説明

半導体装置の製造方法及び半導体基板の洗浄方法

【課題】半導体基板の洗浄をより効率的に行うことができる半導体装置の製造方法及び半導体基板の洗浄方法等を提供する。
【解決手段】半導体基板20をその主面を鉛直方向及び水平方向から傾斜させて保持し、酸を含む洗浄液26に半導体基板20を浸漬する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び半導体基板の洗浄方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板上方にGaN層及びAlGaN層を順次形成し、GaN層を電子走行層として用いる電子デバイス(化合物半導体装置)の開発が活発である。このような化合物半導体装置の一つとして、GaN系の高電子移動度トランジスタ(HEMT:high electron mobility transistor)が挙げられる。GaN系HEMTでは、AlGaNとGaNとのヘテロ接合界面に発生する高濃度の2次元電子ガス(2DEG)が利用されている。
【0003】
GaNのバンドギャップは3.4eVであり、Siのバンドギャップ(1.1eV)及びGaAsのバンドギャップ(1.4eV)よりも大きい。つまり、GaNは高い破壊電界強度を有する。また、GaNは大きい飽和電子速度も有している。このため、GaNは、高電圧動作、且つ高出力が可能な化合物半導体装置の材料、例えば電源用半導体装置の材料として極めて有望である。このため、GaN系化合物半導体を用いた化合物半導体装置は、高効率スイッチング素子、電気自動車用等の高耐圧電力デバイスとして期待されている。例えば、Si横拡散MOS(LDMOS:laterally diffused metal oxide semiconductor)トランジスタ、GaAs電界効果トランジスタ(FET:field effect transistor)では実現が難しい高出力、高効率、高電圧の動作が可能なデバイスとして期待されている。
【0004】
このようなGaN系HEMTでは、良好な特性を得るために、製造過程で発生するパーティクル等の残渣は極力排除すべきである。特に、ノーマリーオフ動作の実現等の目的で採用されるゲートリセス構造のGaN系HEMTでは、リセスを形成してからゲート絶縁膜を形成するまでの間に行う洗浄が極めて重要である。これは、残渣が存在する場合には、リーク電流の増大、及び電荷のトラップによる閾値電圧の変動等が生じるため、歩留まりが著しく低下するからである。
【0005】
なお、パーティクル等の残渣の排除が重要視されるのは、GaN系HEMTのみならず、他の半導体装置においても同様である。
【0006】
しかしながら、これまでの技術では、十分な効率で洗浄を行うことが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−164226号公報
【特許文献2】特開平9−260331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、半導体基板の洗浄をより効率的に行うことができる半導体装置の製造方法及び半導体基板の洗浄方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
半導体装置の製造方法の一態様及び半導体基板の洗浄方法の一態様では、半導体基板をその主面を鉛直方向及び水平方向から傾斜させて保持し、酸を含む洗浄液に前記半導体基板を浸漬する。
【0010】
洗浄装置の一態様には、半導体基板を支持する支持部と、前記半導体基板を鉛直方向及び水平方向から傾斜させて係止する係止部と、が設けられている。
【発明の効果】
【0011】
上記の半導体装置の製造方法等によれば、酸を含む洗浄液を用いた洗浄により気泡が生じても、当該気泡を効率よく排除して高効率で半導体基板の洗浄を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図1B】図1Aに引き続き、半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図2】バッチ式洗浄装置の洗浄治具の一例を示す図である。
【図3】洗浄方法を示す図である。
【図4】バッチ式洗浄装置の洗浄治具の他の例を示す図である。
【図5】バッチ式洗浄装置の洗浄治具の更に他の例を示す図である。
【図6】枚葉式洗浄装置の洗浄治具の更に他の例を示す図である。
【図7】洗浄後のパーティクルの残存状況を示す図である。
【図8】高出力増幅器の外観の例を示す図である。
