説明

半導体装置及びその製造方法、感光性樹脂組成物並びに電子部品

【課題】有機絶縁膜を被覆した無機絶縁膜のエッチング時にエッチング残渣が生成せず、金属配線や金属層などの銅及び銅合金の腐食を抑制する半導体装置及びその製造方法、感光性樹脂組成物並びに電子部品を提供する。
【解決手段】半導体装置は、パッド電極2が形成された半導体基板1と、少なくとも前記パッド電極2上に形成された無機絶縁膜3と、無機絶縁膜3上に形成された第1の有機絶縁膜4とを備える。第1の有機絶縁膜4は、樹脂構造にフッ素を含まないポリイミド系樹脂と、複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物から選択される少なくとも1種の化合物とを含有する樹脂組成物から形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機絶縁膜をコーティングした半導体装置及びその製造方法、感光性樹脂組成物並びに電子部品に関するものである。さらに具体的には、半導体基板の金属配線上の有機絶縁膜と無機絶縁膜層からなる積層パッシベーション膜の開口部を形成する工程において、パッド電極部の残渣の生成と腐食を防ぎ、さらに銅及び銅合金に対して優れた防錆効果、残膜防止効果、及び膜密着硬化を有する信頼性の高い有機絶縁膜を有する半導体装置及びその製造方法、感光性樹脂組成物並びに電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜には、優れた耐熱性と電気特性、機械特性等を併せ持つポリイミド樹脂が用いられている。しかし、近年半導体素子の高集積化、大型化が進む中、封止樹脂パッケージの薄型化小型化、半田リフローによる表面実装への移行等により、これまで以上に機械特性、耐熱性等に優れたポリイミド樹脂が必要とされるようになってきた。
【0003】
近年、ポリイミド樹脂自身に感光特性を付与した感光性ポリイミドが用いられてきているが、これを用いるとパターン形成工程が簡略化でき、煩雑なパターン製造工程の短縮が行えるという特徴を有する(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
従来、上記感光性ポリイミドの現像にはN−メチルピロリドン等の有機溶剤が用いられてきたが、最近では、環境やコストの観点からアルカリ水溶液で現像ができるポジ型の感光性樹脂の提案がなされている。このようなポジ型の感光性樹脂として、ポリイミド前駆体にエステル結合を介してo−ニトロベンジル基を導入する方法(例えば、非特許文献1参照)、可溶性ヒドロキシルイミド又はポリベンゾオキサゾール前駆体にナフトキノンジアジド化合物を混合する方法(例えば、特許文献4、5参照)などがあり、低誘電率化が期待できる観点からも、感光性ポリイミドと共に感光性ポリベンゾオキサゾールが注目されている。
【0005】
このような感光性樹脂は、半導体素子の表面保護膜あるいは層間絶縁膜として近年広く利用されるようになってきており、特に高解像度を有する可溶性ヒドロキシルイミド又はポリベンゾオキサゾール前駆体にナフトキノンジアジド化合物を混合することにより構成されるポジ型感光性樹脂の場合は、配線上に形成した無機絶縁膜を加工する際に、ポジ型感光性樹脂を介してドライエッチングする方法が適用可能である。
【0006】
ドライエッチング法は、真空中に反応性ガスを注入して化学反応によりエッチングする方法であり、一般に、シリコン酸化膜(不純物ドーピング膜を含む)やシリコン窒化膜等のドライエッチングには、フッ素元素を含むガスが使用されている。
しかし、この活性なドライエッチングガスは、プラズマ中で有機絶縁膜中の成分とも反応してエッチング残渣が形成されてしまう。この残渣はフッ素原子を多く含むことから、ドライエッチングガスと有機絶縁膜中のフッ素含有成分との反応物であると推定されている。
【0007】
この残渣は、有機絶縁膜の表面に堆積層を形成するだけではなく、開口部のパッド電極上にも堆積物を形成する。有機絶縁膜及びパッド電極上にこの残渣が存在すると、以下のような問題点が生じている。一つ目の問題点は、エッチング後に大気中の水分及び封止樹脂中に新入した水分と残渣中のフッ素とが反応してフッ酸が形成されて、パッド電極部の腐食による配線コロージョンが発生してしまう点である。配線の腐食は半導体素子の歩留まりを低下させるばかりでなく、配線の信頼性寿命を著しく低下させ、半導体素子の寿命を低下させる原因にもなる。プレッシャークッカーテスト(高温・高圧スチームテストであり、信頼性評価の項目の一つ。以下、PCTと略記する。)による信頼性寿命が短く、またロット間のばらつきも大きくなってしまう問題もある。
【0008】
二つ目の問題点として、有機絶縁膜上のドライエッチングによって生成した残渣層の存在により、封止樹脂との密着性が低下し、温度サイクルテスト(信頼性評価の項目の一つ。以下、TCTと略記する。)において封止樹脂との剥がれが生じる。この為に外部から水分が浸入し、これに起因してフッ酸形成による配線コロージョンの問題等の発生も助長されてしまうので、信頼性レベルの低下が生じる点である。この残渣の堆積物は除去が困難であり、酸素プラズマ処理、薬液処理等の除去工程が必要とされる。
【0009】
近年、半導体素子の小型化、高集積化による多層配線化、チップサイズパッケージ(CSP)、ウエハレベルパッケージ(WLP)への移行等により、低誘電率化や、また、銅、アルミニウム、金、チタニウム等の配線又は配線金属との密着性向上の要求から、更に高性能なポリベンゾオキサゾール樹脂やポリイミド樹脂が必要とされている。
【0010】
密着に関しては、一般に、有機ケイ素化合物を用いることにより、シリコンやチッ化膜等の基板との密着性の向上が図られることが知られている(特許文献9)。しかし、銅等に代表される再配線を構成する材料に対しては、樹脂の密着が不充分である傾向にある。
【0011】
更に、従来のポリイミド系樹脂は、銅及び銅合金などの金属に対して腐食性を有するという問題があった。ポリイミド前駆体のポリアミド酸が主鎖及び末端基にカルボキシル基を含んでいること、そして、ポリイミド化した後にもカルボキシル基が残存する場合に、銅及び銅合金の腐食が多い。これはポリイミド前駆体の構造中に含まれる酸性官能基であるカルボキシル基が、銅及び銅合金と反応するためである。従って、例えば、ポリイミド前駆体を含有するワニスを用いて、多層配線板用層間絶縁膜を形成させる場合、ワニスの乾燥工程又は加熱硬化(ポリイミド化)する工程又は硬化後に、塗膜と接触する銅又は銅合金に腐食作用と銅イオンの発生がおこり、絶縁不良、断線、ショート、金属部位の錆、膜の密着性の低下、膜物性の劣化などの種々の問題を引き起こしていた。
【0012】
また、感光性ポリイミド前駆体のワニスを用いてポリイミド膜を形成する場合、ポリイミド前駆体中の主鎖及び末端基に存在するカルボキシル基と銅又は銅合金との反応に起因して、現像時に残膜が生じやすく、感度の大幅な低下や良好なパターンが得られないということがある。すなわち、ポリイミド前駆体中のカルボキシル基と銅が反応すると、カルボキシル銅(銅塩)が生成する。カルボキシル銅が生成したポリイミド前駆体は、それ自身の現像液に対する溶解性が低下し、露光工程の後、現像液を用いて現像する際に、ポジ型の感光性樹脂組成物であれば、露光部に残膜が発生し、ネガ型の感光性樹脂組成物であれば、未露光部に残膜が発生する原因になる。銅イオンは、電気絶縁性低下のみならず、ポリイミドの分子量低下、膜物性低下、密着性低下等を引き起こす。
【0013】
感光性ポリイミド前駆体のワニスを用いて、銅配線上でポリイミドパターンを形成する方法では、ポリイミド前駆体中のカルボキシル基と銅との反応に起因する銅イオンのマイグレーションにより、現像後残膜の発生が起きたり、ポリイミド膜と銅配線とのPCT後の密着性の低下が起きたりする場合があった。そこで、感光性ポリイミド前駆体のワニスを塗布する前に、銅配線層をクロムめっきなどのメッキ処理をする方法が一般に行われている。また、銅層表面にアミノ基を有するケイ素化合物で表面処理する方法(特許文献10)、銅層表面を酸素又は薬品で処理して酸化銅の被膜を生成させる方法(特許文献11)など、銅層に対する表面処理を行った上で、ポリイミド前駆体被膜のパターニングを行う方法が提案されている。また銅層表面を防錆剤で処理する方法も知られている。しかし、銅層表面をメッキ処理したり、薬品処理をしたりして被膜を形成する方法は、製造工程が増えるため、作業性や経済性の面で好ましくない。
【0014】
【特許文献1】特開昭49−115541号公報
【特許文献2】特開昭59−108031号公報
【特許文献3】特開昭59−219330号公報
【特許文献4】特開昭64−60630号公報
【特許文献5】米国特許第4395482号明細書
【特許文献6】特許第2587148号公報
【特許文献7】特許第3031434号公報
【特許文献8】米国特許第5738915号明細書
【特許文献9】特開昭63−001584号公報
【特許文献10】特開平6−242613号公報
【特許文献11】特開平5−198559号公報
【非特許文献1】J.Macromol.Sci.Chem.,A24,12,1407,1987
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述の従来の半導体装置の製造方法では、有機絶縁膜と無機絶縁膜からなる積層パッシベーション膜に開口部を形成する際のドライエッチングに用いるフッ素含有ガスと、有機絶縁膜中のフッ素含有成分との反応により残渣が形成し、半導体装置の歩留まり、信頼性を著しく低下させるという問題があった。また、銅及び銅合金からなる金属配線又は金属層が形成された基板上にポリイミド前駆体ワニスを塗布し多層配線板用絶縁膜を形成する際、ポリイミド前駆体が銅又は銅合金に腐食作用を引き起こし、絶縁不良、断線、ショート等を生じるといった問題点があった。
【0016】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、有機絶縁膜をコーティングした半導体装置及びその製造方法、感光性樹脂組成物並びに電子部品に関するものであり、特に有機絶縁膜を被膜した無機絶縁膜のエッチングにおいて、残渣を生じることなくドライエッチング処理を行い、また金属配線や金属層等の銅及び銅合金を腐食させることなく、優れた防錆効果、残膜防止効果、及び膜密着効果を有する信頼性の高い半導体装置及びその製造方法、当該半導体装置の製造方法に使用する感光性樹脂組成物並びに電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明は、半導体基板上に無機絶縁膜を形成し、前記無機絶縁膜上に有機絶縁膜を形成し、前記有機絶縁膜をパターン加工した後に露出された前記無機絶縁膜をドライエッチングする半導体装置の製造方法において、有機絶縁膜としてその構造中にフッ素を含まない樹脂膜を用いる半導体装置の製造方法である。具体的にこの樹脂膜は、その構造中にフッ素原子を含まないアルカリ現像可能なポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体と、感光剤と、及び複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物とを含有する感光性樹脂組成物を加熱処理することによって得られる。このような半導体装置及びその製造方法は、金属配線や金属層等の銅及び銅合金を腐食させることなく、優れた防錆効果、残膜防止効果、及び膜密着効果を有する。さらにこの感光性樹脂組成物を加熱処理して得られたフッ素非含有樹脂膜を有機絶縁膜とすることにより、ドライエッチング後、有機絶縁膜上、パッド電極上に残渣が生成しないため、残渣の除去工程が必要なく、信頼性の高い半導体装置及びその製造方法、及び当該半導体装置の製造方法に使用する感光性樹脂組成物を提供するものである。
【0018】
また、フッ素非含有樹脂膜の有機絶縁膜は、高い破断伸び、低誘電率、優れた耐薬品性を示すことから封止する際のデバイスへのダメージが避けられ、信頼性の高い電子部品を歩留まり良く提供するものである。本発明は、前記感光性樹脂組成物の使用により、アルカリ水溶液で現像可能であり、感度、解像度に優れ、かつ良好な形状のパターン硬化膜を有する電子部品を提供するものである。
【0019】
すなわち、本発明による半導体装置の製造方法は、半導体基板上に形成された少なくともパッド電極及び金属配線上に無機絶縁膜を形成する工程と、前記無機絶縁膜上にフッ素非含有有機絶縁膜を形成する工程と、前記フッ素非含有有機絶縁膜をパターン加工する工程と、前記パターン加工により露出された前記無機絶縁膜をフッ素含有ガスによりドライエッチングして前記パッド電極部を露出させる工程とを含む半導体装置の製造方法であって、前記フッ素非含有有機絶縁膜が、(A)樹脂構造にフッ素を含まない樹脂と、及び(B)複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物とを含有する樹脂組成物から形成されることを特徴とする。
【0020】
また、本発明による半導体装置の製造方法にあっては、前記フッ素非含有有機絶縁膜を形成するための樹脂組成物に含まれる樹脂(A)が、その樹脂構造にフッ素を含まないポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体からなる樹脂組成物を加熱処理して得られた膜であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明による半導体装置の製造方法にあっては、前記フッ素非含有有機絶縁膜を形成するための樹脂組成物が、樹脂(A)としてその樹脂構造にフッ素を含まないポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体と、(B)複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、及び感光剤(C)とを含む感光性樹脂組成物であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明による半導体装置の製造方法にあっては、前記感光性樹脂組成物が、アルカリ水溶液で現像及びパターン加工可能であることを特徴とする。
【0023】
また、本発明による半導体装置の製造方法にあっては、前記(B)成分が複素環状化合物であり、その化合物が、トリアゾール環、ピロール環、ピラゾール環、チアゾール環、イミダゾール環及びテトラゾール環からなる群から選択される少なくとも1種の構造を有する化合物であることを特徴とする。
【0024】
また、本発明による半導体装置の製造方法にあっては、前記複素環状化合物が、1H−テトラゾール、5置換−1H−テトラゾール、1置換−1H−テトラゾール及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明による半導体装置の製造方法にあっては、前記複素環状化合物が、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール及びその誘導体、1,2,3−ベンゾトリアゾール、5置換−1H−ベンゾトリアゾール、6置換−1H−ベンゾトリアゾール、5,6置換−1H−ベンゾトリアゾール及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0026】
また、本発明による半導体装置の製造方法にあっては、さらに工程として、フッ素非含有有機絶縁膜及び露出されたパット電極部上に第2の金属配線パターン層を形成する工程と、さらにその上に第2のフッ素非含有有機絶縁膜を形成する工程とを含み、前記第2のフッ素非含有有機絶縁膜も、(A)樹脂構造にフッ素を含まない樹脂と、及び(B)複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物とを含有する樹脂組成物から形成されることを特徴とする。
【0027】
また、本発明による半導体装置にあっては、前記半導体装置の製造方法により製造されることを特徴とする。
【0028】
また、本発明による電子部品にあっては、前記半導体装置の構造を有することを特徴とする。
【0029】
また、本発明による電子部品にあっては、チップサイズパッケージ又はウエハレベルパッケージであることを特徴とする。
【0030】
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、半導体素子上に形成された少なくともパッド電極及び金属配線上に無機絶縁膜を形成する工程と、前記無機絶縁膜上にフッ素非含有有機絶縁膜を形成する工程と、前記フッ素非含有有機絶縁膜をパターン加工する工程と、前記パターン加工により露出された前記無機絶縁膜をフッ素含有ガスによりドライエッチングして前記パッド電極を露出させる工程とを含む半導体装置の製造方法において、前記フッ素非含有有機絶縁膜を形成するための感光性樹脂組成物であって、(A)樹脂構造にフッ素を含まない樹脂と、(B)複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、(C)感光剤と、及び(D)溶剤とを含み、かつフッ素を含まないことを特徴とする。
【0031】
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、前記フッ素非含有有機絶縁膜を形成するための感光性樹脂組成物に含まれる樹脂(A)が、その樹脂構造にフッ素を含まないポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体であることを特徴とする。
【0032】
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、前記感光性樹脂組成物が、アルカリ水溶液で現像及びパターン加工可能であることを特徴とする。
【0033】
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、前記(B)成分が複素環状化合物であり、その化合物が、トリアゾール環、ピロール環、ピラゾール環、チアゾール環、イミダゾール環及びテトラゾール環からなる群から選択される少なくとも1種の構造を有する化合物であることを特徴とする。
【0034】
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、前記複素環状化合物が、1H−テトラゾール、5置換−1H−テトラゾール、1置換−1H−テトラゾール及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0035】
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、前記複素環状化合物が、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール及びその誘導体、1,2,3−ベンゾトリアゾール、5置換−1H−ベンゾトリアゾール、6置換−1H−ベンゾトリアゾール、5,6置換−1H−ベンゾトリアゾール及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0036】
また、本発明による感光性樹脂組成物にあっては、前記樹脂(A)が、下記一般式(1)〜(3)で表される構造単位を主とするポリイミド前駆体からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
一般式(1):
【0037】
【化1】

