
【0020】
図1(B)に示すように、まず、基板Wの上にPMOSトランジスタ203及びNMOSトランジスタ204を覆うように引張り応力を与えるための窒化シリコン(SiN)膜220を形成する。窒化シリコン膜220は例えば化学的気相成長(CVD)により形成される。次に、窒化シリコン膜(SiN)220の上にハードマスクとなる酸化シリコン(SiO)膜222を積層する。酸化シリコン膜222は例えば化学的気相成長(CVD)により形成される。次に、NMOSトランジスタ204の酸化シリコン膜222の上にフォトレジスト224を積層する。フォトレジスト224は公知のリソグラフィー技術を使用することにより形成することができる。
【0021】
図1(C)に示すように、フォトレジスト224をマスクとして、PMOSトランジスタ203上の酸化シリコン膜222及び窒化シリコン膜220をエッチングする。図1(B)から図1(C)に至るエッチング工程に、本発明の第一の実施形態のエッチング方法が適用される。本発明の第一の実施形態のエッチング方法については後述する。
【0022】
次に、図1(D)に示すように、基板W上のPMOSトランジスタ203及びパターニングされた窒化シリコン膜220a及び酸化シリコン膜222aを覆うように圧縮応力を与えるための窒化シリコン膜230を形成する。窒化シリコン膜230は例えば化学気相成長(CVD)により形成される。次に、PMOSトランジスタ203を覆い、かつNMOSトランジスタ204を覆わないマスクパターンをフォトレジスト231により形成する。
【0023】
図1(E)に示すように、フォトレジスト231をマスクとしてNMOSトランジスタ204上の窒化シリコン膜230をエッチングする。この窒化シリコン膜230のエッチングでは、酸化シリコンやフォトレジストに対する窒化シリコンの選択比の高いエッチングになる。この窒化シリコン膜230のエッチングに本発明のエッチング方法を適用してもよい。
【0024】
次に、図1(F)に示すように、フォトレジスト231をマスクとしてNMOSトランジスタ204上のパターニングされた酸化シリコン膜222aをエッチングする。なお、この酸化シリコン膜222aのエッチングにも本発明のエッチング方法を適用してもよい。
【0025】
アッシングによりフォトレジストを除去すると、PMOSトランジスタ203上に圧縮応力を与える窒化シリコン膜230aが形成され、NMOSトランジスタ204上に引張り応力を与える窒化シリコン膜220aが形成された状態になる。
【0026】
図2は、本発明の第一の実施形態のエッチング方法の工程図を示す。この図2には、図1の(B)から(C)に至る工程が詳細に示されている。NMOSトランジスタ204上にフォトレジスト224が積層された基板W(図2(A)参照)は、RLSA(Radial Line Slot Antenna)エッチング装置に搬送される。RLSAエッチング装置の特徴は、低電子温度(低エネルギ)のプラズマを生成できる点にある。RLSAエッチング装置の構成、特徴については後述する。
【0027】
このRLSAエッチング装置では、PMOSトランジスタ203上の絶縁膜としての酸化シリコン膜222及び窒化シリコン膜220をエッチングする。本発明の第一の実施形態のエッチング方法は、酸化シリコン膜222の大部分をエッチングする第一のエッチング(メインエッチング)工程、第一のエッチング工程で酸化シリコン膜222上に生成した堆積物を除去する堆積物除去工程としてのOフラッシュ工程、第一のエッチング工程で残った薄い酸化シリコン膜222を除去する第二のエッチング(オーバーエッチング)工程、及び窒化シリコン膜220を除去する窒化シリコン膜エッチング工程を備える。いずれの工程もRLSAエッチング装置内で行われる。
【0028】
第一のエッチング工程では、RLSAエッチング装置の処理容器に処理ガスを導入し、処理容器内に処理ガスのプラズマを発生させることによって、フォトレジスト224をマスクとしてPMOSトランジスタ203上の酸化シリコン膜222をエッチングする(図2(A)参照)。この第一のエッチング工程では、窒化シリコンに対する酸化シリコンの選択比を高めたエッチングが必要になり、かつフォトレジスト224を残すエッチングが必要になる。このため、堆積物(CF等)を堆積しながらのエッチングが必要になる。そして、酸化シリコン膜222を途中まで厚さ方向にエッチングする。具体的には、残存する酸化シリコン膜222の厚さがエッチング前の厚さの5〜20%になるように、厚さを数値でいえば、残存する酸化シリコン膜222の厚さが10nm以下、望ましくは5nm以下になるように、酸化シリコン膜222をエッチングする。
【0029】
表1は第一のエッチング(メインエッチング)工程の処理条件の一例を示す。
【0030】
【表1】

【0031】
