説明

校正用冶具、校正方法、及び該校正用冶具が搭載可能な形状測定装置

【課題】レンズの偏心を測定できる形状測定装置を簡易的に、かつ高精度に校正できる校正用冶具、校正方法、及び該校正用冶具が搭載可能な形状測定装置を提供する。
【解決手段】校正用冶具100は、中心が円周上を3等分し、計測用基準球を接するように設置できる3個の基準球2を備える。形状測定装置は、該校正用冶具を配置可能であり、被測定物の形状に関する情報を取得するための第1プローブと、校正用冶具に対して第1プローブと反対側に設けられ被測定物の形状に関する情報を取得するための第2プローブと、第1プローブ及び第2プローブにより、配置された計測用基準球を測定して第1測定結果及び第2測定結果を求める測定部と、第1測定結果及び第2測定結果を比較してシフトを算出するシフト量算出部と、を備える。校正方法は、上記形状測定装置を用いた測定ステップとシフト量等を算出するシフト量算出ステップとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズの偏心を測定できる形状測定装置の校正用冶具、校正方法、及び該校正用冶具が搭載可能な形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズは、カメラや光ディスクを中心に、民生用、業務用を問わず、様々な分野で活用されている。最近のカメラの小型化や光ディスクの高密度化の流れを受け、レンズに対しては作製精度の向上が求められている。中でも、レンズを構成する光の入出射面の間の偏心に対する許容値が厳しくなっている。
【0003】
レンズの偏心を小さく作製するには、レンズの偏心量を計測する必要がある。レンズの偏心量を計測手段としては、一般には、測定するレンズを挟んで対向するように配置される2つの測定手段を用意し、各々の測定手段を用いてレンズの2面の形状を測定し、測定結果から偏心量を測定する、という形状測定装置が用いられている(特許文献1,2参照)。
【0004】
特許文献1に開示されている技術においては、対向する2つの形状測定ユニットが備えられ、各々の偏心測定ユニットから、レンズの各々の面に光を照射し、各々の反射光から偏心を算出し、それらの計算結果から光軸の偏心量を算出している。形状測定ユニットを2つ有するので、1回の測定でレンズの両面を測定できることを特徴としている。
【0005】
また、特許文献2に開示されている技術においては、対向するフィゾー型干渉計を形状測定ユニットとして2つ備えられ、一方のフィゾー型干渉計からレンズの一方の面に光を照射し、その反射光と参照面からの反射光とを干渉させて一方の面形状を算出する。同様の方法で他のフィゾー型干渉計を用いてレンズのもう一方の面の形状が算出され、レンズ両面の形状算出結果から、レンズの光軸偏心を算出する手段を有する。レンズをひっくり返さずとも両面を測定できることを特徴としている。
【0006】
特許文献1,2において開示されている技術のように、2つの形状測定ユニットを用いて測定した形状データを基に偏心量を算出する技術においては、2つの形状測定ユニットの光軸を高精度に調整して合わせることや、調整後に残っている光軸差分を高精度に補正することが重要である。そこで、2つの形状測定ユニットの光軸のずれ量を測定する構成冶具が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−55202号公報
【特許文献2】特開2003−269908号公報
【特許文献3】特開2010−19671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3において開示されている技術においては、基準球を用い、基準球の形状を測定することを特徴としているが、使用したい基準球の径毎に冶具を用意する必要があり、また、冶具毎に取り置きする際の位置再現性を高めることが難しい。
【0009】
本発明は、レンズの偏心を測定できる形状測定装置を簡易的に、かつ高精度に校正できる校正用冶具、校正方法、及び該校正用冶具が搭載可能な形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の目的は、下記に記載する発明により達成される。
【0011】
