説明

基板処理方法および基板処理装置

【課題】基板表面に形成されたパターンへのダメージを抑制しながら基板表面を良好に洗浄処理することができる基板処理方法および基板処理装置を提供する。
【解決手段】 基板保持手段11に保持され、洗浄液としてのDIWの液膜が形成された基板Wの表面Wfに対し、媒介液供給機構55から媒介液としてのトルエンを供給し、DIWの液膜の上にトルエンの液膜を更に形成する。その後、超音波付与機構51によりトルエンを介してDIWに超音波を付与しながら、凝固手段31から基板表面Wfに凍結用の窒素ガスを吐出し、DIWを凝固させる。これにより、結晶サイズの小さいDIWの凝固体を形成し、その後のリンス工程で短時間に解凍することを可能とし、リンス液中に遊離するDIWの結晶を減少し、パターンへのダメージを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体基板、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板(以下、単に「基板」と記載する)に対して洗浄処理を施す基板処理方法および基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの電子部品等の製造工程では、基板の表面に成膜やエッチングなどの処理を繰り返し施して微細パターンを形成していく工程が含まれる。ここで、微細加工を良好に行うためには基板表面を清浄な状態に保つ必要があり、必要に応じて基板表面に対して洗浄処理が行われる。例えば特許文献1に記載された装置においては、基板表面に脱イオン水(De Ionized Water:以下「DIW」と記載する)などの液体を供給し、それを凍結させた後、リンス液で解凍除去することで基板表面の洗浄が実行される。
【0003】
すなわち、特許文献1に記載の装置では、以下の工程が実行される。まず、基板の表面にDIWを供給することで基板表面全体にDIWの液膜を形成する。続いて、DIWの供給を停止し、低温の窒素ガスを基板表面に供給してDIWを凍結させる。これにより、パーティクル等の汚染物質と基板表面との間に侵入したDIWが氷となり、膨張することでパーティクル等の汚染物質が微小距離だけ基板から離れる。その結果、基板表面とパーティクル等の汚染物質との間の付着力が低減され、さらにはパーティクル等の汚染物質が基板表面から脱離することとなる。その後、基板表面の氷をリンス液としてのDIWで解凍除去することで、基板表面からパーティクル等の汚染物質を効率良く除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−71875(第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、洗浄後の基板表面上のパターンにダメージが生ずる現象が見られることがあった。図1は上記従来技術により洗浄を行った基板表面Wf上のパターンのダメージを計測した結果の一例を示す図であり、図中、黒点983で示される場所にダメージが生じたことを示している。尚、矩形981はダメージを計測する領域を示す。次に、基板表面にかけられたリンス液の流動や、基板を回転することによる基板表面の液体の移動の影響を排除した例と比較するため、基板表面Wfに氷を形成するまでの手順は上記従来技術と同様とし、その後常温雰囲気中に放置して基板表面Wfの氷を解凍した。この場合におけるパターンのダメージの計測結果を図2に示す。
【0006】
これらを比較すると、基板表面Wf上にリンス液を吐出して解凍することにより、基板表面Wf上のパターンにダメージが生じており、基板表面Wf上でリンス液等を流動させない静止状態で解凍した場合にはパターンにダメージが生じていないことが理解される。
【0007】
次に、基板表面Wfに形成された氷が解凍する過程の一部を図3および図4に示す。図3は基板表面Wf上に氷が形成された状態の倍率50倍の拡大写真であり、基板表面Wf上に氷の結晶(以下「氷晶」と記載する)985が形成されていることがわかる。図4は氷を解凍している途中の状態を示す図3と同じ倍率の拡大写真であり、氷晶985が解凍により縮小し、解凍され液体となったDIWの領域987が氷晶985の周囲に存在していることがわかる。また、DIWの領域987の中にある氷晶985の一部は、例えば気流を当てる、あるいは振動を与える等によりDIWが流動するに伴って移動することが観察された。
【0008】
以上より、基板表面Wf上に形成された氷が解凍する場合、解凍しきれなかった氷晶985がDIWの領域987中に浮遊し、DIWが何らかの外力により流動することによって氷晶985が基板表面Wf上を移動し、基板表面Wf上のパターンに衝突することでダメージが生ずると考えられる。
【0009】
半導体に代表される微細デバイスの洗浄に関しては、基板表面からパーティクル等の汚染物質を効率良く除去できる事はもちろんのこと、洗浄の際に基板表面上のパターンにダメージを与えないことが強く求められている。
【0010】
従って、基板表面の水を凍結して氷を形成し、その後リンス液で解凍除去して基板洗浄を行うプロセスに於いては、解凍中にリンス液の中を浮遊する解凍しきれなかった氷晶がパターンに衝突することを防止する必要がある。
【0011】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板表面に形成されたパターンへのダメージを抑制しながら基板表面を良好に洗浄処理することができる基板処理方法および基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、この発明は、基板上の洗浄液の液膜に対し、超音波を付与する超音波付与工程と、超音波付与工程により超音波が付与されている洗浄液を冷却して洗浄液の凝固体を生成する凝固工程と、凝固工程により生成された凝固体にリンス液を供給して凝固体を解凍除去するリンス工程と、を備えている。
【0013】
また、この発明は、表面に洗浄液の液膜が形成された基板を保持する基板保持手段と、基板保持手段に保持されている基板表面の洗浄液の液膜に超音波を付与する超音波付与手段と、超音波付与手段により超音波が付与されている洗浄液の液膜を冷却して基板表面に洗浄液の凝固体を生成する凝固手段と、凝固手段により生成された凝固体にリンス液を供給して凝固体を解凍除去するリンス液供給手段と、を備えている。
【0014】
このように構成された発明(基板処理方法及び装置)では、基板表面に形成された洗浄液の液膜に対し、超音波を付与しながら冷却することにより洗浄液の液膜を凝固させる。これにより、基板上に形成される洗浄液の凝固体の結晶(氷晶)の大きさを小さくすることができ、洗浄液の凝固体を解凍除去するリンス工程において、氷晶をより早く解凍することが可能となる。また、完全に解凍されずにリンス液の中に浮遊する氷晶のサイズを小さくすることができるため、リンス液とともに基板表面上を氷晶が移動してパターンに衝突しても、パターンを倒壊させる等のダメージを低減することができる。
【0015】
また、洗浄液の凝固点より低い凝固点を有し、洗浄液より比重が小さく、かつ洗浄液と互いに混合し難い媒介液を基板の表面に供給し、洗浄液の液膜の上に媒介液の液膜を形成する媒介液供給工程を更に備え、超音波付与工程は、媒介液の液膜に超音波を付与し、媒介液を介して洗浄液に超音波を付与することも可能である。
【0016】
また、凝固工程では、洗浄液を、洗浄液の凝固点より低く、かつ、媒介液の凝固点より高い温度に冷却する工程とすることも可能である。
【0017】
このように構成された発明では、基板表面に形成された洗浄液の液膜を凝固させる際、洗浄液の上に形成された媒介液を介して超音波を付与しているため、超音波付与ヘッドが洗浄液に触れることがなく、洗浄液が凝固しても媒介液が凝固しないため超音波付与ヘッドが基板表面に固着することがない。
【0018】
また、基板の裏面に洗浄液の凝固点より低い凝固点を有する媒介液を供給する媒介液供給工程を更に備え、超音波付与工程は、基板裏面に供給される媒介液に超音波を付与し、媒介液を介して基板に超音波を付与し、更に基板を介して洗浄液に超音波を付与することも可能である。
【0019】
また、凝固手段としては、基板裏面に供給する媒介液を洗浄液の凝固点より低い温度として供給することも可能である。
【0020】
このように構成された発明では、基板裏面に吐出される媒介液に超音波を付与し、基板を介して基板表面の洗浄液に超音波を付与して洗浄液の凝固体を形成しているため、基板表面に超音波付与ヘッドが固着するようなことがない。また、基板裏面に供給する媒介液を洗浄液の凝固点より低い温度で供給することにより、基板を介して洗浄液を冷却することができ、簡易な構成で基板表面に洗浄液の凝固体を形成する事が可能となる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、基板表面に形成された洗浄液の液膜に超音波を付与しながら冷却して洗浄液の凝固体を形成することにより、基板表面に形成される洗浄液の凝固体の結晶サイズを小さくする。これにより、解凍洗浄の際に短時間で凝固体を解凍することを可能とし、また融け残った場合でも、リンス液の中に浮遊する凝固体の結晶のサイズを小さくすることができるため、パターンに与えるダメージを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】基板上の氷を流水解凍した場合のパターンのダメージを示す図である。
