説明

半導体装置の製造方法

【目的】 p−lowk膜上にバリアメタルを連続に形成することを目的とする。
【構成】 本発明の半導体装置の製造方法は、基体上に、表面にメチル(CH)基が結合している絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程(S102〜S108)と、前記絶縁膜表面に、イミド系の高融点金属化合物を原料として、バリアメタル膜を形成するバリアメタル膜形成工程(114)と、を備えたことを特徴とする。そして、前記バリアメタル膜形成工程において、原子層気相成長法によりバリアメタル膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に係り、特に、Cu配線を有するULSI(Ultra large scale integrated
circuit)デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低抵抗で高いエレクトロマイグレーション(EM)耐性を有するCu配線は、高集積化し微細化されたLSI配線用の高信頼性材料として期待されている。
【0003】
特に、最近はLSIの高速性能化を達成するために、配線技術を従来のアルミ(Al)合金から低抵抗のCu或いはCu合金(以下、まとめてCuと称する。)に代える動きが進んでいる。Cuは、Al合金配線の形成において頻繁に用いられたドライエッチング法による微細加工が困難であるので、溝加工が施された絶縁膜上にCu膜を堆積し、溝内に埋め込まれた部分以外のCu膜を化学機械研磨(CMP)により除去して埋め込み配線を形成する、いわゆるダマシン(damascene)法が主に採用されている。Cu膜はスパッタ法などで薄いシード層を形成した後に電解めっき法により数100nm程度の厚さの積層膜を形成することが一般的である。
【0004】
さらに、最近は層間絶縁膜として比誘電率の低い低誘電率(low−k)膜を用いることが検討されている。すなわち、比誘電率kが、約4.2のシリコン酸化膜(SiO)膜から比誘電率kが例えば3.5以下のlow−k膜を用いることにより、配線間の寄生容量を低減することが試みられている。このようなlow−k膜とCu配線を組み合わせた多層配線構造を有する半導体装置の製造方法は次のようなものである。
【0005】
図19は、従来のlow−k膜とCu配線を組み合わせた多層配線構造を有する半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図19では、デバイス部分等の形成方法は省略している。
図19(a)において、シリコン基板による基体200上にCVD(化学気層成長)等の方法により第1の絶縁膜221を成膜する。
図19(b)において、フォトリソグラフィ工程及びエッチング工程により、Cu金属配線或いはCuコンタクトプラグを形成するための溝構造(開口部H)を第1の絶縁膜221に形成する。
図19(c)において、第1の絶縁膜221上にバリアメタル膜240、Cuシード膜及びCu膜260をかかる順序で形成して、150℃から400℃の温度で約30分間アニール処理する。
図19(d)において、Cu膜260とバリアメタル膜240をCMPにより除去し、平坦化を行なうことにより、溝である開口部HにCu配線を形成する。
図19(e)において、前記Cu膜260表面に還元性プラズマ処理を施した後に第2の絶縁膜281を成膜する。
さらに、多層Cu配線を形成する場合は、これらの工程を繰り返して積層していくのが一般的である。ここで、第1の絶縁膜221と第2の絶縁膜281の大半がlow−k膜となる。
【0006】
次世代デバイスにおいては層間絶縁膜として低誘電率膜、特に誘電率を下げるために、空孔を有する低誘電率膜の使用が検討されている。言い換えれば、比誘電率kが2.5以下のlow−k膜材料の開発も進められており、これらは材料中に空孔が入ったポーラス材料となっているものが多い。今後さらにCu配線の微細化が進むにつれて、Cuに比べて高抵抗であるバリアメタルの薄膜化は必須となってくる。極薄膜のバリアメタルを成膜するために、検討されている手法として、原子層気相成長(ALD:Atomic Layer Deposition)法がある(例えば、非特許文献1,2参照)。この手法は原料ガスを交互に供給し、原子層レベルでの成膜を行う手法である。
【0007】
図20は、ALD法によるバリアメタルの成膜例を示すガスの供給フロー図である。
まず、タンタル(Ta)原料の供給を行う。例えば、塩化タンタル(TaCl)を用いて説明する。この時、セルフリミッティング効果により、ある一定量以上は吸着しない。次にアルゴン(Ar)によりパージを行う。つづいて、アンモニア(NH)の供給を行うことにより、バリアメタルとしての窒化タンタル(TaN)を形成する。最後にArによりパージを行う。この一連の作業を1サイクルとして、必要な膜厚分サイクルを繰り返すことで成膜を行う。
図21は、ALD法において、TaN膜が形成される様子を説明するための概念図である。
図21(a)において、TaR20(Ta化合物)を供給することにより、基体10にTaR20(Ta化合物)が吸着する。また、基体10の周辺には、吸着していないTaR20が浮遊する。
図21(b)において、Arを供給することにより、浮遊するTaR20が置換(パージ)される。
図21(c)において、NHを供給することにより基体10に吸着されたTaR20を還元してTaN膜22が形成される。
【0008】
その他、low−k膜の一例としてのメチルシルセスキオキサン(MSQ)膜に物理的気相成長(PVD)法によりバリアメタルを成膜する際に、密着性が悪くバリアメタルがMSQ膜から剥がれることを防止するため、バリアメタルのMSQ膜への密着性を向上させることを目的として、バリアメタルを成膜する前にヘリウム(He)ガスを用いたプラズマ処理を行なうとする技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、シリコン酸化膜上に形成するエッチングの際のハードマスクとしてのSiCN絶縁膜をアニール処理によりN−H結合の少ない膜として形成するとする技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−309170号公報
【特許文献2】特開2003−179054号公報
【非特許文献1】“Atomic layer deposition of metal andnitride thin films: Current research efforts and applications for semiconductordevice processing" ,J. Vac. Sci. Technol. B21(6), 2003, p2231-2261
