説明

半導体装置の製造方法

【課題】フォトレジスト膜の除去の際の洗浄における半導体層上のシミのない半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】露出している半導体層の表面部を酸化して、アッシング酸化膜17を形成した後、CVD酸化膜を堆積する。CVD酸化膜の上に形成したフォトレジスト膜9をマスクとする気相フッ酸処理により、アッシング酸化膜17は残したままでCVD酸化膜を部分的に除去し、非シリサイド領域Rnsを覆う反応防止用酸化膜18を形成する。フォトレジスト膜9を除去した後、アッシング酸化膜17を除去し、乾燥処理を行なった後、基板上に金属膜を堆積する。そして、半導体層と金属膜との反応により、高濃度ソース・ドレイン領域11などの半導体層の上部にシリサイド層12を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サリサイド構造を有する半導体装置の製造方法に係り、特に、汚染の防止対策に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置内のMISFETの微細化に伴う短チャネル効果等を抑制するために、MISFETのソース・ドレイン領域等になっている不純物拡散層をできるだけ浅く形成する構造が採られている。反面、不純物拡散層を浅くすると、不純物拡散層のシート抵抗が増大するので、高速、低消費電力の半導体装置を製造することが困難になる。
【0003】
そこで、最近では、ソース・ドレイン領域の上部を、SiとTiとの化合物であるTiSi2 膜や、SiとCoとの化合物膜であるCoSi2 膜など、リフラクトリ金属とシリコンとの化合物であるシリサイド膜に変化させるサリサイド処理を行なうことが多くなっている。
【0004】
一方、I/O部に用いるMISFETにおいては、ゲート酸化膜の耐性、ESD耐性を確保するために、ソース・ドレイン領域の上部にシリサイド膜を形成しないのが一般的である。つまり、1つの半導体基板上に、シリサイド形成領域と非サリサイド形成領域とがあることになる。
【0005】
図4(a)〜(c)及び図5(a)〜(c)は、1つの半導体基板上にシリサイド形成領域と非シリサイド形成領域とを有する半導体装置についての従来の製造方法を示す断面図である。
【0006】
まず、図4(a)に示す工程で、Si基板101にシャロートレンチ分離102を形成した後、フォトリソグラフィー工程及びイオン注入工程とにより、シリサイド形成領域RscのNウェル103a及びPウェル103bと、非シリサイド形成領域Rnsのウェル103cとを形成する。なお、非シリサイド形成領域Rnsにおいても、PウェルとNウェルとが存在するが、便宜上、1つのウェルのみを図示している。その後、各ウェル103a,103b,103cにしきい値制御用不純物の注入や、チャネルストッパー用不純物の注入を行なう。
【0007】
次に、熱酸化法により、Si基板101の表面上にシリコン酸化膜104を形成し、さらに、ノンドープのポリシリコン膜105aを堆積する。そして、フォトリソグラフィー工程とイオン注入工程とにより、ノンドープポリシリコン膜105aのうち、PMISFET形成領域に位置する部分にはボロン(B)を、NMISFET形成領域に位置する部分には砒素(As)をそれぞれ導入する。さらに、ポリシリコン膜105aの上に、TiN(窒化チタン)などのバリア導体膜105bと、W(タングステン)などからなる金属膜105cと、シリコン窒化膜106とを順次堆積する。
【0008】
次に、図4(b)に示す工程で、フォトリソグラフィー工程とドライエッチング工程とにより、シリコン窒化膜106,金属膜105c,バリア導体膜105b,ポリシリコン膜105a及びシリコン酸化膜104をパターニングして、MISFETのゲート絶縁膜113,ゲート電極115及びゲート上保護膜114を形成する。さらに、フォトリソグラフィー工程及びイオン注入工程により、シリサイド形成領域Rsc及び非シリサイド形成領域Rnsの双方において、フォトレジストマスクとゲート電極115とをマスクとして、NMISFET形成領域に位置する部分には砒素イオン(As+ )を、PMISFET形成領域に位置する部分にはボロンイオン(B+ )をそれぞれ注入して、ゲート電極に対して自己整合的にエクステンション領域110を形成する。
【0009】
