説明

半導体デバイスの製造方法および基板処理装置

【課題】TiN膜の上部に形成するTiO膜の少なくとも一部の結晶構造をブルッカイト型構造又はルチル型構造とし、TiO膜の誘電率を高める。
【解決手段】ジルコニウム酸化膜の膜厚を制御することにより、ジルコニウム酸化膜の少なくとも一部の結晶構造を立方晶系構造又は正方晶系構造とし、これにより、チタン酸化膜の少なくとも一部の結晶構造をブルッカイト型構造又はルチル型構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの製造方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の半導体デバイスには、上下の電極膜に挟まれたキャパシタ絶縁膜を備えたMIM(Metal−Insulator−Metal)構造を有するものがある。誘電率を高めるため、キャパシタ絶縁膜としては例えばチタン酸化(TiO)膜等が用いられる。TiO膜は、例えば基板が収容された処理室内に、チタン含有ガスと酸素含有ガスとを供給することにより形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
TiO膜は、特にブルッカイト型構造やルチル型構造を有する結晶構造をとることで誘電率が増す。しかしながら、例えば下部電極膜となるチタン窒化(TiN)膜を下地膜としてTiO膜を形成すると、TiO膜はブルッカイト型構造等よりも誘電率の低いアナターゼ型構造を有する結晶構造となってしまう場合があった。
【0004】
本発明の目的は、TiN膜の上部に形成するTiO膜の少なくとも一部の結晶構造をブルッカイト型構造又はルチル型構造とし、TiO膜の誘電率を高めることが可能な半導体デバイスの製造方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、基板の上に形成されたチタン窒化膜の上にジルコニウム酸化膜を形成するジルコニウム酸化膜形成工程と、前記ジルコニウム酸化膜の上にチタン酸化膜を形成するチタン酸化膜形成工程と、を有し、前記ジルコニウム酸化膜の膜厚を制御することにより、前記ジルコニウム酸化膜の少なくとも一部の結晶構造を立方晶系構造又は正方晶系構造とし、これにより、前記チタン酸化膜の少なくとも一部の結晶構造をブルッカイト型構造又はルチル型構造とする半導体デバイスの製造方法である。
【0006】
本発明の他の態様は、チタン窒化膜が形成された基板を収容する処理室と、前記基板を加熱する加熱部と、前記処理室内にジルコニウム含有ガスを供給するジルコニウム含有ガス供給部と、前記処理室内にチタン含有ガスを供給するチタン含有ガス供給部と、前記処理室内に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給部と、前記処理室内の雰囲気を排気する排気部と、前記加熱部、前記ジルコニウム含有ガス供給部、前記チタン含有ガス供給部、前記酸素含有ガス供給部および前記排気部を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記基板が収容された前記処理室内にジルコニウム含有ガスを供給させ排気させ、前記処理室内に酸素含有ガスを供給させ排気させ、前記ジルコニウム含有ガスの供給・排気と前記酸素含有ガスの供給・排気とを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施させることにより、前記チタン窒化膜の上にジルコニウム酸化膜を形成させ、前記ジルコニウム酸化膜を加熱させて前記ジルコニウム酸化膜の少なくとも一部の結晶構造を相転移させ、前記処理室内にチタン含有ガスを供給させ排気させ、前記処理室内に前記酸素含有ガスを供給させ排気させ、前記チタン含有ガスの供給・排気と前記酸素含有ガスの供給・排気とを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施させることにより、相転移させた前記ジルコニウム酸化膜の上にチタン酸化膜を形成させるよう制御し、前記ジルコニウム酸化膜の膜厚を制御しておくことにより、前記ジルコニウム酸化膜を加熱して前記ジルコニウム酸化膜の少なくとも一部の結晶構造を立方晶系構造又は正方晶系構造へと相転移させ、こ
れにより、前記チタン酸化膜の少なくとも一部の結晶構造をブルッカイト型構造又はルチル型構造とするように構成される基板処理装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、TiN膜の上部に形成するTiO膜の少なくとも一部の結晶構造をブルッカイト型構造又はルチル型構造とし、TiO膜の誘電率を高めることが可能な半導体デバイスの製造方法および基板処理装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の斜透視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る処理炉の構成図であって、特に処理室部分を断面図で示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る処理炉の構成図であって、特に図2の処理炉部分のA−A断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る半導体デバイスの主要構造部を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る半導体デバイスの主要構造部の製造工程を示すフロー図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る基板処理工程を例示するフロー図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る基板処理工程のガス供給タイミング図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るキャパシタ絶縁膜の同一分子数あたりの結晶構造の違いを示す図面であって、(a)はアナターゼ型構造の結晶状態を示す模式図であり、(b)はブルッカイト型構造の結晶状態を示す模式図である。
【図9】本発明の参考例に係る半導体デバイスのI−V特性を示すグラフ図である。
【図10】本発明の実施例に係るキャパシタ絶縁膜のX線回折の測定結果を示すグラフ図である。
【図11】本発明の実施例に係るキャパシタ絶縁膜のEOTの測定結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本発明の一実施形態>
まず、本発明の一実施形態に係る基板処理装置について、その構成を以下に説明する。
【0010】
(1)基板処理装置の全体構成
図1は、本実施形態に係る基板処理装置101の斜透視図である。図1に示すように、本実施形態にかかる基板処理装置101は筐体111を備えている。基板としてのウエハ200を筐体111内外へ搬送するには、複数のウエハ200を収納するウエハキャリア(基板収納容器)としてのカセット110が使用される。筐体111の正面には、カセット110を筐体111内外へ搬送する開口であるカセット搬入搬出口(基板収納容器搬入搬出口、図示せず)が設けられている。カセット搬入搬出口の筐体111内側には、カセットステージ(基板収納容器受渡し台)114が設けられている。カセット110は、図示しない工場内搬送装置によってカセットステージ114上に載置され、また、カセットステージ114上から筐体111外へ搬出されるように構成されている。
【0011】
カセット110は、カセット110内のウエハ200が垂直姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように、工場内搬送装置によって、カセットステージ114上に載置されるように構成されている。カセットステージ114は、カセット110を筐体111の後方に向けて90°回転させてカセット110内のウエハ200を水平姿勢とさせ、カセット110のウエハ出し入れ口を筐体111内の後方に向かせることが可能なように構成されている。
【0012】
筐体111内を前後方向でみた略中央部には、カセット棚(基板収納容器載置棚)105が設置されている。カセット棚105は、複数段、複数列にて複数個のカセット110を保管するように構成されている。カセット棚105には、後述するウエハ移載機構125の搬送対象となるカセット110が収納される移載棚123が設けられている。また、カセットステージ114の上方には、予備カセット棚107が設けられ、予備のカセット110を保管するように構成されている。
【0013】
カセットステージ114とカセット棚105との間には、カセット搬送装置(基板収納容器搬送装置)118が設けられている。カセット搬送装置118は、カセット110を保持したまま昇降可能なカセットエレベータ(基板収納容器昇降機構)118aと、カセット110を保持したまま水平移動可能な搬送機構としてのカセット搬送機構(基板収納容器搬送機構)118bと、を備えている。これらカセットエレベータ118aとカセット搬送機構118bとの連続動作により、カセットステージ114、移載棚123を除くカセット棚105の所定位置、予備カセット棚107、移載棚123の間で、カセット110を搬送するように構成されている。
【0014】