【図2】基板上の氷を自然解凍した場合のパターンのダメージを示す図である。
【図3】解凍前の基板上の氷の状態を示した顕微鏡写真である。
【図4】解凍中の基板上の氷の状態を示した顕微鏡写真である。
【図5】本発明に係る基板処理装置の概略構成を示す平面図である。
【図6】本発明に係る基板処理装置の概略構成を示す正面図である。
【図7】第一の実施の形態にかかる処理ユニットの全体構成を示す図である。
【図8】図7の処理ユニットにおける基板保持手段、基板回転手段、処理カップの構成を示す図である。
【図9】図7の処理ユニットにおける雰囲気遮断手段の構成を示す図である。
【図10】図7の処理ユニットにおける超音波付与手段の構成を示す図である。
【図11】図10の超音波付与手段における超音波付与機構の構成を示す図である。
【図12】図11の超音波付与機構における超音波付与ヘッドの構成を示す正面断面図である。
【図13】図10の超音波付与手段における媒介液供給機構の構成を示す図である。
【図14】図7の処理ユニットにおける洗浄液供給手段、リンス手段、乾燥用気体供給手段の構成を示す図である。
【図15】図7の処理ユニットにおける凝固手段の構成を示す図である。
【図16】第一の実施の形態にかかる基板処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図17】第一の実施の形態にかかる基板処理装置の超音波付与・凝固処理の動作を示すフローチャートである。
【図18】第二の実施の形態における超音波付与手段の構成を示す図である。
【図19】第二の実施の形態で用いられる超音付与部の構成を示す正面断面図である。
【図20】第二の実施の形態における凝固手段の構成を示す図である。
【図21】第二の実施の形態にかかる基板処理装置の超音波付与・凝固処理の動作を示すフローチャートである。
【図22】第二の実施の形態の変形例で使用する超音波付与ノズルの構成を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の説明において、基板とは、半導体基板、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板をいう。また、回路パターン等の各種パターンが形成される基板の面を表面と称し、その反対側の面を裏面と称する。また、下方に向けられた基板の面を下面と称し、上方に向けられた基板の面を上面と称する。
【0024】
また、以下の説明で「氷晶」とは後述する脱イオン水(De Ionized Water:以下「DIW」と記載する)の凝固工程において形成されるDIWの結晶のことをいい、「氷晶サイズ」とはDIWの凝固工程において形成されるDIWの結晶の外形において最も長い軸の寸法を指すこととする。
【0025】
以下、本発明の実施の形態を、半導体基板の処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明する。尚、本発明は、半導体基板の処理に限らず、液晶表示器用のガラス基板などの各種の基板の処理にも適用することができる。また、本発明が適用できる基板処理装置は、洗浄処理、および乾燥処理を同じ装置内で連続して行うものだけに限らず、単一の処理のみを行う装置や、洗浄処理、および乾燥処理の一部を同じ装置内で連続して行うものなどにも適用可能である。
【0026】
<第一実施形態>
図5及び図6はこの発明にかかる基板処理装置9の概略構成を示す図である。図5は基板処理装置9の平面図であり、図6は図5の基板処理装置9を矢印X1の方向から見た正面図である。この装置は半導体基板等の基板W(以下、単に「基板W」と記載する)の表面に付着しているパーティクル等の汚染物質(以下「パーティクル等」と記載する)を除去するための洗浄処理に用いられる枚葉式の基板処理装置である。
【0027】
この基板処理装置9では、一方の端部(図5において下側)に基板Wを処理ユニット91に搬入出する移載装置93が配置される。この移載装置93の一端(図5において左側)に、基板Wを収容するカセット96が載置可能に構成されたカセットステーション95が設けられている。移載装置93には、カセット96から処理工程前の基板Wを一枚ずつ取出すと共に、処理工程後の基板Wをカセット96内に1枚ずつ収容する搬送アーム931aを備えた基板搬送装置931が備えられている。カセットステーション95の載置部951は、基板Wを例えば25枚収納したカセット96を載置できる構成になっている。基板搬送装置931は、水平、昇降方向に移動自在であると共に、鉛直軸を中心に回転できるように構成されている。
【0028】
次に、処理ユニット91の構成について図7を用いて説明する。図7は処理ユニット91の構成を示す模式図である。処理ユニット91は、表面に洗浄液の液膜が形成された基板Wを、基板表面を上方に向けて略水平姿勢に保持する基板保持手段11と、基板保持手段11を基板保持手段11に保持されている基板Wとともに回転する基板回転手段12と、基板保持手段11をその内側に収容し、基板保持手段11及び基板Wからの飛散物等を受け止めて排気・排液する処理カップ13と、基板保持手段11に保持された基板Wの表面Wfに対向して配置され、基板表面Wfを外気から遮断する雰囲気遮断手段15と、を有する。
【0029】
また、処理ユニット91は更に、基板保持手段11に保持されている基板表面Wfの上に形成されている洗浄液の液膜に超音波を付与する超音波付与手段5と、超音波付与手段5により超音波が付与されている洗浄液の液膜を冷却して基板表面Wfに洗浄液の凝固体を生成する凝固手段31と、基板表面Wf上に洗浄液であるDIWを供給する洗浄液供給手段21と、凝固手段31により生成された凝固体にリンス液であるDIWを供給して凝固体を解凍除去するリンス液供給手段23と、基板表面Wfに乾燥用のガスを供給する乾燥用気体供給手段33と、後述する洗浄プログラムに基づいて基板処理装置9の各部の動作を制御する制御ユニット97と、を有する。
【0030】
次に、基板保持手段11、基板回転手段12及び処理カップ13の構成について図8を用いて説明する。図8は基板保持手段11、基板回転手段12及び処理カップ13の構成を示す模式図である。
【0031】
まず、基板保持手段11について説明する。基板保持手段11の中心軸111の上端部には、円板状のスピンベース113がネジなどの締結部品によって固定されている。スピンベース113の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持するための複数個のチャックピン115が立設されている。チャックピン115は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース113の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。各チャックピン115のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部とを備えている。
【0032】
各チャックピン115は公知のリンク機構や褶動部材等を介してチャックピン駆動機構116内のエアシリンダに連結されている。また、チャックピン駆動機構116は制御ユニット97と電気的に接続されている。そして、制御ユニット97から基板保持手段11への動作指令により、チャックピン駆動機構116のエアシリンダが伸縮することで、各チャックピン115は、その基板保持部が基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、その基板保持部が基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。尚、チャックピン115の駆動源としてエアシリンダ以外に、モータやソレノイド等の駆動源を用いることも可能である。
【0033】
そして、スピンベース113に対して基板Wが受渡しされる際には、各チャックピン115を解放状態とし、基板Wに対して洗浄処理等を行う際には、各チャックピン115を押圧状態とする。各チャックピン115を押圧状態とすると、各チャックピン115は基板Wの周縁部を把持して、基板Wがスピンベース113から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持されることとなる。これにより、基板Wは、その表面Wfを上方に向け、裏面Wbを下方に向けた状態で保持される。なお、この実施形態では、基板Wの表面Wfに微細パターンが形成されており、表面Wfがパターン形成面となっている。
【0034】
次に、基板回転手段12について説明する。基板保持手段11の中心軸111に、モータを含む基板回転手段12の回転軸が連結されている。また、基板回転手段12は制御ユニット97と電気的に接続されている。そして、制御ユニット97からの動作指令により基板回転手段12が駆動されると、中心軸111に固定されたスピンベース113が回転中心A0を中心に回転する。
【0035】
処理カップ13は、基板Wの処理に用いられた後の処理液等を回収処理するためのものであり、スピンベース113とチャックピン115を収容し、基板Wから飛散する処理液等を受け止めることができるよう、略円筒形状となっている。また、その上面には、基板Wが通過するための開口131が形成されている。この開口131は、回転中心A0を中心とする略円形のものである。処理カップ13の底部には排気液ライン(図示省略)が接続され、基板保持手段11周辺の雰囲気を、その中に含まれる処理液等の微粒子ごと排気(排気液)する。
