説明

半導体装置

【課題】ゲルマニウム層に浅いn型不純物拡散領域を形成可能とした半導体装置を提供する。
【解決手段】ゲルマニウムを主成分とするp型半導体と、前記p型半導体の表面に選択的に設けられた一対のn型不純物拡散領域と、前記一対のn型不純物拡散領域により挟まれた前記p型半導体の上に設けられたゲート絶縁層と、前記ゲート絶縁層の上に設けられたゲート電極と、を備え、前記n型不純物拡散領域の少なくとも一部は、シリコン及び炭素から選択された少なくともいずれかの添加元素を含有していることを特徴とする半導体装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、より詳細には、ゲルマニウムを主成分としたチャネル領域を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン半導体装置の微細化に伴い駆動能力の向上が鈍化する傾向にある中、シリコンよりもキャリア移動度が優れたゲルマニウムをチャネル材料に使用すること(ゲルマニウムチャネル)が検討されている。
しかしながら、ゲルマニウムチャネルを用いたn型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:金属/酸化物/半導体型電界効果トランジスタ)については、ソース・ドレイン領域にリン(P)等のn型不純物を良好に拡散させることが困難であり、これが課題となっている。すなわち、良好な素子特性を実現させる観点からn型不純物を高濃度に浅く拡散させる必要があるが、ゲルマニウム層ではこれが困難であり、これを実現することが求められている。
【0003】
ゲルマニウム層にn型不純物を拡散させる方法に関しては、次の従来技術がある。まず、ゲルマニウム層またはゲルマニウムを含有する半導体層を形成する。その後、ゲルマニウム層またはゲルマニウム含有半導体層を非晶質状態にして、n型のドーパントを導入する。そして、ゲルマニウム層またはゲルマニウム含有半導体層を非晶質状態から結晶回復させることによって、n型の不純物拡散領域を形成する。基板を非晶質とすることによって、n型不純物拡散領域をゲルマニウム中に形成することが可能になる(特許文献1)。
【0004】
しかし、半導体装置の微細化に伴い、ゲルマニウムチャネルに接するn型不純物拡散領域を極浅く形成することが求められているところ、特許文献1ではこれを実現させる手法については開示されていない。また、特許文献1では、n型ドーパントとしてアンチモン(Sb)またはヒ素(As)のみ挙げられており、最も一般的なn型ドーパントであるリン(P)については記載がない。
【特許文献1】特開2002−110586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、ゲルマニウム層に浅いn型不純物拡散領域を形成可能とした半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、ゲルマニウムを主成分とするp型半導体と、前記p型半導体の表面に選択的に設けられた一対のn型不純物拡散領域と、前記一対のn型不純物拡散領域により挟まれた前記p型半導体の上に設けられたゲート絶縁層と、前記ゲート絶縁層の上に設けられたゲート電極と、を備え、前記n型不純物拡散領域の少なくとも一部は、シリコン及び炭素から選択された少なくともいずれかの添加元素を含有していることを特徴とする半導体装置が提供される。
【0007】
また、本発明の他の一態様によれば、ゲルマニウムを主成分とするp型半導体と、前記p型半導体の表面に選択的に設けられた一対のn型不純物拡散領域と、前記一対のn型不純物拡散領域により挟まれた前記p型半導体の上に設けられた第1のゲート絶縁層と、前記第1のゲート絶縁層の上に設けられた第1のゲート電極と、ゲルマニウムを主成分とするn型半導体と、前記n型半導体の表面に選択的に設けられた一対のp型不純物拡散領域と、前記一対のp型不純物拡散領域により挟まれた前記n型半導体の上に設けられた第2のゲート絶縁層と、前記第2のゲート絶縁層の上に設けられた第2のゲート電極と、を備え、前記n型不純物拡散領域の少なくとも一部は、シリコン及び炭素から選択された少なくともいずれかの添加元素を含有していることを特徴とする半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ゲルマニウム層に浅いn型不純物拡散領域を形成可能とした半導体装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の模式断面図である。すなわち、本実施形態の半導体装置は、図示しない基板などの上に形成されたゲルマニウムを主成分とするp型半導体10と、p型半導体10の上に形成されたゲート絶縁層12と、ゲート絶縁層12の上に形成されたゲート電極14と、p型半導体10のゲート絶縁層12との境界領域をゲート長方向の両側から挟むようにp型半導体10の表面に選択的に形成された一対のn型不純物拡散領域18と、を備えている。この半導体装置は、n型不純物拡散領域18の全部または一部に、シリコン及び炭素から選ばれる少なくともいずれかの添加元素を含有している。n型不純物拡散領域の表面には、コンタクト電極16が接合されている。
【0011】
p型半導体10は、ゲルマニウムを主成分とし、例えば、ゲルマニウムに、p型のドーパントを添加した半導体からなる。ここで、「ゲルマニウムを主成分とするp型半導体」とは、ゲルマニウムの原子濃度が85パーセント以上の半導体をいうものとする。これは、後に図13に一例を表すように、ゲルマニウムの原子濃度が85パーセントを下回ると、原子濃度が100パーセントのゲルマニウムのエネルギーバンド構造とは質的に異なったエネルギーバンド構造に変化するため、ゲルマニウムの利点である高い移動度を期待できなくなるからである。
一方、n型不純物拡散領域18は、p型半導体10の表面付近にn型のドーパントを導入することにより形成されている。そして、n型不純物拡散領域18にシリコン及び炭素から選ばれる少なくともいずれかの添加元素を添加することにより、(1)リン等のn型不純物の拡散を抑制し、さらには捕獲する、ことが可能となる。このほか、(2)n型不純物拡散領域18/p型半導体10の界面でのバンド間トンネル(Band To Band Tunneling:BTBT)リークを低減することが可能となる。また、(3)n型不純物拡散領域18とコンタクト電極16との界面にオーミック接触を確保することが可能となる。
以下、まず、(1)リン等のn型不純物の拡散を抑制しさらに捕獲する機能について説明する。
【0012】
前述したように、ゲルマニウム層に、素子特性上好ましいn型不純物拡散領域18からなるソース・ドレイン領域を形成することは、容易ではない。すなわち、ソース・ドレイン領域を極浅くしたり、ゲルマニウムチャネルに接するソース・ドレイン領域の抵抗を十分低くする、等の良好な素子特性を実現させる観点から、n型不純物を極浅く高濃度に拡散させる必要があるが、ゲルマニウム層ではこれが困難となっている。
ゲルマニウム層に良好なn型不純物拡散領域18を形成することを困難にしている理由のひとつに、ゲルマニウム層中でリンやヒ素などのn型不純物が特異な高速拡散現象を示すことが挙げられる。
【0013】
図2は、シリコン中とゲルマニウム中の温度とリンの拡散係数との関係を表すグラフ図である(N. R. Zangenberg, et. al., "Boron and phosphorus diffusion in strained and relaxed Si and SiGe", JAP 94, p.3883, (2003))。また図2には、シリコン中にゲルマニウムを原子濃度で24%及び40%添加したシリコンリッチシリコンゲルマニウム中の温度とリンの拡散係数との関係をも表した。
図2から、リンの拡散係数は、100%ゲルマニウム中の方が100%シリコン中またはシリコンリッチシリコンゲルマニウム中よりも同一温度で6桁以上高く、それぞれの素子作製温度(シリコンまたはシリコンリッチシリコンゲルマニウム:1000℃程度、ゲルマニウム:500〜800℃)で2桁以上高いことがわかる。また、シリコンリッチシリコンゲルマニウムについては、ゲルマニウム添加によりリンの拡散係数は増加するものの、40%ゲルマニウム添加においてその増加傾向は頭打ちになっており、シリコンリッチシリコンゲルマニウムのデータの外挿上に100%ゲルマニウムのデータがない。これは、シリコンとゲルマニウムとの間で拡散のメカニズムが根本的に異なっていることを意味していると考えられる。