(式中、R1は四価の有機基、R2は二価の有機基、R3は水素原子又は一価の有機基であり、aは繰り返し数を示す整数であり、2〜100,000である。)
一般式(2):
【0038】
【化2】

(式中、R1は四価の有機基、R4は四価の有機基、R5とR6は水素原子又は一価の有機基でありこれらは同一であっても異なっていてもよく、bは繰り返し数を示す整数であり、2〜100,000である。)
一般式(3):
【0039】
【化3】

(式中、R7は二価又は四価の有機基、R4は四価の有機基、R8は二価の有機基、R5とR6は水素原子又は一価の有機基でありこれらは同一であっても異なっていてもよく、c及びdは繰り返し数を示す整数であってそれぞれ2〜100,000であり、2つの繰り返し単位はブロック又はランダムに存在する。)
【発明の効果】
【0040】
従来、有機絶縁膜を半導体素子上の無機絶縁膜のコーティング材料とする場合、その半導体製造方法としてパターン加工した有機絶縁膜をマスクとし、無機絶縁膜をドライエッチングすると有機絶縁膜上やパッド電極上に残渣が生成し、この残渣が腐食することによってパッド電極部の絶縁不良やモールド樹脂との密着不良を生じる場合があった。しかしながら、本発明によるフッ素非含有の樹脂膜を使用した場合、残渣が生成しないために残渣の除去工程が不要となり、さらに金属配線や金属層などの銅及び銅合金を腐食させることなく、信頼性の高い半導体装置が得られる。
【0041】
また、構造中にフッ素原子を含まない樹脂膜は、好ましくは、構造中にフッ素原子を含まないアルカリ現像可能なポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体と、感光剤と、及び複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物とを含有する感光性樹脂組成物を塗布、乾燥、現像後に加熱処理することによって得られる。この感光性樹脂組成物の使用により、感度、解像度、接着性に優れ、さらに耐熱性にも優れ、吸水率の低い、良好な形状のパターン硬化膜が得られる。
【0042】
さらに、本発明の電子部品は、良好な形状と接着性、耐熱性に優れたパターンを有し、デバイスへのダメージが避けられ、信頼性の高いものである。またデバイスへのダメージが少ないことから、歩留まりも高いという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下に、本発明による半導体装置及びその製造方法、感光性樹脂組成物及び電子部品について詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、本発明において「フッ素」とは、特に断らない限りフッ素原子を意味する。
【0044】
本発明は、有機絶縁膜を有する無機絶縁膜にエッチングを施すプロセスを有する半導体装置において、有機絶縁膜としてフッ素非含有の耐熱性高分子膜を用いる半導体装置の製造方法である。耐熱性高分子膜としては、フッ素非含有のポリイミド樹脂、ポリベンゾオキゾール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が挙げられるが、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキゾール樹脂が好ましく、特にポリイミド樹脂が好ましいものとして用いられる。例えば、ポリイミドは次の一般式(4)で表される繰り返し単位を有するものが挙げられる。
【0045】
【化4】

【0046】
上記一般式(4)中、結合基X,Yは、単なる結合であるか、ポリイミドとしての合成が可能である任意の分子構造を有する二価の基を表し、フッ素原子を含まない。eは2〜100,000の繰り返し数を示す。
【0047】
このポリイミド樹脂は、フッ素非含有のポリアミド酸やポリアミド酸エステルなどのポリイミド前駆体の樹脂組成物から形成される膜を加熱処理することにより、高耐熱膜の形態で得られる。加熱処理工程における加熱温度は、通常、120〜450℃、より望ましくは、250〜400℃である。
【0048】
また、このポリイミド樹脂は、フッ素非含有のポリアミド酸やポリアミド酸エステルなどのポリイミド前駆体に感光剤を配合した、フッ素非含有の感光性樹脂組成物をパターン加工した後、加熱処理によって得ることが望ましい。
【0049】
ここで、フッ素非含有の感光性樹脂組成物とするためには、前記の通り、主成分となるポリイミド前駆体をフッ素を含まないものとすると共に、感光剤等、その他の添加成分として、その成分の構造中にフッ素を含まないものを使用することで行うことができる。
なお、本発明における感光性樹脂組成物は、その中に、フッ素原子は全く含まないことが好ましいが、組成物に含まれる各成分に、不純物として含まれることなどに伴って、組成物に多少存在してしまっているものは致し方なく、本発明では、本発明の効果に影響を与えるほどには、フッ素を実質的に含まないものとする。
【0050】
[半導体装置の製造方法に使用する樹脂組成物]
以下、本発明による半導体装置の製造方法に使用する樹脂組成物について説明する。上記樹脂組成物は、(A)樹脂構造にフッ素原子を含まない樹脂と、(B)複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物とを含有するものである。樹脂組成物に感光性を付与するためにさらに(C)感光剤を含むことが好ましく、またさらに各成分を溶解するための(D)溶剤を通常含有する。以下、各成分について説明する。
【0051】
〔(a)成分〕
上記樹脂組成物における(A)樹脂構造にフッ素原子を含まない樹脂(以下、(A)成分とする)は、分子構造中にフッ素を含まないことが必要であり、このような樹脂の種類としては、環化してイミド環を形成しうるポリアミド酸、ポリアミド酸エステル等のポリイミド前駆体、環化してベンゾオキサゾール環を形成しうるポリヒドロキシアミド等のポリベンゾオキゾール前駆体、上記以外のポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられるが、中でもポリイミド前駆体及びポリベンゾオキサゾール前駆体が好ましく、ポリイミド前駆体がより好ましい。また、(A)成分は、現像液として用いられるアルカリ水溶液に可溶であることが望ましい。これは樹脂の分子中にアルカリ可溶性基を有することで達成することができ望ましく、アルカリ可溶性基としてはカルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基等が挙げられ、中でもカルボキシル基又はフェノール性水酸基を有するものが好ましい。
なお、アルカリ水溶液とは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、金属水酸化物水溶液、有機アミン水溶液等のアルカリ性の溶液である。
【0052】
これらの中で、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される構造単位を主とするポリイミド前駆体は、加熱あるいは適当な触媒により、イミド環を有するポリイミドとなり得るものである。環構造となることで、耐熱性、耐溶剤性が飛躍的に向上するため好ましい。
【0053】
【化1】

(式中、R1は四価の有機基、R2は二価の有機基、R3は水素原子又は一価の有機基であり、aは繰り返し数を示す整数であり、2〜100,000である。)
【0054】
【化2】

(式中、R1は四価の有機基、R4は四価の有機基、R5とR6は水素原子又は一価の有機基でありこれらは同一であっても異なっていてもよく、bは繰り返し数を示す整数であり、2〜100,000である。)
【0055】
【化3】

