説明

成膜方法及び成膜装置

【課題】低誘電率膜への付着性が高く、低誘電率膜中への銅の拡散を効果的に防止できるバリア膜の成膜方法を提供する。
【解決手段】 成膜方法は、成膜装置100の処理容器1内に、絶縁膜が設けられたウエハWを配置する工程と、処理容器1内にTEOSなどのシリコン原子を含む化合物のガスと水蒸気などのOH基供与性ガスを供給し、絶縁膜の表面にSi−OH基を形成させる表面改質工程と、処理容器1内にマンガン含有材料を含む成膜ガスを供給し、CVD法によりSi−OH基が形成された絶縁膜の表面にマンガン含有膜を成膜する成膜工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜方法及びこの方法に利用可能な成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の高集積化、チップサイズの小型化に伴い、配線の微細化と多層化配線化が進展している。多層配線構造を有する半導体素子において、配線を伝搬する信号の遅延は、配線抵抗Rと配線間容量Cとの積(RC積)に比例する。従って、信号の伝搬速度を改善するためには、配線の低抵抗化と、配線間容量の低減を図ることが有効と考えられている。
【0003】
配線抵抗Rを低減するために、配線材料として、抵抗率の低い銅を用いる技術が実用化されている。銅配線の形成は、最近ではダマシン法により行われることが一般的になっている。ダマシン法によって銅配線を形成する際には、絶縁膜中への銅原子の拡散を防止したり、絶縁膜から銅配線への酸素の拡散を防止したりするために、配線溝やビアホールの内面をバリア膜で被覆することが行われている。このバリア膜の材料として、タンタルやタングステン等の高融点金属が用いられているが、これらの高融点金属は、銅に比べて抵抗率が高い。配線の微細化が進むと、銅配線に対してバリア膜の占める割合が高くなり、バリア膜が配線抵抗を上昇させる大きな要因になる。従って、微細な多層配線構造では、配線抵抗の上昇を抑制するために、バリア膜を極力薄くすることが望まれている。このような観点から、近年、バリア膜として、マンガン酸化物などのマンガン含有バリア膜が注目されている。マンガン含有バリア膜は、絶縁膜の表面にマンガンやマンガン合金をスパッタリング等の方法で薄膜形成した後に、アニール処理することにより自己整合的に形成できるため、バリア膜の膜厚を薄膜化できるメリットがある(例えば、特許文献1)。また、マンガン含有バリア膜を熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成する技術も提案されている(例えば、特許文献2)。
【0004】
一方、配線間容量Cは、層間絶縁膜を低誘電率材料によって形成することにより小さくすることができる。また、低誘電率材料を使用することで、配線間のクロストークも防止できる。このような観点から、層間絶縁膜として、低誘電率膜(Low−k膜)が使用されている。また、低誘電率膜中に空孔を分散させて寄生容量をさらに抑えるポーラス低誘電率膜(ポーラスLow−k膜)の開発も進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−277390号公報
【特許文献2】特開2009−16782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マンガン含有バリア膜をCVD法によって成膜する場合、低誘電率膜上にマンガン含有バリア膜が付着し難いため、バリア機能を発揮させる上で十分な厚みで成膜することが難しいという課題があった。また、ポーラス低誘電率膜上にマンガン含有バリア膜をCVD法で成膜すると、ポーラス低誘電率膜の細孔にマンガンが進入し、進入したマンガンによって銅配線からの銅原子の拡散が誘発される懸念もある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、低誘電率膜への付着性が高く、低誘電率膜中への銅の拡散を効果的に防止できるバリア膜の成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点の成膜方法は、成膜装置の処理容器内に、絶縁膜が設けられた被処理体を配置する工程と、
前記処理容器内に、シリコン原子を含む化合物のガスとOH基供与性ガス、又はシリコン原子及びOH基を有する化合物のガスを供給し、前記絶縁膜の表面にSi−OH基を形成させる表面改質工程と、
前記処理容器内にマンガン含有材料を含む成膜ガスを供給し、CVD法により前記Si−OH基が形成された絶縁膜の表面にマンガン含有膜を成膜する成膜工程と、
を備えている。
【0009】
本発明の第1の観点の成膜方法において、前記表面改質工程では、前記シリコン原子を含む化合物のガスと、前記OH基供与性ガスを、前記処理容器内に同時に供給してもよい。
【0010】
また、本発明の第1の観点の成膜方法において、前記表面改質工程では、前記シリコン原子を含む化合物のガスと、前記OH基供与性ガスを、前記処理容器内に交互に供給してもよい。
【0011】
また、本発明の第1の観点の成膜方法は、前記表面改質工程と、前記成膜工程と、を交互に繰り返してもよい。
【0012】
本発明の第2の観点の成膜方法は、成膜装置の処理容器内に、絶縁膜が設けられた被処理体を配置する工程と、
前記処理容器内に、シリコン原子を含む化合物のガスとOH基供与性ガスとマンガン含有材料を含む成膜ガス、又はシリコン原子及びOH基を有する化合物のガスとマンガン含有材料を含む成膜ガス、を同時に供給し、CVD法により前記絶縁膜の表面にマンガン含有膜を成膜する成膜工程と、
を備えている。
【0013】
本発明の第1及び第2の観点の成膜方法において、前記絶縁膜が、所定の凹凸パターンが形成された低誘電率膜であってもよい。
【0014】
本発明の第1及び第2の観点の成膜方法は、前記凹凸パターンを有する低誘電率膜の開口部の側壁に形成された前記マンガン含有膜を残し、前記開口部の底壁に形成された前記マンガン含有膜を除去する工程をさらに有してもよい。
【0015】
本発明の第1及び第2の観点の成膜方法において、前記シリコン原子を含む化合物のガスが、TEOS(テトラエトキシシラン)、テトラメトキシシラン、テトラ-i-プロポキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-i-ブトキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン、トリス(tert-ブトキシ)シラノール、トリス(tert-ペントキシ)シラノール、トリス(イソプロポキシ)シラノール、ビス(tert-ブトキシ)シランジオール、テトラ(tert-ブトキシ)シラン、モノシラン、ジシラン、トリシラン及びテトラシランよりなる群から選ばれる1種以上を含むガスであってもよい。
【0016】
本発明の第1及び第2の観点の成膜方法において、前記OH基供与性ガスが、水蒸気、アルコールであってもよい。アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール等が挙げられる。
【0017】
本発明の第1及び第2の観点の成膜方法において、前記シリコン原子及びOH基を有する化合物のガスが、トリス(tert-ブトキシ)シラノール、トリス(tert-ペントキシ)シラノール、トリス(イソプロポキシ)シラノール及びビス(tert-ブトキシ)シランジオールよりなる群から選ばれる1種以上を含むガスであってもよい。
【0018】
本発明の第3の観点の成膜方法は、被処理体上に設けられた所定の凹凸パターンを有する低誘電率膜の表面に、二酸化珪素膜を成膜する第1の成膜工程と、
マンガン含有材料を含む成膜ガスを用い、CVD法により前記二酸化珪素膜の表面にマンガン含有膜を成膜する第2の成膜工程と、
を備えている。
【0019】
本発明の第3の観点の成膜方法において、前記低誘電率膜が、ポーラス低誘電率膜であってもよい。
【0020】
本発明の第3の観点の成膜方法において、前記第1の成膜工程では、シリコン原子を含む成膜ガスを用いてプラズマCVD法又はMLD法により二酸化珪素膜の成膜を行なうものであってもよい。
【0021】
本発明の第3の観点の成膜方法は、前記第1の成膜工程の後、前記第2の成膜工程の前に、前記二酸化珪素膜を大気に曝露して吸湿させる工程をさらに有してもよい。
【0022】
本発明の第3の観点の成膜方法は、前記第1の成膜工程の後、前記第2の成膜工程の前に、前記二酸化珪素膜に水蒸気を接触させて吸湿させる工程をさらに有してもよい。
【0023】
本発明の第3の観点の成膜方法は、前記所定の凹凸パターンを有する低誘電率膜の開口部の側壁に形成された前記マンガン含有膜及び前記二酸化珪素膜を残し、前記開口部の底壁に形成された前記マンガン含有膜及び前記二酸化珪素膜を除去する工程をさらに有してもよい。
【0024】
本発明の第1から第3の観点の成膜方法は、前記マンガン含有材料として、シクロペンタジエニル系前駆体を用いてもよい。この場合、前記シクロペンタジエニル系前駆体が、Mn(C、Mn(CH、Mn(C、Mn(C、(CH)Mn(CO)、Mn(C及びMn((CHよりなる群から選ばれる1種以上であってもよい。
【0025】
本発明の第4の観点の成膜方法は、真空引き可能な処理容器と、
前記処理容器内に設けられた、被処理体を載置する載置台と、
前記載置台に載置された被処理体を所定の温度に加熱するヒーターと、
前記処理容器内へ、シリコン原子を含む化合物のガスとOH基供与性ガスとマンガン含有材料を含む成膜ガスとを、をそれぞれ別々に、又は2種以上を同時に供給するガス供給装置と、
を備えている。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、マンガン含有膜の付着性を改善し、開口部内においても良好なステップカバレッジで均一な厚さのマンガン含有膜を形成できる。また、マンガン含有膜の成膜レートも向上するので、バリア膜としてのマンガン含有膜を所望の膜厚に形成できる。本発明方法により成膜されたマンガン含有膜により、低誘電率膜中への銅などの金属の拡散を抑制できる。従って、低誘電率膜を層間絶縁膜として用いる多層配線構造体の信頼性を確保しながら、配線抵抗を低減し、微細化への対応を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明方法の実施に利用可能な成膜装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1の成膜装置の制御系統を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態の成膜方法の工程説明に供するパターン形成された絶縁膜を有するウエハ表面の要部断面図である。