【0014】
図3は、リンをイオン注入したゲルマニウム試料について、熱処理(アニール)の前後における深さとリン濃度との関係を表すグラフ図である。
図3から、600℃、30分間の熱処理を行った後では、リンの濃度は500nm程度の深さまで概ね一定値であり、それより深いところで急激に濃度が減少している。このような箱形(box-shaped)濃度分布は、拡散定数を一定とする通常の拡散メカニズムでは説明できず、ゲルマニウム層中のn型不純物の拡散は特異な拡散メカニズムに支配されていることがわかる。
ゲルマニウム中のn型不純物の拡散メカニズムとしては、DNCV(Doubly Negatively Charged Vacancy)モデルが現在のところ最も確からしいと考えられている。このモデルでは、n型不純物は負の二価に帯電した格子空孔に仲介されて拡散するとされている。
【0015】
以下、図4〜9を用いて、本実施形態の原理及び概要について説明する。
本実施形態は、ゲルマニウムチャネル領域に接するn型不純物拡散領域18内の不純物濃度分布を、n型不純物活性化工程の前に導入したシリコン及び炭素から選ばれる少なくともいずれかの添加元素の濃度分布によって規定した半導体装置を実現するものである。すなわち、本発明者は、ゲルマニウム層に適量のシリコンを添加することにより、n型不純物の一つであるリンの拡散が顕著に抑制されることを見出した。
【0016】
本発明者は、シリコン添加の有無によってリンの拡散がいかに変わるかを、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry:二次イオン質量分析法)測定によって調べた。試料は、p型ゲルマニウム基板にシリコンをイオン注入法により30keVのエネルギー、5×1016cm−2の注入量で添加し、その後リンをイオン注入法により30keVのエネルギー、5×1015cm−2の注入量で注入したものを、600℃または500℃で30分アニールしたものである。シリコンとリンの飛程(Projection Range:Rp)は揃えてあり、深さ20nm〜30nmである。参照用として、シリコンを添加しない試料も作製した。
【0017】
図4及び5は、シリコン添加ありのゲルマニウム試料とシリコン添加なしのゲルマニウム試料とについて、600℃アニールの前後における深さとリン濃度との関係を表すグラフ図である。ここで、図5は、図4の深さ80nm以下の領域を拡大したものである。
図6は、シリコン添加ありのゲルマニウム試料とシリコン添加なしのゲルマニウム試料とについて、500℃アニールの前後における深さとリン濃度との関係を表すグラフ図である。
図7は、シリコン添加ありのゲルマニウム試料について、400℃、500℃、及び600℃アニールの前後における深さとシリコン濃度との関係を表すグラフ図である。図7から、シリコンを原子濃度で1%以上含む領域は深さ100nmよりも浅い領域であり、シリコンの原子濃度は最大で18.5%程度であることがわかる。
【0018】
図4及び6から、シリコンを添加した場合、接合深さが顕著に浅くなっていることがわかる。図4においては、シリコンを添加しない場合の接合深さは約500nmであるのに対し、シリコンを添加した場合の接合深さは約300nmである。図6においては、接合深さはそれぞれ約180nm、約150nmである。
図5から、アニール前のリンの濃度分布は、深さ20nm〜30nmにピークを持っていることがわかる。シリコンを添加しない場合、アニール後のリンの表面付近の濃度ピークはアニール前の濃度ピークの1/10程度にまで減少している。一方、シリコンを添加した場合は、表面付近の濃度ピークの減少は見られず、むしろ増加している。
一方、図7から、シリコンの濃度分布はアニール前後でほとんど変化していないことがわかる。
これら図4〜7の結果から、シリコン添加領域においてリンの拡散が著しく抑制されることと、さらにはシリコン添加領域はリンの捕獲能を発現したこと、がわかる。
【0019】
なお、良好なキャリア移動度を確保する観点からは、n型不純物拡散領域18のうちp型半導体10との境界領域以外の領域においては、シリコンは存在しないか、または境界領域より低濃度であってよい。
【0020】
リンの拡散メカニズムを変えるための添加元素種としては、シリコンのほかに炭素が挙げられる。この理由を以下に述べる。
シリコン添加によってリンの拡散メカニズムが変わる理由の一つとして、シリコン添加領域において格子空孔の熱平衡濃度が減少することが考えられる。DNCVモデルによれば、格子空孔の熱平衡濃度が減少すると拡散係数は減少する。すなわち、格子空孔の熱平衡濃度が減少すると、格子空孔が仲介することによって不純物が拡散するという拡散メカニズムが支配的でなくなり、DNCVモデルが想定する前提が成り立たなくなる。
【0021】
シリコン添加領域において格子空孔の熱平衡濃度が減少する理由は、シリコンの方がゲルマニウムより格子空孔の生成エネルギーが大きいことである。第一原理理論計算によると、格子空孔の生成エネルギーはゲルマニウム中よりもシリコン中の方が0.77eV〜1.43eV大きい(K.Sueoka, Materials Science in Semiconductor Processing 9, 494 (2006)、P. Ramanarayanana, JOURNAL OF APPLIED PHYSICS VOLUME 94, 174 (2003)、及びJ. Lento, R. M. Nieminen, APL 77, 232 (2000))。格子空孔の生成エネルギーの大小の根源は、空孔を取り巻く母体結晶元素から伸びるダングリングボンドの生成エネルギーの大小にある(ダングリングボンドの生成エネルギーが大きいと格子空孔の生成エネルギーも大きくなる)ことを考慮すると、これは、ゲルマニウムのダングリングボンドよりもシリコンのダングリングボンドの方がエネルギー的に不安定(生成エネルギーが大きい)であることを意味している。ゲルマニウム中のシリコンの濃度が増えると、空孔を取り巻くシリコンのダングリングボンドの割合が増え、逆にゲルマニウムのダングリングボンドの割合が減ることになり、その結果格子空孔の生成エネルギーが増大する。
【0022】
なお、リン注入の前にシリコンの代わりにゲルマニウムを注入する実験も行ったが、リンの深さ方向濃度分布については、ゲルマニウム注入を行ったものと行わなかったものとの間で変化が見られなかった。このため、シリコン添加による濃度分布変化の原因は、いわゆる注入ダメージやイオン注入による表面付近の空孔の増加ではないことが確認された。
ゲルマニウム炭素(GeC)の凝集エネルギーは、ゲルマニウム(Ge)の凝集エネルギーと比べて高い(D. M. Bylander, Physical Review Letters 74, 3660 (1995)、A. Yamada, Jnp. J. Appl. Phys Part I 38, 2566 (1999)、及びW. Sekkal, New Journal of Physics 4, 9.1 (2002))。これは、ゲルマニウムのダングリングボンドよりも炭素のダングリングボンドの方がエネルギー的に不安定であることを意味している。
したがって、ゲルマニウム中のリンの拡散に対して、シリコンの添加と炭素の添加は、同様の効果があると考えられる。これは、以下の実施形態の全てについて同様である。
【0023】
シリコン及び炭素から選ばれる少なくともいずれかの添加元素によって拡散の態様が変化するn型ドーパント種としては、リンのほかにヒ素とアンチモンが挙げられる。
ゲルマニウム中のヒ素の拡散も、リンと同じようにDNCVモデルでよく説明できる。したがって、ゲルマニウム中のリン以外のn型不純物、具体的はヒ素とアンチモン、の拡散も、シリコン及び炭素から選ばれる添加元素種によって拡散の態様が変化すると考えられる。
【0024】
次に、添加したシリコンの濃度について説明する。