カセット棚105の後方には、ウエハ移載機構(基板移載機構)125が設けられている。ウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置(基板移載装置)125aと、ウエハ移載装置125aを昇降させるウエハ移載装置エレベータ(基板移載装置昇降機構)125bと、を備えている。なお、ウエハ移載装置125aは、ウエハ200を水平姿勢で保持するツイーザ(基板保持体)125cを備えている。これらウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連続動作により、ウエハ200を移載棚123上のカセット110内からピックアップして後述するボート(基板保持具)217へ装填(ウエハチャージ)したり、ウエハ200をボート217から脱装(ウエハディスチャージ)して移載棚123上のカセット110内へ収納したりするように構成されている。
【0015】
筐体111の後部上方には、処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部には開口が設けられ、かかる開口は炉口シャッタ(炉口開閉機構)147により開閉されるように構成されている。なお、処理炉202の構成については後述する。
【0016】
処理炉202の下方には、ウエハ200を移載棚123上のカセット110内からボート(基板保持具)217へ装填・脱装する空間である移載室124が設けられている。移載室124内には、ボート217を昇降させて処理炉202内外へ搬入搬出させる昇降機構としてのボートエレベータ(基板保持具昇降機構)115が設けられている。ボートエレベータ115の昇降台には、連結具としてのアーム128が設けられている。アーム128上には、ボート217を垂直に支持するとともに、ボートエレベータ115によりボート217が上昇したときに処理炉202の下端部を気密に閉塞する炉口蓋体としてのシールキャップ219が水平姿勢で設けられている。
【0017】
ボート217は複数本の保持部材を備えており、複数枚(例えば、50枚から150枚程度)のウエハ200を、水平姿勢で、かつその中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に保持するように構成されている。
【0018】
カセット棚105の上方には、供給ファンと防塵フィルタとを備えたクリーンユニット134aが設けられている。クリーンユニット134aは、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを筐体111の内部に流通させるように構成されている。
【0019】
また、ウエハ移載装置エレベータ125bおよびボートエレベータ115の反対側、筐
体111の左側端部には、クリーンエアを供給するよう供給ファンと防塵フィルタとを備えたクリーンユニット(図示せず)が設置されている。クリーンユニットから吹き出されたクリーンエアは、ウエハ移載装置125a、ボート217を流通した後に、図示しない排気装置に吸い込まれて、筐体111の外部に排気されるように構成されている。
【0020】
(2)基板処理装置の動作
次に、本実施形態にかかる基板処理装置101の動作について説明する。
【0021】
まず、カセット110が、工場内搬送装置によってカセット搬入搬出口(図示せず)から搬入され、ウエハ200が垂直姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように、カセットステージ114上に載置される。その後、カセット110は、カセットステージ114によって、筐体111の後方に向けて90°回転させられる。その結果、カセット110内のウエハ200は水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口は筐体111内の後方を向く。
【0022】
次に、カセット110は、カセット搬送装置118によって、カセット棚105(移載棚123を除く)ないし予備カセット棚107の指定された棚位置へ自動的に搬送されて受け渡され、一時的に保管された後、カセット棚105ないし予備カセット棚107から移載棚123に移載されるか、もしくは直接、移載棚123に搬送される。
【0023】
カセット110が移載棚123に移載されると、ウエハ200は、ウエハ移載装置125aのツイーザ125cによって、ウエハ出し入れ口を通じてカセット110からピックアップされ、ウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連続動作によって移載室124の後方にあるボート217に装填(ウエハチャージ)される。ボート217にウエハ200を受け渡したウエハ移載機構125は、カセット110に戻り、次のウエハ200をボート217に装填する。
【0024】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、処理炉202の下端部を閉じていた炉口シャッタ147が開放される。続いて、シールキャップ219がボートエレベータ115によって上昇されることにより、ウエハ200群を保持したボート217が処理炉202内へ搬入(ボートロード)される。ボートロードした後は、処理炉202にてウエハ200に任意の処理が実施される。かかる処理については後述する。処理後は、ウエハ200およびカセット110は、上述の手順とは逆の手順で筐体111の外部へ搬出される。
【0025】
(3)処理炉の構成
続いて、本実施形態に係る処理炉202の構成について、図2、および図3を参照しながら説明する。図2は、図1に示す基板処理装置101の処理炉202の構成図であって、特に処理室201部分を断面図で示してある。また図3は、図2の処理炉202部分のA−A断面図である。
【0026】
(処理室)
本実施形態に係る処理炉202は、例えばALD(Atomic Layer Deposition)法によるバッチ式縦型ホットウォール型の処理炉として構成されている。図2に示すように、処理炉202は、反応管203とマニホールド209とを備えている。反応管203は、例えば石英(SiO)や炭化シリコン(SiC)等の耐熱性を有する非金属材料から構成され、上端部が閉塞され、下端部が開放された円筒形状に構成されている。マニホールド209は、例えばSUS等の金属材料から構成され、上端部及び下端部が開放された円筒形状に構成されている。反応管203は、マニホールド209により下端部側から縦向きに支持されている。反応管203の下端部、マニホールド209
の上部および下部の開口端部にはそれぞれ環状のフランジが設けられている。反応管203下端部とマニホールド209上端部のフランジとの間にはOリングなどの封止部材220が設けられ、両者の間は気密に封止されている。
【0027】
反応管203及びマニホールド209の内部には、基板としてのウエハ200を複数積層して収容する処理室201が形成されている。そして、基板保持具としてのボート217が、上述した基板保持具昇降機構としてのボートエレベータ115によって下方から処理室201内に挿入されるように構成されている。
【0028】
ボート217は、複数枚(例えば50枚から150枚程度)のウエハ200を、略水平状態で所定の隙間(基板ピッチ間隔)をもって多段に保持するように構成されている。ウエハ200を装填したボート217の最大外径は、反応管203及びマニホールド209の内径よりも小さくなるように構成されている。ボート217は、ボート217を保持する保持体としてのボート支持台218を介してシールキャップ219上に搭載されている。シールキャップ219はマニホールド209の下端に垂直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属からなり、円盤状に形成されている。ボートエレベータ115が上昇した際には、マニホールド209下端部のフランジとシールキャップ219との間に設けられた封止部材220によって、両者の間は気密に封止されるように構成されている。先に述べた反応管203とマニホールド209との間、並びにマニホールド209とシールキャップ219との間が気密に封止されることで、処理室201内の気密性が保たれる。また、ボートエレベータ115によりシールキャップ219を垂直方向に昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬送することが可能となっている。
【0029】
シールキャップ219の下方には、回転機構267が設けられている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されており、処理室201内の気密性を保持したまま、複数のウエハ200を搭載したボート217を回転させることができるように構成されている。ボート217を回転させることで、ウエハ200の処理均一性を向上させることができる。
【0030】
反応管203の外周には反応管203と同心円状の円筒形状に、加熱部としてのヒータ207が設けられており、処理室201内に挿入されたウエハ200を所定の温度に加熱するように構成されている。ヒータ207は、保持板としてのヒータベース210に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータベース210は、マニホールド209に固定されている。