(式中、R7は二価又は四価の有機基、R4は四価の有機基、R8は二価の有機基、R5とR6は水素原子又は一価の有機基でありこれらは同一であっても異なっていてもよく、c及びdは繰り返し数を示す整数であってそれぞれ2〜100,000であり、2つの繰り返し単位はブロック又はランダムに存在する。)
【0056】
上記ポリイミド前駆体において、上記一般式(1)及び(2)で示される構造中のR1、及び上記一般式(3)で示される構造中のR7は、具体的にはベンゼン、ナフタレン、ペリレン、ビフェニル、ジメチルビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルプロパン、ベンゾフェノンなどの骨格を有する二価又は四価の芳香族炭化水素残基、又はブタン、シクロブタン、シクロヘキサン、アダマンタンなどの骨格を有する二価又は四価の脂肪族炭化水素残基が典型的な例として例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
また、上記一般式(1)及び(2)で示される構造中のR1、及び上記一般式(3)で示される構造中のR7の炭素原子数としては、4〜30が好ましい。好ましい基としては、フェニル、ビフェニル、ジメチルビフェニル、ジフェニルエーテル、シクロヘキサン、アダマンタンである。なお、必要に応じて二種類以上を含有させることもできる。
【0058】
上記一般式(1)〜(3)に示される構造中のR2、R4及びR8は、具体的にはジフェニル、ジメチルビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ベンゾフェノン、ジフェニルメタン、ジフェニルプロパン、ジフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホン、ビフェニル、ベンゼンなどの骨格を有する二価又は四価の芳香族炭化水素残基が典型例として例示されるが、これらに限定されるものではない。また、これらR2、R4及びR8の炭素原子数としては、6〜30が好ましい。好ましい基としては、ジフェニルイソプロピリデン、ジフェニルエーテル、ビフェニル、ジフェニルスルホンである。なお、必要に応じて、R2又はR4として、上記に例示した基の二種類以上を含有させることもできる。
【0059】
上記一般式(1)〜(3)に示される構造中のR3、R5及びR6は、アルカリ溶解性を低下させない程度に水素原子だけではなく一価の有機基を含有させることができる。一価の有機基の水素原子に対する置換率は、0〜80%とすることが好ましく、0〜60%とすることが特に好ましい。これよりも置換率が高い場合には、基材との密着性や現像液への樹脂の溶解性に低下が見られる。上記R3、R5及びR6としては、具体的にはアルキル基、アリール基、アルコキシアルキル基、アルキルシリル基、アセタールあるいはケタールを構成する基、エステルを構成する基、アクリロイル基、メタクリロイル基などを挙げることができる。中でも、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基が、ワニスの保存安定性に優れ好ましい。
【0060】
また、上記一般式(1)、(2)、及び(3)の繰り返し単位において、R1又はR7を形成するために用いられるテトラカルボン酸としては、一般にその無水物が挙げられ、例えばピロメリット酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物等の芳香族系テトラカルボン酸二酸無水物が好ましく、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0061】
また、上記各一般式の繰り返し単位のR4を形成するために用いられるジアミン成分としては、アルカリ溶解性を付与できるフェノール性水酸基をもつジヒドロキシジアミン累(ビスアミノフェノール類)が挙げられる。
ヒドロキシジアミン類としては、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジヒドロキシビフェニル、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
アルカリ溶解性を低下させない程度に、上記以外に下記に相当するジアミンも併せて用いることができる。これらには特に制限はなく、例えば、4,4′−(又は3,4′−、3,3′−、2,4′−、2,2′−)ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−(又は3,4′−、3,3′−、2,4′−、2,2′−)ジアミノジフェニルメタン、4,4′−(又は3,4′−、3,3′−、2,4′−、2,2′−)ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−(又は3,4′−、3,3′−、2,4′−、2,2′−)ジアミノジフェニルスルフィド、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、o−トリジン,o−トリジンスルホン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4′−メチレン−ビス−(2,6−ジエチルアニリン)、4,4′−メチレン−ビス−(2,6−ジイソプロピルアニリン)、2,4−ジアミノメシチレン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4′−ベンゾフェノンジアミン、ビス−{4−(4′−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、2,2−ビス{4−(4′−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、ビス{4−(3′−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン等が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。また、これら一般式(2)〜(4)の構造に該当しないジアミンの含有量は、i線透過率を低下させないために全ジアミンの50%以下であることが好ましい。
また、ジアミノポリシロキサン等の脂肪族ジアミンも同様に使用することができる。
【0063】
上記一般式(1)で示されるポリイミド前駆体は、例えば以下の方法で得ることができる。即ち、テトラカルボン酸二無水物をN−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒中にてジアミンと反応させる。
【0064】
上記方法にて得られた反応生成物を、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、アセトンなどの貧溶媒中で結晶化させ、ろ別、乾燥することで、精製された上記一般式(1)で示される構造単位を有するポリアミド樹脂を得ることができる。また、得られたポリアミド樹脂をテトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどのアプロティックな有機溶媒中にてR5を有する水酸基の保護化剤と、必要に応じて反応触媒とを加えて保護化反応させて、一般式(1)で示される構造単位を有するポリイミド前駆体を得ることができる。
【0065】
上記一般式(2)で示されるポリイミド前駆体は、例えば以下の方法で得ることができる。即ち、テトラカルボン酸二無水物又はテトラカルボン酸ジエステルのハロゲン化物をN−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒中にてビスアミノフェノールと、必要に応じて反応触媒とを加えて反応させる。テトラカルボン酸ジエステル化合物を合成する方法としては、例えば、上記テトラカルボン酸二無水物と上記アルコール化合物とを、有機溶剤中、塩基の存在下で混合することにより得られる。
【0066】
上記方法にて得られた反応生成物を、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、アセトンなどの貧溶媒中で結晶化させ、ろ別、乾燥することで、精製された上記一般式(2)で示される構造単位を有するポリイミド前駆体を得ることができる。また、得られたポリイミド前駆体をテトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどのアプロティックな有機溶媒中にてR3を有する水酸基の保護化剤と、必要に応じて反応触媒とを加えて保護化反応させて一般式(2)で示される構造単位を有するポリイミド前駆体を得ることができる。
【0067】
上記一般式(3)で示されるポリイミド前駆体は、上記一般式(1)で示される構造とともに、その一部にジカルボン酸又はその誘導体とビスアミノフェノールとの反応により形成される構造単位(好ましくはポリベンゾオキサゾール前駆体の構造単位)を有しているものである。この場合、一般式(1)で示される構造の割合は、全繰り返し単位中50%以下であることが好ましい。
【0068】
また、環化してベンゾオキサゾール環を形成しうるポリヒドロキシアミド等のポリベンゾオキゾール前駆体としては、下記一般式(5)
【化5】