【図4】図3に続く工程図であり、表面改質処理した状態を示すウエハ表面の要部断面図である。
【図5】図4に続く工程図であり、マンガン含有膜を成膜した状態を示すウエハ表面の要部断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態の成膜方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第1の実施の形態の成膜方法の手順の別の例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施の形態の成膜方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第3の実施の形態の成膜方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第3の実施の形態の成膜方法の工程説明に供するパターン形成された絶縁膜を有するウエハ表面の要部断面図である。
【図11】図10に続く工程図であり、SiO膜を成膜した状態を示すウエハ表面の要部断面図である。
【図12】図11に続く工程図であり、マンガン含有膜を成膜した状態を示すウエハ表面の要部断面図である。
【図13】第3の成膜方法の実施に利用可能な成膜装置の概略構成を示す断面図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態の成膜方法の第1の変形例の手順を示すフローチャートである。
【図15】本発明の第3の実施の形態の成膜方法の第2の変形例の手順を示すフローチャートである。
【図16A】本発明の第3の実施の形態の成膜方法の第3の変形例に使用可能な成膜装置の概要を模式的に示す縦断面図である。
【図16B】図16Aの成膜装置の概要を模式的に示す横断面図である。
【図17】MLD法によりSiO膜を成膜する場合のタイミングチャートである。
【図18】パンチスルー工程前のウエハ表面の要部断面図である。
【図19】パンチスルー工程後のウエハ表面の要部断面図である。
【図20】本発明の第1の実施の形態の成膜方法のダマシンプロセスへ適用した工程説明に供するウエハ表面の断面図である。
【図21】図20に続く工程図であり、表面改質処理した状態を示すウエハ表面の要部断面図である。
【図22】図21に続く工程図であり、マンガン含有膜を成膜した状態を示すウエハ表面の要部断面図である。
【図23】図22に続く工程図であり、Cu膜を埋め込んだ状態を示すウエハ表面の要部断面図である。
【図24】本発明の第3の実施の形態の成膜方法のダマシンプロセスへ適用した工程説明に供するウエハ表面の断面図である。
【図25】図24に続く工程図であり、SiO膜を成膜した状態を示すウエハ表面の要部断面図である。
【図26】図25に続く工程図であり、マンガン含有膜を成膜した状態を示すウエハ表面の要部断面図である。
【図27】図26に続く工程図であり、Cu膜を埋め込んだ状態を示すウエハ表面の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、適宜図面を参照して詳細に説明する。まず、本発明の成膜方法の実施に適した成膜装置の構成について説明する。図1は、本発明の成膜方法に使用可能な成膜装置100の概略構成例を示している。この成膜装置100は、CVD装置として構成されている。成膜装置100では、低誘電率膜等の絶縁膜上に、マンガン含有バリア膜を形成する成膜処理を行なうことができる。
【0029】
成膜装置100は、気密に構成された略円筒状の処理容器1を有している。処理容器1は、例えばアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムなどの材質で形成されている。処理容器1の中には被処理体である半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という)Wを水平に支持する載置台であるステージ3が配備されている。ステージ3は、円筒状の支持部材5により支持されている。ステージ3には、ウエハWを加熱するため、加熱手段としてのヒーター6が埋設されている。ヒーター6は、ヒーター電源7から給電されることによりウエハWを所定の温度に加熱する抵抗加熱ヒーターである。また、ステージ3には、温度計測手段としての熱電対(TC)8が配備されており、ステージ3の温度をリアルタイムで計測できるようになっている。なお、ウエハWの加熱温度や処理温度は、特に断りのない限り、ステージ3の温度を意味する。ウエハWを加熱するための加熱手段としては、抵抗加熱ヒーターに限らず、例えばランプ加熱ヒーターでもよい。
【0030】
また、図示は省略するが、ステージ3には、ウエハWを支持して昇降させるための複数のリフトピンがステージ3の基板載置面Sに対して突没可能に設けられている。これらのリフトピンは任意の昇降機構により上下に変位し、上昇位置で搬送装置(図示省略)との間でウエハWの受け渡しを行うように構成されている。
【0031】
処理容器1の天板1aには、シャワーヘッド11が設けられている。このシャワーヘッド11は、内部にガス拡散空間11a,11bが設けられている。シャワーヘッド11の下面には、多数のガス吐出孔13a,13bが形成されている。ガス拡散空間11aはガス吐出孔13aに、ガス拡散空間11bはガス吐出孔13bに、それぞれ連通している。シャワーヘッド11の中央部には、ガス拡散空間11a,11bにそれぞれ連通するガス供給配管15ab,15cが接続されている。ガス供給配管15abは、ガス供給配管15a,15bの二つが合流したものである。ガス供給配管15a,15b,15cの途中には、それぞれMFC(マスフローコントローラ)17a,17b,17cとバルブ18a,18b,18cが設けられている。一方の分岐管であるガス供給配管15aはガス供給源19aに、他方の分岐管であるガス供給配管15bはガス供給源19bに、それぞれ接続されている。また、ガス供給配管15cは、ガス供給源19cに接続されている。
【0032】
ガス供給源19aは、表面改質ガスとしてのシリコン原子を含む化合物のガス(Si含有化合物ガス)を供給する。ガス供給源19bは、表面改質ガスとしてのOH基の供与源となるOH基供与性ガスを供給する。表面改質は、ウエハWに設けられた絶縁膜の表面にSi−OH基を形成させるために行なわれる。
【0033】
Si含有化合物ガスとしては、例えば、TEOS(テトラエトキシシラン)、トリス(tert-ブトキシ)シラノール、テトラメトキシシラン、テトラ-i-プロポキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-i-ブトキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン、トリス(tert-ペントキシ)シラノール、トリス(イソプロポキシ)シラノール、ビス(tert-ブトキシ)シランジオール、テトラ(tert-ブトキシ)シラン、モノシラン、ジシラン、トリシラン、テトラシラン等を用いることができる。これらの中でも、TEOSに代表されるシリコンアルコキシドは、水との反応で加水分解されてSi−OH基を生成するため、本発明においてSi含有化合物として好ましく用いることができる。また、Si含有化合物の加水分解を促すため、例えば塩酸、硝酸、硫酸等の酸を少量添加して用いることもできる。これらの酸は、水溶液の状態で供給しても良い。あるいは、塩化水素、二酸化窒素、三酸化硫黄等の形で供給し、水と反応させて酸を生成するようにしても良い。
【0034】
また、OH基供与性ガスとしては、例えば水蒸気、アルコールを用いることができる。アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール等が挙げられる。
【0035】
図1では、ガス供給源19aのSi含有化合物ガスとしてTEOSを、ガス供給源19bのOH基供与性ガスとして水蒸気(HO)を用いる場合を、それぞれ例示している。
【0036】
なお、上記トリス(tert-ブトキシ)シラノール、トリス(tert-ペントキシ)シラノール、トリス(イソプロポキシ)シラノール、ビス(tert-ブトキシ)シランジオールは、分子内にシリコン原子及びOH基を有する化合物であり、気化することによって「シリコン原子及びOH基を有する化合物のガス」として、単独で用いることができる。
【0037】
ガス供給源19cからは、マンガン含有材料を含む成膜ガスが処理容器1内へ供給される。なお、ガス供給源は、図示のものに限らず、例えば成膜ガス以外に、処理容器1内をクリーニングするためのクリーニングガス、処理容器1内の雰囲気置換をするためのパージガスなども同様の機構で供給することができる。また、OH基供与性ガス以外に、酸素原子を含む酸化性ガスを成膜ガスとして供給することもできる。このような酸化性ガスとしては、O、O、NO等を用いることができる。
【0038】
また、マンガン含有材料のガスとしては、例えば、マンガン含有の有機金属化合物や金属錯体などの前駆体をガス化したものを用いることができる。前駆体となるマンガン含有の有機金属化合物としては、例えば、Mn(C、Mn(CH、Mn(C、Mn(C、(CH)Mn(CO)、Mn(C、CHMn(CO)、Mn(C1119、Mn(C11)、Mn(C、Mn(C1119、Mn(C、Mn(CHF、Mn((CH等を使用できる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記前駆体の中でも、シクロペンタジエニル系の前駆体であるMn(C、Mn(CH、Mn(C、Mn(C、(CH)Mn(CO)、Mn(C、Mn((CH等が特に好ましい。
【0039】
本実施の形態において、ガス供給源19aからは、表面改質用のSi含有化合物ガスが、ガス供給配管15a及び15abを介して、シャワーヘッド11のガス拡散空間11aに供給される。ガス供給源19bからは、表面改質用のOH基供与性ガスが、ガス供給配管15b及び15abを介して、シャワーヘッド11のガス拡散空間11aに供給される。Si含有化合物ガスとOH基供与性ガスは、ガス供給配管15abで混合されてシャワーヘッド11に供給される。ガス供給源19cからは、成膜原料であるマンガン含有材料のガスが、ガス供給配管15cを介して、シャワーヘッド11のガス拡散空間11bに供給される。ガス拡散空間11a,11bに導入されたガスは、それぞれガス吐出孔13a,13bから、処理容器1内の処理空間に噴射され、該処理空間ですべてのガスが混合される。なお、ガスの種類に応じて、すべてのガスをガス供給配管の途中で混合することもできるし、各ガスを個別に処理容器1内まで導入することもできる。