1.中心が円周上を3等分し、計測用基準球を接するように設置できる3個の基準球を備えたことを特徴とする校正用冶具。
【0012】
2.前記3個の基準球は、球径が略等しいことを特徴とする前記1に記載の校正用冶具。
【0013】
3.前記3個の基準球の真球度は0.25μm以下であることを特徴とする前記1または2に記載の校正用冶具。
【0014】
4.前記計測用基準球が設置された状態で、設置された前記計測用基準球を、観察することができる開口を有することを特徴とする前記1から3の何れか一項に記載の校正用冶具。
【0015】
5.前記計測用基準球が設置されたことを特徴とする前記1から4の何れか一項に記載の校正用冶具。
【0016】
6.前記計測用基準球の表面は、鏡面にて構成されていることを特徴とする前記5に記載の校正用冶具。
【0017】
7.前記5または6に記載の校正用冶具を配置可能であり、
被測定物の形状に関する情報を取得するための第1プローブと、
前記校正用冶具に対して前記第1プローブと反対側に設けられ前記被測定物の形状に関する情報を取得するための第2プローブと、
前記第1プローブ及び前記第2プローブにより、配置された前記計測用基準球を測定して第1測定結果及び第2測定結果を求める測定部と、
前記第1測定結果及び前記第2測定結果を比較してシフトを算出するシフト量算出部と、
を備えることを特徴とする形状測定装置。
【0018】
8.前記5または6に記載の校正用冶具を配置可能であり、
被測定物の形状に関する情報を取得するための第1プローブと、
校正用冶具に対して前記第1プローブと反対側に設けられ前記被測定物の形状に関する情報を取得するための第2プローブと、
を備える形状測定装置を用いて、当該形状測定装置のシフトを算出する校正方法であって、
前記第1プローブ及び前記第2プローブにより前記計測用基準球を測定して第1測定結果及び第2測定結果を求める測定ステップと、
前記第1測定結果及び前記第2測定結果を比較してシフト量を算出するシフト量算出ステップと、
を備えることを特徴とする校正方法。
【0019】
9.前記5または6に記載の校正用冶具を配置可能であり、
被測定物の形状に関する情報を取得するための第1プローブと、
校正用冶具に対して前記第1プローブと反対側に設けられ前記被測定物の形状に関する情報を取得するための第2プローブと、
前記第1プローブ及び前記第2プローブにより、複数の前記計測用基準球を測定して、前記計測用基準球毎に第1測定結果及び第2測定結果を求める測定部と、
前記計測用基準球毎の前記第1測定結果及び前記第2測定結果を比較して、前記第1プローブと前記第2プローブのチルト量を算出するチルト算出部と、
を備えることを特徴とする形状測定装置。
【0020】
10.前記5または6に記載の校正用冶具を配置可能であり、
被測定物の形状に関する情報を取得するための第1プローブと、
校正用冶具に対して前記第1プローブと反対側に設けられ前記被測定物の形状に関する情報を取得するための第2プローブと、
を備える形状測定装置を用いて、当該形状測定装置のチルトを算出する校正方法であって、
前記第1プローブ及び前記第2プローブにより、複数の前記計測用基準球を測定して、前記計測用基準球毎に第1測定結果及び第2測定結果を求める測定ステップと、
前記計測用基準球毎の前記第1測定結果及び前記第2測定結果を比較してチルト量を算出するチルト算出ステップと、
を備えることを特徴とする校正方法。
【発明の効果】
【0021】
レンズの偏心を測定できる形状測定装置を簡易的に、かつ高精度に校正できる校正用冶具、校正方法、及び該校正用冶具が搭載可能な形状測定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に係る校正用冶具100の概要図であり、図1(a)は上面図、図1(b)は側面図である。
【図2】台座5の上面図である。
【図3】被検体である基準球11を搭載された校正用冶具100の側面図である。図3(a)から(c)は、各々直径の異なる基準球を校正用冶具100に搭載した概要図である。図3(d)は(a)から(c)の基準球を重ねた描かれた図である。
【図4】実施形態にかかる形状測定装置200の概要図である。
【図5】分割フォトダイオードの分割形状の模式図である。
【図6】フォーカス信号FとZ方向の位置との関係を表す模式図である。
