説明

基板処理方法および基板処理装置

【課題】薬液の使用量を抑えつつ基板表面を良好に処理することができる基板処理方法および基板処理装置を提供する。
【解決手段】初期薬液処理では、基板表面Wfにシリコン酸化膜が形成されており、基板表面Wfは親水面となっている。そこで、初期薬液処理(時刻0から時間T1が経過するまでの間)においてはフッ酸溶液の流量を510(mL/min)に抑えてフッ酸の使用量を抑制している。一方、初期薬液処理により基板Wのシリコン層の少なくとも一部が露出してくるタイミングでフッ酸溶液の流量を1530(mL/min)に増大させて連続薬液処理中を実行しているため、基板表面Wfの一部にシリコン層が露出して疎水面が形成されたとしてもフッ酸溶液が基板表面Wf全体をカバレッジしてシリコン酸化膜のエッチング除去を継続させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板の表面に薬液を供給して基板に対して薬液処理を施す基板処理方法および基板処理装置に関するものである。なお、処理対象となる基板には、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(電界放出ディスプレイ:Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの電子部品の製造工程では、基板の表面に成膜やエッチングなどの処理を繰り返し施して微細パターンを形成していく工程が含まれる。ここで、微細加工を良好に行うためには基板表面を清浄な状態に保つ必要がある。そこで、必要に応じて薬液を用いた基板の洗浄処理が行われる。例えば特許文献1に記載の基板処理技術では、半導体ウエハなどの基板をスピンチャック上にほぼ水平に保持した後に、このスピンチャックを回転させるとともに、スピンチャックに保持された基板の表面に希フッ酸溶液などの薬液を供給して基板表面の異物を除去する。すなわち、基板がシリコンウエハの場合、表面の酸化シリコン膜は親水面であるので、薬液は遠心力により基板の半径方向外側に広がり、基板表面の全面に連続した液膜が形成され、これによって基板表面の最上層となっている酸化シリコン膜がエッチング除去される(薬液処理)。この後、薬液の供給を停止し、基板表面に純水やDIW(脱イオン水:deionized water)などのリンス液を供給することで、基板表面の薬液が洗い流される(リンス工程)。
【0003】
また、特許文献2には、基板に対してエッチング処理を施すエッチング方法が記載されている。このエッチング方法では、半導体ウエハなどの基板を回転系の上端に水平に載せて高速回転させるとともに、その回転する基板の表面にエッチング液(薬液)を一滴ずつ滴下してエッチングした後、基板表面にリンス液を噴射してエッチング液を洗い流している。
【0004】
さらに、特許文献3には、撥水性物質上に親水性膜が被着された基板にエッチング水溶液などの薬液をスプレーしながら基板を回転させることによって基板から親水性膜を除去するウエットエッチング方法が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−319990号公報(図4、図13)
【特許文献2】特開平8−279484号公報(段落0020、0021)
【特許文献3】特開2002−151462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記したように薬液を基板表面に供給して薬液処理を行う場合、均一な処理を行うためには、基板表面全体に薬液の液膜を形成することが重要である。したがって、基板表面が疎水性となっている場合には、親水性となっている場合よりも基板表面に供給する薬液の流量を大きくする必要がある。また、薬液処理中に基板表面が親水性から疎水性に変化する場合にも、薬液処理の開始時点より薬液流量を疎水性表面に適した流量、つまり比較的大きな流量に設定していた。例えば特許文献1に記載されているように、シリコン基板に対して薬液処理を施す場合、薬液処理の初期段階では基板表面には酸化シリコン膜が形成されているため、基板表面は親水面であるが、薬液処理によって酸化シリコン膜がエッチング除去されてシリコン基板表面が露出すると疎水面となる。また、特許文献3に記載されているように、撥水性物質上に形成された親水性膜をエッチング除去することで撥水性物質が露出することとなり、基板表面が疎水面となる。このように薬液処理中に基板表面の疎水状況が変化する場合には、基板表面が疎水面となったとしても基板表面全体を薬液でカバレッジすることが可能となる程度まで基板表面に供給する薬液の流量を高めていた。
【0007】
このように薬液処理に用いられた薬液については、使い捨てされることが多く、薬液の消費量を抑制することが重要な技術課題のひとつとなっている。しかしながら、従来では、上記したように薬液処理中に疎水状況が変化する場合であっても、薬液処理の開始時点より薬液流量を比較的高い流量に固定化しており、このことが基板処理のランニングコストを増大させる主要因のひとつとなっていた。
