説明

半導体装置の製造方法

【課題】逆短チャネル効果を抑制し、かつトランジスタのしきい値電圧を低下させることが可能な半導体装置の製造方法を得ることを目的とする。
【解決手段】本発明の一実施形態における半導体装置の製造方法は、窒素が上面内に注入されたp型の半導体領域2を有する下地1を準備し、この下地1上にゲート絶縁膜5およびゲート電極6をこの順で積層して形成する。次に、ゲート電極6をマスクとして、p型の一対のポケット注入領域7および当該ポケット注入領域7の外方にn型の一対のソース・ドレイン領域10を下地1の上面内に形成する。次に、下地1上を被覆してゲート絶縁膜5下の下地1に応力を印加する応力膜11を積層する。次に、下地1に熱処理を行い前記ソース・ドレイン領域10を活性化した後、積層した応力膜11を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特にMOSトランジスタを有する半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より用いているシリコンからなるゲート電極を有するMOS(Metal Oxide semiconductor)トランジスタは、絶縁膜との界面におけるキャリア空乏化により、実効的容量が低下するという問題がある。このため、ゲートの空乏化を避けるため、メタルゲートトランジスタ構造が提案されている。
【0003】
しかし、フルシリサイド(FUSI:Fully Silicided)ゲートなどのメタルゲートを用いた場合、高温プロセスを経ると電極材質の仕事関数(WF:Work Function)がSiバンドギャップの中央付近にになるという問題がある。これにより、しきい値電圧(Vth)が高い値となり、高性能トランジスタを作る際の障害となっている。
【0004】
しきい値電圧が実用的レベルより高くなるという上記問題に対して、従来NMOSでは、基板に窒素注入などを行うことにより、しきい値電圧を低減していた。これは、ゲート絶縁膜中に分布した窒素がゲート絶縁膜中の酸素の一部と置換することにより、ゲート絶縁膜とシリコン基板の界面付近にドナー型の準位が発生して、当該界面付近が正に帯電するためと考えられる。上述した内容に関連する技術は、下記非特許文献1に開示されている。
【0005】
【非特許文献1】Y.Okayama et al、「Symp. on VLSI tech」、2006年、「Suppression effects of threshold voltage variation with NiFUSI gate electrodefor 45nm node and beyond LSTP and SRAM devices」、pp.118−119
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、基板へ窒素注入を行うことによりしきい値電圧(Vth)を低下させる場合、逆短チャネル効果(短チャネル効果が顕著になる前に、一旦しきい値電圧が増加する現象)が大きくなる。従って、逆短チャネル効果が大きくなった状態でTargetのゲート長(Lg)でしきい値電圧を合わせると、Lgが大きい領域ではしきい値電圧が高くなり過ぎることにより、回路動作マージンが減少してしまうという問題があった。
【0007】
この逆短チャネル特性が大きくなる原因としては、Lgが小さい領域のVthは、ドレインからの空乏層の張り出しを抑制するために行うPocket注入(ゲート電極に対して斜めからチャネル不純物と同じ型の不純物を注入する)の影響を大きく受けることにより、Lgが大きい領域と比べてVthが下がらないためである。
【0008】
そこで本発明はかかる問題を解決するためになされたものであり、逆短チャネル効果を抑制し、かつトランジスタのしきい値電圧を低下させることが可能な半導体装置の製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態における半導体装置の製造方法は、窒素が上面内に注入されたp型の半導体領域を有する下地を準備し、この下地上にゲート絶縁膜およびゲート電極をこの順で積層して形成する。次に、ゲート電極をマスクとして、p型の一対のポケット注入領域および当該ポケット注入領域の外方にn型の一対のソース・ドレイン領域を下地の上面内に形成する。次に、下地上を被覆してゲート絶縁膜下の下地に応力を印加する応力膜を積層する。次に、下地に熱処理を行い前記ソース・ドレイン領域を活性化した後、積層した応力膜を除去する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態における半導体装置の製造方法によれば、SMT技術を用いてPocket注入層にストレスを印加することにより、活性化アニール時のチャネル不純物の偏析が抑制され、NMOSの顕著な逆短チャネル特性を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1における半導体装置の製造工程を示した断面図である。以下図1を参照して、本実施の形態における半導体装置の製造方法について説明する。