【0040】
Si含有化合物、OH基供与性ガス、及びマンガン含有材料は、必要に応じて、例えば流量制御されたAr、He、Ne等の希ガスやN等の不活性ガスでバブリングすることによりガス化して供給することができる。また、バブリングの代わりに、気化器を設けてSi含有化合物やOH基供与性ガス、マンガン含有材料をガス化することもできる。例えば、室温で液体である原料を気化器で気化させる方法や、室温で固体や液体である原料を溶媒に溶かすか、混和して溶媒溶液とし、その溶液を気化器で気化させる方式を採用することができる。溶媒としては、Si含有化合物やマンガン含有材料を分解することなく溶解できる溶媒であればよく、例えば、ヘキサン、ヘキサジエン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、トルエン、メシチレン、キシレン、ジエチルエーテル、メチルイソブチルエーテル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン等を成膜原料の種類に応じて選択できる。また、Si含有化合物やOH基供与性ガス、マンガン含有材料の蒸気圧が低い場合には、ガス供給源19a,19b,19cを図示しないヒーター等によって加熱することにより、原料をガス化して供給することができる。さらに、一旦ガス化したSi含有化合物やOH基供与性ガス、マンガン含有材料が再び液化することを防止すべく、ガス供給源19a,19b,19cからシャワーヘッド11までを接続するガス供給配管15a,15b,15ab,15cを含むガス供給経路を、ヒーター(図示省略)によって加熱することも可能である。
【0041】
処理容器1の側壁1bには、この処理容器1内に対してウエハWを搬入、搬出するための開口25が設けられており、さらに、開口25を開閉するためのゲートバルブ26が設けられている。
【0042】
処理容器1の底壁1cには、排気容器30が連結されている。排気容器30はフランジ部30aを有しており、このフランジ部30aによって底壁1cに接合されている。この排気容器30の側部には排気口31が形成されている。この排気口31には排気管33を介して排気装置35が接続されている。排気装置35は、例えば図示しない圧力調整弁や真空ポンプなどを備えており、処理容器1内の排気を行って処理容器1内を真空引きできるように構成されている。
【0043】
処理容器1を構成する各部材の接合部分には、該接合部分の気密性を確保するために、シール部材としてのOリングが配備されている。例えば図1では、代表的に、天板1aと側壁1bとの接合部分に配備した環状のOリング41、及び、底壁1cと排気容器30のフランジ部30aとの接合部分に配備した環状のOリング45を図示している。なお、他の部位にもOリングを配備することが可能であるが、ここでは図示及び説明を省略する。
【0044】
成膜装置100を構成する各エンドデバイス(例えば、ヒーター電源7、熱電対8、MFC17a,17b,17c、排気装置35など)は、制御部70に接続されて制御される構成となっている。成膜装置100における制御系統の構成例を図2に示した。制御部70は、CPUを備えたコンピュータであるコントローラ71と、このコントローラ71に接続されたユーザーインターフェース72および記憶部73を備えている。ユーザーインターフェース72は、工程管理者が成膜装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードやタッチパネル、成膜装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等を有している。記憶部73には、成膜装置100で実行される各種処理をコントローラ71の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウェア)や処理条件データ等が記録されたレシピが保存されている。そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース72からの指示等にて任意の制御プログラムやレシピを記憶部73から呼び出してコントローラ71に実行させることで、コントローラ71の制御下で、成膜装置100の処理容器1内で所望の処理が行われる。
【0045】
なお、前記制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体74に格納された状態のものを記憶部73にインストールすることによって利用できる。コンピュータ読み取り可能な記録媒体74としては、特に制限はないが、例えばCD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリ、DVDなどを使用できる。また、前記レシピは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0046】
以上のような構成の成膜装置100では、制御部70の制御に基づき、CVD法によりマンガン含有バリア膜の成膜処理が行われる。成膜処理の手順の一例を挙げると、まず、ゲートバルブ26を開放した状態で、開口25からウエハWを処理容器1内に搬入し、ステージ3の図示しないリフトピンに受け渡す。そして、リフトピンを下降させてウエハWをステージ3に載置する。次に、ゲートバルブ26を閉じ、排気装置35を作動させて処理容器1内を真空にする。また、ヒーター6によりウエハWを所定温度に加熱する。そして、シャワーヘッド11のガス吐出孔13aからウエハWへ向けて表面改質ガスを供給する。次に、シャワーヘッド11のガス吐出孔13bから、ウエハWへ向けて成膜ガスを供給する。このようにして、ウエハWの表面にマンガン含有バリア膜を成膜することができる。
【0047】
なお、表面改質ガスと、成膜ガスは、同時に供給してもよいし、交互に供給してもよい。ガス供給のタイミングについては、後に詳しく説明する。
【0048】
次に、表面改質処理における好ましい条件について説明する。
Si含有化合物ガスの流量は、処理容器1やウエハWの大きさにより適宜変更できるので特に限定されるものではないが、例えば、0.1sccm(mL/min)以上1000sccm(mL/min)以下の範囲内であることが好ましい。
【0049】
また、OH基供与性ガスの流量は、処理容器1やウエハWの大きさにより適宜変更できるので特に限定されるものではないが、例えば、0.1sccm(mL/min)以上1000sccm(mL/min)以下の範囲内であることが好ましい。
【0050】
また、処理圧力は、圧力制御の容易性の観点から、1Pa以上10000Pa以下の範囲内が好ましく、10Pa以上1000Pa以下の範囲内がより好ましい。
【0051】
また、ウエハWの加熱温度は、ステージ3の温度として、例えば0℃以上500℃以下の範囲内とすることが好ましく、20℃以上400℃以下の範囲内に設定することがより好ましい。
【0052】
次に、成膜処理における好ましい条件について説明する。
【0053】
マンガン含有材料のガスの流量は、処理容器1やウエハWの大きさにより適宜変更できるので特に限定されるものではないが、例えば、0.1sccm(mL/min)以上1000sccm(mL/min)以下の範囲内であることが好ましい。
【0054】
また、処理圧力は、圧力制御の容易性の観点から、1Pa以上10000Pa以下の範囲内が好ましく、10Pa以上1000Pa以下の範囲内がより好ましい。
【0055】
また、ウエハWの加熱温度は、ステージ3の温度として、例えば0℃以上500℃以下の範囲内とすることが好ましく、20℃以上400℃以下の範囲内に設定することがより好ましい。
【0056】
以上の条件は、制御部70の記憶部73にレシピとして保存されている。そして、コントローラ71がそのレシピを読み出して成膜装置100の各エンドデバイスへ制御信号を送出することにより、所望の条件で成膜処理が行われる。
【0057】
次に、第1〜3の実施の形態を例示することにより、成膜方法の具体的な内容について説明する。
【0058】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態の成膜方法は、例えば、成膜装置の処理容器内に、絶縁膜が設けられた被処理体を配置する工程と、Si含有化合物ガスとOH基供与性ガスを処理容器内に供給し、絶縁膜の表面にSi−OH基を形成させる表面改質工程と、処理容器内にマンガン含有材料を含む成膜ガスを供給し、CVD法により前記Si−OH基が形成された絶縁膜の表面にマンガン含有膜を成膜する成膜工程と、を行うことによって実施される。図3〜図5は、本実施の形態の成膜方法の主要な工程を示す工程図である。
【0059】
<処理容器内に被処理体を配置する工程>
この工程では、成膜装置100の処理容器1内に、被処理体として、絶縁膜が設けられたウエハWを配置する。具体的には、成膜装置100の開口25からウエハWを処理容器1内に搬入し、ステージ3の図示しないリフトピンに受け渡す。そして、リフトピンを下降させてウエハWをステージ3に載置する。
【0060】
ここで、図3に示したように、ウエハW上には、下地膜80と、その上に積層された絶縁膜81と、が形成されている。絶縁膜81には、所定の凹凸パターンが形成されており、開口部(トレンチなどの凹部や貫通孔などを意味する)83を有している。なお、開口部83は一つのみ図示しているが複数でもよい。開口部83は、例えば多層配線構造の配線溝やビアホールとなる部分である。絶縁膜81としては、例えばSiCOH、SiOF、CFy(yは正の数を意味する)、BSG、HSQ、多孔質シリカ、SiOC、MSQ、ポーラスMSQ、ポーラスSiCOH等の低誘電率膜を挙げることができる。なお、本明細書において、「低誘電率」とは、例えば比誘電率が3.8以下、好ましくは3.0以下であることを意味する。
【0061】
<表面改質工程>
表面改質工程は、処理容器1内に、Si含有化合物ガスとOH基供与性ガスを供給し、これらのガスを絶縁膜81の表面に接触させる。この処理により、絶縁膜81の表面には、図4に示したようにSi−OH基85が形成される。すなわち、Si含有化合物ガスとOH基供与性ガスが、処理容器1内で解離し、さらに絶縁膜81を構成する低誘電率材料と反応することにより、絶縁膜81の表面に多数のSi−OH基85が形成される。例えば、Si含有化合物ガスとしてTEOS、OH基供与性ガスとして水蒸気を用いる組み合わせでは、TEOSが水蒸気によって加水分解され、生成した多数のSi−OH基85が、絶縁膜81表面に導入される。このSi−OH基85の導入により、絶縁膜81の表面が親水性に改質される。その結果、後の成膜工程でマンガン含有膜の付着性を高め、CVDにおける堆積効率を向上させてバリア機能を発揮させる上で十分な厚みでマンガン含有膜を成膜できる。