【非特許文献2】“Atomiclayer deposition for nanoscale Cu metallization" ,AdvancedMetallization Conference 2003 Conference Proceedings AMC XIX 2004 MaterialsResearch Society p713-722
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図22は、多孔質低誘電率(p−lowk)膜上にALD法を用いてバリアメタル成膜を行った場合の成膜状況を説明するための図である。
多孔質低誘電率(p−lowk)膜上にALD法を用いてバリアメタル成膜を行った場合、初期段階において不連続な膜になるといった問題があった。特に、Si−CH結合を有する原料ガスを用いて化学気相成長(CVD)法により成膜した炭酸化シリコン(SiOC)で構成されるp−lowk膜を用いた場合にこの傾向が顕著である。
【0010】
図23は、p−lowk膜上にALD法を用いてバリアメタル成膜を行った場合の様子を説明するための図である。
p−lowk膜上にALD法を用いてバリアメタル成膜を行った場合に初期段階において不連続な膜になる原因としては、p−lowk膜上に残留しているメチル(CH)基がALD成膜時のメタル原料の吸着を妨げているためと考えられる。
【0011】
図24は、バリアメタル膜の下地膜の形成方法とALD法を用いたバリアメタル成膜との関係を示す図である。
図24(b)に示す300mmのシリコンウェハ上の各ポイントにおいてTaN膜を5nm成膜した結果を測定した。その結果を図24(a)に示している。
図24(a)に示すように、SOD(spin on dielectic coating)法を用いて形成したp−lowk膜としての多孔質SiOC(p−MSQ)膜上に、ALD法を用いてバリアメタル成膜を行なった場合や、シリコン酸化膜(SiO膜)上に、ALD法を用いてバリアメタル成膜を行なった場合に比べ、CVD法を用いて形成したp−lowk膜としての多孔質SiOC(p−SiOC)膜上に、ALD法を用いてバリアメタル成膜を行なった場合、成膜されたバリアメタル膜が薄くなったことがわかる。SOD法では、Si−CH結合を有する原料ガスを塗布後、加熱(例えば400℃)するためメチル(CH)基が脱離し、p−lowk膜上に残留していない、或いは少なくなっていると考えられる。すなわち、特に、Si−CH結合を有する原料ガスを用いてCVD法により成膜したSiOCで構成されるp−lowk膜を用いた場合に、成膜しにくい傾向が顕著であることがわかる。
【0012】
図25は、バリアメタル膜の下地膜の形成方法とPVD法を用いたバリアメタル成膜との関係を示す図である。
図25(b)に示す300mmシリコンウェハ上の各ポイントにおいてTaN膜を5nm成膜した結果を測定した。その結果を図25(a)に示している。
図25(a)に示すように、SOD法を用いて形成したp−lowk膜としての多孔質SiOC(p−MSQ)膜上に、PVD法を用いてバリアメタル成膜を行った場合や、シリコン酸化膜(SiO膜)上に、PVD法を用いてバリアメタル成膜を行った場合と比べても、CVD法を用いて形成したp−lowk膜としての多孔質SiOC(p−SiOC)膜上に、PVD法を用いてバリアメタル成膜を行った場合に、成膜されたバリアメタル膜厚に違いがなかったことがわかる。
【0013】
前記特許文献1では、PVD法を用いたバリアメタル成膜を行なう技術が開示されているが、PVD法を用いたバリアメタル成膜では、バリアメタル膜の下地膜の形成方法によらず想定する膜厚を確保できることがわかる。PVD法では、スパッタするプラズマエネルギーが大きいためメチル(CH)基を飛ばしてTaN膜を成膜することができ、成膜レートが悪くならないと考えられる。
一方、ALD法を用いたバリアメタル成膜では、PVD法のようなプラズマエネルギーが存在しないためメチル(CH)基を飛ばすことができない。よって、ALD法を用いたバリアメタル成膜においては、PVD法を用いた場合とは異なる新たな問題として成膜しにくいという問題点が生じる。そして、上述したように、特に、Si−CH結合を有する原料ガスを用いてCVD法により成膜したSiOCで構成されるp−lowk膜を用いた場合に、成膜しにくい問題点が生じる。
【0014】
図26は、半導体装置の断面を示す図である。
図26では、図19の下層配線層の上にヴィア層と上層配線層とを形成した例を示している。第1の絶縁膜221と同様、ヴィア層の層間絶縁膜となる第2の絶縁膜281及び上層配線層の層間絶縁膜となる第3の絶縁膜286の大半がlow−k膜となる。ヴィア及び上層配線にも下層配線同様バリアメタル膜240が形成される。
図26では、Si−CH結合を有する原料ガスを用いてCVD法により成膜したSiOCで構成されるp−lowk膜上にALD法を用いてバリアメタル成膜を行ない、その後、Cu配線を形成した様子を示している。上述したように、バリアメタル成膜が不連続となるため、Cuシード層及びCuめっき層で構成される、下層配線となるCu膜260において、ボイド400が、ヴィアとなるCu262において、ボイド402が、上層配線となるCu膜264において、ボイド404が生じてしまう。
【0015】
以上のように、初期段階でバリアメタルが不連続になった場合、途切れた箇所からのCuの拡散が懸念される上、さらに、その後のシード成膜およびめっき成膜の出来にも影響を与えてしまうといった問題があった。
【0016】
本発明は、上述した問題点を克服し、p−lowk膜上にバリアメタルを連続に形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の半導体装置の製造方法は、
基体上に、表面にメチル(CH)基が結合している絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記絶縁膜表面に、イミド系の高融点金属化合物を原料として、バリアメタル膜を形成するバリアメタル膜形成工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0018】
表面にメチル(CH)基が結合している絶縁膜表面に、イミド系の高融点金属化合物を原料として、バリアメタル膜を形成することにより、絶縁膜表面のメチル(CH)基をイミド系の高融点金属化合物によって還元することができる。よって、前記絶縁膜表面に、バリアメタル原料を連続して吸着させることができる。
【0019】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、