【0008】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、薬液の使用量を抑えつつ基板表面を良好に処理することができる基板処理方法および基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、基板の表面に薬液を供給して基板に対して薬液処理を施す基板処理方法および基板処理装置であって、上記目的を達成するため、次のように構成されている。すなわち、この発明にかかる基板処理方法は、薬液処理中の基板表面の疎水状況に応じて基板表面に供給する薬液の流量を制御することを特徴としている。また、この発明にかかる基板処理装置は、基板表面に向けて薬液を吐出するノズルと、薬液の流量を調整しながらノズルに薬液を供給する液供給ユニットと、薬液処理中の基板表面の疎水状況に応じて液供給ユニットを制御して基板表面に供給される薬液の流量を制御する制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明(基板処理方法および基板処理装置)では、基板の表面に薬液が供給されて基板に対して薬液処理が実行されるため、薬液処理の進行に伴って基板表面の疎水状況が変化することがある。そこで、本発明では、疎水状況に応じて基板表面に供給する薬液の流量が制御される。したがって、薬液処理中において疎水状況が変化したとしても、疎水状況に応じた薬液流量で薬液処理が実行される。
【0011】
ここで、基板表面の疎水状況を以下のように判断してもよく、これらの判断手法を用いることで基板表面の疎水状況を正確に求めることができる。すなわち、薬液処理は基板表面への薬液の供給により開始され、時間経過とともに薬液処理が進行していき、基板表面の疎水状況も変化する。そこで、薬液の供給開始からの経過時間に基づき基板表面の疎水状況を判断することができる。また、別の判断手法として、基板表面を撮像して得られる画像に基づき基板表面の疎水状況を判断する手法を用いてもよく、基板表面の疎水状況を直接かつリアルタイムで判断することができる。特に、薬液処理中に基板表面を連続的あるいは断続的に撮像して画像を得るとともに、各画像に対して画像処理を加えて得られる基板表面を示す画像情報に基づき疎水状況を判断してもよく、この場合には時々刻々と変化していく基板表面の疎水状況をリアルタイムで判断することができる。
【0012】
なお、この発明では、薬液処理中において薬液流量を制御しているが、薬液処理中での薬液濃度が一定となるように濃度制御してもよく、これによって薬液処理中に薬液の濃度むらが発生するのを防止することができ、その結果、基板表面内での薬液処理の均一性を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、薬液処理中の基板表面の疎水状況に応じて液供給ユニットを制御して基板表面に供給される薬液の流量を制御しているので、薬液の使用量を抑えつつ基板表面を良好に処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<第1実施形態>
図1は本発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。また、図2は図1に示す装置の電気的構成を示すブロック図である。この基板処理装置はシリコンウエハ等の基板Wの表面Wfに付着している酸化膜などの不要物を除去するための洗浄処理に用いられる枚葉式の基板処理装置である。より具体的には、基板表面Wfに対してフッ酸溶液などの薬液による薬液処理、純水やDIWなどのリンス液によるリンス処理を施した後、基板表面Wfをスピン乾燥させる装置である。
【0015】
この基板処理装置は、基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持して回転させるスピンチャック2と、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて薬液やリンス液を吐出するノズル4とを備えている。
【0016】
スピンチャック2は、回転支軸6がモータを含むチャック回転機構8の回転軸に連結されており、チャック回転機構8の駆動により回転軸J(鉛直軸)回りに回転可能となっている。これら回転支軸6、チャック回転機構8は、円筒状のケーシング10内に収容されている。また、回転支軸6の上端部には、円盤状のスピンベース12が一体的にネジなどの締結部品によって連結されている。したがって、装置全体を制御する制御ユニット14からの動作指令に応じてチャック回転機構8を駆動させることによりスピンベース12が回転軸J回りに回転する。また、制御ユニット14はチャック回転機構8を制御してスピンベース12の回転速度を調整する。
【0017】
スピンベース12の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持するための複数個のチャックピン16が立設されている。チャックピン16は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース12の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。チャックピン16のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部とを備えている。各チャックピン16は、基板保持部が基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板保持部が基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
【0018】
スピンベース12に対して基板Wが受渡しされる際には、複数個のチャックピン16を解放状態とし、後述する基板処理を基板Wに対して行う際には、複数個のチャックピン16を押圧状態とする。このように押圧状態とすることによって、複数個のチャックピン16は基板Wの周縁部を把持してその基板Wをスピンベース12から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持することができる。これにより、基板Wはその表面Wfを上方に向け、裏面Wbを下方に向けた状態で支持される。なお、基板保持手段としてはチャックピン16に限らず、基板裏面Wbを吸引して基板Wを支持する真空チャックを用いてもよい。