【図7】ホルダー42の代わりに校正用冶具100を設置された形状測定装置200の模式図である。
【図8】形状測定装置200の光軸O1,O2のシフト量を計測するフロー図である。
【図9】基準球11の測定手順を示す模式図である。
【図10】Y方向のシフト量の概略説明図である。
【図11】形状測定装置200の光軸O1,O2のチルト量を計測するフロー図である。
【図12】Y方向のチルト量の概略説明図である。図12(a)は上面から測定した時の模式図を表し、図12(b)は下面から測定した時の模式図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施形態を図面により説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に限られるものではない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
【0024】
(校正用冶具の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る校正用冶具100の概要図であり、図1(a)は上面図、図1(b)は側面図である。校正用冶具100は、後述するプローブ90,91により測定されるものである。
【0025】
校正用冶具100は、同じ大きさで同じ形状の3個の基準球2と、台座5とを備える。図2は、台座5の上面図である。台座5の上面には座ぐり7が3つ備えられている。台座5は、環境温度の変化に対して変形し難い材料で形成することが望ましい。例えば低い線膨張係数を有する材料であるガラスやセラミックを採用することができる。線膨張係数が小さき金属を採用してもよい。
【0026】
座ぐり7の中心は、仮想的な円の円周上を3分割する位置に配置されている。円の中心から各座ぐり7の中心を結んだ線である円の各半径は、120°の間隔を形成する。
【0027】
3個の基準球2は、被検体である計測用の基準球を設置できる位置に設けられる。
【0028】
円の中心には、台座5を貫通する穴8が形成されている。なお、座ぐり7は、基準球2を位置決めするためのものであるので、貫通穴であってもよい。
【0029】
3個の基準球を各座ぐり7に配置することで、各基準球についても、中心の位置が円の円周上を3分割する位置に配置されることとなる。
【0030】
台座5の上面6から、各基準球のz方向の頂点までの距離が同じになるように座ぐり7の直径は同じ値に形成される。
【0031】
各基準球2は、台座5に接着剤等の固定手段を用いて固定される。接着剤を用いる場合には、基準球2と上面6との間に接着剤が入りこまないように、基準球2と上面6に肉盛り接着を行うことが望ましい。
【0032】
かかる校正用冶具100に計測用の基準球11を搭載する。図3は、被検体である基準球11を搭載された校正用冶具100の側面図である。図3(a)から(c)は、各々直径の異なる基準球を校正用冶具100に搭載した概要図である。図3(d)は(a)から(c)の基準球を重ねた描かれた図である。
【0033】
基準球11の中心は、3個の基準球の中心を頂点とする三角形(不図示)の中心を通り、該三角形の法線と平行な軸15の上に配置される。
【0034】
このような、3個の基準球2と被検体である基準球11との位置関係は、基準球11の直径に依存しない。すなわち、図3(a)から(c)の各場合において、軸15は、図3(d)に示すように、校正用冶具100内において同じ位置になる。
【0035】
後述するように、基準球11の形状の測定に光プローブを用いる場合には、基準球11の表面における光の反射率が大きいことが望ましいので、基準球11の表面は鏡面に仕上げられ、光反射率の高い材料や誘電体多層膜を形成することが望ましい。光反射率の高い材料としては、アルミ、クロム、金、銀等が好ましい。これらの材料は蒸着装置やスパッタ装置を用いて成膜されることが望ましい。
【0036】
(形状測定装置の構成と動作)
図4は、実施形態にかかる形状測定装置200の概要図である。
【0037】
形状測定装置200は、第1プローブ90、第2プローブ91、及びPC80を有する。
【0038】
第1プローブ90は、半導体レーザ50、コリメートレンズ49、ビームスプリッタ46、対物レンズ45、検出レンズ47、分割フォトダイオード48、Zステージ52、LD駆動装置51、アンプ53等を有する。