【0031】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づき、ヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、後述する多孔ノズル270a、270b、270cと同様に、L字形状に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0032】
(多孔ノズル)
処理室201内には、処理室201内にウエハ200の積層方向に沿って立設され、複数のガス供給口248a、248b、248cをそれぞれ有する多孔ノズル270a、270b、270cが配設されている。多孔ノズル270a、270b、270cは、垂直部と水平部とを有するL字形状にそれぞれ構成されている。多孔ノズル270a、270b、270cの垂直部は、反応管203の内壁を沿うように鉛直方向にそれぞれ配設されている。多孔ノズル270a、270b、270cの水平部は、マニホールド209の側壁をそれぞれ貫通するように設けられている。
【0033】
多孔ノズル270a、270b、270cの垂直部側面には、複数のガス供給口248a、248b、248cが鉛直方向に配列するようにそれぞれ設けられている。ガス供給口248a、248b、248cは、積層されたウエハ200の間にそれぞれ開口するように構成されている。ガス供給口248a、248b、248cは、処理室201内の略中心(処理室201内に搬入されたウエハ200の略中心)を向くようにそれぞれ構成されており、ガス供給口248a、248b、248cから供給されるガスは、それぞれ処理室201内の略中心に向けて噴射されるように構成されている。なお、ガス供給口248a、248b、248cの開口径は、それぞれ下部から上部にわたって同一であってもよく、下部から上部にわたって徐々に大きくなっていてもよい。
【0034】
(酸素含有ガス供給部)
多孔ノズル270aの上流端(水平端)には、例えば酸素(O)含有ガスとしてのオゾン(O)ガスを供給する酸素含有ガス供給管232aの下流端が接続されている。酸素含有ガス供給管232aには、上流側から順に図示しないOガス供給源、流量制御機構であるマスフローコントローラ241a、開閉弁であるバルブ252aが設けられている。バルブ252aを開けることにより、マスフローコントローラ241aにより流量制御しながら、Oガス供給源から処理室201内にOガスを供給可能なように構成されている。
【0035】
酸素含有ガス供給管232aのバルブ252aの下流側にはさらに、不活性ガスを供給する不活性ガス供給管234aの下流端が接続されている。不活性ガス供給管234aには、上流側から順に図示しない不活性ガス供給源、マスフローコントローラ243a、バルブ254aが設けられている。バルブ254aを開けることにより、マスフローコントローラ243aにより流量制御しながら、不活性ガス供給源から処理室201内に不活性ガスを供給可能なように構成されている。不活性ガスを供給することで、例えばOガスの供給終了後、不活性ガスをパージして処理室201内に残留したOガスを排除したり、ガス供給管232a不使用時に他のガスを供給する場合に、他のガスの逆流を防止したりすることができる。
【0036】
主に、酸素含有ガス供給管232a、Oガス供給源、マスフローコントローラ241a、バルブ252a、多孔ノズル270a、ガス供給口248aにより、処理室201内に酸素含有ガスとしてのOガスを供給する酸素含有ガス供給部が構成される。
【0037】
なお、多孔ノズル270aは、図3に示すように、例えば多孔ノズル270b、270cと近接する位置に設けられている。ただし図2においては、多孔ノズル270a等の詳細な構造を示すため、便宜上、多孔ノズル270aを含む酸素含有ガス供給部を多孔ノズル270b、270cと対向する紙面右側の位置に図示している。
【0038】
(ジルコニウム含有ガス供給部)
ジルコニウム(Zr)含有ガスが、例えば液体原料としてのTEMAZ(テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム:Zr(NEtMe))を気化させて得られるTEMAZガスである場合について説明する。TEMAZは常温で液体であるため、処理室201内にTEMAZガスを供給するには、TEMAZを加熱して気化させてから供給する方法、キャリアガスとなるヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス、窒素(N)ガスなどの不活性ガスをTEMAZの液体の中に供給し、TEMAZを気化させたガスをキャリアガスと共に処理室201内へと供給する方法(バブリング方式)などがある。以下に述べるのは、例としてキャリアガスを使用したバブリング方式により、TEMAZガスを供給する場合の構成である。
【0039】
多孔ノズル270bの上流端(水平端)には、Zr含有ガスとしてのTEMAZガスを供給するZr含有ガス供給管233bの下流端が接続されている。Zr含有ガス供給管233bの更に上流側には、TEMAZ容器261bを介して、キャリアガスを供給するキャリアガス供給管232bが設けられている。キャリアガス供給管232bには上流側から順に、図示しないキャリアガス供給源、マスフローコントローラ241b、バルブ252b、TEMAZ容器261bが設けられている。TEMAZ容器261b内にはTEMAZの液体が貯留されており、キャリアガス供給管232bの下流端はTEMAZの液体中に浸漬されている。そして、Zr含有ガス供給管233bの上流端はTEMAZ容器261b内のTEMAZの液面上方に配置されている。Zr含有ガス供給管233bの下流側にはバルブ253bが設けられ、Zr含有ガス供給管233bの下流端は、上述のように多孔ノズル270bの上流端に接続されている。Zr含有ガス供給管233bにはヒータ281bが設けられ、Zr含有ガス供給管233bを例えば130℃程度に保っている。バルブ252bを開けることにより、マスフローコントローラ241bにより流量制御しながら、キャリアガス供給源からTEMAZ容器261b内にキャリアガスを供給してTEMAZの気化ガスを発生させることが可能なように構成されている。そして、バルブ253bを開けることにより、TEMAZ容器261b内で気化させたTEMAZガスをキャリアガスと共に処理室201内に供給することが可能なように構成されている。
【0040】
Zr含有ガス供給管233bのバルブ253bの下流側にはさらに、不活性ガスを供給する不活性ガス供給管234bの下流端が接続されている。不活性ガス供給管234bには、上流側から順に図示しない不活性ガス供給源、マスフローコントローラ243b、バルブ254bが設けられている。バルブ254bを開けることにより、マスフローコントローラ243bにより流量制御しながら、不活性ガス供給源から処理室201内に不活性ガスを供給可能なように構成されている。
【0041】
主に、キャリアガス供給管232b、キャリアガス供給源、マスフローコントローラ241b、バルブ252b、TEMAZ容器261b、Zr含有ガス供給管233b、バルブ253b、多孔ノズル270b、ガス供給口248bにより、処理室201内にZr含有ガスとしてのTEMAZガスを供給するZr含有ガス供給部が構成される。
【0042】
(チタン含有ガス供給部)
チタン(Ti)含有ガスが、例えば液体原料としてのテトラクロロチタン(TiCl)を気化させて得られるTiClガスである場合について説明する。TiClは常温で液体であるため、TEMAZの場合と同様、ここでは例としてキャリアガスを使用したバブリング方式により、TiClガスを供給する場合の構成について述べる。
【0043】
多孔ノズル270cの上流端(水平端)には、Ti含有ガスとしてのTiClガスを供給するTi含有ガス供給管233cの下流端が接続されている。Ti含有ガス供給管233cの更に上流側には、TiCl容器261cを介して、キャリアガスを供給するキャリアガス供給管232cが設けられている。キャリアガス供給管232cには、上流側から順に図示しないキャリアガス供給源、マスフローコントローラ241c、バルブ252c、TiCl容器261cが設けられている。TiCl容器261c内にはTiClの液体が貯留されており、キャリアガス供給管232cの下流端はTiClの液体中に浸漬されている。そして、Ti含有ガス供給管233cの上流端はTiCl容器261c内のTiClの液面上方に配置されている。Ti含有ガス供給管233cの下流側にはバルブ253cが設けられ、Ti含有ガス供給管233cの下流端は、上述のように多孔ノズル270cの上流端に接続されている。Ti含有ガス供給管233cにはヒータ281cが設けられ、Ti含有ガス供給管233cを例えば40℃程度に保っている。バルブ252cを開けることにより、マスフローコントローラ241cにより流量制御しながら、キャリアガス供給源からTiCl容器261c内にキャリアガスを供給してT
iClの気化ガスを発生させることが可能なように構成されている。そして、バルブ253cを開けることにより、TiCl容器261c内で気化させたTiClガスをキャリアガスと共に処理室201内に供給することが可能なように構成されている。
【0044】
Ti含有ガス供給管233cのバルブ253cの下流側にはさらに、不活性ガスを供給する不活性ガス供給管234cの下流端が接続されている。不活性ガス供給管234cには、上流側から順に図示しない不活性ガス供給源、マスフローコントローラ243c、バルブ254cが設けられている。バルブ254cを開けることにより、マスフローコントローラ243cにより流量制御しながら、不活性ガス供給源から処理室201内に不活性ガスを供給可能なように構成されている。
