説明

半導体装置

【課題】周辺の回路構成を複雑にすることなく、繰り返しのデータの書き込みの際の劣化を低減することが可能な、不揮発性スイッチとして用いる半導体装置を提供する。
【解決手段】電源電圧が停止しても導通状態に関するデータの保持を、チャネル形成領域に酸化物半導体層を有する薄膜トランジスタに接続されたデータ保持部で行う構成とする。そしてデータ保持部は、ダーリントン接続された電界効果トランジスタ及びバイポーラトランジスタを有する電流増幅回路における、電界効果トランジスタのゲートに接続することでデータ保持部の電荷をリークすることなく、導通状態を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置に関する。特に本発明は、電源を切っても導通状態に関するデータを保持できる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DIP(Dual In−line Package)スイッチは、電源を切っても設定した導通状態に関するデータを記憶できる、不揮発性の小型のスイッチ(不揮発性スイッチという)として知られている。近年では電子部品の小型化が進んだこともあり、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いた電気的制御による不揮発性スイッチに置き換えが進んでいる。
【0003】
不揮発性メモリを用いる不揮発性スイッチとしては、フラッシュメモリの他にも相変化メモリを用いた構成について提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の構成では、相変化メモリに導通状態に関するデータを記憶しておき、電源を切っても導通状態に関するデータを保持できる構成を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−313999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の構成では、不揮発性スイッチとするために相変化材料を用いている。そのためデータの書き込み時において、相変化材料に電流を流して熱起因による構造の相変化を促す必要がある。そのため、電流を流すことでデータの書き込みを行う不揮発性スイッチは、データを書き込むための電流を生成する回路を新たに設ける必要があり、周辺の回路構成が複雑になるといった問題がある。
【0006】
また、電流を流すことでデータの書き込みを行う不揮発性スイッチは、繰り返しの書き込みに伴う劣化が問題となる。
【0007】
そこで本発明の一態様では、周辺の回路構成を複雑にすることなく、繰り返しのデータの書き込みの際の劣化を低減することが可能な、不揮発性スイッチとして用いる半導体装置を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、電源電圧の供給を停止しても不揮発性スイッチの導通状態に関するデータの保持を、チャネル形成領域に酸化物半導体層を有する薄膜トランジスタに接続されたデータ保持部で行う構成とする。そしてデータ保持部は、ダーリントン接続された電界効果トランジスタ及びバイポーラトランジスタを有する電流増幅回路における、電界効果トランジスタのゲートに接続することでデータ保持部の電荷をリークすることなく、導通状態に関するデータの出力を行うものである。
【0009】
本発明の一態様は、第1端子よりデータ信号が供給され、チャネル形成領域に酸化物半導体層を有する薄膜トランジスタと、電界効果トランジスタ及びバイポーラトランジスタがダーリントン接続された電流増幅回路と、を有し、薄膜トランジスタの第2端子と、電界効果トランジスタのゲートと、容量素子の一方の電極と、が電気的に接続されるデータ保持部では、薄膜トランジスタを非導通状態にすることでデータを保持し、データ保持部に保持されたデータに応じて電流増幅回路に流れる電流量を制御する半導体装置である。
【0010】
本発明の一態様において、データ信号は高電源電位とグラウンド電位とが選択されて入力される信号であり、薄膜トランジスタを非導通状態とする期間において、前記データ信号をグラウンド電位に保持する半導体装置が好ましい。
【0011】
本発明の一態様において、薄膜トランジスタのゲート端子は、薄膜トランジスタの導通状態を制御する制御信号が供給される配線に接続される半導体装置が好ましい。
【0012】
本発明の一態様において、制御信号は高電源電位とグラウンド電位とが選択されて入力される信号であり、薄膜トランジスタを非導通状態とする期間において、前記制御信号をグラウンド電位に保持する半導体装置が好ましい。
【0013】
本発明の一態様において、酸化物半導体層は、In−Sn−Zn−O系酸化物半導体である半導体装置が好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様により、周辺の回路構成を複雑にすることなく、繰り返しのデータの書き込みの際の劣化を低減することが可能な、不揮発性スイッチとして用いる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】半導体装置の回路図。
【図2】半導体装置の回路図及びタイミングチャート図。
【図3】半導体装置の回路図。
【図4】半導体装置の構成を示す断面図。
【図5】半導体装置の作製工程を示す図。
【図6】本発明の一態様に係る酸化物材料の構造を説明する図。
【図7】本発明の一態様に係る酸化物材料の構造を説明する図。
【図8】本発明の一態様に係る酸化物材料の構造を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、本発明の構成は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。したがって本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同じ物を指し示す符号は異なる図面間において共通とする。
【0017】
なお、各実施の形態の図面等において示す各構成の、大きさ、層の厚さ、信号波形、または領域は、明瞭化のために誇張されて表記している場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0018】
なお、AとBとが接続されている、と明示的に記載する場合は、AとBとが電気的に接続されている場合と、AとBとが機能的に接続されている場合と、AとBとが直接接続されている場合とを含むものとする。
【0019】
なお本明細書にて用いる第1、第2、第3、乃至第N(Nは自然数)という用語は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0020】
(実施の形態1)
本実施の形態で説明する半導体装置は、不揮発性のスイッチ、特に大電流を流すことが可能な不揮発性のスイッチとして機能する回路とすることができる。本実施の形態では、電気的制御が可能であり、不揮発性のスイッチとして機能する半導体装置の回路構成及びその動作について説明する。
【0021】
図1に不揮発性のスイッチとして機能する半導体装置の回路図を示す。図1に示す半導体装置100は、選択信号Gに応じて薄膜トランジスタ101の導通状態を制御し、外部より入力されるデータ信号Dのデータをデータ保持部D_HOLDで保持することができる。半導体装置100のデータ保持部D_HOLDで保持されるデータに応じて、ダーリントン接続された回路を有する電流増幅回路102では、エミッタ側Eの電位の上昇とともにコレクタ側Cに電流を流すことができる。
【0022】
次いで具体的な回路構成例について説明する。図1の半導体装置100は、薄膜トランジスタ101、電流増幅回路102を有する。電流増幅回路102は電界効果トランジスタ103及びバイポーラトランジスタ104を有する。また半導体装置100は、データの保持を行うための容量素子105を有する。
【0023】
なお、図1における薄膜トランジスタ101の回路記号は、チャネル形成領域に酸化物半導体層を有するトランジスタであることを表す回路記号である。
【0024】
なお、電流増幅回路102は電界効果トランジスタ103及びバイポーラトランジスタ104を有する構成であり、図1に示すように電界効果トランジスタ103及びバイポーラトランジスタ104がダーリントン接続した構成となる。以下の説明においては電界効果トランジスタ103をnチャネル型の電界効果トランジスタであるとして説明し、バイポーラトランジスタ104をpnp型バイポーラトランジスタとして説明を行うが、ダーリントン接続した構成であれば導電型等について特に限定されるものではない。
【0025】
薄膜トランジスタ101のソース及びドレインの一方の電極(第1端子)は、データ信号Dを供給するデータ信号線に接続されている。薄膜トランジスタ101のゲート電極(ゲート端子)は、選択信号Gを供給する選択信号線に接続されている。
【0026】
電界効果トランジスタ103のゲート端子は、薄膜トランジスタ101のソース及びドレインの他方の電極(第2端子)及び容量素子105の一方の電極に接続されている。
【0027】
バイポーラトランジスタ104のベース端子は、電界効果トランジスタ103の第1端子に接続されている。バイポーラトランジスタ104のエミッタ端子は、高電源電位を供給するための配線(図1中エミッタE)に接続される。バイポーラトランジスタ104のコレクタ端子は、低電源電位を供給するための配線(図1中コレクタC)及び電界効果トランジスタ103の第2端子に接続される。