【図9】電源装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。図1A〜図1Bは、実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。ここでは、半導体装置として、GaN系HEMTを製造する。
【0014】
先ず、図1A(a)に示すように、基板1上に、核形成層2、電子走行層3、電子供給層4、及びキャップ層5を形成する。基板1としては、例えばSiC基板を用いる。核形成層2としては、例えばAlN層又はAlGaN層を形成する。電子走行層3としては、例えばノンドープのi−GaN層を形成する。電子供給層4としては、例えばn型のn−AlGaN層を形成する。n型のn−AlGaN層の形成の前に、スペーサ層としてノンドープのi−AlGaN層を形成してもよい。キャップ層5としては、例えばn型のn−GaN層を形成する。核形成層2、電子走行層3、電子供給層4、及びキャップ層5の形成は、例えば有機金属気相成長(MOVPE:metal organic vapor phase epitaxy)法等の結晶成長法により行う。この場合、原料ガスを選択することにより、これらの層を連続して形成することができる。アルミニウム(Al)の原料、ガリウム(Ga)の原料としては、例えば、夫々トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)を使用することができる。また、窒素(N)の原料として、例えばアンモニア(NH3)を使用することができる。また、n−AlGaN層(電子供給層4)及びn−GaN層(キャップ層5)に不純物として含まれるシリコン(Si)の原料としては、例えばシラン(SiH4)を使用することができる。
【0015】
電子走行層3の厚さは、例えば3μm程度とする。電子供給層4の厚さは、例えば30nm程度とする。スペーサ層を設ける場合、その厚さは、例えば5nm程度とする。キャップ層5の厚さは、例えば10nmとする。i−AlGaN層(スペーサ層)及びn−AlGaN層(電子供給層4)のAl組成は、例えば0.2程度とする。n−AlGaN層(電子供給層4)及びn−GaN層(キャップ層5)には、例えば、n型不純物としてSiを5×1018cm-3程度ドーピングする。
【0016】
このような積層構造においては、電子走行層3と電子供給層4との界面近傍に2次元電子ガス(2DEG)が生成される。また、キャップ層5の存在により、電子走行層3との電子供給層4との間の歪みが増大し、ピエゾ効果が惹起されて2DEGが増加する。このような作用により、GaN系HEMTのオン電流が低減し、大電流動作が可能となる。
【0017】
次いで、図1A(b)に示すように、キャップ層5、電子供給層4、及び電子走行層3の、ソース電極を形成する予定の領域、及びドレイン電極を形成する予定の領域に、それぞれ、凹部6s、凹部6dを形成する。凹部6s及び6dの形成に当たっては、先ず、凹部6s及び6dを形成する予定の領域を露出する開口部を備えたレジストパターンを形成し、このレジストパターンをエッチングマスクとしてキャップ層5、電子供給層4、及び電子走行層3のドライエッチングを行う。そして、アッシング等によりレジストパターンを除去する。このドライエッチングでは、例えばエッチングガスとして塩素系ガスを用いる。ドライエッチングの条件は特に限定されないが、例えば、エッチングガスの流量を30sccmとし、圧力を2Paとし、RF投入電力を20Wとする。凹部6s及び6dの深さは特に限定されず、2DEGを介した所定量の電流が流れればよい。
【0018】
凹部6s及び6dの形成の後、図1A(c)に示すように、凹部6s内にソース電極7sを形成し、凹部6d内にドレイン電極7dを形成する。ソース電極7s及びドレイン電極7dの形成に当たっては、先ず、ソース電極7sを形成する予定の領域を露出する開口部、及びドレイン電極7dを形成する予定の領域を露出する開口部を備えたレジストパターンを形成する。次いで、このレジストパターンを成膜マスクとして導電膜を形成する。その後、レジストパターン上に付着した導電膜をレジストパターンと共に除去する。つまり、ソース電極7s及びドレイン電極7dはリフトオフ法により形成することができる。導電膜の形成では、例えば、厚さが20nm程度のTa膜を形成し、その上に厚さが200nm程度のAl膜を形成する。Ta膜及びAl膜は、例えば蒸着法により形成することができる。レジストパターンの除去後には、窒素雰囲気中で400℃〜1000℃(例えば550℃)で熱処理を行い、オーミック接触を確立する。
【0019】
