説明

半導体製造装置とその制御方法、及び半導体装置の製造方法

【課題】半導体製造装置とその制御方法、及び半導体装置の製造方法において、装置パラメータの実値の異常を早期に発見すること。
【解決手段】装置パラメータに従ってシリコンウエハ5に処理を行うチャンバ(処理手段)と、装置パラメータの実値の第1の代表値と、該第1の代表値とは異なる時点で取得した装置パラメータの実値の第2の代表値との差に基づいて、シリコンウエハ5に処理を行ったときの装置パラメータの実値に異常があったかどうかを判断する判断部66とを有する半導体装置製造装置1による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置とその制御方法、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI等の半導体装置の製造工程では、半導体ウエハに対して成膜やエッチング等の処理が行われる。これらの処理は、処理時間等の装置パラメータを設定し、その設定値に従って半導体製造装置内において行われる。
【0003】
但し、装置パラメータの実値は、チャンバ状態の経時変化等によって、1枚の半導体ウエハを処理している最中にも変動するし、半導体ウエハ間でも変動する。実値の変動量が大きいと、目標とする条件で半導体ウエハに対して処理を行うことができず、半導体装置が不良になるおそれがある。
【0004】
そのため、装置パラメータの実値を監視し、その変動量が半導体装置を不良にし得る程度に大きなものであるかどうかを把握することが望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体製造装置とその制御方法、及び半導体装置の製造方法において、装置パラメータの実値の異常を早期に発見することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の開示の一観点によれば、装置パラメータに従って半導体ウエハに処理を行う処理手段と、前記装置パラメータの実値の第1の代表値と、該第1の代表値とは異なる時点で取得した前記装置パラメータの実値の第2の代表値との差に基づいて、前記半導体ウエハに処理を行ったときの前記装置パラメータの実値に異常があったかどうかを判断する判断手段とを有する半導体装置製造装置が提供される。
【0007】
また、その開示の他の観点によれば、装置パラメータに従って半導体ウエハに処理を行うステップと、前記装置パラメータの実値の第1の代表値と、該第1の代表値とは異なる時点で取得した前記装置パラメータの実値の第2の代表値との差に基づいて、前記半導体ウエハに処理を行ったときの前記装置パラメータの実値に異常があったかどうかを判断するステップとを有する半導体製造装置の制御方法が提供される。
【0008】
更に、その開示の別の観点によれば、装置パラメータに従って半導体ウエハに処理を行う工程と、前記装置パラメータの実値の第1の代表値と、該第1の代表値とは異なる時点で取得した前記装置パラメータの実値の第2の代表値との差に基づいて、前記半導体ウエハに処理を行ったときの前記装置パラメータの実値に異常があったかどうかを判断する工程とを有する半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
開示の半導体装置製造装置とその制御方法によれば、装置パラメータの実値の第1の代表値と第2の代表値とを異なる時点で取得し、これらの差に基づいて当該実値の異常を判断する。代表値同士の差は実値の異常に対して敏感に反応するので、その異常を早期に発見することが可能となる。
【0010】
また、このような異常の発見手法を半導体装置の製造方法に適用することにより、異常を見越して半導体装置を必要以上に製造する必要がなくなり、半導体装置の量産効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(1)調査結果について
実施形態の説明に先立ち、本願発明者が行った調査結果について説明する。
【0012】
既述のように、エッチング時間等の装置パラメータの実値は、半導体ウエハやロット間で変動する。
【0013】
図1(a)は、半導体ウエハ上のアルミニウム合金膜をエッチングした場合に、各ロットにおける平均のエッチング時間を調査して得られたグラフである。
【0014】
このグラフの横軸はロット番号を示す。そして、縦軸は、各半導体ウエハのエッチング時間の総和を1ロット中の半導体ウエハの枚数(25枚)で除した平均のエッチング時間を示す。
【0015】
なお、そのグラフには、それぞれのロット番号に対応して二本の横棒が付されているが、これらは各ロットにおけるエッチング時間の最大値と最小値を示すものである。
【0016】
図1(a)に示されるように、平均のエッチング時間はロット間で変動するものの、変動の仕方に顕著な特徴はなく、グラフの傾向からエッチング時間の異常を発見するのは困難である。
【0017】
あえて異常を発見しようとすると、例えば、図示のように許容最小値TLと許容最大値TMとを設け、これらの値で定まる許容範囲Wを超えているロットにおいて、エッチング時間に異常があると判断することが考えられる。
【0018】
この方法では、エッチング時間が正常であるロットに異常があると誤認しないように、許容範囲Wをなるべく広く設定するのが好ましい。この例では、許容最小値TLを65秒、許容最大値TMを145秒とすることが考えられる。
【0019】
しかしながら、これではエッチング時間が異常であるロットでも正常である認識してしまうので、オペレータが異常に気づかずにそのまま生産を続けてしまい、その結果ますます異常なロットが増えて被害が拡大する。
【0020】
更に、このように異常のロットがある場合でも半導体装置の予定の生産量を確保するために、保険の意味を込めて、必要以上にロットを処理する必要が生ずるが、これでは半導体装置の量産が非効率的と共に、余計な生産コストが発生する。
【0021】
そこで、本願発明者は、図1(a)のようなロット内の平均値よりも異常に対して敏感に反応する統計値として、ロット内におけるエッチング時間のレンジに着目した。
【0022】
図1(b)は、図1(a)と同一のロットについて、レンジを調査して得られたグラフである。
【0023】
レンジは、1ロット中において、エッチング時間が最大値の半導体ウエハと、エッチング時間が最小値の半導体ウエハとを抽出し、これら最大値と最小値との差として定義される。
【0024】
図1(b)に示されるように、レンジの傾向はロットに大きく依存する。
【0025】