【0062】
後述するように、Si含有化合物ガスとOH基供与性ガスは、それぞれ別々のタイミングで成膜装置100の処理容器1内に導入してもよいし、同時に処理容器1内に導入してもよい。また、Si含有化合物ガスとOH基供与性ガスを混合ガスとして処理容器1内に導入してもよい。さらに、Si含有化合物ガスとOH基供与性ガスを処理容器1内に交互に導入してもよい。
【0063】
<成膜工程>
成膜工程は、図5に示したように、Si−OH基85が形成された絶縁膜81の表面にCVD法によりマンガン含有膜87を成膜する工程である。マンガン含有膜87は、上記マンガン含有材料を前駆体として使用することにより成膜できる。マンガン含有膜87は、開口部83にCu配線やCuプラグが充填された後に、絶縁膜81中へのCuの拡散を抑制するバリア膜として機能するものである。マンガン含有膜87に含まれるMnは、主に酸化物MnOx(ここで、xは化学量論的にとり得る任意の数を意味する)の状態で存在する。MnOxには、Mnの価数によって、例えばMnO、Mn、Mn、MnO等が存在する。マンガン含有膜87の膜厚としては、バリア性維持とRC積上昇抑制の観点から、例えば0.5〜10nmが好ましく、1〜2nmがより好ましい。
【0064】
本実施の形態の成膜方法は、Si含有化合物ガスとOH基供与性ガスの導入のタイミングにより、いくつかのバリエーションが存在する。ここでは、その代表的な手順について、図6及び図7を参照しながら説明する。なお、代表的に、Si含有化合物ガスとしてTEOS、OH基供与性ガスとして水蒸気を用いる場合を例に挙げる。
【0065】
図6は、TEOSと水蒸気を同時に処理容器1内に供給する手順の一例を示すフローチャートである。STEP1は、上記のとおり処理容器1内に被処理体であるウエハWを配置する工程である。
【0066】
STEP2は、表面改質工程であり、処理容器1内にTEOSと水蒸気を同時に供給する。具体的には、成膜装置100のガス供給源19aから、TEOSをガス供給配管15a及び15ab、シャワーヘッド11のガス拡散空間11aを介して、処理容器1内に供給する。また、ガス供給源19bから、水蒸気をガス供給配管15b及び15ab、シャワーヘッド11のガス拡散空間11aを介して、処理容器1内に導入する。図1では、TEOSと水蒸気をガス供給配管15abで合流させて混合状態で供給する構成となっているが、それぞれ別々の配管を介して処理容器1内へ導く構成としてもよい。このSTEP2の処理によって、絶縁膜81の表面にSi−OH基85が形成される。
【0067】
STEP3は、成膜工程であり、CVD法により、Si−OH基85が形成された絶縁膜81の表面にマンガン含有膜87を形成する。具体的には、ガス供給源19cから、成膜原料であるマンガン含有材料のガスを、ガス供給配管15c、シャワーヘッド11のガス拡散空間11bを介して処理容器1内に導入する。そして、CVD法により、絶縁膜81の表面を覆うように、マンガン含有膜87の薄膜を形成する。表面改質により絶縁膜81の表面には、Si−OH基85が形成されているので、マンガン含有膜87が定着しやすくなっており、開口部83の内部にも均一な厚みでマンガン含有膜87を形成できる。
【0068】
上記STEP2とSTEP3の工程は、交互に繰り返して行なうことができる。すなわち、マンガン含有膜87を一度のCVD工程で成膜するのではなく、複数回に分けて成膜を実施し、その間にSTEP2の表面改質工程を実施する。このように、表面改質工程(STEP2)と成膜工程(STEP3)を交互に繰り返すことによって、マンガン含有膜87が定着しやすいように、絶縁膜81の表面にSi−OH基85が豊富に存在する状態を作り、所望の膜厚でマンガン含有膜87を成膜できる。
【0069】
図7は、TEOSと水蒸気を時間的にずらして処理容器1内に供給する手順の一例を示すフローチャートである。
【0070】
図7におけるSTEP11は、図6のSTEP1と同様に実施できるので、説明を省略する。
【0071】
STEP12は、表面改質工程の一部であり、まず処理容器1内にTEOSを供給する。具体的には、ガス供給源19aから、TEOSをガス供給配管15a及び15ab、シャワーヘッド11のガス拡散空間11aを介して、処理容器1内に供給する。
【0072】
STEP13は、表面改質工程の一部であり、処理容器1内に水蒸気を供給する。具体的には、ガス供給源19bから、水蒸気をガス供給配管15b及び15ab、シャワーヘッド11のガス拡散空間11aを介して、処理容器1内に導入する。以上のSTEP12及び13の処理によって、絶縁膜81の表面にSi−OH基85が形成される。
【0073】
上記STEP12とSTEP13は、順番を逆にしてもよい。すなわち、処理容器1内に先に水蒸気を導入し、次にTEOSを導入してもよい。また、図1の成膜装置100では、STEP12とSTEP13におけるガスの切り替えは、バルブ18a,18bの切り替えによって行なうことができるが、TEOSと水蒸気をそれぞれ別々の配管を介して処理容器1内へ導く構成としてもよい。
【0074】
STEP14は、成膜工程であり、図6のSTEP3と同様に実施できる。また、上記STEP12,13と、STEP14の工程は、交互に繰り返して行なうことができる。すなわち、マンガン含有膜87を一度のCVD工程で成膜するのではなく、複数回に分けて実施し、その間にSTEP12,13の表面改質工程を実施する。このように、表面改質工程(STEP12,13)と成膜工程(STEP14)を交互に繰り返すことによって、マンガン含有膜87が定着しやすいように、絶縁膜81の表面にSi−OH基85が豊富に存在する状態を作り、所望の膜厚でマンガン含有膜87を成膜できる。
【0075】
以上のように、本実施の形態の成膜方法では、マンガン含有膜87を成膜する前に表面改質工程を設けたことによって、マンガン含有膜87の定着性が向上し、絶縁膜81の表面に均一に、かつバリア機能を発揮させる上で十分な厚みで、マンガン含有膜87を成膜できる。また、表面改質工程を実施することによって、従来のバリア膜の形成において大きな課題であったステップカバレッジの問題も解決できる。すなわち、例えば層間絶縁膜としての絶縁膜81に形成された開口部83が、深さに対して開口径が狭い高アスペクト比の開口部83である場合においても、表面改質工程を行なうことによって、開口部83内に均一な膜厚でマンガン含有膜87を形成できる。
【0076】
また、本実施の形態の成膜方法によって成膜されるマンガン含有膜87は、優れたバリア性を有しているので、銅配線からCuが絶縁膜81中へ拡散することを抑制する。従って、十分な厚みでマンガン含有膜87を形成することにより、絶縁膜81中へのCuの拡散を防止し、層間絶縁膜としての信頼性を確保できる。
【0077】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態の成膜方法は、例えば、成膜装置の処理容器内に、絶縁膜が設けられた被処理体を配置する工程と、処理容器内に、Si含有化合物ガスと、OH基供与性ガスと、マンガン含有材料を含む成膜ガスと、を同時に供給し、CVD法により前記絶縁膜の表面にマンガン含有膜を成膜する成膜工程と、とを行なうことによって実施される。本実施の形態は、第1の実施の形態における表面改質工程と成膜工程を区別せずに同時に実施する変形例とも言えるので、以下の説明では、第1の実施の形態の成膜方法との相違点を中心に説明し、第1の実施の形態の成膜方法と同様の内容については説明を省略する。また、適宜図3〜図5も参照する。
【0078】
図8は、本実施の形態の成膜方法の手順の一例を示すフローチャートである。なお、ここでは、Si含有化合物ガスとしてTEOS、OH基供与性ガスとして水蒸気を用いる場合を例に挙げる。
【0079】
まず、図8におけるSTEP21は、図6及び図7のSTEP1,11と同様に実施できるので、説明を省略する。
【0080】
次に、STEP22では、処理容器1内にTEOSと水蒸気とマンガン含有材料の成膜ガスを同時に供給する。つまり、本実施の形態では、絶縁膜81の表面改質と成膜を同時進行させる。具体的には、図1において、ガス供給源19aから、TEOSをガス供給配管15a及び15ab、シャワーヘッド11のガス拡散空間11aを介して、処理容器1内に供給する。また、ガス供給源19bから、水蒸気をガス供給配管15b及び15ab、シャワーヘッド11のガス拡散空間11aを介して、処理容器1内に導入する。さらに、ガス供給源19cから、成膜原料であるマンガン含有材料のガスを、ガス供給配管15c、シャワーヘッド11のガス拡散空間11bを介して処理容器1内に導入する。図1では、TEOSと水蒸気をガス供給配管15abで合流させて混合状態で供給する構成となっているが、それぞれ別々の配管を介して処理容器1内へ導く構成としてもよい。また、TEOSと水蒸気とマンガン含有材料のガスを配管途中で混合する構成としてもよい。なお、マンガン含有材料のガスを供給して処理容器1内でCVD法によってマンガン含有膜87の形成を行っている間に、バルブ18a,18bの開閉を切り換えることによって、ガス供給源19aからのTEOSと、ガス供給源19bからの水蒸気を、間欠的(非連続的)に処理容器1内に導入するようにしてもよい。
【0081】
そして、CVD法により、絶縁膜81の表面を覆うように、マンガン含有膜87の薄膜を形成する。この際、処理容器1内にTEOSと水蒸気が共存することによって、TEOSが加水分解され、絶縁膜81の表面が改質されてSi−OH基85が生じ、前駆体であるマンガン含有材料の吸着性を高め、マンガン含有膜87が定着しやすくなる。
【0082】
本実施の形態の成膜方法における他の構成及び効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0083】
[第3の実施の形態]
次に、図9〜図17を参照しながら、本発明の第3の実施の形態について説明する。本発明の第3の実施の形態の成膜方法は、被処理体上に設けられた所定の凹凸パターンを有する低誘電率膜の表面に、二酸化珪素膜(SiO膜)を成膜する第1の成膜工程と、マンガン含有材料を含む成膜ガスを用い、CVD法により前記二酸化珪素膜の表面にマンガン含有膜を成膜する第2の成膜工程と、を備えている。図9は、本実施の形態の成膜方法の主要な工程を示すフローチャートであり、図10〜図12は、その工程を説明する工程図である。以下の説明では、低誘電率膜として、ポーラス低誘電率膜を例示して説明する。