【0036】
次に、雰囲気遮断手段15の構成について図9を用いて説明する。図9は雰囲気遮断手段15の構成を示す模式図である。雰囲気遮断手段15の基板対向部材である遮断部材151は、中心部に開口を有する円板状に形成されている。遮断部材151の下面は、基板Wの表面Wfと略平行に対向する基板対向面となっており、基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されている。遮断部材151は略円筒形状を有する支持軸153の下端部に略水平に取り付けられる。この支持軸153は、水平方向に延びるアーム155により保持されている。
【0037】
アーム155には、遮断部材昇降機構157が接続されている。また、遮断部材昇降機構157は制御ユニット97と電気的に接続されている。そして、制御ユニット97から雰囲気遮断手段15への動作指令により遮断部材昇降機構157が駆動されると、遮断部材151がスピンベース113に近接し、逆に離間する。すなわち、制御ユニット97は、遮断部材昇降機構157の動作を制御して、処理ユニット91に対して基板Wを搬入出させる際には、遮断部材151を基板保持手段11の上方の離間位置に上昇させる一方、基板Wに対して後述するDIWの供給や基板Wの乾燥等を行う際には、遮断部材151を基板保持手段11に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された対向位置まで下降させる。
【0038】
また、遮断部材151は遮断部材回転機構159と接続されている。また、遮断部材回転機構159は制御ユニット97と電気的に接続されている。そして、制御ユニット97から雰囲気遮断手段15への動作指令により遮断部材回転機構159が駆動されると、遮断部材151が支持軸153の中心を通る鉛直軸周りに回転される。遮断部材回転機構159は、基板保持手段11に保持された基板Wの回転に応じて基板Wと同じ回転方向でかつ略同じ回転速度で遮断部材151を回転させるように構成されている。
【0039】
次に、超音波付与手段5の構成について図10を用いて説明する。図10は超音波付与手段5の構成を示す模式図である。超音波付与手段5は、洗浄液に超音波を付与する超音波付与機構51と、基板表面Wf上に形成された洗浄液の液膜の上に、洗浄液の凝固点より低い凝固点を有し、洗浄液より比重が小さく、かつ洗浄液と互いに混合し難い媒介液を供給し、洗浄液の液膜の上に媒介液の液膜を形成する媒介液供給機構55と、を有し、基板表面Wf上に形成された洗浄液と媒介液の二重液膜のうち、上層にある媒介液の液膜に対し超音波を付与し、媒介液を介して下層の洗浄液に超音波を付与する。
【0040】
まず、図11を用いて超音波付与機構51の構成について説明する。後述する超音波付与ヘッド531を昇降及び旋回させるための駆動源として、処理カップ13の周方向外側にヘッド駆動機構511が設けられている。このヘッド駆動機構511は昇降モータ513を有し、昇降モータ513の回転軸にはボールネジ515が連結されている。このボールネジ515は立設されたガイド517に併設されている。昇降ベース519はガイド517に褶動自在に嵌め付けられているとともに、ボールネジ515に螺合されている。また、昇降モータ513は制御ユニット97と電気的に接続されている。そして、制御ユニット97からの動作指令により昇降モータ513が駆動されると、昇降ベース519が上下方向に昇降される。
【0041】
昇降ベース519には旋回モータ521が搭載されており、旋回モータ521の回転軸には旋回軸523が連結されている。旋回軸523にはアーム525の一端が連結され、このアーム525の他方端には後述する超音波付与ヘッド531が保持されている。また、旋回モータ521は制御ユニット97と電気的に接続されている。そして、制御ユニット97からの動作指令により旋回モータ521が駆動されると、旋回軸523の周りにアーム525が揺動して、超音波付与ヘッド531を基板保持手段11上に保持された基板表面Wf近傍であって基板W中心付近の凍結開始位置、基板表面Wf近傍であって基板W外縁付近の凍結終了位置及び処理カップ13の周方向外側に外れている位置である退避位置との間で移動させる。
【0042】
次に、超音波付与ヘッド531の構成について図12を用いて説明する。図12は超音波付与ヘッド531の構成を示す断面図である。超音波付与ヘッド531は、アーム525の先端に取り付けられ、後述する振動子537で生ずる超音波振動を基板W上の媒介液へと伝達し、媒介液を介して洗浄液に超音波を付与する。超音波付与ヘッド531は、例えば4フッ化テフロン(登録商標)(poly tetra fuluoroethylene)等のフッ素樹脂からなる本体部533の底面側開口に、例えば石英からなる振動板535が取り付けられている。この振動板535は平面視で円盤形状を有しており、その底面が振動面VFとなっている。
【0043】
振動板535の上面(振動面VFとは反対の面)には、例えば圧電振動子からなる振動子537が取り付けられている。振動子537は超音波発振器543に配線541を介して電気的に接続され、超音波発振器543は、振動子537に振動を生じさせるためのパルス信号を発振する。
【0044】
また、超音波発振器543は制御ユニット97と電気的に接続されている。そして、制御ユニット97からの動作指令により、超音波発振器543からパルス信号が配線541を介して振動子537に出力されると、振動子537が超音波振動し、振動板535を超音波振動させる。尚、超音波付与ヘッド531の側面に固設された配管313については後述する。
【0045】
ヘッド駆動機構511により超音波付与ヘッド531が振動付与位置に位置決めされる場合、振動面VFと基板表面Wfとの間隔は、昇降モータ513の駆動制御によって高精度に制御される。
【0046】
次に、媒介液供給機構55の構成について図13を用いて説明する。図13は媒介液供給機構55の構成を示す模式図である。
【0047】
ミスト供給ノズル559をスキャン駆動するための駆動源として、処理カップ13の周方向外側に旋回モータ553が設けられている。この旋回モータ553には回転軸555が接続され、この回転軸555にはアーム557が水平方向に延びるように接続されており、このアーム557の先端にミスト供給ノズル559が取り付けられている。また、旋回モータ553は制御ユニット97と電気的に接続されている。そして、制御ユニット97からの動作指令により旋回モータ553が駆動されると、ミスト供給ノズル559が回転軸555回りに基板表面Wf上空の吐出位置と処理カップ13の周方向外側に外れている位置である退避位置の間を揺動することとなる。
【0048】
ミスト供給ノズル559は配管563を介して、図示しないトルエンのタンク、温度調整ユニット及びポンプを有するトルエン供給部561に管路接続されている。尚、トルエン供給部561のポンプは基板処理装置9が起動した時点から常時動作している。また、配管563には開閉弁565が介挿されている。開閉弁565は常時閉成されている。また、開閉弁565は制御ユニット97と電気的に接続されている。そして、制御ユニット97からの動作指令により開閉弁565が開成すると、トルエン供給部561からトルエンが配管563を介して圧送される。それにより、ミスト供給ノズル559からミスト状のトルエンが基板表面Wfへ向けて吐出される。尚、トルエン供給部561は、基板処理装置9の内部に設けられていても、外部に設けられていてもよい。
【0049】
ここで、トルエンとは化学式CCHで表される液体であり、水(化学式:HO)とは互いに混合し難く、凝固点は−(マイナス)95℃(摂氏)であり、水の凝固点(0℃(摂氏))より低い。また、密度は0.864(kg/m)であり、水に対する比重は「1」より小さい。従って、本実施形態における「媒介液」としてのトルエンは、「洗浄液」としてのDIWと互いに混合し難く、DIWより凝固点が低く、かつDIWより比重が小さい。尚、トルエンは希釈されていてもよい。
【0050】
次に、洗浄液供給手段21、リンス液供給手段23及び乾燥用気体供給手段33の構成について図14を用いて説明する。図14は、洗浄液供給手段21、リンス液供給手段23及び乾燥用気体供給手段33の構成を示す模式図である。
【0051】
雰囲気遮断手段15の支持軸153は中空になっており、その内部に第一供給管203が挿通されるとともに、当該第一供給管203に第二供給管205が挿通されて、いわゆる二重管構造となっている。この第一供給管203及び第二供給管205の下方端部は遮断部材151の開口に延設されており、第二供給管205の先端に吐出ノズル201が設けられている。
【0052】
第一供給管203には、図示しない窒素ガスタンク、ポンプ及び流量調整弁を有する乾燥用窒素ガス供給部331が配管333を介して管路接続されている。尚、乾燥用窒素ガス供給部331のポンプは基板処理装置9が起動した時点から常時動作している。
【0053】