ゲルマニウムチャネル半導体装置を作製するに際し、シリコン添加層のシリコンの原子濃度の下限は好ましくは2%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%であり、上限は好ましくは45%、より好ましくは30%である。
【0025】
まず、シリコン原子濃度の下限について説明する。
図4及び6において、活性化アニール後に係るシリコン添加ありの場合となしの場合を比較して、シリコン添加ありの場合においてリンの濃度分布の態様が変わる位置(これを「変調点」とよぶ)を求めた。図4及び6中の矢印が変調点の位置を示している。変調点におけるシリコンの原子濃度は、2%であった。これから、変調点におけるシリコン濃度である2%よりも高いシリコン濃度であれば、望ましい拡散態様を示すということがいえる。すなわち、リンの拡散メカニズムを変えるのに必要なシリコン原子濃度の下限は、好ましくは2%であるということになる。
【0026】
また、図5において、シリコン添加ありの場合で、アニール前後でのPの濃度分布を比較する。深さ17nmから33nmまでの領域では、アニール後にPの量が初期量より増加している。この領域では、シリコン添加領域が良好なPの捕獲能を発現しているといえる。深さ17nmの位置のシリコンの原子濃度を図7のデータから求めると、15%となる。図5はアニール温度が600℃の場合であるが、500℃の場合も同じ結果で、15%であった。リンの捕獲能をさらに高めるためには、シリコンの原子濃度は20%以上であることが望ましい。
したがって、シリコン原子濃度の下限は、好ましくは2%、より好ましくは15%、さらに好ましくは20%であるといえる。
【0027】
次に、シリコン原子濃度の上限について説明する。
シリコン添加量の増大とともに、リンの拡散抑制能は上昇すると考えられる。しかし、シリコンの融点(1415℃)がゲルマニウムの融点(937℃)よりも500℃近く高温であるために、シリコン添加量を増大させると、リンの活性化に必要な温度も上昇する。ゲルマニウムチャネル半導体装置の場合、過剰なサーマルバジェットを受けると、ゲートスタック部の絶縁体/ゲルマニウム界面が劣化したり、ソース・ドレイン領域のn/p接合界面のリーク特性が悪化するため、プロセス温度には上限がある。プロセス温度の上限は、ゲートスタック部の材料系の選択、デバイス作製工程の順序、熱処理時間等に依存するが、例えば850℃、好ましくは600℃である。一方、多結晶系の例で、シリコン原子濃度が45%を超えた場合、500〜600℃の活性化温度では不十分となる。これらを考慮すると、ゲルマニウムデバイスの作製上好ましいシリコン添加量は、原子濃度で45%以下と考えられる。さらに好ましくは、30%以下である。
【0028】
図8に基づいて、シリコン原子濃度がこの範囲内にある場合の一例について説明する。
【0029】
図8(a)〜(c)は、シリコン添加ありのゲルマニウム試料とシリコン添加なしのゲルマニウム試料とについて、異なる複数のアニール温度を採用した場合の、深さとキャリア濃度との関係を表すグラフ図である。シリコン原子濃度は、深さ0.1μmよりも浅い領域で1%以上であり、最高で18.5%程度である。試料の作製方法は、図4及び6に関して前述したものと同様である。アニール温度は、図8(a)が400℃、図8(b)が500℃、図8(c)が600℃である。図8は、SRA(Spreading Resistance Analysis)の測定結果である。SIMSデータは元素の分布を表すのに対して、SRAデータはキャリアの分布を表す。このキャリア分布は、不純物元素のうち電気的に活性化したものの分布に対応する。
【0030】
図8(a)から、アニール温度400℃を採用した場合、シリコンを添加するとキャリア濃度は低下することがわかる。これから、アニール温度400℃は、活性化を行うには不十分(低い)といえる。一方、図8(b)から、アニール温度500℃を採用した場合、シリコンを添加してもキャリア濃度はシリコンを添加しないときと比べて同等か僅かに低下することがわかる。また、図8(c)から、アニール温度600℃を採用した場合は、シリコンを添加することによってキャリア濃度はシリコンを添加しないときと比べて同等か僅かに上昇することがわかる。これらから、アニール温度500℃以上であれば、キャリアの活性化を行うのに十分であることがわかる。すなわち、ゲルマニウムチャネル半導体装置を作製する上でのプロセス温度の上限よりも低いアニール温度で、キャリアの活性化が可能となる。
【0031】
次に、n型不純物の活性化温度について説明する。
シリコン及び炭素から選ばれるすくなくともいずれかの添加元素がn型不純物拡散領域18に存在する場合の不純物の活性化温度の下限は好ましくは450℃、より好ましくは500℃で、上限は好ましくは850℃、より好ましくは600℃である。
活性化温度の下限については、図8の事例から導き出せる。図8の事例では、添加元素であるシリコンの原子濃度は最高で18.5%程度であり、本実施形態における好ましい濃度範囲内にある。この場合、アニール温度400℃ではキャリアを活性化するのに不十分である一方、アニール温度500℃では添加元素がない場合とほぼ同等のキャリア濃度が実現されている。このため、好ましい活性化温度の下限は両者の間、すなわち450℃程度と考えられ、より好ましくは500℃程度と考えられる。
【0032】
一方、850℃の活性化温度を採用してもゲルマニウムチャネル半導体装置は動作していることが知られている。このため、活性化温度の上限は好ましくは850℃程度である。また、図8の(c)において、アニール温度600℃を採用した場合、添加元素を含有することによって高いキャリア濃度が得られている。このため、活性化温度の上限はより好ましくは600℃程度である。
【0033】
次に、高温短時間アニール(Rapid Thermal Annealing:RTA)法を用いた場合について説明する。
RTA法は、ゲートスタック部の耐熱性が高い場合、及びGate-Last法の場合に、特に有効である。Gate-Last法とは、耐熱性のあるダミーゲートスタックを先に作り、その後ソース・ドレイン部を形成し活性化アニールを行い、その後ダミーゲートを除去し、最後にゲートスタック部を埋めるというトランジスタの製造工程である。Gate-Last法の場合、ゲートスタック部に要求される耐熱性要件が緩和される。
【0034】
図9(a)及び(b)は、RTA法を用いた場合における、シリコン添加ありのゲルマニウム試料とシリコン添加なしのゲルマニウム試料との、(a)深さとリンの濃度との関係(SIMSによる)、及び(b)深さとキャリア(電子)濃度との関係(SRAによる)、を表すグラフ図である。この事例では、シリコンとリンはイオン注入法により導入し、図4と全く同じ条件で試料を作製した。その後、RTA法による活性化工程を施した。
【0035】
図9(a)及び(b)から、シリコン添加によってリンの深部への拡散を抑制できることがわかる。これから、RTA法を用いた場合でも、本実施形態の手法を用いることによってリンの深部への拡散を抑制することができる。すなわち、本実施形態のシリコン添加技術はRTA法にも適応可能であるといえる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、ゲルマニウムチャネルを用いた半導体装置において、n型不純物活性化工程の前にシリコン及び炭素から選ばれる少なくともいずれかの添加元素を導入することにより、ゲルマニウム中のチャネル領域に接するn型不純物拡散領域18内の不純物濃度分布を自在に制御することが可能となる半導体装置が提供される。このようなn型不純物分布は、本実施形態の手法を用いなければ、すなわち添加元素がなければ、特殊な不純物導入工程を実施しない限り、いかなる拡散温度と拡散時間を選択しようとも実現は困難であると考えられる。また、所望の接合深さの近傍にシリコン及び炭素から選ばれる少なくともいずれかの添加元素を分布させ、活性化アニール中における基板深部へのn型不純物の拡散を抑制することにより、極浅く、かつ高濃度キャリア密度を有するn型不純物拡散領域18を形成することができる。
【0037】