(式中、R9は二価の有機基、R4は四価の有機基、R6は水素原子又は一価の有機基でありこれらは同一であっても異なっていてもよく、fは繰り返し数を示す整数であり、2〜100,000である。)で表される構造単位を主とするポリベンゾオキサゾール前駆体が好ましいものとして挙げられる。
【0069】
上記一般式(5)におけるR4としては上記一般式(3)におけるR4、R6としては上記一般式(3)におけるR6、R9としては上記一般式(3)におけるR7と同様の構造がそれぞれ具体例として挙げられる。
【0070】
また、上記一般式(3)中のR7、一般式(5)中のR9となるために用いられるジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4'−ジカルボキシビフェニル、4,4'−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4'−ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(p−カルボキシフェニル)プロパン、5−tert−ブチルイソフタル酸、5−ブロモイソフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、5−クロロイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族系ジカルボン酸、1,2−シクロブタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸等の脂肪族系ジカルボン酸などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
これらの化合物を、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0071】
上記の他、(A)成分としては、上記以外のポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を用いることもできるが、各種特性の点からは上記ポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体を用いることが好ましい。
いずれの樹脂もアルカリ可溶性を付与するためには、カルボキシル基、フェノール性水酸基等のアルカリ可溶性を付与できる官能基を有するものであることが好ましく、このような官能基を有する樹脂を用いて特性向上する場合の問題点を、本発明の感光性樹脂組成物及び半導体装置の製造方法は、解決することができるものである。
【0072】
(A)成分の分子量は、特に制限はないが、一般に重量平均分子量(Mw)で10,000〜200,000であることが好ましい。なお、分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定し、標準ポリスチレン換算で算出することができる。
【0073】
〔(B)成分〕
本発明の樹脂組成物は、(B)複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物(以下、(B)成分とする)を含む。複素環式化合物とは、2種又はそれ以上の元素の原子(炭素のほか、窒素、酸素、硫黄など)から環が構成されてなる環式化合物をいう。複素環式化合物としては、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、2H−ピラン環及び6H−ピラン環、トリアジン環を有する化合物等が挙げられ、中でも炭素原子と窒素原子を含むトリアゾール環、ピロール環、ピラゾール環、チアゾール環、イミダゾール環及びテトラゾール環を有する化合物が好ましい。
【0074】
上記チオ尿素類としては、モノメチルチオ尿素、チオ尿素、ジメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
上記複素環状化合物及びメルカプト基を有する化合物として、具体的には、ピロール、3−メチルピロール、2,4−ジメチルピロール、2,5−ジメチルピロール、2−エチルピロール、インドール、5−ヒドロキシインドール、ピラゾール、4−メチルピラゾール、3−アミノピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジイソプロピルピラゾール、3−アミノ−5−ヒドロキシピラゾール、インダゾール、5−アミノインダゾール、6−アミノインダゾール、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、4−イミダゾールカルボン酸、4−メチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、5−メチルベンズイミダゾール、2−アミノベンズイミダゾール、5,6−ジメチルベンズイミダゾール、2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメチル−1,3,4−チアジゾール、4−フェニル−1,2,3−チアジゾール、2−アミノ−1,3,4−チアジゾール、2−アミノ−5−エチル−1,3,4−オキサジアゾール、チアゾール、2−アミノチアゾール、2−メチルチアゾール、2−メトキシチアゾール、2−エトキシチアゾール、2−イソブチルチアゾール、2−トリメチルシリルチアゾール、5−トリメチルシリルチアゾール、4−メチルチアゾール、4,5−ジメチルチアゾール、2−エチルチアゾール、2,4−ジメチルチアゾール、2−アミノ−5−メチルチアゾール、2−アミノ−4−メチルチアゾール、2,4,5−トリメチルチアゾール、ベンゾチアゾール、2−メチルベンゾチアゾール、2,5−ジメチルベンゾチアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,5−トリアゾール、3−メルカプト−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3,5−ジメチル−4H−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3,5−ジプロピル−4H−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−イソプロピル−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3−メルカプト−5−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−5−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、3,5−ジアミノ−1H−1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5,6−ジメチルベンゾトリアゾール、5−アミノ−1H−ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール−4−スルホン酸、1H−テトラゾール、5−メチル−1H−テトラゾール、5−(メチルチオ)−1H−テトラゾール、5−(エチルチオ)−1H−テトラゾール、5−フェニル−1H−テトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、5−ニトロ−1H−テトラゾール1−メチル−1H−テトラゾール、5,5’−ビス−1H−テトラゾール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0076】
上記化合物のうち、1H−テトラゾール、5置換−1H−テトラゾール、1置換−1H−テトラゾール及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール及びその誘導体、1,2,3−ベンゾトリアゾール、5置換−1H−ベンゾトリアゾール、6置換−1H−ベンゾトリアゾール、5,6置換−1H−ベンゾトリアゾール及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−テトラゾール、5,5’−ビス−1H−テトラゾールが特に好ましい。
【0077】
本発明における(B)成分は、樹脂と基板(銅及び銅合金)との間の腐食を防ぎ、かつ密着性を向上させるために用いられるものである。
【0078】
本発明における(B)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して、通常1種類につき、0.1〜10重量部、2種類以上を組み合わせる場合は合計で0.1〜10重量部が好ましい。より好ましくは、0.2〜5重量部の範囲である。(B)成分の配合量が0.1重量部未満であると金属層への密着性の向上効果が低下する傾向があり、10重量部を超えるとそれ以上配合しても密着性の大きな向上が見込まれない。
【0079】
〔(C)成分〕
本発明の感光性樹脂組成物は、構造中にフッ素を含まない樹脂と共に(C)成分である感光剤を含む。(C)成分としては、構造中にフッ素を含まない感光剤であることが必要である。感光剤とは、光に反応して、その組成物から形成された膜の現像液に対する機能を有するものである。感光剤に特に制限はないが、光により酸又はラジカルを発生するものであることが好ましい。
【0080】
ポジ型感光性樹脂の場合は、光により酸を発生するもの(光酸発生剤)であることがより好ましい。光酸発生剤は、ポジ型感光性樹脂においては、光の照射により酸を発生し、光の照射部のアルカリ水溶液への可溶性を増大させる機能を有するものである。そのような光酸発生剤としては、o−キノンジアジド化合物、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩などが挙げられ、o−キノンジアジド化合物が感度が高く好ましいものとして挙げられる。
【0081】
上記o−キノンジアジド化合物は、例えば、o−キノンジアジドスルホニルクロリド類とヒドロキシ化合物、アミノ化合物などとを脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることで得られる。上記o−キノンジアジドスルホニルクロリド類としては、例えば、ベンゾキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド等が使用できる。
【0082】
上記ヒドロキシ化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,3’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン,2,3,4,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、4b,5,9b,10−テトラヒドロ−1,3,6,8−テトラヒドロキシ−5,10−ジメチルインデノ[2,1−a]インデン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが使用できる。
【0083】
上記アミノ化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどが使用できる。
【0084】
上記o−キノンジアジドスルホニルクロリドとヒドロキシ化合物及び/又はアミノ化合物とは、o−キノンジアジドスルホニルクロリド1モルに対して、ヒドロキシ基とアミノ基の合計が0.5〜1当量になるように配合されることが好ましい。脱塩酸剤とo−キノンジアジドスルホニルクロリドの好ましい配合割合は、0.95/1〜1/0.95の範囲である。好ましい反応温度は0〜40℃、好ましい反応時間は1〜10時間である。
【0085】
反応溶媒としては、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、N−メチルピロリドン等の溶媒が用いられる。脱塩酸剤としては、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンなどが挙げられる。
【0086】
また、樹脂(A)の構造において、アクリロイル基、メタクリロイル基のような光架橋性基を有する基がある場合は、(C)成分として、ラジカルを発生するもの、即ち光重合開始剤を用いることで、ネガ型感光性樹脂組成物として用いることができる。これは光の照射による架橋反応によって光の照射部のアルカリ水溶液への可溶性を低下させる機能を有するものである。
【0087】
本発明の感光性樹脂組成物において、(C)成分の配合量は、露光部と未露光部の溶解速度差と、感度の許容幅の点から、(A)成分100重量部に対して5〜100重量部が好ましく、8〜40重量部がより好ましい。
【0088】
〔(D)成分〕
本発明の樹脂組成物に使用される(D)成分である溶剤としては、構造中にフッ素を含まないことが必要であり、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ベンジル、n−ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、3−メチルメトキシプロピオネート、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、テトラメチレンスルホン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン等が挙げられる。
【0089】
これらの溶剤は、単独で又は2種以上併用して用いることができる。また、使用する溶剤の量は特に制限はないが、一般に樹脂組成物中溶剤の割合が20〜90重量%となるように調整される。
【0090】
〔その他の添加成分〕
上記感光性樹脂組成物において、上記(A)〜(D)成分に加えて、(1)溶解促進剤、(2)溶解阻害剤、(3)密着性付与剤、(4)界面活性剤又はレベリング剤などの成分を配合しても良い。ただし、これら成分の構造にフッ素を含まないことが必要である。
【0091】
((1)溶解促進剤)
本発明においては、樹脂組成物をアルカリ可溶性とする場合に、さらに(A)成分のアルカリ水溶液に対する溶解性を促進させる溶解促進剤、例えばフェノール性水酸基を有する化合物を含有させることができる。フェノール性水酸基を有する化合物は、加えることでアルカリ水溶液を用いて現像する際に露光部の溶解速度が増加し感度が上がり、また、パターン形成後の膜の硬化時に、膜の溶融を防ぐことができる。
【0092】
本発明に使用することのできるフェノール性水酸基を有する化合物に特に制限はないが、フェノール性水酸基を有する低分子化合物としては、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、ビスフェノールA、B、C、E、F及びG、4,4’,4’’−メチリジントリスフェノール、2,6−[(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノール、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、4,4’−[1−[4−[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、4,4’,4’’−エチリジントリスフェノール、4−[ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−2−エトキシフェノール、4,4’−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3−ジメチルフェノール]、4,4’−[(3−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,6−ジメチルフェノール]、4,4’−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,6−ジメチルフェノール]、2,2’−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5−ジメチルフェノール]、2,2’−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5−ジメチルフェノール]、4,4’−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,6−トリメチルフェノール]、4−[ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)メチル]−1,2−ベンゼンジオール、4,6−ビス[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4,4’−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3−メチルフェノール]、4,4’,4’’−(3−メチル−1−プロパニル−3−イリジン)トリスフェノール、4,4’,4’’,4’’’−(1,4−フェニレンジメチリジン)テトラキスフェノール、2,4,6−トリス[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,3−ベンゼンジオール、2,4,6−トリス[(3,5−ジメチル−2−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,3−ベンゼンジオール、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ビス[(ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メチル]フェニル]−フェニル]エチリデン]ビス[2,6−ビス(ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メチル]フェノールなど挙げることができる。
【0093】
分子量が大きくなると露光部の溶解促進効果が小さくなるので、中でも分子量が1,500以下の化合物が好ましい。下記一般式(6)に挙げられるものが、露光部の溶解促進効果と膜の硬化時の溶融を防止する効果のバランスに優れ、特に好ましい。
【0094】
【化6】