【0028】
また図1において、薄膜トランジスタ101の第2端子、容量素子105の一方の電極、及び電界効果トランジスタ103のゲート端子が接続される配線(図1中、一点鎖線で囲んだ領域)がデータ保持部D_HOLDとなる。
【0029】
データ保持部D_HOLDは、電界効果トランジスタ103のゲート端子及び容量素子105の一方の電極が絶縁物に包囲された素子であるため、電界効果トランジスタ103及び容量素子105からの電荷のリークはほとんどない。そのため、薄膜トランジスタ101の非導通状態におけるオフ電流を極力低減することでデータ保持部D_HOLDでの電位の保持が可能となる。
【0030】
なお容量素子105は、図1に示した構成において、電界効果トランジスタ103のゲート容量を積極的に利用することで省略することもできる。
【0031】
本実施の形態の薄膜トランジスタ101としては、上述したように、薄膜トランジスタ101の非導通状態におけるオフ電流を極力低減し、データ保持部D_HOLDでのデータの保持を実現する。オフ電流を極力低減した薄膜トランジスタの具体的な構成としては、チャネル形成領域に酸化物半導体層を有する薄膜トランジスタを挙げることができる。
【0032】
酸化物半導体としては、少なくともIn、Ga、Sn及びZnから選ばれた一種以上の元素を含有する。例えば、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体や、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、In−Sn−Zn−O系酸化物半導体、In−Al−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Al−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Hf−In−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Al−Zn−O系酸化物半導体や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Zn−O系酸化物半導体、Al−Zn−O系酸化物半導体、Zn−Mg−O系酸化物半導体、Sn−Mg−O系酸化物半導体、In−Mg−O系酸化物半導体や、In−Ga−O系酸化物半導体、一元系金属の酸化物であるIn−O系酸化物半導体、Sn−O系酸化物半導体、Zn−O系酸化物半導体などを用いることができる。また、上記酸化物半導体にInとGaとSnとZn以外の元素、例えばSiOを含ませてもよい。
【0033】
例えば、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物半導体、という意味であり、その組成比は問わない。他にも酸化物半導体膜として特にIn−Sn−Zn−O系酸化物半導体膜を用いる場合、薄膜トランジスタの移動度が高くすることができる。またIn−Sn−Zn−O系酸化物半導体を用いる場合、薄膜トランジスタのしきい値電圧を安定して制御することが可能である。
【0034】
また、酸化物半導体は、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記される薄膜を用いることができる。ここで、Mは、Zn、Ga、Al、Mn及びCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えばMとして、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn、またはGa及びCoなどがある。
【0035】
また、酸化物半導体としてIn−Zn−O系の材料を用いる場合、用いるターゲットの組成比は、原子数比で、In:Zn=50:1〜1:2(モル数比に換算するとIn:ZnO=25:1〜1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1〜1:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=10:1〜1:2)、更に好ましくはIn:Zn=1.5:1〜15:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=3:4〜15:2)とする。例えば、In−Zn−O系酸化物半導体の形成に用いるターゲットは、原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。
【0036】
なお前述のIn−Sn−Zn−O系酸化物半導体を用いる場合、用いるターゲットの組成比は、原子数比で、In:Sn:Zn=1:2:2、In:Sn:Zn=2:1:3、In:Sn:Zn=1:1:1などとすればよい。
【0037】
特に、酸化物半導体層内の水素を徹底的に排除することで高純度化された酸化物半導体層にチャネルが形成される薄膜トランジスタは、そのオフ電流密度を100zA/μm以下、好ましくは10zA/μm以下、更に好ましくは1zA/μm以下にすることができる。よって、このオフ電流が、結晶性を有するシリコンを用いた薄膜トランジスタのオフ電流に比べて著しく低い。その結果、チャネル形成領域に酸化物半導体層を有する薄膜トランジスタ101が非導通状態である時、データ保持部D_HOLDの電位を長期間にわたり保持することができる。
【0038】
なお本明細書で説明するオフ電流とは、トランジスタが非導通状態のときに、ソースとドレインの間に流れる電流をいう。nチャネル型のトランジスタ(例えば、閾値電圧が0乃至2V程度)では、ゲートとソースとの間に印加される電圧が負の電圧の場合に、ソースとドレインとの間を流れる電流のことをいう。
【0039】
なお、上記において、酸化物半導体材料の代わりに酸化物半導体材料と同等のオフ電流特性が実現できる材料を薄膜トランジスタの半導体層に用いても良い。例えば、炭化シリコンをはじめとするワイドギャップ材料(より具体的には、例えば、エネルギーギャップEgが3eVより大きい半導体材料)などを適用することができる。
【0040】
次いで図2(A)には、図1における半導体装置100の動作を説明するために、半導体装置100が有する各素子に略称を付して示している。また図2(B)では、各信号が入力されることで図2(A)の各素子の動作がどのように変化するかのタイミングチャート図を示す。
【0041】
図2(A)では、図1の薄膜トランジスタ101を「OSTFT」と呼称する。また図2(A)では、図1のデータ保持部D_HOLDの電位を「D_HOLD」と呼称する。また図2(A)では、図1の電界効果トランジスタ103を「FET」と呼称する。また図2(A)では、図1のバイポーラトランジスタ104を「BJT」と呼称する。
【0042】
なお図2(A)では図1で示した容量素子105の他方の電極を、低電源電位VSSを供給する配線であるコレクタCに接続する構成を示している。また以下の説明において、低電源電位VSSは、グラウンド電位GNDであるとして説明を行う。
【0043】
なお本実施の形態で説明する半導体装置100は、データ信号D及び選択信号Gを供給する回路への電源電圧の供給を停止することができる。電源電圧を停止する場合、薄膜トランジスタを非導通状態で保持する必要がある。
【0044】
データ信号D及び選択信号Gの高電源電位をVDD、低電源電位をGNDとすると、電源電圧を停止する場合、高電源電位VDDが供給される配線の電位を低電源電位であるGNDに落とすことになる。またはデータ信号D及び選択信号Gの高電源電位をVDD、低電源電位をVSSとすると、電源電圧を停止する場合、高電源電位VDDが供給される配線の電位及び低電源電位VSSが供給される配線の電位を共にGNDに落とすことになる。
【0045】
すなわち、図3(A)に示す回路を用い、選択信号Gの電位を制御する信号G_SELを相補型の回路を構成するpチャネル型トランジスタ111、nチャネル型トランジスタ112のゲート端子に入力することで、選択信号Gの電位を制御する構成とすればよい。そして、上述した電源電圧の供給の停止を行うことでGNDの電位を薄膜トランジスタ101のゲート端子に印加し、薄膜トランジスタ101を非導通状態に保持する構成とすればよい。
【0046】
同様に、図3(A)に示す回路を用い、データ信号Dの電位を制御する信号D_SELを相補型の回路を構成するpチャネル型トランジスタ113、nチャネル型トランジスタ114のゲート端子に入力することで、データ信号Dの電位を制御する構成とすればよい。そして、上述した電源電圧の供給の停止を行うことでGNDの電位を薄膜トランジスタ101の第1端子に印加することができる。
【0047】
また図3(A)に示す回路を用い、エミッタEの電位を制御する信号E_SELを相補型の回路を構成するpチャネル型トランジスタ115、nチャネル型トランジスタ116のゲート端子に入力することで、エミッタEの電位を制御する構成とすればよい。エミッタEの電位を供給するための高電源電位VCCは、前述の高電源電位VDDとは別に制御することで、高電源電位VDDの供給を停止したとしても、電流増幅回路102に高電源電圧VCCを供給することができる。
【0048】
なお選択信号Gの電位を制御する信号G_SELを、図3(B)に示すようなnチャネル型トランジスタ117、抵抗素子118で構成される回路に入力し、選択信号Gの電位を制御する構成とすることも可能である。この場合電源電圧の供給を停止する際、信号G_SELの電位がどうあっても、GNDの電位を薄膜トランジスタ101のゲート端子に供給することができる。