【0012】
はじめに、NMOSトランジスタ形成領域(以下、NMOS領域と称する)を有する半導体基板1を準備し、このNMOS領域の半導体基板1内にウェル注入を行ってp型ウェル2を形成する。次に、p型ウェル2内に窒素を注入して窒素注入層3を形成する。同様にp型ウェル2内にp型不純物(本実施の形態ではボロン(B)を用いる)を注入してチャネル注入層4を形成する(図1(a))。
【0013】
次に、半導体基板1の上面上にゲート絶縁膜5、メタル電極6(ゲート電極)をこの順で積層して形成する。次に、メタル電極6をマスクとして、メタル電極6に対して斜め方向からp型ウェル2内にp型不純物(本実施の形態ではボロンを用いる)を注入してPocket注入層7を形成し、さらにn型不純物を注入してextension領域8を形成する。次に、メタル電極6の側面にサイドウォール9を形成し、メタル電極6およびサイドウォール9をマスクとしてp型ウェル2内にn型の不純物を注入して、ソース・ドレイン領域10を形成する(図1(b))。
【0014】
次に、半導体基板1に応力を印加してPocket注入層7の拡散を抑えるために、SMT(Stress Memorization Technique)技術を用いた引っ張り応力膜を形成する。詳しくは、半導体基板1、ゲート電極6およびサイドウォール9上を被覆するように酸化膜11(応力膜)を数nm〜数百nm堆積し、その後RTAなどの活性化アニールを行う(図1(c))。
【0015】
ここで、図2は、引っ張り応力膜(酸化膜11)を形成しない場合(図2(a))と、引っ張り応力膜(酸化膜11)を形成した場合(図2(b))において、活性化アニール処理後におけるPocket注入層7の拡散の様子を比較した図である。図2に示すように、引っ張り応力膜(酸化膜11)を形成した後に活性化アニール処理を行うことにより、Pocket注入層7にストレスが印加され、活性化アニール時に生じる拡散を抑えることができる。
【0016】
次に、酸化膜11を除去し、ソース・ドレイン領域10上にシリサイド処理を行ってシリサイド12を形成する(図1(d))。その後は通常のフローでトランジスタを形成するため説明を省略する。
【0017】
図3は、従来の窒素注入を行わないトランジスタ(Tr.2)と、窒素注入を行ったトランジスタ(Tr.1)において、ゲート長におけるしきい値電圧の特性を比較した図である。ここで、Tr.1、Tr.2とも上述したSMTプロセスは行わない。図3に示すように、ゲート絶縁膜5下に窒素注入を行って窒素注入層3を形成することにより、しきい値電圧が低減できることが分かる。
【0018】
しかしながら図3に示すように、窒素注入を行うTr.1の場合、ゲート長を短縮していったときに、短チャネル効果が顕著になる前のしきい値電圧の増加(Lg1とLg2とのしきい値電圧差:ΔVt1)が、Tr.2の場合におけるしきい値電圧の増加(ΔVt2)に対して大きく、すなわち逆短チャネル効果が大きくなることがわかる。従って、この状態でTargetのゲート長(Lg1)でしきい値電圧を合わせると、Lgが大きい領域ではしきい値電圧が高くなり過ぎることにより、回路動作マージンが減少してしまう。
【0019】
一方、図4は、上述したTr.1とTr.1にSMT技術を用いたトランジスタ(Tr.3)において、ゲート長におけるしきい値電圧の特性を比較した図である。図に示すように、短チャネル効果が顕著になる前のしきい値電圧の増加(ΔVt3)がΔVt1に対して減少していることがわかる。すなわち、SMT技術を用いてストレスを印加してPocket注入層7の拡散を抑えることにより、逆短チャネル特性を抑制することができる。
【0020】
以上より、本実施の形態における半導体装置の製造方法によれば、SMT技術を用いてPocket注入層7にストレスを印加することにより、活性化アニール時のチャネル不純物の偏析が抑制され、NMOSの顕著な逆短チャネル特性を回避することができる。
【0021】