次に、図4(c)に示す工程で、基板上に、CVD酸化膜を堆積した後、異方性エッチングによりエッチバックして、ゲート絶縁膜113,ゲート電極115及びゲート上保護膜114の側面上に酸化膜サイドウォール116を形成する。さらに、フォトリソグラフィー工程及びイオン注入工程により、シリサイド形成領域Rsc及び非シリサイド形成領域Rnsの双方において、フォトレジストマスクとゲート電極115及び酸化膜サイドウォール116とをマスクとして、NMISFET形成領域に位置する部分には砒素イオン(As+ )を、PMISFET形成領域に位置する部分にはボロンイオン(B+ )をそれぞれ注入して、エクステンション領域110の外側に高濃度ソース・ドレイン領域111を形成する。
【0010】
次に、図5(a)に示す工程で、基板上に、CVD酸化膜を堆積した後、CVD酸化膜の上に非シリサイド領域Rnsを覆いシリサイド形成領域Rscを開口したフォトレジスト膜109を形成する。そして、このフォトレジスト膜109をマスクとするフッ酸溶液を用いたウエットエッチングにより、CVD酸化膜のうちシリサイド形成領域Rscに位置する部分を選択的に除去し、非シリサイド領域Rnsを覆う反応防止用酸化膜118を形成する。
【0011】
次に、図5(b)に示す工程で、プラズマアッシング処理、硫酸過水液及びアンモニア過水液による洗浄処理により、フォトレジスト膜109を除去する。
【0012】
次に、図5(c)に示す工程で、サリサイド工程を行なう。その際、希釈フッ酸(DHF)等による洗浄によって残渣を除去してから、基板上に、コバルト膜(Co膜)やチタン膜(Ti膜)などの金属膜を堆積する。そして、N2 雰囲気中で熱処理を施し、CoとSiとを反応させて、高濃度ソース・ドレイン領域111の上部にシリサイド層112を形成する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記半導体装置の製造方法においては、図5(a)に示す工程で、CVD酸化膜を希釈フッ酸(DHF)によりエッチングしてパターニングした後に乾燥すると、基板上、特に高濃度ソース・ドレイン領域111上にシミが発生し、このシミの上には良好なシリサイド層が形成されないという不具合があった。シミが発生すると、図5(c)に示すCo膜(あるいはTi膜)を堆積する前のDHFにおいて過度のエッチングを行わないと除去できないが、過度のエッチングを行なうことにより、シャロートレンチ分離部の酸化膜や、非サリサイド領域を覆う反応防止用酸化膜がエッチングされ、別の不具合を招くおそれがある。
【0014】
つまり、フォトレジスト膜を除去した後のエッチングなどの処理によってこのようなシミが発生すると、その後の各種の処理を適正に行なうことができなくなるおそれがあった。
【0015】
本発明の目的は、フォトレジスト膜の除去処理の後におけるシミの発生を防止する手段を講ずることにより、サリサイド工程などの各種処理を適正に行ないうる半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の半導体装置の製造方法は、半導体層を有する基板上に、被覆絶縁膜を形成する工程(a)と、上記被覆絶縁膜の上に、一部を覆い上記半導体層の上方を開口したフォトレジスト膜を形成する工程(b)と、上記フォトレジスト膜をマスクとして、上記被覆絶縁膜をウエットエッチングする工程(c)と、上記工程(c)と連続して、酸化性水溶液による処理により、露出している上記半導体層の表面部にシミ防止用酸化膜となる薬液酸化膜を形成する工程(d)と、アッシング及び洗浄により上記フォトレジスト膜を除去した後、上記シミ防止用酸化膜を除去する工程(e)とを含んでいる。
【0017】
この方法により、被覆絶縁膜をウエットエッチングによりパターニングしてから薬液酸化膜を形成するまでは連続して行なわれて、乾燥することがないので、その間に半導体層の上にシミが発生するのを回避できる。また、薬液酸化膜を形成した後は、半導体層の表面が親水性の状態で後の工程が進められる。したがって、半導体層の上にシミが残ることに起因して後工程が不適正に行なわれるのを回避することができる。
【0018】
上記工程(d)では、オゾン水処理又は過酸化水素水処理により、上記薬液酸化膜を形成することができる。
【0019】
上記工程(e)の後、上記半導体層の上部をシリサイド化する工程をさらに含むことにより、シミの存在による不十分なシリサイド化部分の発生のない適正なシリサイド層を形成することが可能になる。