【0049】
同様にデータ信号Dの電位を制御する信号D_SELを、図3(B)に示すようなnチャネル型トランジスタ119、抵抗素子120で構成される回路に入力し、データ信号Dの電位を制御する構成とすることも可能である。この場合電源電圧の供給を停止する際、信号D_SELの電位がどうあっても、GNDの電位を薄膜トランジスタ101の第1端子に供給することができる。
【0050】
次いで図2(B)に示すタイミングチャート図を参照して動作を説明する。
【0051】
図2(B)のタイミングチャート図において、VDD、G、D、D_HOLD、OSTFT、VCC、FET及びBJTは、図2(A)及び図3(A)で説明した入出力信号、各配線の電位、及び各素子に対応する。また図2(B)に示すタイミングチャート図では、半導体装置100が取り得る複数の状態について説明するため、期間T1乃至T4の複数の期間を示している。
【0052】
なお、以下に示す図2(B)の動作の説明では、各トランジスタの導電型及び論理回路を、図2(A)及び図3(A)に示した構成として説明する。なお以下に示す動作の説明はこれに限定されず、全体として同じ動作となる限り、各トランジスタの導電型及び各信号の電位を適宜設定することができる。また各信号は、H信号(VDD)及びL信号(GND)で表すことができる。なお図2(B)の説明において、データ保持部D_HOLDの電位は、初期状態としてGNDであるとする。
【0053】
なお、タイミングチャート図の説明では、各信号をH信号及びL信号で説明しているが、H信号及びL信号の電位は各信号で異なる構成としてもよい。例えば選択信号GのH信号は、データ信号DのH信号より大きくしておくことで、薄膜トランジスタ101でのしきい値電圧分の電位の低下を抑制することができる。
【0054】
またエミッタEに供給する高電源電位VCCは、選択信号G及びデータ信号Dの高電源電位VDDより大きくしておくことが好ましい。当該構成により、電流増幅回路102での電流の増幅を容易に制御することが可能になる。
【0055】
図2(B)の期間T1の動作について説明する。期間T1は、H信号のデータ信号Dをデータ保持部D_HOLDに取り込む期間である。
【0056】
期間T1では、選択信号G及びデータ信号Dを供給するための高電源電位をVDDにし、選択信号G及びデータ信号DとしてH信号を入力する。選択信号G(H信号)が入力されることでOSTFTが導通状態(ON)となり、データ保持部D_HOLDにデータ信号D(H信号)が取り込まれる。データ保持部D_HOLDがH信号になるとFETは導通状態となるが、このときエミッタEの電位はGNDであり電流が流れず、BJTは非導通状態(OFF)となる。
【0057】
次いで図2(B)の期間T2の動作について説明する。期間T2は、選択信号G及びデータ信号Dの高電源電位VDDをGNDにしてもデータ保持部D_HOLDにH信号を保持した状態とすることができ、エミッタEより電流を流す期間である。
【0058】
期間T2では、選択信号G及びデータ信号Dを供給するための高電源電位VDDをGNDにし、選択信号G及びデータ信号DとしてL信号を入力する。このとき、OSTFTは非導通状態を保持することができる。従って電源電圧を停止しても、データ保持部D_HOLDは前の期間である期間T1に取り込んだH信号を保持する。データ保持部D_HOLDがH信号を保持するとFETは導通状態となり、このときエミッタEの電位をH信号であるVCCにすることで、BJTにおいてベース電流及びコレクタ電流が流れる導通状態となり、電流増幅が可能となる。
【0059】
次いで図2(B)の期間T3の動作について説明する。期間T3は、L信号のデータ信号Dをデータ保持部D_HOLDに取り込む期間である。
【0060】
期間T3では、選択信号Gを供給するための高電源電位をVDDにし、選択信号GとしてH信号を入力する。データ信号Dの電位はGNDに設定されている。このとき、選択信号G(H信号)が入力されることでOSTFTが導通状態となり、データ保持部D_HOLDにデータ信号D(L信号)が取り込まれる。データ保持部D_HOLDがL信号になるとFETは非導通状態となり、このときエミッタEの電位はGNDであり電流が流れず、BJTも非導通状態となる。
【0061】
次いで図2(B)の期間T4の動作について説明する。期間T4は、選択信号G及びデータ信号Dの高電源電位VDDをGNDにしてもデータ保持部D_HOLDにL信号を保持した状態とすることができ、エミッタEより電流を流さない期間である。
【0062】
期間T4では、選択信号Gを供給するための高電源電位VDDをGNDにし、選択信号G及びデータ信号DとしてL信号を入力する。このとき、OSTFTは非導通状態を保持することができる。従って電源電圧の供給を停止しても、データ保持部D_HOLDは前の期間である期間T3に取り込んだL信号を保持する。データ保持部D_HOLDがL信号を保持するとFETは非導通状態となり、このときエミッタEの電位をH信号であるVCCにしても、BJTにおいてベース電流が流れず、コレクタ電流が流れない非導通状態となる。
【0063】
以上が、半導体装置100の動作の説明である。
【0064】
以上説明したように本発明の一態様は、電源電圧の供給が停止しても導通状態に関するデータの保持を、チャネル形成領域に酸化物半導体層を有する薄膜トランジスタに接続されたデータ保持部で行う構成とする。そのため本発明の一態様の半導体装置は、薄膜トランジスタの導通状態と非導通状態を切り替え、データ保持部に保持する電位を制御することで電流増幅回路のスイッチング動作を切り替える不揮発性スイッチとすることができる。
【0065】
また本発明の一態様の半導体装置は、データの書き込み時に記憶素子に10V以上の大きな電圧の印加や、データの書き込みに必要な電流を生成する回路を新たに設ける必要がなく、周辺の回路構成を増やす必要がない。また本発明の一態様の半導体装置は、データ保持部に任意の電位を保持して、電流増幅回路のスイッチング動作を切り替える不揮発性スイッチとする構成のため、フラッシュメモリや相変化メモリ等と比べ繰り返しの書き込みに伴う劣化を低減することができる。
【0066】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0067】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態の半導体装置に適用可能なトランジスタの構成例について説明する。本実施の形態では特に、上記実施の形態で説明した構成において薄膜トランジスタ101を微細化して形成する際の構成例、及び作製工程の一例について示す。
【0068】
特に本実施の形態で説明する薄膜トランジスタの構成では、酸化物半導体をチャネル形成領域に有する活性層のうちソース領域及びドレイン領域となる領域を、酸化物半導体中に不純物を導入してチャネル形成領域よりも低抵抗化させて形成する構成について説明する。なお不純物領域の抵抗値は、チャネル形成領域の抵抗値よりも低い値となる。
【0069】
図4(A)乃至(D)は、薄膜トランジスタ101の断面図である。図4(A)乃至(D)に示すトランジスタの構造は、いずれもトップゲート構造である。図4(A)乃至(D)に示すように、薄膜トランジスタ101の構造をトップゲート構造にしてゲート電極を用いてソース領域及びドレイン領域を自己整合的に形成することで、トランジスタの微細化を図ることができる。よってトランジスタのゲート電極とソース電極及びドレイン電極との重畳する部分をなくし、ゲート容量を小さくできる。その結果、充放電に要する電荷分の消費電力を低減することができる。
【0070】
図4(A)に示す薄膜トランジスタは、半導体層603_Aと、導電層605a_Aと、導電層605b_Aと、絶縁層606_Aと、導電層607_Aと、を含む。
【0071】
半導体層603_Aは、離間して設けられた高濃度領域604a_A及び高濃度領域604b_Aと、を含む。高濃度領域604a_A及び高濃度領域604b_Aの間の領域がチャネル形成領域になる。半導体層603_Aは、例えば絶縁層601_Aの上に設けられる。なお高濃度領域はドーパントが高濃度に添加されることで低抵抗化された領域であり、低濃度領域はドーパントが低濃度に添加されることで低抵抗化された領域である。
【0072】
導電層605a_A及び導電層605b_Aは、半導体層603_Aの上に設けられ、半導体層603_Aに電気的に接続される。導電層605a_A及び導電層605b_Aは、例えば半導体層603_Aの一部に接する。また、導電層605a_A及び導電層605b_Aの側面は、テーパ状であり、導電層605a_A及び導電層605b_Aは、高濃度領域604a_A及び高濃度領域604b_Aの一部に重畳する。
【0073】
絶縁層606_Aは、半導体層603_A、導電層605a_A、及び導電層605b_Aの上に設けられる。
【0074】
導電層607_Aは、絶縁層606_Aを介して高濃度領域604a_Aと高濃度領域604b_Aとの間の半導体層603_Aに重畳する。絶縁層606_Aを介して導電層607_Aと重畳する半導体層603_Aの領域がチャネル形成領域になる。
【0075】
また、図4(B)に示すトランジスタは、図4(A)に示す構造に加え、サイドウォールとなる絶縁層609a_A及び絶縁層609b_Aを含み、さらに、半導体層603_Aは、高濃度領域604a_A及び高濃度領域604b_Aの間に低濃度領域608a_A及び低濃度領域608b_Aを含む。