さらに、本実施形態によれば、n型不純物の拡散を抑え、極浅く、かつ高濃度キャリア密度を有するn型不純物拡散領域18を形成することができるため、ゲルマニウムを主成分とするp型半導体バルク基板の一部をそのままp型半導体10として用いることができる。このため、本実施形態の半導体装置は、いわゆる埋込み絶縁層を設けないバルク基板への適用性に優れている。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、図10〜14を参照しつつ説明する。
図10は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の好ましい一例を表す模式断面図である。本実施形態の半導体装置は、基板20と、基板の上部表面に形成されたゲルマニウムを含むp型半導体22と、p型半導体22の上部表面に形成されたゲート絶縁層30と、ゲート絶縁層30の上部表面に形成されたゲート電極32と、p型半導体22のゲート絶縁層30との境界領域(チャネル領域)をゲート長方向の両側から挟むように形成され、ゲート絶縁層に近いところにある層厚の小さい一対のエクステンション領域26とゲート絶縁層30から遠いところにある層厚の大きい一対のディープ領域24からなる一対のn型不純物拡散領域28と、を備える。ゲート電極32の側部には側壁層34が形成され、さらに側壁層34の側部には層間絶縁膜36が形成されている。
図10においては、エクステンション領域26及びディープ領域24並びにこれらの近傍におけるシリコン添加領域を、斜線で表した。すなわち、n型不純物拡散領域28の全部または一部にシリコン及び炭素から選ばれる少なくともいずれかの添加元素が導入され、さらにp型半導体22のn型不純物拡散領域28との境界領域の全部または一部にも添加元素が導入されている。
【0039】
図11(a)は、図10のC−C’切断線及びその近傍における、チャネル方向(横方向)距離とシリコン添加量との関係を例示するグラフ図であり、図11(b)は、その部分におけるチャネル方向(横方向)距離とリン濃度との関係を例示するグラフ図であり、図11(c)は、これらグラフ図に対応するエクステンション領域26とチャネル領域22との境界を表す模式図である。
図11に表したように、シリコンは、n型不純物拡散領域28/p型半導体22の接合領域のn型不純物拡散領域28側に添加されており、p型半導体22には添加されていない。また、図11に表したように、シリコンは、n型不純物拡散領域28の中央部、すなわちp型半導体22との境界領域以外の領域においては存在しないか、またはこの境界領域より低濃度である。
【0040】
図12(a)〜(c)は、図10のA−A’及びB−B’の切断線及びその近傍における、半導体表面からの距離とシリコン添加量との関係、及び半導体表面からの距離とリン濃度との関係、の例を表すグラフ図及び模式図である。
図12(a)に表したように、シリコンは、n型不純物拡散領域28の全域と、n型不純物拡散領域28/p型半導体22の接合領域のp型半導体22側と、に添加されている。これらの領域以外では、シリコンは存在しないか、または比較的低濃度とされている。また、図12(b)に表したように、シリコンは、n型不純物拡散領域28/p型半導体22の接合領域に添加されている。この領域以外では、シリコンは存在しないか、または比較的低濃度とされている。さらに、図12(c)に表したように、シリコンは、n型不純物拡散領域28/p型半導体22の接合領域と、n型不純物拡散領域28の上部表面、すなわちコンタクト電極(図示せず)との接触面の境界領域と、にも添加されている。これらの領域以外では、シリコンは存在しないか、または比較的低濃度とされている。
【0041】
本実施形態では、シリコン添加の機能のうち、(1)リン等のn型不純物の拡散を抑制しさらに捕獲する機能、のほか、(2)n型不純物拡散領域28/p型半導体22の界面でのBTBTリークリークを低減する機能、(3)n型不純物拡散領域28とコンタクト電極との界面にオーミック接触を確保する機能、も利用する。すなわち、本実施形態は、第1の実施形態に関して前述した(1)の機能をより良好なものとし、さらに(2)及び(3)の機能をも発現するものである。
【0042】
第1の実施形態との大きな違いは、シリコン及び炭素から選ばれる少なくともいずれかの添加元素が、n型不純物拡散領域28/p型半導体22の接合領域のp型半導体22側の全部または一部にも含有されていることである。ゲルマニウムチャネル半導体装置の良好な特性を確保する観点からは、n型不純物拡散領域28/p型半導体22の接合領域のp型半導体22側にもシリコン及び炭素から選ばれる添加元素が存在してよい。これも含めて、以下説明する。
【0043】
まず、(1)リン等のn型不純物の拡散を抑制しさらに捕獲する機能について説明する。
第1の実施形態に関して前述したように、シリコンを添加すれば、リン等のn型不純物の拡散を抑制しさらに捕獲することが可能となる。このn型不純物の拡散抑制機能と捕獲機能をより良好なものとするためには、n型不純物拡散領域28/p型半導体22の接合領域のp型半導体22側にも、シリコン及び炭素から選ばれる少なくともいずれかの添加元素を導入してよい。
【0044】
活性化アニール後に、n型不純物が添加元素を含有する領域(添加領域)を超えてp型半導体22の深部にまで拡散してしまう場合、添加領域は一定のn型不純物拡散抑制機能を発現するが、その効果は限定的なものになる。図4の例では、シリコン添加の場合、n/p接合深さが顕著に浅くなっている。すなわち、シリコン不添加の場合はn/p接合深さは約500nmであるのに対し、シリコン添加の場合は約300nmとなっている。このため、シリコンを添加した場合、n型不純物の拡散抑制に関して、一定の効果は発揮されているといえる。これは、単純にシリコン添加領域にリンが留まっていることから、深部へのリンの流出総量が減ったためである。しかしながら、図4の例では、600℃の試料において、シリコン添加領域よりも深部(150nmより深部)では、リンは典型的なゲルマニウム中拡散態様である箱形濃度分布を示している。これから、シリコンを添加しても、シリコンのない領域では拡散メカニズムはシリコン不添加の場合と変わらないことがわかる。
【0045】
したがって、n型不純物拡散領域28とp型半導体22の境界の位置をよりよく制御するためには、所望する境界位置及びその近傍にシリコン及び炭素から選ばれる添加元素を分布させ、この分布範囲内でn型不純物の深部への拡散が停止するようにその分布を設計する、という手法をとることができる。すなわち、n型不純物拡散領域28/p型半導体22の接合領域のp型半導体22側にもシリコン及び炭素から選ばれる少なくともいずれかの添加元素を導入してよい。
【0046】
次に、(2)n型不純物拡散領域28/p型半導体22の界面でのBTBTリークを低減する機能について説明する。
BTBTリーク(バンド間トンネルリーク)とは、n型不純物拡散領域28/p型半導体22の接合領域において、p型半導体22の価電子帯にある電子が、量子トンネル効果によりn型不純物拡散領域28の伝導帯に移動することである。BTBTリークは、n型不純物拡散領域28/p型半導体22接合の空乏層内のバンドギャップに敏感であり、空乏層内のバンドギャップが大きいと起こりにくく、小さいと起こりやすい。ゲルマニウムのバンドギャップは0.66eVであり、シリコンの1.12eVに比べて小さい。このため、ゲルマニウムデバイスでは、シリコンデバイスと比べてドレイン部のn型不純物拡散領域28/p型半導体22接合界面におけるBTBTリークが起こりやすい。したがって、BTBTリークを低減させる観点からは、空乏層が伸びる場所であるところの、n型不純物拡散領域28/p型半導体22の接合領域におけるキャリア低濃度側、すなわちp型半導体22側のバンドギャップを大きくすることが効果的である。
【0047】
図13は、シリコン添加量とバンドギャップとの関係(右縦軸)、及びシリコン添加量とBTBTリークとの関係(左縦軸)を表すグラフ図である。図13の左縦軸は、n/p接合のキャリア低濃度側が100%ゲルマニウムであってBTBTが典型的に顕著になる空乏層電界の条件、すなわち1MV/cmの場合のBTBTリーク(JBTBT(100%ゲルマニウム))に対する、キャリア低濃度側にシリコンを添加していった場合のBTBTリーク(JBTBT(シリコンゲルマニウム1−x))の比である。
図13の右縦軸に係るグラフから、組成xの増加とともにバンドギャップは増加するが、15%付近で変化の割合が不連続になっていることがわかる。この不連続点は、ここを境に100%ゲルマニウムに近いバンド構造から100%シリコンに近いバンド構造に移ることを示している。