基体上に、表面にメチル(CH)基が結合している絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記絶縁膜に開口部を形成する開口部形成工程と、
前記開口部内の表面に、イミド系の高融点金属化合物を原料として、バリアメタル膜を形成するバリアメタル膜形成工程と、
前記バリアメタル膜が形成された前記開口部に導電性材料を堆積させる導電性材料堆積工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0020】
表面にメチル(CH)基が結合している前記絶縁膜に開口部を形成することにより、開口部内の表面にもメチル(CH)基が結合している。かかる開口部に配線材料となる導電性材料の拡散を防止するため、バリアメタル膜を形成する場合において、イミド系の高融点金属化合物を原料としてバリアメタル膜を形成することにより、開口部内の表面のメチル(CH)基をイミド系の高融点金属化合物によって還元することができる。
【0021】
特に、本発明における前記バリアメタル膜形成工程において、原子層気相成長法によりバリアメタル膜を形成する場合において有効である。
【0022】
ALD法によりバリアメタル膜を形成することにより、前記絶縁膜表面にメチル(CH)基が無い場合には、PVD法を用いる場合より被覆率を良くすることができる。しかし、上述したように、ALD法を用いたバリアメタル成膜では、PVD法のようなプラズマエネルギーが存在しないためメチル(CH)基を飛ばすことができない。或いは、メチル(CH)基を飛ばしにくい。そのため成膜しにくい。そこで、ALD法を用いたバリアメタル成膜においてイミド系の高融点金属化合物を原料とする本発明を適用することによりメチル(CH)基を還元し、除去することができる。メチル(CH)基を還元し、除去することができるので、前記絶縁膜表面にメチル(CH)基が無くなった前記絶縁膜表面にバリアメタル原料を連続して吸着させ、被覆率の良いバリアメタル膜を形成することができる。
【0023】
前記バリアメタル膜形成工程において、前記イミド系の高融点金属化合物を初期原料として、バリアメタル膜を形成することを特徴とする。
【0024】
上述したように、ALD法によりバリアメタル膜を形成することにより、メチル(CH)基を飛ばしにくい。ここで、後述するように、前記絶縁膜表面にメチル(CH)基が存在する前記絶縁膜表面にALD法によりバリアメタル膜を形成する場合に、表面にメチル(CH)基が存在するため、バリアメタル膜が当初、成膜されないサイクルが存在する。よって、成膜が開始されるまでに時間(インキュベーションタイム)がかかる。
そこで、ALD法を用いたバリアメタル成膜においてイミド系の高融点金属化合物を当初原料とすることによりメチル(CH)基を当初より還元し、除去することができる。当初よりメチル(CH)基を還元し、除去することができるので、インキュベーションタイムなく、前記絶縁膜表面にメチル(CH)基が無くなった前記絶縁膜表面に当初よりバリアメタル原料を連続して吸着させ、被覆率の良いバリアメタル膜を形成することができる。そして、その後、別のバリアメタル原料に代えてさらにバリアメタル膜を形成してもよい。
【0025】
そして、前記バリアメタル膜形成工程において、前記イミド系の高融点金属化合物として、ターシャリーアミルイミドトリス(ジメチルアミド)タンタル(Ta[NC(CH][N(CH)と、ターシャリーアミルイミドジ(ジメチルアミド)チタン(Ti[NC(CH][N(CH)と、ターシャリーアミルイミドジ(ジメチルアミド)ジルコニウム(Zr[NC(CH][N(CH)とのうち、少なくとも1つを用いると特に有効である。
【0026】
そして、本発明における前記絶縁膜形成工程において、メチル(CH)基を有する有機物質原料を用いて化学気相成長法(CVD)により前記絶縁膜を形成する場合において特に有効である。
【0027】
上述したように、CH基を有する有機物質原料を用いてCVDにより前記絶縁膜を形成する場合に、前記絶縁膜表面にCH基が残ってしまう。そのため、バリアメタル膜が不連続になってしまう。よって、本発明を適用することによりCH基を還元し、除去することができるので、バリアメタル膜の不連続性を解消することができる。
【0028】
さらに、前記絶縁膜形成工程において、前記絶縁膜として、多孔質絶縁膜を形成する場合において特に有効である。
【0029】
前記絶縁膜として、多孔質絶縁膜を形成する場合に、メチル(CH)基を有する有機物質原料を用いるため、前記絶縁膜表面にCH基が残ってしまう。そのため、バリアメタル膜が不連続になってしまう。よって、本発明を適用することによりCH基を還元し、飛ばすことができる
【0030】
そして、前記絶縁膜形成工程において、前記多孔質絶縁膜として、炭酸化シリコン(SiOC)膜と酸窒化シリコン(SiON)膜とのいずれかを形成する場合において特に有効である。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明によれば、ALD成膜時のメタル原料を連続して吸着させることができる。ALD成膜時のメタル原料を連続して吸着させることができるので、バリアメタル膜を連続して形成することができる。バリアメタル膜を連続して形成することができるので、成膜レートを上げることができる。さらに、バリアメタル膜を連続して形成することができるので、前記多孔質絶縁膜内への導電性材料(特に、Cu)拡散を防止することができる。さらに、シード層形成やめっき形成されたCu配線にボイドを発生させないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における半導体装置の製造方法の要部を表すフローチャートである。
図1において、本実施の形態では、下層配線層用の絶縁膜形成工程として、SiC膜を形成するSiC膜形成工程(S102)、多孔質の絶縁性材料を用いたp−lowk膜を形成するp−lowk膜形成工程(S104)、p−lowk膜表面をプラズマ処理するヘリウム(He)プラズマ処理工程(S106)、SiO膜を形成するSiO膜形成工程(S108)と、開口部を形成する開口部形成工程(S110)と、バリアメタル膜形成工程(S114)と、下層配線形成工程となる導電性材料を堆積させる導電性材料堆積工程として、シード膜形成工程(S116)、めっき工程(S118)と、平坦化工程(S120)という一連の工程を実施する。多層配線化の製造方法は後述する。
【0033】
図2は、実施の形態1における半導体装置の製造方法の工程を表す工程断面図である。
図2では、まず、図1におけるバリアメタル形成前の半導体装置の製造方法の要部工程の一例として、SiC膜形成工程から開口部形成工程までについて説明する。それ以降の工程は後述する。
【0034】