【0020】
上記半導体層は、基板上のシリサイド形成領域のMISFETのソース・ドレイン領域であり、上記工程(c)では、上記フォトレジスト膜によって覆われる上記一部は基板上の非シリサイド形成領域であることにより、上記被覆絶縁膜をサリサイド工程における非シリサイド形成領域を覆う反応防止膜として用いることができる。
【0021】
上記半導体層は、ポリメタルゲート構造又はメタルゲート構造を有するMISFETのソース・ドレイン領域である場合、上記工程(e)では、プラズマによるアッシングと水酸化テトラメチルアンモニウム液による洗浄とを行なって、上記フォトレジスト膜を除去することにより、メタル部分に悪影響を与えることなく、フォトレジスト膜の除去を行なうことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の半導体装置の製造方法によると、半導体層の上に開口部を有するフォトレジスト膜の除去のための処理を、半導体層の表面状態を親水性に保持しつつ進めるようにしたので、シミに起因する各種の不具合のない半導体装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図1(a)〜(c)及び図2(a)〜(c)を参照しながら説明する。図1(a)〜(c)及び図2(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係る、半導体基板上にシリサイド形成領域と非シリサイド形成領域とを有する半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0025】
まず、図1(a)に示す工程で、Si基板1にシャロートレンチ分離2を形成した後、フォトリソグラフィー工程及びイオン注入工程とにより、シリサイド形成領域RscのNウェル3a及びPウェル3bと、非シリサイド形成領域Rnsのウェル3cとを形成する。なお、非シリサイド形成領域Rnsにおいても、PウェルとNウェルとが存在するが、便宜上、1つのウェルのみを図示している。その後、各ウェル3a,3b,3cにしきい値制御用不純物の注入や、チャネルストッパー用不純物の注入を行なう。
【0026】
次に、熱酸化法により、Si基板1の表面上にシリコン酸化膜4を形成し、さらに、下部ゲート電極となるノンドープのポリシリコン膜5aを堆積する。そして、フォトリソグラフィー工程とイオン注入工程とにより、ノンドープポリシリコン膜5aのうち、PMISFET形成領域に位置する部分にはボロン(B)を、NMISFET形成領域に位置する部分には砒素(As)をそれぞれ導入する。さらに、ポリシリコン膜5aの上に、TiN(窒化チタン)などのバリア導体膜5bと、上部ゲート電極となるW(タングステン膜)などからなる金属膜5cと、シリコン窒化膜6とを順次堆積する。
【0027】
次に、図1(b)に示す工程で、フォトリソグラフィー工程とドライエッチング工程とにより、シリコン窒化膜6,金属膜5c,バリア導体膜5b,ポリシリコン膜5a及びシリコン酸化膜4をパターニングして、MISFETのゲート絶縁膜13,ゲート電極15及びゲート上保護膜14を形成する。さらに、フォトリソグラフィー工程及びイオン注入工程により、シリサイド形成領域Rsc及び非シリサイド形成領域Rnsの双方において、フォトレジストマスクとゲート電極15とをマスクとして、NMISFET形成領域に位置する部分には砒素イオン(As+ )を、PMISFET形成領域に位置する部分にはボロンイオン(B+ )をそれぞれ注入して、ゲート電極に対して自己整合的にエクステンション領域10を形成する。
【0028】
次に、図1(c)に示す工程で、基板上に、CVD酸化膜を堆積した後、異方性エッチングによりエッチバックして、ゲート絶縁膜13,ゲート電極15及びゲート上保護膜14の側面上に酸化膜サイドウォール16を形成する。さらに、フォトリソグラフィー工程及びイオン注入工程により、シリサイド形成領域Rsc及び非シリサイド形成領域Rnsの双方において、フォトレジストマスクとゲート電極15及び酸化膜サイドウォール16とをマスクとして、NMISFET形成領域に位置する部分には砒素イオン(As+ )を、PMISFET形成領域に位置する部分にはボロンイオン(B+ )をそれぞれ注入して、エクステンション領域10の外側に高濃度ソース・ドレイン領域11を形成する。
【0029】