【0076】
絶縁層609a_A及び絶縁層609b_Aは、絶縁層606_Aの上に設けられ、導電層607_Aにおける、互いに対向する側面に接する。
【0077】
低濃度領域608a_A及び低濃度領域608b_Aは、絶縁層606_Aを介して絶縁層609a_A及び絶縁層609b_Aに重畳する。また、低濃度領域608a_A及び低濃度領域608b_Aの不純物濃度は、高濃度領域604a_A及び高濃度領域604b_Aの不純物濃度よりも低い。
【0078】
低濃度領域608a_A及び低濃度領域608b_Aを設けることによって、トランジスタへの局所的な電界集中を抑制することができるため、トランジスタの信頼性を高くすることができる。
【0079】
図4(C)に示すトランジスタは、半導体層603_Bと、導電層605a_Bと、導電層605b_Bと、絶縁層606_Bと、導電層607_Bと、を含む。
【0080】
導電層605a_B及び導電層605b_Bは、絶縁層601_Bの上に設けられ、高濃度領域604a_B及び高濃度領域604b_Bに電気的に接続される。導電層605a_B及び導電層605b_Bは、例えば高濃度領域604a_B及び高濃度領域604b_Bの一部に接する。また、導電層605a_B及び導電層605b_Bの側面はテーパ状であり、高濃度領域604a_B及び高濃度領域604b_Bの一部に重畳する。
【0081】
半導体層603_Bは、離間して設けられた高濃度領域604a_Bと高濃度領域604b_Bを含む。高濃度領域604a_B及び高濃度領域604b_Bの間の領域がチャネル形成領域になる。半導体層603_Bは、例えば導電層605a_B及び導電層605b_B並びに絶縁層601_Bの上に設けられる。
【0082】
絶縁層606_Bは、半導体層603_B、高濃度領域604a_B、及び高濃度領域604b_Bの上に設けられる。
【0083】
導電層607_Bは、絶縁層606_Bを介して半導体層603_Bに重畳する。絶縁層606_Bを介して導電層607_Bと重畳する半導体層603_Bの領域がチャネル形成領域になる。
【0084】
また、図4(D)に示すトランジスタは、図4(C)に示す構造に加え、サイドウォールとなる絶縁層609a_B及び絶縁層609b_Bを含み、さらに、半導体層603_Bは、高濃度領域604a_B及び高濃度領域604b_Bの間に低濃度領域608a_B及び低濃度領域608b_Bを含む。
【0085】
絶縁層609a_B及び絶縁層609b_Bは、絶縁層606_Bの上に設けられ、導電層607_Cにおける、互いに対向する一対の側面に接する。
【0086】
低濃度領域608a_B及び低濃度領域608b_Bは、絶縁層606_Bを介して絶縁層609a_B及び絶縁層609b_Bに重畳する。また、低濃度領域608a_B及び低濃度領域608b_Bの不純物濃度は、高濃度領域604a_B及び高濃度領域604b_Bの不純物濃度よりも低い。
【0087】
低濃度領域608a_B及び低濃度領域608b_Bを設けることによって、トランジスタへの局所的な電界集中を抑制することができるため、トランジスタの信頼性を高くすることができる。
【0088】
さらに、図4(A)乃至図4(D)に示す各構成要素について説明する。
【0089】
絶縁層601_A及び絶縁層601_Bとしては、例えば酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、酸化アルミニウム層、窒化アルミニウム層、酸化窒化アルミニウム層、窒化酸化アルミニウム層、又は酸化ハフニウム層を単層または積層して用いることができる。また、絶縁層601_A及び絶縁層601_Bは、平坦性を有する表面に加工して用いることのできる材料であることが好ましい。
【0090】
半導体層603_A及び半導体層603_Bは、トランジスタのチャネル形成層としての機能を有する。半導体層603_A及び半導体層603_Bとしては、例えば四元系金属酸化物、三元系金属酸化物、又は二元系金属酸化物などを含む酸化物半導体層を用いることができる。
【0091】
四元系金属酸化物としては、例えばIn−Sn−Ga−Zn−O系金属酸化物などを用いることができる。
【0092】
三元系金属酸化物としては、例えばIn−Ga−Zn−O系金属酸化物、In−Sn−Zn−O系金属酸化物、In−Al−Zn−O系金属酸化物、Sn−Ga−Zn−O系金属酸化物、Al−Ga−Zn−O系金属酸化物、Hf−In−Zn−O系金属酸化物、又はSn−Al−Zn−O系金属酸化物などを用いることができる。
【0093】
二元系金属酸化物としては、例えばIn−Zn−O系金属酸化物、Sn−Zn−O系金属酸化物、Al−Zn−O系金属酸化物、Zn−Mg−O系金属酸化物、Sn−Mg−O系金属酸化物、In−Mg−O系金属酸化物、In−Sn−O系金属酸化物、又はIn−Ga−O系金属酸化物などを用いることができる。
【0094】
また、半導体層603_A及び半導体層603_Bとしては、例えばIn−O系金属酸化物、Sn−O系金属酸化物、又はZn−O系金属酸化物の層などを用いることもできる。また、上記酸化物半導体として適用可能な金属酸化物は、酸化シリコンを含んでいてもよい。また、上記酸化物半導体として適用可能な金属酸化物は、窒素を含んでいてもよい。
【0095】
また、半導体層603_A及び半導体層603_Bとしては、InLO(ZnO)(mは0よりも大きい数)で表記される材料の層を用いることもできる。InLO(ZnO)のLは、Ga、Al、Mn、及びCoから選ばれた一つ又は複数の金属元素を示す。
【0096】
なお半導体層603_A及び半導体層603_Bとして特にIn−Sn−Zn−O系酸化物半導体を用いる場合、トランジスタの移動度が高くすることができる。またIn−Sn−Zn−O系酸化物半導体を用いる場合、トランジスタのしきい値電圧を安定して制御することが可能である。
【0097】
高濃度領域604a_A及び高濃度領域604b_A、並びに高濃度領域604a_B及び高濃度領域604b_Bは、トランジスタのソースまたはドレインとしての機能を有する。なお、トランジスタのソースとしての機能を有する領域をソース領域ともいい、トランジスタのドレインとしての機能を有する領域をドレイン領域ともいう。
【0098】
低濃度領域608a_A及び低濃度領域608b_A、並びに低濃度領域608a_B及び低濃度領域608b_Bの抵抗値は、高濃度領域604a_A及び高濃度領域604b_A、並びに高濃度領域604a_B及び高濃度領域604b_Bの抵抗値よりも高く、低濃度領域608a_A及び低濃度領域608b_A、並びに低濃度領域608a_B及び低濃度領域608b_Bを高抵抗不純物領域ともいう。
【0099】
高濃度領域604a_A及び高濃度領域604b_A、低濃度領域608a_A及び低濃度領域608b_A、高濃度領域604a_B及び高濃度領域604b_B、並びに低濃度領域608a_B及び低濃度領域608b_Bに含まれるドーパントとしては、例えば窒素、リン、砒素、アルゴン、キセノン、ヘリウム、及び水素の一つ又は複数が挙げられる。
【0100】
また、高濃度領域604a_A及び高濃度領域604b_A、並びに高濃度領域604a_B及び高濃度領域604b_Bに含まれるドーパントの濃度は、例えば5×1019cm−3以上であることが好ましい。
【0101】
また、低濃度領域608a_A及び低濃度領域608b_A、並びに低濃度領域608a_B及び低濃度領域608b_Bに含まれるドーパントの濃度は、例えば5×1018cm−3以上5×1019cm−3未満であることが好ましい。
【0102】
また、高濃度領域604a_A及び高濃度領域604b_A、低濃度領域608a_A及び低濃度領域608b_A、高濃度領域604a_B及び高濃度領域604b_B、並びに低濃度領域608a_B及び低濃度領域608b_Bは、チャネル形成領域より結晶性が低くてもよい。
【0103】
また、高濃度領域604a_A及び高濃度領域604b_A、低濃度領域608a_A及び低濃度領域608b_A、高濃度領域604a_B及び高濃度領域604b_B、並びに低濃度領域608a_B及び低濃度領域608b_Bに、In−Ga−Zn−O−N系材料であり、ウルツ鉱構造の結晶が含まれていてもよい。このとき、高濃度領域604a_A及び高濃度領域604b_A、低濃度領域608a_A及び低濃度領域608b_A、高濃度領域604a_B及び高濃度領域604b_B、並びに低濃度領域608a_B及び低濃度領域608b_Bは、好ましくは1×1020cm−3以上7原子%未満の窒素を含むとウルツ鉱構造になりやすい。
【0104】
上記不純物領域をIn−Ga−Zn−O−N系材料であり、ウルツ鉱構造の結晶を含む構造にすることによって、トランジスタのソース又はドレインと、チャネル形成領域との間の抵抗値が低くなる。
【0105】
導電層605a_A、導電層605a_B、導電層605b_A、並びに導電層605b_Bのそれぞれは、トランジスタのソース又はドレインとしての機能を有する。なお、トランジスタのソースとしての機能を有する層をソース電極又はソース配線ともいい、トランジスタのドレインとしての機能を有する層をドレイン電極又はドレイン配線ともいう。
【0106】
導電層605a_A、導電層605a_B、導電層605b_A、並びに導電層605b_Bとしては、例えばアルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、若しくはタングステンなどの金属材料、又はこれらの金属材料を主成分とする合金材料の層を用いることができる。合金材料の層としては、例えばCu−Mg−Al合金材料の層を用いることができる。