図2(a)において、SiC膜形成工程として、基体200の上に、CVD法によって、SiCを用いた膜厚50nmの下地炭化シリコン(SiC)膜を堆積し、SiC膜212を形成する。ここでは、CVD法によって成膜しているが、その他の方法を用いても構わない。SiC膜212は、拡散防止膜としての機能を有する。また、SiC膜212は、エッチングストッパとしての機能も有する。SiC膜を生成するのは難しいためSiC膜の代わりに炭酸化シリコン(SiOC)膜を用いても構わない。或いは、炭窒化シリコン(SiCN)膜、窒化シリコン(SiN)膜を用いることができる。基体200として、例えば、直径300ミリのシリコンウェハ等の基板を用いる。基体200には、金属配線またはコンタクトプラグ等、デバイス部分が形成されていても構わない。或いは、その他の層が形成されていても構わない。
【0035】
図2(b)において、ポーラスlow−k(p−lowk)膜形成工程として、基体200の上に形成された前記SiC絶縁膜形成工程により形成されたSiC膜212の上に多孔質の絶縁性材料を用いたp−lowk膜220を250nmの厚さで形成する。p−lowk膜220を形成することで、比誘電率kが3.5よりも低い層間絶縁膜を得ることができる。p−lowk膜220の材料としては、ここでは、例えば、多孔質のSiOCを用いる。また、その形成方法としては、Si−CH結合を有する原料ガスを用いて、減圧CVD装置を用いたCVD法により成膜する。例えば、Si−R(Rは有機基)、CO等の酸素源を用いて成膜すればよい。酸素(O)を成分に持つSi−R原料を用いても良い。成膜温度は、0〜400℃が望ましい。成膜圧力は、13.3Pa(0.1Torr)〜1.33×10Pa(10Torr)が望ましい。原料ガスや形成条件などを適宜調節することにより、所定の物性値を有する多孔質の絶縁膜が得られる。p−lowk膜は、多孔質のSiOC以外に、多孔質のSiONであってもよい。p−lowk膜220が形成された際に、表面にCH基が残存している膜であればよい。
【0036】
そして、Heプラズマ処理工程として、このp−lowk膜220表面をCVD装置内でヘリウム(He)プラズマ照射によって表面改質する。Heプラズマ照射によって表面が改質されることで、p−lowk膜220とp−lowk膜220上に形成する後述するキャップ膜としてのCVD−SiO膜222との接着性を改善することができる。ガス流量は、1.7Pa・m/s(1000sccm)、ガス圧力は1000Pa、高周波パワーは500W、低周波パワーは400W、温度は400℃とした。キャップCVD膜をp−lowk膜上に成膜する際は、p−lowk膜表面にプラズマ処理を施すことがキャップCVD膜との接着性を改善する上で有効である。プラズマガスの種類としてはアンモニア(NH)、亜酸化窒素(NO)、水素(H)、He、酸素(O)、シラン(SiH)、アルゴン(Ar)、窒素(N)などがあり、これらの中でもHeプラズマはp−lowk膜へのダメージが少ないために特に有効である。また、プラズマガスはこれらのガスを混合したものでも良い。例えば、Heガスは他のガスと混合して用いると効果的である。
【0037】
図2(c)において、SiO膜形成工程として、前記Heプラズマ処理を行った後、キャップ膜として、CVD法によってp−lowk膜220上にSiOを膜厚50nm堆積することで、SiO膜222を形成する。SiO膜222を形成することで、直接リソグラフィを行うことができないp−lowk膜220を保護し、p−lowk膜220にパターンを形成することができる。かかるキャップCVD膜は、SiO膜、SiC膜、SiOC膜、SiCN膜などがあるが、ダメージ低減の観点からはSiO膜が優れ、低誘電率化の観点からはSiOC膜が、耐圧向上の観点からはSiC膜やSiCN膜が優れている。さらに、SiO膜とSiC膜の積層膜、もしくはSiO膜とSiCO膜の積層膜、もしくはSiO膜とSiCN膜の積層膜を用いることができる。さらにキャップCVD膜の一部、もしくは全てが後述する平坦化工程においてCMPにより除去されても良い。キャップ膜を除去することで誘電率をさらに低減することができる。キャップ膜の厚さとしては10nmから150nmが良く、10nmから50nmが実効的な比誘電率を低減する上で効果的である。
【0038】
図2(d)において、開口部形成工程として、リソグラフィ工程とドライエッチング工程でダマシン配線を作製するための配線溝構造である開口部150をSiO膜222とp−lowk膜220と下地SiC膜212内に形成する。図示していないレジスト塗布工程、露光工程等のリソグラフィ工程を経てSiO膜222の上にレジスト膜が形成された基体200に対し、露出したSiO膜222とその下層に位置するp−lowk膜220を、下地SiC膜212をエッチングストッパとして異方性エッチング法により除去し、その後、下地SiC膜212をエッチングして開口部150を形成すればよい。異方性エッチング法を用いることで、基体200の表面に対し、略垂直に開口部150を形成することができる。例えば、一例として、反応性イオンエッチング法により開口部150を形成すればよい。
【0039】
ここで、図示していないが、Heプラズマ処理工程として、前記SiO膜222表面と前記開口部の表面、特に、開口部の形成により露になったp−lowk膜220表面をHeプラズマ雰囲気に晒すとさらによい。Heプラズマ処理は、行なわなくても構わないが、行なうとさらによい。ここでは、10s間、Heプラズマ雰囲気に晒す。ここで、p−lowk膜220は、Si−CH結合を有する有機物質原料ガスを用いて、減圧CVD装置を用いたCVD法により多孔質のSiOCを成膜するため、どうしても表面にメチル(CH)基が残留してしまう。Heプラズマ雰囲気に晒し、プラズマ環境下におくことで、後述するバリアメタル形成工程と合わせて、かかる有機物質であるCH基を除去することができる。プラズマ雰囲気は、Heのほかに、フロロカーボン(C)や、アンモニア(NH)を用いることが望ましい。
【0040】
図3は、実施の形態1における半導体装置の製造方法の工程を表す工程断面図である。
図3では、半導体装置の製造方法として、図1におけるバリアメタル形成工程から、それ以降の工程を経て下層配線形成を完了させる平坦化工程までの要部工程について説明する。
【0041】
図3(a)において、バリアメタル膜形成工程として、前記開口部形成工程により形成された開口部150及びSiO膜222表面にバリアメタル材料を用いたバリアメタル膜240を形成する。ここでは、バリアメタル膜として、窒化タンタル(TaN)膜を、ALD法を用いて成膜する。バリアメタル膜成膜のためのメタル原料として、イミド系の高融点金属化合物であるターシャリーアミルイミドトリス(ジメチルアミド)タンタル(Taimata(登録商標):Ta[NC(CH][N(CH)を用い、メタル原料と反応し、TaN膜を生成する反応種の一例である、前記メタル原料の還元ガスとして、アンモニア(NH)を用い、パージガスとして、水素(H)を用いる。パージガスとして、Hを用いることで、次の反応性を高めることができる。さらに、Hは純度を高めることができるので、成膜時の不純物濃度低減に適している。