第二供給管205には、主配管207が管路接続され、主配管207に対しては配管213を介して、図示しないDIWタンク、温度調整ユニット及びポンプを有する第一DIW供給部211、並びに、配管233を介して、図示しないDIWタンク、温度調整ユニット及びポンプを有する第二DIW供給部231がそれぞれ管路接続されている。また、配管213及び233にはそれぞれ開閉弁215及び235が介挿されている。なお、開閉弁215及び235は常時閉成されている。尚、第一DIW供給部211及び第二DIW供給部231のポンプは基板処理装置9が起動した時点から常時動作している。
【0054】
開閉弁215は制御ユニット97に電気的に接続されている。そして、制御ユニット97からの動作指令により開閉弁215が開成すると、第一DIW供給部211から洗浄液としてのDIWが配管213と主配管207と第二供給管205を通して吐出ノズル201から基板表面Wfに供給される。この、第一DIW供給部211、開閉弁215、配管213、主配管207、第二供給管205及び吐出ノズル201が洗浄液供給手段21を構成する。
【0055】
開閉弁235は制御ユニット97と電気的に接続されている。そして、制御ユニット97からの動作指令により開閉弁235が開成すると、第二DIW供給部231からリンス液としてのDIWが配管233と主配管207と第二供給管205を通して吐出ノズル201から基板表面Wfに供給される。この、第二DIW供給部231、開閉弁235、配管233、主配管207、第二供給管205及び吐出ノズル201がリンス液供給手段23を構成する。
【0056】
ここで、第一DIW供給部211は後述する洗浄液供給工程において、例えば1℃(摂氏)に温度調整されたDIWを供給する。また、第二DIW供給部231は、後述するリンス工程において基板表面Wfに残留するDIWの凝固体を解凍して除去するため、例えば40℃(摂氏)に温度調整されたDIWを供給する。尚、第一DIW供給部211および第二DIW供給部231は、基板処理装置9の内部に設けられていても、外部に設けられていてもよい。
【0057】
乾燥用窒素ガス供給部331は配管333を介して第一供給管203に管路接続されている。また、乾燥用窒素ガス供給部331は制御ユニット97と電気的に接続されている。この乾燥用窒素ガス供給部331は、制御ユニット97からの動作指令により内部の流量調整弁を開放して、常温の窒素ガスを配管333と第一供給管203を介して基板表面Wfに供給する。この、乾燥用窒素ガス供給部331と、配管333と、第一供給管203とが乾燥用気体供給手段33を構成する。尚、乾燥用窒素ガス供給部331は、基板処理装置9の内部に設けられていても、外部に設けられていてもよい。
【0058】
次に、凝固手段31の構成について図15を用いて説明する。図15は凝固手段31の構成を示す模式図である。凝固手段31の凍結用窒素ガス供給部311は、図示しない気体の窒素ガスを貯留する窒素ガスタンク、窒素ガスを圧送するポンプ、窒素ガスの流量を調整する流量調整弁、液体窒素を貯留する液体窒素タンク及び液体窒素タンクの中の液体窒素に浸漬された熱交換器を備える。
【0059】
窒素ガスタンクはポンプと流量調整弁を介して熱交換器の流入口に管路接続され、熱交換器の流出口は配管313の一端と管路接続されている。配管313の他端は超音波付与ヘッド531まで延設されている。尚、凍結用窒素ガス供給部311のポンプは基板処理装置9が起動した時点から常時動作している。
【0060】
また、凍結用ガス供給部311は制御ユニット97に電気的に接続されている。この凍結用ガス供給部313は、制御ユニット97からの動作指令により、流量調整弁を所定流量となるように開放し、例えば摂氏−(マイナス)20℃(摂氏)の窒素ガスを配管313を介して基板表面Wfに供給する。尚、凍結用窒素ガス供給部311は、基板処理装置9の内部に設けられていても、外部に設けられていてもよい。
【0061】
尚、凍結用ガス供給部311から供給される冷媒は、窒素ガスに限らず、乾燥空気、酸素ガス、アルゴンガス等の他の気体を使用することも可能である。また、冷媒を冷却する手段としては、液体窒素に限らず、液体ヘリウム等の低温の液体を使用することが可能であり、またペルチェ素子を用いて電気的に冷却することも可能である。
【0062】
図12に戻って説明する。超音波付与ヘッド531まで延設された配管313は、超音波付与ヘッド531の本体部533の外側面にブラケットを用いて固設される。配管313の先端の開口315は、超音波付与ヘッド531の振動面VFが基板表面Wf上の液膜に接液している状態で液膜の液面より上に位置するよう固定され、凍結用窒素ガス供給部311からの凍結用窒素ガスが液膜の表面に吐出されるよう構成される。
【0063】
尚、配管313は図12において矢印X2で表される後述する凝固工程中の超音波付与ヘッド531の移動方向とは逆の側(超音波付与ヘッド531の移動方向の上流側)に取り付けられるのが好ましい。すなわち、本実施形態では後述する凝固工程において、超音波付与ヘッド531が基板Wの中心付近から外縁付近に移動するため、配管313は超音波付与ヘッド531に対して基板Wの中心側に取り付けるのが好ましい。なぜなら、超音波は液体と固体などの界面で反射するため、仮に超音波付与ヘッド531の移動方向の側(超音波付与ヘッド531の移動方向の下流側)に取り付けると振動面VFの直下に液体のDIWと固体のDIWの界面が生ずることが有り、この場合、それらの界面で超音波が反射し、安定した強度で洗浄液であるDIWに超音波を付与することが困難となるためである。
【0064】
制御ユニット97は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM及び制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを有する。磁気ディスクには、基板Wに応じた洗浄条件が、洗浄プログラム(レシピとも呼ばれる)として予め格納されおり、CPUがその内容をRAMに読み出し、RAMに読み出された洗浄プログラムの内容に従ってCPUが基板処理装置9の各部を制御する。尚、制御ユニット97には洗浄プログラムの作成・変更や、複数の洗浄プログラムの中から所望のものを選択するために用いる操作部(図示せず)が接続されている。
【0065】
次に、上記のように構成された基板処理装置9における洗浄処理動作について図16及び図17を参照して説明する。図16は図5及び図6の基板処理装置9の動作を示すフローチャートであり、図17は図16のステップS03の内容を詳細に示したフローチャートである。
【0066】
尚、以下の説明において特に断らない限り、雰囲気遮断手段15は、遮断部材151が対向位置にある場合、基板回転手段12が基板保持手段11を回転する方向に略同じ回転数で遮断部材151を回転するものとする。
【0067】
図16を用いて説明する。まず、所定の基板Wに応じた洗浄プログラムが図示しない操作部で選択され、実行される。その後、基板Wを処理ユニット91に搬入する準備として、制御ユニット97からの動作指令により以下の動作を行う。
【0068】
すなわち、雰囲気遮断手段15が遮断部材151の回転を停止し、基板回転手段12が基板保持手段11の回転を停止する。雰囲気遮断手段15が遮断部材151を離間位置へ移動すると共に、基板回転手段12が基板保持手段11を基板Wの受け渡しに適した位置へ位置決めする。基板保持手段11が基板Wの受け渡しに適した位置に位置決めされた後、基板保持手段11がチャックピン115を解放状態とする。
【0069】
また、超音波付与手段5が超音波付与ヘッド531とミスト供給ノズル559を、それぞれ退避位置(超音波付与ヘッド531及びミスト供給ノズル559が処理カップ13の周方向外側に外れている位置)へ移動する。更に、開閉弁215、235及び533cが閉成し、凍結用窒素ガス供給部311と乾燥用窒素ガス供給部331それぞれが凍結用窒素ガスと乾燥用窒素ガスの供給を停止する。また、超音波発振器543が超音波の発振を停止する。
【0070】
まず、未処理の基板Wを処理ユニット91へ搬入する基板搬入工程が行われる。処理ユニット91への基板Wの搬入準備が完了すると、制御ユニット97からの動作指令により、基板搬送装置931が載置部951に載置されたカセット96の所定の位置から基板Wを取り出し、処理ユニット91へ搬入する(ステップS01)。
【0071】
未処理の基板Wが処理ユニット91内に搬入され、チャックピン115の基板支持部の上に載置されると、制御ユニット97から基板保持手段11への動作指令により、チャックピン駆動機構116がチャックピン115を押圧状態とする。
【0072】
基板保持手段11に未処理の基板Wが保持されると、制御ユニット97から雰囲気遮断手段15への動作指令により、遮断部材昇降機構157が遮断部材151を近接位置まで降下し、基板表面Wfに近接配置する。そして、制御ユニット97の動作指令により、基板回転手段12が基板保持手段11を例えば100rpmで回転開始させ、該回転数による回転が継続される。また、制御ユニット97から洗浄液供給手段21への動作指令により、開閉弁215が開成する。これにより、第一DIW供給部211から洗浄液としてのDIWが配管233と主配管207と第二供給管205を介して吐出ノズル201から基板表面Wfに供給される。
【0073】