【0084】
図10は、被処理体としてのウエハWの表層部分の断面構造を示している。ウエハWには、下地膜80と、その上に積層されたポーラス低誘電率膜91と、が形成されている。ポーラス低誘電率膜91は、所定の凹凸パターンが形成されており、開口部93(一つのみ図示するが複数でもよい)を有している。開口部93は、例えば多層配線構造の配線溝やビアホールとなる部分である。ポーラス低誘電率膜91としては、例えば多孔質シリカ、ポーラスMSQ、ポーラスSiCOH等を挙げることができる。
【0085】
<第1の成膜工程>
STEP31では、Si含有化合物ガスを含む成膜ガスを用い、プラズマCVD法によりポーラス低誘電率膜91の表面に図11に示すようにSiO膜95を成膜する。第1の成膜工程では、プラズマ成膜装置を用いる。プラズマ成膜装置の一例として、例えば図13に示すプラズマ成膜装置200を用いることができる。プラズマ成膜装置200は、平行平板型のプラズマCVD装置であり、シャワーヘッド11に高周波電力を供給して処理容器1内で成膜ガスのプラズマを生成させる点以外は、図1の成膜装置100とほぼ同様の構成である。従って、成膜装置100との相違点を中心に説明し、同じ構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0086】
プラズマ成膜装置200において、シャワーヘッド11には、給電線20及び整合器21を介して高周波電源23が接続されている。高周波電源23としては、周波数が例えば400kHz〜100MHz、好ましくは2MHz〜60MHzのものが用いられる。この高周波電源23からシャワーヘッド11に高周波電力を供給することにより、シャワーヘッド11を介して処理容器1内に供給された原料ガスをプラズマ化して成膜することができる。本実施の形態において、給電線20、整合器21及び高周波電源23は、「電磁波供給装置」を構成している。なお、シャワーヘッド11に対向して配置されるステージ3に、同様の構成で電磁波供給装置を設けて、高周波電力を供給するように構成することもできる。
【0087】
また、プラズマ成膜装置200は、ガス供給源19d及び19eを備えている。ガス供給源19dからは、Si含有化合物ガスが、ガス供給配管15dを介して、シャワーヘッド11のガス拡散空間11bに供給される。ここでは、Si含有化合物としてTEOSを例示して説明する。ガス供給源19eからは、プラズマ励起用の希ガス(ここでは、代表的にArガスを用いる)が、ガス供給配管15eを介して、シャワーヘッド11のガス拡散空間11aに供給される。ガス供給配管15d,15eの途中には、それぞれMFC(マスフローコントローラ)17d,17eとバルブ18d,18eが設けられている。ガス拡散空間11a,11bに導入されたガスは、それぞれガス吐出孔13a,13bから、処理容器1内の処理空間に噴射され、該処理空間ですべてのガスが混合される。なお、TEOSとArガスは、ガス供給配管の途中で混合してシャワーヘッド11に供給してもよい。なお、制御部70Aの構成は、図1の制御部70とほぼ同様である。
【0088】
次に、SiO膜95の成膜処理における好ましい条件について説明する。TEOS等のSi含有化合物ガスの流量は、処理容器1やウエハWの大きさにより適宜変更できるので特に限定されるものではないが、例えば、1sccm(mL/min)以上1000sccm(mL/min)以下の範囲内であることが好ましい。
【0089】
Ar等の希ガスの流量は、処理容器1やウエハWの大きさにより適宜変更できるので特に限定されるものではないが、例えば、1sccm(mL/min)以上1000sccm(mL/min)以下の範囲内であることが好ましい。
【0090】
また、処理圧力は、圧力制御の容易性とプラズマ放電の安定性の観点から、0.1Pa以上1000Pa以下の範囲内が好ましく、1Pa以上100Pa以下の範囲内がより好ましい。
【0091】
また、高周波電源23からは、例えば400kHz〜100MHz、好ましくは2MHz〜60MHzの周波数で、例えば10〜5000W、好ましくは100〜3000Wの高周波電力を供給する。
【0092】
また、ウエハWの加熱温度は、ステージ3の温度として、例えば50℃以上500℃以下の範囲内とすることが好ましく、100℃以上400℃以下の範囲内に設定することがより好ましい。
【0093】
以上の条件は、制御部70Aの記憶部(図示せず)にレシピとして保存されている。そして、コントローラがそのレシピを読み出してプラズマ成膜装置200の各エンドデバイスへ制御信号を送出することにより、所望の条件で成膜処理が行われる。
【0094】
以上のようにして、ポーラス低誘電率膜91の上に、均一にSiO膜95を形成できる。SiO膜95の膜厚としては、マンガン含有膜定着性向上と実効誘電率上昇抑制との両立の観点から、例えば0.1〜10nmが好ましく、0.5〜5nmがより好ましい。
【0095】
<第2の成膜工程>
STEP32では、マンガン含有材料を含む成膜ガスを用い、CVD法により成膜を行なう。この第2の成膜工程により、図12に示したように、SiO膜95の上にマンガン含有膜97が均一に形成される。第2の成膜工程では、図1と同様の成膜装置100を用い、第1の実施の形態と同様の条件で成膜を行なうことができる。ポーラス低誘電率膜91との間にSiO膜95を介在させることによって、マンガン含有膜97を成膜しても、ポーラス低誘電率膜91の空孔内にMnが進入することが防止され、ポーラス低誘電率膜91へのCuの拡散を効果的に抑制できる。また、TEOSを原料として成膜されたSiO膜95は、膜表面に親水性のSi−OH基を有している。マンガン含有膜97を構成するMnOxの前駆体であるマンガン含有材料は、Si−OH基と親和性を有しているため、第2の成膜工程(STEP32)におけるマンガン含有膜97の定着性が向上し、SiO膜95の表面に均一に、かつバリア機能を発揮させる上で十分な厚みで、マンガン含有膜97を形成できる。また、ステップカバレッジも良好で、開口部93の内部にも均一な膜厚でマンガン含有膜97を形成できる。
【0096】
次に、図14〜図17を参照しながら、第3の実施の形態の成膜方法の変形例について説明する。
【0097】
<第1の変形例>
図14は、第1の変形例の工程手順を示すフローチャートである。まず、STEP41では、Si含有化合物ガスを含む成膜ガスを用いてプラズマCVD法により凹凸パターンを有するポーラス低誘電率膜91の表面にSiO膜95を成膜する。この工程は図9のSTEP31と同様の第1の成膜工程である。
【0098】
次に、STEP42では、SiO膜95を大気曝露する。すなわち、第1の成膜工程(STEP41)の後、第2の成膜工程(STEP43)の前に、SiO膜95を大気に曝露して吸湿させる。SiO膜95を吸湿させることによって、表面にSi−OH基が形成される。つまり、SiO膜95の表面のSi−OH基の量をさらに増加させることができる。従って、第1の実施の形態と同様の作用機構により、次の第2の成膜工程(STEP43)におけるマンガン含有膜97の定着性がさらに改善される。
【0099】
次に、STEP43では、マンガン含有材料を含む成膜ガスを用い、CVD法により成膜を行なう。この工程は図9のSTEP32と同様の第2の成膜工程である。
【0100】
<第2の変形例>
図15は、第2の変形例の工程手順を示すフローチャートである。まず、STEP51では、Si含有化合物ガスを含む成膜ガスを用いてプラズマCVD法により凹凸パターンを有するポーラス低誘電率膜91の表面にSiO膜95を成膜する。この工程は図9のSTEP31と同様の第1の成膜工程である。
【0101】
次に、STEP52では、SiO膜95に水蒸気を接触させる。すなわち、第1の成膜工程(STEP51)の後、第2の成膜工程(STEP53)の前に、SiO膜95を吸湿させることによって、表面にSi−OH基が形成される。従って、第1の実施の形態と同様の作用機構により、次の第2の成膜工程(STEP53)におけるマンガン含有膜97の定着性がさらに改善される。
【0102】
次に、STEP53では、マンガン含有材料を含む成膜ガスを用い、CVD法により成膜を行なう。この工程は図9のSTEP32と同様の第2の成膜工程である。
【0103】
以上のように、第1の成膜工程と第2の成膜工程の間に、大気曝露や水蒸気との接触を行なう工程を追加することによって、SiO膜95の表面のSi−OH基を増加させ、マンガン含有膜97の定着性をよりいっそう改善させることができる。
【0104】
<第3の変形例>
次に、図16A、図16B及び図17を参照しながら、第3の変形例について説明する。第3の変形例は、第3の実施の形態の他の態様における第1の成膜工程に適用可能なものである。本変形例では、第1の成膜工程において、ポーラス低誘電率膜91の表面にSiO膜95を成膜する工程を、アミノシラン系プリカーサーを用いたMLD(分子層堆積;Molecular Layer Deposition)法により行う。すなわち、本変形例は、図9のSTEP31、図14のSTEP41、図15のSTEP51において、プラズマCVD法の替わりに、MLD法によりSiO膜95の成膜を行う点以外は、第3の実施の形態の他の態様と同様に実施できる。
【0105】
図16Aは、本変形例において、SiO膜95の成膜に使用される成膜装置300の構成を模式的に示す縦断面図である。図16Bは、本変形例に使用される成膜装置300の構成を模式的に示す横断面図である。なお、図16Bにおいては、加熱装置を省略している。図16A及び図16Bに示すように、成膜装置300は、下端が開口し、上端が閉じた円筒体状の処理容器301を有している。処理容器301は、例えば石英により形成されている。処理容器301内の上部には、例えば石英により形成された天井板302が設けられている。また、この処理容器301の下端の開口部分には、例えばステンレススチールにより円筒体状に成形されたマニホールド303が連結されている。処理容器301とマニホールド303との連結部分は、例えばOリング等のシール部材304が配備され、気密性が保持されている。
【0106】
マニホールド303は、処理容器301の下端を支持している。マニホールド303の下方から、複数のウエハWを多段に支持することができる石英製のウエハボート305が処理容器301内に挿入されている。ウエハボート305は、3本の支柱306を有しており(図16Aでは2本のみ図示)、支柱306に形成された溝(図示省略)によりウエハWを支持している。ウエハボート305は、例えば50〜100枚のウエハWを同時に支持できるように構成されている。