【0042】
図4は、バリアメタル膜形成工程の要部を表すフローチャートである。
図4において、バリアメタル膜形成工程として、金属化合物供給工程の一例としてのTa[NC(CH][N(CHを供給するTa[NC(CH][N(CH供給工程(S402)と、H供給工程(S404)と、金属含有膜生成工程の一例としてのNH供給工程(S406)と、H供給工程(S408)という一連の工程を1サイクルとして繰り返す。そして、所望する厚さのTaN膜を形成した後、後述するように、導電性材料である銅(Cu)を物理的気相成長(PVD)法及びめっき法により堆積させ、Cu配線を形成する。
【0043】
図5は、ALD装置の概要構成を示す図である。
図5において、チャンバ600の内部にて、基体200上、さらに言えば基体上に前工程までの処理が施された基体10を所定の温度に制御された基板ホルダ(ウェハステージ)610の上に設置する。そして、チャンバ600の内部に上部からガスを供給する。また、真空ポンプ630によりチャンバ600の内部が所定の圧力になるように真空引きされる。
図5において、容器650に入った固体のTa[NC(CH][N(CHを50〜80℃に加熱して暖める。暖められ溶融したTa[NC(CH][N(CH内にキャリアガスとしてHガスを供給することで、Hと共にガス化したTa[NC(CH][N(CHを一種のバブリング法によりチャンバ600に供給することができる。基体10の温度は、350℃以下が望ましい。
【0044】
図6は、TaN膜形成工程における各ガスの供給フローを示す図である。
成膜温度300℃にて、Ta[NC(CH][N(CHを1s供給後、Hを1s供給してパージし、NHを1s供給し、Hを1s供給してパージするサイクルを1サイクルとして、100サイクルの供給を行ない、5nmのTaNの成膜を行なう。ここでは、Ta[NC(CH][N(CH、H、NHの各ガス量は、1.68Pa・m/s(1000sccm)、チャンバ600の内部の圧力を339Pa(3Torr)とした。ここで、ガス量は、Ta[NC(CH][N(CHについて、キャリアガスが0.17Pa・m/s(100sccm)〜1.68Pa・m/s(1000sccm)が望ましい。NHについて、1.68Pa・m/s(1000sccm)以上が望ましい。パージガスであるHについて、0.84Pa・m/s(500sccm)以上が望ましい。成膜圧力は、665Pa(5Torr)以下が望ましい。
【0045】
以上のように、金属化合物供給工程の一例として、基体上にTa[NC(CH][N(CHを供給することで、開口部150の内側に表れたp−lowk膜220の表面に残存するCH基を還元することができる。そして、金属含有膜生成工程として、前記CH基が還元され除去されたp−lowk膜220の表面に連続して吸着したTa含有分子をNHで還元することにより連続したTaN膜を生成する。かかるTa[NC(CH][N(CH供給工程とH供給工程とNH供給工程とを繰り返すことで、前記基体上に所望する膜厚のTaN膜を堆積させることができる。
【0046】
ここで、TaN膜のメタル原料として、Ta[NC(CH][N(CHと同様、イミド系の高融点金属化合物であるターシャリーアミルイミドジ(ジメチルアミド)チタン(Ti[NC(CH][N(CH)や、ターシャリーアミルイミドジ(ジメチルアミド)ジルコニウム(Zr[NC(CH][N(CH)を用いても構わない。
また、ALD法により形成されるバリアメタルとして、TaNの他、炭化窒化タンタル(TaCN)、窒化チタン(TiN)等の高融点金属の窒化膜或いは窒化炭素膜、或いは、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)単体であっても構わない。或いは、ジルコニウム(Zr)系のバリアメタル膜であっても構わない。或いは、これらの複数の材料による積層膜であっても構わない。例えば、Ti系のバリアメタル膜のメタル原料として、Ti[NC(CH][N(CHを用いる。Zr系のバリアメタル膜のメタル原料として、Zr[NC(CH][N(CHを用いる。
【0047】
また、メタル原料の還元ガスとして、ヒドラジン(HNNH)或いは、1−1ジメチルヒドラジンや1−2ジメチルヒドラジン等のヒドラジン化合物を用いても構わない。ヒドラジン或いはヒドラジン化合物を用いることによりNHより還元作用を強くすることができる。
【0048】
さらに、パージガスとして、アルゴン(Ar)や窒素(N)やHeを用いても構わない。Arを用いることで、安価でかつ扱い易くすることができる。
【0049】
図7は、ALD装置の他の概要構成例を示す図である。
図5における装置では、チャンバ600上部から基体10の大きさに関わらず、また、ガスの進行方向に関わらずガスを供給しているが、図7に示すように、基体10と平行する平板となるシャワーヘッド620から基体10全面に向けて均一にガスを供給するように構成するとなお良い。その他の構成は、図5と同様であるので省略する。
【0050】
図3(b)において、シード膜形成工程として、スパッタ等のPVD法により、次の工程である電解めっき工程のカソード極となるCu薄膜をシード膜250としてバリアメタル膜240が形成された開口部150内壁及び基体200表面に堆積(形成)させる。ここでは、シード膜250を膜厚100nm堆積させた。
【0051】
図3(c)において、めっき工程として、シード膜250をカソード極として、電解めっき等の電気化学成長によりCu膜260を開口部150及び基体200表面に堆積させる。ここでは、膜厚500nmのCu膜260を堆積させ、堆積させた後にアニール処理を250℃の温度で30分間行なう。
【0052】
図3(d)において、平坦化工程として、CMP法によってSiO膜222の表面に堆積された導電部としての配線層となるCu膜260、シード膜250、及びバリアメタル膜240を研磨除去することにより、平坦化し、図3(d)に表したような下層配線となる埋め込み構造を形成する。
【0053】
図8は、ALD法を用いたTaN膜厚とサイクル数との関係を示す図である。