したがって、レンジに閾値Tを設定し、レンジがその閾値Tを超えたか否かによりエッチング時間の異常の有無を判断することが可能となる。
【0026】
閾値Tの値は、異常の検出感度と量産効率のバランスにより決定され得る。すなわち、閾値Tを下げれば異常を発見し易くなるが、些細な異常でも検出してしまって半導体装置の量産効率が低下するおそれがある。一方、閾値Tを上げれば量産効率は高まるが、異常を見逃す危険性が高まる。
【0027】
図示の例では、閾値Tを12秒程度に設定することにより両者のバランスをとることができると考えられる。この場合、矢印で示されるロットAが閾値Tを超えているので、ロットAにおいてエッチング時間に異常があったと推定される。
【0028】
このように、レンジを用いると平均値を用いる方法(図1(a))では見えなかった異常を発見できるようになる。
【0029】
これは、レンジが実際のエッチング時間の最大値と最小値との差であり、処理の異なる時点における装置パラメータの実値同士の差により定義される量であるため、異常な実値があった時点ですぐさま異常値になり易いためであると推定される。
【0030】
図1(a)、(b)ではエッチング時間について説明したが、これ以外の装置パラメータであっても、レンジの方が平均値よりも異常を発見するのに有用である。そのような装置パラメータとしては、例えば、コントロールバルブの開度のステップ数がある。
【0031】
コントロールバルブは、チャンバ内の圧力を自動的に制御するために排気ラインに設けられ、ステッピングモータによってその開度(開き具合)が制御される。
【0032】
開度はステッピングモータのステップ数によって指定されるが、チャンバに供給されるエッチングガスの流量が変動する場合などでは、エッチング中に開度のステップ数が変動する。
【0033】
図2(a)は、各ロットにおける開度の平均のステップ数を調査して得られたグラフである。このグラフの横軸はロット番号を示す。そして、縦軸は、各半導体ウエハにおけるステップ数の総和を1ロット中の半導体ウエハの枚数(25枚)で除した平均のエッチング時間を示す。
【0034】
図2(a)に示されるようにステップ数はロット間で変動しているが、エッチング時間(図1(a))の場合と同様にその変動の仕方に顕著な傾向が見られない。したがって、この傾向から不良ロットを発見しようとすると、良品ロットを不良と誤認しないようにステップ数の許容範囲Wを広くとる必要がある。この例では、例えば、許容最小値TLを6000ステップ、許容最大値TMを7000ステップ程度にする必要がある。
【0035】
一方、図2(b)は、図2(a)と同じロットについて、ステップ数のレンジを調査して得られたグラフである。
【0036】
図1(b)の場合と同様に、そのレンジは、1ロット中において、ステップ数が最大値の半導体ウエハと、ステップ数が最小値の半導体ウエハとを抽出し、これら最大値と最小値との差として定義される。
【0037】
図2(a)に示されるように、レンジは大部分のロットで略同じ値であるが、矢印で示されるロットBが閾値Tを超えており、ロットBにおいてステップ数に異常があったと推定できる。なお、閾値Tは、異常の検出感度と量産効率のバランスから500ステップとしている。
【0038】
このように、ステップ数においても、平均値よりもレンジの方が異常を発見し易いことが明らかとなった。
【0039】
特に、コントロールバルブのステップ数のように装置部品の駆動量を制御するための装置パラメータは、温度や圧力等のような装置パラメータとは異なった性格を有する。すなわち、コントロールバルブは、チャンバ内の圧力を許容範囲に収めようとその開度を積極的に調節しようとするので、開度を規定するステップ数は遂次変化する。したがって、ステップ数に一見大きな変動があっても、圧力値が許容値に収まっているかぎりステップ数は異常であるとはいえない。
【0040】
そのため、図2(a)のようにステップ数に許容範囲Wを定めてしまうと、コントロールバルブによる圧力制御を妨げることになりかねないので、許容範囲Wを広めざるを得ず、実質的にはステップ数を監視していることにはならない。
【0041】
このような異常の判別の困難性により、既存の半導体製造装置では、コントロールバルブの開度ではなく、圧力値を監視するものが多い。
【0042】
これに対し、図2(b)のようにレンジを用いれば、圧力制御を妨げることなくステップ数を監視でき、なおかつステップ数の異常をすぐさま発見できるようになる。
【0043】
このように、レンジを用いた異常の発見方法は、装置部品の駆動量を規定する装置パラメータを監視するのに極めて有用である。そのような装置パラメータとしては、コントロールバルブのステップ数の他に、RF(Radio Frequency)整合器のマッチングポジションを規定するステップ数もある。
【0044】
RF整合器は、可変容量の容量値をステッピングモータ等で自動的に調節することにより、高周波電源の出力電力をチャンバ内のエッチングガスのインピーダンスにマッチングさせ、高周波電力の反射波を抑えるものとして使用されるものである。そして、その反射波が最小になるときのステッピングモータの駆動位置は、マッチングポジションと呼ばれ、ステッピングモータのステップ数で規定される。
【0045】
図3(a)、(b)は、そのようなRF整合器におけるステップ数について、図2(a)、(b)と同様の調査を行って得られたグラフである。
【0046】
図3(a)は、各ロットにおける平均のステップ数のグラフである。そして、図3(b)は、図3(a)と同じロットにおけるステップ数のレンジのグラフである。
【0047】
図3(a)に示されるように、平均のステップ数には顕著な傾向が現れず、どのロットでステップ数が異常になっているのか分かりづらい。そのため、図1(a)の場合と同様に、ステップ数が正常であるロットを異常と誤認しないように許容幅Wを大きく取らざるを得ない。図示の例では、例えば許容最小値TLを400ステップ、許容最大値TMを650ステップとすることが考えられる。
【0048】
しかしながら、このように広い許容範囲Wでは、実質的にはステップ数を監視していることにはならず、異常なステップ数があってもそれを見逃すおそれがある。
【0049】
一方、図3(b)に示されるように、ステップ数のレンジはロット間で大きく変動する。
【0050】
図1(b)の場合と同様に、異常の検出感度と量産効率のバランスを考えて閾値Tを設定し、レンジがその閾値Tを超えたロットにおいてステップ数に異常があると判断することが可能となり、ステップ数の異常を発見し易くなる。
【0051】
この例では、閾値Tの値を50ステップ程度に設定することで、異常の検出感度と量産効率のバランスをとることができると考えられる。