ソース電極7s及びドレイン電極7dの形成の後、図1A(d)に示すように、キャップ層5及び電子供給層4の、ゲート電極7gを形成する予定の領域にリセス6gを形成する。リセス6gの形成に当たっては、先ず、リセス6gを形成する予定の領域を露出する開口部を備えたレジストパターンを形成し、このレジストパターンをエッチングマスクとしてキャップ層5及び電子供給層4のドライエッチングを行う。そして、アッシング等によりレジストパターンを除去する。このドライエッチングでは、例えばエッチングガスとして塩素系ガスを用いる。
【0020】
リセス6gの形成の後、詳細は後述するが、所定の方法により、リセス6g内の洗浄を行い、エッチング残渣、レジスト残渣等を除去する。
【0021】
リセス6g内の洗浄の後、図1B(e)に示すように、リセス6gの内面に倣うゲート絶縁膜8を形成する。ゲート絶縁膜8としては、例えば酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化ハフニウム膜、又は窒化シリコン膜等を形成する。ゲート絶縁膜8は、例えば原子層堆積(ALD:atomic layer deposition)法等により形成することができる。ゲート絶縁膜8の厚さは、5nm〜100nm程度(例えば40nm程度)とする。
【0022】
次いで、図1B(f)に示すように、ゲート電極を形成する予定の領域を露出する開口部10cを備えた下層レジストパターン10a及び開口部10cより狭い開口部10dを備えた上層レジストパターン10bをゲート絶縁膜8上に形成する。これらの下層レジストパターン10a及び上層レジストパターン10bの形成に当たっては、先ず、アルカリ可溶性樹脂(商品名PMGI:米国マイクロケム社製)を、例えばスピンコート法によりゲート絶縁膜8上に塗布し、熱処理を行うことにより、レジスト膜を形成する。更に、感光性レジスト剤(商品名PFI32−A8:住友化学社製)を、例えばスピンコート法により塗布し、熱処理を行うことにより、レジスト膜を形成する。次いで、紫外線露光により幅が0.8μm程度の開口部10dを上層のレジスト膜に形成する。この結果、開口部10dを備えた上層レジストパターン10bが得られる。その後、上層レジストパターン10bをマスクとして、アルカリ現像液を用いて下層のレジスト膜をウェットエッチングする。この結果、開口部10cを備えた下層レジストパターン10aが得られる。これらの処理により、図1B(f)に示すように、庇構造の多層レジストが得られる。
【0023】
下層レジストパターン10a及び上層レジストパターン10bの形成の後、図1B(g)に示すように、リセス6gを埋め込むようにしてゲート電極7gをゲート絶縁膜8上に形成する。ゲート電極7gの形成に当たっては、先ず、下層レジストパターン10a及び上層レジストパターン10bを成膜マスクとして導電膜を形成する。その後、上層レジストパターン10b上に付着した導電膜を下層レジストパターン10a及び上層レジストパターン10bと共に除去する。なお、つまり、ゲート電極7gもリフトオフ法により形成することができる。導電膜の形成では、例えば、厚さが10nm程度のNi膜を形成し、その上に厚さが300nm程度のAu膜を形成する。Ni膜及びAu膜は、例えば蒸着法により形成することができる。下層レジストパターン10a及び上層レジストパターン10bの除去では、例えば加温した有機溶剤を用いる。
【0024】
ゲート電極7gの形成の後、図1B(h)に示すように、全面に保護膜9を形成する。その後、コンタクト孔、及び配線等を形成する。このようにして、GaN系HEMTを製造することができる。
【0025】
ここで、リセス6g内の洗浄について詳細に説明する。図2は、リセス6g内の洗浄に用いる洗浄装置の洗浄治具の一例を示す図である。図2(b)は、図2(a)中のI−I線に沿った断面を示している。
【0026】
この洗浄装置には、複数の半導体基板20を収納する洗浄治具61が含まれている。洗浄治具61には、角筒を構成するように4個の壁部24が設けられており、一対の壁部24の内側に半導体基板20を支持する支持部21が設けられている。また、当該一対の壁部24の内側には、支持部21よりも上方に複数の下係止部22が設けられ、下係止部22の上方、かつ、平面視で下係止部22からずれた位置に上係止部23が設けられている。一対の下係止部22及び上係止部23により半導体基板20の水平方向の位置が決定され、支持部21により半導体基板20の鉛直方向の位置が決定される。このとき、平面視で下係止部22からずれた位置に上係止部23が設けられているため、半導体基板20の主面の法線方向は水平方向から傾斜する。