(式中、Zは単結合又は2価の有機基を示し、各Rは各々独立にアルキル基又はアルケニル基を示し、g及びhは各々独立に1又は2であり、i及びjは各々独立に0〜3の整数である。)
【0095】
フェノール性水酸基を有する化合物の成分の配合量は、現像時間と、未露光部残膜率の許容幅の点から、(A)成分100重量部に対して1〜30重量部が好ましく、3〜25重量部がより好ましい。
【0096】
((2)溶解阻害剤)
本発明においては、樹脂組成物をアルカリ可溶性とする場合に、さらに(A)成分のアルカリ水溶液に対する溶解性を阻害する化合物である溶解阻害剤を含有させることができる。具体的には、ジフェニルヨードニウムニトラート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムニトラート、ジフェニルヨードニウムブロマイド、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヨーダイト等である。
【0097】
これらの溶解阻害剤は、効果的に溶解阻害を起こし、残膜厚や現像時間をコントロールするのに役立つ。上記溶解阻害剤の配合量は、感度と現像時間の許容幅の点から、(A)成分100重量部に対して0.01〜50重量部が好ましく、0.01〜30重量部がより好ましく、0.1〜20重量部がさらに好ましい。
【0098】
((3)密着性付与剤)
本発明の樹脂組成物は、硬化膜の基板との接着性を高めるために、有機シラン化合物、アルミキレート化合物等の密着性付与剤を含有させることができる。
【0099】
上記有機シラン化合物としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、尿素プロピルトリエトキシシラン、メチルフェニルシランジオール、エチルフェニルシランジオール、n−プロピルフェニルシランジオール、イソプロピルフェニルシランジオール、n−ブチルフェニルシランジオール、イソブチルフェニルシランジオール、tert−ブチルフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオール、エチルメチルフェニルシラノール、n−プロピルメチルフェニルシラノール、イソプロピルメチルフェニルシラノール、n−ブチルメチルフェニルシラノール、イソブチルメチルフェニルシラノール、tert−ブチルメチルフェニルシラノール、エチルn−プロピルフェニルシラノール、エチルイソプロピルフェニルシラノール、n−ブチルエチルフェニルシラノール、イソブチルエチルフェニルシラノール、tert−ブチルエチルフェニルシラノール、メチルジフェニルシラノール、エチルジフェニルシラノール、n−プロピルジフェニルシラノール、イソプロピルジフェニルシラノール、n−ブチルジフェニルシラノール、イソブチルジフェニルシラノール、tert−ブチルジフェニルシラノール、フェニルシラントリオール、1,4−ビス(トリヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(メチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(エチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(プロピルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ブチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジメチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジエチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジプロピルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジブチルヒドロキシシリル)ベンゼン等が挙げられる。アルミキレート化合物としては、例えば、トリス(アセチルアセトネート)アルミニウム、アセチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0100】
これらの密着性付与剤を用いる場合は、(A)成分100重量部に対して、0.1〜30重量部が好ましく、0.5〜20重量部がより好ましい。
【0101】
((4)界面活性剤又はレベリング剤)
また、本発明の樹脂組成物は、塗布性、例えばストリエーション(膜厚のムラ)を防いだり、現像性を向上させたりするために、適当な界面活性剤又はレベリング剤を添加することができる。
【0102】
このような界面活性剤又はレベリング剤としては、例えば、ポリオキシエチレンウラリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等があり、市販品としては、メガファックスF171、F173、R−08(大日本インキ化学工業株式会社製商品名)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム株式会社商品名)、オルガノシロキサンポリマーKP341、KBM303、KBM403、KBM803(信越化学工業株式会社製商品名)等が挙げられる。
【0103】
[パターン硬化膜の製造方法]
次に、本発明の感光性樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法について説明する。本発明によるパターン硬化膜の製造方法は、上述した感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥する工程と、上記乾燥工程により得られた感光性樹脂膜を所定のパターンに露光する工程と、上記露光後の感光性樹脂膜を現像する工程と、及び上記現像後の感光性樹脂膜を加熱処理する工程とを経て、ポリイミド樹脂等の樹脂パターンとすることができる。以下、各工程について説明する。
【0104】
(塗布・乾燥(成膜)工程)
まず、上述した感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥する工程では、ガラス基板、半導体、金属酸化物絶縁体(例えばTiO、SiO等)、窒化ケイ素などの支持基板上に、上記感光性樹脂組成物をスピンナーなどを用いて回転塗布後、ホットプレート、オーブンなどを用いて乾燥する。これにより、感光性樹脂組成物の被膜である感光性樹脂膜が得られる。
【0105】
(露光工程)
次に、露光工程では、支持基板上で被膜となった感光性樹脂膜に、マスクを介して紫外線、可視光線、放射線などの活性光線を照射することにより露光を行う。
【0106】
(現像工程)
現像工程では、活性光線が露光した感光性樹脂膜の露光部を現像液で除去することによりパターンが得られる。現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどのアルカリ水溶液が好ましいものとして挙げられる。これらの水溶液の塩基濃度は、0.1〜10重量%とされることが好ましい。さらに、上記現像液にアルコール類や界面活性剤を添加して使用することもできる。これらはそれぞれ、現像液100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲で配合することができる。
【0107】
(加熱処理工程)
次いで、加熱処理工程では、現像後得られたパターンを加熱処理することにより、例えばポリイミド前駆体の場合はイミド閉環が生じ、イミド環を有する耐熱性のポリイミドのパターンを形成することができる。加熱処理工程における加熱温度は、120〜450℃が好ましく、250〜400℃がより好ましい。
【0108】
また、加熱処理は、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線硬化炉、電子線硬化炉、及びマイクロ波硬化炉等を用いて行う。また、大気中、又は窒素等の不活性雰囲気中いずれを選択することもできるが、窒素下で行う方が感光性樹脂膜の酸化を防ぐことができるので望ましい。上記加熱温度範囲は従来の加熱温度よりも低いため、支持基板やデバイスへのダメージを小さく抑えることができる。従って、本発明のパターンの製造方法を用いることによって、デバイスが歩留り良く製造できる。また、プロセスの省エネルギー化につながる。
【0109】
[半導体装置の製造方法]
次に、上述した感光性樹脂組成物を使用して半導体装置を製造する方法について説明する。本発明による半導体装置の製造方法は、半導体基板上に形成された少なくともパッド電極及び金属配線上に無機絶縁膜を形成する工程と、上記無機絶縁膜上にフッ素非含有有機絶縁膜を形成する工程と、上記フッ素非含有有機絶縁膜をパターン加工する工程と、上記パターン加工により露出された上記無機絶縁膜をフッ素含有ガスによりドライエッチングして上記パッド電極部を露出させる工程とを含む半導体装置の製造方法であって、上記フッ素非含有有機絶縁膜が、(A)樹脂構造にフッ素を含まない樹脂と、及び(B)複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物とを含有する樹脂組成物から形成されるものである。以下、本発明による半導体装置の製造方法について、図面に基づいてさらに詳細に説明する。
【0110】
図1〜図6は、本発明の半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。これらの図において、Si基板等の半導体素子又は半導体基板1には、回路素子やパッド電極(第1導体層)2を含む金属配線が形成されており、パッド電極2及び半導体基板1がシリコン酸化膜等の無機絶縁膜3で被覆されている。無機絶縁膜3が被覆される対象としては、Si、SiO2、Si34、Ta、Ti、Ta25、TaN、Al等からなる基板部分、膜、配線等が挙げられる。上記半導体基板1上に形成された無機絶縁膜3上に、スピンコート法等で第1の有機絶縁膜4としての感光性を有するポリイミド前駆体等の膜が形成される(図1)。
【0111】
次に、この感光性を有するポリイミド樹脂層である第1の有機絶縁膜4の所定部分に窓5Aを形成するパターンを描いたマスク(図示しない)上から光を照射した後、アルカリ水溶液にて現像してパターンを形成する。その後、加熱して第1の有機絶縁膜4としてのポリイミド膜とする(図2)。
【0112】
次に、このパターン加工されたポリイミド膜(第1の有機絶縁膜4)をマスクとして、無機絶縁膜3が酸素、四フッ化炭素等のガスを用いるドライエッチング手段によって選択的にエッチングされ、窓5Bが空けられる(図3、4)。ドライエッチングは、高出力で行うのが好ましい。装置によって設定できる最大出力の仕様は異なるが、より高出力条件で行うことにより、エッチングレートが向上するため、より短時間でエッチング処理を行うことができる。