【0052】
RF整合器のステップ数は、高周波電源のパワーが許容範囲に収まっている場合でも、高周波電力の反射波を抑制しようとして自動的に変動するので、その数値が異常であるかどうかの判断が難しい装置パラメータである。
【0053】
したがって、既存の半導体製造装置では、RF整合器のステップ数ではなく、高周波電源のパワーを監視するものが多い。
【0054】
しかし、図3(b)に示したように、レンジを用いればその異常を検出し易くすることが可能となり、RF整合器のステップ数を監視することが可能となる。
【0055】
本願発明者は、上記の調査結果に基づき、以下に説明するような本実施形態に相当した。
【0056】
(2)第1実施形態
図4は、本実施形態に係る半導体製造装置の構成図である。
【0057】
この半導体製造装置1は平行平板型RIE(Reactive Ion Etching)装置であって、ドライエッチングを行うためのチャンバ10を備える。
【0058】
チャンバ10内には下部電極20が設けられており、更にこの下部電極20の上にはシリコンウエハ5等の半導体ウエハを保持するための静電チャック22が設けられる。その下部電極20は、RF整合器32を介して高周波電源30が接続される。
【0059】
RF整合器32は可変容量32aを有し、可変容量32aの容量値を制御することにより、高周波電源30の出力電力をチャンバ10内のエッチングガスのインピーダンスにマッチングさせることができる。
【0060】
可変容量32aの容量値の制御は、例えば、可変容量32aが備えるキャパシタ下部電極と上部電極との間隔や、キャパシタ誘電体膜とこれらの電極とのオーバーラップ量をステッピングモータのステップ数により調節することで行われ得る。
【0061】
一方、チャンバ10においてウエハ5と対向する位置にはシャワーヘッドを兼ねた上部電極40が設けられており、上部電極40に接続されたガス導入管14からチャンバ10内にエッチングガスが導入される。なお、上部電極40は接地電位に維持されている。
【0062】
また、チャンバ10の底面には、不図示の排気ポンプに接続された排気配管16が設けられており、その排気配管16の途中にはコントロールバルブ60が設けられる。
【0063】
コントロールバルブ60は不図示のステッピングモータに接続されており、そのステッピングモータがステップ数信号Scに応じたステップ数だけ回転することにより、コントロールバルブ60の開度が調節される。
【0064】
更に、チャンバ10の側壁には、チャンバ10内の圧力を測定する圧力計12と、終点検出器50が設けられる。
【0065】
このうち、終点検出器50は、ウエハ5上でエッチングされている膜に光を照射し、その反射光の波長に基づいてウエハ5上に残存している膜の厚さを測定する。そして、その測定結果は、膜厚測定信号STとして制御系70に出力される。
【0066】
一方、圧力計12により測定された圧力は、圧力測定信号SPとして制御部70に出力される。
【0067】
チャンバ10内におけるエッチング条件等は制御系70により管理される。
【0068】
制御系70は、主制御部65、判断部66、及び記憶部68を備える。
【0069】
このうち、主制御部65は、圧力測定信号SPによりチャンバ10内の圧力を監視しており、その圧力値が設定値からずれているような場合には、ステップ数信号Scによりコントロールバルブ60の開度を調節し、チャンバ10内の圧力が設定値になるようにする。
【0070】
また、主制御部65は、膜厚測定信号STに基づいてエッチングの深さを監視しており、その深さが所定値に達した場合にはエッチングを終了させる。
【0071】
そして、ウエハ5に対するエッチングが終了する度に、そのウエハ5に対するエッチング時間等の装置パラメータの実値が、そのウエハに対応づけられるように記憶部68にログ67として格納される。記憶部68は特に限定されないが、例えばハードディスクドライブ等を採用し得る。
【0072】
また、ログ67に格納される装置パラメータの実値としては、エッチング時間のような処理時間の他に、コントロールバルブ60の開度を規定するステップ数や、可変容量32aの容量を規定するステップ数のように、装置部品の駆動量を規定するものもある。
【0073】
更に、圧力、基板温度、エッチングガスの流量、及び高周波電源30等の装置パラメータの実値もログ67に格納される。
【0074】
そして、判断部66は、後述のようにしてこれらの装置パラメータの実値に異常があるか否かを判断する。
【0075】
なお、この例では制御系70内に判断部66を設けたが、制御系70に外部のパーソナルコンピュータ等の電子計算機を接続し、その電子計算機を判断部66として利用してもよい。更に、この場合は記憶部68として電子計算機内の記憶部を利用するようにしてもよい。これらについては後述の各実施形態でも同様である。
【0076】
以上説明した半導体製造装置1では、処理チャンバ10内でウエハ5が一枚ずつエッチングされ、最終的には1ロットのウエハ5に対するエッチングが行われる。また、1ロットのエッチングが終了した後には、それとは別のロットに対するエッチングが行われ、これによりLSI等の半導体装置が量産されることになる。
【0077】
ここで、調査結果において説明したように、半導体製造装置1の装置パラメータの実値はロット間で変動する。そのような装置パラメータの実値としては、ログ67に格納されているエッチング時間等がある。
【0078】
これらの装置パラメータの実値が大きく変動する例としては、例えば、エッチング時間が設定値よりも短くなる場合がある。この場合は、本来エッチングされるべき部位に膜が残存して半導体装置が不良になっているおそれがある。そのため、半導体装置の不良数を抑えるには、装置パラメータの実値の異常をなるべく早期に発見するのが望まれる。
【0079】
そこで、本実施形態では、調査結果で説明した装置パラメータの実値のレンジを利用して、以下のようにして装置パラメータの実値の異常を早期に検出する。
【0080】
図5は、本実施形態に係る半導体製造装置の制御方法について示すフローチャートである。
【0081】
この方法では、ステップP1〜P4を順に行うことにより、1ロット(25枚)の1枚目から順番にチャンバ10内においてエッチングを行う。
【0082】
このとき、各ウエハに対するエッチングが終了する度に、そのウエハに対するエッチング時間、圧力、及びコントロールバルブの開度等の装置パラメータの実値が、そのウエハに対応づけられるように記憶部68にログ67として格納される。
【0083】
そして、1ロットの最後の25枚目のエッチングが終了したら、ステップP5に移る。