処理ガスの種類は、エッチングすべき材料によって決定され、Ar,He,Ne,Kr及びXeの少なくも一つを含むプラズマ励起用ガスと、エッチングガスとを混合したガスが用いられる。エッチングガスには、CH,CHF,及びCHFの群から選ばれる少なくとも一つ、並びにO,CO,CN,及びNの群から選ばれる少なくとも一つを混合したガスが用いられる。酸化シリコン膜をエッチングするこの例では、Ar、CHF、Oの混合ガスが使用される。エッチングガスのうち、CHF系ガスを用いると基板Wに堆積物が生じる。O,CO,CN,又はNなどは堆積物中の炭素成分の量を調整するために使用される。
【0032】
図2(B)に示すように、第一のエッチング(メインエッチング)工程が終了すると、窒化シリコン膜220の上には薄い酸化シリコン膜222が残り、酸化シリコン膜222の上にはCF系の堆積物225が生ずる。堆積物225は少なくともカーボン及びフッ素を含み、第一のエッチング工程の間に酸化シリコン膜222の上に堆積する。堆積物225を除去するために、堆積物225を除去するOフラッシュ工程が行われる。ここで、O2フラッシュとは、低エネルギの酸素プラズマを被処理膜に晒すことをいう。これにより、堆積物を除去することができる。
【0033】
堆積物225を除去するOフラッシュ工程では、RLSAエッチング装置内で酸素プラズマを発生させる(Oflash)。すなわち、RLSAエッチング装置の処理容器に酸素ガスを導入し、処理容器内に酸素プラズマを発生させる。堆積物225を酸素プラズマ中に晒すと、プラズマ中の酸素ラジカルと堆積物225が反応し、二酸化炭素と水になり、蒸発、そして排気除去される。窒化シリコン膜220の上には薄い酸化シリコン膜222が残っているので、Oフラッシュを経ても窒化シリコン膜220の表層は酸化されることがなく、酸化シリコンに変質することがない。もちろん、酸化シリコン膜222はもともと酸化されているので、Oフラッシュしてもほとんど変化がない。
【0034】
ここで、Oフラッシュをしないと仮定すると、酸化シリコン膜222のエッチングを終了したとき、窒化シリコン膜220の表面にはCF系の堆積物が堆積する。CF系の堆積物が堆積すると、CF系の堆積物がエッチングマスクになって、窒化シリコン膜220のエッチングが局所的に進まなくなる。CF系の堆積物を除去することにより、これを防止することができる。しかも、Oフラッシュするとき、窒化シリコン膜220の表面には酸化シリコン膜222が薄く残存する。このため、窒化シリコン膜220の表層が酸素プラズマによって酸化してしまうのを防止できる。
【0035】
堆積物は、表2に示す条件のもと酸素プラズマ処理される。
【0036】
【表2】

【0037】
NMOSトランジスタ204上には、フォトレジスト224が形成されている(図2(B)参照)。フォトレジスト224もカーボン及びフッ素を含むので、Oフラッシュを強力に行うと、フォトレジスト224がプラズマ中の酸素ラジカルと結合し、二酸化炭素と水になり、蒸発・除去される。フォトレジスト224が除去されるのを防止するために、電子温度の低い酸素プラズマにする必要がある。しかも、薄く残存する酸化シリコン膜222の下には、窒化シリコン膜220が形成されている。酸素プラズマによって、薄い酸化シリコン膜222を介して窒化シリコン膜220が酸化されるのを防止するためにも、酸素プラズマの電子温度を低くする必要がある。RLSAのエッチング装置を使用し、処理容器内の圧力を100mTorr以上の高圧にし、マイクロ波パワーを3000W以下に低くすれば、電子温度の低い、すなわちエネルギの低い酸素プラズマを生成することができる。酸素プラズマの処理時間は、フォトレジスト224や下地の窒化シリコン膜220に悪影響を与えない短いように10秒程度に設定される。
【0038】
図2(C)に示すように、Oフラッシュにより酸化シリコン膜222の表面の堆積物225が除去される。窒化シリコン膜220の上には厚さが100nm以下にまで減じられた薄い酸化シリコン膜222が形成されている。薄い酸化シリコン膜222の厚さ方向の全体を除去するために、窒化シリコンに対する酸化シリコンの選択比を高めた第二のエッチング(オーバーエッチング)工程が行われる。第二のエッチング工程も、堆積物(CF等)を堆積しながらのエッチングになる。
【0039】
表3は第二のエッチング工程の処理条件の一例を示す。
【0040】
【表3】

【0041】
処理ガスの種類は、第一のエッチング工程と同一であるが、RFバイアスを第一のエッチング工程よりも僅かに大きくし、処理時間を60秒と短くしている。
【0042】
図2(D)に示すように、第二のエッチング(オーバーエッチング)工程によって、酸化シリコン膜222が除去される。第二のエッチング工程においても堆積物は生成する。しかし、酸化シリコン膜222は当初の10%以下程度と薄くなっているので、第2のエッチング中に生成する堆積物の量は少ない。堆積物の量がエッチング量に比例すると仮定すると、堆積物の量も10%程度になる。堆積物の量が少なくなると、堆積物を除去しなくても窒化シリコン膜220の十分に均一なエッチングが可能になる。