【0045】
主に、キャリアガス供給管232c、キャリアガス供給源、マスフローコントローラ241c、バルブ252c、TiCl容器261c、Ti含有ガス供給管233c、バルブ253c、多孔ノズル270c、ガス供給口248cにより、処理室201内にTi含有ガスとしてのTiClガスを供給するTi含有ガス供給部が構成される。
【0046】
(排気部)
マニホールド209の側壁には、排気管231が接続されている。排気管231には、上流側から順に処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245、圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ251、真空排気装置としての真空ポンプ246が設けられている。APCバルブ251は、弁を開閉することで真空排気・排気停止ができ、さらに弁を開度調節することが可能な開閉弁である。真空ポンプ246を作動させつつ、APCバルブ251の開閉弁の開度を調整することにより、処理室201内を所望の圧力とすることが可能なように構成されている。
【0047】
主に、排気管231、圧力センサ245、APCバルブ251、真空ポンプ246により、処理室201内の雰囲気を排気する排気部が構成される。
【0048】
なお、排気管231は、図3に示すように、例えば多孔ノズル270cと近接する位置に設けられている。ただし図2においては、排気管231等の詳細な構造を示すため、便宜上、排気管231を含む排気部を多孔ノズル270b、270cと対向する紙面右側の位置に図示している。
【0049】
(制御部)
制御部であるコントローラ280は、マスフローコントローラ241a、241b、241c、243a、243b、243c、APCバルブ251、バルブ252a、252b、252c、253b、253c、254a、254b、254c、温度センサ263、ヒータ207、圧力センサ245、真空ポンプ246、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。コントローラ280により、マスフローコントローラ241a、241b、241c、243a、243b、243cの流量調整動作、APCバルブ251、バルブ252a、252b、252c、253b、253c、254a、254b、254cの開閉動作、APCバルブ251の圧力調整動作、温度センサ263の温度検出動作、ヒータ207の温度調整動作、圧力センサ245の圧力検出動作、真空ポンプ246の起動・停止、回転機構267の回転速度調節、ボートエレベータ115の昇降動作の制御が行われる。
【0050】
(4)半導体デバイスの製造方法
続いて、本実施形態に係る基板処理工程について説明する。本実施形態に係る基板処理工程は、例えばMIM構造のキャパシタを有するDRAM等の半導体デバイスの製造工程
の一工程として実施される。図4に、本実施形態に係る半導体デバイス1の主要構造部を示す。半導体デバイス1の主要構造部は、図5に示す工程に従って、例えばシリコン(Si)からなるウエハ200の上に、チタン窒化(TiN)膜からなる下部電極膜310、ジルコニウム酸化(ZrO)膜からなるシードバリア膜320、チタン酸化(TiO)膜からなるキャパシタ絶縁膜330、金(Au)膜からなる上部電極膜340をこの順に積層し、所定のレジストパターン(図示せず)をマスクとしてドライエッチング等により各膜をエッチングして形成される。
【0051】
上記半導体デバイス1が有するTiO膜等の高誘電率絶縁膜は、特にハーフピッチが40nm以降のDRAMにおけるキャパシタ絶縁膜への適用が検討されている。ハーフピッチが50nm程度のDRAMで用いられてきたHfO膜やZrO膜に替えて、例えばTiO膜を用いることで、キャパシタ絶縁膜の誘電率を高めて等価酸化膜厚(EOT:Equivalent Oxide Thickness)を低減することが可能となる。
【0052】
TiO膜をキャパシタ絶縁膜に適用するにあたっては、誘電率に影響を及ぼすTiO膜の結晶構造の制御、及びバンドギャップが小さいTiO膜のリーク電流密度の低減が課題となる。本実施形態においては上記課題を解決するため、TiO膜の結晶構造の種膜(シード膜)となり、かつ、リーク電流防止膜(バリア膜)となる所定の結晶構造を備えるZrO膜をシードバリア膜として形成する。以下、本実施形態に係る各工程について詳述する。
【0053】
〔下部電極膜形成工程〕
まず、処理炉202における基板処理工程に先駆けて、本実施形態に係る処理炉202とは異なる処理炉にて、Siからなるウエハ200上に下部電極膜としてのTiN膜を形成する。このときTiN膜は、例えば非ルチル型構造の結晶構造を持つ結晶質膜として形成される。
【0054】
〔処理炉202による基板処理工程〕
続いて、本実施形態に係る処理炉202により実施される基板処理工程として、例えばALD法を用いた成膜について説明する。例えば従来のCVD(Chemical Vapor Deposition)法であれば、形成する膜を構成する複数の元素を含む複数種類のガスを基板に同時に供給し、またALD法であれば、形成する膜を構成する複数の元素を含む複数種類のガスを基板に交互に供給する。そして、ガス供給時の供給流量、供給時間、処理室201内の温度、プラズマ方式の場合はプラズマパワー等の成膜条件を制御することにより、シリコン酸化(SiO)膜やシリコン窒化(SiN)膜等を形成する。例えばSiO膜の形成においては、膜の組成比が化学量論組成であるO/Si≒2となるように成膜条件を制御する。SiN膜の形成においては、膜の組成比が化学量論組成であるN/Si≒1.33となるように成膜条件を制御する。
【0055】
あるいは、形成する膜の組成比が化学量論組成とは異なる所定の組成比となるように、成膜条件を制御することも可能である。すなわち、形成する膜を構成する複数の元素のうち、少なくともひとつの元素が他の元素よりも化学量論組成に対して過剰となるように、成膜条件を制御する。このように、形成される膜を構成する複数の元素の比率、すなわち、膜の組成比を制御しつつ、成膜を行なうことが可能である。
【0056】
上述のように、ALD法においては所望の膜を構成する元素の含有ガスを1種類ずつ交互に基板に供給し、1原子層単位で基板上に吸着させて表面反応により成膜を行なう。例えばSiO膜の場合、シリコン(Si)含有ガスと酸素(O)含有ガスとをそれぞれ供給する工程を1サイクルとし、成膜速度が0.1nm/サイクルであれば、20サイクルを実施することで2nmのSiO膜を形成できる。
【0057】
以下、ALD法により異なる種類の元素を含む複数種類のガスを基板に交互に供給して、化学量論組成を主要組成とする膜を形成するシーケンス例について説明する。本実施形態に係るZrO膜の化学量論組成はO/Zr≒2であり、以下に形成するZrO膜は、ZrOを含む任意の組成比を持つジルコニウム酸化膜である。また、本実施形態に係るTiO膜の化学量論組成はO/Ti≒2であり、以下に形成するTiO膜は、TiOを含む任意の組成比を持つチタン酸化膜である。
【0058】
図6は、処理炉202により実施される基板処理工程のフロー図である。また、図7は、本実施形態に係る各ガスの供給を交互に繰り返す際のそれぞれのガス供給タイミングを例示するタイミングチャート図である。以下の説明において、図2に示す処理炉202を構成する各部の動作は、コントローラ280により制御される。
【0059】
(基板搬入工程S10)
まず、TiN膜が形成された複数枚のウエハ200をボート217に装填(ウエハチャージ)する。そして、複数枚のウエハ200を保持したボート217を、ボートエレベータ115によって持ち上げて処理室201内に搬入(ボートロード)する。この状態で、シールキャップ219は封止部材220を介してマニホールド209の下端を気密に封止した状態となる。基板搬入工程S10においては、バルブ254a、254b、254cを開けて、処理室201内にNガス等のパージガスとしての不活性ガスを供給し続けることが好ましい。
【0060】
(減圧工程S20、昇温工程S30)
続いて、バルブ254a、254b、254cを閉じ、処理室201内を真空ポンプ246により排気する。また、ウエハ200が所望の温度、具体的には150℃以上350℃以下の範囲内であって、例えば250℃となるように、ヒータ207によって処理室201内の温度を制御する。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合をフィードバック制御する。そして、回転機構267によりボート217を回転させ、ウエハ200の回転を開始する。
【0061】
なお、基板搬入工程S10〜昇温工程S30と並行して、液体原料としてのTEMAZを気化させたZr含有ガスとしてのTEMAZガスを生成(予備気化)させておく。すなわち、バルブ253bを閉じたまま、バルブ252bを開けることにより、マスフローコントローラ241bにより流量制御しながら、図示しないキャリアガス供給源からTEMAZ容器261b内にキャリアガスを供給して、予めTEMAZガスを気化させておく。TEMAZガスが不使用のときは、気化されたTEMAZガスを、例えば図示しない排気管によって処理室201をバイパスして排気しておく。
【0062】