また、図13の左縦軸に係るグラフから、シリコン添加によって劇的にBTBTリークを減少させうることがわかる。ここで、バンドギャップの変化を反映して、特に15%以上シリコンを添加することが有効である。15%のシリコン添加により、BTBTリークを4桁以上低減することができる。
【0048】
また、ゲルマニウム炭素(GeC)のバンドギャップは少なくとも1.76eV以上であることから(A. Mahmooda, J. Mater. Res. 20, 1101 (2005))、ゲルマニウムに炭素を添加することによってもバンドギャップは増大すると考えられる。このため、シリコン添加と同様に、炭素の添加によってもBTBTリークを低減することができると推察される。
【0049】
したがって、n型不純物拡散領域28/p型半導体22接合領域でのBTBTリークを低減する観点からは、n型不純物拡散領域28/p型半導体22の接合領域のp型半導体22側にシリコン及び炭素から選ばれる少なくともいずれかの添加元素を添加してよく、また、添加元素がシリコンの場合、その原子濃度は15%以上であることが望ましい。
【0050】
次に、添加元素を添加する深さについて説明する。
前述したように、BTBTリークは空乏層のバンドギャップに敏感である。このため、BTBTリーク低減の観点からは、空乏層を含む領域にシリコンや炭素などの添加元素を添加してよい。添加元素を添加する深さは、空乏層が存在する深さと同じか、それよりも深くしてもよい。
【0051】
n型不純物拡散領域28/p型半導体22接合における低濃度側、すなわちp型半導体22側に伸びる空乏層幅は、次の式(1)で与えられる。
【数1】


ここで、εは半導体の誘電率、Naは低濃度側の不純物濃度、ψbiはNaによって決まる内蔵電位、Vappはドレイン印加電圧、qは素電荷である。したがって、n型不純物拡散領域28/p型半導体22接合位置よりもw分だけ深い位置にまで、シリコン及び炭素から選ばれる少なくともいずれかの添加元素を適量分布させてよい。wは、エクステンション領域26周りにおいては数十nm以下であり、ディープ領域24周りにおいては約100nmまたはそれ以下である。
【0052】
これまで説明したように、添加元素は、n型不純物拡散領域28/p型半導体22の接合領域のp型半導体22側にも導入してよい。このことは、一義的には、n型不純物拡散領域28/p型半導体22の接合領域のp型半導体22側領域のうちチャネル領域についても当てはまる。エクステンション領域26内のn型不純物は、ゲルマニウムチャネルとの境界において急峻に減少することがデバイス動作上望ましい。急峻性がよいほど、ショートシャネル効果が抑制され、OFF時のリーク電流も低減されるからである。また、エクステンション領域26がゲート電極32の下部へ拡がることを抑制することが望ましい。エクステンション領域26とゲート電極32のオーバーラップが大きいと、オーバーラップ量に比例する寄生容量が存在することとになり、トランジスタの交流(AC)動作速度が低下するからである。これらを考慮すると、n型不純物拡散領域28/p型半導体22の接合領域のp型半導体22内のチャネル領域にも添加元素を導入した方がよいとも思われる。
【0053】
しかしながら、チャネル領域においては、良好なキャリア移動度を確保する観点からは、添加元素は存在しないかまたは比較的低濃度であることが望ましい。チャネルにおけるキャリア移動度は、ゲルマニウム100%のチャネルよりもゲルマニウムにシリコンを添加したチャネルの方が低くなる。ゲルマニウムチャネルへのシリコン添加は、特にソース端でのキャリア移動度の低下を引き起こし、トランジスタの電流駆動力を低下させる。このため、C−C’切断線上における添加元素の濃度分布は、図11に関して前述したようにしてもよい。
【0054】
次に、(3)n型不純物拡散領域28とコンタクト電極との界面にオーミック接触を確保する機能について説明する。
ソース・ドレイン領域となるn型ゲルマニウム半導体とコンタクト電極との接触界面においては、ショットキー接触が形成されてしまい、オーミック接触を得ることが難しい。このため、十分に低い接触抵抗を有する接合を得ることが難しくなる。これは、ゲルマニウムの価電子帯近傍で強いフェルミレベルピニング(Fermi Level Pinning)現象が生じるため、いかなる仕事関数を有する金属を用いてもn型ゲルマニウム半導体に対してはショットキー障壁が形成されてしまう、ということに起因すると考えられる。このような現象は、ゲルマニウム固有の物性、すなわち金属との接触界面における化学結合の様態やゲルマニウムの電子構造によるものである。ここで、例えばシリコンを添加した場合、半導体の物性が変わり、これよってショットキー障壁形成を抑制しまたはその程度を低減することができる。同様の効果は、シリコンの代わりに炭素を導入した場合にも得られると考えられる。
【0055】
なお、n型不純物拡散領域28の中央部、すなわちp型半導体22及びコンタクト電極との境界領域以外の領域においては、シリコンは存在しないか、またはこれら境界領域より低濃度であってもよい。この理由の1つ目は、n型不純物拡散領域28の中央部において、シリコン添加による活性化率の低下の懸念を払拭することである。これにより、比較的低温のアニールによってキャリア(この場合、電子)の数を比較的多く確保することができる。理由の2つ目は、n型不純物拡散領域28における抵抗を低減させること、すなわちn型不純物拡散領域28においてゲルマニウムの特徴である高い電子移動度がシリコンの添加によって低下することを防ぐことである。これにより、キャリア(電子)の速度を適切に確保することができる。
【0056】
次に、このようなシリコン濃度分布を作る方法について説明する。
前述したようなリン及びシリコンの濃度分布は、まずシリコンのイオン注入またはシリコンの熱拡散によってシリコンの濃度分布を実現し、その後リンをイオン注入法によって導入し、さらにその後リンの活性化アニールを行うことによって実現できる。
また、このような分布は、まず注入エネルギーを2段階に変化させた2回のシリコンのイオン注入によってシリコンの濃度分布を実現し、その後リンをイオン注入法によって導入し、さらにその後リンの活性化アニールを行うことによっても実現できる。
【0057】
また、このような分布は、まず所望のn型不純物拡散領域28/p型半導体22接合の位置まで基板をドライエッチングにより掘り下げ、その後、シリコンゲルマニウムをエピタキシャル成長させるか、シリコンゲルマニウムのエピタキシャル成長とゲルマニウムのエピタキシャル成長とを順に行うか、またはシリコンゲルマニウムのエピタキシャル成長とゲルマニウムのエピタキシャル成長とシリコンゲルマニウムのエピタキシャル成長とを順に行うかした後、リンをイオン注入法によって導入し、さらにその後リンの活性化アニールを行うことによっても実現できる。
また、このような分布は、まず所望のn型不純物拡散領域28/p型半導体22接合の位置まで基板をドライエッチングにより掘り下げ、その後、シリコンゲルマニウムのエピタキシャル成長とリンドープされたシリコンゲルマニウムもしくはゲルマニウムのエピタキシャル成長とを順に行うか、またはシリコンゲルマニウムのエピタキシャル成長とリンドープされたゲルマニウムのエピタキシャル成長とリンドープされたシリコンゲルマニウムのエピタキシャル成長とを順に行うかした後、リンの活性化アニールを行うことによっても実現できる。
【0058】
n型不純物の活性化温度については、第1の実施形態で述べた通りである。
以上の実施形態の説明においては、n型不純物としてリンを挙げたが、前述のようにヒ素やアンチモンでもよい。また、添加元素としてシリコンを用いた箇所があるが、前述のように炭素でもよい。
【0059】
図12の(a)〜(c)に表した各具体例の特徴を以下に説明する。
図12(a)に表した具体例によれば、(1)リン等のn型不純物の拡散を抑制しさらに捕獲する、(2)n型不純物拡散領域48/p型半導体42の界面でのBTBTリークを低減する、及び(3)n型不純物拡散領域48とコンタクト電極との界面にオーミック接触を確保する、という効果が得られる。また、製造工程は簡便となる場合がある。