【0084】
そのステップP5では、判断部66が記憶部68内のログ67を参照することにより、当該ロットにおける装置パラメータの実値の最大値Umaxと最小値Uminとを抽出し、これらの差Umax−Uminで定義されるレンジを算出する。
【0085】
なお、本ステップにおいて算出すべき差Umax−Uminは、エッチング時間の実値同士などように、同種の装置パラメータの実値同士の差である。これについては後述の各実施形態でも同様である。
【0086】
ここで、図1〜図3を参照して説明したように、レンジは平均値よりもエッチング時間等の装置パラメータの変動に敏感に反応するので、装置パラメータの実値の異常を検出するのに有用である。
【0087】
そこで、次のステップP6では、上記で算出したレンジUmax−Uminが閾値T1を超えているか否かを判断部66が判断する。その閾値T1の設定の仕方は特に限定されず、異常の検出感度と量産効率とのバランスを考慮して決定してよい。
【0088】
そして、閾値T1を超えている(YES)と判断された場合は、当該ロットにおいてエッチング時間が異常であるウエハが存在すると推定される。そのため、この場合はステップP7に移り、制御部70がアラームを発生してオペレータに注意を喚起するか、若しくは半導体製造装置1の稼動を停止する。
【0089】
この場合はエッチングが最大値のウエハと最小値のウエハのどちらかに異常があると推定されるので、これらのウエハを線幅測定装置等において検査し、エッチングにより得られたデバイスパターンに実際に欠陥があるか否かをオペレータが直接調べることになる。
【0090】
一方、ステップP6においてレンジが閾値を超えていない(NO)と判断された場合には、当該ロットにおけるエッチング時間に異常はないと推定されるので、当該ロットに対するエッチングを終了し、後続のロットの受け入れに備えるようにする。
【0091】
以上により、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の基本ステップが終了する。
【0092】
このような製造方法によれば、ステップP6において、1ロット内における装置パラメータの実値のレンジUmax−Uminが閾値T1を越えているか否かにより、当該実値に異常があるかどうかを判断する。
【0093】
図1〜図3を参照して説明したように、レンジは装置パラメータの実値の異常に対して敏感に反応する。そのため、本実施形態では装置パラメータの実値に異常があったロットをすぐさま発見し、その異常が及ぶ範囲を当該ロット内のみに収めることが可能となり、被害を最小限にすることができる。
【0094】
また、レンジUmax−Uminが異常に対して敏感に反応することから、閾値T1の値を下げることにより異常の検出感度を高めることができ、ロット内の平均値を利用する方法(図1(a)、図2(a)、図3(a))では見逃してしまうような僅かな異常をも発見することができる。
【0095】
更に、このように異常を発見し易いので、異常になるのを見越して必要以上のロットを処理する必要がなくなり、半導体装置の量産効率を高めることが可能となる。
【0096】
特に、コントロールバルブ60の開度を規定するステップ数のように、装置部品の駆動量を規定するステップ数は、チャンバ10内が許容範囲の処理条件となっている限り異常であるとは言えないので、異常の判別が難しい装置パラメータである。
【0097】
このような装置パラメータであっても、本実施形態のようにレンジを用いれば、図2(b)、図3(b)のようにその異常を容易に発見することができる。その結果、これらの装置パラメータに異常が発見されたときに半導体製造装置1のメンテナンスを行うことにより、チャンバ10内での処理条件までも異常となるのを防止でき、不良となる半導体ウエハを低減することが可能となる。
【0098】
なお、上記では、ドライエッチング用の半導体製造装置1(図4参照)を例にして説明したが、本実施形態が適用可能なプロセスはエッチングに限定されない。例えば、CVD装置、イオン注入装置、熱処理装置、露光装置、スパッタ装置、及び洗浄装置にも本実施形態を適用し、これらの装置における装置パラメータの異常を早期に発見するようにしてもよい。
【0099】
(3)第2実施形態
第1実施形態では、装置パラメータの実値のレンジを監視して異常を発見するようにした。
【0100】
レンジは、既述のように1ロット内における装置パラメータの実値の最大値と最小値との差で定義される。最大値と最小値は、処理の異なる時点で取得された装置パラメータの実値の二つの代表値と捉えることができる。そのため、レンジに限らず、任意の二つの代表値同士の差に基づいて装置パラメータの実値の異常を監視すれば、その異常をすぐさま発見できると考えられる。
【0101】
本実施形態では、そのような代表値として、1ロットにおける装置パラメータの実値の平均値を以下のように利用する。
【0102】
図6は、本実施形態に係る半導体製造装置の制御方法について示すフローチャートである。以下では、第1実施形態で説明した半導体製造装置1を例にして、その制御方法について説明する。
【0103】
最初のステップP10と次のステップP11では、制御部70の制御下において、チャンバ10内で1ロット目と2ロット目をこの順に形成する。なお、各ロットとも25枚のウエハを有する。
【0104】
また、第1実施形態と同様に、ウエハに対する処理が終了する度に、各ロットのそれぞれのウエハに対応するように、装置パラメータの実値がログ67として記憶部68に格納される。
【0105】
次いで、ステップP12に移り、判断部66が各ウエハにおける装置パラメータの実値の総数を1ロット中のウエハの枚数(25枚)で除すことにより、1ロット目と2ロット目のそれぞれについて、装置パラメータの実値のロット内平均値M1、M2を算出する。
【0106】
そして、1ロット目の平均値M1と2ロット目の平均値M2との差M1−M2が閾値T2を超えているか否かを判断部66が判断する。なお、閾値T2の値は特に限定されず、異常の検出感度と量産効率とのバランスを考慮して決定してよい。
【0107】
ここで、超えている(YES)と判断された場合には、1ロット目と2ロット目のどちらかにおいて装置パラメータの実値に異常があると推定されるので、ステップP17に移り、制御部70の制御下でアラームを発生させるか半導体製造装置1の稼動を停止する。
【0108】
そして、装置パラメータがエッチング時間の場合には、1ロット目と2ロット目のそれぞれの各ウエハを線幅測定装置等において検査し、エッチングにより得られたデバイスパターンに実際に欠陥があるか否かをオペレータが直接調べることになる。