【0019】
ノズル4は、バルブ18を介して液供給ユニット20と接続されている。この液供給ユニット20は薬液とリンス液を選択的にノズル4に供給するとともに、各液体の流量および濃度を調整可能となっている。すなわち、液供給ユニット20はミキシングバルブ22を有しており、このミキシングバルブ22に対してフッ酸供給系とDIW供給系とが接続されている。
【0020】
これらの供給系のうちフッ酸供給系は、フッ酸供給源24と、フッ酸供給源24とミキシングバルブ22を接続する配管26と、その配管26に介挿されてミキシングバルブ22に供給するフッ酸の流量を制御する流量コントローラ28とを備えている。この流量コントローラ28は、流量調整弁(電動弁)30、流量計32および流量制御部(図示省略)により構成されており、流量制御部が流量計32により測定された流量信号を検出および演算し、ミキシングバルブ22に送り込むフッ酸流量が制御ユニット14から与えられた設定流量になるように流量調整弁30を制御する。
【0021】
また、DIW供給系もフッ酸供給系と同様に構成されている。つまり、DIW供給系はDIW供給源34とミキシングバルブ22を接続する配管36と、その配管36に介挿されてミキシングバルブ22に供給するDIWの流量を制御する流量コントローラ38とを備えている。この流量コントローラ38は、流量調整弁(電動弁)40、流量計42および流量制御部(図示省略)により構成されており、流量制御部が流量計42により測定された流量信号を検出および演算し、ミキシングバルブ22に送り込むDIW流量が制御ユニット14から与えられた設定流量になるように流量調整弁40を制御する。なお、DIW供給源34については上記装置に必須の構成要件ではなく、上記装置を設置する工場の用力のひとつであるDIW供給装置から供給されるDIWを用いてもよい。
【0022】
このように、本実施形態では上記のように構成された液供給ユニット20はミキシングバルブ22に送り込むフッ酸流量とDIW流量を制御することでミキシングバルブ22により調製されるフッ酸溶液中のフッ酸濃度およびフッ酸溶液の流量を直接的かつ動的に調整しながら当該フッ酸溶液をノズル4に供給することが可能となっている。また、液供給ユニット20はミキシングバルブ22へのフッ酸供給を停止した状態で流量コントローラ38によりDIW流量を制御することでDIW流量を直接的かつ動的に調整しながらDIWをリンス液としてノズル4に供給することが可能となっている。
【0023】
ケーシング10の周囲には、受け部材44が固定的に取り付けられている。この受け部材44には、円筒状の仕切り部材が3個立設されている。そして、これらの仕切り部材とケーシング10の組み合わせにより3つの空間が排液槽として形成されている。また、これらの排液槽の上方にはスプラッシュガード46がスピンチャック2に水平姿勢で保持されている基板Wの周囲を包囲するようにスピンチャック2の回転軸Jに対して昇降自在に設けられている。このスプラッシュガード46は回転軸Jに対して略回転対称な形状を有しており、スピンチャック2と同心円状に径方向内側から外側に向かって配置された3つのガードを備えている。そして、ガード昇降機構(図示省略)の駆動によりスプラッシュガード46を段階的に昇降させることで、回転する基板Wから飛散するフッ酸溶液やリンス液などを分別して排液させることが可能となっている。
【0024】
上記のように構成された基板処理装置では、制御ユニット14がメモリ(図示省略)に記憶されているプログラムにしたがって装置各部を制御して基板Wに対して薬液処理、リンス処理および乾燥処理を施す。これらのうち薬液処理で用いられるフッ酸溶液が本発明の「薬液」に相当しており、この実施形態では図3に示すようにDIWとフッ酸の濃度が(50:1)となるように濃度調整されたフッ酸溶液が薬液として使用される。このフッ酸溶液を用いた初期薬液処理と連続薬液処理を実行することによってシリコン酸化膜などの親水性膜をシリコン基板表面Wfからエッチング除去している。以下、図3を参照しつつ上記基板処理装置による基板処理について説明する。
【0025】
制御ユニット14はスプラッシュガード46を降下させてスピンチャック2をスプラッシュガード46の上端部から突出させる。そして、この状態で基板搬送手段(図示せず)により未処理の基板Wが装置内に搬入される。より具体的には、基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wが装置内に搬入され、スピンチャック2に保持される。これに続いて、スプラッシュガード46が上昇されるとともに基板Wに対して薬液処理が開始される。
【0026】
薬液処理を実行する工程(薬液工程)では、ノズル4を基板表面Wfの中央部上方に移動させるとともに、チャック回転機構8の駆動によりスピンチャック2に保持された基板Wを200〜1200rpmの範囲内で定められる回転速度(例えば800rpm)で回転させる。一方、液供給ユニット20ではフッ酸溶液が薬液として準備される。つまり、制御ユニット14からフッ酸に対する初期フッ酸流量値がフッ酸用流量コントローラ28に与えられて初期フッ酸流量値(この実施形態では10(mL/min))でフッ酸がミキシングバルブ22に送り込まれる。また、制御ユニット14からDIWに対する初期DIW流量値がDIW用流量コントローラ38に与えられて初期DIW流量値(この実施形態では500(mL/min))でDIWがミキシングバルブ22に送り込まれる。これによって、DIWとフッ酸がミキシングバルブ22内で混合されて所望濃度(50:1)のフッ酸溶液が薬液として調製される。そして、バルブ18を開くことでノズル4から基板表面Wfに所望濃度のフッ酸溶液が510(mL/min)で基板表面Wfに供給される。この初期薬液処理では、上記したように基板表面Wfにはシリコン酸化膜などの親水性膜が形成されているため、基板表面Wfに供給されるフッ酸溶液は比較的低流量であるにもかかわらず、基板表面Wfをカバレッジしながら基板表面Wf全体に広げられ、フッ酸による基板表面Wfのエッチング処理(薬液処理)が全体的に、しかもほぼ同時に実行されて均一なエッチング処理が開始される。