【0107】
ウエハボート305は、石英製の筒体307を介して回転テーブル308上に載置されている。マニホールド303の下端の開口部には、開閉を行うため、例えばステンレススチール製の底蓋309が設けられている。回転テーブル308は、この底蓋309を貫通して設けられた回転軸310上に支持されている。回転軸310が挿入されている底蓋309の貫通口(図示省略)には、例えば磁性流体シール311が設けられている。磁性流体シール311は、回転軸310の回転を可能にしつつ、回転軸310が挿通された底蓋309の貫通口を気密にシールしている。また、底蓋309の周辺部とマニホールド303の下端部との間には、例えばOリングなどのシール部材312が配備されている。これにより処理容器301内のシール性を保持している。
【0108】
回転軸310は、アーム313の先端に取付けられている。アーム313は、例えばボートエレベータ等の図示しない昇降機構に支持されており、これにより、ウエハボート305、回転テーブル308および底蓋309は、一体的に昇降し、ウエハボート305を処理容器301内に挿入し、あるいは抜き出すことができるようになっている。なお、回転テーブル308を底蓋309に固定して設け、ウエハボート305を回転させずにウエハWの処理を行うようにしてもよい。
【0109】
成膜装置300は、処理容器301内へ酸素含有ガス、例えばOガスを供給する酸素含有ガス供給部314と、処理容器301内へSi含有化合物を供給するSi含有化合物供給部315と、処理容器301内へパージガスとして不活性ガス、例えばNガスを供給するパージガス供給部316とを有している。
【0110】
酸素含有ガス供給部314は、酸素含有ガス供給源317と、酸素含有ガス供給源317から酸素含有ガスを導くガス供給配管318と、このガス供給配管318に接続された分散ノズル319とを有している。分散ノズル319は、マニホールド303の側壁を内側へ貫通して設けられ、上方向へ屈曲して処理容器301の長尺方向に垂直に延びる石英管により構成されている。分散ノズル319の垂直部分には、複数のガス吐出孔319aが所定の間隔を隔てて形成されている。各ガス吐出孔319aからは、処理容器301に向けて水平方向に略均一に酸素含有ガス、例えばOガスを吐出できるようになっている。
【0111】
また、Si含有化合物供給部315は、Si含有化合物供給源320と、このSi含有化合物供給源320からSi含有化合物を導くガス供給配管321と、このガス供給配管321に接続された分散ノズル322とを有している。分散ノズル322は、マニホールド303の側壁を内側へ貫通して設けられ、上方向へ屈曲して処理容器301の長尺方向に垂直に延びる石英管により構成されている。分散ノズル322は、例えば2本設けられており(図16B参照)、各分散ノズル322の垂直部分には、その長さ方向に複数のガス吐出孔322aが所定の間隔を隔てて形成されている。各ガス吐出孔322aからは、処理容器301内の水平方向に略均一にSi含有化合物を吐出できるようになっている。なお、分散ノズル322は、2本に限らず、1本或いは3本以上でもよい。
【0112】
パージガス供給部316は、パージガス供給源323と、パージガス供給源323からパージガスを導くガス供給配管324と、このガス供給配管324に接続され、マニホールド303の側壁を貫通して設けられたパージガスノズル325とを有している。パージガスとしては不活性ガス(例えばNガス)を用いることができる。
【0113】
ガス供給配管318,321,324には、それぞれ開閉弁318a、321a、324aおよびマスフローコントローラなどの流量制御器318b、321b、324bが設けられており、酸素含有ガス、Si含有化合物およびパージガスを、それぞれ流量制御しつつ供給できるようになっている。
【0114】
処理容器301には、酸素含有ガスのプラズマを形成するプラズマ生成部330が形成されている。このプラズマ生成部330は、拡張壁332を有している。処理容器301の側壁の一部は、上下方向に沿って所定の幅で削りとられており、上下に細長く形成された開口331が形成されている。開口331は、ウエハボート305に多段に保持されている全てのウエハWをカバーできるように上下方向(処理容器301の長尺方向)に十分に長く形成されている。拡張壁332は、この開口331をその外側から覆うようにして処理容器301の壁に気密に接合されている。拡張壁332は、例えば石英で形成されており、横断面がU字状をなし、上下方向(処理容器301の長尺方向)に細長く形成されている。拡張壁332を設けることにより、処理容器301の側壁の一部が横断面U字状に外側へ拡張した形状となり、拡張壁332の内部空間が処理容器301の内部空間に一体的に連通された状態となる。
【0115】
また、プラズマ生成部330は、細長い一対のプラズマ電極333a,333bと、このプラズマ電極333a,333bに接続された給電線334と、この給電線334を介して一対のプラズマ電極333a,333bに高周波電力を供給する高周波電源335とを有している。細長い一対のプラズマ電極333a,333bは、拡張壁332の互いに対向する側壁332a,332bの外側に上下方向(処理容器301の長尺方向)に沿って互いに対向するように配置されている。そして、プラズマ電極333a,333bに高周波電源335から例えば13.56MHzの高周波電力を印加することにより、酸素含有ガスのプラズマを発生させることができる。なお、高周波電力の周波数は、13.56MHzに限定されず、他の周波数、例えば400kHz等を用いてもよい。
【0116】
上記拡張壁332の外側には、これを覆うようにして例えば石英よりなる絶縁保護カバー336が取付けられている。また、この絶縁保護カバー336の内側部分には、図示しない冷媒通路が設けられており、例えば冷却された窒素ガス等の冷媒を流すことによりプラズマ電極333a,333bを冷却できるようになっている。
【0117】
酸素含有ガスを処理容器301内に導入する分散ノズル319は、処理容器301内を上方向に延びている途中で、処理容器301の半径方向外方へ屈曲し、拡張壁332内の最も外側の壁332c(処理容器301の中心から最も離れた部分)に沿って上方に向けて起立して設けられている。そして、高周波電源335から高周波電力が供給されてプラズマ電極333a,333b間に高周波電界が形成されると、分散ノズル319のガス吐出孔319aから吐出された酸素ガスがプラズマ化され、該プラズマが処理容器301の中心に向けて拡散していくように構成されている。
【0118】
また、Si含有化合物を処理容器301内に導入する2本の分散ノズル322は、処理容器301の開口331を挟む位置に起立して設けられている。これらの分散ノズル322に形成された複数のガス吐出孔322aより処理容器301の中心方向に向けてSi含有化合物を吐出できるようになっている。
【0119】
一方、処理容器301の開口331と反対側には、処理容器301内を真空排気するための排気口337が設けられている。この排気口337は処理容器301の側壁を上下方向(処理容器301の長尺方向)へ削り取ることによって細長く形成されている。この排気口337の周囲には、排気口337を覆うように横断面がU字状に成形された排気カバー338が、例えば溶接により接合されて取付けられている。この排気カバー338は、処理容器301の長尺方向に沿って処理容器1の上端よりもさらに上方に延びており、処理容器301の上方に設けられたガス出口339に接続されている。このガス出口339は、図示しない真空ポンプ等を含む真空排気装置に接続されており、処理容器1内を真空引きできるように構成されている。
【0120】
また、処理容器301の周囲には、処理容器301を囲むようにして処理容器301およびその内部のウエハWを加熱する筐体状の加熱装置340が設けられている。
【0121】
成膜装置300の各構成部の制御、例えばバルブ318a、321a、324aの開閉による各ガスの供給・停止、マスフローコントローラ318b、321b、324bによるガス流量の制御、および高周波電源335のオン・オフ制御、加熱装置340の制御等は制御部70Bにより行われる。制御部70Bの基本的構成と機能は、図1の成膜装置100の制御部70と同様であるため、説明を省略する。
【0122】
本変形例では、SiO膜を形成する工程(STEP31,STEP41,STEP51)において、MLD法により、Si含有化合物のガスを処理容器301内に供給し、Si含有化合物をウエハWのポーラス低誘電率膜91上に吸着させる工程と、酸素含有ガスを処理容器301内に供給し、Si含有化合物を酸化させる工程とを交互に繰り返す。具体的には、Si含有化合物をウエハWのポーラス低誘電率膜91上に吸着させる工程においては、Si含有化合物のガスを、分散ノズル322を介して処理容器301内に所定の時間供給する。これにより、ポーラス低誘電率膜91上にSi含有化合物を吸着させる。
【0123】
次に、酸素含有ガスを処理容器301内に供給し、Si含有化合物を酸化させる工程においては、酸素含有ガスを、分散ノズル319を介して処理容器301内に所定の時間供給する。プラズマ生成部330によってプラズマ化された酸素含有ガスによって、ポーラス低誘電率膜91上に吸着されたSi含有化合物が酸化され、SiO膜95が形成される。
【0124】
また、Si含有化合物をウエハWのポーラス低誘電率膜91上に吸着させる工程と、Si含有化合物を酸化させる工程とを切り換える際に、各工程の間に、直前の工程における残留ガスを除去するために、処理容器301内を真空排気しつつ例えばNガス等の不活性ガスよりなるパージガスを処理容器301内に供給する工程を所定の時間行うことができる。なお、この工程は、処理容器301内に残留しているガスを除去することができればよいため、パージガスを供給せずに全てのガスの供給を停止した状態で真空引きを行ってもよい。
【0125】
本変形例においては、SiO膜95を成膜するためのSi含有化合物としてアミノシラン系プリカーサーを用いることができる。アミノシラン系プリカーサーとしては、例えば、BTBAS(ビスターシャリブチルアミノシラン)、BDMAS(ビスジメチルアミノシラン)、BDEAS(ビスジエチルアミノシラン)、DMAS(ジメチルアミノシラン)、DEAS(ジエチルアミノシラン)、DPAS(ジプロピルアミノシラン)、BAS(ブチルアミノシラン)、DIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)、BEMAS(ビスエチルメチルアミノシラン)、TDMAS(トリジメチルアミノシラン)等を挙げることができる。なお、アミノシラン系プリカーサー以外に、Si含有化合物として、例えば、TEOS(テトラエトキシシラン)などのエトキシシラン系プリカーサーを用いることもできる。