基板表面Wfに供給された洗浄液としてのDIWは基板Wの回転に伴う遠心力により基板表面Wfの全面に均一に広がり、基板表面WfにDIWの液膜(水膜)を形成する。このとき、DIWの流動によりパターンの間隙内部にDIWが入り込む(ステップS02)。基板Wの回転速度は、基板表面Wf上のDIWを流動させてパターンの間隙内部にまでDIWを入り込ませるように設定される。この、基板表面Wfに洗浄液であるDIWを供給する工程が、本発明における「洗浄液供給工程」に該当する。洗浄液供給工程が終了すると、制御ユニット97から洗浄液供給手段21への動作指示により、開閉弁215が閉成する。
【0074】
なお、本実施形態では、洗浄液として0〜2℃(摂氏)程度に温度調整されたDIWを用いるのが好ましい。なぜなら、DIWの液膜の温度が比較的高いために、後述の通りDIWの液膜の上にトルエンが供給され、DIWの液膜の上にトルエンの液膜が形成される前にDIWの液膜が蒸発する。このことにより、パターンの倒壊などを生じさせないためであり、また、後述するDIWの凝固に要する時間を短縮するためである。
【0075】
次に、基板表面Wf上に形成されたDIWの液膜の上に、媒介液としてのトルエンの液膜を形成し、トルエンの液膜を介してDIWの液膜に超音波を付与しながら冷却することにより、基板表面Wf上にDIWの凝固体を形成する超音波付与・凝固処理(ステップS03)について、図17を用いて説明する。
【0076】
まず、媒介液供給工程について説明する。制御ユニット97からの動作指令により、基板回転手段12が基板保持手段11の回転数を例えば10rpmまで減速し、該回転数による回転が継続される。また、制御ユニット97から雰囲気遮断手段15への動作指令により、遮断部材昇降機構157が遮断部材151を離間位置へ移動する。その後、制御ユニット97から超音波付与手段5への動作指令により、媒介液供給機構55の旋回モータ553がミスト供給ノズル559を吐出位置へ移動する。
【0077】
ミスト供給ノズル559が吐出位置へ位置決めされた後、制御ユニット97から超音波付与手段5への動作指令により、媒介液供給機構55の開閉弁565が開成する。これにより、トルエン供給部561から媒介液としてのトルエンが、配管563を介してミスト供給ノズル559へ圧送され、ミスト供給ノズル559からミスト状のトルエンが基板表面Wfへ向けて吐出される(ステップS101)。
【0078】
これにより、基板表面Wf上に形成された洗浄液としてのDIWの液膜の上に、媒介液としてのトルエンの液膜が存在する二重液膜構造が形成される。この、洗浄液としてのDIWの凝固点より低い凝固点を有し、DIWより比重が小さく、かつDIWと互いに混合し難い媒介液としてのトルエンを基板表面Wfに供給し、DIWの液膜の上にトルエンの液膜を形成する工程が、本発明における「媒介液供給工程」に該当する。媒介液供給工程が終了すると、制御ユニット97から超音波付与手段5への動作指令により、媒介液供給機構55の開閉弁565が閉成すると共に、旋回モータ553がミスト供給ノズル559を退避位置へ移動する。
【0079】
ここで、第一実施例における媒介液としては、洗浄液と互いに混合し難く、洗浄液より比重の小さい液体であることが望ましい。なぜなら、媒介液が洗浄液と互いに混合し難く、また比重が小さい場合、上記二重液膜構造が安定し、後述する超音波を付与しながら洗浄液であるDIWを凝固する際にも二重液膜構造が安定的に維持されるためである。更に、媒介液であるトルエンはDIWと混合し難いため、洗浄液であるDIWと混合して凝固点の変動を生じたり氷晶サイズの変動を引き起こすことが無い。第一実施形態における媒介液としてのトルエンは洗浄液としてのDIWとは互いに混合し難く、凝固点も低く、また、トルエンの方がDIWよりも比重が小さいため、媒介液として好ましい。
【0080】
また、二重液膜構造を構成するために、DIWの液膜が形成された基板表面Wfに対してトルエンをミスト状に供給してトルエンの液膜を形成しているため、二重液膜構造を安定して形成することができる。更に、ミスト状のトルエンの供給と同時に基板Wを回転させているため、トルエンの液膜をDIWの液膜の上面全体に平坦かつ均一に形成することができる。その結果、DIWの液膜の厚みを均一にすることが可能となり、後述する凝固工程において、DIWの液膜に超音波のエネルギーが均一に付与されるため、氷晶サイズの揃ったDIWの凝固体を形成することが可能となる。
【0081】
次に、超音波付与工程及び凝固工程について説明する。制御ユニット97からの動作指令により、基板回転手段12が基板保持手段11の回転数を例えば50rpmまで加速し、該回転数による回転が継続される。また、制御ユニット97から超音波付与手段5への動作指令により、ヘッド駆動機構511が超音波付与ヘッド531を凍結開始位置へ移動する。
【0082】
超音波付与ヘッド531が凍結開始位置へ位置決めされ、振動面VFがトルエンの液膜と接液した状態で、制御ユニット97から超音波付与手段5への動作指示により、超音波発振器543がパルス信号の発振を開始する。これにより振動子537が超音波振動し、振動板535を振動させ、振動面VFからトルエンの液膜に対し超音波振動が付与される。同時に、制御ユニット97から凝固手段31への動作指示により、凍結用窒素ガス供給部311が凍結用窒素ガスの供給を開始する。
【0083】
尚、超音波付与ヘッド531からトルエンの液膜に付与される超音波は、DIWの液膜中でキャビテーションを発生させない程度の周波数とエネルギー、例えば3MHzの周波数、および、0.6W/cmのエネルギーで付与される。
【0084】
凍結用窒素ガス供給部311から配管313を介して開口315から基板表面Wfに供給された凍結用窒素ガスは、トルエンの液膜の表面に吐出され、トルエンの液膜を冷却する。これにより、トルエンの液膜に接しているDIWの液膜を間接的に冷却する。その結果、基板表面Wf上にDIWの凝固体が形成される。この凍結用窒素ガスはDIWの凝固点よりも低い温度でかつトルエンの凝固点より高い温度、例えば摂氏−(マイナス)20℃(摂氏)の温度に調整されているため、トルエンを凝固させることなくDIWのみを凝固させることが可能である。
【0085】
超音波付与手段5からトルエンの液膜に超音波を付与している間、制御ユニット97から超音波付与手段5への動作指示により、ヘッド駆動機構511が超音波付与ヘッド531を基板Wの中心付近の凍結開始位置から外縁付近の凍結終了位置まで揺動させる。このように、基板Wを回転しながら超音波付与ヘッド531を基板Wの中心付近から外縁付近まで揺動させることで、基板表面Wfの全面にわたってDIWの凝固体を形成することが可能となる(ステップS102)。
【0086】
この、媒介液としてのトルエンの液膜に超音波を付与し、トルエンを介して洗浄液としてのDIWに超音波を付与する工程が、本発明における「超音波付与工程」に該当する。また、超音波付与工程により超音波が付与されているDIWとトルエンの二重液膜に対し、DIWの凝固点より低く、かつ、トルエンの凝固点より高い温度に調整された凍結用窒素ガスを吐出することで、上層のトルエンを介して下層のDIWを冷却し、DIWの凝固体を生成する工程が、本発明における「凝固工程」に該当する。
【0087】
凝固工程により、パーティクル等と基板表面Wfとの間に入り込んだDIWの体積が増加(0℃(摂氏)の水が0度℃(摂氏)の氷になると、その体積はおよそ1.1倍に増加する)し、パーティクル等が微小距離だけ基板表面Wfから離れる。その結果、基板表面Wfとパーティクル等との間の付着力が低減され、さらにはパーティクル等が基板表面Wfから脱離することとなり、後述するリンス工程によりDIWの凝固体が除去されることにより、パーティクル等も併せて除去される。また、超音波付与ヘッド531から超音波を付与しながらDIWを凝固することにより、パーティクル等に振動エネルギーを与えながら凝固することになり、パーティクル等を基板表面Wfから脱離させる効果を助長する。
【0088】
ここで、DIWの主成分である水の分子(化学式:HO)は酸素(原子記号:O)と水素(原子記号:H)が共有結合で結びついたものである。酸素は電気陰性度が大きく、このような原子と共有結合で結びついた水素原子は、近傍に位置する他の原子(水の場合は他の水分子の酸素原子)の孤立電子対と非共有結合性の引力相互作用である水素結合でも結合される。
【0089】
また、液体である水が冷却され凝固する場合、氷の結晶が生成される。結晶が形成される結晶化は核形成と結晶成長という2つの段階からなる。「核形成」は液体中に分散している分子が集まり、数ナノメートル程度の大きさのクラスター(集団)を作る段階であり、出来上がったクラスターはその後の結晶成長の種である核となる。また、「結晶成長」は出来上がった核が成長する事をいう。
【0090】
液体である水の、水素結合による分子のネットワークは無秩序に形成されており、氷の結晶の核となり得るほど分子が集合している部分が少ない。このような状態の水を冷却すると数少ない分子の集合が核となり、その核から結晶が成長し氷の結晶となる。この場合、隣接する核同士の距離が大きいため、結晶が成長する範囲が大きく、最終的に大きな氷の結晶が生成される。
【0091】
純粋な水は、何ら外的な作用がなくてもわずかに電離するため、水の中には水酸化物イオン(OH−)と水素イオン(H+)が存在する。電離した水酸化物イオンと水素イオンは再結合してもとの水分子となり、電離と再結合がバランスして全体として平衡が保たれている。
【0092】