【0109】
一方、ステップP12において閾値を超えていない(NO)と判断された場合には、1ロット目と2ロット目のいずれにも異常はないと推定されるので、ステップP13に移り3ロット目を処理する。
【0110】
その後、ステップP14に移り、判断部66が2ロット目と3ロット目のそれぞれについて装置パラメータのロット内の平均値M2、M3を算出する。
【0111】
そして、2ロット目の平均値M2と3ロット目の平均値M3との差M2−M3が閾値T2を超えているか否かを制御部70が判断し、超えている(YES)と判断された場合にはステップP17に移ってアラームを発生させるか半導体製造装置1の稼動を停止する。
【0112】
一方、越えていない(NO)と判断された場合には、上記と同様にして4ロット目以降を順次処理していき、ステップP15において処理予定の最終ロットであるnロット目を処理する。
【0113】
そして、ステップP16に移り、上記のステッP12、P13と同様にしてnロット目とn−1ロット目のそれぞれの装置パラメータのロット内平均Mn、Mn-1を算出し、それらの差Mn−Mn-1が閾値T2を超えているかどうかを判断部66が判断する。
【0114】
この判断において超えている(YES)とされた場合には既述のステップP17に移り、超えていない(NO)と判断された場合には処理を終了する。
【0115】
以上により、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の基本ステップが終了する。
【0116】
上記した本実施形態によれば、ステップP12、P14、P16において、装置パラメータの実値のロット内での平均値を求める。そして、二つのロット間でその平均値の差を算出し、その値が閾値を超えているかどうかにより装置パラメータの実値の異常の有無を判断する。
【0117】
二つのロットにおける平均値の差は、第1実施形態で説明したレンジと同様に、処理の異なる時点で取得された装置パラメータの実値の二つの代表値の差として捉えることができるので、装置パラメータの実値の異常に対して敏感に反応すると考えられる。そのため、本実施形態でも装置パラメータの実値の異常を容易に発見することができ、異常が及ぶ範囲を当該ロットに収めることが可能となる。
【0118】
なお、上記ではロット内の平均値を利用して異常を発見するようにしたが、本実施形態はこれに限定されない。平均値に代えて、ロット内における装置パラメータの実値の最大値又は最小値を利用してもよい。
【0119】
(4)第3実施形態
本実施形態では、装置パラメータの実値の代表値の一つとして、1ロット内の代表ウエハにおける値を用いる。そして、その代表ウエハにおける値と、当該ロット内の残りのウエハにおける値との差を用い、以下のようにして装置パラメータの実値の異常を発見する。
【0120】
図7は、本実施形態に係る半導体製造装置の制御方法について示すフローチャートである。以下では、第1実施形態で説明した半導体製造装置1を例にして、その制御方法について説明する。
【0121】
最初のステップP20では、チャンバ10において、1ロット内の代表ウエハである1枚目のウエハに対して処理を行う。
【0122】
次いで、ステップP21に移り、2枚目のウエハに対する処理をチャンバ10内で行う。
【0123】
その後に、ステップP22に移り、1枚目のウエハにおける装置パラメータの実値Q1と、2枚目のウエハにおける装置パラメータの実値Q2との差Q1−Q2を算出し、その値が閾値T3を越えているかどうかを判断部66が判断する。
【0124】
なお、差Q1−Q2の算出は、判断部66がログ67を参照し、当該ログ67内の1枚目と2枚目の装置パラメータの実値Q1、Q2に基づいて行われる。
【0125】
ここで、閾値を超えている(YES)と判断された場合には、1枚目と2枚目のウエハのどちらかにおいて装置パラメータの実値に異常があると推定される。よって、この場合はステップP28に移り、制御部70がアラームを発生してオペレータに注意を喚起するか、半導体製造装置1の稼動を停止する。
【0126】
これに対し、閾値を超えていない(NO)と判断された場合には、ステップP23に移り、3枚目のウエハの処理を行う。
【0127】
次いで、ステップP24に移り、3枚目のウエハと、代表ウエハである1枚目のウエハのそれぞれの装置パラメータの実値Q3、Q1の差Q1−Q3を算出し、その値が閾値T3を超えているかどうかを判断部66が判断する。
【0128】
ステップP22と同様に、差Q1−Q3の算出は、判断部66がログ67内の実値Q3、Q1を参照して行われる。
【0129】
ここで、超えている(YES)と判断された場合には、ステップP24におけるのと同様の理由によりステップP28に移る。
【0130】
そして、超えていない(NO)と判断された場合には、4枚目以降のウエハに対して処理を行った後、ステップP25に移り1ロットの最後である25枚目のウエハに対して処理を行う。
【0131】
その後に、ステップP26に移り、25枚目のウエハと、代表ウエハである1枚目のウエハのそれぞれの装置パラメータの実値Q25、Q1の差Q1−Q25を算出して、その値が閾値T3を超えているかどうかを判断部66が判断する。
【0132】
ここで、閾値T3を超えている(YES)と判断された場合にはステップP28に移ってアラームの発生等を行う。
【0133】
一方、閾値T3を越えていない(NO)と判断された場合には、ステップP27に移る。
【0134】
そのステップP27では、判断部66が当該ロット内における装置パラメータの実値を1枚目から25枚目までについて平均し、その値が前のロットにおける平均値を超えているかどうかを判断する。
【0135】
なお、本ステップにおける閾値は、ロット間の平均値の差を把握するのに使用するものなので、代表ウエハと各ウエハとの差を把握するのに使用されるステップP22、P23、P26における閾値とは別の値を用いるのが好ましい。その値は、経験に基づいて任意に設定され得る。
【0136】
そして、ステップP27において閾値を超えている(YES)と判断された場合には、当該ロットと前のロットのどちらかにおいて装置パラメータの実値に異常があると推定される。
【0137】
よって、この場合は、ステップP28に移ってアラームの発生等をした後、いずれのロットに異常があるのかを調査すべく、当該ロットと前のロットにおけるそれぞれのウエハを実際に検査する。装置パラメータがエッチング時間である場合は、線幅測定装置においてデバイスパターンの線幅を測定し、その値が設計上の許容範囲に収まっているかどうかが検査される。