【0126】
一方、酸素含有ガスとしては、例えば、Oガス、NOガス、NOガス、HOガス、Oガス等を用いることができる。これらの酸素含有ガスは、高周波電界によりプラズマ化して酸化剤として利用できる。
【0127】
成膜装置300を使用し、MLD法によりSiO膜95を成膜するための好ましい条件を以下に例示する。また、図17に、MLD法によりSiO膜95を成膜する第1の成膜工程のタイミングチャートの一例を示す。
【0128】
(MLD法による好ましい成膜条件)
(1)Si含有ガスの供給条件
Si含有ガス:DIPAS
基板(ウエハW)温度:加熱なし
処理容器301内の圧力:26.7〜667Pa
ガス流量:50〜1000mL/min(sccm)
供給時間:1〜10秒
(2)酸素含有ガスの供給条件
酸素含有ガス:酸素ガス
基板(ウエハW)温度:加熱なし
処理容器301内の圧力:66.7〜227Pa
ガス流量:5〜30L/min(slm)
供給時間:5〜30秒
高周波電源周波数:13.56MHz
高周波電源パワー:50〜500W
(3)パージガスの供給条件
パージガス:Nガス
処理容器301内の圧力:0.133〜665Pa
ガス流量:0.1〜5000mL/min(sccm)
供給時間:1〜60秒
(4)繰返し条件
合計サイクル:1〜10サイクル
【0129】
以上のように、本変形例では、第1の成膜工程において、MLD法を用いることにより、SiO膜95の成膜を300℃以下で行うことができる。特に、酸素含有ガスの流量、高周波電力、処理容器301内の圧力等の条件を上記例示の条件に調整することにより、SiO膜95の成膜を100℃以下又は室温という低温で行うことができる。しかも、MLD法を利用することによって、ポーラス低誘電率膜91に形成された開口部93へのステップカバレッジも良好となる。
【0130】
第3の変形例において、第1の成膜工程以外の工程は、第3の実施の形態における上記他の態様と同様に実施できるため、説明を省略する。
【0131】
本実施の形態の成膜方法における他の構成及び効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0132】
<パンチスルー工程>
上記第1〜第3の実施の形態では、上記工程に加えて、開口部の底壁に形成された不要な膜を除去するためのパンチスルー工程を含むことができる。具体的には、第1及び第2の実施の形態の場合、パンチスルー工程では、低誘電率膜である絶縁膜81の開口部83の側壁に形成されたマンガン含有膜87を残し、開口部83の底壁に形成されたマンガン含有膜87を除去する。また、第3の実施の形態の場合、パンチスルー工程では、ポーラス低誘電率膜91の開口部93の側壁に形成されたマンガン含有膜97及びSiO膜95を残し、開口部93の底壁に形成されたマンガン含有膜97及びSiO膜95を除去する。
【0133】
図18及び図19は、第3の実施の形態においてパンチスルー工程を適用した場合の工程例を示している。パンチスルー工程は、例えば開口部93がビアホールであり、下層配線99(図10〜12では図示していない)を開口部93の底に露出させる必要がある場合に実施することが好ましい。パンチスルー工程では、図18に示すように、マンガン含有膜97を成膜した後、開口部93を除いた全表面に、フォトリソグラフィー技術を利用してレジスト膜Rをパターン形成する。次に、図19に示すように、レジスト膜Rをマスクとして、開口部93の底壁(下層配線99の表面)に堆積していたマンガン含有膜97及びSiO膜95を選択的に除去する。開口部93の底壁のマンガン含有膜97及びSiO膜95を選択的に除去する方法としては、例えばArスパッタリング、RIE(反応性イオンエッチング)等の方法を利用できる。このように、マンガン含有膜97及びSiO膜95を部位選択的に除去した後は、常法によってレジストRを除去する。なお、上記第1及び第2の実施の形態においても同様にパンチスルー工程を実施できる。また、フォトリソグラフィー技術およびレジストマスクを利用せずに、例えばArスパッタリングのプロセス条件を適宜選択することで、開口部93の底壁のマンガン含有膜97及びSiO膜95を選択的に除去するようにしても良い。
【0134】
[作用]
以上、第1〜第3の実施の形態を挙げて説明したように、本発明では、低誘電率膜の表面に直接Si−OH基を導入するか、あるいは、SiO膜を介して間接的にSi−OH基を導入することによって、マンガン含有膜の付着性を改善し、開口部内においても良好なステップカバレッジで均一な厚さのマンガン含有膜を形成できる。また、Si−OH基の存在によって、マンガン含有膜の成膜レートも向上するので、マンガン含有膜を所望の膜厚に形成できる。
【0135】
[ダマシンプロセスへの適用例]
次に、図20〜図23を参照しながら、上記第1の実施の形態の成膜方法を、ダマシンプロセスに応用した適用例について説明する。図20は、マンガン含有膜87を成膜する前の積層体を示すウエハWの要部断面図である。下地配線層となる層間絶縁膜101の上には、エッチングストッパ膜102、ビア層となる層間絶縁膜103、エッチングストッパ膜104、及び配線層となる層間絶縁膜105が、この順番に形成されている。さらに、層間絶縁膜101にはCuが埋め込まれた下層配線106が形成されている。なお、エッチングストッパ膜102,104は、いずれも銅の拡散を防止するバリア機能も有している。層間絶縁膜103及び層間絶縁膜105は、例えばCVD法により成膜された低誘電率膜である。エッチングストッパ膜102,104は、例えばCVD法により成膜された炭化珪素(SiC)、窒化珪素(SiN)、炭化窒化珪素(SiCN)等で形成されている。
【0136】
図20に示すように、層間絶縁膜103,105には、開口部103a,105aがそれぞれ所定のパターンで形成されている。このような開口部103a,105aは、常法に従い、フォトリソグラフィー技術を利用して層間絶縁膜103,105をエッチングすることによって形成できる。開口部103aは例えばビアホールであり、開口部105aは例えば配線溝である。開口部105aは、エッチングストッパ膜104の上面まで達し、開口部103aは、下層配線106の上面まで達する。
【0137】
図21は、図20の構造体に対して、成膜装置100を用いて表面改質工程を行なった後の状態を示している。表面改質工程によって、層間絶縁膜103,105の表面には、開口部103a,105aの内表面も含めて、Si−OH基85が形成される。なお、表面改質処理では、層間絶縁膜103,105に対して、Si含有化合物ガスとOH基供与性ガスを、交互に作用させてもよいし、同時に作用させてもよい。
【0138】
次に、図22は、図21の構造体に対して、成膜工程を行い、成膜装置100を用いてCVD法によりマンガン含有膜87を形成した後の状態を示している。成膜工程では、下地の層間絶縁膜103,105の表面にSi−OH基85が形成されていることから、マンガン含有膜87の定着性が改善され、開口部103a,105aが高アスペクト比である場合でも、均一な膜厚で良好なステップカバレッジが得られる。
【0139】
なお、上述のように、表面改質工程と、成膜工程を繰り返し実施することもできる。また、図示は省略するが、図22の状態から、上記パンチスルー工程を実施することによって、開口部103aの底部に形成されたマンガン含有膜87のみを部位選択的に除去することができる。
【0140】
次に、図23に示すように、層間絶縁膜105の上から、Cuを堆積させてCu膜107を形成して開口部103a及び105aを埋める。このCu膜107は、例えばCVD法、PVD法、メッキ法等によって成膜することができる。開口部103a内に埋め込まれたCu膜107はCuプラグとなり、開口部105a内に埋め込まれたCu膜107はCu配線となる。以降は、常法に従い、CMP(化学機械研磨)法により平坦化を行って余分なCu膜107を除去することにより、Cuプラグ及びCu配線が形成された多層配線構造体を作製することができる。また、パンチスルー工程を行うことによって、開口部103aの底部に形成されたマンガン含有膜87を除去することにより、開口部103a,105a内に埋め込まれたCu膜107と下層配線106との電気的なコンタクトを確保できる。
【0141】
このようにして形成された多層配線構造体において、マンガン含有膜87は、優れたバリア機能を有するため、Cu膜107から層間絶縁膜103,105へのCuの拡散を抑制できる。従って、信頼性に優れた多層配線構造体を備えた電子部品を製造できる。
【0142】
本発明の第2の実施の形態の成膜方法のダマシンプロセスへの適用については、具体的な説明を省略する。しかし、第1の実施の形態における表面改質工程と成膜工程とを区別せず、Si含有化合物ガスとOH基供与性ガスとマンガン含有材料のガスを同時に供給してCVD法により成膜を行なう点を除き、上記と同様の手順でダマシンプロセスへの適用が可能である。
【0143】
次に、図24〜図27を参照しながら、上記第3の実施の形態の成膜方法を、ダマシンプロセスに応用した適用例について説明する。図24は、マンガン含有膜97を成膜する前の積層体を示すウエハWの要部断面図であり、図20と同様の構成の構造体である。
【0144】
図25は、図24の構造体に対して、プラズマ成膜装置200又は成膜装置300を用いて第1の成膜工程を実施し、SiO膜95を成膜した後の状態を示している。SiO膜95の成膜によって、層間絶縁膜103,105の表面には、開口部103a,105aの内表面も含めて、SiO膜95が形成される。なお、図25の状態のSiO膜95に対して、大気曝露又は水蒸気を接触させる工程を実施してもよい(図14又は図15参照)。
【0145】
次に、図26は、図25の構造体に対して、成膜装置100を用いて第2の成膜工程を実施し、CVD法によりマンガン含有膜97を形成した後の状態を示している。第2の成膜工程では、下地のSiO膜95に水分やSi−OH基が含まれているため、マンガン含有膜97の定着性が改善され、開口部103a,105aが高アスペクト比である場合でも、均一な膜厚で成膜が可能であり、良好なステップカバレッジが得られる。
【0146】
また、上述のように、図26の状態から、パンチスルー工程を実施することによって、開口部103aの底部に形成されたマンガン含有膜97及びSiO膜95を部位選択的に除去することができる。