図8に示すように、例えば、ペンタジメチルアミノタンタル(PDMAT:Pentakis DiMethylamino Tantalum;Ta[N((CH)をTa原料として用いて、ALD法を用いてTaN膜を成膜した場合、CVD法により形成されたp−lowk膜である多孔質SiOC膜上では、当初、成膜されないサイクルが存在することを見出した。TaClを用いた場合も同様である。同じCVD法により形成された多孔質でないlow−k膜であるSiOC膜上では、当初サイクルから成膜が始まる。また、SOD法を用いて形成したp−lowk膜としての多孔質SiOC(p−MSQ)膜上でも当初サイクルから成膜が始まる。ここで、ある所定の膜厚aでのCVD法による多孔質SiOC膜とCVD法による多孔質でないSiOC膜とSOD法による多孔質SiOC(p−MSQ)膜との断面を比較した。
【0054】
図9は、ALD法を用いて成膜したTaN膜厚の下地膜依存性を示す図である。
図9(a)には、CVD法による多孔質でないSiOC膜上にPDMATをTa原料としてALD法を用いてTaN膜を成膜した場合の断面図を示す。図9(b)には、SOD法による多孔質SiOC(p−MSQ)膜上にPDMATをTa原料としてALD法を用いてTaN膜を成膜した場合の断面図を示す。図9(c)には、CVD法による多孔質SiOC(p−SiOC)膜上にPDMATをTa原料としてALD法を用いてTaN膜を成膜した場合の断面図を示す。図9に示すように、CVD法による多孔質SiOC(p−SiOC)膜上にALD法を用いてPDMATをTa原料としてTaN膜を成膜した場合のみ、TaN膜が途中で途切れ、不連続膜となっているのがわかる。
【0055】
図10は、2つのTa原料によるALD法を用いたTaN膜厚とサイクル数との関係を示す比較図である。
CVD法による多孔質SiOC(p−SiOC)膜上に、Ta原料としてTaimata(登録商標)およびPDMATを用いた。成膜温度300℃にて、Ta原料(1s)→H(1s)→NH(1s)→H(1s)を1サイクルとして、20、40、100、200サイクルの供給を行った結果を示した。
図10に示すように、CVD法による多孔質SiOC(p−SiOC)膜上に、PDMATをTa原料として、ALD法によりTaN膜を成膜した場合、インキュベーションタイムが生じ、当初、成膜されないサイクルが存在するのに対し、CVD法による多孔質SiOC(p−SiOC)膜上に、Taimata(登録商標)をTa原料として、ALD法によりTaN膜を成膜した場合、インキュベーションタイムなく当初サイクルから成膜が始まる。すなわち、PDMATをTa原料として用いた場合は潜伏期間が20サイクル程度観察された。これに対して、Taimata(登録商標)をTa原料とした場合は、表面上に残留した−CH基を取り除くことができたため、成膜初期段階から原料ガスの表面吸着が可能となり、潜伏期間が無い結果が得られたと考えられる。ここではTa原料として同じ物を使用し続けたが、例えば、初期の5サイクルだけ−CH基除去効果のあるTaimataを使用し、その後はPDMATを使用しても同様な効果が得られる。
【0056】
図11は、2つのTa原料でのTaN膜厚の依存性を示す図である。
図11(b)では、CVD法による多孔質SiOC(p−SiOC)膜上に、PDMATをTa原料として、ALD法によりTaN膜を成膜した場合における100サイクル後の状態を示している。図11(a)では、CVD法による多孔質SiOC(p−SiOC)膜上に、Taimata(登録商標)をTa原料として、ALD法によりTaN膜を成膜した場合における100サイクル後の状態を示している。図11からもTaimata(登録商標)をTa原料として、ALD法によりTaN膜を成膜した場合の方が、成膜レートが高いことがわかる。
【0057】
以下、2つのTa原料でのTaN成膜のメカニズムについて説明する。
図12は、PDMATをTa原料とした場合のメカニズムについて説明するための図である。
図13は、Taimata(登録商標)をTa原料とした場合のメカニズムについて説明するための図である。
図12(a)に示すように、PDMATは、Taの5本の足に均等に化合物(ジメチルアミド(N((CH)基)が結合している。一方、図13(a)に示すように、Taimata(登録商標)は、Taの5本の足のうち、NC(CHが2重結合により結合されているため、残りの3本の足に化合物(ジメチルアミド(N(CH)基)が結合している。よって、不均等な結合をしている。よって、同じ温度で比較した場合、Taimata(登録商標)は、より強固な2重結合以外のN(CH基が、均等に結合しているPDMATよりも分解しやすい。かかる状態で、CH基が表面に残存するp−lowk膜上に供給された場合、図12(b)に示すように、PDMATでは、CH基を還元できないのに対し、図13(b)に示すように、Taimata(登録商標)では、CH基を還元し、飛ばしてしまう。よって、図12(c)に示すように、PDMATでは、Ta化合物の吸着が不連続であるのに対し、図13(c)に示すように、Taimata(登録商標)では、Ta化合物の吸着が連続となり、当初サイクルから成膜が始まる。
【0058】
多層配線化する場合には、さらに、以下の工程を行なう。
図14は、多層配線化する半導体装置の製造方法の要部を表すフローチャートである。
図14において、下層配線形成後、さらに、絶縁膜形成工程として、SiC膜形成工程(S126)、p−lowk膜形成工程(S128)、Heプラズマ処理工程(S130)、SiC膜形成工程(S132)、p−lowk膜形成工程(S134)、Heプラズマ処理工程(S136)、SiO膜形成工程(S138)と、開口部を形成する開口部形成工程(S140)と、バリアメタル膜形成工程(S144)と、ヴィアと上層配線とを形成するヴィア、上層配線形成工程となる導電性材料を堆積させる導電性材料堆積工程として、シード膜形成工程(S146)、めっき工程(S148)と、平坦化工程(S150)という一連の工程を実施する。
【0059】
図15は、図14における多層配線化する半導体装置の製造方法の一部の工程を表す工程断面図である。
図15では、さらに、絶縁膜形成工程として、SiC膜形成工程、low−k膜形成工程、Heプラズマ処理工程、SiC膜形成工程、low−k膜形成工程、Heプラズマ処理工程、SiO膜形成工程を示している。それ以降の工程は後述する。
【0060】
図15(a)において、次の層における絶縁膜形成工程の一部であるSiC膜形成工程として、還元性プラズマ処理した同じCVD装置内で400℃の温度で50nmの膜厚のSiC膜275を形成する。SiC膜275は拡散防止膜の働きがあり、このSiC膜275を形成することで、Cuの拡散を防止することができる。かかるCVD法で形成されるSiC膜275の他に、SiCN膜、SiCO膜、SiN膜、SiO膜を用いることができる。
【0061】