【0107】
また、導電層605a_A、導電層605a_B、導電層605b_A、並びに導電層605b_Bとしては、導電性の金属酸化物を含む層を用いることもできる。なお、導電層605a_A、導電層605a_B、導電層605b_A、並びに導電層605b_Bに適用可能な導電性の金属酸化物は、酸化シリコンを含んでいてもよい。
【0108】
また、導電層605a_A、導電層605a_B、導電層605b_A、並びに導電層605b_Bとしては、In−Ga−Zn−O−N系材料の層を用いることもできる。In−Ga−Zn−O−N系材料の層は、導電性が高いため、導電層605a_A、導電層605a_B、導電層605b_A、並びに導電層605b_Bとして好ましい。
【0109】
また、導電層605a_A、導電層605a_B、導電層605b_A、並びに導電層605b_Bに適用可能な材料の層の積層によって、導電層605a_A、導電層605a_B、導電層605b_A、並びに導電層605b_Bを構成することもできる。例えばCu−Mg−Al合金材料の層の上に銅の層が設けられた積層によって導電層605a_A、導電層605a_B、導電層605b_A、並びに導電層605b_Bを構成することによって、導電層605a_A、導電層605a_B、導電層605b_A、並びに導電層605b_Bに接する絶縁層との密着性を高めることができる。
【0110】
絶縁層606_A及び絶縁層606_Bとしては、例えば酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、酸化アルミニウム層、窒化アルミニウム層、酸化窒化アルミニウム層、窒化酸化アルミニウム層、又は酸化ハフニウム層を用いることができる。また、絶縁層606_A及び絶縁層606_Bに適用可能な材料の層の積層によって絶縁層606_A及び絶縁層606_Bを構成することもできる。
【0111】
また、絶縁層606_A及び絶縁層606_Bとしては、例えば元素周期表における第13族元素及び酸素元素を含む材料の絶縁層を用いることもできる。
【0112】
第13族元素及び酸素元素を含む材料としては、例えば酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムガリウム、酸化ガリウムアルミニウムなどが挙げられる。なお、酸化アルミニウムガリウムとは、ガリウムの含有量(原子%)よりもアルミニウムの含有量(原子%)が多い物質のことをいい、酸化ガリウムアルミニウムとは、ガリウムの含有量(原子%)がアルミニウムの含有量(原子%)以上の物質のことをいう。
【0113】
導電層607_A、導電層607_B、及び導電層607_Cは、トランジスタのゲートとしての機能を有する。なお、トランジスタのゲートとしての機能を有する導電層をゲート電極又はゲート配線ともいう。
【0114】
導電層607_A、導電層607_B、及び導電層607_Cとしては、例えばアルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、若しくはタングステンなどの金属材料、又はこれらの金属材料を主成分とする合金材料の層を用いることができる。また、導電層607_A、導電層607_B、及び導電層607_Cに適用可能な材料の層の積層によって、導電層607_A、導電層607_B、及び導電層607_Cを構成することもできる。
【0115】
また、導電層607_A、導電層607_B、及び導電層607_Cとしては、導電性の金属酸化物を含む層を用いることもできる。なお、導電層607_A、導電層607_B、及び導電層607_Cに適用可能な導電性の金属酸化物は、酸化シリコンを含んでいてもよい。また、導電層607_A、導電層607_B、及び導電層607_Cに適用可能な導電性の金属酸化物は、窒素を含んでいてもよい。窒素を含ませることによって、導電性を高めることができる。
【0116】
また、導電層607_A、導電層607_B、及び導電層607_Cとしては、In−Ga−Zn−O−N系材料の層を用いることもできる。In−Ga−Zn−O−N系材料の層は、導電性が高いため、導電層607_A、導電層607_B、及び導電層607_Cとして好ましい。
【0117】
絶縁層609a_A及び絶縁層609b_A、並びに絶縁層609a_B及び絶縁層609b_Bとしては、例えば絶縁層606_A及び絶縁層606_Bに適用可能な材料の層を用いることができる。また、絶縁層609a_A及び絶縁層609b_A、並びに絶縁層609a_B及び絶縁層609b_Bに適用可能な材料の層の積層によって絶縁層609a_A及び絶縁層609b_A、並びに絶縁層609a_B及び絶縁層609b_Bを構成してもよい。
【0118】
さらに、本実施の形態のトランジスタの作製方法例として、図4(A)に示すトランジスタの作製方法例について、図5(A)乃至図5(E)を用いて説明する。図5(A)乃至図5(E)は、本実施の形態におけるトランジスタの作製方法例を説明するための断面図である。
【0119】
まず、図5(A)に示すように、第1の絶縁層として形成された絶縁層601_Aの上に半導体層603_Aを形成する。
【0120】
さらに、半導体層603_Aの一例として、結晶性を向上させることのできる酸化物半導体層の形成方法例について以下に説明する。
【0121】
酸化物半導体層の形成方法例は、絶縁層601_Aの上に半導体膜を形成する工程と、1回以上の熱処理を行う工程と、を含む。なお、半導体層603_Aの形成方法例において、該半導体膜の一部を除去する工程を含ませてもよい。このとき、該半導体膜の一部を除去する工程の順番は、半導体膜の形成後から導電層605a_A及び導電層605b_Aの形成前までであれば特に限定されない。また、熱処理を行う工程の順番は半導体膜の形成後であれば特に限定されない。
【0122】
絶縁層601_Aの上に半導体膜を形成する工程としては、例えばスパッタ法を用いて半導体層603_Aに適用可能な材料の膜を形成することによって半導体膜を形成する。このとき、膜形成面側(基板側)の温度を100℃以上500℃以下にする。
【0123】
またスパッタ法を用いて半導体層603_Aを作製する場合には、成膜処理室内に存在する水、水素を極力低減しておく。具体的には、成膜前に成膜処理室内を加熱する、成膜処理室内に導入されるガス中の水及び/又は水素濃度を低減する、及び成膜処理室から排気されるガスの逆流を防止するなどを行うことが好適である。
【0124】
熱処理を行う工程としては、例えば400℃以上750℃以下の温度で加熱処理(加熱処理Aともいう)を行う。なお、半導体膜を形成した後であれば、加熱処理Aを行うタイミングは特に限定されない。半導体層603_Aに加熱処理を施すことで、半導体層603_A中の水分または水素を脱離させることができる。
【0125】
また加熱処理Aによって、半導体膜の表面から結晶化が起こり、半導体膜の表面から内部に向かって結晶成長する。
【0126】
なお、加熱処理Aを行う加熱処理装置としては、電気炉、又は抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導又は熱輻射によって被処理物を加熱する装置を用いることができ、例えばGRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置又はLRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置などのRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、例えばハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、又は高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射によって、被処理物を加熱する装置である。また、GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。高温のガスとしては、例えば希ガス、又は加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体(例えば窒素)を用いることができる。
【0127】
なお加熱処理Aにおいては、窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水分または水素などが含まれないことが好ましい。または、加熱処理装置に導入する窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0128】
上記工程によって、半導体膜は、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜となる。
【0129】
CAAC−OS膜は、完全な単結晶ではなく、完全な非晶質でもない。CAAC−OS膜は、非晶質相に結晶部および非晶質部を有する結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体膜である。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであることが多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像では、CAAC−OS膜に含まれる非晶質部と結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC−OS膜には粒界(グレインバウンダリーともいう。)は確認できない。そのため、CAAC−OS膜は、粒界に起因する電子移動度の低下が抑制される。