【0043】
酸化シリコン膜222のエッチングが終了したら、アッシングによりNMOSトランジスタ204上のフォトレジスト224を除去する。このアッシングにおいては、窒化シリコンや酸化シリコンに対するフォトレジストのエッチング選択比を高くする必要がある。
【0044】
PMOSトランジスタ203上の窒化シリコン膜220は、窒化シリコン膜エッチング工程により厚さ方向の全体が除去される。窒化シリコン膜エッチング工程では、RLSAエッチング装置の処理容器に処理ガスを導入し、窒化シリコン膜220をエッチングする。窒化シリコン膜220の表面は酸化されておらず、しかも表面に堆積する堆積物の量も少ないので、Oフラッシュを行わなくても窒化シリコン膜220のエッチングが可能になる。なお、窒化シリコン膜220の下層には、酸化シリコン膜214(PMOSトランジスタ203のスペーサ)が形成されているので、酸化シリコンに対する窒化シリコンの選択比を高めたエッチングが必要になる。
【0045】
表4は窒化シリコン膜エッチング工程の処理条件の一例を示す。
【0046】
【表4】

【0047】
処理ガスの種類は、エッチングすべき材料によって決定され、Ar,He,Ne,Kr及びXeの少なくも一つを含むプラズマ励起用ガスと、エッチングガスとを混合したガスが用いられる。エッチングガスには、CH,CHF,及びCHFの群から選ばれる少なくとも一つ、並びにO,CO,CN,及びNの群から選ばれる少なくとも一つを混合したガスが用いられる。窒化シリコン膜220をエッチングするこの例では、Ar,CH,Oの混合ガスが使用される。窒化シリコン膜のエッチング工程において、圧力を低い→高い、の2段階にしても良い。
【0048】
基板Wに照射されるイオンエネルギは、プラズマのエネルギと基板Wに印加されるバイアス電圧の和と相関関係がある。RFバイアスを0にすることにより、プラズマのエネルギだけでエッチングできるようになる。さらに、500mTの高圧でエッチングすることにより、プラズマの電子温度、すなわちプラズマのエネルギを低下させることができる。EFバイアスとプラズマのエネルギとの和を小さくすることができるので、下地となるシリコン酸化膜214やシリコン基板Wにダメージ(リセス)が入るのを防止できる。
【0049】
PMOSトランジスタ203上の酸化シリコン膜222及び窒化シリコン膜220のエッチングが終了したら、図2(E)に示す状態(図1(C)と同じ状態)になる。
【0050】
図3は、異なる圧力の下でのフォトレジストのエッチングレートの実験結果を示す。この実験では、Oフラッシュは、各圧力の下、10秒間、3000Wのマイクロ波パワーをKrFレジストに供給することによって行われた。図3(A)〜(D)において横軸の単位はmmであり、縦軸の単位はÅである。基板W上にX軸、Y軸、V軸、W軸をとり、四方向のエッチングレートを測定している。横軸の0は基板Wの中心を表す。
【0051】
図3(A)によれば、圧力が20mTのとき、エッチングレートは10秒間で114.0nmであり、高い値を保つ。図3(B)によれば、圧力が60mTのとき、エッチングレートは10秒間で87.7nmであり、まだ高い値を保つ。圧力が60mTのときのフォトレジストのエッチングレートはまだ高い値なので、エッチングレートをさらに低くするために、Oフラッシュを60mTよりも高い圧力で行う必要がある。
【0052】
図3(C)によれば、圧力が100mTのとき、エッチングレートは10秒間で39.7nmであり、低い値になる。エッチングレートを39.7nm/10secより低くするため、Oフラッシュは100mT以上で行われるのが望ましい。図3(D)によれば、200mTのとき、エッチングレートは10秒間で20.5nmであり、より低い値になる。100mTのときよりもエッチングレートを低くすることができるので、Oフラッシュは200mTで行われてもよい。
【0053】
図4は、マイクロ波パワーを変化させたときのフォトレジストのエッチングレートの実験結果を示す。Oフラッシュは、100mTの圧力の下、5秒間、1500W、2000W、3000Wの各マイクロ波パワーをKrFレジストに供給することによって行われた。
【0054】
図4(A)によれば、1500Wのとき、エッチングレートは2秒間で9.3nmであり、低い値になる。図4(B)によれば、2000Wのとき、エッチングレートは2秒間で12.6nmであり、少し高くなるもののまだ低い値を保つ。図4(C)によれば、3000Wのとき、エッチングレートは2秒間で24.2nmであり、2000Wのときの倍の高い値になる。エッチングレートを低くするために、マイクロ波パワーは2000Wに設定されるが望ましい。マイクロ波パワーが1500Wのときはよりエッチングレートを低くすることができるので、1500Wに設定されてもよい。