図15(b)において、low−k膜形成工程として、図2(b)で説明した工程と同様に、SiC膜275の上にSiC膜275よりも比誘電率の低い低誘電率膜である、多孔質の絶縁性材料を用いたp−lowk膜280を形成する。そして、同様に、Heプラズマ処理工程として、このp−lowk膜280表面をHeプラズマ照射によって表面改質する。
【0062】
図15(c)において、SiC膜形成工程として、前記Heプラズマ処理を行った後、キャップ膜として、CVD法によってp−lowk膜280上にSiC膜282を形成する。SiC膜282は、後述するデュアルダマシン法によるCu埋め込みのための溝及び孔をエッチングにより形成するためのエッチングストッパとすることができる。そして、low−k膜形成工程として、SiC膜282上にp−lowk膜285を形成する。そして、同様に、Heプラズマ処理工程として、このp−lowk膜285表面をCVD装置内でHeプラズマ照射によって表面改質する。そして、SiO膜形成工程として、図2(c)で説明した工程と同様、前記Heプラズマ処理を行った後、キャップ膜として、CVD法によってp−lowk膜285上にSiO膜290を形成する。
【0063】
図16は、図15に続く、多層配線化する半導体装置の製造方法の一部の工程を表す工程断面図である。
図16では、開口部を形成する開口部形成工程と、バリアメタル膜形成工程と、ヴィアと上層配線とを形成するヴィア、上層配線形成工程となる導電性材料を堆積させる導電性材料堆積工程として、シード膜形成工程とを示している。それ以降の工程は後述する。
【0064】
図16(a)において、開口部形成工程として、図2(d)で説明した工程と同様、リソグラフィ工程とドライエッチング工程でデュアルダマシン配線を作製するための配線溝構造である開口部152,154を、SiO膜290とp−lowk膜285とSiC膜282とp−lowk膜280とSiC膜275とに形成する。孔形成工程として開口部150に堆積した下層Cu膜260へと貫通する、ヴィア孔となる開口部152を形成し、溝形成工程として上層配線用の溝となる開口部154を形成する。その後、ドライエッチング洗浄液(例えば、EKC5920による5分間の室温洗浄)でヴィア底残渣を除去する。
そして、上述したように、図示していないが、Heプラズマ処理工程として、前記SiO膜290表面と前記開口部の表面、特に、開口部の形成により露になったp−lowk膜280,285表面をHeプラズマ雰囲気に晒すとさらによい。p−lowk膜285,280は、上述したように、Si−CH結合を有する有機物質原料ガスを用いて、減圧CVD装置を用いたCVD法により多孔質のSiOCを成膜するため、どうしても表面にメチル(CH)基が残留してしまう。かかるCH基が次工程のALD法において、CH基を還元するTaimata(登録商標)をTa原料として用いることで、Heプラズマ処理と合わせてかかる有機物質であるCH基を除去することができる。
【0065】
図16(b)において、バリアメタル膜形成工程として、図3(a)で説明した工程と同様、前記開口部形成工程により形成された開口部152,154及びSiO膜290表面にバリアメタル材料を用いたバリアメタル膜242をALD法により5nm形成する。その他は、図3(a)での説明と同様で構わないため省略する。
【0066】
図16(c)において、シード膜形成工程として、図3(b)で説明した工程と同様、スパッタ等の物理気相成長(PVD)法により、次の工程である電解めっき工程のカソード極となるCu薄膜をシード膜252としてバリアメタル膜242が形成された開口部152,154内壁、堀込部156及び基体200表面に堆積(形成)させる。ここでは、シードCu膜を膜厚100nm堆積させた。
【0067】
図17は、図16に続く、多層配線化する半導体装置の製造方法の一部の工程を表す工程断面図である。
図17では、さらに、めっき工程と、平坦化工程を示している。
【0068】
図17(a)において、めっき工程として、図3(c)で説明した工程と同様、シード膜252をカソード極として、電解めっき等の電気化学成長によりCu膜264を開口部152,154及び基体200表面に堆積させる。これによりCu膜264の一部に前記下層配線と前記上層配線と接続するヴィア262が形成される。ここでは、膜厚300nmのCu膜を堆積させた後にアニール処理を250℃の温度で30分間行なう。
【0069】
図17(b)において、平坦化工程として、図3(d)で説明した工程と同様、CMP法によってSiO膜290の表面に堆積された導電部としての配線層となるCu膜264、シード膜252、及びバリアメタル膜242を研磨除去することにより、平坦化し、図17(b)に表したような埋め込み構造を形成する。溝外部のCu膜とバリアメタル膜を除去して2層目のデュアルダマシンCu配線を形成する。
【0070】
図18は、従来例と本実施の形態との断面状態を説明するための図である。
ここでは、ALD成膜原料として、Taimata(登録商標)およびNHを用い、成膜温度300℃にて、Taimata(登録商標)(1s)→H(1s)→NH(1s)→H(1s)を1サイクルとして、100サイクルの供給を行った。ALD−TaN成膜前に、前処理として10s間NHプラズマ環境下にさらした。比較のために、従来例も準備した。バリアメタル成膜後、スパッタ法によりシードCuを100nm成膜した。その後、Cuめっき成膜を行なった。得られた試料のTEM観察を行った結果、従来法による試料にはCu膜内にボイドが観察された(図18(1))。これに対してTaimata(登録商標)を用いた試料についてはボイドの無いCuが成膜できた(図18(2))。
以上のように、Taimata(登録商標)をTa原料として用いることにより、表面上に残留していたCH基を取り除くことができたため、成膜初期段階から原料ガスの表面吸着が可能となり、バリアメタルの連続膜が形成されたと考えられる。その後のシードCuも連続膜となり、ボイドフリーのめっき成膜が可能となった。
【0071】
ここで、上記各実施の形態における配線層の材料として、Cu以外に、Cu−Sn合金、Cu−Ti合金、Cu−Al合金等の、半導体産業で用いられるCuを主成分とする材料を用いて同様の効果が得られる。
【0072】
なお、多層配線構造などを形成する場合には、各図において基体200は、下層の配線層と絶縁膜とが形成されたものである。
【0073】
以上、具体例を参照しつつ各実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0074】
例えば、各実施の形態で層間絶縁膜が形成された基体200は、図示しない各種の半導体素子あるいは構造を有するものとすることができる。また、半導体基板ではなく、層間絶縁膜と配線層とを有する配線構造の上に、さらに層間絶縁膜を形成してもよい。開口部も半導体基板が露出するように形成してもよいし、配線構造の上に形成してもよい。