【0113】
エッチング時に使用するフッ素含有ガスとしては、フッ素化メタンが挙げられ、フッ素化メタンとしては、テトラフルオロメタン、トリフルオロメタン、ジフルオロメタン、フルオロメタンが挙げられる。これらの中で特に好ましいものは、テトラフルオロメタン、トリフルオロメタン、ジフルオロメタンである。これらのフッ素化メタンは、単独で用いても混合して用いてもよい。
【0114】
さらに、フッ素化メタンと酸素からなる混合ガスを使用することができ、この場合、酸素の割合が5〜30容積%であることが好ましい。また、フッ素化メタンと水素からなる混合ガスも使用することができ、この場合、水素の割合はフッ素化メタンに対して10〜30容積%が好ましい。フッ素化メタンに対する酸素の割合が30容積%を越える又は水素の割合が30容積%を超える場合には有機絶縁膜の表面が荒れるために外観上の問題を生じる可能性がある。Si、SiO、Si、Ta、Ti、Ta、TaN等の無機絶縁膜に対して、最適なドライエッチング処理条件を選択することによってより短時間でエッチング加工が可能である。
【0115】
エッチング時に設定するプロセス圧力に関しては、低い方が好ましい。系内の圧力を低く抑えることによって、エッチング時、残渣を留めることなく排出することができる。系内のプロセス圧力は0.5Paから25Paであり、好ましくは1Paから15Paである。下限値未満の場合は、プラズマが発生しなくなるため、エッチング処理を行うことができなくなる可能性がある。その他の半導体装置の製造方法は、公知の方法を用いることができる。
【0116】
さらに、公知の写真食刻技術を用いて、第2導体層(銅等で形成される第2の金属配線パターン層)6を形成させ、第1導体層2との電気的接続が完全に行われる(図5)。
【0117】
次に、第2の有機絶縁膜(表面保護膜層)7が形成される(図6)。図1〜6の例では、上記感光性樹脂組成物をスピンコート法にて塗布、乾燥し、所定部分に窓8を形成するパターンを描いたマスク上から光を照射した後、アルカリ水溶液にて現像してパターンを形成し、加熱してポリイミド樹脂膜である第2の有機絶縁膜(表面保護膜)7とする。この表面保護膜層としての第2の有機絶縁膜7は、導体層を外部からの応力、α線などから保護するものであり、得られる半導体装置は信頼性に優れる。
【0118】
なお、上記の例において、第1の有機絶縁膜(層間絶縁層)4と、第2の有機絶縁膜(表面保護膜層)7とを、共に本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成することが可能であり、この場合、有機絶縁膜をマスクとして無機絶縁膜をドライエッチングで開口した後に残渣が生じず、残渣除去工程が不要であることから、プロセスを短縮化でき、第2層としても金属配線や金属層などの銅及び銅合金を腐食させない上、両層とも同じ組成であるため、熱履歴に対しても強く、優れた信頼性を発揮することができる。3層以上の多層配線構造を形成する場合には、上記の工程を繰り返して行い各層を形成することができる。
【0119】
従来の半導体装置の製造方法、特にアルカリ可溶性の感光性樹脂組成物を用いた場合では、一般に有機絶縁膜にフッ素を含む感光性樹脂組成物を使用していたため、無機絶縁膜からなる積層パッシベーション膜に開口部を形成する際のドライエッチングに用いるフッ素含有ガスと有機絶縁膜中のフッ素含有成分とが反応し、残渣が形成することによって半導体装置の歩留まり、信頼性を著しく低下させるという問題があった。この残渣の堆積物は除去が困難であり、酸素プラズマ処理、薬液処理等の除去工程が必要とされる。また、銅及び銅合金からなる金属配線又は金属層が形成された基板上にポリイミド前駆体ワニス等の樹脂組成物を塗布し多層配線板用絶縁膜を形成する際、ポリイミド前駆体が銅又は銅合金に腐食作用を引き起こし、絶縁不良、断線、ショート等を生じるといった問題があった。
【0120】
これに対し本発明では、構造中にフッ素を含まない樹脂と複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有する樹脂組成物を加熱処理して有機絶縁膜を形成することにより、ドライエッチングガスと有機絶縁膜との反応によるフッ素残渣が生成しない。このため、残渣除去工程が不要であることから、プロセスを短縮化できる。さらに、金属配線や金属層などの銅及び銅合金を腐食させることがないため、本発明による有機絶縁膜を用いることにより、欠陥を低減でき、信頼性に優れた半導体装置を高収率で得ることができる。
【0121】
[電子部品]
次に、本発明による電子部品について説明する。本発明による電子部品は、上述した感光性樹脂組成物を用いて上記パターン硬化膜の製造方法によって形成されるパターンを有する。このパターンは、具体的には、半導体装置の表面保護膜や層間絶縁膜、多層配線板の層間絶縁膜等の形成に使用することができる。また、上記電子部品は、本発明による半導体装置の製造方法によって製造することができ、電子部品としては、半導体装置や液晶表示素子等の表示素子、多層配線板、各種電子デバイス等を含む。特に、チップサイズパッケージ又はウエハレベルパッケージが好ましい用途として挙げられる。
【0122】
また、本発明による電子部品は、上記感光性樹脂組成物を用いて形成される表面保護膜や層間絶縁膜を有すること以外は特に制限されず、様々な構造をとることができる。例えば、本発明の感光性樹脂組成物は、チップサイズパッケージ又はウエハレベルパッケージの層間絶縁膜用及び表面保護膜用として好適である。
【実施例】
【0123】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明についてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例では、有機溶剤は脱水処理したものを用い、ポリマーの合成操作は、窒素雰囲気下で行った。
【0124】
ポリマーの合成
(合成例1)
攪拌機、温度計を備えた0.2リットルのフラスコ中に、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物20.16g、N−メチルピロリドン83.93g、イソプロピルアルコール7.81g、ジアザビシクロウンデセン0.30gを仕込み、室温で120時間攪拌し反応させて、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジイソプロピルエステルのN−メチルピロリドン溶液を得た。次に、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジイソプロピルエステルのN−メチルピロリドン溶液103.56gをフラスコに入れて0℃に冷却し、塩化チオニル12.44gを滴下し、30分反応させて、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジイソプロピルエステルジクロリドのN−メチルピロリドン溶液を得た。次いで、攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン53.72gを仕込み、2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)イソプロピリデン13.44gを添加し、攪拌溶解した後、ピリジン16.32gを添加し、温度を0〜5℃に保ちながら、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジイソプロピルエステルジクロリドのN−メチルピロリドン溶液107.56gを20分間で滴下した後、1時間攪拌を続けた。得られた溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で3回洗浄した後、減圧してポリイミド前駆体(以下、ポリマーIとする)を得た。GPC(カラム:日立化成(株)製GL−S300MDT−5)を用いて測定した重量平均分子量は、23,800であった。
【0125】
(合成例2)
攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸15.48g、N−メチルピロリドン90gを仕込み、このフラスコを5℃に冷却した後、塩化チオニル12.64gを滴下し、30分間反応させて、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリドの溶液を得た。次いで、攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン87.5gを仕込み、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン18.31gを添加し、攪拌溶解した後、ピリジン8.53gを添加し、温度を0〜5℃に保ちながら、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリドの溶液を30分間で滴下した後、30分間攪拌を続けた。得られた溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で3回洗浄した後、減圧してポリヒドロキシアミド(以下、ポリマーIIとする)を得た。GPC(カラム:日立化成(株)製GL−S300MDT−5)を用いて測定した重量平均分子量は17,900であった。
【0126】
(合成例3)
合成例1で使用した2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)イソプロピリデンを2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンに置き換えた以外は、合成例1と同様の条件にて合成を行った。得られたポリイミド前駆体(以下、ポリマーIIIとする)の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は22,000であった。
【0127】
(GPC法による重量平均分子量の測定条件)
測定装置;検出器:株式会社日立製作所製L4000 UV
ポンプ:株式会社日立製作所製L6000
株式会社島津製作所製C−R4A Chromatopac
測定条件;カラム:Gelpack GL−S300MDT−5 x2本
溶離液:THF/DMF=1/1 (容積比)
LiBr(0.03mol/l)、H3PO4(0.06mol/l)
流速:1.0ml/min、検出器:UV270nm
ポリマー0.5mgに対して溶媒[THF/DMF=1/1 (容積比)]1mlの溶液を用いて測定した。
【0128】
(合成ポリマーを用いた感光特性評価)
実施例1〜7及び比較例1〜7
上記(A)成分100重量部に対し、(B)、(C)、(D)成分及び添加成分を表1に示す所定量にて配合した。
【0129】
【表1】