液体である水に、外部から超音波等のエネルギーを付与すると、水酸化物イオン(OH−)と水素イオン(H+)の再結合を妨げ、水分子の電離状態を長時間維持することができる。水素結合により無秩序に形成された水分子のネットワークの中に、電離状態の水酸化物イオンと水素イオンが長時間存在すると、その周囲に水分子が集合し、結晶の核となりうるクラスターが生成される。この現象によるクラスターの数は外部からエネルギーが与えられない場合より単位体積で比較すると多くなり、これにより結晶が成長する範囲が小さくなることで最終的に形成される氷の結晶が小さくなる。
【0093】
第一実施形態においては、超音波付与手段5からトルエンの液膜に超音波を付与すると同時に凝固手段31から凍結用窒素ガスを吐出することで、トルエンの液膜を介してDIWの液膜に超音波を付与して水分子のクラスターを安定生成し、併せて冷却することで微細な結晶を有するDIWの凝固体を生成することが可能となる。
【0094】
また、超音波付与ヘッドはあくまでトルエンの液膜にのみ接液している。従って、その下のDIWの液膜が凝固してDIWの凝固体に変化しても、その上層のトルエンの液膜は液体の状態を維持し、超音波付与ヘッド531が基板表面Wf上の二重液膜に固着することがなく、円滑にDIWの凝固体を形成することが可能となる。
【0095】
超音波付与ヘッド531が凍結終了位置まで旋回し、基板表面Wfの全面にDIWの凝固体が形成された時点で、超音波付与工程と凝固工程が終了する。超音波付与工程と凝固工程の終了後、制御ユニット97から超音波付与手段5への動作指示により、超音波発振器543がパルス信号の発振を停止するとともに、ヘッド駆動機構511が超音波付与ヘッド531を退避位置へ移動する。また、制御ユニット97から凝固手段31への動作指示により、凍結用窒素ガス供給部311からの凍結用窒素ガスの吐出が停止する。
【0096】
次に、リンス工程について図16に戻って説明する。制御ユニット97から雰囲気遮断手段15への動作指示により、遮断部材昇降機構157が遮断部材151を対向位置へ移動する。遮断部材151が対向位置に位置決めされた後、制御ユニット97からリンス液供給手段23への動作指示により、開閉弁235が開成する。
【0097】
これにより、第二DIW供給部231からの例えば40℃(摂氏)に温度調整されたリンス液としてのDIWが、配管233と主配管207と第二供給管205を介して吐出ノズル201から基板表面Wfに供給される。これにより、基板表面Wf上のトルエンの液膜を排除すると共に、DIWの凝固体を融解して除去するリンス処理が行われる(ステップS04)。この、凝固工程により生成された凝固体にリンス液を供給して凝固体を解凍除去する工程が、本発明における「リンス工程」に該当する。
【0098】
DIWの凝固体の温度が上昇すると、結晶の周囲、即ち隣接する結晶との境界部分から融解が進行する。これにより、結晶の融解が完了する前に隣接する結晶との接着がなくなり、リンス液であるDIWの中にDIWの結晶が浮遊する。
【0099】
この際、氷晶サイズが大きいと、全て融解するのに時間がかかるため、何らかの外力(第一実施例においてはリンス液としてのDIWの流動や基板Wの回転による遠心力)が加わると、融け残った氷晶が移動し、基板表面Wf上に形成されたパターンに衝突してパターンを倒壊させるなどのダメージを与えることとなる。
【0100】
これに対し、氷晶サイズが小さいと、全て融解するに要する時間が短いため、パターンに衝突する前に融解する。また、仮に融け残ってパターンに衝突したとしても、氷晶サイズ自体が小さいため、パターンに与えるダメージが小さくなる。
【0101】
リンス工程終了後、制御ユニット97からリンス液供給手段23への動作指令により、開閉弁235が閉成する。
【0102】
次に、基板Wを乾燥する乾燥工程が行われる。制御ユニット97から乾燥用気体供給手段33への動作指令により、乾燥用窒素ガス供給部331が乾燥用窒素ガスの供給を開始する。
【0103】
これにより、乾燥用窒素ガス供給部331からの乾燥用窒素ガスが、配管333と第一供給管203を介して基板表面Wfに供給される。乾燥用窒素ガスが、対向位置に位置決めされた遮断部材151と基板表面Wfとの間の空間に充満することにより、基板表面Wfと外気が接触することを防止する。
【0104】
基板表面Wfが外気から遮断された後、制御ユニット97から基板回転手段12と雰囲気遮断手段15への動作指令により、基板保持手段11と遮断部材151を例えば1500rpmで回転し、該回転数による回転が継続される。これにより、基板表面Wf上に残留するリンス液であるDIWに遠心力を作用させて除去し、基板表面Wfを乾燥させる(ステップS05)。
【0105】
基板Wの乾燥完了後、制御ユニット97から乾燥用気体供給手段33への動作指令により、乾燥用窒素ガス供給部331が乾燥用窒素ガスの供給を停止する。また、制御ユニット97からの動作指令により基板回転手段12が基板保持手段11の回転を停止する。また、制御ユニット97から雰囲気遮断手段15への動作指令により、遮断部材回転機構159が遮断部材151の回転を停止する。基板保持手段11の回転が停止した後、制御ユニット97からの動作指令により基板回転手段12が基板保持手段11を基板Wの受け渡しに適した位置へ位置決めする。更に、制御ユニット97から雰囲気遮断手段15への動作指令により遮断部材昇降機構157が遮断部材151を退避位置へ移動する。
【0106】
最後に、基板Wを処理ユニット91から搬出する基板搬出工程が行われる。基板保持手段11が基板Wの受け渡しに適した位置に位置決めされた後、制御ユニット97から基板保持手段11への動作指令により、チャックピン駆動機構116がチャックピン115を開放状態とする。
【0107】
その後、制御ユニット97からの動作指令により、基板搬送装置931が処理ユニット91内の処理済みの基板Wを取り出し、載置部951に載置されたカセット96の所定の位置に搬入し(ステップS06)、一連の処理が終了する。
【0108】
以上のように、第一実施形態においては、超音波付与手段5からトルエンの液膜に超音波を付与すると共に凝固手段31から凍結用窒素ガスを吐出することで、トルエンの液膜を介してDIWの液膜に超音波を付与し、水分子のクラスターを安定生成した上で冷却し、微細な結晶の氷を生成することが可能となる。
【0109】
これにより、基板表面Wf上のDIWの凝固体を解凍除去するリンス工程において、氷晶を早く解凍することが可能となり、また、リンス液の中に残留する氷晶のサイズも小さくすることが可能となる。従って、基板表面Wf上に形成されたパターンへのダメージを効果的に防止することが可能となる。
【0110】
尚、上記第一実施形態では媒介液としてトルエンを使用したが、洗浄液であるDIWより凝固点が低く、かつDIWと互いに混合し難く、かつ密度が小さい液体であれば、他の液体を使用することも可能である。例えば、ヘキサン(化学式:C14。密度:0.658(kg/m)。凝固点:−(マイナス)100℃(摂氏))、ヘプタン(化学式:C16。密度:0.681(kg/m)。凝固点:−(マイナス)91度℃(摂氏))、オクタン(化学式:C18。密度:0.701(kg/m)。凝固点:−(マイナス)56.8度℃(摂氏))等である。尚、これらの液は希釈されていてもよい。
【0111】
また、上記第一実施例においては、超音波付与工程における超音波付与の開始と、凝固工程における凍結用窒素ガスの吐出開始は同時に行われるとしたが、これらのタイミングは同時でなくても良い。即ち、凍結用窒素ガスは超音波付与手段5により超音波が付与されているDIWに対して吐出されればよく、先に超音波付与工程を開始し、次にヘッド駆動機構511が超音波付与ヘッド531の旋回を開始し、配管313の先端の開口315が基板Wの中心直上に来た時点で凝固工程を開始し、凍結用窒素ガスを基板表面Wfに吐出するようにしても良い。また、超音波付与工程開始後、所定時間そのままの状態を保持して基板表面Wf上のDIW全体に超音波が行き渡るようにした後で、超音波付与ヘッド531の旋回を開始し、その後凝固工程を開始するようにしても良い。
【0112】
また、上記第一実施形態では、超音波付与ヘッド531に凍結用窒素ガス供給部311からの配管313を固設してDIWの凝固体を形成していたが、DIWの凝固体を形成する方法はこれに限らない。例えば、凍結用窒素ガスを吐出するためのノズルとそのノズルを駆動する駆動機構をヘッド駆動機構511とは別に設け、前記凝固工程において超音波付与ヘッド531の移動方向の後方に追従して凍結用窒素ガスを吐出することも可能である。また、凍結用窒素ガスを基板表面Wfに吐出するのではなく、基板Wの裏面側から基板裏面Wbに吐出してDIWの凝固体を形成することも可能である。
【0113】
また、第一実施形態における媒介液供給機構13をなくして媒介液供給工程を実施せず、超音波付与手段5の超音波付与ヘッド531を基板表面Wf上の洗浄液としてのDIWの液膜に接液させ、DIWの液膜に直接超音波を付与しながら凍結用窒素ガスをDIWの液膜に吐出し、DIWの凝固体を形成することも可能である。
【0114】
図12に示すように、凍結用窒素ガス供給部311に管路接続した配管313は凝固工程中の超音波付与ヘッド531の移動方向とは逆の側に固設されるため、配管313の先端の開口315から吐出される凍結用窒素ガスによりDIWが凝固される領域は凝固工程における超音波付与ヘッド531の移動方向の後方(超音波付与ヘッド531の移動方向の上流側)となる。
【0115】