【0138】
これに対し、ステップP27において閾値を超えていない(NO)と判断された場合には、いずれのロットにも異常はないと推定されるので、当該ロットの処理を終了して後続ロットの受け入れに備える。
【0139】
以上により、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の基本ステップが終了する。
【0140】
上記した本実施形態によれば、ステップP22、P24、P26において、代表ウエハである1枚目のウエハと、当該ロット内におけるそれ以外のウエハの装置パラメータの実値の差を求め、その差が閾値T3を超えているかどうかが判断される。
【0141】
代表ウエハとそれ以外のウエハの装置パラメータのそれぞれの実値は、処理の異なる時点で取得された装置パラメータの二つの実値として捉えられるので、レンジと同様の性質を呈すると考えられる。そのため、1ロット内のいずれかのウエハにおいて装置パラメータの実値に異常があった場合、当該ウエハと代表ウエハとの間においてその実値が大きく変動し、異常をすぐさま検出できると考えられる。
【0142】
これにより、第1、第2実施形態と同様に、異常が及ぶ範囲を当該ロット内に収めることができ、異常に伴う被害が後続のロットにも波及するのを防止できる。
【0143】
更に、ステップP27では、当該ロットと前のロットとの間で装置パラメータの実値の平均値の差を求め、その差が閾値を超えているか否かによりロット単位での不良も発見するようにしているので、不良発見の機会が増え、不良を見逃し難くなる。
【0144】
なお、上記では1ロットの1枚目のウエハを代表ウエハとしたが、本実施形態はこれに限定されない。代表ウエハとしては、1ロット内における任意の特定の一枚のウエハを使用し得る。
【0145】
(5)第4実施形態
図8は、本実施形態に係る半導体装置の制御方法について説明するための模式図である。
【0146】
本実施形態では、チャンバ10内で行われる1枚のウエハに対する処理を、第1のステップと第2のステップの2ステップに分けて行う。
【0147】
例えば、上記の半導体製造装置1において1枚のウエハを処理する際に、異なる材料の膜、例えば上から酸化シリコン膜と窒化シリコン膜等を連続してドライエッチングする場合がある。その場合、それぞれの膜のエッチングレートを速めるために、各膜に個別にエッチング条件を採用し、2ステップエッチングが行われる。
【0148】
図8の横軸は処理時間を示し、縦軸は装置パラメータの実値を示す。上記の2ステップエッチングの例では、装置パラメータとして例えばエッチングガスの流量が用いられる。エッチングガスとしては、例えばCF4とO2との混合ガスが使用され、各ステップにおいてこれらの流量を変えることにより、酸化シリコン膜や窒化シリコン膜のエッチングレートの増減を調節することができる。
【0149】
このように1枚のウエハに対する処理を複数ステップに分けて行う場合、次のような方法を採用することにより、処理中の装置パラメータの実値の異常を発見することができる。
【0150】
図9は、本実施形態に係る半導体製造装置の制御方法について示すフローチャートである。
【0151】
最初のステップP30では第1のステップを行い、次のステップP31では第2のステップを行う。
【0152】
ここで、記憶部68のログ67には、第1のステップと第2のステップにおける装置パラメータの実値が、これらのステップに並行してリアルタイムに格納される。
【0153】
次いで、ステップP32に移り、判断部66がログ67を参照することにより、第1のステップと第2のステップのそれぞれにおける装置パラメータの実値の代表値E1、E2を取得する。
【0154】
そして、判断部66がこれらの代表値E1、E2の差E1−E2を算出する。
【0155】
ここで、各代表値E1、E2としては、それぞれのステップにおける装置パラメータの実値の最大値を用いるのが好ましい。あるいは、各ステップにおける平均値や最小値を用いてもよい。
【0156】
第1のステップと第2のステップにおいて、設定されたエッチング条件の範囲内で処理が行われている場合には、差E1−E2が顕著に大きくなることはない。
【0157】
しかし、どちらかのステップにおいてエッチング条件から外れた処理が行われた場合には、差E1−E2が大きくなることが経験的に明らかとなった。
【0158】
そこで、ステップP32では、判断部66が差E1−E2が閾値T4を超えているかどうかを判断し、超えている(YES)と判断された場合にはステップP33に移り、制御部70の制御下でアラームの発生や半導体製造装置1の稼動を停止する。
【0159】
なお、その閾値T4の値は特に限定されず、異常の検出感度と量産効率とのバランスを考慮して決定してよい。
【0160】
一方、ステップP32において超えていない(NO)と判断された場合には、設定したエッチング条件の範囲内で処理が行われていると推定できるので、当該ウエハに対する処理を終了する。
【0161】
以上により、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の基本ステップが終了する。
【0162】
上記した差E1−E2は、処理の異なる時点における装置パラメータの実値の代表値同士の差であるという点でレンジと同様の性格を有する。したがって、差E1−E2は、レンジと同様に装置パラメータの実値の異常に対して敏感に反応すると考えられ、第1〜第3実施形態と同様に異常をすぐさま発見できると期待できる。
【0163】
しかも、本実施形態では1枚のウエハの処理中に異常を発見し、異常があった場合にはアラームの発生や装置の稼動停止等の措置を行うので、後続のウエハが異常な処理条件で処理されるのが防止され、被害を最小限に抑えることができる。
【0164】
(6)第5実施形態
図10(a)〜(c)は第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図である。
【0165】
本実施形態では、第1〜第4実施形態で説明したような装置パラメータの異常の検出方法を、トランジスタを備えた半導体装置の製造工程に適用する。
【0166】
最初に、図10(a)の断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0167】
まず、n型又はp型のシリコンウエハ80のトランジスタ形成領域の周囲にフォトリソグラフィ及びドライエッチングにより素子分離用溝を形成した後に、素子分離用溝の中に酸化シリコンを埋め込んで素子分離絶縁膜82を形成する。
【0168】