【0055】
図5(A)〜(F)には、本発明の第二の実施形態のエッチング方法が適用される半導体装置の製造方法、例えばMOSFETの製造方法が示されている。図5(A)に示すように、シリコン基板Wの表面には、ポリシリコンからなるゲート電極301がゲート絶縁膜302、例えば酸化シリコン膜を介して形成される。次に、図5(B)に示すように、シリコン基板Wの表面304及びゲート電極301の表面に酸化シリコン(SiO)膜303が化学的気相成長(CVD)により形成される。
【0056】
次に、シリコン基板WはRLSAエッチング装置に搬送される。RLSAエッチング装置では、ゲート電極301の側壁にオフセットスペーサ303a(図1(E)参照)を形成するために、堆積された酸化シリコン膜303をエッチングする。
【0057】
図5(B)から図5(E)に至る過程に、本発明の第二の実施形態のエッチング方法が適用される。第二の実施形態のエッチング方法は、酸化シリコン膜303の大部分をエッチングする第一のエッチング(メインエッチング)工程、第一のエッチング工程で生成した堆積物を除去するOフラッシュ工程、第一のエッチング工程で残った薄い酸化シリコン膜303を除去する第二のエッチング(オーバーエッチング)工程を備える。いずれの工程もRLSAエッチング装置内で行われる。
【0058】
第一のエッチング工程では、RLSAエッチング装置の処理容器に処理ガスを導入し、処理容器内にプラズマを発生させることによって、酸化シリコン膜303をエッチングする。この第一のエッチング工程では、シリコンやポリシリコンに対する酸化シリコンの選択比を高めたエッチングが必要になり、堆積物(CF)を生成しながら酸化シリコン膜303が当初の膜厚の例えば5〜20%になるように厚さ方向にエッチングする。
【0059】
図5(C)に示すように、第一のエッチング工程が終了すると、シリコン基板Wの上には薄い酸化シリコン膜303が残った状態になり、酸化シリコン膜303の上には堆積物305が付着する。堆積物305は少なくともカーボンを含む。堆積物305を除去するために、Oフラッシュ工程が行われる。
【0060】
堆積物305を除去するOフラッシュ工程では、RLSAエッチング装置内で酸素プラズマをフラッシュさせる(Oflash)。堆積物305を酸素プラズマ中に置くと、プラズマ中の酸素ラジカルと堆積物が結合し、二酸化炭素と水になり、蒸発・除去される。シリコン基板Wの上には薄い酸化シリコン膜303が残っているので、Oフラッシュしてもシリコン基板Wは酸化されることがなく、シリコン基板Wにダメージ(リセス)が入るのを防止できる。
【0061】
フラッシュにより酸化シリコン膜303の表面の堆積物が除去される(図5(D)参照)。シリコン基板Wの上には厚さが10%程度まで減じられた薄い酸化シリコン膜303が形成されている。薄い酸化シリコン膜303の厚さ方向の全体を除去するために、シリコン基板Wやポリシリコンに対する酸化シリコンの選択比を高めた第二のエッチング工程が行われる。第二のエッチング工程も、堆積物(CF等)を生じながらのエッチングになるが、酸化シリコン膜303は薄いので、堆積物の量も少ない。なお、必要に応じて再度のOフラッシュを行ってもよい。第二のエッチング工程が終了すると、シリコン基板Wの表面が露出した状態になる(図5(E)参照)。
【0062】
次に、図5(F)に示すように、シリコン基板Wにエクステンション領域306を形成するために、シリコン基板Wに燐イオンを注入する。次に、サイドウォールスペーサを形成するために、図5(G)に示すように、シリコン基板Wの表面304及びゲート電極301を覆うように窒化シリコン膜307が形成される。窒化シリコン膜307は化学的気相成長(CVD)により形成される。
【0063】
次にRLSAエッチング装置において、ゲート電極301の側壁にサイドウォールスペーサ307a(図5(J)参照)を形成するため、窒化シリコン膜307がエッチングされる。
【0064】
図5(G)から図5(J)に至るエッチング過程に、本発明の第三の実施形態のエッチング方法が適用される。第三の実施形態のエッチング方法は、窒化シリコン膜307の大部分をエッチングする第一のエッチング(メインエッチング)工程、第一のエッチング工程で生成した堆積物を除去するOフラッシュ工程、第一のエッチング工程で残った薄い窒化シリコン膜307を除去する第二のエッチング(オーバーエッチング)工程を備える。いずれの工程もRLSAエッチング装置内で行われる。
【0065】
第一のエッチング工程では、RLSAエッチング装置の処理容器に処理ガスを導入し、処理容器内にプラズマを発生させることによって、窒化シリコン膜307をエッチングする。この第一のエッチング工程では、シリコンやポリシリコンに対する窒化シリコンの選択比を高めたエッチングが必要になり、堆積物(CF)を堆積しながら窒化シリコン膜307が当初の膜厚の例えば5〜20%になるようにエッチングする。