【0130】
表1中、BLO:γ−ブチロラクトン、PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、NMP:N−メチルピロリドンを表し、BLO/NMPは、両者を混合して用いたことを表す。各BLO/NMPは、1/1(重量比)の配合比でそれぞれ153重量部添加し、各BLO/PGMEAは、4/1(重量比)の配合比でそれぞれ153重量部添加した。( )内は、ポリマー100重量部に対する添加量を重量部で示した。また、B1〜B3、C1及びC2、及びE1〜E4は、下記の化学式(7)〜(9)に示す化合物である。
【0131】
【化7】

【0132】
【化8】

【0133】
【化9】

【0134】
得られた感光性樹脂組成物の溶液を直径5インチのシリコンウエハ、及び直径5インチのシリコンウエハ上にTiN膜を約200Åの膜厚でスパッタ形成し、その上にCu膜を約500Åの膜厚でスパッタ形成したウエハ(以下、「Cuウエハ」という。)上にスピンコートして、乾燥膜厚3〜10μmの塗膜を形成し、そののち干渉フィルターを介して、超高圧水銀灯を用いてパターンマスクを介し、i線(365nm)露光を行った。露光後、120℃で3分間加熱し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38重量%水溶液にて露光部のシリコンウエハ及びCuウエハが露出するまで現像した後、水でリンスしパターン形成に必要な最小露光量と解像度を求めた。その結果を表2に示した。
【0135】
【表2】

【0136】
以上の結果から、本発明の(B)成分であるB1、B2、B3を含有する実施例1〜7及び比較例4,5,7の感光性樹脂組成物では、同条件下での感光特性評価においてシリコンウエハ及びCuウエハともに同等の感度、解像度が得られた。一方、(B)成分を含有しない比較例1〜3,6では、より高い値の最小露光量を必要としており、シリコンウエハに比べ、Cuウエハでは感度が低下した。
【0137】
(無機絶縁膜上への有機絶縁膜の作成)
Al配線が形成された直径5インチのシリコンウエハ上に、プラズマCVD法により1μm膜厚の無機絶縁膜としてSiO2膜を作成した。この無機絶縁膜上に、上記実施例1〜7及び比較例1〜7の感光性樹脂組成物溶液をスピンコートして、乾燥膜厚3〜10μmの塗膜を形成し、そののち干渉フィルターを介して、パッド電極部を超高圧水銀灯にてパターンマスクを介し、i線(365nm)露光を行った。露光後、120℃で3分間加熱し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38重量%水溶液にて露光部の無機絶縁膜が露出するまで現像した後、水でリンスしパターン形成した。さらに、このシリコンウエハをガスオーブン中、窒素雰囲気下、150℃で30分加熱した後、さらに350℃で1時間加熱して有機絶縁膜を得た。
【0138】
(無機絶縁膜のエッチング)
次いで、パターン化された有機絶縁膜を有するシリコンウエハをエッチング装置にて、酸素:テトラフルオロメタン=20:80の容積%の比からなる混合ガスを流量25sccmにより、出力100W、プロセス圧力10Paで7分間無機絶縁膜のエッチング処理を行った。このとき、有機絶縁膜の膜厚の減少は約0.8μmであった。50μm×50μmの正方形パターン開口部(パッド電極部)を走査型電子顕微鏡にて観察し、残渣の有無を評価した。その結果を表3に示した。
【0139】
【表3】