続いて、シリコンウエハ80のトランジスタ形成領域にp型不純物を導入してpウェル80aを形成する。さらに、シリコンウエハ80のトランジスタ形成領域表面を熱酸化して、ゲート絶縁膜84となるシリコン酸化膜を形成する。
【0169】
次いで、シリコンウエハ80の上側全面に非晶質又は多結晶シリコン膜を形成し、これをフォトリソグラフィ及びドライエッチングによりパターニングすることにより、ゲート電極86a、86bを形成する。
【0170】
次いで、pウェル80aのうちゲート電極86a,86bの両側にn型不純物をイオン注入してソース/ドレインとなる第1〜第3のn型不純物拡散領域88a〜88cを形成する。
【0171】
更に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により絶縁膜、例えば酸化シリコン膜をシリコンウエハ80の全面に形成した後に、その絶縁膜をエッチバックしてゲート電極86a、86bの両側部分に絶縁性のサイドウォールスペーサ90として残す。
【0172】
続いて、ゲート電極86a、86bとサイドウォールスペーサ90をマスクに使用して、第1〜第3のn型不純物拡散領域88a〜88cに再びn型不純物をイオン注入することにより、第1〜第3のn型不純物拡散領域88a〜88cをLDD(Lightly Doped Drain)構造にする。
【0173】
以上の工程により、pウェル80aには、LDD構造のn型不純物拡散層88a〜88c、ゲート絶縁膜84及びゲート電極86a、86bを有する2つのnチャネル型のMOSトランジスタT1、T2がそれぞれ形成される。
【0174】
なお、特に図示しないが、シリコンウエハ80にはnウェルが形成されており、nウェル領域には、pチャンネル型のMOSトランジスタ(半導体素子)が形成される。
【0175】
次いで、MOSトランジスタT1、T2の上にCVD法により酸化シリコンを層間絶縁膜92として形成する。その後に、層間絶縁膜92の上面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)により平坦化する。
【0176】
次いで、図10(b)に示すように、フォトリソグラフィ及びドライエッチングにより層間絶縁膜92をパターニングすることにより、第1〜第3のn型不純物拡散領域88a〜88cに到達する深さのコンタクトホール92aをそれぞれ形成する。
【0177】
その後に、層間絶縁膜92の上面とコンタクトホール92a内面に、グルー膜としてチタン膜と窒化チタン膜をスパッタリング法により順に形成する。さらに、六フッ化タングステンを用いるCVD法によってタングステン膜を窒化チタン膜上に成長してコンタクトホール92a内を完全に埋め込む。
【0178】
続いて、タングステン膜、窒化チタン膜及びチタン膜をCMP法により研磨して層間絶縁膜92の上面から除去する。コンタクトホール92a内に残されたタングステン膜、窒化チタン膜及びチタン膜は導電性プラグ94として使用される。
【0179】
次いで、図10(c)に示すように、層間絶縁層92の上にアルミニウム合金膜を含む積層金属膜を形成し、フォトリソグラフィ及びドライエッチングにより積層金属膜をパターニングすることにより1層目の配線層96を得る。
【0180】
特に図示しないが、その後に、配線層96に接続される所要の積層数の多層配線層が形成された後に、個々の半導体チップ(半導体装置)が得られるようにシリコンウエハ80がダイシングされる。
【0181】
このような半導体装置の製造方法では、上記のようにシリコンウエハ80に対して様々な処理が行われる。その処理に使用される半導体製造装置としては、例えば、CVD装置、イオン注入装置、熱処理装置、露光装置、ドライエッチング装置、スパッタ装置、洗浄装置、及び電気的試験装置等がある。
【0182】
これらの半導体製造装置において、第1〜第4実施形態で説明した方法を用いて装置パラメータの実値を監視するようにすれば、各工程において異常を早期に発見することができる。その結果、半導体装置の歩留まりと信頼性が向上すると共に、たとえ異常が発生したとしてもそれをすぐさま発見できるので被害を最小限に抑えることができる。
【0183】
更に、保険の意味で必要以上に生産をする必要もないので、半導体装置の量産効率が高められると共に、納期にも余裕を出すことができる。
【0184】
以上説明した各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0185】
(付記1) 装置パラメータに従って半導体ウエハに処理を行う処理手段と、
前記装置パラメータの実値の第1の代表値と、該第1の代表値とは異なる時点で取得した前記装置パラメータの実値の第2の代表値との差に基づいて、前記半導体ウエハに処理を行ったときの前記装置パラメータの実値に異常があったかどうかを判断する判断手段と、
を有することを特徴とする半導体装置製造装置。
【0186】
(付記2) 前記第1の代表値は、ロット内における前記実値の最大値であり、
前記第2の代表値は、前記ロットと同一のロット内における前記実値の最小値であることを特徴とする付記1に記載の半導体製造装置。
【0187】
(付記3) 前記第1の代表値は、ロット内における前記実値の平均値、最大値、及び最小値のいずれかであり、
前記第2の代表値は、前記ロットとは異なるロットにおける前記実値の平均値、最大値、及び最小値のいずれかであることを特徴とする付記1に記載の半導体製造装置。
【0188】
(付記4) 前記第1の代表値は、ロット内における特定の一枚の前記ウエハにおける前記装置パラメータの実値であり、
前記第2の代表値は、前記ロットと同一のロット内において、前記特定のウエハとは別の半導体ウエハにおける前記装置パラメータの実値であることを特徴とする付記1に記載の半導体製造装置。
【0189】
(付記5) 前記第1の代表値と前記第2の代表値は、それぞれ1枚の前記半導体ウエハを処理中の異なる時点で取得した前記装置パラメータの実値であることを特徴とする付記1に記載の半導体製造装置。
【0190】
(付記6) 前記処理手段は、1枚の前記半導体ウエハに対する前記処理を複数ステップに分けて行い、
前記第1の代表値は、前記複数ステップのうちの一つのステップにおおける前記装置パラメータの実値の平均値、最大値、及び最小値のいずれかであり、
前記第2の代表値は、前記複数ステップのうちの他のステップにおける前記装置パラメータの実値の平均値、最大値、及び最小値のいずれかであることを特徴とする付記5に記載の半導体製造装置。
【0191】
(付記7) 前記判断手段は、前記差が閾値を超えたときに異常があったと判断し、そうでないときには異常がなかったと判断することを特徴とする付記1〜6のいずれかに記載の半導体製造装置。