【0066】
図5(H)に示すように、第一のエッチング工程が終了すると、シリコン基板Wの上には薄い窒化シリコン膜307が残った状態になり、窒化シリコン膜307の上には堆積物308が堆積する。堆積物308は少なくともカーボン及びフッ素を含む。堆積物308を除去するために、Oフラッシュ工程が行われる。
【0067】
堆積物308を除去するOフラッシュ工程では、RLSAエッチング装置内で酸素プラズマをフラッシュさせる(Oflash)。堆積物308を酸素プラズマ中に置くと、プラズマ中の酸素ラジカルと堆積物308が結合し、二酸化炭素と水になり、蒸発・除去される。シリコン基板Wの上には薄い窒化シリコン膜307が残っているので、Oフラッシュしてもシリコン基板Wは酸化されることがなく、シリコン基板Wにダメージ(リセス)が入るのを防止できる。
【0068】
フラッシュにより窒化シリコン膜307の表面の堆積物308を除去したら、シリコン基板Wの上には厚さが10%程度まで減じられた薄い窒化シリコン膜307が形成されている状態になる(図5(I)参照)。薄い窒化シリコン膜307の厚さ方向の全体を除去するために、シリコン基板Wやポリシリコンに対する窒化シリコンの選択比を高めた第二のエッチング工程が行われる。第二のエッチング工程も、堆積物(CF等)で側壁を保護しながらのエッチングを行なうが、窒化シリコン膜307は薄いので、堆積物の量も少ない。なお、堆積物を除去する必要があれば、再度Oフラッシュを行えばよい。
【0069】
次に、シリコン基板Wにソース/ドレイン領域を形成するためのヒ素イオンが注入される(図5(J)参照)。サイドウォールスペーサ307aを形成することで、エクステンション領域の外側に高濃度のソース/ドレイン領域310を形成することができる。
【0070】
この半導体装置の製造方法では、オフセットスペーサ及びサイドウォールスペーサの両方が形成されているが、オフセットスペーサが形成されることなく、サイドウォールスペーサのみが形成されてもよい。
【0071】
上記第一ないし第三の実施形態のエッチング方法では、RLSAエッチング装置が使用されているが、プラズマを生成することができる他のプラズマ処理装置も使用することができる。RLSAエッチング装置の構成は以下の通りである。
【0072】
図6は、RLSAエッチング装置の概略断面図を示す。RLSAエッチング装置は、プラズマ源としてマイクロ波励起プラズマを利用する。マイクロ波励起プラズマを利用すると、エッチング処理を行う領域において低電子温度、高密度のプラズマを生成することができる。
【0073】
RLSAによって生成されたマイクロ波プラズマの特徴は、誘電体窓52直下(プラズマ励起領域と呼ばれる)で生成された数eVのプラズマが拡散し、基板W直上(拡散プラズマ領域)では約1〜2eV程度の低い電子温度のプラズマとなることにある。すなわち、平行平板等のプラズマとは異なり、プラズマの電子温度の分布が誘電体窓52からの距離の関数として明確に生ずることに特徴がある。より詳細には、図7に示したとおり、誘電体窓52直下での数eV〜10eVの電子温度が、基板W上では約1〜2eV程度に減衰する。基板Wの処理はプラズマの電子温度の低い領域(拡散プラズマ領域)で行なわれるため、基板Wにリセス等の大きなダメージを与えることがない。
【0074】
RLSAエッチング装置は、アルミニウム合金、ステンレス合金等からなる筒状の処理容器10を備える。処理容器10は接地されている。
【0075】
初めに、RLSAエッチング装置の処理容器10にマイクロ波励起プラズマを発生させることに直接的に貢献しない構成要素や部材について説明する。
【0076】
処理容器10の底部の中央には、基板Wが載せられる載置台としてのサセプタ12が設けられる。サセプタ12は処理容器10の底部から上方に伸びる円筒状の支持部14により保持される。サセプタ12は、例えばアルミナや窒化アルミナ等の絶縁材料からなり、円盤状に形成される。サセプタ12は、高周波が印加される下部電極として機能する。
【0077】
処理容器10の内側面と、円筒状の支持部14を囲み、処理容器10の底部から上方に伸びる円筒状の壁部16との間には、円環形状の排気経路18が設けられる。排気経路18の上部には円環形状のバッフルプレート20が配置され、排気経路18の下部には排気口22が設けられる。サセプタ12の上の基板Wに関して対称に分布する均一なガスの流れを得るために、円環形状の排気経路18には周方向に等しい角度間隔を空けて多数の排気口22が設けられる。各排気口22は排気パイプ24を介して排気装置26に接続される。排気装置26は、処理容器10内を真空にし、所望の圧力に減圧する排気手段としてのターボ分子真空ポンプ(TMP)等の真空ポンプを備える。ゲートバルブ28は、基板Wが処置容器から搬出入される搬送口を開閉する。