【0130】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、c軸がCAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃い、かつab面に垂直な方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸およびb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、−5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
【0131】
なお、CAAC−OS膜において、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の形成過程において、酸化物半導体膜の表面側から結晶成長させる場合、被形成面の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC−OS膜へ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶質化することもある。
【0132】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC−OS膜の形状(被形成面の断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。なお、結晶部のc軸の方向は、CAAC−OS膜が形成されたときの被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向となる。結晶部は、成膜することにより、または成膜後に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
【0133】
CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動を低減することが可能である。よって、安定した電気的特性を有するトランジスタを作製することができる。
【0134】
また、CAAC−OS膜が成膜される膜表面(被成膜面)は平坦であることが好ましい。CAAC−OS膜は、当該被成膜面に概略垂直となるc軸を有するため、当該被成膜面に存在する凹凸は、CAAC−OS膜における結晶粒界の発生を誘発することになるからである。よって、CAAC−OS膜が成膜される前に当該被成膜表面に対して化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)などの平坦化処理を行うことが好ましい。また、当該被成膜面の平均ラフネスは、0.5nm以下であることが好ましく、0.3nm以下であることがより好ましい。
【0135】
ここで、CAAC−OSについて図6乃至図8を用いて詳細に説明する。なお、特に断りがない限り、図6乃至図8は上方向をc軸方向とし、c軸方向と直交する面をab面とする。なお、単に上半分、下半分という場合、ab面を境にした場合の上半分、下半分をいう。また、図6において、丸で囲まれたOは4配位のOを示し、二重丸で囲まれたOは3配位のOを示す。
【0136】
図6(A)に、1個の6配位のInと、Inに近接の6個の4配位の酸素原子(以下4配位のO)と、を有する構造を示す。Inが1個に対して、近接の酸素原子のみ示した構造を、ここではサブユニットと呼ぶ。図6(A)の構造は、八面体構造をとるが、簡単のため平面構造で示している。なお、図6(A)の上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがある。図6(A)に示すサブユニットは電荷が0である。
【0137】
図6(B)に、1個の5配位のGaと、Gaに近接の3個の3配位の酸素原子(以下3配位のO)と、Gaに近接の2個の4配位のOと、を有する構造を示す。3配位のOは、いずれもab面に存在する。図6(B)の上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがある。また、Inも5配位をとるため、図6(B)に示す構造をとりうる。図6(B)に示すサブユニットは電荷が0である。
【0138】
図6(C)に、1個の4配位のZnと、Znに近接の4個の4配位のOと、による構造を示す。図6(C)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。図6(C)に示すサブユニットは電荷が0である。
【0139】
図6(D)に、1個の6配位のSnと、Snに近接の6個の4配位のOと、を有する構造を示す。図6(D)の上半分には3個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。図6(D)に示すサブユニットは電荷が+1となる。
【0140】
図6(E)に、2個のZnを含むサブユニットを示す。図6(E)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には1個の4配位のOがある。図6(E)に示すサブユニットは電荷が−1となる。
【0141】
ここでは、サブユニットのいくつかの集合体を1グループと呼び、複数のグループからなる1周期分を1ユニットと呼ぶ。
【0142】
ここで、これらのサブユニット同士が結合する規則について説明する。Inの上半分の3個のOは下方向に3個の近接Inを有し、下半分の3個のOは上方向に3個の近接Inを有する。Gaの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Gaを有し、下半分の1個のOは上方向に1個の近接Gaを有する。Znの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Znを有し、下半分の3個のOは上方向に3個の近接Znを有する。この様に、金属原子の上方向の4配位のOの数と、そのOの下方向にある近接金属原子の数は等しく、同様に金属原子の下方向の4配位のOの数と、そのOの上方向にある近接金属原子の数は等しい。Oは4配位なので、下方向にある近接金属原子の数と、上方向にある近接金属原子の数の和は4になる。従って、金属原子の上方向にある4配位のOの数と、別の金属原子の下方向にある4配位のOの数との和が4個のとき、金属原子を有する二種のサブユニット同士は結合することができる。例えば、6配位の金属原子(InまたはSn)が上半分の4配位のOを介して結合する場合、4配位のOが3個であるため、5配位の金属原子(GaまたはIn)または4配位の金属原子(Zn)のいずれかと結合することになる。
【0143】
これらの配位数を有する金属原子は、c軸方向において、4配位のOを介して結合する。また、このほかにも、層構造の合計の電荷が0となるようにサブユニット同士が結合して1グループを構成する。
【0144】
図7(A)に、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する1グループのモデル図を示す。図7(B)に、3つのグループで構成されるユニットを示す。なお、図7(C)は、図7(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示す。
【0145】
図7(A)においては、簡単のため、3配位のOは省略し、4配位のOは個数のみ示し、例えば、Sn原子の上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがあることを丸枠の3として示している。同様に、図7(A)において、In原子の上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがあり、丸枠の1として示している。また、同様に、図7(A)において、下半分には1個の4配位のOがあり、上半分には3個の4配位のOがあるZn原子と、上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがあるZn原子とを示している。
【0146】
図7(A)において、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成するグループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSn原子が、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるIn原子と結合し、そのIn原子が、上半分に3個の4配位のOがあるZn原子と結合し、そのZn原子の下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるIn原子と結合し、そのIn原子が、上半分に1個の4配位のOがあるZn2個からなるサブユニットと結合し、このサブユニットの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSn原子と結合している構成である。このグループを複数結合して1周期分であるユニットを構成する。
【0147】