【0027】
この初期薬液処理が実行されることでシリコン酸化膜のエッチング除去が進行し、薬液処理開始から所定時間T1を過ぎると、シリコン酸化膜の大部分がエッチング除去されて基板Wのシリコン層の少なくとも一部が露出してくる。この露出部分は疎水面となるため、フッ酸溶液の流量が低い状態では薬液によるカバレッジが難しくなる。そこで、本実施形態では、上記初期薬液処理により基板Wのシリコン層の少なくとも一部が露出してくる時間(低流量時間)T1を予めメモリ(図示省略)に記憶しておき、初期薬液処理の開始からの経過時間に基づき基板表面Wfの疎水状況を判断している。すなわち、初期薬液処理の開始から時間T1が経過した時点で基板表面Wfが疎水面となったと判断し、図3に示すようにフッ酸溶液の流量を増大させている。すなわち、制御ユニット14はフッ酸用流量コントローラ28に与えるフッ酸流量値を30(mL/min))に増大させてフッ酸を30(mL/min))でミキシングバルブ22に送り込むとともに、制御ユニット14はDIW用流量コントローラ38に与えるDIW流量値を1500(mL/min))に増大させてDIWを1500(mL/min))でミキシングバルブ22に送り込む。これによって、薬液濃度を変化させることなく、流量のみを初期薬液処理に比べて3倍に増大させた状態でフッ酸溶液が基板表面Wfに供給される。このため、基板表面Wfの一部にシリコン層が露出して疎水面が形成されたとしても比較的大流量のフッ酸溶液が基板表面Wfに供給されるため、基板表面Wf全体を薬液でカバレッジしながらシリコン酸化膜のエッチング除去を継続させることができる。このように大流量のフッ酸溶液を用いた薬液処理(連続薬液処理)は初期薬液処理に続いて所定時間だけ実行されて基板表面Wfに残留しているシリコン酸化膜が全てエッチング除去される。
【0028】
上記した薬液工程(初期薬液処理+連続薬液処理)を実行して所望のエッチング処理が完了すると、フッ酸に対する設定流量がゼロに設定されてミキシングバルブ22へのフッ酸供給が停止される。そして、スプラッシュガード46がリンス処理用の高さ位置に配置された状態で制御ユニット14からの指令に応じて流量コントローラ38はDIW流量を例えば2000(mL/min)に調整しながらミキシングバルブ22にDIWを供給する。これにより液供給ユニット20からはDIWがリンス液としてノズル4に向けて圧送される。こうして基板表面Wfの中央部に供給されたリンス液は遠心力を受けて基板表面Wf上のフッ酸溶液を基板表面Wfから押し出していく(リンス処理)。
【0029】
このリンス処理が完了すると、制御ユニット14はバルブ18を閉じてノズル4からのリンス液の吐出を停止させると同時、あるいはそれに続いてノズル4を基板Wの上方空間から離れた退避位置(図示省略)に移動させる。また、制御ユニット14はチャック回転機構8を制御して基板Wの回転速度を高め、スピン乾燥を行う。
【0030】
最後に基板Wの乾燥処理が終了すると、制御ユニット14はチャック回転機構8を制御して基板Wの回転を停止させる。そして、スプラッシュガード46を降下させて、スピンチャック2をスプラッシュガード46の上方から突出させる。その後、基板搬送手段が処理済の基板Wを装置から搬出して、1枚の基板Wに対する一連の基板処理が終了する。そして、次の基板Wについても、上記と同様の処理が実行される。
【0031】
以上のように、本実施形態によれば、基板表面Wfにフッ酸溶液(薬液)を供給してシリコン基板Wの表面に付着するシリコン酸化膜をエッチング除去している(薬液工程)が、この薬液工程では初期薬液処理が実行された後、それに続いて連続薬液処理が実行される。この初期薬液処理では、基板表面Wfにシリコン酸化膜が形成されており、基板表面Wfは親水面となっている。そこで、本実施形態では、初期薬液処理(時刻0から時間T1が経過するまでの間)においてはフッ酸溶液の流量を510(mL/min)に抑えてフッ酸の使用量を抑制している。一方、初期薬液処理により基板Wのシリコン層の少なくとも一部が露出してくるタイミング、つまり薬液処理の開始から時間T1が経過したタイミングでフッ酸溶液の流量を1530(mL/min)に増大させて連続薬液処理を実行しているため、基板表面Wfの一部にシリコン層が露出して疎水面が形成されたとしてもフッ酸溶液が基板表面Wf全体をカバレッジしてシリコン酸化膜のエッチング除去を継続させることができる。このように基板表面Wfが親水性を有している間基板表面Wfに供給するフッ酸溶液(薬液)の流量を低流量化する一方、薬液処理の進行に伴って基板表面Wfが疎水性を有するに至るとフッ酸溶液(薬液)の流量を増大させて基板表面Wf全体をフッ酸溶液でカバレッジしている。このため、フッ酸溶液の使用量を抑えつつ基板表面Wfを良好に処理することができる。
【0032】