【0027】
そして、本実施形態では、リセス6g等が形成された基板1を半導体基板20として洗浄治具61に収納し、図3に示すように、洗浄槽25中の洗浄液26に浸漬し、酸洗浄を行う。洗浄液26の成分は特に限定されないが、例えば、硫酸過水又はフッ酸を用いる。硫酸過水はレジスト残渣の除去に特に好適であり、フッ酸は化合物半導体の残渣の除去に特に好適である。酸洗浄後には、水洗及びスピン乾燥を行う。
【0028】
酸洗浄では、洗浄液26と半導体基板20上の異物との反応により気泡が生じるが、本実施形態では、少なくとも、半導体基板20の鉛直上方を向いている主面では気泡が鉛直上方に浮き上がる。従って、この主面では気泡の滞留が生じにくく、効率的に洗浄が行われる。逆側の主面については、半導体基板20の表裏を反転させれば、同様に、効率的な洗浄が可能である。例えば、上係止部23及び/又は下係止部22を水平方向に可動としておけば、容易に表裏を反転させることが可能である。このような効果を得るためには、半導体基板20の主面の法線方向の水平方向からのずれの角度が10°〜80°であることが好ましい。ずれの角度が10°未満であると、鉛直上方を向いている主面の下方において発生した気泡が浮き上がる際に当該主面近傍を通過しやすいため、洗浄むらの発生等により十分な洗浄効率が得にくくなる可能性がある。一方、ずれの角度が80°を超えると、鉛直下方を向いている主面に気泡が滞留しやすくなり、この主面での洗浄効率が低下する可能性がある。
【0029】
更に、図3に示すように、複数の半導体基板20同士は、平面視で互いに全体がずれていることが好ましい。つまり、平面視で重なり合う部分が存在せず、互いの干渉を回避することが好ましい。これは、平面視で重なり合う部分が存在していると、下方に位置する一方の半導体基板20で発生した気泡が、上方に位置する他方の半導体基板20に接触し、当該他方の半導体基板20の洗浄効率が低下する可能性があるからである。
【0030】
このような方法でリセス6gの洗浄を行う本実施形態によれば、洗浄の際に生じる気泡を効率的に逃がして排除することができるため、洗浄効率を著しく向上することができる。
【0031】
なお、洗浄装置の洗浄治具は図2に示すものに限定されず、例えば、図4〜図6に示すものを用いることもできる。図4(b)は、図4(a)中のII−II線に沿った断面を示しており、図5(b)は、図5(a)中のIII−III線に沿った断面を示している。また、図6(b)は、図6(a)中のIV−V線に沿った断面を示している。
【0032】
図4に示す洗浄治具62には、4個の壁部24を外方から支持する筐体33が含まれている。筐体33の下端には、壁部24を下方から支持する治具支持部34が設けられている。治具支持部34は筐体33の下端から内側に、半導体基板20を支持する支持部21と同程度、突出している。更に、洗浄治具62には、半導体基板20を上方から押さえて固定する押え部材32、及び水平方向を軸として筐体33を回転させる回転駆動部材31が設けられている。
【0033】
この洗浄治具62を用いて酸洗浄を行う場合には、図3に示すように、洗浄槽25中の洗浄液26に浸漬し、回転駆動部材31により筐体33を回転させる。この結果、回転に伴って半導体基板20の両主面が鉛直上方を交互に向くようになる。このため、半導体基板20の両主面を高効率で洗浄することができる。また、押え部材32が設けられているため、半導体基板20の落下が防止される。
【0034】
図5に示す洗浄治具63には、半導体基板20の上端に接触して、水平方向を軸として回転する棒状の回転駆動部材41が設けられている。
【0035】
この洗浄治具63を用いて酸洗浄を行う場合には、図3に示すように、洗浄槽25中の洗浄液26に浸漬し、回転駆動部材41を回転させる。回転駆動部材41が半導体基板20の上端と接触しているため、回転駆動部材41の回転に伴って半導体基板20が壁部24内で回転する。この結果、半導体基板20の両主面において気泡が滞留しにくくなり、半導体基板20の両主面を高効率で洗浄することができる。
【0036】
図2、図4、図5に示す洗浄治具61〜63はバッチ式の処理用の洗浄治具であるが、図6に示す洗浄治具64は枚葉式の処理用の洗浄治具である。この洗浄治具64には、中央に開口部55が形成されたハブ54から3方向に延びる直線部56a、56b、及び56cが設けられている。直線部56a、56b、及び56cの上面側には、それぞれ、半導体基板の裏面に接する上突起51a、51b、及び51cが設けられている。上突起51a、51b、及び51cの頂部は凸状に湾曲している。更に、直線部56a、56b、及び56cの上面側には、それぞれ、半導体基板の水平方向の移動を拘束するストッパ53a、53b、及び53cが設けられている。一方、直線部56a、56b、及び56cの下面側には、それぞれ、下突起52a、52b、及び52cが設けられている。上突起51a、51b、及び51cの高さは共通である。一方、下突起52b及び52cの高さは共通であるが、下突起52aの高さはこれらよりも低い。直線部56aの端部には取手57が設けられている。