【0060】
図12(b)に表した具体例によれば、(1)リン等のn型不純物の拡散を抑制しさらに捕獲する、及び(2)n型不純物拡散領域48/p型半導体42の界面でのBTBTリークを低減する、という効果が得られる。この具体例では、所望するn型不純物拡散領域48/p型半導体42の接合界面の位置の近傍にシリコンを添加し、シリコン添加領域をリンの拡散のストッパ層としている。ストッパ層の存在によってリンの基板深部への流出が抑制される。また、n型不純物拡散領域48/p型半導体42の接合領域以外の領域ではシリコンは不存在または低濃度であるため、比較的低温のアニール温度でn型不純物を十分活性化することができる。
【0061】
図12(c)に表した具体例によれば、(1)リン等のn型不純物の拡散を抑制しさらに捕獲する、(2)n型不純物拡散領域48/p型半導体42の界面でのBTBTリークを低減する、及び(3)n型不純物拡散領域48とコンタクト電極との界面にオーミック接触を確保する、という効果が得られる。この具体例においても、所望するn型不純物拡散領域48/p型半導体42の接合界面の位置の近傍にシリコンを添加し、シリコン添加領域をリンの拡散のストッパ層としている。ストッパ層の存在によってリンの基板深部への流出が抑制される。また、n型不純物拡散領域48の中央領域ではシリコンは不存在または低濃度であるため、比較的低温のアニール温度でn型不純物を十分活性化することができる。
【0062】
第1の実施形態及び第2の実施形態に関して前述した、(1)リン等のn型不純物の拡散を抑制しさらに捕獲する、(2)n型不純物拡散領域18、28/p型半導体10、22の界面でのBTBTリークを低減する、及び(3)n型不純物拡散領域18、28とコンタクト電極16との界面にオーミック接触を確保する、という機能を発現させるための各種方策は、それぞれ独立に実施することができる。このため、添加元素の添加領域及び濃度分布については、様々な組合せが考えられる。
【0063】
例えば、図12には表していないが、(3)n型不純物拡散領域18、28とコンタクト電極16との界面に良好なオーミック接触を確保する、のみに着目し、n型不純物拡散領域18、28のうちコンタクト電極16との境界領域にのみ添加元素を導入してもよい。あるいは、図14に表した具体例でもよい。
図14は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の好ましい一例を表す模式断面図である。すなわち、本具体例は、D−D’切断線及びその近傍におけるシリコン及びリンの濃度分布が図15のようになっていることを除き、図10に表した具体例と同様である。
図15(a)は、図14のD−D’切断線及びその近傍における、半導体表面からの距離(縦方向距離)とシリコン添加量との関係を例示するグラフ図であり、(b)は、その部分における半導体表面からの距離(縦方向距離)とリン濃度との関係を例示するグラフ図であり、(c)は、これらグラフ図に対応するエクステンション領域46とp型半導体42との境界を表す模式図である。
【0064】
製作工程上の制限により図10に表した具体例を実施するのが困難な場合や製作工程を簡素化したい場合は、図14の形態としてもよい。この場合、エクステンション領域46の下部とp型半導体42との間に発生するBTBTリークが比較的大きくなるが、エクステンション領域46の下部の面積は比較的小さいので、その影響は小さい。
【0065】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態としてのMIS型トランジスタの製造方法について、図16を用いて説明する。
図16(a)〜(f)は、本発明の第3の実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法を表す工程断面図である。すなわち、図16(a)〜(f)は、図10の実施形態に係る半導体装置のうち、A−A’切断線及びその近傍とB−B’切断線及びその近傍とにおけるシリコン及びリンの濃度分布が図12(c)である半導体装置の製造方法を表す。また、図16(a)〜(f)は、図14の実施形態に係る半導体装置のうち、A−A’切断線及びその近傍におけるシリコン及びリンの濃度分布が図12(c)であり、D−D’切断線及びその近傍におけるシリコン及びリンの濃度分布が図15である半導体装置の製造方法を表す。
【0066】
まず、図16(a)に表すように、基板60の上にゲルマニウム半導体層62を形成し、その上にゲート絶縁層64を形成し、その上にゲート電極66を形成する。その後、図16(b)に表すように、所望のエクステンション深さの位置までゲルマニウム半導体層62をエッチングにより掘り下げ、空間90を形成する。その後、図16(c)に表すように、n/p接合領域68においてシリコンゲルマニウムのエピタキシャル成長を行う。このとき、上方向の成長速度が横方向よりも早ければ、最終的に図10に表した構造が得られ、両者の速度が等しければ、図14に表した構造となる。
【0067】
その後、図16(d)に表すように、n型不純物拡散領域の中央部70においてリンドープされたゲルマニウムのエピタキシャル成長を行い、続いてn型不純物拡散領域の上部表面境界領域72においてリンドープされたシリコンゲルマニウムのエピタキシャル成長を行う。その後、図16(e)に表すように、ゲート側壁74を形成し、その後ディープ領域となる部分をドライエッチングにより掘り下げ、空間92を形成する。その後、図16(f)に表すように、ディープ領域に係るn/p接合領域76においてシリコンゲルマニウムのエピタキシャル成長を行い、その後ディープ領域の中央部78にリンドープされたゲルマニウムのエピタキシャル成長を行い、さらにその後ディープ領域の上部表面境界領域80においてリンドープされたシリコンゲルマニウムのエピタキシャル成長を行う。その後、リンの活性化アニールを行う。
【0068】
図16(a)〜(f)は、図10または図14の実施形態に係る半導体装置の作製手順の一例を表す。別の手順として、例えば、まずゲート側壁を形成し、その後ディープ領域を作製し、その後ゲート側壁の一時を除去し、その後エクステンション領域を作製し、その後再度ゲート側壁を形成する、等も挙げられる。また、リンの導入工程として、イオン注入法や固相拡散法も用いることができる。
【0069】
また、図16に表した具体例においては、n型エクステンション領域とn型ディープ領域を個別に形成しているが、次のように一括で形成してもよい。すなわち、ゲート電極66を形成した後、側壁74を形成する。その後、ドライエッチングによりn型ディープ領域の深さだけ基板を掘り下げる。その後、側壁74を除去し、続いてドライエッチングによりn型エクステンション領域の深さだけ基板を掘り下げる。その後、エピタキシャル成長法によって、シリコン及び炭素から選ばれる少なくともいずれかの添加元素、ゲルマニウム、並びにn型不純物を含む半導体層を形成する。このようにすれば、エクステンション領域とディープ領域とを同時に形成することが可能となる。
【0070】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態であるCMOSFET(Complementary Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:相補型金属/酸化物/半導体型電界効果トランジスタ)及びその製造方法について、図17を用いて説明する。
図17は、本発明の第4の実施形態に係る半導体装置を表す模式断面図である。すなわち、図17は、ゲルマニウムチャネルを有するCMOSFETのゲート長方向の断面図を表す。
基板100の上部表面(主表面)に、ゲルマニウムからなるp型ウェル領域102及びn型ウェル領域104が、素子分離層106によって電気的に分離されて形成される。基板100は、ゲルマニウム基板や、シリコン基板や、シリコン基板上にゲルマニウム層を形成したものや、シリコン基板上にシリコンゲルマニウム層の中間層を形成しさらにその上にゲルマニウム層を形成したもの、であってよい。素子分離層106は、例えば二酸化シリコンによって形成される。p型ウェル領域102には、nチャネルMISトランジスタが形成され、n型ウェル領域104にはpチャネルMISトランジスタが形成される。
【0071】