【0078】
サセプタ12は、整合器32、電力供給ロッド34を介してサセプタ12にRFバイアス電圧を印加する高周波電源30に電気的に接続される。高周波電源30は、所定の電力レベルにおいて、例えば13.56MHzの比較的低い周波数の高周波を出力する。このような低い周波数は、サセプタ12上の基板Wに引き込むイオンのエネルギを調整するのに適している。整合器32は、高周波電源30の出力インピーダンスを、電極(サセプタ12)、処理容器10内に生成されたプラズマ、及び処理容器10を含む負荷のインピーダンスに整合するための整合要素を備える。整合要素は、自己バイアスを発生させるためのブロックコンデンサ(blocking condenser)を有する。
【0079】
サセプタ12の上面には、静電チャック36が設けられる。静電チャック36は、サセプタ12上に基板Wを静電力によって保持する。静電チャック36は、導体膜から形成される電極36aと、電極36aを上下に挟む一対の絶縁膜36b,36cと、を備える。直流電源40は、スイッチ42を介して電極36aに電気的に接続される。直流電源40から静電チャック36に印加される直流電圧は、静電チャック36上に基板Wを保持するためのクーロン力を生じさせる。静電チャック36の外周には、基板Wを囲むフォーカスリング38が設けられる。
【0080】
サセプタ12の内部には、冷却媒体経路44が設けられる。冷却媒体経路44は周方向に伸び、円環形状に形成される。所定温度の冷却媒体又は冷却水が、導管48及び冷却媒体経路44を循環するようにチラーユニット(図示せず)から導管48を介して冷却媒体経路44に供給される。冷却媒体の温度を調整することにより、静電チャック36上の基板Wの温度を調整することができる。さらに、Heガス等の熱伝導ガスが基板Wと静電チャックとの間に、ガス供給部(図示せず)から供給パイプ50を介して供給される。
【0081】
次に、RLSAエッチング装置の処理容器10にマイクロ波プラズマを発生させるのに貢献する要素や部材を説明する。
【0082】
平面アンテナ55は、石英、セラミックス、アルミナ(Al2 3 )、又は窒化アルミニウム(AlN)などの誘電体からなる円盤状の誘電体窓52と、丸い板状のスロットアンテナ54と、を備える。誘電体窓52は、処理容器10の内部を密封するように処理容器10に取り付けられ、サセプタ12に対向する処理容器10の天井部として機能する。スロットアンテナ54は誘電体窓52の上面の上に配置され、同心円状に分布する多数のスロットを有する。スロットアンテナ54は、石英等の誘電体からなる波長圧縮板としての誘電体板56を介して電磁的にマイクロ波導入路58に連結される。
【0083】
マイクロ波導入路58は、導波路62と、導波路/同軸管変換器64と、同軸管66と、を有し、マイクロ波発生器60から出力されたマイクロ波をスロットアンテナ54に伝送する。導波路62は、例えば矩形状のパイプから形成され、マイクロ波発生器60から変換器64にTEモードでマイクロ波を伝送する。
【0084】
変換器64は、導波路62を同軸管66に連結させ、導波路62内のTEモードのマイクロ波を同軸管66内のTEMモードのマイクロ波に変換する。変換器64は、下方に向かって尖った円錐形状に形成され、その上部が導波路62に結合され、その下部が同軸管66の内側導体68に結合される。
【0085】
同軸管66は、変換器64から処理容器10の上部中央に向かって垂直下方に伸び、スロットアンテナ54に連結される。同軸管66は、外側導体70と、内側導体68と、を有する。外側導体70は、その上端部が導波路62に結合され、垂直下方に伸びる下端部が誘電体板56に結合される。内側導体68はその上端部が変換器64に接続され、その下端部がスロットアンテナ54に到達まで垂直下方に伸びる。マイクロ波は外側導体70と内側導体68との間をTEMモードで伝播する。
【0086】
マイクロ波発生器から出力されたマイクロ波は、導波路62、変換器64、同軸管66を含むマイクロ波導入路58を伝送され、誘電体板56を通過した後、スロットアンテナ54に供給される。マイクロ波は誘電体板56を半径方向に拡散し、スロットアンテナ54のスロットを介して処理容器10内に放射される。これにより、誘電体窓52の直下のガスがイオン化され、処理容器10内にプラズマが発生する。
【0087】
誘電体板56の上面にはアンテナ背面プレート72が設けられる。アンテナ背面プレート72は例えばアルミニウムからなる。アンテナ背面プレート72には、チラーユニット(図示せず)に接続される流路74が形成される。所定温度の冷却媒体又は冷却水は流路74及びパイプ76,78内を循環する。アンテナ背面プレート72は誘電体板56に発生する熱を吸収する冷却ジャケットとして機能し、熱を外部に排出する。