また、本実施形態では、薬液処理中において薬液流量を制御しているが、薬液処理中での薬液濃度が常に一定となるように液供給ユニット20がフッ酸溶液の濃度を調整している。このため、基板表面Wfに供給されるフッ酸溶液の流量が薬液処理中に変動するにもかかわらず、薬液処理中におけるフッ酸溶液の濃度は一定に維持されて基板表面Wfでの濃度むらの発生を効果的に防止することができる。なお、このように薬液処理中におけるフッ酸溶液の濃度を一定に維持する点については他の実施形態においても同様である。
【0033】
<第2実施形態>
ところで上記第1実施形態では、フッ酸溶液(薬液)の供給開始からの経過時間に基づき基板表面Wfの疎水状況を判断している。つまり、薬液処理は基板表面Wfへのフッ酸溶液(薬液)の供給により開始され、時間経過とともに薬液処理が進行していき、基板表面Wfの疎水状況も変化することから、薬液処理により基板Wのシリコン層の少なくとも一部が露出してくる時間T1を予めメモリ(図示省略)に記憶し、この時間T1を用いてフッ酸溶液の流量切替タイミングを制御している。この時間T1を高精度に求めるために、例えば図4および図5に示すように基板処理装置に接触角θを測定するための構成を追加し、ダミー基板を用いて図6に示す流量切替タイミングの導出処理を実行してもよい。以下、図4ないし図6を参照しつつ本発明の第2実施形態について説明する。
【0034】
図4は本発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。また、図5は液滴撮像カメラと基板との位置関係を示す模式図である。さらに、図6は第2実施形態での流量切替タイミングの導出処理を示すフローチャートである。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、接触角を測定するためにDIWの液滴を基板表面Wfに吐出する液滴形成用ノズル50と、液滴形成用ノズル50にDIWを供給してノズル50から液滴を滴下する液滴供給ユニット52と、基板表面Wfに形成された液滴を撮像する液滴撮像カメラ54とを備えている点である。すなわち、第2実施形態では、液滴供給ユニット52がDIWをノズル50に向けて送り込むことで液滴形成用ノズル50から約1〜100(μL)の液滴が停止状態の基板表面Wfの周縁部に滴下される。そして、基板表面Wfに形成された液滴56が、図5に示すように、基板Wとほぼ同一高さ位置で水平配置された液滴撮像カメラ54により撮像され、その画像データが制御ユニット14に設けられた画像処理部58に送られる。制御ユニット14では、画像処理部58により所定の画像処理が加えられ、その液滴画像から基板表面Wfに対するDIWの接触角θを求めて基板表面Wfが親水性か疎水性かを判定することが可能となっている。なお、その他の構成は基本的に第1実施形態と同一であるため、ここでは構成説明は省略する。
【0035】
次に、上記のように構成された装置による時間T1の導出について図6を参照しつつ説明する。この第2実施形態では、制御ユニット14はスプラッシュガード46を降下させてスピンチャック2をスプラッシュガード46の上端部から突出させる。そして、この状態で基板搬送手段(図示せず)によりダミー基板Wが装置内に搬入される。この「ダミー基板」とは基板処理対象となる基板Wと同一構成のものであり、基板Wのシリコン層上に形成されるシリコン酸化膜の厚みなども基板処理対象となる基板Wとほぼ同一となっている。そして、基板表面Wfを上方に向けた状態でダミー基板Wが装置内に搬入され、スピンチャック2に保持される。これに続いて、スプラッシュガード46が上昇されるとともに回転する基板Wに対して薬液処理が570秒実行された(ステップS1)後、リンス処理および乾燥処理が実行される(ステップS2)。なお、このように薬液処理、リンス処理および乾燥処理を実行している間、液滴形成用ノズル50は基板Wから離れた位置に待機している。
【0036】
次のステップS3ではカウント値Nがゼロにセットされる。そして、液滴形成用ノズル50を停止状態の基板表面Wfの上方に移動させた後、液滴供給ユニット52から微量のDIWがノズル50に向けて送り込まれて570秒の薬液処理を受けた基板表面Wf上に液滴56を形成する(ステップS4)。こうして液滴形成が完了すると、液滴形成用ノズル50は元の待機位置に移動する一方、液滴撮像カメラ54によって液滴56を撮像する。
【0037】
液滴撮像カメラ54から送られてきた液滴56の画像データは制御ユニット14の画像処理部58により画像処理された後、その液滴画像に基づき制御ユニット14は基板表面Wfに対するDIWの接触角θを測定する(ステップS5)。そして、測定された接触角θが50゜以上であれば基板表面Wfは疎水面となっていると判定する一方、50゜未満であれば基板表面Wfは親水面のままであると判定する(ステップS6)。
【0038】
このステップS6で基板表面Wfは親水面のままであると判定される間、ステップS7〜S9を実行した上でステップS4に戻る。つまり、ステップS7でカウント値Nを1だけインクリメントした後、薬液処理を15秒追加実施し(ステップS8)、その薬液処理が施されたダミー基板に対してリンス処理および乾燥処理を実行する(ステップS9)。これらによって薬液処理がさらに15秒追加されてシリコン酸化膜のエッチング除去がその「15秒」に相当する分だけ進行する。このように、シリコン酸化膜が基板表面全体に残存している間、570秒の薬液処理を受けたダミー基板に対して15秒単位で薬液処理が追加実施される。
【0039】
また、15秒単位の薬液処理が実行される度に、ステップS4に戻って液滴形成が実行され、さらに接触角θの測定(ステップS5)が実行された上で、再び薬液処理が追加実施された基板表面Wfが疎水面となっているか否かを判定する(ステップS6)。
【0040】