【0039】
半導体レーザ50は、コヒーレント光であるレーザ光を出射する。直線性に優れた光源であるので、三角測量法に向いており、被検体41の形状測定に好適である。
【0040】
コリメートレンズ49は、入射する光を平行化する機能を有する。
【0041】
ビームスプリッタ46は、入射光直進方向と垂直方向とに分離する機能を有する。
【0042】
検出レンズ47は入射光を分割フォトダイオードの受光面に集光する機能を有する。
【0043】
分割フォトダイオード48は、例えば中心に十字線の分割線を有し、受光面が4分割されたフォトダイオードである。
【0044】
アンプは、分割フォトダイオードの各々の分割面において光電変換された出力の各々を増幅する機能を有する回路である。
【0045】
対物レンズ45は、入射光を回折限界にまで集光する機能を有する。
【0046】
Zステージ52は、対物レンズをZ方向に移動させる機能を有する公知の自動ステージである。
【0047】
第2プローブ91は、半導体レーザ68、コリメートレンズ67、ビームスプリッタ63、対物レンズ61、検出レンズ64、分割フォトダイオード65、Zステージ62、LD駆動装置69、アンプ66等を有する。
【0048】
各々の部品の機能は、第1プローブ90において各々相当する部品と同様であるので説明を省略する。
【0049】
パルス回路44は、各々のプローブにおけるZステージ52,62を制御するが、第1プローブ90、第2プローブ91の各々にパルス回路を設置してもよい。
【0050】
被検体41は、測定対象となるワークである。
【0051】
ホルダー42は被検体41を保持するメカ部品である。
【0052】
XYステージ43は、被検体41を保持するホルダー42をXY方向に移動させる自動ステージである。XYステージ43は、パルス回路44からのパルス信号を受けて駆動される。
【0053】
PC80は、制御部81を有するパーソナルコンピュータである。制御部81は図示しないCPUやRAM,ROMなどのメモリを有する。
【0054】
PC80は、LD駆動装置51,69、パルス回路44を駆動し、アンプ53,66からの電気出力を受信する。
【0055】
次いで、形状測定装置200の動作を説明する。
【0056】
第1プローブ90において、半導体レーザ50は、制御部8がLD駆動装置51に駆動を指示する信号を送信することで、レーザ光101は発振する。レーザ光101はコリメートレンズ49で平行化され、ビームスプリッタ46に入射して直進し、対物レンズ45に入射する。対物レンズ45は、レーザ光101を集光し被検体41(ここでは、レンズ)のレンズ面に集光する。レンズ面で反射したレーザ光101は、対物レンズ45を通過し、ビームスプリッタ46で反射され、検出レンズ47に入射する。検出レンズ47に入射したレーザ光101は、分割フォトダイオードの受光面上に集光される。
【0057】
図5は、分割フォトダイオードの分割形状の模式図である。分割フォトダイオードは、図5に示すような形状に分割されており、各々の分割面において光電変換された出力はアンプ53で増幅されて制御部81に送られる。制御部81においては、(A−B+C−D)というようにフォーカス信号出力を演算する。
【0058】
図6は、フォーカス信号FとZ方向の位置との関係を表す模式図である。被検体41上にレーザ光101がフォーカスされている時のZ方向座標を原点とすると、フォーカス信号FとZ方向の位置との関係は、図6のようにS字カーブを描くこととなる。
【0059】
制御部81はこのフォーカス信号Fを参照しながら、パルス回路44を通じてZステージ52を駆動することで、フォーカス信号Fが0になる位置を見つける。そして、フォーカス信号Fが0になる時のZ方向の位置のデータを図示しない記憶部に記憶させる。
【0060】
次に制御部は、XYステージを用いて被検体41を移動させ、同様にフォーカス信号Fが0となるZ方向の座標を見つけて記憶部に記憶させる。そして。計測すべきXYの範囲において同様な動作を行った後に、記憶部からXY座標と、これに相当するZ座標の位置の値を呼び出し、レンズの一面の形状として図示しない表示部にグラフィック表示する。
【0061】