【0140】
以上の結果から、構造中にフッ素を含まないポリマーIを用いた実施例1〜7及び比較例1,2の感光性樹脂組成物から作製した有機絶縁膜は、ドライエッチングによる残渣は見られなかった。
一方、構造中にフッ素を含むポリマーII及びIIIを用いた比較例3〜7の感光性樹脂組成物から作製した有機絶縁膜は、ドライエッチング後、パッド電極部に残渣が見られた。
【0141】
直径5インチのCuウエハ上に実施例1〜7の感光性樹脂組成物溶液をパターン形成し、ガスオーブン中、窒素雰囲気下、150℃で30分加熱した後、さらに350℃で1時間加熱して有機絶縁膜を得た。得られたCuウエハ上の硬化膜を用いて、密着性試験としてスタッドプル試験を行った。スタッドプル試験には、フォトテクニカ(株)製スタッドピン(エポキシ接着剤付Al)を用いた。スタッドピンと硬化膜との接着は、150℃のオーブンで1時間硬化することにより行った。
【0142】
その結果、エポキシ接着層の凝集破壊が起こり、実施例1〜7の硬化膜とCuウエハとの接着強度はエポキシ凝集密度強度よりも大きく、密着性は十分であった。また、硬化膜を形成したCuウエハを、プレッシャークッカーを用いて121℃/1.2MPaで100時間処理を行った後、同様にスタッドプル試験を行った。その結果、エポキシ接着層の凝集破壊が起こり、実施例1〜7の硬化膜とCuウエハとの接着強度はPCT処理後もほとんど劣化しなかった。
【0143】
これらの結果から、構造中にフッ素を含まないポリマー、(B)成分を含有した感光性樹脂組成物を使用した実施例1〜7は、シリコンウエハ上と同等の感度、解像度がCuウエハでも得られ、その硬化膜はCuウエハと十分な接着性を示した。さらに、ドライエッチング後、パッド電極部に残渣は見られず、良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0144】
以上のように、本発明による半導体装置及び半導体装置の製造方法は、有機絶縁膜にフッ素を含まない樹脂膜を用いることにより、有機絶縁膜をマスクとして無機絶縁膜をドライエッチングで開口した後に残渣が生じず、残渣除去工程が不要であることから、プロセスを短縮化できる。また、複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する組成物を用いて有機絶縁膜を形成することにより、金属配線や金属層などの銅及び銅合金を腐食させないので、信頼性に優れた半導体装置を高収率で得ることができ、また組成物の感度にも優れるという効果を奏する。この有機絶縁膜は、良好な形状と接着性、耐熱性に優れたパターンを有し、デバイスへのダメージが避けられ、信頼性の高い電子部品が得られる。従って、この有機絶縁膜は、チップサイズパッケージ又はウエハレベルパッケージの層間絶縁膜用及び表面保護膜用として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明の実施の形態による多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。
【図2】本発明の実施の形態による多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。
【図3】本発明の実施の形態による多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。
【図4】本発明の実施の形態による多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。
【図5】本発明の実施の形態による多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。
【図6】本発明の実施の形態による多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。
【符号の説明】
【0146】
1 半導体基板
2 パッド電極(第1導体層)
3 無機絶縁膜
4 第1の有機絶縁膜(層間絶縁層)
5A、5B 窓
6 第2導体層
7 第2の有機絶縁膜(表面保護層)
8 窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成された少なくともパッド電極及び金属配線上に無機絶縁膜を形成する工程と、
前記無機絶縁膜上にフッ素非含有有機絶縁膜を形成する工程と、
前記フッ素非含有有機絶縁膜をパターン加工する工程と、
前記パターン加工により露出された前記無機絶縁膜をフッ素含有ガスによりドライエッチングして前記パッド電極部を露出させる工程とを含む半導体装置の製造方法であって、
前記フッ素非含有有機絶縁膜が、(A)樹脂構造にフッ素を含まない樹脂と、及び(B)複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物とを含有する樹脂組成物から形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記フッ素非含有有機絶縁膜を形成するための樹脂組成物に含まれる樹脂(A)が、その樹脂構造にフッ素を含まないポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体からなる樹脂組成物を加熱処理して得られた膜であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記フッ素非含有有機絶縁膜を形成するための樹脂組成物が、樹脂(A)としてその樹脂構造にフッ素を含まないポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体と、(B)複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、及び感光剤(C)とを含む感光性樹脂組成物であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記感光性樹脂組成物が、アルカリ水溶液で現像及びパターン加工可能であることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記(B)成分が複素環状化合物であり、その化合物が、トリアゾール環、ピロール環、ピラゾール環、チアゾール環、イミダゾール環及びテトラゾール環からなる群から選択される少なくとも1種の構造を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記複素環状化合物が、1H−テトラゾール、5置換−1H−テトラゾール、1置換−1H−テトラゾール及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記複素環状化合物が、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール及びその誘導体、1,2,3−ベンゾトリアゾール、5置換−1H−ベンゾトリアゾール、6置換−1H−ベンゾトリアゾール、5,6置換−1H−ベンゾトリアゾール及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
さらに工程として、フッ素非含有有機絶縁膜及び露出されたパット電極部上に第2の金属配線パターン層を形成する工程と、さらにその上に第2のフッ素非含有有機絶縁膜を形成する工程とを含み、前記第2のフッ素非含有有機絶縁膜も、(A)樹脂構造にフッ素を含まない樹脂と、及び(B)複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物とを含有する樹脂組成物から形成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8のうち、いずれか1項に記載の半導体装置の製造方法により製造されることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置の構造を有することを特徴とする電子部品。
【請求項11】
チップサイズパッケージ又はウエハレベルパッケージであることを特徴とする請求項10に記載の電子部品。
【請求項12】
半導体素子上に形成された少なくともパッド電極及び金属配線上に無機絶縁膜を形成する工程と、前記無機絶縁膜上にフッ素非含有有機絶縁膜を形成する工程と、前記フッ素非含有有機絶縁膜をパターン加工する工程と、前記パターン加工により露出された前記無機絶縁膜をフッ素含有ガスによりドライエッチングして前記パッド電極を露出させる工程とを含む半導体装置の製造方法において、前記フッ素非含有有機絶縁膜を形成するための感光性樹脂組成物であって、(A)樹脂構造にフッ素を含まない樹脂と、(B)複素環状化合物、チオ尿素類及びメルカプト基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、(C)感光剤と、及び(D)溶剤とを含み、かつフッ素を含まないことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項13】
前記フッ素非含有有機絶縁膜を形成するための感光性樹脂組成物に含まれる樹脂(A)が、その樹脂構造にフッ素を含まないポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体であることを特徴とする請求項12に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項14】
前記感光性樹脂組成物が、アルカリ水溶液で現像及びパターン加工可能であることを特徴とする請求項12又は13に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項15】
前記(B)成分が複素環状化合物であり、その化合物が、トリアゾール環、ピロール環、ピラゾール環、チアゾール環、イミダゾール環及びテトラゾール環からなる群から選択される少なくとも1種の構造を有する化合物であることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項16】
前記複素環状化合物が、1H−テトラゾール、5置換−1H−テトラゾール、1置換−1H−テトラゾール及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項15に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項17】
前記複素環状化合物が、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール及びその誘導体、1,2,3−ベンゾトリアゾール、5置換−1H−ベンゾトリアゾール、6置換−1H−ベンゾトリアゾール、5,6置換−1H−ベンゾトリアゾール及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項15に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項18】
前記樹脂(A)が、下記一般式(1)〜(3)で表される構造単位を主とするポリイミド前駆体からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項12〜17のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
一般式(1):
【化1】

(式中、R1は四価の有機基、R2は二価の有機基、R3は水素原子又は一価の有機基であり、aは繰り返し数を示す整数であり、2〜100,000である。)
一般式(2):
【化2】

(式中、R1は四価の有機基、R4は四価の有機基、R5とR6は水素原子又は一価の有機基でありこれらは同一であっても異なっていてもよく、bは繰り返し数を示す整数であり、2〜100,000である。)
一般式(3):
【化3】

(式中、R7は二価又は四価の有機基、R4は四価の有機基、R8は二価の有機基、R5とR6は水素原子又は一価の有機基でありこれらは同一であっても異なっていてもよく、c及びdは繰り返し数を示す整数であってそれぞれ2〜100,000であり、2つの繰り返し単位はブロック又はランダムに存在する。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−283711(P2009−283711A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134628(P2008−134628)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(398008295)日立化成デュポンマイクロシステムズ株式会社 (81)
【Fターム(参考)】