また、このとき、液体原料としてのTiClを気化させたTi含有ガスとしてのTiClガスを生成(予備気化)させておく。すなわち、バルブ253cを閉じたまま、バルブ252cを開けることにより、マスフローコントローラ241cにより流量制御しながら、図示しないキャリアガス供給源からTiCl容器261c内にキャリアガスを供給して、予めTiClガスを気化させておく。TiClガスが不使用のときは、気化されたTiClガスを、例えば図示しない排気管によって処理室201をバイパスして排気しておく。
【0063】
バブリング方式により、TEMAZガスやTiClガスを安定した状態で供給するには、ガスの気化のため所定の時間を要する。後述するガスの供給開始に先駆けて、上記のように予めTEMAZガスやTiClガスを気化させておくことで安定供給可能な状態
としておくことができる。
【0064】
(ジルコニウム酸化膜形成工程S40)
後述するキャパシタ絶縁膜としてのTiO膜の形成にあたっては、TiO膜の下地膜の結晶構造が、TiO膜の結晶構造に影響を及ぼし得る。つまり、下部電極膜上に直接的にTiO膜を形成すると、下部電極膜が何であるかがTiO膜の結晶構造に影響を及ぼす。例えば、ルチル型の結晶構造をとるルテニウム(Ru)膜を下地膜とした場合、誘電率の高いルチル型のTiO膜が得られやすい。しかし、例えばTiN膜を下地膜とした場合、その上に形成されるTiO膜は、ルチル型(比誘電率:114)やブルッカイト型(比誘電率:78)よりも誘電率の低いアナターゼ型(比誘電率:48)となってしまい易い。
【0065】
そこで本実施形態においては、TiO膜の下地膜として、TiN膜の上にシードバリア膜としてのZrO膜を形成する。すなわち、後述する図6のS41〜S44を1サイクルとし、このサイクルを所定回数実施する(S45)ことにより、TiN膜の上に所定膜厚のZrO膜を形成する。このとき、ZrO膜は、例えば非晶質膜として形成される。その後、相転移工程S46にて、ZrO膜の少なくとも一部の結晶構造を立方晶系構造又は正方晶系構造へと相転移させる。
【0066】
このように、TiO膜をTiN膜の上に直接形成するのではなく、立方晶系又は正方晶系の結晶構造を少なくとも一部に有するZrO膜を下地膜とし、これを介してTiO膜を形成することで、TiN膜の影響を抑え、TiO膜の少なくとも一部の結晶構造をブルッカイト型構造又はルチル型構造とすることができ、TiO膜の誘電率を高めることができる。また、ZrO膜により、リーク電流密度の低減を図ることが可能である。以下、ジルコニウム含有ガス供給工程S41〜相転移工程S46について詳述する。
【0067】
(ジルコニウム含有ガス供給工程S41)
ジルコニウム含有ガス供給工程S41では、処理室201内にZr含有ガスとしてのTEMAZガスを流し、TiN膜の上にTEMAZ分子等を吸着させる。具体的には、バルブ253bを開けることにより、TEMAZ容器261b内で気化させたTEMAZガスをキャリアガスと共に処理室201内に供給する。このとき、APCバルブ251の開度を調整して、処理室201内の圧力を30Pa以上500Pa以下の範囲内であって、例えば100Paに維持する。TEMAZガスとともに供給するキャリアガスの流量は、例えば5slmとする。TEMAZガス(及びキャリアガス)の供給時間は、例えば1秒以上360秒以下の範囲内とする。所定時間が経過したら、バルブ253bを閉じ、TEMAZガスの供給を停止する。
【0068】
なお、Zr含有ガスを供給する間、酸素含有ガス供給管232aに接続される不活性ガス供給管234a、およびTi含有ガス供給管233cに接続される不活性ガス供給管234cのバルブ254a、254cを開けて不活性ガスを流すと、酸素含有ガス供給管232a及びTi含有ガス供給管233cの側にTEMAZガスが回り込むのを防ぐことができる。
【0069】
このとき処理室201内に流れているガスは、TEMAZガス並びにNガス等の不活性ガスのみであり、Oガス等の酸素含有ガスは存在しない。したがって、TEMAZガスは気相反応を起こすことなく、ウエハ200上のTiN膜の表面部分と化学吸着(表面反応)を起こして、TEMAZ分子の吸着層またはZr層を形成する。TEMAZ分子の吸着層とは、TEMAZ分子の連続的な吸着層のほか、不連続な吸着層をも含む。Zr層とは、Zrにより構成される連続的な層のほか、これらが重なってできるZr薄膜をも含む。なお、以下においては、これらすべてを指してZr含有層ともいう。
【0070】
(排気工程S42)
バルブ252b、253bを閉じ、処理室201内へのTEMAZガスの供給を停止した後は、APCバルブ251を開けて処理室201内の雰囲気を排気し、残留しているTEMAZの気化ガスや反応生成物等を排除する。このときN等の不活性ガスを、不活性ガス供給管234a、234b、234cからそれぞれ処理室201内に供給してパージすると、処理室201内から残留ガスを排除する効果をさらに高めることができる。所定時間経過後、バルブ234a、234b、234cを閉じて排気工程S42を終了する。
【0071】
(酸素含有ガス供給工程S43)
酸素含有ガス供給工程S43では、処理室201内に酸素含有ガスとしてのOガスを流し、TiN膜の上にZrO層を形成する。具体的には、バルブ252aを開けることにより、マスフローコントローラ241aにより流量制御しながら、図示しないOガス供給源から処理室201内にOガスを供給する。このとき、APCバルブ251の開度を調整して、処理室201内の圧力を30Pa以上500Pa以下の範囲であって、例えば130Paに維持する。また、Oガスの濃度を例えば250g/mとし、Oガスの流量を例えば15slmとする。Oガスの供給時間は、例えば120秒とする。所定時間が経過したら、バルブ252aを閉じ、Oガスの供給を停止する。
【0072】
なお、ZrO膜の成膜初期、具体的にはZrOが0.5nm〜2nm程度の層であるときには、Oガスを比較的低濃度とすると、下地のTiN膜が酸化されるのを抑制することができる。一方、形成途中のZrO層がTiN膜の酸化を充分に抑制できる厚さとなったら、Oガスを高濃度とすると、形成されるZrO膜の中の不純物を低減させることができ、膜質を向上させることができる。具体的には、ZrO膜の成膜初期にはOガスを200g/N・m以下とし、それ以降は200g/N・m以上とする。
【0073】
また、酸素含有ガスを供給する間、Zr含有ガス供給管233bに接続される不活性ガス供給管234b、およびTi含有ガス供給管233cに接続される不活性ガス供給管234cのバルブ254b、254cを開けて不活性ガスを流すと、Zr含有ガス供給管233b及びTi含有ガス供給管233cの側にOガスが回り込むことを防ぐことができる。
【0074】
このようにOガスを供給することにより、TiN膜の上に吸着したZr含有層が酸化されて、1原子層未満から数原子層のZrOの薄膜がTiN膜の上に形成される。
【0075】
(排気工程S44)
バルブ252aを閉じ、処理室201内へのOガスの供給を停止した後は、APCバルブ251を開けて処理室201内の雰囲気を排気し、残留しているOガス等を排除する。このときN等の不活性ガスを、不活性ガス供給管234a、234b、234cからそれぞれ処理室201内に供給してパージすると、処理室201内から残留ガスを排除する効果をさらに高めることができる。
【0076】
(所定回数実施工程S45)
上記S41〜S44を1サイクルとし、このサイクルを所定回数実施することにより、TiN膜の上に所定膜厚のZrO膜を形成する。図7に、上述のサイクルをm回実施する例を示す。図7の横軸は経過時間を示し、縦軸は各ガスの供給タイミングを示している。サイクルの実施回数(mの数値)を任意に変えることで、形成されるZrO膜の厚さを制御することができる。
【0077】
なお、ZrO膜の膜厚は、例えば4nm以上とする。このようにZrO膜の膜厚を制御して所定膜厚以上とすることにより、後述する相転移工程S46にて、ZrO膜の少なく
とも一部の結晶構造を立方晶系構造又は正方晶系構造へと、より確実に相転移させることができる。これによって、ZrO膜の上に形成されるTiO膜を所定の結晶構造とすることができ、誘電率を高めてEOTを低減させることが可能となる。
【0078】
またこのとき、ZrO膜の膜厚は、例えば12nm以下とする。デバイス構造上の観点からは、キャパシタ構造全体の膜厚が増すことは好ましくないからである。つまり、キャパシタ構造全体の膜厚を抑えるためには、上記の相転移が可能な膜厚の範囲内で、ZrO膜をなるべく薄膜化することが好ましい。
【0079】
(相転移工程S46)
所定膜厚のZrO膜が形成されたら、バルブ254a、254b、254cを開けて、処理室201内にNガス等の不活性ガスを供給する。また、ヒータ207への通電具合を制御して、ウエハ200を例えば350℃以上450℃以下の温度に昇温する。このとき、APCバルブ251の開度を調整して、処理室201内圧力を10Pa以上500Pa以下の範囲内であって、例えば20Paに維持する。不活性ガスの流量は、例えば1slm以上10slm以下の範囲内であって、例えば5slmとする。不活性ガスの供給時間は、例えば1秒以上3時間以下の範囲内とする。所定時間が経過したら、ウエハ200が、例えば次に実施するチタン酸化膜形成工程S50における処理温度、具体的には450℃以下の所定温度になるよう、ヒータ207への通電具合を制御する。また、バルブ254a、254b、254cを閉じ、不活性ガスの供給を停止する。
【0080】