【0088】
この実施形態では、ガス導入路80は同軸管66の内側導体68を貫通するように設けられる。第一のガス導入パイプ84は、その一端がガス導入路80の上端開口部80aに接続され、その他端が処理ガス供給源82に接続される。誘電体窓52の中央には、処理容器10に向かって開口するガス噴射口86が形成される。上記の構成を備える第一のガス導入部88において、処理ガス供給源82からの処理ガスは、第一のガス導入パイプ84、及び内側導体68内のガス導入路80を流れ、ガス噴射口86から下方に位置するサセプタ12に向かって噴射される。処理ガスは排気装置26によってサセプタ12を囲む円環状の排気経路18に引かれているので、噴射された処理ガスは処理容器10内を半径方向外側に拡散する。第一のガス導入パイプ84の途中には流量調整器90(MFC)と、オンオフを行うバルブ92が設けられる。
【0089】
この実施形態では、第一のガス導入部88に加えて、処理容器10に処理ガスを供給するための第二のガス導入部94が設けられる。第二のガス導入部94は、処理容器10内に配置されるガスリング91と、ガスリング91に接続されるガス供給管100と、を備える。ガスリング91は中空のリング形状に形成され、その内周側の側面には周方向に等しい角度間隔を空けて多数の側面噴射口92を有する。多数の側面噴射口92は処理容器10のプラズマ領域内で開口する。ガス供給管100は、ガスリング91及び処理ガス供給源82に接続される。ガス供給管100の途中には、流量調整器102(MFC)、及びオンオフを行う104バルブが設けられる。上記第一のガス導入部88及び第二のガス導入部94が処理ガス導入手段を構成する。
【0090】
第二のガス導入部94において、処理ガス供給源82からの処理ガスはガス供給管100を介してガスリング91に導入される。処理ガスが充満するガスリング91の内部圧力は、周方向において均一になり、多数の側面噴射口92から処理容器10内のプラズマ領域に均一に水平方向に処理ガスが噴射される。ガスリング91からプラズマの電子温度の低い領域(プラズマ拡散領域)へ処理ガスが供給されるので、処理ガスの解離の状態を制御することができる。
【0091】
図8は、スロットアンテナ54のスロットパターンの一例を示す。スロットアンテナ54は、同心円状に配列する多数のスロット54b,54cを有する。詳しくは、長手方向が直交する二種類のスロットが同心円状に交互に配列される。同心円の半径方向の間隔は、スロットアンテナ54を半径方向に伝播するマイクロ波の波長に基づいて定められる。このスロットパターンによれば、マイクロ波は互いに直交する二つの偏向成分を備える平面波に変換され、平面波がスロットアンテナ54から放射される。このように構成されたスロットアンテナ54は、アンテナの全領域から処理容器10内に均一にマイクロ波を放射するのに効果的であり、アンテナの下方に均一な安定したプラズマを生成するのに適している。
【0092】
排気装置26、高周波電源30、直流電源40、スイッチ42、マイクロ波発生器60、処理ガス供給源82、チラーユニット(図示せず)、熱伝導ガス供給部(図示せず)等の個々の作動、及び全体の作動は、制御部(図示せず)によって制御される。制御部は、例えばマイクロコンピュータ等から構成される。
【0093】
なお、本発明は、上記教示を考慮して様々に修正・変化可能である。具体的な実施態様については、本発明の範囲から逸脱しない範囲で種々の変形・変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0094】
10…処理容器
22…排気口
12…サセプタ(載置台)
54…スロットアンテナ
60…マイクロ波発生器
58…マイクロ波導入路58
82…処理ガス供給源
88…第一のガス導入部
94…第二のガス導入部
203…PMOSトランジスタ
204…NMOSトランジスタ
220…窒化シリコン膜
222…酸化シリコン膜
225…堆積物
301…ゲート電極
303…酸化シリコン膜
303a…オフセットスペーサ
305,308…堆積物
307…窒化シリコン膜
307…窒化シリコン膜
307a…サイドウォールスペーサ
308…堆積物
W…シリコン基板(基板)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成された絶縁膜をエッチングする方法であって、
前記絶縁膜をプラズマ化させた処理ガスに晒し、前記絶縁膜を厚さ方向に途中までエッチングする第一のエッチング工程と、
前記第一のエッチング工程の終了時に残存する絶縁膜を酸素プラズマに晒し、前記残存する絶縁膜の表面に堆積した堆積物を除去する堆積物除去工程と、
前記残存する絶縁膜をプラズマ化させた処理ガスに晒し、前記残存する絶縁膜をエッチングする第二のエッチング工程と、を備えるエッチング方法。