<実施の形態2>
図5は、本発明の実施の形態2における半導体装置の製造工程を示した断面図である。図5を参照して、本実施の形態における半導体装置の製造方法について説明する。はじめに、ソース・ドレイン領域10にシリサイド12を形成する工程(図5(a))までは、実施の形態1で説明した図1の製造工程と同様のため説明を省略する。ただし、本実施の形態では、ゲート電極としてpoly電極21を用いる。また、ソース・ドレイン領域10にシリサイド12を形成する際に、シリサイド化から保護するためにpoly電極21上にハードマスク22を形成する。
【0022】
次に、コンタクト層間の絶縁膜23をデポする(図5(b))。その後、CMP等でpoly電極21の表面が露出するまで絶縁膜23を除去し、上面に金属膜24(本実施の形態ではNiを用いる)をスパッタする(図5(c))。次に、RTAによる熱処理を行うことによりpoly電極21のフルシリサイド化を行い、FUSI電極25を形成する。その後、余分なNiを除去する(図5(d))。その後は通常のフローでトランジスタを形成するため説明を省略する。
【0023】
以上より、本実施の形態における半導体装置の製造方法によれば、FUSI電極25を用いる場合であっても、実施の形態1と同様に、SMT技術を用いてPocket注入層7にストレスを印加することにより、活性化アニール時のチャネル不純物の偏析が抑制され、NMOSの顕著な逆短チャネル特性を回避することができる。
【0024】
<実施の形態3>
図6は、本発明の実施の形態3における半導体装置の製造工程を示した断面図である。図6を参照して、本実施の形態における半導体装置の製造方法について説明する。始めに、ソース・ドレイン領域10を形成する工程(図6(a))までは、実施の形態1で示した図1(b)までの製造工程と同様のため説明を省略する。ここで、本実施の形態では、ゲート電極としてpoly電極21を用いて説明するが、メタル電極6であってもよい。
【0025】
次に、Pocket注入層7の拡散を抑えるためにSMT技術を用いた引っ張り応力膜を形成する。詳しくは、半導体基板1、poly電極21およびサイドウォール9上を被覆するように酸化膜31を数nm〜数百nm堆積した後、酸化膜31上にプラズマ窒化膜32(応力膜)を数十nm〜数百nm堆積する。その後RTAなどの活性化アニールを行う(図6(b))。ここで、酸化膜31は、応力膜としてではなくストッパー膜として用いるため、実施の形態1,2の酸化膜11と比べ薄い膜を形成する。その後は、実施の形態2と同様の処理を行い、FUSI電極25を有する半導体装置を形成する(図6(c))。
【0026】
以上より、本実施の形態における半導体装置の製造方法によれば、応力膜としてプラズマ窒化膜32を用いることにより、SMT技術を用いてPocket注入層7に印加するストレスを実施の形態1の場合よりも増加することが出来る。従って、活性化アニール時のチャネル不純物の偏析がさらに抑制され、NMOSの顕著な逆短チャネル特性を回避することができる。
【0027】
<実施の形態4>
図7は、本発明の実施の形態4における半導体装置の製造工程を示した断面図である。以下図7を参照して、本実施の形態における半導体装置の製造方法について説明する。
【0028】
はじめに、半導体基板1の表面内に素子分離領域41を形成して、NMOS領域とPMOS領域を区画する。以降、NMOS領域にソース・ドレイン領域10を形成する工程までは、実施の形態1から3と同様のため説明を省略する。一方、PMOS領域においてもNMOS領域と同様の処理を行う。ただし、n型ウェル42内に形成する注入層43は、例えばハロゲン元素等を注入して形成する。また、extension領域49、ソース・ドレイン領域51は、p型不純物を注入して形成する。また、チャネル注入層44、Pocket注入層48はn型不純物を注入して形成する(図7(a))。
【0029】
次に、NMOS領域におけるPocket注入層7の拡散を抑えるためにSMT技術を用いた引っ張り応力膜を形成する。ただし、PMOS領域にSMTプロセスを適用した場合は、ゲートエッジ部分へのストレス印加により、ゲートリークのエッジ成分が増加する現象があるため、SMTプロセスを用いるのは、NMOS領域のみとする。詳しくは、半導体基板1、poly電極21,46およびサイドウォール9,50上に被覆するように酸化膜52を数nm〜数百nm堆積した後、酸化膜52上にプラズマ窒化膜53(応力膜)を数十nm〜数百nm堆積する(図7(b))。次に、PMOS領域のプラズマ窒化膜53を除去し、RTAなどの活性化アニールを行う(図7(c))。ここで、酸化膜52は、応力膜としてではなくストッパー膜として用いるため、実施の形態1,2の酸化膜11と比べ薄い膜を形成する。その後は、実施の形態2と同様の処理を行い、FUSI電極25,54を有する半導体装置を形成する(図7(d))。