第2プローブ91においても同様の動作が行われるので説明を省略する。
【0062】
かかる第1プローブ90、第2プローブ91との被検体41の面形状の座標データから、被検体であるレンズの2面の偏心を算出する。算出に際しては、第1プローブ90の光軸O1と第2プローブ91の光軸O2とがXY面内方向のシフトがなく、また光軸O1,O2とがチルトしていないことが前提となる。しかし、光軸O1,O2をシフトなく、かつチルトもないように各プローブを配置することは難しかった。本実施形態の校正用冶具100を用いれば、光軸O1,O2のシフト量とチルト量を計測することができる。
【0063】
(シフト量の測定)
次いで、校正用冶具100を用いた形状測定装置200の光軸O1,O2のシフト量の計測について図7から図10を用いて説明する。
【0064】
図7は、ホルダー42の代わりに校正用冶具100を設置された形状測定装置200の模式図である。図8は、形状測定装置200の光軸O1,O2のシフト量を計測するフロー図である。
【0065】
最初にステップS1にて、測定部でもある制御部81は、校正用冶具100における基準球11の上面に、第1プローブ90からレーザ光101が対物レンズ45を介して集光照射させ、前述のように形状測定を実施する。そして、基準球11の上面の形状データを取得し、図示しない記憶部に第1測定結果として記憶させる。
【0066】
基準球11の形状測定は、次のように行う。図9は、基準球11の測定手順を示す模式図である。校正用冶具100はXYステージ43によって(Xn,Yn)座標上をラスタスキャンされる。ここで、nは、自然数である。X座標とY座標は、測定範囲を均等分割された値である。例えば、基準球11の直径が2mmの場合、測定範囲を±0.5mmとし、測定間隔を0.1mmとする。このXYの範囲にて、レーザ光101が基準球11の表面に集光されるように、Zステージ52を制御する。この動作を各(Xn、Yn)の点で実施し、対応するZ座標であるZnを求め、Zn(Xn、Yn)のデータを図示しない記憶部に記憶する。同図において黒丸は各測定点を表す。
【0067】
ここで、便宜上、基準球11の第1プローブ90側の面を上面、基準球11の第2プローブ91側の面を下面と称する。
【0068】
次に、ステップS2にて、制御部81は、校正用冶具100における基準球11の下面に、第2プローブ91からレーザ光102が対物レンズ61を介して集光照射させ、前述のように形状測定をステップS1と同様に実施する。そして、基準球11の下面の形状データを取得し、図示しない記憶部に第2測定結果として記憶させる。
【0069】
次に、ステップS3にて、制御部81は、基準球11の上面の形状算出を行う。すなわち、基準球11の上面の球面の直径、中心の位置を求める。取得した形状データを基に、球の形状にフィッティングを行う。フィッティングには、例えば、最小自乗法を用いることができる。具体的には、仮の中心位置、仮の直径を基にした球形状と、取得したZn(Xn、Yn)のデータとの乖離が、最小自乗法により最も小さくなるように、中心位置と直径を求める。求めた中心位置と直径とを図示しない記憶部に記憶する。
【0070】
次に、ステップS4にて、制御部81は、基準球11の下面の形状算出をステップS3と同様に行い、求めた中心位置と直径とを図示しない記憶部に記憶する。
【0071】
次にステップS5にて、シフト量算出部でもある制御部81は、形状測定装置200の光軸O1,O2のシフト量を算出する。図10は、Y方向のシフト量の概略説明図である。図10において、CY1は、上面の形状から算出された基準球のY方向の中心位置、CY2は、下面の形状から算出された基準球のY方向の中心位置、OY1は、第1プローブ90のY方向の光軸であり、OY2は、第2プローブ91のY方向の光軸である。
【0072】
図9から、分かるように、Y方向のシフト量は、CY1とCY2の差であるSYである。X方向のシフト量も同様に算出できる。
【0073】
なお、上記の説明においては、シルト角の算出を行うのに、基準球11の中心位置を用いたが、他の代表的に位置、例えば、基準球11の各プローブ側に面した頂点の位置を用いてもよい。
【0074】
(チルト量の測定)
次いで、校正用冶具100を用いた、形状測定装置200の光軸O1,O2のチルト量の計測について図11,12を用いて説明する。