次に、図2(a)に示す工程で、基板上に、酸素雰囲気中でプラズマを用いた酸化処理、つまりフォトレジスト膜を除去するためのアッシングと同じ処理により、露出しているシリコン層の表面部を酸化して、厚みが約5nmのアッシング酸化膜17を形成し、さらに、基板上に、常圧CVD法により厚みが約50nmのCVD酸化膜を堆積する。その結果、シリサイド形成領域Rsc及び非シリサイド形成領域Rnsの高濃度ソース・ドレイン領域11の上には、アッシング酸化膜17とCVD酸化膜とからなる2層膜が形成される。
【0030】
次に、CVD酸化膜の上に非シリサイド領域Rnsを覆いシリサイド形成領域Rscを開口したフォトレジスト膜9を形成する。続いて、フォトレジスト膜9をマスクとする気相フッ酸処理により、アッシング酸化膜17は残したままでCVD酸化膜のうちシリサイド形成領域Rscに位置する部分のみを選択的に除去し、非シリサイド領域Rnsを覆う反応防止用酸化膜18を形成する。このとき、高濃度ソース・ドレイン領域11の上には、アッシング酸化膜17が残っており、アッシング酸化膜17の表面は親水状態で洗浄,乾燥されるので、高濃度ソース・ドレイン領域11の上におけるシミの発生を抑制することができる。なお、気相フッ酸処理によるアッシング酸化膜17とCVD酸化膜からなる反応防止用酸化膜18とのエッチング選択比は100以上あるので、選択エッチにおける時間マージンを十分に確保することができる。
【0031】
次に、図2(b)に示す工程で、フォトレジスト膜9をプラズマアッシング及びTMAH液(水酸化テトラメチルアンモニウム液)によって除去する。TMAH液による洗浄によると、硫酸過水液及びアンモニア過水液を用いたときのごとくポリメタルを溶解することなく、灰化したレジスト残渣を除去することが可能である。したがって、本実施形態のようなゲート上保護膜14が設けられていない場合でも、不具合は生じない。
【0032】
次に、図2(c)に示す工程で、DHF液(H2 O:50%HF=500:1)を用いたエッチングにより、シリサイド形成領域Rscにおいてアッシング酸化膜17を除去し、IPA液による乾燥処理により、高濃度ソース・ドレイン領域11の表面を清浄にした後、基板上に、コバルト膜(Co膜)やチタン膜(Ti膜)などの金属膜を堆積する。そして、N2 雰囲気中で熱処理を施し、CoとSiとを反応させて、高濃度ソース・ドレイン領域11の上部にシリサイド層12を形成する。
【0033】
本実施形態の製造方法によると、図2(a)に示す工程で、高濃度ソース・ドレイン領域11の表面上にアッシング酸化膜17を形成し、その上に、反応防止用酸化膜18となるCVD酸化膜を形成していて、高濃度ソース・ドレイン領域11の上にはアッシング酸化膜17とCVD酸化膜との積層膜を形成している。そして、フォトレジスト膜9をマスクとする気相フッ酸処理により、アッシング酸化膜17は残したままでCVD酸化膜のうちシリサイド形成領域Rscに位置する部分のみを選択的に除去することにより、反応防止用酸化膜18を形成しているので、高濃度ソース・ドレイン領域11の上には、アッシング酸化膜17が残っている。したがって、その後、洗浄,乾燥工程が行なわれても、アッシング酸化膜17の表面が親水状態で洗浄,乾燥される。したがって、その後、シリサイド形成領域Rscにおいてアッシング酸化膜17を除去してから、シミのない高濃度ソース・ドレイン領域11の上に、シミによる不完全なシリサイド化部分などのほとんどない、適正なシリサイド層12を形成することができる。
【0034】
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図3(a)〜(c)を参照しながら説明する。図3(a)〜(c)は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0035】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、図1(a)〜(c)に示す工程を行なう。
【0036】
その後、図3(a)に示す工程で、基板上に、常圧CVD法により厚みが約50nmのCVD酸化膜を堆積する。次に、CVD酸化膜の上に非シリサイド領域Rnsを覆いシリサイド形成領域Rscを開口したフォトレジスト膜9を形成する。続いて、フォトレジスト膜9をマスクとするフッ酸処理により、CVD酸化膜のうちシリサイド形成領域Rscに位置する部分のみを選択的に除去し、非シリサイド領域Rnsを覆う反応防止用酸化膜18を形成する。さらに、水洗した後、O3 水(オゾン水)又は過酸化水素水(H22 )により洗浄する。フッ酸処理からO3 水処理(又は過酸化水素水処理)までは、同一のスピンエッチ装置内で連続に行なう。