【0037】
この洗浄治具64を用いて酸洗浄を行う場合、上突起51a、51b、及び51c上に半導体基板を載置し、取手を持って洗浄槽中の洗浄液に浸漬する。洗浄治具64が洗浄槽の底に載置されると、下突起52a、52b、及び52cの高さの相違に起因して、半導体基板の主面の法線方向が鉛直方向から傾斜する。このため、半導体基板の下側の主面で気泡が生じたとしても、容易に上方に抜け出すことが可能となり、この主面も高効率で洗浄される。なお、このような効果を得るためには、半導体基板の主面の法線方向の鉛直方向からのずれの角度が10°〜80°であることが好ましい。ずれの角度が10°未満であると、鉛直下方を向いている主面に気泡が滞留しやすくなり、この主面での洗浄効率が低下する可能性がある。一方、ずれの角度が80°を超えると、鉛直上方を向いている主面の下方において発生した気泡が浮き上がる際に当該主面近傍を通過しやすいため、洗浄むらの発生等により十分な洗浄効率が得にくくなる可能性がある。なお、半導体基板を傾斜させるために、上突起のみに高さの相違を設けてもよく、上突起及び下突起の双方に高さの相違を設けてもよい。
【0038】
本願発明者らが、図6に示す洗浄治具64を用いて酸洗浄を行った結果、半導体基板のパーティクルの残留は図7(b)に示すものとなった。また、同様の半導体基板に対して傾斜を設けていない洗浄治具を用いて洗浄を行った結果、パーティクルの残留は図7(a)に示すものとなった。これらを比較すると、本実施形態により、著しくパーティクルを除去できることが容易に理解できる。
【0039】
なお、洗浄を行う前に、洗浄治具の紫外線処理を行っておくことが好ましい。また、洗浄治具に半導体基板を収納する前に、当該半導体基板の搬送に用いる搬送治具の紫外線処理を行っておくことが好ましい。更に、酸洗後に行うスピン乾燥の前に、スピン乾燥に用いる治具を乾燥させておくことが好ましい。いずれも、これらの治具からの半導体基板への異物等の付着を回避するためである。
【0040】
また、洗浄治具を構成する部品の数は極力少なくし、可能であれば、一体的に構成されていることが好ましい。これは、部品の数が多くなるほど、連結部が多くなり、洗浄により脱落した異物等が連結部に残留して、後の洗浄の際に洗浄対象の半導体基板を汚染する可能性があるからである。
【0041】
本実施形態により製造されたGaN系HEMTは、例えば高出力増幅器として用いることができる。図8に、高出力増幅器の外観の例を示す。この例では、ソース電極に接続されたソース端子81sがパッケージの表面に設けられている。また、ゲート電極に接続されたゲート端子81g、及びドレイン電極に接続されたドレイン端子81dがパッケージの側面から延出している。
【0042】
また、これらの実施形態に係るGaN系HEMTは、例えば電源装置に用いることもできる。図9(a)は、PFC(power factor correction)回路を示す図であり、図9(b)は、図9(a)に示すPFC回路を含むサーバ電源(電源装置)を示す図である。
【0043】
図9(a)に示すように、PFC回路90には、交流電源(AC)が接続されるダイオードブリッジ91に接続されたコンデンサ92が設けられている。コンデンサ92の一端子にはチョークコイル93の一端子が接続され、チョークコイル93の他端子には、スイッチ素子94の一端子及びダイオード96のアノードが接続されている。スイッチ素子94は上記の実施形態におけるHEMTに相当し、当該一端子はHEMTのドレイン電極に相当する。また、スイッチ素子94の他端子はHEMTのソース電極に相当する。ダイオード96のカソードにはコンデンサ95の一端子が接続されている。コンデンサ92の他端子、スイッチ素子94の当該他端子、及びコンデンサ95の他端子が接地される。そして、コンデンサ95の両端子間から直流電源(DC)が取り出される。
【0044】
そして、図9(b)に示すように、PFC回路90は、サーバ電源100等に組み込まれて用いられる。
【0045】