従って、開口315から吐出される凍結用窒素ガスにより基板表面Wf上のDIWの凍結が進行する速度よりも速い速度で超音波付与ヘッド531を移動することにより、DIWの凝固体が超音波付与ヘッド531の振動面VFに接することがなくなる。これにより、超音波付与ヘッド531が基板表面Wf上の液膜に固着することがなく、円滑にDIWの凝固体を形成することが可能となる。
【0116】
<第二実施形態>
次に、この発明にかかる基板処理装置の第二実施形態を図18、図19、図20及び図21を用いて説明する。図18及び図20は、第二実施形態における処理ユニット911が、第一実施形態の処理ユニット91と構成上異なる部分を示す模式図である。図19は第二実施形態における処理ユニット911に使用される超音波付与ユニットの正面断面図であり、図20は第二実施形態における超音波付与・凝固処理の詳細を示したフローチャートである。
【0117】
この第二実施形態が第一実施形態と大きく相違する点は、まず、第一実施形態のように基板表面Wf上の洗浄液の液膜の上に媒介液の液膜を形成せず、基板Wの裏面側から基板裏面Wbに超音波を付与した媒介液を吐出し、基板Wを介して基板表面Wf上の洗浄液の液膜に超音波を付与しながら凝固する点である。従って、第二実施形態においては第一実施形態における超音波付与手段5を備えず、媒介液は基板裏面Wbに吐出する構成とされ、媒介液が通る配管経路内に超音波付与ユニット621を備える。
【0118】
また、第一実施形態においては凝固手段31の配管313は超音波付与手段5の超音波付与ヘッド531に固設され、超音波付与ヘッド531の移動に伴って移動する構成であったが、第二実施形態においては、独立した駆動機構を有する凝固手段として構成している。
【0119】
尚、その他の構成は図5ないし図16に示す基板処理装置9及び処理ユニット91と基本的に同一であるため、以下の説明では上記相違する点について述べ、相違ない点については同一符号を付して構成説明を省略する。
【0120】
まず、第二実施形態における超音波付与手段61について図18を用いて説明する。図18は第二実施形態における超音波付与手段61の構成を示す模式図である。
【0121】
基板保持手段11の中心軸111は中空になっており、その内部に供給管208が挿通されている。そして、供給管208は配管633を介して、図示しないトルエンのタンク、温度調整ユニット及びポンプを有するトルエン供給部631に管路接続されている。尚、トルエン供給部631のポンプは基板処理装置92が起動した時点から常時動作している。また、配管633には開閉弁635が介挿されている。尚、開閉弁635は常時閉成されている。また、開閉弁635は制御ユニット971と電気的に接続されている。尚、トルエン供給部631は、基板処理装置の内部に設けられていても、外部に設けられていてもよい。
【0122】
スピンベース113の中心には開口が設けられており、供給管208の上方端部がスピンベース113の開口に延設されるとともに、供給管208の先端に吐出ノズル209が設けられている。制御ユニット971から超音波付与手段61への動作指令に応じて、媒介液供給手段613の開閉弁635が開成すると、トルエン供給部631から例えば1℃(摂氏)のトルエンが、配管633と供給管208を介して吐出ノズル209から基板裏面Wbに供給される。
【0123】
供給管208には超音波付与ユニット621が介挿されている。図19は超音波付与ユニット621の構造を示す正面断面図である。超音波付与ユニット621は、その上下及び側面の一部に開口を有し、例えば4フッ化テフロン(登録商標)(poly tetra fuluoroethylene)等のフッ素樹脂からなる胴部641と、胴部641の側面の開口647に固設された例えば石英からなる振動板643と、振動板643の胴部641に対して外側に固設された例えば圧電振動子からなる振動子645を有する。
【0124】
胴部641の図19における下側に設けられた開口651は、トルエン供給部631に配管633を介して管路接続している供給管208と、胴部641の図19における上側に設けられた開口649は吐出ノズル209と管路接続している供給管208とそれぞれ管路接続している。従って、トルエン供給部631から配管633を介して供給管208に供給されたトルエンは、開口651から胴部641の内部を通り、開口649から吐出ノズル209へと流れる。
【0125】
振動子645は配線623を介して超音波発振器625に電気的に接続されている。また、超音波発振器625は制御ユニット971と電気的に接続されている。そして、制御ユニット971から超音波付与手段61への動作指令により、超音波発振器625からパルス信号が配線623を介して振動子645に出力されると、振動子645が超音波振動し、振動板643を超音波振動させ、胴部641の中に充満しているトルエンに超音波振動を付与する。
【0126】
次に、第二実施形態における凝固手段35について図20を用いて説明する。図20は凝固手段35の構成を示す模式図である。
【0127】
ノズル駆動機構351は第一実施形態におけるノズル駆動機構531と同様の機構を有する。すなわち、吐出ノズル359をスキャン駆動するための駆動源として、処理カップ13の周方向外側に旋回モータ353が設けられている。この旋回モータ353には旋回軸355が接続され、この旋回軸355にはアーム357が水平方向に延びるように接続されており、このアーム357の先端に吐出ノズル359が取り付けられている。また、旋回モータ353は制御ユニット971に電気的に接続されている。そして、制御ユニット971からの動作指令に応じて旋回モータ353が駆動されると、吐出ノズル359が旋回軸355回りに基板Wの中心付近上空の凍結開始位置と基板Wの外縁付近上空の凍結終了位置、及び処理カップ13の周方向外側に外れている位置である退避位置の間を揺動することとなる。
【0128】
ノズル駆動機構351の吐出ノズル359は配管365を介して、図示しない気体の窒素ガスを貯留する窒素ガスタンク、窒素ガスを圧送するポンプ、窒素ガスの流量を調整する流量調整弁、液体窒素を貯留する液体窒素タンク及び液体窒素タンクの中の液体窒素に浸漬された熱交換器を有する凍結用窒素ガス供給部363に管路接続されている。窒素ガスタンクはポンプと流量調整弁を介して熱交換器の流入口に管路接続され、熱交換器の流出口は配管365の一端と管路接続されている。尚、凍結用窒素ガス供給部363のポンプは基板処理装置92が起動した時点から常時動作している。
【0129】
また、凍結用窒素ガス供給部363は制御ユニット971に電気的に接続されている。そして、制御ユニット971から冷媒供給部361への動作指令により、流量調整弁を所定流量となるように開放し、洗浄液としてのDIWの凝固点(0度℃(摂氏))よりも低温である温度、例えば摂氏−(マイナス)20℃(摂氏)の窒素ガスを、配管365を介して吐出ノズル359から基板表面Wfに供給する。
【0130】
尚、凍結用窒素ガス供給部363から供給される冷媒は、窒素ガスに限らず、乾燥空気、酸素ガス、アルゴンガス等の他の気体を使用することも可能である。また、冷媒を冷却する手段としては、液体窒素に限らず、液体ヘリウム等の低温の液体を使用することが可能であり、またペルチェ素子を用いて電気的に冷却することも可能である。
【0131】
次に、上記のように構成された基板処理装置92における洗浄処理動作について説明する。この第二実施形態においても第一実施形態と同様に基板Wを処理ユニット911へ搬入する基板搬入工程と、基板表面Wf上に洗浄液であるDIWを供給する洗浄液供給工程が行われる。洗浄液供給工程により、基板表面Wf全体に洗浄液としてのDIWの液膜が形成された後、制御ユニット971から洗浄液供給手段21への動作指示により、開閉弁215が閉成する。
【0132】
次に、超音波付与・凝固処理について図21を用いて説明する。制御ユニット971からの動作指令により、基板回転手段12が基板保持手段11の回転を例えば100rpmまで加速し、該回転数による回転が継続される。また、制御ユニット971から雰囲気遮断手段15への動作指令により、遮断部材昇降機構157が遮断部材151を退避位置へ移動する。遮断部材151が退避位置へ移動した後、制御ユニット971から凝固手段35への動作指示により、吐出ノズル359が凍結開始位置へ移動する。
【0133】
その後、制御ユニット971から超音波付与手段61への動作指示により、媒介液供給部553の開閉弁635が開成し、トルエン供給部631から媒介液としてのトルエンが、配管633と供給管208を介して吐出ノズル209から基板裏面Wbに供給される。ここで、トルエンは、基板を介して基板表面Wfに形成されている洗浄液としてのDIWの液膜の温度を上昇させないよう例えば1度℃(摂氏)に温度調節される。
【0134】
また、制御ユニット971から超音波付与手段611への動作指示により、超音波発振器625がパルス信号の発振を開始する。これにより振動子645が超音波振動し、振動板643を振動させ、超音波付与ユニット621の胴部641の中を流れるトルエンに対し超音波振動が付与される。これにより、超音波振動を付与されたトルエンが基板裏面Wbに供給され、基板Wを介して基板表面Wf上に形成されたDIWの液膜に超音波振動が付与される(S201)。
【0135】