【0037】
このとき、O3 水処理(又は過酸化水素水処理)を行なうことにより、高濃度ソース・ドレイン領域11の上には、厚みが約1nmの薬液酸化膜19が形成される。この薬液酸化膜19の表面は親水状態で洗浄,乾燥されるので、高濃度ソース・ドレイン領域11の上におけるシミの発生を抑制することができる。
【0038】
次に、図3(b)に示す工程で、フォトレジスト膜9をプラズマアッシング及びTMAH液によって除去する。TMAH液による洗浄によると、硫酸過水液及びアンモニア過水液を用いたときのごとくポリメタルを溶解することなく、灰化したレジスト残渣を除去することが可能である。したがって、本実施形態のようなゲート上保護膜14が設けられていない場合でも、不具合は生じない。
【0039】
次に、図3(c)に示す工程で、DHF液(H2 O:50%HF=500:1)を用いたエッチングにより、シリサイド形成領域Rscにおいて薬液酸化膜19を除去し、IPA液による乾燥処理により、高濃度ソース・ドレイン領域11の表面を清浄にした後、基板上に、コバルト膜(Co膜)やチタン膜(Ti膜)などの金属膜を堆積する。そして、N2 雰囲気中で熱処理を施し、CoとSiとを反応させて、高濃度ソース・ドレイン領域11の上部にシリサイド層12を形成する。
【0040】
本実施形態の製造方法によると、図3(a)に示す工程で、CVD酸化膜のうちシリサイド形成領域Rscに位置する部分のみを選択的に除去した後、同一のスピンエッチ装置内で、連続的にO3 水処理(又は過酸化水素水処理)を行なって、高濃度ソース・ドレイン領域11の上に薬液酸化膜19を形成しているので、その間に高濃度ソース・ドレイン領域11の上にはシミが発生することがない。さらに、その後の工程で、洗浄,乾燥工程が行なわれても、この薬液酸化膜19の表面は親水状態で洗浄,乾燥されるので、高濃度ソース・ドレイン領域11の上におけるシミの発生を抑制することができる。したがって、その後、シリサイド形成領域Rscにおいて薬液酸化膜19を除去してから、シミのない高濃度ソース・ドレイン領域11の上に、シミによる不完全なシリサイド化部分などのほとんどない、適正なシリサイド層12を形成することができる。
【0041】
なお、上記各実施形態では、ソース・ドレイン領域11のみにシリサイド層12を設けたが、上部ゲート電極を金属膜5cではなくシリサイド膜により構成してもよい。その場合、ゲート上保護膜14は設けずに、下部ゲート電極を構成するポリシリコン膜5aの上部をソース・ドレイン領域11のシリサイド化工程と同時にシリサイド化してもよいし、ソース・ドレイン領域11のシリサイド化工程とは別の時点でポリシリコン膜5aの上部をシリサイド化する工程を行なってから、このポリサイド膜をパターニングして上部ゲート電極と下部ゲート電極とからなるゲート電極を形成してもよい。
【0042】
さらに、本発明のシミ防止用酸化膜であるアッシング酸化膜17や薬液酸化膜19の形成工程は、ソース・ドレイン領域11の上にシリサイド層12を形成する場合に限定されるものではなく、例えばウェル注入のマスクとなるフォトレジスト膜や、デュアルゲート形成のためのイオン注入のマスクとなるフォトレジスト膜の形成前あるいは形成後の処理に応用することができる。
【0043】
また、上記各実施形態においては、配線層を形成するための工程については説明及び図示を省略したが、層間絶縁膜を形成した後に、コンタクトをゲート電極に対してセルフアラインに形成するいわゆるSAC構造を採ることができる。いずれの実施形態においても、シリコン窒化膜からなるゲート上保護膜14と、酸化膜サイドウォール16とが設けられているからである。
【0044】