【0192】
(付記8) 前記装置パラメータは、処理時間、圧力、基板温度、ガス流量、高周波電源のパワー、及び装置部品の駆動量のいずれかであることを特徴とする付記1〜7のいずれかに記載の半導体製造装置。
【0193】
(付記9) 装置パラメータに従って半導体ウエハに処理を行うステップと、
前記装置パラメータの実値の第1の代表値と、該第1の代表値とは異なる時点で取得した前記装置パラメータの実値の第2の代表値との差に基づいて、前記半導体ウエハに処理を行ったときの前記装置パラメータの実値に異常があったかどうかを判断するステップと、
を有することを特徴とする半導体製造装置の制御方法。
【0194】
(付記10) 前記異常があったかどうかを判断するステップは、前記差が閾値を超えたときに異常があったと判断し、そうでないときには異常がなかったと判断して行われることを特徴とする付記9に記載の半導体製造装置の制御方法。
【0195】
(付記11) 装置パラメータに従って半導体ウエハに処理を行う工程と、
前記装置パラメータの実値の第1の代表値と、該第1の代表値とは異なる時点で取得した前記装置パラメータの実値の第2の代表値との差に基づいて、前記半導体ウエハに処理を行ったときの前記装置パラメータの実値に異常があったかどうかを判断する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】図1(a)は、各ロットにおける平均のエッチング時間を調査して得られたグラフであり、図1(b)は、図1(a)と同一のロットについて、エッチング時間のレンジを調査して得られたグラフである。
【図2】図2(a)は、各ロットにおける開度の平均のステップ数を調査して得られたグラフであり、図2(b)は、図2(a)と同じロットについて、ステップ数のレンジを調査して得られたグラフである。
【図3】図3(a)は、各ロットにおけるRF整合器の平均のステップ数を調査して得られたグラフであり、図3(b)は、図3(a)と同じロットについて、ステップ数のレンジを調査して得られたグラフである。
【図4】図4は、第1実施形態に係る半導体製造装置の構成図である。
【図5】図5は、第1実施形態に係る半導体製造装置の制御方法について示すフローチャートである。
【図6】図6は、第2実施形態に係る半導体製造装置の制御方法について示すフローチャートである。
【図7】図7は、第3実施形態に係る半導体製造装置の制御方法について示すフローチャートである。
【図8】図8は、第4実施形態に係る半導体装置の制御方法について説明するための模式図である。
【図9】図9は、第4実施形態に係る半導体製造装置の制御方法について示すフローチャートである。
【図10】図10(a)〜(c)は第5実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図である。
【符号の説明】
【0197】
1…半導体製造装置、5…シリコンウエハ、10…チャンバ、12…圧力計、14…ガス導入管、16…排気管、20…下部電極、22…静電チャック、30…高周波電源、32…RF整合器、40…上部電極、50…終点検出器、60…コントロールバルブ、65…主制御部、66…判断部、67…ログ、68…記憶部、70…制御系、80…シリコンウエハ、82…素子分離絶縁膜、84…ゲート絶縁膜、86a、86b…ゲート電極、88a〜88c…n型不純物拡散領域、90…サイドウォールスペーサ、92…層間絶縁膜、92a…コンタクトホール、94…導電性プラグ、96…配線層、T1、T2…MOSトランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置パラメータに従って半導体ウエハに処理を行う処理手段と、
前記装置パラメータの実値の第1の代表値と、該第1の代表値とは異なる時点で取得した前記装置パラメータの実値の第2の代表値との差に基づいて、前記半導体ウエハに処理を行ったときの前記装置パラメータの実値に異常があったかどうかを判断する判断手段と、
を有することを特徴とする半導体装置製造装置。
【請求項2】
前記第1の代表値は、ロット内における前記実値の最大値であり、
前記第2の代表値は、前記ロットと同一のロット内における前記実値の最小値であることを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項3】
前記第1の代表値は、ロット内における前記実値の平均値、最大値、及び最小値のいずれかであり、
前記第2の代表値は、前記ロットとは異なるロットにおける前記実値の平均値、最大値、及び最小値のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項4】
前記第1の代表値は、ロット内における特定の一枚の前記ウエハにおける前記装置パラメータの実値であり、
前記第2の代表値は、前記ロットと同一のロット内において、前記特定のウエハとは別の半導体ウエハにおける前記装置パラメータの実値であることを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項5】
前記第1の代表値と前記第2の代表値は、それぞれ1枚の前記半導体ウエハを処理中の異なる時点で取得した前記装置パラメータの実値であることを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項6】
装置パラメータに従って半導体ウエハに処理を行うステップと、
前記装置パラメータの実値の第1の代表値と、該第1の代表値とは異なる時点で取得した前記装置パラメータの実値の第2の代表値との差に基づいて、前記半導体ウエハに処理を行ったときの前記装置パラメータの実値に異常があったかどうかを判断するステップと、
を有することを特徴とする半導体製造装置の制御方法。
【請求項7】
装置パラメータに従って半導体ウエハに処理を行う工程と、
前記装置パラメータの実値の第1の代表値と、該第1の代表値とは異なる時点で取得した前記装置パラメータの実値の第2の代表値との差に基づいて、前記半導体ウエハに処理を行ったときの前記装置パラメータの実値に異常があったかどうかを判断する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−56304(P2010−56304A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219854(P2008−219854)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】