【0030】
以上より、実施の形態3と同様の効果が得られるとともに、SMTプロセスを用いることによって生じるゲートリーク増加などのPMOS領域に対する悪影響を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【図2】本発明および従来における半導体装置において、活性化アニール処理後におけるPocket注入層の拡散の様子を示した図である。
【図3】窒素注入を行う半導体装置と窒素注入を行わない半導体装置において、ゲート長におけるしきい値電圧の特性を示した図である。
【図4】本発明および従来における半導体装置において、ゲート長におけるしきい値電圧の特性を示した図である。
【図5】本発明の実施の形態2における半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【図6】本発明の実施の形態3における半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【図7】本発明の実施の形態4における半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 半導体基板、2 p型ウェル、3 窒素注入層、4,44 チャネル注入層、5,45 ゲート絶縁膜、6 メタル電極、7,48 Pocket注入層、8,49 extension領域、9,50 サイドウォール、10,51 ソース・ドレイン領域、11,31,52 酸化膜、12 シリサイド、21,46 poly電極、22,47 ハードマスク、23 絶縁膜、24,54 FUSI電極、32,53 プラズマ窒化膜、41 素子分離領域、42 n型ウェル、43 注入層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)窒素が上面内に注入されたp型の半導体領域を有する下地を準備する工程と、
(b)前記下地上に、ゲート絶縁膜およびゲート電極をこの順で積層して形成する工程と、
(c)前記ゲート電極をマスクとして、p型の一対のポケット注入領域および当該ポケット注入領域の外方にn型の一対のソース・ドレイン領域を前記下地の上面内に形成する工程と、
(d)前記工程(c)の後、前記下地上を被覆して前記ゲート絶縁膜下の前記下地に応力を印加する応力膜を積層する工程と、
(e)前記工程(d)の後、前記下地に熱処理を行い前記ソース・ドレイン領域を活性化する工程と、
(f)前記工程(e)の後、積層した前記応力膜を除去する工程と、を備える半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記工程(d)は、前記応力膜として酸化膜を積層する、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
(g)前記工程(c)と工程(d)の間に、前記下地上を被覆する酸化膜を積層する工程をさらに備え、
前記工程(d)は、前記応力膜としてプラズマ窒化膜を積層し、
前記工程(f)は、積層した酸化膜およびプラズマ窒化膜を除去する、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記工程(b)は、前記ゲート電極として金属ゲート電極を積層する、請求項1から3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記工程(b)は、前記ゲート電極としてpolyゲート電極を積層し、
(h)前記工程(f)の後、前記半導体基板上に金属膜を積層する工程と、
(i)前記金属膜と前記ゲート電極とを反応させて、前記polyゲート電極の全領域をシリサイド化する工程と、をさらに備える請求項1から3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−278031(P2009−278031A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130452(P2008−130452)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】