上記のようにZrO膜を昇温することにより、加熱による相転移が起こり、ZrO膜の少なくとも一部の結晶構造が立方晶系構造又は正方晶系構造となる。このとき、上述のように、ZrO膜の膜厚を例えば4nm以上に制御しておくことで、より確実にZrO膜の結晶構造を相転移させることが可能となる。
【0081】
(チタン酸化膜形成工程S50)
続いて、ZrO膜の上にキャパシタ絶縁膜としてのTiO膜を形成する。すなわち、図6のS51〜S54を1サイクルとし、このサイクルを所定回数実施する(S55)ことにより、ZrO膜の上に所定膜厚のTiO膜を形成する。少なくとも一部が立方晶系構造又は正方晶系構造となっているZrO膜の上にTiO膜を形成することで、TiO膜は、少なくとも一部がブルッカイト型構造又はルチル型構造に形成される。
【0082】
(チタン含有ガス供給工程S51)
チタン含有ガス供給工程S51では、処理室201内にTi含有ガスとしてのTiClガスを流し、ZrO膜の上にTiCl分子等を吸着させる。具体的には、バルブ253cを開けることにより、TiCl容器261c内で気化させたTiClガスをキャリアガスと共に処理室201内に供給する。このときAPCバルブ251の開度を調整して、処理室201内の圧力を30Pa以上500Pa以下の範囲内であって、例えば100Paに維持する。TiClガスとともに供給するキャリアガスの流量は、例えば3slmとする。TiClガス(及びキャリアガス)の供給時間は、例えば40秒とする。所定時間が経過したら、バルブ253cを閉じ、TiClガスの供給を停止する。
【0083】
なお、Ti含有ガスを供給する間、酸素含有ガス供給管232aに接続される不活性ガス供給管234aおよび、Zr含有ガス供給管233bに接続される不活性ガス供給管234bのバルブ254a、254bを開けて不活性ガスを流すと、酸素含有ガス供給管232a及びZr含有ガス供給管233bの側にTiClガスが回り込むことを防ぐことができる。
【0084】
このとき処理室201内に流れているガスは、TiClガス並びにNガス等の不活
性ガスのみであり、Oガス等の酸素含有ガスは存在しない。したがって、TiClガスは気相反応を起こすことなく、ZrO膜の表面部分と化学吸着(表面反応)を起こして、TiCl分子の吸着層またはTi層を形成する。TiCl分子の吸着層とは、TiCl分子の連続的な吸着層のほか、不連続な吸着層をも含む。Ti層とは、Tiにより構成される連続的な層のほか、これらが重なってできるTi薄膜をも含む。なお、以下においては、これらすべてを指してTi含有層ともいう。
【0085】
(排気工程S52)
バルブ252c、253cを閉じ、処理室201内へのTiClガスの供給を停止した後は、APCバルブ251を開けて処理室201内を排気し、残留しているTiClの気化ガスや反応生成物等を排除する。このときN等の不活性ガスを、不活性ガス供給管234a、234b、234cからそれぞれ処理室201内に供給してパージすると、処理室201内から残留ガスを排除する効果をさらに高めることができる。所定時間経過後、バルブ234a、234b、234cを閉じて排気工程S52を終了する。
【0086】
(酸素含有ガス供給工程S53)
酸素含有ガス供給工程S53では、上述の酸素含有ガス供給工程S43と同様の手順にて、処理室201内に酸素含有ガスとしてのOガスを流し、ZrO膜の上にTiO層を形成する。また、処理条件についても、酸素含有ガス供給工程S43と同様とすることができるが、Oガスの供給時間は例えば60秒とする。また、このとき、酸素含有ガス供給工程S43と同様、処理室201内に不活性ガスを供給してもよい。
【0087】
このようにOガスを供給することにより、ZrO膜の上に吸着したTi含有層が酸化されて、1原子層未満から数原子層のTiOの薄膜がZrO膜の上に形成される。
【0088】
(排気工程S54)
上述の排気工程S44と同様の手順にて、処理室201内から残留ガスを排除する。このとき、不活性ガスをパージしてもよい。
【0089】
(所定回数実施工程S55)
上記S51〜S54を1サイクルとし、このサイクルを所定回数実施することにより、ZrO膜の上に所定膜厚、例えば6nm以上15nm以下のTiO膜を形成する。図7に、上述のサイクルをn回実施する例を示す。サイクルの実施回数(nの数値)を任意に変えることで、形成されるTiO膜の厚さを制御することができる。
【0090】
TiN膜の上に直接TiO膜を形成した場合、上述のように、アナターゼ型のTiO膜となってしまい易い。例えばこれを、上記相転移工程S46のような加熱によりルチル型やブルッカイト型のTiO膜に相転移させようとすると、TiO膜の膜厚を50nm以上に形成したうえで、800℃以上の高温での加熱処理が必要となってしまう。TiO膜の膜厚がこのように厚くなってしまうことはデバイス構造上好ましくなく、高温での加熱処理は半導体デバイス、特に電極特性に悪影響を及ぼしかねない。
【0091】
しかし、本実施形態によれば、立方晶系又は正方晶系の結晶構造を少なくとも一部に有するZrO膜を介してTiO膜を形成する。これにより、加熱による相転移を経るまでもなく、少なくとも一部の結晶構造がブルッカイト型構造又はルチル型構造となったTiO膜を、450℃以下の温度にて形成することができる。このとき、TiO膜の膜厚としては、デバイス構造上の観点から好ましい膜厚、例えば上述のように、6nm以上15nm以下の膜厚を選択することができる。
【0092】
(降温工程S60、常圧復帰工程S70)
所望の膜厚のZrO膜及びTiO膜が形成されたら、ヒータ207への電力供給を停止し、ボート217およびウエハ200を所定の温度にまで降下させる。温度を降下させる間、バルブ254a、254b、254cを開放したまま維持し、処理室201内にパージガスの供給を継続する。これにより、処理室201内をパージガスで置換すると共に、処理室201内の圧力を常圧に復帰させる。
【0093】
(基板搬出工程S80)
ウエハ200が所定の温度にまで降下し、処理室201内が常圧に復帰したら、上述の手順とは逆の手順により、成膜後のウエハ200を処理室201内から搬出する。すなわち、ボートエレベータ115によりシールキャップ219を下降して、マニホールド209の下端を開口するとともに、処理済のウエハ200をボート217に保持した状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)する。その後、処理済みのウエハ200はボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。なお、ボート217を搬出するときには、バルブ254a,254b,254cを開け、処理室201内にパージガスを供給し続けることが好ましい。以上により、処理炉202による基板処理工程を終了する。
【0094】
〔上部電極膜形成工程〕
図5に示す上部電極膜形成工程は、例えば処理炉202とは異なる処理炉にて行なう。先の工程で形成したTiO膜の上に上部電極膜としてのAu膜を形成する。以上の工程を経て、本実施形態に係る半導体デバイス1の製造工程の一工程を終了する。
【0095】
(5)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示すひとつまたは複数の効果を奏する。
【0096】
(a)本実施形態によれば、TiN膜上にTiO膜を直接形成するのではなく、少なくとも一部の結晶構造が立方晶系構造又は正方晶系構造となっているZrO膜の上にTiO膜を形成する。これによって、TiN膜の上部に形成するTiO膜の少なくとも一部の結晶構造をブルッカイト型構造又はルチル型構造とし、TiO膜の誘電率を高めることが可能となる。
【0097】
キャパシタ絶縁膜としてのTiO膜を形成する際、TiO膜の結晶構造は、TiO膜の下地膜としてどのような膜を選択するかにより影響を受け得る。例えば、TiN膜を下地膜としてTiO膜を形成した場合には、ルチル型やブルッカイト型よりも誘電率の低いアナターゼ型のTiO膜となってしまい易い。
【0098】
上記結晶構造による誘電率の違いは、それぞれの結晶内部の分極子密度の違いにより生じる。図8は、本実施形態に係るTiO膜の同一分子数あたりの結晶構造の違いを示す図面であって、(a)はアナターゼ型構造の結晶状態を示す模式図であり、(b)はブルッカイト型構造の結晶状態を示す模式図である。図中、黒球がTi原子であり、白球がO原子である。図8(b)に示すように、TiO膜がブルッカイト型構造をとる場合、図8(a)のアナターゼ型構造に比べて同一分子数あたりの表面積が減少し、電荷密度が上がって誘電率が高くなる。
【0099】
本実施形態では、TiO膜の結晶構造の種膜(シード膜)となるZrO膜を介してTiO膜を形成するので、TiN膜の上部にTiO膜を形成する場合であっても、TiO膜の少なくとも一部の結晶構造をブルッカイト型構造又はルチル型構造とし、TiO膜の誘電率を高めることが可能となる。したがって、誘電率の高いキャパシタ絶縁膜が得られ、EOTを低減することができる。
【0100】
(b)また、本実施形態によれば、ZrO膜の膜厚を、加熱による相転移が可能となるような膜厚以上に制御する。これによって、より確実にZrO膜の少なくとも一部の相転移を起こさせ、TiO膜の結晶構造をより確実に制御することができる。
【0101】
(c)また、本実施形態によれば、上記所定の結晶構造を有するZrO膜の上に形成されるTiO膜は、少なくとも一部の結晶構造がブルッカイト型構造又はルチル型構造に形成される。よって、所望の結晶構造を得るために、例えばTiO膜を加熱して相転移させるなどの工程が不要となる。