このステップS6で接触角θが50゜以上となっており、基板表面Wfは疎水面となっていると判定した際には、次式
時間T1=570+15×N(秒)
に基づき時間T1、つまり薬液処理により基板Wのシリコン層の少なくとも一部が露出してくる時間を求め、メモリに記憶する(ステップS10)。そして、ダミー基板を装置から搬出する。
【0041】
以上のように、本発明の第2実施形態によれば、基板処理対象となる基板Wとほぼ同一のダミー基板を用いて時間T1を実測しているので、時間T1を正確に求めることができ、薬液流量の切り替えを適切に行うことができる。なお、この第2実施形態では、ダミー基板を用いて時間T1を実測しているが、基板処理対象となる複数の基板のうち1枚目の基板Wを用いて時間T1を実測してもよい。ただし、この場合、時間T1を求めた(ステップS10)後に、連続薬液処理、リンス処理および乾燥処理を続けて実行する必要がある。
【0042】
また、上記第2実施形態では、基板処理装置に対して接触角θを測定するための構成を追加しているが、接触角θの測定を別装置で行ってもよい。つまり、570秒の薬液処理を行った後にリンス処理および乾燥処理した基板を基板処理装置から取り出し、例えば協和界面化学株式会社製のウエハ洗浄・処理評価装置「MR700R」などを用いて接触角θを測定し、接触角θが50゜未満となり、基板表面が親水性であると判定されている間、(15秒の薬液処理+リンス処理+乾燥処理)を基板処理装置を用いて行うごとに、上記ウエハ洗浄・処理評価装置で接触角を測定してもよい。
【0043】
<第3実施形態>
また、基板表面Wfの疎水状況を判断する手法としては、フッ酸溶液(薬液)の供給開始からの経過時間に基づくもの以外に、基板表面Wfを撮像して得られる画像に基づき基板表面の疎水状況を判断してもよい。以下、図7ないし10を参照しつつ本発明の第3実施形態について説明する。
【0044】
図7は本発明にかかる基板処理装置の第3実施形態を示す図である。また、図8は基板表面を撮像する表面撮像カメラと基板との位置関係を示す模式図である。また、図9は疎水状況を判断するための参考値を求める参考値取得処理を示すフローチャートである。さらに、図10は第3実施形態の動作を示すフローチャートである。この第3実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、基板表面の画像を撮像するための表面撮像カメラ60が基板Wの上方位置に配置されている点である。そして、表面撮像カメラ60により基板表面が撮像され、その画像データが制御ユニット14に設けられた画像処理部62に送られる。制御ユニット14では、画像処理部62により例えばゾーベルフィルター(Sobel Filter)を用いたフィルタリング処理が画像データに対して施されてエッジ強調される。したがって、薬液処理を行っている最中に基板Wのシリコン層の少なくとも一部が露出して筋状模様が発生すると、エッジ強調された基板表面の画像は筋状模様の分だけ比較的明るくなっている。これに対し、薬液処理が良好に行われている最中では筋状模様の発生は認められず、エッジ強調された基板表面の画像は筋状模様を有する画像に比べて暗くなっている。このように基板表面の画像に適当な画像処理を加えて得られる画像情報に基づき基板表面Wfの疎水状況を判断することが可能となっている。なお、エッジ強調処理は上記フィルタリング処理に限定されるものではなく、従来より周知の画像処理を用いることができる。また、その他の構成は基本的に第1実施形態と同一であるため、ここでは構成説明は省略する。
【0045】
次に、上記のように構成された装置による基板処理について説明する。この第3実施形態では、基板表面の画像に基づき基板表面Wfの疎水状況を判断するため、基板処理に先立って2種類のダミー基板、つまり疎水性基板と親水性基板を用いて上記判断の参考値を導出している。具体的は、シリコン酸化膜が形成されていないシリコン基板を疎水性基板として準備するとともに、シリコン酸化膜が基板表面に形成された基板を親水性基板として準備する。そして、図9に示すように、ステップS21〜S29を実行して上記判断の参考値μ3を導出する。
【0046】
基板表面Wfを上方に向けた状態で疎水性基板Wが装置内に搬入され、スピンチャック2に保持される(ステップS21)と、スプラッシュガード46が上昇されるとともにステップS22〜S24が実行される。つまり、チャック回転機構8の駆動によりスピンチャック2に保持された疎水性基板Wを回転させる。一方、液供給ユニット20ではフッ酸溶液が第1実施形態と同様にして所望濃度(50:1)で、かつ所望流量(この実施形態では510(mL/min))のフッ酸溶液が薬液として調製される。そして、バルブ18を開くことでノズル4から基板表面Wfに所望濃度のフッ酸溶液が510(mL/min)で基板表面Wfに供給される。また、フッ酸溶液(薬液)が基板表面Wf全体に広がった後で表面撮像カメラ60により基板表面Wfの画像を複数枚、例えば5枚撮像する(ステップS22)。こうして得られた各画像データは制御ユニット14の画像処理部62に送られてゾーベルフィルター(Sobel Filter)を用いたフィルタリング処理によりエッジ強調処理が実行される(ステップS23)。エッジ強調処理が施された基板表面Wfの画像の平均明るさμ1を求め、メモリ(図示省略)に一時的に記憶する(ステップS24)。なお、平均明るさμ1の導出が完了すると、フッ酸溶液の供給を停止し、リンス処理および乾燥処理を施した後、当該疎水性ダミー基板を搬出する。
【0047】