【0075】
図11は、形状測定装置200の光軸O1,O2のチルト量を計測するフロー図である。図12は、Y方向のチルト量の概略説明図である。図12(a)は上面から測定した時の模式図を表し、図12(b)は下面から測定した時の模式図を表す。
【0076】
最初に、ステップS11にて、測定部でもある制御部81は、第1基準球11(基準球11を第1基準球とも称す)の上面と下面の形状データを取得する。詳細は、上述のステップS1、S2と同様であるので省略する。計測した形状データは図示しない記憶部に記憶する。
【0077】
次に、ステップS12にて、使用者は、校正用冶具100上の基準球を第1基準球11から第2基準球12に入れ替える。そして、ステップS11と同様に測定部でもある制御部81は、第2基準球12の上面と下面の形状データを取得する。計測した形状データは図示しない記憶部に記憶する。
【0078】
次に、ステップS13にて、使用者は、校正用冶具100上の基準球を第2基準球12から第3基準球13を入れ替える。そして、ステップS12と同様に測定部でもある制御部81は、第3基準球13の上面と下面の形状データを取得する。計測した形状データは図示しない記憶部に記憶する。
【0079】
次に、ステップS14にて、制御部81は、ステップS3と同様にして、各基準球11から13の上面の形状算出を行う。求めた中心位置と直径とを図示しない記憶部に記憶する。
【0080】
次に、ステップS15にて、制御部81は、ステップS4と同様にして、各基準球11から13の下面の形状算出を行う。求めた中心位置と直径とを図示しない記憶部に記憶する。
【0081】
次にステップS16にて、チルト量算出部でもある制御部81は、形状測定装置200の光軸O1,O2のシフト量を算出する。
【0082】
チルト量の正確な算出のためには、各基準球11,12,13の中心位置を結んだ線が直線状になることが望まれ、そのためには3個の基準球2の球径が略等しいことが好ましい。
【0083】
また、3個の基準球2の真球度を0.25μm(JISB1501(転がり軸受−鋼球)の等級10)以下とすれば、各基準球11,12,13の中心位置を結んだ線が、より直線状になるので好ましい。
【0084】
なお、3個の基準球2の真球度については、好ましくは真球度0.13μm(等級5)、より好ましくは真球度0.08μm(等級3)を用いることで、各基準球11,12,13の中心位置を結んだ線が、真球度がよくなるに従い、より直線状になるので好ましい。
【0085】
図12(a)において、UY1、UY2、UY3は、各々上面の形状から算出された基準球11,12,13のY方向の中心位置である。Y方向のチルト量は、UY1、UY2、UY3を結んだ線L1とZ軸との成す角θ1で定義される。Z方向のチルト角も同様に算出することができる。
【0086】
図12(b)において、DY1、DY2、DY3は、各々下面の形状から算出された基準球11,12,13のY方向の中心位置である。Y方向のチルト量は、DY1、DY2、DY3を結んだ線L2とZ軸との成す角θ2で定義される。Z方向のチルト角も同様に算出することができる。
【0087】
なお、上記の説明においては、チルト角の算出を行うのに、基準球11〜13の中心位置を用いたが、他の代表的に位置、例えば、基準球11〜13の各プローブ側に面した頂点の位置を用いてもよい。
【0088】
なお、以上の説明においては、プローブに光プローブを用いたが、接触式のプローブを用いてもよい。接触式のプローブとしては、例えば、ダイヤモンドのヘッドを装荷したスタイラスの位置を、レーザ干渉測定式のレーザ側長器で測定することで、被検体の形状を計測するタイプがある。
【0089】
以上のように本実施形態によれば、中心が円周上を3等分し、計測用基準球を接するように設置できる3個の基準球を備えることで、位置再現性を高くできるので、簡易的に、かつ高精度に形状測定装置を校正する校正用冶具を提供できる。
【0090】
また、本実施形態によれば、3個の基準球2の球径を略等しくすることで、各基準球11,12,13の中心位置を結んだ線を直線状にできるので、チルト量の正確な算出に寄与する校正用冶具を提供できる。また、基準球2の接平面の法線が、台座5の法線と平行になるので、基準球11を変更して計測して第1プローブ90や第2プローブ91のチルト量を算出する際の計算が容易になる。