この、基板裏面Wbに洗浄液としてのDIWの凝固点より低い凝固点を有する媒介液としてのトルエンを供給する工程が、本発明における「媒介液供給工程」に該当する。また、媒介液供給工程により基板裏面Wbに供給される媒介液としてのトルエンに超音波を付与し、トルエンを介して基板Wに超音波を付与し、更に基板Wを介して洗浄液としてのDIWに超音波を付与する工程が、本発明における「超音波付与工程」に該当する。
【0136】
その後、制御ユニット971から凝固手段35への指示により、凍結用窒素ガス供給部363が凍結用窒素ガスの吐出を開始し、併せてノズル駆動機構351が、吐出ノズル359を凍結開始位置から凍結終了位置へ旋回させる。これにより、基板裏面Wbから超音波を付与されたDIWの液膜に対し、基板Wの中央付近から周縁に向かって凍結用窒素ガスが供給され、DIWの液膜がDIWの凝固体へと相転移する(ステップS202)。この、基板表面Wfに形成された洗浄液としてのDIWの液膜に、洗浄液の凝固点より低く、かつ、媒介液の凝固点より高い温度に調整された凍結用窒素ガスを吐出して,DIWを冷却し、基板表面Wf全面にDIWの凝固体を形成する工程が、本発明における「凝固工程」に該当する。
【0137】
尚、基板裏面Wbに供給される媒介液は、基板表面Wfに形成される洗浄液であるDIWの凝固点より低い凝固点を有することが望ましい。なぜなら、洗浄液より高い凝固点を有する媒介液を使用すると、基板表面のDIWを凝固する時点で裏面に供給される媒介液も凝固することになり、媒介液の気液界面で超音波が反射して洗浄液の液膜に均一に超音波を付与することができなくなるためである。また、媒介液の凝固体が基板裏面Wbとスピンベース113上面の間の空間に滞留し、吐出ノズル209を詰まらせる等の問題も生ずるからである。第二実施形態における媒介液としてのトルエンは洗浄液としてのDIWより凝固点が低いため、媒介液として好ましい。
【0138】
吐出ノズル359の凍結終了位置への旋回が終了し、基板表面Wf全面にDIWの凝固体が形成された時点で、凝固工程が終了する。凝固工程終了後、制御ユニット971から凝固手段35への指示により、凍結用窒素ガス供給部363が凍結用窒素ガスの吐出を停止し、併せてノズル駆動機構351aが吐出ノズル359を退避位置へ移動する。
【0139】
その後、制御ユニット971から雰囲気遮断手段15への指示により、遮断部材昇降機構157が遮断部材151を対向位置へ移動し、第一実施形態と同様にDIWにより基板表面Wf上のDIWの凝固体を解凍除去するリンス工程、高速スピンによる基板表面を乾燥する乾燥工程及び処理後の基板Wを搬出する基板搬出工程が行われ一連の処理が終了する。
【0140】
尚、上記第二実施例において、凝固工程としてDIWの凝固点より低温の凍結用窒素ガスを基板表面Wfに供給することにより行っているが、併せて基板裏面Wbに供給する媒介液としてのトルエンをDIWの凝固点よりも低温にして供給することも可能である。この場合、基板Wの表裏両方から冷却されるため、DIWの凍結に要する時間が短縮される。また、基板表面Wfに凍結用窒素ガスを供給せず、基板裏面Wbに供給する媒介液としてのトルエンをDIWの凝固点よりも低温にして供給することで、トルエンを超音波振動を付与する媒体としての機能と、DIWを凝固させる冷媒としての機能の両方を兼用させることも可能である。これにより、凝固手段35に要する部材を省略することができ、コスト低減に寄与することができる。
【0141】
<変形例>
次に、上記第二実施例の変形例を説明する。この変形例では、上記第二実施例のようにスピンベース113中央の吐出ノズル209から超音波を付与した媒介液を吐出せず、基板Wの周方向外側に超音波付与ノズルを設け、基板Wの周方向外側から基板裏面Wbに向けて、超音波を付与した媒介液を吐出する。
【0142】
図21に超音波付与ノズル661の正面断面図を示す。この超音波付与ノズル661は、その右半部が円筒形で左半部が円錐形を有し、左端面に円形の吐出口665を有する胴部663と、胴部663の右壁面に形成された透孔667の位置に固設された振動板669と、振動板669の胴部663に対して外側に固設された超音波振動子671とを有する。また、胴部663の下方側壁面に形成された透孔673は配管633を介してトルエン供給部631に管路接続されている。尚、胴部663はフッ素樹脂等の耐薬品性を有する素材で形成されている。
【0143】
超音波振動子671はケーブル623を介して超音波発振器625と電気的に接続されており、超音波発振器625からパルス信号が超音波振動子671に出力されると、超音波振動子671が超音波振動し、振動板669を介して胴部663の内部に充満したトルエンに超音波振動が付与される。この超音波が付与されたトルエンを、基板Wの周方向外側に設置された超音波付与ノズル661から基板Wの裏面Wbに向けて吐出し、基板Wを介して基板表面Wf上のDIWの液膜に超音波を付与する可能である。
【0144】
上記第二実施形態および上記第二実施形態の変形例では媒介液としてトルエンを使用したが、洗浄液であるDIWより凝固点が低い液体であれば、他の液体を使用することも可能である。例えば、ヘキサン(化学式:C14。凝固点:−(マイナス)100度℃(摂氏))、ヘプタン(化学式:C16。凝固点:−(マイナス)91℃(摂氏))、オクタン(化学式:C18。凝固点:−(マイナス)56.8℃(摂氏))、ハイドロフルオロエーテル(Hydrofluoroether)を主たる成分とする液(化学式:COCH、化学式:COC、化学式:C13OCH、化学式:CHF−CH(CH)O−CHF、化学式:CHFOCH等。凝固点−(マイナス)38℃(摂氏)以下)などである。尚、これらの液は希釈されていてもよい。
【0145】
<その他>
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記各実施形態では、基板表面Wfに洗浄液としてDIWを供給しているが、洗浄液としてはDIWに限定されるものではなく、純水、超純水や水素水、炭酸水等、更にはSC1等の液体であっても使用することができる。
【符号の説明】
【0146】
5 超音波付与手段
9 基板処理装置
11 基板保持手段
12 基板回転手段
13 処理カップ
15 雰囲気遮断手段
21 洗浄液供給手段
23 リンス手段
51 超音波付与機構
53 媒介液供給機構
91 処理ユニット
97 制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の洗浄液の液膜に対し、超音波を付与する超音波付与工程と、
前記超音波付与工程により超音波が付与されている前記洗浄液を冷却して前記洗浄液の凝固体を生成する凝固工程と、
前記凝固工程により生成された前記凝固体にリンス液を供給して前記凝固体を解凍除去するリンス工程と、
を備えた基板処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記洗浄液の凝固点より低い凝固点を有し、前記洗浄液より比重が小さく、かつ前記洗浄液と互いに混合し難い媒介液を前記基板の表面に供給し、前記洗浄液の液膜の上に前記媒介液の液膜を形成する媒介液供給工程を更に備え、
前記超音波付与工程は、前記媒介液の液膜に超音波を付与し、前記媒介液を介して前記洗浄液に超音波を付与する基板処理方法。
【請求項3】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記基板の裏面に前記洗浄液の凝固点より低い凝固点を有する媒介液を供給する媒介液供給工程を更に備え、
前記超音波付与工程は、前記基板裏面に供給される前記媒介液に超音波を付与し、前記媒介液を介して前記基板に超音波を付与し、更に前記基板を介して前記洗浄液に超音波を付与する基板処理方法。
【請求項4】
請求項2または3のいずれか一項に記載の基板処理方法であって、
前記凝固工程は、前記洗浄液を、前記洗浄液の凝固点より低く、かつ、前記媒介液の凝固点より高い温度に冷却する工程である基板処理方法。
【請求項5】
請求項3に記載の基板処理方法であって、
前記凝固工程は、前記基板裏面に供給する前記媒介液を前記洗浄液の凝固点より低く、かつ、前記媒介液の凝固点より高い温度として供給する基板処理方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の基板処理方法であって、
前記基板表面に前記洗浄液を供給する洗浄液供給工程を更に備える基板処理方法。
【請求項7】
表面に洗浄液の液膜が形成された基板を保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持されている前記基板表面の前記洗浄液の液膜に超音波を付与する超音波付与手段と、
前記超音波付与手段により超音波が付与されている前記洗浄液の液膜を冷却して前記基板表面に洗浄液の凝固体を生成する凝固手段と、
前記凝固手段により生成された前記凝固体にリンス液を供給して前記凝固体を解凍除去するリンス液供給手段と、
を備える基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−18962(P2012−18962A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153753(P2010−153753)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】