ここで、3配位のOおよび4配位のOの場合、結合1本当たりの電荷はそれぞれ−0.667、−0.5と考えることができる。例えば、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Sn(5配位または6配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+4である。従って、Snを含むサブユニットは電荷が+1となる。そのため、Snを含む層構造を形成するためには、電荷+1を打ち消す電荷−1が必要となる。電荷−1をとる構造として、図6(E)に示すように、2個のZnを含むサブユニットが挙げられる。例えば、Snを含むサブユニットが1個に対し、2個のZnを含むサブユニットが1個あれば、電荷が打ち消されるため、層構造の合計の電荷を0とすることができる。
【0148】
また、Inは5配位および6配位のいずれもとることができるものとする。具体的には、図7(B)に示したユニットとすることで、In−Sn−Zn−O系の結晶(InSnZn)を得ることができる。なお、得られるIn−Sn−Zn−O系の層構造は、InSnZn(ZnO)(mは0または自然数。)とする組成式で表すことができる。なお、In−Sn−Zn−O系の結晶は、mの数が大きいと結晶性が向上するため、好ましい。
【0149】
また、このほかにも、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物や、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物(IGZOとも表記する。)、In−Al−Zn−O系酸化物、Sn−Ga−Zn−O系酸化物、Al−Ga−Zn−O系酸化物、Sn−Al−Zn−O系酸化物や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn−O系酸化物、Sn−Zn−O系酸化物、Al−Zn−O系酸化物、Zn−Mg−O系酸化物、Sn−Mg−O系酸化物、In−Mg−O系酸化物や、In−Ga−O系酸化物、一元系金属の酸化物であるIn−O系酸化物、Sn−O系酸化物、Zn−O系酸化物などを用いた場合も同様である。
【0150】
例えば、図8(A)に、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する1グループのモデル図を示す。
【0151】
図8(A)において、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成するグループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるIn原子が、4配位のOが1個上半分にあるZn原子と結合し、そのZn原子の下半分の3個の4配位のOを介して、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるGa原子と結合し、そのGa原子の下半分の1個の4配位のOを介して、4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるIn原子と結合している構成である。このグループを複数結合して1周期分であるユニットを構成する。
【0152】
図8(B)に3つのグループで構成されるユニットを示す。なお、図8(C)は、図8(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示している。
【0153】
ここで、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Ga(5配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+3であるため、In、ZnおよびGaのいずれかを含むサブユニットは、電荷が0となる。そのため、これらのサブユニットの組み合わせであればグループの合計の電荷は常に0となる。
【0154】
また、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成するグループは、図8(A)に示したグループに限定されず、In、Ga、Znの配列が異なるグループを組み合わせたユニットも取りうる。
【0155】
次に、図5(B)に示すように、半導体層603_Aの一部の上に第1の導電膜を形成し、該第1の導電膜の一部をエッチングすることによって導電層605a_A及び導電層605b_Aを形成する。
【0156】
例えば、スパッタ法などを用いて導電層605a_A及び導電層605b_Aに適用可能な材料の膜を形成することによって第1の導電膜を形成することができる。また、導電層605a_A及び導電層605b_Aに適用可能な材料の膜を積層させることによって第1の導電膜を形成することもできる。
【0157】
また、上記導電層605a_A及び導電層605b_Aの形成方法のように、本実施の形態のトランジスタの作製方法例において、膜の一部をエッチングする場合、例えば、フォトリソグラフィ工程によって膜の一部の上にレジストマスクを形成し、レジストマスクを用いて膜をエッチングしてもよい。なお、この場合、エッチング後にレジストマスクを除去することが好ましい。
【0158】
導電層605a_A及び導電層605b_Aとなる導電層は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素、または上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金等が挙げられる。また、アルミニウム、銅などの金属膜の下側若しくは上側にクロム、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンなどの高融点金属膜を積層させた構成としても良い。また、アルミニウムまたは銅は、耐熱性や腐食性の問題を回避するために、高融点金属材料と組み合わせて用いると良い。高融点金属材料としては、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、ネオジム、スカンジウム、イットリウム等を用いることができる。
【0159】
また、導電層605a_A及び導電層605b_Aとなる導電層は、単層構造でも、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する2層構造、チタン膜と、そのチタン膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、更にその上にチタン膜を成膜する3層構造などが挙げられる。また、Cu−Mg−Al合金、Mo−Ti合金、Ti、Mo、は、酸化膜との密着性が高い。よって、下層にCu−Mg−Al合金、Mo−Ti合金、Ti、或いはMoで構成される導電層、上層にCuで構成される導電層を積層し、上記積層された導電膜を導電層605a_A及び導電層605b_Aに用いることで、酸化膜である絶縁層と、導電層605a_A及び導電層605b_Aとの密着性を高めることができる。
【0160】
また、導電層605a_A及び導電層605b_Aとなる導電層としては、導電性の金属酸化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム酸化スズ、酸化インジウム酸化亜鉛または前記金属酸化物材料にシリコン若しくは酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0161】
次に、図5(C)に示すように、半導体層603_A、導電層605a_A、及び導電層605b_Aの上に第2の絶縁膜を形成することによって、絶縁層606_Aを形成する。
【0162】
例えば、スパッタ法やプラズマCVD法などを用いて絶縁層606_Aに適用可能な材料の膜を形成することによって第2の絶縁膜を形成することができる。また、絶縁層606_Aに適用可能な材料の膜を積層させることによって第2の絶縁膜を形成することもできる。また、高密度プラズマCVD法(例えばμ波(例えば、周波数2.45GHzのμ波)を用いた高密度プラズマCVD法)を用いて絶縁層606_Aに適用可能な材料の膜を形成することによって、絶縁層606_Aを緻密にすることができ、絶縁層606_Aの絶縁耐圧を向上させることができる。
【0163】
なお、半導体層603_Aに接する絶縁層606_Aは、第13族元素及び酸素を含む絶縁材料を用いるようにしても良い。酸化物半導体材料には第13族元素を含むものが多く、第13族元素を含む絶縁材料は酸化物半導体との相性が良く、これを半導体層に接する絶縁膜に用いることで、半導体層との界面の状態を良好に保つことができる。
【0164】
第13族元素を含む絶縁材料とは、絶縁材料に一又は複数の第13族元素を含むことを意味する。第13族元素を含む絶縁材料としては、例えば、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムガリウム、酸化ガリウムアルミニウムなどがある。ここで、酸化アルミニウムガリウムとは、ガリウムの含有量(原子%)よりアルミニウムの含有量(原子%)が多いものを示し、酸化ガリウムアルミニウムとは、ガリウムの含有量(原子%)がアルミニウムの含有量(原子%)以上のものを示す。
【0165】
例えば、ガリウムを含有する半導体層に接して絶縁層を形成する場合に、絶縁層に酸化ガリウムを含む材料を用いることで半導体層と絶縁層の界面特性を良好に保つことができる。例えば、半導体層と酸化ガリウムを含む絶縁層とを接して設けることにより、半導体層と絶縁層の界面における水素のパイルアップを低減することができる。なお、絶縁層に酸化物半導体の成分元素と同じ族の元素を用いる場合には、同様の効果を得ることが可能である。例えば、酸化アルミニウムを含む材料を用いて絶縁層を形成することも有効である。なお、酸化アルミニウムは、水を透過させにくいという特性を有しているため、当該材料を用いることは、半導体層への水の侵入防止という点においても好ましい。