【0102】
例えばアナターゼ型構造に形成されたTiO膜を、加熱によりルチル型やブルッカイト型のTiO膜に相転移させるには、TiO膜は所定値以上の膜厚、例えば50nm以上の膜厚を有していなければならず、加熱温度は例えば800℃以上を要する。
【0103】
しかし、本実施形態では、加熱による相転移を経ずとも所望の結晶構造のTiO膜を得ることができる。すなわち、450℃以下の比較的低温の成膜条件にて電極特性への悪影響を抑えつつ、TiO膜の膜厚をデバイス構造上好ましい膜厚、例えば6nm以上15nm以下の範囲とすることができる。
【0104】
(d)また、本実施形態によれば、ジルコニウム酸化膜形成工程S40と、チタン酸化膜形成工程S50と、をそれぞれ1回ずつ行って、ZrO膜とTiO膜との二層構造を形成している。これによって、ZrO膜がリーク電流防止膜(バリア膜)としての役割を果たし、キャパシタ絶縁膜としてのTiO膜からのリーク電流密度を低減することができる。
【0105】
バンドギャップの小さいTiO膜をキャパシタ絶縁膜に用いる場合、ZrO膜やハフニウム酸化(HfO)膜との積層膜構造とすることで、リーク電流密度を低減させることが可能となる場合がある。係る積層膜の形成には、例えば本実施形態のように各膜を1回ずつ形成してZrO膜(又はHfO膜)とTiO膜との二層膜とする手法に限られず、それぞれ1原子層未満から数原子層に形成した各膜を交互に複数回積み重ねて(ラミネート成膜を行って)ZrTiO膜(又はHfTiO膜)とする手法が考えられる。
【0106】
参考例として、図9に、HfO膜及びTiO膜を交互にラミネート成膜したHfTiO膜をキャパシタ絶縁膜として有する半導体デバイスのI−V特性を示す。図9の横軸は半導体デバイスへの印加電圧Vg(V)を示し、縦軸はリーク電流密度I(A/cm)を示す。図中、実線は半導体デバイスの備えるキャパシタ絶縁膜(HfTiO膜)中のTiの組成比が50%のときのデータであり、一点鎖線はTiの組成比が12%のときのデータ、破線はTiの組成比が6%のときのデータである。Tiの組成比が50%、12%、6%の、参考例に係る各半導体デバイスは、ウエハ200の上にTiN膜からなる下部電極膜と、TiO膜及びHfO膜をラミネート成膜したHfTiO膜からなるキャパシタ絶縁膜と、Au膜からなる上部電極膜とが形成されてなる。ラミネート成膜後、各半導体デバイスのHfTiO膜は700℃で加熱処理されている。
【0107】
上記において、印加電圧が1.5Vのときリーク電流密度が1×10−7A/cm未満となることをスペック値とすると、上記いずれのTiの組成比においてもスペック値を満たさず、また、Tiの組成比が増大するとともにリーク電流密度も増大している。これにより、キャパシタ絶縁膜をラミネート成膜した場合、良好なI−V特性が得られないことがわかる。このことは、ZrO膜及びTiO膜をラミネート成膜したキャパシタ絶縁膜(ZrTiO膜)においても同様であると考えられる。
【0108】
しかし、本実施形態では、ZrO膜とTiO膜とを1回ずつ形成して積層膜としたので、ラミネート成膜による場合に比べてリーク電流密度の低減効果がより高いと推察される

【0109】
(e)また、本実施形態によれば、ジルコニウム含有ガス供給工程S41〜排気工程S44を1サイクルとし、このサイクルを所定回数実施する(所定回数実施工程S45)ALD法により、TiN膜の上に所定膜厚のZrO膜を形成する。これによって、ZrO膜の膜厚を高精度に制御することができ、より確実にZrO膜の少なくとも一部の相転移を起こすことができる。
【0110】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0111】
例えば、上述の実施形態においては、Zr含有ガスとしてTEMAZガスを用いる場合について説明したが、Zr含有ガスはこれに限られず、例えばZr(O−tBu)ガス、TDMAZ(テトラキスジメチルアミノジルコニウム:Zr(NMe)ガス、TDEAZ(テトラキスジエチルアミノジルコニウム:Zr(NEt)ガス、Zr(MMP)ガス等を使用することができる。
【0112】
また、上述の実施形態においては、Ti含有ガスとしてTiClガスを用いる場合について説明したが、Ti含有ガスはこれに限られず、例えばTDMAT(テトラキスジメチルアミノチタン:Ti(NMe)ガス、TDEAT(テトラキスジエチルアミノチタン:Ti(NEt)ガス等を使用することができる。
【0113】
また、上述の実施形態においては、酸素含有ガスとしてOガスを用いる場合について説明したが、酸素含有ガスはこれに限られず、例えば酸素(O)ガスや、HOガス(水蒸気)等を使用することができる。特に、ZrO膜の成膜初期にOガスよりも酸化力の弱いHOガスを用いれば、下部電極膜の酸化を抑制する効果が高まる。
【0114】
また、上述の実施形態においては、相転移工程S46を処理炉202で実施することとしたが、係る工程は、例えばランプ加熱ユニット等を備える加熱炉等にて実施してもよい。また、加熱中の雰囲気ガスとしては、N(窒素)ガス以外にも、Ar(アルゴン)ガス、H(水素)ガス、O(酸素)ガス等を用いることができる。
【0115】
また、上述の実施形態においては、MIM構造のキャパシタを有するDRAMを例に挙げて説明したが、本発明が適用される半導体デバイスは例えばトレンチ型DRAMやスタック型DRAMであってもよく、MOSFETやフラッシュメモリのゲート絶縁膜や電荷保持膜等、他の絶縁膜を形成する場合にも適用可能である。
【0116】
また、本実施形態にかかる製造方法を実施する基板処理装置として、ALD法を用いた縦型処理炉を例に挙げて説明したが、本発明は例えばCVD法やプラズマ技術を用いた各種基板処理装置にて実施をすることが可能である。また、例えば下部電極膜形成工程から上部電極膜形成工程までを含む一連の工程を、同一の処理炉で行なうことも可能である。
【実施例】
【0117】
(実施例1)
まずは、本発明の実施例1について説明する。本実施例では、ベアシリコンウエハに対し、上述の実施形態に係る基板処理工程(S10〜S80)と同様の工程により、ZrO膜とTiO膜とをこの順に形成した。このとき、TiO膜の膜厚を10nmの一定値とし、ZrO膜の膜厚が1.5nm、4.0nm、6.5nmと異なるサンプルをそれぞれ用意した。これらのサンプルについて、X線回折(XRD:X−Ray Diffract
ion)により、ZrO膜及びTiO膜の結晶構造の状態を調べた。
【0118】
図10に、係るX線回折の測定結果を示す。図10の横軸は回折角度(°)を示し、縦軸は回折強度(任意単位)を示す。図中、実線はZrO膜の膜厚が6.5nmのサンプルのデータであり、一点鎖点は4.0nmのデータ、点線は1.5nmのデータである。
【0119】
図10に示すように、ZrO膜の膜厚が6.5nm及び4.0nmのサンプルにおいては、立方晶系のZrOの存在を示す回折角度が30°の付近及び50°の付近にピークが得られていることから、ZrO膜の少なくとも一部の結晶構造が立方晶系となっていることがわかる。また、ブルッカイト型のTiOの存在を示す回折角度が30°の付近にピークが得られていることから、TiO膜の少なくとも一部の結晶構造がブルッカイト型となっていることがわかる。
【0120】
一方、ZrO膜の膜厚が1.5nmのサンプルにおいては、立方晶系のZrOやブルッカイト型のTiOを示す30°及び50°にピークは見られず、アナターゼ型のTiOの存在を示す25°の付近にピークが得られている。したがって、ZrO膜の立方晶系への相転移がほとんど起こらず、その上に形成されたTiO膜は略アナターゼ型となってしまったことがわかる。
【0121】
以上のデータより、加熱によるZrO膜の立方晶系への相転移を起こさせるには、ZrO膜の膜厚が所定値以上でなければならないことがわかる。本実施例においては、ZrO膜の膜厚が4.0nmであれば、少なくとも一部を立方晶系へと相転移させることができた。
【0122】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例では、上述の実施形態の図4に示す半導体デバイス1と同様の構造を備える半導体デバイスを製造した。このとき、TiO膜の膜厚を10nmの一定値とし、ZrO膜の膜厚が1.5nm、5.0nm、6.5nmと異なるサンプルをそれぞれ用意した。これらのサンプルについてEOTを測定した。
【0123】
図11に、係る測定結果を示す。図11の横軸はZrO膜とTiO膜との合計膜厚(nm)を示し、縦軸はEOT(nm)を示す。
【0124】
図11に示すように、ZrO膜の膜厚が1.5nm(合計膜厚が11.5nm)のときに比べ、ZrO膜の膜厚が5.0nm(合計膜厚が15.0nm)のとき、及びZrO膜の膜厚が6.5nm(合計膜厚が16.5nm)のとき、EOTはともに減少している。また、ZrO膜の膜厚が5.0nmとなる付近でEOTが極小値を持つことがわかる。
【0125】
上述の実施例1の結果より、膜厚が4.0nm程度でZrO膜の相転移が可能であることから、5.0nm及び6.5nmでの係るEOTの低下は、ZrO膜及びTiO膜において所望の結晶構造が得られたことによる効果であると考えられる。なお、ZrO膜の膜厚が6.5nmのときにみられるEOTの若干の増加は、単純にZrO膜とTiO膜との合計膜厚が増加したことによるものと考えられる。
【0126】