【0091】
また、本実施形態によれば、3個の基準球2の真球度を0.25μm以下とすることで、各基準球11,12,13の中心位置を結んだ線を直線状にでき、チルト量の正確な算出に寄与する校正用冶具を提供できる。
【0092】
また、本実施形態によれば、基準球11が設置された状態で、設置された基準球11を、観察することができる開口を有するので、基準球2を保持する台座に位置方向からも、プローブを用いて形状計測を可能とできる。従って、形状測定装置のシフト量を測定できるとともに、台座方向のプローブのチルト量を計測することができる。さらに、上下から測定ワークの面頂の位置を確認し、上下に対向する測定機の光軸ズレを目視でも確認できる。
【0093】
また、本実施形態によれば、上記の校正用冶具を配置可能であり、被測定物の形状に関する情報を取得するための第1プローブ90と、校正用冶具に対して第1プローブ90と反対側に設けられ被測定物の形状に関する情報を取得するための第2プローブ91と、第1プローブ90及び第2プローブ91により、配置された計測用基準球を測定して第1測定結果及び第2測定結果を求める測定部と、第1測定結果及び第2測定結果を比較してシフトを算出するシフト量算出部と、を備えるので、第1プローブ90と第2プローブ91のシフト量を正確に計測することができる形状測定装置を提供できる。
【0094】
また、本実施形態によれば、上記の校正用冶具を配置可能であり、被測定物の形状に関する情報を取得するための第1プローブ90と、校正用冶具に対して第1プローブ90と反対側に設けられ被測定物の形状に関する情報を取得するための第2プローブ91と、を備える形状測定装置を用いて、当該形状測定装置のシフトを算出する校正方法であって、第1プローブ90及び第2プローブ91により計測用基準球を測定して第1測定結果及び第2測定結果を求める測定ステップと、第1測定結果及び第2測定結果を比較してシフト量を算出するシフト量算出ステップとを備えることで、第1プローブ90と第2プローブ91のシフト量を正確に計測することができる校正方法を提供できる。
【0095】
また、本実施形態によれば、上記の校正用冶具を配置可能であり、被測定物の形状に関する情報を取得するための第1プローブ90と、校正用冶具に対して第1プローブ90と反対側に設けられ被測定物の形状に関する情報を取得するための第2プローブ91と、第1プローブ90及び第2プローブ91により、複数の計測用基準球を測定して、計測用基準球毎に第1測定結果及び第2測定結果を求める測定部と、計測用基準球毎の第1測定結果及び第2測定結果を比較して、第1プローブ90と第2プローブ91のチルト量を算出するチルト算出部と、を備えることで、第1プローブ90と第2プローブ91の散ると量を正確に計測することができる形状測定装置を提供できる。
【0096】
また、本実施形態によれば、上記の校正用冶具を配置可能であり、被測定物の形状に関する情報を取得するための第1プローブ90と、校正用冶具に対して第1プローブ90と反対側に設けられ被測定物の形状に関する情報を取得するための第2プローブ91と、を備える形状測定装置を用いて、当該形状測定装置のチルトを算出する校正方法であって、第1プローブ90及び第2プローブ91により、複数の計測用基準球を測定して、計測用基準球毎に第1測定結果及び第2測定結果を求める測定ステップと、計測用基準球毎の第1測定結果及び第2測定結果を比較してチルト量を算出するチルト算出ステップとを備えることで、第1プローブ90と第2プローブ91のチルト量を正確に計測することができる校正方法を提供できる。
【符号の説明】
【0097】
2 基準球
5 台座
8 穴
11 第1基準球(基準球)
12 第2基準球
13 第3基準球
15 軸
41 被検体
42 ホルダー
43 XYステージ
44 パルス回路
45 対物レンズ
46 ビームスプリッタ
47 検出レンズ
48 分割フォトダイオード
49 コリメートレンズ
50 半導体レーザ
51 LD駆動装置
52 Zステージ
53 アンプ
61 対物レンズ
63 ビームスプリッタ
64 検出レンズ
66 アンプ
67 コリメートレンズ
68 半導体レーザ
69 LD駆動装置
80 PC