【0147】
次に、図27に示すように、層間絶縁膜105の上から、Cuを堆積させてCu膜107を形成して開口部103a及び105aを埋める。このCu膜107は、例えばCVD法、PVD法、メッキ法等によって成膜することができる。開口部103a内に埋め込まれたCu膜107はCuプラグとなり、開口部105a内に埋め込まれたCu膜107はCu配線となる。以降は、常法に従い、CMP(化学機械研磨)法により平坦化を行って余分なCu膜107を除去することにより、Cuプラグ及びCu配線が形成された多層配線構造体を作製することができる。パンチスルー工程によって、開口部103aの底部に形成されたマンガン含有膜97とSiO膜95が除去されているため、開口部103a,105a内に埋め込まれたCu膜107と下層配線106との電気的なコンタクトを確保できる。
【0148】
このようにして形成された多層配線構造体において、マンガン含有膜97は、優れたバリア機能を有するため、Cu膜107から層間絶縁膜103,105へのCuの拡散を抑制できる。また、マンガン含有膜97を成膜する前にSiO膜95を成膜しておくことにより、層間絶縁膜103,105がポーラス低誘電率膜である場合でも、膜中の空孔内にMnが進入することが防止され、Cuの拡散を効果的に抑制できる。従って、信頼性に優れた多層配線構造体を備えた電子部品を製造できる。
【0149】
以上の説明では、成膜方法をデュアルダマシンプロセスへ適用した例を挙げたが、シングルダマシンプロセスにも同様に適用可能である。
【0150】
以上、本発明の実施の形態を述べたが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、表面改質のために、TEOS(Si含有化合物ガス)と水蒸気(OH基供与性ガス)とを組み合わせて用いる場合を例示したが、他の種類のSi含有化合物ガスを用いることもできる。また、Si含有化合物ガスとOH基供与性ガスとの組み合わせに代えて、シリコン原子及びOH基を有する化合物のガスを単独で用いてもよい。
【0151】
また、上記実施の形態では、成膜装置100として、熱CVD装置を用いたが、例えばプラズマCVD等のCVD装置を使用してもよい。また、第3の実施の形態では、平行平板方式のプラズマ成膜装置200に代えて、例えばRLSA(Radial Line Slot Antenna)方式、ICP方式、ECRプラズマ方式、表面反射波プラズマ方式、マグネトロンプラズマ方式等のプラズマ処理装置を用いることもできる。
【0152】
また、上記の実施の形態では、積層絶縁膜の構造として、エッチングストッパ膜102、ビア層となる層間絶縁膜103、エッチングストッパ膜104、及び配線層となる層間絶縁膜105が、この順番に形成された構造を例に挙げて説明したが、他の構造の積層絶縁膜であっても良い。例えば、エッチングストッパ膜104を設けなくても良い。さらに、層間絶縁膜105の上部に、ハードマスク膜として、例えば二酸化珪素(SiO)、炭化珪素(SiC)、窒化珪素(SiN)、炭化窒化珪素(SiCN)等の材質の膜を設けても良い。
【0153】
さらに、上記実施の形態では、被処理体である基板として半導体ウエハを例にとって説明したが、これに限定されず、例えば、ガラス基板、LCD基板、セラミック基板等にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0154】
1…処理容器、1a…天板、1b…側壁、1c…底壁、3…ステージ、6…ヒーター、7…ヒーター電源、8…熱電対(TC)、11…シャワーヘッド、11a、11b…ガス拡散空間、13a,13b…ガス吐出孔、15a,15b,15ab,15c…ガス供給配管、17a,17b,17c…マスフローコントローラ(MFC)、18a,18b,18c…バルブ、19a,19b,19c…ガス供給源、25…開口、26…ゲートバルブ、30…排気容器、33…排気管、35…排気装置、41…Oリング、45…Oリング、70…制御部、100…成膜装置、W…半導体ウエハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜装置の処理容器内に、絶縁膜が設けられた被処理体を配置する工程と、
前記処理容器内に、シリコン原子を含む化合物のガスとOH基供与性ガス、又はシリコン原子及びOH基を有する化合物のガスを供給し、前記絶縁膜の表面にSi−OH基を形成させる表面改質工程と、
前記処理容器内にマンガン含有材料を含む成膜ガスを供給し、CVD法により前記Si−OH基が形成された絶縁膜の表面にマンガン含有膜を成膜する成膜工程と、
を備えた成膜方法。
【請求項2】
前記表面改質工程では、前記シリコン原子を含む化合物のガスと、前記OH基供与性ガスを、前記処理容器内に同時に供給する請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記表面改質工程では、前記シリコン原子を含む化合物のガスと、前記OH基供与性ガスを、前記処理容器内に交互に供給する請求項1に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記表面改質工程と、前記成膜工程と、を交互に繰り返す請求項1から3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項5】
成膜装置の処理容器内に、絶縁膜が設けられた被処理体を配置する工程と、
前記処理容器内に、シリコン原子を含む化合物のガスとOH基供与性ガスとマンガン含有材料を含む成膜ガス、又はシリコン原子及びOH基を有する化合物のガスとマンガン含有材料を含む成膜ガス、を同時に供給し、CVD法により前記絶縁膜の表面にマンガン含有膜を成膜する成膜工程と、
を備えた成膜方法。
【請求項6】
前記絶縁膜が、所定の凹凸パターンが形成された低誘電率膜である請求項1から5のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記凹凸パターンを有する低誘電率膜の開口部の側壁に形成された前記マンガン含有膜を残し、前記開口部の底壁に形成された前記マンガン含有膜を除去する工程をさらに有する請求項6に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記シリコン原子を含む化合物のガスが、TEOS(テトラエトキシシラン)、テトラメトキシシラン、テトラ-i-プロポキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-i-ブトキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン、トリス(tert-ブトキシ)シラノール、トリス(tert-ペントキシ)シラノール、トリス(イソプロポキシ)シラノール、ビス(tert-ブトキシ)シランジオール、テトラ(tert-ブトキシ)シラン、モノシラン、ジシラン、トリシラン及びテトラシランよりなる群から選ばれる1種以上を含むガスである請求項1から7のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記OH基供与性ガスが、水蒸気、又はアルコールである請求項1から8のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記シリコン原子及びOH基を有する化合物のガスが、トリス(tert-ブトキシ)シラノール、トリス(tert-ペントキシ)シラノール、トリス(イソプロポキシ)シラノール及びビス(tert-ブトキシ)シランジオールよりなる群から選ばれる1種以上を含むガスである請求項1から7のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項11】
被処理体上に設けられた所定の凹凸パターンを有する低誘電率膜の表面に、二酸化珪素膜を成膜する第1の成膜工程と、
マンガン含有材料を含む成膜ガスを用い、CVD法により前記二酸化珪素膜の表面にマンガン含有膜を成膜する第2の成膜工程と、
を備えた成膜方法。
【請求項12】
前記低誘電率膜が、ポーラス低誘電率膜である請求項11に記載の成膜方法。
【請求項13】
前記第1の成膜工程では、シリコン原子を含む成膜ガスを用いてプラズマCVD法又はMLD法により二酸化珪素膜の成膜を行なう請求項11又は12に記載の成膜方法。
【請求項14】
前記第1の成膜工程の後、前記第2の成膜工程の前に、前記二酸化珪素膜を大気に曝露して吸湿させる工程をさらに有する請求項11から13のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項15】
前記第1の成膜工程の後、前記第2の成膜工程の前に、前記二酸化珪素膜に水蒸気を接触させて吸湿させる工程をさらに有する請求項11から13のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項16】
前記所定の凹凸パターンを有する低誘電率膜の開口部の側壁に形成された前記マンガン含有膜及び前記二酸化珪素膜を残し、前記開口部の底壁に形成された前記マンガン含有膜及び前記二酸化珪素膜を除去する工程をさらに有する請求項11から15のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項17】
前記マンガン含有材料として、シクロペンタジエニル系前駆体を用いる請求項1から16のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項18】
前記シクロペンタジエニル系前駆体が、Mn(C、Mn(CH、Mn(C、Mn(C、(CH)Mn(CO)、Mn(C及びMn((CHよりなる群から選ばれる1種以上である請求項17に記載の成膜方法。
【請求項19】
真空引き可能な処理容器と、
前記処理容器内に設けられた、被処理体を載置する載置台と、
前記載置台に載置された被処理体を所定の温度に加熱するヒーターと、
前記処理容器内へ、シリコン原子を含む化合物のガスとOH基供与性ガスとマンガン含有材料を含む成膜ガスとを、をそれぞれ別々に、又は2種以上を同時に供給するガス供給装置と、
を備えた成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−216862(P2011−216862A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23031(P2011−23031)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】