【0166】
また、半導体層603_Aに接する絶縁層は、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープなどにより、絶縁材料を化学量論的組成比より酸素が多い状態とすることが好ましい。酸素ドープとは、酸素をバルクに添加することをいう。なお、当該バルクの用語は、酸素を薄膜表面のみでなく薄膜内部に添加することを明確にする趣旨で用いている。また、酸素ドープには、プラズマ化した酸素をバルクに添加する酸素プラズマドープが含まれる。また、酸素ドープは、イオン注入法またはイオンドーピング法を用いて行ってもよい。
【0167】
例えば、半導体層603_Aに接する絶縁層として酸化ガリウムを用いた場合、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープを行うことにより、酸化ガリウムの組成をGa(X=3+α、0<α<1)とすることができる。
【0168】
また、半導体層603_Aに接する絶縁層として酸化アルミニウムを用いた場合、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープを行うことにより、酸化アルミニウムの組成をAl(X=3+α、0<α<1)とすることができる。
【0169】
また、半導体層603_Aに接する絶縁層として酸化ガリウムアルミニウム(酸化アルミニウムガリウム)を用いた場合、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープを行うことにより、酸化ガリウムアルミニウム(酸化アルミニウムガリウム)の組成をGaAl2−X3+α(0<X<2、0<α<1)とすることができる。
【0170】
酸素ドープ処理を行うことにより、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁層を形成することができる。このような領域を備える絶縁層と半導体層が接することにより、絶縁層中の過剰な酸素が半導体層に供給され、半導体層中、または半導体層と絶縁層の界面における酸素欠陥を低減し、半導体層をi型化またはi型に限りなく近くすることができる。
【0171】
次に、図5(D)に示すように、絶縁層606_Aの上に第2の導電膜を形成し、第2の導電膜の一部をエッチングすることによって、導電層607_Aを形成する。
【0172】
例えば、スパッタ法を用いて導電層607_Aに適用可能な材料の膜を形成することによって第2の導電膜を形成することができる。また、第2の導電膜に適用可能な材料の膜を積層させ、第2の導電膜を形成することもできる。
【0173】
なお、スパッタガスとして、例えば水素、水、水酸基、又は水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることによって、形成される膜の上記不純物濃度を低減することができる。
【0174】
なお、スパッタ法を用いて膜を形成する前に、スパッタ装置の予備加熱室にて加熱処理(加熱処理Bともいう)を行ってもよい。加熱処理Bを行うことによって、水素、水分などの不純物を脱離することができる。
【0175】
また、スパッタ法を用いて膜を形成する前に、例えばアルゴン、窒素、ヘリウム、又は酸素雰囲気下で、ターゲット側に電圧を印加せずに、膜形成面側にRF電源を用いて電圧を印加し、プラズマを形成して被形成面を改質する処理(逆スパッタともいう)を行ってもよい。逆スパッタを行うことによって、被形成面に付着している粉状物質(パーティクル、ごみともいう)を除去することができる。
【0176】
また、スパッタ法を用いて膜を形成する場合、吸着型の真空ポンプなどを用いて、膜を形成する成膜室内の残留水分を除去することができる。吸着型の真空ポンプとしては、例えばクライオポンプ、イオンポンプ、又はチタンサブリメーションポンプなどを用いることができる。また、コールドトラップを設けたターボポンプを用いて成膜室内の残留水分を除去することもできる。
【0177】
さらに、絶縁層606_Aを形成した後に、不活性ガス雰囲気下、又は酸素ガス雰囲気下で、加熱処理(加熱処理Cともいう)を行ってもよい。このとき、例えば200℃以上400℃以下、好ましくは250℃以上350℃以下で加熱処理Cを行うことができる。
【0178】
次に、図5(E)に示すように、半導体層603_Aにドーパントを添加することによって、高濃度領域604a_A及び高濃度領域604b_Aを形成する。
【0179】
例えば、イオンドーピング装置又はイオン注入装置を用いてドーパントを添加することができる。
【0180】
添加するドーパントとしては、例えば窒素、リン、砒素、アルゴン、キセノン、ヘリウム、及び水素の一つ又は複数を用いることができる。
【0181】
なお、半導体層603_Aにドーパントを添加した後に加熱処理を行ってもよい。
【0182】
以上が図4(A)に示すトランジスタの作製方法例である。
【0183】
本実施の形態では、薄膜トランジスタの構造をトップゲート構造にしてゲート電極を用いてソース領域及びドレイン領域を自己整合的に形成することで、微細化を図ることができる。よって薄膜トランジスタのゲート電極とソース電極及びドレイン電極との重畳する部分をなくすことができる。
【0184】
以上の工程により、水素濃度が十分に低減されて高純度化され、且つ十分な酸素の供給により酸素欠損に起因するエネルギーギャップ中の欠陥準位が低減された半導体層603_Aとすることができる。そのため、キャリア濃度が極めて小さい半導体層とすることができ、オフ電流が著しく低い薄膜トランジスタとすることができる。このようなオフ電流が著しく低い薄膜トランジスタを、上記実施の形態の薄膜トランジスタに適用することで、非導通状態とした際に、ほぼ絶縁体とみなすことができる。従って薄膜トランジスタ101に用いることで、データ保持部D_HOLDに保持された電位の低下を極めて小さいレベルに抑制できる。その結果、データ保持部D_HOLDの電位の変動を小さくできる。
【0185】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0186】
100 半導体装置
101 薄膜トランジスタ
102 電流増幅回路
103 電界効果トランジスタ
104 バイポーラトランジスタ
105 容量素子
111 pチャネル型トランジスタ
112 nチャネル型トランジスタ
113 pチャネル型トランジスタ
114 nチャネル型トランジスタ
115 pチャネル型トランジスタ
116 nチャネル型トランジスタ
117 nチャネル型トランジスタ
118 抵抗素子
119 nチャネル型トランジスタ
120 抵抗素子
601_A 絶縁層
601_B 絶縁層
603_A 半導体層
603_B 半導体層
604a_A 高濃度領域
604b_A 高濃度領域
604a_B 高濃度領域
604b_B 高濃度領域
605a_A 導電層
605a_B 導電層
605b_A 導電層
605b_B 導電層
606_A 絶縁層
606_B 絶縁層
607_A 導電層
607_B 導電層
608a_A 低濃度領域
608b_A 低濃度領域
608a_B 低濃度領域
608b_B 低濃度領域
609a_A 絶縁層
609a_B 絶縁層
609b_A 絶縁層
609b_B 絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子よりデータが供給され、チャネル形成領域に酸化物半導体層を有する薄膜トランジスタと、
電界効果トランジスタ及びバイポーラトランジスタがダーリントン接続された電流増幅回路と、を有し、
前記薄膜トランジスタの第2端子と、前記電界効果トランジスタのゲートと、容量素子の一方の電極と、が電気的に接続されるデータ保持部では、前記薄膜トランジスタを非導通状態にすることでデータを保持し、
前記データ保持部に保持された前記データに応じて前記電流増幅回路に流れる電流量を制御する半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、前記データは、前記薄膜トランジスタを非導通状態とする期間において、高電源電位をグラウンド電位とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記薄膜トランジスタのゲート端子は、前記薄膜トランジスタの導通状態を制御する制御信号が供給される配線に接続される半導体装置。
【請求項4】
請求項3において、前記制御信号は、前記薄膜トランジスタを非導通状態とする期間において、高電源電位をグラウンド電位とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、前記酸化物半導体層は、In−Sn−Zn−O系酸化物半導体である半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−253752(P2012−253752A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−104643(P2012−104643)
【出願日】平成24年5月1日(2012.5.1)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】