nチャネルMISトランジスタの構成としては、p型ウェル領域102内に、電流通路となる領域(チャネル領域)のゲート長両側に一対のn型エクステンション領域108が形成され、これらの外側に一対のn型ディープ領域110が形成される。p型ウェル領域102の上部表面には、n型エクステンション領域108、108のゲート長方向内側の端部にかかるようにしてチャネル領域上にゲート絶縁膜116が形成される。ゲート絶縁膜116の上部表面には、ゲート電極118が積層形成される。ゲート絶縁膜116及びゲート電極118の両側には、ゲート側壁124が形成される。
n型ディープ領域110は、n型エクステンション領域108よりもp型ウェル領域102との接合深さが深くなるように構成される。n型エクステンション領域108及びn型ディープ領域110は、nチャネルMISトランジスタのソース・ドレイン領域となる。
【0072】
同様に、pチャネルMISトランジスタの構成としては、n型ウェル領域104内に、電流通路となる領域(チャネル領域)のゲート長方向両側に一対のp型エクステンション領域112が形成され、これらの外側に一対のp型ディープ領域114が形成される。n型ウェル領域104の上部表面には、p型エクステンション領域112、112のゲート長方向内側の端部にかかるようにしてチャネル領域上にゲート絶縁膜120が形成される。ゲート絶縁膜120の上部表面には、ゲート電極122が積層形成される。ゲート絶縁膜120及びゲート電極122の両側には、ゲート側壁126が形成される。
p型ディープ領域114は、p型エクステンション領域112よりもn型ウェル領域104との接合深さが深くなるように構成される。p型エクステンション領域112及びp型ディープ領域114は、pチャネルMISトランジスタのソース・ドレイン領域となる。
【0073】
nチャネルMISトランジスタ及びpチャネルMISトランジスタは、層間絶縁膜130によって覆われている。
本実施形態において、n型エクステンション領域108、n型ディープ領域110、p型ウェル領域102中のn型エクステンション領域108との境界領域、及びp型ウェル領域102中のn型ディープ領域110との境界領域、のいずれか1つまたは2つ以上は、シリコン及び炭素から選ばれる少なくともいずれかの添加元素を含有する。
【0074】
次に、図17を参照して本発明の第4の実施形態であるCMOSFETの製造方法について説明する。
まず、基板100の主表面上に素子分離層106を形成する。基板は、ゲルマニウム基板や、シリコン基板や、シリコン基板の上にゲルマニウム層を形成したものや、シリコン基板上にシリコンゲルマニウム層の中間層を挟みゲルマニウム層を形成したもの、であってよい。素子分離層106の形成方法は、局所酸化法や、STI(Shallow Trench Isolation)法であってもよく、素子分離層106の形状は、メサ型でもよい。素子分離層106を形成した後、p型ウェル領域102及びn型ウェル領域104を形成する。p型ウェル領域102及びn型ウェル領域104の形成には、ゲルマニウム層に対する通常のイオン注入法を用いてもよいし、ゲルマニウム層をエピタキシャル成長させた後にイオン注入を行ってもよい。
【0075】
次に、p型ウェル領域102及びn型ウェル領域104の上部表面にゲート絶縁膜116及び120を形成する。ゲート絶縁膜116及び120の形成方法については、例えば、ゲルマニウム酸化物膜を熱酸化法で形成してもよく、ゲルマニウム酸窒化膜をプラズマ酸窒化法で形成してもよく、Hf及びZrから選ばれる金属元素の酸化物からなる高誘電率膜をCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相蒸着)法で堆積させてもよい。その後、既存の成膜技術を用いて、ゲート絶縁膜116及び120の上部表面にゲート電極118及び122となる単層または多層の導電膜を形成する。ここでは、一例として次の手法を用いる:ゲート電極118(nチャネルMISトランジスタ用)にタンタルカーバイドを、ゲート電極122(pチャネルMISトランジスタ用)にタングステンを、PVD(Physical Vapor deposition:物理気相蒸着)により10nm成膜する、その後その上部表面にチタンナイトライドをPVDにより10nm成膜する、さらにその後、その上部表面に多結晶シリコン層を減圧CVDにより50nm成膜する。
【0076】
ゲート電極118(nチャネルMISトランジスタ用)には、タンタルシリサイド、窒化タンタルシリサイド、窒化チタンシリサイド、タングステンシリサイド、窒化タングステンシリサイド等を用いることができる。また、ゲート電極122(pチャネルMISトランジスタ用)には、ルテニウム、窒化チタン、窒化チタンアルミニウム、白金、白金イリジウム等を用いることができる。
その後、フォトリソグラフィ技術によるパターニングを行い、異方性エッチングにより不要な膜を削除し、ゲート電極118及び122を形成する。
【0077】
その後、例えば、第3の実施形態に関して前述した方法を用いて、側壁124、n型エクステンション領域108、n型ディープ領域110を形成する。
【0078】
次に、自己整合ゲート方式により、pチャネルMISトランジスタのソース・ドレイン領域を形成する。ここで、「自己整合ゲート方法」とは、まずゲート積層を形成し、その後イオン注入等によってソース・ドレイン領域を形成する、という手法である。すなわち、ゲート電極122を傘として用いてボロンのイオン注入を行い、pチャネル型MISトランジスタのp型エクステンション領域112を形成する。その後、ゲート電極122とソース・ドレイン領域(p型エクステンション領域112及びp型ディープ領域114)の間の絶縁のための側壁126を形成する。その後、p型エクステンション領域112を作製した場合よりも大きな加速電圧によりボロンのイオン注入を行い、p型ディープ領域114を形成する。
ソース・ドレイン領域(n型エクステンション領域108、n型ディープ領域110、p型エクステンション領域112、及びp型ディープ領域114)の活性化プロセス温度としては、ゲート積層部(ゲート絶縁膜116、ゲート電極118、ゲート絶縁膜120、及びゲート電極122)及びソース・ドレイン領域のnp接合部の特性を劣化させない温度が望ましく、例えば600℃とすることができる。
【0079】
また、ソース・ドレイン領域の活性化処理方法としては、フラッシュランプアニール、レーザアニール等を用いることもできる。これらによれば、より短時間の処理で半導体中の不純物の活性化を実現できるため、ゲート電極118、122/ゲート絶縁膜116、120/半導体(p型ウェル領域102、n型ウェル領域104、n型エクステンション領域108、n型ディープ領域110、p型エクステンション領域112、及びp型ディープ領域114)の構造を有する半導体装置の熱による劣化を低減することができる。
【0080】
その後、減圧CVDにより層間絶縁膜130となるシリコン酸化膜を堆積し、CMP(Chemical Mechanical Planarization:化学機械平坦化)によりゲート電極118及び122の上端を露出させる。その後、スパッタ法等によりゲート電極118及び122の上面にニッケル層を50nm成膜する。その後、500℃の低温熱処理を行うことによって、ニッケルと多結晶シリコンとの界面領域からシリサイドが形成され、Niシリコンが形成される。ここで、本実施形態においては多結晶シリコンが全てシリサイドへと変換されているが、Niの膜厚をより薄くすることによって多結晶シリコンの一部だけをシリサイド化してもよい。その後、硫酸と過酸化水素水との混合溶液等を用いて未反応のNiを除去する。
【0081】
以上説明した製造方法により、図17に表す構造のCMOSFET半導体装置が作製される。シリコン及び炭素から選ばれる少なくともいずれかの添加元素の分布を制御することによって、極浅く、かつ高濃度キャリア密度を有するn型ソース・ドレイン領域(n型エクステンション領域108及びn型ディープ領域110)を形成することができる。この結果、微細ゲルマニウムチャネル半導体装置において、短チャネル効果を抑制するとともに寄生抵抗を少なくすることが可能となり、電流駆動力が高くなる。