【請求項2】
前記絶縁膜は、窒化シリコン膜の上に積層された酸化シリコン膜であり、
前記第一及び前記第二のエッチング工程では、前記酸化シリコン膜をエッチングすることを特徴とする請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記エッチング方法はさらに、
前記窒化シリコン膜をプラズマ化させた処理ガスに晒し、前記窒化シリコン膜をエッチングする窒化シリコン膜エッチング工程を備えることを特徴とする請求項2に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記エッチング方法は、基板上に形成されるNチャネル型FET(Field Effect Transistor)及びPチャネル型FETの少なくとも一方に応力を与える応力誘起層を形成するためのエッチング方法であることを特徴とする請求項2又は3に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記基板は、シリコン基板であり、
前記絶縁膜は、前記シリコン基板の上に形成される窒化シリコン膜又は酸化シリコン膜であることを特徴とする請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記エッチング方法は、前記ゲート電極の側壁にオフセットスペーサ又はサイドウォールスペーサを形成するためのエッチング方法であることを特徴とする請求項5に記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記酸素プラズマは、マイクロ波によって励起されたプラズマであり、
前記マイクロ波は、基板が収納される処理容器の天井部の誘電体窓の上面に設けられるスロットアンテナの多数のスロットを介して前記処理容器の処理空間に導入され、
前記堆積物除去工程を行うときの前記処理容器の圧力が、100mTorr(13.33Pa)以上であることを特徴とする請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記酸素プラズマは、マイクロ波によって励起されたプラズマであり、
前記マイクロ波は、基板が収納される処理容器の天井部の誘電体窓の上面に設けられるスロットアンテナの多数のスロットを介して前記処理容器の処理空間に導入され、
前記堆積物除去工程を行うときの前記マイクロ波の発生源のパワーが、3000W以下であることを特徴とする請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項9】
前記第一のエッチング工程、前記堆積物除去工程、及び前記第二のエッチング工程が同一の処理容器内で行われることを特徴とする請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項10】
基板に形成された絶縁膜をエッチングする装置であって、
気密な処理容器内に処理ガスを導入し、前記処理容器内にプラズマを発生させることによって、前記絶縁膜をプラズマ化させた処理ガスに晒し、前記絶縁膜を厚さ方向に途中までエッチングし、
その後、前記処理容器内に酸素ガスを導入し、前記処理容器内にプラズマを発生させることによって、前記第一のエッチング工程の終了時に残存する絶縁膜を酸素プラズマに晒し、前記残存する絶縁膜の上に堆積した堆積物を除去し、
その後、前記処理容器内に処理ガスを導入し、前記処理容器内にプラズマを発生させることによって、前記残存する絶縁膜をプラズマ化させた処理ガスに晒し、前記残存する絶縁膜をエッチングするエッチング装置。
【請求項11】
前記エッチング装置は、
天井部にマイクロ波を透過する誘電体窓を有すると共に、内部を気密に保つことが可能な処理容器と、
前記処理容器の内部に設けられ、基板を載置する載置台と、
前記処理容器の前記誘電体窓の上面に設けられ、前記処理容器の処理空間に多数のスロットを介してマイクロ波を導入するスロットアンテナと、
所定の周波数のマイクロ波を発生するマイクロ波発生器と、
前記マイクロ波発生器が発生するマイクロ波を前記スロットアンテナに導くマイクロ波導入路と、
処理ガス供給源から供給される処理ガスを前記処理容器に導入する処理ガス導入手段と、
前記処理容器内に導入された処理ガスを、前記載置台に載置された基板の上面より下方の排気口から排気する排気手段と、を備えることを特徴とする請求項10に記載のエッチング装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−15149(P2012−15149A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147357(P2010−147357)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】