このようなサーバ電源100と同様の、より高速動作が可能な電源装置を構築することも可能である。また、スイッチ素子94と同様のスイッチ素子は、スイッチ電源又は電子機器に用いることができる。更に、これらの半導体装置を、サーバの電源回路等のフルブリッジ電源回路用の部品として用いることも可能である。
【0046】
いずれの実施形態においても、基板として、炭化シリコン(SiC)基板、サファイア基板、シリコン基板、GaN基板又はGaAs基板等を用いてもよい。基板が、導電性、半絶縁性又は絶縁性のいずれであってもよい。
【0047】
また、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極の構造は上述の実施形態のものに限定されない。例えば、これらが単層から構成されていてもよい。また、これらの形成方法はリフトオフ法に限定されない。更に、オーミック特性が得られるのであれば、ソース電極及びドレイン電極の形成後の熱処理を省略してもよい。また、ゲート電極に対して熱処理を行ってもよい。
【0048】
また、製造する半導体装置は、GaN系HEMTに限定されず、他の半導体装置の製造に適用することが可能である。
【0049】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0050】
(付記1)
半導体基板をその主面を鉛直方向及び水平方向から傾斜させて保持する工程と、
酸を含む洗浄液に前記半導体基板を浸漬する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0051】
(付記2)
前記半導体基板を保持する工程の前に、前記半導体基板上に化合物半導体層を形成する工程を有することを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
【0052】
(付記3)
前記半導体基板を保持する工程の前に、前記化合物半導体層にリセスを形成する工程を有することを特徴とする付記2に記載の半導体装置の製造方法。
【0053】
(付記4)
前記半導体基板を保持する工程の前に、前記リセスの内面に倣うゲート絶縁膜を形成する工程を有することを特徴とする付記3に記載の半導体装置の製造方法。
【0054】
(付記5)
前記傾斜の角度を鉛直方向及び水平方向から10°〜80°とすることを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0055】
(付記6)
前記半導体基板を保持する工程は、洗浄治具内に前記半導体基板を収納する工程を有し、
前記洗浄治具は、
前記半導体基板を支持する支持部と、
前記半導体基板を鉛直方向及び水平方向から傾斜させて係止する係止部と、
を有することを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0056】
(付記7)
前記支持部及び前記係止部を収納する筐体を回転させることにより、前記半導体基板を回転させる工程を有することを特徴とする付記6に記載の半導体装置の製造方法。
【0057】
(付記8)
前記半導体基板に接触する回転駆動部材を回転させることにより、前記洗浄治具内で前記半導体基板を回転させる工程を有することを特徴とする付記6に記載の半導体装置の製造方法。
【0058】
(付記9)
前記洗浄治具内に前記半導体基板を収納する工程の前に、前記洗浄治具の紫外線処理を行う工程を有することを特徴とする付記6乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0059】
(付記10)
前記洗浄治具内に前記半導体基板を収納する工程の前に、前記洗浄治具への前記半導体基板の搬送に用いる搬送治具の紫外線処理を行う工程を有することを特徴とする付記6乃至9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0060】
(付記11)
前記半導体基板を浸漬する工程の後に、前記半導体基板のスピン乾燥を行う工程を有することを特徴とする付記1乃至10のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0061】
(付記12)
前記半導体基板のスピン乾燥を行う工程の前に、前記スピン乾燥に用いる治具を乾燥させる工程を有することを特徴とする付記11に記載の半導体装置の製造方法。
【0062】
(付記13)
半導体基板をその主面を鉛直方向及び水平方向から傾斜させて保持する工程と、
酸を含む洗浄液に前記半導体基板を浸漬する工程と、
を有することを特徴とする半導体基板の洗浄方法。
【0063】
(付記14)
前記傾斜の角度を鉛直方向及び水平方向から10°〜80°とすることを特徴とする付記13に記載の半導体基板の洗浄方法。