また、親水性のダミー基板についても、疎水性ダミー基板と同様の処理(ステップS25〜S28)が実行される。つまり、基板表面Wfを上方に向けた状態で親水性基板Wが装置内に搬入され、スピンチャック2に保持される(ステップS25)と、スプラッシュガード46が上昇されるとともにチャック回転機構8の駆動によりスピンチャック2に保持された親水性基板Wを回転させる。そして、バルブ18を開くことでノズル4から基板表面Wfに所望濃度のフッ酸溶液が510(mL/min)で基板表面Wfに供給される。また、フッ酸溶液(薬液)が基板表面Wf全体に広がった後に表面撮像カメラ60により基板表面Wfの画像を複数枚、例えば5枚撮像する(ステップS26)。こうして得られた各画像データに対してエッジ強調処理が実行される(ステップS27)。さらに、当該エッジ強調処理が施された基板表面Wfの画像の平均明るさμ2を求め、メモリ(図示省略)に一時的に記憶する(ステップS28)。なお、平均明るさμ2の導出が完了すると、フッ酸溶液の供給を停止し、リンス処理および乾燥処理を施した後、当該親水性ダミー基板を搬出する。
【0048】
こうして求められた疎水性基板Wでの平均明るさμ1と、親水性基板Wでの平均明るさμ2とを比較すると、前者が後者よりも高い値を示す。その理由は以下の通りである。親水性基板Wに対してフッ酸溶液を供給した場合には、フッ酸溶液の流量が比較的低流量(この実施形態では510(mL/min))であったとしても、フッ酸溶液は均一に基板表面Wf全体に広がる。これに対し、疎水性基板Wに対してフッ酸溶液を比較的低流量で供給した場合にはフッ酸溶液が均一に基板表面Wf全体に広がらず、筋状模様が発生してエッジ強調された基板表面Wfの画像は筋状模様の分だけ親水性基板Wの画像に比べて明るくなるからである。そこで、本実施形態では、こうして得られた2種類の明るさμ1、μ2の平均値を算出し、これを参考値μ3としてメモリに記憶する(ステップS29)。すなわち、基板表面Wfの画像から求められる明るさμ4が参考値μ3以上である場合には基板表面Wfは疎水面となっているのに対し、明るさμ4が参考値μ3未満である場合には基板表面Wfは親水面となっていると判断することができる。なお、この実施形態では、2種類の明るさμ1、μ2の平均値を参考値μ3としているが、参考値μ3の算出方法はこれに限定されるものではなく、例えば2つの明るさμ1、μ2に対して重み付けをした上で参考値μ3を設定してもよい。
【0049】
上記のようにして参考値μ3が求まると、図10に示すようにして基板処理が実行される。すなわち、第3実施形態にかかる基板処理装置では、制御ユニット14がメモリ(図示省略)に記憶されているプログラムにしたがって装置各部を制御して基板Wに対して基板表面Wfの疎水状況を観察しながら薬液処理を行った後、リンス処理および乾燥処理を施す。
【0050】
制御ユニット14はスプラッシュガード46を降下させてスピンチャック2をスプラッシュガード46の上端部から突出させる。そして、この状態で基板搬送手段(図示せず)により未処理の基板Wが装置内に搬入される(ステップS31)。そして、ノズル4を基板表面Wfの中央部上方に移動させるとともに、チャック回転機構8の駆動によりスピンチャック2に保持された基板Wを200〜1200rpmの範囲内で定められる回転速度(例えば800rpm)で回転させる。一方、液供給ユニット20では第1実施形態と同様にして所望濃度(50:1)で、かつ所望流量(この実施形態では510(mL/min))のフッ酸溶液が薬液として調製される。そして、バルブ18を開くことでノズル4から基板表面Wfに所望濃度のフッ酸溶液が510(mL/min)で基板表面Wfに供給され(ステップS32)、薬液処理が開始される。この薬液処理はステップS33で「YES」と判定されるまで実行され、薬液処理中に参考値取得処理と同様にして基板表面の画像を複数枚撮像し(ステップS34)、各画像データに対してエッジ強調処理を施した(ステップS35)後、画像平均明るさμ4を求める(ステップS36)。
【0051】
また、こうして求まった画像平均明るさμ4を参考値μ3と比較し、薬液処理中の現時点での基板表面Wfが親水面か疎水面であるかを判断する(ステップS37)。より具体的には、画像平均明るさμ4が参考値μ3未満である場合には基板表面Wfは親水面となっていると判断し、ステップS33に戻って低流量のままで薬液処理を続ける。一方、画像平均明るさμ4が参考値μ3以上である場合には基板表面Wfは現在の薬液流量ではフッ酸溶液が基板表面Wf全体に広がらず薬液処理を良好に行うことが困難であると判断する。そこで、薬液流量を増加させた(ステップS38)上でステップS33に戻り薬液処理を続ける。ここで、ステップS38での薬液流量の増加については、第1および第2実施形態のように510(mL/min)から1530(mL/min)に一気に増加させてもよいが、本実施形態では基板表面Wfの疎水状況をリアルタイムで検出することができるため、薬液流量の増加量を数十あるいは数百(mL/min)程度に設定し、薬液処理の進行に伴って薬液流量を徐々に増加させてもよい。
【0052】
こうして510(mL/min)の流量で実施した初期薬液処理および薬液流量を増加させて実施した連続薬液処理を実行して薬液処理が完了する、つまりステップS33で「YES」と判定すると、第1実施形態と同様にしてリンス処理および乾燥処理が実行される(ステップS39)。そして最後に、制御ユニット14はチャック回転機構8を制御して基板Wの回転を停止させた後、基板搬送手段が処理済の基板Wを装置から搬出する(ステップS40)。
【0053】