81 制御部
90 第1プローブ
91 第2プローブ
100 校正用冶具
101,102 レーザ光
O1,O2 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心が円周上を3等分し、計測用基準球を接するように設置できる3個の基準球を備えたことを特徴とする校正用冶具。
【請求項2】
前記3個の基準球は、球径が略等しいことを特徴とする請求項1に記載の校正用冶具。
【請求項3】
前記3個の基準球の真球度は0.25μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の校正用冶具。
【請求項4】
前記計測用基準球が設置された状態で、設置された前記計測用基準球を、観察することができる開口を有することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の校正用冶具。
【請求項5】
前記計測用基準球が設置されたことを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の校正用冶具。
【請求項6】
前記計測用基準球の表面は、鏡面にて構成されていることを特徴とする請求項5に記載の校正用冶具。
【請求項7】
請求項5または6に記載の校正用冶具を配置可能であり、
被測定物の形状に関する情報を取得するための第1プローブと、
前記校正用冶具に対して前記第1プローブと反対側に設けられ前記被測定物の形状に関する情報を取得するための第2プローブと、
前記第1プローブ及び前記第2プローブにより、配置された前記計測用基準球を測定して第1測定結果及び第2測定結果を求める測定部と、
前記第1測定結果及び前記第2測定結果を比較してシフトを算出するシフト量算出部と、
を備えることを特徴とする形状測定装置。
【請求項8】
請求項5または6に記載の校正用冶具を配置可能であり、
被測定物の形状に関する情報を取得するための第1プローブと、
校正用冶具に対して前記第1プローブと反対側に設けられ前記被測定物の形状に関する情報を取得するための第2プローブと、
を備える形状測定装置を用いて、当該形状測定装置のシフトを算出する校正方法であって、
前記第1プローブ及び前記第2プローブにより前記計測用基準球を測定して第1測定結果及び第2測定結果を求める測定ステップと、
前記第1測定結果及び前記第2測定結果を比較してシフト量を算出するシフト量算出ステップと、
を備えることを特徴とする校正方法。
【請求項9】
請求項5または6に記載の校正用冶具を配置可能であり、
被測定物の形状に関する情報を取得するための第1プローブと、
校正用冶具に対して前記第1プローブと反対側に設けられ前記被測定物の形状に関する情報を取得するための第2プローブと、
前記第1プローブ及び前記第2プローブにより、複数の前記計測用基準球を測定して、前記計測用基準球毎に第1測定結果及び第2測定結果を求める測定部と、
前記計測用基準球毎の前記第1測定結果及び前記第2測定結果を比較して、前記第1プローブと前記第2プローブのチルト量を算出するチルト算出部と、
を備えることを特徴とする形状測定装置。
【請求項10】
請求項5または6に記載の校正用冶具を配置可能であり、
被測定物の形状に関する情報を取得するための第1プローブと、
校正用冶具に対して前記第1プローブと反対側に設けられ前記被測定物の形状に関する情報を取得するための第2プローブと、
を備える形状測定装置を用いて、当該形状測定装置のチルトを算出する校正方法であって、
前記第1プローブ及び前記第2プローブにより、複数の前記計測用基準球を測定して、前記計測用基準球毎に第1測定結果及び第2測定結果を求める測定ステップと、
前記計測用基準球毎の前記第1測定結果及び前記第2測定結果を比較してチルト量を算出するチルト算出ステップと、
を備えることを特徴とする校正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−2726(P2012−2726A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139133(P2010−139133)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】