【0082】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各具体例は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の模式断面図である。
【図2】シリコン中とゲルマニウム中の温度とリンの拡散係数との関係を表すグラフ図である。
【図3】リンをイオン注入したゲルマニウム試料について、熱処理(アニール)の前後における深さとリン濃度との関係を表すグラフ図である。
【図4】シリコン添加ありのゲルマニウム試料とシリコン添加なしのゲルマニウム試料とについて、600℃アニールの前後における深さとリン濃度との関係を表すグラフ図である。
【図5】図4の深さ80nm以下の領域を拡大したものである。
【図6】シリコン添加ありのゲルマニウム試料とシリコン添加なしのゲルマニウム試料とについて、500℃アニールの前後における深さとリン濃度との関係を表すグラフ図である。
【図7】シリコン添加ありのゲルマニウム試料について、400℃、500℃、及び600℃アニールの前後における深さとシリコン濃度との関係を表すグラフ図である。
【図8】(a)〜(c)は、シリコン添加ありのゲルマニウム試料とシリコン添加なしのゲルマニウム試料とについて、異なる複数のアニール温度を採用した場合の、深さとキャリア濃度との関係を表すグラフ図である。
【図9】(a)及び(b)は、RTA法を用いた場合における、シリコン添加ありのゲルマニウム試料とシリコン添加なしのゲルマニウム試料との、(a)深さとリンの濃度との関係(SIMSによる)、及び(b)深さとキャリア(電子)濃度との関係(SRAによる)、を表すグラフ図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の好ましい一例を表す模式断面図である。
【図11】(a)は、図10のC−C’切断線及びその近傍における、チャネル方向(横方向)距離とシリコン添加量との関係を例示するグラフ図であり、(b)は、その部分におけるチャネル方向(横方向)距離とリン濃度との関係を例示するグラフ図であり、(c)は、これらグラフ図に対応するエクステンション領域26とチャネル領域22との境界を表す模式図である。
【図12】(a)〜(c)は、図10のA−A’及びB−B’の切断線及びその近傍における、半導体表面からの距離とシリコン添加量との関係、及び半導体表面からの距離とリン濃度との関係、の例を表すグラフ図及び模式図である。
【図13】シリコン添加量とバンドギャップとの関係(右縦軸)、及びシリコン添加量とBTBTリークとの関係(左縦軸)を表すグラフ図である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の好ましい一例を表す模式断面図である。
【図15】(a)は、図14のD−D’切断線及びその近傍における、半導体表面からの距離(縦方向距離)とシリコン添加量との関係を例示するグラフ図であり、(b)は、その部分における半導体表面からの距離(縦方向距離)とリン濃度との関係を例示するグラフ図であり、(c)は、これらグラフ図に対応するエクステンション領域46とp型半導体42との境界を表す模式図である。
【図16】本発明の第3の実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法を表す工程断面図である。
【図17】本発明の第4の実施形態に係る半導体装置を表す模式断面図である。
【符号の説明】
【0084】
10 p型半導体
12 ゲート絶縁層
14 ゲート電極
16 コンタクト電極
18 n型不純物拡散領域
20 基板
22 チャネル領域
24 ディープ領域
26 エクステンション領域
28 p型不純物拡散領域
30 ゲート絶縁層
32 ゲート電極
34 側壁層
36 層間絶縁膜
42 p型半導体
46 エクステンション領域
48 n型不純物拡散領域
60 基板
62 半導体層
64 ゲート絶縁層
66 ゲート電極
68 接合領域
70 中央部
72 上部表面境界領域
74 ゲート側壁
76 接合領域
78 中央部
80 上部表面境界領域
100 基板
102 p型ウェル領域
104 n型ウェル領域
106 素子分離層
108 n型エクステンション領域
110 n型ディープ領域
112 p型エクステンション領域
114 p型ディープ領域
116 ゲート絶縁膜
118 ゲート電極
120 ゲート絶縁膜
122 ゲート電極
124 ゲート側壁
126 ゲート側壁
130 層間絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲルマニウムを主成分とするp型半導体と、
前記p型半導体の表面に選択的に設けられた一対のn型不純物拡散領域と、
前記一対のn型不純物拡散領域により挟まれた前記p型半導体の上に設けられたゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層の上に設けられたゲート電極と、
を備え、
前記n型不純物拡散領域の少なくとも一部は、シリコン及び炭素から選択された少なくともいずれかの添加元素を含有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
ゲルマニウムを主成分とするp型半導体と、
前記p型半導体の表面に選択的に設けられた一対のn型不純物拡散領域と、
前記一対のn型不純物拡散領域により挟まれた前記p型半導体の上に設けられた第1のゲート絶縁層と、
前記第1のゲート絶縁層の上に設けられた第1のゲート電極と、
ゲルマニウムを主成分とするn型半導体と、
前記n型半導体の表面に選択的に設けられた一対のp型不純物拡散領域と、
前記一対のp型不純物拡散領域により挟まれた前記n型半導体の上に設けられた第2のゲート絶縁層と、
前記第2のゲート絶縁層の上に設けられた第2のゲート電極と、
を備え、
前記n型不純物拡散領域の少なくとも一部は、シリコン及び炭素から選択された少なくともいずれかの添加元素を含有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記p型半導体のチャネル領域における前記添加元素の濃度は、前記チャネル領域に隣接する前記n型不純物拡散領域における前記添加元素の濃度よりも低いことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記添加元素は、前記n型不純物拡散領域のうちで、前記p型半導体のチャネル領域との境界の近傍に相対的に高濃度に含有されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記添加元素は、前記n型不純物拡散領域と、前記n型不純物拡散領域の下方に隣接する前記p型半導体の一部と、に相対的に高濃度に含有されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記添加元素は、前記n型不純物拡散領域のうちの前記p型半導体に隣接する一部と、前記p型半導体のうちの前記n型不純物拡散領域に隣接する一部と、に相対的に高濃度に含有されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記添加元素は、シリコンであり、
前記添加元素が含有されている領域の少なくとも一部におけるシリコンの原子濃度は、2パーセント以上45パーセント以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記添加元素は、シリコンであり、
前記添加元素が含有されている領域の少なくとも一部におけるシリコンの原子濃度は、15パーセント以上45パーセント以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記ゲルマニウムを主成分とするp型半導体は、ゲルマニウムを主成分とするp型半導体基板の一部であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−182109(P2009−182109A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19073(P2008−19073)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】