一方、ZrO膜の膜厚が1.5nmにおいては、ZrO膜とTiO膜との合計膜厚が減少しているにもかかわらず、EOTが増加している。これは、ZrO膜の膜厚が減少するに従って、上述の実施例1でみられたような立方晶系への相転移が起こりづらくなり、その上に形成されるTiO膜においてもアナターゼ型構造の占める割合が増加したためと考えられる。
【0127】
上述の実施例1のデータとも考え併せると、ZrO膜の膜厚が4.0nm以上であれば、ZrO膜の少なくとも一部をより確実に相転移させることができ、EOTにおいて優位な結果が得られることがわかる。
【0128】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様を付記する。
【0129】
本発明の一態様は、
基板の上に形成されたチタン窒化膜の上にジルコニウム酸化膜を形成するジルコニウム酸化膜形成工程と、
前記ジルコニウム酸化膜の上にチタン酸化膜を形成するチタン酸化膜形成工程と、を有し、
前記ジルコニウム酸化膜の膜厚を制御することにより、前記ジルコニウム酸化膜の少なくとも一部の結晶構造を立方晶系構造又は正方晶系構造とし、これにより、前記チタン酸化膜の少なくとも一部の結晶構造をブルッカイト型構造又はルチル型構造とする
半導体デバイスの製造方法である。
【0130】
本発明の他の態様は、
基板の上に形成されたチタン窒化膜の上にジルコニウム酸化膜を形成するジルコニウム酸化膜形成工程と、
前記ジルコニウム酸化膜の上にチタン酸化膜を形成するチタン酸化膜形成工程と、を有し、
前記ジルコニウム酸化膜形成工程は、
前記基板が収容された処理室内にジルコニウム含有ガスを供給して排気する工程と、
前記処理室内に酸素含有ガスを供給して排気する工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施することにより、前記チタン窒化膜の上にジルコニウム酸化膜を形成する工程と、
前記ジルコニウム酸化膜を加熱して前記ジルコニウム酸化膜の少なくとも一部の結晶構造を相転移させる工程と、を有し、
前記チタン酸化膜形成工程は、
前記処理室内にチタン含有ガスを供給して排気する工程と、
前記処理室内に前記酸素含有ガスを供給して排気する工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施することにより、相転移した前記ジルコニウム酸化膜の上にチタン酸化膜を形成する工程を有し、
前記ジルコニウム酸化膜の膜厚を制御しておくことにより、前記ジルコニウム酸化膜を加熱して前記ジルコニウム酸化膜の少なくとも一部の結晶構造を立方晶系構造又は正方晶系構造へと相転移させ、これにより、前記チタン酸化膜の少なくとも一部の結晶構造をブルッカイト型構造又はルチル型構造とする
半導体デバイスの製造方法である。
【0131】
好ましくは、
前記ジルコニウム酸化膜の膜厚を、前記ジルコニウム酸化膜の少なくとも一部の結晶構造の立方晶系構造又は正方晶系構造への加熱による相転移が可能となるような膜厚以上に制御する。
【0132】
また、好ましくは、
前記ジルコニウム酸化膜の膜厚を4.0nm以上に制御する。
【0133】
また、好ましくは、
前記ジルコニウム酸化膜を加熱して相転移させる工程では、
前記ジルコニウム酸化膜を350℃以上450℃以下の温度で加熱する。
【0134】
また、好ましくは、
前記チタン酸化膜形成工程では、
450℃以下の温度で前記結晶構造の前記チタン酸化膜を形成する。
【0135】
本発明のさらに他の態様は、
チタン窒化膜が形成された基板を収容する処理室と、
前記基板を加熱する加熱部と、
前記処理室内にジルコニウム含有ガスを供給するジルコニウム含有ガス供給部と、
前記処理室内にチタン含有ガスを供給するチタン含有ガス供給部と、
前記処理室内に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給部と、
前記処理室内の雰囲気を排気する排気部と、
前記加熱部、前記ジルコニウム含有ガス供給部、前記チタン含有ガス供給部、前記酸素含有ガス供給部および前記排気部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記基板が収容された前記処理室内にジルコニウム含有ガスを供給させ排気させ、前記処理室内に酸素含有ガスを供給させ排気させ、前記ジルコニウム含有ガスの供給・排気と前記酸素含有ガスの供給・排気とを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施させることにより、前記チタン窒化膜の上にジルコニウム酸化膜を形成させ、前記ジルコニウム酸化膜を加熱させて前記ジルコニウム酸化膜の少なくとも一部の結晶構造を相転移させ、
前記処理室内にチタン含有ガスを供給させ排気させ、前記処理室内に前記酸素含有ガスを供給させ排気させ、前記チタン含有ガスの供給・排気と前記酸素含有ガスの供給・排気とを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施させることにより、相転移させた前記ジルコニウム酸化膜の上にチタン酸化膜を形成させるよう制御し、
前記ジルコニウム酸化膜の膜厚を制御しておくことにより、前記ジルコニウム酸化膜を加熱して前記ジルコニウム酸化膜の少なくとも一部の結晶構造を立方晶系構造又は正方晶系構造へと相転移させ、これにより、前記チタン酸化膜の少なくとも一部の結晶構造をブルッカイト型構造又はルチル型構造とするように構成される
基板処理装置である。
【0136】
本発明のさらに他の態様は、
基板の上に形成されたチタン窒化膜の上に、立方晶系構造又は正方晶系構造を少なくとも一部に有するジルコニウム酸化膜を形成するジルコニウム酸化膜形成工程と、
前記ジルコニウム酸化膜の上に、ブルッカイト型構造又はルチル型構造を少なくとも一部に有するチタン酸化膜を450℃以下の温度で形成するチタン酸化膜形成工程と、を有する
高誘電率絶縁膜の形成方法である。
【0137】
好ましくは、
前記ジルコニウム酸化膜形成工程では、
前記ジルコニウム酸化膜と前記チタン酸化膜との合計膜厚が、所定の高誘電率を維持可能な最小値に近づくよう前記ジルコニウム酸化膜の膜厚を制御する。
【符号の説明】
【0138】
1 半導体デバイス
101 基板処理装置
200 ウエハ(基板)
201 処理室
207 ヒータ
280 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に形成されたチタン窒化膜の上にジルコニウム酸化膜を形成するジルコニウム酸化膜形成工程と、
前記ジルコニウム酸化膜の上にチタン酸化膜を形成するチタン酸化膜形成工程と、を有し、
前記ジルコニウム酸化膜の膜厚を制御することにより、前記ジルコニウム酸化膜の少なくとも一部の結晶構造を立方晶系構造又は正方晶系構造とし、これにより、前記チタン酸化膜の少なくとも一部の結晶構造をブルッカイト型構造又はルチル型構造とする
ことを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項2】
チタン窒化膜が形成された基板を収容する処理室と、
前記基板を加熱する加熱部と、
前記処理室内にジルコニウム含有ガスを供給するジルコニウム含有ガス供給部と、
前記処理室内にチタン含有ガスを供給するチタン含有ガス供給部と、
前記処理室内に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給部と、
前記処理室内の雰囲気を排気する排気部と、
前記加熱部、前記ジルコニウム含有ガス供給部、前記チタン含有ガス供給部、前記酸素含有ガス供給部および前記排気部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記基板が収容された前記処理室内にジルコニウム含有ガスを供給させ排気させ、前記処理室内に酸素含有ガスを供給させ排気させ、前記ジルコニウム含有ガスの供給・排気と前記酸素含有ガスの供給・排気とを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施させることにより、前記チタン窒化膜の上にジルコニウム酸化膜を形成させ、前記ジルコニウム酸化膜を加熱させて前記ジルコニウム酸化膜の少なくとも一部の結晶構造を相転移させ、
前記処理室内にチタン含有ガスを供給させ排気させ、前記処理室内に前記酸素含有ガスを供給させ排気させ、前記チタン含有ガスの供給・排気と前記酸素含有ガスの供給・排気とを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施させることにより、相転移させた前記ジルコニウム酸化膜の上にチタン酸化膜を形成させるよう制御し、
前記ジルコニウム酸化膜の膜厚を制御しておくことにより、前記ジルコニウム酸化膜を加熱して前記ジルコニウム酸化膜の少なくとも一部の結晶構造を立方晶系構造又は正方晶系構造へと相転移させ、これにより、前記チタン酸化膜の少なくとも一部の結晶構造をブルッカイト型構造又はルチル型構造とするように構成される
ことを特徴とする基板処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−142367(P2012−142367A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292960(P2010−292960)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】