【0064】
(付記15)
前記半導体基板を保持する工程は、洗浄治具内に前記半導体基板を収納する工程を有し、
前記洗浄治具は、前記半導体基板を鉛直方向及び水平方向から傾斜させて係止する係止部を有することを特徴とする付記13又は14に記載の半導体基板の洗浄方法。
【0065】
(付記16)
前記洗浄治具を回転させることにより、前記半導体基板を回転させる工程を有することを特徴とする付記15に記載の半導体基板の洗浄方法。
【0066】
(付記17)
前記半導体基板に接触する回転駆動部材を回転させることにより、前記半導体基板を回転させる工程を有することを特徴とする付記15に記載の半導体基板の洗浄方法。
【0067】
(付記18)
半導体基板を支持する支持部と、
前記半導体基板を鉛直方向及び水平方向から傾斜させて係止する係止部と、
を有することを特徴とする洗浄治具。
【0068】
(付記19)
前記支持部及び前記係止部を収納する筐体を回転させることにより、前記半導体基板を回転させる回転駆動部材を有することを特徴とする付記18に記載の洗浄治具。
【0069】
(付記20)
前記半導体基板に接触し、前記洗浄治具内で前記半導体基板を回転させる回転駆動部材を有することを特徴とする付記18に記載の洗浄治具。
【符号の説明】
【0070】
20:半導体基板
21:支持部
22:下係止部
23:上係止部
24:壁部
25:洗浄槽
26:洗浄液
31:回転駆動部材
32:押え部材
33:筐体
34:治具支持部
41:回転駆動部材
51a、51b、51c:上突起
52a、52b、52c:下突起
53a、53b、53c:ストッパ
61、62、63、64:洗浄治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板をその主面を鉛直方向及び水平方向から傾斜させて保持する工程と、
酸を含む洗浄液に前記半導体基板を浸漬する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記半導体基板を保持する工程の前に、前記半導体基板上に化合物半導体層を形成する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記半導体基板を保持する工程の前に、前記化合物半導体層にリセスを形成する工程を有することを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記半導体基板を保持する工程の前に、前記リセスの内面に倣うゲート絶縁膜を形成する工程を有することを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記傾斜の角度を鉛直方向及び水平方向から10°〜80°とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記半導体基板を保持する工程は、洗浄治具内に前記半導体基板を収納する工程を有し、
前記洗浄治具は、
前記半導体基板を支持する支持部と、
前記半導体基板を鉛直方向及び水平方向から傾斜させて係止する係止部と、
を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記支持部及び前記係止部を収納する筐体を回転させることにより、前記半導体基板を回転させる工程を有することを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記半導体基板に接触する回転駆動部材を回転させることにより、前記洗浄治具内で前記半導体基板を回転させる工程を有することを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
半導体基板をその主面を鉛直方向及び水平方向から傾斜させて保持する工程と、
酸を含む洗浄液に前記半導体基板を浸漬する工程と、
を有することを特徴とする半導体基板の洗浄方法。
【請求項10】
半導体基板を支持する支持部と、
前記半導体基板を鉛直方向及び水平方向から傾斜させて係止する係止部を有することを特徴とする洗浄治具。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−178458(P2012−178458A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40544(P2011−40544)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】