以上のように、第3実施形態によれば、基板表面Wfを撮像して得られる画像に基づき基板表面Wfの疎水状況を判断しているため、薬液流量の切り替えをより正確なタイミングで行うことができ、薬液の使用量をより効果的に抑制することができ、しかも基板表面をより良好に処理することができる。また、本実施形態では、薬液処理中に基板表面Wfを連続的あるいは断続的に撮像して画像を得るとともに、各画像に対して画像処理を加えて得られる基板表面Wfを示す画像情報に基づき疎水状況を判断してもいるため、時々刻々と変化する基板表面Wfの疎水状況を直接かつリアルタイムで判断することができる。
【0054】
<その他>
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、フッ酸溶液を本発明の「薬液」として用いて基板表面Wfをエッチング処理するものであるが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、薬液を基板Wに供給して基板Wに対して薬液処理を施す基板処理方法および装置全般に本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などを含む基板全般について、基板の表面に薬液を供給して基板に対して薬液処理を施す基板処理方法および基板処理装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】図1に示す装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す装置における薬液処理を示す図である。
【図4】本発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。
【図5】液滴撮像カメラと基板との位置関係を示す模式図である。
【図6】第2実施形態での流量切替タイミングの導出処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明にかかる基板処理装置の第3実施形態を示す図である。
【図8】基板表面を撮像する表面撮像カメラと基板との位置関係を示す模式図である。
【図9】疎水状況を判断するための参考値を求める参考値取得処理を示すフローチャートである。
【図10】第3実施形態の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
14…制御ユニット(制御手段)
20…液供給ユニット
24…フッ酸供給源
34…DIW供給源
38…DIW用流量コントローラ
40…流量調整弁
42…流量計
48…DIW供給ユニット
50…液滴形成用ノズル
52…液滴供給ユニット
54…液滴撮像カメラ
56…液滴
58、62…画像処理部
60…表面撮像カメラ(撮像手段)
T1…(低流量)時間
Wf…基板表面
W…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に薬液を供給して前記基板に対して薬液処理を施す基板処理方法において、
前記薬液処理中の前記基板表面の疎水状況に応じて前記基板表面に供給する前記薬液の流量を制御することを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記薬液の供給開始からの経過時間に基づき前記基板表面の疎水状況を判断して前記薬液の流量を制御する請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記基板表面を撮像して得られる画像に基づき前記基板表面の疎水状況を判断して前記薬液の流量を制御する請求項1記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記薬液処理中に前記基板表面を連続的あるいは断続的に撮像して画像を得るとともに、各画像に対して画像処理を加えて得られる前記基板表面を示す画像情報に基づき疎水状況を判断する請求項3記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記薬液処理中での薬液濃度は一定である請求項1ないし4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
基板の表面に薬液を供給して前記基板に対して薬液処理を施す基板処理装置において、
前記基板表面に向けて薬液を吐出するノズルと、
薬液の流量を調整しながら前記ノズルに薬液を供給する液供給ユニットと、
前記薬液処理中の前記基板表面の疎水状況に応じて前記液供給ユニットを制御して前記基板表面に供給される前記薬液の流量を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記薬液の供給開始からの経過時間を計測し、当該経過時間に基づき前記基板表面の疎水状況を判断して前記薬液の流量を制御する請求項6記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記基板表面を撮像する撮像手段をさらに備え、
前記制御手段は前記撮像手段により撮像された前記基板表面の画像に基づき前記基板表面の疎水状況を判断して前記薬液の流量を制御する請求項6記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記液供給ユニットは薬液処理中での薬液濃度を一定に維持する請求項6ないし8のいずれか一項に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−10242(P2010−10242A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165358(P2008−165358)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】