なお、上記各実施形態においては、いずれもLDD領域10と高濃度ソース・ドレイン領域11とを有するいわゆるLDD構造のMISFETについて説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、単一のソース・ドレイン領域を有する半導体装置についても適用しうる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、フォトレジスト膜の除去後に行うエッチング・洗浄などの処理の際に、基板上にシミが発生することを防止することができるので、半導体装置の製造方法に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造工程のうち高濃度ソース・ドレイン領域を形成するまでの工程を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造工程のうちCVD酸化膜をパターニングして反応防止用膜を形成し、さらに、シミ防止用酸化膜を形成してからシリサイド層を形成するまでの工程を示す断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態における半導体装置の製造工程のうちCVD酸化膜をパターニングして反応防止用膜を形成し、さらに、シミ防止用酸化膜を形成してからシリサイド層を形成するまでの工程を示す断面図である。
【図4】従来の半導体装置の製造工程のうち高濃度ソース・ドレイン領域を形成するまでの工程を示す断面図である。
【図5】従来の半導体装置の製造工程のうちCVD酸化膜をパターニングして反応防止用膜を形成してからシリサイド層を形成するまでの工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 Si基板
2 シャロートレンチ分離
3a Nウェル
3b Pウェル
3c ウェル
4 シリコン酸化膜
5a ポリシリコン膜
5b バリア導体膜
5c 金属膜
6 シリコン窒化膜
9 フォトレジスト膜
10 エクステンション領域
11 高濃度ソース・ドレイン領域
12 シリサイド層
13 ゲート絶縁膜
14 ゲート上保護膜
15 ゲート電極
16 酸化膜サイドウォール
17 アッシング酸化膜
18 反応防止用酸化膜
19 薬液酸化膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層を有する基板上に、被覆絶縁膜を形成する工程(a)と、
上記被覆絶縁膜の上に、一部を覆い上記半導体層の上方を開口したフォトレジスト膜を形成する工程(b)と、
上記フォトレジスト膜をマスクとして、上記被覆絶縁膜をウエットエッチングする工程(c)と、
上記工程(c)と連続して、酸化性水溶液による処理により、露出している上記半導体層の表面部にシミ防止用酸化膜となる薬液酸化膜を形成する工程(d)と、
アッシング及び洗浄により上記フォトレジスト膜を除去した後、上記シミ防止用酸化膜を除去する工程(e)と
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
上記工程(d)では、オゾン水処理又は過酸化水素水処理により、上記薬液酸化膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
上記工程(e)の後、上記半導体層の上部をシリサイド化する工程をさらに含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の半導体装置の製造方法において、
上記半導体層は、基板上のシリサイド形成領域のMISFETのソース・ドレイン領域であり、
上記工程(c)では、上記フォトレジスト膜によって覆われる上記一部は基板上の非シリサイド形成領域であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法において、
上記半導体層は、ポリメタルゲート構造又はメタルゲート構造を有するMISFETのソース・ドレイン領域であり、
上記工程(e)では、プラズマによるアッシングと水酸化テトラメチルアンモニウム液による洗浄とを行なって、上記フォトレジスト膜を除去することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−121102(P2006−121102A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350462(P2005−350462)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【分割の表示】特願2000−276497(P2000−276497)の分割
【原出願日】平成12年9月12日(2000.9.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】