【0075】
さらに、層間絶縁膜の膜厚や、開口部のサイズ、形状、数などについても、半導体集積回路や各種の半導体素子において必要とされるものを適宜選択して用いることができる。
【0076】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての半導体装置の製造方法は、本発明の範囲に包含される。
【0077】
また、説明の簡便化のために、半導体産業で通常用いられる手法、例えば、フォトリソグラフィプロセス、処理前後のクリーニング等は省略しているが、それらの手法が含まれることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施の形態1における半導体装置の製造方法の要部を表すフローチャートである。
【図2】実施の形態1における半導体装置の製造方法の工程を表す工程断面図である。
【図3】実施の形態1における半導体装置の製造方法の工程を表す工程断面図である。
【図4】バリアメタル膜形成工程の要部を表すフローチャートである。
【図5】ALD装置の概要構成を示す図である。
【図6】TaN膜形成工程における各ガスの供給フローを示す図である。
【図7】ALD装置の他の概要構成例を示す図である。
【図8】ALD法を用いたTaN膜厚とサイクル数との関係を示す図である。
【図9】ALD法を用いて成膜したTaN膜厚の下地膜依存性を示す図である。
【図10】2つのTa原料によるALD法を用いたTaN膜厚とサイクル数との関係を示す比較図である。
【図11】2つのTa原料でのTaN膜厚の依存性を示す図である。
【図12】PDMATをTa原料とした場合のメカニズムについて説明するための図である。
【図13】Taimata(登録商標)をTa原料とした場合のメカニズムについて説明するための図である。
【図14】多層配線化する半導体装置の製造方法の要部を表すフローチャートである。
【図15】図14における多層配線化する半導体装置の製造方法の一部の工程を表す工程断面図である。
【図16】図15に続く、多層配線化する半導体装置の製造方法の一部の工程を表す工程断面図である。
【図17】図16に続く、多層配線化する半導体装置の製造方法の一部の工程を表す工程断面図である。
【図18】従来例と本実施の形態との断面状態を説明するための図である。
【図19】従来のlow−k膜とCu配線を組み合わせた多層配線構造を有する半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図20】ALD法によるバリアメタルの成膜例を示すガスの供給フロー図である。
【図21】ALD法において、TaN膜が形成される様子を説明するための概念図である。
【図22】多孔質低誘電率(p−lowk)膜上にALD法を用いてバリアメタル成膜を行った場合の成膜状況を説明するための図である。
【図23】p−lowk膜上にALD法を用いてバリアメタル成膜を行った場合の様子を説明するための図である。
【図24】バリアメタル膜の下地膜の形成方法とALD法を用いたバリアメタル成膜との関係を示す図である。
【図25】バリアメタル膜の下地膜の形成方法とPVD法を用いたバリアメタル成膜との関係を示す図である。
【図26】半導体装置の断面を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
10,200 基体
20 TaR
22 TaN膜
150,152,154 開口部
212,275,282 SiC膜
220,280,285 p−lowk膜
221,281,286 絶縁膜
222,290 SiO
240,242 バリアメタル膜
250,252 シード膜
260,264 Cu膜
262 Cu
400,402,404 ボイド
600 チャンバ
610 基板ホルダ
620 シャワーヘッド
630 真空ポンプ
650 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に、表面にメチル(CH)基が結合している絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記絶縁膜表面に、イミド系の高融点金属化合物を原料として、バリアメタル膜を形成するバリアメタル膜形成工程と、
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
基体上に、表面にメチル(CH)基が結合している絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記絶縁膜に開口部を形成する開口部形成工程と、
前記開口部内の表面に、イミド系の高融点金属化合物を原料として、バリアメタル膜を形成するバリアメタル膜形成工程と、
前記バリアメタル膜が形成された前記開口部に導電性材料を堆積させる導電性材料堆積工程と、
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記バリアメタル膜形成工程において、原子層気相成長法によりバリアメタル膜を形成することを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記バリアメタル膜形成工程において、前記イミド系の高融点金属化合物を初期原料として、バリアメタル膜を形成することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記バリアメタル膜形成工程において、前記イミド系の高融点金属化合物として、ターシャリーアミルイミドトリス(ジメチルアミド)タンタル(Ta[NC(CH][N(CH)と、ターシャリーアミルイミドジ(ジメチルアミド)チタン(Ti[NC(CH][N(CH)と、ターシャリーアミルイミドジ(ジメチルアミド)ジルコニウム(Zr[NC(CH][N(CH)とのうち、少なくとも1つを用いたことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記絶縁膜形成工程において、メチル(CH)基を有する有機物質原料を用いて化学気相成長法(CVD)により前記絶縁膜を形成することを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図9】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−147895(P2006−147895A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336949(P2004−336949)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】